IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-船外機 図1
  • 特許-船外機 図2
  • 特許-船外機 図3
  • 特許-船外機 図4
  • 特許-船外機 図5
  • 特許-船外機 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】船外機
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/00 20060101AFI20220715BHJP
   B63H 20/10 20060101ALI20220715BHJP
   B63H 20/12 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B63H20/00 803
B63H20/10 100
B63H20/12 100
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018092017
(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公開番号】P2019196132
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149102
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 習
(72)【発明者】
【氏名】内藤 健司
(72)【発明者】
【氏名】水島 義博
(72)【発明者】
【氏名】水谷 真
(72)【発明者】
【氏名】市川 徳良
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-265601(JP,A)
【文献】特開2018-074798(JP,A)
【文献】特開2016-037067(JP,A)
【文献】特開2011-194902(JP,A)
【文献】特開2008-189113(JP,A)
【文献】特開2003-297219(JP,A)
【文献】特開2005-280572(JP,A)
【文献】特開2006-306175(JP,A)
【文献】特開2012-162191(JP,A)
【文献】特開2006-290197(JP,A)
【文献】特開2000-299630(JP,A)
【文献】特開2006-014524(JP,A)
【文献】米国特許第04559016(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102501958(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 20/00
B63H 20/10
B63H 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続される船外機であって、
エンジンを含む船外機本体と、
前記船外機本体を動作させる電動モータと、
前記電動モータと前記電源とを電気的に接続する電気回路と、
前記電気回路に設けられ、所定のフェール条件が満たされたときに、前記電源から前記電動モータへの電力供給を許容するオン状態から、前記電源から前記電動モータへの電力供給を遮断するオフ状態に切り換わり、所定の復帰指令信号を受信したときに前記オフ状態から前記オン状態に復帰する半導体ヒューズと、
オペレータによる操作を示す信号を出力する操作装置と、
前記電動モータを制御するコントローラと、
前記コントローラからの報知指令信号に応じて、所定の報知情報を出力する出力装置と、
を備え、
前記コントローラは、
前記半導体ヒューズが前記オフ状態であることを示す遮断信号を受信すると、前記報知指令信号を出力して前記出力装置に前記報知情報を出力させ、
前記半導体ヒューズが前記オフ状態で、オペレータによる所定の操作を示す復帰操作信号を前記操作装置から受信したときには、前記復帰指令信号を前記半導体ヒューズに出力する、
船外機。
【請求項2】
前記船外機本体の外部に配置されるリモコン装置をさらに備え、
前記操作装置は、前記リモコン装置に設けられている、
請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記船外機本体の外部に配置されるリモコン装置をさらに備え、
前記出力装置は、前記リモコン装置に設けられている、
請求項1に記載の船外機。
【請求項4】
前記船外機本体の内部に配置されるヒューズボックスをさらに備え、
前記操作装置は、前記ヒューズボックスに設けられている、
請求項1に記載の船外機。
【請求項5】
