(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】セグメント組立装置およびシールド掘進機
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
E21D11/40 B
(21)【出願番号】P 2019057742
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】521478094
【氏名又は名称】地中空間開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】花岡 泰治
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-171498(JP,A)
【文献】特開2018-123583(JP,A)
【文献】実公昭48-020921(JP,Y1)
【文献】特開2004-339802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘進方向と直交する断面が非円形形状のトンネルの内周面に環状のセグメントリングを組み立てるセグメント組立装置であって、
セグメントの把持部と、
掘進方向に略直交する方向に延びる第1回動中心軸周りに回動可能なアーム支持部と、
前記把持部と前記アーム支持部とを接続し、掘進方向から見て、前記第1回動中心軸に対して非対称に配置されるアーム部とを備え、
前記アーム部は、前記第1回動中心軸周りに前記アーム支持部が回動することによって、掘進方向から見て、前記第1回動中心軸の中心軸線により2つに分けられる領域の一方側から他方側に反転移動するように構成されている、セグメント組立装置。
【請求項2】
前記アーム支持部は、掘進方向に延びる第2回動中心軸周りに回動可能なように構成されている、請求項1に記載のセグメント組立装置。
【請求項3】
前記第2回動中心軸は、前記第1回動中心軸および前記アーム支持部を支持しており、
掘進方向と略直交する方向に、前記第2回動中心軸を移動させる第2回動中心軸移動機構をさらに備える、請求項2に記載のセグメント組立装置。
【請求項4】
前記把持部は、前記第1回動中心軸の中心軸線上に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のセグメント組立装置。
【請求項5】
前記アーム部は、前記第1回動中心軸周りに前記アーム支持部が回動することによって、前記アーム支持部の掘進方向側とは反対側である後方側を通過して、前記中心軸線により2つに分けられる領域の他方側に移動するように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のセグメント組立装置。
【請求項6】
掘進方向と直交する断面が非円形形状のトンネルの内周面に環状のセグメントリングを組み立てるセグメント組立装置を備えるシールド掘進機であって、
土砂を掘削するカッタヘッドと、掘削に伴う土砂を輸送する排土装置と含む掘進機本体部と、
前記掘進機本体部に取り付けられる前記セグメント組立装置とを備え、
前記セグメント組立装置は、
セグメントの把持部と、
掘進方向に略直交する方向に延びる回動中心軸周りに回動可能なアーム支持部と、
前記把持部と前記アーム支持部とを接続し、掘進方向から見て、前記回動中心軸に対して非対称に配置されるアーム部とを含み、
前記アーム部は、前記回動中心軸周りに前記アーム支持部が回動することによって、掘進方向から見て、前記回動中心軸の中心軸線により2つに分けられる領域の一方側から他方側に反転移動するように構成されている、シールド掘進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメント組立装置およびシールド掘進機に関し、特に、非円形形状のトンネルの内周面にセグメントリングを組み立てるセグメント組立装置およびシールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非円形形状のトンネルの内周面にセグメントリングを組み立てるセグメント組立装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、非円形形状のトンネルの内周面にセグメントリングを組み立てる覆工体組立装置が開示されている。覆工体組立装置は、掘進方向から見て、装置本体の一方側および他方側の両側においてセグメントを組み立てるための一対の把持装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のシールド掘進機では、掘進方向から見て、装置本体の両側に把持装置を備えていることから、セグメント組立装置が大型化しており、セグメントを円滑に移動させるための空間を十分に確保できないという不都合がある。このため、セグメントを把持して移動させる際に、セグメントと他の構成(セグメント組立装置自体、トンネルの内周面など)との干渉を回避する必要があり、効率的に作業を行うことができないという問題点がある。このような問題点は、特に縦横比が大きく、狭隘な内部空間を有する非円形形状のトンネルで顕在化する。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、非円形断面のトンネルにおいて効率的にセグメントを組み立てることが可能なセグメント組立装置およびシールド掘進機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明のセグメント組立装置は、掘進方向と直交する断面が非円形形状のトンネルの内周面に環状のセグメントリングを組み立てるセグメント組立装置であって、セグメントの把持部と、掘進方向に略直交する方向に延びる第1回動中心軸周りに回動可能なアーム支持部と、把持部とアーム支持部とを接続し、掘進方向から見て、第1回動中心軸に対して非対称に配置されるアーム部とを備え、アーム部は、第1回動中心軸周りにアーム支持部が回動することによって、掘進方向から見て、第1回動中心軸の中心軸線により2つに分けられる領域の一方側から他方側に反転移動するように構成されている。
