(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】試料水の管理システム及び試料水の管理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/18 20060101AFI20220715BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
G01N33/18 Z
G01N1/10 N
(21)【出願番号】P 2018062762
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000101042
【氏名又は名称】アクアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】上野 尚美
(72)【発明者】
【氏名】木村 健
(72)【発明者】
【氏名】梅原 龍吾
(72)【発明者】
【氏名】石間 智生
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-113425(JP,A)
【文献】特開2007-128440(JP,A)
【文献】特開2008-269361(JP,A)
【文献】特開2001-205249(JP,A)
【文献】特開2006-300870(JP,A)
【文献】特開平04-328464(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203651(WO,A1)
【文献】特開2014-124569(JP,A)
【文献】特開2006-090937(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033465(US,A1)
【文献】工業用水・工場排水の試料採取方法,日本工業規格 K 0094-1994,1994年,https://kikakurui.co./k0/K0094-1994-01.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/18,
G01N 1/10,
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質分析対象設備の設備識別情報と、前記水質分析対象設備が保有する分析対象水を試料水として採取するための容器の容器識別情報と、を読み取る第1読取部と、
当該第1読取部により読み取った前記設備識別情報と前記容器識別情報とを関連付けてメモリに記録する記録部と、を備えた試料水の管理システムであって、
前記メモリが前記設備識別情報に関連する設備関連情報を予め保持し、当該設備関連情報を前記容器識別情報と関連付けて記録するメモリであるとともに、
前記設備関連情報が前記水質分析対象設備毎の前記試料水の採取期限を含み、かつ、当該採取期限を超過しても前記第1読取部による前記設備識別情報及び前記容器識別情報の読み取りを確認できないときに、前記採取期限の超過を報知する第1報知機能を備えた
ことを特徴とする試料水の管理システム。
【請求項2】
水質分析対象設備の設備識別情報と、前記水質分析対象設備が保有する分析対象水を試料水として採取するための容器の容器識別情報と、を読み取る第1読取部と、
当該第1読取部により読み取った前記設備識別情報と前記容器識別情報とを関連付けてメモリに記録する記録部と、を備えた試料水の管理システムであって、
前記メモリが前記設備識別情報に関連する設備関連情報を予め保持し、当該設備関連情報を前記容器識別情報と関連付けて記録するメモリであるとともに、
前記容器識別情報を読み取る第2読取部を備え、前記設備関連情報が、前記第1読取部による前記設備識別情報及び前記容器識別情報の読み取りから前記第2読取部による前記容器識別情報の読み取りまでの期間を定めた前記試料水の到着期限を含んでおり、かつ、
前記第1読取部による読み取り以降、前記到着期限を超過しても前記第2読取部による前記容器識別情報の読み取りが確認できないときに、前記到着期限の超過を報知する第2報知機能を備えたことを特徴とする試料水の管理システム。
【請求項3】
水質分析対象設備の設備識別情報と、前記水質分析対象設備が保有する分析対象水を試料水として採取するための容器の容器識別情報と、を読み取る第1読取部と、
当該第1読取部により読み取った前記設備識別情報と前記容器識別情報とを関連付けてメモリに記録する記録部と、を備えた試料水の管理システムであって、
