(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】架橋可能なシリル化ポリマーをベースにした接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 201/10 20060101AFI20220715BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20220715BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C09J201/10
C09J183/04
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2018564982
(86)(22)【出願日】2017-06-05
(86)【国際出願番号】 FR2017051410
(87)【国際公開番号】W WO2017216446
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-01
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(73)【特許権者】
【識別番号】510021203
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ド・ラ・ルシェルシェ・シアンティフィーク(セーエヌエールエス)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
(73)【特許権者】
【識別番号】518433879
【氏名又は名称】ユニベルシテ ド レネシ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コリン,ボリ
(72)【発明者】
【氏名】ミショー,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】シモン,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ラヴァストル,オリビエ
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-284984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0165453(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種のシリル化ポリマー(A)と、少なくとも1種の触媒(B)とを含む接着剤組成物であって、
少なくとも1種のシリル化ポリマー(A)が、式(II)、(III)、(IV)または(VII)
(ここで、
R
4は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルを表し、複数のR
4基が存在する場合にはそれらは互いに同一でも異なっていてもよく、
R
5は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルを表し、複数のR
5基が存在する場合にはそれらは互いに同一でも異なっていてもよく、2つの基OR
5が一つの同じ環に結合していてもよく、
pは0,1または2の整数であり、
Pは飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖のポリマーを表し、このポリマーは1つまたは複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、珪素を含んでいてもよく、100g/モル~48600g/モルの
数平均モル質量を有し、
P’はポリシロキサンを表し、100g/モル~48600g/モルの
数平均モル質量を有し、
R
1は芳香族または直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族基にすることができる5~15個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、
R
3は1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の二価のアルキレン基を表し、
Xは-NH-、-NR
7-または-S-から選択される二価の基を表し、
R
7は1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを表し、
fは1~6の整数を表す)
のいずれか一つにより表され、
接着剤組成物は、フリーなオキシムを実質的に含まず、
上記の少なくとも1種の触媒(B)は、
式M(OR)
y
(ここで、
Mは、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、珪素、ハフニウム、バリウム、セリウムおよびアンチモンから選択される金属を表し、
yは3または4であり、
Rは1~5個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表すか、あるいは2~5個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルケニル基を表す)
により表される少なくとも1種の金属アルコキシドと、
下記の式(V)または式(VI)
(ここで、
G
1は水素原子または1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基であり、
G
2は水素原子または1~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基、2~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルケニル基、3~10個の炭素原子を有する環状アルキル基、アリール基または-N(G
7G
8)基から選択される基であり(ここで、G
7およびG
8は互いに独立して1~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基または2~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルケニル基またはベンジル基を表す)、
G
3は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表するか、G
4基および/またはG
5基および/またはG
6基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含むことができ、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキル基で置換されていてもよく、
G
4は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G
3基および/またはG
5基および/またはG
6基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含むことができ、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキル基で置換されていてもよく、
但し、基G
3またはG
4の少なくとも一つは基G
5またはG
6の少なくとも一つと脂肪族環の残基を形成し、
G
5は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G
3基および/またはG
4基および/またはG
6基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含むことができ、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキル基で置換されていてもよく、
G
6は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G
3基および/またはG
4基および/またはG
5基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含むことができ、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキル基で置換されていてもよく、
G
5基またはG
6基の少なくとも一つはG
3基またはG
4基の少なくとも一つと一緒に脂肪族環の残基を形成する)
のオキシムから選択される少なくとも1種のオキシムと
をその他の試薬の不存在下で反応させて得られる金属化合物から選択される、接着剤組成物。
【請求項2】
シリル化ポリマー(A)が請求項1に記載の式(II)、(III)または(IV)のいずれか一つにより表される請求項1に記載の
接着剤組成物。
【請求項3】
シリル化ポリマー(A)が下記の式(II’)(III’)または(IV’):
(ここで、
式(II’)(III’)または(IV’)において、R
1、R
3、R
4、R
5、X
、およびpは請求項2の式(II)、(III)および(IV)に記載のものと同じ意味を有し、
R
2は飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖の二価炭化水素基を表し、1つまたは複数の酸素、窒素、硫黄、珪素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、100g/モル~48600g/モルの
数平均モル質量を有し、
nは0以上の整数)
のいずれか一つにより表される請求項1または2に記載の
接着剤組成物。
【請求項4】
式(V)のオキシムにおいて、
G
1はメチル基またはエチル基を表し、
G
2は水素または1~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基またはフェニル基または基-N(G
7G
8)を表し、ここで、G
7およびG
8はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはベンジル(-CH
2-C
6H
5)を表し、
式(VI)のオキシムにおいて、
G
3およびG
6はそれぞれ水素原子を表し、
G
4およびG
5が5~11の炭素原子を有する脂肪族環を表し、この脂肪族環は1つまたは複数のメチル、エチルおよび/またはプロピルで置換されていてもよく、この脂肪族環は酸素原子または窒素原子から選ばれる1つまたは複数のヘテロ原子を含んでいてもよく、窒素原子は水素原子に結合していない、請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
触媒(B)が、
Ti(OiPr)
4、Ti(OnPr)
4、Ti(OnBu)
4、Zr(OiPr)
4、Zr(OnPr)
4、Zr(OnBu)
4の化合物から選択されるアルコキシド、ならびに
式(V-1)および式(VI-1):
(ここで、
G
2はHまたはメチル、エチル、イソ-プロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチルまたは-N(CH
2-C
6H
5)
2基であり、
G
4とG
5は5~11の炭素原子を有する飽和脂肪族環を形成する)
のオキシムから選択されるオキシム、
の反応から得られる、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
触媒(B)がアルコキシドとオキシムとの反応により得られ、アルコキシド:オキシムのモル比が1:1~4:1である請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
接着剤組成物の総重量に対して触媒(B)を少なくとも0.05重量%含む請求項1~6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
接着剤組成物の総重量に対してシリル化ポリマー(A)を少なくとも5重量%含む請求項1~7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
充填剤を更に含む請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
シリル化ポリマー(A)と触媒(B)とが2つの別個の区画に包装されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
式M(OR)
y
(ここで、
