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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】放射線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20220715BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20220715BHJP
   G01N 23/046 20180101ALN20220715BHJP
   G01T 1/20 20060101ALN20220715BHJP
【FI】
G01N23/04
G01T7/00 B
G01T7/00 C
G01N23/046
G01T1/20 G
G01T1/20 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018057431
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019168376
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】大門 弘典
(72)【発明者】
【氏名】長野 雅実
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆一
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-255281(JP,A)
【文献】特開2003-260053(JP,A)
【文献】特開2006-263052(JP,A)
【文献】特開2009-201736(JP,A)
【文献】特開平05-005965(JP,A)
【文献】登録実用新案第3023206(JP,U)
【文献】特開2002-257939(JP,A)
【文献】特開2012-254220(JP,A)
【文献】特開2013-248091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0072149(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01T 7/00
G01T 1/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線ビームを照射する放射線源と、
前記放射線ビームの照射範囲に被検体を載置可能なステージと、
前記ステージを挟んで前記放射線源とは反対側に位置し、前記被検体を透過した放射線を検出する検出器と、
前記検出器を前記放射線ビームの光軸と平行な方向に沿って移動させる移動機構と、
放射線吸収箔を有し、当該放射線吸収箔の間隔及び勾配が異なる複数のグリッドと、
前記放射線源の焦点と前記検出器との距離である検出距離に応じた前記グリッドを前記検出器の前記放射線源側の前面に位置させるグリッド交換部と、
を備え
前記グリッド交換部は、前記グリッドを固定するホルダであり、固定ツメを有すること、
を特徴とする放射線検査装置。
【請求項2】
放射線ビームを照射する放射線源と、
前記放射線ビームの照射範囲に被検体を載置可能なステージと、
前記ステージを挟んで前記放射線源とは反対側に位置し、前記被検体を透過した放射線を検出する検出器と、
前記検出器を前記放射線ビームの光軸と平行な方向に沿って移動させる移動機構と、
放射線吸収箔を有し、当該放射線吸収箔の間隔及び勾配が異なる複数のグリッドと、
前記放射線源の焦点と前記検出器との距離である検出距離に応じた前記グリッドを前記検出器の前記放射線源側の前面に位置させるグリッド交換部と、
前記グリッドの使用距離限界範囲と前記グリッドとが対応したデータベースが記憶されたデータベース記憶部と、
前記データベースに基づいて前記検出距離がいずれの前記使用距離限界範囲に入るかを判定し、該当する前記使用距離限界範囲の前記グリッドを特定するグリッド判定部と、
を備え
各グリッドは、前記使用距離限界範囲は重複せず、
前記データベース記憶部は各グリッドの使用距離限界範囲の最小値と最大値を区切って記憶しており、
前記グリッド交換部は、前記検出距離に対応した前記グリッドを前記前面に位置させるグリッド切替機構であり、
前記グリッド切替機構は、前記グリッド判定部の結果で特定される前記グリッドを前記検出器の前記前面に位置させること、
を特徴とする放射線検査装置。
【請求項3】
前記検出距離の入力を受け付ける検出距離入力部を備え、
前記グリッド判定部は、
前記検出距離入力部から入力された前記検出距離に基づいて前記グリッドを特定すること、
を特徴とする請求項記載の放射線検査装置。
【請求項4】
前記グリッドを退避させる退避機構を備えること、
を特徴とする請求項2又は3記載の放射線検査装置。
【請求項5】
前記検出器から得た前記被検体の透過データを画像化する処理装置と、
前記検出距離及び前記グリッドの有無情報に応じた校正データが記憶された校正データ記憶部と、
を備え、
前記処理装置は、
前記検出距離及び前記グリッドの有無情報に応じた前記校正データにより前記透過データを校正する校正部を有すること、
を特徴とする請求項乃至の何れか記載の放射線検査装置。
【請求項6】
校正データを取得する校正データ取得部を備え、
前記校正データ取得部は、前記グリッドの有無情報と前記検出距離とを取得し、取得し
た前記校正データと、前記グリッドの有無情報及び前記検出距離とを対応付けて前記校正データ記憶部に記憶させること、
を特徴とする請求項記載の放射線検査装置。
【請求項7】
前記校正データは、ゲイン校正、オフセット校正、又は線質硬化校正のデータであること、
を特徴とする請求項又は記載の放射線検査装置。
【請求項8】
前記放射線ビームの光軸に対して直交する方向に前記検出器を移動させるシフト機構を備え、
前記グリッドの幅は、前記検出器の幅よりも大きく、
前記シフト機構は、前記グリッドに沿って前記検出器を移動させること、
