(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ガレクチンのCRDのレクチン活性に基づく組換えタンパク質のアフィニティー精製のための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220715BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220715BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220715BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220715BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220715BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20220715BHJP
C12N 15/70 20060101ALN20220715BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00
C07K14/47 ZNA
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12P21/00 C
C12N15/70 Z
(21)【出願番号】P 2019511814
(86)(22)【出願日】2017-05-11
(86)【国際出願番号】 FR2017051140
(87)【国際公開番号】W WO2017194888
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-03-03
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509296214
【氏名又は名称】ユニベルシテ ド ロレーヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LORRAINE
【住所又は居所原語表記】34 CRS LEOPOLD,CS 25233, F-54052 NANCY CEDEX,France
(73)【特許権者】
【識別番号】516195225
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・レジオナル・ドゥ・ナンシー
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER REGIONAL DE NANCY
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】クリツニク アレクサンドレ
(72)【発明者】
【氏名】レボウル パスカル
(72)【発明者】
【氏名】イェレヘ-オコウマ メリッサ ジェナー
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-510223(JP,A)
【文献】国際公開第03/072781(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/068239(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/075626(WO,A1)
【文献】Russian Journal of Bioorganic Chemistry (2003) Vol.29, No.5, pp.415-417
【文献】Biochem. J. (1991) Vol.274, pp.575-580
【文献】Glycobiology (2016) Vol.26, No.1, pp.88-99 (published online 2015.12.1)
【文献】Biochimica et Biophysica Acta (2006) Vol.1760, pp.616-635
【文献】Biochimica et Biophysica Acta (2002) Vol.1572, pp.232-254
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心対象のタンパク質と融合したガレクチンのレクチンドメイン
の一部を含み、プロテアーゼによる切断のための部位が前記
関心対象のタンパク質と前記レクチンドメインの一部の間に挿入された、融合タンパク質であって、前記レクチンドメインの一部が、ガレクチンのCRD
SATドメインであり、前記CRD
SATドメインが配列番号:1で表されるアミノ酸配列
からなる、融合タンパク質。
【請求項2】
前記切断部位がTEVプロテアーゼによる切断のための部位である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の融合タンパク質についての発現ベクターであって、前記ベクターが以下の機能的に連結された要素:
a)下記要素b)、c)およびd)のうちの最も5’側に位置する
要素b)の5’側に配置されたプロモーター;
b)ガレクチンのレクチンドメイ
ンの一部
である配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるCRD
SAT
ドメインをコードする配列;
c)関心対象のタンパク質をコードする配列を受けるクローニング部位;
d)転写終了シグナル
を5’側から上記a)~d)の順で含み;
かつここでプロテアーゼによる切断のための部位が前記配列b)と前記クローニング部位c)との間に位置する、
前記発現ベクター。
【請求項4】
前記配列b)が前記プロモーターの3’
と、前記クローニング部位c)
の5’との間に配置される、請求項3に記載の発現ベクター。
【請求項5】
配列b)が、ガレクチンのCRD
