(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着シート、及び、光学部材
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20220715BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220715BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220715BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20220715BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220715BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220715BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/06
C09J11/08
C09J133/04
C09J175/04
C09J7/38
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2018123511
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢一
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-216768(JP,A)
【文献】特開2017-008173(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性ポリマー、
分子内にポリオキシアルキレン鎖を3以上含み、かつ、シリコーン鎖を含まないポリエーテル化合物、及び、
イオン性化合物を含有
し、
前記ポリオキシアルキレン鎖の末端が、直鎖又は分岐したアルキル基、飽和脂肪酸残基、及び、不飽和脂肪酸残基からなる群より選択される少なくとも一つを含む
ことを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記粘着性ポリマーが、(メタ)アクリル系ポリマー、及び/又は、ウレタン系ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
基材フィルムの少なくとも片面に、請求項1
又は2に記載の粘着剤組成物により形成される粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
【請求項4】
請求項
3に記載の粘着シートが貼付されていることを特徴とする光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着シート、及び、光学部材に関する。特に、前記粘着剤組成物により得られる粘着シートは、静電気が発生しやすいプラスチック製品等に貼り付けられる用途(例えば、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等)に好適であり、なかでも特に、光学部材(例えば、液晶ディスプレイなどに用いられる偏光フィルム、波長板、位相差板、光学補償フィルム、反射シート、輝度向上フィルム、タッチパネル部材)等の表面を保護する目的で用いられる表面保護フィルムとして有用である。
【背景技術】
【0002】
粘着シート(表面保護フィルム)は、一般に、フィルム状の基材フィルム上に粘着剤層が設けられた構成を有する。かかる粘着シートは、前記粘着剤層を介して被着体(被保護体)に貼り合わされ、これにより被着体を加工、搬送時等の傷や汚れから保護する目的で用いられる。例えば、液晶ディスプレイのパネルは、液晶セルに粘着剤層を介して、偏光フィルムや波長板等の光学部材を貼り合わせることにより形成されている。かかる液晶ディスプレイパネルの製造において、液晶セルに貼り合わされる偏光フィルムは、いったんロール形態に製造された後、このロールから巻き出して、液晶セルの形状に応じた所望のサイズにカットして用いられる。ここで、偏光フィルムの加工、搬送時等の工程時において、偏光フィルムが搬送ロール等と擦れて傷つくことがあるため、これを防止するために、偏光フィルムの片面または両面(典型的には片面)に粘着シートを貼り合わせて、保護する対策がとられている。そして、この粘着シートは、不要になった段階で剥離して除去される。
【0003】
一般に、粘着シート(表面保護フィルム)や光学部材は、プラスチック材料により構成されているため、電気絶縁性が高く、摩擦や剥離により静電気を発生する。このため、偏光フィルム等の光学部材から粘着シートを剥離する際にも静電気が発生しやすく、この静電気が残ったままの状態で液晶に電圧を印加すると、液晶分子の配向が損失したり、またパネルの欠損が生じたりする懸念がある。また、静電気の存在は、塵埃を吸引したり、作業性を低下させたりする要因ともなり得る。かかる事情から、粘着シートを構成する粘着剤層自体に帯電防止性を付与するため、帯電防止剤として機能するポリエーテル変性シリコーンやイオン性化合物を粘着剤(粘着剤組成物)中に含有させることが行われている(特許文献1参照)。
【0004】
また、光学部材表面から粘着シート(表面保護フィルム)を剥離後、光学部材表面に他の機能を有する層を設ける場合がある。例えば、偏光フィルムやタッチパネル機能を有する層等の光学部材表面と、ガラスやプラスチック等から構成される保護層等を接着するために、層間充填剤等の層が設けられることがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-236266号公報
【文献】特開2016-113467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ポリエーテル変性シリコーンを含有する粘着剤から形成される粘着シート(粘着剤層)を偏光フィルム等の光学部材に貼付後、不要になった段階で剥離すると、粘着シート(粘着剤層)中に含まれるポリエーテル変性シリコーン成分が光学部材表面に転写し、後から光学部材表面に設けられる層間充填剤等の層と、前記粘着シートを剥離した後の光学部材表面との密着性(接着性)が低下する問題が生じている。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、鋭意研究した結果、表面保護に使用される粘着シートを貼付した光学部材(例えば、偏光フィルム等)表面から、前記粘着シートを剥離した際の帯電防止性に優れ、前記粘着シートを剥離した後の光学部材表面に、新たに層間充填剤等の層を設ける際に、光学部材表面と層間充填剤等の層との密着性(接着性)に優れる粘着シート(粘着剤層)が得られる粘着剤組成物、前記粘着剤組成物により形成される粘着剤層を有する粘着シート、及び、前記粘着シートに貼付(保護)されている光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の粘着剤組成物は、粘着性ポリマー、分子内にポリオキシアルキレン鎖を3以上含み、かつ、シリコーン鎖を含まないポリエーテル化合物、及び、イオン性化合物を含有することを特徴とする。
【0009】
本発明の粘着剤組成物は、前記粘着性ポリマーが、(メタ)アクリル系ポリマー、及び/又は、ウレタン系ポリマーであることが好ましい。
【0010】
本発明の粘着剤組成物は、前記ポリオキシアルキレン鎖の末端が、直鎖又は分岐したアルキル基、飽和脂肪酸残基、及び、不飽和脂肪酸残基からなる群より選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0011】
本発明の粘着シートは、基材フィルムの少なくとも片面に、前記粘着剤組成物により形成される粘着剤層を有することが好ましい。
【0012】
本発明の光学部材は、前記粘着シートが貼付されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、粘着性ポリマー、帯電防止剤であるイオン性化合物、及び、特定のポリエーテル化合物を含む粘着剤組成物により形成される粘着剤層を有する粘着シートを、偏光フィルムなどの光学部材表面に貼付後、不要となった段階で剥離する際の帯電防止性に優れ、かつ、前記粘着シートを剥離した後の光学部材表面と、新たに前記光学部材表面に設けられる層間充填剤等の層との密着性(接着性)に優れ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る粘着シート(表面保護フィルム)の一構成例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
<粘着シート(表面保護フィルム)の全体構造>
ここに開示される粘着シートは、一般に、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称される形態のものであり、特に光学部品(例えば、偏光フィルム、波長板等の液晶ディスプレイパネル構成要素として用いられる光学部品)の加工時や搬送時に光学部品の表面を保護する表面保護フィルムとして好適である。前記表面保護フィルムにおける粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、ここに開示される粘着シート(表面保護フィルム)は、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。
【0017】
<基材フィルム>
本発明の粘着シート(表面保護フィルム)は、基材フィルムを有することが好ましい。ここに開示される技術において、基材フィルムを構成する樹脂材料は、特に制限なく使用することができるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性、可撓性、寸法安定性等の特性に優れたものを使用することが好ましい。特に、基材フィルムが可撓性を有することにより、ロールコーターなどによって粘着剤組成物を塗布することができ、ロール状に巻き取ることができ、有用である。
【0018】
前記基材フィルムとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;シクロオレフィン系ポリマー等を主たる樹脂成分(樹脂成分のなかの主成分、典型的には50質量%以上を占める成分)とする樹脂材料から構成されたプラスチックフィルムを、前記基材フィルムとして好ましく用いることができる。前記樹脂材料の他の例としては、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体等の、スチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体等の、オレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン6、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド等の、アミド系ポリマー;等を樹脂材料とするものが挙げられる。前記樹脂材料のさらに他の例として、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が挙げられる。上述したポリマーの2種以上のブレンド物からなる基材フィルムであってもよい。
【0019】
前記基材フィルムとしては、透明な熱可塑性樹脂材料からなるプラスチックフィルムを好ましく採用することができる。前記プラスチックフィルムの中でも、ポリエステルフィルムを使用することが、より好ましい態様である。ここで、ポリエステルフィルムとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のエステル結合を基本とする主骨格を有するポリマー材料(ポリエステル樹脂)を主たる樹脂成分とするものをいう。かかるポリエステルフィルムは、光学特性や寸法安定性に優れる等、粘着シート(表面保護フィルム)の基材フィルムとして、好ましい特性を有する一方、そのままでは帯電しやすい性質を有する。
