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特許7105553ターゲット核酸検出のための二重プローブアッセイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ターゲット核酸検出のための二重プローブアッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20220715BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20220715BHJP
【FI】
C12Q1/6876
C12Q1/6844 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017202592
(22)【出願日】2017-10-19
(62)【分割の表示】P 2013214339の分割
【原出願日】2013-10-15
(65)【公開番号】P2018007694
(43)【公開日】2018-01-18
【審査請求日】2017-10-23
【審判番号】
【審判請求日】2020-03-23
(31)【優先権主張番号】12188990.1
(32)【優先日】2012-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】61/715,457
(32)【優先日】2012-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ベルクマン
(72)【発明者】
【氏名】ドロテア・ズィズマン
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ・ツィッツァー
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】長井 啓子
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】Clinical Chemistry,vol.51,pp.1885-1888(2005)
【文献】J.Virol.Methods,vol.176,pp.32-37(2011)
【文献】Arch.Virol.,vol.155,pp.665-673(2010)
【文献】Dis.Aquat.Organ.,vol.80,pp.137-144(2008)
【文献】BMC Infectious Diseases 2004,4:32
【文献】BMC Microbiology 2009,9:244
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00 - 70
C12N 15/00 - 90
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDreamIII)
CAPlus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に存在しうるターゲット核酸を増幅し、そして検出するための方法であって、当該ターゲット核酸は、配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含み、当該方法は:
a)前記試料由来の核酸を、ポリメラーゼ、ヌクレオチド単量体、アンプリコンを生成するためのプライマー、および前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な少なくとも2つの検出可能プローブを含む増幅試薬と接触させ、ここで前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブは、同じ標識を所持し、そして重複しない、
ここで、前記プライマーは、1種類より多い種類の順方向プライマーと1種類の逆方向プライマー、または、1種類の順方向プライマーと1種類より多い種類の逆方向プライマーからなり、前記1種類より多い種類の順方向プライマーは互いに重複するものであり、前記1種類より多い種類の逆方向プライマーは互いに重複するものである
b)前記核酸と、前記増幅試薬を、増幅反応が生じるのに十分な期間、そして十分な条件下でインキュベーションし;
c)前記アンプリコンの前記の異なる配列部分に対する前記検出可能プローブのハイブリダイゼーションを検出することによって、前記アンプリコンの存在または非存在を検出する、ここで個々のプローブから生じるシグナルは区別されない
工程を含み、
そして、工程c)の後および/または工程c)の間に、配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含む前記ターゲット核酸の量を決定する工程をさらに含む、
ここで、前記アンプリコンの存在が、前記試料中の配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含む前記ターゲット核酸の存在の指標となる
前記方法。
【請求項2】
対照核酸が、任意の工程で、試料および/または精製核酸に添加される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブが、5’-ヌクレアーゼプローブまたはHybProbe対である、請求項1または2の方法。
【請求項4】
前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブが、前記アンプリコンの同じまたは異なる鎖にハイブリダイズする、請求項1~3のいずれか1項の方法。
【請求項5】
前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブが、互いに100塩基を超えない距離で、前記アンプリコンにハイブリダイズする、請求項1~4のいずれか1項の方法。
【請求項6】
試料中に存在しうるターゲット核酸を増幅し、そして検出するための、少なくとも2つの検出可能核酸プローブの使用であって、当該ターゲット核酸は、配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含む、ここで前記検出可能核酸プローブが、同じアンプリコンの異なる配列部分に特異的であり、同じ標識を所持し、そして重複しない、並びに個々のプローブから生じるシグナルは区別されない、
ここで、前記標的核酸の増幅は、1種類より多い種類の順方向プライマーと1種類の逆方向プライマー、または、1種類の順方向プライマーと1種類より多い種類の逆方向プライマーからなるプライマーを用いて行われ、前記1種類より多い種類の順方向プライマーは互いに重複するものであり、前記1種類より多い種類の逆方向プライマーは互いに重複するものである、
前記使用。
【請求項7】
試料中に存在しうるターゲット核酸を増幅し、そして検出するためのキットであって、当該ターゲット核酸は、配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含み、前記キットが、ポリメラーゼ、ヌクレオチド単量体、アンプリコンを生成するためのプライマー、および前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な少なくとも2つの検出可能プローブを含む増幅試薬を含む、ここで前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブが5’-ヌクレアーゼプローブであり、同じ標識を所持し、そして重複しない、
ここで、前記プライマーは、1種類より多い種類の順方向プライマーと1種類の逆方向プライマー、または、1種類の順方向プライマーと1種類より多い種類の逆方向プライマーからなり、前記1種類より多い種類の順方向プライマーは互いに重複するものであり、前記1種類より多い種類の逆方向プライマーは互いに重複するものである、
前記キット。
【請求項8】
固体支持体および前記試料の核酸を当該体支持体へ結合させるための試薬をさらに含む、請求項7のキット。
【請求項9】
前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブが、前記アンプリコンの同じまたは異なる鎖にハイブリダイズする、請求項7または8のキット。
【請求項10】
前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブが、互いに100塩基を超えない距離で、前記アンプリコンにハイブリダイズする、請求項7~9のいずれか1項のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、in vitro診断の分野に属する。この分野内で、本発明は、試料中に存在しうるターゲット核酸の増幅および検出、そして特に、アンプリコンの異なる配列部分に特異的な少なくとも2つのプローブを用いた、配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含むターゲット核酸の増幅および検出に関する。本発明はさらに、アンプリコンの異なる配列部分に特異的な少なくとも2つのプローブの使用および該プローブを含有するキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
分子診断の分野において、核酸の増幅および検出はかなり重要である。核酸増幅および検出の診断適用の例は、ヒト・パピローマウイルス(HPV)、西ナイルウィルス(WNV)などのウイルスの検出、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)および/またはC型肝炎ウイルス(HCV)の存在に関する、献血のルーチンのスクリーニング等である。さらに、前記増幅技術は、細菌ターゲット、または癌マーカーの分析、または他のターゲットに適している。
【0003】
種内で、微生物または病原体は、しばしば、核酸配列変動に基づいて、別個の群、遺伝子型またはサブタイプにしたがって分類される(すなわち、HCV、HIV、HPVなど)。にもかかわらず、in vitro診断デバイスにおいては、偽陰性診断または誤った力価測定を回避するために、すべての群、遺伝子型またはサブタイプが検出されそして/または正しく定量化されなければならない。これは、例えばHIVおよびHCVの検出のための分子診断アッセイにとってはかなりの困難を生じる。さらに、こうした病原体の一定の突然変異および組換えがターゲット核酸内で生じ、多様性が増加するが、これもまた、分子診断アッセイにおいて含まれなければならない。
【0004】
最も顕著で、そして広く用いられる増幅技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。他の増幅反応には、とりわけ、リガーゼ連鎖反応、ポリメラーゼリガーゼ連鎖反応、Gap-LCR、修復連鎖反応、3SR、NASBA、鎖置換増幅(SDA)、転写仲介増幅(TMA)、およびQβ増幅が含まれる。
