(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ストライクの取付用アダプタ
(51)【国際特許分類】
E05B 15/02 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
E05B15/02 B
(21)【出願番号】P 2018098706
(22)【出願日】2018-05-23
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000184621
【氏名又は名称】小松ウオール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090712
【氏名又は名称】松田 忠秋
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】若林 恵里佳
(72)【発明者】
【氏名】本 慶子
(72)【発明者】
【氏名】堀 翔伍
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-129072(JP,A)
【文献】特開2016-069941(JP,A)
【文献】登録実用新案第3111290(JP,U)
【文献】特開平10-037547(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137230(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 15/02
E05C 1/02
E05C 1/04
E05C 1/08-1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠材の切欠部をカバーするようにして枠材に固定するカバー部材と、該カバー部材の内面側に取り付ける保持部材とを備えてなり、前記カバー部材は、ストライクに適合する開口部を有
するとともに断面L字状に屈曲させ、前記保持部材は、前記開口部内のストライクを前記カバー部材の表面と平行に保持してねじ止めすることを特徴とするストライクの取付用アダプタ。
【請求項2】
枠材の切欠部をカバーするようにして枠材に固定するカバー部材と、該カバー部材の内面側に取り付ける保持部材とを備えてなり、前記カバー部材は、ストライクに適合する開口部を有し、前記保持部材は、
前記カバー部材の内面との間にスペーサを介装し、前記開口部内のストライクを前記カバー部材の表面と平行に保持してねじ止めすることを特徴とするストライクの取付用アダプタ。
【請求項3】
前記カバー部材は、断面L字状に屈曲させることを特徴とする請求項
2記載のストライクの取付用アダプタ。
【請求項4】
前記開口部は、ストライクのリップ部を収納可能とすることを特徴とする請求項
1または請求項3記載のストライクの取付用アダプタ。
【請求項5】
前記保持部材は、ストライクとともにトロ除けをねじ止めすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載のストライクの取付用アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扉や戸、窓などの戸先側のラッチボルトやデッドボルトと組み合わせる枠側のストライクの取付用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば扉の戸先側のラッチ機構は、戸先側の枠材の見込面に装着するストライクにラッチボルトを係合させて扉を閉鎖状態に保持する。
【0003】
そこで、ストライクは、ラッチボルトが進入し得る切欠部を枠材に形成した上で、切欠部を覆うようにして枠材の見込面の適位置に固定されている(たとえば特許文献1、2)。なお、ストライクは、枠材に付設する補強材を併用して取り付けることもある(同)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-179779号公報の
図4、
図5
【文献】特開2015-10398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、たとえば扉自体や扉上のラッチ機構などを改修工事によって交換すると、枠材上のストライクの適位置が変わり、枠材に設ける切欠部を拡張せざるを得なくなって、ストライクの取付が難しくなったり、工事が極端に煩雑になったりすることがあるという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、枠材の切欠部をカバーするカバー部材を設けることによって、改修工事などに際しても、ストライクの取付工事を円滑に実施することができるストライクの取付用アダプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための請求項1の発明の構成は、枠材の切欠部をカバーするようにして枠材に固定するカバー部材と、カバー部材の内面側に取り付ける保持部材とを備えてなり、カバー部材は、ストライクに適合する開口部を有するとともに断面L字状に屈曲させ、保持部材は、開口部内のストライクをカバー部材の表面と平行に保持してねじ止めすることをその要旨とする。なお、開口部は、ストライクのリップ部を収納可能にすることができる。
