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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】両軸受リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20220715BHJP
   A01K 97/06 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
A01K89/015 D
A01K97/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018136917
(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2020010667
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 知美
(72)【発明者】
【氏名】十朱 洋平
(72)【発明者】
【氏名】楠田 周
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0040375(KR,A)
【文献】登録実用新案第3216209(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0201600(US,A1)
【文献】特開2019-170233(JP,A)
【文献】Golden Mean フックキーパー,Dr.ミーヤンの下手っぴい釣りブログ,2014年07月22日,インターネット<URL:https://ameblo.jp/miyac1jp/entry-11896124163.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/015
A01K 97/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣り用の両軸受リールであって、
リール本体と、
前記リール本体に支持され、釣り糸が巻回されるスプールと、
前記リール本体に回転可能に支持され、前記スプールに釣り糸を巻回する巻回機構を構成する駆動軸と、
前記駆動軸の一端に装着される装着部を有し、前記駆動軸を回転させるハンドルと、
係止部および支持部を有するフックキーパーと、
を備え、
前記係止部は、前記係止部を貫通する穴、および、前記穴から前記係止部の外側面まで貫通し、かつ、前記穴の中心軸方向の前記係止部の一方の端面から他方の端面に到るスリットが形成され、
前記支持部は、前記係止部を支持し、少なくとも円環の一部を含む接合部を有し、前記接合部で前記装着部に前記駆動軸の周りに揺動可能に装着され、
前記支持部が前記ハンドルの短手方向に位置する状態では、前記係止部の前記穴および前記スリットは、前記ハンドルの前記駆動軸に直交する短手方向の外面よりも外側にあり、前記支持部が前記ハンドルの長手方向に位置する状態では、前記係止部の前記穴および前記スリットは、前記ハンドルの前記駆動軸に直交する短手方向の外面よりも内側にある、両軸受リール。
【請求項2】
前記フックキーパーは、前記穴の中心軸方向の前記係止部の前記一方の端面の前記スリットの中心と前記他方の端面の前記スリットの中心とを結ぶ線が、前記穴の中心軸に対してねじれの位置にある、請求項1に記載の両軸受リール。
【請求項3】
前記ハンドルは、前記装着部から、前記駆動軸に交わる方向に延びるハンドルアームをさらに有し、
前記フックキーパーは、前記ハンドルアームよりも前記駆動軸の軸方向外側に取り付けられる、請求項1または2に記載の両軸受リール。
【請求項4】
前記装着部は、
前記ハンドルを前記駆動軸に固定する筒状部材と、
前記筒状部材の外周面に形成されたリング溝に嵌められて保持されるOリングと、
を有し、
前記支持部は、前記筒状部材の外周面に対向する内周面を有する円環状部材で構成される前記接合部を有し、前記係止部を前記円環状部材の周上に半径方向外向きに支持し、
前記Oリングは、前記円環状部材の内周面と前記筒状部材の外周面との間に介在する、請求項1から3のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【請求項5】
