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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】空冷式オイルフリー圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/02 20060101AFI20220715BHJP
   F04C 18/16 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
F04C29/02 321B
F04C29/02 331Z
F04C18/16 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019237294
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105378
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】521362885
【氏名又は名称】コベルコ・コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】平田 和也
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003720(JP,A)
【文献】実開昭54-002858(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/02
F04C 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受で回転可能に支持されたスクリューロータを備えたオイルフリー式の圧縮機本体と、
前記圧縮機本体を駆動するモータと、
前記モータに動力伝達部を介して接続され、油を循環させるために前記モータで駆動される油ポンプと、
前記油ポンプによって吐出された油を前記軸受が少なくとも含まれる給油箇所に供給するための給油流路と、
前記給油流路に設けられた空冷式油冷却器と、
前記空冷式油冷却器の入口よりも上流の分岐位置で前記給油流路から分岐し、前記空冷式油冷却器を迂回し、前記給油流路の前記空冷式油冷却器の出口よりも下流側の合流位置で前記給油流路に合流するバイパス流路と、
前記分岐位置に設けられた温調弁と、
前記空冷式油冷却器の前記出口と前記合流位置との間の前記給油流路に設けられ、前記空冷式油冷却器の前記出口から前記合流位置に向かう油の流れは許容するが、前記合流位置から前記空冷式油冷却器の前記出口に向かう油の流れを遮断する逆止弁と、
前記逆止弁の下流側における前記給油流路又は前記バイパス流路から分岐し、前記温調弁と前記逆止弁との間の前記給油流路又は前記空冷式油冷却器に合流するリリーフ流路と、
前記リリーフ流路に設けられたリリーフ弁と
を備え、
前記リリーフ弁は、前記空冷式油冷却器が非充満状態であるとき、前記逆止弁の下流側の前記給油流路における給油圧力又は前記逆止弁の下流側の前記バイパス流路における給油圧力が予め定められた設定圧力未満であれば、前記リリーフ流路を介して前記空冷式油冷却器へ向かう油の流れを遮断し、前記給油圧力が前記予め定められた設定圧力以上であれば前記リリーフ流路を介して前記空冷式油冷却器へ向かう油の流れを許容する、空冷式オイルフリー圧縮機。
【請求項2】
前記リリーフ流路は、前記空冷式油冷却器に合流する、請求項1に記載の空冷式オイルフリー圧縮機。
【請求項3】
前記リリーフ流路は、前記逆止弁と前記空冷式油冷却器の前記出口との間の前記給油流路に合流する、請求項1に記載の空冷式オイルフリー圧縮機。
【請求項4】
前記リリーフ弁は、前記設定圧力が前記軸受に油を供給するために少なくとも必要な最低給油圧力よりも高く設定されている、請求項1に記載の空冷式オイルフリー圧縮機。
【請求項5】
前記温調弁は、サーモワックスの熱膨張により移動して弁開度を変化させる弁体を備え、温調弁内部を通過する流体の温度変化に応じて弁開度を変化させることで前記空冷式油冷却器に流れる油と前記バイパス流路に流れる油の流量比を自律的に調節して循環する油の温度を所定範囲内に調節する、請求項1から4のいずれか1項に記載の空冷式オイルフリー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空冷式オイルフリー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