【0008】
請求項2の発明の構成は、枠材の切欠部をカバーするようにして枠材に固定するカバー部材と、カバー部材の内面側に取り付ける保持部材とを備えてなり、カバー部材は、ストライクに適合する開口部を有し、保持部材は、カバー部材の内面との間にスペーサを介装し、開口部内のストライクをカバー部材の表面と平行に保持してねじ止めすることをその要旨とする。なお、カバー部材は、断面L字状に屈曲させることができ、開口部は、ストライクのリップ部を収納可能とすることができる。
【0009】
また、保持部材は、ストライクとともにトロ除けをねじ止めしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、カバー部材は、改修工事の際に枠材の切欠部が拡張されることがあっても、拡張後の切欠部の全体をカバーするようにして枠材に固定される。一方、ストライクは、カバー部材の開口部に嵌め込み、開口部内において、保持部材を介してカバー部材の表面と平行に保持してねじ止めすることにより、容易に、しかも体裁よく枠材の見込面の適位置に固定することができる。なお、保持部材は、カバー部材の内面側に取り付けられている。そこで、保持部材は、カバー部材の開口部にストライクを嵌め込むまでは、開口部を介して一部が外部に露出するが、ストライクを開口部に嵌め込むと、全部が外部から隠蔽され、全体の外観体裁を損うおそれがない。
【0011】
断面L字状に屈曲するカバー部材は、ストライクを取り付ける枠材の見込面から見付面に及ぶ切欠部を支障なくカバーすることができる上、見込面、見付面の2表面に当接させることにより、枠材に対して一層安定に固定することができる。
【0012】
カバー部材は、主としてラッチボルト用のストライクに設けるリップ部を収納可能な開口部を形成することにより、ラッチボルトの摺動に対する耐摩耗性を考慮する必要性がない。ラッチボルトは、リップ部を含むストライクの表面上を摺動し、実質的にカバー部材に摺接することがなくなるからである。
【0013】
保持部材とカバー部材の内面との間にスペーサを介装すれば、カバー部材の表面から、ストライクをねじ止めする保持部材の表面までの段差をストライクの厚さに合致させ、カバー部材の表面と、開口部内のストライクの表面とを正しく同一平面に調整して、一層良好な外観や使い勝手を実現することができる。
【0014】
ストライクとともにトロ除けを保持部材にねじ止めすることにより、トロ除けを付設するために格別な部材を必要としないというメリットがある。なお、このときのカバー部材の表面から保持部材の表面までの段差は、ストライクの厚さと、トロ除けの取付フランジの厚さとの和相当に調整することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0017】
ストライクの取付用アダプタ10(以下、単にアダプタ10という)は、カバー部材11、保持部材12を主要部材としてなる(
図1、
図2)。なお、アダプタ10は、トロ除け22とともに、ストライク21を枠材31の適位置に固定する際に使用する。
【0018】
枠材31は、たとえばラッチボルトを有する扉用の戸先側の竪枠であり、板材を折曲げ加工して形成されている。枠材31の内面側中央部には、戸当り用の突条31aが形成され、扉の開き方向側の見込面31bから見付面31cにかけて、扉側のラッチボルトに対応する切欠部31dが形成されている。ただし、切欠部31dは、たとえば扉の改修工事などにより適宜拡張されていてもよい。
【0019】
ストライク21は、縦長の板材にラッチボルト用の係合孔21aを形成して構成されている(
図1、
図3)。ストライク21の一方の長辺には、リップ部21bが形成され、係合孔21aの上下には、取付用の皿孔21c、21cが形成されている。
【0020】
トロ除け22は、ストライク21の係合孔21aよりやや幅広の縦長の有底のケース体22aに対し、取付フランジ22b、22bが上下に付設されている。なお、各取付フランジ22bには、取付用の透孔22cが形成され、上下の透孔22c、22cは、ストライク21の上下の皿孔21c、21cと同一間隔に揃えられている。
【0021】
カバー部材11は、断面L字状の縦長の板材である(
図1、