Mは、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、珪素、ハフニウム、バリウム、セリウムおよびアンチモンから選択される金属原子を表し、
yは3または4であり、
Rは1~5個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表すか、あるいは2~5個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルケニル基を表す)
により表される少なくとも1種の金属アルコキシドと、
式(V)のオキシムまたは式(VI)のオキシム
(ここで、
G
1は水素原子または1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、
G
2は水素原子であるか、1~10個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖のアルキル基、2~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルケニル基、3~10個の炭素原子を有する環式アルキル基、アリール基または-N(G
7G
8)基であり、ここで、G
7およびG
8は互いに独立して1~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基であるか、2~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルケニルであるか、ベンジル基であり、
G
3は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基であるか、基G
4および/またはG
5および/またはG
6と一緒に4~14の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含んでいてもよく、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されていてもよく、
G
4は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基のいずれかを表すか、基G
3および/またはG
5および/またはG
6と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含んでいてもよく、この肪族環は1つまたは複数の1~4個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されてもよく、
但し、基G
3またはG
4の少なくとも一つは基G
5またはG
6の少なくとも一つと脂肪族環の残基を形成し、
G
5は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基のいずれかを表すか、基G
3および/またはG
4および/またはG
6と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含んでいてもよく、この肪族環は1つまたは複数の1~4個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されてもよく、
G
6は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基のいずれかを表すか、基G
3および/またはG
4および/またはG
5と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含んでいてもよく、この肪族環は1つまたは複数の1~4個の炭素原子を有するアルキル基によって置換されてもよく、
但し、基G
5またはG
6の少なくとも一つは基G
3またはG
4の少なくとも一つと脂肪族環の残基を形成する)
から選択される少なくとも1つのオキシムをその他の試薬の不存在下で反応させて得られる金属化合物の、シリル化ポリマー(A)のための硬化触媒としての使用であって、
得られる金属化合物は、フリーなオキシムを実質的に含まず、
シリル化ポリマー(A)が、式(II)、(III)、(IV)または(VII)
(ここで、
R
4は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルを表し、複数のR
4基が存在する場合にはそれらは互いに同一でも異なっていてもよく、
R
5は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルを表し、複数のR
5基が存在する場合にはそれらは互いに同一でも異なっていてもよく、2つの基OR
5が一つの同じ環に結合していてもよく、
pは0,1または2の整数であり、
Pは飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖のポリマーを表し、このポリマーは1つまたは複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、珪素を含んでいてもよく、100g/モル~48600g/モルの
数平均モル質量を有し、
P’はポリシロキサンを表し、100g/モル~48600g/モルの
数平均モル質量を有し、
R
1は芳香族または直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族基にすることができる5~15個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、
R
3は1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の二価のアルキレン基を表し、
Xは-NH-、-NR
7-または-S-から選択される二価の基を表し、
R
7は1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを表し、
fは1~6の整数を表す)
により表される、
金属化合物の、シリル化ポリマー(A)
のための硬化触媒としての使用。
【請求項12】
シリル化ポリマー(A)が、請求項2
または3に記載
されるものであり、および/または
硬化触媒が
、請求項5
または6に記載の触媒(B)である、
請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載の接着剤組成物を表面上に塗布し、その接着剤組成物を硬化させることを含む接合方法。
【請求項14】
金属アルコキシドとオキシムとの反応が以下の模式的な式:
M(OR)
y+XR’R’’C=NOH→M(OR)
y-x(ON=CR’R’’)
x+xROH
(ここで、
M(OR)
yは、金属アルコキシドを表し、
Rは、直鎖または分枝鎖のアルキル基またはアルケニル基を表し、
yは、三価金属に対しては3に等しく、四価金属に対しては4に等しく、
Mは、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、珪素、ハフニウム、バリウム、セリウムおよびアンチモンから選択される金属原子を表し、
R’R’’C=NOHは、式(V)または式(VI)のオキシムを表し、
xは、四価金属に対しては1~4の数であり、三価金属に対しては1~3の数である)
で表される、請求項1~10のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一種の架橋性シリル化(curable silylated)ポリマーと、少なくとも一種の金属触媒とを含む接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリル化ポリマー(silylated polymers)は種々の用途、例えば表面コーティングの結合のような全タイプの結合に有用な接着剤組成物、あるいは、密封膜の形成または自己粘着物品の製造で使用するのに有用な接着剤組成物で使用することができる。
【0003】
シリル化ポリマーは反応性シリル基と空気中の水分との反応によって室温でも架橋できる。このシリル化ポリマーの架橋は架橋性シリル化ポリマーに触媒を加えることで促進することができる。
【0004】
一般に、シリル化ポリマーの接着剤組成物に使用される硬化触媒はジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテートまたはジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)のような錫系触媒である
【0005】
しかし、これらの錫系触媒は毒性があるため、メーカーはその使用を避けるようになってきている。
【0006】
シリル化ポリマーの架橋のために錫を含まない(tin_free)触媒が開発されている。それらの中ではネオデカン酸ビスマスまたはオクタン酸亜鉛を挙げることができる。しかし、これらの触媒は錫系触媒より2~3倍効果が低い。そのため、錫系触媒を用いて得られたものと同等な架橋時間にするためにはオクタン酸亜鉛、ネオデカン酸ビスマス触媒を2~3倍以上導入する必要がある。
【0007】
架橋触媒は使用時にシリル化ポリマーの架橋速度を制御できるだけでなく、使用前の貯蔵中の接着剤組成物を安定させる必要もある。さらに、接着剤組成物を最適に使用するためには接着剤組成物は貯蔵中に架橋せず、塗布時に触媒が触媒として機能して大気中の水分の存在下でポリマーを確実に架橋させるだけの活性を有している必要がある。
【0008】
[特許文献1](米国特許出願第US2013/0096252号明細書)にはシリル化ポリマーと錫を含まないアミンまたは有機金属の架橋触媒とを含む組成物が開示されている。この特許には特にチタンブトキシド触媒が記載されている。シリル化ポリマーとチタンブトキシド触媒とを含む接着剤組成物は安定ではないため、貯蔵中、さらには接着剤組成物の使用前に、ポリマーが架橋してしまう。
【0009】
[特許文献2](米国特許出願第US2009/275702号明細書)にはシリル化ポリマーとチタン系硬化触媒を含む組成物が開示されている。この特許には特にチタンとアセチルアセトンとをベースにした触媒が記載されている。このタイプの触媒は長い架橋時間を必要とし、本発明の触媒を用いた場合の硬化時間よりも長い硬化時間を必要とする。
【0010】
[特許文献3](米国特許US4956435第号明細書)にはトリアルコキシシリルエチレン末端を有すポリオルガノシロキサンと、チタン触媒と、アルコキシシラン共触媒とを含み,必要に応じてオキシムを含む組成物が開示されている。アルコキシシラン共触媒が存在するので、この米国特許US4956435第号明細書には本発明で定義したオキシムと金属アルコキシドとを反応させて得られる予め単離された触媒の製造方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願第US2013/0096252号明細書
【文献】米国特許出願第US2009/275702号明細書
【文献】米国特許US4956435第号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、安定性、特に貯蔵安定性に優れ、しかも、満足のいく架橋時間を有する、錫を含まない、特にアルキル錫を含まない硬化性(架橋性)接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の対象は、少なくとも一種のシリル化ポリマー(A)と、少なくとも1種の触媒(B)とを含む接着剤組成物にあり、
上記の少なくとも一種のシリル化ポリマー(A)は少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの下記の式(I)の基を有し:
(ここで、
R
4は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルを表し、複数のR
4基が存在する場合にはそれらは互いに同一でも異なっていてもよく、
R
5は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルを表し、複数のR
5基が存在する場合にはそれらは互いに同一でも異なっていてもよく、2つのOR
5基が一つの同じ環に結合していしてもよく、
pは0,1または2の整数であり)
【0014】
上記の少なくとも1種の触媒(B)は、少なくとも1種の金属アルコキシドと、下記の式(V)のオキシムまたは式(VI)のオキシムから選択される少なくとも1種のオキシムとを反応させて得られる金属化合物から選択される:
【0015】
(ここで、
G1は水素原子または1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基であり、