を特徴とする請求項1乃至の何れか記載の放射線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線で代表される放射線を放射線源から被検体に照射し、被検体を透過することによって減弱した放射線の二次元分布を検出器により検出して画像化することで、被検体の非破壊検査を行う放射線検査装置が知られている。
【0003】
被検体に放射線を照射すると、被検体内での反射により被検体外に散乱することで散乱放射線が生じる。この散乱放射線が検出器で検出されると、放射線がコントラストが低減した透過画像になってしまう。そこで、散乱放射線を吸収するグリッドを検出器の受光面に設置することが従来から行われている。
グリッドは、スリット状又は格子状に配列された短冊状の吸収箔を有する。吸収箔は、散乱放射線が吸収されやすい鉛、モリブデン合金などの材料からなる。吸収箔は、放射線源の焦点に向けて勾配している。すなわち、放射線ビームの光軸に対する焦点と検出器の検出素子とで成す直線と同角度に勾配している。そのため、放射線ビームが照射されると、焦点と検出器の検出素子との直線上のスペーサを透過して検出器に入射し、一方、被検体内で反射した散乱放射線が吸収箔により吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-56272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このグリッドには、使用できる使用距離限界範囲がそれぞれ設けられている。言い換えると、検出器の幅、グリッドの高さ、吸収箔の間隔、入射効率を示す係数、焦点と検出器との距離である検出距離FDDで定まる使用距離限界の間に収まる必要がある。そのため、あるグリッドの使用距離限界範囲を超えて検出器を移動させた場合、検出距離がこのグリッドの使用距離限界範囲を逸脱し、多くの放射線が吸収箔で吸収されてしまうので、検出器への放射線の入射量が激減し、透視画像のコントラストが低減してしまう。
【0006】
本実施形態は、上述の課題を解決すべく、検出距離が変動してもコントラストの良好な透視画像を得ることのできる放射線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本実施形態に係る放射線検査装置は、放射線ビームを照射する放射線源と、前記放射線ビームの照射範囲に被検体を載置可能なステージと、前記ステージを挟んで前記放射線源とは反対側に位置し、前記被検体を透過した放射線を検出する検出器と、前記検出器を前記放射線ビームの光軸と平行な方向に沿って移動させる移動機構と、放射線吸収箔を有し、当該放射線吸収箔の間隔及び勾配が異なる複数のグリッドと、前記放射線源の焦点と前記検出器との距離である検出距離に応じた前記グリッドを前記検出器の前記放射線源側の前面に位置させるグリッド交換部と、を備え、前記グリッド交換部は、前記グリッドを固定するホルダであ、固定ツメを有すること、を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る放射線検査装置の構成の一例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図を示す。
図2】グリッドの構成の一例を示す断面図である。
図3】吸収箔の間隔及び勾配が異なるグリッドの構成を示す断面図である。
図4】グリッド交換部の構成の一例を示す図である。
図5】第2の実施形態に係る放射線検査装置の構成の一例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図を示す。
図6】放射線源側から見たグリッド交換部及び検出器3の図である。
図7】ゲイン補正について説明するための図である。
図8】第1の実施形態に係る放射線検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図9】第3の実施形態に係る放射線検査装置の構成の一例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図を示す。
図10】第3の実施形態に係る放射線検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図11】第4の実施形態に係る放射線検査装置の構成の一例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図を示す。
図12】第4の実施形態に係る放射線検査装置の校正データの登録動作の一例を示すフローチャートである。
図13】第4の実施形態に係る放射線検査装置の校正動作の一例を示すフローチャートである。
図14】第5の実施形態に係る放射線検査装置の構成の一例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図を示す。
図15】グリッドと検出器の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る放射線検査装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
(構成)
図1は、本実施形態に係る放射線検査装置の構成の一例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図を示す。放射線検査装置は、被検体1に放射線を照射し、被検体1を透過した放射線を検出し、検出結果によって被検体1内の透視画像を形成する。この放射線検査装置は、放射線源2、検出器3、ステージ4、処理装置7、表示装置8、グリッド10及びグリッド交換部9を備える。
【0011】