【0005】
PCRに基づく分析の自動化系は、しばしば、同じ反応容器におけるPCRプロセス中、産物増幅のリアルタイム検出を使用する。こうした方法に重要なのは、レポーター基または標識を所持する修飾オリゴヌクレオチドの使用である。
【0006】
生物学的試料における微生物核酸の検出は、例えば個体の感染を認識するために非常に重大である。その結果、例えばウイルス感染の検出のためのアッセイに関する1つの重要な必要条件は、包括性(inclusivity)であり、これは、突然変異によって引き起こされるウイルスゲノム上の可変配列領域による、偽陰性結果または力価の過少定量化を回避しなければならないことと定義される。ウイルス負荷が低いことと組み合わされ、おそらく増幅されずそして/または検出されない、それぞれのゲノム内の突然変異または部分的突然変異配列が存在することによって、偽陰性または誤った定量化結果を得る可能性が増進する。
【0007】
分子アッセイの包括性を増加させるため、いくつかのオプションが公表されてきている。近年、病原体ゲノム内の2つの異なるそして重複しないターゲット配列の同時増幅が確立された(US 2010/0041040)。しかし、このアプローチは、2つの適度に保存されたターゲット領域が病原体のゲノム内で同定不能であるか、または2つの独立のターゲット領域の増幅および検出のためのオリゴヌクレオチドが、マスターミックス中で互いに干渉する場合、一般的に適用不能である可能性もある。
【0008】
この背景において、先行技術は、アッセイ感度を増加させる目的で、均質アンプリコン配列に基づいて、1より多いプローブを伴う、増幅および検出のための方法を提供してきている(Yipら, 2005, Clin. Chem. 51(10))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】US 2010/0041040
【非特許文献】
【0010】
【文献】Yipら, 2005, Clin. Chem. 51(10)
【発明の概要】
【0011】
本発明の側面は、試料中のターゲット核酸を増幅し、そして検出するための方法であって、前記ターゲット核酸が、配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含み、前記試料における該核酸の増幅を行う、前記方法である。この増幅は、ポリメラーゼ、ヌクレオチド単量体、アンプリコンを生成するためのプライマー、および前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な少なくとも2つの検出可能プローブを含む。得られたアンプリコンの検出は、アンプリコンの前記の異なる配列部分に対する、上述のプローブのハイブリダイゼーションを検出することによって達成される。
【0012】
本発明はまた、同じアンプリコンの異なる配列部分に特異的な、少なくとも2つの非重複検出可能核酸プローブの使用にも関する。
さらに、試料中に存在しうるターゲット核酸を増幅し、そして検出するためのキットであって、前記ターゲット核酸が、配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含む、前記キットを提供する。該キットは、ポリメラーゼ、ヌクレオチド単量体、アンプリコンを生成するためのプライマー、および前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な少なくとも2つの検出可能プローブを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】試験したプローブの概観
図2】HCV遺伝子型1aに関する、そして天然存在突然変異単離体(Lindauer)に関するHCV RNA転写物を用いた、プローブ配列番号1~5の評価
図3a】HCV遺伝子型1aおよび4a血漿試料を用いた、非重複プローブ配列番号3、4、7および8の評価
図3b】HCV遺伝子型1aおよび4a血漿試料を用いた、非重複プローブ配列番号3、4、7および8の評価
図4a】HCV遺伝子型1a(コンセンサス)に関する、そして2つの天然存在突然変異単離体(Jody、Lindauer)に関する転写物RNAを用いた、非重複プローブ配列番号3、4、7および8の評価
図4b】HCV遺伝子型1a(コンセンサス)に関する、そして2つの天然存在突然変異単離体(Jody、Lindauer)に関する転写物RNAを用いた、非重複プローブ配列番号3、4、7および8の評価
図5】HCV遺伝子型1aに関する、そして7つの異なる天然存在突然変異単離体に関するHCV RNA転写物を用いた、第二のプローブを伴わないマスターミックス(RL1.1)に対する、プローブ配列番号8の最終評価。
図6a】1つの患者HCV GT1aおよび3つのGT4a試料を用いた、参照マスターミックスRL1.1に対する、プローブ配列番号8(35%、50%および65%の添加)に関する濃度最適化。
図6b】1つの患者HCV GT1aおよび3つのGT4a試料を用いた、参照マスターミックスRL1.1に対する、プローブ配列番号8(35%、50%および65%の添加)に関する濃度最適化。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第一の態様において、本発明は、試料中に存在しうるターゲット核酸を増幅し、そして検出するための方法であって、前記ターゲット核酸が、配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含み、前記方法が:
a)前記試料由来の核酸を、ポリメラーゼ、ヌクレオチド単量体、アンプリコンを生成するためのプライマー、および前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な少なくとも2つの検出可能プローブを含む増幅試薬と接触させ;
b)前記核酸と、前記増幅試薬を、増幅反応が生じるのに十分な期間、そして十分な条件下でインキュベーションし;
c)前記アンプリコンの前記の異なる配列部分に対する前記検出可能プローブのハイブリダイゼーションを検出することによって、前記アンプリコンの存在または非存在を検出する
工程を含み、
前記アンプリコンの存在が、前記試料中の配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含む前記ターゲット核酸の存在の指標となる
前記方法に関する。
【0015】
本発明のいくつかの態様において、上述の方法の1またはそれより多い工程を自動化する。さらなる態様において、すべての工程を自動化する。自動化系は、特にin vitro診断の分野において、手動の方法に比較した際、多くの利点を提供する。当業者は、方法を開始した後で系を放置し、こうして実際に操作する時間を減少させ、そして比較的短い期間で、試料のハイスループットのための基礎を提供しながら、同時に結果の再現性を増加させることが可能である。これは、唯一ではないとしても、特に、例えば血液バンクにおけるように、多数の臨床試料を可能な限り迅速に、スクリーニングすべきである状況において、重要な特徴である。
【0016】
本発明の背景において、用語「増幅する」または「増幅」は、一般的に、ターゲット核酸からの複数の核酸分子の産生を指し、ここでプライマーは、ポリメラーゼによる伸長のための開始部位を提供するため、ターゲット核酸分子上の特異的な部位にハイブリダイズする。増幅は、限定されるわけではないが:標準的PCR、リアルタイムPCR、長鎖PCR、ホットスタートPCR、qPCR、逆転写PCRおよび等温増幅などの、当該技術分野に一般的に知られるいかなる方法によっても増幅可能である。
【0017】
増幅自体の間に、増幅反応をリアルタイムで監視し、すなわちターゲット核酸および/または増幅物を検出することが好ましい可能性もある。
用語「検出する」または「検出」は、本明細書において、試料中のターゲット核酸の存在または非存在を評価することを目的とする試験に関する。
【0018】
「ターゲット核酸」は、当業者に知られるようなヌクレオチドのポリマー性化合物である。本明細書において、「ターゲット核酸」は、分析しなければならない、すなわち試料中のその存在、非存在および/または量を決定しなければならない、試料中の核酸を指す。ターゲット核酸は、ゲノム配列、例えば特定の遺伝子の一部、またはRNAであってもよい。他の態様において、ターゲット核酸は、ウイルス性または細菌性であってもよい。ターゲット核酸は、アンプリコン領域に別個の配列変動または別個の個々の突然変異を持つ下位群を含んでもよい。これは特に、高い突然変異率または組換え率および修復機構の欠如のために、有意な遺伝子変動を示す、ウイルスのような病原体の核酸に関して当てはまる。
【0019】
用語「アンプリコン」は、特定のターゲット核酸の増幅後に産生されるポリヌクレオチド分子(または集合的に、複数の分子)を指す。アンプリコンを生成するのに用いられる増幅法は、いかなる適切な方法であってもよく、最も典型的には、例えば、PCR方法論であってもよい。アンプリコンは、排他的ではないが、典型的には、DNAアンプリコンである。アンプリコンは、一本鎖または二本鎖、あるいは任意の濃度比のその混合物であってもよい。本発明の態様において、アンプリコンは、プライマー配列間に異種配列を含む、下位集団からなる。
【0020】
上に示す方法は、いくつかの態様において、ドナー蛍光部分およびアクセプター蛍光部分間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づく。これらの態様において、アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブはFRETプローブである。代表的なドナー蛍光部分はフルオレセインであり、そして代表的な対応するアクセプター蛍光部分には、LC-レッド640、LC-レッド705、CY5、およびCY5.5が含まれる。典型的には、検出には、ドナー蛍光部分によって吸収される波長で、試料を励起させ、そして対応するアクセプター蛍光部分によって放出される波長を視覚化し、そして/または測定することが含まれる。上述の方法において、検出の後には、いくつかの態様において、FRETの定量化が続く。本発明の背景において、用語「FRET」または「蛍光共鳴エネルギー移動」または「フェルスター共鳴エネルギー移動」は、交換可能に使用可能であり、そして少なくとも2つの発色団、ドナー発色団およびアクセプター発色団(消光剤と称される)の間のエネルギー移動を指す。典型的には、ドナーが適切な波長の光照射によって励起されると、ドナーはアクセプターにエネルギーを移動させる。典型的には、アクセプターは、異なる波長の光照射の形で、移動したエネルギーを再放出する。アクセプターが「暗い」消光剤である場合、移動したエネルギーを光以外の形で消散させる。特定のフルオロフォアがドナーまたはアクセプターとして作用するかどうかは、FRET対の他のメンバーの特性に応じる。一般的に用いられるドナー-アクセプター対には、FAM-TAMRA対が含まれる。一般的に用いられるドナーは、例えば、フルオレセイン、クマリン、シアニンおよびローダミンである。一般的に用いられる消光剤は、DABCYLおよびTAMRAである。一般的に用いられる暗い消光剤には、BlackHole QuenchersTM(BHQ)(Biosearch Technologies, Inc. カリフォルニア州ナバト)、Iowa BLACKTM(Integrated DNA Tech., Inc.、アイオワ州コーラルビル)、およびBlackBerryTM Quencher 650(BBQ-650)(Berry & Assoc.、ミシガン州デクスター)が含まれる。
