(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ブリスターパック用蓋材
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20220715BHJP
B65D 75/36 20060101ALI20220715BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220715BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B65D77/20 H
B65D75/36
B65D65/40 D
B32B27/32 E
(21)【出願番号】P 2018113955
(22)【出願日】2018-06-14
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【氏名又は名称】塩川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】安田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙太
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-109324(JP,A)
【文献】特開2002-205769(JP,A)
【文献】特開2000-211052(JP,A)
【文献】特開2012-206776(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204291(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/123197(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/20
B65D 75/36
B65D 65/40
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、ポリオレフィン含有層及び易剥離性層をこの順で具備しており、
前記易剥離性層が
、マレイン酸変性ポリオレフィン
(エチレン-アクリル酸エステル-ジカルボン酸系共重合体を除く)及びアクリル変性ポリオレフィンを含有している、
ポリ塩化ビニル層を少なくとも具備しておりかつポケットを有するブリスター容器の前記ポリ塩化ビニル層に融着させるための、ブリスターパック用蓋材。
【請求項2】
前記ポリオレフィン含有層の前記ポリオレフィンがポリエチレン系樹脂である、請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
機能層を、前記ポリオレフィン含有層の前記基材層側の面に更に有する、請求項1又は2に記載の蓋材。
【請求項4】
前記機能層が、吸収層用樹脂、及び吸収剤を含有している吸収層である、請求項3に記載の蓋材。
【請求項5】
スキン層を、前記機能層の前記基材層側の面に更に有する、請求項3又は4に記載の蓋材。
【請求項6】
前記スキン層が、追加のポリオレフィン含有層である、請求項5に記載の蓋材。
【請求項7】
前記易剥離性層が、前記易剥離性層の質量全体を基準として、40~90質量%の前記アクリル変性ポリオレフィン、及び10~60質量%の前記マレイン酸変性ポリオレフィンを含有している、請求項1~6のいずれか一項に記載の蓋材。
【請求項8】
前記易剥離性層の厚さが、0.1~10μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の蓋材。
【請求項9】
前記易剥離性層を、ポリ塩化ビニル層を少なくとも具備しておりかつポケットを有するブリスター容器に融着させ、それによって
前記ブリスター容器の前記ポリ塩化ビニル層と前記易剥離性層とが接合している接合部、及び
前記ブリスター容器の前記ポケットに対応し、かつ前記ブリスター容器と前記易剥離性層とが接合していない非接合部
を形成し、そして前記蓋材を前記ブリスター容器の前記ポリ塩化ビニル層から剥離させたときに、
(i)前記易剥離性層から前記ブリスター容器を界面剥離させることができるか、又は
(ii)前記易剥離性層を凝集剥離させることができる、
請求項1~8のいずれか一項に記載の蓋材。
【請求項10】
内容物、ブリスター容器、及び蓋材を有する、ブリスターパックであって、
前記ブリスター容器が、ポリ塩化ビニル層を少なくとも具備しておりかつポケットを有しており、
前記蓋材が、基材層、ポリオレフィン含有層、及び易剥離性層をこの順で具備しており、
前記易剥離性層が
、マレイン酸変性ポリオレフィン
(エチレン-アクリル酸エステル-ジカルボン酸系共重合体を除く)及びアクリル変性ポリオレフィンを含有しており、かつ
前記蓋材の易剥離性層が、前記ブリスター容器の前記ポリ塩化ビニル層に融着され、それによって、前記ポケット内に内容物が収容されており、かつ
前記ブリスター容器と前記易剥離性層とが接合している接合部、及び
前記ブリスター容器の前記ポケットに対応し、かつ前記ブリスター容器と前記易剥離性層とが接合していない非接合部
が形成されており、そして前記蓋材を前記ブリスター容器から剥離させたときに、
(i)前記易剥離性層から前記ブリスター容器を界面剥離させることができるか、又は
(ii)前記易剥離性層を凝集剥離させることができる、
内容物入りブリスターパック。
【請求項11】
ブリスターパック用蓋材と、
ポリ塩化ビニル層を少なくとも具備しておりかつポケットを有するブリスター容器と
