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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】電波式流速計
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/58 20060101AFI20220715BHJP
   G01P 5/24 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
G01S13/58 210
G01P5/24 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019076462
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2019184613
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2018078653
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232357
【氏名又は名称】株式会社YDKテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】墳原 学
(72)【発明者】
【氏名】阿部 勇介
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-189074(JP,A)
【文献】特開2000-111376(JP,A)
【文献】特開2015-072185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 -13/95
G01P 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象の計測点に送信波を照射し、該送信波が前記計測点で反射して発生する反射波に基づいて計測信号を取得し、該計測信号に含まれるドップラー信号に基づいて前記計測点の流速を計測する電波式流速計であって、
前記計測信号のスペクトラムにピーク部が複数含まれていた場合に、複数の前記ピーク部の属性値を評価することによって前記ドップラー信号に相当する計測ピーク部を認定し、
前記スペクトラムに周波数軸上で隣り合う2つの前記ピーク部が存在する場合において、周波数の低い前記ピーク部の前記属性値である半値幅が規定の半値幅範囲に含まれており、かつ、周波数の高い前記ピーク部が周波数の低い前記ピーク部よりも前記属性値である半値幅が大きかった場合は、周波数の低い前記ピーク部を前記ドップラー信号に相当する計測ピーク部と認定することを特徴とする電波式流速計。
【請求項2】
前記スペクトラムに周波数軸上で隣り合う2つの前記ピーク部が存在する場合において、周波数の高い前記ピーク部の前記属性値である半値幅が規定の半値幅範囲に含まれており、かつ、周波数の低い前記ピーク部が周波数の高い前記ピーク部よりも前記属性値である半値幅が小さかった場合には、周波数の高い前記ピーク部を前記ドップラー信号に相当する計測ピーク部と認定することを特徴とする請求項1に記載の電波式流速計。
【請求項3】
観測対象の計測点に送信波を照射し、該送信波が前記計測点で反射して発生する反射波に基づいて計測信号を取得し、該計測信号に含まれるドップラー信号に基づいて前記計測点の流速を計測する電波式流速計であって、
前記計測信号のスペクトラムにピーク部が複数含まれていた場合に、複数の前記ピーク部の属性値を評価することによって前記ドップラー信号に相当する計測ピーク部を認定し、
前記属性値は、ピーク電力EPの周波数変動幅Δf 、前記ピーク電力E の電力変動幅ΔE 、前記ピーク電力E から第1の減衰量d だけ低下した低域側周波数f 及び低域側周波数f との周波数差f T1 及び当該周波数差f T1 の変動幅Δf T1 を少なくとも含むことを特徴とする電波式流速計。
【請求項4】
前記計測信号に強度ピークが存在した場合、前記強度ピークを除外した期間の前記計測信号に基づいて前記計測点の流速を計測することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電波式流速計。
【請求項5】
前記流速が所定のしきい値を越える場合に前記強度ピークの除外処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の電波式流速計。
【請求項6】
振動センサを備え、