放射線源2は放射線ビーム22を照射する。放射線は例えばX線である。放射線ビーム22は、焦点21を頂点とし、光軸CLを中心軸とした円錐形状に拡大する放射線の束である。この放射線源2は例えばX線管である。代表的なX線管は、真空内にフィラメントとタングステン等のターゲットとを対向させている。フィラメントは電子を照射し、その電子は、フィラメントとターゲット間の管電圧によって加速され、ターゲットに向かって進み、ターゲットに当たってX線を照射する。この電子の流れが管電流であり、管電流はこの電子の流れと反対向きである。
【0012】
ステージ4は、被検体1の載置台である。このステージ4は、被検体1を載置する載置面を有し、載置面が放射線ビーム22の光軸CLと平行に拡がり、載置面の上方を放射線ビーム22の光軸CLが通過するように延在する。即ち、ステージ4は、被検体1を放射線ビーム22の照射範囲に位置させる。
【0013】
検出器3は、放射線源2の焦点21と対向して配置され、ステージ4を挟んで放射線源2とは反対側に位置する。この検出器3は、被検体1内の放射線の透過経路に応じて減弱した放射線強度の二次元分布を検出する。例えば、この検出器3は、フラットパネルディテクタ(FPD)であり、放射線の検出素子を二次元状に拡がる面に並べて有する。各検出素子は、シンチレータ面とフォトダイオードを有する。シンチレータ面は、放射線に励起されると発光するヨウ化セシウム等により成る。フォトダイオードは、シンチレータ面の蛍光像を電荷に変換して蓄積し、TFTスイッチにON信号を与えられると、蓄積されていた電荷を出力する。
【0014】
グリッド10は、検出器3の前面に配置される。検出器3の前面は、検出器3の放射線源2側の放射線受光面である。グリッド10は、放射線源2と検出器3との間に介在して配置されるプレートであり、検出器3に入射する散乱放射線を減少させる。即ち、被検体1内で散乱し、焦点21と検出素子とを結ぶ透過経路から外れた散乱放射線を吸収する。このグリッド10は、グリッド交換部9によって支持されている。グリッド交換部9は、グリッド10を検出器3の前面に位置させるホルダである。
【0015】
処理装置7は、放射線検査装置の各部を制御するとともに、放射線源制御部70aと画像処理部70bを備え、放射線ビーム22を制御し、検出器3からの透過データから被検体1の透過画像を生成する。この処理装置7は、所謂コンピュータ及び当該コンピュータと信号線で接続されたドライバ回路であり、コンピュータ部分はCPU、HDD又はSSDといったストレージ、RAMで構成される。ストレージはプログラムを記憶し、RAMはプログラムが展開され、またデータが一時的に記憶され、CPUはプログラムを処理し、ドライバ回路は、例えばモータドライバであり、CPUの処理結果に従って各部に電力を供給する。
【0016】
即ち、放射線源制御部70aは、CPU及びドライバ回路を含み構成され、放射線源2の管電圧等を制御し、放射線ビーム22を制御する。画像処理部70bは、CPUを含み構成され、検出器3からの透過データから被検体1の透過画像を生成する。そして、表示装置8は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといったモニタであり、検出器3からの透過データが処理装置7で画像化された画像を画面上に表示する。
【0017】
この放射線検査装置は、ステージ4及び検出器3の位置を変更し、被検体1の撮影倍率を変更する。撮影倍率は、放射線源2の焦点21から被検体1までの距離である撮影距離FCDと、放射線源2の焦点21から検出器3までの距離である検出距離FDDとの比(FDD/FCD)である。
【0018】
ステージ4はステージ移動機構5が備えられている。ステージ移動機構5により、ステージ4は放射線源2及び検出器3に対して位置可変である。また、検出器3は検出器移動機構6を備えている。検出器移動機構6により、検出器3は位置可変となっている。典型的には、ステージ移動機構5は、ステージ4を直線移動及び昇降させる。直線移動方向はX軸方向及びY軸方向である。X軸方向は、ステージ4の載置面に沿う一方向である。ここでは、X軸方向は、放射線ビーム22の光軸CLに沿った方向であり、放射線源2に接近又は離隔する方向である。Y軸方向は、ステージ4の載置面に沿い、X軸方向と直交する方向である。昇降方向はZ軸方向である。Z軸方向は、ステージ4の載置面と直交する高さ方向である。また、検出器移動機構6は、検出器3を放射線ビーム22の光軸CLと平行な方向、つまりX軸方向に沿って移動させる。
【0019】
これらステージ移動機構5及び検出器移動機構6は、例えばボールネジ機構を有する。ボールネジ機構は、位置固定のモータと、ネジが切られてモータにより回転するシャフトと、シャフトと螺合してステージ4と連結されたスライダとで構成される。ステージ移動機構5は、X軸方向にシャフトが延びるボールネジ機構、Y軸方向にシャフトが延びるボールネジ機構、及びZ軸方向にシャフトが延びるボールネジ機構を有し、検出器移動機構6は、X軸方向にシャフトが延びるボールネジ機構を有する。
【0020】
また、処理装置7は、ステージ移動機構5を制御する移動機構制御部70c、及び検出器移動機構6を制御する移動機構制御部70dを備える。移動機構制御部70c及び移動機構制御部70dは、CPU及びドライバ回路を含み構成される。すなわち、CPUにより、オペレータの指示に基づいてX軸、Y軸、Z軸方向又はZ軸周りの回転方向の移動量又は回転量を算出し、当該量に応じた制御信号を生成し、この制御信号に基づいてドライバ回路によりステージ移動機構5のモータを駆動させる。また、CPUにより、オペレータの指示に基づいてX軸方向の移動量を算出し、当該量に応じた制御信号を生成し、この制御信号に基づいてドライバ回路により検出器移動機構6のモータを駆動させる。
【0021】
例えば、処理装置7には、マウス、キーボード、操作ボタン等の入力装置77が信号線により接続されている。オペレータが入力装置77に移動方向及び移動量、若しくはFDD値又はFCD値を入力すると、移動機構制御部70c及び移動機構制御部70dは、入力内容に従った制御信号を生成し、モータ等を駆動させる。
【0022】