の組合せであって、
前記蓋材が、基材層、ポリオレフィン含有層、及び易剥離性層をこの順で具備しており、
前記易剥離性層が
、マレイン酸変性ポリオレフィン
(エチレン-アクリル酸エステル-ジカルボン酸系共重合体を除く)及びアクリル変性ポリオレフィンを含有しており、
前記蓋材の前記易剥離性層を、前記ブリスター容器の前記ポリ塩化ビニル層に融着し、それによって
前記ブリスター容器と前記易剥離性層とが接合している接合部、及び
前記ブリスター容器の前記ポケットに対応し、かつ前記ブリスター容器と前記易剥離性層とが接合していない非接合部
を形成し、そして前記蓋材を前記ブリスター容器から剥離させたときに、
(i)前記易剥離性層から前記ブリスター容器を界面剥離させることができるか、又は
(ii)前記易剥離性層を凝集剥離させることができる、
組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスターパック用蓋材に関する。また、本発明は、ブリスターパック、及びブリスターパック用蓋材とブリスター容器との組合せにも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば錠剤等の固形製剤や薬剤の入ったカプセルのための包装容器として、ブリスターパックが用いられている。このブリスターパックは、樹脂シート等で構成されているブリスター容器用シートに、ポケットとよばれる凹部を形成してブリスター容器を形成し、ポケット内に内容物を入れ、そして蓋材をヒートシール等によって接合させることにより形成することができる。
【0003】
ブリスター容器は、ポケットの内側に製剤等を収容した状態で、その周囲に拡がった裾の部分に蓋材をヒートシールすることにより、製剤等が封入された内容物入りブリスターパックとなる。包装に用いるブリスター容器及び/又は蓋材が透明であれば、その内部に封入された製剤を容易に視認することができる。ブリスターパックから内容物を取り出す手段としては、主にブリスター容器のポケットを外側から蓋材側へ押圧変形させて、内容物で蓋材を破り、そして内容物を取り出すこと(プッシュスルー)が行われている。
【0004】
また、近年では、例えば特許文献1に開示されているように、ブリスター容器用蓋材に樹脂をベースとする層を形成する手段が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ブリスターパックに入れる内容物として、柔らかいゲル状物質の錠剤や、口腔内崩壊錠剤など様々な形態のものがあり、従来のプッシュスルーでは内容物を取り出せない場合がある。
【0007】
また、樹脂をベースとする層を有する蓋材を、従来と同様にプッシュスルーする場合、この層を破断させる必要があるが、蓋材の態様によっては、かかる破断が好ましくないことがある。
【0008】
したがって、蓋材を破断させることなく容易に開封できる、ブリスターパック用蓋材を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉基材層、ポリオレフィン含有層及び易剥離性層をこの順で具備しており、
前記易剥離性層が、アクリル変性ポリオレフィン及びマレイン酸変性ポリオレフィンを含有している、
ブリスターパック用蓋材。
〈態様2〉前記ポリオレフィンがポリエチレン系樹脂である、態様1に記載の蓋材。
〈態様3〉機能層を、前記ポリオレフィン含有層の前記基材層側の面に更に有する、態様1又は2に記載の蓋材。
〈態様4〉前記機能層が、吸収層用樹脂、及び吸収剤を含有している吸収層である、態様3に記載の蓋材。
〈態様5〉スキン層を、前記機能層の前記基材層側の面に更に有する、態様3又は4に記載の蓋材。
〈態様6〉前記スキン層が、追加のポリオレフィン含有層である、態様5に記載の蓋材。
〈態様7〉前記易剥離性層が、前記易剥離性層の質量全体を基準として、40~90質量%の前記アクリル変性ポリオレフィン、及び10~60質量%の前記マレイン酸変性ポリオレフィンを含有している、態様1~6のいずれか一項に記載の蓋材。
〈態様8〉前記易剥離性層の厚さが、0.1~10μmである、態様1~7のいずれか一項に記載の蓋材。
〈態様9〉前記易剥離性層を、ポリ塩化ビニル層を少なくとも具備しておりかつポケットを有するブリスター容器に融着させ、それによって
前記ブリスター容器の前記ポリ塩化ビニル層と前記易剥離性層とが接合している接合部、及び
前記ブリスター容器の前記ポケットに対応し、かつ前記ブリスター容器と前記易剥離性層とが接合していない非接合部
を形成し、そして前記蓋材を前記ブリスター容器の前記ポリ塩化ビニル層から剥離させたときに、
(i)前記易剥離性層から前記ブリスター容器を界面剥離させることができるか、又は
(ii)前記易剥離性層を凝集剥離させることができる、
態様1~8のいずれか一項に記載の蓋材。
〈態様10〉内容物、ブリスター容器、及び蓋材を有する、ブリスターパックであって、
前記ブリスター容器が、ポリ塩化ビニル層を少なくとも具備しておりかつポケットを有しており、
前記蓋材が、基材層、ポリオレフィン含有層、及び易剥離性層をこの順で具備しており、
前記易剥離性層が、アクリル変性ポリオレフィン及びマレイン酸変性ポリオレフィンを含有しており、かつ
前記蓋材の易剥離性層が、前記ブリスター容器の前記ポリ塩化ビニル層に融着され、それによって、前記ポケット内に内容物が収容されており、かつ
前記ブリスター容器と前記易剥離性層とが接合している接合部、及び
前記ブリスター容器の前記ポケットに対応し、かつ前記ブリスター容器と前記易剥離性層とが接合していない非接合部