前記メモリが前記設備識別情報に関連する設備関連情報を予め保持し、当該設備関連情報を前記容器識別情報と関連付けて記録するメモリであるとともに、
前記設備関連情報が前記水質分析対象設備毎の前記試料水の採取期限を含み、かつ、当該採取期限を超過しても前記第1読取部による前記設備識別情報及び前記容器識別情報の読み取りを確認できないときに、前記採取期限の超過を報知する第1報知機能を備え、さらに、
前記容器識別情報を読み取る第2読取部を備え、前記設備関連情報が、前記第1読取部による前記設備識別情報及び前記容器識別情報の読み取りから前記第2読取部による前記容器識別情報の読み取りまでの期間を定めた前記試料水の到着期限を含んでおり、かつ、前記第1読取部による読み取り以降、前記到着期限を超過しても前記第2読取部による前記容器識別情報の読み取りが確認できないときに、前記到着期限の超過を報知する第2報知機能を備えたことを特徴とする試料水の管理システム。
【請求項4】
前記記録部は、前記設備識別情報または前記容器識別情報を読み取った日時、あるいは、前記設備識別情報と前記容器識別情報とを関連付けて前記メモリに記録した日時を前記試料水の採取日時として、前記設備識別情報及び前記容器識別情報と関連付けて前記メモリに記録することを特徴とする
請求項1に記載の試料水の管理システム。
【請求項5】
前記記録部は、前記設備識別情報または前記容器識別情報を読み取った日時、あるいは、前記設備識別情報と前記容器識別情報とを関連付けて前記メモリに記録した日時を前記試料水の採取日時として、前記設備識別情報及び前記容器識別情報と関連付けて前記メモリに記録することを特徴とする
請求項2または請求項3に記載の試料水の管理システム。
【請求項6】
請求項1または請求項4に記載の試料水の管理システムを用いる試料水の管理方法であって、
前記設備識別情報と前記容器識別情報とを、前記第1読取部により読み取る第一の工程と、
当該第1読取部により読み取った前記設備識別情報及び前記容器識別情報を関連付けてメモリに記録する第二の工程と、を順次有していることを特徴とする試料水の管理方法。
【請求項7】
請求項2、請求項3、および、請求項5のいずれか1項に記載の試料水の管理システムを用いる試料水の管理方法であって、
前記設備識別情報と前記容器識別情報とを、前記第1読取部により読み取る第一の工程と、
当該第1読取部により読み取った前記設備識別情報及び前記容器識別情報を関連付けてメモリに記録する第二の工程と、
前記容器識別情報を前記第2読取部により読み取る第三の工程と、を順次有していることを特徴とする試料水の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料水の管理システム及び試料水の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食物製造用水の処理、ボイラ水処理、冷却水処理、排水処理、浴槽水管理、鉄鋼製造工程水処理、紙・パルプ製造工程水処理、レジオネラ属菌対策など、様々な水の管理や処理が行われている。このような水の管理や処理を担当、あるいは、その補助を行う事業者は、定期的にあるいは不定期的にこれら水を試料水として容器に採取し、その容器を分析センタなどの分析担当部署に送付し、分析担当部署で分析することにより、水の管理や処理が適切かどうかを確認している。
【0003】
具体的には、事業者の採取担当者が、分析対象水を保有する水質分析対象設備を有する分析依頼者の施設に出向き、その水質分析対象設備から試料水をサンプリング(採取)する。採取担当者は、サンプリング時に容器に、水質分析対象設備の設備関連情報や採取日時を記録したラベルを貼付した後、分析担当部署に送付している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水の管理や処理関連分野では一般に、1人の採取担当者が担当する水質分析対象設備が非常に多く、このため、試料水を収容する容器に貼付するラベルを取り違えたり、ラベルに必要情報を記載し忘れたりする恐れがあった。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決する、到着した容器内の試料水がどの水質分析対象設備で採取した試料かを精度よく管理することができる試料水の管理システム及び試料水の管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するためになされた、