【0008】
この発明のセグメント組立装置では、上記のように、第1回動中心軸に対して非対称に配置(第1回動中心軸の中心軸線の一方側に配置)されるアーム部を設けることにより、従来のようにアーム支持部の両側に把持部を設ける場合と比較して、セグメント組立装置を小型化することができるので、非円形断面のトンネルにおいても、セグメントを円滑に移動させるための空間を十分に確保することができる。また、掘進方向に略直交する方向に延びる第1回動中心軸周りにアーム支持部を回動させて、アーム部を、第1回動中心軸の中心軸線により2つに分けられる領域の一方側から他方側に反転移動させることにより、トンネルの内周面に沿ってセグメントを移動させるのではなく(掘進方向に延びる中心軸線周りにセグメントを回動させるのではなく)、トンネルの前後方向の空間を利用して(通過させるようにして)セグメントを一方側から他方側に反転移動させることができる。その結果、非円形断面のトンネルにおいても、少なくともセグメントとトンネルの内周面との干渉を抑制することができる。以上により、非円形断面のトンネルにおいて効率的にセグメントを組み立てることができる。
【0009】
上記セグメント組立装置において、好ましくは、アーム支持部は、掘進方向に延びる第2回動中心軸周りに回動可能なように構成されている。このように構成すれば、把持部(セグメント)を、掘進方向に直交する面内においても回動により移動させることができるので、より柔軟にセグメントを移動させることができる。その結果、非円形断面のトンネルにおいてより効率的にセグメントを組み立てることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、第2回動中心軸は、第1回動中心軸およびアーム支持部を支持しており、掘進方向と略直交する方向に、第2回動中心軸を移動させる第2回動中心軸移動機構をさらに備える。このように構成すれば、第2回動中心軸と、第2回動中心軸に支持される第1回動中心軸およびアーム支持部とを、掘進方向と略直交する方向に一体的に移動させることができる。その結果、非円形断面のトンネルにおいて一層効率的にセグメントを組み立てることができる。
【0011】
上記セグメント組立装置において、好ましくは、把持部は、第1回動中心軸の中心軸線上に配置されている。このように構成すれば、アーム部が反転移動する際(第1回動中心軸周りにアーム支持部が回動する際)に、把持部の位置が大きく変動するのを抑制することができる。その結果、把持部に把持されたセグメントの位置が大きく変動するのを抑制することができるので、非円形断面のトンネルにおいても、セグメントが他の構成に干渉するのを抑制することができる。
【0012】
上記セグメント組立装置において、好ましくは、アーム部は、第1回動中心軸周りにアーム支持部が回動することによって、アーム支持部の掘進方向側とは反対側である後方側を通過して、中心軸線により2つに分けられる領域の他方側に移動するように構成されている。このように構成すれば、アーム部を、前後方向のうち比較的空いた空間があるセグメント供給側である後方側を通過させることができる。その結果、アーム部が他の構成と干渉するのを抑制することができる。
【0013】
この発明のシールド掘進機は、掘進方向と直交する断面が非円形形状のトンネルの内周面に環状のセグメントリングを組み立てるセグメント組立装置を備えるシールド掘進機であって、土砂を掘削するカッタヘッドと、掘削に伴う土砂を輸送する排土装置と含む掘進機本体部と、掘進機本体部に取り付けられるセグメント組立装置とを備え、セグメント組立装置は、セグメントの把持部と、掘進方向に略直交する方向に延びる回動中心軸周りに回動可能なアーム支持部と、把持部とアーム支持部とを接続し、掘進方向から見て、回動中心軸に対して非対称に配置されるアーム部とを含み、アーム部は、回動中心軸周りにアーム支持部が回動することによって、掘進方向から見て、回動中心軸の中心軸線により2つに分けられる領域の一方側から他方側に反転移動するように構成されている。
【0014】
この発明のシールド掘進機では、上記のように構成することによって、上記セグメント組立装置と同様に、非円形断面のトンネルにおいて効率的にセグメントを組み立てることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように、非円形断面のトンネルにおいて効率的にセグメントを組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態によるシールド掘進機の縦断面図である。
【
図2】実施形態によるセグメント組立装置の模式的な分解斜視図である。
【
図3】実施形態によるセグメント組立装置の模式的な斜視図である。
【
図4】
図3に示したセグメント組立装置のアーム部を反転移動させた状態を示した図である。
【
図5】実施形態によるセグメント組立装置の背面図である。
【
図6】
図5の500-500線に沿った断面図である。
【
図7】
図6の510-510線に沿った断面図である。
【
図8】実施形態によるセグメント組立装置の把持部を拡大して示した背面図である。
【
図9】実施形態によるセグメント組立装置のアーム部の反転移動を伴わないセグメントの組立動作について説明するための図である。
【
図10】実施形態によるセグメント組立装置のアーム部の反転移動を伴うセグメントの組立動作について説明するための図である。
【
図11】変形例によるセグメント組立装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
[実施形態]
図1~
図10を参照して、本発明の一実施形態によるシールド掘進機100について説明する。
【0019】
(シールド掘進機の全体構成)
図1に示すように、シールド掘進機100は、掘削面を構成するカッタヘッド11を有する掘進機本体部1と、掘進に伴う土砂または泥水を輸送する排土装置Hと、トンネル内面にセグメントSGを組み立てるセグメント組立装置2とを備えている。