が形成されており、そして前記蓋材を前記ブリスター容器から剥離させたときに、
(i)前記易剥離性層から前記ブリスター容器を界面剥離させることができるか、又は
(ii)前記易剥離性層を凝集剥離させることができる、
内容物入りブリスターパック。
〈態様11〉ブリスターパック用蓋材と、
ポリ塩化ビニル層を少なくとも具備しておりかつポケットを有するブリスター容器と
の組合せであって、
前記蓋材が、基材層、ポリオレフィン含有層、及び易剥離性層をこの順で具備しており、
前記易剥離性層が、アクリル変性ポリオレフィン及び酸変性ポリオレフィンを含有しており、
前記蓋材の前記易剥離性層を、前記ブリスター容器の前記ポリ塩化ビニル層に融着し、それによって
前記ブリスター容器と前記易剥離性層とが接合している接合部、及び
前記ブリスター容器の前記ポケットに対応し、かつ前記ブリスター容器と前記易剥離性層とが接合していない非接合部
を形成し、そして前記蓋材を前記ブリスター容器から剥離させたときに、
(i)前記易剥離性層から前記ブリスター容器を界面剥離させることができるか、又は
(ii)前記易剥離性層を凝集剥離させることができる、
組合せ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蓋材を破断させることなく容易に開封できる、ブリスターパック用蓋材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明のブリスターパックの一実施態様の層構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明のブリスターパックの一実施態様の開封機構を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明のブリスターパックの下記の(ii)の好ましい実施態様の開封機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《ブリスターパック用蓋材》
図1(a)に示すように、本発明のブリスターパック用蓋材10aは、
基材層18、ポリオレフィン含有層16、及び易剥離性層14をこの順で具備しており、
易剥離性層が、アクリル変性ポリオレフィン及びマレイン酸変性ポリオレフィンを含有している。
【0013】
ここで、本明細書において、「易剥離性層」とは、ポリ塩化ビニル層を少なくとも具備しておりかつポケットを有するブリスター容器のポリ塩化ビニル層を蓋材の易剥離性層側に接合させた後に、易剥離性層からブリスター容器を界面剥離させること、及び/又は易剥離性層を凝集破壊させることによって、基材層及び機能層をブリスター容器から分離させて開封することができる層を意味するものである。
【0014】
より具体的には、易剥離性層は、
図2(a)に示すように、易剥離性層14からブリスター容器20を界面剥離させること、及び/又は、
図2(b)に示すように、易剥離性層14を凝集破壊させることができる層である。易剥離性層14は、ブリスター容器20のポケット22に対応するようにして破断される層であってよい。
【0015】
本発明のブリスターパック用蓋材では、蓋材の破断による開封が好ましくない形態、例えば内容物に柔らかいゲル状物質の錠剤を封入したブリスターパックを開封する場合、この易剥離性層の存在により、蓋材を破断させることなく容易に開封して内容物を取り出すことができる。
【0016】
また、本発明のブリスターパック用蓋材では、易剥離性層は、アクリル変性ポリオレフィンを含有している。易剥離性層がアクリル変性ポリオレフィンを含有していることによれば、良好な成形性を有するポリ塩化ビニルへの良好な融着性を薄い膜厚により実現させることができ、その結果、コストダウン及び良好な生産速度をもたらすことができる。
【0017】
また、本発明のブリスターパック用蓋材では、易剥離性層がマレイン酸変性ポリオレフィンを含有しているので、ポリオレフィン含有層に対する接着性がもたらされ、その結果、易剥離性層にポリオレフィン含有層と易剥離性層との層間強度を高め、これらの層の間での意図しない剥離を抑制することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施態様においては、易剥離性層を、ポケットを有するブリスター容器に融着させ、それによってブリスター容器と易剥離性層とが接合している接合部、及びブリスター容器のポケットに対応し、かつブリスター容器と易剥離性層とが接合していない非接合部を形成し、そして蓋材をブリスター容器から剥離させたときに、
(i)
図2(a)に関して言及したように、易剥離性層からブリスター容器を界面剥離させることができるか、又は
(ii)易剥離性層を凝集剥離させることができる。
【0019】
特に、上記(ii)の好ましい実施態様においては、接合部において、易剥離性層の一部が、ブリスター容器に追従し、かつ非接合部において、易剥離性層の全部がポリオレフィン含有層に追従することができる。この実施態様に関し、
図3を参照して説明する。
【0020】
図3(a)に示すように、ポケット22を有するブリスター容器20を、蓋材10に接合させ、それによってブリスター容器20と易剥離性層14とが接合している接合部14a、及びブリスター容器20のポケット22に対応し、かつブリスター容器20と易剥離性層14とが接合していない非接合部14bを形成し、そして蓋材10を剥離させると、接合部14aに対応する領域において、易剥離性層14が凝集剥離する。
【0021】