SATドメインをコードし、前記CRD
SATドメインが配列番号:1で表されるアミノ酸配列
からなる、請求項3または4に記載の発現ベクター。
【請求項6】
前記プロテアーゼによる切断のための部位がTEVプロテアーゼによる切断についての部位である、請求項3~5のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項7】
前記ベクターがpET20b(+)ベクターから誘導され、以下の要素:
配列番号
2における位置1944での複製の起点;
位置797~813でのT7プロモーター;
位置742~747でのリボソーム結合部位(RBS);
位置242~736でのCRD
SAT配列;
位置221~241でのTEV認識部位配列;
位置159~215での多重クローニング部位;
位置26~72でのT7ターミネーター;
位置3694~4149でのF1起点;および
位置2705~3562でのblaアンピシリン耐性遺伝子
を含むヒトガレクチン-3の炭水化物認識ドメイン発現プラスミドベクターである、請求項3~6のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項8】
関心対象の精製したタンパク質を製造するための方法であって、前記方法が以下のステップ:
a)請求項3~7のいずれか一項に
記載の発現ベクター
における前記クローニング部位に関心対象のタンパク質をコードする配列を組み込んだ発現ベクターを調製するステップ;
b)宿主細胞を前記発現ベクターで形質転換するステップ;
c)上記ステップb)により形質転換した前記宿主細胞を、前記融合タンパク質の発現を可能にする条件下で培養し、宿主細胞における前記
融合タンパク質の可溶化を促進するステップ;
d)前記関心対象のタンパク質を精製するステップ
を含む、前記方法。
【請求項9】
前記精製ステップd)を以下のステップ:
(i)前記融合タンパク質を、ガレクチンのレクチンドメイ
ンの一部
である配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるCRD
SAT
ドメインを介して、ラクトース分子をグラフトしたクロマトグラフィー担体に結合するステップ;
(ii)前記関心対象のタンパク質のプロテアーゼによる切断のステップ;
(iii)前記関心対象のタンパク質の溶出のステップ;
(iv)前記プロテアーゼおよび前記関心対象のタンパク質の分離のステップ
により行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記精製ステップd)を以下のステップ:
(i)前記融合タンパク質を、ガレクチンのレクチンドメイ
ンの一部
である配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるCRD
SAT
ドメインを介して、ラクトース分子をグラフトしたクロマトグラフィー担体に結合するステップ;
(ii)前記融合タンパク質の溶出のステップ;
(iii)溶液中の前記関心対象のタンパク質のプロテアーゼによる切断のステップ;
(iv)前記プロテアーゼおよび前記レクチンドメイ
ンの一部
である配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるCRD
SAT
ドメインの、前記関心対象のタンパク質からの分離のステップ
により行う、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記「ラクトース分子をグラフトしたクロマトグラフィー担体」が、「ラクトース分子をグラフトしたセファロースまたはアガロース樹脂のカラム」である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記分離ステップ(iv)をイオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーによって行う、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
前記溶出ステップをラクトース溶液で行う、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
配列番号:1で表されるアミノ酸配列
からなる、CRD
SATドメイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガレクチンのレクチンドメイン、好ましくはCRDドメイン(炭水化物認識ドメイン)の全部または一部のレクチン活性に基づく親和性による、関連する組換えタンパク質の単一ステップ精製のための新規な方法に関する。
【0002】
本発明は主に、公的および私的研究室に、ならびにまた基礎的研究の目的で、または治療的利益のために組換えタンパク質を生産する必要性がある医薬産業に適用可能である。
【0003】
以下の記載において、角括弧([])の間の参考文献は、本文の末尾に提示する参考文献のリストを指す。
【背景技術】
【0004】
低コストで、多くの生命科学適用において不可欠である関連する純粋なタンパク質を製造するために、大量の関連する組換えタンパク質を宿主中で製造し、下流の処理ステップを単純化することが、必須である。
【0005】
関連する組換えタンパク質を天然に(融合パートナー、すなわちタグなしで)精製するための多くの方法があるが、このタイプの精製は、依然として複雑であり、低い収率および時には不完全な純度を伴う。
【0006】
したがって、タグに融合した組換えタンパク質の発現および精製のための方法が、提案されている。一般的に使用されるタグの中には、ヒスチジンタグ(少なくとも6つのヒスチジンから構成される)、マルトース結合タンパク質(MBP)およびグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)があり、後者の2種は、タンパク質である。