図2)。カバー部材11は、枠材31の切欠部31dをカバーする大きさに形成され、枠材31の見込面31b、見付面31cにそれぞれ対応する幅広部11b、幅狭部11cを有する。幅広部11bには、ストライク21に適合する開口部11aが形成されており、開口部11aの一方の長辺は、幅狭部11c側に開放されている。また、幅広部11bの上下両端部には、取付用の皿孔11d、11dが形成されている。
【0022】
保持部材12は、縦長の板材の中間部に片側開放の切欠き12aを形成することにより、上下に旗片12b、12bを形成して構成されている。切欠き12aの上下には、ねじ孔12c、12cが形成され、ねじ孔12c、12cの間隔は、トロ除け22の透孔22c、22c、ストライク21の皿孔21c、21cの間隔に等しくなっている。
【0023】
保持部材12は、スペーサ13、13を介してカバー部材11の内面側に一体に取り付けられている(
図2、
図4)。ただし、
図4(A)は、アダプタ10の正面図であり、
図4(B)~(D)は、それぞれ同図(A)のX矢視相当図、Y矢視相当図、Z-Z線矢視相当要部拡大端面図である。
【0024】
各スペーサ13は、保持部材12の各旗片12bの略半分相当の薄板材である。そこで、保持部材12は、カバー部材11の内面側に対し、切欠き12aが形成されていない側の一辺を幅狭部11cの内面側に当接させるとともに、切欠き12aが開口部11aの上下方向に対称的に位置するように位置決めした状態で、各旗片12bの表面とカバー部材11の内面との間にスペーサ13を介在させて、スペーサ13、13とともにカバー部材11の内面に溶接されている。
【0025】
そこで、カバー部材11の表面と開口部11a内に露出する保持部材12の表面との間に適切な段差dが形成され(
図4(D))、カバー部材11の開口部11a、保持部材12の切欠き12aが重なり合って縦長の窓Wが形成され(同図(A))、窓Wの上下に保持部材12のねじ孔12c、12c、カバー部材11の皿孔11d、11dが一直線状に配列される。ただし、段差dは、ストライク21の厚さ、トロ除け22の各取付フランジ22bの厚さの和相当となるようにスペーサ13の板厚、枚数を調整するものとし、窓Wは、トロ除け22のケース体22aに適合するものとする。
【0026】
ストライク21は、カバー部材11の開口部11aに嵌め込み、開口部11a内において保持部材12によりカバー部材11の表面と平行に保持した上、止めビス23、23を介し、トロ除け22とともに保持部材12にねじ止めすることができる(
図1、
図5)。ただし、このとき、各止めビス23は、ストライク21の皿孔21c、トロ除け22の透孔22cを介して保持部材12のねじ孔12cにねじ込むものとする。また、ねじ止め後のストライク21の表面は、カバー部材11の表面と同一平面に仕上げることができる。カバー部材11、保持部材12の各表面間の段差dが適切に設定され、カバー部材11の幅狭部11c側に開放されているストライク21用の開口部11aは、ストライク21のリップ部21bを併せて収納することができるからである。
【0027】
その後、皿タッピングビス14、14を利用してカバー部材11を枠材31の適位置に固定する(
図1、
図6)。ただし、
図6(A)、(B)は、それぞれ枠材31の見付面31c、見込面31b方向から見た要部外観図、同図(C)は、扉Dの戸先側の要部拡大模式横断面図である。なお、
図6(A)、(B)には、それぞれ竪枠としての枠材31の上端に連結する上枠としての枠材32の一部が併せて図示されている。また、各皿タッピングビス14は、枠材31に設ける下穴31eにねじ込むものとする。
【0028】
扉Dの戸先側のラッチボルトBは、扉Dを閉鎖位置に閉じることにより(
図6(B)、(C)の各矢印K方向)、ストライク21の表面上を摺動して係合孔21aに自動的に係合して扉Dを拘束することができる。
【0029】
以上の説明において、ストライク21に組み合わせる扉D側のラッチボルトBは、扉Dの戸先側から直線的に出没するデッドボルトであってもよく、扉Dの戸先側から回転しながら出没する鎌形のデッドボルトであってもよい。また、枠材31は、図示の板材からなるものに代えて、押出形材や木材などの任意の材料からなるものであってもよい。なお、扉Dは、ストライク21と組み合わせるラッチボルトやデッドボルトを備える限り、扉Dに限らず、引戸を含む任意の形式の戸や窓などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、任意の形式の扉や戸、窓などのラッチボルトやデッドボルトと組み合わせるストライクに対し、広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
11…カバー部材
11a…開口部
12…保持部材
13…スペーサ
21…ストライク
21b…リップ部
22…トロ除け
31…枠材
31d…切欠部
特許出願人 小松ウオール工業株式会社