【0020】
掘進機本体部1は、カッタヘッド11と、カッタヘッド11によって掘削された土砂が貯留されるチャンバ12と、セグメントSGを押圧して掘進機本体部1を推進させるシールドジャッキ13と、胴体14と、隔壁15とを含んでいる。
【0021】
排土装置Hは、チャンバ12内の土砂を排出する上流側スクリュコンベアH1と、上流側スクリュコンベアH1に下流側(後方側)から接続される下流側スクリュコンベアH2とを含んでいる。下流側スクリュコンベアH2は、セグメント組立装置2の下方側の有効空間に配置されている。
【0022】
本実施形態では、シールド掘進機100が、泥土圧式のシールド掘進機である例を示している。泥土圧式のシールド掘進機100では、カッタヘッド11により掘削された土砂と注入された作泥材とがチャンバ12内で混合され、掘削土砂が不透水性と塑性流動性とを持つ泥土に変換される。掘削土砂(泥土)は、チャンバ12内および上流側スクリュコンベアH1内に充満する。シールド掘進機100は、シールドジャッキ13によって推進することによって、掘削した土砂をチャンバ12内に充満させて加圧し、地山側の圧力(土圧および地下水圧)に対抗させる。シールド掘進機100は、掘進量と排土量とのバランスによって圧力の平衡を図りながら掘進方向(X1方向)に前進する。上流側スクリュコンベアH1から排出される土砂は、下流側スクリュコンベアH2を介して後方(X2方向)に輸送される。
【0023】
なお、各図において、前後方向をX方向で示し、掘進方向(前方)をX1方向で示し、後方をX2方向で示す。また、上下方向をZ方向で示し、上方をZ1方向で示し、下方をZ2方向で示す。また、前後方向および上下方向に直交する左右(横)方向をY方向で示す。また、Y方向のうち、坑内を掘進方向に沿って見た場合(後方側から前方側を見た場合)の右方向をY1方向で示し、左方向をY2方向で示す。また、以下では、特に断らない限り、「断面」とは前後方向(X方向)と略直交する断面Cを意味する。
【0024】
胴体14は、前胴部14aおよび後胴部14bから構成されている。前胴部14aは、推進力が付与されてカッタヘッド11により地山の掘進を行う部分であり、後胴部14bは、前胴部14aに伴って、トンネルのリング状の周壁部分を構成するセグメントSGを配列しながら進行する部分である。
【0025】
ここで、
図5に示すように、本実施形態のシールド掘進機100は、異形断面を有するシールド掘進機である。すなわち、掘進機本体部1は、X方向と直交する断面Cが非円形形状を有する。
図5では、概して、上下方向に縦長の楕円形断面を有するトンネルを掘進する掘進機本体部1の例を示している。
図5の例では、セグメント組立装置2は、楕円形断面のトンネル内面に合わせて、セグメントSGを楕円形のリング状に組み立てる。なお、非円形形状は、楕円形状に限られず、オーバル形状(角丸長方形)または長方形状(矩形状)や、六角形状などの多角形状であってもよい。
図5では、セグメントリングを10個のセグメントSGにより構成している例を示しているが、1つのセグメントリングをいくつのセグメントSGで構成してもよい。
【0026】
図1に戻り、カッタヘッド11は、図示しない駆動源によって、掘進方向の回転軸回りに回転駆動される。カッタヘッド11によって削られた掘削土は、図示しない貫通孔を通ってカッタヘッド11の内部のチャンバ12に進入する。チャンバ12は、カッタヘッド11、前胴部14aおよび隔壁15によって囲まれた空間(作泥土室)である。
【0027】
シールドジャッキ13は、複数(
図1では1つのみ図示)設けられており、胴体14の周方向に沿って配列されている。各シールドジャッキ13は、掘進方向に向けて、組み立てられたセグメントSGと対向するように設置されている。掘進機本体部1は、シールドジャッキ13を伸長させて既設のセグメントSGを掘進方向後方(X2方向)に押圧することにより、掘進方向への推進力(反作用力)を発生させる。
【0028】
上流側スクリュコンベアH1は、チャンバ12に接続され、チャンバ12内の土砂を排出するように構成されている。上流側スクリュコンベアH1は、一端で開口する取込口H1aが隔壁15を貫通してチャンバ12内に露出し、他端側の排出口H1bが隔壁15よりも後方側に設けられている。上流側スクリュコンベアH1は、チャンバ12内の土砂を排出してチャンバ12内の圧力を調整する機能を有する。上流側スクリュコンベアH1の排出口H1bには、下流側(後方側)から下流側スクリュコンベアH2が接続されている。すなわち、上流側スクリュコンベアH1から排出される土砂は、そのまま下流側スクリュコンベアH2に供給される。
【0029】
ここで、掘進機本体部1に外部から電力や制御信号などの配線類や作泥材・油圧装置用の作動油などの配管類Ca(以下、配線類・配管類Caと記す)、および、排土装置Hは、セグメント組立装置2との接触を回避するために、セグメント組立装置2の下方側の有効空間に配置されている。本実施形態において、接触とは、配線類・配管類Caまたは排土装置Hが、セグメント組立装置2に物理的に触れることを意味する。なお、下流側スクリュコンベアH2によりセグメント組立装置2の後方(X2方向)に運ばれた土砂は、ベルトコンベアBにより抗外に搬送される。
【0030】
(セグメント組立装置の構成)
図1に示すように、セグメント組立装置2は、上流側スクリュコンベアH1の後方(前胴部14aの後端近傍)(X2方向)に配置されている。セグメント組立装置2は、掘進方向(X1方向)と直交する断面Cが非円形形状(異形形状)のトンネルの内周面に環状のセグメントリングを組み立てるように構成されている。セグメント組立装置2は、掘進機本体部1内の断面C(
図5参照)でセグメントSGの把持部80を移動させて、セグメントSGを組み立てるように構成されている。
【0031】
