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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】機械設備の検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20220715BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
B66B5/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019153452
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021032714
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】小平 法美
(72)【発明者】
【氏名】川崎 勝
(72)【発明者】
【氏名】馬場 理香
(72)【発明者】
【氏名】森下 真年
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-007143(JP,A)
【文献】特開2017-171480(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125256(WO,A1)
【文献】特開平08-239179(JP,A)
【文献】特開平05-306078(JP,A)
【文献】特表2009-533906(JP,A)
【文献】特開2014-098983(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168848(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
稼働に伴い音または振動を発生する機械設備の検査装置において、
前記機械設備の稼働に伴い発生する情報を計測する複数のセンサーと、
前記機械設備における当該検査装置の設置位置を特定し、
当該検査装置の設置位置ごとに計測対象の情報を対応付けて記録したセンサー情報一覧を用いて、特定された前記設置位置に対応する特定センサーを前記複数のセンサーから特定し、
前記複数のセンサーに含まれる第1のセンサーで計測した情報により前記機械設備の稼働が開始したと判断した場合、前記特定センサーで計測された情報の記録を開始させ、
前記第1のセンサーにより前記機械設備の稼働が終了したことを検知した場合、前記特定センサーで計測された情報の記録を終了させる制御部と、
前記制御部での制御に応じて、情報を記憶する記憶部を備えたことを特徴とする機械設備の検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の機械設備の検査装置において、
前記制御部は、前記複数のセンサーの少なくとも一部で計測可能な情報の記録は、当該センサーの稼働を開始させることで開始し、当該センサーの稼働を終了することで終了することを特徴とする機械設備の検査装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の機械設備の検査装置において、
前記機械設備は昇降機であり、
前記第1のセンサーは、前記昇降機の加速度を計測する加速度センサーであることを特徴とする機械設備の検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の機械設備の検査装置において、
前記複数のセンサーには、音を計測する音センサーおよび振動を計測する振動センサーの少なくとも一方が含まれ、
前記制御部は、前記特定センサーである前記音センサーおよび前記振動センサーの少なくとも一方で計測された情報を前記記憶部に記憶させ、前記音センサーおよび前記振動センサーの少なくとも一方で計測された情報を用いて、前記機械設備の異常を検知することを特徴とする機械設備の検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに機械設備の検査装置において、
前記複数のセンサーは、1つのデバイス内に設けられることを特徴とする機械設備の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その稼働に伴い音や振動を発生する機械設備を検査する技術に関する。その中でも、特に、エレベーターやエスカレーターといった昇降機を対象とする。また、検査においては、異常を検査する装置に関し、音や振動を用い検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