【0020】
前記基材フィルムを構成する樹脂材料には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されていてもよい。例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、例えば、基材フィルムと粘着剤層との密着性(粘着剤層の投錨性)を高めるための処理であり得る。
【0021】
本発明の粘着シート(表面保護フィルム)は、前記基材フィルムとして、帯電防止処理がなされてなるプラスチックフィルムを使用することも可能である。前記基材フィルムを用いることにより、剥離した際の粘着シート自体の帯電が抑えられるため、好ましい。また、基材フィルムがプラスチックフィルムであり、前記プラスチックフィルムに帯電防止処理を施すことにより、粘着シート自体の帯電を低減し、かつ、被着体への帯電防止能が優れるものが得られる。なお、帯電防止機能を付与する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができ、例えば、帯電防止剤と樹脂成分から成る帯電防止性樹脂や導電性ポリマー、導電性物質を含有する導電性樹脂を塗布する方法や導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法、また、帯電防止剤等を練り込む方法、帯電防止層を形成する方法等があげられる。
【0022】
前記基材フィルムの厚みとしては、通常5~200μm、好ましくは10~100μm程度である。前記基材フィルムの厚みが、前記範囲内にあると、被着体への貼り合せ作業性と被着体からの剥離作業性に優れるため、好ましい。
【0023】
ここに開示される粘着シートは、基材フィルム、及び、粘着剤層に加えて、帯電防止層や、さらに他の層を含む態様でも実施され得る。前記他の層としては、帯電防止層や粘着剤層の投錨性を高める下塗り層(アンカー層)などが挙げられる。
【0024】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、粘着性を有する粘着性ポリマーを含有するものであれば、特に制限なく使用でき、前記粘着剤組成物から粘着剤層を形成することができる。前記粘着剤組成物としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、等を使用することもでき、中でも、より好ましくは、前記粘着性ポリマーが、(メタ)アクリル系ポリマー、及び/又は、ウレタン系ポリマーであり、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤、及び/又は、ウレタン系ポリマーを含有するウレタン系粘着剤を使用(含有)するものが更に好ましく、特に好ましくは、前記粘着性ポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーを使用するアクリル系粘着剤を使用することである。
【0025】
<アクリル系粘着剤>
前記粘着剤層がアクリル系粘着剤を使用する場合、前記アクリル系粘着剤を構成する粘着性ポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーは、これを構成する原料モノマーとして、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを、主モノマーとして用いることができる。前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、1種または2種以上を使用することができる。前記炭素数が1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、被着体(被保護体)に対する剥離力(粘着力)を低く制御することが容易となり、軽剥離性や再剥離性に優れた粘着シート(表面保護フィルム)が得られる。なお、本発明における(メタ)アクリル系ポリマーとは、アクリル系ポリマーおよび/またはメタクリル系ポリマーをいい、また(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。
【0026】
前記炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0027】
なかでも、本発明の粘着シートを表面保護フィルムとして使用する場合には、n-ブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数4~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーが好適なものとしてあげられる。特に、炭素数4~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、被着体への剥離力(粘着力)を低く制御することが容易となり、再剥離性に優れたものとなる。
【0028】
特に、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、炭素数1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを、70質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは、80質量%以上、更に好ましくは、85~99.9質量%、特に好ましくは90~99.5質量%である。70質量%未満になると、粘着剤組成物の適度な濡れ性や、粘着剤層の凝集力が劣ることになり、好ましくない。
【0029】
また、本発明の粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、原料モノマーとして、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを含有することが好ましい。前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、1種または2種以上を使用することができる。前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、粘着剤組成物の架橋などを制御しやすくなり、ひいては流動による濡れ性の改善と剥離における剥離力(粘着力)の低減とのバランスを制御しやすくなる。
【0030】
前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、などがあげられる。特にアルキル基の炭素数が4以上のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いることで高速剥離時の軽剥離化が容易となり好ましい。
【0031】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを、30質量%以下含有することが好ましく、より好ましくは、20質量%以下、更に好ましくは、0.1~15質量%であり、特に好ましくは0.5~10質量%である。前記範囲内にあると、粘着剤組成物の濡れ性と、得られる粘着剤層の凝集力のバランスを制御しやすくなるため、好ましい。
【0032】
また、その他の重合性モノマー成分として、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、Tgが0℃以下(通常-100℃以上)になるようにして、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度や剥離性を調整するための重合性モノマーなどを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0033】
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられる前記炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーとしては、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いることができる。前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、粘着シート(粘着剤層)の経時での粘着力の上昇を抑制することができ、再剥離性、粘着力上昇防止性、及び作業性に優れる、また、粘着剤層の凝集力と共に、せん断力にも優れ、好ましい。
【0034】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、カルボキシルペンチル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0035】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを、0~3質量%であることが好ましく、0~2質量%であることがより好ましく、0~1質量%であることが更に好ましく、0.001~0.5質量%が特に好ましい。前記範囲内にあると、粘着剤組成物の濡れ性と、得られる粘着剤層の凝集力のバランスを制御しやすくなるため、好ましい。
【0036】
また、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとカルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを併用して用いる場合には、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを0.005~0.1質量%含有することが好ましい。前記範囲内に調整することにより、更に、再剥離性、粘着力上昇防止性に優れる粘着シート(粘着剤層)が得られ、有効である。
【0037】
更に、その他の重合性モノマーとしては、本発明の特性を損なわない範囲内であれば、特に限定することなく用いることができる。たとえば、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N-アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマーなどの剥離力(粘着力)の向上や架橋化基点として働く官能基を有する成分を適宜用いることができる。中でも、シアノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、及び、N-アクリロイルモルホリンなどの窒素含有モノマーを用いることが好ましい。窒素含有モノマーを用いることにより、浮きや剥がれなどが生じない適度な剥離力(粘着力)を確保でき、更にせん断力に優れた粘着シート(表面保護フィルム)を得ることができるため、有用である。これら重合性モノマーは、1種また2種以上を使用することができる。
【0038】
前記シアノ基含有モノマーとしては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルがあげられる。
【0039】
前記アミド基含有モノマーとしては、たとえば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどがあげられる。
【0040】
前記イミド基含有モノマーとしては、たとえば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミドなどがあげられる。
【0041】
前記アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0042】
前記ビニルエステルモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどがあげられる。
