(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ドア装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20220715BHJP
E06B 7/32 20060101ALI20220715BHJP
E05B 65/10 20060101ALI20220715BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20220715BHJP
E06B 7/06 20060101ALN20220715BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B7/32 B
E05B65/10 B
E05B47/00 G
E06B7/06
(21)【出願番号】P 2018202578
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】若松 勇司
(72)【発明者】
【氏名】小谷 敏之
(72)【発明者】
【氏名】持田 典之
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-177803(JP,A)
【文献】特開平08-246757(JP,A)
【文献】特開平07-259407(JP,A)
【文献】特開2010-216204(JP,A)
【文献】特開2004-052420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E06B 7/32
E05B 65/10
E05B 47/00
E06B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア枠により形成された開口部を開閉する扉を、戸先側に位置する第1扉体と戸尻側に位置する第2扉体から構成してなるドア装置において、
第1扉体の戸先側はドア枠の戸先側に
ラッチによって係脱可能となっており、
第2扉体の戸尻側はドア枠の戸尻側に回動可能に装着されており、
第1扉体は第2扉体に回動可能に装着されており、
かつ、第2扉体に対する閉鎖姿勢を維持する方向に付勢されており、
閉鎖姿勢にある第1扉体を第2扉体に連結する連結装置を備え、
前記連結装置は、
第1扉体に設けた第1要素と第2扉体に設けた第2要素からなる電気錠から構成されており、通常時にはロック状態にあって、第2扉体に対する第1扉体の回動を規制して、第1扉体と第2扉体が一体で回動可能となっており、
前記扉が開口部全閉姿勢にある時に、前記第1扉体は、前記ラッチ及び前記電気錠によって回動が規制されており、
前記
電気錠は、
火災時に生成される信号に基づいてロック状態が解除されて、第2扉体に対する第1扉体の回動を許容し、開口部全閉姿勢からの扉の開放初動時に、扉開放の抵抗となる差圧が発生している場合に、
前記ラッチの係合状態を解除することで、第1扉体のみが回動可能となっている、
ドア装置。
【請求項2】
第1扉体の閉鎖姿勢時に、第1扉体の第1見込面と第2扉体の第2見込面が近接対向するようになっており、
前記第1要素と前記第2要素は、第1扉体の閉鎖姿勢時に対向するように、前記第1要素が前記第1見込面に、前記第2要素が前記第2見込面に、それぞれ設けてある、
請求項1に記載のドア装置。
【請求項3】
前記第2扉体は、前記
電気錠の前記第2要素に電流を供給する手段を備えており、
前記第2要素への通電、あるいは、電流供給の遮断によって当該第2要素が作動して、前記
電気錠がロック状態となる、
請求項
1、2いずれか1項に記載のドア装置。
【請求項4】
前記電気錠において、
前記第1要素と前記第2要素の組み合わせは、電気ストライクとラッチ錠の組み合わせ、モータ錠とストライクの組み合わせ、電磁石と磁性体の組み合わせから選択される、
請求項
1~3いずれか1項に記載のドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア装置に係り、詳しくは、開口部全閉状態において扉によって仕切られる第1空間と第2空間との間に気圧差が生じた場合において、第1空間と第2空間の差圧を緩和し、扉の開放力を軽減することを可能とする差圧緩和機構を備えたドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災時に隣接室との間に圧力差を生じさせることで煙の侵入を防止する排煙設備や加圧防排煙設備等の煙制御手段を備える建物においては、開口部全閉状態の扉の内外に圧力差が生じる場合があり、この圧力差が扉の開放に対する抵抗となって扉の開放力が重くなると、避難及び消防活動に支障を生じるおそれがある。
【0003】
この対策として、扉を吊元扉と戸先扉に2分割し、面積の小さい戸先扉を先に開放することによって、第1空間と第2空間の圧力差を緩和して扉の開放力を軽減する差圧緩和機構が提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に開示された差圧緩和機構は、ドアクローザの閉扉力、ラッチ解除に必要な力、ヒンジクローザの閉扉力の力加減によって目的を達成するものであり、また、気圧差により扉に作用する荷重は現場によっても異なり得ることから、ドア装置に作用する各種の力関係の複雑な調整が必要となる。また、吊元扉と戸先扉は通常時(圧力差が発生していない状態)には、ラッチ機構(ローラー締りやマグネットキャッチ類)によって吊元扉と戸先扉を連結することで1枚扉として開閉操作可能となっているが、いたずらや急開放操作といったラッチ機構の保持力を超えるような力で強制的に扉を開放させようとすると、吊元扉に対して戸先扉が不意に折れるように開放されるおそれがあった。
【文献】特許第5535348号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、扉を第1扉体と第2扉体から構成してなる差圧緩和機構を備えたドア装置において、簡単な構成でありながら、通常時には1枚の扉として開口部を開閉し、差圧発生時には第1扉体のみの開放を可能として差圧を緩和できるドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するべく本発明が採用した技術手段は、
ドア枠により形成された開口部を開閉する扉を、戸先側に位置する第1扉体と戸尻側に位置する第2扉体から構成してなるドア装置において、
第1扉体の戸先側はドア枠の戸先側に係脱可能となっており、
第2扉体の戸尻側はドア枠の戸尻側に回動可能に装着されており、
第1扉体は第2扉体に回動可能に装着されており、
第1扉体に設けた第1要素と第2扉体に設けた第2要素からなり、閉鎖姿勢にある第1扉体を第2扉体に連結する連結装置を備え、
