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特許7105658エレベーターのロープ振動周期測定装置、ロープ振動周期測定方法、及びロープ振動周期算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】エレベーターのロープ振動周期測定装置、ロープ振動周期測定方法、及びロープ振動周期算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/12 20060101AFI20220715BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20220715BHJP
   G01L 5/10 20200101ALI20220715BHJP
【FI】
B66B5/12 A
B66B5/00 D
G01L5/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018170772
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020040810
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池島 大希
(72)【発明者】
【氏名】笹島 和雄
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184114(JP,A)
【文献】特開2014-156298(JP,A)
【文献】特開平05-105349(JP,A)
【文献】特開平09-145504(JP,A)
【文献】特開2012-017192(JP,A)
【文献】特開2018-009989(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106865375(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0016117(US,A1)
【文献】特開2014-097869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
G01L 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターにおいてカゴを昇降するのに用いられるロープが力を付与されることで振動している際に、そのロープの振動の周期を測定するロープ振動周期測定装置であって、
前記ロープからの光を受光する受光部と、
前記ロープが振動運動において移動方向を変える一方側位置に到達した一方側時、及び前記ロープが前記振動運動において移動方向を変える他方側位置に到達した他方側時を、前記受光部が受信した前記光に基づいて特定するロープ両端到達時特定部と
動画を撮影可能であると共に、前記受光部を有する撮影装置と、を備え、
前記ロープ両端到達時特定部が、前記撮影装置によって同時に撮影されると共に異なるマーカによって互いに区別できるようになっている複数の前記ロープの振動運動の動画のデータによって所定時間毎に静止画像を形成し、
前記ロープ両端到達時特定部が、前記各ロープについて前記各静止画像に基づいて時系列に並べられた対応する前記マーカの位置を集約して作成した一つの画像に基づいて前記各ロープについて前記一方側位置及び前記他方側位置を特定す る、エレベーターのロープ振動周期測定装置。
【請求項2】
前記ロープ両端到達時特定部が前記複数のロープにおいて前記ロープ毎に特定した前記一方側時と前記他方側時に基づいて前記ロープ毎に振動の周期を算出する周期算出部を備える、請求項に記載のロープ振動周期測定装置。
【請求項3】
前記周期算出部は、2周期目以降において測定したN周期の間の時間を測定し、測定した時間をNで割ることで1周期の時間を算出し、前記Nは、2以上の整数である、請求項2に記載のロープ振動周期測定装置。
【請求項4】
前記複数のロープのうちで最大周期で振動している最大周期ロープ、前記複数のロープのうちで最小周期で振動している最小周期ロープ、及び前記最大周期と前記最小周期との差を特定可能な表示を行う表示部を備える、請求項1から3のいずれか1つに記載のロープ振動周期測定装置。
【請求項5】
エレベーターにおいて振動運動している複数のロープにおける動画を同時に撮影する撮影ステップと、
前記動画を画像分析することで、前記各ロープにおいて、振動運動において移動方向を変える一方側位置に到達した一方側時、及び前記振動運動において移動方向を変える他方側位置に到達した他方側時を特定する端到達時間特定ステップと、
前記一方側時と前記他方側時に基づいて前記各ロープにおいて周期を算出する周期算出ステップと、を含 み、
異なるマーカによって互いに区別できるようになっている複数の前記ロープの振動運動を同時に撮影することで作成した前記複数のロープの振動運動の動画のデータによって所定時間毎に静止画像を形成して、前記各ロープについて前記各静止画像に基づいて時系列に並べられた対応する前記マーカの位置を集約して一つの画像を作成し、
その一つの画像に基づいて前記各ロープについて前記一方側位置及び前記他方側位置を特定する、 エレベーターのロープ振動周期測定方法。
【請求項6】
2周期目以降において測定したN周期の間の時間を測定し、測定した時間をNで割ることで1周期の時間を算出し、前記Nは、2以上の整数である、請求項5に記載のエレベーターのロープ振動周期測定方法。
【請求項7】
エレベーターにおいて振動運動している複数のロープについて同時に撮影された動画に基づいて、前記各ロープに関して、振動運動において移動方向を変える一方側位置に到達した一方側時と、前記振動運動において移動方向を変える他方側位置に到達した他方側時とを特定する処理と、