機械設備の一例であるエレベーターの構成機器の稼働状態検査をするための手段として、音や振動等を計測し過去の正常データと異常データと比較して機器ごとの健全性を判別する方法が知られている。例えば、特許文献1では、音と振動データを計測し管理データベースへデータを送信して異常判定を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-113775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、スマートデバイスを用いた計測が提案されているが、計測の際はスマートデバイスを直接操作して計測の開始・終了操作を行う必要がある。そのため、エレベーター稼働中にアクセスが困難な場所の計測を行う際は、以下の手順を取ることになる。エレベーター稼働前にスマートデバイスを設置して計測を開始、設置した場所から離れてエレベーターを稼働させ、エレベーターが停止した後に再びスマートデバイスへアクセスし計測を終了することになる。
【0005】
この操作により、本来取得したいデータ区間の前後にエレベーター停止中の不要なデータが付くこととなりデータ量が増大するという課題がある。特に、検査結果の分析には、エレベーターの運転状態(例えば、乗りかご位置、起動、着床、加速、減速など)が必要になってくる。これらのデータをすべて取得した場合、やはりデータ量が増大する。さらに、エレベーターの運転状態と計測データを同期して確認することができないという課題がある。
【0006】
そこで、本発明はスマートデバイスを用いてエレベーターおよびエスカレーターの異常検査をする際に、エレベーターおよびエスカレーターの運転状態を取得し、運転開始から終了までのデータ範囲や速度情報などの運転状態を計測し記録することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、検査に必要ないし有用な情報を特定して、これらを収集、記録する。このための具体的な態様として、以下の態様が含まれる。本発明の第1の態様は、稼働に伴い音または振動を発生する機械設備の検査装置において、前記機械設備の稼働に伴い発生する情報を計測する複数のセンサーと、前記複数のセンサーに含まれる第1のセンサーで計測した情報により前記機械設備の稼働が開始したと判断した場合、前記複数のセンサーの少なくとも一部で計測可能な情報の記録を開始させ、前記第1のセンサーにより前記機械設備の稼働が終了したことを検知した場合、前記複数のセンサーの少なくとも一部で計測可能な情報の記録を終了させる制御部と、前記制御部での制御に応じて、情報を記憶する記憶部を備えた機械設備の検査装置である。
【0008】
またさらに、本発明の第2の態様は、稼働に伴い音または振動を発生する機械設備の検査装置において、前記機械設備の稼働に伴い発生する情報を計測する複数のセンサーと、前記複数のセンサーそれぞれの設置位置を認識し、前記設置位置に応じて、当該センサーで計測可能な情報を記録するか否かを判断する制御部と、前記記録すると判断された情報を記憶する記憶部とを備える機械設備の検査装置である。
【0009】
なお、本発明には、機械設備の検査装置で行う検査方法や当該検査方法を実現するためのコンピュータプログラムも含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検査のために記憶するデータ量を削減でき、コストを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のエレベーターへのスマートデバイス9~13の設置位置を示す概略図。
図2】実施例1のスマートデバイス9~13における表示画面/IF部14およびその表示内容を示す概略図。
図3】実施例1で使用するセンサー情報一覧2031を示す図。
図4】実施例1の音の判定結果画面25を示す概略図。
図5】実施例1の振動の判定結果画面33を示す概略図。
図6】実施例2のエスカレーターへのスマートデバイス51~56の設置位置を示す概略図。
図7】実施例2で使用するセンサー情報一覧2032を示す図。
図8】実施例1および実施例2で異常検査を実行するシステムの構成図。
図9】実施例1および2での計測処理を含む異常検査を示すフローチャート。
図10(A)】実施例1および2における計測前のスマートデバイス9~13における表示画面/IF部14およびその表示内容(その1)