図2に示すように、セグメント組立装置2は、セグメント組立装置2の全体を支える一対のガイド支柱10と、ガイド支柱10に沿って上下方向(Z方向)に移動する昇降ベース20と、昇降ベース20に対して左右方向(Y方向)に移動する横行ベース30と、横行ベース30に支持される第2回動中心軸40と、第1回動中心軸50と、アーム支持部60と、単一のアーム部70と、セグメントSG(
図1参照)の把持部80とを備えている。なお、第1回動中心軸50は、特許請求の範囲の「回動中心軸」の一例である。
【0032】
なお、セグメント組立装置2の上記各構成を掘進機本体部1(
図1参照)に支持される側から順に記載すると、一対のガイド支柱10、昇降ベース20、横行ベース30、第2回動中心軸40、第1回動中心軸50、アーム支持部60、アーム部70、把持部80となる。
【0033】
また、
図1に示すように、セグメント組立装置2は、第2回動中心軸移動機構M0と、旋回用駆動源M1と、反転用駆動源M2と、直進用駆動源M3とをさらに備えている。
【0034】
第2回動中心軸移動機構M0は、第2回動中心軸40を掘進方向(X1方向)と略直交する方向に移動させるように構成されている。旋回用駆動源M1は、第2回動中心軸40を第2回動中心軸40の中心軸線α周りに回動(旋回)させるように構成されている。反転用駆動源M2は、アーム支持部60を第1回動中心軸50(中心軸線β)周りに回動させて、アーム部70を反転移動させるように構成されている。直進用駆動源M3は、アーム部70を直進(進退)移動(
図1では上下方向に移動)させるように構成されている。
【0035】
以下では、セグメント組立装置2の動作について説明した上で、セグメント組立装置2の各構成の詳細について説明する。
【0036】
〈セグメント組立装置の動作〉
図3および
図4を参照して、セグメント組立装置2の動作について簡単に説明する。なお、
図3および
図4(
図2も同様)では、セグメント組立装置2を模式的に示しており、セグメント組立装置2の各構成を簡略化するとともに、駆動源などの一部構成を省略している。
【0037】
図3および
図4に示すように、セグメント組立装置2は、矢印S1~S5の方向に動作可能に構成されている。以下、説明する。
【0038】
一対のガイド支柱10は、上下方向に延びており、セグメント組立装置2の全体を支える基礎となる部分である。一対のガイド支柱10は、掘進機本体部1に対して内周側から固定されている。
【0039】
昇降ベース20は、一対のガイド支柱10に沿って上下方向(Z方向)(矢印S1で示す方向)に移動可能なように構成されている。横行ベース30は、昇降ベース20に支持されており、昇降ベース20に対して左右方向(Y方向)(矢印S2で示す方向)に移動可能なように構成されている。
【0040】
第2回動中心軸40は、掘進方向(X1方向)に延びており、横行ベース30に支持されている。第2回動中心軸40は、横行ベース30に対して第2回動中心軸40の中心軸線α周り(矢印S3で示す方向)に回動可能なように支持されている。第2回動中心軸40は、第1回動中心軸50、アーム支持部60、アーム部70および把持部80を支持している。
【0041】
第1回動中心軸50は、掘進方向(X1方向)に略直交する方向に延びており、第2回動中心軸40に直接支持されている。なお、本実施形態では、第1回動中心軸50を第2回動中心軸40と別体の構成として説明するが、第1回動中心軸50は、第2回動中心軸40と一体的に構成されてもよい。
【0042】
アーム支持部60は、掘進方向(X1方向)に略直交する方向に延びる第1回動中心軸50(第1回動中心軸50の中心軸線β)周り(矢印S4で示す方向)に回動可能なように構成されている。
【0043】
アーム部70は、把持部80とアーム支持部60とを接続している。アーム部70は、概して、掘進方向(X1方向)に略直交する方向に延びている。アーム部70は、掘進方向(X1方向)に略直交する面内(断面C内)で第1回動中心軸50の中心軸線βにより2つに分けられる領域(一方領域A1(
図5参照)、他方領域A2(
図5参照))の一方(一方領域A1または他方領域A2)側に配置されている。すなわち、アーム部70は、第1回動中心軸50(中心軸線β)に対して、非対称(片寄った位置)に配置されている。
【0044】
図4に示すように、アーム部70は、第1回動中心軸50(中心軸線β)周り(
図3の矢印S4で示す方向)にアーム支持部60が回動することによって、中心軸線βにより2つに分けられる領域の一方側から他方側に(一方領域A1から他方領域A2に、または、他方領域A2から一方領域A1に)、反転移動するように構成されている。
【0045】
この際、アーム部70は、第1回動中心軸50(中心軸線β)周りにアーム支持部60が回動することによって、アーム支持部60の掘進方向側(X1方向側)とは反対側である後方側(X2方向側)を通過して、中心軸線βにより2つに分けられる領域の他方側に反転移動するように構成されている。すなわち、アーム部70は、
図3の矢印S4で示す範囲を移動するように構成されている。
【0046】
また、アーム部70(把持部80)は、第1回動中心軸50(中心軸線β)の延びる方向(
図3の矢印S5で示す方向)に沿って直進(進退)移動するように構成されている。すなわち、アーム部70は、把持部80(セグメントSG)をトンネルの内周面に対して、近接および離間させる方向に移動させるように構成されている。
【0047】
〈第2回動中心軸移動機構の構成〉
図5に示すように、第2回動中心軸移動機構M0は、上下移動機構m1と、左右移動機構m2とを備えている。
【0048】
上下移動機構m1は、横行ベース30とともに昇降ベース20を上下方向(Z方向)に移動させることにより、横行ベース30に支持されている第2回動中心軸40を上下方向に移動させるように構成されている。
【0049】
図6に示すように、上下移動機構m1は、上下方向に延びるように一対のガイド支柱10のそれぞれに設けられたラックm10と、ラックm10に噛み合うピニオンギアm11を有する昇降用モータm12と、ガイド支柱10に対して前後方向および左右方向外側から当接する複数の車輪m13とを含んでいる。
【0050】