G2は水素原子または1~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基、2~10個の炭素原子を有するアルケニル基、3~10個の炭素原子を有する環状アルキル基、アリール基または-N(G7G8)基から選択される基であり(ここで、G7およびG8は互いに独立して1~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基または2~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルケニル基またはベンジル基を表す)、
G3は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G4基および/またはG5基および/またはG6基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含むことができ、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキル基で置換されていてもよく、
G4は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G3基および/またはG5基および/またはG6基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含むことができ、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキル基で置換されていてもよく、
G3基またはG4基の少なくとも一つはG5基またはG6基の少なくとも一つと一緒に脂肪族環の残基を形成し、
G5は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G3基および/またはG4基および/またはG6基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含むことができ、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキル基で置換されていてもよく、
G6は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G3基および/またはG4基および/またはG5基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含むことができ、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキル基で置換されていてもよく、
G5基またはG6基の少なくとも一つはG3基またはG4基の少なくとも一つと一緒に脂肪族環の残基を形成する)
【0016】
本発明の一つの実施形態では、シリル化ポリマーは下記の式(II)、(III)、(IV)または(VII)の1つに対応する:
【0017】
(ここで、
R4、R5およびpは上記の式(I)と同じ意味を有し、
Pは飽和または不飽和の直鎖または分枝鎖のポリマーを表し、このポリマーは1つまたは複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、珪素を含んでいてもよく、好ましくは100g/モル~48600g/モル、特に300g/モル~12600g/モル、さらには500g/モル~18600g/モルのモル質量を有し、
P'はポリシロキサンを表し、好ましくは100g/モル~48600g/モル、特に300g/モル~18600g/モル、さらには500g/モル~12600g/モルのモル質量を有し、
R1は芳香族または直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族基にすることができる5~15個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、
R3は1~6個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の二価のアルキレン基を表し、
Xは-NH-、-NR7-または-S-から選択される二価の基を表し、
R7は1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、
fは1~6、好ましくは2~5、より好ましくは2~3の整数を表す)
【0018】
本発明の一つの実施形態では、金属アルコキシドは一般式:M(OR)yを有する。
(ここで、
Mは金属を表し、好ましくはチタン、ジルコニウム、アルミニウム、珪素、ハフニウム、バリウム、セリウムおよびアンチモンから選択され、
yは3または4であり
Rは1~5の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、好ましくは3~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表すか、2~5個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、好ましくは3~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルケニル基を有す)
【0019】
本発明の一つの実施形態では、オキシムは式(V)のオキシムで、その場合、
G1はメチル基またはエチル基を表し、
G2は水素または1~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表すか、フェニル基または-N(G7G8)基を表す(ここで、G7およびG8はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはベンジル(-CH2-C6H5)を表す)か、
オキシムが式(VI)のオキシムで、その場合、
G3およびG6はそれぞれ水素原子を表し、
G4およびG5は5~11個の炭素原子を有する脂肪族環を形成し、この脂肪族環は1つ以上のメチル、エチルおよび/またはプロピルで置換されていてもよく、この脂肪族環は酸素原子または窒素原子から選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、この窒素原子は水素原子に結合していない。
【0020】
本発明の一つの実施形態では、触媒(B)は下記(1)と(2)を反応させて得られる:
(1)以下の化合物::Ti(OiPr)
4、Ti(OnPR)
4、Ti(OnBu)
4、Zr(OiPr)
4、Zr(OnPR)
4、Zr(OnBu)
4から選択されるアルコキシド、
(2)式(V-1)のオキシムおよび式(VI-1)のオキシムから選択されるオキシム:
【0021】
(ここで、
G2はHまたはメチル、エチル、イソ-プロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、-N(CH2-C6H5)2であり、
G4およびG5は5~11個の炭素原子を有する飽和脂肪族環である)
【0022】
本発明の一つの実施形態では、接着剤組成物は触媒(B)を接着剤組成物の総重量に対して少なくとも0.05重量%、好ましくは0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、好ましく1~3重量%含む。
【0023】
本発明の一つの実施形態では、接着剤組成物はシリル化ポリマー(A)を接着剤組成物の総重量に対して少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%含む。
【0024】
本発明の一つの実施形態では、接着剤組成物は充填剤を接着剤組成物の総重量の80重量%以下、好ましくは20~70重量%、さらに好ましく30~60重量%含む。
【0025】
本発明の一つの実施形態では、接着剤組成物は、シリル化ポリマー(A)と触媒(B)は2つの別個の区画に包装されていることを特徴とする。
【0026】
本発明はさらに、下記(1)と(2):
(1)少なくとも1種の金属アルコキシド、
(2)少なくとも1種の式(V)のオキシムまたは式(VI)のオキシムから選択されるオキシム:
【0027】
(ここで、
G1は水素原子または1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基、
G2は水素原紙または1~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基、2~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルケニル基、3~10個の炭素原子を有する環状アルキル基、アリール基または-N(G7G8)基から選択され(ここで、G7およびG8は互いに独立して1~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基または2~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルケニル基またはベンジル基を表す)、
G3は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G4および/またはG5および/またはG6と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上の二重結合を含んでいてもよく、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基で置換されていてもよく、
G4は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G3および/またはG5および/またはG6と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上の二重結合を含んでいてもよく、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基で置換されていてもよく、
ただし、G3またはG4の少なくとも一つはG5またはG6の少なくとも一つと一緒に脂肪族環の残基を形成し、
G5は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G3および/またはG4および/またはG6と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上の二重結合を含んでいてもよく、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基で置換されていてもよく、
G6は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G3および/またはG4および/またはG5と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上の二重結合を含んでいてもよく、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基で置換されていてもよく、
ただし、G5またはG6の少なくとも一つはG3またはG4の少なくとも一つと一緒に脂肪族環の残基を形成する)
【0028】
とを反応させて得られる金属化合物の、少なくとも一つ、好ましくは少なくとも2つの下記の式(I)の基を有するシリル化ポリマーの硬化触媒としての使用にも関するものである:
(ここで、
R
4は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルを表し、複数基R
4が存在する場合にはそれらは互いにに同一でも異なっていてもよく、
R
5は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを表し、複数基R
5が存在する場合にはそれらは互いにに同一でも異なっていてもよく、2つのOR
5基は同じ環に属していてもよく、
pは0,1または2の整数である)
【0029】
本発明はさらに、本発明の接着剤組成物を表面上に塗布し、次いで接着剤組成物を硬化(架橋)する接合方法にも関するものである。
【0030】
本発明の接着剤組成物は一成分の形にすることもできる。
【0031】
本発明の接着剤組成物は錫を含まない。
【0032】
本発明の接着剤組成物は貯蔵中安定である。接着剤組成物の安定性は2つの側面すなわち(1)シリル化ポリマーは貯蔵中に架橋しないか、貯蔵中にほとんど架橋せず且つ(2)アルコキシド誘導体の触媒が安定であるという側面を有している。
