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  • 特許-加熱調理器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/04 20210101AFI20220715BHJP
【FI】
F24C7/04 301Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019105837
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020200953
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】朝生 祐司
(72)【発明者】
【氏名】羽山 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】駒▲崎▼ 博紀
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-247092(JP,A)
【文献】特開昭63-172831(JP,A)
【文献】特開平06-101845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体の前面に開口を有する調理庫と、前記調理庫の上部に設けられる上シーズヒータと、前記調理庫の下部に設けられる下シーズヒータと、前記下シーズヒータと前記上シーズヒータとの間に配置される被加熱物が載置される皿と、を備え、
解凍工程を有し、前記解凍工程では前記上シーズヒータで前記被加熱物を加熱する、加熱調理器であって、
前記皿の後部底面に接触して前記皿の温度を検知する皿温度センサを備え、前記上シーズヒータの通電によって前記解凍工程を開始したのちに前記皿温度センサの測定温度が所定温度上昇した場合に前記焼き工程に移行する、加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記解凍工程と焼き工程とを有し、前記解凍工程では前記上シーズヒータで前記被加熱物を加熱し、前記焼き工程では前記下シーズヒータで前記被加熱物を加熱し、前記解凍工程後に前記焼き工程に移行する、加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理器において、
前記解凍工程が終了する際の前記被加熱物の温度は0℃よりも低い、加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の加熱調理器に於いては、省手間および時短が求められている。よって、冷凍食材の解凍と焼き上げを連続して行うことで、省手間および時短が実現できる。特許文献1には、加熱室内(グリル庫内)の温度変化に基づき、冷凍食品の初期温度と重量を推定して焼き上げる加熱調理器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-104576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の加熱調理器は、加熱室内の雰囲気温度上昇値で冷凍食品か否かを判定するものである。よって、食材が載せられた皿を直接検知をすることで冷凍食品か否かを判定していないため、解凍判定が不正確という課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、冷凍食材の解凍判定精度を向上し、冷凍食材の解凍工程と焼き上げ工程を適切に切り替えて加熱調理を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加熱調理器は、本体と、本体の前面に開口を有する調理庫と、調理庫の上部に設けられる上シーズヒータと、調理庫の下部に設けられる下シーズヒータと、下シーズヒータと上シーズヒータとの間に配置される被加熱物が載置される皿と、を備え、解凍工程を有し、前記解凍工程では前記上シーズヒータで前記被加熱物を加熱するものであって、前記皿の後部底面に接触して前記皿の温度を検知する皿温度センサを備え、前記上シーズヒータの通電によって前記解凍工程を開始したのちに前記皿温度センサの測定温度が所定温度上昇した場合に前記焼き工程に移行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷凍食材の解凍判定精度を向上し、冷凍食材の解凍工程と焼き上げ工程を適切に切り替えて加熱調理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る、加熱調理器をシステムキッチンに組み込んだ状態を示す斜視図。