前記連結装置は、通常時にはロック状態にあって、第2扉体に対する第1扉体の回動を規制して、第1扉体と第2扉体が一体で回動可能となっており、
前記連結装置は、火災時等の非常時に生成される信号に基づいてロック状態が解除されて、第2扉体に対する第1扉体の回動を許容し、開口部全閉姿勢からの扉の開放初動時に、扉開放の抵抗となる差圧が発生している場合に、第1扉体のみが回動可能となっている、
ドア装置、である。
【0007】
1つの態様では、第1扉体は、閉鎖方向(第2扉体に対する閉鎖姿勢を維持する方向)に付勢されている。
1つの態様では、第2扉体は、閉鎖方向に付勢されている。
1つの態様では、第1扉体は第1の閉鎖力で付勢されており、第2扉体は第2の閉鎖力で付勢されており、第2の閉鎖力は第1の閉鎖力よりも大きい。
【0008】
1つの態様では、第1扉体の閉鎖姿勢時に、第1扉体の第1見込面と第2扉体の第2見込面が近接対向するようになっており、
前記第1要素と前記第2要素は、第1扉体の閉鎖姿勢時に対向するように、前記第1要素が前記第1見込面あるいは第1見込面近傍の第1扉体の見付面に、前記第2要素が前記第2見込面あるいは第2見込面近傍の第2扉体の見付面に、それぞれ設けてある。
1つの態様では、前記第1見込面及び前記第2見込面は、高さ方向に延びる見込面である。
なお、前記第1見込面及び前記第2見込面は、水平方向に延びる見込面でもよい。
【0009】
1つの態様では、前記連結装置は、前記信号に基づいて、ロック状態が電気的に解除されるように構成されている。
より具体的な態様では、前記連結装置は、前記信号に基づく通電、あるいは、電流供給の遮断によって連結状態が解除されるように構成されている。
【0010】
1つの態様では、前記第2扉体は、前記連結装置の前記第2要素に電流を供給する手段を備えており、
前記第2要素への通電、あるいは、電流供給の遮断によって当該第2要素が作動して、前記連結装置がロック状態となる。
【0011】
1つの態様では、前記第1要素と前記第2要素の組み合わせは、電気ストライクとラッチ錠の組み合わせ、モータ錠とストライクの組み合わせ、電磁石と磁性体の組み合わせから選択される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、通常時にはロック状態にあり、火災時等の非常時に生成される信号に基づいてロック状態が解除される連結装置を用いて、閉鎖姿勢にある第1扉体を第2扉体に固定することによって、通常時には、第1扉体と第2扉体が一体となって1枚の扉として利用可能であり、非常時には、第1扉体のみの回動を許容して、扉開放の抵抗となる差圧を解消し、扉の円滑な開放操作を可能とする。
【0013】
連結装置は、通常時にはロック状態にあって、第1扉体と第2扉体を固定し、第2扉体に対する第1扉体の回動を規制するので、連結装置のロック状態が解除されない限り、いたずらや急開放操作等によって比較的大きな力で扉を開放しようとしても、通常時には、第1扉体と第2扉体が一体となって1枚の扉として回動するため、操作性が良好である。また、連結装置のロック状態は、火災時等の非常時に生成される信号に基づいて解錠されるため、ドア装置に作用する各種の力関係の複雑な調整を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るドア装置(開口部全閉状態)を第1空間側から見た正面図である。
【
図2】本実施形態に係るドア装置(開口部全閉状態)を第2空間側から見た正面図である。
【
図3】(A)は、
図1のA―A線縦断面図、(B)は、
図1のB-B線縦断面図である。
【
図4】
図1の横断面図であり、連結装置の第1実施形態を示している。
【
図5】
図4の開口部全閉状態から第1扉体と第2扉体が一体で開放した状態を示す横断面図である。
【
図6】
図4の開口部全閉状態から第1扉体のみが開放した状態を示す横断面図である。
【
図7】
図6と類似の図であって、連結装置の第2実施形態を示し、開口部全閉状態から第1扉体のみが開放した状態を示す横断面図である。
【
図8】
図6と類似の図であって、連結装置の第3実施形態を示し、開口部全閉状態から第1扉体のみが開放した状態を示す横断面図である。
【
図9】
図6と類似の図であって、連結装置の第4実施形態を示し、開口部全閉状態から第1扉体のみが開放した状態を示す横断面図である。
【
図10】ドア装置(開口部全閉状態)を第1空間側から見た正面図であり、第1扉体、第2扉体の形状の第1変形例を示している。
【
図11】ドア装置(開口部全閉状態)を第1空間側から見た正面図でああり、第1扉体、第2扉体の形状の第2変形例を示している。
【
図13】火災発生時の連結装置のロック解除を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[A]ドア装置の全体構成
本実施形態に係るドア装置は、第1空間と第2空間とを区画する躯体に設けられた開口部に設置される。ドア装置が設置される建物は、火災時に隣接室との間に圧力差を生じさせることで煙の侵入を防止する排煙設備や加圧防排煙設備等の煙制御手段を備えており、開口部全閉状態において、第1空間の圧力が第2空間の圧力よりも大きくなる場合がある。すなわち、本実施形態では、開口部全閉状態において、通常時には、第1空間と第2空間の気圧は略同じであるが、火災時等の非常時には、煙制御手段によって第1空間が第2空間に比べて高圧となる。本実施形態に係るドア装置は、差圧緩和機構を備えることで、第1空間と第2空間で気圧差が発生した場合であっても、扉の開放を円滑に行うことを可能とする。
【0016】
図1は、本実施形態に係るドア装置を第1空間側から見た正面図、
図2は同ドア装置を第2空間側から見た正面図であって、本実施形態に係るドア装置において、ドア枠1により形成された開口部を開閉する扉は、戸先側に位置する(戸先側がドア枠1の戸先側に係脱可能となっている)第1扉体(戸先側扉体)2と戸尻側に位置する(戸尻側がドア枠1の戸尻側に回動可能に装着されている)第2扉体(戸尻側扉体)3から構成されており、第1扉体2は第2扉体3に対して回動可能に装着されており、第2扉体3はドア枠1に対して回動可能に装着されている。本実施形態に係る扉(第1扉体2、第2扉体3)は、開口部全閉姿勢から第1空間側に回動することで、建物開口部を開放する開き戸である。
【0017】
ドア枠1は、戸先側縦枠10と、戸尻側縦枠11と、上枠12と、下枠13と、から縦長方形状を有しており、縦長方形状の開口部を形成している。第1扉体2と第2扉体3は、第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢となって一体となった状態で縦長方形状の扉を形成し、上記縦長方形状の開口部を閉鎖する(
図1、
図2参照)。
【0018】