図10(B)】実施例1および2における計測前のスマートデバイス9~13における表示画面/IF部14およびその表示内容(その2)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて、本発明をエレベーターの異常検査に適用した実施例1およびエスカレーターの異常検査に適用した実施例2を説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1は、上述のとおりエレベーターの異常検査を行うものである。本検査は、図1図2に示すスマートデバイス9~13単体で行ってもよい。つまり、スマートデバイス9~13を異常検査装置として用いる。また、本検査は、図8に示すシステムで行ってもよい。実施例1では、スマートデバイス9~13単体で行う処理を主に説明する。図8に示すシステムで行う処理については、スマートデバイス9~13単体で行う処理との差異を中心に説明する。
【0014】
まず、図1は、本発明の実施例1におけるスマートデバイス9~13を、エレベーターの異常検査にためにエレベーターに設置した設置位置を示す概略図である。検査対象である機械室無しエレベーターの昇降路1内には乗りかご3と釣合い錘4が頂部プーリー6と乗りかごプーリー8と釣合い錘プーリー7を介しロープ5で接続されている。このロープ5を、モーター2を用いて送り出すことで、乗りかご8を上下に移動する。図1には、異常検査の際にモーター2の上(モーター付近)に設置されたスマートデバイス9、乗りかご3の上(乗りかご上)に設置されたスマートデバイス10、乗りかご3内(乗りかご内)に設置されたスマートデバイス12、釣合い錘4上(釣合い錘上)に設置されたスマートデバイス11、昇降路内の床面(昇降路床)に設置されたスマートデバイス13を示している。検査する対象に応じてスマートデバイス9~13の設置位置を変えて計測を行うことが可能で、音、加速度、動画、気圧、磁気など複数の信号を計測し判定を行う。なお、図1では、スマートデバイスを5つ設置する例を挙げたが、数はこれに限定されない。また、後述する機能を実現できれば、スマートデバイス以外のデバイスであってもよい。
【0015】
また、図8に、スマートデバイス9の構成および異常検査のためのシステム構成を示す。ここでは、スマートデバイス9の構成について説明する。まず、スマートデバイス9は、各種センサーを備える。センサーは、加速度センサー91、気圧センサー92、磁気センサー93、振動センサー94、カメラ95およびマイク96からなる。なお、速度センサーなど他のセンサーを加えてもよいし、その一部のセンサーはなくとも構わない。
【0016】
また、各種情報を表示し、さらに利用者(検査者)からの入力を受け付ける表示画面/IF部14を有する。表示画面/IF部14は、いわゆるタッチパネルで実現可能である。
【0017】
また、スマートデバイス9は、ネットワーク100と接続する通信部98を備える。さらに、各種情報を記憶する記憶部99と、記憶部に格納されRAM(Random Access Memory)に読み出されたプログラム、アプリに従った演算を行う制御部97を有する。これら各構成は、それぞれバスなどを介して接続されている。
【0018】
なお、図8に示すその他の構成については、後述する。
【0019】
図2は、本発明の実施例1の異常検査で用いられるである計測画面を示す概略図である。計測画面は、以下の各エリアを設ける。音データを音圧で表示する音圧エリア15
音データを周波数で表示する周波数エリア16
振動データを振動レベルで表示する振動エリア17
エレベーターの運行状態を表示する速度エリア18
スマートデバイス11~13を設置した位置の指定を受け付け、その位置を表示する計測位置エリア19
音および振動データに対し周波数フィルタを実行するための処理ボタン20
動画再生エリア21
音および動画再生ボタン22と停止ボタン23
再生エリア表示および選択用スクロールバー24
音圧エリア15、周波数エリア16、振動エリア17、速度エリア18はエレベーター稼働開始から終了までの間の計測データを、横軸時間とかご位置にて表示されている。
【0020】
また、スマートデバイス11~13は、人の操作により各種設定などを行う。
【0021】
図1に示すようにスマートデバイス11~13の設置場所は昇降路1内である。このため、スマートデバイス11~13を操作した後に人が昇降路1内から退避してからエレベーターを稼働させるため、計測の際は、スマートデバイス設置情報を入力した後に計測開始待機状態にして設置する。計測の開始および終了は、異常検査装置の設置位置ごとにエレベーターの運行状態を、各センサー情報を元に取得し、エレベーターの運転開始をから終了までの区間を記録する。合わせてエレベーターの運転状態(かご位置、速度情報など)を各センサー情報から算出し記録する。
【0022】
