(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】熱源装置
(51)【国際特許分類】
F24D 3/00 20220101AFI20220715BHJP
F24D 3/08 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
F24D3/00 X
F24D3/08 E
(21)【出願番号】P 2018114483
(22)【出願日】2018-06-15
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】俵 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】深谷 篤
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/020806(WO,A1)
【文献】特開2005-61815(JP,A)
【文献】特開2018-71925(JP,A)
【文献】特開平9-318085(JP,A)
【文献】実開平3-31218(JP,U)
【文献】特開2002-71210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00
F24D 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の暖房端末との間で温水を循環させ得るように該暖房端末に温水路を介して接続された第1熱交換器と、
前記第1熱交換器を流れる温水を該第1熱交換器を介して加熱する加熱部と、
前記第1熱交換器の出口から前記暖房端末を経由させずに該第1熱交換器の入口に温水を還流させ得るように該第1熱交換器の出口を該第1熱交換器の入口に接続する温水バイパス路と、
上流側から流入する給湯用水を下流側に供給する給湯路と、
前記温水バイパス路を流れる温水から前記給湯路を流れる給湯用水に伝熱することで該給湯用水を加熱し得るように該温水バイパス路及び該給湯路に介装された第2熱交換器と、
前記第1熱交換器から前記暖房端末を経由する温水の循環を遮断し、且つ、前記第1熱交換器から前記温水バイパス路を経由する温水の循環を可能とする第1動作状態と、前記第1熱交換器から前記暖房端末を経由する温水の循環を可能とし、且つ、前記第1熱交換器から前記温水バイパス路を経由する温水の循環を遮断する第2動作状態とに切換可能な流路切換装置と、
該流路切換装置の第1動作状態及び第2動作状態のそれぞれの動作状態において前記第1熱交換器を経由させて温水を流通させるように作動可能な循環ポンプと、
前記加熱部、前記流路切換装置及び前記循環ポンプの作動を制御する機能を有する制御装置とを備える熱源装置であって、
前記制御装置は、当該熱源装置での前記温水及び給湯用水の凍結防止のための凍結防止処理の実行条件が成立したとき、前記循環ポンプを作動させつつ、前記流路切換装置を第1動作状態及び第2動作状態に交互に動作させるように構成されていると共に、前記凍結防止の要求度合いに関連する所定種類の指標情報を取得可能であり、該指標情報により示される前記凍結防止の要求度合いが高いほど、前記流路切換装置を前記第1動作状態に動作させる期間を長くするように構成されていることを特徴とする熱源装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱源装置において、
前記指標情報は、前記給湯路内の給湯用水の温度の高低度合いを示す情報を含み、前記制御装置は、該指標情報により示される給湯用水の温度が低いほど、前記流路切換装置を前記第1動作状態に動作させる期間を長くするよう構成されていることを特徴とする熱源装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の熱源装置において、
前記制御装置は、前記凍結防止処理の実行条件が成立した状態で、前記加熱部の所定の作動条件が成立した場合に、前記循環ポンプを作動させつつ、前記流路切換装置を第1動作状態及び第2動作状態に交互に動作させることに加えて、前記加熱部を作動させるように構成されており、
前記指標情報は、前記加熱部を実際に作動させることがができたか否かを示す情報を含み、
前記制御装置は、前記凍結防止処理の実行条件が成立した状態で、前記加熱部の所定の作動条件が成立した場合に、該加熱部を作動させることができない場合には、該加熱部を作動させることができた場合よりも、前記流路切換装置を前記第1動作状態に動作させる期間を長くするよう構成されていることを特徴とする熱源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房運転と給湯運転とを行い得る熱源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房運転と給湯運転とを行い得る熱源装置としては、例えば特許文献1に見られるものが知られている。この熱源装置は、暖房端末との間で温水を循環させ得るように該暖房端末に温水路を介して接続された第1熱交換器と、この第1熱交換器を介して温水を加熱するバーナ(燃焼式の加熱源)と、第1熱交換器の出口から流出する温水を暖房端末を経由させずに第1熱交換器の入口に還流させるための温水バイパス路と、給湯用水を流す給湯路と、温水バイパス路を流れる温水から給湯路を流れる給湯用水に伝熱することにより該給湯用水を加熱し得るように該温水バイパス路及び給湯路に介装された第2熱交換器(液液式の熱交換器)と、第1熱交換器から暖房端末及び温水バイパス路の一方又は両方を経由させて温水を循環させるための循環ポンプとを備える。
【0003】
さらに、この熱源装置は、前記温水路と温水バイパス路との接続部に介装された三方弁を備えており、この三方弁の作動制御を行うことで、循環ポンプに作動により第1熱交換器を流れる温水を、該第1熱交換器から、暖房端末及び温水バイパス路の一方だけを経由させて循環させたり、あるいは、暖房端末及び温水バイパス路の両方を経由させて循環させることが可能となっている。
【0004】
そして、この熱源装置では、バーナの燃焼熱により第1熱交換器で加熱された温水を、暖房端末を経由させて循環させることで、暖房端末での暖房運転が行われる。また、給湯路での給湯用水の通水時に、第1熱交換器で加熱された温水を温水バイパス路を経由させて循環させることで、給湯用水が第2熱交換器で加熱され、ひいては、給湯路の下流側の給湯栓等に湯を供給する給湯運転が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-71925号公報
【文献】特開平9-318085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に見られる如き構成の熱源装置では、冬季等の低温環境下において、暖房運転や給湯運転が行われていない状況で、熱源装置の内部で、第1熱交換器を通る温水路、あるいは、第2熱交換器を通る温水バイパス路もしくは給湯路の内部に存在する水が凍結する虞がある。そして、このような凍結が発生すると、第1熱交換器や第2熱交換器の損傷が生じる虞があるので、当該凍結を事前に防止することが望まれる。