第1扉体2は、正面視縦長方形状を有し、第1空間に面する第1見付面20、第2空間に面する第2見付面21、戸先側端面22、戸尻側端面23、上端面24、下端部25を備えている。第1扉体2の高さ寸法及び幅寸法は、ドア枠1により形成される開口部の高さ寸法及び幅寸法よりも小さい。したがって、第1扉体2の第1見付面20の面積は、扉全体の第1見付面(第1見付面20+第1見付面30)の面積に比べて小さく、開口部全閉状態において、第1空間側の気圧が高くなった時に、第1扉体2の第1見付面20に作用する力は、扉全体の第1見付面(第1見付面20+第1見付面30)に作用する力よりも小さい。
【0019】
第2扉体3は、正面視において、上側部位3A、下側部位3B、戸尻側部位3Cからコ字形状を有しており、第1空間に面する第1見付面30、第2空間に面する第2見付面31、上側部位3Aの戸先側端面32、上側部位3Aの上端面33、上側部位3Aの下端面34、下側部位3Bの戸先側端面35、下側部位3Bの下端面36、下側部位3Bの上端面37、戸尻側部位3Cの戸尻側端面38、戸尻側部位の戸先側端面39、を備えている。
【0020】
第2扉体3の上側部位3Aの戸先側端面32、下側部位3Bの戸先側端面35が第2扉体3の戸先側端面を、戸尻側部位3Cの戸尻側端面38が第2扉体3の戸尻側端面を、上側部位3Aの上端面33が第2扉体3の上端面を、下側部位3Bの下端面36が第2扉体3の下端面を形成している。
【0021】
本実施形態では、上側部位3A、下側部位3Bの幅寸法は、ドア枠1により形成される開口部の幅寸法と略同じであり(具体的には、戸先側縦枠10の見込面100、戸尻側縦枠11の見込面110間の距離よりも僅かに小さい)、戸尻側部位3Cの高さ寸法は、ドア枠1により形成される開口部の高さ寸法と略同じである(具体的には、上枠12の120の下面、下枠13の上面130間の距離よりも僅かに小さい)。
【0022】
第2扉体3の戸尻側部位(本実施形態では戸尻側端面38)は、ドア枠1の戸尻側部位(本実施形態では戸尻側縦枠11)に丁番14によって回動可能に装着されている。第2扉体3は、戸尻側部位3Cの上端部位とドア枠1の上枠12の戸尻側部位間に設けたドアクローザ15によって、ドア枠1に対して閉鎖方向に付勢されている。図示の態様では、第2扉体3の戸尻側部位は戸先側縦枠11に装着されているが、例えば、第2扉体3を、ピボットヒンジを用いて上枠12および下枠13の戸尻側部位に回動可能に装着してもよい。
【0023】
第2扉体3において、上側部位3Aの下端面34、下側部位3Bの上端面37、戸尻側部位3Cの戸先側端面39から正面視長方形状の開口4(
図6参照)が形成されている。第1扉体2の高さ寸法、幅寸法は、開口4の高さ寸法、幅寸法と略同じであり、第1扉体2は、第2扉体3の開口4を開閉可能なように第2扉体3に回動可能に装着されており、第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢となることで、第1扉体2と第2扉体3が一体となって一枚の扉を形成するようになっている。第2扉体3に対して第1扉体2が閉鎖姿勢にある時には、第1扉体2の戸先側端面22、第2扉体3の上側部位3A及び下側部位3Bの戸先側端面32、35が、扉の戸先側端面となり、第2扉体3の上端面33、下端面36、戸尻側端面38が、扉の上端面、下端面、戸尻側端面となっている。
【0024】
第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢にある時には、第1扉体2の周面(戸尻側端面23、上端面24、下端面25)と開口4の周面(第2扉体3の戸尻側部位3Cの戸先側端面39、第2扉体3の上側部位3Aの下端面34、第2扉体3の下端部位3Bの上端面37)は、それぞれ、近接対向しており、第1扉体2の戸先側端面22と、第2扉体3の戸先側端面32、35が同一垂直面上に位置している。本実施形態では、第1扉体2と第2扉体3の扉厚(見込寸法)は同じであるが、扉厚を異ならしめてもよい。
【0025】
第1扉体2の第1見付面20及び第2見付面21の戸先側部位には、高さ方向の中間部位に位置してハンドルHが設けてある。第1扉体2の戸先側部位にはラッチL1が内蔵されており、ラッチは戸先側端面22から突出した係止姿勢と、戸先側端面22内に退避した退避姿勢との間で移動可能である。ラッチL1は係止姿勢を保つように付勢されており、第1扉体2の閉鎖姿勢時には、ドア枠1の戸先側縦枠10の見込面100に形成されたラッチ受け1000にラッチL1が係止することで、第1扉体2の閉鎖姿勢が維持される(
図4参照)。ハンドルHの操作によって、係止姿勢にあるラッチL1を退避姿勢とすることで、第1扉体2の戸先側の係止状態が解除され、第1扉体2の開放が可能となる。第1扉体2と第2扉体3が連結されて一体化さている場合には、ハンドルHの操作でラッチL1の係止状態を解除させて、扉(第1扉体2+第2扉体3)を開放させることができる。
【0026】
第1扉体2の上端面24、下端面25の幅方向中央部位には、第1扉体2の回動支軸Pを提供するピボットヒンジ26が設けてあり、第2扉体2は、上下のピボットヒンジ26によって第2扉体3の上側部位3Aの下端面34、下側部位3Bの上端面37に対して回動可能に装着されている。第1扉体2は、回動支軸Pを中心として、第2扉体3の開口4に回動可能に装着されている。本実施形態では、上下の回動支軸Pを通る鉛直線(回動軸芯)は、第1扉体2の幅の中央に位置しており、第1扉体2の回動支軸Pは、平面視において第1扉体2の厚さ内にあるが、回動支軸Pの位置は、これらに限定されない。例えば、回動支軸Pの位置は、第1扉体2の幅方向中央に対して偏倚していてもよい。
【0027】
第1扉体2は第2扉体3に対する閉鎖姿勢を維持する方向(閉鎖方向)に付勢されている。本実施形態では、ピボットヒンジ26は第1扉体2を閉鎖方向に付勢するスプリングを備えたオートヒンジであり、第1扉体2の閉鎖手段としても機能する。より具体的には、上下の少なくともいずれか一方のピボットヒンジ26(例えば、下側のピボットヒンジ26)には第1扉体2の閉鎖手段を構成するスプリングが内蔵されており、スプリングによって第1扉体2は閉鎖方向に付勢されている。本実施形態では、第1扉体2(ピボットヒンジ26)の閉鎖力は、第2扉体3(ドアクローザ15)の閉鎖力よりも小さく設定されている。本実施形態では、第1扉体2の閉鎖手段はピボットヒンジ26に内蔵されているが、第1扉体2の回動部(ヒンジ)とは独立して閉鎖手段を設けてもよい。
【0028】
[B]ドア装置の気密構造
ドア枠1は、閉鎖姿勢にある扉(第1扉体2、第2扉体3)の三方(戸先側部位、戸尻側部位、上側部位)の周縁部位が当接する戸当たり部を備えている。より具体的には、