前記支持部は、前記係止部を、前記支持部に対して、前記穴の中心軸と交わる軸の周りに回転可能に支持する、請求項1から4のいずれか1項に記載の両軸受リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両軸受リールに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣りにおいて、ポイントを移動したり釣り竿を替えたりするときに、両軸受リールを用いた釣り竿に仕掛けを付けたまま、持ち歩いたり置いたりする場合がある。このような場合、竿先から先の釣り糸の部分が固定されていないと自由に動いてしまい、釣り針が衣服に引っかかったり、仕掛けによってリール本体が損傷したり、釣り糸が絡んだりすることがある。これを防止するため、両軸受リールに装着され、釣り針を係止することができるフックキーパーがある。一般的に、フックキーパーは、釣り針を係止する係止部がリール本体から突出しているが、フックキーパーの不使用時には、突出した係止部に釣り糸が絡むことがある。そこで、可動式のフックキーパーを備える両軸受リールが提案されている。例えば、特許文献1に記載の両軸受リールは、リール本体の内側から外側方向へ回動可能に設けることにより、釣り竿の使用中に必要に応じて収納させることができるフックキーパーを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-236728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の両軸受リールは、フックキーパーをリール本体の内部に収納可能に設けるため、リール本体の構造を変えなければならない。また、特許文献1に記載のフックキーパーは、釣り針を係止するものであり、ダウンショットリグの場合は、釣り針だけを固定しても、その先のシンカーは固定されないので、シンカーによってリール本体が損傷したり、釣り糸が絡んだりする問題は解消されない。
【0005】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであって、リール本体の構造を変えることなく、釣り針だけでなくシンカーも係止できる可動式のフックキーパーを備える両軸受リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係る両軸受リールは、魚釣り用の両軸受リールであって、リール本体と、リール本体に支持され、釣り糸が巻回されるスプールと、リール本体に回転可能に支持され、スプールに釣り糸を巻回する巻回機構を構成する駆動軸と、駆動軸の一端に装着される装着部を有し、駆動軸を回転させるハンドルと、係止部および支持部を有するフックキーパーと、を備え、係止部は、係止部を貫通する穴、および、穴から係止部の外側面まで貫通し、かつ、穴の中心軸方向の係止部の一方の端面から他方の端面に到るスリットが形成され、支持部は、係止部を支持し、少なくとも円環の一部を含む接合部を有し、接合部で装着部に駆動軸の周りに揺動可能に装着され、支持部がハンドルの短手方向に位置する状態では、係止部の穴およびスリットは、ハンドルの駆動軸に直交する短手方向の外面よりも外側にあり、支持部がハンドルの長手方向に位置する状態では、係止部の穴およびスリットは、ハンドルの駆動軸に直交する短手方向の外面よりも内側にある。
【0007】
好ましくは、フックキーパーは、穴の中心軸方向の係止部の一方の端面のスリットの中心と他方の端面のスリットの中心とを結ぶ線が、穴の中心軸に対してねじれの位置にある。
【0008】
好ましくは、ハンドルは、装着部から、駆動軸に交わる方向に延びるハンドルアームをさらに有し、フックキーパーは、ハンドルアームよりも駆動軸の軸方向外側に取り付けられる。
【0009】
好ましくは、装着部は、ハンドルを駆動軸に固定する筒状部材と、筒状部材の外周面に形成されたリング溝に嵌められて保持されるOリングと、を有し、支持部は、筒状部材の外周面に対向する内周面を有する円環状部材で構成される接合部を有し、係止部を円環状部材の周上に半径方向外向きに支持し、Oリングは、円環状部材の内周面と筒状部材の外周面との間に介在する。
【0010】
さらに好ましくは、支持部は、係止部を、支持部に対して、穴の中心軸と交わる軸の周りに回転可能に支持する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リール本体の構造を変えることなく、釣り針だけでなくシンカーも係止できる可動式のフックキーパーを備える両軸受リールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1に係る両軸受リールの斜視図