また、図10(A)に、計測前のスマートデバイス9~13における表示画面/IF部14およびその表示内容を示す。図2と比較して、計測結果がないため、音圧エリア15、周波数エリア16、振動エリア17、速度エリア18の代わりに、空白の計測データエリア101が表示される
次に、スマートデバイス9~13での計測処理について、図9、10(A)(B)も参照して説明する。なお、計測処理は、スマートデバイス9~13のそれぞれで行われるが、処理内容は同様であるため、スマートデバイス9を例に説明する。
【0023】
まず、ステップS1において、スマートデバイス9は、表示画面/IF部14を介して、検査者から、計測する情報の指定を受け付ける。この際の表示は、図10(A)に示すとおりである。スマートデバイス9は、表示画面/IF部14中の計測位置エリア19に対して、検査者から計測位置の指定を受け付ける。これを受け付けると、制御部97の処理により計測位置エリア19に計測位置を表示する。この指定および表示は、「昇降路床」「乗りかご内」「乗りかご上」「モーター付近」「釣合い錘上」といった内容で指定、表示される。
【0024】
また、ステップS1においては、計測位置エリア19が指定されると、位置センサー(図示せず)を起動し、この計測結果に応じて設置位置を特定してもよい。この場合、位置センサーで計測された座標情報に基づき、「昇降路床」「乗りかご内」「乗りかご上」「モーター付近」「釣合い錘上」のいずれかであるかを判定する。これは、座標情報と設置位置を対応付ける情報を用いて行う。さらに、位置センサーは、GPSセンサーやジャイロセンサーで実現可能である。
【0025】
次に、ステップS2において、制御部97は、計測に用いるセンサーを特定する。これは、図3に示すセンサー情報一覧2031を用いて、ステップS1で指定された設置位置に対応するセンサーを特定する。具体的には、ステップS1で「昇降路床」が指定された場合(昇降路床にスマートデバイスが設置された場合)、図3で「〇」が記載された動画=カメラ95、音=マイク96、振動センサー94を特定する。そして、特定されたセンサーで計測された情報は記録される。計測、記録については、フローチャートを用いて後述する。なお、本例では、音と振動が各設置場所で「〇」となっている。これは、異常検査に必須の情報であることに起因する。このように、各設置場所で「〇」となる情報については、センサー情報一覧2031に記録せず、別途必須情報として登録しておいてもよい。
【0026】
また、ステップS2でセンサーが特定されると、特定されたセンサーを検査者が識別できることが好適である。このために、制御部97が表示画面/IF部14に、図10(B)に示す情報を表示する。つまり、ステップS1~S2にかけて、図10(A)から図10(B)に、表示画面/IF部14の内容が遷移する。
【0027】
この例では、音=マイク96が特定された場合を示す。このため、制御部97は、マイク96で計測され、その結果物となる音圧と周波数を表示する音圧エリア15と周波数エリア16に、仮想的な計測データを表示する。これは、記憶部99に格納されている過去データや模式的に作成したデータであってもよい。また、これらデータを表示せず、「音圧」「周波数」との明記および音圧エリア15、周波数エリア16の領域(空白)を表示してもよい。
【0028】
次に、ステップS3において、制御部97は、加速度センサー91で加速度情報を用いて、エレベーターが稼働したかを判断する。これは、加速度センサー91で加速度の計測を開始したか、つまり、エレベーターの動きを示す加速を行っているかで判断可能である。
【0029】
なお、スマートデバイス13のように、「昇降路床」に設置されたため、加速度センサー91ではエレベーターの稼働を計測できない場合、マイク96や振動センサー94を用いて、稼働開始を検知してもよい。
【0030】
ステップS3での判断の結果、検知してないと判断すれば(NO)、検知するまで処理を繰り返す。計測したと判断すれば(YES)、ステップS4へ進む。
【0031】
次に、ステップS4において、制御部97は、ステップS2で特定されたセンサーでの計測された情報を計測し、記憶部99に記憶する。本ステップでは、特定されたセンサーでの計測を行ってもよいし、特定されなかったセンサーで計測した情報を除外して記憶してもよい。つまり、特定されたセンサーを稼働させる方法と、特定されたセンサーの情報を記憶する方法を取り得る。
【0032】
次に、ステップS5において、制御部97は、加速度センサー91で加速度情報を用いて、エレベーターが停止したかを判断する。これは、加速度センサー91で加速度の計測が終了したか、つまり、加速度データが停止を示すかで判断可能である。
【0033】