前記船外機本体の内部に配置されるヒューズボックスをさらに備え、
前記出力装置は、前記ヒューズボックスに設けられている、
請求項1に記載の船外機。
【請求項6】
前記操作装置は、スイッチを含み、
前記操作装置は、前記スイッチが操作されたときに、前記復帰操作信号を出力する、
請求項1に記載の船外機。
【請求項7】
前記出力装置は、ディスプレイであり、
前記報知情報は、前記ディスプレイに表示される報知表示である、
請求項1に記載の船外機。
【請求項8】
前記フェール条件は、過電流を所定回数以上、検出したことである、
請求項1に記載の船外機。
【請求項9】
前記操作装置は、前記船外機の電源スイッチを含み、
前記コントローラは、前記電源スイッチがオフされたときに、前記復帰指令信号を前記半導体ヒューズに出力する、
請求項1に記載の船外機。
【請求項10】
前記船外機本体を上下方向に傾動させるトリム・チルト装置をさらに備え、
前記電動モータは、前記トリム・チルト装置に含まれる、
請求項1に記載の船外機。
【請求項11】
前記船外機本体を左右方向に旋回させるステアリング装置をさらに備え、
前記電動モータは、前記ステアリング装置に含まれる、
請求項1に記載の船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機には、エンジンを含む船外機本体と、船外機本体を動作させる電動モータとを備えるものがある。例えば、特許文献1に記載の船外機は、船外機本体を上下方向に傾動させるトリム・チルト装置を備えている。トリム・チルト装置は、油圧シリンダと、油圧ポンプと、PTTモータとを含む。PTTモータは、電動モータであり、バッテリ等の電源に電気的に接続される。油圧ポンプは、PTTモータによって駆動されることで、作動油を吐出する。油圧シリンダは、油圧ポンプから作動油を供給されることで伸縮し、油圧シリンダの伸縮動作によって船外機本体のトリム動作、及びチルト動作が行われる。
【0003】
一方、船外機には、船外機本体を左右に回動させるステアリング装置を備えるものがある。例えば、ステアリング装置は、ステアリングモータを備える。ステアリングモータは、電動モータであり、電源に電気的に接続される。ステアリング装置は、ステアリングモータの駆動力によって船外機本体を左右に回動させる。
【0004】
上記のような電動モータを過電流等の異常状態から保護するために、船外機にヒューズを設けることが考えられる。ヒューズは、電気回路において電源と電動モータとの間に配置される。異常状態が生じると、ヒューズが溶断することで、電源と電動モータとの間の電気的な接続が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-177172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者は、船外機に半導体ヒューズを用いることを検討した。半導体ヒューズは、異常状態に応答して自動的にオフ状態となることで、電力の供給を遮断する。また、異常状態が解消されると、自動的にオン状態に復帰することで、電力の供給を再開させることができる。
【0007】
しかし、船外機に半導体ヒューズを用いた場合、船外機のオペレータは、半導体ヒューズがオフ状態になっているのかを視覚的に把握することができない。また、半導体ヒューズがオフ状態になった後、自動的にオン状態に復帰したときには、いつ半導体ヒューズが復帰したかを、船外機のオペレータは把握することができない。
【0008】
本発明の目的は、船外機において、半導体ヒューズがオフ状態になったことをオペレータが容易に把握することができると共に、オペレータの操作により半導体ヒューズをオン状態へ復帰できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様に係る船外機は、船外機本体と、電動モータと、電気回路と、半導体ヒューズと、操作装置と、コントローラと、出力装置とを備える。船外機本体は、エンジンを含む。電動モータは、船外機本体を動作させる。電気回路は、電動モータと電源とを電気的に接続する。半導体ヒューズは、電気回路に設けられる。半導体ヒューズは、所定のフェール条件が満たされたときに、電源から電動モータへの電力供給を許容するオン状態から、電源から電動モータへの電力供給を遮断するオフ状態に切り換わる。半導体ヒューズは、所定の復帰指令信号を受信したときにオフ状態からオン状態に復帰する。操作装置は、オペレータによる操作を示す信号を出力する。
【0010】