【0021】
FRET技術の一般的な形式は、HybProbe対を形成する2つのハイブリダイゼーションプローブを利用する。各プローブを異なる蛍光部分で標識してもよい。プローブは、一般的には、ターゲットDNA分子(例えば増幅産物)において、互いに近接してハイブリダイズするように設計される。例えばフルオレセインのようなドナー蛍光部分は、例えばLIGHTCYCLER(登録商標)装置の光源によって、470nmで励起される。FRET中、フルオレセインは、例えばLIGHTCYCLER(登録商標)-レッド640(LC(登録商標)-レッド640)またはLIGHTCYCLER(登録商標)-レッド705(LC(登録商標)-レッド705)のようなアクセプター蛍光部分に、そのエネルギーを移動させる。次いで、アクセプター蛍光部分は、より長い波長の光を放出し、これは、LIGHTCYCLER(登録商標)装置の光学検出系によって検出される。効率的なFRETは、蛍光部分がすぐ局所に近接している際(通常、約1~5ヌクレオチドの距離)、そしてドナー蛍光部分の発光スペクトルがアクセプター蛍光部分の吸収スペクトルと重複する際にのみ起こりうる。放出シグナル強度は、元来のターゲット核酸分子の数と相関しうる。本発明の背景において、当業者によっても認識されるように、HybProbe対は、機能単位、そしてしたがって単一プローブと理解すべきであり、これはこうした対の2つのメンバーを同時に使わなければならないためである。したがって、HybProbe対の別個のプローブは、アンプリコンに結合した際に重複しない場合であっても、アンプリコンの「異なる配列部分に特異的な検出可能プローブ」を形成しない。しかし、例えば2またはそれより多いHybProbe対は、本発明の意味において、「前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブ」であり、これは、上述のように、HybProbe対が、単一プローブと理解されるべきであるためである。
【0022】
上記方法の1つの態様において、前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブは、HybProbe対である。
本態様は、いくつかの利点を与える。例えば、この検出形式のプローブは分解されないため、ハイブリダイゼーションの温度依存性を監視することによって、HybProbe対各々に対して、融解曲線分析を行うことも可能である。当業者が知るように、融解曲線分析は、結果の検証に適切であるか、または単一温度でのハイブリダイゼーションを監視するよりも、例えばターゲット核酸の同一性に関して、より詳細な情報を提供することさえ可能である。
【0023】
cobas(登録商標)TaqMan(登録商標)系上のアンプリコン形成の検出は、一本鎖ハイブリダイゼーションプローブ(また、「5’-ヌクレアーゼプローブ」とも称される)を利用する。用語「5’-ヌクレアーゼプローブ」は、少なくとも1つの光放出標識部分を含み、そしてターゲット核酸検出を達成する5’-ヌクレアーゼ反応において用いられる、オリゴヌクレオチドを指す。いくつかの態様において、例えば、5’-ヌクレアーゼプローブには、単一の光放出部分(例えば蛍光色素等)のみが含まれる。特定の態様において、5’-ヌクレアーゼプローブには、選択された条件下でプローブがヘアピン構造を形成可能であるように、自己相補性の領域が含まれる。さらに例示するため、いくつかの態様において、5’-ヌクレアーゼプローブは、少なくとも2つの標識部分を含み、そして2つの標識の一方が切断されるか、または別の方式でオリゴヌクレオチドから分離された後、増加した強度の照射を放出する。特定の態様において、5’-ヌクレアーゼプローブは、2つの異なる蛍光色素、例えば5’末端レポーター色素および3’末端消光剤色素または部分で標識される。いくつかの態様において、5’-ヌクレアーゼプローブは、末端位以外の、または末端位に加えた、1またはそれより多い位で標識される。プローブが損なわれていない場合、典型的には、レポーター色素からの蛍光放出が少なくとも部分的に消光されるように、エネルギー移動が2つのフルオロフォア間で起こる。ポリメラーゼ連鎖反応の伸長工程中、例えば、テンプレート核酸に結合した5’-ヌクレアーゼプローブは、例えばTaqポリメラーゼまたは例えばZ05ポリメラーゼのようなこの活性を有する別のポリメラーゼの5’から3’ヌクレアーゼ活性によって切断され、レポーター色素の蛍光放出がもやは消光されなくなる。例示的な5’-ヌクレアーゼプローブが、例えばUS 5,210,015に記載される。いくつかの態様において、5’ヌクレアーゼプローブを2またはそれより多い異なるレポーター色素および3’末端消光剤色素または部分で標識してもよい。この形式で用いられる典型的な蛍光色素は、例えばとりわけ、FAM、HEX、CY5、JA270、Cyan500およびCY5.5である。
【0024】
上述の方法の態様において、前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブは、5’-ヌクレアーゼプローブである。
検出可能プローブは、二本鎖アンプリコンの同じまたは異なる鎖にハイブリダイズ可能である。
【0025】
上述の方法のいくつかの態様において、少なくとも2つの検出可能プローブが、前記アンプリコンの異なる鎖にハイブリダイズする。
この場合、当業者には、プライマーおよびプローブ配列、そしてそれぞれのアンプリコン上の結合部位の選択に関して、増加した柔軟性が提供される。例えば、オリゴヌクレオチド内の特異的配列による二次構造形成の場合、前記アンプリコン上の異なる配列に、そしてしたがって異なる結合部位にスイッチ可能であることが重要でありうる。さらに、検出可能プローブが異なる鎖に結合する場合、例えば第一のプローブが二本鎖アンプリコンのセンス鎖に、そして第二のプローブがアンチセンス鎖に結合する場合、それぞれの結合部位でこれらのプローブが互いに干渉するリスクが減少する。
【0026】
上述の方法のさらなる態様において、少なくとも2つの検出可能プローブは、前記アンプリコンの同じ鎖にハイブリダイズする。
後者の態様において、互いにごく近接したアンプリコンの異なる配列部分に特異的な多数の検出可能プローブをハイブリダイズさせることが可能である。それぞれのエキソヌクレアーゼは、5’-ヌクレアーゼプローブに結合し、そして該プローブを切断するのにある程度のスペースを必要とする状況であるため、これは驚くべきことである。にもかかわらず、本発明者らは、こうしたプローブが、互いにわずか数塩基の距離しか離れずに、アンプリコンにハイブリダイズ可能ですらあることを示した。これは、当業者が、比較的短い長さのアンプリコンに、各々別個の配列部分に特異的な1より多い検出可能プローブを使用することを可能にする。上述の方法にしたがって、ターゲット核酸のさらに短い伸長も、多数のプローブのターゲットに適している可能性もあり、したがって、上記の利点、例えばシグナル増進および遺伝的変動、例えば点突然変異に対する耐性増加を与える。
【0027】
したがって、上述の方法の1つの態様において、前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブは、互いに100を超えない距離で、いくつかの態様において、互いに1、5、10、20、30、40または50塩基~60、70、80、90、または100塩基の距離で、アンプリコンにハイブリダイズする。いくつかの態様において、距離は、40~80、または50~70、または55~60塩基であり、あるいは58塩基である。この背景において、「距離」は、同じ鎖にハイブリダイズする場合、検出可能プローブがハイブリダイズするアンプリコンの塩基の間にある、アンプリコンの塩基数を意味する。これらが異なる鎖にハイブリダイズする場合、距離は、二本鎖アンプリコンの一方の鎖の各塩基が、塩基対を形成するもう一方の鎖上に対応する塩基を有するように、適宜、計算される。
【0028】
いくつかの態様において、PCRなどの周期に基づく増幅技術の各サイクリング工程後に、検出を実行する。いくつかの態様において、検出をリアルタイムで実行する。商業的に入手可能なリアルタイムPCR計測手段(例えばLightCycler(登録商標)またはTaqMan(登録商標))を用いることによって、PCR増幅および増幅産物の検出を、かなり減少したサイクリング時間で、単一閉鎖キュベットにおいて、組み合わせることも可能である。検出は、増幅と同時に起こるため、リアルタイムPCR法には、増幅産物の操作に関する必要性がなく、そしてこの方法では、増幅産物間の交差汚染のリスクが減少している。上述のどちらの検出形式においても、放出されるシグナルの強度は、原理的に、元来のターゲット核酸分子の数と相関しうる。
【0029】
「試料」は、診断アッセイに供されうる任意の物質であり、そして一般的に、ターゲット核酸を含有しうる媒体を指す。「試料」は、いくつかの態様において、生物学的供給源から得られる。試料は、例えば臨床試料であってもよい。いくつかの態様において、前記試料は、ヒト由来であり、そして体液である。本発明のいくつかの態様において、試料は、ヒト全血または血清、血漿、尿、痰、汗、性器または頬側または鼻スワブ、ピペッティング可能(pipettable)糞便、可溶化組織試料、または脊髄液等である。用語「試料」が均質またはホモジナイズした液体を含むが、またエマルジョン、懸濁物等も含むように、試料をピペッティングするかまたはピペッティング可能な型に変換してもよい。試料はまた、例えば、元来の固形試料(すなわち組織試料)であってもよく、これを核酸の抽出および精製のため、可溶化処理に供する。
【0030】