図4に示すように、戸先側縦枠10において、閉鎖姿勢にある扉の戸先側端面(すなわち、第1扉体2の戸先側端面22、第2扉体3の戸先側端面32、35)が近接対向する見込面100の第2空間側には、第1空間に向かって開口する溝部が開口高方向に亘って形成されており、溝部には戸先側気密部材(気密ゴム)Sが設けてある。
【0029】
戸尻側縦枠11において、閉鎖姿勢にある第2扉体3の戸尻側端面38が近接対向する見込面110の第2空間側には、第1空間に向かって開口する溝部が開口高方向に亘って形成されており、溝部には戸尻側気密部材(気密ゴム)Sが設けてある。
【0030】
図3に示すように、上枠12において、閉鎖姿勢にある第2扉体3の上端面33が近接対向する下面120の第2空間側には、第1空間に向かって開口する溝部が開口幅方向に亘って形成されており、溝部には上側気密部材(気密ゴム)Sが設けてある。
【0031】
開口部閉鎖時において、扉の三方(戸先側、戸尻側、上側)の周縁、具体的には、第1扉体2の第2見付面21及び第2扉体の第2見付面31の戸先側部位、第2扉体3の第2見付面31の戸尻側部位、第2扉体3の上側部位が、戸先側気密ゴムS、戸尻側気密ゴムS、上側気密ゴムSに密着する。
【0032】
第2扉体3の下方部位には、扉が全閉姿勢となった時に、第2扉体3の下端部36を越えて下方に突出する気密部材Sが設けてあり、開口部閉鎖時において、第2扉体3の下端部36から下方に突出する気密部材Sが、下枠13の上面130に密着するようになっている(
図3参照)。したがって、開口部全閉時には、開口部の四周に亘って気密構造が形成される。
【0033】
扉の第2見付面(第2見付面21、第2見付面31)には、第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢となって開口4を閉鎖した時に、開口4の四周縁の三方(戸尻側縁、上側縁、下側縁)に沿って延びるように周縁枠が設けてある。周縁枠は、第1扉体2に設けた周縁枠(垂直枠50、上側水平枠51、下側水平枠52)と、第2扉体3に設けた周縁枠(上側水平枠53、下側水平枠54)と、からなる(
図2、
図3参照)。
【0034】
第1扉体2は、回動支軸Pを通る垂直線(回動軸芯)を挟んで、戸先側の第1部分と戸尻側の第2部分とからなる。第1扉体2には、戸尻側の第2部分の第2見付面21の周縁に沿って周縁枠が設けてあり、第1扉体2側の周縁枠は、戸尻側端面23に沿って垂直に延びる垂直枠50と、上端面24に沿って水平に延びる上側水平枠51と、下端面25に沿って水平に延びる下側水平枠52と、から平面視コ字形状に形成されている。
【0035】
第1扉体2側の周縁枠(垂直枠50、上側水平枠51、下側水平枠52)は、第1扉体2の戸尻側端面23、上端面24、下端面25に沿う長手方向と長手方向に直交する短手方向を備え、短手方向において内側部分(
図4における垂直枠50においては左側半部、
図3における上側水平枠51においては下側半部、
図3における下側水平枠52においては上側半部)と外側部分(
図4における垂直枠50においては右側半部、
図3における上側水平枠51においては上側半部、
図3における下側水平枠52においては下側半部)に分けられ、上記内側部分において第1扉体2の第2見付面21に固定されており、幅方向の外側部分が第1扉体2の周縁(戸尻側端面23、上端面24、下端面25)から突出している。
【0036】
第2扉体3には、閉鎖姿勢の第1扉体2の第1部分に対応して、上側部位3Aの下端面34に沿って水平に延びる上側水平枠53と、下側部位3Bの上端面37に沿って水平に延びる下側水平枠54が設けてある。
【0037】
第2扉体3側の周縁枠(上側水平枠53、下側水平枠54)は、下端面34、上端面37に沿う長手方向と長手方向に直交する短手方向を備え、短手方向において内側部分(
図3における上側水平枠53においては上側半部、
図3における下側水平枠54においては下側半部)と外側部分(
図3における上側水平枠53においては下側半部、
図3における下側水平枠54においては上側半部)に分けられ、上記内側部分において第2扉体3の第2見付面31に固定されており、幅方向の外側部分が第2扉体3の周縁(下端面34、上端面37)から突出している。
【0038】
第1扉体2の周縁枠(垂直枠50、上側水平枠51、下側水平枠52)の上記外側部分はポケット部を形成しており、ポケット部には、垂直枠50、上側水平枠51、下側水平枠52の長さ方向に亘って三方状に気密部材としての気密ゴムS1が装着されている(
図3(B)、
図4参照)。
【0039】
第2扉体3の周縁枠(上側水平枠53、下側水平枠54)の上記外側部分はポケット部を形成しており、ポケット部には、上側水平枠53、下側水平枠54の長さ方向に亘って気密部材としての気密ゴムS2が装着されている(
図3(A)参照)。
【0040】
回動支軸Pを中心とした第1扉体2の回動の妨げとならないように、第1扉体2が閉鎖姿勢にある時に、上側水平枠51の端部と上側水平枠53の端部は離間し、気密ゴムS1の端部と気密ゴムS2の端部は離間しており、同様に、下側水平枠52の端部と下側水平枠54の端部は離間し、気密ゴムS1の端部と気密ゴムS2の端部は離間している。第1扉体2が閉鎖姿勢にある時に、上側水平枠51の端部と上側水平枠53の端部に跨るように上側の目板部55が設けられ、下側水平枠52の端部と下側水平枠54の端部に跨るように下側の目板部55が設けられる(
図2参照)。第1扉体2が閉鎖姿勢にある時に、目板部55によってあいじゃくり構造が形成される。
【0041】
本実施形態では、上側の目板部55は上側水平枠53の先端に設けられ、下側の目板部55は下側水平枠54の先端に設けられる。
図12に示すように、上側の目板部55の幅方向中間部位には、気密部材としての気密ゴムS3が設けてあり、第1扉体2が閉鎖姿勢にある時に、気密ゴムS3が気密ゴムS1、S2間の隙間を塞ぐようになっている。下側の目板部55の基本的な構成は、上側の目板部55と同じである。
【0042】
戸先側縦枠10の第2空間に面する見込面101の上下の所定高さ位置には塞ぎプレート56が見込面101から突出するように固定されている(
図2、
図3(A)参照)。より具体的には、第1扉体2及び第2扉体3が閉鎖姿勢にある時に、第1扉体2の戸先側端面22の上端と第2扉体3の戸先側端面32の下端に跨るように位置して上側の塞ぎプレート56が設けてあり、第1扉体2の戸先側端面22の下端と第2扉体3の戸先側端面35の上端に跨るように位置して下側の塞ぎプレート56が設けてあり、開口部全閉状態において、塞ぎプレート56によって、第1扉体2の戸先側端面22と第2扉体3の戸先側端面32、35の境界に位置してあいじゃくり構造が形成される。
【0043】
[C]連結装置