コントローラは、電動モータを制御する。出力装置は、コントローラからの報知指令信号に応じて、所定の報知情報を出力する。コントローラは、半導体ヒューズがオフ状態であることを示す遮断信号を受信すると、報知指令信号を出力して出力装置に報知情報を出力させる。コントローラは、半導体ヒューズがオフ状態で、オペレータによる所定の操作を示す復帰操作信号を操作装置から受信したときには、復帰指令信号を半導体ヒューズに出力する。
【0011】
本態様に係る船外機では、半導体ヒューズがオフ状態になると、出力装置が報知情報を出力する。そのため、オペレータは、半導体ヒューズがオフ状態になったことを容易に把握することができる。また、半導体ヒューズがオフ状態になったときには、オペレータが所定の操作を操作装置に行うことで、半導体ヒューズをオフ状態からオン状態に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、船外機において、半導体ヒューズがオフ状態になったことをオペレータが容易に把握することができると共に、オペレータの操作により半導体ヒューズをオン状態へ復帰できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る船外機が搭載された船舶を示す斜視図である。
図2】船外機の側面図である。
図3】船外機の制御系を示す模式図である。
図4】船外機が備える電気回路の模式図である。
図5】変形例に係る船外機の側面図である。
図6】変形例に係るヒューズボックスを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る船外機2が搭載された船舶1を示す斜視図である。船外機2は、船舶1の船尾に取り付けられる。船外機2は、船舶1を推進させる推進力を発生させる。本実施形態では、船外機2の数は1つであるが、2つ以上の船外機2が船舶1に搭載されてもよい。
【0015】
船舶1は、操船席3を含む。操船席3には、ステアリング部材4と、第1リモコン装置5と、第2リモコン装置6とが配置されている。ステアリング部材4は、オペレータが船舶1の旋回方向を操作するための部材である。ステアリング部材4は、例えば、ステアリングホイールである。第1リモコン装置5は、オペレータが船速を調整するための装置である。第1リモコン装置5は、オペレータが船舶の前進と後進とを切り換えるための装置である。第2リモコン装置6については後述する。
【0016】
図2は、船外機2の側面図である。船外機2は、船外機本体10とブラケット11とを含む。船外機本体10は、ブラケット11を介して船舶1に取り付けられる。船外機本体10は、エンジン12と、ドライブ軸13と、プロペラ軸14と、シフト機構15とを含む。
【0017】
エンジン12は、船舶1を推進させる推進力を発生させる。エンジン12は、クランク軸16を含む。クランク軸16は鉛直方向に延びている。ドライブ軸13は、クランク軸16に接続されている。ドライブ軸13は、鉛直方向に延びている。プロペラ軸14は、前後方向に延びている。プロペラ軸14は、シフト機構15を介して、ドライブ軸13に接続されている。プロペラ軸14には、プロペラ17が接続される。
【0018】
シフト機構15は、ドライブ軸13からプロペラ軸14へ伝達される動力の回転方向を切り換える。シフト機構15は、例えば、複数のギアと、ギアの噛み合いを変更するクラッチと、を含む。
【0019】
ブラケット11は、トリム・チルト軸18とステアリング軸19とを含む。トリム・チルト軸18は、左右方向に延びている。ブラケット11は、トリム・チルト軸18回りに回転可能に、船外機本体10を支持する。ステアリング軸19は、鉛直方向に延びている。ブラケット11は、ステアリング軸19回りに回転可能に、船外機本体10を支持する。
【0020】
図3は、船外機2の制御系を示す模式図である。図3に示すように、船外機2は、コントローラ21を含む。コントローラ21は、CPUなどのプロセッサと、RAMやROMなどのメモリとを含む。コントローラ21は、船外機2を制御するためのプログラム及びデータを記憶している。コントローラ21は、上述したステアリング部材4、第1リモコン装置5、及び第2リモコン装置6と通信可能に接続されている。
【0021】
コントローラ21は、複数のECU(Electronic Control Unit)を含む。詳細には、コントローラ21は、リモコンECU41と、エンジンECU42と、ステアリングECU43と、電源ECU44とを含む。リモコンECU41と、エンジンECU42と、ステアリングECU43と、電源ECU44とは、それぞれCPUなどのプロセッサと、RAMやROMなどのメモリとを含むコンピュータである。リモコンECU41と、エンジンECU42と、ステアリングECU43と、電源ECU44とは、互いに通信線、或いは無線によって、データ通信可能に接続されている。