【0043】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン、その他の置換スチレンなどがあげられる。
【0044】
前記エポキシ基含有モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0045】
前記ビニルエーテルモノマーとしては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどがあげられる。
【0046】
本発明において、前記その他の重合性モノマーは、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、0~30質量%であることが好ましく、0~20質量%であることがより好ましい。前記その他の重合性モノマーは所望の特性を得るために、適宜調節することができる。
【0047】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、更に、モノマー成分としてアルキレンオキシド基含有反応性モノマーを含有してもよい。前記アルキレンオキシド基含有反応性モノマー反応性モノマーをモノマー成分として含有する(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いることにより、ベースポリマーと、前記ポリエーテル化合物との相溶性が向上し、被着体へのブリードが好適に抑制され、耐汚染性(低汚染性)の粘着剤組成物が得られる。
【0048】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が10万~200万が好ましく、より好ましくは20万~100万、さらに好ましくは30万~80万、特に好ましくは30万~70万である。重量平均分子量が10万より小さい場合は、粘着剤層の凝集力が小さくなることにより糊残りを生じる傾向がある。一方、重量平均分子量が200万を超える場合は、ポリマーの流動性が低下し、被着体(例えば、偏光フィルム)への濡れが不十分となり、被着体と粘着シート(表面保護フィルム)の粘着剤層との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
【0049】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下が好ましく、より好ましくは-20℃以下であり、更に好ましくは-40℃以下であり、特に好ましくは-50℃以下である(通常-100℃以上)。ガラス転移温度が0℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく、例えば、光学部材である偏光フィルムへの濡れが不十分となり、偏光フィルムと粘着シート(表面保護フィルム)の粘着剤層との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。中でも特にガラス転移温度を-60℃以下にすることで光学部材(例えば、偏光フィルム)への濡れ性と軽剥離性に優れる粘着剤層が得られ易くなる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調整することができる。
【0050】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の方法により重合できるが、特に作業性の観点や、被着体(被保護体)への低汚染性など特性面から、溶液重合がより好ましい態様である。また、得られるポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0051】
<ウレタン系粘着剤>
前記粘着剤層にウレタン系粘着剤を使用する場合、任意の適切なウレタン系粘着剤を採用し得る。このようなウレタン系粘着剤としては、好ましくは、ポリオールと多官能イソシアネート化合物を反応させて得られる粘着性ポリマーであるウレタン系ポリマー、または、ウレタンプレポリマーと多官能イソシアネート化合物を反応させて得られる粘着性ポリマーであるウレタン系ポリマーからなるものが挙げられる。
【0052】
ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオールなどが挙げられる。ポリオールは、1種類のみであっても良いし、2種類以上であっても良い。
【0053】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオール成分と酸成分とのエステル化反応によって得ることができる。
【0054】
ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。酸成分としては、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、ダイマー酸、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-エチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェエルジカルボン酸、これらの酸無水物などが挙げられる。
【0055】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、低分子ポリオール(プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなど)などを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0056】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε-カプロラクトン、σ-バレロラクトンなどの環状エステルモノマーの開環重合により得られるカプロラクトン系ポリエステルジオールなどが挙げられる。
【0057】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記ポリオール成分とホスゲンとを重縮合反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分と、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロビル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、エチルブチル炭酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジフェニル、炭酸ジベンジル等の炭酸ジエステル類とをエステル交換縮合させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分を2種以上併用して得られる共重合ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとカルボキシル基含有化合物とをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエーテル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとエステル化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとジカルボン酸化合物とを重縮合反応させて得られるポリエステル系ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとアルキレンオキサイドとを共重合させて得られる共重合ポリエーテル系ポリカーボネートポリオール;などが挙げられる。
【0058】
ひまし油系ポリオールとしては、例えば、ひまし油脂肪酸と上記ポリオール成分とを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ひまし油脂肪酸とポリプロピレングリコールとを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。
【0059】
ポリオールの数平均分子量(Mn)は、好ましくは300~100000であり、より好ましくは400~75000であり、さらに好ましくは450~50000であり、特に好ましくは500~30000である。ポリオールの数平均分子量(Mn)を上記範囲内に調整することにより、粘着剤層の濡れ性が向上し得るため、気泡を巻き込むことなく貼り付けが可能となる。
【0060】
前記多官能イソシアネート化合物としては、たとえば、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族イソシアネート類、前記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合などにより変性したポリイソシネート変性体が挙げられる。たとえば、市販品として、商品名タケネート300S、タケネート500、タケネート600、タケネートD165N、タケネートD178N(以上、三井化学社製)、スミジュールT80、スミジュールL、デスモジュールN3400(以上、住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR、ミリオネートMT、コロネートL、コロネートHL、コロネートHX(以上、東ソー社製)などがあげられる。これらイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよく、2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用して用いることも可能である。
【0061】
ポリオールと多官能イソシアネート化合物における、NCO基とOH基の当量比(NCO基/OH基)として、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは0.1~3.0であり、さらに好ましくは0.2~2.5であり、特に好ましくは0.3~2.25であり、最も好ましくは0.5~2.0である。NCO基/OH基の当量比を上記範囲内に調整することにより、粘着力の重剥離化を抑制できるため好ましい。
【0062】
<分子内にポリオキシアルキレン鎖を3以上含み、かつ、シリコーン鎖を含まないポリエーテル化合物>
本発明の粘着剤組成物は、分子内にポリオキシアルキレン鎖を3以上含み、かつ、シリコーン鎖を含まないポリエーテル化合物を含有することを特徴とする。前記粘着剤組成物が、前記ポリエーテル化合物を含むことで、イオン性化合物との相互作用により帯電防止性に優れた粘着シート(粘着剤層)が得られ、また、粘着シートを被着体(例えば、偏光フィルムなどの光学部材)から剥離した後に、被着体表面に設けられる層間充填剤などの層と、前記粘着シートを剥離した後の被着体表面との密着性(接着性)に優れるため、好ましい態様となる。なお、「シリコーン鎖」とは、シロキサン結合を含む構造であり、シリコーン鎖を含む化合物としては、例えば、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0063】
前記ポリエーテル化合物は、分子内にポリオキシアルキレン鎖を3以上含むものであり、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上である。前記ポリオキシアルキレン鎖が3以上あると、イオン性化合物との相互作用が強まり、帯電防止性に優れるため、好ましい。なお、前記ポリオキシアルキレン鎖とは、オキシアルキレン単位を2以上含むものであり、前記ポリオキシアルキレン鎖は、3以上存在するが、それぞれのポリオキシアルキレン鎖が同一であっても、異なっていても構わない。
【0064】