前記複数のロープのうちで最大周期で振動している最大周期ロープ、前記複数のロープのうちで最小周期で振動している最小周期ロープ、及び前記最大周期と前記最小周期との差を特定可能な表示を表示部に表示させる処理と、
異なるマーカによって互いに区別できるようになっている前記複数のロープの振動運動を同時に撮影することで作成した前記複数のロープの振動運動の動画のデータによって所定時間毎に静止画像を形成して、前記各ロープについて前記各静止画像に基づいて時系列に並べられた対応する前記マーカの位置を集約して一つの画像を作成する処理と、
その一つの画像に基づいて前記各ロープについて前記一方側位置及び前記他方側位置を特定する処理と、
をコンピュータに実行させるロープ振動周期算出プログラム。
【請求項8】
前記各ロープにおける前記一方側時と前記他方側時に基づいて前記各ロープについて振動運動の周期を算出する処理と、
前記複数のロープに含まれる前記各ロープの周期を前記ロープに対応づけた状態で前記表示部に表示させる処理と、
をコンピュータに実行させる、請求項に記載のロープ振動周期算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターにおいてカゴを昇降するのに用いられるロープが力を付与されることで振動している際に、そのロープの振動の周期を測定するロープ振動周期測定装置及び方法に関する。また、本発明は、エレベーターにおいてカゴを昇降するのに用いられるロープが力を付与されることで振動している際に、そのロープの振動の周期をコンピュータに算出させるロープ振動周期算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、ロープ式エレベーターは、例えば、カゴ、釣合錘、巻上機、1以上の返し車、及び複数のロープを備え、巻上機の綱車と各返し車の夫々は、外周面に軸方向に隣り合うように設けられた複数の環状の綱溝を有する。各ロープは、カゴ、釣合錘、巻上機の綱車、及び各返し車に掛け渡される。各ロープが、巻上機の綱車及び各返し車に掛け渡される際、各ロープの一部は、巻上機の綱車と各返し車の夫々について対応する綱溝に収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-097869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各ロープは、綱車や返し車の綱溝に対してすべりながら動き、綱溝から受ける摩擦力で摩耗する。したがって、ある程度以上の張力差が複数のロープ間に存在する状態を長期間放置しておくと、張力が大きい特定のロープの摩耗が、他のロープの摩耗よりも速く進行し、特定のロープが、ストランド切れ等を生じる虞がある。よって、各ロープの張力を測定する必要があるが、各ロープの張力を正確に測定できれば好ましい。
【0005】
そこで、本発明の目的は、エレベーターにおいて各ロープの正確な張力を算出し易いエレベーターのロープ振動周期測定装置、ロープ振動周期測定方法、及びロープ振動周期算出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るエレベーターのロープ振動周期測定装置は、エレベーターにおいてカゴを昇降するのに用いられるロープが力を付与されることで振動している際に、そのロープの振動の周期を測定するロープ振動周期測定装置であって、前記ロープからの光を受光する受光部と、前記ロープが振動運動において移動方向を変える一方側位置に到達した一方側時、及び前記ロープが前記振動運動において移動方向を変える他方側位置に到達した他方側時を、前記受光部が受信した前記光に基づいて特定するロープ両端到達時特定部と、を備える。
【0007】
ロープの振動の周期は、ロープを振動させるためにロープに付与する力に依存しない。また、ロープの張力と、振動運動しているロープの振動の周期とは、一対一に対応する。よって、ロープの振動の周期を正確に特定できれば、そのロープの張力を正確に特定できる。
【0008】
本発明によれば、受光部がロープからの光を受光するだけで、ロープが振動運動において移動方向を変える一方側位置に到達した一方側時、及びロープが振動運動において移動方向を変える他方側位置に到達した他方側時を特定でき、一方側時と他方側時の時間差により、ロープの振動の周期を特定できる。更には、受光部がロープからの光を受光するだけで、ロープの振動の周期を特定できるので、装置の一部又は全部をロープに設置する必要がなく、装置がロープに非接触な状態でロープの振動の周期を特定できる。よって、装置の少なくとも一部をロープに接触させる測定と異なり、ロープの振動の周期が、装置との接触による影響を受けることがなく、ロープの振動の周期を正確に特定できる。
【0009】
また、本発明において、動画を撮影可能であると共に、前記受光部を有する撮影装置を備え、前記ロープ両端到達時特定部は、前記撮影装置によって同時に撮影された複数の前記ロープの振動運動の動画に基づいて、前記複数のロープに含まれる前記各ロープに関して、前記一方側時及び前記他方側時を特定してもよい。
【0010】
上記構成によれば、撮影した複数のロープ全てに対して一方側時及び他方側時を画像処理で特定でき、撮影装置を用いて複数のロープを一度撮影するだけで、複数のロープに含まれる各ロープの周期を一度に特定することが可能になる。よって、複数のロープに含まれる任意のロープに関して周期を容易に特定できる。なお、本構成では、周期を算出しないロープが存在してもよい。
【0011】