図2】実施の形態1に係るフックキーパーの斜視図
図3】実施の形態1に係るフックキーパーの側面図
図4】実施の形態1に係るフックキーパーが装着されたハンドルの断面図
図5】(A)実施の形態1に係るフックキーパーがハンドルの駆動軸に直交する短手方向の一方に起きた状態と倒れた状態とを示すハンドルの斜視図、(B)実施の形態1に係るフックキーパーがハンドルの駆動軸に直交する短手方向の他方に起きた状態と倒れた状態とを示すハンドルの斜視図
図6】実施の形態1に係るフックキーパーにオフセットフックを係止した例を示す魚釣用リールの斜視図
図7】実施の形態1に係るフックキーパーにシンカーを係止した例を示す魚釣用リールの斜視図
図8】本発明の実施の形態2に係るフックキーパーの斜視図
図9】(A)実施の形態2に係るフックキーパーが起きた状態を示すハンドルの斜視図、(B)実施の形態2に係るフックキーパーが倒れた状態を示すハンドルの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る両軸受リールについて図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る両軸受リールの斜視図である。両軸受リール200は、図1に向かって左手前側が釣り竿の先端(前方)に向かうように、釣り竿に取り付けられる。両軸受リール200は、リール本体210と、リール本体210の側方に配置されたハンドル220と、リール本体210に回転可能に支持されたスプール230と、ハンドル220のリール本体210側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ240と、を備える。
【0015】
リール本体210は、ハンドル220の回転を受けて、スプール230を回転させ、スプール230に釣り糸を巻き取る巻回機構を有する。ハンドル220は、リール本体210に回転可能に支持される駆動軸の一端に装着される。駆動軸は、巻回機構を構成する部材である。ハンドル220は、駆動軸の一端に装着される装着部221と、装着部221から駆動軸に交わる方向に延びるハンドルアーム222と、ハンドルアーム222の先端部から駆動軸に平行な方向に延びる把手軸に回転可能に装着される一対の把手223aおよび把手223bと、を有する(把手223bは図示せず)。
【0016】
装着部221は、ハンドルアーム222を駆動軸に固定するナット201と、ナット201に嵌合し、固定用ビスで締め付けることによって、ナット201を固定するリテーナー202とを含む。フックキーパー1は、穴およびスリットが形成された係止部と、係止部を支持し、円環の一部を含む接合部を有する支持部とを備える。フックキーパー1は、接合部で、駆動軸の周り(図中、矢印Aの方向)に180度揺動可能に装着される。
【0017】
ユーザは、フックキーパー1の使用時には、図1に示すように、フックキーパー1の係止部の穴およびスリットがハンドル220の駆動軸に直交する短手方向の外面S1よりも外側にある状態にする。以下、この状態をフックキーパー1が起きた状態といい、この状態にすることを、フックキーパー1を起こすという。ユーザは、フックキーパー1の不使用時には、フックキーパー1の係止部の穴およびスリットがハンドル220の駆動軸に直交する短手方向の外面S1よりも内側にある状態にする。以下、この状態をフックキーパー1が倒れた状態といい、この状態にすることを、フックキーパー1を倒すという。
【0018】
図1に示す状態から、フックキーパー1を駆動軸の周りに180度回転させると、フックキーパー1の係止部の穴およびスリットが、ハンドル220の駆動軸に直交する短手方向の外面S1の反対側の外面S2(図示せず)よりも外側にある状態になる。つまり、フックキーパー1は、ハンドル220の駆動軸に直交する短手方向のどちら側にも起こすことができる。
【0019】
図2は、実施の形態1に係るフックキーパーの斜視図である。フックキーパー1は、穴111およびスリット112が形成された係止部11と、係止部11を支持し、接合部121を有する支持部12と、を備えている。穴111は、係止部11を貫通する。スリット112は、穴111から係止部11の外側面まで貫通し、かつ、穴111の中心軸方向の係止部11の一方の端面E1から他方の端面E2に到る。接合部121は、円環の一部を切り出した形状である。フックキーパー1は、支持部12の接合部121で、ハンドル220の装着部221に装着される。支持部12は、係止部11を、接合部121の反対側で支持している。