ここで、グリッド10について更に詳細に説明する。図2は、グリッド10の構成の一例を示す断面図である。図2に示すように、グリッド10は、スリット状又は格子状に配列された短冊状の吸収箔11と、吸収箔11間に介在し、スリット状又は格子状に配列された吸収箔11を保持するスペーサ12とによりプレート状に構成されている。吸収箔11は、散乱放射線が吸収されやすい鉛、モリブデン合金などの材料からなり、スペーサ12は、散乱放射線が吸収されにくいアルミニウム、紙、木、合成樹脂、炭素繊維強化樹脂等からなる。グリッド10としては、例えば集束グリッド、及び二枚の集束グリッド重ねたクロスグリッドなどを用いることができる。
【0023】
吸収箔11、スペーサ12は、プレート上に沿って交互に配列されており、吸収箔11が放射線源2の焦点21に向けて勾配している。すなわち、放射線ビーム22の光軸に対する焦点21と検出器3の検出素子Sとで成す直線と同角度に勾配している。例えば、グリッド10の中央部分の吸収箔11が放射線ビーム22の光軸に対して略平行であり、グリッド10の端にいくにつれて、放射線ビーム22の光軸に対する傾斜角度が大きくなっている。そのため、放射線ビーム22が照射されると、焦点21と検出器3の検出素子Sとの直線上のスペーサ12を透過して検出器3に入射し、一方、被検体1内で反射した散乱放射線が吸収箔11により吸収される。
【0024】
このようなグリッド10には、吸収箔11に固定された勾配があるので、焦点21と検出器3の検出素子との直線上に照射された放射線が検出素子で検出されるために、各グリッド10には、使用できる使用距離限界範囲がそれぞれ設けられている。言い換えると、検出器3の幅をDh、グリッド10の高さをGh、吸収箔11の間隔をDp、入射効率を示す係数をVとすると、焦点21と検出器3との距離である検出距離FDDが、式(1)及び式(2)で定まる使用距離限界f1、f2の間に収まる必要がある(f1<FDD<f2)。
【0025】
f1=FDD/(1-(FDD×V)/r×Dh/2) …(1)
f2=FDD/(1+(FDD×V)/r×Dh/2) …(2)
rはr=Gh/Dpである。
【0026】
そこで、この放射線検査装置は、図3の(a)から(c)に示すように、焦点21と検出器3との距離(以下、「検出距離」ともいう。)に応じて、吸収箔11の間隔及び勾配が異なる複数のグリッド10を有し、検出距離に応じたグリッド10がグリッド交換部9に備え付けられる。例えば、検出距離FDDが短い場合には、図3(a)に示すように、グリッド10の端にいくにつれて勾配が急になり、検出距離FDDが中程度の場合には、図3(b)に示すように、勾配が緩やかになり、検出距離FDDが長い場合には、図3(c)に示すように、勾配が更に緩やかになる。
【0027】
図4は、グリッド交換部9の構成の一例を示す図である。図4に示すように、本実施形態のグリッド交換部9は、グリッド10を固定するホルダであり、検出距離に応じたグリッド10を検出器3の前面に固定する固定ツメ91と、放射線を透過するフレーム92とで構成される。フレーム92は、例えばプラスチックからなる中空の四角形状の枠であり、検出器3の前面又は当該前面から所定距離離れた固定台に固定される。固定ツメ91は、例えば、グリッド10の外周縁を包含するように四角形の頂点の位置に、フレーム92に回動可能に軸支されており、検出器3の前面の領域内まで回動させることで、グリッド10の縁部を押さえて当該前面に対してグリッド10を固定し、また前面の領域外まで回動させることで、オペレータがグリッド10を取り外し可能となる。
【0028】
(作用効果)
オペレータは、入力装置77を用いて、検出距離、即ちFDD値を入力する。或いは、オペレータは、入力装置77を用いて検出器3を所定ピッチずつ放射線源2に接近又は離反させる方向の手動操作を入力する。処理装置7は、オペレータによる手動操作に対しては、表示装置8に検出距離を表示する。
【0029】
オペレータは、入力した検出距離又は表示装置8に表示された検出距離を確認し、検出距離に応じたグリッド10をグリッド交換部9に設置すればよい。確認した検出距離とグリッド交換部9に設置済みのグリッド10との関係が相違している場合には、オペレータは、確認した検出距離に応じたグリッド10をグリッド交換部9に置き換えればよい。
【0030】
このように、放射線検査装置は、放射線ビーム22を照射する放射線源2と、放射線ビーム22の照射範囲に被検体1を載置可能なステージ4と、ステージ4を挟んで放射線源2とは反対側に位置し、被検体1を透過した放射線を検出する検出器3と、検出器3を放射線ビーム22の光軸CLと平行な方向に沿って移動させる検出器移動機構6と、放射線吸収箔11を有し、当該放射線吸収箔11の間隔及び勾配が異なる複数のグリッド10と、放射線源2の焦点と検出器3との距離である検出距離に応じたグリッド10を検出器3の放射線源2側の前面に位置させるグリッド交換部9とを備えるようにした。
【0031】
これにより、検出距離が変動してもコントラストの良好な透視画像を得ることができる。特に、グリッド交換部9は、グリッド10を固定するホルダとしたことにより、オペレータが検出距離に応じたグリッド10を選択し、グリッド交換部9により選択したグリッド10を検出器3の前面に位置させることができるので、適切なグリッド10で散乱放射線を減少させることができ、コントラストの良好な透視画像を得ることができる。
【0032】
尚、この放射線検査装置は、投影像を表示する装置として説明したが、所謂CT装置であってもよい。CT装置である場合、放射線検査装置は、ステージ4を一回転又は半回転させる回転部と、各角度の投影データからボリュームデータを再構成し、ボリュームデータから断面像を再構成する再構成部とを備えるようにすればよい。また、放射線源2は、コリメータを有し、焦点21から出射する放射線をコーン角及びファン角を有する角錐形状に絞ってもよい。
【0033】