ドア装置は、閉鎖姿勢にある第1扉体2と第2扉体3を連結するための連結装置を備えている。上述のように、第1扉体2は第2扉体3に対して閉鎖姿勢を維持する方向に付勢されているが、連結装置がロック状態となることで、第2扉体3に対する第1扉体2の閉鎖姿勢が固定され、第2扉体3に対する第1扉体2の回動が規制される。通常時には、連結装置はロック状態にあり、第1扉体2は閉鎖姿勢で第2扉体3に固定されており、第1扉体2と第2扉体3は1枚の扉として一体で回動する。
【0044】
連結装置は、火災時等の非常時に生成される信号に基づいてロック状態が解除されるように構成されており、ロック状態が解除されると(すなわち、第2扉体3に対する第1扉体2の固定状態が解除されると)、第2扉体3に対して第1扉体2の回動が可能となる。連結装置のロック状態が解除されると、開口部全閉姿勢からの扉の開放初動時に、第1扉体2のみが回動可能となる。
【0045】
連結装置は、第1扉体2に設けた第1要素と第2扉体3に設けた第2要素からなり、第1要素と第2要素が固定されることで連結装置はロック状態となる。第1要素と第2要素は、第1扉体が第2扉体3に対して閉鎖姿勢にある時に互いに対向するように、第1扉体2、第2扉体3の所定部位にそれぞれ設けられる。
【0046】
第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢にある時には、第1扉体2の見込面(戸尻側端面23、上端面24、下端面25)と開口4の周面、すなわち、第2扉体3の見込面(戸尻側部位3Cの戸先側端面39、上側部位3Aの下端面34、下端部位3Bの上端面37)は近接対向しており、近接対向する部位あるいはかかる部位の近傍に第1要素、第2要素がそれぞれ設けられる。
【0047】
1つの態様では、少なくとも1つの第1要素が、第1扉体2の見込面(第1扉体2の戸尻側端面23、上端面24、下端面25)の少なくも1つの面の所定位置に設けられ、少なくとも1つの第2要素が、第2扉体3の見込面(第2扉体3の戸尻側部位3Cの戸先側端面39、上側部位3Aの下端面34、下端部位3Bの上端面37)の少なくとも1つの面の所定位置に設けられ、第1要素と第2要素は、第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢にある時に対向するような位置関係にある。
【0048】
他の態様では、少なくとも1つの第1要素が、第1扉体2の見込面(第1扉体2の戸尻側端面23、上端面24、下端面25)近傍の第2見付面21の所定位置に設けられ、少なくとも1つの第2要素が、第2扉体3の見込面(第2扉体3の戸尻側部位3Cの戸先側端面39、上側部位3Aの下端面34、下端部位3Bの上端面37)近傍の第2見付面31の所定位置に設けられ、第1要素と第2要素は、第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢にある時に対向するような位置関係にある。
【0049】
通常時には、連結装置の第1要素と第2要素は固定されており、連結装置はロック状態にあり、火災検知信号の入力に基づいて連結装置のロック状態を解除して、第2扉体3に対する第1扉体2の回動を許容する。扉の面部(第1扉体2の第1見付面20、第2扉体3の第1見付面30)に所定以上の圧力が作用している場合には、第1扉体2のみが開放されて、第1空間と第2空間の気圧差を解消することで、扉の円滑な開放を可能となっており、本実施形態に係るドア装置は、差圧緩和機構を備えている。なお、扉の面部に作用する圧力によっては、連結装置のロックが解除された状態(第2扉体3に対して第1扉体2が回動可能な状態)であっても、第1扉体2(閉鎖姿勢を維持する方向に付勢されている)と第2扉体3が一体で開放する場合もあり得る点に留意されたい。
【0050】
本実施形態では、連結装置は電気錠から構成されており、第1要素と第2要素の少なくとも一方の要素が電源に接続されており、当該要素への通電ないし通電の遮断(電源のONないしOFF)は制御部によって実行される。第1要素と第2要素の組み合わせは、例えば、電気ストライクとラッチ錠の組み合わせ、モータ錠とストライクの組み合わせ、電磁石と磁性体の組み合わせから選択される。以下、連結装置の第1実施形態~第4実施形態について説明する。
【0051】
[第1実施形態]
図4~
図6を参照しつつ、第1実施形態に係る連結装置を説明する。連結装置は、第1扉体2に設けたラッチ錠6と、第2扉体3に設けた電気ストライク7と、からなる。第1扉体2の戸尻側部位には所定高さに位置してラッチ錠6が内蔵されており、ラッチ錠6のラッチL2は戸尻側端面23から突出するように付勢されている。本実施形態では、ラッチ錠6は、シリンダ、サムターン、ハンドルを備えていない。
【0052】
第2扉体3の戸尻側部位3Cの戸先側端面39には所定高さに位置して電気ストライク7が設けてあり、電気ストライク7には、第2扉体3内部を延びる電線8の一端が接続されており、電線8の他端側は、第2扉体3の戸尻側部位に設けた通電金具9、ドア枠1の戸尻側縦枠11に設けた通電金具9´を通って躯体へと延びており、電源(図示せず)に接続されている。ラッチ錠6と電気ストライク7からなる連結装置は、火災検知信号が制御部に入力されることで、電気的に施錠状態(ロック状態)から解錠状態(ロック解除状態)に切り替わるようになっている。
【0053】
1つの態様では、ラッチ錠6と電気ストライク7からなる連結装置は、停電時解錠タイプ(通電時施錠タイプ)として作動する。通常時には、電気ストライク7は通電状態にあり、ラッチ錠6のラッチL2と電気ストライク7が固定されてロック状態にあり、第2扉体3に対する第1扉体2の閉鎖姿勢が固定されており、第1扉体2と第2扉体3は一体で回動する(
図5参照)。
【0054】
非常時に制御部が火災検知信号を受信すると、電気ストライク7の解錠状態を維持する信号が入力されて電源がOFFとなり、ラッチ錠6のラッチL2と電気ストライク7のロック状態が解除され、閉鎖姿勢にある第2扉体3に対して第1扉体2の回動が可能となり、閉鎖姿勢にある第1扉体2が回動することで、第1空間と第2空間を連通して、第1空間と第2空間の差圧を解消して、扉の円滑な開放を可能とする(
図6参照)。
【0055】
1つの態様では、ラッチ錠6と電気ストライク7からなる連結装置は、停電時施錠タイプ(通電時解錠タイプ)として作動する。通常時には、電気ストライク7に非通電状態にあり、ラッチ錠6のラッチL2と電気ストライク7が固定されてロック状態にあり、第2扉体3に対する第1扉体2の閉鎖姿勢が固定されており、第1扉体2と第2扉体3は一体で回動する(
図5参照)。
【0056】
非常時に制御部が火災検知信号を受信すると、電気ストライク7の解錠状態を維持する信号が入力されて電源がONとなり、ラッチ錠6のラッチL2と電気ストライク7のロック状態が解除され、閉鎖姿勢にある第2扉体3に対して第1扉体2の回動が可能となり、閉鎖姿勢にある第1扉体2が回動することで、第1空間と第2空間を連通して、第1空間と第2空間の差圧を解消して、扉の円滑な開放を可能とする(