【0020】
フックキーパー1にオフセットフックを含む釣り針を係止する場合、釣り針のシャンクまたはベンドをスリット112に通して穴111の中に押し込んで係止する。スリット112は、釣り針のシャンクおよびベンドの太さよりも広い幅で形成されており、穴111は、スリット112の幅よりも広い直径で形成されている。針先の出ている釣り針を係止する場合には、針先を穴111の周縁の係止部11にひっかけてもよい。
【0021】
フックキーパー1にシンカーを係止する場合、釣り糸をスリット112に通して穴111の中に押し込む。穴111は、シンカーの幅よりも狭い直径で形成されており、シンカーは、穴111の外に係止される。このとき、穴111の直径がシンカーのアイの幅よりも広い場合は、シンカーのアイのみが穴111の中に収容される。
【0022】
図3は、実施の形態1に係るフックキーパーの側面図である。フックキーパー1は、穴111の中心軸方向の係止部11の一方の端面E1のスリット112の中心と他方の端面E2のスリット112の中心とを結ぶ線Lが、穴111の中心軸Aに対してねじれの位置にある。このように、穴111およびスリット112を形成することで、フックキーパー1に係止された釣り針やシンカーが外れにくくなる。
【0023】
図4は、実施の形態1に係るフックキーパーが装着されたハンドルの断面図である。図4の断面図は、フックキーパー1が倒れた状態のハンドル220の長手方向の断面の一部を示している。
【0024】
ハンドル220の装着部221は、ハンドル220を駆動軸250に固定するナット201と、ナット201を固定するリテーナー202とを有する。ナット201は、筒状部材であって、上部201aは、六角柱状で、リテーナー202の穴に嵌合している。下部201bは、円筒状で、内周面に雌ネジ部201cを有し、雌ネジ部201cにより駆動軸250と螺合している。
【0025】
ナット201の下部201bの外周面とリテーナー202のナット201の上部201aと嵌合しない内周面との間に形成された溝202aと、ハンドルアーム222に形成された溝222aとに、フックキーパー1の支持部12の接合部121が嵌合することで、フックキーパー1は、駆動軸250の周りに揺動可能に装着される。
【0026】
ナット201の下部201bの外周面には、リング溝201dが形成されており、リング溝201dに嵌められてOリング203が保持されている。フックキーパー1の支持部12の接合部121のナット201側の面には、溝121aが形成されており、溝121aのナット201の外周面に対向している面は、Oリング203と接触している。Oリング203との摩擦によって、フックキーパー1は一定以上の力を加えなければ動かないため、使用時にフックキーパー1が倒れた状態になったり、不使用時にフックキーパー1が起きた状態になったりすることがない。
【0027】
図5(A)は、実施の形態1に係るフックキーパーがハンドルの駆動軸に直交する短手方向の一方に起きた状態と倒れた状態とを示すハンドルの斜視図である。フックキーパー1は、駆動軸の周りに180度揺動可能に装着されている。リテーナー202は、当接部202bを有する。ユーザがフックキーパー1を当接部202b側に起こす方向に回転させると、フックキーパー1が当接部202bにあたって、容易にフックキーパー1を起きた状態で止めることができる。フックキーパー1が当接部202b側に起きた状態では、フックキーパー1の係止部11の穴111およびスリット112がハンドル220の駆動軸に直交する短手方向の外面S1よりも外側にある。フックキーパー1が倒れた状態(図中、破線)では、フックキーパー1の係止部11の穴111およびスリット112がハンドル220の駆動軸に直交する短手方向の外面S1よりも内側にある。ユーザがフックキーパー1の不使用時にフックキーパー1を倒すことで、フックキーパー1に釣り糸が絡むことを防止できる。
【0028】
図5(A)の例では、ハンドル220の駆動軸に直交する短手方向の外面S1が上方を向いている。この場合、ユーザはフックキーパー1を当接部202b側に起こして使用する。しかし、ハンドル220の角度によっては外面S2が上方を向く場合もある。外面S2が上方を向いた場合について、図5(B)を用いて説明する。
【0029】