「ポリメラーゼ」は、本明細書において、ヌクレオチドなどのより小さい要素から、核酸を合成することが可能な酵素である。いくつかの態様において、ポリメラーゼは熱安定性ポリメラーゼである。用語「熱安定性ポリメラーゼ」は、熱に対して安定であり、熱耐性であり、そして続くポリヌクレオチド伸長反応を達成するのに十分な活性を保持し、そして二本鎖核酸の変性を達成するのに必要な時間、上昇した温度に供された際に、不可逆的に変性しない(不活性化されない)酵素を指す。核酸変性に必要な加熱条件は、当該技術分野に周知であり、そして例えば、米国特許第4,683,202号、第4,683,195号、および第4,965,188号に例示される。本明細書において、熱安定性ポリメラーゼは、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)などの温度サイクリング反応において使用するのに適している。本明細書の目的のため、不可逆的変性は、酵素活性の永続的で、そして完全な喪失を指す。熱安定性ポリメラーゼに関しては、酵素活性は、適切な方式でヌクレオチドを組み合わせて、テンプレート核酸鎖に相補的なポリヌクレオチド伸長産物を形成する触媒作用を指す。増幅目的のため、前記ヌクレオチドは、単量体型で存在し、したがって、これらはまた、本発明の背景において、「ヌクレオチド単量体」とも称される。しばしば、例えば熱安定性DNAポリメラーゼなどのポリメラーゼによって用いられるこうしたヌクレオチド単量体は、例えば、ヌクレオシド三リン酸、またはヌクレオシド四リン酸等である。好熱性細菌由来の熱安定性DNAポリメラーゼには、例えば、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、サーマス・フラバス(Thermus flavus)、サーマス・フィリフォルミス(Thermus filiformis)、サーマス属種Sps17、サーマス属種Z05、サーマス・カルドフィラス(Thermus caldophilus)、バチルス・カルドテナックス(Bacillus caldotenax)、サーモトガ・ネオポリタナ(Thermotoga neopolitana)、およびサーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)が含まれる。
【0031】
用語「プライマー」は、本明細書において、当業者に知られるように用いられ、そしてオリゴマー性化合物、主にオリゴヌクレオチドを指すが、テンプレート依存性DNAポリメラーゼによってDNA合成をプライミングすることが可能な修飾オリゴヌクレオチドも指し、すなわち、プライマーの3’端が、未結合3’-OH基を提供し、3’-から5’-ホスホジエステル連結を確立するテンプレート依存性DNAポリメラーゼによって、3’端にさらにヌクレオチドが付着することも可能であり、それによってデオキシヌクレオシド三リン酸が用いられ、そしてそれによってピロリン酸が放出される。
【0032】
「プローブ」または「検出可能プローブ」もまた、天然または修飾オリゴヌクレオチドを指す。当該技術分野に知られるように、プローブは、分析物または増幅産物を検出する目的を果たす。本発明の背景において、プローブは、例えば、ターゲット核酸および/または対照核酸の増幅物を検出するために使用可能である。検出可能目的のため、プローブは、典型的には標識を所持する。
【0033】
方法のいくつかの態様において、前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な少なくとも2つの検出可能プローブは、同じタイプの標識を所持し、そしてしたがって、個々のプローブから生じるシグナルが区別不能である。他の態様において、少なくとも2つのプローブ由来のシグナルが、適切な計測手段で区別可能であるように、これらは異なる波長のシグナルを放出する異なる標識を所持する。
【0034】
「標識」は、しばしば「レポーター基」と称され、一般的に、核酸、特にオリゴヌクレオチドまたは修飾オリゴヌクレオチド、ならびに試料の残りから区別可能なものが結合した任意の核酸を作製する基を指す。本発明の背景において、有用な標識は、例えば、蛍光標識であり、これは、例えばフルオレセイン色素、ローダミン色素、シアニン色素、またはクマリン色素などの蛍光色素であってもよい。本発明の背景において有用な蛍光色素は、例えばFAM、HEX、JA270、CAL635、クマリン343、クエーサー705、シアン500、CY5.5、LC-レッド640、LC-レッド705、TAMRA、またはCY5である。
【0035】
本発明の背景において、任意のプライマーおよび/またはプローブを化学的に修飾してもよく、すなわちプライマーおよび/またはプローブは、修飾ヌクレオチドまたは非ヌクレオチド化合物を含む。次いで、プローブまたはプライマーは、修飾オリゴヌクレオチドである。
【0036】
当業者に知られるように、用語「特異的」は、プライマーおよびプローブの背景において、別個の核酸に「特異的」なプライマーまたはプローブが、ストリンジェントな条件下で前記核酸に結合することを示す。いくつかの態様において、本発明の背景におけるプローブは、アンプリコンの異なる配列部分に少なくとも80%同一である。別の態様において、プローブ配列は、配列番号1~8またはその対応する相補核酸配列からなる群より選択される配列の少なくとも12の連続ヌクレオチドを含み、そしてプライマーは、配列番号9~15の少なくとも12の連続ヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、選択されるプローブおよび/またはプライマー配列は、前記配列番号またはその相補核酸配列より選択される、12~60ヌクレオチド、または20~60ヌクレオチド、または正確な配列からなる。当業者は、本発明の意味において、例えば、LightCycler(登録商標)形式で用いられるHybprobe対などの機能実体を形成するプローブ対が、「前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な少なくとも2つの検出可能プローブ」ではないことを理解する。対の2つのHybprobeは、単位と見なされ、そして一緒の場合にのみ検出可能であり、一方、本発明の背景における少なくとも2つのプローブは各々、単独で検出可能である。
【0037】
さらに、本発明の背景において、用語「重複する」は、2またはそれより多いオリゴヌクレオチド、特に上述の少なくとも2つの検出可能プローブが、同一の(同じ鎖に結合する場合)または相補的な(異なる鎖に結合する場合)配列ストレッチを含むことを意味する。いくつかの態様において、上述の方法で用いるプローブは、重複せず、そしてしたがって、アンプリコン上の特異的部位に結合する際に競合しない。結合した際、前記の2またはそれより多いプローブは、前記アンプリコンの異なる配列ストレッチにハイブリダイズする。本発明の背景において用いられる検出可能プローブは、重複プローブと比較した際、好適である。
【0038】
用語「ハイブリダイズ」または「ハイブリダイゼーション」は、一般的に、そのヌクレオチド配列と一致する、異なる核酸分子間の塩基対形成を指す。用語「ハイブリダイズ」および「アニール」は、交換可能に使用可能である。
【0039】
同じアンプリコンの異なる配列部分に対する2またはそれより多いプローブの方向付けは、上述の方法で実行されるように、定性的アッセイにおいて、偽陰性結果を得るリスクの有意な減少を導く。さらに、定量的アッセイにおいて、例えばウイルスの力価を過少定量化するリスクが減少する。アッセイの包括性および頑強性が増加した結果として、最小数のオリゴヌクレオチドを用いて、所定の生物内の多様な異なる遺伝子型、サブタイプおよび突然変異体を容易に検出可能であり、そして定量化可能である。その点に関して、特定の遺伝子型、サブタイプまたは突然変異体は、少なくとも2つの検出可能プローブのすべてによってはハイブリダイズされない可能性もある。例えば、2つのプローブの場合、一方は、後者の特異的配列変動のため、ターゲットアンプリコンに結合しない一方、前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な他方のプローブは、なお、それぞれのターゲット配列にハイブリダイズ可能である。この方式で、アンプリコンの検出がなお可能であろう。異なるプローブが異なる標識を所持する態様において、プローブのいずれがハイブリダイズし、そしていずれがしないかもまた決定可能でありうる。
【0040】
上述の方法に基づいて、試験の寿命は延長され、これは、例えばウイルスなどの微生物によって、選択圧を通じて、例えば新規抗レトロウイルス薬の結果として生成される新規変異体を扱うことさえ可能であるためである。ウイルスゲノム内の高い度合いの突然変異を考慮して、上記方法の態様において、前記ターゲット核酸はウイルス核酸である。
【0041】
上述の方法を適用することによって、定性的アッセイの全体の包括性が有意に増加し、そして定量的アッセイにおける力価決定の変動が最小限になる。
当業者に知られるように、包括性の測定値は、コンセンサス配列から有意に逸脱しない標準単離体と同等の感度での、ウイルス下位群および単離体の検出である。アッセイ感度は、LOD(検出限界)であり、試料中の核酸の最低検出可能量または濃度を指す。低い「LOD」は、高い感度に対応し、そして逆も同様である。「LOD」は、通常、特に核酸がウイルス核酸である場合には単位「cp/ml」によって、またはIU/mlとしてのいずれかで表される。「cp/ml」は、「ミリリットルあたりのコピー数」を意味し、ここで「コピー」は、それぞれの核酸のコピーである。IU/mlは、「国際単位/ml」を表し、WHO標準を指す。WHO標準は、一般的に、コンセンサス配列に近いゲノムを持つ標準的単離体から構築される。
【0042】
LODを計算するために広く用いられる方法は、「プロビット分析」であり、これは刺激(用量)および質的(quantal)(あるまたはない)反応の間の関係を分析する方法である。典型的な質的反応実験において、動物群に異なる用量の薬剤を投与する。各用量レベルでの死亡パーセントを記録する。次いで、プロビット分析を用いて、これらのデータを分析してもよい。プロビットモデルは、反応パーセントが、累積正規分布として対数用量に関連すると仮定する。すなわち、対数用量を、累積正規から死亡パーセントを読み取る変数として用いることが可能である。正規分布を用いると、他の確率分布よりも、ありうる用量の最高点および最低点では予測反応速度に影響を及ぼすが、中央付近ではほとんど影響を及ぼさない。
【0043】
プロビット分析は、別個の「ヒット率」で適用可能である。当該技術分野に知られるように、「ヒット率」は、一般的にパーセント(%)で表され、そして分析物の特定の濃度での、陽性結果の割合を示す。したがって、例えば、LODは、95%ヒット率で決定可能であり、これは、真の陽性試料の有効結果の95%が陽性と決定される設定のために、LODが計算されることを意味する。
【0044】
上述の方法は、特に、C型肝炎ウイルス(HCV)を検出するためのアッセイにおいて好適である。したがって、上述の方法の態様において、ターゲット核酸は、HCVの核酸である。
【0045】