また、前記ロープ両端到達時特定部が前記複数のロープにおいて前記ロープ毎に特定した前記一方側時と前記他方側時に基づいて前記ロープ毎に振動の周期を算出する周期算出部を備えてもよい。
【0012】
上記構成によれば、複数のロープに含まれる各ロープの周期を周期算出部で自動的に算出できるので、複数のロープの周期を格段に容易に特定できる。
【0013】
また、前記複数のロープのうちで最大周期で振動している最大周期ロープ、前記複数のロープのうちで最小周期で振動している最小周期ロープ、及び前記最大周期と前記最小周期との差を特定可能な表示を行う表示部を備えてもよい。
【0014】
なお、上記表示部は、例えば、撮影装置が測定した複数のロープに含まれる全てのロープについて、各ロープの周期をロープに関連付けてロープ毎に同時に表示してもよい。又は、上記表示部は、最大周期ロープ、最小周期ロープ、及び最大周期と最小周期との差のみを表示してもよい。要は、上記表示部が行う表示は、最大周期ロープ、最小周期ロープ、及び最大周期と最小周期との差を特定できる表示であれば如何なる表示でもよい。
【0015】
上記構成によれば、撮影装置で複数のロープを撮影するだけで、最大周期ロープ、最小周期ロープ、及び最大周期と最小周期との差を取得できる。
【0016】
また、本発明において、赤外線を前記ロープに向けて発光する発光部を備え、前記受光部は、前記発光部から出射されると共に振動運動している前記ロープで反射した反射赤外線を受光し、前記ロープ両端到達時特定部は、前記受光部で受信された前記反射赤外線に基づいて前記ロープまでの距離を特定することで、前記一方側位置及び前記一方側時と、前記他方側位置及び前記他方側時とを特定してもよい。
【0017】
上記構成によれば、ロープに向けて赤外線を出射するだけで、装置からロープまでの距離を測定できて、一方側時と他方側時を特定でき、その結果、ロープの周期も特定できる。よって、ロープの周期を正確かつ容易に特定できる。
【0018】
また、前記一方側時及び前記他方側時に基づいて前記ロープの振動の周期を算出する周期算出部と、前記周期算出部が算出した前記周期を表示する表示部と、を備えてもよい。
【0019】
上記構成によれば、ロープの周期を瞬時に取得することができる。
【0020】
また、本発明に係るエレベーターのロープ振動周期測定装置は、エレベーターにおいてカゴを昇降するのに用いられるロープが力を付与されることで振動している際に、そのロープの振動の周期を測定するロープ振動周期測定装置であって、光を受光する受光部と、前記受光部に向けて光を出射する発光部であって、前記ロープがその発光部が出射した光が前記受光部に到達するのを遮る位置を含む範囲で振動運動するように配置される発光部と、前記ロープが前記振動運動している際に、前記受光部が前記発光部からの光を受光できなかった時に基づいて前記振動運動の周期を算出する算出部と、を備える。
【0021】
本発明によれば、連続する3つの受光できなかった時を測定し、初めの時から最後の時までの時間を測定するだけで、ロープの周期を特定できる。よって、ロープの周期を正確かつ容易に特定できる。
【0022】
また、本発明に係るエレベーターのロープ振動周期測定方法は、エレベーターにおいて振動運動している複数のロープにおける動画を同時に撮影する撮影ステップと、前記動画を画像分析することで、前記各ロープにおいて、振動運動において移動方向を変える一方側位置に到達した一方側時、及び前記振動運動において移動方向を変える他方側位置に到達した他方側時を特定する端到達時間特定ステップと、前記一方側時と前記他方側時に基づいて前記各ロープにおいて周期を算出する周期算出ステップと、を含む。
【0023】
本発明によれば、画像処理により撮影した複数のロープ全てに対して一方側時及び他方側時を特定でき、撮影装置を用いて複数のロープを一度撮影するだけで、複数のロープに含まれる各ロープの周期を一度に特定できる。よって、各ロープの周期を正確に特定できるだけでなく、複数のロープの周期を容易に特定できる。
【0024】
また、本発明において、前記撮影ステップの前に、前記複数のロープに含まれる前記各ロープに、他の前記ロープと異なるマーカをつけるマーカ付与ステップを備えてもよい。
【0025】
上記構成によれば、マーカでロープの差別化を明確にでき、撮影をより正確かつ容易に実行できる。また、ロープ毎の周期表示を行う場合、ロープを特定する表示をマーカに関連づけて実行でき、ユーザがロープ毎の周期を容易に取得できる。具体的には、例えば、色違いのテープをロープに固着して撮影を行う場合、赤のテープ(マーカ)を付けたロープの周期がA秒、青のテープを付けたロープの周期がB秒といった表示を実現でき、ユーザがロープ6毎の周期を容易かつ間違わずに取得できる。
【0026】
また、本発明のロープ振動周期算出プログラムは、エレベーターにおいて振動運動している複数のロープについて同時に撮影された動画に基づいて、前記各ロープに関して、振動運動において移動方向を変える一方側位置に到達した一方側時と、前記振動運動において移動方向を変える他方側位置に到達した他方側時とを特定する処理と、前記複数のロープのうちで最大周期で振動している最大周期ロープ、前記複数のロープのうちで最小周期で振動している最小周期ロープ、及び前記最大周期と前記最小周期との差を特定可能な表示を表示部に表示させる処理と、をコンピュータに実行させる。
【0027】
本発明によれば、撮影装置で複数のロープを撮影するだけで、最大周期ロープ、最小周期ロープ、及び最大周期と最小周期との差を取得できる。
【0028】