更に、この検出器3は、例えばイメージインテンシファイア(I.I.)とカメラ、又はフラットパネルディテクタ(FPD)により構成されるようにしてもよい。I.I.は、放射線に励起されると発光するヨウ化セシウム等により成るシンチレータ面を二次元状に拡げ、入射した放射線の二次元分布を蛍光像に変換しつつ、蛍光像の光度を増倍させる。カメラは、CCDやCMOS等の撮像素子を並設し、蛍光像を撮像する。FPDは、シンチレータ面に沿って例えばフォトダイオードとTFTスイッチを有する。フォトダイオードは、蛍光像を電荷に変換して蓄積し、TFTスイッチは、ON信号を与えられると、フォトダイオードに蓄積されていた電荷を出力させる。
【0034】
また、この検出器3は、放射線を検出する素子が一列に並べられた所謂ライン検出器であってもよく、素子の並び方向と直交する方向に、被検体1又は検出器3を相対的に移動させて二次元分布を検出する。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る放射線検査装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。第1の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0036】
図5は、第2の実施形態に係る放射線検査装置の構成の一例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図を示す。図6は、放射線源2側から見たグリッド交換部9及び検出器3の図である。
【0037】
図5に示すように、グリッド交換部9は、検出距離に対応した間隔及び勾配のグリッド10を自動で切り替えて検出器3の前面に位置させるグリッド切替機構93である。このグリッド切替機構93は、例えば、吸収箔11の間隔及び勾配が異なる複数のグリッド10を収容したマガジン93aと、マガジン93aを放射線ビーム22の光軸CLが延びるX軸方向にスライドさせるスライド機構93bと、マガジン93aのグリッド10を検出器3の前面へ送る送り機構93cとを有する。
【0038】
マガジン93aは、図5に示すように、グリッド10のプレート面を検出器3の受光面と平行にしてグリッド10を並列収容する棚を備えた収容体であり、各棚と当該棚に収容されるグリッド10とが対応している。このマガジン93aは、スライド機構93bに接続されている。スライド機構93bは、例えば、ボールネジ機構であり、位置固定のモータと、X軸方向に延び、ネジが切られてモータにより回転するシャフトと、シャフトと螺合してマガジン93aと連結されたスライダとで構成される。
【0039】
送り機構93cは、例えばベルトコンベアであり、図6に示すように、マガジン93aから検出器3まで上下に架橋された一対のベルト931を有し、上下のベルト931がグリッド10の上端及び下端に接触した状態で、モータの回転に従動してベルトが検出器3側に送られる。グリッド10は、走行するベルト931に挟持されながら、検出器3の前面に移動する。
【0040】
また、放射線検査装置は、検出距離入力部100、データベース記憶部71、グリッド判定部72を備える。データベース記憶部71及びグリッド判定部72は、処理装置7により備えられる。検出距離入力部100は、処理装置7に接続されており、検出距離の入力を受け付ける。検出距離入力部100は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル等のオペレータの入力を受け付ける入力装置77により構成される。
【0041】
データベース記憶部71は、ストレージを含み構成され、図7に示すように、グリッド10の使用距離限界範囲とグリッド10の識別子とが対応したデータベースが記憶されている。ここでは、各グリッド10の使用距離限界範囲は重複せず、使用距離限界範囲のうちの最小値と最大値でデータベース項目は区切られている。なお、このデータベースは、グリッド10の使用距離限界範囲と、当該グリッド10とが対応付けられていれば良く、識別子は、グリッド10を特定する情報、或いはマガジン93aの棚を特定する情報とすることができる。
【0042】
グリッド判定部72は、CPUを含み構成され、データベース記憶部71を参照し、検出距離入力部100から入力された検出距離を含む使用距離限界範囲を検索し、該当の使用距離限界範囲に組み合わせられたグリッド10の識別子を特定する。
【0043】
また、処理装置7は、グリッド切替機構93を制御する切替制御部70eを有する。切替制御部70eは、グリッド判定部72により特定されたグリッド10が検出器3の面前のY軸方向の延長線上に位置するように、スライダ機構93bによりマガジン93aをX軸方向にスライドさせ、送り機構93cのベルト931により、特定されたグリッド10をY軸方向に検出器3の面前まで走行させる。
【0044】
この放射線検査装置の動作を図8を用いて説明する。図8は、本実施形態に係る放射線検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。図8に示すように、まず、検出距離入力部100により、検出距離の入力を受け付ける(ステップS1)。処理装置7により、検出器3の移動量を算出し、検出器移動機構6により、検出器3を入力された検出距離になるように移動させる(ステップS2)。このとき、検出器移動機構6上にグリッド切替機構93が設けられているため、グリッド切替機構93も従動する。
【0045】
次に、グリッド判定部72により、入力された検出距離に対応するグリッド10を特定して取り出し(ステップS3)、検出器3の前面に設置する(ステップS4)。すなわち、特定されたグリッド10が、検出器3の面前のY軸方向の延長線上に位置するように、スライダ機構93によりマガジン93aをX軸方向にスライドさせ、送り機構93cのベルト931で特定されたグリッド10をY軸方向に走行させ、当該グリッド10を検出器3の面前に設置する。
【0046】