表現「C型肝炎ウイルス型」は、ゲノム編成(例えば系統樹分析)に基づく、C型肝炎ウイルスの分類を指す。特定のタイプカテゴリーへのHCV単離体の分類は、他のHCV単離体へのゲノム関連性および他のHCV単離体への比較的より少ない関連性を反映する。本明細書で用いるHCVタイピング命名法は、Simmondら(2005) “Consensus Proposals for a Unified System of Nomenclature of Hepatitis C Virus Genotypes”, Hepatology 42, No.4:962-973によって改訂され、そして提唱されている、広く受け入れられている命名法に一致する。Simmondsら(2005)の系は、既知のHCV単離体を6つのHCV遺伝子型、すなわち遺伝子型1~6の1つに入れる。各遺伝子型は、同じ遺伝子型の系統の中での関連性を反映するサブタイプと称されるグループにさらに細分される。HCVサブタイプは、遺伝子型に続いて、小文字のローマ字によって書かれ、例えばサブタイプ1a、サブタイプ1c、サブタイプ6a等と書かれる。個々の単離体内に見られる遺伝子変動は、擬似種(quasi species)と称される。すべての6つの遺伝子型を含むおよそ100のHCVサブタイプが世界中で知られる。サブタイプの数は不変ではなく、すなわちより多くのHCV単離体が研究されそして配列決定されるにつれて、さらなるサブタイプ(およびおそらく遺伝子型)が認識される可能性もある。
【0046】
HCVはRNAウイルスであるため、当業者は、通常、実際の増幅前に、ウイルスRNAをDNAに逆転写する。こうした場合、増幅試薬は、逆転写酵素または逆転写酵素活性を持つポリメラーゼを含む。
【0047】
RNAテンプレートにアニーリングするのに適したプライマーはまた、PCRによる増幅にもまた適している可能性もある。PCRのため、逆転写されたcDNA鎖に相補的な第二のプライマーが、伸長産物合成のための開始部位を提供する。
【0048】
DNAポリメラーゼによるRNA分子の増幅において、第一の伸長反応は、RNAテンプレートを用いた逆転写であり、そしてDNA鎖が形成される。DNAテンプレートを用いた第二の伸長反応は、二本鎖DNA分子を生じる。したがって、DNAポリメラーゼによるRNAテンプレートからの相補DNA鎖の合成は、増幅のための出発物質を提供する。
【0049】
熱安定性DNAポリメラーゼを、カップリングした一酵素逆転写/増幅反応で使用可能である。用語「一工程リアルタイムPCR」は、この背景において、ターゲット核酸がDNAである場合、逆転写工程を伴わない反応、またはターゲット核酸がRNAである場合、逆転写工程を含む反応を指す。「一工程リアルタイムPCR」によって、逆転写(RT)工程後、反応容器を開くか、または別の方式で、増幅工程前に反応構成要素を調整する必要がないことを意味する。非一工程リアルタイムPCR反応においては、逆転写後、そして増幅前、1またはそれより多い反応構成要素、例えば増幅試薬を、例えば調整し、添加し、または希釈し、このため、反応容器を開けなければならないか、または少なくともその内容物を操作しなければならない。一工程リアルタイムPCRおよび非一工程リアルタイムPCR態様の両方が、本発明の範囲内に含まれる。
【0050】
本発明の態様において、初期のPCR反応から生じるアンプリコンおよび高分子量産物(重合アンプリコン)などの増幅産物の持ち越し汚染が防止される。持ち越し汚染を防止する一般的でそして有効な方法は、「UDG」または「UNG」(EC 3.2.2.3)と略されるウラシル-DNA-グリコシラーゼまたはウラシル-N-グリコシラーゼの使用を伴う。ウラシル-DNAグリコシラーゼ活性を含むこれらの酵素は、一本鎖または二本鎖DNAに存在するウラシルを認識し、そしてウラシル塩基およびデオキシリボースの間のN-グリコシド性結合を切断し、無塩基部位を残す。例えばUS 6,713,294を参照されたい。本明細書の実施例に示すように、HCVの核酸を検出する際に、配列番号1~8またはそれぞれの相補体からなる群より選択される少なくとも2つの配列を含むかまたはこうした配列からなるプローブを使用すると、特に優れた成績が達成される。
【0051】
したがって、本発明の側面は、試料中に存在しうるHCVのターゲット核酸を増幅し、そして検出するための方法であって:
a)前記試料由来の核酸を、ポリメラーゼ、ヌクレオチド単量体、アンプリコンを生成するためのプライマー、および前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な少なくとも2つの検出可能プローブを含む増幅試薬と接触させ、ここで前記の少なくとも2つの検出可能プローブは、配列番号1~8またはそれぞれの相補体からなる群より選択される少なくとも2つの配列を含み;
b)前記核酸と、前記増幅試薬を、増幅反応が生じるのに十分な期間、そして十分な条件下でインキュベーションし;
c)前記アンプリコンの前記の異なる配列部分に対する前記検出可能プローブのハイブリダイゼーションを検出することによって、前記アンプリコンの存在または非存在を検出する
工程を含み、
前記アンプリコンの存在が、前記試料中のHCVの存在の指標となる
前記方法である。
【0052】
上述の方法のさらなる態様において、前記の少なくとも2つの検出可能プローブは、配列番号6および8を含み、さらに別の態様において、増幅試薬は、配列番号6および8以外のさらなるHCV特異的プローブをまったく含有しない。
【0053】
本発明の態様において、上述の方法におけるプライマーは、配列番号9~15からなる群より選択される少なくとも1つの配列を含む。前記プライマーは、上述のプローブで検出可能なアンプリコンを生成するのに特に有用である。別の態様において、上述の方法におけるプライマーは、配列番号9、10および11からなる。
【0054】
やはり本発明の側面は、前記プライマーが1より多い順方向および/または逆方向プライマーを含む、上述の方法である。こうした配置は、これらのプライマーが、上述のプローブによって検出可能な、多様な重複するアンプリコンを導く場合に、特に有用である。1より多い順方向および/または逆方向プライマーの場合、それぞれの順方向および/または逆方向プライマーは、いくつかの態様において、ねじれ型であり、すなわちこれらはハイブリダイズするテンプレート配列に関して重複している。こうしたねじれ型布陣は、さらに、HCV遺伝子型および/またはサブタイプなどの遺伝子変動の包含増加に寄与する。
【0055】
上に示す方法における上述のプライマーおよびプローブの組み合わせは、かなり多様なHCV遺伝子型の検出に特に有用である。1つの態様において、上述の方法は、試料中に存在しうるHCVの遺伝子型1、2、3、4、5、および6を同時に検出するための方法である。さらなる態様において、上述の方法は、完全にマッチした第一のプローブで、遺伝子型1、2、3、および5(サブセット1)を、そして完全にマッチした第二のプローブで、遺伝子型1、2、4、および6(サブセット2)を検出するための方法である。さらなる態様において、方法は、サブタイプ1a、1b、2a、2bを、そしていくつかの態様において、さらなるサブタイプを検出するための方法である。さらに別の態様において、上述の方法は、試料中に存在しうるHCVの遺伝子型1、2、3、4、5、および6、ならびにサブタイプ1a、1b、2a、2b、そしていくつかの態様において、さらなるサブタイプを同時に検出するための方法である。
【0056】
本発明のさらなる側面は、工程a)の前に:
i)固体支持体および前記試料を、前記ターゲット核酸を含む核酸が前記固体支持体上に固定されるのを可能にするのに十分な期間そして十分な条件下で一緒に合わせ;
ii)分離ステーションにおいて、試料中に存在する他の物質から前記固体支持体を単離し;
iii)固体支持体から試料を分離し、そして洗浄緩衝液で、1回またはそれより多く、固体支持体を洗浄することによって、分離ステーションにおいて、核酸を精製する
工程をさらに含む。
【0057】
本発明の背景において、用語「固体支持体」は、本明細書において、吸着によって直接そして非特異的に、または間接的にそして特異的にのいずれかで、分析物が結合可能である固体支持体の任意のタイプに関する。間接的結合は、固体支持体上に固定された抗体への分析物の結合、またはタグ結合化合物へのタグの結合、例えばNi-キレートへの6xHisタグの結合であることも可能である。分析物が核酸である場合、こうした間接的結合は、関心対象の核酸のターゲット配列に相同な捕捉核酸プローブへの結合によってであることも可能である。したがって、固体支持体上に付着した捕捉プローブを用いて、ターゲット分析物またはターゲット核酸は、非ターゲット物質または非ターゲット核酸から分離可能である。こうした捕捉プローブは、固体支持体上に固定される。固体支持体物質は、ポリマーまたはポリマー組成物であってもよい。固体支持体物質の他のタイプには、磁気シリカ粒子、金属粒子、磁気ガラス粒子、ガラスファイバー、ガラスファイバーフィルター、ろ紙等が含まれるが、固体支持体物質は、これらの物質に限定されない。
【0058】
「固定」は、本発明の背景において、可逆的または不可逆的方式で、核酸などの対象を捕捉することを意味する。特に、「固体支持体物質上での固定」は、単数または複数の対象が、いかなる周囲の媒体からも分離する目的のため、固体支持体物質と会合し、そして例えば後の時点で固体支持体物質からの分離によって回収可能であることを意味する。この背景において、「固定」は、例えば、上述のような固体物質のガラスまたは他の適切な表面への核酸の吸着を含んでもよい。さらに、核酸は、捕捉プローブに特異的に結合することによって「固定」されてもよく、この場合、核酸は、塩基対形成によって、固体支持体に付着した本質的に相補的な核酸に結合する。後者の場合、こうした特異的固定は、ターゲット核酸の主な結合を導く。
【0059】
「分離ステーション」は、試料中に存在する他の物質から固体支持体の単離を可能にする、分析系のデバイスまたは構成要素である。こうした分離ステーションは、例えば、これらの構成要素に限定されるわけではないが、遠心分離、フィルターチューブを含むラック、磁石、または他の適切な構成要素を含むことも可能である。いくつかの態様において、分離ステーションは、1またはそれより多い磁石を含む。特定の態様において、固体支持体として、磁気粒子、例えば磁気ガラス粒子の分離に、1またはそれより多い磁石を用いる。例えば、試料および固体支持体物質をマルチウェルプレート中のウェル中で合わせる場合、ウェル内に磁石を導入することによって、分離ステーションに含まれる1またはそれより多い磁石を、試料自体と接触させてもよいし、あるいは磁気粒子を誘引し、そして続いて周囲の液体から分離するために、前記の1またはそれより多い磁石を、ウェルの外壁に近付けてもよい。
【0060】
本発明の意味において、核酸の「精製」、「単離」または「抽出」は、以下に関する:例えば増幅によって、診断アッセイにおいて、核酸が分析可能になる前に、これらは典型的には、異なる構成要素の複雑な混合物を含有する生物学的試料から精製されるか、単離されるか、または抽出されなければならない。第一の工程において、核酸濃縮を可能にするプロセスを用いてもよい。