【0022】
ステアリング部材4は、中央位置から左右に回転可能である。ステアリング部材4は、ステアリング部材4の位置を示す操作信号をステアリングECU43に出力する。
【0023】
第1リモコン装置5は、スロットル部材22を含む。スロットル部材22は、例えば、スロットルレバーである。スロットル部材22は、ゼロ操作位置から前進方向と後進方向とに操作可能である。第1リモコン装置5は、スロットル部材22の位置を示す操作信号をリモコンECU41に出力する。
【0024】
第2リモコン装置6は、出力装置34と操作装置35とを含む。出力装置34は、コントローラ21からの報知指令信号に応じて、所定の報知情報を出力する。報知情報は、後述する半導体ヒューズ37がオン状態であるのかオフ状態であるのかを示す情報である。出力装置34は、ディスプレイである。報知情報は、ディスプレイに表示される報知表示である。報知表示は、半導体ヒューズ37の状態を示す文字、記号、或いは画像であってもよい。
【0025】
操作装置35は、オペレータによる操作を示す信号を出力する。操作装置35は、スイッチを含む。操作装置35は、スイッチが操作されたときに、復帰操作信号を出力する。復帰操作信号は、半導体ヒューズ37をオフ状態からオン状態に復帰させるための信号である。スイッチは、出力装置34のディスプレイと別体のハードキーであってもよい。或いは、出力装置34のディスプレイはタッチパネル機能を有しており、スイッチは、ディスプレイ上のソフトウェアキーであってもよい。
【0026】
船外機2は、燃料ポンプ24と、トリム・チルト装置25と、ステアリング装置26とを含む。燃料ポンプ24は、船外機本体10内、或いは、船舶1内に配置された燃料タンクに接続されている。燃料ポンプ24は、燃料タンクからエンジン12に燃料を供給する。
【0027】
トリム・チルト装置25は、トリム・チルト軸18回りに船外機本体10を回転させることで、船外機本体10を上下方向に傾動させる。ステアリング装置26は、ステアリング軸19回りに船外機本体10を回転させることで、船外機本体10を左右方向に旋回させる。
【0028】
エンジンECU42は、スロットル部材22の操作量を示す信号をリモコンECU41から受信する。エンジンECU42は、スロットル部材22の操作量に応じて、エンジン回転速度を増減させるように、エンジン12に指令信号を出力する。従って、オペレータは、スロットル部材22を操作することで、船舶1の船速を調整することができる。
【0029】
ステアリングECU43は、ステアリング部材4の操作量、及び操作方向を示す信号をステアリング部材4から受信する。ステアリングECU43は、ステアリング部材4の操作量、及び操作方向に応じて、船外機本体10を左右方向に旋回させるように、ステアリング装置26に指令信号を出力する。従って、オペレータは、ステアリング部材4を操作することで、船舶1の進行方向を調整することができる。
【0030】
船外機2は、PTTスイッチ23を含む。PTTスイッチ23は、オペレータが、船外機本体10のトリム・チルトを操作するための部材である。PTTスイッチ23は、例えば、船外機本体10に配置されている。或いは、PTTスイッチ23は、第1リモコン装置5などの他の装置に配置されてもよい。PTTスイッチ23が操作されると、PTTスイッチ23の操作を示す信号が、リモコンECU41に出力される。PTTスイッチ23の操作を示す信号は、エンジンECU42に出力されてもよい。
【0031】
図4は、船外機2が備える電気回路7の模式図である。図4に示すように、船外機2は、電源27を含む。電源27は、例えばバッテリである。燃料ポンプ24は、電動ポンプであり、電源27に電気的に接続されている。燃料ポンプ24は、電源27からの電力によって駆動される。
【0032】
トリム・チルト装置25は、第1電動モータ28を含む。第1電動モータ28は、電源27に電気的に接続されている。第1電動モータ28は、電源27からの電力によって駆動される。トリム・チルト装置25は、油圧ポンプ31と油圧シリンダ32とを含む。油圧ポンプ31は、第1電動モータ28によって駆動される。油圧シリンダ32は、油圧ポンプ31から吐出される作動油によって伸縮する。トリム・チルト装置25は、油圧シリンダ32の伸縮によって、船外機本体10を上下方向に傾動させる。
【0033】
ステアリング装置26は、第2電動モータ29を含む。第2電動モータ29は、電源27に電気的に接続されている。第2電動モータ29は、電源27からの電力によって駆動される。ステアリング装置26は、第2電動モータ29が駆動されることで、船外機本体10を左右方向に旋回させる。