(1)第1の発明は、水質分析対象設備の設備識別情報と、前記水質分析対象設備が保有する分析対象水を試料水として採取するための容器の容器識別情報と、を読み取る第1読取部と、当該第1読取部により読み取った前記設備識別情報と前記容器識別情報とを関連付けてメモリに記録する記録部と、を備えた試料水の管理システムであって、前記メモリが前記設備識別情報に関連する設備関連情報を予め保持し、当該設備関連情報を前記容器識別情報と関連付けて記録するメモリであるとともに、前記設備関連情報が前記水質分析対象設備毎の前記試料水の採取期限を含み、かつ、当該採取期限を超過しても前記第1読取部による前記設備識別情報及び前記容器識別情報の読み取りを確認できないときに、前記採取期限の超過を報知する第1報知機能を備えた試料水の管理システムである。
【0007】
(2)第2の発明は、水質分析対象設備の設備識別情報と、前記水質分析対象設備が保有する分析対象水を試料水として採取するための容器の容器識別情報と、を読み取る第1読取部と、当該第1読取部により読み取った前記設備識別情報と前記容器識別情報とを関連付けてメモリに記録する記録部と、を備えた試料水の管理システムであって、前記メモリが前記設備識別情報に関連する設備関連情報を予め保持し、当該設備関連情報を前記容器識別情報と関連付けて記録するメモリであるとともに、前記容器識別情報を読み取る第2読取部を備え、前記設備関連情報が、前記第1読取部による前記設備識別情報及び前記容器識別情報の読み取りから前記第2読取部による前記容器識別情報の読み取りまでの期間を定めた前記試料水の到着期限を含んでおり、かつ、前記第1読取部による読み取り以降、前記到着期限を超過しても前記第2読取部による前記容器識別情報の読み取りが確認できないときに、前記到着期限の超過を報知する第2報知機能を備えた試料水の管理システムである。
【0008】
(3)第3の発明は、水質分析対象設備の設備識別情報と、前記水質分析対象設備が保有する分析対象水を試料水として採取するための容器の容器識別情報と、を読み取る第1読取部と、当該第1読取部により読み取った前記設備識別情報と前記容器識別情報とを関連付けてメモリに記録する記録部と、を備えた試料水の管理システムであって、前記メモリが前記設備識別情報に関連する設備関連情報を予め保持し、当該設備関連情報を前記容器識別情報と関連付けて記録するメモリであるとともに、前記設備関連情報が前記水質分析対象設備毎の前記試料水の採取期限を含み、かつ、当該採取期限を超過しても前記第1読取部による前記設備識別情報及び前記容器識別情報の読み取りを確認できないときに、前記採取期限の超過を報知する第1報知機能を備え、さらに、前記容器識別情報を読み取る第2読取部を備え、前記設備関連情報が、前記第1読取部による前記設備識別情報及び前記容器識別情報の読み取りから前記第2読取部による前記容器識別情報の読み取りまでの期間を定めた前記試料水の到着期限を含んでおり、かつ、前記第1読取部による読み取り以降、前記到着期限を超過しても前記第2読取部による前記容器識別情報の読み取りが確認できないときに、前記到着期限の超過を報知する第2報知機能を備えた試料水の管理システムである。
【0009】
(4)第4の発明は、上記の第1の発明の構成に加え、前記記録部は、前記設備識別情報または前記容器識別情報を読み取った日時、あるいは、前記設備識別情報と前記容器識別情報とを関連付けて前記メモリに記録した日時を前記試料水の採取日時として、前記設備識別情報及び前記容器識別情報と関連付けて前記メモリに記録する試料水の管理システムである。
(5)第5の発明は、上記の第2または第3の発明の構成に加え、前記記録部は、前記設備識別情報または前記容器識別情報を読み取った日時、あるいは、前記設備識別情報と前記容器識別情報とを関連付けて前記メモリに記録した日時を前記試料水の採取日時として、前記設備識別情報及び前記容器識別情報と関連付けて前記メモリに記録する試料水の管理システムである。
【0010】
(6)第6の発明は、上記の第1または第4の発明の試料水の管理システムのうちいずれか1つの試料水の管理システムにおける試料水の管理方法であって、水質分析対象設備の設備識別情報と、前記水質分析対象設備が保有する分析対象水を試料水として採取するための容器の容器識別情報と、を第1読取部により読み取る第一の工程と、当該第1読取部により読み取った前記設備識別情報及び前記容器識別情報を関連付けてメモリに記録する第二の工程と、を順次有している試料水の管理方法である。