昇降用モータm12および複数の車輪m13は、昇降ベース20に設置されている。昇降用モータm12および複数の車輪m13は、左右方向に一対設けられている。左右方向に一対で設けられる昇降用モータm12および複数の車輪m13を一組とすると、一組の昇降用モータm12および車輪m13は、上下方向に並ぶように2組設けられている。これにより、上下移動機構m1は、安定して第2回動中心軸40を上下方向に移動させることが可能なように構成されている。
【0051】
左右移動機構m2は、昇降ベース20に対して横行ベース30を左右方向(Y方向)に移動させることにより、第2回動中心軸40を左右方向に移動させるように構成されている。
【0052】
左右移動機構m2は、昇降ベース20に設けられた一対の横行ガイド軸m21と、昇降ベース20と横行ベース30との間に設置される一対の横行ジャッキm22と、横行ベース30に設けられた一対の横行被ガイド部m23とを含んでいる。
【0053】
横行ガイド軸m21は、左右方向(Y方向)に延びている。また、一対の横行ガイド軸m21は、上下方向に離間して配置されている。横行被ガイド部m23は、横行ガイド軸m21に嵌合して、横行ガイド軸m21に左右方向への移動がガイドされる部分である。横行ベース30は、横行被ガイド部m23を介して一対の横行ガイド軸m21に嵌合しており、一対の横行ジャッキm22の伸縮に伴い、第2回動中心軸40とともに左右方向に移動されるように構成されている。
【0054】
〈旋回用駆動源の構成〉
図7に示すように、旋回用駆動源M1は、横行ベース30に内側(X1方向側)から設置されている。旋回用駆動源M1は、複数(4つ)の旋回用モータM10と、各旋回用モータM10に設けられるギアM11とを備えている。
【0055】
複数の旋回用モータM10は、第2回動中心軸40の周方向に沿って並ぶように配置されている。ギアM11は、第2回動中心軸40の後述するギア41に噛み合っており、複数の旋回用モータM10の駆動力を第2回動中心軸40に伝達するように構成されている。その結果、第2回動中心軸40が回動する。
【0056】
〈反転用駆動源の構成〉
図6に示すように、反転用駆動源M2は、アーム支持部60の把持部80側とは反対側の面に設置されている。反転用駆動源M2は、複数(2つ)の反転用モータM20と、各反転用モータM20に設けられるギアM21とを備えている。
【0057】
複数の反転用モータM20は、第1回動中心軸50の周方向に沿って並ぶように配置されている。ギアM21は、第1回動中心軸50の後述するギア51に噛み合っており、複数の反転用モータM20の駆動力を第1回動中心軸50に伝達するように構成されている。なお、第1回動中心軸50は、第1回動中心軸50の中心軸線β周りに回動することがないように第2回動中心軸40に支持されている(固定されている)。
【0058】
したがって、反転用モータM20は、ギアM21を回転させることによって、アーム支持部60(アーム部70、把持部80)とともに第1回動中心軸50の中心軸線β周りに回動(公転)するように構成されている。その結果、アーム部70は、第1回動中心軸50(中心軸線β)周り(矢印S4で示す方向)にアーム支持部60が回動することによって、中心軸線βにより2つに分けられる領域の一方側から他方側に(一方領域A1(
図5参照)から他方領域A2(
図5参照)に、または、他方領域A2から一方領域A1に)、反転移動するように構成されている。
【0059】
〈直進用駆動源の構成〉
図5に示すように、直進用駆動源M3は、アーム支持部60とアーム部70との間に設置される一対のジャッキにより構成されている。アーム支持部60とアーム部70との間には、アーム支持部60に対してアーム部70を中心軸線βが延びる方向に移動させる一対の直進ガイド軸70aが設けられている。直進用駆動源M3(ジャッキ)は、この直進ガイド軸70aに沿って配置されている。
【0060】
直進用駆動源M3(ジャッキ)は、ロッドを前進させること(伸ばすこと)によって、アーム支持部60からアーム部70(把持部80)を離間させるように構成されている。すなわち、直進用駆動源M3(ジャッキ)は、ロッドを前進させることによって、把持部80をトンネルの内周面に近づけるように構成されている。
【0061】
また、直進用駆動源M3(ジャッキ)は、ロッドを後退させること(縮めること)によって、アーム支持部60にアーム部70(把持部80)を近づけるように構成されている。すなわち、直進用駆動源M3(ジャッキ)は、ロッドを後退させることによって、把持部80をトンネルの内周面から離間させるように構成されている。
【0062】
〈ガイド支柱の構成〉
一対のガイド支柱10は、Y方向に並ぶように配置されている。一対のガイド支柱10は、上下方向に直線状に延びる梁部材である。一対のガイド支柱10の上端および下端は、掘進機本体部1に対して内周側から固定されている。一対のガイド支柱10は、左右方向において、バランスよく配置されている。一対のガイド支柱10を除くセグメント組立装置2の他の構成は、概して、一対のガイド支柱10の後方側(X2方向側)に配置されている。一対のガイド支柱10の間には、配線類・配管類Caおよび排土装置Hが配置される有効空間が設けられている。一対のガイド支柱10の後方側(X2方向側)の面には、ラックm10が設けられている。
【0063】
〈昇降ベースの構成〉
図6に示すように、昇降ベース20は、一対のガイド支柱10に跨るように設けられており、平面視で前方(X1方向)が開放されたC字形状(コの字形状)を有している。また、昇降ベース20は、前後方向(X方向)から見て、横長の矩形状を有している(
図5参照)。
【0064】
昇降ベース20の前方側(X1方向側)(C字形状の内側)には、昇降ベース20を上下方向に移動させるための昇降用モータm12および車輪m13(上下移動機構m1)が設置されている。昇降ベース20の後方側(X2方向側)には、一対の横行ガイド軸m21が設けられている。
【0065】
〈横行ベースの構成〉