空冷式熱交換器を備えたオイルフリースクリュー圧縮機(空冷式オイルフリースクリュー圧縮機)において、圧縮機本体を駆動するためのモータに油ポンプを接続し、このモータで油ポンプも駆動するようにしたものが知られている。この空冷式オイルフリースクリュー圧縮機では、パッケージ内での空冷式熱交換器の設置場所の自由度が小さく、圧縮機本体から離れた場所に空冷式熱交換器が設置される。ここで、空冷式熱交換器には油冷却器(空冷式油冷却器)が含まれており、油ポンプから空冷式油冷却器を経由して圧縮本体の軸受等の給油箇所に対する給油が実行される。具体的には、圧縮機本体の運転開始と同時に油ポンプの駆動が開始される。しかし、油ポンプから離れた空冷式油冷却器を経由させる必要があり、油ポンプから圧縮機本体の軸受等の給油箇所に至るまでの油流路長が長いため、圧縮機本体の起動初期段階(特に油が低温である場合)において、給油箇所に十分な油の供給が行われていない状態でしばらく運転させる状態が生じる。そのため、起動時に軸受等が損傷するおそれがある。
【0003】
特許文献1に開示された空冷式オイルフリースクリュー圧縮機では、かかる圧縮機本体の運転開始の油供給の不足に対する対策がなされている。具体的には、この空冷式オイルフリースクリュー圧縮機は、空冷式油冷却器を迂回するバイパス流路、つまり油ポンプの吐出側と空冷式油冷却器の入口とを接続する流路から分岐し、空冷式油冷却器の出口から給油箇所に向かう流路に合流する流路を備える。バイパス流路の分岐位置には、温調弁が設けられている。この温調弁は、油ポンプからの空冷式油冷却器への油の流れを許容する一方、バイパス流路への油の流れを遮断する機能と、油ポンプからバイパス流路への油の流れを許容する一方、空冷式油冷却器への油の流れを遮断する機能とを備えている。また、空冷式油冷却器の出口から給油箇所に向かう流路には、逆止弁が設けられている。この逆止弁は、空冷式油冷却器の出口から給油箇所へ向かう油の流れを許容する一方、それとは逆向きの流れ、つまり給油箇所側から空冷式油冷却器の出口に向かう油の流れ(逆流)を遮断する。
【0004】
特許文献1の空冷式オイルフリースクリュー圧縮機では、圧縮機本体の起動時に油が低温である場合、温調弁によって油ポンプから油冷却器への油の供給を遮断され、バイパス流路を介して油ポンプからの油が給油箇所に供給される。また、逆止弁によって、給油箇所側から油冷却器への油の逆流が防止される。これらにより、圧縮機本体の起動から給油箇所に対する給油が開始されるまでの時間の短縮が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-3720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、特許文献1のオイルフリースクリュー圧縮機では、圧縮機本体の起動時に油が低温である場合、温調弁によって油ポンプから空冷式油冷却器への油の供給が遮断されると共に、逆流弁により空冷式油冷却器への逆流が防止されるので、空冷式油冷却器へ油が流入しない。そのため、油の温度が上昇して温調弁が油ポンプからの油冷却器への油の流れを許容してから、非充満状態(例えば、略からの状態)である油冷却器に対し油の流入が開始される。その結果、油冷却器に対する油の充填が完了するまでは、軸受等の給油箇所への油供給が一時的に停止する恐れがある。つまり、軸受等の給油箇所は一時的に断油状態となる恐れがある。軸受等の給油箇所への油供給の一時的な停止が継続する時間(断油時間)は、油冷却器の容量で決まる。油冷却器の容量が大きい場合には断油時間が長くなり、軸受等の破損の原因となり得る。
【0007】
本発明は、空冷式オイルフリー圧縮機において、圧縮機本体の起動から給油箇所への給油開始までの時間を短縮しつつ、給油箇所への油供給の一時的な停止が継続する時間(断油時間)を短縮することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、軸受で回転可能に支持されたスクリューロータを備えたオイルフリー式の圧縮機本体と、前記圧縮機本体を駆動するモータと、前記モータに動力伝達部を介して接続され、油を循環させるために前記モータで駆動される油ポンプと、前記油ポンプによって吐出された油を前記軸受が少なくとも含まれる給油箇所に供給するための給油流路と、前記給油流路に設けられた空冷式油冷却器と、前記空冷式油冷却器の入