【0011】
(7)第7の発明は、上記の第2、第3、および、第5のいずれか1つの試料水の管理システムを用いる試料水の管理方法であって、前記設備識別情報と前記容器識別情報とを、前記第1読取部により読み取る第一の工程と、当該第1読取部により読み取った前記設備識別情報及び前記容器識別情報を関連付けてメモリに記録する第二の工程と、前記容器識別情報を前記第2読取部により読み取る第三の工程を順次有している試料水の管理方法である。
【発明の効果】
【0012】
上記の第1ないし第3の発明のうちのいずれか1つの発明によれば、採取担当者が試料水の採取時に第1読取部を用いて、水質分析対象設備の設備識別情報と容器の容器識別情報とを読み取ると、これら情報を関連付けてメモリに記録すると云う第1の構成を有する。このことにより、容器の容器識別情報から設備識別情報を知ることが可能となるので、分析担当部署で、到着した容器内の試料水がどの水質分析対象設備から採取したものかを精度よく知ることが可能となる(第1の効果)。さらに、メモリが設備識別情報に関連する設備関連情報を予め保持し、設備関連情報を容器識別情報と関連付けてメモリに記録すると云う第2の構成により、例えば、水質分析対象設備を所有する分析依頼者の名称、依頼者住所、試料水の採取期限、試料水の分析担当部署への到着期限、分析項目、採取担当者名、採取頻度、試料名、当該設備で過去に行った水質分析結果等の設備関連情報を容器識別情報とともに一括管理することが可能となり、容器の容器識別情報を読み取ることで設備関連情報を容易に呼び出すことが可能となる(第2の効果)。
また、上記の第1の発明では、上記第1および第2の効果に加え、設備関連情報が水質分析対象設備毎の試料水の採取期限を含み、採取期限を超過しても第1読取部による設備識別情報及び容器識別情報の読み取りを確認できないときに、採取期限の超過を報知する第1報知機能を備えた第3の構成により、試料水の採取忘れによる分析漏れを防止することが可能となる(第3の効果)。
また、上記の第2の発明によれば、上記第1および第2の効果に加え、容器識別情報を読み取る第2読取部を備え、設備関連情報が、第1読取部による設備識別情報及び容器識別情報の読み取りから第2読取部による容器識別情報の読み取りまでの期間を定めた試料水の到着期限を含んでおり、第1読取による読み取り以降、到着期限を超過しても第2読取部による容器識別情報の読み取りが確認できないときに、到着期限の超過を報知する第2報知機能を備えた第4の構成により、採取担当者の、試料水の分析担当部署への送付忘れによる分析漏れを防止することが可能となる(第4の効果)。
さらに、上記の第3の発明によれば、上記第3および第4の構成を併せ持つために、上記の第1ないし第4のすべての効果を得ることができる。
【0013】
また、上記の第4および第5の発明によれば、記録部は、設備識別情報または容器識別情報を読み取った日時、あるいは、設備識別情報と容器識別情報とを関連付けてメモリに記録した日時を試料水の採取日時として、設備識別情報及び容器識別情報と関連付けてメモリに記録する構成とすることにより、試料水の採取日時も確実に管理することが可能となる。
【0014】
また、上記の第6の発明によれば、上記第1および第2の効果を得ることができ、そして、さらに第3の構成を備える場合には第3の効果を得ることができる。また、第7の発明によれば、上記第1、第2、および、第4の効果を得ることができ、そして、さらに第3の構成を備える場合には第3の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の試料水の管理システムの一実施形態を示す図である。
【
図2】
図1に示す試料水の管理システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、
図1、
図2、及び、表1に基づいて説明する。本実施形態の試料水の管理システム1は、水質分析対象設備2内の分析対象水の分析を行うためのシステムである。水質分析対象設備2は、分析依頼者(顧客)がその施設内に有しており、そして、水質分析対象設備2は分析対象の水を保有している。
【0019】