この凝集剥離を実現するために、ブリスター容器と易剥離性層との間に更に非接合部14b’を設け、これを剥離きっかけとして用いてもよい。この態様の場合には、剥離面が非接合部14b’と接合部14aとの間の境界に達すると、
図3(b)に示すように、易剥離性層14に破断部142’が形成され、そして接合部14aに対応する領域において、易剥離性層14の一部がポリオレフィン含有層16に追従する一方で、易剥離性層14の他の一部がブリスター容器20上に残存するようにして、易剥離性層14が凝集剥離する。
【0022】
易剥離性層14を更に凝集剥離させると、やがて剥離面が接合部14aと非接合部14bとの間の境界に達し、そして
図3(c)に示すように、易剥離性層14に破断部142が形成され、そして非接合部14bにおいて、易剥離性層14がポリオレフィン含有層16に追従して、ブリスターパックを開封することができる。
【0023】
更に開封を進めると、破断部142がポケット22の反対側の縁に達し、そして
図3(d)に示すように、易剥離性層14がポケット22に対応して分断される。
【0024】
別の実施態様においては、
図1(b)に示すように、本発明のブリスターパック用蓋材10bは、随意の機能層12を、ポリオレフィン含有層16の基材層側の面に更に有していてもよい。特に、機能層が特定の物質を含有している場合には、この物質を内容物に接触させることなくブリスターパック用蓋材を開封することができるため、本発明の本発明のブリスターパック用蓋材がより有益となる。
【0025】
また、
図1(b)に示すように、本発明のブリスターパック用蓋材10bは、スキン層16’を、機能層12の基材層18側の面に更に有していてもよい。このスキン層16’は、追加のポリオレフィン含有層であってよい。
【0026】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0027】
〈基材層〉
基材層は、バリア層のみ又は樹脂層のみで構成されていてもよいし、バリア層及び樹脂層で構成されていてよい。
【0028】
(バリア層)
バリア層としては、外部からの水分や有機ガス及び無機ガスが機能層へと透過することを抑制することができる材料を用いることができる。バリア層としては、例えば、これに限られないが、アルミニウム箔、若しくはアルミニウム合金等の金属箔、アルミニウム蒸着膜、シリカ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、若しくはシリカ・アルミナ二元蒸着膜等の無機物蒸着膜、又はポリ塩化ビニリデンコーティング膜、若しくはポリフッ化ビニリデンコーティング膜等の有機物コーティング膜を用いることができる。特に、バリア性及び蓋材としての取り扱い性を両立させやすくする観点から、バリア層としては、アルミニウム箔を用いることが好ましい。
【0029】
バリア層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、蓋材としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0030】
(樹脂層)
樹脂層としては、耐衝撃性、耐摩耗性等に優れた熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド等を単独で、又は2種類以上組み合わせて複層で使用することができる。この樹脂層は、延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよい。また、この樹脂層は、バリア層の片面又は両面に存在していても良い。この樹脂層により、バリア層を保護することができる。
【0031】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0032】
なお、本明細書において、ポリエチレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。
【0033】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
ビニル系ポリマーとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル(PAN)等が挙げられる。
【0035】
ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0036】
ポリアミドとしては、例えばナイロン(登録商標)6、ナイロンMXD6等のナイロン等が挙げられる。
【0037】
樹脂層の厚さは、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、バリア層を良好に保護する観点から好ましく、また55μm以下、50μm以下、又は45μm以下であることが、蓋材としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0038】
〈ポリオレフィン含有層〉
ポリオレフィン含有層は、ポリオレフィンを含有しており、かつ基材層と易剥離性層との間に存在している層である。また、ブリスターパック用蓋材が機能層を有する場合には、ポリオレフィン含有層は、機能層に融着されていてもよい。ポリオレフィンとしては、例えば樹脂層に関して挙げたポリオレフィンを用いることができる。
【0039】
特に、ブリスターパック用蓋材が下記で言及する機能層を有し、かつ機能層が特定の物質を含有している場合、ポリオレフィン含有層は、この特定の物質の脱落や内容物への接触を防止することができる。また、この場合には、ポリオレフィン含有層は、この特定の物質を含有していない層であってよい。例えば、機能層が吸収剤を含有している吸収層である場合には、ポリオレフィン含有層は、吸収剤を含有していない層であってよい。