当該振動センサが規定値以上の振動を検出している期間を除外した期間の前記計測信号に基づいて前記計測点の流速を計測することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電波式流速計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波式流速計に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、河川に架かる橋等に設けられ、川面に放射した送信波の反射波を検出することにより河川の流速を計測する電波式流速計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-114359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、流速計測時の外乱を十分に考慮していない。すなわち、電波式流速計で河川の流速を計測する場合、例えば送信波及び反射波の伝搬路に侵入してくる雨等の異物が外乱となる。電波式流速計で計測精度を向上させるためには、このような外乱の影響を抑制あるいは排除する必要がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、外乱の影響を抑制あるいは排除することにより計測精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、電波式流速計に係る第1の解決手段として、観測対象の計測点に送信波を照射し、該送信波が前記計測点で反射して発生する反射波に基づいて計測信号を取得し、該計測信号に含まれるドップラー信号に基づいて前記計測点の流速を計測する電波式流速計であって、前記計測信号のスペクトラムにピーク部が複数含まれていた場合に、複数の前記ピーク部の属性値を評価することによって前記ドップラー信号に相当する計測ピーク部を認定する、という手段を採用する。
【0007】
電波式流速計に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記スペクトラムに周波数軸上で隣り合う2つの前記ピーク部が存在する場合において、周波数の低い前記ピーク部の前記属性値である半値幅が規定の半値幅範囲に含まれており、かつ、周波数の高い前記ピーク部が周波数の低い前記ピーク部よりも前記属性値である半値幅が大きかった場合は、周波数の低い前記ピーク部を前記ドップラー信号に相当する計測ピーク部と認定する、という手段を採用する。
【0008】
電波式流速計に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記スペクトラムに周波数軸上で隣り合う2つの前記ピーク部が存在する場合において、周波数の高い前記ピーク部の前記属性値である半値幅が規定の半値幅範囲に含まれており、かつ、周波数の低い前記ピーク部が周波数の高い前記ピーク部よりも前記属性値である半値幅が小さかった場合には、周波数の高い前記ピーク部を前記ドップラー信号に相当する計測ピーク部と認定する、という手段を採用する。
【0009】
電波式流速計に係る第4の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記属性値は、ピーク電力Eの周波数変動幅Δf、前記ピーク電力Eの電力変動幅ΔE、前記ピーク電力Eから第1の減衰量dだけ低下した低域側周波数f及び低域側周波数fとの周波数差fT1及び当該周波数差fT1の変動幅ΔfT1を少なくとも含む、という手段を採用する。
【0010】
電波式流速計に係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記計測信号に強度ピークが存在した場合、前記強度ピークを除外した期間の前記計測信号に基づいて前記計測点の流速を計測する、という手段を採用する。
【0011】
電波式流速計に係る第6の解決手段として、上記第5の解決手段において、前記流速が所定のしきい値を越える場合に前記強度ピークの除外処理を行う、という手段を採用する。
【0012】
電波式流速計に係る第7の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、振動センサを備え、当該振動センサが規定値以上の振動を検出している期間を除外した期間の前記計測信号に基づいて前記計測点の流速を計測する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外乱の影響を抑制あるいは排除することにより計測精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1、第2実施形態に係る電波式流速計Aの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1、第2一実施形態に係る電波式流速計Aの水平面における設置状態を示す模式図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る電波式流速計Aの動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の第1実施形態に係る電波式流速計Aの計測信号の時間変化(a)、第1のスペクトラム(b)及び第2のスペクトラム(c)を示す特性図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る電波式流速計A’の動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態における計測信号のスペクトラムを示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
