(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】トンネル掘削工法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/00 20060101AFI20220715BHJP
E21D 20/00 20060101ALI20220715BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
E21D9/00 C
E21D20/00 L
E21D11/10 D
(21)【出願番号】P 2018233389
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 廉樹
(72)【発明者】
【氏名】浅田 浩章
(72)【発明者】
【氏名】野間 達也
(72)【発明者】
【氏名】能代 泰範
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-201074(JP,A)
【文献】特開平4-312694(JP,A)
【文献】特開平9-72199(JP,A)
【文献】特開平5-280274(JP,A)
【文献】特開平7-18650(JP,A)
【文献】特表2012-510014(JP,A)
【文献】特開平9-72186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/00
E21D 20/00
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削されたトンネル周壁面に多数のロックボルトを打設してトンネル周壁面を安定化させるロックボルト打設工程と、
穿孔機を有する複数のブームを備えたドリルジャンボにより切羽に装薬孔を多数穿孔する装薬孔穿孔工程と、
前記装薬孔にそれぞれ爆薬を挿入する爆薬挿入工程と、
前記爆薬を爆破し切羽を掘削する爆破工程と、
爆破工程後、爆破されたトンネル壁面をバックホーにより掘削する掘削工程と、
を備えるトンネル掘削工法において、
前記ドリルジャンボの少なくとも1つのブームに前記穿孔機に代えロックボルト打設装置を設け、
前記ロックボルト打設工程を、前記装薬孔穿孔工程と同時進行させる、
ことを特徴とするトンネル掘削工法。
【請求項2】
前記掘削工程後、トンネル周壁面にコンクリート吹付け機によりコンクリートを吹付けるコンクリート吹付け工程が行なわれ、
前記ロックボルト打設工程では、この吹付けられたコンクリートの上から前記ロックボルトが打設される、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル掘削工法。
【請求項3】
前記コンクリート吹付け工程では、切羽から所定の距離離れた箇所までトンネル周壁面にコンクリートが吹付けられ、
前記ロックボルト打設工程、前記装薬孔穿孔工程、前記爆薬挿入工程、前記爆破工程、前記掘削工程とでトンネルが前進する毎に、前記コンクリート吹付け工程でトンネル周壁面に吹付けられるコンクリートも前進し、
前記ロックボルト打設工程では、トンネルの長手方向に沿って前記前進したトンネル周壁面に吹付けられたコンクリートの中央の箇所に、周方向に間隔をおいて前記ロックボルトが打設される、
ことを特徴とする請求項2記載のトンネル掘削工法。
【請求項4】
前記ブームは、前記ドリルジャンボの車幅方向に並べられて3つ設けられ、
前記ロックボルト打設装置は、3つ並べられたうちの中央のブームに設けられる、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載のトンネル掘削工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削工法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳地のトンネル工事では、岩盤を掘削する工法として発破工法が採用されている。
この発破工法では、装薬孔穿孔工程において、穿孔機が設けられた複数のブームを備えるドリルジャンボが使用され、ドリルジャンボにより切羽に多数の装薬孔が穿孔される。