【0007】
一方、暖房用の温水を熱交換器と暖房端末との間で循環させるシステムでは、例えば特許文献2に見られるように、凍結防止のための所定の条件が成立すると、暖房用の温水を、熱交換器で加熱しつつ、該熱交換器と暖房端末との間で循環させることで、該暖房用の温水の凍結を防止する技術が従来より知られている。
【0008】
ただし、かかる凍結防止技術をそのまま、前記特許文献1に見られる如き構成の熱源装置に適用しても、前記温水バイパス路あるいは給湯路の内部の水の凍結を防止することは難しい。
【0009】
そこで、例えば、前記第1熱交換器から暖房端末を経由させて温水を循環させることと、第1熱交換器から温水バイパス路を経由させて温水を循環させることとを交互に行うことで、第1熱交換器を通る温水路と、第2熱交換器を通る温水バイパス路及び給湯路とで、内部の水の凍結を防止することが考えられる。
【0010】
ただし、この場合、温水バイパス路での温水の流通が間欠的なものとなるため、環境条件等によっては、特に、第2熱交換器を通る温水バイパス路や給湯路の内部の水に与えられる熱量が不足して、該水の凍結を防止できない虞がある。
【0011】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、温水バイパス路の温水と給湯路の給湯用水との熱交換により給湯用水を加熱するように構成された熱源装置での水の凍結防止を適切に行うことができる熱源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の熱源装置は、上記の目的を達成するために、外部の暖房端末との間で温水を循環させ得るように該暖房端末に温水路を介して接続された第1熱交換器と、
前記第1熱交換器を流れる温水を該第1熱交換器を介して加熱する加熱部と、
前記第1熱交換器の出口から前記暖房端末を経由させずに該第1熱交換器の入口に温水を還流させ得るように該第1熱交換器の出口を該第1熱交換器の入口に接続する温水バイパス路と、
上流側から流入する給湯用水を下流側に供給する給湯路と、
前記温水バイパス路を流れる温水から前記給湯路を流れる給湯用水に伝熱することで該給湯用水を加熱し得るように該温水バイパス路及び該給湯路に介装された第2熱交換器と、
前記第1熱交換器から前記暖房端末を経由する温水の循環を遮断し、且つ、前記第1熱交換器から前記温水バイパス路を経由する温水の循環を可能とする第1動作状態と、前記第1熱交換器から前記暖房端末を経由する温水の循環を可能とし、且つ、前記第1熱交換器から前記温水バイパス路を経由する温水の循環を遮断する第2動作状態とに切換可能な流路切換装置と、
該流路切換装置の第1動作状態及び第2動作状態のそれぞれの動作状態において前記第1熱交換器を経由させて温水を流通させるように作動可能な循環ポンプと、
前記加熱部、前記流路切換装置及び前記循環ポンプの作動を制御する機能を有する制御装置とを備える熱源装置であって、
前記制御装置は、当該熱源装置での前記温水及び給湯用水の凍結防止のための凍結防止処理の実行条件が成立したとき、前記循環ポンプを作動させつつ、前記流路切換装置を第1動作状態及び第2動作状態に交互に動作させるように構成されていると共に、前記凍結防止の要求度合いに関連する所定種類の指標情報を取得可能であり、該指標情報により示される前記凍結防止の要求度合いが高いほど、前記流路切換装置を前記第1動作状態に動作させる期間を長くするように構成されていることを特徴とする。
【0013】
なお、本発明における「温水」は、温められた水に限らず、冷えた水であってもよい。ここで、前記循環ポンプを作動させつつ、流路切換装置を前記第1動作状態に動作させた状態では、第1熱交換器と温水バイパス路との間で温水が循環しつつ、該温水に、循環ポンプがその作動により発生する熱が伝熱される。このため、基本的には、熱源装置において、第1熱交換器と温水バイパス路とを経由する流路を流れる温水がさらに冷えるのが防止され、ひいては、該温水の凍結が防止(予防)される。
【0014】
さらにこのとき、第2熱交換器において、温水バイパス路を流れる温水から、給湯路内の給湯用水への伝熱が行われ、この伝熱された熱は、熱源装置における給湯路で拡散する。このため、基本的には、熱源装置の内部において、第2熱交換器の通水路を含めた給湯用水がさらに冷えるのが防止され、ひいては、該給湯用水の凍結が防止(予防)される。
【0015】
また、前記循環ポンプを作動させつつ、流路切換装置を前記第2動作状態に動作させた状態では、第1熱交換器と暖房端末との間で温水路を介して温水が循環しつつ、該温水に、循環ポンプがその作動により発生する熱が伝熱される。このため、基本的には、熱源装置の内部において、第1熱交換器と温水路とを流れる温水がさらに冷えるのが防止され、ひいては、該温水の凍結が防止(予防)される。
【0016】
本発明では、前記制御装置は、前記凍結防止処理の実行条件が成立したとき、前記循環ポンプを作動させつつ、前記流路切換装置を第1動作状態及び第2動作状態に交互に動作させる。このため、熱源装置の内部において、前記温水や給湯用水が凍結するのを防止することが可能なる。
【0017】
しかも、本発明では、前記制御装置は、前記凍結防止処理において、凍結防止の要求度合いに関連する所定種類の指標情報により示される凍結防止の要求度合いが高いほど、前記流路切換装置を第1動作状態に動作させる期間を長くする。このため、循環ポンプからの伝熱を受ける温水は、凍結防止の要求度合いが高いほど、熱源装置の内部において温水バイパス路を経由して流れる期間が長くなる。ひいては、該温水の保温性が高まる。
【0018】
その結果、凍結防止の要求度合いが高いほど、熱源装置の内部を流れる温水が温まりやすくなると共に、第2熱交換器で給湯用水に伝熱される熱量も多くなる。ひいては、熱源装置の内部において、前記温水や給湯用水が凍結するのを防止することの効果が高まる。
【0019】
よって、本発明によれば、温水バイパス路の温水と給湯路の給湯用水との熱交換により給湯用水を加熱するように構成された熱源装置での水の凍結防止を適切に行うことができる。
【0020】
本発明では、前記指標情報は、前記給湯路内の給湯用水の温度の高低度合いを示す情報を含み得る。この場合、前記制御装置は、該指標情報により示される給湯用水の温度が低いほど、前記流路切換装置を前記第2動作状態に動作させる期間を長くするよう構成されていることが好ましい。
【0021】
これによれば、前記指標情報により示される給湯用水の温度が低いほど、前記流路切換装置を前記第2動作状態に動作させる期間(熱源装置の内部において温水バイパス路を経由して温水が流れる期間)を長くするので、給湯用水の凍結を防止することの効果を高めることができる。
【0022】