【0007】
ヒスチジンタグは、IMAC(固定化金属アフィニティー)技術の文脈において使用される。この方法は、イミダゾール環の、樹脂上に固定化された2価の金属イオン(主にニッケル)との相互作用を介して、ヒスチジンタグに融合した組換えタンパク質を精製することにある。融合タンパク質を、次にイミダゾールの溶液で溶出する。しかしながら、その低い特異性のために、この精製方法によって、汚染物質の同時精製が系統的にもたらされ、その後の追加のステップが必要である。加えて、第1に、ニッケルはアレルゲン性であり、胎児毒性であり、かつ環境に有害であり、第2に、イミダゾールもまた、胎児毒性かつ生殖毒性の化合物である。したがって、微量のニッケルおよびイミダゾールのIMACによって精製された組換えタンパク質の溶液中での可能な存在によって、in vitro/in vivo適用のためのその使用が制限される。さらに、金属イオンに基づくプロセスによって、精製されたタンパク質のいくつかの残基の修飾がこのようにしてもたらされ得る[1、2]。
【0008】
MBPおよびGSTについて、それらを使用して、組換えタンパク質をそれぞれアミロースまたはグルタチオンに対する親和性によって精製する。MBPの分子量に起因する立体障害のために、融合タンパク質は切断するのが困難であり、それによって精製した組換えタンパク質の最終的な製造収率が低下し得る。GSTについて、それは、グルタチオンセファロース樹脂に対する低い親和性を有する[3、4]。
【0009】
レクチンをタグとして使用することに基づいて、樹脂上でのアフィニティークロマトグラフィーによる容易かつ効果的な精製を低コストで可能にする関連するタンパク質を発現するための他の方法が、開発されている。レクチンの利点は、それらが特定の多糖類に特異的かつ可逆的に結合することである。実際、それらのアミノ酸配列、それらの三次元構造およびまた糖結合部位の性質によって異なるいくつかのクラスのレクチンがある。したがって、関連するタンパク質を発現させ、精製するための方法は、レクチン、例えばセファロース4Bからなるクロマトグラフィーカラム上のアメーバ[6]から生じるキノコレクチンLSL[5]またはディスコイジンに基づいて開発されている。しかし、これらの方法において、グラフトしていない樹脂の使用によって樹脂への非特異的結合の危険性がもたらされ、したがって細菌タンパク質による汚染がもたらされる。
【0010】
緑膿菌からのLecBレクチンによって認識されるマンノースをグラフトした樹脂を用いて関連するタンパク質を精製する方法もまた、公知である[7]。しかしながら、マンノースは、複雑かつ費用がかかる合成を伴う糖である。
【0011】
関連するタンパク質を、ラット肝臓レクチンのレクチンドメインおよび関連する分子を含み、当該2つの間に挿入されたプロテアーゼによる切断のための部位を有する融合タンパク質を用いて精製する2段階法もまた、知られている[13]。それは、カチオンキレート剤の存在下で機能する欠点を有し、それによって関連するタンパク質の生物学的活性が阻害され得る。
【0012】
先行技術のプロセスの欠点を克服する、関連するタンパク質を発現させ、精製するための方法についての必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らによって提案された解決策は、これまでの不溶性タンパク質(封入体の形態において産生される)を、その溶解度を改善することによって発現させ、関連するタンパク質をアフィニティーによって精製するために、大部分のタンパク質の活性を改変および/または損傷しない利点を有する。
【0014】
本発明者らは、したがって、組換えタンパク質を単一ステップにおいて、高い特異性および高い収率を伴って精製することを可能にする新規な方法を開発した。本発明の前記方法は、ラクトースに結合する能力を保持するガレクチンのレクチンドメインまたは前記ドメインの一部、例えばガレクチンのCRDSATドメイン、例えばヒトガレクチン-3を、関連するタンパク質の融合パートナーとして使用する。このレクチンタグによって、したがって、ラクトース分子でグラフトしたセファロース樹脂を使用して、単一のアフィニティークロマトグラフィーステップにおける関連するタンパク質の精製が可能になる。
【0015】
本発明の主題は、したがって、TEVプロテアーゼによる切断のための部位を含む配列を介して関連するタンパク質と融合したガレクチンのレクチンドメインの全部または一部を含む融合タンパク質である(2つの可能な切断の選択肢;
図7を参照)。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的のために、「レクチンドメインまたはGLECTドメイン」は、β-ガラクトシル誘導体、例えばラクトースおよびその誘導体に結合するガレクチンのドメインを意味することを意図し、その活性は、2価のカチオンに依存しない。GLECT保存ドメインについてのNCBI保存ドメインデータベースにおけるアクセス番号は、cd00070である。
【0017】
本発明の特定の実施形態によれば、使用するレクチンドメインの部分は、ラクトースに結合し;好ましくは、これは、ガレクチンのCRDドメインであり、最も好ましくは、それは、例えば配列、配列番号:1を含むかまたはそれからなるガレクチンのCRDSATドメインである
【0018】
CRD
SATドメインは、高度に保存されたドメイン(哺乳動物の中で約83~99%の配列相同性)である(
図9を参照)。それは、β-ガラクトシド、例えばラクトースおよびその誘導体に特異的に結合することができるGLECT(ガラクトース結合LECTin)ドメインスーパーファミリーに属する。
【0019】
本発明の別の主題は、融合タンパク質のための発現ベクターであり、前記ベクターは、以下の機能的に連結された要素を含む:
a)以下に記載する要素b)、c)およびd)およびe)の5’に配置されたプロモーター;
b)ガレクチンのレクチンドメインの全部または一部をコードする配列;
c)TEVによる切断のための部位を含むスペーサーアームをコードする配列;
d)関連するタンパク質をコードする配列を受けるクローニング部位;
e)転写終了シグナル。
【0020】
本発明の目的のために、「プロモーター」は、ポリペプチドをコードする配列の転写開始部位の5’に位置し、それにRNAポリメラーゼのDNA配列が結合し、正確な転写を開始することができ、任意にアクチベーターを含むシス作用性DNA配列を意味することを意図する。
【0021】
本発明の発現ベクターにおいて、ガレクチンのレクチンドメインの全部または一部に対応する配列は、例えばクローニング部位の近傍、上流およびプロモーターの下流に位置する。代替法は、前記配列を近傍に、クローニング部位の後に配置することである。両方の場合において、前記配列の関連する分子の配列との融合によって、樹脂上での精製が可能になる。好ましくは、配列b)は、ラクトースに結合するレクチンドメインの一部をコードし、ガレクチンのCRDSATドメインを優先的にコードし、配列番号:1を含むCRDSATドメインを最も優先的にコードする。
【0022】
本発明の特定の実施形態によれば、プロテアーゼによる切断についての部位は、TEVプロテアーゼによって認識される。
【0023】
本発明の特定の実施形態によれば、発現ベクターは、pETプラスミドから誘導されるpCARGHO(人類からのガレクチン-3の炭水化物認識ドメインを表す)発現ベクターである。
【0024】
本発明の別の主題は、関連する精製したタンパク質を製造する方法であって、前記方法が以下のステップ:
a)本発明の発現ベクターを調製するステップ;
b)宿主細胞を前記発現ベクターで形質転換するステップ;
c)前記形質転換した宿主細胞を、ガレクチンのレクチンドメインの全部または一部のアミノ酸配列および関連するタンパク質のアミノ酸配列を含む融合タンパク質の発現および翻訳を可能にする条件下で培養し、ガレクチンのレクチンドメインの全部または一部のアミノ酸配列が宿主細胞における関連するタンパク質の溶解を促進するステップ;
d)関連するタンパク質を宿主細胞または培養培地から単離するステップ
を含む、前記方法である。
【0025】
本発明の方法において、単離または精製ステップd)を、例えば、融合タンパク質を、ガレクチンのレクチンドメインまたは前記ドメインの一部を介して、ラクトース分子でグラフトしたクロマトグラフィー担体に、好ましくはラクトース分子でグラフトしたアガロースまたはセファロース樹脂に結合し、次いで(i)プロテアーゼによって切断して、ガレクチンのレクチンドメインまたは前記ドメインの一部を除去し(すなわち配列タグ)、関連する分子およびプロテアーゼを溶出および分離し、または(ii)融合タンパク質を溶出し、溶液中のプロテアーゼにより切断し、ならびに関連するタンパク質およびプロテアーゼを分離することによって実施する。
【0026】
本発明の特定の実施形態によれば、プロテアーゼおよび関連するタンパク質の分離のステップを、イオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーによって行う。
【0027】
本発明の別の主題は、関連する分子を精製する方法であり、前記方法は、以下のステップを含む:
選択肢番号1:
a)本発明の融合タンパク質を、ラクトース分子をグラフトしたクロマトグラフィー担体、好ましくはラクトース分子をグラフトしたセファロースまたはアガロース樹脂のカラムに結合するステップ;
b)プロテアーゼによる融合タンパク質の特定の切断部位での切断のステップ;
c)関連する精製した分子の溶出のステップ;
d)プロテアーゼの、このようにして精製した関連するタンパク質からの分離のステップ。
【0028】
本発明の特定の実施形態によれば、ステップd)を、イオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーによって行う。
【0029】
レクチンドメインまたは前記ドメインの一部(すなわちタグ)を、ラクトース溶液との競合による溶出によってカラムから除去し、カラムを再生させる。
【0030】
選択肢番号2:
a)本発明の融合タンパク質を、ラクトース分子をグラフトしたクロマトグラフィー担体、好ましくはラクトース分子をグラフトしたセファロースまたはアガロース樹脂のカラムに結合するステップ;
b)ラクトース溶液との競合による融合タンパク質の溶出のステップ;
c)溶液中の融合タンパク質の特定の部位でのプロテアーゼによる切断のステップ;
d)レクチンドメインまたは前記ドメインの一部(すなわちタグ)およびTEVプロテアーゼの、このようにして精製した関連する分子からの分離のステップ。
【0031】
本発明の特定の実施形態によれば、ステップd)を、イオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーによって行う。
【0032】
本発明の方法は、いかなる毒性、発がん性または催奇形性化合物をも使用しないという利点を有する。さらに、ガレクチン-3のCRDドメインのレクチン活性は、すべての他の精製方法よりもはるかに特異的であり、95%より高い純度を得るために単一のステップのみを必要とする。さらに、融合タンパク質の溶出についての条件は、タグをTEVプロテアーゼによって切断するのに最適である。許容される還元剤には、制限はない。CRDタグ、特にCRD