【0034】
電源ECU44は、リモコンECU41、或いはエンジンECU42から、PTTスイッチ23の操作を示す信号を受信する。電源ECU44は、PTTスイッチ23の操作に応じて、船外機本体10を上下方向に傾動させるように、トリム・チルト装置25に指令信号を出力する。
【0035】
図3に示すように、船外機本体10は、電源スイッチ36を含む。電源スイッチ36がオン操作されることで、電源27から、燃料ポンプ24、トリム・チルト装置25の第1電動モータ28、及びステアリング装置26の第2電動モータ29への電力供給が可能となる。また、電源スイッチ36がオフ操作されることで、電源27から、燃料ポンプ24、トリム・チルト装置25の第1電動モータ28、及びステアリング装置26の第2電動モータ29への電力供給が遮断される。なお、電源スイッチ36は、船外機2の外部に配置されてもよい。
【0036】
図3及び図4に示すように、船外機2の電気回路7は、駆動回路33を含む。駆動回路33は、トリム・チルト装置25の第1電動モータ28と電源27とを電気的に接続する。駆動回路33は、第1電動モータ28への入力電流を制御する。駆動回路33は、例えば複数のリレーを含む。複数のリレーは、例えばメカニカルリレーである。或いは、複数のリレーは、半導体リレーであってもよい。電源ECU44は、駆動回路33を制御することにより、第1電動モータ28を制御する。
【0037】
船外機2の電気回路7は、半導体ヒューズ37を含む。半導体ヒューズ37は、所謂インテリジェントパワーモジュール(IPM)、或いはインテリジェントパワーデバイス(IPD)と呼ばれる電力用半導体素子である。半導体ヒューズ37は、電気回路7において電源27と駆動回路33との間に配置される。
【0038】
半導体ヒューズ37は、所定のフェール条件が満たされたときに、オン状態からオフ状態へ切り換わる。半導体ヒューズ37は、オン状態で、電源27から第1電動モータ28への電力供給を許容する。半導体ヒューズ37は、オフ状態で、電源27から第1電動モータ28への電力供給を遮断する。半導体ヒューズ37は、所定の復帰指令信号を受信したときにオフ状態からオン状態に復帰する。
【0039】
なお、半導体ヒューズ37は、電源ECU44からの信号に応じて、オン状態とオフ状態とに切り換えられる。電源ECU44は、所定のフェール条件が満たされたときに、半導体ヒューズ37をオフ状態に切り換える。また、半導体ヒューズ37は、自己保護機能を有しており、所定のフェール条件が満たされたときには電源ECU44からの信号無しで、自らオン状態からオフ状態に切り換わる。所定のフェール条件は、過電流の発生を含む。過電流の発生は、例えば、第1電動モータ28への電流が所定の閾値を越えたことである。
【0040】
コントローラ21は、所定のフェール条件が満たされているときには、出力装置34に報知指令信号を出力する。例えば、電源ECU44は、所定のフェール条件が満たされているかを判定する。電源ECU44は、所定のフェール条件が満たされているときには、フェール信号をエンジンECU42に出力する。エンジンECU42は、フェール信号を受信すると、リモコンECU41を介して、報知指令信号を出力装置34に出力する。出力装置34は、報知指令信号を受信すると、半導体ヒューズ37がオフ状態であることを示す報知表示を表示する。オペレータは、出力装置34に表示された報知表示により、半導体ヒューズ37がオフ状態であることを知ることができる。
【0041】
半導体ヒューズ37がオフ状態であるとき、オペレータは、操作装置35を操作することで、半導体ヒューズ37をオン状態に復帰させることができる。オペレータが操作装置35を操作すると、操作装置35は、復帰操作信号を出力する。電源ECU44は、半導体ヒューズ37がオフ状態であるときに、操作装置35から復帰操作信号を受信したときには、復帰指令信号を半導体ヒューズ37に出力する。復帰指令信号は、半導体ヒューズ37をオフ状態からオン状態に復帰させるための信号である。半導体ヒューズ37は、電源ECU44から復帰指令信号を受信すると、オフ状態からオン状態に復帰する。
【0042】
なお、電源ECU44は、半導体ヒューズ37がオフ状態で電源スイッチ36がオフされたときにも、復帰指令信号を半導体ヒューズ37に出力する。
【0043】