また、水質分析対象設備2には、その設備識別情報(以下、「識別情報」を「ID」と記載する)の識別タグ(識別用標識)としてのバーコードBC1が貼付してある。なお、以下、識別タグとしてバーコード(二次元バーコードを含む)を用いた例について説明するが、本発明の管理方法では識別タグはバーコードに限定されない。すなわち、識別タグとしては、識別情報を付すことができ、それを読み取ることができるものであればよく、このようなものとしてRFIDタグ等を挙げることができる。
【0020】
水質分析対象設備2内の分析対象水を試料水として採取する。試料水の分析は、水質分析対象設備2とは別の場所にある、事業者の分析担当部署で行われる。このため、事業者は採取に先立って採取担当者に試料水採取用の容器3を配布するともに水質分析対象設備2を有する施設に派遣する。採取担当者は水質分析対象設備2内の分析対象水をポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂製のボトル(所謂ポリ瓶)あるいは必要に応じてガラス瓶などの容器3に試料水として採取し、分析担当部署に送付する。
【0021】
この容器3には容器IDの識別タグとしてのバーコードBC2が予め貼付してある。なお、この例ではバーコードは容器3に予め貼付してあるが、試料水の採取の前または後にバーコードの記載があるシールを容器3に貼付してもよく、あるいは、例えばインクジェットプリンタなどによりバーコードを直接印刷した容器を用いてもよい。
【0022】
次に、本実施形態の管理システム1の構成について説明する。管理システム1は、試料水を容器3に採取する採取担当者が持ち運べる第1読取部としての第1バーコードリーダ11及び携帯端末12と、事業者が所有するホストコンピュータ13と、分析担当部署にある第2読取部としての第2バーコードリーダ14及びパーソナルコンピュータ(以下、「PC」と略記)15と、を有している。
【0023】
第1バーコードリーダ11は、水質分析対象設備2や容器3に貼付してあるバーコードBC1、BC2を読み取ることができる周知のバーコードリーダである。携帯端末12と第1バーコードリーダ11とは、この例ではケーブルにより接続しているが、無線通信や光通信で接続していてもよい。なお、
図1には、第1バーコードリーダ11及び携帯端末12がそれぞれ2つ記載してあるが、これは1台の第1バーコードリーダ11を用いて水質分析対象設備2及び容器3のバーコードBC1、BC2をそれぞれ読み取っている様子を示している。なお、この例では第1バーコードリーダ11と携帯端末12とは別々の装置となっているが、バーコードリーダが内蔵されている携帯端末を用いることもでき、その場合も本発明に含まれる。
【0024】
携帯端末12は、例えば携帯電話通信網4やインターネット網5あるいは専用回線を介してホストコンピュータ13と無線通信を行い、第1バーコードリーダ11が読み取った水質分析対象設備2の設備ID(以下、単に「設備ID」)、容器ID及びこれらの読み取り日時(即ち、採取日時)をホストコンピュータ13に送信する。携帯端末12は、例えばスマートフォンやタブレットなどの汎用品でもよいし、専用品であってもよい。なお、採取日時としてはバーコードBC1またはBC2の読み取り日時、あるいは、設備識別情報及び容器識別情報を関連付けてメモリに記録した日時としてもよい。
【0025】
ホストコンピュータ13は、ROM、RAM、CPUを有する周知のコンピュータである。ホストコンピュータ13は、携帯電話通信網4やインターネット網5を介して携帯端末12と通信を行い、携帯端末12が送信する設備ID及び容器IDや採取日時を受信する。このホストコンピュータ13は図示しないメモリを有し、下表1に例示するように、携帯端末12が送信した設備ID、容器ID、採取日時、及び、ホストコンピュータ13のメモリに、予め記録しておいた設備関連情報を関連付けて(ペアリング)、メモリに記録する。
【0026】
【0027】
ここで設備関連情報は、水質分析対象設備2毎に設備IDに関連付けた情報であり、例えば、分析項目、採取担当者名、採取頻度、試料水の採取期限、試料名、水質分析対象設備2を所有する分析依頼者の名称、依頼者住所、当該設備で過去に行った水質分析結果、及び、試料水の分析担当部署への到着期限などであり、上記の関連付けにより、容器IDの入力によるホストコンピュータ13内のこれら情報の閲覧や印刷が可能となる。なお、これらの設備関連情報により、例えば月初に採取担当者毎にその月の試料採取リストを作成するようにしてもよい。また、その際に互いに近い水質分析対象設備の設置場所毎にまとめて試料水採取スケジュールを作成し、採取担当者の便を図るようにしてもよい。