【0040】
また、別の態様においては、ポリオレフィン含有層が機能層の役割を有していてもよい。この場合、例えば、ポリオレフィン含有層は、ポリオレフィン、及び吸収剤を含有している層であってよい。この場合、吸収剤は、ポリオレフィンに分散されていてよい。
【0041】
ポリオレフィン含有層の厚さは、1μm以上、3μm以上、5μm以上、又は7μm以上であることができ、また50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は15μm以下であることができる。
【0042】
〈機能層〉
機能層は、ブリスターパック用蓋材に特定の機能を付与する層であってよい。機能層は、熱可塑性樹脂を基礎材料とする層であってよい。かかる機能層としては、例えば吸収層、徐放性層、抗菌層等が挙げられる。
【0043】
〈機能層:吸収層〉
吸収層は、吸収層用樹脂、及び吸収剤を含有している層である。吸収剤は、吸収層用樹脂に分散されていてよい。
【0044】
吸収層中の吸収剤の含有率は、良好な吸収能力を確保する観点から、吸収層全体の質量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、又は10質量%以上であることが好ましく、また良好な製膜性を確保する観点から、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下であることが好ましい。
【0045】
吸収層の厚さは、1μm以上、2μm以上、3μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であることが、良好な吸収能力を確保する観点から好ましく、また100μm以下、90μm以下、又は80μm以下であることが、蓋材のしなやかさを確保する観点から好ましい。
【0046】
(吸収層用樹脂)
吸収層用樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂を単独で又は混合させて用いることができる。
【0047】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル、アイオノマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
吸収層が水蒸気を吸収対象とする場合には、樹脂のJIS K 7129に準拠する水蒸気透過度は、40℃相対湿度90%で、25μmの厚さのフィルムについて測定したときに、5g/(m2・day)以上、10g/(m2・day)以上、又は15g/(m2・day)以上であることが、良好な吸収速度を確保する観点から好ましく、また100g/(m2・day)以下、90g/(m2・day)以下、又は80g/(m2・day)以下であることが、製造工程における失活を防止する観点から好ましい。
【0049】
吸収層が酸素を吸収対象とする場合には、樹脂のJIS K7126-1に準拠する酸素透過度は、25℃相対湿度0%で、25μmの厚さのフィルムについて測定したときに、5000cc/(m2・day・MPa)以上、10000cc/(m2・day・MPa)以上、又は30000cc/(m2・day・MPa)以上であることが、良好な吸収速度を確保する観点から好ましく、また230000cc/(m2・day・MPa)以下、200000cc/(m2・day・MPa)以下、又は150000cc/(m2・day・MPa)以下であることが、製造工程における失活を防止する観点から好ましい。
【0050】
(吸収剤)
吸収剤としては、例えば吸湿剤、及び吸ガス剤を用いることができる。
【0051】
吸湿剤としては、親水性ゼオライト、シリカゲル等の物理吸湿剤、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等の化学吸湿剤等を用いることができる。
【0052】
親水性ゼオライトとしては、例えばA型、X型、又はLSX型のゼオライトを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、また組み合わせて用いてもよい。
【0053】
吸ガス剤としては、活性炭、疎水性ゼオライト等の物理吸ガス剤、鉄系酸素吸収剤、ハロゲン化金属、酸化金属、硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、亜ニチオン酸塩等の化学吸ガス剤を用いることができる。
【0054】
疎水性ゼオライトとしては、例えばベータ型、ZSM-5型、フェリエナイト型、モルデナイト型、L型、又はY型のゼオライトを使用することができる。また、ZSM-5型ゼオライトの類縁体であるZSM-11、シリカライト、シリカライト-2、ペンタシル型メタロケイ酸塩を使用することもできる。これらは単独で用いてもよく、又は組み合わせて用いてもよい。
【0055】
鉄系酸素吸収剤としては、鉄粉(例えば、還元鉄粉、噴霧鉄粉、活性鉄粉等)、酸化第一鉄、第一鉄塩等を用いることができる。
【0056】
ハロゲン化金属としては、例えば、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム等を用いることができる。
【0057】
酸化金属としては、例えば酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸素欠陥を有する酸化セリウム、酸素欠陥を有する酸化チタン等を用いることができる。