また、前記オキシアルキレン単位とは、特に制限されないが、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシアルキレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合体、オキシエチレン-オキシブチレンブロック共重合体、オキシエチレン-オキシプロピレンランダム共重合体などが挙げられ、好ましくは、オキシエチレン基またはオキシプロピレン基などである。
【0065】
ポリオキシアルキレン単位の繰り返し数は2以上200以下が好ましく、繰り返し数が200を超えると結晶化を起こし帯電防止性が低下するため好ましくない。
【0066】
また、前記ポリオキシアルキレン鎖の末端は、水素、メチル基、エチル基等の直鎖または分岐したアルキル基、オレイン酸残基等の不飽和脂肪酸残基、イソステアリン酸残基等の飽和脂肪酸残基、カルボキシル基等であってもよいが、より好ましくは、前記ポリオキシアルキレン鎖の末端は、直鎖又は分岐したアルキル基、飽和脂肪酸残基、及び、不飽和脂肪酸残基からなる群より選択される少なくとも一つを含むことである。
【0067】
前記ポリオキシアルキレン鎖の末端は分子内でそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもかまわない。低極性成分(低極性基)であるアルキル基や不飽和脂肪酸残基、飽和脂肪酸残基が存在することにより、前記ポリオキシアルキレン鎖部位と相互作用するイオン性化合物が、粘着剤層表面(粘着剤層と空気との界面、もしくは、粘着剤層とセパレータとの界面)に偏析しやすくなり、帯電防止性に優れ、さらに、層間充填剤等の濡れ性が向上することにより、層間充填剤等の残留接着力に優れるため、好ましい。なお、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、イソノニル基などの炭素数が、1~20のものが好ましく、飽和脂肪酸残基としては、酪酸残基、カプロン酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、イソステアリン酸酸残基などの炭素数1~20のものが好ましく、
不飽和脂肪酸基としては、クロトン酸残基、ミリストレイン酸残基、パルミトレイン酸残基、オレイン酸残基、エライジン酸残基、ガドレイン酸残基などの炭素数1~20のものが好ましい。
【0068】
下記化学式1~9は、前記ポリエーテル化合物を例示するものであり、化学式1はグリセリン系、化学式2はトリメチロールプロパン系、化学式3はジグリセリン系、化学式4はペントエリスリトール系、化学式5はメチルグルコシド系、化学式6及び化学式7はソルビタン脂肪酸エステル系、化学式8はソルビタン系、化学式9はひまし油系のポリエーテル化合物である。
なお、下記化学式1~9中のR1はポリオキシアルキレン基(例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基)であり、単独でもよいし、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。また、オキシアルキレン単位の繰り返し数が、2~200が好ましい。繰り返し数が200を超えると結晶化を起こしやすくなり帯電防止性が低下し、2未満であると、イオン性化合物との相互作用が低下し。帯電防止性が低下するため、好ましくない。また、R1は、前記ポリエーテル化合物の分子内で全て同じ構造でもよく、異なっていてもよい。
下記化学式1~9中のR2は、水素、メチル基、エチル基等の直鎖または分岐したアルキル基、オレイン酸残基等の不飽和脂肪酸残基、イソステアリン酸残基等の飽和脂肪酸残基、カルボキシル基等であってもよいが、より好ましくは、R2が、直鎖又は分岐したアルキル基、飽和脂肪酸残基、及び、不飽和脂肪酸残基からなる群より選択される少なくとも一つを含むことである。また、R2は、前記ポリエーテル化合物の分子内で全て同じ構造でもよく、異なっていてもよい。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
前記ポリエーテル化合物の具体例としては、ポリオキシアルキレン鎖の数が3個である化合物としては、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルであるGP250、GP400、GP600、GP1000、GP1500、GP3000、GP4000(以上、三洋化成社製)、ポリオキシエチレングリセリンであるG-450、G-750、G-1200、、ポリオキシエチレントリメチロールプロパンジステアリン酸であるTD-4S、ポリオキシエチレングリセリルトリイソステアリン酸であるGT-10IS、GT-20IS、GT-30IS、ポリオキシエチレングリセリルイソステアリン酸であるGM-8IS、GM-10IS、GM-15IS、GM-20IS、GM-30IS、GM-60IS、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルであるS-753、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパンである43TT-2500、10TT-4500、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル50TG-32(以上、日油社製)、ポリオキシアルキレン鎖の数が4個である化合物としては、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルであるDGP-700、DGP-950、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリスリトールエーテルである5TP-300KB、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンペンタエリスリトールエーテルであるRC-9050、ポリオキシエチレンメチルグルコシドであるMG-10E、MG-20E、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレンメチルグルコシドであるMG-2070、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであるOT-521、ST-521、ST-5160、LT-221、PT-221、OT-206、OT-221、ST-206、LT-210、IST-221、ポリオキシエチレンメチルグルコーストリイソステアリン酸であるMG-120TIS(以上、日油社製)、ポリオキシアルキレン鎖の数が6個である化合物としては、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレイン酸であるST-6E、ST-30E、ST-30EC、ST-40E、ST-60E、ポリオキシエチレンソルビットペンタオレイン酸であるSP-40E、ポリオキシエチレンソルビットテトライソステアリン酸ST-30IS、ポリオキシプロピレンソルビットであるHS-1600D、HS-2000D、ポリオキシエチレンヒマシ油であるC-35、HC-20M(以上、日油社製)などが挙げられる。これらのポリエーテル化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0079】
前記ポリエーテル化合物の含有量は、前記粘着剤組成物を構成する粘着性ポリマー(ベースポリマーであり、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーやウレタン系ポリマー等)100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、より好ましくは0.02~15質量部であり、更に好ましくは0.04~10質量部、特に好ましくは0.08~5質量部であり、最も好ましくは0.1~2質量部である。前記範囲内にあると、帯電防止性と低汚染性に優れるため好ましい。
【0080】
<イオン性化合物>
本発明の粘着剤組成物は、イオン性化合物を含有することを特徴とする。前記イオン性化合物としては、アルカリ金属塩、及び/又は、イオン液体を用いることが好ましい。前記イオン性化合物を含有することにより、優れた帯電防止性や剥離帯電防止性を付与することができる。
【0081】
前記アルカリ金属塩は、イオン解離性が高いため、微量の添加量でも優れた帯電防止能を発現する点で、好ましい。前記アルカリ金属塩としては、たとえば、Li+、Na+、K+よりなるカチオンと、Cl-、Br-、I-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、BF4
-、PF6
-、SCN-、ClO4
-、NO3
-、CH3COO-、C9H19COO-、CF3COO-、C3F7COO-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、C4F9SO3
-、C2H5OSO3
-、C6H13OSO3
-、C8H17OSO3
-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(C3F7SO2)2N-、(C4F9SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、F(HF)n
-、(CN)2N-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、(CH3)2PO4
-、(C2H5)2PO4
-、CH3(OC2H4)2OSO3
-、C6H4(CH3)SO3
-、(C2F5)3PF3
-、CH3CH(OH)COO-、及び、(FSO2)2N-よりなるアニオンから構成される金属塩が好適に用いられる。より好ましくは、LiBr、LiI、LiBF4、LiPF6、LiSCN、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(FSO2)2N、Li(CF3SO2)3Cなどのリチウム塩、さらに好ましくはLiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C3F7SO2)2N、Li(C4F9SO2)2N、Li(FSO2)2N、Li(CF3SO2)3Cが用いられる。これらのアルカリ金属塩は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0082】
前記イオン液体は下記式(A)~(E)で表される有機カチオン成分と、アニオン成分からなるものが好ましく用いられる。これらのカチオンを持つイオン液体の中でも融点が100℃以下のものを用いることにより、さらに帯電防止能に優れたものが得られる。
【0083】
【0084】
前記式(A)中のRaは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよく、RbおよびRcは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、Rcはない。
【0085】
前記式(B)中のRdは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよく、Re、Rf、およびRgは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。
【0086】
前記式(C)中のRhは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよく、Ri、Rj、およびRkは、同一または異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。
【0087】
前記式(D)中のZは、窒素、硫黄、またはリン原子を表し、Rl、Rm、Rn、およびRoは、同一または異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。但しZが硫黄原子の場合、Roはない。
【0088】