【0028】
第2バーコードリーダ14は、この例では分析担当部署や試料水の受け入れ部署等にある、容器3に貼付したバーコードBC2を読み取ることができる周知のバーコードリーダである。PC15は、ROM、RAM、CPUを有する周知のコンピュータである。このPC15には、第2バーコードリーダ14が接続している。PC15は、例えば社内LAN6を介して上記のホストコンピュータ13と通信を行うことができる。
【0029】
次に、上述した構成の管理システム1の動作の一例について
図2のフローチャートを参照して説明する。まず、採取担当者は、分析依頼者の施設に出向き、携帯端末12を操作して、サンプリングアプリケーションを立ち上げる。サンプリングアプリケーションを立ち上げると、携帯端末12は、表示画面に例えば「水質分析対象設備のバーコードを読み取って下さい」と表示する(ステップS10)。この表示に従って採取担当者が第1バーコードリーダ11を用いて、この例では水質分析対象設備2に予め貼付してあるバーコードBC1を読み取ることで、携帯端末12に設備IDの入力が終了する。なお、バーコードBC1は水質分析対象設備2に貼付してある必要はなく、紐やチェーンなどによって水質分析対象設備2付近から容易に移動できないようにしてあってもよい。
【0030】
携帯端末12は設備IDの入力終了後(ステップS11で「はい」)、表示画面を切り替えて「容器のバーコードを読み取って下さい」と表示する(ステップS12)。この表示に従って採取担当者は所持している容器3のバーコードBC2を読み取ると、携帯端末12に容器IDの入力が終了する。携帯端末12は、容器IDの入力終了後(ステップS13で「はい」)、設備ID及び容器IDとともにそのときの日時を、水質分析対象設備2の分析対象水を試料水として採取した採取日時としてホストコンピュータ13に送信する(ステップS14)。なお、携帯端末12による各IDの入力の督促する表示は省略することができる。
【0031】
採取担当者による試料水の採取は、これら2つのバーコードの読み取りの前でも、後でも、あるいは、一方のバーコードの読み取り後 に行ってもよいが、エラーが生じないよう予め手順を決めておくことが好ましい。なお、エラー発生防止のためにバーコードの読み取り及び試料水の採取の手順を携帯端末12に表示することもできる。
【0032】
また、上述した実施形態では、携帯端末12は、水質分析対象設備2、容器3の順にバーコードBC1、BC2の読み取りを指示しているが、この順に限ったものではなく、容器3、水質分析対象設備2の順にバーコードBC2、BC1の読み取りを指示するようにしてもよい。ここで、一定の順番でこれらIDの読み取るようにすることが、容器の取り間違え等のエラーを減少することができるので好ましいが、例えば、1ヶ所の水質分析対象設備で経時的に複数回、試料水の採取を行う等、必要に応じて設備IDを複数回連続して読み取るようにしてもよい。この場合、エラー発生防止のために携帯端末12の表示の点滅、報知音などで、通常の読み取りでないことを示すことが好ましい。
【0033】
なお、水質分析対象設備2の設置場所によっては、これら設備ID、容器ID及び採取日時を直ちにホストコンピュータ13に送信できない場合も想定される。このため、送信可能な状況に回復したときにこれらデータを送信するように管理システムを設計してもよい。この場合、自動送信とするか、携帯端末12の表示装置に未送信のデータが残っている旨の表示が出るようにしておき、採取担当者が携帯端末12を操作して送るか、あるいは、容器ID及び設備IDの読み取りの後に、常時、または、定期的あるいは不定期的に報知表示や報知音が鳴るなどして、データの未送信を知らせるようにすることが好ましい。
【0034】
なお、
図2には記載していないが、ホストコンピュータ13に設備ID、容器ID及び採取日時を送信した後に、採取担当者が携帯端末12を操作してホストコンピュータ13に要求することで、後述する設備関連情報を参照するようにしてもよく、さらに、試料水の分析終了後には分析結果を参照できるようにしてもよい。
【0035】
採取担当者は、このようにバーコードBC1、BC2の読み取り、試料水の採取を終えた後に、採取した試料水を収容する容器3を分析担当部署へ発送する。
【0036】