SATは、極めて低い分子量(17.3kDa、TEVプロテアーゼによる切断後に得られる形態については18.8kDa)を有し、それによって、サイズ排除クロマトグラフィーによるその容易な除去が可能になる。さらに、それは、主にβシートから構成され、極めて高い程度の安定性を付与する。最後に、その等電点は、高度に塩基性であり(pI=9.3、TEVプロテアーゼによる切断後に得られる形態についてpI=8.7)、陽イオン交換カラム上でのその容易な捕捉が可能になる。等電点がまた塩基性である(pI=8.8)CRDおよびTEVプロテアーゼを、それらを陽イオン交換カラム上に結合することによって一緒に除去することが、可能である。関連するタンパク質は、次いで樹脂によって保持されない画分中に純粋に溶出する(
図10)。
【0033】
本発明の別の主題は、ガレクチンから誘導されたCRDSAT融合パートナー(またはタグ)である。好ましくは、CRDSATドメインのアミノ酸配列は、配列、配列番号:1を含み、ここで36位におけるアミノ酸は、アルギニンまたはリジン、最も好ましくはリジンであり得、かつ/またはここで152位におけるアミノ酸は、アラニンまたはトレオニン、最も好ましくはトレオニンであり得る。CRD融合パートナーはまた、現在まで尿素または塩化グアニジウムにおける封入体の長く、退屈な再生の後に得られる、不溶性として記載されているタンパク質を可溶化する特性を有する;例えば、ヒト膜受容体TREM-1およびより特定的にはその細胞外ドメイン[14~15]。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、pCARGHOベクターの円形の、および直線状の図式を示す。
【
図2】
図2は、pCARGHOベクター(配列番号:2および3)の主な特徴を示す。
【
図3】
図3は、ヒトガレクチン-3の図式的構造を示す。
【
図4】
図4は、ヒトガレクチン-3および設計された3種のCRDのタンパク質配列(配列番号:4)を示す。
【
図5】
図5は、ラクトースと相互作用するガレクチン-3のレクチンCRDドメインの3D構造を示す。
【
図6】
図6は、ラクトースアフィニティークロマトグラフィーによるヒトガレクチン-3の精製をモニタリングすることを示す。
【
図7】
図7は、ラクトースアフィニティーによる本発明の精製方法の図式を示す。
【
図8】
図8は、ラクトースアフィニティークロマトグラフィーによる3種の形態の短縮されたヒトガレクチン-3の精製をモニタリングすることを示す。CRD
LITIL(A)、CRD
GGVVP(B)およびCRD
SAT(C)は、大腸菌ロゼッタ2(DE3)細菌において発現した。細菌を溶解し、精製試験をラクトース-アガロースカラム上で実施した。各精製ステップで、試料を採取して、アクリルアミドゲル(SDS-PAGE)上で泳動させた。電気泳動移動後、ゲルを、クーマシーブリリアントブルーで染色した。SSO:ラクトースアフィニティーカラムに通じる前の細菌抽出物の上清。CSO:ラクトースアフィニティーカラムに通じる前の細菌抽出物のペレット。SPR:ラクトースアフィニティーカラムを通過した後の上清。E:溶出画分。<---:関連するタンパク質の位置。
【
図9】
図9は、異なる哺乳動物におけるガレクチン-3のCRD
SATドメインのアミノ酸配列アラインメント、および前記CRD
SATドメインのコンセンサス配列を示す。
【
図10】
図10は、本発明の処理によるラクトースアフィニティークロマトグラフィーによる細菌性チオレドキシン(Trx1)の精製のモニタリングを示す。
【
図11】
図11は、本発明の処理によるラクトースアフィニティークロマトグラフィーによる細胞外ドメインTREM-1、残基21~136の精製のモニタリングを示す。
【実施例】
【0035】
実施例1:短縮されたヒトガレクチン-3の最適な形態の研究:ラクトースアフィニティークロマトグラフィーによる3種の短縮された形態の精製のモニタリング
ガレクチン-3
ガレクチン-3は、種に依存する243~286アミノ酸の動物レクチンである(Cooper,Biochim.&Biophys.Acta,1572(2-3)):209-231,2002)[8]。それは、約30kDaであり、小さいN末端ドメイン、側鎖およびC末端レクチンドメイン(CRD:炭水化物認識ドメイン)から構成される(
図3および4)(Leffler et al.,Glycoconj.J.,19:433-440,2004;Ochieng et al.,Biochim.&Biophys.Acta,1379:97-106,1998)[9、10]。数種のベータシートから形成して(Salomonsson et al.,J.Biol.Chem.,285:35079-35091,2010;Seetharaman et al.,J.Biol.Chem.,273:13047-13052,1998)[11、12]、レクチンドメインによって、タンパク質がβ-ガラクトシド残基を含む分子、例えばラクトースと相互作用することが可能になる(
図5)。
【0036】
そのレクチン特性を考慮して、ガレクチン-3を、単一ステップにおいて、前に記載したプロトコルに従って、ラクトース分子でグラフトしたアガロース樹脂を用いるアフィニティークロマトグラフィーによって特異的に精製することができた(
図6)。
【0037】
この目的のために、ガレクチン-3(全形態)を、大腸菌C41(DE3)細菌中で発現させ、次いでラクトース-アガロースカラム上で精製した。各精製ステップで、試料を採取して、アクリルアミドゲル(SDS-PAGE)上で泳動させた。電気泳動的移動の後、ゲルを、クーマシーブリリアントブルーで染色した。A:ラクトースアフィニティーカラムに通じる前の細菌抽出物。B:ラクトースアフィニティーカラムを通過した後の細菌抽出物。CおよびD:カラム洗浄。E:ガレクチン-3の溶出画分;PBS+ラクトース 150mMの溶液での溶出。
【0038】
【0039】
この精製を行うことの容易さ、およびまた得られる高い程度の純度によって、本発明者らは、ラクトースアフィニティークロマトグラフィーによる組換えタンパク質の精製を意図した融合パートナー(タグ)を開発するアイデアを指摘された。当該アイデアは、この融合パートナーを構成し、このパートナーがTEVプロテアーゼによって切断され得る単一ステップにおける精製を可能にするために、ラクトースに結合することができるガレクチン-3(CRD)のレクチンドメインの一部を使用することであった(