前記式(E)中のRPは、炭素数1から18の炭化水素基を表し、前記炭化水素基の一部がヘテロ原子で置換された官能基であってもよい。
【0089】
式(A)で表されるカチオンとしては、たとえば、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、モルフォリニウムカチオンなどがあげられる。
【0090】
具体例としては、たとえば、1-エチルピリジニウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-へキシルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-へキシル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムカチオン、1,1-ジメチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-へキシルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘプチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-へキシルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-へプチルピロリジニウムカチオン、1,1-ジプロピルピロリジニウムカチオン、1-プロピル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1,1-ジブチルピロリジニウムカチオン、ピロリジニウム-2-オンカチオン、1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1,1-ジメチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-エチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘキシルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-へプチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ヘキシルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-へプチルピペリジニウムカチオン、1,1-ジプロピルピペリジニウムカチオン、1-プロピル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1,1-ジブチルピペリジニウムカチオン、2-メチル-1-ピロリンカチオン、1-エチル-2-フェニルインドールカチオン、1,2-ジメチルインドールカチオン、1-エチルカルバゾールカチオン、N-エチル-N-メチルモルフォリニウムカチオンなどが挙げられる。
【0091】
式(B)で表されるカチオンとしては、たとえば、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオンなどがあげられる。
【0092】
具体例としては、たとえば、1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-(2-メトキシエチル)-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオンなどがあげられる。
【0093】
式(C)で表されるカチオンとしては、たとえば、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオンなどがあげられる。
【0094】
具体例としては、たとえば、1-メチルピラゾリウムカチオン、3-メチルピラゾリウムカチオン、1-エチル-2-メチルピラゾリニウムカチオン、1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウムカチオン、1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリニウムカチオン、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリニウムカチオン、1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリニウムカチオンなどがあげられる。
【0095】
式(D)で表されるカチオンとしては、たとえば、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、前記アルキル基の一部がアルケニル基やアルコキシル基、さらにはエポキシ基に置換されたものなどがあげられる。
【0096】
具体例としては、たとえば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラヘプチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、テトラオクチルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、トリブチル-(2-メトキシエチル)ホスホニウムカチオンなどがあげられる。なかでもトリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-プロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ノニルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N,N-ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-ブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-ブチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-ペンチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N,N-ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-エチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N,N-ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N-メチル-N-エチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオンが好ましく用いられる。
【0097】
式(E)で表されるカチオンとしては、たとえば、スルホニウムカチオン等が挙げられる。また、前記式(E)中のRPの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0098】
一方、アニオン成分としては、イオン液体になることを満足するものであれば特に限定されず、例えば、Cl-、Br-、I-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、BF4
-、PF6
-、SCN-、ClO4
-、NO3
-、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、C4F9SO3
-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(C3F7SO2)2N-、(C4F9SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、F(HF)n
-、(CN)2N-、C4F9SO3
-、(C2F5SO2)2N-、C3F7COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、C9H19COO-、(CH3)2PO4
-、(C2H5)2PO4
-、CH3OSO3
-、C2H5OSO3
-、C4H9OSO3
-、C6H13OSO3
-、C8H17OSO3
-、CH3(OC2H4)2OSO3
-、C6H4(CH3)SO3
-、(C2F5)3PF3
-、CH3CH(OH)COO-、(FSO2)2N-、B(CN)4
-、C(CN)3
-、N(CN)2
-、p-トルエンスルホネートアニオン、2-(2-メトキシエチル)エチルサルフェートアニオン等を用いることができる。
【0099】
これらのイオン液体は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0100】
前記イオン性化合物の含有量は、前記粘着剤組成物を構成する粘着性ポリマー(ベースポリマーであり、例えば、(メタ)アクリル系ポリマーやウレタン系ポリマー等)100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、より好ましくは0.05~3質量部であり、更に好ましくは0.1~2質量部、特に好ましくは0.2~1質量部である。前記範囲内にあると、本発明の粘着シートが、帯電防止性と低汚染性の両立がしやすくなるため、好ましい。
【0101】
<架橋剤>
本発明の粘着シート(表面保護フィルム)は、前記粘着剤組成物が、架橋剤を含有することが好ましい。また、本発明においては、前記粘着剤組成物を用いて、粘着剤層とすることができる。例えば、前記粘着剤組成物が、前記(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤の場合、前記(メタ)アクリル系ポリマーの構成単位、構成比率、架橋剤の選択および添加比率等を適宜調節して架橋することにより、より耐熱性に優れた粘着シート(粘着剤層)を得ることができる。
【0102】
本発明に用いられる架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物などを用いてもよく、特にイソシアネート化合物の使用は、好ましい態様となる。また、これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0103】
前記イソシアネート化合物としては、たとえば、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族イソシアネート類、前記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合などにより変性したポリイソシネート変性体が挙げられる。たとえば、市販品として、商品名タケネート300S、タケネート500、タケネート600、タケネートD165N、タケネートD178N(以上、三井化学社製)、スミジュールT80、スミジュールL、デスモジュールN3400(以上、住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR、ミリオネートMT、コロネートL、コロネートHL、コロネートHX(以上、東ソー社製)などがあげられる。これらイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよく、2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用して用いることも可能である。架橋剤を併用して用いることにより粘着性と耐反発性(曲面に対する粘着性)を両立することが可能となり、より粘着特性に優れた粘着シートを得ることができる。
【0104】
前記エポキシ化合物としては、たとえば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(商品名TETRAD-X、三菱瓦斯化学社製)や1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名TETRAD-C、三菱瓦斯化学社製)などがあげられる。