装薬孔穿孔工程後、ドリルジャンボは切羽から退避し、また、切羽ではそれら装薬孔にそれぞれ雷管を取り付けた爆薬を挿入する爆薬挿入工程が行われる。
続いて雷管を介して爆薬を爆破し切羽を掘削する爆破工程が行なわれる。
爆破工程後、バックホーや削岩機を用いた手作業によるトンネル周壁面やトンネル床面の掘削工程が行なわれ、トンネル周壁面が所定の円筒面形状にトンネル床面がほぼ平坦に掘削され、また、次回の装薬孔穿孔工程において、多数の装薬孔を穿孔し易いように切羽がほぼ平坦に掘削される。
そして、ロックボルト打設機によりトンネル周壁面にロックボルトを打設するロックボルト打設工程が行なわれ、トンネル周壁面の安定化が図られる。
【0003】
また、崩落し易い地盤では、トンネル周壁面に吹付け機によりコンクリートを吹付けるコンクリート吹付け工程が行なわれ、吹付けられたコンクリートの上からロックボルトを打設するロックボルト打設工程が行なわれ、トンネル周壁面の安定化が図られる。
爆破工程後、このようにバックホーや削岩機による掘削工程、ロックボルト打設機によるロックボルト打設工程が行なわれたならば、ドリルジャンボが切羽に近づき、ドリルジャンボによる装薬孔穿孔工程が行なわれ、このような作業工程が繰り返して行なわれることでトンネルの掘削工事が進められていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のトンネル掘進工法では、このようにドリルジャンボによる装薬孔穿孔工程と、爆薬挿入工程と、爆破工程と、掘削工程と、ロックボルト打設工程とが順番に繰り返して行なわれており、トンネル工事の施工期間の短縮化を図る上で何らかの改善が求められていた。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであり、本発明の目的はトンネル工事の施工期間の短縮化を図る上で有利なトンネル掘削工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため本発明は、掘削されたトンネル周壁面に多数のロックボルトを打設してトンネル周壁面を安定化させるロックボルト打設工程と、穿孔機を有する複数のブームを備えたドリルジャンボにより切羽に装薬孔を多数穿孔する装薬孔穿孔工程と、前記装薬孔にそれぞれ爆薬を挿入する爆薬挿入工程と、前記爆薬を爆破し切羽を掘削する爆破工程と、爆破工程後、爆破されたトンネル壁面をバックホーにより掘削する掘削工程とを備えるトンネル掘削工法において、前記ドリルジャンボの少なくとも1つのブームに前記穿孔機に代えロックボルト打設装置を設け、前記ロックボルト打設工程を、前記装薬孔穿孔工程と同時進行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロックボルト打設工程を装薬孔穿孔工程と同時進行させるので、単独に行なっていたロックボルト打設工程の作業時間を省略でき、トンネル工事の施工期間の短縮化を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】トンネル掘削工法の説明図で(A)は爆薬挿入工程時の切羽部分のトンネル断面図、(B)は爆破工程直後の切羽部分のトンネル断面図、(C)は掘削工程における切羽部分のトンネル断面図、(D)はコンクリート吹付け工程における切羽部分のトンネル断面図、(E)は装薬孔穿孔工程における切羽部分のトンネル断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
図1(A)~(E)において符号48は切羽、符号50は円筒面形状に掘削されたトンネル周壁面、符号52はほぼ平坦に掘削されたトンネル床面、符号54Aはトンネル周壁面50の吹付けられた吹付けコンクリート、符号54Bはトンネル床面52に吹付けられた吹付けコンクリート、符号56は吹付けコンクリート54Aの上からトンネル周壁面50に打ち付けられたロックボルト、符号60は装薬孔を示している。
なお、本発明においてトンネル壁面とは、切羽48、トンネル周壁面50、トンネル床面52を含む。
【0010】
