(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ファンモータ装置およびファンモータ装置の保護カバー
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20220715BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K9/06 F
(21)【出願番号】P 2018045435
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 晴久
(72)【発明者】
【氏名】山崎 嘉久
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-040934(JP,A)
【文献】特開2015-139225(JP,A)
【文献】実開昭63-054893(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0363296(US,A1)
【文献】特開平08-317589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00-5/26
H02K 9/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フ
ァンモータ装置であって、
羽根と、
前記羽根が取り付けられるハブと、
前記羽根及び前記ハブと一体成型され回転軸に固定されるロータと、
前記ロータの吸気口端面である天面の露出面を覆い、製造工程中においては前記ロータに対し着脱可能であり、最終製品において前記ロータと固定される保護カバーと、
前記保護カバーの一部を構成し、前記ロータの天面の空気穴を塞ぐ位置に配置される蓋部と
を有することを特徴とするファンモータ装置。
【請求項2】
前記蓋部は、
前記保護カバーを前記回転軸に固定するための固定孔部を有し、前記吸気口は、前記固定孔部から前記蓋部に向けて外方に向けて放射状に形成されていることを特徴とする請求項
1に記載のファンモータ装置。
【請求項3】
前記ロータの吸気側の前面に設けられる羽根の回転に関するバランスを修正するバランス修正穴を有し、
前記保護カバーの外周部が、前記バランス修正穴の内壁を兼ねることを特徴とする請求項1
又は2に記載のファンモータ装置。
【請求項4】
前記保護カバーの天面には、
前記ハブ
の内周に沿って前記吸気口が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のファンモータ装置。
【請求項5】
前記吸気口は、前記天面の板状部を下方に傾斜させた形状である請求項
4に記載のファンモータ装置。
【請求項6】
フ
ァンモータ装置の保護カバーであって、
前記ファンモータ装置は、
前記羽根が取り付けられるハブと、
前記ハブの内面に形成され前記羽根と一体成型され回転軸に固定されるロータと
を備え、
前記保護カバーは、前記ロー
タの吸気口端面である天面の露出面を覆うように構成されると共に、前記ロータの天面の空気穴を防ぐ位置に配置される蓋部を備えると共に、前記蓋部に吸気口を有することを特徴とする保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンモータ装置およびファンモータ装置の保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ファンモータ装置においては、樹脂性ファンモールドはロータを覆う形状となっている。ファンモータ装置の天面には、モータの自己冷却を促す目的で空気穴が設けられている。さらに、ファンモータ装置の天面には、バランス修正用のウェイト挿入穴が設けられている。このようなファンモールドをロータに接着固定することにより、羽根が組立てられている。
【0003】
近年のファンモータ装置への要求性能の高まりから、羽根の回転速度は増大する傾向にある。さらに、ファンモータ装置の信頼性の高さなども求められている。ファンモータ装置の信頼性を高める方法の一つとして、ファンモールドとロータの一体成形技術(インサート成形)が用いられている。この一体成形技術においては、金型にロータをセットした状態でファンモールドを成形する(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4542479号公報
【文献】特開2015-139225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファンモータ装置の特性を向上するには、モータ内部温度を低減する必要がある。例えば、
図6(a)(斜視図)、
図6(b)(回転軸に沿って切断した場合の側断面図)に示すように、羽根103が接着されたハブ115を形成し、回転軸117に固定された例えば略断面L字状のロータ114の外側にハブ115を組み付けるファンモータ装置Xの構造が知られている。ロータ114の内面にはマグネット113が配置されている。
【0006】
上記の構造において、ハブ115の前面115aの開口115bから、ロータ114のブッシュ118を避けた領域に空気取り込み口114aを設け、外部からモータ内部へ空気を取り込む流路L101を形成することができる。
【0007】
しかしながら、上記の
図6(a),(b)に示す構造のファンモータ装置Xにおいて、高回転化に対応するためには、羽根103の強度の向上が必要となる。例えば、
図7に示すように、羽根103とハブ115との一体成形部をロータ114と一体成形することで、羽根103の強度を向上させることが可能である。
【0008】
図7(a)は、
図6(a)に対応し、羽根103とハブ115との一体成形品に、さらに、ロータ114を一体成形した構造を示す斜視図であり、