このように、この放射線検査装置では、グリッド交換部9は、検出距離に対応したグリッド10を検出器3の面前に位置させるグリッド切替機構93とした。オペレータは検出距離に応じて、その都度適切なグリッド10を選択するとともに検出器3に設置することが望ましいが、これらの作業は非常に煩わしい作業である。また、放射線検査装置が配置される室内にオペレータが入れない場合もあり、その場合はグリッド10を切り替えることすらできない。これに対し、この放射線検査装置では、オペレータがグリッド10を手作業で交換する必要がないので、グリッド10の交換作業の手間が省ける。
【0047】
特に、この放射線検査装置では、グリッド10の使用距離限界範囲とグリッド10とが対応したデータベースが記憶されたデータベース記憶部71と、データベースに基づいて検出距離がいずれの使用距離限界範囲に入るかを判定し、該当する使用距離限界範囲のグリッド10を特定するグリッド判定部72とを備え、グリッド切替機構93は、グリッド判定部72の結果で特定されるグリッド10を検出器3の前面に位置させるようにした。
【0048】
これにより、検出距離や当該検出距離に応じたグリッド10を選択せずとも、自動的に切り替えることができるので、適切なグリッド10を用いて精度の高い透視画像を得ることができるともに、利便性を高めることができる。また、オペレータによるグリッド10の選択ミスを防止できる。
【0049】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る放射線検査装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。第2の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
図9は、第3の実施形態に係る放射線検査装置の構成の一例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図を示す。図9に示すように、本実施形態の放射線検査装置は、退避指示入力部101を備え、また処理装置7内に設置グリッド記憶部73を備える。
【0051】
退避指示入力部101は、オペレータによる検出器3前面に設置されたグリッド10の退避指示を受け付ける。退避指示入力部101は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル等により構成され、また表示装置8の画面上にグリッド10の退避指示を受け付けるGUIによる退避ボタンを表示する。設置グリッド記憶部73は、メモリを含み構成され、設置されているグリッド10(以下、単に「設置グリッド10」ともいう。)の識別子を記憶する。すなわち、設置グリッド記憶部73は、グリッド切替機構93により検出器3の前面に設置する際、当該設置グリッド10の識別子を記憶する。
【0052】
この放射線検査装置において、グリッド切替機構93は、グリッド10を交換する他、待避指示入力部101の待避指示の受け付けを契機に、設置グリッド10を検出器3の前面から退避させる。即ち、グリッド切替機構93は、マガジン93aの設置グリッド10に対応する空の棚が、検出器3の面前のY軸方向の延長線上に位置するようにマガジン93aをX軸方向に移動させる。空の棚は、設置グリッド記憶部73に記憶されている。そして、ベルト931が設置グリッド10の上下で接触した状態で走行することにより、設置グリッド10をマガジン93aへ向けて移動させ、マガジン93aの設置グリッド10に対応する空の棚に設置グリッド10を収容し、検出器3の前面から設置グリッド10を退避させる。
【0053】
この放射線検査装置の動作を図10を用いて説明する。図10は、本実施形態に係る放射線検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。説明の都合上、検出器3の前面にはグリッド10が既に設置されており、かつ、当該グリッド10の識別子が設置グリッド記憶部73に記憶されているものとする。
【0054】
図10に示すように、オペレータから退避指示入力部101により設置グリッド10の退避指示が入力されると(ステップS11)、切替制御部70eは、設置グリッド記憶部73を参照し、設置グリッド記憶部73に記憶された識別子から、現在検出器3に設置されたグリッド10を特定する(ステップS12)。そして、切替制御部70eがスライド機構93bを検出器3の面前のY軸方向の延長線上に位置するように動作させることにより、特定されたグリッド10に対応するマガジン93aの棚を、設置グリッド10の収容位置に移動させる(ステップS13)。そして、切替制御部70eにより送り機構93cを動作させて、設置グリッド10を収容位置の当該棚に収容する(ステップS14)。これにより、検出器3の前面からグリッド10を退避させる。
【0055】
(効果)
上記のように本実施形態の放射線検査装置は、グリッドを退避させる退避機構を備えた。これにより、ノイズの少ない放射線透過画像を得ることができる。すなわち、グリッド10により検出器3に入射される散乱放射線が低減されるが、その一方で、十分な放射線量が確保できずノイズの多い放射線透過画像となる場合がある。このような場合に、グリッド10を検出器3の前から退避させることで、検出器3が受光する放射線量が増え、放射線透過画像の輝度値が大きくなるため、S/Nが向上する。このグリッド10の退避は、グリッド退避機構により自動的に行うことで、オペレータがグリッド10を外す手間をなくすことができる。
【0056】
上記ではグリッド10の退避は、退避指示入力部101を介したオペレータによる退避指示を契機としたが、これに限定されない。例えば、画像処理部70bが、予め設定された輝度値又はS/Nを下回る場合に、設置グリッド10を退避させる退避信号を生成して切替制御部70eに出力し、設置グリッド10を退避させるようにしても良い。
【0057】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る放射線検査装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。第3の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0058】