また、本発明では、前記制御装置が、前記凍結防止処理の実行条件が成立した状態で、前記加熱部の所定の作動条件が成立した場合に、前記循環ポンプを作動させつつ、前記流路切換装置を第1動作状態及び第2動作状態に交互に動作させることに加えて、前記加熱部を作動させるように構成されている場合において、前記指標情報は、前記加熱部を実際に作動させることができたか否かを示す情報を含み得る。この場合、前記制御装置は、前記凍結防止処理の実行条件が成立した状態で、前記加熱部の所定の作動条件が成立した場合に、該加熱部を作動させることができない場合には、該加熱部を作動させることができた場合よりも、前記流路切換装置を前記第2動作状態に動作させる期間を長くするよう構成されていることが好ましい。
【0023】
これによれば、前記加熱部を作動させることができない場合の凍結防止処理では、前記流路切換装置を前記第2動作状態に動作させる期間(熱源装置の内部において温水バイパス路を経由して温水が流れる期間)を長くするので、加熱部を作動させることができない状況でも、熱源装置の内部の温水や給湯用水の凍結を防止することの効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態の熱源装置の全体構成を示す図。
【
図2】
図1に示す制御装置による処理を示すフローチャート。
【
図3】
図1に示す制御装置による処理を示すフローチャート。
【
図4】実施形態の熱源装置の通水路の温度と給湯側ON時間との関係の測定例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態を
図1~
図4を参照して以下に説明する。
図1を参照して、本実施形態の熱源装置1は、暖房運転と給湯運転とを行い得る装置であり、室外に設置される本体ケース2を有する。この本体ケース2の内部には、加熱部としてのバーナ3と、該バーナ3の燃焼熱により加熱される第1熱交換器4とが内部(燃焼室)に収容された燃焼筐5と、液液式の第2熱交換器10とが搭載されている。
【0026】
また、熱源装置1は、第1熱交換器4と本体ケース2の外部の暖房端末50との間で温水を循環させるための温水路11と、給湯用水を通水する給湯路20とを備える。
【0027】
図1に示すバーナ3は、その下面側に燃焼炎を形成するガスバーナであり、燃焼筐5の上部に配置されている。このバーナ3に燃料ガスを供給する燃料供給路3aが、本体ケース2の内部から外部に導出され、該本体ケース2の外部にて、図示しない燃料供給源の配管に接続されている。そして、燃料供給路3aには、これを開閉する電磁弁3bと、バーナ3への燃料ガスの供給量を調整する燃料調整弁3cとが介装されている。燃料調整弁3cは例えば比例弁等により構成され得る。
【0028】
燃焼筐5の上部には、バーナ3に燃焼用空気を供給する電動式の燃焼ファン6が取り付けられている。該燃焼ファン6は、その回転作動により、本体ケース2の外部の空気を吸引し、その吸引した空気を燃焼用空気としてバーナ3に供給する。また、燃焼筐5の下部には、バーナ3の燃焼運転により生成される燃焼排ガスを燃焼筐5の内部(燃焼室)から本体ケース2の外部に導出する排気ダクト5aが接続されている。
【0029】
第1熱交換器4は、暖房用の熱媒としての温水をバーナ3の燃焼熱により加熱するものであり、燃焼筐5の内部で、バーナ3の下側に配置されている。なお、第1熱交換器4の上側にバーナ3を配置する代わりに、第1熱交換器4の下側にバーナを配置し、該バーナの燃焼熱により第1熱交換器4を加熱するように構成することも可能である。
【0030】
第1熱交換器4は、暖房端末50との間で温水を循環させ得るように、温水路11を介して暖房端末50に接続されている。より詳しくは、温水路11は、第1熱交換器4から暖房端末50に温水を供給する往路側温水路11aと、該暖房端末50から第1熱交換器4に温水を戻す復路側温水路11bとから構成される。これらの往路側温水路11a及び復路側温水路11bのそれぞれは、それぞれの構成要素として本体ケース2内に備えられた配管に、本体ケース2の外部に配設される配管を連接することで構成される。
【0031】
そして、本体ケース2の内部の往路側温水路11aの上流端と復路側温水路11bの下流端とが、第1熱交換器4の内部の通水路4aの出口と入口とに各々接続され、本体ケース2の外部の往路側温水路11aと復路側温水路11bとが、床暖房装置等の温水式の暖房端末50に接続されている。なお、
図1では、単一の暖房端末50だけを図示しているが、往路側温水路11aと復路側温水路11bとの間には、複数の暖房端末が接続されていてもよい。
【0032】
本体ケース2の内部の往路側温水路11aと復路側温水路11bとは、第1熱交換器4の通水路4aの出口から往路側温水路11aに流出する温水を暖房端末50を経由させずに、第1熱交換器4の通水路4aの入口に還流させる温水バイパス路12を介して接続されている。
【0033】
この温水バイパス路12は、その中間部(途中部)に第2熱交換器10が介装されており、該第2熱交換器10の上流側の温水バイパス路12と該第2熱交換器10の下流側の温水バイパス路12とが該第2熱交換器10に備えられた2つの通水路10a,10bのうちの一方の通水路10aを介して連通されている。該通水路10aは、換言すれば、温水バイパス路12の中間部を構成する流路である。
【0034】
そして、温水バイパス路12の上流端部は、往路側温水路11aに直接的に連通するように接続されている。これにより、温水バイパス路12は、往路側温水路11aの一部(温水バイパス路12との接続部よりも上流側の部分)を介して第1熱交換器4の通水路4aの出口に接続されている。
【0035】
また、本実施形態では、温水バイパス路12の下流端部は、復路側温水路11bに電動式の三方弁13を介して接続されている。従って、温水バイパス路12は、三方弁13と復路側温水路11bの一部(三方弁13よりも下流側の部分)とを介して第1熱交換器4の通水路4aの入口に接続されている。
【0036】
ここで、上記三方弁13は、本発明における流路切換装置に相当するものであり、温水バイパス路12の下流端部と復路側温水路11bの上流側部分とが各々接続された2つの入口ポート13a,13bと、復路側温水路11bの下流側部分が接続された1つの出口ポート13cとを有する。
【0037】
そして、三方弁13は、その作動制御によって、一方の入口ポート13aを出口ポート13cに対して開弁し、且つ、他方の入口ポート13bを閉弁する第1動作状態と、他方の入口ポート13bを出口ポート13cに対して開弁し、且つ、一方の入口ポート13aを閉弁する第2動作状態とに動作させることが可能である。
【0038】
さらに、三方弁13は、入口ポート13a,13bにそれぞれ流入する温水を混合して、出口ポート13cから流出させる動作状態(入口ポート13a,13bの両方を出口ポート13cに連通させる動作状態。以降、混合動作状態という)に動作させることも可能である。この混合動作状態では、入口ポート13aから出口ポート13cへの温水の流量W1と、入口ポート13bから出口ポート13cへの温水の流量W2との割合(比率)を可変的に制御することも可能である。