図1に示す横行ベース30は、前方(X1方向)の一部が開放された中空の箱形状を有している。横行ベース30の内側には、第2回動中心軸40を回動させるための旋回用モータM10およびギアM11(旋回用駆動源M1)が設置されている。
【0066】
横行ベース30の前方側(X1方向側)には、横行ガイド軸m21に嵌合して、横行ガイド軸m21により左右方向への移動がガイドされる横行被ガイド部m23が設けられている。
【0067】
横行ベース30の下方側には、第2回動中心軸40を通すための貫通穴31が形成されている。横行ベース30は、横行ベース30に対して第2回動中心軸40を滑らかに回動させるための軸受(図示せず)を有している。なお、図示しないが、貫通穴31には、セグメント組立装置2用の配管や配線が通されている。また、図示しないが、セグメント組立装置2は、ギアM41が備わり、第2回動中心軸40の端面に固定される外輪と、横行ベース30に固定される内輪とを有する旋回台軸受を備えるように構成されていてもよい。
【0068】
〈第2回動中心軸の構成〉
図3に示すように、第2回動中心軸40は、横行ベース30に支持される前方側の部分が、前後方向に延びる円柱形状(または円筒形状)を有している。第2回動中心軸40の円筒形状の前方端部には、旋回用モータM10のギアM11に噛み合うギア41が設けられている(
図7参照)。
【0069】
第2回動中心軸40の後方端部(X2方向端部)には、回動するアーム支持部60との干渉を回避するために、円弧形状の側面42が設けられている。また、第2回動中心軸40の後方端部には、側面42を挟み込む一対の平坦面43が設けられている。また、第2回動中心軸40には、一対の平坦面43に直交する方向(中心軸線βの延びる方向)に延びる向きで第1回動中心軸50が固定されている。
【0070】
〈第1回動中心軸の構成〉
第1回動中心軸50は、概して、円柱形状を有している。第1回動中心軸50の一方端部(
図3では上方側の端部)は、アーム支持部60を貫通している。また、第1回動中心軸50の一方端部には、反転用モータM20のギアM21に噛み合うギア51が設けられている。なお、図示しないが、セグメント組立装置2は、第1回動中心軸50に代えて、ギアM51が備わり平坦面43に固定される外輪と、アーム支持部60に固定される内輪とを有する旋回台軸受を備えるように構成されていてもよい。
【0071】
〈アーム支持部の構成〉
図5に示すように、アーム支持部60は、前後方向(X方向)から見て、第2回動中心軸40の一対の平坦面43を挟み込むようなC字形状(コの字形状)を有している。
【0072】
アーム支持部60は、前後方向(X方向)から見て、第1回動中心軸50の中心軸線βに対して片寄って配置されている。すなわち、アーム支持部60は、中心軸線βにより2つに分けられる領域の一方側(一方領域A1または他方領域A2)に大部分が配置されている。なお、アーム支持部60は、第1回動中心軸50に対して滑らかに回動するための軸受(図示せず)を有している。
【0073】
〈アーム部の構成〉
アーム部70は、直進ガイド軸70aを介してアーム支持部60に直進移動可能なように設置されている。アーム部70は、アーム支持部60が中心軸線βに対して片寄って配置される側と同じ側に、全体が配置されている。
【0074】
したがって、セグメント組立装置2は、中心軸線βにより2つに分けられる領域のうちアーム部70が配置される領域とは反対側の領域に、空きスペースを確保可能なように構成されている。セグメント組立装置2は、セグメントSGの設置位置や、有効空間との干渉などを考慮して、反転移動によりアーム部70(空きスペース)の配置を変更する。
【0075】
アーム部70の先端には、把持部80を内側に配置するカバー部71が設けられている。
【0076】
〈把持部の構成〉
図8に示す把持部80は、セグメントSGを把持するための固定金具が取り付けられる単一の固定金具取付部82を有している。
【0077】
把持部80は、固定金具取付部82を囲むように設けられる複数(4つ)の第1ジャッキ81を有している。把持部80は、複数(4つ)の第1ジャッキ81の先端をセグメントSGに当接させた状態で、複数(4つ)の第1ジャッキ81の各々の長さを個別に調整することにより、セグメントSGの傾きを微調整することが可能に構成されている。なお、
図8では、X2方向側(図中の手前側)の2つの第1ジャッキ81のみを図示している。
【0078】
把持部80は、複数(4つ)の第1ジャッキ81の傾きを調整可能な一対の第2ジャッキ83を有している。把持部80は、一対の第2ジャッキ83によって、一層大きくセグメントSGを傾斜させることが可能に構成されている。すなわち、把持部80は、一対の第2ジャッキ83によりセグメントSGの角度調整幅を拡大している。
【0079】
把持部80は、前後方向(X方向)に延びる前後行ガイド軸84aと、前後行ガイド軸84aに沿って固定金具取付部82を前後方向に移動させる第3ジャッキ84bとを有している。把持部80は、前後行ガイド軸84aおよび第3ジャッキ84bにより、セグメントSGの前後方向の位置を微調整することが可能に構成されている。
【0080】
把持部80(固定金具取付部82)は、第1回動中心軸50の中心軸線β上に配置されている。したがって、アーム支持部60が第1回動中心軸50(中心軸線β)周りに回動してアーム部70が反転移動する際に、把持部80およびセグメントSGは、位置を略変えることなく、平面視で向きが逆転される。
【0081】
(セグメントの組立動作)
次に、
図9および
図10を参照して、セグメントSGの組立動作について説明する。なお、セグメントSGは、原則、下方側から上方側に順に積み上げる形で組み立てられる。そして、最後に、キーセグメントKSGを組み付けることで1つのセグメントリングが完成する。
【0082】
図9を参照して、アーム部70の反転移動を伴わないセグメントSGの組立動作について説明する。
【0083】
まず、
図9(A)に示すように、アーム支持部60をトンネル内の略中央に配置するとともに、把持部80を下端(初期位置)に配置して、把持部80によりセグメントSGを把持する。