最初に、本発明の第1実施形態について説明する。
本第1実施形態に係る電波式流速計Aは、図1及び図2に示すように、河川等の観測対象Kの計測点Pから得られる反射波のドップラー周波数fに基づいて観測対象Kの流速Vを計測する装置である。ドップラー周波数fに基づく流速Vの計測方式としてCWドップラ方式、多周波CW方式、FM-CW方式が知られているが、この電波式流速計Aは、CWドップラ方式を採用するものである。
【0016】
この電波式流速計Aは、図1に示すように、観測対象K(水面)から所定距離だけ離れた場所に設置されており、観測対象Kの計測点Pに対して所定の仰角θとなるように送信波(電波)を照射し、当該送信波が観測対象Kで反射して発生する反射波を受信する。すなわち、電波式流速計Aは、橋梁等の構造物Bに取り付けられることにより、観測対象K(水面)に対して斜め上方から送信波を照射する。
【0017】
また、電波式流速計Aは、図2に示すように、観測対象K(水面)における水の流れ方向Fに対して上流側に向けて送信波を放射する。すなわち、電波式流速計Aは、計測点Pの下流側に設けられた構造物B上に固定設置されており、構造物Bよりも上流側に設定された計測点Pに向けて送信波を放射することにより反射波を取得する。なお、送信波の放射方向については、観測対象K(水面)の下流側に向けて放射してもよい。
【0018】
なお、図2では水平面内における水の流れ方向Fと送信波の放射方向とが平行になる計測点Pを示しているが、観測対象K(水面)には、計測点P以外にも複数の計測点が予め設定されている。
【0019】
上記構造物Bに何らかの振動が作用した場合、電波式流速計Aも振動することになる。この振動の原因としては、風や地震、また水の流れ等が考えられるが、例えば構造物Bが橋梁であった場合には橋梁状を通過する車両が考えられる。車両の通過による振動は、比較的短い期間に亘る一過性の振動として電波式流速計Aに作用する。
【0020】
また、構造物Bが橋梁の場合、電波式流速計Aには橋梁の構造等に起因して所定周波数かつ連続的な振動が作用する。このような連続的な振動は、周囲環境の変化に強度が変動する。なお、電波式流速計Aに作用する振動は、橋梁に対する取り付け位置に応じても変化する。すなわち、電波式流速計Aを橋梁の本体に固定した場合と電波式流速計Aを橋梁の欄干に固定した場合とでは、電波式流速計Aに作用する振動は異なる形態となる。
【0021】
さて、このような電波式流速計Aは、図1に示すように、アンテナ1、送受信回路2、振動センサ3、信号処理部4、表示部5、通信部6及び記録部7を備えている。アンテナ1は、例えばパラボラアンテナであり、送受信回路2から入力される所定周波数の送信信号に基づいて送信波を観測対象Kに向けて放射する一方、反射波を受信して反射信号として送受信回路2に出力する。
【0022】
上記送信波は、空中を伝搬路Dとして観測対象K(水面)に照射され、この観測対象K(水面)で反射された送信波の一部が反射波となる。なお、この送信波は、例えばマイクロ波である。また、上記反射波は、送信波の周波数(波長)が観測対象K(水面)における水の流速によってドップラーシフトした周波数成分(ドップラー周波数f)を持つドップラー信号を含む電波である。
【0023】
また、上記送信波は、アンテナ1と観測対象K(水面)との間の伝搬路Dに存在する異物の影響を受ける。また、上記反射波は、上記ドップラー信号を含むだけではなく、異物に起因するノイズ信号を含む。すなわち、伝搬路Dの異物は、反射波のドップラーシフトつまりドップラー信号が含む観測対象K(水面)の流速Vに起因するドップラー周波数fに対して外乱として作用する。このような異物の典型的なものは雨、つまり伝搬路Dに侵入する虞のある水滴である。この雨の通過方向(落下方向)は、鉛直方向(重力方向)とは限らず、風等の影響により不規則に変化するものであり、よって送信波及び反射波の進行方向に対して絶えず変動し得るものである。
【0024】
送受信回路2は、送信信号を発生する発振器、送信信号を分波するサーキュレータ及び送信信号と反射信号とをミキシングして差分信号を生成するミキサ等から構成されており、上記送信信号をアンテナ1に供給すると共に上記反射信号と送信信号との差分信号を取り出し、当該差分信号を計測信号として信号処理部4に出力する。
【0025】
振動センサ3は、上述した振動を検出し、当該振動を示す振動信号を信号処理部4に出力する。この振動センサ3は、例えば所定の感応軸を有する加速度センサである。
【0026】