以上説明した本実施形態に係る船外機2では、所定のフェール条件が満たされると、半導体ヒューズ37が、自己保護機能により、自動的にオフ状態となる。或いは、コントローラ21からの指令により、半導体ヒューズ37がオフ状態となる。それにより、第1電動モータ28を保護することができる。また、半導体ヒューズ37がオフ状態になると、出力装置34が報知情報を出力する。そのため、オペレータは、半導体ヒューズ37がオフ状態になったことを容易に把握することができる。また、半導体ヒューズ37がオフ状態になったときには、オペレータが操作装置35のスイッチを操作することで、半導体ヒューズ37がオン状態に復帰させることができる。それにより、オペレータは、半導体ヒューズ37がオン状態とオフ状態のいずれの状態であるのかを容易に把握することができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
上記の実施形態では、電源27は、船外機1の内部に配置されている。しかし、電源27は、船外機2の外部に配置されてもよい。
【0046】
出力装置34は、ディスプレイに限らず、警告灯、或いは、スピーカー等の他の装置であってもよい。報知情報は、ディスプレイ上の表示に限らず、警告灯の点灯、点滅、或いは、スピーカーからの音声であってもよい。
操作装置は、船外機2のメインスイッチ(電源スイッチ)であってもよい。コントローラ21は、オペレータの操作によりメインスイッチがオフされたときに、復帰指令信号を半導体ヒューズ37に出力して、半導体ヒューズ37をオン状態に復帰させてもよい。
【0047】
出力装置34と操作装置35とは、船舶1の運転席に限らず、船舶1の他の場所に配置されてもよい。出力装置34と操作装置35とは、それぞれ別の場所に配置されてもよい。出力装置34と操作装置35とは、船外機2に設けられてもよい。例えば、図5は、変形例に係る船外機2の側面図である。図5に示すように、変形例に係る船外機2はヒューズボックス63を備える。ヒューズボックス63は、船外機本体10の内部に配置される。ヒューズボックス63は、半導体ヒューズ37を収容している。
【0048】
図6は、ヒューズボックス63を示す模式図である。図6に示すように、出力装置34と操作装置35とは、ヒューズボックス63に設けられてもよい。出力装置34は、ヒューズボックス63に設けられたディスプレイであってもよい。操作装置35は、ヒューズボックス63に設けられたスイッチであってもよい。
【0049】
上記の実施形態では、半導体ヒューズ37は、トリム・チルト装置25の第1電動モータ28を保護するために設けられている。しかし、半導体ヒューズ37は、他の電動モータを保護するために設けられてもよい。例えば、半導体ヒューズ37は、ステアリング装置26の第2電動モータ29を保護するために設けられてもよい。半導体ヒューズ37は、モータに限らず、電線などの船外機2の電気系の他の要素を保護するために設けられてもよい。
電気回路7における半導体ヒューズ37の位置が変更されてもよい。例えば、上記の実施形態では、半導体ヒューズ37は、駆動回路33の上流に配置されているが、駆動回路33の下流に配置されてもよい。或いは、半導体ヒューズ37は、駆動回路33の上流と下流とに配置されてもよい。
【0050】
フェール条件は、過電流の発生を、所定回数以上、検出したことであってもよい。フェール条件は、過電流の発生以外の条件であってもよい。例えば、フェール条件は、半導体ヒューズ37の異常、過電圧の発生、過熱の発生、ON故障、OFF故障、PTTスイッチ23の同時ON操作などの条件の一部、或いは全てを含んでもよい。
なお、ON故障は、コントローラ21がPTTスイッチ23の操作を示す信号を受信していないのに、第1電動モータ28に電流が流れている状態を意味する。OFF故障は、コントローラ21がPTTスイッチ23の操作を示す信号を受信しているのに、第1電動モータ28に電流が流れていない状態を意味する。同時ON操作は、船外機本体10を上昇させる指令信号と、船外機本体10を下降させる指令信号とが同時に出力されている状態を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、船外機において、半導体ヒューズがオフ状態になったことをオペレータが容易に把握することができると共に、オペレータの操作により半導体ヒューズをオン状態へ復帰できるようにすることができる。
【符号の説明】
【0052】
6 第2リモコン装置
7 電気回路
10 船外機本体
12 エンジン
21 コントローラ
25 トリム・チルト装置
26 ステアリング装置
28 第1電動モータ
29 第2電動モータ
34 出力装置
35 操作装置
36 電源スイッチ
37 半導体ヒューズ
63 ヒューズボックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6