図11は、第4の実施形態に係る放射線検査装置の構成の一例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図を示す。図11に示すように、本実施形態の放射線検査装置の処理装置7は、校正データ記憶部74、校正部75、及び校正データ取得部76を備える。
【0059】
校正データ記憶部74は、ストレージを含み構成され、検出距離とグリッド10の有無情報との組み合わせに対応させて校正データを記憶する。校正データは、例えばゲイン校正、オフセット校正、線質硬化校正の校正値、又はこれらの複数を含む。ゲイン校正データは、検出器3の受光面に2次元状に並ぶ検出素子の検出感度バラツキを校正する校正値である。オフセット校正データは、検出器3の受光面に2次元状に並ぶ検出素子の暗電流バラツキを校正する校正値である。線質硬化校正データは、放射線の線質硬化に起因する、放射線が被検体1を透過する経路長と検出された放射線強度(輝度値)との非線形な関係を校正する。
【0060】
校正データは、設置グリッド10の有無によっても異なる。即ち、同じ検出距離であっても、設置グリッド10の有無によって各種の値が異なる。従って、構成データ記憶部74は、例えば、検出距離が100mm~500mmの間で100mm間隔で5通りあるとすると、設置グリッド10の有無に応じて10通り、更に校正データが3種類とすると、合計30通りを記憶している。
【0061】
この構成データ記憶部74に記憶されている構成データの各種は、校正データ取得部76により取得される。校正データ取得部76は、CPU及び放射線源制御部70aを含み構成されている。この校正データ取得部76は、例えばゲイン校正データを取得する場合は、被検体1がステージ4上に載置されていない状態で照射された放射線ビーム22を検出器3で検出することで、検出器3の受光面に2次元状に並ぶ検出素子の検出感度のバラツキをなくすゲイン校正データを取得する。オフセット校正データを取得する場合は、放射線ビーム22を照射しない状態での各検出素子の出力信号のバラツキを検出し、当該バラツキをなくす校正データを取得する。線質硬化校正データを取得する場合は、材質が同じで厚さの異なる被検体1のN個分の放射線透過画像を取得した後、厚さtと放射線透過画像の輝度値P(t)の関係を示す方程式を最小二乗法等により求め、求めた方程式から一次式に変換するための線質硬化用校正データを取得する。
【0062】
また、校正データ取得部76は、各校正データを取得した際の、グリッド10の有無情報及び検出距離を取得する。グリッド10の有無情報の取得方法は、例えば退避指示入力部101から退避指示を受け付けたかで確認でき、退避指示があった場合は、設置グリッド10がないと判断でき、退避指示がなかった場合は、設置グリッド10があったと判断することができる。また、検出距離の取得方法は、例えば、検出距離入力部100から入力された検出距離を取得する。校正データ取得部76は、取得した校正データと、取得した際のグリッド10の有無及び検出距離とを対応付けてそれぞれ校正データ記憶部74に記憶させることで、各校正データを検出距離毎に登録する。
【0063】
校正部75は、CPUを含み構成され、設置グリッド10の有無と検出距離の組み合わせに対応した校正データで、画像処理部70bで生成された被検体1の透過画像を校正する。即ち、校正部75は、ゲイン校正する場合、検出器3で得られた被検体1の透過データに対し、ゲイン校正値を乗算することで、検出器3の受光面に2次元状に並ぶ検出素子の検出感度バラツキを校正する。オフセット校正する場合、被検体1の透過画像から、オフセット校正データであるオフセット画像を減算する。オフセット画像は、検出器3の受光面に2次元状に並ぶ検出素子の暗電流バラツキを校正する校正値である。線質硬化校正する場合、線質硬化に起因して減弱した放射線強度を補填する。
【0064】
この放射線検査装置の動作を説明する。図12は、本実施形態に係る放射線検査装置の校正データの登録動作の一例を示すフローチャートである。図12に示すように、校正取得部76により、ゲイン校正データ及びオフセット校正データを取得し(ステップS21)、線質硬化校正データを取得する(ステップS22)。
【0065】
次いで、校正取得部76は、ステップS21及びステップS22で校正データを取得した際の設置グリッド10の有無情報を取得し(ステップS23)、ステップS21及びステップS22で校正データを取得した際の検出距離を取得する(ステップS24)。そして、校正取得部76により、取得した校正データと、取得した際のグリッド10の有無及び検出距離とを対応付けて校正データ記憶部74に記憶させることで、校正データを登録する(ステップS25)。
【0066】
図13は、本実施形態に係る放射線検査装置の校正動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、放射線源2から放射線ビーム22を被検体1に照射し、検出器3により被検体1を透過した放射線を検出することにより透過データを得ているものとする。
【0067】
図13に示すように、校正部75により、退避指示入力部101を介してグリッド10の退避指示があったかを確認する(ステップS31)。例えば、グリッド10の避難指示が入力された場合には、この避難指示有りを示すフラグを立てておき、校正部75はフラグの有無を確認すればよい。退避指示があった場合(ステップS31のYES)、校正部75は、検出距離入力部100が受けた検出距離を取得する(ステップS32)。例えば、受け付けた検出距離をメモリに記憶させておき、この検出距離が記憶されたメモリ領域のデータを読み出す。
【0068】