【0058】
〈スキン層〉
スキン層は、スキン層用樹脂を含有しており、かつ機能層の易剥離性層側の面に存在している層である。スキン層は、機能層の基材層側の面に更に存在していてもよい。また、スキン層は、機能層に融着されていてもよい。
【0059】
特に、機能層が特定の物質を含有している場合、スキン層は、この特定の物質の脱落や内容物への接触を防止することができる。また、この場合には、スキン層は、この特定の物質を含有していない層であってよい。例えば、機能層が吸収剤を含有している吸収層である場合には、スキン層は、吸収剤を含有していない層であってよい。
【0060】
スキン層は、ポリオレフィンを含有している追加のポリオレフィン含有層であってよい。
【0061】
スキン層の厚さは、1μm以上、3μm以上、5μm以上、又は7μm以上であることができ、また50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は15μm以下であることができる。スキン層の厚さと、ポリオレフィン含有層の厚さとは、同一であっても異なっていてもよい。
【0062】
(スキン層用樹脂)
スキン層用樹脂としては、樹脂層に関して挙げた熱可塑性樹脂を、単独で又は混合させて用いることができる。機能層の両側にスキン層が存在している場合、それぞれのスキン層を構成するスキン層用樹脂は、同一であっても異なっていてもよい。
【0063】
〈易剥離性層〉
易剥離性層は、アクリル変性ポリオレフィン及びマレイン酸変性ポリオレフィンを含有している層である。易剥離性層は、例えばコーティングとして存在していてよい。また、易剥離性層とはポリオレフィン含有層とは、互いに直接的に接していてよい。
【0064】
易剥離性層は、易剥離性層の質量全体を基準として、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、又は65質量%以上であり、かつ90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、又は75質量%以下のアクリル変性ポリオレフィン、及び10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であり、かつ60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下のマレイン酸変性ポリオレフィンを含有していることが、ポリオレフィン含有層との良好な接着性を実現する観点から好ましい。
【0065】
易剥離性層の厚さは、コーティングの態様においては、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.7μm以上、又は1.0μm以上であることができ、また20.0μm以下、10.0μm以下、8.0μm以下、5.0μm以下、又は3.0μm以下であることができる。
【0066】
アクリル変性ポリオレフィンは、例えば、側鎖にアクリル成分がグラフト重合されているポリオレフィンであってよい。
【0067】
アクリル成分は、例えば(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等、並びにこれらの組合せであってよい。
【0068】
マレイン酸変性ポリオレフィンは、一般に、側鎖にマレイン酸がグラフト重合されているポリオレフィンであってよい。
【0069】
《ブリスターパック用蓋材の製造方法》
本発明のブリスターパック用蓋材は、ポリオレフィン含有層、並びに随意の機能層及びスキン層を製膜する製膜工程、ポリオレフィン含有層に易剥離性層を積層させる第一の積層工程、ポリオレフィン含有層、機能層又はスキン層に基材層を積層させ第二の積層工程を含む方法により製造することができる。第一の積層工程及び第二の積層工程は、いずれを先に行ってもよく、又は同時に行ってもよい。
【0070】
〈製膜工程〉
製膜工程は、ポリオレフィン含有層並びに随意の機能層及びスキン層を構成する樹脂を、例えばニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロールコニカルミキサー等のバッチ式混練機や、2軸混練機等の連続混練機等を用い、次いで混練した樹脂を、多層インフレーション法、又は多層Tダイ法等の共押出法により、ポリオレフィン含有層並びに随意の機能層及びスキン層を一体としてフィルム状に成形することにより行うことができる。
【0071】
〈第一の積層工程〉
第一の積層工程は、ポリオレフィン含有層と易剥離性層とを、ドライラミネート法、サンドラミネート法等により、接着層を介して積層して行ってもよく、又はグラビアコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、リップコート、ディップコート等のコーティング手段、又はグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルク印刷等の印刷手段により、易剥離性層をポリオレフィン含有層に形成してもよい。
【0072】
〈第二の積層工程〉
第二の積層工程は、例えば基材層とポリオレフィン含有層、機能層又は追加のスキン層とを、ドライラミネート法、サンドラミネート法等により、接着層を介して積層させることにより行うことができる。
【0073】
《内容物入りブリスターパック》
内容物入りブリスターパックは、内容物、ブリスター容器、及び蓋材を有する。このブリスター容器は、ポリ塩化ビニル(PVC)層を少なくとも具備しておりかつポケットを有している。この蓋材としては、上記のブリスターパック用蓋材を用いることができる。