【0033】
触媒は本発明による接着剤組成物中で接着剤組成物の貯蔵中に安定である。
【0034】
本発明の接着剤組成物の硬化時間は改善され、特に、硬化時間は一般に過剰なものではない。
【0035】
さらに、接着剤組成物の硬化時間は金属触媒の金属/オキシムのモル比で調整することができる。想定される用途に応じて、比較的長い架橋時間にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】触媒の量を関数とする互いに異なる触媒のシリル化ポリマーを架橋する効率(架橋速度の定量化)を示すグラフ。
【
図2】触媒の量を関数とする互いに異なる触媒の他のシリル化ポリマーを架橋する効率(架橋速度の定量化)を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は下記の(A)と(B)とを含む接着剤組成物に関するものである:
(A)少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの下記の式(I)の基を有する少なくとも一種のシリル化ポリマー:
(ここで、
R
4は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルを表し、複数のR
4基が存在する場合には互いに同一でも異なっていてもよく、
R
5は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを表し、複数のR
5が存在する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、2つのOR
5基は同じ環に属していてもよく、
pは0,1または2、好ましくは0または1に等しい整数である)
【0038】
(B)下記の(1)と(2)とを反応させて得られる有機金属化合物から選択される少なくとも一種の触媒:
(1)少なくとも1種の金属アルコキシド、
(2)少なくとも1個の式(V)のオキシムから選択オキシムまたは式(VI)のオキシム:
【0039】
(ここで、
G1は水素原子または1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、
G2は水素原子または1~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基、2~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルケニル基、3~10個の炭素原子を有する環式アルキル基、アリール基または-N(G7G8)から選択される基で、G7およびG8は互いに独立して1~10個の炭素を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基、2~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルケニル基またはベンジル基を表し、
G3は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G4および/またはG5および/またはG6基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含むことができ、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキル基によって置換されていてもよく、
G4は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G3および/またはG5および/またはG6基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含むことができ、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキル基によって置換されていてもよく、
ただし、G3またはG4基の少なくとも一つはG5またはG6基の少なくとも一つと一緒に脂肪族環の残基を形成し、
G5は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G3および/またはG4および/またはG6基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含むことができ、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキル基によって置換されていてもよく、
G6は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G3および/またはG4および/またはG5基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つまたは複数のヘテロ原子および/または1つまたは複数の二重結合を含むことができ、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つまたは複数のアルキル基によって置換されていてもよく、
ただし、G5またはG6基の少なくとも一つはG3またはG4基の少なくとも一つと一緒に脂肪族環の残基を形成する)
【0040】
本発明で「接着剤組成物」という用語はパテ組成物または表面コーティング組成物も意味する。
【0041】
本発明の組成物は水分の存在下または加湿後に架橋することができる。
【0042】
シリル化ポリマー(A)
本発明でシリル化ポリマーとは少なくとも一つのアルコキシシラン基を含むポリマーを意味する。この少なくとも一つのアルコキシシラン基を有するシリル化ポリマーは少なくとも一つ、好ましくは少なくとも2つの下記の式(I)の基を含むポリマーであるのが好ましい:
(ここで、
R
4は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルを表し、複数のR
4基が存在する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、
R
5は1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを表し、複数のR
5基が存在する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、2つのOR
5基は同じ環に属していてもよく、
pは0、1または2に等しい整数、好ましくは0または1である)
【0043】
上記定義のシリル化ポリマーは少なくとも一つの架橋可能なアルコキシシリル基を含む。この架橋可能なアルコキシシリル基は上記ポリマーの末端に位置しているのが好ましいが、ポリマー鎖の中間に位置しているものを除外するものではない。シリル化ポリマーは接着剤組成物を塗布する前に架橋しない。この接着剤組成物はその架橋を可能にする条件下で塗布される。
【0044】
シリル化ポリマー(A)は一般にある程度粘性のある液体の形をしている。上記シリル化ポリマーは10~200ポイズの範囲、好ましくは20~175ポイズの範囲の粘度を有しているのが好ましい。この粘度は例えばブルックフィールド法(スピンドルS28)を用いて23℃および50%相対湿度で測定される。
【0045】
シリル化ポリマー(A)は式(I)の基を2つ含むが好ましが、式(I)の基を3~6個含むこともできる。
【0046】
シリル化ポリマー(A)は500~50,000g/モル、好ましくは700~20,000g/モルの平均分子量を有するのが好ましい。ポリマーの分子量は当業者に周知の方法、例えばNMRおよびポリスチレン標準を使用したサイズ排除クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0047】
本発明の一の実施形態では、シリル化ポリマー(A)は下記の式(II)、(III)または(IV)のいずれかに対応する:
【0048】
(ここで、
R4、R5およびpは式(I)と同じ意味を有し、
Pは飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖のポリマーを表し、このポリマーは1つまたは複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、珪素を含んでいてもよく、モル質量は100g/モル~48600g/モル、より好ましくは300g/モル~18600g/モル、さらには500g/モル~12600g/モルであるのが好ましく、
R1は5~15個の炭素原子を有する芳香族または脂肪族の直鎖、分岐鎖または環状の二価の炭化水素基を表し、
R3は1~6個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の二価のアルキレン基を表し、
Xは-NH-、-NR7-または-S-から選択される二価の基を表し、
R7は1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを表し、
fは1~6、好ましくは2~5、より好ましくは2~3の整数である)
【0049】
式(II)、(III)および/または(IV)において、Pはポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリウレタンポリアクリレート、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエーテル/ポリエステルブロックポリウレタンから選択されるポリマー基を表すのが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0050】
例えば、[特許文献4](欧州特許第EP2468783号公報)にはPがポリウレタンブロック/ポリエステル/ポリエーテルであるポリマー基を表す式(II)のシリル化ポリマーを開示している。
【文献】欧州特許外EP2468783号公報
【0051】
本発明の一の実施形態では、シリル化ポリマーはシリル化ポリウレタン、シリル化ポリエーテルおよびそれらの混合物から選択される。
【0052】
本発明の特定実施形態では、シリル化ポリマーは下記の式(ΙΙ')(ΙΙΙ')または(IV')の1つに対応する:
【0053】
式(ΙΙ')(ΙΙΙ')または(IV')において、
R1、R3、R4、R5、X、R7およびpは式(II)、(III)および(IV)と同じ意味を有し、
R2は不飽和または飽和の直鎖または分岐鎖の二価炭化水素基を表し、この基は必要に応じて1つまたは複数のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄、珪素を含むことができ、モル質量は100g/モル~48600g/モル、好ましくは300g/モル~18600g/モル、より好ましくは500g/モル~12600g/モルであり、
nは0以上の整数、好ましくは1~10である。
【0054】
上記定義の式(ΙΙ')(ΙΙΙ')または(IV')のシリル化ポリマーにおいて、R2が1つまたは複数のヘテロ原子を含む場合、その1つまたは複数のヘテロ原子は鎖末端には存在しない。換言すれば、二価のR2基のフリーな原子価は各炭素原子に由来するシリル化ポリマーの隣接する酸素原子に連結している。従って、R2基の主鎖の両端は炭素原子で終わり、この炭素原子はフリーな原子価を有する。
【0055】
本発明の一つの実施形態では、シリル化ポリマー(A)はポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリシロキサンポリオール、ポリオレフィンポリオールおよびこれらの混合物から選択されるポリオールから得られ、好ましくはポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリレートジオール、シロキサンジオール、ポリオレフィンジオールおよびこれらの混合物から選択されるジオールから得られる。上記式(ΙΙ')(ΙΙΙ')または(IV')のシリル化ポリマーの場合には、ジオールは、式HO-R2-OHで表すことができる。ここで、R2-は式(ΙΙ')(ΙΙΙ')または(IV')と同じ意味を有する。
【0056】
式(ΙΙ')(ΙΙΙ')または(IV')で表されるR
2タイプの基の中では2つのフリーな原子価を有する下記の二価の基を挙げることができる:
【0057】
(ここで、
qはR2基の分子量が100g/モル~48600g/モル、好ましくは300g/モル~18600g/モル、より好ましくは500g/モル~12600g/モルとなるような整数を表し、