また、本発明のロープ振動周期算出プログラムにおいて、前記各ロープにおける前記一方側時と前記他方側時に基づいて前記各ロープについて振動運動の周期を算出する処理と、前記複数のロープに含まれる前記各ロープの周期を前記ロープに対応づけた状態で前記表示部に表示させる処理と、をコンピュータに実行させてもよい。
【0029】
上記構成によれば、各ロープの振動運動の周期を容易に取得できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る、エレベーターのロープ振動周期測定装置、ロープ振動周期測定方法、及びロープ振動周期算出プログラムによれば、各ロープの正確な張力を算出し易い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施形態に係るロープ振動周期測定装置が設置されて、ロープの振動周期の測定をできる準備が整った状態を表すエレベーターの概略模式構成図である。
図2】上記ロープ振動周期測定装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】(a)は、上記ロープ振動周期測定装置の一方面側を表す模式図であり、(b)は、上記ロープ振動周期測定装置の他方面側を表す模式図である。
図4】上記ロープ振動周期測定装置の情報処理装置が振動の周期を算出するときの画像処理動作の手順について説明する図である。
図5】第2実施形態のロープ振動周期測定装置の概略模式構成図である。
図6】第3実施形態のロープ振動周期測定装置の概略模式構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るロープ振動周期測定装置10が設置されて、ロープ6の振動周期の測定をできる準備が整った状態を表すエレベーター1の概略模式構成図である。以下では、先ず図1を用いて、エレベーター1の概略構成について説明した後、ロープ振動周期測定装置(以下、単に測定装置という)10の設置方法と、それを用いたロープ6の周期の測定方法の一例について大まかに説明する。
【0034】
先ず、エレベーター1の構成について簡単に説明する。図1に示すように、エレベーター1は、カゴ2、巻上機3、返し車4、釣合錘5、及び複数のロープ6を備え、巻上機3の綱車3aと返し車4の夫々は、外周面に軸方向に隣り合うように設けられた複数の環状の綱溝(不図示)を有する。各ロープ6は、カゴ2、釣合錘5、巻上機3の綱車3a、及び返し車4に掛け渡される。各ロープ6が、巻上機3の綱車3a及び返し車4に掛け渡される際、各ロープ6の一部は、巻上機3の綱車3aと返し車4の夫々について対応する綱溝に収容される。釣合錘5は、カゴ2の重量とバランスする質量を有する。巻上機3の綱車3aを回動させるモータの回転方向と回転の移動量を適宜調整することで、カゴ2の所望の昇降を実現している。
【0035】
次に、周期の測定方法の一例を行う際の測定装置10の設置方法について説明する。測定装置10は、動画を撮影する撮影装置を有する。測定装置10は、例えば三脚等で構成される専用の支持台11を用いてカゴ2上に設置される。撮影装置12をカゴ2上に設置する際、撮影装置12は、全てのロープ6の振動運動を撮影できる箇所に設置される。例えば、図1に示すエレベーター1の仕様では、全てのロープ6は、振動運動していない状態で、図1の紙面に垂直な方向から見たとき1本に重なる。よって、撮影装置12においてロープ6からの光を受光する受光部を、図1の紙面に垂直な方向に向け、受光部の上下方向に延びるロープ6が受光部の中心を通るようにする。受光部がそのような状態になるように撮影装置12をカゴ2上に設置することで、ロープ6を紙面の幅方向に振動運動させたとき、全てのロープ6の振動運動を撮影装置12で一度に撮影できる。
【0036】
次に、周期の測定方法の一例の手順について説明する。先ず、カゴ2を最下階まで下げ、作業員が、カゴ2上に乗り込んで撮影装置12を上述のようにカゴ2上に設置する。その後、作業員が、各ロープ6に関して、ロープ6の一端をカゴ2につないでいるソケット部分2aをハンマーで叩き、全てのロープ6を振動運動させる。その後、作業員は、振動運動している全てのロープ6を測定装置10で一定時間、撮影する。測定装置10には、振動運動しているロープ6が撮影された動画に基づいてロープ6の振動の周期を算出するソフトウエアがインストールされている。このソフトウエアがロープ6の振動の周期を算出するアルゴリズムについては後で詳細に説明する。
【0037】
測定装置10が、振動運動しているロープ6を撮影した後、そのソフトウエアが立ち上がると、振動の周期がロープ6毎に算出される。後で説明するが、測定装置10は、液晶タッチパネル22(図3(b)参照)等で構成される表示部を有する。表示部が、該ソフトウエアが算出した各ロープ6の周期を表示することで、作業員が、ロープ6毎に振動の周期を取得できる。ロープ6のテンションは、振動の周期が小さい程、高くなる。エレベーター1は、各ロープ6のテンションを調整するテンション調整部を有する。例えば、ロープ6の釣合錘5側の端部は、ボルトに固定されており、そのボルトは、釣合錘5の上側の枠体に締め込まれている。各ロープ6のテンションを理解した作業員は、ロープ6毎の振動の周期に基づいて各ロープ6に対応するボルトの枠体に対する締め込み量を適切に調整する。このようにして、ロープ6間のテンションのアンバランスが所定以下になるようにし、特定のロープ6の摩耗が他のロープ6の摩耗よりも速く進行することを抑制する。
【0038】
次に、測定装置10及び上記ソフトウエアについて詳細に説明する。図2は、測定装置10の概略構成を示すブロック図である。また、図3(a)は、一実施例の測定装置10の一方面側を表す模式図であり、図3(b)は、その測定装置10の他方面側を表す模式図である。また、図4は、測定装置10の情報処理装置13が振動の周期を算出するときの画像処理動作の手順について説明する図である。