図7)。
【0040】
短縮されたガレクチン-3の最適な形態の研究
CRD
SATをコードする最適化されたヌクレオチド配列の作製およびpET-20bタイプの発現ベクター中への組み込み
ヒトガレクチン-3のヌクレオチド配列から出発して、3種の異なるCRDタンパク質をコードする3種のCRD配列を、クローニングした:CRD
LITIL(14kDa)、CRD
GGVVP(15kDa)およびCRD
SAT(約17kDa、天然形態、非合成的、最適化していない)(
図4)。
【0041】
それから、3種のCRDが発現されるが、様々な可溶性を有することが明らかになる。したがって、CRD
LITIL(A)は、完全に不溶性の形態(ペレット)にあり、溶出液中には位置しておらず、したがって精製することは不可能であった。CRD
GGVVP(B)は、少量において、部分的に可溶性の形態において生成したが、そのレクチン機能を失い、したがって精製することができなかった。CRD
SAT(C)は、完全に可溶性の形態において生成し、精製することができた(溶出液中に位置していた)(
図8)。
【0042】
実施した種々の試験を考慮して、CRDSATを選択して、所望の融合パートナーを構成した。in silicoで測定したこのタンパク質の物理化学的特性は、以下の通りである:
【0043】
【表1】
(配列番号1、天然形態)
アミノ酸の数:156
分子量:17 360.9Da
等電点:9.30
負に荷電したアミノ酸(Asp+Glu)の総数:13
正に荷電したアミノ酸(Arg+Lys)の総数:17
モル吸光係数:12 950M
-1cm
-1(280nmで)
Abs 0.1%(=1g/l) 0.746、ただしすべてのシステインは、還元された形態にある。
【0044】
CRDSATをコードする配列を、大腸菌におけるこの異種タンパク質の発現を促進し(コドンバイアスの除去)、その溶解度(アルギニン36のリジンでの置換)、およびまた嵩を増加させることによってその剛性が増加するのを可能にするために(アルギニン152のトレオニンでの置換)、in silicoで最適化し、それによってプロテアーゼが下流の14個のアミノ酸を切断することが可能になった。
【0045】
この最適化されたCRD
SAT配列を、pET-20bタイプの発現ベクター:pCARGHOベクター中に、実施例3に従って関連するタンパク質の発現および精製を可能にするために組み込んだ(
図2)。
【0046】
実施例2:pCARGHO:材料および方法
pCARGHOプラスミドによって、順序正しく:ヒトガレクチン-3からのCRDSAT、フレキシビリティーを可能にするスペーサーアーム、TEVプロテアーゼによる切断のための部位および関連するタンパク質からなる融合タンパク質の産生が可能になる。
【0047】
使用する大腸菌株は、(DE3)タイプでなければならず、すなわちそのゲノム中に組み込まれたT7 RNAポリメラーゼ遺伝子を有さなければならない。
【0048】
pCARGHOプラスミドは、NovagenからのpET20b(+)から誘導され、以下の要素を含む(
図1):
【0049】
【0050】
pCARGHOベクターの主な特徴を、
図2に示す(配列番号:2および3)。
【0051】
pCARGHOプラスミドにおけるクローニング
以下のプロトコルは、pCARGHOベクターにおける関連するタンパク質のPCRフラグメントのクローニングの例である。いくつかの実験(酵素消化、連結反応、細菌形質転換)について、特に使用する試薬の供給業者を参照するべきである。
【0052】
使用するPCRフラグメントは、Ncol制限部位をその5’末端に、ならびに別のBamHI、EcoRI、SacI、SalI、HindIII、NotIおよびXhoI制限部位をその3’末端に含まなければならない。末端は、平滑であるか、または3’アデノシンによって伸長され得る。PCRフラグメントの組成によって読み枠が開始コドンATGから従うことが保証されることを、確実にしなければならない。
【0053】
1)1μgのpCARGHOプラスミドおよび1μgのPCRフラグメントを、並行して、20μlの1X消化緩衝液(10×ストック)中で、選択した10単位のNcoIおよび10単位の第2のエンドヌクレアーゼ(MCSにおいて利用可能な部位に依存して)で、37℃で1時間~2時間消化する。酵素を、次いで65℃で10分間不活性化する。
2)アガロースゲル(5μl)上での移動後のプラスミドの完全な消化を立証する。
3)MCS断片をプラスミドから、および遊離末端をPCR断片から除去することを目的として、消化したPCR断片およびプラスミドを精製する。精製を、ゲル上で、および/または特定のキットを用いて行ってもよい。
4)プラスミドおよびPCR断片(挿入断片)をアッセイする。
5)以下の連結混合物を調製する:
30~50ngの消化プラスミド
1μlの保存連結緩衝液10×中の50ngの挿入断片
1μlのT4 DNAリガーゼ
H2O 加えて10μl
6)室温で10分~2時間または16℃で16時間インキュベートする。
7)コンピテントクローニング細菌(TOP10、DH5αタイプ)を形質転換する:2μlの連結反応液を採取し、50μlの細菌を加える。氷中で30分間インキュベートする。42℃に1分間加熱する。
8)200μlのSOC(またはLB)培地を添加し、37℃で20分~1時間インキュベートする。選択的寒天(LB寒天、100μg/mlのアンピシリン)上に拡散させる。37℃で一晩インキュベートする。
9)当該分野において周知の方法、例えば直接コロニー上のPCR、プラスミドDNAの少量調製、好適な制限酵素による消化およびアガロースゲル上での移動、融合タンパク質の過剰発現の試験により、陽性クローンの存在を探索する(プラスミド中の挿入断片の存在を立証する)。