図6参照)。
【0057】
[第2実施形態]
図7を参照しつつ、第2実施形態に係る連結装置を説明する。連結装置は、第1扉体2に設けたストライク7´と、第2扉体3に設けたモータ錠6´と、からなる。第1扉体2の戸尻側端面23には所定高さに位置してストライク7´が設けてあり、第2扉体3の戸先側部位にモータ錠6´が内蔵されており、モータ錠6´のラッチL2´は第2扉体3の戸先側端面39から突出することで、ストライク7´に係止される。本実施形態では、モータ錠6´は、シリンダ、サムターンを備えていない。
【0058】
モータ錠6´には、第2扉体3内部を延びる電線8の一端が接続されており、電線8の他端側は、第2扉体3の戸尻側部位に設けた通電金具9、ドア枠1の戸尻側縦枠11に設けた通電金具9´を通って躯体へと延びており、電源(図示せず)に接続されている。モータ錠6´とストライク7´からなる連結装置は、火災検知信号が制御部に入力されることで、電気的に施錠状態(ロック状態)から解錠状態(ロック解除状態)に切り替わるようになっている。
【0059】
1つの態様では、モータ錠6´とストライク7´からなる連結装置は、停電時解錠タイプ(通電時施錠タイプ)として作動する。通常時には、モータ錠6´は通電状態にあり、モータ錠6´のラッチL2´が突出姿勢となってストライク7´に係止してロック状態にあり、第2扉体3に対する第1扉体2の閉鎖姿勢が固定されており、第1扉体2と第2扉体3は一体で回動する。
【0060】
非常時に制御部が火災検知信号を受信すると、モータ錠6´の解錠状態を維持する信号が入力されて電源がOFFとなり、モータ錠6´のラッチL2´が収納姿勢となって、ストライク7´とのロック状態が解除され、閉鎖姿勢にある第2扉体3に対して第1扉体2の回動が可能となり、閉鎖姿勢にある第1扉体2が回動することで、第1空間と第2空間を連通して、第1空間と第2空間の差圧を解消して、扉の円滑な開放を可能とする。
【0061】
1つの態様では、モータ錠6´とストライク7´からなる連結装置は、停電時施錠タイプ(通電時解錠タイプ)として作動する。通常時には、モータ錠6´は非通電状態にあり、モータ錠6´のラッチL2´が突出姿勢となってストライク7´に係止してロック状態にあり、第2扉体3に対する第1扉体2の閉鎖姿勢が固定されており、第1扉体2と第2扉体3は一体で回動する。
【0062】
非常時に制御部が火災検知信号を受信すると、モータ錠6´の解錠状態を維持する信号が入力されて電源がONとなり、モータ錠6´のラッチL2´が収納姿勢となって、ストライク7´とのロック状態が解除され、閉鎖姿勢にある第2扉体3に対して第1扉体2の回動が可能となり、閉鎖姿勢にある第1扉体2が回動することで、第1空間と第2空間を連通して、第1空間と第2空間の差圧を解消して、扉の円滑な開放を可能とする。
【0063】
[第3実施形態]
図8を参照しつつ、第3実施形態に係る連結装置を説明する。連結装置は、第1扉体2に設けたストライクプレート17と、第2扉体3に設けた電磁式ロック16と、からなる。第1扉体2の第2見付面21の戸尻側部位には所定高さに位置してストライク取付プレート50´が設けてあり、ストライク取付プレート50´は、第1扉体2の戸尻側端面23を越えて突出しており、ストライク取付プレート50´には磁性体からなるストライクプレート17が設けてある。第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢にある時に、ストライクプレート17は第2扉体3の第2見付面31の所定部位に近接ないし接触するようになっている。なお、ストライク取付プレート50´は、第1扉体2の周縁枠である垂直枠50を利用して形成してもよい。
【0064】
第2扉体3の戸先側部位には、電磁式ロック16が内蔵されており、第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢にある時に、磁力によって第1扉体2のストライクプレート17を第2扉体3の第2見付面31に固定することでロック状態となる。電磁式ロック16には、第2扉体3内部を延びる電線8の一端が接続されており、電線8の他端側は、第2扉体3の戸尻側部位に設けた通電金具9、ドア枠1の戸尻側縦枠11に設けた通電金具9´を通って躯体へと延びており、電源(図示せず)に接続されている。電磁式ロック16とストライクプレート17からなる連結装置は、火災検知信号が制御部に入力されることで、電気的に施錠状態(ロック状態)から解錠状態(ロック解除状態)に切り替わるようになっている。
【0065】
通常時には、電磁式ロック16は通電状態にあって、第1扉体2のストライクプレート17が磁力によって、第2扉体3の第2見付面31に吸着されてロック状態にあり、第2扉体3に対する第1扉体2の閉鎖姿勢が固定されており、第1扉体2と第2扉体3は一体で回動する。
【0066】
非常時に制御部が火災検知信号を受信すると、電磁式ロック16の解錠状態を維持する信号が入力されて電源がOFFとなり、電磁式ロック16とストライクプレート17とのロック状態が解除され、閉鎖姿勢にある第2扉体3に対して第1扉体2の回動が可能となり、閉鎖姿勢にある第1扉体2が回動することで、第1空間と第2空間を連通して、第1空間と第2空間の差圧を解消して、扉の円滑な開放を可能とする。
【0067】
[第4実施形態]
図9を参照しつつ、第4実施形態に係る連結装置を説明する。第4実施形態は第3実施形態の変形例である。連結装置は、第1扉体2に設けたストライクプレート17と、第2扉体3に設けた電磁式ロック16と、からなる。第1扉体2の戸尻側端面23には所定高さに位置して磁性体からなるストライクプレート17が設けてある。第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢にある時に、ストライクプレート17は第2扉体3の戸先側端面39の所定部位に近接ないし接触するようになっている。
【0068】
第2扉体3の戸先側部位には、電磁式ロック16が内蔵されており、第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢にある時に、磁力によって第1扉体2のストライクプレート17を第2扉体3の戸先側端面39に固定することでロック状態となる。電磁式ロック16には、第2扉体3内部を延びる電線8の一端が接続されており、電線8の他端側は、第2扉体3の戸尻側部位に設けた通電金具9、ドア枠1の戸尻側縦枠11に設けた通電金具9´を通って躯体へと延びており、電源(図示せず)に接続されている。電磁式ロック16とストライクプレート17からなる連結装置は、火災検知信号が制御部に入力されることで、電気的に施錠状態(ロック状態)から解錠状態(ロック解除状態)に切り替わるようになっている。
【0069】