口よりも上流の分岐位置で前記給油流路から分岐し、前記空冷式油冷却器を迂回し、前記給油流路の前記空冷式油冷却器の出口よりも下流側の合流位置で前記給油流路に合流するバイパス流路と、前記分岐位置に設けられた温調弁と、前記空冷式油冷却器の前記出口と前記合流位置との間の前記給油流路に設けられ、前記空冷式油冷却器の前記出口から前記合流位置に向かう油の流れは許容するが、前記合流位置から前記空冷式油冷却器の前記出口に向かう油の流れを遮断する逆止弁と、前記逆止弁の下流側における前記給油流路又は前記バイパス流路から分岐し、前記温調弁と前記逆止弁との間の前記給油流路又は前記空冷式油冷却器に合流するリリーフ流路と、前記リリーフ流路に設けられたリリーフ弁とを備え、前記リリーフ弁は、前記空冷式油冷却器が非充満状態であるとき、前記逆止弁の下流側の前記給油流路における給油圧力又は前記逆止弁の下流側の前記バイパス流路における給油圧力が予め定められた設定圧力未満であれば、前記リリーフ流路を介して前記空冷式油冷却器へ向かう油の流れを遮断し、前記給油圧力が前記予め定められた設定圧力以上であれば前記リリーフ流路を介して前記空冷式油冷却器へ向かう油の流れを許容する、空冷式オイルフリー圧縮機を提供する。
【0009】
圧縮機本体の起動時に油が低温である場合、温調弁は空冷式油冷却器の入口への油の流れを遮断する。そのため、油ポンプから空冷式油冷却器への油の供給が遮断され、バイパス流路を介して油ポンプからの油が給油箇所に供給される。また、逆止弁によって、バイパス流路側から空冷式油冷却器への油の逆流が防止される。これらにより、圧縮機本体の起動から給油箇所に対する給油が開始されるまでの時間が短縮される。
【0010】
温調弁によって空冷式油冷却器の入口への油の流れが遮断されていても、逆止弁の下流側における給油流路の給油圧力又はバイパス流路における給油圧力が予め定められた設定圧力以上となると、リリーフ弁は、リリーフ流路を介して空冷式油冷却器への油の流れを許容する。そのため、温調弁によって空冷式油冷却器の入口への油の流れが遮断されていても、バイパス流路を介した圧縮機本体の給油箇所の供給量はリリーフ弁の設定圧力によって決まる必要最低限の量に抑制され、必要最低限の量を上回る量の油、つまり過剰分の油はリリーフ流路を介して空冷式油冷却器に充填される。このように空冷式油冷却器を迂回して給油箇所に油を供給している間も、過剰分の油を空冷式油冷却器に充填することで、温調弁が空冷式油冷却器の入口への油の流れを遮断する状態から許容する状態に切り換わった際に一定量の油が既に空冷式油冷却器内に充填されていることを確保できる。その結果、温調弁が空冷式油冷却器の入口への油の流れを許容する状態に切換わった際の、給油箇所への油供給の一時的な停止が継続する時間(断油時間)を短縮することができる。
【0011】
前記リリーフ流路は、前記空冷式油冷却器に合流してもよい。
【0012】
前記リリーフ流路は、前記逆止弁と前記空冷式油冷却器の前記出口との間の前記給油流路に合流してもよい。
【0013】
前記リリーフ弁は、前記設定圧力が前記軸受に油を供給するために少なくとも必要な最低給油圧力よりも高く設定されていることが望ましい。これにより、軸受への最低限の給油を確保しながら、リリーフ弁を介して空冷式油冷却器へ向かう油の流れを可及的に増やすことができる。
【0014】
前記温調弁は、サーモワックスの熱膨張により移動して弁開度を変化させる弁体を備え、温調弁内部を通過する流体の温度変化に応じて弁開度を変化させることで前記空冷式油冷却器に流れる油と前記バイパス流路に流れる油の流量比を自律的に調節して循環する油の温度を所定範囲内に調節するものであってもよい。これにより、制御装置により弁の開度を調節するような煩雑な制御が不要となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の空冷式オイルフリー圧縮機によれば、圧縮機本体の起動から給油箇所への給油開始までの時間を短縮しつつ、給油箇所への油供給の一時的な停止が継続する時間(断油時間)を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る空冷式オイルフリースクリュー圧縮機の模式図。
図2図1の部分拡大図。
図3】変形例に係る図2と同様の図。
図4】変形例に係る図2と同様の図。
図5】変形例に係る図2と同様の図。