【0039】
図2に示すように、測定装置10は、撮影装置12、情報処理装置13、及び表示装置16を備える。撮影装置12は、例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等で構成される個体撮像素子を有し、個体撮像素子は、レンズなどの光学系によって、その受光平面に結像した被写体からの光の明暗を電荷の量に光電変換し、それを順次読み出して電気信号に変換する。変換された電気信号に基づくデータは、撮影装置12が撮影した動画を表すデータである。そのデータは、次に説明する情報処理装置13の記憶部15に記憶される。
【0040】
情報処理装置13は、ロープ両端到達時特定部と周期算出部を兼用する。情報処理装置13は、CPU(Central Processing Unit)14、及び記憶部15を含む。CPU14は、例えば、マイクロコンピュータによって好適に構成され、制御部と演算部を有し、記憶部15に予め記憶されたプログラム等を読み出して実行する。また、記憶部15は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)等で構成される。RAMは、読み出したプログラムや処理データを一時的に記憶する機能を有する。また、ROMは、制御プロラムや所定の閾値等を予め記憶する機能を有する。
【0041】
表示装置16は、例えば液晶タッチパネル22で構成される表示部(図3(b)参照)を有する。表示装置16は、情報処理装置13からの制御信号に基づいて表示部に動画や画像を表示する。撮影装置12は、情報端末、例えば、スマートホン、タブレット、又はモバイルパソコン等で構成されてもよく、図3(a),(b)に示すスマートホンで構成される場合には、一方面側に受光部21を有し、他方面側に、表示部と操作部を兼ねる液晶タッチパネル22が配置される。液晶タッチパネル22には、待ち受け画面が表示され、待ち受け画面は、複数のアイコン23を含む。複数のアイコン23の中からアプリを表すアイコンにタッチすると複数のアプリが選択可能になる。その複数のアプリには、ロープ振動周期測定を測定するのに用いるアプリが含まれ、そのアプリにタッチすると、例えば、スタートアイコンと、エンドアイコンが現れる。ユーザが、スタートアイコンにタッチすると撮影が開始され、エンドアイコンにタッチすると撮影が終了する。なお、撮影のスタートとエンドをリモコンで実行できる構成でもよい。
【0042】
次に、図4を用いて、情報処理装置13が振動周期の算出の際に実行する画像処理及び演算の一例について説明する。撮影装置12が情報処理装置13に動画を表すデータを出力すると、演算処理がスタートし、ステップS1で、上記動画データに基づいて、静止画像が所定時間毎に形成される。この所定時間は、例えば、想定されるロープ周期の1/25から1/15の程度の時間に設定されることができるがそれ以外の時間に設定されてもよい。
【0043】
次に、ステップS2で、各静止画におけるロープ位置を特定する。ロープ6の位置の特定は、例えば、ロープ6におけるソケット部分2aから所定距離離れた個所の変位に注目することで実行してもよい。しかし、撮影の前に各ロープ6に色違いのテープ等を貼り付けたり、色違いの塗料を塗布したりして、各ロープ6に、ロープ6の差別化を行うマーカを付けると好ましく、その場合、そのマーカ位置を特定すればよいので、ステップS2を容易に実行できる。マーカを付けた場合の動作をより具体的に説明すると、ステップS2では、各ロープ6について、各静止画においてマーカの位置だけに注目する。そして、時系列的に並べられたマーカの位置を集約して一つの画像に表示する。
【0044】
ステップS2の後のステップS3では、各ロープ6に関し、ロープ6の折り返し位置を特定する。ステップS2の一つの画像により、各ロープ6の一方側折り返しに関して、最も一方側に位置するマーカを特定できる。このマーカの位置を、一方側折り返し位置として特定する。また、各ロープ6の他方側折り返しに関して、最も他方側に位置するマーカを特定できる。このマーカの位置を、他方側折り返し位置として特定する。
【0045】
続いて、ステップS4で、折り返し位置の時刻を特定する。撮影開始時刻、撮影終了時刻、及び各静止画間の時間が、既知であるので、各静止画の時刻を精密に算出できる。その結果、最も一方側に位置するマーカが撮影された時刻と、最も他方側に位置するマーカが撮影された時刻を特定できる。ステップS4では、最も一方側に位置するマーカが撮影された時間を、ロープ6が一方側折り返し位置(一方側位置の一例)に到達した一方側時として特定し、最も他方側に位置するマーカが撮影された時間を、ロープ6が他方側折り返し位置(他方側位置の一例)に到達した他方側時として特定する。静止画間の時間が、想定される周期の1/25の時間から1/15までの時間に設定された場合、ロープ6が一方側折り返し位置に到達した時刻の測定誤差と、ロープ6が他方側折り返し位置に到達した時刻の測定誤差は、夫々、想定される周期の1/25の時間から1/15の時間程度となる。
【0046】
最後に、ステップS5で、各ロープ6に関して、ロープ6が一方側折り返し位置に到達した時刻と、ロープ6が他方側折り返し位置に到達した時刻の差を算出することで、ロープ6毎にロープ6の周期を算出する。各ロープ6に関して算出された振動の周期を表す信号は、表示装置16に出力される。表示装置16がその信号を受信すると、例えば、液晶タッチパネル22が、撮影装置12が測定した複数のロープ6に含まれる全てのロープ6について、各ロープ6の周期をロープ6に関連付けて同時に表示する。