通常時には、電磁式ロック16は通電状態にあって、第1扉体2のストライクプレート17が磁力によって、第2扉体3の戸先側端面39に吸着されてロック状態にあり、第2扉体3に対する第1扉体2の閉鎖姿勢が固定されており、第1扉体2と第2扉体3は一体で回動する。
【0070】
非常時に制御部が火災検知信号を受信すると、電磁式ロック16の解錠状態を維持する信号が入力されて電源がOFFとなり、電磁式ロック16とストライクプレート17とのロック状態が解除され、閉鎖姿勢にある第2扉体3に対して第1扉体2の回動が可能となり、閉鎖姿勢にある第1扉体2が回動することで、第1空間と第2空間を連通して、第1空間と第2空間の差圧を解消して、扉の円滑な開放を可能とする。
【0071】
[D]ドア装置の開放動作
本実施形態に係るドア装置の回動動作について説明する。
図4は、閉鎖姿勢にあるドア装置の平面図であり、第1扉体2及び第2扉体3は共に閉鎖姿勢(すなわち、開口部全閉姿勢)にある。第1扉体2の戸先側端面22から突出するラッチL1がドア枠1の戸先側縦枠10の見込面100に形成されたラッチ受け1000に係止しており、ロック状態にある連結装置によって、第1扉体2及び第2扉体3は閉鎖姿勢が固定されている。
【0072】
通常時には、第1空間と第2空間の気圧差は実質的にない。開口部全閉状態において、第1扉体2のハンドルHを回すと、ハンドルHの動作に連動して、突出したラッチL1が戸先側端面22内に退避し、第1扉体2の戸先側端面22のドア枠1の戸先側縦枠10に対する係止状態が解除され、第1扉体2を第1空間側へ開放させることで、第1扉体2と第2扉体3が一体で、第1空間側へ開放して、開口部を開放する。第2扉体3に対する第1扉体2の閉鎖姿勢は連結装置によって固定されているので、第1扉体2を急開放操作した場合であっても、第2扉体3に対して第1扉体2が不意に折れ曲がるように回動することがなく、第1扉体2(第2扉体3に対する閉鎖姿勢が維持されている)と第2扉体3が一体で回動する。開放した扉を自由にすると、扉はドアクローザ15の付勢力で一体で閉鎖して開口部全閉状態に戻り、第1扉体2の戸先側端面22から突出するラッチL1がドア枠1の戸先側縦枠10の見込面100に形成したラッチ受け1000に係止する。
【0073】
火災発生時の連結装置のロック解除の流れを
図13に示す。火災時に、火災検知信号が入力されると、煙制御手段が作動して、第1空間が第2空間に比べて高圧となり、第1空間と第2空間との間に差圧が発生する。差圧によって、第1扉体2の第1見付面20及び第2扉体3の第1見付面30に圧力(
図6に矢印で示す)が作用しており、この圧力は、扉の開放動作(第1空間側へ回動することで建物開口部を開放する)の抵抗となる。
【0074】
火災検知信号が入力されると、連結装置への通電が遮断され、あるいは、連結装置へ通電することで、連結装置のロック状態が電気的に解除される。連結装置のロック状態が解除されることで、開口部全閉状態において、第2扉体3に対する第1扉体2の固定状態が解除され、第1扉体2のみの開放が可能な状態となる。
【0075】
この状態において、第1扉体2のハンドルHを回すと、ハンドルHの動作に連動して、突出したラッチL1が戸先側端面22内に退避し、第1扉体2の戸先側端面22のドア枠1の戸先側縦枠10に対する係止状態を解除し、第1扉体2の開放が可能となり、第1扉体2のみをある程度回動させることで、第1空間と第2空間を連通する。これによって、第1空間と第2空間との圧力差が小さくなることで、扉(第1扉体2+第2扉体3)の第1空間側への回動が容易になり、また、第1空間と第2空間との圧力差が小さくなることで、第1扉体2が閉鎖方向の付勢力によって第2扉体3の開口4を閉鎖する方向に回動する。第1空間と第2空間との圧力差が実質的に無くなると、第1扉体2は閉鎖方向への付勢力によって第2扉体3に対して閉鎖姿勢となって、第1扉体2と第2扉体3は一体として回動する。開放した第1扉体2のハンドルHから手を離して自由にすると、第1扉体2及び第2扉体3は、ドアクローザ15の閉鎖力によって一体で閉鎖方向に回動して開口部全閉状態に戻り、第1扉体2の戸先側端面22から突出するラッチL1がドア枠1の戸先側縦枠10の見込面100に形成したラッチ受け1000に係止する。
【0076】
本実施形態では、第1空間と第2空間の圧力差が解消された状態では、第1扉体2が閉鎖方向の付勢力によって第2扉体3に対して閉鎖姿勢を維持することで、第1扉体2(第2扉体3に対して閉鎖姿勢)と第2扉体3が一体で回動するようにしている。これに対して、第1扉体2が第2扉体3に対して所定角度回動した姿勢で、第1扉体2と第2扉体3が一体で回動するものでもよい。より具体的には、第1扉体2は、第2扉体3に対する第1扉体2の回動範囲(角度)を規制する回動角度規制手段を備えていてもよく、回動規制手段としては、第2扉体3が所定角度まで回動した時に、第2扉体3の部分が当接する当接部(目板部55の部分や別に設けた当接部)を例示することができる。開口部全閉状態で圧力が高い側に扉を開放する場合に、扉の開放初動時に、第1扉体が第2扉体に対して所定角度回動して第1空間と第2空間を連通した後に、第1扉体と第2扉体が一体(第2扉体3に対して第1扉体2が所定角度を保った状態)で回動して建物開口部を開放する。なお、本実施形態では、火災時等の非常時に生成される信号に基づいて連結装置のロック状態が解除されて、第2扉体に対する第1扉体の回動を許容し、開口部全閉姿勢からの扉の開放初動時に、扉開放の抵抗となる差圧が発生している場合に、第1扉体のみが回動可能となっているが、扉開放の抵抗となる差圧が実質的に発生していない場合に、開口部全閉姿勢からの扉の開放初動時に第1扉体のみが回動してもよい。
【0077】
[E]ドア形状の変形例
本実施形態について、
図1、
図2に示す第1扉体2、第2扉体3に基づいて説明したが、第1扉体2は戸先側がドア枠1の戸先側縦枠10に係脱可能であり、第2扉体3は戸尻側がドア枠の戸尻側部位に回動可能に装着されており、第1扉体2が第2扉体3に対して回動可能に装着されていれば、第1扉体2、第2扉体3の形状は
図1、
図2に示す形状に限定されない。
【0078】
図10を参照しつつ、第1扉体2、第2扉体3の第1変形例について説明する。第1扉体2は、上端面及び下端面が段部状である点を除いて正面視概ね縦長方形状を有し、第1空間に面する第1見付面20、第2空間に面する第2見付面(図示せず)、戸先側端面22、戸尻側端面23(戸先側端面22よりも高さ寸法が小さい)を備えている。第1扉体2の上端面は、段差状の戸先側上端面240及び戸尻側上端面241、戸先側上端面240の戸尻側端部と戸尻側上端面241の戸先側端部とを接続する上側垂直面242から形成され、下端面は、段差状の戸先側下端面250及び戸尻側下端面251、戸先側下端面250の戸尻側端部と戸尻側下端面251の戸先側端部とを接続する下側垂直面252から形成されている。