【0105】
前記メラミン系樹脂としてはヘキサメチロールメラミンなどがあげられる。アジリジン誘導体としては、たとえば、市販品としての商品名HDU、TAZM、TAZO(以上、相互薬工社製)などがあげられる。
【0106】
前記金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルなど、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、乳酸エチルなどがあげられる。
【0107】
本発明に用いられる架橋剤の含有量は、例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.01~30質量部であることが好ましく、0.1~25質量部であることがより好ましく、0.5~20質量部であることがさらに好ましく、1~18質量部であることが特に好ましい。前記含有量が0.01質量部よりも少ない場合、架橋剤による架橋形成が不十分となり、得られる粘着剤層の凝集力が小さくなって、十分な耐熱性が得られない場合もあり、また糊残りの原因となる傾向がある。一方、含有量が30質量部を超える場合、ポリマーの凝集力が大きく、流動性が低下し、被着体(例えば、偏光フィルム)への濡れが不十分となって、被着体と粘着剤層(粘着剤組成物層)との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。
【0108】
前記粘着剤組成物には、さらに、上述したいずれかの架橋反応をより効果的に進行させるための架橋触媒を含有させることができる。かかる架橋触媒として、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズなどのスズ系触媒、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(ヘキサン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン-3,5-ジオナト)鉄、トリス(5-メチルヘキサン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(オクタン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(6-メチルヘプタン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオナト)鉄、トリス(ノナン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(ノナン-4,6-ジオナト)鉄、トリス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)鉄、トリス(トリデカン-6,8-ジオナト)鉄、トリス(1-フェニルブタン-1,3-ジオナト)鉄、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)鉄、トリス(アセト酢酸エチル)鉄、トリス(アセト酢酸-n-プロピル)鉄、トリス(アセト酢酸イソプロピル)鉄、トリス(アセト酢酸-n-ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸-sec-ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸-tert-ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸メチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸エチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-n-プロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸イソプロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-n-ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-sec-ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-tert-ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸ベンジル)鉄、トリス(マロン酸ジメチル)鉄、トリス(マロン酸ジエチル)鉄、トリメトキシ鉄、トリエトキシ鉄、トリイソプロポキシ鉄、塩化第二鉄などの鉄系触媒を用いることができる。これら架橋触媒は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
前記架橋触媒の含有量は、特に制限されないが、例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、およそ0.0001~1質量部とすることが好ましく、0.001~0.5質量部がより好ましい。前記範囲内にあると、粘着剤層を形成した際に架橋反応の速度が速く、粘着剤組成物のポットライフも長くなり、好ましい態様となる。
【0110】
更に、前記粘着剤組成物には、ケト-エノール互変異性を生じる化合物を含有させることができる。例えば、架橋剤を含む粘着剤組成物または架橋剤を配合して使用され得る粘着剤組成物において、前記ケト-エノール互変異性を生じる化合物を含む態様を好ましく採用することができる。これにより、架橋剤配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長する効果が実現され得る。前記架橋剤として少なくともイソシアネート化合物を使用する場合には、ケト-エノール互変異性を生じる化合物を含有させることが特に有意義である。この技術は、例えば、前記粘着剤組成物が、有機溶剤溶液又は無溶剤の形態である場合に好ましく適用され得る。
【0111】
前記ケト-エノール互変異性を生じる化合物としては、各種のβ-ジカルボニル化合物を用いることができる。具体例としては、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、3,5-ヘプタンジオン、2-メチルヘキサン-3,5-ジオン、6-メチルヘプタン-2,4-ジオン、2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオン等のβ-ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸tert-ブチル等のアセト酢酸エステル類;プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸tert-ブチル等のプロピオニル酢酸エステル類;イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸tert-ブチル等のイソブチリル酢酸エステル類;マロン酸メチル、マロン酸エチル等のマロン酸エステル類;等が挙げられる。なかでも好適な化合物として、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エステル類が挙げられる。かかるケト-エノール互変異性を生じる化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0112】
前記ケト-エノール互変異性を生じる化合物の含有量は、例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.1~20質量部とすることができ、通常は0.5~15質量部(例えば1~10質量部)とすることが適当である。前記化合物の量が少なすぎると、十分な使用効果が発揮され難くなる場合がある。一方、前記化合物を必要以上に多く使用すると、粘着剤層に残留し、凝集力を低下させる場合がある。
【0113】
さらに、前記粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、滑剤、着色剤、顔料などの粉体、可塑剤、粘着付与剤、低分子量ポリマー、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、軟化剤、老化防止剤、耐熱安定剤、シランカップリンング剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物、溶剤などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0114】
<粘着剤層及び粘着シート(表面保護フィルム)>
本発明の粘着シートは、前記基材フィルムの少なくとも片面に、前記粘着剤組成物より形成される粘着剤層を有することが好ましい。なお、前記粘着剤層は、前記粘着剤組成物の架橋により得られ、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を基材フィルムなどに転写することも可能である。
【0115】
また、基材フィルム上に粘着剤層を形成する方法は特に問わないが、たとえば、前記粘着剤組成物(溶液)を基材フィルムに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を基材フィルム上に形成することにより作製される。その後、粘着剤層の成分移行の調整や架橋反応の調整などを目的として養生をおこなってもよい。また、粘着剤組成物を基材フィルム上に塗布して粘着シートを作製する際には、基材フィルム上に均一に塗布できるよう、前記粘着剤組成物中に重合溶剤以外の1種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0116】
また、本発明の粘着シートを製造する際の粘着剤層の形成方法としては、粘着テープ類の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、たとえば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法、ダイコーターなどによる押出しコート法などがあげられる。
【0117】
本発明の粘着シートは、通常、前記粘着剤層の厚みが0.1~100μm、好ましくは1~80μm程度となるように作製する。粘着剤層の厚みが、前記範囲内にあると、適度な再剥離性と粘着性のバランスを得やすいため、好ましい。
【0118】
また、本発明の粘着シートは、総厚みが、8~300μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましく、20~100μmであることが最も好ましい。前記範囲内であると、粘着特性(再剥離性、粘着性など)、作業性、外観特性に優れ、好ましい態様となる。なお、前記総厚みとは、基材フィルム、粘着剤層、その他の層などの全ての層を含む厚みの合計を意味する。
【0119】
<セパレータ>
本発明の粘着シートには、前記粘着剤層の前記基材フィルムと接触する面と反対面に、セパレータが貼付することが好ましい。前記セパレータは、必要に応じて粘着面を保護する目的で、粘着剤層表面にセパレータを貼り合わせることが可能である。
【0120】
前記セパレータを構成する材料としては、紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0121】
前記セパレータの厚みは、通常5~200μm、好ましくは10~100μm程度である。前記範囲内にあると、粘着剤層への貼り合せ作業性と粘着剤層からの剥離作業性に優れるため、好ましい。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理をすることもできる。
【0122】
<光学部材>