【0074】
蓋材の易剥離性層は、ブリスター容器のポリ塩化ビニル層に融着されており、それによって、ポケット内に内容物が収容されており、かつ
ブリスター容器と易剥離性層とが接合している接合部、及び
ブリスター容器のポケットに対応し、かつブリスター容器と易剥離性層とが接合していない非接合部
が形成されており、そして蓋材をブリスター容器から剥離させたときに、
(i)易剥離性層からブリスター容器を界面剥離させることができるか、又は
(ii)易剥離性層を凝集剥離させることができる。
【0075】
〈内容物〉
内容物としては、外気との接触によって劣化しうる物であれば限定されるものではなく、薬剤の他、食品、化粧品、衛生用品、医療機器、医療器具、電子部品等を挙げることができる。また、薬剤としては、医薬品製剤の他、洗浄剤、農薬、試薬等を含む。
【0076】
〈ブリスター容器〉
ブリスター容器としては、PVC層を少なくとも具備しておりかつポケットを有するブリスター容器を用いることができる。
【0077】
ブリスター容器は、例えばブリスター容器用シートに、内容物を入れるためのポケットを形成することにより製造することができる。ポケットを成形する際の成形方法としては、平板式空圧成形法、プラグアシスト圧空成形法、ドラム式真空成型法、プラグ成形法等が挙げられる。この中でも、粘度平均分子量100万以上の超高分子量ポリエチレン樹脂製の先端部が丸い円柱状の棒(プラグ材)を用いたプラグ成形法が、ポケットを形成するためには好ましい。
【0078】
ブリスター容器としては、単層のPVC層で構成されているブリスター容器用シート、又はPVC層を少なくとも含む複数の層を積層させた複層のブリスター容器用シートを用いることができる。
【0079】
複層のブリスター容器用シートは、基材層とPVC層を有していてもよい。また、基材層とPVC層の間には、任意にバリア層、補強層、機能層等を設けてもよく、例えば基材層、バリア層、補強層、機能層、及びPVC層をこの順に有する。隣り合う各層を貼り合わせる方法としては、ドライラミネート法、サンドラミネート法等が挙げられる。
【0080】
ブリスター容器用シートの厚さは、ブリスター容器としての適切な強度、コシ、バリア性等の観点から、例えば500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、150μm以下、又は100μm以下とすることができ、また50μm以上、60μm、又は70μm以上とすることができる。
【0081】
(ブリスター容器用PVC層)
ブリスター容器用PVC層は、PVCで構成されている層である。この層を介して、ブリスター容器を本発明のブリスターパック用蓋材と融着させることができる。
【0082】
PVC層の厚みは、ブリスター容器用シートに適度な成形性を与える観点から、300μm以下、200μm以下、150μm以下、130μm以下、又は100μm以下であってよく、また10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm、又は50μm以上であってよい。
【0083】
(ブリスター容器用基材層)
ブリスター容器用基材層に用いられる樹脂としては、ブリスター容器用シートに適度なバリア性及び成形性を与える樹脂であれば特に制限されない。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン系樹脂、飽和ポリエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(登録商標)、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロンMXD6)、環状ポリオレフィン(COP、COC)、及びフッ素系樹脂(例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン)等、並びにこれらの混合物が挙げられる。これらは単層で用いても良いし、2層以上を積層して用いても良い。好ましくは、外部からの水分の浸入を防ぎ、防湿性に優れているものがよく、特にポリプロピレン系樹脂、ポリアミド及び飽和ポリエステルが挙げられる。
【0084】
基材層の厚みは、バリア性を維持し、かつブリスターパック全体に強度等を与える観点から、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってよく、また300μm以下、200μm以下、又は100μm以下であってよい。
【0085】
(ブリスター容器用バリア層)
ブリスター容器用バリア層に用いられる材料としては、アルミニウム箔等の金属箔、シリカ蒸着フィルム、アルミニウム蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ・アルミナ蒸着フィルム、塩化ビニリデンコートフィルム、ポリフッ化ビニリデンコートフィルム等、及びこれらの組合せを挙げることができる。バリア層の厚みは、ブリスター容器用シートに適切な成形性とバリア性を与えるために、7μm以上、10μm以上、又は20μm以上であってよく、また60μm以下、50μm以下、又は40μm以下であってよい。
【0086】
(ブリスター容器用補強層)