図5(B)は、実施の形態1に係るフックキーパーがハンドルの駆動軸に直交する短手方向の他方に起きた状態と倒れた状態とを示すハンドルの斜視図である。リテーナー202は、当接部202bの、ハンドル220の駆動軸に直交する短手方向の反対側に、当接部202cを有する。ユーザがフックキーパー1を当接部202c側に起こす方向に回転させると、フックキーパー1が当接部202cにあたって、容易にフックキーパー1を起きた状態で止めることができる。フックキーパー1が当接部202c側に起きた状態では、フックキーパー1の係止部11の穴111およびスリット112がハンドル220の駆動軸に直交する短手方向の外面S2よりも外側にある。フックキーパー1が倒れた状態(図中、破線)では、フックキーパー1の係止部11の穴111およびスリット112がハンドル220の駆動軸に直交する短手方向の外面S2よりも内側にある。つまり、フックキーパー1は、ハンドル220の駆動軸に直交する短手方向のどちら側にも起こすことができる。また、フックキーパー1は、倒れた状態では、ハンドル220の駆動軸に直交する短手方向のどちらの外面からも穴111およびスリット112が出ない。
【0030】
図5(A)のように、当接部202b側に起きた状態のフックキーパー1に釣り針またはシンカーを係止した場合の釣り糸の張力の方向は、図5(A)に向かって左手前方向である。一方、図5(B)のように、当接部202c側に起きた状態のフックキーパー1に釣り針またはシンカーを係止した場合の釣り糸の張力の方向は、図5(B)に向かって左奥方向である。どちらの場合も、フックキーパー1の係止部11のスリット112が釣り糸の張力の方向の反対方向に開いているので、釣り針のシャンクまたはベンド、あるいは、釣り糸がスリット112から抜けにくい。
【0031】
ただし、図5(B)の場合は、釣り糸の張力の方向がフックキーパー1の可倒方向であるので、フックキーパー1と図4に示したOリング203との摩擦力を、フックキーパー1に釣り針またはシンカーを係止した場合の釣り糸の張力よりも大きくする。または、リテーナー202の当接部202cに溝を設け、フックキーパー1の当接部202cの溝に接する部分に弾性部材の爪を設けて、当接部202c側にフックキーパー1を起こしたときに、当接部202cの溝とフックキーパー1の爪とが係合して、釣り糸に引っ張られてもフックキーパー1が倒れないように構成してもよい。あるいは、フックキーパー1を駆動軸の周りに90度揺動可能に装着し、フックキーパー1の使用時には、ユーザがハンドル220の外面S1を上方に向けて、フックキーパー1を当接部202b側に起こして使用することにしてもよい。
【0032】
図6は、実施の形態1に係るフックキーパーにオフセットフックを係止した例を示す魚釣用リールの斜視図である。フックキーパー1にオフセットフック4を係止する場合、釣り糸6の先に装着されたオフセットフック4のシャンク41またはベンド42を、フックキーパー1のスリットに通し、ワームがハンドルアーム222に沿うように、穴に係止する。フックキーパー1のスリットは、シャンク41およびベンド42の太さよりも広い幅で形成されている。
【0033】
図7は、実施の形態1に係るフックキーパーにシンカーを係止した例を示す魚釣用リールの斜視図である。フックキーパー1にシンカー5を係止する場合、釣り糸6をフックキーパー1のスリットに通し、シンカー5を穴に係止する。図7の例では、フックキーパー1の穴の直径がシンカー5のアイ51の幅よりも広いので、アイ51のみが穴の中に収容された状態で、シンカー5が係止されている。
【0034】
図1図4図7に記載のフックキーパー1の穴は、中心軸が駆動軸の軸方向と平行に形成されているが、穴の中心軸の方向は、これに限らず、穴の中心軸が駆動軸の軸方向に対して垂直または斜めに形成されていてもよい。また、フックキーパー1の支持部12が、係止部11を、支持部12に対して穴の中心軸と交わる軸の周りに回転可能に支持してもよい。これにより、ユーザが釣り針や釣り糸をスリットに通しやすい角度にすることができる。また、釣り針やシンカーを係止した状態で、係止部11を、釣り糸を引っ張る方向に回転させると、釣り糸の張力を大きくすることができるので釣り針やシンカーが外れにくくなる。
【0035】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2に係るフックキーパーの斜視図である。実施の形態2のフックキーパー1は、実施の形態1のフックキーパー1と、主に支持部12の接合部121の形状が異なる。