信号処理部4は、予め記憶された流速計測プログラムに基づいて上記計測信号及び振動信号に所定のデジタル信号処理を施すことにより観測対象K(水面)の流速Vを演算する。すなわち、この信号処理部4は、アナログ信号である計測信号及び振動信号をデジタル信号(計測データ及び振動データ)に変換するA/D変換器、流速計測プログラム等を記憶する不揮発性メモリ、流速Vを演算する演算回路、演算回路の計算値等を一時的に臆する揮発性メモリ、また表示部5、通信部6及び記録部7とデータの授受を行うインタフェース回路等を含む。
【0027】
このような信号処理部4は、演算結果である流速Vを表示部5、通信部6及び記録部7に適宜出力する。すなわち、信号処理部4は、流速Vを表示部5に出力して画面表示させ、流速Vを通信部6に出力して外部に送信させ、また流速Vを記録部7に出力して記録させる。
【0028】
表示部5は、液晶表示装置等のパネル型表示装置であり、信号処理部4から入力された流速Vを所定の表示態様で画面表示する。通信部6は、信号処理部4から入力された流速Vを所定の通信回線を介して外部に送信する。この通信部6は、例えばインターネットの通信プロトコルに準拠したものであり、所定の送信先アドレス(IPアドレス)に流速Vを送信する。
【0029】
記録部7は、記憶容量が比較的大きな不揮発性の記憶両機器を有する記憶装置であり、例えばハードディスク、各種のメモリーカードあるいは/及びUSBメモリである。この記録部7は、所定期間に亘って取得された複数時刻の流速Vを時系列データとして保存する。なお、信号処理部4は、通信部6が上記時系列データの送信要求を受信すると、要害送信要求に応じて時系列データを要求先に送信させる。
【0030】
次に、このように構成された電波式流速計Aの動作について、図3図4を参照して詳しく説明する。
【0031】
電波式流速計Aの全体的な動作について先に説明すると、信号処理部4は、送受信回路2から入力される計測信号に所定の信号処理を施すことにより計測点Pの流速Vに起因するドップラー周波数fを特定し、当該ドップラー周波数fを下式(1)に代入することにより計測点Pの流速Vを演算する。
【0032】
【数1】
【0033】
ここで、式(1)における定数cは、送信波(反射波)の伝搬速度(光速)である、また、定数f0は送信波(反射波)の周波数(基本周波数)である。さらに、定数θは、上述した仰角である。
【0034】
このような流速Vを演算(計測)において、電波式流速計Aを支持する構造物Bの振動及び送信波(反射波)の伝搬路Dにおける異物は、信号処理部4が計測信号に基づいてドップラー周波数fdを特定する際の外乱となる。以下では、このような外乱を排除してドップラー周波数fdを特定する信号処理部4の信号処理について、図3に沿って詳しく説明する。
【0035】
信号処理部4は、計測信号を所定のサンプリング周期でデジタル信号(計測データ)に変換して時系列データとして順次取り込むが(ステップS1)、この計測データ(時系列データ)に強度ピークQ、つまり図4(a)に示すように振幅が一時的(局所的)に大きい部位が存在するか否かを判定する(ステップS2)。
【0036】
そして、信号処理部4は、上記ステップS2の判断結果が「Yes」の場合、つまり計測データに強度ピークQが存在する場合には、計測データから強度ピークQを除外する処理を行い(ステップS3)、この除外処理を行った計測データについてステップS4のFFT処理を行う。なお、信号処理部4は、上記ステップS2の判断結果が「No」の場合、つまり計測データに強度ピークQが存在しない場合には、FFT処理(ステップS4)を直接行う。
【0037】
ここで、このような強度ピークQは、構造物Bに比較的短時間の振動が作用した場合、例えば構造物Bが橋梁の場合において車両が橋梁を通過した場合等に発生する。したがって、強度ピークQの除外処理(ステップS3)によって、電波式流速計Aに比較的短時間の振動が作用することによる外乱を排除することができる。
【0038】
なお、このような短時間の振動は、振動センサ3によっても検出され、強度ピークQに対応する振動ピーク部Qsが振動信号に存在する。すなわち、信号処理部4は、振動センサ3が規定値以上の振動を検出している期間、つまり振動信号に振動ピーク部Qsが存在する場合においても、強度ピークQの除外処理(ステップS3)を実行して、電波式流速計Aに比較的短時間の振動が作用することによる外乱を排除する。
【0039】
信号処理部4は、上記FFT処理(ステップS4)によって計測信号のスペクトラム(周波数特性)を取得する。図4(b)、(c)は、上記計測信号のスペクトラムの一例を示している。これら2つのスペクトラムのうち、図4(b)のスペクトラムは、電波式流速計Aに連続的な振動(連続振動)が作用した場合を示しており、一方、図4(c)のスペクトラムは、降雨の場合つまり伝搬路Dに雨粒が存在する場合を示している。
【0040】
信号処理部4は、このような計測信号のスペクトラムを取得すると、当該スペクトラムの振幅変化を評価することにより、スペクトラムに複数のピーク部が存在するか否か、つまり計測信号のスペクトラムにピーク部が複数含まれているか否かを判断する(ステップS5)。
【0041】