【0084】
そして、
図9(B)に示すように、有効空間(配線類・配管類Ca、排土装置H)との干渉を回避するために、第2回動中心軸40(中心軸線α)周りに、アーム支持部60、アーム部70、および、把持部80を僅かに回動(旋回)により傾斜させる。これによって、中心軸線βの一方側にアーム部70が配置されるとともに、他方側に有効空間(配線類・配管類Ca、排土装置H)が配置される。
【0085】
そして、
図9(C)に示すように、直進用駆動源M3(ジャッキ)により、アーム部70を前進させる。すなわち、把持部80をアーム支持部60から離間させる。これによって、セグメントSGは、トンネルの内周面の近傍に配置される。この状態で、アーム支持部60、アーム部70、および、把持部80を再び回動(旋回)させて、トンネルの内周面に沿ってセグメントSGを
図9(D)に示す設置位置に向けて移動させることにより、セグメントSGを設置する。この際、有効空間(配線類・配管類Ca、排土装置H)は、アーム支持部60と把持部80との間に挟まれる。
【0086】
次に、
図10を参照して、アーム部70の反転移動を伴うセグメントSGの組立動作について説明する。
【0087】
まず、
図10(A)に示すように、アーム支持部60をトンネル内の略中央に配置するとともに、把持部80を下端(初期位置)に配置して、把持部80によりセグメントSGを把持する。この際、アーム部70の反転移動を考慮して、セグメントSGを設置する際とは逆転させた向き(一端と他端とを逆にした向き)でセグメントSGを把持する。なお、把持部80によりセグメントSGを把持していない状態でアーム部70を反転移動させた後に、把持部80によりセグメントSGを把持してもよい。
【0088】
そして、
図10(B)に示すように、第1回動中心軸50周りにアーム支持部60を回動させることによって、アーム部70を、中心軸線βにより2つに分けられる領域の一方側から他方側に反転移動させる。これにより、アーム支持部60の一方側に比較的広い空きスペースが確保される。以降は、上記
図9(C)を参照して説明したようにトンネルの内周面に沿ってセグメントSGを移動させて、
図10(C)に示す設置位置にセグメントSGを設置する。
【0089】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0090】
本実施形態では、上記のように、第1回動中心軸50に対して非対称に配置(第1回動中心軸50の中心軸線βの一方側に配置)されるアーム部70を設けることにより、従来のようにアーム支持部60の両側に把持部80を設ける場合と比較して、セグメント組立装置2を小型化することができるので、非円形断面のトンネルにおいても、セグメントSGを円滑に移動させるための空間を十分に確保することができる。また、掘進方向に略直交する方向に延びる第1回動中心軸50周りにアーム支持部60を回動させて、アーム部70を、第1回動中心軸50の中心軸線βにより2つに分けられる領域の一方側から他方側に反転移動させることにより、トンネルの内周面に沿ってセグメントSGを移動させるのではなく(掘進方向に延びる中心軸線β周りにセグメントSGを回動させるのではなく)、トンネルの前後方向の空間を利用して(通過させるようにして)セグメントSGを一方側から他方側に反転移動させることができる。その結果、非円形断面のトンネルにおいても、少なくともセグメントSGとトンネルの内周面との干渉を抑制することができる。以上により、非円形断面のトンネルにおいて効率的にセグメントSGを組み立てることができる。
【0091】
本実施形態では、上記のように、アーム支持部60は、掘進方向に延びる第2回動中心軸40周りに回動可能なように構成されている。これにより、把持部80(セグメントSG)を、掘進方向に直交する面内においても回動により移動させることができるので、より柔軟にセグメントSGを移動させることができる。その結果、非円形断面のトンネルにおいてより効率的にセグメントSGを組み立てることができる。
【0092】
本実施形態では、上記のように、第2回動中心軸40は、第1回動中心軸50およびアーム支持部60を支持しており、掘進方向と略直交する方向に、第2回動中心軸40を移動させる第2回動中心軸移動機構M0をさらに備える。これにより、第2回動中心軸40と、第2回動中心軸40に支持される第1回動中心軸50およびアーム支持部60とを、掘進方向と略直交する方向に一体的に移動させることができる。その結果、非円形断面のトンネルにおいて一層効率的にセグメントSGを組み立てることができる。
【0093】
本実施形態では、上記のように、把持部80は、第1回動中心軸50の中心軸線β上に配置されている。これにより、アーム部70が反転移動する際(第1回動中心軸50周りにアーム支持部60が回動する際)に、把持部80の位置が大きく変動するのを抑制することができる。その結果、把持部80に把持されたセグメントSGの位置が大きく変動するのを抑制することができるので、非円形断面のトンネルにおいても、セグメントSGが他の構成に干渉するのを抑制することができる。
【0094】
本実施形態では、上記のように、アーム部70は、第1回動中心軸50周りにアーム支持部60が回動することによって、アーム支持部60の掘進方向側とは反対側である後方側を通過して、中心軸線βにより2つに分けられる領域の他方側に移動するように構成されている。これにより、アーム部70を、前後方向のうち比較的空いた空間があるセグメントSG供給側である後方側を通過させることができる。その結果、アーム部70が他の構成と干渉するのを抑制することができる。
【0095】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態および変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0096】