【0039】
なお、三方弁13の第1動作状態は、換言すれば、入口ポート13a側の流量W1に対する入口ポート13b側の流量W1の比率W2/W1をゼロに制御した状態、第2動作状態は、換言すれば、入口ポート13b側の流量W2に対する入口ポート13a側の流量W1の比率W1/W2をゼロに制御した状態である。
【0040】
本実施形態では、かかる三方弁13が、温水バイパス路12と復路側温水路11bとの接続部に介装されている。そして、三方弁13と第1熱交換器4との間の復路側温水路11bに、温水を循環させる循環ポンプ14が介装されている。
【0041】
このため、三方弁13の第1動作状態で循環ポンプ14を作動させると、
図1の破線の矢印Y2で示すように、第1熱交換器4の通水路4aをその入口から出口に流れる温水が、該通水路4aの出口から、暖房端末50に流れることなく、温水バイパス路12を経由して第1熱交換器4の通水路4aの入口に戻るようにして循環する。従って、三方弁13の第1動作状態は、本発明における流路切換装置の第1動作状態に相当する。以降、三方弁13の第1動作状態を、給湯側ON状態と称する。
【0042】
また、三方弁13の第2動作状態で循環ポンプ14を作動させると、
図1の実線の矢印Y1で示すように、第1熱交換器4の通水路4aをその入口から出口に流れる温水が、該通水路4aの出口から、温水バイパス路12に流れることなく、往路側温水路11a、暖房端末50及び復路側温水路11bを経由して第1熱交換器4の通水路4aの入口に戻るようにして循環する。従って、三方弁13の第2動作状態は、本発明における流路切換装置の第2動作状態に相当する。以降、三方弁13の第2動作状態を、暖房側ON状態と称する。
【0043】
補足すると、本実施形態では、流路切換装置として上記三方弁13を採用したが、流路切換装置は、他の構成のものであってもよい。例えば、上記三方弁13の代わりに、往路側温水路11aのうちの温水バイパス路12との接続部よりも下流側の部分、又は復路側温水路11bのうちの温水バイパス路12との接続部よりも上流側の部分に介装した流量制御弁又は開閉弁と、温水バイパス路12に介装した流量制御弁又は開閉弁との組により、流路切換装置を構成することも可能である。
【0044】
あるいは、上記三方弁13の代わりに、温水バイパス路12と往路側温水路11aとの接続部に介装した三方弁(詳しくは、往路側温水路11aの上流側に接続した1つの入口ポートと、往路側温水路11aの下流側と、温水バイパス路12とに各々接続した2つの出口ポートとを有する三方弁)により、流路切換装置を構成することも可能である。
【0045】
給湯路20は、該給湯路20の構成要素として本体ケース2内に備えられた配管の上流側と下流側とに、本体ケース2の外部に配設された配管を連接して構成されている。そして、この給湯路20の上流側が、本体ケース2の外部の図示しない給水源の配管に接続され、下流側が本体ケース2の外部の給湯栓等の給湯対象部に接続されている。そして、本体ケース2の内部の給湯路20の中間部(途中部)に第2熱交換器10が介装されている。
【0046】
この場合、第2熱交換器10の上流側の給湯路20と該第2熱交換器10の下流側の給湯路20とが第2熱交換器10に備えられた2つの通水路10a,10bのうちの他方の通水路10b(温水バイパス路12を構成する通水路10aと異なる通水路10b)を介して連通されている。該通水路10bは、換言すれば、給湯路20の中間部を構成する流路である。
【0047】
そして、第2熱交換器10は、通水路10aを流れる温水から通水路10bを流れる給湯用水に伝熱し得るように構成されており、この伝熱により給湯用水を加熱することが可能である。
【0048】
また、本実施形態では、第2熱交換器10の上流側の給湯路20と該第2熱交換器10の下流側の給湯路20とは、上流側の給湯路20から第2熱交換器10を経由させずに下流側の給湯路20に給湯用水を流す給湯バイパス路21を介して接続されている。該給湯バイパス路21は、本体ケース2の内部に配設され、その上流端部が、第2熱交換器10の上流側の給湯路20に直接的に連通するように接続されている。
【0049】
また、給湯バイパス路21の下流端部は、第2熱交換器10の下流側の給湯路20に電動式の三方弁22を介して接続されている。この三方弁22は、前記三方弁13と同様の構成のものであり、給湯バイパス路21の下流端部と、該三方弁22よりも上流側の給湯路20(三方弁22と第2熱交換器10との間の給湯路20)とが各々接続された2つの入口ポート22a,22bと、該三方弁22よりも下流側の給湯路20が接続された1つの出口ポート22cとを有する。
【0050】
そして、三方弁22は、その作動制御によって、入口ポート22a,22bにそれぞれ流入する温水を混合して、出口ポート22cから流出させることが可能であると共に、入口ポート22aから出口ポート22cへの給湯用水の流量W3(換言すれば、給湯路20の通水時に、給湯バイパス路21を流れる給湯用水の流量)と、入口ポート22bから出口ポート22cへの温水の流量W4(換言すれば、給湯路20の通水時に、第2熱交換器10の通水路10bを流れる給湯用水の流量)との割合(以降、給湯バイパス比ということがある)を可変的に制御することが可能である。この給湯バイパス比の調整により、三方弁22から下流側の給湯路20に流れる給湯用水の温度を変化させることが可能である。
【0051】
なお、例えば、上記三方弁22を備える代わりに、第2熱交換器10の上流側の給湯路20のうちの、給湯バイパス路21の接続部よりも下流側の流路と給湯バイパス路21との両方又は一方に、あるいは、第2熱交換器10の下流側の給湯路20のうちの、給湯バイパス路21の接続部よりも上流側の流路と給湯バイパス路21との両方又は一方に流量制御弁を介装し、この流量制御弁を制御することで、給湯バイパス比を可変的に制御することも可能である。
【0052】
あるいは、上記三方弁22を備える代わりに、給湯バイパス路21と第2熱交換器10の上流側の給湯路20との接続部に、該接続部よりも上流側の給湯路20を接続した1つの入口ポートと、該接続部よりも下流側の給湯路20と給湯バイパス路21とを各々接続した2つの出口ポートとを有する三方弁を介装し、この三方弁の作動制御を行うことにより、上記給湯バイパス比を可変的に制御することも可能である。
【0053】
本実施形態の熱源装置1は、以上説明した構成の他、該熱源装置1の作動制御に係る構成として、制御装置30と、複数のセンサとを備える。
【0054】