電波式流速計Aに連続振動が作用している場合、計測信号のスペクトラムは、図4(b)に示すように、計測点Pの流速Vに起因するピーク部Rvつまり正規ドップラー信号に相当する計測ピーク部に加えて、当該ピーク部Rvよりも低い周波数帯に連続振動に起因するピーク部Rs(第1外乱信号)を含む。すなわち、電波式流速計Aに連続振動が作用している場合において、計測信号のスペクトラムには周波数軸上で隣り合う少なくとも2つのピーク部Rv、Rsが含まれる。
【0042】
ここで、計測点Pの流速Vに起因するピーク部Rv(正規ドップラー信号)については、ピーク部Rvの属性値である半値幅の取り得る範囲(流速半値幅範囲)が事前検証等によって確認されており、この流速半値幅範囲が信号処理部4に予め記憶されている。また、連続振動に起因するピーク部Rs(第1外乱信号)については、ピーク部Rsの属性値である半値幅の取り得る範囲(連続振動半値幅範囲)が事前検証等によって上記流速半値幅範囲よりも大幅に小さいことが確認されている。
【0043】
また、連続振動に起因するピーク部Rs(第1外乱信号)については、そのピーク周波数を下記式(1)に基づいて流速に換算した場合に、数m/s以下となることが事前検証等によって確認されている。さらに、上記連続振動半値幅範囲は、流速半値幅範囲と同様に信号処理部4に予め記憶されている。
【0044】
信号処理部4は、このような連続振動の発生時における計測信号のスペクトラムの特徴を利用することにより、当該スペクトラムに対して第1のピーク部評価処理を行う(ステップS6)。すなわち、信号処理部4は、周波数の低い方のピーク部Rsの半値幅が規定の連続振動半値幅範囲に含まれており、かつ、周波数の高い方のピーク部Rvが周波数の低い方のピーク部Rsよりも半値幅が大きいことを第1の評価条件として、周波数軸上で隣り合う2つのピーク部Rv、Rsを評価する。
【0045】
そして、信号処理部4は、上記第1の評価条件が満足された場合に、周波数軸上で隣り合う2つのピーク部Rv、Rsのうち、周波数が低い方のピーク部Rsを第1外乱信号として排除する。すなわち、信号処理部4は、周波数が高い方のピーク部Rvを計測点Pの流速Vに起因するピーク部つまり正規ドップラー信号と認定する。
【0046】
続いて、計測信号のスペクトラムには、図4(c)に示すように、計測点Pの流速Vに起因するピーク部Rv(正規ドップラー信号)に加えて、当該ピーク部Rvよりも高い周波数帯に降雨に起因するピーク部Ra(第2外乱信号)が含まれる。すなわち、伝搬路Dに降雨が発生している場合においても、計測信号のスペクトラムには周波数軸上で隣り合う少なくとも2つのピーク部Rv、Raが含まれる。
【0047】
ここで、計測点Pの流速Vに起因するピーク部Rv(正規ドップラー信号)については、上述したように流速半値幅範囲が信号処理部4に予め記憶されている。また、降雨に起因するピーク部Ra(第2外乱信号)については、ピーク部Raの属性値である半値幅の取り得る範囲(降雨半値幅範囲)が上述した流速半値幅範囲よりも大幅に大きいことが事前検証等によって確認されており、上述した流速半値幅範囲及び連続振動半値幅範囲と同様に信号処理部4に予め記憶されている。
【0048】
信号処理部4は、このような降雨時における計測信号のスペクトラムの特徴を利用することにより、当該スペクトラムに対して第2のピーク部評価処理を行う(ステップS7)。すなわち、信号処理部4は、周波数の高い方のピーク部Raの半値幅が規定の降雨半値幅範囲に含まれており、かつ、周波数の低い方のピーク部Rvが周波数の高い方のピーク部Raよりも半値幅が小さいことを第2の評価条件として、周波数軸上で隣り合う2つのピーク部Rv、Raを評価する。
【0049】
そして、信号処理部4は、上記第2の評価条件が満足された場合に、周波数軸上で隣り合う2つのピーク部Rv、Raのうち、周波数が高い方のピーク部Raを第2外乱信号として排除する。すなわち、信号処理部4は、周波数が低い方のピーク部Rvを計測点Pの流速Vに起因するピーク部つまり正規ドップラー信号と認定する。
【0050】
ここで、図4(b)では流速Vに起因するピーク部Rvと連続振動に起因するピーク部Rsとのみが含まれ、図4(c)では計測信号のスペクトラムに流速Vに起因するピーク部Rvと降雨に起因するピーク部Raとのみが含まれるスペクトラムを示したが、連続振動と降雨とが同時に発生する場合もあり得る。このような場合おけるスペクトラムは、周波数軸上で隣り合う3つのピーク部Rv、Rs、Raを含むものとなる。
【0051】
このような場合に対して、本第1実施形態では、流速Vに起因するピーク部Rv、連続振動に起因するピーク部Rs及び降雨に起因するピーク部Raの特徴を示す流速半値幅範囲、連続振動半値幅範囲及び降雨半値幅範囲を用いて3つのピーク部Rv、Rs、Raを評価するので、計測点Pの流速Vに起因するピーク部Rv(正規ドップラー信号)を的確に特定することが可能である。
【0052】
信号処理部4は、このようにして計測点Pの流速Vに起因するピーク部Rv(正規ドップラー信号)を特定すると、ピーク部Rvにおいて振幅が最も大きい周波数(ピーク周波数)をドップラー周波数fとして抽出する(ステップS8)。このドップラー周波数fの抽出処理では、小刻みにレベル変動するピーク部Rvについて、例えば移動平均処理を施して平滑化することによりドップラー周波数fを特定する。