図6】変形例に係る図2と同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して本発明の実施形態に係る空冷式オイルフリースクリュー圧縮機を説明する。
【0018】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係る空冷式オイルフリー圧縮機の一例である空冷式オイルフリースクリュー圧縮機(以下、圧縮機という)1は、オイルフリー式のスクリュー圧縮機本体(以下、圧縮機本体という)2を備える。圧縮機本体2は、一対のロータ、つまり雄ロータ3と雌ロータ4が収容されたロータ室2aを備える。雄ロータ3のロータ軸3aは一対の軸受5A,5Bにより支持され、雌ロータ4のロータ軸4aも一対の軸受6A,6Bにより回転可能に支持されている。また、軸受5A,5Bと雄ロータ3との間にはロータ軸3aの軸封部7A,7Bがそれぞれ配置され、軸受6A,6Bと雌ロータ4との間にはロータ軸4aの軸封部7A,7Bがそれぞれ配置されている。軸封部7A,7B,8A,8Bはそれぞれ、軸受側からロータ室2a側への油の漏洩を防止するためのオイルシールと、ロータ室2a側への空気の漏洩を防止するためのエアシールとを備える。
【0019】
圧縮機1は、圧縮機本体2と後述する油ポンプ11を駆動するためのモータ12と、モータ12の駆動力を圧縮機本体2とモータ12に伝達する伝動機構(動力伝達部)13を備える。モータ12の出力軸12aに固定されたプーリ15と、伝動機構13が備えるシャフト14に取り付けられたプーリ16とに、ベルト17が掛け渡されている。プーリ15,16とベルトを介して、出力軸12aの回転がシャフト14に伝達される。シャフト14は一対の軸受18A,18Bに回転可能に支持されている。シャフト14には、圧縮機本体2に回転を伝えるためのギア19と、油ポンプ11に回転を伝えるためのギア20が固定されている。ギア19には、雄ロータ3のロータ軸3aに固定されたギア21が噛合しており、シャフト14の回転が雄ロータ3のロータ軸3aに伝達される。雄ロータ3のロータ軸3aに固定された同期ギア22と、雌ロータ4のロータ軸4aに固定された同期ギア23が噛合している。雄ロータ3のロータ軸3aの回転は、同期ギア22,23を介して雌ロータ4のロータ軸4aに伝達される。ギア20には、油ポンプ11のシャフト11aに固定されたギア24が噛合している。伝動機構13は、軸受18A,18Bとギア19~21,24が収容されたケーシング25を備える。
【0020】
モータ12により伝動機構13を介して圧縮機本体2の雄ロータ3が回転されると、雄ロータ3に噛合した状態で雌ロータ4が同期回転する。その結果、圧縮機本体2の吸込口2bから吸込流路26を介して空気が吸い込まれ、吐出口2cから吐出された圧縮された空気が吐出流路27を介して需要設備に対して供給される。
【0021】
モータ12が作動して圧縮機本体2を駆動すると、それと同時に伝動機構13を介して油ポンプ11のシャフト11aが回転され、油ポンプ11が油を循環させるために駆動される。つまり、油ポンプ11はモータ12及び圧縮機本体2と同期して駆動される。
【0022】
圧縮機1は、所定の給油箇所、つまり圧縮機本体2の軸受5A,5B,6A,6Bと同期ギア22,23、並びに伝動機構13の軸受18A,18Bとギア19~21,24(給油箇所)に給油するための給油機構31を備える。
【0023】
給油機構31は、前述の給油箇所を経た油が回収される油溜まり32をケーシング25の底部に備える。また、給油機構31は、油溜まり32から給油箇所に至る給油流路34を備える。
【0024】
給油流路34は、油溜まり32と油ポンプ11の吸込口11bを接続する部分34aと、油ポンプ11の吐出口11cと接続された部分34bと、この部分34bから分岐して個々の給油箇所へ給油するための部分34c,34d,34e,34f,34g,34h,34iとを備える。給油流路34の部分34aにはストレーナ35が設けられている。また、給油流路34の部分34bには空冷式油冷却器(以下、油冷却器)36、逆止弁37、オイルフィルタ38、及び油温センサ39が設けられている。油溜まり32から部分34aを介して油ポンプ11によって吸い込まれた油は、油ポンプ11から部分34bに吐出され、部分34c~34iを介して個々の給油箇所に供給される。つまり、給油流路34は、油ポンプ11によって吐出された油を、油冷却器36に送ってから給油箇所に供給する機能を有する。
【0025】