この場合、熱源装置1の複数のセンサには、例えば、本体ケース2の内部の温度を検出し得るように該本体ケース2の内部に搭載された温度センサ7、排気ダクト5a内の温度を検出し得るように該排気ダクト5aの内部に配置された温度センサ8、第1熱交換器4から往路側温水路11aに流れる温水の温度を検出し得るように該往路側温水路11aに装着された温度センサ15、復路側温水路11bから第1熱交換器4に流入する温水の温度を検出し得るように該復路側温水路11bに装着された温度センサ16、第2熱交換器10に流入する給湯用水の温度を検出し得るように該第2熱交換器10の上流側の給湯路20に装着された温度センサ24、給湯路20の下流側の給湯対象部に供給される給湯用水の温度を検出し得るように三方弁22の下流側の給湯路20に装着された温度センサ25、給湯路20に給水源側から流入する給湯用水の流量を検出し得るように給湯バイパス路21との接続部よりも上流側の給湯路20に介装された流量センサ23が含まれる。
【0055】
制御装置30は、マイクロコンピュータ、メモリ、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成され、上記の各センサの検出信号が入力される。また、該制御装置30は、熱源装置1による暖房運転及び給湯運転等に関する種々の操作を行うためのリモコン31と有線又は無線による通信を行うことが可能である。
【0056】
この場合、リモコン31は、暖房運転及び給湯運転のオン・オフ操作、暖房運転時の暖房強度もしくは目標室温の設定、給湯運転時の目標給湯温度の設定等の操作を行うことが可能である。また、リモコン31は、図示しない表示器や発音部等により種々の報知情報を出力可能である。
【0057】
そして、制御装置30は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)により実現される機能として、前記電磁弁3b、燃料調整弁3c、燃焼ファン6、及び図示しない点火装置の作動制御を通じて、バーナ3の燃焼運転を制御する機能と、前記循環ポンプ14及び三方弁13の作動制御を通じて、温水路11及び温水バイパス路12での温水の流れを制御する機能と、前記三方弁22の作動制御を通じて給湯温度を制御する機能とを有する。
【0058】
また、制御装置30は、暖房運転及び給湯運転に係る作動制御の他、本体ケース2の内部における温水及び給湯用水の凍結を防止するための作動制御を行う機能を有する。
【0059】
次に、本実施形態の熱源装置1の作動をより具体的に説明する。まず、暖房運転及び給湯運転に関する作動を概略的に説明する。暖房運転及び給湯運転のうちの暖房運転だけを行う場合には、制御装置30は、三方弁13を前記暖房側ON状態に制御しつつ、循環ポンプ14を作動させると共に、バーナ3の燃焼運転を行わせる。
【0060】
これにより、第1熱交換器4と暖房端末50との間で温水の循環が行われつつ、該温水が第1熱交換器4で加熱される。そして、加熱された温水が暖房端末50で放熱することで、該暖房端末50が配置された部屋の暖房が行われる。この場合、バーナ3の燃焼量は、リモコン31で設定された暖房強度もしくは目標室温、温度センサ15,16による温水の温度の検出値等に応じて制御される。
【0061】
また、給湯運転だけを行う場合には、制御装置30は、流量センサ23による給湯路20での通水の検知に応じて、三方弁13を前記給湯側ON状態に制御しつつ、循環ポンプ14を作動させると共に、バーナ3の燃焼運転を行わせる。そして、制御装置30は、バーナ3の燃焼量と、前記給湯バイパス比とを、温度センサ15,16による温水の温度の検出値、リモコン31で設定された目標給湯温度、温度センサ24,25による給湯用水の温度の検出値、流量センサ23による給湯用水の流量の検出値等に応じて制御する。
【0062】
これにより、第1熱交換器4と温水バイパス路12及び第2熱交換器10との間で温水の循環が行われつつ、該温水が第1熱交換器4で加熱される。併せて、第2熱交換器10での温水と給湯用水との熱交換によって、給湯用水が加熱される。そして、第2熱交換器10で加熱された給湯用水と、給湯バイパス路21を通る非加熱状態の給湯用水とが、三方弁22で混合されて、給湯路20の下流側に供給されることで、目標給湯温度に一致もしくはほぼ一致するように温調制御された給湯用水(湯)が、給湯栓等の給湯対象部に供給される。
【0063】
また、暖房運転と給湯運転とを並行して行う場合には、三方弁13を前記混合動作状態に制御しつつ、循環ポンプ14を作動させると共に、バーナ3の燃焼運転を行わせる。これにより、第1熱交換器4と暖房端末50との間、並びに、第1熱交換器4と温水バイパス路12及び第2熱交換器10との間で温水の循環が行われつつ、該温水が第1熱交換器4で加熱される。併せて、第2熱交換器10での温水と給湯用水との熱交換によって、給湯用水が加熱される。
【0064】
そして、制御装置30は、バーナ3の燃料量と、三方弁13の混合動作状態での流量W1,W2の比率と、前記給湯バイパス比とを、温度センサ15,16による温水の温度の検出値、リモコン31で設定された暖房強度もしくは目標室温、目標給湯温度、温度センサ24,25による給湯用水の温度の検出値、流量センサ23による給湯用水の流量の検出値等に応じて制御する。
【0065】
これにより、上記の暖房運転時と同様に、暖房端末50が配置された部屋の暖房が行われる。併せて、上記の給湯運転時と同様に、標給湯温度に一致もしくはほぼ一致するように温調制御された給湯用水(湯)が、給湯栓等の給湯対象部に供給される。
【0066】
次に、本体ケース2内の通水路内の水の凍結を防止するために制御装置30により実行される処理を説明する。ここで、本体ケース2内の通水路というのは、本体ケース2内に配設されている温水路11(第1熱交換器4の通水路4aを含む)、温水バイパス路12(第2熱交換器10の通水路10aを含む)、本体ケース2内に配設されている給湯路20(第2熱交換器10の通水路10bを含む)及び給湯バイパス路21の全体である。
【0067】
これらの通水路の水の凍結が発生すると、熱源装置1がダメージを受ける虞がある。特に、第1熱交換器4の通水路4aもしくはその近辺の温水路11、あるいは、第2熱交換器10の通水路10aもしくはその近辺の温水バイパス路12、あるいは、第2熱交換器10の通水路10bもしくはその近辺の給湯路20で水の凍結が発生すると、第1熱交換器4もしくは第2熱交換器10が損傷を受ける虞がある。
【0068】
そこで、制御装置30は、熱源装置1の暖房運転及び給湯運転の両方が実行されていない待機状態において、本体ケース2内の通水路の水の凍結を防止(予防)するために、
図2及び
図3のフローチャートに示す処理を実行する。
【0069】
STEP1において、制御装置30は、凍結防止のための処理の開始条件である凍結防止開始条件が成立した否かを判断する。該凍結防止開始条件は、本体ケース2内の通水路の水が近々、凍結する可能性があるとみなし得る条件である。
【0070】