ブリスター容器用補強層は、ブリスター容器用シートの成形性を向上させるために用いられる。補強層に用いられる樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド(例えば、ナイロン(登録商標)、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロンMXD6)等、並びにこれらの混合物が挙げられる。補強層の厚みは、例えば10μm以上、15μm以上、又は25μm以上であってよく、また60μm以下、又は50μm以下であってよい。
【0087】
(他の層)
複層のブリスター容器用シートは、随意の他の層を有していてよい。他の層としては、例えば熱可塑性樹脂中に吸収剤を含有している機能層、機能層上のスキン層、各層を接着させる接着層等が挙げられる。なお、蓋材の機能層と、ブリスター容器用シートの機能層とは、同じものを用いても良いし、層の厚さや、吸収剤又は樹脂の種類又は含有量等が異なるものを用いてもよい。
【0088】
〈蓋材〉
蓋材は、上記のブリスターパック用蓋材であってよい。
【0089】
《組合せ》
本発明の組合せは、ブリスターパック用蓋材と、ポリ塩化ビニル層を少なくとも具備しておりかつポケットを有するブリスター容器との組合せである。
【0090】
この組合せにおいて、蓋材の易剥離性層を、ブリスター容器のポリ塩化ビニル層に融着し、それによって
ブリスター容器と易剥離性層とが接合している接合部、及び
ブリスター容器のポケットに対応し、かつブリスター容器と易剥離性層とが接合していない非接合部
を形成し、そして蓋材を剥離させたときに、
(i)易剥離性層からブリスター容器を界面剥離させることができるか、又は
(ii)易剥離性層を凝集剥離させることができる。
【0091】
ブリスターパック用蓋材及びブリスター容器としては、それぞれ上記のブリスターパック用蓋材及びブリスター容器を用いることができる。
【実施例】
【0092】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0093】
《ブリスターパック用蓋材の作製》
〈実施例1〉
空冷方式インフレーションによる共押出成形にて、スキン層、機能層としての吸収層、及びスキン層がこの順で配置されるようにして、2種3層の吸収フィルムを作製した。スキン層としては、直鎖状低密度ポリエチレンを用い、吸収層用樹脂としては、親水性ゼオライト及びエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)を溶融混練して作製した樹脂を用いた。各層の厚さは、スキン層10μm、吸収層30μm、スキン層10μmとした。
【0094】
次いで、作製した吸収フィルムの一方のスキン層の表面の濡れ性を確認し、必要に応じてコロナ処理を施し、そしてこのスキン層側に、基材層としてのPET(12μm)//アルミニウム箔(9μm)の積層体のアルミニウム箔側を、ドライラミネート接着剤を用いて積層させた。
【0095】
次いで、もう一方のスキン層側に、アクリル変性ポリオレフィン47.8質量部及びマレイン酸変性ポリオレフィン52.2質量部を混合し、これを塗布して乾燥させることにより、易剥離性層を積層させて、実施例1のブリスターパック用蓋材を作製した。
【0096】
〈実施例2~4、比較例1、及び参考例〉
易剥離性層として、表1に示す構成の易剥離性層を用いたことを除き、実施例1と同様にして、実施例2~4、比較例1、及び参考例のブリスターパック用蓋材を作製した。
【0097】
〈比較例2〉
易剥離性層を積層させなかったことを除き、実施例1と同様にして、比較例2のブリスターパック用蓋材を作製した。
【0098】
《評価》
〈剥離試験〉
作製したブリスターパック用蓋材の易剥離性層又はスキン層側を、ナイロン(25μm)//アルミニウム箔(40μm)//PVC(60μm)の層構成を有するブリスター容器用シートのPVC層側にヒートシールさせた。ヒートシール条件は、ブリスターパック用蓋材側の温度150℃、ブリスター容器用シート側の温度40℃、時間3秒、圧力0.2MPaとした。
【0099】
次いで、ヒートシールさせたブリスターパック用蓋材及びブリスター容器用シートを15mm幅に切り出し、JIS K 6854-3に準拠して、引張試験機を用いて、引張速度300mm/minの条件でT型剥離させ、ヒートシール強さを測定することにより、蓋材の易剥離性を評価した。
【0100】
〈吸湿試験〉
作製したブリスターパック用蓋材を100mm×100mmに切り出して吸湿試験用サンプルとし、このサンプルの質量を測定した。
【0101】
上記サンプルを温度60℃、相対湿度100%RHの環境下で6時間暴露した後のサンプルの質量を測定した。
【0102】
処理前後の質量の差を計算し、得られた質量値を1m2当たりの質量に換算した。
【0103】
評価基準は以下のとおりである:
○:吸湿量が1g/m2以上である。
×:吸湿量が1g/m2未満である。
【0104】
結果を表1に示す。
【0105】
【0106】
表1から、易剥離性層が、アクリル変性ポリオレフィン及び酸変性ポリオレフィンを含有している実施例1~4のブリスターパック用蓋材は、これらの少なくとも一方を含有していない参考例及び比較例1~2のブリスターパック用蓋材はと比較して、良好なシール強度が得られていることが理解できよう。
【0107】
同様に表1からは、実施例1~4のブリスターパック用蓋材のいずれも、機能性が損なわれていないことが理解できよう。
【符号の説明】
【0108】
10 ブリスターパック用蓋材
12 機能層
14 易剥離性層
14a 接合部
14b、14b’ 非接合部
142、142’ 破断部
16 ポリオレフィン含有層
16’ スキン層
18 基材層
20 ブリスター容器
22 ポケット
30 内容物