【0053】
このようにしてドップラー周波数fを特定すると、信号処理部4は、上述した式(1)にドップラー周波数fを代入することにより計測点Pの流速Vを演算する(ステップS9)。そして、信号処理部4は、流速Vを表示部5、通信部6あるいは/及び記録部7に出力することにより、画面表示、送信あるいは/及び記録させる。
【0054】
このような本第1実施形態によれば、電波式流速計Aに作用する振動及び送信波(反射波)の伝搬路Dに存在する異物に起因する外乱の影響を抑制あるいは排除することが可能であり、以って流速Vの計測精度を従来よりも向上させることが可能である。
【0055】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図5及び図6を参照して説明する。
上述した第1実施形態は、3つのピーク部Rv、Rs、Raについて周波数の大小関係が明確になっていることを前提としているが、本第2実施形態は、この前提を必要としないものである。
【0056】
本第2実施形態に係る電波式流速計A’は、図1に示すように機能構成が第1実施形態に係る電波式流速計Aと同等であるが、信号処理部4とは異なる信号処理を行う信号処理部4’を備える。すなわち、本第2実施形態に係る電波式流速計A’と第1実施形態に係る電波式流速計Aとの機能上の相違点は、計測信号及び振動信号に対する信号処理の内容である。
【0057】
この信号処理部4’は、第1実施形態の信号処理部4と同様に図3に示した処理手順に基づいて観測対象K(水面)の流速Vを演算するが、図3のステップS5~S7に代えて図6に示したステップSa1~Sa11の処理を行う。すなわち、信号処理部4’は、計測信号及び振動信号のスペクトラム(複数のピーク部を含むスペクトラム)から計測点Pの流速Vに起因するピーク部Rv(計測ピーク部)を認定する手法が第1実施形態の信号処理部4とは異なっている。以下では信号処理部4’におけるピーク部の評価処理の詳細について図5及び図6を参照して説明する。
【0058】
最初に、上記ピーク部の評価処理に用いるパラメータについて、図5を参照して説明する。このパラメータは、計測信号及び振動信号のFFT処理によって得られたスペクトラムに関するピーク部の属性値であり、スペクトラムに含まれるピーク部毎に固有の値である。このパラメータは、具体的には、図5に示すようにピーク電力E、当該ピーク電力Eにおける周波数(ピーク周波数f)の周波数変動幅Δf、ピーク電力Eの電力変動幅ΔEである。
【0059】
また、このパラメータは、ピーク電力Eから第1の減衰量dだけ低下した低域側周波数f及び低域側周波数fとの周波数差(第1周波数幅fT1)と当該第1周波数幅fT1の変動幅(第1変動幅ΔfT1)、またピーク電力Eから第2の減衰量dだけ低下した低域側周波数f及び低域側周波数fとの周波数差(第2周波数幅fT2)と変動幅(第2変動幅ΔfT2)である。
【0060】
信号処理部4’は、このような各ピーク部に関する各パラメータを用いて図6に示す評価処理を行うことにより、計測点Pの流速Vに起因するピーク部Rvつまり正規ドップラー信号に相当する計測ピーク部に認定する。すなわち、信号処理部4’は、計測信号及び振動信号を所定のタイムインターバルで順次取り込むことによりFFT処理(ステップS3)を順次行って複数のスペクトラムを取得し、スペクトラム毎に含まれる全てのピーク部について各パラメータを取得する(ステップSa1)。
【0061】
ここで、信号処理部4’は、複数のスペクトラムの全ピーク部について上述した各パラメータを取得するので、個々のピーク部について同一種のパラメータがスペクトラムの数だけ取得される。
【0062】
そして、信号処理部4’は、全てのピーク部のピーク電力Eを第1閾値THと比較することにより、ピーク電力Eが第1閾値TH以上のピーク部が存在するか否かを判断する(ステップSa2)。すなわち、信号処理部4’は、全てのピーク部のうち、ピーク電力Eが第1閾値TH以上のピーク部をピーク部Rv(計測ピーク部)の候補とする。
【0063】
ここで、各ピーク部については、ステップSa1において複数のピーク電力Eがパラメータの1つとして取得されているので、信号処理部4’は、各ピーク部におけるピーク電力Eの代表値(例えば平均値)と第1閾値THとを比較することによりステップSa2の判断を行う。
【0064】
そして、信号処理部4’は、全てのピーク部のうち、ピーク電力Eが最も大きいピーク部Rを初期的に選択する(ステップSa3)。そして、信号処理部4’は、このピーク部Rに関するパラメータを参照することにより、ピーク部Rの電力変動幅ΔEが第2閾値TH以下か否かを判断する(ステップSa4)。上記第2閾値THは、複数の観測対象Kから事前に得られた各種ピーク部Rv、Rs、Raの電力変動幅(教示データ)に基づいて設定された単一の値である。
【0065】