【0061】
「洗浄緩衝液」は、特に精製法において、望ましくない構成要素を除去するように設計された液体である。こうした緩衝液は、当該技術分野に周知である。核酸精製の背景において、洗浄緩衝液は、いかなる望ましくない構成要素からも固定された核酸を分離するため、固体支持体物質を洗浄するのに適している。洗浄緩衝液は、例えば、緩衝溶液中、エタノールおよび/またはカオトロピック剤を含有してもよいし、あるいは上述のようなエタノールおよび/またはカオトロピック剤を含まない、酸性pHを持つ溶液を含有してもよい。しばしば、洗浄溶液または他の溶液は、使用前に希釈すべきであるストック溶液として提供される。
【0062】
要約すると、上述の方法の工程i)~iii)を適用することによって、試料中に存在しうるターゲット核酸を含む核酸は、前記試料中の潜在的に干渉するいかなる物質による続く工程の阻害リスクも減少させるように、試料の残りから分離される。
【0063】
下流分析のため、核酸を続いて、例えば適切な溶出緩衝液によって、固体支持体から溶出してもよい。こうした溶出緩衝液は、例えば、蒸留水もしくは脱イオン化水または水性塩溶液、例えばTris HClのようなTris緩衝液、またはHEPES、あるいは当業者に知られる他の適切な緩衝液であってもよい。
【0064】
いくつかの態様において、固体支持体は、増幅中、そしていくつかの態様において検出中もまた、増幅反応混合物中に存在する。
上述の方法のいくつかの態様において、対照核酸を試料および/または精製核酸に添加する。
【0065】
前記の対照核酸は、いくつかの態様において、定性的対照核酸であり、そして他の態様において、定量的対照核酸であり、または両方である。
試料中の核酸の定性的検出は、例えば、固体の感染を認識するために非常に重要である。それによって、例えばウイルス感染の検出のためのアッセイの1つの重要な必要条件は、偽陰性または偽陽性結果が回避されることであり、これはこうした結果がほぼ不可避的に、それぞれの患者の治療に関する重大な結果を導くためである。したがって、特に、PCRに基づく方法において、定性的内部対照核酸を検出混合物に添加する。前記対照は、試験結果の有効性を確認するために特に重要である:少なくとも、それぞれのターゲット核酸に関する陰性結果の場合、定性的内部対照反応は、所定の設定において、反応性で実行されなければならず、すなわち、定性的内部対照が検出されなければならず、またはそうでなければ、試験自体が無効と見なされる。しかし、定性的セットアップにおいて、前記定性的内部対照は、陽性の結果の場合には、必ずしも検出されなくてもよい。定性的試験に関しては、反応感度が保証され、そしてしたがって厳密に管理されることが特に重要である。その結果、例えばわずかな阻害の状況においてさえ、定性的内部対照が検出されず、そしてしたがって試験が無効にされるように、定性的内部対照の濃度は比較的低くなければならない。
【0066】
したがって、上述の方法の態様において、前記対照核酸の増幅産物の存在は、前記ターゲット核酸に関する増幅産物の非存在下であっても、反応混合物において、増幅が生じている指標となる。
【0067】
他方で、そして試料中の核酸の存在または非存在の単なる検出に加えて、しばしば、前記核酸の量を決定することが重要である。例えば、ウイルス疾患の病期および重症度は、ウイルス負荷に基づいて評価されうる。さらに、いかなる療法の監視にも、療法の成功を評価するため、個体に存在する病原体の量に関する情報が必要である。
【0068】
したがって、本発明の側面は、工程c)の後および/または工程c)の間に、配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含むターゲット核酸の量を決定する工程をさらに含む、上述の方法である。
【0069】
例えば、治療反応を評価し、そして例えば治療期間に関する臨床的決定を行うことによって、HCV RNAウイルス負荷試験を慢性C型肝炎患者の管理における補助として用いる。慢性C型肝炎療法の一次目的は、例えば、単独であるいはリバビリンおよび/またはボセプレビルまたはテラプレビルなどのさらなる薬剤と組み合わせたpegインターフェロン・アルファ-2のような薬剤での治療の場合、ウイルス学的反応維持を達成することによって、HCVを根絶することである。上述の方法は、HCV RNAを信頼可能に検出し、そして定量化して、改善された治療時監視を導く、ウイルス負荷アッセイを提供する。
【0070】
定量的アッセイのため、ターゲット核酸の絶対量を決定するため、参照として働く定量的な標準核酸を導入する必要がある。したがって、定量的内部対照核酸を検出混合物に添加する。前記対照は、試験結果の定量化のために特に重要であるが、また、試験結果の有効性を確認するためにも重要である:定量的内部対照核酸は、それぞれのターゲット核酸に関して、陰性および陽性結果の場合に検出されなければならない。定量的内部対照反応は、所定の設定で反応性に実行されなければならず、またはそうでなければ、試験自体が無効と見なされる。定量化は、外部較正を参照することによって、または内部定量的標準が実行されることによってのいずれかで、実現されうる。
【0071】
定量的標準核酸として働く内部対照核酸に基づいて、cobas(登録商標)TaqMan(登録商標)系で生じたシグナルに関する定量的結果の計算をどのように実行するかの例を、以下に記載する:全PCR実行からの装置補正蛍光値の入力データから力価を計算する。ターゲット核酸および定量的標準核酸として働く内部対照核酸を含有する試料セットは、明記される温度プロファイルを用いたサーモサイクラー上で、PCRを経る。PCRプロファイル中の選択される温度および時間で、試料にフィルター処理した光を照射し、そしてターゲット核酸および内部対照核酸の各試料に関して、フィルター処理した蛍光データを収集する。PCR実行が完了した後、蛍光読み取り値をプロセシングして、内部対照核酸に関する色素濃度データの1セットおよびターゲット核酸に関する色素濃度データの1セットを生じる。色素濃度データの各セットを同じ方式でプロセシングする。いくつかの妥当性チェック後、内部対照核酸およびターゲット核酸に関して、エルボー値(elbow values)(CT)を計算する。エルボー値は、ターゲット核酸または内部対照核酸の蛍光が、あらかじめ定義された閾値(蛍光濃度)と交差する点と定義される。力価決定は、ターゲット核酸および内部対照核酸が同じ効率で増幅され、そして計算されるエルボー値で、ターゲット核酸および内部対照核酸の等量のアンプリコンコピーが増幅され、そして検出されるという仮定に基づく。したがって、(ctQS-ctターゲット)は、log(ターゲット濃度/QS濃度)に対して線形である。この背景において、QSは、定量的標準核酸として働く内部対照核酸を示す。次いで、力価Tは、例えば、以下の等式:
【0072】
【化1】
【0073】
におけるように、多項較正式を用いることによって、計算可能である。
多項式定数および定量的標準核酸濃度は既知であり、等式における唯一の変数は相違(ctQS-ctターゲット)である。
【0074】
当業者に知られるように、優れた定量的アッセイを性質決定するための重要な値は、例えば、アッセイの直線性または線形範囲(生じる曲線の続く線形回帰を用いた、ターゲット物質の希釈シリーズの定量化によって決定される)、正確性(多項式および実験的に決定された/割り当てられた値の間の相関)、包括性(遺伝子型/サブタイプ/突然変異体/単離体の同等でそして正確な定量化)、および精密度(線形研究から生じたデータを用いた、分散成分分析(variance component analysis)によって決定されるlog 10変換濃度の標準偏差)である。
【0075】
定量的および定性的試験の両方に関して、分析感度(LODの背景で上述)または特異性(非特異的検出による偽陽性結果の回避)のような特性もまた、重要なパラメーターである。本明細書の実施例において、上述の方法は、上に論じるような包括性に関して、改善された特性を示す。
【0076】
上に論じるような方法の利点と一致して、本発明の別の側面は、試料中に存在しうるターゲット核酸を増幅し、そして検出するための、少なくとも2つの検出可能核酸プローブの使用であって、前記ターゲット核酸が配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含み、前記検出可能核酸プローブが前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的である、前記使用である。
【0077】
上述のいくつかの態様において、前記検出可能プローブは重複しない。
さらなる態様において、上記使用は、試料中に存在しうるHCVのターゲット核酸を増幅し、そして検出するための、少なくとも2つの検出可能核酸プローブの使用であって、前記検出可能核酸プローブが前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的であり、そして前記検出可能プローブが、配列番号1~8またはそれぞれの相補体からなる群より選択される少なくとも2つの配列を含む、前記使用である。
【0078】
上述の使用のさらなる態様において、前記の少なくとも2つの検出可能プローブは、配列番号6および8を含み、さらに別の態様において、キットは配列番号6および8とは別のさらなるHCV特異的プローブを含有しない。
【0079】
本発明がさらに提供するのは、試料中に存在しうるターゲット核酸を増幅し、そして検出するためキットであって、前記ターゲット核酸が配列変動および/または個々の突然変異を含む下位群を含み、前記キットが、ポリメラーゼ、ヌクレオチド単量体、アンプリコンを生成するためのプライマー、および前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な少なくとも2つの検出可能プローブを含む、前記キットである。
【0080】
上述のキットのいくつかの態様において、前記検出可能プローブは重複しない。
1つの態様において、上述のキットは、試料中に存在しうるHCVのターゲット核酸を増幅し、そして検出するためのキットであって、前記キットが、ポリメラーゼ、ヌクレオチド単量体、アンプリコンを生成するためのプライマー、および前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な少なくとも2つの検出可能プローブを含む増幅試薬を含み、前記検出可能プローブが、配列番号1~8またはそれぞれの相補体からなる群より選択される少なくとも2つの配列を含む、前記キットである。
【0081】
上記キットのさらなる態様において、前記の少なくとも2つの検出可能プローブは、配列番号6および8を含み、さらに別の態様において、キットは配列番号6および8とは別のさらなるHCV特異的プローブを含有しない。