r、sおよびtはゼロであるか、R2基の分子量が100g/モル~48600g/モル、好ましくは300g/モル~18600g/モル、より好ましく500g/モル~12600g/モルとなるような整数を表し、r+s+tの和はゼロではなく、
Q1は飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖の芳香族または脂肪族のニ価アルキレン基を表し、好ましくは炭素数1~18、より好ましくは炭素数1~8であり、
Q2は2~36個の炭素原子、より好ましくは1~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の二価のアルキレン基を表し、
Q3、Q4、Q5、Q6、Q7およびQ8は互いに独立して水素原子またはアルキル、アルケニルまたは芳香族の基であり、好ましくは1~12個の炭素原子、好ましくは2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を有する)
【0058】
本発明の一つの実施形態では、R
1は2つのフリーな原子価を有する以下の二価の基の1つから選択される:
【0059】
式(II)または(II')のポリマーは[特許文献5](欧州特許第EP2336208号公報)および[特許文献6](国際公開第2009/106699号公報)に記載の方法で得ることができる。
【文献】欧州特許第EP2336208号公報
【文献】国際公開第2009/106699号公報
【0060】
異なる種類のポリオールを使用する場合には当業者はこれら2つの文献に記載の製造方法を適応することができる。式(II)に対応するポリマーの中では下記を挙げることができる:
1)GENIOSILョSTP-E10(Wacker社から入手可能):ジメトキシ型の2つの基(I)を有するポリエーテル(n=0、p=1、R4およびR5はメチル基を表す)(数平均モル質量=8889g/モル、R3はメチル基)
2)GENIOSIL(登録商標)STP-E30(Wacker社から入手可能):ジメトキシ型の2つの基(I)を有するポリエーテル(n=0、p=1、R4およびR5はメチル基を表す)(数平均モル質量=14493g/モル、R3はメチル基)
3)SPUR+(登録商標)1050MMM(Momentive社から入手可能):2つのトリメトキシ型の基(I)を有するポリウレタン(nはゼロではなく、p=0、R5はメチル基を表す)(数平均分子量=16393g/モル、R3はn-プロピル基)
4)SPUR+(登録商標)Y-19116(Momentive社から入手可能):2つのトリメトキシ型の基(I)を有するポリウレタン(nはゼロではなく、R5はメチル基を表す)(数平均分子量=15000~17000g/モル、R3はn-プロピル基)
5)DESMOSEAL(登録商標)S XP2636(Bayer社から入手可能)):2つのトリメトキシ型の基(I)を有するポリウレタン(nはゼロではなく、R5はメチル基を表す)(数平均分子量=15038g/モル、R3はn-プロピル基)
【0061】
式(III)または(III')のポリマーは例えば[特許文献6](欧州特許第EP1829928号公報)に記載の方法に従ってポリエーテル ジアリルエーテルのヒドロシリル化で得ることができる。
【文献】欧州特許第EP1829928号公報
【0062】
式(III)に対応するポリマーの中では下記を挙げることができる:
1)SAX(登録商標)ョMS350ポリマー(カネカから入手可能):2つのジメトキシ型の基(I)を有するポリエーテル(p=1、R4はメチル基を表す)(数平均分子量=14000~の16000ダルトの範囲)
2)SAX(登録商標)MS260ポリマー(カネカから入手可能):2つのジメトキシ型の基(I)を有するポリエーテル(p=1、R4およびR5はメチル基を表す)(数平均分子量=16000~18000g/モル、R3はエチル基)
【0063】
式(IV)または(IV')のポリマーは例えばポリオールとジイソシアネートとを反応させ、次いでアミノシランまたはメルカプトシランと反応させて得られる。式(IV)または(IV')のポリマーを調製する方法は[特許文献7](欧州特許第EP2583988号公報)に記載されている。
【文献】欧州特許第EP2583988号公報
【0064】
異なるタイプの用途の場合には、当業者は上記文献に記載の製造方法を適応させることができる。
【0065】
本発明の好ましい実施形態では、接着剤組成物は少なくとも1種のシリル化式(II)および/または(II')のポリマーまたは少なくとも一種の式(III)および/または(III')のシリル化ポリマーを含む。
【0066】
本発明の一つの実施形態では、接着剤組成物は少なくとも2つの異なるシリル化ポリマー(A)の混合物を含む。異なる「シリル化ポリマー」とは分子量または構造のいずれかが異なる2つのポリマーを意味する。
【0067】
すなわち、本発明の接着剤組成物は式(II)の少なくとも2つの異なるポリマーの混合物、式(III)の少なくとも2種のポリマーの混合物または式(IV)の少なくとも2種のポリマーの混合物を含むことができる。さらに、本発明接着剤組成物は式(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも2種のポリマーの混合物を含むことができる。
【0068】
本発明の一つの実施形態では、本発明の接着剤組成物に使用されるシリル化ポリマー(A)が式(VII)に対応する:
(ここで、
P'はポリシロキサンを表し、そのモル質量は100g/モル~48600g/モル、好ましくは500g/モル~12600g/モル、より好ましくは300g/モル~18600g/モルであるのが好ましく、fは1~6、好ましくは2~5、より好ましくは2~3の整数であり、R
4、R
5およびpは式(I)と同じ意味を有する)
【0069】
本発明の特定実施形態では、本発明のシリル化ポリマー(A)はポリシロキサン型の珪素ポリマーとは異なり、特に、P'がポリシロキサンである上記式(VII)のポリマーとは異なる。
【0070】
本発明の一つの実施形態では、接着剤組成物の全てのシリル化ポリマーが上記定義の式(II)、(III)または(IV)から選択され、好ましくは上記定義の式(II')、(III')または(IV')から選択される。
【0071】
式(II)、(III)および(IV)のポリマーまたは式(II')、(III')および(IV')のポリマーは例えば木材に対する接着性が良好であるので、式(VII)のポリマーより好ましい。
【0072】
シリル化ポリマー(A)は接着剤組成物の総重量に対して少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%存在するのが好ましい。一般に、接着剤組成物中のシリル化ポリマー含有量は接着剤組成物の総重量に対して90重量%以下、好ましくは80重量%以下、好ましくは70重量%以下、有利には60重量%以下である。
【0073】
接着剤組成物中のシリル化ポリマー(A)の量は接着剤組成物の用途に依存する。パテ(シーラント)組成物の場合のシリル化ポリマーの量は接着剤組成物の総重量に対して5~50重量%、好ましくは10~40重量%である。感圧接着材(PSA)用の接着剤組成物の場合には、シリル化ポリマーの量は接着剤組成物の総重量に対して10~99.9重量%、好ましくは15~90重量%、より好ましくは20~80重量%である。
【0074】
架橋触媒(B)
触媒(B)はシリル化ポリマー(A)の架橋のためのものである。本発明で定義の触媒(B)は安定、特に接着剤組成物の貯蔵中に安定である。従って、接着剤組成物の貯蔵中、ポリマー(A)は架橋可能(非架橋)な形をしている。シリル化ポリマー(A)の架橋は接着剤組成物を表面上に塗布して結合を得る時またはコーティングまたはシールを形成する時に行われる。
本発明で使用する触媒(B)は下記の(1)と2)とを反応させて得られる金属化合物である:
(1)少なくとも1種の金属アルコキシド、
(2)式(V)のオキシムまたは式(VI)のオキシムから選択される少なくとも1種のオキシム:
【0075】
(ここで、
G1は水素原子または1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基、
G2は水素原子または1~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基、2~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルケニル基、3~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の環式アルキル基、アリール基または-N(G7G8)から選択される基(ここで、G7およびG8は互いに独立して1~10個の炭素を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基、2~10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルケニル基またはベンジル基を表す)
G3は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基であるか、G4および/またはG5および/またはG6基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上の二重結合を含んでいてもよく、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換されていてもよく、
G4は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G3および/またはG5および/またはG6基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上の二重結合を含んでいてもよく、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換されていてもよく、
ただし、G3またはG4の少なくとも一つはG5またはG6の少なくとも一つと一緒に脂肪族環の残基を形成し、
G5は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G3および/またはG4および/またはG6基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上の二重結合を含んでいてもよく、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換されていてもよく、
G6は水素原子または1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表すか、G3および/またはG4および/またはG5基と一緒に4~14個の炭素原子を有する脂肪族環の残基を形成し、この脂肪族環は1つ以上のヘテロ原子および/または1つ以上の二重結合を含んでいてもよく、この脂肪族環は1~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換されていてもよく、
ただし、G5またはG6の少なくとも一つはG3またはG4の少なくとも一つと一緒に脂肪族環の残基を形成する)
【0076】
本発明の触媒(B)の構造は例えばX線回折により決定できる。
金属アルコキシドとオキシムとの反応は以下の模式的な式で表すことができると考えられる:
M(OR)y+XR'R''C=NOH→M(OR)y-x(ON=C'R'')x+xROH
(ここで、
M(OR)yは金属アルコキシドを表し、yは三価金属に対しては3に等しく、四価金属に対しては4に等しく、
R'R''C=NOはオキシムを表し、
xは四価金属に対しては1~4の数、三価金属に対しては1~3の数である)
【0077】
特定の理論に縛られる物ではないが、少なくとも一つの「MON」型の結合(Mは金属原子、Oは酸素原子、Nは窒素原子を表す)を含む化合物は、架橋性シリル化ポリマーを含む組成物に(安定性を維持したまま)優れた触媒特性を示すということを発明者達は見出した。
【0078】
本発明の範囲内で「アルキル」基は飽和炭化水素鎖を意味し、1つまたは複数のヘテロ原子を含んでいてもよい。本発明で定義した「アルキル」基は炭素原子と水素のみから構成されているのが好ましい。
【0079】
本発明で「脂肪族環」という用語は芳香族ではない環(リング)を意味する。
【0080】
本発明の「ヘテロ原子」という用語は酸素、窒素、硫黄または珪素から選択される原子を意味し、好ましくは酸素、窒素、硫黄から選択される。
【0081】