すなわち、複数の観測対象Kについて各種ピーク部Rv、Rs、Raの性質を確認した結果、ピーク部Rv(計測ピーク部)の電力変動幅は比較的小さいが、連続振動に起因するピーク部Rs及び降雨に起因するピーク部Raの電力変動幅は比較的大きいことが確認された。上記第2閾値THは、このようなピーク部Rv(計測ピーク部)とピーク部Rs,Raとにおける電力変動幅の特徴に基づいて設定されたものであり、両者を識別し得る値である。
【0066】
続いて、信号処理部4’は、ピーク部Rの周波数変動幅Δfが第3閾値TH以内か否かを判断する(ステップSa5)。上記第3閾値THは、複数の観測対象Kから事前に得られた各種ピーク部Rv、Rs、Raの周波数変動幅(教示データ)に基づいて設定された値であり、上述した第2閾値TH(単一値)とは違って下限値と上限値とからなる。
【0067】
すなわち、複数の観測対象Kについて各種ピーク部Rv、Rs、Raの性質を確認した結果、ピーク部Rv(計測ピーク部)の周波数変動幅は中くらいであるが、連続振動に起因するピーク部Rsの周波数変動幅は比較的小さく、また降雨に起因するピーク部Raの周波数変動幅は比較的大きいことが確認された。上記第3閾値THは、このようなピーク部Rv(計測ピーク部)及びピーク部Rs,Raにおける周波数変動幅の特徴に基づいて設定されたものであり、ピーク部Rv(計測ピーク部)をピーク部Rs,Raに対して識別し得る。
【0068】
そして、信号処理部4’は、ピーク部Rの第1周波数幅fT1が第4閾値TH以内か否かを判断する(ステップSa6)。上記第4閾値THは、複数の観測対象Kから事前に得られた各種ピーク部Rv、Rs、Raの周波数変動幅(教示データ)に基づいて設定された値であり、上述した第3閾値THと同様に下限値と上限値とからなる。
【0069】
すなわち、複数の観測対象Kについて各種ピーク部Rv、Rs、Raの性質を確認した結果、ピーク部Rv(計測ピーク部)の第1周波数幅は中くらいであるが、連続振動に起因するピーク部Rsの第1周波数幅は比較的小さく、また降雨に起因するピーク部Raの第1周波数幅は比較的大きいことが確認された。上記第4閾値THは、このようなピーク部Rv(計測ピーク部)及びピーク部Rs,Raにおける第1周波数幅の特徴に基づいて設定されたものであり、ピーク部Rv(計測ピーク部)をピーク部Rs,Raに対して識別し得る。
【0070】
そして、信号処理部4’は、ピーク部Rの第1変動幅ΔfT1が第5閾値TH以内か否かを判断する(ステップSa7)。上記第5閾値THは、複数の観測対象Kから事前に得られた各種ピーク部Rv、Rs、Raの周波数変動幅(教示データ)に基づいて設定された値であり、上述した第4閾値THと同様に下限値と上限値とからなる。
【0071】
すなわち、複数の観測対象Kについて各種ピーク部Rv、Rs、Raの性質を確認した結果、ピーク部Rv(計測ピーク部)の第1変動幅は中くらいであるが、連続振動に起因するピーク部Rsの第1変動幅は比較的小さく、また降雨に起因するピーク部Raの第1変動幅は比較的大きいことが確認された。上記第5閾値THは、このようなピーク部Rv(計測ピーク部)及びピーク部Rs,Raにおける第1変動幅の特徴に基づいて設定されたものであり、ピーク部Rv(計測ピーク部)をピーク部Rs,Raに対して識別し得る。
【0072】
そして、信号処理部4’は、ピーク部Rの第2周波数幅fT2が第6閾値TH以内か否かを判断する(ステップSa8)。上記第6閾値THは、複数の観測対象Kから事前に得られた各種ピーク部Rv、Rs、Raの周波数変動幅(教示データ)に基づいて設定された値であり、上述した第5閾値THと同様に下限値と上限値とからなる。
【0073】
すなわち、複数の観測対象Kについて各種ピーク部Rv、Rs、Raの性質を確認した結果、ピーク部Rv(計測ピーク部)の第2周波数幅は中くらいであるが、連続振動に起因するピーク部Rsの第2周波数幅は比較的小さく、また降雨に起因するピーク部Raの第2周波数幅は比較的大きいことが確認された。上記第6閾値THは、このようなピーク部Rv(計測ピーク部)及びピーク部Rs,Raにおける第2周波数幅の特徴に基づいて設定されたものであり、ピーク部Rv(計測ピーク部)をピーク部Rs,Raに対して識別し得る。
【0074】
さらに、信号処理部4’は、ピーク部Rの第2変動幅ΔfT2が第7閾値TH以内か否かを判断する(ステップSa9)。上記第7閾値THは、複数の観測対象Kから事前に得られた各種ピーク部Rv、Rs、Raの周波数変動幅(教示データ)に基づいて設定された値であり、上述した第6閾値THと同様に下限値と上限値とからなる。
【0075】
すなわち、複数の観測対象Kについて各種ピーク部Rv、Rs、Raの性質を確認した結果、ピーク部Rv(計測ピーク部)の第2変動幅は中くらいであるが、連続振動に起因するピーク部Rsの第2変動幅は比較的小さく、また降雨に起因するピーク部Raの第2変動幅は比較的大きいことが確認された。上記第7閾値THは、このようなピーク部Rv(計測ピーク部)及びピーク部Rs,Raにおける第2変動幅の特徴に基づいて設定されたものであり、ピーク部Rv(計測ピーク部)をピーク部Rs,Raに対して識別し得る。