たとえば、上記実施形態では、泥土圧式シールド掘進機に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明を、泥水式シールド掘進機に適用してもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、掘進方向と直交する断面が概して楕円形状のトンネルを掘進するシールド掘進機の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、掘進方向と直交する断面が概して矩形形状のトンネルを掘進するシールド掘進機であってもよい。また、掘進方向と直交する断面が円形状のトンネルを掘進するシールド掘進機であってもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、本発明を密閉型(チャンバを形成する隔壁を備えるタイプ)のシールド掘進機に適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明を開放型(チャンバを形成する隔壁を備えないタイプ)のシールド掘進機に適用してもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、ラックおよびピニオンの機構により、昇降ベース(第2回動中心軸)を上下方向に移動させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、ジャッキにより、昇降ベース(第2回動中心軸)を上下方向に移動させてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、モータに設けられたギアにより、第1回動中心軸周りにアーム支持部を回動させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ベルトなどを用いて、第1回動中心軸周りにアーム支持部を回動させてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、モータに設けられたギアにより、横行ベースに対して第2回動中心軸を回動させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ベルトなどを用いて、横行ベースに対して第2回動中心軸を回動させてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、第2回動中心軸を左右方向(トンネルの短手方向)に移動可能に構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2回動中心軸を左右方向(トンネルの短手方向)に移動しないように構成してもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、2つのモータにより、第1回動中心軸周りにアーム支持部を回動させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1つ、または、3つ以上のモータにより、第1回動中心軸周りにアーム支持部を回動させてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、4つのモータにより、横行ベースに対して第2回動中心軸を回動させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1つから3つ、または5つ以上のモータにより、横行ベースに対して第2回動中心軸を回動させてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、配線類・配管類および排土装置を配置する有効空間を1つ設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、有効空間を複数設けてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、配線類・配管類および排土装置を配置する有効空間をトンネル内の下方側に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、有効空間をトンネル内の中間または上方側に設けてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、把持部が、第1回動中心軸の中心軸線上に配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図11に示す変形例のセグメント組立装置202のように、把持部80が、第1回動中心軸250の中心軸線β1上に配置されていなくてもよい。具体的には、セグメント組立装置202は、第1回動中心軸250と、把持部80と、アーム支持部260と、把持部80およびアーム支持部260を接続するアーム部270とを備えている。アーム支持部260は、第1回動中心軸250の中心軸線β1上に配置されている。一方、把持部80は、第1回動中心軸250の中心軸線β1上に配置されていない。また、アーム部270および把持部80は、第1回動中心軸250(中心軸線β1)周りにアーム支持部260が回動することによって、掘進方向から見て、中心軸線β1により2つに分けられる領域の一方側から他方側に反転移動するように構成されている。
【0108】
また、上記実施形態では、セグメント組立装置が単一のアーム部を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、セグメント組立装置が掘進方向から見て第1回動中心軸に対して非対称となるなら、複数のアーム部を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 掘進機本体部
2、202 セグメント組立装置
11 カッタヘッド
40 第2回動中心軸
50、250 第1回動中心軸(回動中心軸)
60、260 アーム支持部
70、270 アーム部
80 把持部
100 シールド掘進機
H 排土装置
M0 第2回動中心軸移動機構
SG セグメント
β、β1 中心軸線