10)分子クローニングを検証するために、クローンから抽出したプラスミドを陽性であると仮定して配列決定する。
【0054】
融合タンパク質「CRDSAT-関連するタンパク質」の発現
融合タンパク質の発現の試験
1)コンピテント発現細菌[BL21(DE3)タイプ]を、pCARGHO-Xベクター(Xは、CRDSATタグに融合した関連するタンパク質をコードする配列である)で形質転換する。
2)5mlのLB培地+アンピシリン100μg/ml中の寒天上に単離されたコロニーを接種し、2×108細胞/ml(A600=0.5~0.6)まで培養する。
3)試料を2.5mlの2つの培養物に分割する。
4)IPTGを培養物の1つ中に、1mMの最終濃度で添加する。両方の培養物を37℃で2~3時間インキュベートする。
5)500μlを各培養物から試料採取する。最高速度で1分間遠心分離し、上清を分注し、細菌ペレットを100μlのLaemmli緩衝液1Xで懸濁させる。
6)試料を1分間煮沸する。10μlの各試料および分子量マーカーを、SDS-PAGEゲル上で適切なパーセンテージで泳動させる。移動させ、例えばクーマシーブリリアントブルーで染色することにより明らかにする。
【0055】
融合タンパク質の産生
配列決定および発現試験を立証した後、CRDSATタグに融合された関連するタンパク質(CRDSAT-関連するタンパク質)を、以下の手順に従って産生することができる。
1)コンピテント発現細菌[BL21(DE3)タイプ]を、pCARGHO-Xベクター(Xは、CRDSATタグに融合した関連するタンパク質をコードする配列である)で形質転換する。Luria Bertani LB培地+アンピシリン100μg/ml中で37℃で16時間前培養を行う。
2)この前培養物を1/100に、Luria Bertani LBタイプ+アンピシリン100μg/mlの富栄養培地1リットル中で接種する。
3)2×108細胞/ml(A600=0.5~0.6)まで37℃で培養する。IPTGを1mMの最終濃度で添加する。細菌を37℃で撹拌しながら2~3時間インキュベートする。
4)20μlの粗細菌懸濁液(A)を試料採取し、培養物を遠心分離し(4000g、20分間)、上清を除去し、細菌ペレットを25mlの溶解緩衝液に懸濁させる。
【0056】
種々のアジュバントによって、タンパク質分解(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)等)または酸化(ジチオトレイトール(DTT)、β-メルカプトエタノール)を回避することが可能になり得る。
5)試料を氷中に配置し、超音波処理器またはフレンチプレスを用いて細菌を溶解する。20μlのこの溶解した細菌懸濁液(A’)を試料採取する。
6)溶解した細菌懸濁液を20000gで20分間遠心分離する。タンパク質上清(Sp)を回収する。20μlのこの上清(B)を試料採取する。適切な場合には、溶解緩衝液またはカラム緩衝液で希釈する。
【0057】
融合タンパク質「CRDSAT-関連するタンパク質」の精製
自動モードにおける精製
1)0.45μm膜で濾過した後、試料Spを、5CV(カラム容量)のカラム緩衝液で予め平衡化したラクトース-Sepharose(登録商標)樹脂(15~20ml)上に注入する。クロマトグラフィーカラムを流れた可溶性画分20μl(C)を試料採取する。
2)カラムを10CVのカラム緩衝液で洗浄する。カラム出口での洗浄液20μl(D)を試料採取する。
3)融合タンパク質を1~2CVのカラム緩衝液および+150mMのラクトースで溶出する。対応する画分(画分のサイズ:カラムの体積の約1/5)を採集する。20μlの溶出液(E)を試料採取する。
採集した画分中に存在する融合タンパク質を、280nmでの吸収および/または比色法(BCA、Bradfordなど)によってモニタリングする。
【0058】
CRDSATタグが関連するタンパク質のその後の適用に所望されない場合、それを融合タンパク質の溶出後に切断することが可能である(融合タンパク質の切断に関する節を参照)。
4)融合タンパク質を含む画分を一緒にして、所要に応じて濃縮する。関連するタンパク質を、-80℃で、液体窒素中で凍結させた後に、30~50%のグリセロールを添加して、または添加せずに保存する。
5)SDS-PAGE+染色による精製の質を評価する:試料A~EをLaemmli 2X緩衝液で半分の強度に希釈し、次に煮沸し(95℃、5分間)、その後それらをアクリルアミドゲル上で好適なパーセンテージで移動させる。
6)カラムを5CVの2M NaCl溶液、次いで5CVの水で再生させる。カラムを水+エタノール20%またはTris-HCl 20mM、EDTA 1mM中に保存する。
【0059】
バッチモードにおける精製
1)試料Spを、5~10CVのカラム緩衝液(Tris 20mM、EDTA 5mM、NaCl 150mM、pHを関連するタンパク質に依存して適合させるべきである)で予め平衡化したラクトースアガロース樹脂(10~15ml)上に堆積させ、弱い攪拌下に1~2時間配置する。次に、カラムにフリットディスクを配置する。クロマトグラフィーカラムに流した可溶性画分20μl(C)を試料採取する。
2)カラムを10CVのカラム緩衝液で、次いで10CVのPBS緩衝液で洗浄する。カラム出口で20μlを試料採取する。
3)融合タンパク質を2.5CVのPBS緩衝液および+150mMのラクトースで溶出する。
4)精製の質を評価し、融合タンパク質をアッセイし、次いでそれを自動モードにおける精製の節に記載した手順に従って保存する。
5)カラムを10CVの2M NaCl溶液で再生させる。
【0060】
融合タンパク質「CRDSAT-関連するタンパク質」の切断