本発明の光学部材は、前記粘着シートが貼付(保護)されていることが好ましい。前記粘着シートは、偏光フィルムなどの光学部材表面などに、貼付後、剥離する際の帯電防止性、及び、前記粘着シートを剥離した後の光学部材表面と、前記剥離した後の光学部材表面に新たに設けられる層間充填剤等の層との密着性(接着性)に優れるため、加工、搬送、出荷時等の表面保護用途(表面保護フィルム)に使用でき、前記光学部材の表面を保護するために、有用なものとなる。
【0123】
<層間充填剤>
液晶ディスプレイ等の画像表示装置では、外表面から何らかの衝撃が加わった場合に、その衝撃が偏光フィルム等の光学部材に伝わって破損することを防ぐ観点から、偏光フィルム等の光学部材よりも視認側に、アクリル板やガラス板等の前面透明板(「ウインドウ層」等とも称される)が設けられることがある。このような前面透明板を備える画像表示装置において、偏光フィルム等の光学部材と前面透明板との間に空気層が存在すると、空気層との界面における屈折率差に起因して、反射損失が生じたり、画像が二重になって見える等、視認性が低下する場合がある。そのため、偏光フィルム等の光学部材と前面透明板との間に空気層が存在しないように、両者を層間充填剤から形成される層(層間充填剤の層)を介して貼り合わせることがある。前記層間充填剤の層(粘着剤層、粘着シート)としては、例えば、デクセリアルズ社製の型番「SVR7000シリーズ」や、協立化学産業社製の商品名「WORLD ROCK HRJ-21」などの液状の層間充填剤や、日東電工社製の光学用透明粘着テープ(商品名「LUCIACSシリーズ」)などが挙げられる。中でも、テープ状態であるため取り扱いが容易なアクリル系ポリマーを含んだ前記日東電工社製の光学用透明粘着テープ(商品名「LUCIACSシリーズ」)等が用いられており、本発明における粘着シートであれば、前記表示パネル(偏光版等)表面などに貼付し、不要となった段階で剥離した後の光学部材表面に、前記層間充填剤の層を設ける場合であっても、密着性(接着性)に優れ、好ましい態様となる。
【実施例】
【0124】
以下、本発明に関連するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り、質量基準である。
【0125】
また、以下の説明中の各特性は、それぞれ次のようにして測定または評価した。
【0126】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
使用するポリマーの重量平均分子量(Mw)は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8220GPC)を用いて測定を行った。測定条件は下記の通りである。
サンプル濃度:0.2質量%(THF溶液)
サンプル注入量:10μl
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
カラム:
サンプルカラム;TSKguardcolumn SuperHZ-H(1本)+TSKgel SuperHZM-H(2本)
リファレンスカラム;TSKgel SuperH-RC(1本)
検出器:示差屈折計(RI)
なお、重量平均分子量はポリスチレン換算値にて求めた。
【0127】
<ガラス転移温度(Tg)の理論値>
ガラス転移温度Tg(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tgn(℃)として下記の文献値を用い、下記の式により求めた。
【0128】
式:1/(Tg+273)=Σ[Wn/(Tgn+273)]
〔式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wn(-)は各モノマーの質量分率、Tgn(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。〕
文献値:
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA):-70℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):-15℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA):-32℃
アクリル酸(AA):106℃
【0129】
なお、上記文献値として、「アクリル樹脂の合成・設計と新用途展開」(中央経営開発センター出版部発行)及び「Polymer Handbook」(John Wiley & Sons)を参照した。
【0130】
<アクリル系ポリマー(1)の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)91質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)9質量部、アクリル酸(AA)0.02質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、酢酸エチル150質量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(1)溶液(40質量%)を調製した。前記アクリル系ポリマー(1)の重量平均分子量(Mw)は、54万、ガラス転移温度(Tg)は、-67℃であった。
【0131】
<アクリル系ポリマー(2)の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)98.5質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1.5質量部、アクリル酸(AA)0.006質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、酢酸エチル150質量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(2)溶液(40質量%)を調製した。前記アクリル系ポリマー(2)の重量平均分子量(Mw)は、48万、ガラス転移温度(Tg)は、-70℃であった。
【0132】
<アクリル系ポリマー(3)の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)96質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)4質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、酢酸エチル150質量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(3)溶液(40質量%)を調製した。前記アクリル系ポリマー(3)の重量平均分子量(Mw)は、48万、ガラス転移温度(Tg)は、-68℃であった。
【0133】
<実施例1>
〔アクリル系粘着剤溶液の調製〕
上記アクリル系ポリマー(1)溶液(40質量%)を酢酸エチルで20質量%に希釈し、この溶液500質量部(固形分100質量部)に、ポリエーテル化合物として、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル(サンニックスGP3000、三洋化成工業社製)0.5質量部、イオン性化合物として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業社製、LiTFSI)0.3質量部、架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、コロネートHX:C/HX、3官能イソシアネート化合物)1.5質量部(固形分1.5質量部)、架橋触媒としてジラウリン酸ジオクチルスズ(1質量%酢酸エチル溶液)3質量部(固形分0.03質量部)を加えて、混合攪拌を行い、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0134】
〔帯電防止処理フィルムの作製〕
バインダとして、ポリエステル樹脂バイロナールMD-1480(25%水溶液、東洋紡社製)を固形分量で100質量部、導電性ポリマーとして、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリスチレンスルホン酸(PSS)(Baytron P、H,C,Starck社製)を固形分量で100質量部、架橋剤としてヘキサメチロールメラミンを固形分量で10質量部、とを水/エタノール(1/1)の混合溶媒に加え、約20分間撹拌して十分に混合した。このようにして、NV(不揮発分)約0.4%の帯電防止剤溶液を調製した。
得られた帯電防止剤溶液を、基材フィルムであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)上にマイヤーバーを用いて塗布し、130℃で1分間乾燥することにより溶剤を除去して帯電防止層(厚さ0.2μm)を形成し、帯電防止処理フィルム(帯電防止層付き基材フィルム)を作製した。
【0135】
〔粘着シート(表面保護フィルム)の作製〕
上記アクリル系粘着剤溶液を、上記の帯電防止処理フィルムの帯電防止層を有する面(帯電防止処理面)とは反対の面に塗布し、130℃で1分間加熱して、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次いで、上記粘着剤層の基材フィルムであるPETフィルムと接触していない表面に、片面にシリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(セパレータ、厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合わせ、粘着シート(表面保護フィルム)を作製した(
図1参照)。
【0136】
<実施例2~23、及び、比較例1~3>
実施例1で使用した粘着性ポリマー、ポリエーテル化合物、及び、イオン性化合物の代わりに、表3中に記載の原料を用いた以外は、表3中に記載の配合量で実施例1と同様の方法で、粘着シート(表面保護フィルム)を作製した。
【0137】
<実施例24>
〔ウレタン系粘着剤溶液の調製〕
ポリオールとして、ヒドロキシル基を3個有するポリオールであるプレミノールS3011(旭硝子社製、Mn=10000)100質量部、架橋剤としてイソシアネート化合物(コロネートHX:C/HX、日本ポリウレタン社製)8.9質量部、触媒として、鉄(III)アセチルアセトナート (東京化成工業社製)0.04質量部、ポリエーテル化合物としてST-30E(日油社製)0.5質量部、イオン性化合物としてAS110(第一工業製薬社製)0.45質量部、希釈溶剤として酢酸エチル210質量部を配合し、ウレタン系粘着剤溶液を得た。
【0138】
〔粘着シート(表面保護フィルム)の作製〕
上記ウレタン系粘着剤溶液を、上記帯電防止処理フィルムの帯電防止処理面とは反対の面に塗布し、130℃で1分間加熱して、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次いで、上記粘着剤層の基材フィルムであるPETフィルムと接触していない表面に、片面にシリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(セパレータ、厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合わせ、粘着シート(表面保護フィルム)を作製した(
図1参照)。
【0139】
<実施例25~28>
表4中に記載の原料および配合量で用いたこと以外は、実施例24と同様の方法で、粘着シート(表面保護フィルム)を作製した。
【0140】
<実施例29>
〔ウレタン系粘着剤溶液の調製〕
ウレタンプレポリマーSH109(トーヨーケム社製)100質量部、架橋剤としてイソシアネート化合物(コロネートL:C/L、日本ポリウレタン社製)3.8質量部、触媒として、鉄(III)アセチルアセトナート (東京化成工業社製)0.04質量部、ポリエーテル化合物としてST-30E(日油社製)0.5質量部、イオン性化合物としてAS110(第一工業製薬社製)0.45質量部、希釈溶剤として酢酸エチル210質量部を配合し、ウレタン系粘着剤溶液を得た。