金属アルコキシドは例えば式M(OR)yにすることができる。ここで、
Mは金属原子を表し、好ましくはチタン、ジルコニウム、アルミニウム、珪素、ハフニウム、バリウム、セリウムまたはアンチモンから選ばれる。
yは3または4に等しい(三価金属に対してはy3に等しく、は四価金属に対してはyは4である)
Rはアルキル基またはアルケニル基を表し、好ましくは1~5個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、好ましくは3~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す
【0082】
従って、金属アルコキシドは例えばチタン、ジルコニウム、アルミニウム、珪素、ハフニウム、バリウム、セリウムまたはアンチモンのアルコキシドから選択することができる。
【0083】
本発明の一つの実施形態では、金属アルコキシドはチタンアルコキシドおよびジルコニウムアルコキシドから選択される。チタンまたはジルコニウムアルコキシドは以下の化合物:Ti(OiPr)4、Ti(OnPR)4、Ti(OnBu)4、Zr(OiPr)4、Zr(OnPR)4、Zr(OnBu)4から選択するのが好ましい、ここで、
「iPr」はイソプロピル基(-CH(CH3)2)を表し、
「nPR」はn-プロピル基(-CH2CH2CH3)を表し、
「nBu」はn-ブチル基(-CH2-CH2-CH2-CH3)を表す。
【0084】
本発明の特定実施形態では、アルコキシドはチタンアルコキシドであり、好ましくはTi(OiPr)4、Ti(ONPR)4、Ti(OnBu)4、より好ましくはTi(OnBu)4である。
【0085】
本発明の一つの実施形態では、式(V)中のG'はメチルまたはエチル基であるのが好ましく、好ましくはメチル基である。
【0086】
本発明の一つの実施形態では、式(V)中のG2は水素または1~8個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基またはフェニル基または基-N(G7G8)であるのが好ましい。ここで、G7およびG8はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはベンジル(-CH2-C6H5)であるのが好ましく、より好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはベンジルである。
【0087】
式(VI)のオキシムは単環式または多環式二することができ、単環式であるのが好ましイ。
例えば、(VI)の多環式オキシムの場、G3がG5またはG6と一緒に環を形成する場合、または、G4がG5またはG6と一緒に環を形成する場合、または、G3とG4(およびG5
とG6)が同じ環に属する場合、オキシムは三環式構造、例えばアダマンタンまたはノルボルネンタイプの構造になる。
【0088】
本発明の一つの実施形態では、式(VI)において、
G3およびG6がそれぞれ水素であるのが好ましく、および/または、
G4およびG5が4~14個の炭素原子、好ましくは5~11個の炭素原子、好ましくは6個の炭素原子を有する飽和した脂肪族環を形成するのが好ましく、この脂肪族環は1つまたは複数のメチル、エチルおよび/またはプロピル基によって置換されていてもよく、この脂肪族環は酸素原子、硫黄原子または窒素原子から選択され1つまたは複数のヘテロ原子を含んでいてもよく、窒素原子は水素に結合していない。
【0089】
式(VI)のオキシムの例にはシクロヘキサノンオキシム、シクロドデカノンオキシムが含まれる。
【0090】
本発明の特定実施形態では、触媒(B)は下記の反応で得られる:
(1)Ti(OiPr)
4、Ti(OnPr)
4、Tiの(OnBu)
4、Zr(OiPr)
4、Zr(OnPr)
4、Zr(OnBu)
4から選択アルコキシド、
(2)式(V-1)のオキシムおよび式(VI-1)のオキシムから選択されるオキシム:
【0091】
(ここで、
G2はHまたはメチル、エチル、イソ-プロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、-N(CH2-C6H5)2、
-G4とG5は5~11個の炭素原子を有する飽和脂肪族環を形成する)
【0092】
本発明の特定実施形態では、触媒(B)は、下の触媒から選択される:
(1)式Ti(OnBu)
4のアルコキシドと2-ブタノンオキシムとの反応生成物、
(2)式Ti(OnBu)
4のアルコキシドと4-メチル-2-ペンタノンオキシムとの反応生成物4、
(3)式Ti(OnBu)
4のアルコキシドとシクロヘキサノンオキシムとの反応の生成物
(4)式Ti(OnPr)
4のアルコキシドと3-(ジベンジルアミノ)-2-プロパノンオキシムとの反応の生成物
(5)式Zr(OnPr)
4のアルコキシドとシクロヘキサノンオキシムとの反応の生成物。
【0093】
本発明の一つの実施形態では、触媒(B)はアルコキシド:オキシムとのモル比を1:1~1:4、好ましくは1:2~1:4にしたアルコキシドとオキシムとの反応によって得られる。この本実施形態は四価金属の(金属アルコキシド)の場合に特に好ましい。価の金属の場合にはアルコキシド:オキシムのモル比を1:1~1:3、好ましく1:2~1:3手ある。
【0094】
触媒(B)は接着剤組成物の総重量の少なくとも0.05重量%、好ましく、0.1~10重量%、好ましくは0.05~5重量%%にする。
【0095】
接着剤組成物中の触媒の量は意図する用途に応じて硬化時間を調節するために変えることができる。すなわち、「急速硬化」として知られる接着剤組成物の場合には硬化時間を短くし、「低速硬化」と呼ばれる接着剤組成物では硬化時間を長くするのが好ましいであろう。
【0096】
本発明の接着剤組成物は少なくとも2つの異なる触媒(B)の混合物、特に、金属の種類が異なり、アルコキシドの種類および/またはオキシムの種類が異なる混合物にすることができる。
【0097】
触媒(B)はオキシムとアルコキシドとを単純に混合して得ることができる。
【0098】
アルコキシドは大気圧(約1バール)、で室温(約23℃)でオキシムと混合するのが好ましい。
【0099】
本発明の触媒(B)の製造中に溶媒を添加して、オキシムおよびアルコキシドを溶解させることができる。このような溶媒例えばR-OH型のアルコール基を含まない極性溶媒がある(Rは炭化水素基)。溶媒は例えばテトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、メチルエチルケトンから選択手きる。
【0100】
当然ながら、反応は反応を邪魔したり、変更させたり、競合する他の試薬が存在しない状態下で金属アルコキシドとオキシムとが反応するように注意し、望ましくない生成物を生成する、または、例えばアルコキシシラン化合物の存在下で行った場合のように、本発明の有利な特性を示さないことにつながる可能性のある追加の試薬の使用を避けることが必要である。実際、[特許文献3](米国特許US4956435第号明細書)に記載のようなアルコキシシラン化合物の存在下ではオキシムのヒドロキシル基によってアルコキシシランのアルコキシ基がトランスアルタキシル反応が起こる。このように、本発明の接着剤組成物、特に触媒は上記特許に記載の接着剤組成物、触媒とは異なっている。
【0101】
本発明による接着剤組成物はフリーな(遊離)オキシムを実質的に含まず、好ましくは完全に含まない。「フリーな(遊離)オキシム」という用語は式(V)または(VI)の化合物のような本発明に記載のオキシム化合物を意味する。
【0102】
アルコキシドおよびオキシムは市場で入手できる。触媒(B)の調製方法の例は実験の部に記載されている。
【0103】
他の添加剤(C)
本発明の接着剤組成物は他の(複数の)添加剤(C)を含むことができる。
「他の添加物」という用語は上記定義のシリル化ポリマー(A)または触媒(B)ではない添加剤を意味する。
他の添加剤には充填剤、接着促進剤、可塑剤、レオロジー剤、水分吸収剤、UV安定剤、熱安定剤、共触媒(本発明で定義の触媒(B)とは異なるもの)が含まれる。
【0104】
本発明の接着剤組成物は、触媒(B)とは異なる少なくとも一種の共触媒(英語で「架橋剤」)をさらに含むことができる。共触媒は1つまたは複数の加水分解性基を有するシリケートから選択でき、好ましくは、共触媒はテトラエチルオルトシリケートである。共触媒を使用することでケースによっては架橋度を向上させることができる
【0105】
本発明の接着剤組成物は充填剤を含むことができ、充填剤は無機充填剤、有機充填剤または無機と有機充填剤の混合物にすることができる。
【0106】
無機充填剤は炭酸カルシウム、カルシウム、ポリカーボネート、水酸化アルミニウム、タルク、カオリン、カーボンブラック、シリカ、ヒュームドシリカ、石英、ガラスビーズから選択できる。
【0107】
有機充填剤はポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、スチレン-ブタジエン樹脂または粉末形態の他の任意の有機ポリマーから選択できる。
【0108】
充填剤の粒径は0.010から20μm、好ましくは0.020~15μm、好ましくは0.030~5μmの範囲が好ましい。
【0109】
接着剤組成物中に存在する充填剤は組成物中で異なる機能、例えばレオロジー剤の機能をすることがある。
【0110】
充填剤は接着剤組成物の総重量に対して80重量%以下、好ましくは30~60重量%、より好ましくは20~70重量%にすることができる。
【0111】
所望用途によっては添加剤を接着剤組成物のレオロジーを調整するために加えることもできる。例えば、降伏点を増加させる添加剤(レオロジー剤)を添加して、特に、接着剤組成物を受ける層が平坦でない場合の接着剤組成物の塗布時のランニングを避けることができる。
【0112】
レオロジー剤は接着剤組成物の総重量に対して0.01~8重量%、好ましくは0.1~5重量%、好ましくは0.05~6重量%にすることができる。
【0113】
可塑剤は例えば安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸のエステル、イタコン酸またはクエン酸またはポリエステル、ポリエーテル、鉱物炭化水素油誘導体から選択することができる。フタル酸誘導体の中ではフタル酸エステルは、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルベンジルフタレートを挙げることができる。可塑剤が存在する場合、フタレート、セバケート、アジペートおよびベンゾエートから選択するのが好ましい。
【0114】
可塑剤は、ポリマーと相溶性でなければならず、接着剤組成物中でデミックスしてはならない。可塑剤は組成物の可塑性(伸び)が増加させ、その粘度を低下させる。
【0115】
可塑剤は、組成物中に存在する場合、その含有量は接着剤組成物の総重量に対して5重量%以下、好ましくは3重量%以下にするのが好ましい。可塑剤が存在する場合、それは接着剤組成物の総重量に対して0.1~5重量%、好ましくは0.5~3%にする。
【0116】
水分吸収剤は、それが存在する場合、MOMENTIVEから入手可能なSILQUEST(登録商標)A171のようなビニルトリメトキシシラン(VTMO)、WACKERから入手可能なGENIOSIL(登録商標)GF56のようなビニルトリエトキシシラン(VTEO)、WACKERから入手可能なGENIOSIL(登録商標)XL70のようなアルコキシアリールシランからから選択することができる。
【0117】
水分吸収剤は、接着剤組成物中存在する水を中和することに加えて、接着剤組成物が用途に対してはあまりにも急速に架橋する場合に、添加物を介して、接着剤組成物の架橋速度をわずかに早くする。
【0118】
水分吸収剤が組成物中に存在する場合、その含有量は接着剤組成物の総重量に対して3重量%以下、好ましくは2重量%以下が好ましい。水分吸収剤が組成物中に存在する場合、その含有量は接着剤組成物の総重量に対して0.5~3重量%、好ましくは1~2重量%にする。水分吸収剤が大量に存在する場合、接着剤組成物の硬化時間が長くなる可能性がある。
【0119】
ポリマーの分解(遅延または防止)を防止し、UVまたは熱に対する衝撃耐性を良くするためにUV安定剤および熱安定剤を添加することができる。例としてはBASFから入手可能なTINUVIN(登録商標)123、TINUVIN(登録商標)326またはIRGANOX(登録商標)245が挙げられる。
【0120】