本実施形態では、凍結防止開始条件は、例えば、温度センサ7による本体ケース2内の温度(以降、ケース内温度という)の検出値が所定値(例えば2℃)よりも低く、且つ、温度センサ16による復路側温水路11b内の水の温度(以降、復路側水温という)の検出値が所定値(例えば20℃)よりも低いという第1条件と、温度センサ8による排気ダクト5a内の温度(以降、排気路内温度という)の検出値が所定値(例えば0℃)よりも低く、且つ、温度センサ16による復路側水温の検出値が所定値(例えば10℃)よりも低いという第2条件とのいずれか一方が成立するという条件である。
【0071】
なお、凍結防止開始条件は、例えば、上記第1条件及び第2条件のいずれか一方の条件だけでもよく、あるいは、上記ケース内温度、排気路内温度、及び復路側水温のうちのいずれか1つ又は2つの温度だけに関する条件であってもよい。また、凍結防止開始条件は、例えば、給湯用水の温度に関する条件、あるいは、往路側温水路11a内の水の温度に関する条件、あるいは、本体ケース2の外部の外気温に関する条件を含んでいてもよい。
【0072】
STEP1の判断結果が否定的である場合(凍結防止開始条件が成立しない場合)には、制御装置30は、STEP1の判断処理を繰り返す。
【0073】
また、STEP1の判断結果が肯定的である場合(凍結防止開始条件が成立した場合)には、制御装置30は、STEP2において、循環ポンプ14の作動を開始させる。これにより、第1熱交換器4での通水が開始される。
【0074】
さらに、STEP3において、制御装置30は、温水路11の三方弁13を前記暖房側ON状態に維持する時間幅である暖房側ON時間と、該三方弁13を前記給湯側ON状態に維持する時間幅である給湯側ON時間とを設定する。
【0075】
ここで、本実施形態では、制御装置30は、凍結防止のための処理として、基本的には、三方弁13を暖房側ON状態に制御した状態で、第1熱交換器4と暖房端末50との間で水を循環させる処理(以降、暖房側水循環処理という)と、三方弁13を給湯側ON状態に制御した状態で、第1熱交換器4と温水バイパス路12(第2熱交換器10の通水路10aを含む)との間で温水を循環させる処理(以降、給湯側水循環処理という)とを交互に繰り返す。そして、上記暖房側ON時間は、換言すれば、暖房側水循環処理を実行する時間幅であり、上記給湯側ON時間は、換言すれば、給湯側水循環処理を実行する時間幅である。
【0076】
これらの暖房側ON時間及び給湯側ON時間は、本実施形態では、温度センサ24で検出される給湯用水の温度(以降、給水温度Tinという)に応じて、例えば、次の表1で示す如く設定される。
【0077】
【0078】
表1に示す如く、給湯側ON時間は、給水温度Tinが低いほど、長くなり、また、暖房側ON時間に対する給湯側ON時間の比率も、給水温度Tinが低いほど、大きくなるように設定される。また、暖房側ON時間は、給水温度Tinが低いほど、短くなるように設定される。ただし、給水温度Tinの変化に対する暖房側ON時間の変化は、給湯側ON時間の変化に比して十分に微小である。
【0079】
次いで、STEP4において、制御装置30は、温水路11の三方弁13を暖房側ON状態に駆動すると共に、計時タイマを起動する。このとき、循環ポンプ14が作動しつつ、三方弁13が暖房側ON状態に駆動されることで暖房側水循環処理が開始し、第1熱交換器4と暖房端末50との間で水を循環させるように温水路11での通水が行われる。
【0080】
このとき、循環ポンプ14がその作動により発生する熱が本体ケース2内の温水路11を流れる水に伝熱されることで、基本的には、該水が徐々に温められていくか、もしくは該水の温度低下が抑制される。
【0081】
ただし、循環ポンプ14の作動により発生する熱だけでは、温水路11内の水の凍結を確実に防止する上で不十分である場合もある。そこで、制御装置30は、上記の如く暖房側水循環処理を実行しながら、STEP5において、バーナ3の燃焼運転を行うべき条件(燃焼条件)が成立するか否かを判断する。
【0082】
この燃焼条件は、本実施形態では、例えば前記復路側水温及び給水温度Tinに関する条件である。例えば、復路側水温が所定値(例えば6℃)よりも低いか、又は、給水温度Tinが所定値(例えば1℃)よりも低いか、又は、後述する
図3のフローチャートに示す処理によって、バーナ3の燃焼運転が既に行われているという条件が、燃焼条件として使用される。
【0083】
STEP5で燃焼条件が成立した場合には、制御装置30は、
図3のフローチャートにに示す処理を実行する。この処理については後述する。
【0084】
また、STEP5において燃焼条件が成立しない場合には、制御装置30は、バーナ3の燃焼運転を開始することなく、STEP6において、計時タイマにより計時された現在の経過時間(暖房側水循環所処理の開始時からの経過時間)がSTEP3で設定した暖房側ON時間に達した否かを判断する。そして、このSTEP6の判断結果が否定的である場合には、制御装置30は、STEP5からの処理を繰り返す。
【0085】
STEP5で燃焼条件が成立しないまま、暖房側ON時間が経過すると、STEP6の判断結果が肯定的になる。この場合には、制御装置30は、STEP7において、温水路11の三方弁13を暖房側ON状態から給湯側ON状態に駆動すると共に、計時タイマをリセットした上で再起動する。このとき、循環ポンプ14が作動しつつ、三方弁13が給湯側ON状態に駆動されることで給湯側水循環処理が開始し、第1熱交換器4と温水バイパス路12(第2熱交換器10の通水路10aを含む)との間で水を循環させるように温水バイパス路12での通水が行われる。
【0086】
このとき、循環ポンプ14が発生する熱が、本体ケース2内で温水バイパス路12を経由して循環する水に伝熱される。さらに、温水バイパス路12内の水から第2熱交換器10の通水路10bの水への伝熱も行われ、その熱は、本体ケース2内の給湯路20及び給湯バイパス路21内の水に拡散していく。このため、基本的には、本体ケース2内で温水バイパス路12を経由して循環する水と、本体ケース2内の給湯路20(第2熱交換器10の通水路10bを含む)及び給湯バイパス路21に残留する水とが徐々に温められていくか、もしくはそれらの水の温度のさらなる低下が抑制される。
【0087】
また、この場合、循環ポンプ14から伝熱される水は、本体ケース2内で流通もしくは残留するため、本体ケース2の外部への放熱が生じ難い。このため、該水が温まりやすくなる。
【0088】
制御装置30は、暖房側水循環処理の場合と同様に、上記の如く給湯側水循環処理を実行しながら、STEP8において、バーナ3の燃焼運転を行うべき燃焼条件が成立するか否かを判断する。この燃焼条件は、前記STEP5と同じである。
【0089】
STEP8で燃焼条件が成立した場合には、制御装置30は、
図3のフローチャートにに示す処理を後述する如く実行する。
【0090】
また、STEP8において燃焼条件が成立しない場合には、制御装置30は、バーナ3の燃焼運転を開始することなく、STEP9において、計時タイマにより計時された現在の経過時間(給湯側水循環所処理の開始時からの経過時間)がSTEP3で設定した給湯側ON時間に達した否かを判断する。そして、このSTEP9の判断結果が否定的である場合には、制御装置30は、STEP8からの処理を繰り返す。