なお、スマートデバイス13のように、「昇降路床」に設置されたため、加速度センサー91ではエレベーターの停止を計測できない場合、マイク96や振動センサー94を用いて、停止を検知してもよい。つまり、本ステップでは、ステップS3と逆の処理を実行する。
【0034】
ステップS5での判断の結果、検知してないと判断すれば(NO)、ステップS4に戻り計測を繰り返す。検知したと判断すれば(YES)、ステップS6へ進む。なお、本例では、ステップS3とS5で同じセンサーを用いているが、それぞれ別センサーを用いてもよい。
【0035】
次に、ステップS6において、制御部97は、計測された情報から、検査のための分析データを生成する。これは、計測された情報の特徴の抽出や稼働開始時間の特定を含む。さらに、カメラ95で撮影された動画から速度を算出するなど、計測された情報から他の情報を生成することも含む。
【0036】
ここで、図3に示すセンサー情報一覧2031を参照しながら、ステップS2~S7のセンサーの特定から計測された情報の計測・記憶および分析用データの生成について説明する。なお、下記の記録は、制御部97が記憶部99に対して行う。
【0037】
昇降路内の床面「昇降路床」に設置されたスマートデバイス13で計測を行う場合は、動画にてかごを撮影し動画上のかごの大きさの変化から、エレベーターの稼働開始、速度、稼働終了点を抽出し記録する。
【0038】
モーター2の上「モーター付近」に設置されたスマートデバイス9で計測を行う場合は、モーター回転に発生する加速度からエレベーターの稼働開始、速度、稼働終了点を抽出し記録する。また、モーター2を回転させるために発生する磁気を計測することで、より正確な稼働状態を取得することが可能である。
【0039】
乗りかご3の上「乗りかご上」に設置されたスマートデバイス10で計測を行う場合は、加速度と気圧の情報よりエレベーターの稼働開始、速度、稼働終了点を抽出し記録する。
【0040】
乗りかご3内「乗りかご内」に設置されたスマートデバイス12で計測を行う際は、加速度と気圧の情報よりエレベーターの稼働開始、速度、稼働終了点を抽出し記録する。
【0041】
釣合い錘4上「釣合い錘付近」に設置されたスマートデバイス11で計測を行う場合は、加速度と気圧の情報よりエレベーターの稼働開始、速度、稼働終了点を抽出し記録する。
【0042】
次に、ステップS7において、制御部97が、ステップS6で生成された分析データを用いて、データ分析を行う。
【0043】
例えば、上述したエレベーターの速度、加速度、階床情報を、事前に記憶部99に格納しておき、計測データや分析データと比較することでかご位置を算出し、表示画面/IF部14上に表示する。
【0044】
また、ステップS7では異常検査の判定も行ってもよい。これは、音および振動データに対して、予め記憶部99に記憶した正常のデータや異常データを用い、分析データや計測データの周波数、信号レベル、信号発生のタイミング等の特徴量とデータベースの値を比較することで判定を行う。この比較の結果、正常データと異常データのいずれにより近似しているかで判定する。また、正常データと異常データのいずれか一方を用いる構成としてもよい。なお、判定を含むステップSの処理はこれらに限定されるものではなく、例えば特開2018-48886号公報に開示された技術を用いてもよい。
【0045】
このステップS7の判定処理を行った際に、表示画面/IF部14における音の判定結果画面25を図4に示す。音の判定結果画面25には、横軸かご位置で縦軸を音周波数、色の濃さで周波数ごとの大きさを表示する音のスペクトルグラフ表示エリア26を有する。そして、前記スペクトルグラフ表示エリア26上に異常と判定された複数のエリアに上に異常抽出点マーク27、28、29を表示する。前記異常抽出点マークに対応する判定、原因、対応を表示する判定結果表示エリア30、31、32を有する。
【0046】
また、図5には、表示画面/IF部14における振動の判定結果画面33を示す。振動の判定結果画面33には、横軸かご位置で縦軸を振動周波数、色の濃さで周波数ごとの大きさを表示する振動のスペクトルグラフ表示エリア34を有する。そして、前記スペクトルグラフ表示エリア34上に異常と抽出された複数のエリアに上に異常抽出点マーク35、36を表示する。前記異常抽出点マークに対応する判定、原因、対応を表示する判定結果表示エリア37、38を有する。
【0047】
図4および図5のスペクトルグラフ表示エリアにおいて、異常と抽出されていないエリアで任意のエリアを選択して判定を行うことで、異常と判定されていないエリアで発生している音および振動の原因と対応を表示することが可能である。
【0048】