接着促進剤の例はアミノシランである。特に、アミノシランはシリル化ポリマー(II)または(ΙΓ)または(IV)または(IV)の架橋性を向上させることができる。式(III)または(ΙΙΙ')ののシリル化ポリマー場合には接着剤組成物がアミノシランを含まないのが好ましい。
【0121】
接着剤組成物
本発明の特定実施形態では、接着剤組成物はシリル化ポリマーとして上記の式(II)または(IV)のシリル化ポリマーと下記から選択される触媒としての少なくとも一つの化合物とを含む:
1)式Ti(OnBu)
4のアルコキシドとブタノンオキシムと反応生成物、
2)式Ti(OnBu)
4のアルコキシドと4-メチル-2-ペンタノンオキシムとの反応の生成物、
3)式Ti(OnPr)
4のアルコキシドと3-(ジベンジルアミノ)-2-プロパノンオキシムとの反応の生成物、
4)式Zr(OnPr)のアルコキシドとシクロヘキサノンオキシムとの反応の生成物、
【0122】
本発明の別の特定実施形態では、接着剤組成物はシリル化ポリマーとしての上記の式(III)のシリル化ポリマーと、下記から選択される触媒としての少なくとも一種の化合物とを含む:
1)式Ti(OnBu)
4のアルコキシドとブタノンオキシムとの反応生成物、
2)式Ti(OnBu)
4のアルコキシドと4-メチル-2-ペンタノンオキシムとの反応生成物、
3)式のTi(ONPR)
4のアルコキシドと3-(ジベンジルアミノ)-2-プロパノンオキシムとの反応生成物:
【0123】
本発明の一つの実施形態では、接着剤組成物は接着剤組成物の総重量に対して
5~90重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは15~60重量%の少なくとも一種のシリル化ポリマー(A)と、
0.05~10%重量、好ましくは0、1~10重量%、より好ましくは0、1~5重量%の少なくとも1種の触媒(B)と、
から成る。
【0124】
本発明の一つの実施形態では、接着剤組成物は接着剤組成物の総重量に対して
5~90重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは15~60重量%の少なくとも一種のシリル化ポリマー(A)と、
0.05~10%重量、好ましくは0、1~10重量%、より好ましくは0、1~5重量%の少なくとも1種の触媒(B)と、
0.05~10%重量、好ましくは0、1~10重量%、より好ましくは0、1~5重量%の少なくとも1種の共触媒と
から成る。
【0125】
本発明の一つの実施形態では、接着剤組成物は接着剤組成物の総重量に対して
5~90重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは15~60重量%の少なくとも一種のシリル化ポリマー(A)と、
0.05~10%重量、好ましくは0、1~10重量%、より好ましくは0、1~5重量%の少なくとも1種の触媒(B)と、
0.10~80%重量、好ましくは20~70重量%、より好ましくは30~60重量%の少なくとも1種の充填剤と
から成る。
【0126】
本発明の一つの実施形態では、接着剤組成物は接着剤組成物の総重量に対して
1)5~90量で%、好ましくは10~80重量%、より好ましくは15~70重量%の少なくとも一種のシリル化ポリマー(A)と、
2)0.05~10重量%、好ましくは、で0.1~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%の少なくとも1種の触媒(B)と、
3)10~80重量%、好ましくは20~70重量%、より好ましくは30~60重量%の少なくとも1種の充填剤と、
4)0.05~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.5~10重量%の共触媒、接着促進剤、プロモーター、可塑剤、水分吸収剤、レオロジー剤、UV安定剤および熱安定剤から選択される少なくとも1種の添加剤と、
から成る。
【0127】
本発明の接着剤組成物はビンガムモデルの従来のレオメーターを用いて23℃で測定した粘度が10,000~100,000センチポイズの範囲であるのが好ましい。
【0128】
本発明の接着剤組成物はパッケージされ、湿気から密封されたカートリッジ内に保存されるのが好ましい。
【0129】
本発明の一つの実施形態では、本発明の接着剤組成物はシリル重合体(A)と触媒(B)とが2つの別々のコンパートメントにパッケージされた二成分の形をしている。この実施形態では、触媒(B)を含む区画は水を含んでいてもよく、好ましくは接着剤組成物の総重量に対して0.1重量%~10重量%の範囲の水を含んでいてもよい。
【0130】
接着剤組成物は使用前、例えば支持体上に塗布する前には架橋されない。本発明の接着剤組成物は架橋を可能にする条件下で塗布される。接着剤組成物が架橋すると、上記のシリル化ポリマーのポリマー鎖間に大気中の水分の作用下にシロキサン結合が形成され、ポリマーネットワークが形成される。
【0131】
本発明の接着剤組成物はシリル化ポリマー(A)と触媒(B)とを10℃~40℃の範囲の温度、20~55%(+/-5%)の範囲の相対湿度で混合することで調製できる。接着剤組成物中に充填剤が存在する場合には、触媒(B)はシリル化ポリマーと充填剤の混合後の第2工程で加えるのが好ましい。他の任意成分の添加物は通常の慣行に従って導入される。
【0132】
本発明の接着剤組成物は、少なくとも2つの別個の区画と本発明接着剤組成物とを有するキットに包装することができる。
【0133】
このキットは、水を含むことができ、この場合には水とシリル化ポリマーとは2つの別個の区画に収納される。
【0134】
このキットでは、本発明の接着剤組成物はシリル重合体(A)と触媒(B)を2つの別々のコンパートメントにパッケージした二成分形にすることができる。この実施形態では、キットはさらに、触媒(B)を含む区画または第3の区画内に水を収容することができる。水が触媒(B)を収容した区画中に存在する場合の水は本発明の接着剤組成物の総重量に対して0.1~10重量%にすることができる。
【0135】
別の実施形態では、本発明のキットは接着剤組成物を一つの区画に収容し、水を第2区画内に収容した単一成分にすることもできる。この実施形態では、例えば第2区画はポリオールの水溶液を含むことができる。
んでもよいです。
【0136】
この場合には、接着剤組成物の塗布中に、本発明キットの各区画の成分が混合されてシリル化ポリマーが架橋される。
【0137】
本発明はさらに、下記の(1)と(2):
(1)少なくとも1種の金属アルコキシド、
(2)式(V)のオキシムまたは式(VI)のオキシムから選択される少なくとも1種のオキシム:
(ここで、G
1、G
2、G
3、G
4、G
5およびG
6は本発明で定義のもの)
とを反応させて得られる有機金属化合物の、下記の式(I):
(ここで、R
4、R
5およびpは本発明で定義のもの)
の基を少なくとも一つ好ましくは少なくとも2つ有するシリル化ポリマーの架橋触媒としての使用にも関するものである。
【0138】
使用の一つの実施形態では、
1)触媒は接着剤組成物について上記で定義したもの(触媒(B))、特に、触媒(B)は接着剤組成物の上記の特徴の一つ又は複数を有するものにすることができ、および/または
2)シリル化ポリマーは接着剤組成物)について上で定義したもの(シリル化ポリマー(A))、特に、シリルポリマー(A)は接着剤組成物の上記特徴の一つ又は複数を有するものにすることができる。
【0139】
本発明はさらに、本発明の接着剤組成物を表面上に塗布し、架橋させることを含む接着剤組成物の接合方法にも関するものである。
【0140】
接着剤組成物の架橋は水分、特に大気中の水分によって促進される。
本発明の接着剤組成物は全てのタイプに表面、例えばコンクリート、タイル、金属、ガラス、木材、プラスチック上に塗布することができる。
【実施例】
【0141】
実施例1
接着剤組成物の調製
1.1.材料
以下の成分を使用した:
シリル化ポリマー(A):
ポリマーAl:
GENIOSIL(登録商標)STP-E10(ワッカーから入手可能)、二つのグループ(I)ジメトキシ型の(MI = 0を含む式(II)のポリエーテル、pは1であり、R = 4およびR 5が表しますR特徴8889g/モルの数平均分子量を有するメチル基)3がメチルでありします。
ポリマーA2:
SAXョ260(カネカから入手可能)、2つの基を含む、式(III)のポリエーテルは、(I)ジメトキシタイプ(1に等しいP、R 4およびR 5がメチル基を表す)の質量を有しますR請求16000~18000g/モル/モルの平均モル数、3はエチルです。
ポリマーA3:
SAXョ015(カネカから入手可能)式のポリエーテル(III)5000および7000g/モルの間のモル質量を有する2つのグループ(I)ジメトキシタイプを含みます。
【0142】
その他の添加剤(C):
充填材Cl
(ミネラル・テクノロジーズから入手可能なチョークCalofortョSV)が500nm以下の粒子サイズを有する沈降炭酸カルシウム
充填材C2:
炭酸カルシウムayant 1.7μιηのD50%、
充填材C3:
炭酸カルシウムayant 2.5μιηのD50%、
可塑剤C4:
ビニルトリメトキシシラン(VTMO)のタイプ:異性体アルコール10個の炭素原子、
乾燥剤C5:
フタル酸エステル類。
【0143】
金属アルコキシド:
Zr
IV
(OnPR)
イソプロパノール中に70重量%で希釈したものがTyzor(登録商標)NPZの商品名でSigma Aldrich社またはDorf Ketal社から入手可能。
Zr(OiPr)
4
無溶媒の固体としてSigma Aldrich社から入手可能。
Zr
IV
(OnBu)
4
ブタノール中に80%に希釈したものがTyzor(登録商標)NBZの商品名でSigma Aldrich社またはDorf Ketal社から入手可能。
Ti
IV
(OnPR)
4
98%純粋な形(特定溶媒を含まない)でSigma Aldrich社から入手可能。
Ti
IV
(OiPr)
4
97%純粋な形(特定溶媒を含まない)でSigma Aldrich社から入手可能。
Ti
IV
(OnBu)
4
97%純粋な形で商品名Tyzor(登録商標)TnBTの商品名でSigma Aldrich社またはDorf Ketal社から入手可能。
【0144】
1.2 オキシム配位子の調製
1.2.1 以下のプロトコールに従ったケトン(MIBK、アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、シクロヘキサノン等)またはアルデヒド(サリチルアルデヒド)からオキシムリガンドの取得
水酸化ナトリウム(100ミリモル、4G)を蒸留水(10mL)に加え、ケトンまたはアルデヒド(80ミリモル)を加えた。混合物を0℃に冷却した後、ヒドロキシルアミンヒドロキシルクロリド(100ミリモル、6.95グラム)を蒸留水に溶解した溶液を撹拌しながらゆっくりと添加した。一晩放置後、水相と有機相とを分離した。水相を除去し、有機相(目的の生成物を含む)を蒸留水(2×20mL)で洗浄した。有機相を真空下で一晩乾燥させ、ケトン(MIBK、アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、シクロヘキサノン等)またはアルデヒド(サリチルアルデヒド)からオキシムリガンドを得た。
【0145】
1.2.2 TACO(クロロアセトンオキシムのトリエチルアミン付加物)塩からのオキシムリガンドの調製
1.2.2.1 TACO塩の調製:
ヒドロキシルアミン塩酸塩(182ミリモル、12.65グラム)を蒸留水(80mL)加え、ジエチルエーテル(200mL)に溶解したクロロアセトンの溶液(165.4ミリモル、13.63mL)を加えた。得られた混合物を0℃に冷却し、炭酸カリウム(91ミリモル、12.57グラム)を攪拌しながらゆっくりと添加してガスを放出させた。2時間後、水相と有機相を分離し、水相をジエチルエーテル(60mL)で抽出した。有機相にアセトニトリル(60mL)に希釈したトリエチルアミン(172ミリモル、24mL)を滴下し、混合物を30分間撹拌して白色の沈殿物を得た。固体を濾過し、冷たいアセトニトリル(120mL)で洗浄した。沈殿物の第二回目の濾過を行い、得られた固体をアセトニトリル(3x40mL)で洗浄した。得られた固形物を合わせ、一晩真空下で乾燥して白色粉末(34.42グラム)のTACO塩を得た。
【0146】
1.2.2.2 TACO塩からオキシムの調製:
商業的な第二級アミン(ジベンジルアミン-6ミリモル)をフラスコに入れ、TACO(6.6ミリモル)とアセトニトリル(80mL)とを順次添加し