試料水の採取管理やその送付管理、及び、各種データの管理を行うホストコンピュータ13は、携帯端末12からの設備ID、容器ID及び採取日時の受信を試料水の採取期限まで待ち(ステップS20及びステップS21)、試料水の採取期限を超過後にも携帯端末12から受信がない場合には、採取担当者に対して採取期限の超過を「試料水が採取されていません(採取忘れ)」として通知する(ステップS22)。このようにホストコンピュータ13は採取期限の超過を報知する第1報知機能を備えている。
【0037】
この通知は、例えば管理部署及び/または採取担当者やその上司などの管理者が所属する事業所や営業所にある図示しないPCや端末等に対して行い、その画面に表示させるようにしても、また、携帯端末12の表示画面に表示するようにしてもよく、これらから選ばれる複数の画面に表示させることとしてもよい。なお、この通知は、試料水毎に行ってもよいが、例えば週毎、あるいは月毎等にまとめて行ってもよい。
【0038】
ホストコンピュータ13は、携帯端末12からの設備ID、容器ID及び採取日時を受信すると(ステップS20での「はい」)、記録部として機能し、表1に示すように、設備ID、容器ID、採取日時及び設備関連情報(以下、これらをまとめて「設備関連情報等」とも云う)を関連付けてメモリに記録する(ステップS23)。
【0039】
その後、ホストコンピュータ13は後述するように、試料水を収容する容器3が分析担当部署に到着し、そのPC15の第2バーコードリーダ14により容器IDを読み取るまで待機する(ステップS24及びステップS25)。また、ホストコンピュータ13は採取担当者による第1バーコードリーダ11でのバーコードBC1、BC2の読み取り日時(採取日時)から分析担当部署での第2バーコードリーダ14による容器3のバーコードBC2の読み取りによる容器の到着確認までの期間を定めた、試料水の到着期限を超過しても、第2バーコードリーダ14による容器3のバーコードBC2の読み取りが確認できないときに(ステップS25の「はい」)、到着期限の超過を通知する第2報知機能により、携帯端末12に対してその表示画面に「容器を送付していません(送付忘れ)」の表示を指示し、到着期限の超過を報知する(ステップS26)。なお、この通知は携帯端末12の代わりに、例えば、管理部署や採取担当者及び/またはその上司などの管理者が所属する事業所や営業所にある図示しないPCや端末等に対して行うこともでき、また、これらから選ばれる複数の画面に対して行ってもよい。このようにホストコンピュータ13は到着期限の超過を報知する第2報知機能を有する。
【0040】
一方、分析担当部署の分析担当者はPC15を操作して分析関連アプリケーションを立ち上げる。PC15はその表示画面に「容器のバーコードを読み取って下さい」と表示し(ステップS30)、その入力を待つ(ステップS31)。
【0041】
分析担当者がこの表示に従い第2バーコードリーダ14を用いて、分析担当部署に到着した容器3のバーコードBC2を読み取ると、PC15は分析担当部署に容器3が到着したことをホストコンピュータ13に送信し(ステップS32)、ホストコンピュータ13からの分析項目を含む設備関連情報等の受信を待つ(ステップS33)。
【0042】
ステップS24及びステップS25で待機していたホストコンピュータ13はPC15からの容器IDを受信してステップS27に進み、容器IDに関連する、分析項目を含む設備関連情報等を分析担当部署のPCに送信したのち、分析結果を受信するまで待機する(ステップS28)。
【0043】
一方、ステップS33で待機していたPC15はホストコンピュータ13からの、分析項目を含む設備関連情報等を受けてそれらの必要項目をその画面に表示及び/または印刷して分析担当者に通知する。分析担当者はこの設備関連情報等の分析項目に従って容器3内の試料水の分析を行い(ステップS34)、その結果をPC15に入力する。
【0044】
ここで、PC15から設備関連情報等を、CPU、ROM、RAM等を備え、通信機能を有する分析機器に送り、その分析結果を分析機器から直接、PC15に送信できるようにしてもよい。
【0045】
PC15は得られた分析結果をホストコンピュータ13に送信する(ステップS35)。ホストコンピュータ13は分析結果を受信するとそれを設備IDに関連付けてメモリに保存する(ステップS29)。
【0046】