以上、スマートデバイス9~13単体での異常検査について説明した。続いて、スマートデバイス9~13と、これらとネットワーク100を介して接続されるサーバ装置200が連携して異常検査を行う例を説明する。
【0049】
図8に、本例で用いられるサーバ装置200などの構成を示す。サーバ装置200はいわゆる情報処理装置として実現される。つまり、各種情報を記憶する記憶部203と、記憶部に格納されRAM(Random Access Memory)に読み出されたプログラムに従った演算を行う制御部201、ネットワーク100と接続される通信部202を有する。さらに、端末装置300と接続されるアダプタ204を有する。これら各構成は、それぞれバスを介して接続されている。
【0050】
以下、これら各装置を用いて異常検査の処理について、図8を用いて説明する。なお、本処理は、上述の単体での処理と比較して、主だった相違は主体の相違である。このため、以下の説明では、スマートデバイス9~13単体での処理の相違を中心に説明する。
【0051】
まず、ステップS1およびS2では、上述と同様に各スマートデバイス9~13が計測情報の指定を受け付け、センサーを特定する。
【0052】
また、ステップS3でも各スマートデバイス9~13が、エレベーターの稼働開始を検知したかを判定する。但し、ステップS3でYESの場合、計測を開始する旨を、各スマートデバイス9~13より、ネットワーク100を介してサーバ装置200へ送信する。これにより、制御部201では、故障検査処理の起動を掛ける。
【0053】
次に、ステップS4において、サーバ装置200の制御部201により、各スマートデバイス9~13のセンサーが検知した情報を計測し、記憶部203に記憶する。この際の制御部201の動作は、制御部97と同様である。また、この際、計測した情報を一旦各スマートデバイス9~13で各記憶部(記憶部99等)に格納し、サーバ装置200へ送信してもよい。
【0054】
次に、ステップS5において、各スマートデバイス9~13が、エレベーターの停止を検知したかを判定する。NOであれば各スマートデバイス9~13での計測を含む、ステップS4の処理を繰り返す。YESの場合、ステップS6に進む。また、YESの場合、各スマートデバイス9~13が、計測を終了したことを、サーバ装置200へ通知する。
【0055】
なお、ステップS4において、各スマートデバイス9~13が計測した情報を一旦記憶した場合、ステップS5でYESと判断された際に、記憶された情報をサーバ装置200へ送信する。
【0056】
次に、ステップS6において、サーバ装置200の制御部201が上述したスマートデバイスで行うデータ分析を行う。この際、データの出力先は、端末装置300の表示画面となる。さらに、ステップS7も、サーバ装置200の制御部201が上述したスマートデバイスで行う処理を実行する。この結果も、端末装置300の表示画面に表示する。
【0057】
なお、本例では、スマートデバイスを用いたが、各種センサー装置を各設置位置に設置して処理を行ってもよい。この場合、スマートデバイス9に代わり、計測情報の指定の受け付け等は、端末装置300を介して実行する。
以上で、実施例1の説明を終わる。
【実施例2】
【0058】
次に、エスカレーターに対する異常検査を行う実施例2について、説明する。実施例1と2の主だった相違は、検査対象、検査対象の相違による利用するスマートデバイスの設置場所およびセンサー情報一覧程度である。また、実施例2も実施例1と同様に、スマートデバイス単体(本実施例ではスマートデバイス51~56)でもしくはサーバ装置200と連携して処理することが可能である。
【0059】
このため、実施例2では、実施例1と同様に、図8に示す構成を用い、図9に示すフローチャートに従って処理を行う。このため、上述の相違点を中心に実施例を説明し、構成や処理フローについては省略する。
【0060】
図6は、本発明の実施例2のエスカレーター異常検査装置の少なくとも一部として用いることが可能なスマートデバイス51~56の設置状態を示す概略図である。エスカレーターは、図6に示すように、上下階の間に架設されたトラス39によって支持されている。上部トラス41内には、エスカレーターの駆動装置42および制御盤43が設置されている。駆動装置42は、制御盤43によってその稼働が制御され、駆動チェーン44を介して駆動スプロケット45を駆動する。
【0061】
また、下部トラス40内には、駆動スプロケット45と対をなす従動スプロケット46が設置されており、これら駆動スプロケット45と従動スプロケット46との間に踏段チェーン47が巻き掛けられている。そして、この踏段チェーン47に多数の踏段48が連結されており、駆動装置42で駆動スプロケット45を回転させることで踏段チェーン47が駆動スプロケット45と従動スプロケット46との間を周回する。また、多数の踏段48が図示しないガイドレールに沿って上階側乗降口と下階側乗降口との間で循環移動する構造となっている。