図2】本発明の一実施形態に係る、グリル部の断面図。
図3】従来の切り身加熱パターン
図4】本発明の一実施形態に係る、冷凍食材を解凍工程から焼く工程にかけての加熱パターン
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を用いて、本発明の実施例について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではない。本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能であり、下記の実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0010】
なお、以下では、システムキッチンに嵌め込むビルトイン型を例に挙げて説明するが、キッチンに載置する据置型の加熱調理器に適用してもよい。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る加熱調理器をシステムキッチンに収納した状態を示す斜視図である。
【0012】
図1に示すように、加熱調理器3は、鍋等の不図示の調理器具を載せる耐熱ガラスなどで構成されたプレート6と、本体2と、を備えている。なお、図1に示す符号3a~3cは、加熱範囲であり、鍋等が載置される載置部を示している。これら載置部3a~3cに鍋等を置くことにより、調理が可能となる。また、プレート6の周囲の縁部は、プレート枠14によって保護されている。
【0013】
本体2は、調理器具を電磁誘導加熱する加熱コイルユニット25、オーブン4や操作部5などを備えている。本体2がシステムキッチン1の上面の天板1aの孔から落とし込むことで設置されている。オーブン4および操作部5は、システムキッチン1の天板1aの下方の前面部から操作できるようになっている。操作部5は、主にオーブン4の電源の入・切やメニューの選択・設定の操作を行うものである。
【0014】
プレート6の前面側(手前側)には、上面操作部9が設けられ、その奥側に上面表示部10が設けられている。上面操作部9は、主に加熱コイルユニット25の操作を行うものである。上面表示部10は、上面操作部9で設定された火力などの設定状態を表示するものである。
【0015】
本体2の内部には、発熱部品である加熱コイルユニット25や電子部品、および、これら発熱部品や電子部品を冷却するための送風ファン(不図示)が設けられている。
【0016】
また、本体2の後部上面には、発熱部品である加熱コイルユニット25の廃熱や、電子部品を冷却した後の廃熱を本体2の外部に排出する排気口8a,8bが設けられている。
【0017】
オーブン4は、魚や肉、ピザなどの調理物30(図2参照)を焼く機能を有するものであり、本体2の載置部3bに対応する加熱コイルユニット25の下方に配置されている。なお、オーブン4は、本体2の左側に配置された状態を示しているが、本体2の右側に配置されていてもよい。また、オーブン4は、ロースター、グリルと称することもある。
【0018】
また、オーブン4は、例えば、前後方向(奥行き方向)に引き出し可能なドア32を備えている。ドア32の前面には、開閉する際に手を掛けて使用されるハンドル11が設けられている。
【0019】
図2は、オーブン4内の調理庫26に皿41、調理物30を収納した状態を示す断面図である。
【0020】
下ヒータ27bは、調理庫26内の下部において、主に前後方向に延在して折り返しながら配置される。上ヒータ27aは、調理庫26内の上部において、主に前後方向に延在して折り返しながら配置される。なお、下ヒータ27b及び上ヒータ27aは、シーズヒータなどで構成される加熱手段27である。下ヒータ27bと上ヒータ27aとで、皿41を上下で挟み込んで調理物30を加熱する。そして、上ヒータ27aおよび下ヒータ27bは、調理庫26の上方に設けられた不図示の制御部によって制御される。
【0021】
温度センサ70は、皿41を調理庫26内に載置した場合に、皿41の後部底面に接触する。温度センサ70の情報を用いて、皿41に載置された調理物30の温度や量を判定するものである。
【0022】
温度センサ80は、皿41よりも上方に設けられている温度センサである。図2においては、調理物30が載置される皿41の面よりも上方の空間の雰囲気温度を測定するものである。
【0023】
図3は従来の魚焼き(切り身)シーケンスを示した図である。
【0024】