【0036】
支持部12の接合部121は、円環状部材で構成され、フックキーパー1は、接合部121で、ハンドル220の装着部221に装着される。支持部12は、係止部11を、接合部121の周上に半径方向外向きに支持する。なお、支持部12は、係止部11を、支持部12に対して穴111の中心軸と交わる軸の周りに回転可能に支持してもよい。
【0037】
実施の形態2に係るフックキーパー1が装着されたハンドル220の断面図は、図4と同様である。ナット201の下部201bの外周面とリテーナー202のナット201の上部201aと嵌合しない内周面との間に形成された溝202aと、ハンドルアーム222に形成された溝222aとに、フックキーパー1の支持部12の接合部121が嵌合することで、フックキーパー1は、駆動軸250の周りに揺動可能に装着される。
【0038】
ナット201の下部201bの外周面には、リング溝201dが形成されており、リング溝201dに嵌められてOリング203が保持されている。フックキーパー1の支持部12の接合部121は、ナット201の下部201bの外周面に対向する内周面を有する。接合部121の内周面には、溝121aが形成されており、溝121aのナット201の外周面に対向している面は、Oリング203と接触している。つまり、Oリング203は、接合部121の内周面とナット201の下部201bの外周面との間に介在する。Oリング203との摩擦によって、フックキーパー1は一定以上の力を加えなければ動かないため、使用時にフックキーパー1が倒れた状態になったり、不使用時にフックキーパー1が起きた状態になったりすることがない。
【0039】
図9(A)は、実施の形態2に係るフックキーパーが起きた状態を示すハンドルの斜視図である。図9(B)は、実施の形態2に係るフックキーパーが倒れた状態を示すハンドルの斜視図である。図9に示すように、接合部121が円環状部材であって、Oリング203を覆っていることで、フックキーパー1が起きた状態であっても、フックキーパー1が倒れた状態であっても、Oリング203が露出することがないので、Oリング203の劣化を抑えることができる。
【0040】
上記の実施の形態では、フックキーパー1にオフセットフックを含む釣り針およびシンカーを係止する例について説明したが、フックキーパー1にはシャンクが短い釣り針が付いたルアーを係止することもできる。この場合、釣り糸をスリット112に通して穴111の中に押し込む。穴111は、ルアーの幅よりも狭い直径で形成されており、ルアーは、穴111の外に係止される。このとき、穴111の直径がルアーのアイの幅よりも広い場合は、ルアーのアイのみが穴111の中に収容される。
【0041】
上記の実施の形態で示したフックキーパー1にオフセットフックを含む釣り針およびシンカーを係止する方法は例であり、どの方法で係止するかはユーザの任意である。
【0042】
上記の実施の形態では、フックキーパー1の係止部11のスリット112は、釣り針のシャンクおよびベンドの太さよりも広い幅で形成されていると説明したが、フックキーパー1の係止部11が弾性部材で形成されており、スリット112に釣り針のシャンクおよびベンドを押し込むことで釣り針のシャンクおよびベンドがスリット112を通過可能な場合は、スリット112が釣り針のシャンクおよびベンドの太さ以下の幅で形成されていてもよい。また、上記の実施の形態では、フックキーパー1のスリット112を、フックキーパー1の側面に形成しているが、これに限らない。例えば、フックキーパー1のスリット112を、接合部121の反対側の面に形成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 フックキーパー
4 オフセットフック
5 シンカー
6 釣り糸
11 係止部
12 支持部
41 シャンク
42 ベンド
51 アイ
111 穴
112 スリット
121 接合部
121a 溝
200 両軸受リール
201 ナット
201a 上部
201b 下部
201c 雌ネジ部
201d リング溝
202 リテーナー
202a 溝
202b,202c 当接部
203 Oリング
210 リール本体
220 ハンドル
221 装着部
222 ハンドルアーム
222a 溝
223a,223b 把手
230 スプール
240 スタードラグ
250 駆動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9