次いで、校正部75は、校正データ記憶部74を参照し、取得した設置グリッド10が有ることを示す情報と検出距離の組み合わせに対応づけられた校正データを取得する(ステップS33)。すなわち、グリッド10に応じた校正データを取得する。そして、校正部75は、取得した校正データにより検出器3が検出した透過データを校正する(ステップS34)。
【0069】
退避指示がなかった場合(ステップS31のNO)、校正部75は、検出距離入力部100が受けた検出距離を取得し(ステップS35)、次いで校正データ記憶部74を参照し、取得した設置グリッド10が無いことを示す情報と検出距離に対応づけられた校正データを取得する(ステップS36)。すなわち、グリッド10がない場合の検出距離に応じた校正データを取得する。そして、校正部75は、取得した校正データにより検出器3が検出した透過データを校正する(ステップS37)。
【0070】
このように、この放射線検査装置は、検出距離及びグリッド10の有無情報に応じた校正データが記憶された校正データ記憶部74を備えるようにした。そして、処理装置7は、検出距離及びグリッド10の有無情報に応じた校正データにより透過データを校正する校正部75を有するようにした。
【0071】
これにより、検出距離及びグリッド10の有無により異なる校正データに切り替えて、透過データの校正を行うことができる。すなわち、検出距離及び設置グリッド10の有無の違いにより、校正データの値が大きく変動し得るが、オペレータが検出距離やグリッド10の有無を確認しなくても、自動的に検出距離及びグリッド10の有無に適した校正データを切り替えることができるので、校正に要する手間を省くことができるとともに、被検体1の透過画像の精度を向上させることができる。
【0072】
また、校正データを取得する校正データ取得部76を備え、校正データ取得部76は、グリッド10の有無情報と検出距離とを取得し、取得した校正データと、グリッド10の有無情報及び検出距離とを対応付けて校正データ記憶部74に記憶させるようにした。
【0073】
これにより、検出距離及びグリッド10の有無毎に校正データを一度に取得しておくので、オペレータの校正に要する手間及び時間を省くことができる。すなわち、オペレータにとって、検出距離及びグリッド10の有無が変わる度にその都度校正データを取得するようことは非常に煩雑で手間及び時間のかかる作業であるが、そのような作業をせずに済む。
【0074】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る放射線検査装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。第3の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0075】
図14は、第5の実施形態に係る放射線検査装置の構成の一例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図を示す。
【0076】
図14に示すように、本実施形態の放射線検査装置は、シフト機構61を備える。シフト機構61は、放射線ビーム22の光軸CLに対して直交する方向に検出器3を移動させる。シフト機構61は、例えばボールネジ機構である。位置固定のモータと、ネジが切られてモータにより回転するシャフトと、シャフトと螺合して検出器3と連結されたスライダとで構成され、X軸方向及びY軸方向のボールネジ機構を有する。モータの回転に伴ってシャフトが回転し、スライダがX軸方向又はY軸方向に移動することで検出器3を移動させる。
【0077】
グリッド10の幅は検出器3の幅よりも大きく、検出器3の移動範囲を包含する。グリッド10の幅は、X軸方向又はY軸方向の大きさである。但し、グリッド10は、図15に示すように、放射線ビーム22の光軸CLに対する焦点21と検出器3の検出素子Sとで成す直線と同角度に勾配している。
【0078】
このように、放射線ビーム22の光軸CLに対して直交する方向に検出器3を移動させるシフト機構61を備え、グリッド10の幅を検出器3の幅よりも大きくし、シフト機構61は、グリッド10に沿って検出器3を移動させることで、通常よりも視野の広い放射線透過画像を取得できる。
【0079】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0080】
例えば、上記の実施形態では、検出距離を検出距離入力部100で受け付けたが、自動で検出するようにしても良い。例えば、処理装置7に、検出距離算出部を設け、また初期検出距離を予め記憶させておくとともに、検出器移動機構6による初期状態以降の検出器3の移動量及び移動方向を逐次記憶させておくことで、初期検出距離と、検出器3の移動量及び移動方向とに基づいて、検出距離算出部により、現在の検出器3の位置、すなわち、現在の検出距離を算出することができる。そのため、オペレータが検出距離を入力する手間を省くことができる。
【0081】
上記の実施形態では、検出距離は、放射線源2の焦点21と検出器3の前面までの距離としたが、放射線源2の焦点21と検出器3の前面に設置したグリッド10までの距離としても良い。
【符号の説明】
【0082】
1 被検体
2 放射線源
21 焦点
22 放射線ビーム
3 検出器
4 ステージ
5 ステージ移動機構
6 検出器移動機構
61 シフト機構
7 処理装置
70a 放射線源制御部
70b 画像処理部
70c 移動機構制御部
70d 移動機構制御部
70e 切替制御部
71 データベース記憶部
72 グリッド判定部
73 設置グリッド記憶部
74 校正データ記憶部
75 校正部
76 校正データ取得部
77 入力装置
8 表示装置
9 グリッド交換部
91 固定ツメ
92 フレーム
93 グリッド切替機構
93a マガジン
93b スライド機構
93c 送り機構
931 ベルト
10 グリッド
11 吸収箔
12 スペーサ
100 検出距離入力部
101 退避指示入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15