【0062】
また、循環移動する踏段48の左右両側には欄干49が立設されており、欄干49の外周に手摺ベルト50が装着されている。手摺ベルト50は、踏段48上に搭乗している乗客が把持する手摺である。
【0063】
図6には異常検査の際に、下部トラス内に設置されたスマートデバイス51、下部乗り場に設置されたスマートデバイス52、踏段48上に設置されたスマートデバイス53、上部乗り場に設置されたスマートデバイス54、下部トラス内に設置されたスマートデバイス55、駆動装置42上に設置されたスマートデバイス56を示している。実施例1と同様に対象に応じて設置位置を変え検査を行うことが可能で、音、加速度、動画、気圧、磁気など複数の信号を計測し判定を行う。
【0064】
計測の際は、スマートデバイス設置情報を入力した後に計測開始待機状態にして設置する。計測の開始および終了は、異常検査装置の設置位置ごとにエスカレーターの運行状態を、各センサー情報の少なくとも一部を元に特定し、エスカレーターの運転開始をから終了までの区間を記録する。合わせてエスカレーターの運転状態(ステップ位置、速度情報など)を各センサー情報から算出し記録する。
【0065】
図7にスマートデバイス51~56の設置位置ごとに使用するセンサー情報一覧2032を示す。これは、実施例1で用いる図3に示すセンサー情報一覧2031と同様の構成であり、設置位置が異なる。また、図3と同様に、各設置場所で「〇」となる音と振動については、本一覧への記録を省略してもよい。 下部トラス40、上部トラス41、下部乗り場、上部乗り場に設置して計測を行う際は、各スマートデバイス54で、動画を用い踏段の動きを検出し、稼働による振動を計測することで、エスカレーターの稼働開始、速度、稼働終了点を抽出し記録する。そのうえで、他のスマートデバイス51~53,55および56がスマートデバイス」54の起動に連動して、計測を開始(もしくは計測した記録を開始)する構成としてもよい。
【0066】
なお、下部トラス40と上部トラス41、下部乗り場と上部乗り場の計測情報は同じ種類となる。このため、図7に示すように設置場所は「上下トラス内」「上下乗場」「踏段」「モーター付近」と登録しておくことが可能である。また、本例では、同種「トラス内」「乗場」で同じ計測情報となったが、異種の設置場所でも計測情報が同じ場合は、センサー情報一覧2032でまとめて記録することで、データ量を削減可能になる。
【0067】
踏段48上に設置する場合は、加速度と気圧の情報よりエスカレーターの稼働開始、速度、稼働終了点を抽出し記録する。
【0068】
駆動装置42の上に設置されたスマートデバイス56で計測を行う際は、駆動装置の回転に発生する加速度からエスカレーターの稼働開始、速度、稼働終了点を抽出し記録する。合わせて駆動装置を回転させるために発生する磁気も計測することで、より正確な稼働状態を推定することが可能である。
【0069】
なお、上述のとおり異常検査の判定は、エレベーター同様に音および振動データに対して、正常のデータベースと各機器ごとの異常データベースを用いる。つまり、計測データの周波数、信号レベル、信号発生のタイミング等の特徴量とデータベースの値を比較することで判定を行う(ステップS7)。
【0070】
なお、実施例1および2では、異常検査を対象としたが、必ずしもこれに限定されない。例えば、予兆検知などにも適用可能である。
【0071】
以上のとおり、実施例1および2では、エレベーターとエスカレーターを検査対象としたが、稼働に伴い音や振動を発生するものであれば、本発明を適用可能である。例えば、自動車、列車、生産設備などが例示可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 昇降路、2 モーター、3 乗りかご4 釣合い錘、5 ロープ、6 頂部プーリー、7 吊りあい重りプーリー、8 乗りかごプーリー、9~13、51~56 スマートデバイス、14 表示画面/IF部、91 加速度センサー、92 気圧センサー、93 磁気センサー、94 振動センサー、95 カメラ、96 マイク、97 制御部、98 通信部、99 記憶部、100 ネットワーク、200 サーバ装置、201 制御部、202 通信部、203 記憶部、204 アダプタ、300 端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10(A)】
図10(B)】