【0141】
〔粘着シート(表面保護フィルム)の作製〕
上記ウレタン系粘着剤溶液を、上記帯電防止処理フィルムの帯電防止処理面とは反対の面に塗布し、130℃で1分間加熱して、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次いで、上記粘着剤層の基材フィルムであるPETフィルムと接触していない表面に、片面にシリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(セパレータ、厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合わせ、粘着シート(表面保護フィルム)を作製した(
図1参照)。
【0142】
<実施例30>
〔ウレタン系粘着剤溶液の調製〕
ポリオールとして、ヒドロキシル基を3個有するポリオールであるプレミノールS3011(旭硝子社製、Mn=10000)85質量部、ヒドロキシル基を3個有するポリオールであるサンニックスGP3000(三洋化成社製、Mn=3000)13質量部、ヒドロキシル基を3個有するポリオールであるサンニックスGP1000(三洋化成社製、Mn=1000)2質量部、架橋剤としてイソシアネート化合物(コロネートHX:C/HX、日本ポリウレタン社製)18質量部、触媒として、鉄(III)アセチルアセトナート (東京化成工業社製)0.04質量部、ポリエーテル化合物としてST-30E(日油社製)0.5質量部、イオン性化合物としてAS110(第一工業製薬社製)0.45質量部、希釈溶剤として酢酸エチル210質量部を配合し、ウレタン系粘着剤溶液を得た。
【0143】
〔粘着シート(表面保護フィルム)の作製〕
上記ウレタン系粘着剤溶液を、上記帯電防止処理フィルムの帯電防止処理面とは反対の面に塗布し、130℃で1分間加熱して、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次いで、上記粘着剤層の基材フィルムであるPETフィルムと接触していない表面に、片面にシリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(セパレータ、厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合わせ、粘着シート(表面保護フィルム)を作製した(
図1参照)。
【0144】
実施例及び比較例に係る粘着シートにつき、上述した配合内容、各種測定および評価を行った結果を、表1~表5に示した。なお、表3及び表4中の配合量は有効成分を示した。また、実施例1以外の実施例2~23、及び、比較例1~3において、表3及び表4中に配合量の記載のない架橋触媒などについて、実施例1と同量を配合した。また、得られた粘着剤層の厚みも実施例1と同様に調製した。
【0145】
【0146】
【0147】
以下に、表3及び表4中の略称を、以下に説明する。
(イオン性化合物)
LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業社製)、アルカリ金属塩
LiTFS:リチウムトリフルオロメタンスルホン酸(東京化成工業社製)、アルカリ金属塩
AS110:1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド(第一工業製薬社製」)、イオン液体
AS210:1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(第一工業製薬社製)、イオン液体
CIL312:1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(日本カーリット社製)、イオン液体
CIL313:1-エチル-3-メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸(日本カーリット社製)、イオン液体
MTOATFSI:メチルトリオクチルアンモニムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(和光純薬工業社製)、イオン液体
(架橋剤)
C/HX:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、商品名:コロネートHX)
C/L:トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート(東ソー社製、商品名:コロネートL)
C/HL:ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(東ソー社製、商品名:コロネートHL)
【0148】
【0149】
【0150】
<ハードコート層付フィルムの調製>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂溶液(DIC(株)製、商品名「ユニディック17-806」、固形分濃度80%)に、その溶液中の固形分100質量部当たり、光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製、製品名「IRGACURE906」)を5質量部、レベリング剤(DIC(株)製、製品名「GRANDIC PC4100」)を0.03質量部添加した。その後、前記溶液中の固形分濃度が75%となるように、前記溶液に酢酸ブチルを加え、さらに、前記溶液中の固形分濃度が50%となるように、前記溶液にシクロペンタノンを加えた。このようにしてハードコート層を形成するためのハードコート層形成材料を調製した。
次に、前記ハードコート層形成材料を、トリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム(株)製、製品名「TD80UL」、厚み80μm)上に、硬化後の厚みが7.5μmとなるように塗工し、塗膜を形成した。前記塗膜を、80℃で2分間乾燥した。その後、前記塗膜に、高圧水銀ランプを用いて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射することにより、ハードコート層付フィルムを作製した。
【0151】
<剥離帯電圧の測定>
各例に係る粘着シート10を幅70mm、長さ130mmのサイズにカットし、セパレータを剥離した後、ガラス板11に貼り合わせた上記ハードコート層付フィルム(幅70mm、長さ100mm)12の表面に、粘着シート10の片方の端部がハードコート層付フィルム12の端から30mmはみ出すようにして、ハンドローラーにて圧着した。
このサンプルを23℃×50%RHの環境下に1日放置した後、
図2に示すように、高さ20mmのサンプル固定台13の所定の位置にセットした。ハードコート層付フィルム12から30mmはみ出した粘着シート10の端部を自動巻取り機(図示せず)に固定し、剥離角度150°、剥離速度30m/minとなるように剥離した。このときに発生する被着体(ハードコート層付フィルム12)表面の電位を、ハードコート層付フィルム12の中央から高さ30mmの位置に固定してある電位測定器14(シシド静電気社製、型式「STATIRON DZ-4」)にて、「剥離帯電圧」を測定した。測定は、23℃、50%RHの環境下で行った。
【0152】
前記剥離帯電圧(kV、絶対値)としては、好ましくは1kV以下であり、より好ましくは0.8kV以下であり、更に好ましくは0.6kV以下である。前記剥離帯電圧が上記範囲にあることで、静電気によるパネルの破損等が起こらなくなり、好ましい態様となる。
【0153】
<残留接着力の測定>
各例に係る粘着シートのセパレータを剥離した後、上記ハードコート層付フィルム(幅70mm、長さ100mm)12の表面に、ハンドローラーにて圧着した。
このサンプルを23℃×50%RHの環境下に1日放置した後、粘着シートを剥離し、ハードコート層付フィルム12の表面にアクリルテープ(日東電工社製、No.31B、幅19mm、基材厚25μm)をハンドローラーにて圧着した。このサンプルを23℃×50%RHの環境下に30分放置した後、剥離角度180°、剥離速度0.3m/minで剥離した時の剥離力(N/19mm)を測定し、これを残留接着力(N/19mm)とした。
【0154】
前記残留接着力(N/19mm)としては、好ましくは4.5N/19mm以上であり、より好ましくは4.8N/19mm以上であり、更に好ましくは5N/19mm以上であり、特に好ましくは5.5N/19mm以上である。前記残留接着力が上記範囲にあることで、例えば、光学部材(偏光フィルムなど)表面に粘着シートを貼付後、剥離した後に、剥離後の光学部材表面に新たに設けられる層間充填剤等との密着性(接着性)が低下せず、剥がれ等の不具合が起きなくなり、好ましい態様となる。
【0155】
<残留接着率>
粘着シートを貼り合わせる前のハードコート層付フィルム表面に対するNo.31Bの接着力を測定し、以下式により算出した。
残留接着率(%)=100×[(各例の粘着シート剥離後のNo.31B接着力)/(粘着シートを貼り合わせる前のNo.31B接着力)]
【0156】
前記残留接着率(%)としては、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、更に好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。前記残留接着率が上記範囲にあることで、例えば、光学部材(偏光フィルムなど)表面に粘着シートを貼付後、剥離した後に、剥離後の光学部材表面に新たに設けられる層間充填剤等との密着性(接着性)が低下せず、剥がれ等の不具合が起きなくなり、好ましい態様となる。なお、前記残留接着率が100%を超える場合、詳細は明らかではないが、被着体である光学部材表面にポリエーテル化合物が転写し、その後、新たに設けられた層間充填剤等との関係において、濡れ性が向上することで、前記残留接着率が高くなるものと推測される。
【0157】
【0158】
上記表5の評価結果より、全ての実施例において、被着体(ここでは、ハードコート層付フィルム)表面から剥離した際の帯電防止性に優れ、前記被着体表面から粘着シートを剥離した後に、被着体表面に貼り合わせられたアクリルテープにおける残留接着力、及び、残留接着率に優れ、前記粘着シートを剥離した後の被着体表面へのアクリルテープとの密着性(接着性)に優れる粘着シート(粘着剤層)が得られることが確認できた。
【0159】
一方、上記表5の評価結果より、比較例1では、粘着剤溶液(組成物)の調製の際に、シリコーン鎖を含むポリエーテル化合物を使用したため、残留接着力や残留接着率が低く、密着性(接着性)に劣り、比較例2及び比較例3では、ポリオキシアルキレン鎖の数が所望の範囲よりも少ないため、イオン性化合物との相互作用が弱くなり、帯電防止性に劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0160】
ここに開示される粘着シートは、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、タッチパネル等の構成要素として用いられる光学部材の製造時、搬送時等に該光学部材を保護するための表面保護フィルムとして好適である。特に、液晶ディスプレイパネル用の偏光フィルム、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、光拡散シート、反射シート等の光学部材に適用される表面保護フィルム(光学用表面保護フィルム)として有用である。
【符号の説明】
【0161】
1: 帯電防止層
2: 基材フィルム
3: 粘着剤層
4: セパレータ
10:粘着シート(表面保護フィルム)
11:ガラス板
12:被着体(ハードコート層付フィルム)
13:サンプル固定台
14:電位測定器