冷蔵庫から取り出した約8℃の冷蔵食材を、皿41に載せて調理を開始する。まず、下ヒータ27bを用いた下焼き工程にて冷蔵食材の裏面を焼きつつ、温度センサ70の上昇値に基づき食材の分量を測定(以下、負荷量判定と呼ぶ)する。次に、冷蔵食材の分量に応じて上下焼き工程、その次に上焼き工程を行うことで、冷蔵食材の裏面および表面を焼き上げる。冷蔵食材はこの工程でおいしく焼き上げる事ができる。上下焼き工程は上ヒータ27aと下ヒータbの両方を用いた焼き工程、上焼き工程は上ヒータ27aを用いた焼き工程である。
【0025】
しかし、図3で説明をした従来のシーケンスで冷凍食材を加熱調理した場合、ある問題が生じる。冷凍食材は皿41に載置されているため、加熱調理を下焼き工程から開始してしまうと、最初に皿41が加熱された後、その熱が冷凍食材に伝わることで冷凍食材が加熱されることになる。すると、冷凍食材の温度上昇が鈍くなってしまうことから、解凍時間が長くなってしまうという問題である。
【0026】
一方、冷凍食材の温度上昇を素早く行うために、下ヒータ27bによる加熱を大火力で行った場合には、次の問題が生じる。まず、皿41が下ヒータ27bにより第火力で加熱されるので、皿41の温度が急上昇する。さらに、皿41に接触させている接触センサ70の温度も急上昇して高温になる。一方、冷凍食材は冷凍されていたことからそもそもの温度が低い。よって、調理時間が過ぎるのに伴って、皿41や温度センサ70の温度と冷凍食材の温度との差が大きく開いていく。
【0027】
つまり、冷凍食材の解凍工程および焼き工程を素早く行うためには、解凍工程中においては、冷凍食材の実際の温度を素早く上昇する必要がある。また、適切な焼き上げを実現するためには、第1に冷凍食材の実際の温度を正しく検知する必要がある。そのためには、皿41の温度を検知している温度センサ70の測定温度の急上昇を防ぐ必要がある。第2に、冷凍食材の負荷量測定を正しく行う必要がある。そのためには、下焼き工程に入る前に冷凍食材の温度が上がり過ぎないようにする必要がある。
【0028】
図4は、冷凍食材を解凍しつつ焼き上げ調理するシーケンスを示す。
【0029】
冷凍庫から取り出した約-18℃の冷凍食材を皿41に載せ、加熱調理をスタートする。まず、図3で説明した下焼き工程、上下焼き工程、上焼き工程を行う前に、まず解凍工程を行う。解凍工程では、上ヒータ27aを用いて冷凍食品を加熱する。最初に上ヒータ27aを用いて冷凍食品を加熱する事で、皿41を介さずに冷凍食材を直接加熱することができる。これにより、冷凍食材の温度を素早く上昇させることができる。よって、冷凍食材の解凍工程および焼き工程を素早く行うことができる。
【0030】
さらに、最初に上ヒータ27aで加熱することで、解凍工程中での温度センサ70の測定温度が急激に上昇することを抑えることができる。詳しく説明すると、下ヒータ27bで加熱をすると温度センサ70が配置されている空間の雰囲気温度も急上昇するため、温度センサ70の測定温度が上昇しやすくなる。一方、上ヒータ27aで加熱をすると、皿41が上ヒータ27aからの熱を遮るため、温度センサ70の雰囲気温度は急上昇しにくくなる。よって、温度センサ70の測定温度が急激に上昇することを抑えることができる。
【0031】
解凍工程終了のタイミングは、皿41の温度を直接検知している温度センサ70の測定温度が所定の温度だけ上昇(例えば20℃上昇)することで判定する。これにより、冷凍食材が完全に溶け切らない-5℃~-2℃(0℃以下であればよい)の温度で解凍工程を終了することができる。これにより、次工程で行う下焼き工程での負荷量判定がしやすくなる。そして、解凍工程から下焼き工程へ移行し、その後、負荷量判定結果に応じて冷凍食材の裏面、表面を焼き上げる。
【0032】
なお、冷凍食材の温度が0℃以下であるか否かは、温度センサ70の測定温度から推測すればよい。または、温度センサ80を用いて、皿41の載置領域や皿41よりも上方の領域の雰囲気温度、冷凍食材が配置されている空間の雰囲気温度を測定し、その雰囲気温度に基づいて冷凍食材の温度を推定すればよい。または、温度センサ70や温度センサ80以外の、冷凍食材自体の温度を測定可能な温度センサ(図示せず)を設け、その温度センサの測定温度で冷凍食材の温度を判断すればよい。
【符号の説明】
【0033】
1 システムキッチン、2 本体、3 加熱調理器、4 オーブン、5 操作部、6 プレート、8 排気口、9 上面操作部、10 上面表示部、11 ハンドル、14 プレート枠、25 加熱コイルユニット、26 調理庫、27a 上ヒータ、27b 下ヒータ、30 調理物、32 ドア、41 皿、70 温度センサ、80 温度センサ
図1
図2
図3
図4