た。混合物を85℃で6時間撹拌した。冷却後、アセトニトリルを蒸発させ、酢酸エチルを残留TACOを沈殿させ、アンモニウム塩を形成する(30 mL)を添加した。混合物を濾過し、酢酸エチル(2×14mL)で洗浄した。有機相を回収し、合わせ、蒸発させてTACOからオキシムを得た。
【0147】
1.3.触媒の説明
下記の[表1]に示すアルコキシド:オキシムモル比で金属アルコキシドとオキシム(モノオキシム)とを混合して、いくつかの触媒を調製した。[表1]ではオキシムの形成に使用した前駆体(ケトンまたは塩)の名前でオキシムを指名した。
触媒は以下のようにして調製した。
1mLチューブ中に100mLの溶媒(THF、メチルエチルケトンまたは酢酸エチル)中のオキシムリガンド(4.5.10-4モル(アルコキシド:オキシム比1:1)~1,8.10-3モル(アルコキシド:オキシム比1:4)を導入し、5分間攪拌した。同じチューブ中にジルコニウムとチタンのアルコキシド(4.5.10-4モル)をベースにした金属前駆体を加え、室温(25℃)で1時間混合した。
【0148】
金属アルコキシドとオキシムとの反応の極めて概略的な表現は下記である:
M(OR)4+xR'R''C=NOH→M(OR)4-x(ON=CR''R')X+xROH
(ここで、
M(OR)4は試験した金属アルコキシドを表し、R'R''C=NOHは試験したオキシムを表し、xは1~4までの数である)
【0149】
【0150】
下記の他の比較触媒も試験した:
参照1:デブチル錫ジラウレート(DBTDL)
参照2:ZrIV(OnPr)4
参照3:ZrIV(OiPr)4
参照4:ZrIV(OnBu)4
参照5:チタンIV(OnPr)4
参照6:チタンIV(OiPr)4
参照7:チタンIV(OnBu)4
参照8:2-ブタノンオキシム
参照9:シクロヘキサノンオキシム
参照10:TACOオキシム
参照l1:チタンIV(ONPR)4:サリチルアルデヒドオキシム(モル比1:2)
参照12:チタンIV(ONPR)4:サリチルアルデヒドオキシム(モル比1:4)
【0151】
オキシム(参照8~参照10)は、上記(1.2.1項)のプロトコールに従って調製されたもの。参照11と参照12の触媒は上記(1.3項)のプロトコールに従って調製した。
【0152】
実施例2
シリル化ポリマー(Al)を含む接着剤組成物を用いた試験
シリル化ポリマーのAl(GENIOSIL(登録商標)STPE-10)と種々の触媒とを含む複数の接着剤組成物を調製し、評価した。
各接着剤組成物で触媒のモル量は4.5×10-4モルである。従って、触媒の量は各触媒のモル質量とポリマーAlの重量に応じて調整した。
【0153】
各テストの実験プロトコール:
THF、メチルエチルケトン、酢酸エチル(100μ?)型の溶媒に溶かした触媒(4.5.10-4モル)を1mlのチューブに入れる。混合物を室温(23℃)で1時間撹拌した。ポリマーA1(10グラム)をプラスチック容器(直径50mm、高さ30mm)に入れる。このプラスチック容器に触媒を入れ、ポリマーAlと1分間混合した。その後、以下に記載されるプロトコールに従って時間架橋を測定した。
【0154】
硬化時間の測定試験
架橋時間(またはスキニング時間(skinning time)ともいう)はプローブを1時間の間は5分毎に、その後の4時間の間は30分毎に表面に触れる(周囲条件、湿度55%、23℃)。表面に触れたときに接着剤組成物がプローブに移った場合は非架橋とした。
【0155】
安定性試験
接着剤組成物を上記と同じ実験プロトコールに従って調製するが、グローブボックス(湿気なし)中で調製した。プラスチック容器を7日または1ヶ月間グローブボックス内で放置してから周囲条件(相対湿度55%、23℃)に戻して、硬化時間を測定した。
結果は以下で示される。
【0156】
「2」は接着剤組成物が非常に安定していることを示す(保存-7日間または1ヶ月-後の架橋時間が接着剤組成物の調製後に測定した架橋時間と同じ)
「1」は接着剤組成物が安定していることを示す(保存-7日間または1ヶ月-後の架橋時間が接着剤組成物の調製後に測定した架橋時間とは異なるが、気馬手それに近い)
「0」は接着剤組成物が安定していないことを示す(保存-7日間または1ヶ月-後の架橋時間が接着剤組成物の調製後に測定した架橋時間と大きく異なる)
架橋時間と安定性を[表2]および[表3]に示す。
【0157】
【0158】
【0159】
比較例の参照8と参照12は全く架橋しないため安定性は評価していない。
【0160】
[表3]はチタンまたはジルコニウムをベースにしたアルコキシド触媒(リガンドオキシムなし)では接着剤組成物が安定ではないことを示している。実際、参照2~参照7の組成物でも中心の架橋を示す。[表3]はさらに、オキシムリガンドをベースにした触媒(チタンまたはジルコニウムのアルコキシドを含まない)を含む接着剤組成物は架橋しないことを示している。
【0161】
それとは対照的に、[表2]は本発明によるチタンまたはジルコニウムアルコキシドとオキシムとをベースにした触媒を含む接着剤組成物は優れた安定性と十分な架橋時間の両方を示している。
【0162】
従って、これらの実施例は、金属アルコキシドとオキシムから得られた本発明の触媒は金属アルコキシド単独(オキシムを含まない)より優れた、または、同じ安定性を示し、および/または、対応する金属アルコキシド(オキシムなし)を用いて得られたものと同程度、さらにはより速い架橋速度にすることができることを示している。
【0163】
実施例3
シリル化ポリマールミニウム(Al)と沈降炭酸カルシウム型充填剤(CL)とを含む接着剤組成物での試験
シリル化ポリマーAl(GENIOSIL(登録商標)STPE-10)と、炭酸カルシウムCl、種々の触媒とを含むいくつかの接着剤組成物を調製し、評価した。各接着剤組成物中の触媒のモル量は4.5×10-4モルにした。従って、触媒の量は各触媒のモル質量と、ポリマーAlおよび充填剤Clの重量に応じて調整した。
【0164】
各テストのための実験プロトコール:
THF、メチルエチルケトン、酢酸エチル型の溶媒(100μl)に溶かした触媒(4.5.10-4モル)を1mlのチューブにいれる。混合物を室温(23℃)で1時間撹拌した。ポリマーAl(5g)と重点剤C1(5g)とをプラスチック容器(直径50mm、高さ30mm)に導入し、高速ミキサーを用いて1800回転/分で1分間混合した。このプラスチック容器に触媒を導入し、混合物(ポリマー/充填材)と1分間混合した。その後、実施例2に記載したプロトコールに従って硬化時間を測定した。
【0165】
ビニルトリメトキシシラン(VTMO)型の水分吸収剤を添加して充填剤Cl中に存在する水を中和した。充填剤Cl中に存在する水の量はカールフィッシャー法で測定し、VTMOの量を調整して水のみを中立にして架橋速度を遅くさせない。VTMOの量は0~2,000質量ppmで変化する。
安定性は実施例2と同様に評価した。
架橋時間と安定性を[表4]と[表5]に示す。
【0166】
【0167】
【0168】
[表5はリガンドオキシム触媒(金属アルコキシドを含まない)を含む接着剤組成物は架橋しないことを示している。
それとは対照的に、[表4]は本発明の接着剤組成物すなわちチタンまたはジルコニウムアルコキシドとオキシムをベースにした本発明の触媒を含む接着剤組成物は満足のいく架橋時間、特定の触媒では1~2分程度の架橋時間を示し、その接着剤組成物は安定であることを示している。
【0169】
実施例4
シリル化ポリマー(A2)を含む接着剤組成物でのテスト
シリル化ポリマーA2(SAX(登録商標)260)と種々の触媒とを含む接着剤組成物を調製し、評価した。
各接着剤組成物中の触媒のモル量は9.5×10-5モルにした。従って、触媒量は各触媒のモル質量とのポリマーA2の重量に応じて調整した。
【0170】
各テストの実験プロトコール:
THF、メチルエチルケトン、酢酸エチル型の溶媒(100μl)に溶かした触媒(9,5.10-5モル)を1mlのチューブに入れた。混合物を室温(23℃)で1時間攪拌した。ポリマーA2(10グラム)はプラスチック容器(直径50mm、高さ30mm)に入れた。触媒をこのプラスチック容器に入れ、ポリマーA2と1分間混合した。次いで、実施例2に記載のプロトコールに従って時間架橋を測定下。
安定性は実施例2に記載のプロトコルに従って評価した。
架橋時間と安定性を[表6]と[表7]に示す。
【0171】
【0172】
【0173】
ポリマーA2(一般に上記の式(III)のポリマー)にチタンまたはジルコニウムアルコキシドをベースにした触媒(オキシムリガンドなし)を混合した接着剤組成物は安定しないことが分かる。本発明者達は、式(III)のポリマーの存在下ではアルコキシドのみからなる触媒はそれ自体と反応できることを観察したが、ポリマーA2のような式(III)のポリマーとチタンまたはジルコニウムアルコキシドからなる触媒と含む接着剤組成物は貯蔵後に触媒自体が不安定性のために正しく架橋できない。
【0174】
[表7]はさらに、オキシムリガンドをベースにした触媒(金属アルコキシドを含まない)を含む接着剤組成物も架橋しないことを示している。
それと対照的に、[表6]は本発明のチタンまたはジルコニウムアルコキシドをベースにした触媒とオキシムとを含む本発明の接着剤組成物は良好な安定性と満足な架橋時間の両方を示している。シリル化ポリマータイプA2(難架橋性)の場合の架橋時間は24時間または48時間程度である。
【0175】
実施例5:
2つのシリル化ポリマー(A2、A3)と添加剤(充填剤C2、C3、可塑剤C4、C5、乾燥剤)を含む配合物を用いた試験
このホーミュレーション(配合物)は12重量%のシリル化ポリマーA2(SAX(登録商標)260)と、4重量%の第2シリル化ポリマーA3(SAX(登録商標)015)と、28重量%の充填材C2と、40重量%の充填剤C3と、15重量%の可塑剤C4と、0.8重量%の乾燥剤C5とを含む。
上記の各配合物に所定モル量(9.5×10-5モル)の触媒を加えた。各触媒の量は触媒の種類に応じて変えた。触媒量は触媒のモル質量と配合物の量に応じて調整した。
【0176】
各テストのための実験プロトコール:
THF、メチルエチルケトン、酢酸エチル型の溶媒(100μl)に溶かした
触媒(9,5.10-5モル)を1mlのチューブに入れた。混合物を室温(23℃)で1時間攪拌した。10gのポリマーA1およびA2と、添加剤C2、C3、C4およびC5とを含む配合物をプラスチック容器(直径50mm、高さ30mm)に導入した。このプラスチック容器中に触媒を導入し、スピードミキサーを用いて1800回転/分で1分間、配合物(ポリマー+添加剤)と混合した。次いで実施例2に記載したプロトコールに従って架橋時間を測定した。
安定性は実施例2に記載のプロトコールに従って評価下。
架橋時間および安定性を[表8]および[表9]に示す。
【0177】
【0178】
【0179】
[表9]はオキシムリガンドをベースにした触媒(チタンまたはジルコニウムのアルコキシドを含まない)を含む接着剤組成物は架橋しないことを示している。
それとは対照的に、[表8]はチタンまたはジルコニウムアルコキシドとオキシムをベースにした触媒を含む本発明の接着剤組成物は優れた安定性と十分な架橋時間の両方を示している。
【0180】
実施例6:
触媒の量の変更
触媒量を接着剤組成物の総重量に対して0.05重量%~5重量%に変化させてさらに試験を行った。
6.1
シリル化ポリマール(GENIOSIL(登録商標)STP-E10)と0.05~5重量%の触媒を含む接着剤組成物
試験した触媒は上記の実施例1に従って調製したものである。
[
図1]は触媒の量(接着剤組成物中の重量%)を関数とする架橋効率(分
-1)(架橋時間の逆数)を示す。
[
図1]に示す各曲線は試験した種々の触媒を表す。
[
図1]が示すように、本発明の触媒は先行技術の触媒([
図1]では従来技術の触媒は参照DBTDL)に比べて低濃度(1重量%以下)で有効である。さらに、本発明の触媒は1~5重量%の範囲のレベルで従来触媒よりもより効率的である。
【0181】
6.2
シリル化ポリマーA2(SAX(登録商標)260と0.05~5重量%の触媒を含む接着剤組成物
試験した触媒は実施例1に従って調製されたものである。
[
図2]は触媒の量(接着剤組成物中の重量%)を関数とする架橋効率(時
-1)(架橋時間の逆数)の結果を示す。
[
図2]の曲線は試験した種々の触媒を表す。
[
図2]に示すように、本発明の触媒は先行技術の触媒([
図1]の参照DBTDL)に比べて低濃度(0.5重量%以下)で効果的である。さらに、本発明の触媒は0.5~5重量%の範囲のレベルで先行技術の触媒に比べてはるかに高い架橋速度を示す。