まず、本実施の形態のトンネル掘削工法で使用されるドリルジャンボ(穿孔装置)から説明する。
図1(E)に示すように、ドリルジャンボ10は、走行体12を備え、走行体12には、複数のブーム、例えば3つのブーム14A、14B、14Cが車幅方向に間隔をおき並べられて設けられている。
3つのブーム14A、14B、14Cには、それらブーム14A、14B、14Cを水平方向に揺動させるブーム水平揺動部、それらブーム14A、14B、14Cを前後方向に移動させるブーム前後移動部がそれぞれ設けられている。
本実施の形態では、3つのブーム14A、14B、14Cのうちの中央の1つのブーム14Bを除いた残りのブーム14A、14Cに、それぞれガイドシェルを介して穿孔機16が設けられている。
そして、ガイドシェルを水平方向に揺動させるガイドシェル水平揺動部、ガイドシェルを垂直方向に揺動させるガイドシェル垂直揺動部、ガイドシェルを前後方向に移動させるガイドシェル前後移動部などを備えている。
【0011】
穿孔機16は、先端に穿孔用ビットが設けられた穿孔ロッド、穿孔ロッドの後端に打撃を与えるドリフタ、それら穿孔ロッドおよびドリフタを前後動させるフィーダなどを備え、穿孔機16による切羽48への装薬孔60の穿孔が可能となっている。
以上の構成により、オペレータの操作により穿孔機16の位置および姿勢が変更可能となっており、切羽48の所望の箇所に所望の角度で穿孔がなされる。
なお、以上のブームを動かす構造やガイドシェルを動かす構造、穿孔機16の構造には、切羽48に装薬孔60を穿孔する従来公知の様々な穿孔装置の構成が採用可能である。
【0012】
また、中央のブーム14Bには、穿孔機16に代え、ガイドシェルを介してロックボルト打設装置18が設けられている。
そして、ガイドシェルを水平方向に揺動させるガイドシェル水平揺動部、ガイドシェルを垂直方向に揺動させるガイドシェル垂直揺動部、ガイドシェルを前後方向に移動させるガイドシェル前後移動部などを備えている。
【0013】
ロックボルト打設装置18は、穿孔機構と、グラウド充填機構と、挿入機構とを備えている。
穿孔機構は、コンクリートが吹きつけられたトンネル周壁面50に対して垂直にロックボルト挿通孔を穿孔するものである。穿孔機構は、例えば、スライド機構にスライド可能に支持され穿孔ビットを備えるドリフタ、このドリフタに打撃、回転運動を与えるドリフタ駆動部、ドリフタを往復移動させるドリフタ移動部などを含んで構成されている。
グラウド充填機構は、ロックボルト挿通孔にモルタルやセメントミルクなどのグラウドを充填するものである。
グラウド充填機構は、ロックボルト挿通孔に挿入されるグラウト注入管、グラウト注入管を往復直線移動させる注入管移動部、グラウト注入管にグラウトを圧送するポンプなどを含んで構成されている。
挿入機構は、複数本のロックボルト56を収容保持する収容保持機構、収容保持機構に収容保持された複数本のロックボルト56のうちの1本のロックボルト56を抜き出す抜き出し機構、抜き出し機構により抜き出されたロックボルト56に定着部材を装着する定着部材装着機構、定着部材が装着されたロックボルト56をロックボルト挿通孔に打設する打設機構などを含んで構成されている。
以上の構成により、オペレータの操作によりロックボルト打設装置18の位置および姿勢が変更可能となっており、円弧面状のトンネル周壁面50の所望の箇所に所望の角度でロックボルト56の打設がなされる。
なお、以上のガイドシェルを動かす構造、穿孔機構、グラウト充填機構、挿入機構には、トンネル周壁面50にロックボルト56を打設する従来公知の様々なロックボルト打設装置の構成が採用可能である。
【0014】
次に、
図1(A)~(E)に基づいて本実施の形態のトンネル掘削工法について説明する。
図1(A)に爆薬挿入工程後のトンネル断面図を示し、(B)に爆破工程後のトンネル断面図を示すように、爆破工程後、切羽48は、激しい凹凸状となっている。
図1(C)に示すように、爆破工程後、バックホー20や削岩機を用いた手作業による掘削工程が行なわれ、切羽48がほぼほぼ平坦に掘削され、トンネル周壁面50が所定の円筒面形状に掘削され、トンネル床面52がほぼ平坦に掘削される。