【0091】
STEP8で燃焼条件が成立しないまま、給湯側ON時間が経過すると、STEP9判断結果が肯定的になる。この場合には、制御装置30は、STEP10において、凍結防止のための処理の終了条件である凍結防止終条件件が成立した否かを判断する。該凍結防止終了条件は、本実施形態では、STEP1の凍結防止開始条件が成立しないという条件である。
【0092】
従って、凍結防止終了条件は、温度センサ7によるケース内温度の検出値が所定値(例えば2℃)以上であるか、又は、温度センサ16による復路側水温の検出値が所定値(例えば20℃)以上であるという第3条件と、温度センサ8による排気路内温度の検出値が所定値(例えば0℃)以上であるか、又は、温度センサ16による復路側水温の検出値が所定値(例えば10℃)以上であるという第4条件との両方が成立するという条件である。
【0093】
STEP10で凍結防止条件が成立しない場合には、制御装置30は、STEP3からの処理を繰り返す。また、STEP10で凍結防止条件が成立した場合には、制御装置30は、次にSTEP11で循環ポンプ14の作動を停止させた後、STEP1からの処理を再開する。なお、STEP11では、バーナ3の燃焼運転の実行中である場合には、制御装置30は、バーナ3を消火させる(前記電磁弁3bを閉弁制御することで、バーナ3への燃料供給を遮断する)ことも実行する。
【0094】
次に、前記STEP5又は8で燃焼条件が成立した場合の処理(
図3のフローチャートの処理)を説明する。この処理では、制御装置30は、STEP12において、バーナ3が現在、燃焼運転中であるか否かを判断する。
【0095】
このSTEP12の判断結果が否定的である場合(バーナ3が消火している場合)には、制御装置30は、STEP13において、バーナ3を点火するための点火処理を実行する。この点火処理では、制御装置30は、図示しないイグナイタを駆動することと、燃焼ファン6を所定の回転数で作動させることと、バーナ3に所定量の燃料ガスを供給するように燃料供給路3aの電磁弁3bの開弁制御及び燃料調整弁3cの通電制御とを実行する。
【0096】
そして、制御装置30は、STEP14において、バーナ3の燃焼運転が正常に開始したか否か(点火エラーが無いか否か)を、図示しない炎検知センサ(熱電対、フレームロッド等)の検出信号に基づいて判断する。
【0097】
STEP12の判断結果が肯定的である場合(バーナ3が燃焼運転中である場合)、あるいは、STEP14でバーナ3の燃焼運転が正常に開始した場合(STEP14の判断結果が肯定的である場合)には、制御装置30は、次に、STEP15において、バーナ3の燃焼運転を終了すべき所定の燃焼終了条件が成立するか否かを判断する。
【0098】
この燃焼終了条件は、本実施形態では、例えば前記温度センサ16による復路側水温が所定値(例えば35℃)よりも高い温度まで昇温したという条件である。なお、バーナ3の燃焼運転の開始後の燃焼量は所定の小燃焼量に制御される。そして、バーナ3の燃焼運転によって、第1熱交換器4の通水路4aを通って流れる水が加熱される。ひいては、暖房側水循環処理により第1熱交換器4と暖房端末50との間で循環する水、あるいは、給湯側水循環処理により第1熱交換器4と温水バイパス路12との間で循環する水が、バーナ3の燃焼熱により加熱されて昇温する。
【0099】
STEP15で燃焼終了条件が成立しない場合には、制御装置30は、バーナ3の燃焼運転を継続したまま、前記STEP6又は10からの処理(詳しくは、STEP12の処理の直前の処理が前記STEP5である場合にはSTEP6からの処理、STEP12の処理の直前の処理が前記STEP8である場合にはSTEP10からの処理)を実行する。
【0100】
また、STEP15で燃焼終了条件が成立した場合には、制御装置30はSTEP16において、バーナ3を消火させた後、前記STEP6又は10からの処理(詳しくは、STEP12の処理の直前の処理が前記STEP5である場合にはSTEP6からの処理、STEP12の処理の直前の処理が前記STEP8である場合にはSTEP10からの処理)を実行する。
【0101】
また、前記STEP14において、バーナ3の燃焼運転が正常に開始しなかった場合(STEP14の判断結果が否定的である場合)には、制御装置30は、STEP17からの処理を実行する。
【0102】
STEP17では、制御装置30は、温水路11の三方弁13を給湯側ON状態に駆動すると共に、計時タイマをリセットした上で再起動する。これにより、給湯側水循環処理が行われる。なお、前記STEP7において、前記給湯側水循環処理が既に開始されている場合には、制御装置30は、温水路11の三方弁13を給湯側ON状態に維持したままで、計時タイマを再起動する。
【0103】
次いで、STEP18において、制御装置30は、温度センサ16による復路側水温の検出値が所定値(例えば10℃)よりも高くなったかを否かを判断する。そして、STEP18の判断結果が否定的である場合には、制御装置30は、さらにSTEP19において、計時タイマにより計時された経過時間(STEP17の処理の実行時からの経過時間)が所定時間に達したか否かを判断する。該所定時間は、前記STEP3で設定される給湯側ON時間よりも長い時間であり、例えば30分である。
【0104】
そして、STEP19の判断結果が否定的である場合には、制御装置30は、STEP18からの処理を繰り返す。また、STEP18又はSTEP19の判断結果が肯定的になった場合(復路側水温の検出値が所定値(例えば10℃)よりも高くなるか、又は、STEP17からの経過時間が所定時間(例えば30分)に達した場合)には、STEP20で計時タイマをリセットした後、前記STEP910からの処理を実行する。
【0105】
本実施形態では、本体ケース2内の通水路(温水路11、温水バイパス路12、給湯路20、給湯バイパス路21)の水の凍結を防止(予防)するための凍結防止処理は以上説明した如く実行される。
【0106】
以上説明した本実施形態によれば、凍結防止処理では、基本的には、暖房側水循環処理委と給湯側水循環処理とが交互に行われる。
【0107】
この場合、暖房側水循環処理では、第1熱交換器4と暖房端末50との間で温水路11を循環する水に、循環ポンプ14の作動により発生する熱が該循環ポンプ14から伝熱される。このため、バーナ3の燃焼条件が成立しない状況下では、基本的には、本体ケース2内の温水路11(第1熱交換器4の通水路4aを含む)を流れる水が循環ポンプ14から伝熱によって、徐々に温められるか、もしくは、該水の温度のさらなる低下が抑制される。これにより、本体ケース2内における温水路11(第1熱交換器4の通水路4aを含む)の全体の水の凍結を防止することが可能となる。また、暖房側水循環処理では、本体ケース2と暖房端末50との間の温水路11にも水が流れるので、該温水路11の凍結も極力防止し得る。