【0082】
上記キットの検出可能プローブは、二本鎖アンプリコンの同じ鎖または異なる鎖にハイブリダイズ可能である。
上述の方法のいくつかの態様において、少なくとも2つの検出可能プローブが、前記アンプリコンの異なる鎖にハイブリダイズする。さらなる態様において、少なくとも2つの検出可能プローブが、前記アンプリコンの同じ鎖にハイブリダイズする。
【0083】
上記キットの別の態様において、前記アンプリコンの異なる配列部分に特異的な検出可能プローブは、互いに100塩基を超えない距離で、いくつかの態様において、互いに1、5、10、20、30、40または50塩基~60、70、80、90、または100塩基の距離で、アンプリコンにハイブリダイズする。いくつかの態様において、距離は、40~80、または50~70、または55~60塩基であり、あるいは58塩基である。この背景において、「距離」は、同じ鎖にハイブリダイズする場合、検出可能プローブがハイブリダイズするアンプリコンの塩基の間にある、アンプリコンの塩基数を意味する。これらが異なる鎖にハイブリダイズする場合、距離は、二本鎖アンプリコンの一方の鎖の各塩基が、塩基対を形成する他の鎖上の対応する塩基を有するように、適宜、計算される。
【0084】
本発明の態様において、上述のキットのプライマーは、1より多い順方向および/または逆方向プライマーを含む。
本発明の1つの態様において、上記キット中のプライマーは、配列番号9~15からなる群より選択される少なくとも1つの要素を含む。前記プライマーは、上述のプローブで検出可能なアンプリコンを生成するのに特に有用である。別の態様において、上述のキット中のプライマーは、配列番号9、10および11である。
【0085】
前記使用および前記キットの利点は、本発明にしたがった方法の背景において、さらに上述するものと類似である。
図の詳細な説明
図1:元来のプローブ配列番号6を補うために試験したプローブの模式的概観図。配列番号6、9、10および11のプライマーおよびプローブは、参照マスターミックスRL1.1に属し、そしてすべての実験中に存在する。
【0086】
図2:10%のさらなるまたは50%のさらなる第二のプローブ(RL1.1中の標準プローブ配列番号6の濃度に比較して)を含有するマスターミックスを用いた、2つのHCV RNA転写物、HCV遺伝子型1aの対照転写物、およびアンプリコンのプローブ結合領域において2つの天然存在突然変異を持つ転写物(Lindauer)に関する力価(cp/mL)の評価。参照マスターミックスRL1.1に関しては、バー1および2、ならびにバー3および4は、マスターミックス中にさらなるプローブがまったく含有されないため、同一の実験に相当する。第二の参照は、標準プローブ配列番号6の濃度が10%および50%増加したが、第二のプローブは含まないRL1.1である。配列番号2、3、4、および5の添加は、ミスマッチ転写物に関して決定される濃度を増加させる。配列番号1および1、2および2、3および3、ならびに5および5は、それぞれ、配列は同一であるが、異なる標識を含有することに注目されたい(図1もまた参照されたい)。
【0087】
図3a:50%のさらなる第二のプローブ(RL1.1中の標準プローブ配列番号6の濃度に比較して)を含有するマスターミックスを用いた、HCV GT1aおよびHCV GT4a血漿試料に関するターゲットct値の評価。参照マスターミックスRL1.1は、1つのプローブ配列番号6のみを含有する。第二の参照は、50%増加した濃度の標準プローブ配列番号6を含むが、第二のプローブは含まないRL1.1である。低ターゲットctは、初期試料認識を示し;3.3Ct値の差分は、10倍の力価相違を示す。プローブ配列番号3、4、および7を添加すると、ct値が増加するにつれて、GT1aおよび/またはGT4aのいずれかにおける成績がわずかに減少する。最高の成績は、配列番号8で観察される。
【0088】
図3b:50%のさらなる第二のプローブ(RL1.1中の標準プローブ配列番号6の濃度に比較して)を含有するマスターミックスを用いた、HCV GT1aおよびHCV GT4a血漿試料に関する最後のPCR周期の蛍光シグナルの評価。参照マスターミックスRL1.1は、1つのプローブ、配列番号6のみを含有する。第二の参照は、50%増加した濃度の標準プローブ配列番号6を含むが、第二のプローブは含まないRL1.1である。高い相対蛍光指数(RFI)は、効率的な増幅およびシグナル生成を示す。配列番号4および7を添加すると、RFIが減少するにつれて、GT1aおよびGT4aにおける成績が減少する。最高の成績は、配列番号8で観察される。
【0089】
図4a:50%のさらなる第二のプローブ(RL1.1中の標準プローブ配列番号6の濃度に比較して)を含有するマスターミックスを用いた、3つのHCV RNA転写物、HCV遺伝子型1aの対照転写物、およびアンプリコンのプローブ結合領域において天然存在突然変異を持つ2つの転写物に関するターゲットct値の評価。参照マスターミックスRL1.1は、1つのプローブ、配列番号6のみを含有する。第二の参照は、50%増加した濃度の標準プローブ配列番号6を含むが、第二のプローブは含まないRL1.1である。低ターゲットctは、初期試料認識を示し;3.3Ct値の相違は、10倍の力価相違を示す。配列番号3、4、および7を添加すると、ct値が減少するにつれて、突然変異転写物に関してわずかな成績増加が示される。最高の成績は、配列番号8で観察される。
【0090】
図4b:50%のさらなる第二のプローブ(RL1.1中の標準プローブ配列番号6の濃度に比較して)を含有するマスターミックスを用いた、3つのHCV RNA転写物、HCV遺伝子型1aの対照転写物、およびアンプリコンのプローブ結合領域において天然突然変異を持つ2つの転写物に関する最後のPCR周期の蛍光シグナルの評価。参照マスターミックスRL1.1は、1つのプローブ、配列番号6のみを含有する。第二の参照は、50%増加した濃度の標準プローブ配列番号6を含むが、第二のプローブは含まないRL1.1である。高い相対蛍光指数(RFI)は、効率的な増幅およびシグナル生成を示す。配列番号3、4および7を添加しても、突然変異転写物において、RFIに関する改善はまったく示されない。配列番号8で明らかな改善が観察される。
【0091】
図5:50%のさらなる第二のプローブ(RL1.1中の標準プローブ配列番号6の濃度に比較して)を含有するマスターミックスを用いた、9つのHCV RNA転写物、HCV遺伝子型1aの対照転写物、およびアンプリコンのプローブ結合領域において天然存在突然変異を持つ転写物に関する力価(cp/mL)の評価。参照マスターミックスRL1.1は、1つのプローブ、配列番号6のみを含有する。配列番号8を添加すると、参照RL1.1に比較した際、すべてのミスマッチ転写物の濃度が、最大で>100倍、増加した。
【0092】
図6a:35%、50%および65%のさらなるプローブ配列番号8(RL1.1中の標準プローブ配列番号6の濃度に比較して)を含有するマスターミックスを用いた、HCV GT1aおよび3つのHCV GT4a血漿試料に関するターゲットct値の評価。参照マスターミックスRL1.1は、1つのプローブ、配列番号6のみを含有する。低ターゲットctは、初期試料認識を示し;3.3Ct値の差分は、10倍の力価相違を示す。配列番号8のすべての3つの濃度は同様に働いた。
【0093】
図6b:35%、50%および65%のさらなるプローブ配列番号8(RL1.1中の標準プローブ配列番号6の濃度に比較して)を含有するマスターミックスを用いた、HCV GT1aおよび3つのHCV GT4a血漿試料に関する最後のPCR周期の蛍光シグナルの評価。参照マスターミックスRL1.1は、1つのプローブ、配列番号6のみを含有する。高い相対蛍光指数(RFI)は、効率的な増幅およびシグナル生成を示す。最高の結果は、第二のプローブ配列番号8を50%添加すると観察された。
【実施例
【0094】
一般的な実験設計
すべての実験を同等の実験条件下で行った。標準プローブ配列番号6を含む基本的なマスターミックス組成物は、すべての実験で同じであり、そしてマスターミックスRL1.1と称された。本発明にしたがって、一度に1つずつ評価するため、元来のプローブ配列番号6のさらなる50%、またはさらなるプローブの1つ(配列番号1~5、7または8)のいずれかを、RL1.1に補充した。各プローブを同じ濃度(元来のプローブ配列番号6の10%または50%)で個々に添加し、そして評価した。異なる第二のプローブは、標準プローブ配列番号6と部分的に重複するか、または重複しなかった。いくつかのプローブは、標準プローブ配列番号6と同じ鎖上に位置し、いくつかは反対の鎖上に位置した。
【0095】
すべての実験において、第二のプローブを含まないマスターミックスRL1.1を、参照として試験する(対照1)とともに、10%または50%増加した濃度の元来のプローブ配列番号6を含むマスターミックスを参照として試験した(対照2)。異なるマスターミックスの評価に、同じ試料調製プロファイル、熱周期プロファイルおよび結果解釈パラメーターを用いた。試料として、天然HCV GT1aおよびGT4a試料のいずれかを用い、そして各々10複製物で試験するか、またはHCVの5’非翻訳領域の転写物を4~6倍複製物で試験した。複製物に渡る平均値および標準偏差をグラフに示す。
【0096】
最初の実験において、標準GT1aに相当するHCV転写物およびプローブ領域におけるミスマッチ単離体に相当する転写物を用いて、プローブ配列番号1~5を評価した。配列番号2、3、4および5が最高の初期成績を示した。配列番号3および4を、さらに設計したプローブ配列番号7および8と一緒に、さらに評価した。配列番号8は、すべての実験において、最高の成績を示した。HCV遺伝子型1aの対照転写物およびアンプリコンのプローブ結合領域において天然存在突然変異を持つ転写物に相当する、9つの異なる転写物を用いた最終評価によって、第二のプローブを添加すると、ミスマッチを所持する転写物に関して、観察される力価が、最大>100倍に有意に増加することが立証された。
【0097】
実施例1:
試料物質:
標準的HCV試料に相当するHCVサブタイプ1a、および標準プローブ結合領域において配列変動が存在しうるHCV試料に相当するHCVサブタイプ4aのHCV患者試料を試験して、マスターミックスに第二のプローブを添加した影響を調べた。HCV GT1aコンセンサス配列に相当するHCV RNA転写物、およびアンプリコン領域における天然存在HCV単離体の5’非翻訳領域の転写物を、異なる第二のプローブを評価するのに用いた。
【0098】
核酸抽出:
反応あたり患者血漿試料物質1mlを、核酸抽出に用いた。転写物を用いる場合、約500cp/ml(図2、3aおよび3bに示す実験のため)または約50000cp/ml(図4a、4bおよび5に示す実験のため)をチオシアン酸グアニジン含有緩衝液に添加して、RNアーゼを不活性化して、そして次いで1mlを通常の試料と同じ方式でプロセシングした。患者試料の5~10複製物および転写物試料の4~6複製物のいくつかを、各実験で試験した。