【0079】
第2扉体3は、正面視において、上側部位3A´、下側部位3B´、戸尻側部位3C´からコ字形状を有しており、第1空間に面する第1見付面30、第2空間に面する第2見付面(図示せず)を備えている。上側部位3A´は戸先側端面32、上端面33を備え、上側部位3A´の下端面は、段差状の戸先側下端面340及び戸尻側下端面341、戸先側下端面340の戸尻側端部と戸尻側下端面341の戸先側端部とを接続する上側垂直面342から形成されている。下側部位3B´は戸先側端面35、下端面36を備え、下側部位3B´の上端面は、段差状の戸先側上端面370及び戸尻側上端面371、戸先側上端面370の戸尻側端部と戸尻側上端面371の戸先側端部とを接続する下側垂直面372から形成されている。戸尻側部位3C´は、戸尻側端面38、戸尻側部位の戸先側端面39を備えている。
【0080】
第2扉体3の戸尻側部位は、ドア枠1の戸尻側部位に丁番14によって回動可能に装着されている。第2扉体3は、閉鎖方向に付勢されている。第2扉体3において、上側部位3A´の下端面、下側部位3B´の上端面、戸尻側部位3C´の戸先側端面39から正面視概ね長方形状の開口が形成されている。第1扉体2は、第2扉体3に形成された開口に嵌まる形状・寸法を備えており、第2扉体3の開口を開閉可能なように第2扉体3に回動可能に装着されており、第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢となることで、第1扉体2と第2扉体3が一体となって1枚の扉を形成するようになっている。
【0081】
第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢にある時には、第1扉体2の周面(戸尻側端面23、上端面、下端面)と開口の周面(第2扉体3の戸尻側部位3C´の戸先側端面39、第2扉体3の上側部位3A´の下端面、第2扉体3の下端部位3B´の上端面)は、それぞれ、近接対向している。ドア装置は、閉鎖姿勢にある第1扉体2と第2扉体3を連結するための連結装置を備えており、例えば、これらの近接対向する部位を利用して、連結装置の第1要素、第2要素を設けることができる。連結装置の具体的な構成については、既述の記載を援用することができる。
【0082】
第1扉体2の第1見付面20及び第2見付面の戸先側部位には、高さ方向の中間部位に位置して設けたハンドルHの操作によって、係止姿勢にあるラッチ(図示せず)を退避姿勢とすることで、第1扉体2の戸先側の係止状態が解除され、第1扉体2の開放が可能となる。第1扉体2の上端面、下端面の幅方向中央部位には、第1扉体2の回動支軸Pを提供するピボットヒンジ(図示せず)が設けてあり、第2扉体2は、上下のピボットヒンジによって第2扉体3の上側部位3A´の下端面、下側部位3B´の上端面に対して回動可能に装着されている。第1扉体2は第2扉体3に対する閉鎖姿勢を維持する方向(閉鎖方向)に付勢されている。ドア装置は気密構造を備えており、気密構造の構成については、既述の記載を参照することができる。
【0083】
図11を参照しつつ、第1扉体2、第2扉体3の第2変形例について説明する。第1扉体2は、上端面及び下端面が段部状である点を除いて正面視概ね縦長方形状を有し、第1空間に面する第1見付面20、第2空間に面する第2見付面(図示せず)、戸先側端面22、戸尻側端面23(戸先側端面22よりも高さ寸法が小さい)を備えている。第1扉体2の上端面は、段差状の戸先側上端面240´及び戸尻側上端面241´、戸先側上端面240´の戸尻側端部と戸尻側上端面241´の戸先側端部とを接続する上側垂直面242´から形成され、下端面は、段差状の戸先側下端面250´及び戸尻側下端面251´、戸先側下端面250´の戸尻側端部と戸尻側下端面251´の戸先側端部とを接続する下側垂直面252´から形成されている。
【0084】
第2扉体3は、正面視において、上側突出部3A´´、下側突出部3B´´、本体部3C´´からコ字形状を有しており、第1空間に面する第1見付面30、第2空間に面する第2見付面(図示せず)を備えている。第2扉体3は、上端面33´、下端面36´、戸尻側端面38を備え、戸先側部位は、上側突出部3A´´の戸先側端面32´、上側突出部3A´´の下端面34´、下側突出部3B´´の戸先側端面35´、下側突出部3B´´の上端面37´、本体部3C´´の戸先側端面39を備えている。
【0085】
第2扉体3の戸尻側部位は、ドア枠1の戸尻側部位に丁番14によって回動可能に装着されている。第2扉体3は、閉鎖方向に付勢されている。第1扉体2の戸尻側部位は、第2扉体3の戸先側部位に嵌まる形状・寸法を備えており、第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢となることで、第1扉体2と第2扉体3が一体となって一枚の扉を形成するようになっている。
【0086】
第1扉体2が第2扉体3に対して閉鎖姿勢にある時には、第1扉体2の戸尻側部位(上側垂直面242´、戸尻側上端面241´、下側垂直面252´、戸尻側下端面251´、戸尻側端面23)と第2扉体3の戸先側部位(上側突出部3A´´の戸先側端面32´、下端面34´、下側突出部3B´´の戸先側端面35´上端面37´、本体部3C´´の戸先側端面39)は、それぞれ、近接対向している。ドア装置は、閉鎖姿勢にある第1扉体2と第2扉体3を連結するための連結装置を備えており、例えば、これらの近接対向する部位を利用して、連結装置の第1要素、第2要素を設けることができる。連結装置の具体的な構成については、既述の記載を援用することができる。
【0087】
第1扉体2の第1見付面20及び第2見付面の戸先側部位には、高さ方向の中間部位に位置して設けたハンドルHの操作によって、係止姿勢にあるラッチ(図示せず)を退避姿勢とすることで、第1扉体2の戸先側の係止状態が解除され、第1扉体2の開放が可能となる。第1扉体2の上端面、下端面の幅方向中央部位には、第1扉体2の回動支軸Pを提供するピボットヒンジ(図示せず)が設けてあり、第1扉体2は、上下のピボットヒンジによって第2扉体3の上側突出部3A´´の下端面34´、下側突出部3B´´の上端面37´に対して回動可能に装着されている。第1扉体2は第2扉体3に対する閉鎖姿勢を維持する方向(閉鎖方向)に付勢されている。ドア装置は気密構造を備えており、気密構造の構成については、既述の記載を参照することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 ドア枠
2 第1扉体
3 第2扉体
4 開口
6 ラッチ錠
7 電気ストライク
6´ モータ錠
7´ ストライク
16 電磁式ロック(電磁石)
17 ストライクプレート(磁性体)
P 回動支軸