なお,一回の爆破工程、掘削工程で例えば、数m前後前進する。
図1(D)に示すように、掘削工程後、円筒面形状に掘削されたトンネル周壁面50と、ほぼ平坦に掘削されたトンネル床面52に吹付け機22によりコンクリートが吹付けられ、トンネル周壁面50とトンネル床面52に吹付けコンクリート54A、54Bが形成される。
この吹付けコンクリート54A、54Bも、前の爆破工程、掘削工程後に形成された吹付けコンクリート54A、54Bに対して、例えば、数m前後前進する。
図1(D)、(E)において符号54A―1,54B―1は前進した吹付けコンクリート54A、54Bの部分を示している。
【0015】
次いで、
図1(E)に示すように、爆破工程時に切羽48から退避していたドリルジャンボ10が切羽48に近づき、2つのブーム14A、14Cの穿孔機16により切羽48に多数の装薬孔60を例えば30から50cmの深さで穿孔する装薬孔穿孔工程が行なわれる。
また、この装薬孔穿孔工程と同時に、ドリルジャンボ10の中央のブーム14Bで支持されたロックボルト打設装置18により、新たに形成された吹付けコンクリート54A―1の上からトンネル周壁面50にロックボルト56を打ち込むロックボルト打設工程が行なわれる。
ロックボルト打設工程では、新たに作られた吹付けコンクリート54A-1のトンネル長手方向に沿った中央の箇所で周方向に間隔をおいて周方向に1列に並べられるようにロックボルト56が打ち込まれる。
この場合、両側のブーム14A、14C、穿孔機16にロックボルト打設装置18が干渉しないように、中央のブーム14Bのブーム水平揺動部、ブーム前後移動部、ガイドシェル水平揺動部、ガイドシェル垂直揺動部、ガイドシェル前後移動部、ロックボルト打設装置18のドリフタ、ドリフタ移動部などが操作される。
【0016】
次いで、装薬孔穿孔工程とロックボルト打設工程が終了したならば、ドリルジャンボ10は切羽48から退避し、
図1(A)に示すように、切羽48ではそれら装薬孔60にそれぞれ雷管を取り付けた爆薬を挿入する爆薬挿入工程が行われる。
次いで、続いて雷管を介して爆薬を爆破し切羽48を掘削する爆破工程が行なわれる。
爆破工程後は、
図1(B)に示す状態となり、爆破工程後、
図1(C)に示すように、バックホー20や削岩機を用いた手作業によるトンネル周壁面50、トンネル床面52、切羽48の掘削工程が行なわれ、以上の工程が繰り返して行なわれることによりトンネルの掘削が行なわれていく。
【0017】
本実施の形態の掘削工法によれば、装薬孔穿孔工程と同時にロックボルト打設工程が行なわれるので、従来のように装薬孔穿孔工程とロックボルト打設工程とを別々に行なう場合に比べ、単独に行なっていたロックボルト打設工程に要する作業時間を省略でき、例えば、2~3時間程度作業時間を短縮できる。
したがって、例えば、長さが数kmのトンネル工事を施工する場合には、爆破工程が数千回行なわれることから、2~3数千時間、すなわち、83日~125日程度工期を短縮することが可能となり、トンネル工事のコストダウンを図る上で有利となる。
【0018】
なお、本実施の形態では、ドリルジャンボ10が車幅方向に並べられた3つのブームを備えている場合について説明したが、ドリルジャンボ10が4つのブームを備えている場合には、中央の2本のブームに穿孔機16を設け、両側のブームにロックボルト打設装置18を設けるなど任意である。
また、崩落し易い地盤では、トンネル周壁面50にコンクリートを吹付けるコンクリート吹付け工程が行なわれるが、地盤の性状によってはコンクリート吹付け工程は省略されトンネル周壁面50にロックボルト56が直接打ち込まれ、このような場合にも本発明は適用される。
【符号の説明】
【0019】
10 ドリルジャンボ
14A、14B、14 ブーム
16 穿孔機
18 ロックボルト打設装置
20 バックホー
22 吹付け機
48 切羽
50 トンネル周壁面
52 トンネル床面
54A トンネル周壁面に吹付けられた吹付けコンクリート
54A-1 トンネル周壁面に新たに吹付けられた吹付けコンクリート
54B トンネル床面に吹付けられた吹付けコンクリート
54B-1 トンネル床面に新たに吹付けられた吹付けコンクリート