【0108】
また、給湯側水循環処理では、第1熱交換器4と温水バイパス路12との間で循環する水に、循環ポンプ14の作動により発生する熱が該循環ポンプ14から伝熱される。このため、バーナ3の燃焼条件が成立しない状況下では、基本的には、本体ケース2内で温水バイパス路12の下流端部から上流端部に至る温水路11(第1熱交換器4の通水路4aを含む)及び温水バイパス路12を流れる水が、循環ポンプ14からの伝熱によって徐々に温められるか、もしくは、該水の温度のさらなる低下が抑制される。
【0109】
これにより、本体ケース2内で温水バイパス路12の下流端部から上流端部に至る温水路11及び温水バイパス路12の水の凍結を防止することが可能となる。また、この場合、該水は、本体ケース2の外部に流れないので、該水の保温性が高い(温度の低下が生じ難い)ものとなる。
【0110】
給湯側水循環処理ではさらに、温水バイパス路12上の第2熱交換器10での通水路10aを流れる水から通水路10b内の水への伝熱が行われると共に、その伝熱された熱が、本体ケース2内で第2熱交換器10の通水路10bの上流側及び下流側に連なる給湯路20内の水と給湯バイパス路21内の水とに拡散していく。また、この場合、上記した如く、第1熱交換器4と温水バイパス路12との間で循環する水の保温性が高いいので、第2熱交換器10の通水路10aを流れる水から通水路10b内の水への伝熱量が多くなりやすい。
【0111】
このため、基本的には、本体ケース2内で給湯路20(第2熱交換器10の通水路10bを含む)と給湯バイパス路21とに残留している水が徐々に温められるか、もしくは、該水の温度のさらなる低下が抑制される。
【0112】
従って、給湯側水循環処理では、バーナ3の燃焼条件が成立しない状況で、本体ケース2内で温水バイパス路12の下流端部から上流端部に至る温水路11及び温水バイパス路12の水の凍結を、該水への循環ポンプ14からの伝熱によって防止することが可能となることに加えて、第2熱交換器10での伝熱によって、本体ケース2内で給湯路20と給湯バイパス路21とに残留している水の凍結を防止することが可能となる。
【0113】
なお、暖房側水循環処理及び給湯側水循環処理のいずれでも、バーナ3の燃焼条件が成立する場合(バーナ3の燃焼運転を実行しないと、凍結が進行しやすい状況)では、バーナ3の燃焼運転が行われるので、本体ケース2内の通水路の水の凍結を確実に防止できる。
【0114】
また、本実施形態では、前記給湯側水循環処理を実行する時間幅としての前記給湯側ON時間は、給湯路20の給水温度Tinが低いほど(0℃に近いほど)、長い時間に設定される。ここで、給湯路20の給水温度Tinが低いほど、本体ケース2内の給湯路20(第2熱交換器10の通水路10bを含む)や給湯バイパス路21の水が凍結する可能性が高いので、給湯路20の給水温度Tinが低いほど、凍結防止の要求度合い(特に、本体ケース2内での給湯用水の凍結防止の要求度合い)が高いとみなすことができる。
【0115】
従って、給水温度Tinにより示される凍結防止の要求度合いが高いほど、給湯側ON時間が長い時間に設定される。この場合、給湯側水循環処理では、前記したように、第1熱交換器4と温水バイパス路12との間で循環する水の保温性が高い(該水が温まりやすい)ため、本体ケース2内の給湯路20及び給湯バイパス路21を含めた本体ケース2内の通水路の水が、循環ポンプ14が発生する熱によって温まりやすい。
【0116】
実際、本願発明者の実験によれば、
図4のグラフで例示されるように、給湯側ON時間が長いほど、本体ケース2内の通水路の水の温度をより高い温度に昇温させることができることが確認された。
【0117】
このため、給水温度Tinにより示される凍結防止の要求度合いが高いほで、給湯側ON時間を長い時間に設定することによって、バーナ3の燃焼条件が成立しない状況で、本体ケース2内の通水路の水の凍結を防止することの効果を高めることができる。
【0118】
また、本実施形態では、前記給湯側ON時間は、バーナ3の燃焼条件が成立したのに、バーナ3の燃焼運転を正常に開始することができない場合には、バーナ3の燃焼運転を開始できる場合よりも長い時間に設定される。ここで、バーナ3の燃焼条件が成立したのに、バーナ3の燃焼運転を正常に開始することができない状況は、凍結防止のために、バーナ3の燃焼熱を利用できない状況であるから、本体ケース2内の通水路の水の凍結防止の要求度合いが高いとみなし得る。
【0119】
従って、バーナ3の燃焼運転を正常に開始することができないために、凍結防止の要求度合いが高いものとなった状況でも、給湯側ON時間が長めの時間に設定される。このため、バーナ3の燃焼運転を行うことができない状況でも、本体ケース2内の通水路の水が、循環ポンプ14が発生する熱によって温まりやすくなって、該通水路の水の凍結を防止することの効果を高めることができる。
【0120】
なお、以上説明した実施形態では、本体ケース2内の通水路の水の凍結防止の要求度合に関連する1つの指標情報として、前記温度センサ24により検出される給水温度Tinを使用し、該給水温度Tinの検出値に応じて給湯側ON時間を可変的に設定した。ただし、例えば、給水温度Tinの検出値以外に、給湯路20の給湯用水の温度の高低度合いを表す指標情報を用いてもよい。例えば、温度センサ25により検出される給湯用水の温度(給湯バイパス路21の下流側の給湯用水の温度)、あるいは、温度センサ7により検出されるケース内温度を、凍結防止の要求度合いに関連する指標情報として使用してもよい。あるいは、例えば、前記温度センサ7,24,25のそれぞれにより検出される温度のうちの2種類以上の温度の検出値を、凍結防止の要求度合いに関連する指標情報として使用してもよい。
【0121】
また、前記実施形態では、給水温度Tinの検出値に応じて給湯側ON時間を可変的に設定することと、バーナ3の燃焼運転を開始することができるか否かに応じて給湯側ON時間を可変的に設定することを実行したが、例えばいずれか一方だけを実行する態様を採用することも可能である。
【0122】
また、バーナ3の燃焼運転を開始することができない場合において、例えば、
図3のSTEP19の判断処理を省略し、STEP18の判断結果が肯定的になるまで(あるいは前記凍結防止終了条件が成立するまで)、給湯側水水循環処理を継続的に実行するようにしてもよい。
【0123】
また、前記実施形態に熱源装置1は、加熱部として、バーナ3を備えるものであるが、加熱部は、電熱器等、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するものであってもよい。
【符号の説明】
【0124】
1…熱源装置、3…バーナ(加熱部)、4…第1熱交換器、10…第2熱交換器、11…温水路、12…温水バイパス路、13…三方弁(流路切換装置)、14…循環ポンプ、20…給湯路、30…制御装置、50…暖房端末。