【0047】
なお、各ロープ6の周期を算出するに当たり、N(Nは、2以上の整数)周期の間の時間を測定し、測定した時間をNで割ることで、1周期の時間を算出してもよく、この場合、測定誤差を、1/N程度までに小さくすることができる。また、ロープ6は、力を付与されることで振動運動を開始するが、ロープ6は、振動運動を開始した1周期目に上側の固定端で反射した反射波の影響等で、運動が不安定になることがある。よって、測定は、ロープ6が振動運動を開始した直後から開始してもよいが、ロープ6が振動運動を開始した後、2周期目以降に開始した方がよい。
【0048】
以上、測定装置10は、エレベーター1においてカゴ2を昇降するのに用いられるロープ6が力を付与されることで振動している際に、そのロープ6の振動の周期を測定する。また、測定装置10は、ロープ6からの光を受光する受光部21、ロープ6が振動運動において移動方向を変える一方側位置に到達した一方側時、及びロープ6が振動運動において移動方向を変える他方側位置に到達した他方側時を、受光部21が受信した光に基づいて特定する情報処理装置13を備える。
【0049】
したがって、受光部21がロープ6からの光を受光するだけで、ロープ6が振動運動において移動方向を変える一方側位置に到達した一方側時、及びロープ6が振動運動において移動方向を変える他方側位置に到達した他方側時を特定でき、一方側時と他方側時の時間差により、ロープ6の振動の周期を特定できる。更には、受光部21がロープ6からの光を受光するだけで、ロープ6の振動の周期を特定できるので、測定装置10の一部又は全部をロープに設置する必要がなく、測定装置10がロープ6に非接触な状態でロープ6の振動の周期を特定できる。よって、装置の少なくとも一部をロープに接触させる測定と異なり、ロープの振動の周期が、装置との接触による影響を受けることがなく、ロープ6の振動の周期を正確に特定できる。
【0050】
また、測定装置10は、動画を撮影可能であると共に、受光部21を有する撮影装置12を備えてもよい。そして、情報処理装置13は、撮影装置12によって同時に撮影された複数のロープ6の振動運動の動画に基づいて複数のロープ6に含まれる各ロープ6に関して、上記一方側時及び上記他方側時を特定してもよい。
【0051】
上記構成によれば、撮影した複数のロープ6全てに対して一方側時及び他方側時を画像処理で特定でき、撮影装置12を用いて複数のロープ6を一度撮影するだけで、複数のロープ6に含まれる各ロープ6の周期を一度に特定することが可能になる。よって、複数のロープ6に含まれる任意のロープ6に関して周期を容易に特定できる。なお、本構成では、周期を算出しないロープ6が存在してもよい。
【0052】
また、測定装置10は、ロープ両端到達時特定部が複数のロープ6においてロープ6毎に特定して一方側時と他方側時に基づいてロープ6毎に振動の周期を算出する周期算出部を備えてもよい。
【0053】
上記構成によれば、複数のロープ6に含まれる各ロープ6の周期を周期算出部で自動的に算出できるので、複数のロープ6の周期を格段に容易に特定できる。
【0054】
また、測定装置10では、液晶タッチパネル22が、撮影装置12が測定した複数のロープ6に含まれる全てのロープ6について、各ロープ6の周期をロープ6に関連付けて同時に表示してもよい。そして、このような表示により、複数のロープ6のうちで最大周期で振動している最大周期ロープ、複数のロープ6のうちで最小周期で振動している最小周期ロープ、及び上記最大周期と上記最小周期との差を特定可能としてもよい。
【0055】
上記構成によれば、撮影装置12で複数のロープ6を撮影するだけで、最大周期ロープ、最小周期ロープ、及び最大周期と最小周期との差を取得できる。なお、表示部は、上記実施例のように、撮影装置12が測定した複数のロープ6に含まれる全てのロープ6について、各ロープ6の周期をロープ6に関連付けて同時に表示してもよい。又は、表示部は、最大周期ロープ、最小周期ロープ、及び最大周期と最小周期との差のみを表示してもよい。要は、表示部が行う表示は、最大周期ロープ、最小周期ロープ、及び最大周期と最小周期との差を特定できる表示であれば如何なる表示でもよい。
【0056】
また、本発明のエレベーター1のロープ振動周期測定方法は、エレベーター1において振動運動している複数のロープ6における動画を同時に撮影する撮影ステップと、該動画を画像分析することで、各ロープ6において、振動運動において移動方向を変える一方側位置に到達した一方側時、及び振動運動において移動方向を変える他方側位置に到達した他方側時を特定する端到達時間特定ステップと、上記一方側時と上記他方側時に基づいて各ロープ6において周期を算出する周期算出ステップと、を含む。
【0057】
したがって、画像処理により撮影した複数のロープ6全てに対して一方側時及び他方側時を特定でき、撮影装置12を用いて複数のロープ6を一度撮影するだけで、複数のロープ6に含まれる各ロープ6の周期を一度に特定できる。よって、複数のロープ6に関し、各ロープ6の周期を正確に特定できるだけでなく、各ロープ6の周期を容易に特定できる。
【0058】
また、エレベーター1のロープ振動周期測定方法は、上記撮影ステップの前に、複数のロープ6に含まれる各ロープ6に、他のロープ6と異なるマーカをつけるマーカ付与ステップを備えてもよい。
【0059】
上記構成によれば、マーカでロープ6の差別化を明確にでき、撮影をより正確かつ容易に実行できる。また、ロープ6毎の周期表示を行う場合、ロープ6を特定する表示をマーカに関連づけて実行でき、ユーザがロープ6毎の周期を容易に取得できる。具体的には、例えば、色違いのテープをロープに固着して撮影を行う場合、赤のテープ(マーカ)を付けたロープ6の周期がA秒、青のテープを付けたロープ6の周期がB秒といった表示を実現でき、ユーザがロープ6毎の周期を容易かつ間違わずに取得できる。