図2も併せて参照すると、給油機構31は、前述の油冷却器36と逆止弁7に加え、バイパス流路41、温調弁42、リリーフ流路43、及びリリーフ弁44を備える。
【0026】
バイパス流路41は、油冷却器36の入口36aよりも上流の分岐位置P1で給油流路34の部分34bから分岐している。バイパス流路41は、油冷却器36を迂回し、油冷却器36の出口36bよりも下流側の合流位置P2で給油流路34の部分34bに合流している。
【0027】
逆止弁37は、油冷却器36の出口36bと合流位置P2との間の給油流路34の部分34bに設けられている。逆止弁37は、油冷却器36の出口36bから合流位置P2に向かう油の流れは許容するが、合流位置P2から油冷却器36の出口36bに向かう油の流れを遮断する。
【0028】
温調弁42は、循環する油を空冷式油冷却器36側とバイパス流路41側とに分ける分岐位置P1に設けられている。温調弁42は、サーモワックスの熱膨張により移動して弁開度を変化させる弁体を備えている。温調弁42は、内部を通過する流体の温度変化に応じて熱膨張するワックス(サーモワックス)を利用して第1位置と第2位置との間で弁体を移動させることで弁開度を変化させる。すなわち、温調弁42は、内部を通過する流体の温度変化に応じて弁開度を変化させることで空冷式油冷却器36に流れる油と前記バイパス流路に流れる油の流量比を自律的に調節して循環する油の温度を所定範囲内(予め定められた設定温度範囲内)に調節することが可能である。温調弁42は、流体の温度が所定の温度範囲の上限値(予め定められた設定温度範囲)より高い場合には、弁体を第1位置に移動させて油ポンプ11からの油冷却器36の入口36aへの油の流れを許容する一方、バイパス流路41への油の流れを遮断する。また、流体の温度が所定の温度範囲の下限値(予め定められた設定温度範囲)より低い場合には、弁体を第2位置に移動させて油冷却器36の入口36aへの油の流れを遮断する一方、油ポンプ11からバイパス流路41への油の流れのみを許容する。
【0029】
本実施形態では、リリーフ流路43は、一端が逆止弁37の出口側の給油流路34の部分34b、より具体的には逆止弁37と合流位置P2との間の給油流路34の部分34bから分岐している。また、本実施形態では、リリーフ流路43は、他端が油冷却器36の出口36b側、より具体的には油冷却器36の出口36bに近い部分に合流している。
【0030】
リリーフ流路43は、一端が逆止弁37の出口側と給油圧力が実質的に同じ位置から分岐してもよい。例えば、図3に示すように、リリーフ流路43の一端は、逆止弁37の下流側における給油流路34の部分34bから分岐してもよい。また、図4に示すように、リリーフ流路43の一端は、バイパス流路41から分岐してもよい。
【0031】
図5に示すように、リリーフ流路43の他端は、逆止弁37と油冷却器36の出口36bとの間の給油流路34の部分34bに合流してもよい。また、図6に示すように、温調弁42と油冷却器36の入口36aとの間の給油流路34の部分34bに合流してもよい。つまり、リリーフ流路43の他端は、温調弁42と逆止弁37の上流側との間の給油流路34b又は空冷式油冷却器に合流していればよい。
【0032】
リリーフ弁44は、油冷却器36が非充満状態であるとき、逆止弁37の下流側の給油流路34の部分34bの給油圧力又はバイパス流路41における給油圧力が予め定められた設定圧力未満であれば、リリーフ流路43を介して油冷却器36へ向かう油の流れを遮断する。リリーフ弁44は、油冷却器36が非充満状態であるとき、上記の供給圧力が予め定められた設定圧力以上であれば、リリーフ流路43を介して油冷却器36へ向かう油の流れを許容する。すなわち、温調弁42により油冷却器36への油の流れが遮断されて油冷却器36が非充満状態であるときは、逆止弁37の下流側の圧力よりも逆止弁の上流側の圧力が低いため、リリーフ弁44で油をリリーフして油冷却器36へ充填することが可能となる。
【0033】
圧縮機1は、モータ12を制御する制御装置45を備える。
【0034】
圧縮機本体2の作動中、油ポンプ11によって給油流路34を循環する油の温度が所定の温度範囲となるように、温調弁42で油冷却器36に流れる潤滑油量とバイパス流路41に流れる潤滑油量の流量比を調整する。流体の温度が所定の温度範囲の上限値より高い場合には、温調弁42の弁体が第1位置に移動して、油ポンプ11から吐出される油は、バイパス流路41には流入せず、油冷却器36を通って冷却されて給油箇所へ供給される。一方、流体の温度が所定の温度範囲の下限値より低い場合には、温調弁42の弁体が第2位置に移動して、油ポンプ11から吐出される油は、油冷却器36には流入せず、バイパス流路41を通って冷却されることなく給油箇所へ供給される。