【0099】
核酸抽出法は最先端であり、そして当業者に知られる(例えばSambrookら, 第2版 1989, 第1~3部, Molecular Cloning - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー; Oligonucleotide Synthesis(M.J. Gait監修, 1984)。あるいは、商業的に入手可能な核酸抽出キット、すなわち高純度ウイルス核酸キット(Roche Diagnostics)またはcobas(登録商標)AmpliPrep総核酸単離キット(TNAI)(Roche Diagnostics)を用いてもよい。
【0100】
本明細書記載の実験において、核酸抽出は、cobas(登録商標)AmpliPrep総核酸単離キット(TNAI)(Roche Diagnostics)に基づいた。標本調製試薬は、磁気ガラス粒子懸濁物、溶解試薬、プロテアーゼ試薬、溶出緩衝剤および洗浄試薬からなる。定量化標準RNAを核酸抽出前に標本に添加した。プロテアーゼおよびカオトロピック溶解/結合緩衝液とのインキュベーションによって、武装したHCV粒子および定量化標準RNA武装粒子を溶解し、該緩衝液は、核酸を放出させ、そして放出されたHCV RNAを、血清または血漿中のRNアーゼから保護する。続いて、HCV RNAおよび定量化標準RNAを磁気ガラス粒子に結合させる。磁気粒子を洗浄することによって、未結合物質、例えば塩、タンパク質および他の細胞不純物を除去する。吸着された核酸を、水性緩衝液中、上昇した温度で溶出させる。
【0101】
PCR反応混合物:
評価したマスターミックスは、異なるプローブを補充した参照マスターミックスRL1.1からなった。参照マスターミックスRL1.1を大量に調製した。図2~6に明記するように、各実験のため、このマスターミックスに、さらなる10または50%の標準プローブ配列番号6を、あるいは、評価しようとするさらなる10%または50%の個々の第二のプローブを補充した。
マスターミックス組成RL1.1:
【0102】
【表1】
【0103】
各実験において、異なる第二のプローブ;図6のデータを得るため、実験において異なる濃度
§アプタマーは、短い一本鎖DNAまたはRNAオリゴヌクレオチド(25~70塩基)であり、三次元構造を通じて、特定の分子(すなわちタンパク質、ZO5)に結合する(例えばC. TuerkおよびL. Gold: Systematic evolution of ligands by exponential enrichment: RNA ligands to bacteriophage T4 DNA polymerase, Science, volume 249, 1990, p. 505-510を参照されたい)。
【0104】
50μLの核酸含有溶出物を、PCR試験管中、35μLマスターミックスおよび18mM酢酸マンガン15μLに添加して、そしてcobas(登録商標)TaqMan(登録商標)48分析装置上に装填した。
【0105】
PCR反応:
以下の熱サイクリング工程を適用した。
【0106】
【表2】
【0107】
データ分析:
cobas(登録商標)TaqMan(登録商標)の結果として得た、試料の複製物に渡る、力価、ct値または相対蛍光指数(RFI)を平均し、そして平均値と標準偏差を、図2~5に示すように、棒グラフとしてプロットした。プローブの陽性の影響を、i)参照マスターミックスに対する力価増加、またii)参照マスターミックスに対するRFI増加を伴うct値の減少のいずれかによって評価した。
【0108】
実施例2:
本明細書に提示する実験をまた、以下のように行ってもよい:商業的に入手可能なcobas(登録商標)AmpliPrep/cobas(登録商標)TaqMan(登録商標)HCV試験(Rocheによって製造)を、患者および転写物試料からHCV RNAを抽出するために用いる。cobas(登録商標)AmpliPrep装置を用いて、標本調製を自動化し、そしてcobas(登録商標)TaqMan(登録商標)分析装置またはcobas(登録商標)TaqMan(登録商標)48分析装置を用いて、増幅/検出を自動化する。試験は3つの主なプロセスに基づく:(1)ヒトEDTA血漿または血清およびcobas(登録商標)AmpliPrep装置上の二次試験管中で提供される対照からRNAを単離する標本調製;(2)相補DNA(cDNA)を生成するためのターゲットRNAおよび定量化標準/内部対照RNAの逆転写、ならびに(3)ターゲットおよび定量化標準/内部対照に特異的な二重標識検出プローブの切断による、生成されたアンプリコンのcobas(登録商標)TaqMan(登録商標)分析装置上での同時検出を伴う、ターゲットcDNAおよび定量化標準/内部対照cDNAのPCR増幅。
【0109】
標本調製試薬は、磁気ガラス粒子懸濁物、溶解試薬、プロテアーゼ試薬、溶出緩衝液および洗浄試薬からなる。プロテアーゼおよびカオトロピック溶解/結合緩衝液とのインキュベーションによって、HCV粒子、ならびに定量化標準/内部対照粒子を溶解し、該緩衝液は、核酸を放出させ、そして放出されたHCV RNAを、血清または血漿中のRNアーゼから保護する。続いて、HCV RNAおよび定量化標準RNAを磁気ガラス粒子に結合させる。磁気粒子を洗浄することによって、未結合物質、例えば塩、タンパク質および他の細胞不純物を除去する。吸着された核酸を、水性緩衝液を用い、上昇した温度で溶出させる。標本または対照溶出物をマスターミックスに添加し、そして増幅および検出のため、cobas(登録商標)TaqMan(登録商標)分析装置またはcobas(登録商標)TaqMan(登録商標)48分析装置に移した。
【0110】
本明細書に提示する実験に関して、cobas(登録商標)AmpliPrep/cobas(登録商標)TaqMan(登録商標)HCV試験マスターミックスを、以下の表にしたがったマスターミックスによって、そしてさらに、以下に提供する情報にしたがって、異なる第二のプローブを添加することによって、置き換える。cobas(登録商標)AmpliPrep装置上で、修飾マスターミックスを含む試薬カセットを用いる。マスターミックスは、HCV RNAおよび定量化標準/内部対照RNAの両方に特異的なプライマーおよびプローブ対を含有する。プライマー結合部位は、HCVターゲットおよび定量化標準/内部対照によって共有される。プライマーおよびターゲットプローブは、HCVゲノムの5’非翻訳領域の非常に保存される部分に位置する。ターゲット特異的および定量化標準特異的二重標識オリゴヌクレオチドプローブを用いて、HCVターゲットおよび定量化標準の検出を行い、これによって、HCVターゲットアンプリコンおよびHCV定量化標準アンプリコンの独立の同定が可能になる。HCV定量化標準は、既知のコピー数で、cobas(登録商標)AmpliPrepによって、自動的に各標本に添加され、そして全標本調製、逆転写、増幅および検出工程を通じて、HCVターゲットとともに持ち越される。力価決定を可能にするためには、定量化標準は、HCVターゲット陰性および陽性標本において、陽性シグナルを生じなければならない。部分的に抑制されたかまたは阻害された反応において、定量化標準は、ターゲットと同様に影響を受け、そしてしたがって正しい力価決定が可能になる。最後に、定量化標準は、阻害効果に関して、HCVターゲット陰性反応を監視するが、かなり高い濃度であるため、監視は厳しくない。
マスターミックス組成RL1.1:
【0111】
【表3】
【0112】
各実験において、異なる第二のプローブ;図6のデータを得るため、実験における異なる濃度
§アプタマーは、短い一本鎖DNAまたはRNAオリゴヌクレオチド(25~70塩基)であり、三次元構造を通じて、特定の分子(すなわちタンパク質、ZO5)に結合する(例えばC. TuerkおよびL. Gold: Systematic evolution of ligands by exponential enrichment: RNA ligands to bacteriophage T4 DNA polymerase, Science, volume 249, 1990, p. 505-510を参照されたい)。
【0113】
第二のプローブを含まない参照マスターミックスRL1.1を大量に調製する。各実験のため、この参照マスターミックスに、図に示すようなさらなるプローブを補充する。これらの補充されたマスターミックス変動で試薬カセットを満たし、そしてcobas(登録商標)AmpliPrep上に装填する。
【0114】
データ分析:
cobas(登録商標)TaqMan(登録商標)の結果として得た、試料の複製物に渡る、力価、ct値または相対蛍光指数(RFI)を平均し、そして平均値と標準偏差を、図2~5に示すように、棒グラフとしてプロットする。プローブの陽性の影響を、i)参照マスターミックスに対する力価増加、またはii)参照マスターミックスに対するRFI増加を伴うct値の減少のいずれかによって評価する。
【0115】
結果:
1.配列番号8が全体で最高の結果を達成した。9つの異なる転写物を用いた評価において、GT1aに関する1つの参照転写物および配列番号6のプローブ結合領域に突然変異を含む8つの転写物を用いた評価において、すべての突然変異転写物に関して、最大で100倍の力価増加が観察された。プローブ配列番号8は、標準プローブ配列番号6と重複せず、そして反対の鎖上に位置する。
【0116】
2.配列番号8の添加に関する濃度最適化実験によって、RL1.1中の標準プローブ配列番号6の濃度に比較して、50%の第二のプローブを添加すると、低ct値および高RFI値に関して、最高の結果が示された。
【0117】
3.配列番号2、3、4、および5は、初期有望結果を示した。突然変異転写物の力価増加は、したがって、同じ鎖上または反対の鎖上で、標準プローブに非常に近い、部分的に重複する、あるいは同じまたは反対の鎖上の非重複プローブである、第二のプローブを添加することによって得られることが可能である。
【0118】
-配列番号2は、標準プローブ配列番号6と重複し、そして反対側の鎖上に位置する。
-配列番号3は、配列番号6と同じ鎖上に位置し、標準プローブ配列番号6に関して1塩基対離れている。
【0119】
-配列番号4、7および8は標準プローブ配列番号6と重複せず、そして反対側の鎖上に位置する。
-配列番号5は、標準プローブ配列番号6と類似であるが、配列番号6によって含まれない突然変異を所持する。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
【配列表】
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