【0060】
更には、上述の説明により明らかなように、測定装置10には、周期測定に用いるアプリである次のロープ振動周期算出プログラムがインストールされている。詳しくは、そのロープ振動周期算出プログラムは、エレベーター1において振動運動している複数のロープ6について同時に撮影された動画に基づいて、各ロープ6に関して、振動運動において移動方向を変える一方側位置に到達した一方側時と、振動運動において移動方向を変える他方側位置に到達した他方側時とを特定する処理と、複数のロープ6のうちで最大周期で振動している最大周期ロープ、複数のロープ6のうちで最小周期で振動している最小周期ロープ、及び最大周期と最小周期との差を特定可能な表示を表示部に表示させる処理と、をコンピュータに実行させる。
【0061】
上記ロープ振動周期算出プログラムを用いれば、撮影装置12で複数のロープ6を撮影するだけで、最大周期ロープ、最小周期ロープ、及び最大周期と最小周期との差を自動的に取得できる。
【0062】
また、ロープ振動周期算出プログラムは、更に、各ロープ6における一方側時と他方側時に基づいて各ロープ6について振動運動の周期を算出する処理と、複数のロープ6に含まれる各ロープ6の周期をロープ6に対応づけた状態で表示部に表示させる処理と、をコンピュータに実行させてもよく、この場合、各ロープ6の振動運動の周期を容易に取得できる。
【0063】
なお、測定装置10を、三脚等の専用の支持台11に固定する場合について説明した。しかし、測定装置10は、支持台等に固定されなくてもよく、ロープ6にハンマーで打撃を加える作業員とは別の作業員が測定装置10を手にもって撮影を行ってもよい。
【0064】
また、表示部を、スマートホンで構成される測定装置10の液晶タッチパネル22で構成する場合について説明した。しかし、測定装置は、周期の測定のみを実行する専用の装置でもよい。また、表示部は、操作部を有さない液晶パネルや、操作部を有さない有機ELパネル等で構成されてもよい。
【0065】
また、ロープ両端到達時特定部が複数のロープ6においてロープ6毎に特定した一方側時と他方側時に基づいてロープ毎に振動の周期を算出する周期算出部を備える場合について説明した。しかし、ロープ両端到達時特定部は、複数のロープにおいて最大周期を有するロープのその最大周期のみを、最大周期を有するロープを特定できる状態で表示してもよく、例えば、「手前から2番目のロープ、最大周期、t秒」といった表示をしてもよい。又は、ロープ両端到達時特定部は、複数のロープにおいて最小周期を有するロープのその最小周期のみを、最小周期を有するロープを特定できる状態で表示してもよく、例えば、「手前から2番目のロープ、最小周期、t秒」といった表示をしてもよい。又は、測定装置は、ロープの周期を算出しなくてもよく、表示部は、周期を表示せずに、ロープ毎に一方側時と他方側時を表示する構成でもよい。
【0066】
また、表示部が、複数のロープのうちで最大周期で振動している最大周期ロープ、複数のロープのうちで最小周期で振動している最小周期ロープ、及び最大周期と最小周期との差を特定可能な表示を行う場合について説明した。しかし、測定装置は、そのような表示部を有さなくてもよく、最大周期ロープ、最小周期ロープ、最大周期と最小周期との差を特定可能な音声を出力する構成でもよい。
【0067】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態の測定装置110の概略模式構成図である。測定装置110は、画像処理を行わずに、ロープ6の振動の周期の測定を、ロープ6一本ずつで行う点が、測定装置10と異なる。よって、測定装置110を用いた場合、エレベーター1が備えるロープ6の本数と同じ数だけ測定を行う必要がある。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同一の構成に第1実施形態と同一の参照番号を付して説明を省略する。また、第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果及び変形例ついての説明を省略する。
【0068】
図5に示すように、測定装置110は、赤外線距離センサ120、情報処理装置130、及び表示装置140を備える。赤外線距離センサ120は、周期の測定の際、ロープ6の移動方向にロープ6に対向するように配置される。赤外線距離センサ120を用いた場合、赤外光がワイヤーロープにあたっているのを目視で確認できるので、赤外線距離センサ120を容易に適切な位置に配置できる。
【0069】
赤外線距離センサ120は、赤外光の発光部121と受光部122が一体になっており、受光部122が、発光部121から出射されてロープ6で反射した赤外光を受光する。受光部122は、例えば、帯状の受光面を有する1次元のPSD(PositionSensitive Detector;位置検出素子)を含み、1次元のPSDは、帯の延在方向である長手方向について位置検出を行う。
【0070】
赤外線距離センサ120は、例えば、三角測量の原理を用いて距離を検出する。図5を参照して、赤外線距離センサ120とロープ6との距離が近いと、PSDへの光の入射角度θが大きくなり、逆に遠いと入射角度θが小さくなる。赤外線距離センサ120は、この角度の違いを検出することでロープ6までの距離を測定する。入射角度θが変動すると、赤外線距離センサ120が信号線151を介して情報処理装置130に出力する電気信号の出力電圧が変動する。情報処理装置130は、該出力電圧を検出することでロープ6までの距離を特定する。