【0035】
圧縮機本体2の起動時に制御装置45がモータ12を始動すると、伝動機構13を介した圧縮機本体2の雄ロータ3と雌ロータ4の回転駆動が開始される。また、雄ロータ3と雌ロータ4の回転駆動の開始と同時に、モータ12の回転が伝動機構13を介して油ポンプ11に伝達され、油ポンプ11が起動する。
【0036】
圧縮機本体2の起動時に油の温度が所定の温度範囲の下限値より低い場合、温調弁42の弁体を第2位置に移動させた状態で維持する。温調弁42の弁体が第2位置で維持されている間、油ポンプ11から油冷却器36への油の供給が遮断され、バイパス流路41を介して油ポンプ11からの油が給油箇所に供給される。具体的には、油溜まり32から給油流路34の部分34aを介して油ポンプ11に油が吸い込まれ、油ポンプ11から給油流路34の部分34bに吐出された油は、分岐位置P1に配置された温調弁42からバイパス流路41に流入し、合流位置P2でバイパス流路41から給油流路34の部分34bに戻る。給油流路34の部分34bに戻った油は、部分34c~34iを介して給油箇所に供給される。
【0037】
合流位置P2は給油流路34の部分34bによって油冷却器36に流体的に接続されている。しかし、逆止弁37が設けられているので、合流位置P2でバイパス流路41から給油流路34の部分34bに戻った油の油冷却器36への逆流が防止される。その結果、圧縮機本体2の起動から給油箇所に対する給油が開始されるまでの時間が短縮される。
【0038】
温調弁42の弁体が油冷却器36の入口6aへの油の流れを遮断する第2位置に移動されていても、逆止弁37に対して給油箇所側(下流側)での給油流路34の圧力(給油圧力)が逆止弁37に対して油冷却器36側(上流側)の給油流路34の圧力よりも予め定められた圧力(設定圧力)以上となると、リリーフ弁44は、逆止弁37の下流側から上流側への、リリーフ流路34を介した油の流れを許容する。そのため、温調弁42によって油冷却器36の入口36aへの油の流れが遮断されて油冷却器36が非充満状態であるときに、バイパス流路41を介した圧縮機本体1の給油箇所への油の供給量はリリーフ弁44の設定圧力によって決まる必要最低限の量に抑制される。そして、この必要最低限の量を上回る量の油、つまり過剰分の油はリリーフ流路34を介して油冷却器36に充填される。このように油冷却器36を迂回して給油箇所に油を供給している間も、過剰分の油を油冷却器36に充填することで、油温が上昇し、温調弁42の弁体が油冷却器36の入口6aへの油の流れを遮断する第2位置から油冷却器6の入口6aへの油の流れを許容する第1位置に切り換わる際に一定量の油が既に油冷却器6内に充填されていることを確保できる。その結果、低温時の圧縮機本体1の起動時に温調弁42の弁体が第2位置から第1位置に切り換わる際の、給油箇所への油供給の一時的な停止が継続する時間(断油時間)を短縮することができる。
【0039】
以上のように、本実施形態のスクリュー圧縮機1によれば、圧縮機本体2の起動から給油箇所への給油開始までの時間を短縮しつつ、給油箇所への油供給の断油時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 空冷式オイルフリースクリュー圧縮機
2 スクリュー圧縮機本体
2a ロータ室
2b 吸込口
2c 吐出口
3 雄ロータ
3a ロータ軸
4 雌ロータ
4a ロータ軸
5A,5B,6A,6B 軸受
7A,7B,8A,8B 軸封部
11 油ポンプ
11a シャフト
11b 吸込口
11c 吐出口
12 モータ
12a 出力軸
13 伝動機構(動力伝達部)
14 シャフト
15,16 プーリ
17 ベルト
18A,18B 軸受
19~23,24 ギア
22,23 同期ギア
25 ケーシング
26 吸込流路
27 吐出流路
31 給油機構
32 油溜まり
34 給油流路
34a~34i 部分
35 ストレーナ
36 空冷式油冷却器
36a 入口
36b 出口
37 逆止弁
38 オイルフィルタ
41 バイパス流路
42 温調弁
43 リリーフ流路
44 リリーフ弁
45 制御装置
P1 分岐位置
P2 合流位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6