なお、試料水の分析終了後、通常、容器3を洗浄し、再度試料水の採取に用いるので、エラー発生防止のためにその容器IDとそれ以外の情報との関連付けを解消しておくことが好ましい。関連付けの解消はホストコンピュータ13による分析結果の記録(ステップS29)直後に行ってもよいが、容器3内の試料水の再分析に対応できるようにステップS29終了後、例えば7日や10日などの適当な期間の経過後に行うか、あるいは、次回の試料水採取時の容器3の容器IDの読み取りによる、ホストコンピュータ13が装置IDと容器IDとを関連付けて記録するステップS23に先立って行ってもよい。
【0047】
上述した管理システム1によれば、採取担当者が試料水の採取時に第1バーコードリーダ11を用いて、バーコードBC1、BC2を読み取るだけで、ホストコンピュータ13のメモリに設備ID及び容器IDを関連付けて記録できる。これにより、容器IDに関連付けた設備IDを知ることができるので、分析担当部署では到着した容器3がどの水質分析対象設備から採取した試料水かを精度よく知ることができる。
【0048】
また、上述した試料水の管理システム1によれば、容器IDに採取日時も関連付けて記憶できるので、どの日時に採取したかを管理することができる。事業者としては、採取担当者がいつ採取したか、採取担当者が1日に何本採取したのかを知ることができ、採取担当者の行動管理を行うこともできる。
【0049】
また、上述したホストコンピュータ13は、試料水の採取忘れ、容器3の送付忘れを報知する報知処理も実行している。ホストコンピュータ13のメモリには、上述したように設備IDに対応したサンプリング頻度のデータがあり、ホストコンピュータ13は、サンプリング頻度から求めた採取期限をメモリに記録する。ホストコンピュータ13は、携帯端末12から設備ID、容器ID及び採取日時を受信すると、メモリ内の今回の採取期限をリセットし、サンプリング頻度から次回の採取期限を求めてメモリに記録する。
【0050】
ホストコンピュータ13は、この採取期限を過ぎても、携帯端末12から設備ID及び容器IDを受信できないと、採取忘れと判断する。そして、ホストコンピュータ13は、第1報知部として働き、採取期限の超過、すなわち、採取忘れの旨を報知する採取忘れ報知信号に設備関連情報を付して例えば携帯端末12や図示しないPC等に送信する。携帯端末12やPCは、採取忘れ報知信号を受信すると、設備関連情報とともに採取忘れの旨を表示画面などに表示して採取担当者等に報知する。これにより、採取担当者の採取忘れによる分析漏れの防止が可能となる。
【0051】
また、ホストコンピュータ13は、携帯端末12から設備ID及び容器IDを受信した後、分析担当部署への到着期限を超過しても分析担当部署のPC15からその容器IDの受信ができなかった場合、到着期限の超過、即ち容器3の送付忘れと判断する。そして、ホストコンピュータ13は、第2報知部として働き、送付忘れの旨を報知する送付忘れ報知信号に設備関連情報を付して、例えば携帯端末12や図示しないPC等に送信する。携帯端末12やPCは送付忘れ報知信号を受信すると、設備関連情報とともに送付忘れの旨を表示画面などに表示して採取担当者等に報知する。これにより、採取担当者の送付忘れによる分析漏れの防止が可能となる。
【0052】
また、上述した実施形態によれば、ホストコンピュータ13は、携帯端末12から送信される、設備IDあるいは容器IDを読み取った日時を、試料水を採取した採取日時として設備ID、容器ID、設備関連情報に関連付けて記録していたがこれに限ったものではない。例えばホストコンピュータ13が設備ID、容器IDを受信しこれらを関連付けてメモリに記録する日時を採取日時としてこれら設備ID及び容器IDと関連付けて記録してもよい。
【0053】
また、上述した実施形態によれば、試料水の採取忘れ、容器3の送付忘れを報知していたが、これに限ったものではない。試料水の採取忘れ、容器3の送付忘れの報知は必須ではないし、それらとは別の報知機能を有していても構わない。
【0054】
また、設備IDを読み取ることで、いつでも設備関連情報を呼び出せるようにすることもでき、この機能により当該設備の過去の水質分析結果を現場で容易に確認することが可能となる。このとき、グラフ表示とすることで経時変化に対する理解を容易なものとすることができる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 管理システム
2 水質分析対象設備
3 容器
11 第1バーコードリーダ(第1読取部)
13 ホストコンピュータ(記録部)
14 第2バーコードリーダ(第2読取部)
BC1 バーコード(識別タグ)
BC2 バーコード(識別タグ)