【0071】
情報処理装置130は、ロープ両端到達時特定部と、周期算出部を兼用する。情報処理装置130は、時刻を特定するタイマを内蔵している。情報処理装置130は、ロープ6までの距離が最短であった位置を、一方側位置として特定し、ロープ6が一方側位置に到達した時刻を一方側時として特定する。また、情報処理装置130は、ロープ6までの距離が最長であった位置を、他方側位置として特定し、ロープ6が他方側位置に到達した時刻を他方側時として特定する。情報処理装置130は、一方側時と他方側時の差に基づいてロープ6の振動運動の周期を算出する。情報処理装置130は、算出したロープ6の振動周期を表示装置140の表示部に表示させる制御信号を、信号線152を介して表示装置140に出力し、表示部は、当該振動周期を表示する。
【0072】
なお、念のため述べるが、第1実施形態と同様に第2実施形態でも、各ロープ6の周期を算出するに当たり、N(Nは、2以上の整数)周期の間の時間を測定し、測定した時間をNで割ることで、1周期の時間を算出してもよく、この場合、測定誤差を、1/N程度までに小さくすることができる。また、ロープ6は、力を付与されることで振動運動を開始するが、ロープ6は、振動運動を開始した1周期目に上側の固定端で反射した反射波の影響等で、運動が不安定になることがある。よって、測定は、ロープ6が振動運動を開始した直後から開始してもよいが、ロープ6が振動運動を開始した後、2周期目以降に開始した方が好ましい。
【0073】
以上、測定装置110は、赤外線をロープ6に向けて発光する発光部121を備え、受光部122は、発光部121から出射されると共に振動運動しているロープ6で反射した反射赤外線を受光してもよい。また、ロープ両端到達時特定部は、受光部122で受信された反射赤外線に基づいてロープ6までの距離を特定することで、一方側位置及び一方側時と、他方側位置及び他方側時とを特定してもよい。
【0074】
上記構成によれば、ロープ6に向けて赤外線を出射するだけで、測定装置110からロープ6までの距離を測定できて、一方側時と他方側時を特定でき、その結果、ロープ6の周期も特定できる。よって、ロープ6の周期を正確かつ容易に特定できる。
【0075】
また、測定装置110は、一方側時及び前記他方側時に基づいてロープ6の振動の周期を算出する周期算出部と、その周期算出部が算出した周期を表示する表示部と、を備えてもよく、この場合、ロープ6の周期を瞬時に取得することができる。
【0076】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態の測定装置210の概略模式構成図である。なお、図6に示す例では、ロープ6が紙面に垂直な方向に振動運動するものとして説明を行う。また、第3実施形態では、第1実施形態と同一の構成に第1実施形態と同一の参照番号を付して説明を省略する。また、第3実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果及び変形例ついての説明を省略する。
【0077】
図6に示すように、測定装置210は、発光部221、受光部222、情報処理装置230、及び表示装置240を備える。測定装置10は、光を受光する受光部222と、受光部222に向けて光を出射すると共に、ロープ6が出射した光が受光部222に到達するのを遮る位置を含む範囲で振動運動する位置に配置される発光部221を備える。ロープ6が、鉛直方向を含む図6の紙面に垂直な方向に、紙面の上方と紙面の下方との間を紙面を中心に振動運動するとき、発光部221と受光部222は、ロープ6を挟んだ状態かつ紙面の幅方向(水平方向に一致)に間隔をおいた状態で紙面内に配置される。発光部221から出射された光は、発光部221と受光部222の間にロープ6が位置しない場合、受光部222に入射し、発光部221と受光部222の間にロープ6が位置する場合、受光部222に入射しない。なお、発光部221と受光部222は、別体として構成されるが、発光部221は、磁石と一体に構成されてもよく、磁石を昇降路の一部(例えば、昇降路のアングル)やカゴの一部に固着することで、ロープ6の周辺に固定されてもよい。また、受光部222も、磁石と一体に構成されてもよく、磁石を昇降路の一部(例えば、昇降路のアングル)やカゴの一部に固着することで、ロープ6の周辺に固定されてもよい。だだし、発光部と受光部のうちの少なくとも一方は、磁石以外の固定手段、例えば、ねじ等を用いて、昇降路やカゴに固定されてもよい。
【0078】
情報処理装置230は、受光部222からの信号を受ける。情報処理装置230は、ロープ6が振動運動している際に、受光部222が発光部221からの光を受光できなかった時に基づいて振動運動の周期を算出する算出部を含む。受光部222が、発光部221からの光を受光できなかった時刻を、連続して3回特定できれば、1回目の時刻から3回目の時刻までの時間を、ロープ6の振動運動の周期として特定できる。
【0079】
本構成によれば、連続する3つの受光できなかった時を測定し、初めの時から最後の時までの時間を測定するだけで、ロープ6の周期を特定できる。よって、ロープ6の周期を正確かつ容易に特定できる。
【符号の説明】
【0080】
1 エレベーター、 6 ロープ、 10,110,210 測定装置、 12 撮影装置、 13,130,230 情報処理装置、 16,140,240 表示装置、 21,122,222 受光部、 22 液晶タッチパネル、 120 赤外線距離センサ、 121,221 発光部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6