融合タンパク質を、TEVプロテアーゼによって切断し、その切断部位は、CRDSATタグのC末端に位置する。切断は、融合タンパク質の溶出後に起こり、CRDSATタグ(pI=8.7、MW=18.8kDa)およびTEVプロテアーゼ(pI=8.8、MW=27kDa)を関連するタンパク質から分離するために、陽イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィーのいずれかのステップを後続させなければならない。
【0061】
1)融合タンパク質の濃縮溶液を、切断緩衝液中で1~2mg/mlの濃度に希釈する:25mMのTris-HCl、pH8、150~500mMのNaCl、15mMのβ-メルカプトエタノール。20μlの試料(A)を試料採取する。
2)TEVプロテアーゼを1:100の比で、すなわち100mgの融合タンパク質当たり1mg(10,000単位)のプロテアーゼで添加する。「理想的な」比を最適化することができる。
3)混合物を4℃で一晩、または他には室温で、もしくは30~37℃で、より短い時間インキュベートし、制限因子は関連するタンパク質の安定性である。切断後の試料20μlを試料採取する(B)。
4)切断の有効性を検証するために、試料AおよびBをSDS-PAGEゲル上で泳動させる。
【0062】
5)CRDSATタグおよびまたTEVプロテアーゼを以下により除去する:
a)陽イオン交換クロマトグラフィー:
i.切断反応混合物を、イオン強度を20mMのTris-HCl、25mMのNaCl、pH7緩衝液で低下させる目的で透析または希釈する。塩濃度は25mMを超えてはならない。
ii.SP-Sepharose(登録商標)または同等のカラムを5CVのカラム緩衝液で平衡化する(製造業者の推奨に従って)。
iii.混合物をカラム上に堆積させ、関連するタンパク質を含有する、保持していない画分を直ちに採集する(関連するタンパク質が酸のpI(<7)を有する限り)。
iv.適切な場合に関連するタンパク質を濃縮し、それを80℃で、液体窒素中で凍結させた後に、30~50%のグリセロールを添加して、または添加せずに保存する。
v.カラムを5CVの2MのNaCl緩衝液(CRDSATタグおよびTEVプロテアーゼの溶出)、5CVの水で再生させる。水+20%エタノール中で保存する。
【0063】
b)サイズ排除クロマトグラフィー
i.Superdex 75(登録商標)またはSuperdex 200(登録商標)または同等のカラムを2CVのカラム緩衝液で平衡化する(製造業者の推奨に従って)。
ii.当該混合物をカラム上に注入し、タグを有さない関連するタンパク質に対応する画分を採集する[その分子量(サイズ)の関数として]。
iii.適切な場合に関連するタンパク質を濃縮し、それを80℃で、液体窒素中で凍結させた後に、または30~50%のグリセロールを添加して保存する。
【0064】
タグが関連するタンパク質の分子量(MW)と極めて異なる分子量(MW)を有する場合、ゲルを染色することによる検出で十分である。しかしながら、そのMWが極めて類似している場合、ウエスタンブロットによるより特異的な検出が、抗CRDSAT抗体を用いて可能である。
iv.カラムを水+20%エタノール中に保存する。
【0065】
補遺:TEV消化を行わない場合、およびラクトースが精製したタンパク質のその後の適用に不適切である場合、透析を行ってもよいか、またはゲル濾過カラムを行ってもよい。
【0066】
実施例3:ラクトースアフィニティークロマトグラフィーによる細菌性チオレドキシン(Trx1)の精製のモニタリング
CRDSATに融合したTrx1を、大腸菌ロゼッタ2(DE3)細菌において、上に記載したプロトコルに従って発現させた。
【0067】
細菌を溶解し、精製をラクトース-アガロースカラム上で上に記載したプロトコルに従って行った。
【0068】
異なる精製ステップで、試料を採取して、アクリルアミドゲル上で泳動させた(SDS-PAGE)。
【0069】
電気泳動的移動の後、ゲルをクーマシーブリリアントブルーで染色した。
【0070】
結果を、
図10に提示する。
MW:分子量。
Lac:ラクトース-アガロース樹脂上のTrx1-CRD
SAT融合タンパク質の精製した画分、150mMのラクトースで溶出。
TEV:周囲温度で一晩、TEVプロテアーゼで1/100に切断した後の画分。
SPフロースルー:消化反応培地(TEV)のSP Sepharose(陽イオン交換)カラム上への注入後に保持されていない画分。
SP 100%:1MのNaCl(SP Sepharose)で溶出した画分。
【0071】
実施例4:ラクトースアフィニティークロマトグラフィーによるヒト膜受容体TREM-1(細胞外ドメイン)の精製のモニタリング
CRDSATに融合したTREM-1(21~136)を、大腸菌C41(DE3)細菌において、上に記載したプロトコルに従って発現させた。
【0072】
細菌を溶解し、精製をラクトース-アガロースカラム上で上に記載したプロトコルに従って行った。
【0073】
異なる精製ステップで、試料を採取して、アクリルアミドゲルで泳動させた(SDS-PAGE)。
【0074】
電気泳動的移動の後、ゲルをクーマシーブリリアントブルーで染色した。
【0075】
結果を、
図11に提示する。
MW:分子量。
Lac:ラクトース-アガロース樹脂上のCRD-TREM-1(21~136)融合タンパク質の精製した画分、150mMのラクトースで溶出。
TEV:周囲温度で一晩、TEVプロテアーゼで1/100に切断した後の画分。
Phe1:CRDタグを含有する消化反応培地(TEV)のフェニルセファロース(疎水性相互作用)カラム上への注入後に保持されていない画分。
Phe2:TREM-1、13.7kDa、残基21~136を含む、300mMの硫酸アンモニウムで、4mg/lの細菌培養物の収量で溶出した画分。
【0076】
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