図7(b)は、
図6(b)に対応する側断面図である。
このようにすると、上記のように、高回転化に対応できる。
【0009】
しかしながら、
図7(a),(b)に示すように、ロータ114に羽根103とハブ115との成形品を一体成形した構造のファンモータ装置Yにおいては、ロータ114の空気取り込み口114aがハブ115の前面115aの開口115bから外部に露出した状態となる。これにより、モータ内部に空気が入り易くなるものの(流路L103)、異物も進入しやすくなる等の新たな問題が生じる。
【0010】
図7(a),(b)に示す構造において、ロータ114の天面にも樹脂材を補給して羽根103との一体成形を行えば、天面側の空気取り込み口114aからの異物の進入を防止することができる。しかしながら、このようにすると、モータ内部への空気の流路を遮断することにもなってしまうため、モータにおける発熱を抑えにくくなるという問題もある。
【0011】
本発明は、ファンモータ装置の異物侵入の抑制と内部冷却効率の向上とを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一観点によれば、羽根と一体成型され回転軸に固定されたロータを有するファンモータ装置であって、前記ロータの吸気口側端面である前記ロータの天面の露出面を覆う蓋部を備えるとともに、前記蓋部に空気を取り込む吸気口を備えた保護カバーを有することを特徴とするファンモータ装置が提供される。これにより、ロータ内部まで空気流路を確保しながら、異物の侵入を防止することができる。
【0013】
前記蓋部は、前記ロータの天面の空気穴を塞ぐ位置に配置されることを特徴とする。
前記蓋部は、前記保護カバーを前記回転軸に固定するための固定孔部を有し、前記吸気口は、前記固定孔部から前記蓋部に向けて外方に向けて放射状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
前記ロータの吸気側の前面に設けられる羽根の回転に関するバランスを修正するバランス修正穴を有し、前記保護カバーの外周部が、前記バランス修正穴の内壁を兼ねることを特徴とする。
前記保護カバーの天面には、ハブの前面の内周に沿って前記吸気口が形成されているようにしても良い。
前記吸気口は、前記天面の板状部を下方に傾斜させた形状であっても良い。
【0015】
また、本発明は、回転軸に固定されたロータと一体成型された羽根を有するファンモータ装置の保護カバーであって、前記ロータの吸気口側端面である天面の露出面を覆う蓋部を備えるとともに、前記蓋部に吸気口を有することを特徴とする保護カバーである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ファンモータ装置の異物侵入の抑制と内部冷却効率の向上とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態によるファンモータ装置の一構成例を示す斜視図であり、
図1(b)は、側断面図である。
【
図2】本実施の形態によるファンモータ装置のロータキャップの一構成例を示す斜視図であり、
図2(a)は表面側から見た斜視図、
図2(b)は裏面側から見た斜視図である。
【
図3】
図3は本実施の形態によるファンモータ装置の一構成例を示す斜視図であり、バランス修正穴を小さくした例を示す図である。
【
図4】
図4は
図3の構成よりもバランス修正穴を大きくした例を示す斜視面図である。
【
図5A】
図5A(a)は、本発明の第2の実施の形態によるファンモータ装置の一構成例を示す斜視図であり、
図5A(b)は、ロータキャップの通気孔の側断面図である。
【
図5B】本実施の形態によるファンモータ装置のロータキャップの一構成例を示す斜視図であり、
図5B(a)は表面側から見た斜視図、
図5B(b)は裏面側から見た斜視図である。
【
図6】ロータに、羽根が接着されたハブを取り付け、ロータの内面に空気取り込み口を設け、外部からモータ内部へ空気を取り込む構造のファンモータの一例を示す図であり、
図6(a)は斜視図、
図6(b)は側断面図である。
【
図7】
図7(a)は、
図6(a)に示す構造において、羽根とハブとの成形品をロータと一体成形した構造のファンモータの一例を示す斜視図であり、
図7(b)は、
図6(b)に示す構造において、羽根をロータと一体成形した構造のファンモータの一例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、「保護カバー」との名称を付している部材は、「カバー」、「保護キャップ」などとも呼称され、呼称によって部材が限定されるものではない。
【0019】
以下、本発明の一実施の形態によるファンモータ装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態によるファンモータ装置の一構成例を示す図であり、斜視図である。
図1(b)は、本実施の形態によるファンモータ装置の一構成例を示す回転軸に沿って切断した場合の側断面図である。
図1の左側が例えば吸気側AR1である。
図2は、本実施の形態によるファンモータ装置に用いる保護カバー(ロータキャップ)の一構成例を示す斜視図であり、
図2(a)は表面側から見た斜視図、
図2(b)は裏面側から見た斜視図である。
【0021】
本実施の形態によるファンモータ装置Aにおいては、羽根(ブレード)3が取り付けられるハブ5と、ハブ5の内面に形成され、回転軸17に固定された例えば略断面L字状であって一体物として形成され、回転軸17の先端方向から見た場合にカップ形状をしているロータ14と、その内面に一体物として形成されたマグネット13とを有する。ロータ14は回転軸17とロータブッシュ18により接続されている。尚、