【0076】
そして、信号処理部4’は、ピーク部Rについて上記ステップSa4~Sa9の条件を満足した場合に計測ピーク部であると認定する(ステップSa10)。一方、信号処理部4’は、ステップSa4~Sa9のいずれかの条件を満足しない場合には、ピーク電力Eが次に大きいピーク部Rを選択し(ステップSa11)、この上でステップSa4~Sa9の条件を満足するか否かを判断することによりピーク部Rがピーク部Rv(計測ピーク部)であるか否かを評価する。
【0077】
信号処理部4’は、ステップSa2で検出されたピーク部Rv(計測ピーク部)の候補についてステップSa4~Sa9の条件を満足するか否かを判断することにより、各候補がピーク部Rv(計測ピーク部)であるか否かを評価する。なお、信号処理部4’は、ステップSa2でピーク部が検出されなかった場合には、ピーク部Rv(計測ピーク部)はスペクトラムに含まれていないと判定する(ステップSa12)。
【0078】
このような本第2実施形態によれば、3つのピーク部Rv、Rs、Raについて周波数の大小関係が明確になっていない場合であっても、電波式流速計A’に作用する振動及び送信波(反射波)の伝搬路Dに存在する異物に起因する外乱の影響を抑制あるいは排除することが可能であり、以って流速Vの計測精度を従来よりも向上させることが可能である。
【0079】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記各実施形態では、流速Vの測定についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、電波式流速計Aが河川等の観測対象Kにおける計測点Pの流速V(水の流速)を測定する動作モード(流速計測モード)の他に観測対象Kにおける土石流の流速Vを計測する動作モード(土石流計測モード)を備える場合、土石流計測モードでは計測データに土石流によって一過性の振動が発生する場合がある。
【0080】
このような場合には、土石流に起因する一過性の振動と車両が橋梁を通過した場合等の一過性の振動とを性質の違いを利用して識別する。すなわち、計測信号に強度ピークQが含まれる場合、あるいは振動センサ3が規定値以上の振動を検出している期間においてステップS3の除外処理を行うことなく流速Vの演算処理を行い、連続振動に起因するピーク部Rsのピーク周波数に基づいて演算される流速(速度)が所定のしきい値を越える場合にステップS3の除外処理を行う。
【0081】
(2)上記各実施形態では、計測信号のスペクトラムのみ、あるいは計測信号のスペクトラムと振動センサ3の振動信号との組み合わせに基づいて連続振動に起因するピーク部Rs及び降雨に起因するピーク部Raを外乱として排除したが、本発明はこれに限定されない。例えば降雨センサを設けることによって計測現場における降雨の有無を検出する場合には、降雨がある場合と降雨がない場合とで場合分けして外乱となるピーク部を排除してもよい。
【0082】
(3)上記各実施形態では、周波数軸上で隣り合う2つのピーク部Rv、Rs、周波数軸上で隣り合う2つのピーク部Rv、Raあるいは周波数軸上で隣り合う3つのピーク部Rv、Rs、Raから流速Vに起因するピーク部Rv(正規ドップラー信号)を抽出して計測点Pの流速Vを演算したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、外乱信号については、連続振動に起因するピーク部Rs(第1外乱信号)及び降雨に起因するピーク部Ra(第2外乱信号)に限定されない。
【0083】
(4)上記第1実施形態において、図3に示した信号処理部4の処理手順はあくまでも一例であり、本発明はこれに限定されない。必要に応じて他の順番を採用してもよい。
【0084】
(5)上記各実施形態では、図2に示すように観測対象K(水面)の上流側に向けて送信波を放射する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、下流側に向けて送信波を放射してもよい。
【0085】
(6)上記第2実施形態では、スペクトラムに含まれる各ピーク部の属性値であるパラメータとして周波数変動幅Δf、電力変動幅ΔE、第1周波数幅fT1、第1変動幅ΔfT1、第2周波数幅fT2及び第2変動幅ΔfT2を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2周波数幅fT2及び第2変動幅ΔfT2を割愛してもよく、また第1周波数幅fT1、第1変動幅ΔfT1、第2周波数幅fT2及び第2変動幅ΔfT2に加えて、第3周波数幅fT3及び第3変動幅ΔfT3を追加してもよい。
【符号の説明】
【0086】
A,A’ 電波式流速計
B 構造物
D 伝搬路
K 観測対象
P 計測点
1 アンテナ
2 送受信回路
3 振動センサ
4,4’ 信号処理部
5 表示部
6 通信部
7 記録部

図1
図2
図3
図4
図5
図6