図1(a),(b)では、回転子や固定子は図示を省略している。
【0022】
そして、ロータ14の吸気口側端面である天面には、その露出面を覆う保護カバー21が取り付けられている。保護カバー21は、例えば円板形状で蓋状の部材(蓋部)23を備えている。蓋部23の例えば中心部には、保護カバー21を回転軸17に固定するための固定孔部25が形成されている。さらに、蓋部23は、例えば、固定孔部25から蓋部23に向けて放射状に形成された単一又は複数の孔部(吸気口)31を有する。吸気口31は、固定孔部25から蓋部23の外周方向に向けて延びる複数の支持部33により複数に区画されている。
【0023】
支持部33は、固定孔部25から蓋部23の外周方向に向けて径方向に傾斜している。支持部33は、円周方向に平行に配置されていても良い。
【0024】
ロータ14の吸気口側端面である天面には露出面の空気穴14aが形成されている。そして、保護カバー21は、その蓋部23により、ロータ14の露出面の空気穴14aを前面側から覆う形状となっている。
【0025】
保護カバー21は、蓋部23により、ロータ14の天面の空気穴14aを隠し、異物の進入を防ぐ。また保護カバー21の中央部には吸気口31を設け、この吸気口31とロータ14の天面の空気穴14aの間に空気の流路が出来るようにキャップ形状を工夫している。これによりファンモータ装置Aの内部冷却が可能である。保護カバー21に、複数の吸気口31を設けることで、ロータ14内部まで空気が入りやすいようにする空気流路L1を確保することができる。
【0026】
保護カバー21は、ロータ14と、例えば製造工程中においては着脱可能である。但し、最終製品においては、保護カバー21は、ロータ14と固定されている。
【0027】
このように、本実施の形態では、ロータ14の天面を露出させた状態で一体成形したハブに加えて、ロータ14の天面を覆う保護カバー21を新たに設けた。
【0028】
以上のように、空気取り込み口を備えた円盤状の保護カバー21を羽根3と一体成形したロータ14に取り付けることにより、空気の流路を確保しながら異物の進入を防ぐことが可能となる。
【0029】
図3,
図4は、本実施の形態によるファンモータ装置の一構成例を示す斜視図であり、ハブ5の吸気側の前面41に設けられる羽根の回転に関するバランスを修正するバランス修正穴43について説明する図である。
【0030】
図3に示すように、バランス修正穴43を前面41の領域内に限って形成しようとするとスペースが限られるため、バランス修正穴43の大きさが小さくなり(符号43a)、バランス修正穴43の容積を十分に確保することが難しい。そこで、
図4に示すように、空気取り込み口を備えた円盤状の保護カバー21を羽根3と一体成形のロータ14に取り付け、円盤状の保護カバー21の外周部21xがハブ5の前面41において羽根3のバランス修正穴43bを形成する内壁を兼ねる構造にする。
【0031】
図4に示す構造では、保護カバー21の外周部21xをバランス修正穴43bの大きさを画定するための内側の境界線とすることにより、すなわち、保護カバー21の外周部21xがバランス修正穴43bの内壁を兼ねることで、バランス修正用穴のサイズ(径方向の幅)を大きくすることができる。従って、ファンモータ装置における低振動化が可能となる。
【0032】
本実施の形態による保護カバーでは、ブッシュの周囲に通気孔を配置しており、異物の侵入防止に重点をおいた構造である。
【0033】
(第2の実施の形態)
図5Aは、本発明の第2の実施の形態によるファンモータ装置の一構成例を示す斜視図である。
図5Bは、本実施の形態によるファンモータ装置に用いる保護カバー(ロータキャップ)の一構成例を示す斜視図であり、
図5B(a)は表面側から見た斜視図、
図5B(b)は裏面側から見た斜視図である。
図5Aに示す本実施の形態によるファンモータ装置Bにおいては、保護カバーの構造が第1の実施の形態と異なっている。以下においては、本実施の形態の保護カバーの構造について説明する。
【0034】
図5A(a)及び
図5B(a),(b)に示すように、本実施の形態による保護カバー51の天面53にはハブ5の前面41の内周に沿って複数の孔部(吸気口)61が形成されている。
図5A(b)及び
図5B(a),(b)に示すように、吸気口61は、例えば、天面53の板状部61aを下方に傾斜させた形状とすることができる。また、第1の実施の形態と同様に、円盤状の保護カバー51の蓋部23の外側部51xが羽根3のバランス修正用穴73の一部、ここでは、内側の側面を兼ねる構造にすることで、バランス修正用穴のサイズを大きくすることができるため低振動化・生産性向上が可能となる。
【0035】
本実施の形態による保護カバーは、天面に吸気口を放射状に配置した構造である。通気量をより大きくすることができ、内部の冷却効率の向上により適している。
【0036】
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0037】
例えば、保護カバーの形状は、円盤状に限定されるものではない。また、吸気口の形状や配置は任意である。
【0038】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、ファンモータ装置の固定構造に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
A,B ファンモータ装置
3 羽根
5 ハブ
14 ロータ
14a 空気穴
17 回転軸
18 ロータブッシュ
21 保護カバー
21x 外周部
23 蓋部
25 固定孔部
31、61 吸気口
41 前面
43 バランス修正穴
53 天面
73 バランス修正用穴