(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】インプラントで支持された歯科補綴修復物用の多色ミルブランク
(51)【国際特許分類】
A61C 13/083 20060101AFI20220715BHJP
A61C 13/09 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
A61C13/083
A61C13/09
(21)【出願番号】P 2019512625
(86)(22)【出願日】2017-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2017071974
(87)【国際公開番号】W WO2018042001
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】102016116546.8
(32)【優先日】2016-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517275117
【氏名又は名称】クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kulzer GmbH
【住所又は居所原語表記】Leipziger Strasse 2, D-63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ベーム
(72)【発明者】
【氏名】マリオ バイアー
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-525120(JP,A)
【文献】特表2014-502603(JP,A)
【文献】特表2014-500747(JP,A)
【文献】米国特許第05104318(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/083
A61C 13/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材削り出し加工により歯科補綴修復物(10)を製造するための歯科用ブランク(1)であって、前記歯科用ブランク(1)は、
(i)内側結合部(2)を含み、前記内側結合部は、前記歯科用ブランクの歯冠領域の方向に支台領域(3a)を有し、かつ前記歯科用ブランクの歯根方向にインプラント連結形状部(3b)を有し、
(ii)前記結合部(2)の前記支台領域(3a)は、前記ブランク(1)の歯冠領域の方向で象牙質支台領域(4)と結合されており、かつ
(iii)前記象牙質支台領域(4)は、前記ブランク(1)の歯冠領域の方向で(iv)前記ブランクの外側領域(5)と結合されており、かつ
(v)前記歯科用ブランクは、内部に、前記内側結合部(2)の前記インプラント連結形状部(3b)中に、および任意に前記内側結合部(2)の前記支台領域(3a)中に、縦長の管腔(6)を有し、前記管腔は、前記内側結合部(2)の前記インプラント連結形状部(3b)の上側(2.1)から下側(2.2)にまで達し、かつ任意に前記支台領域(3a)の上側(3.1)から下側(3.2)にまで達し、かつ前記管腔は、頂窩方向または舌方向の開口部と、歯根方向の開口部とを有し、前記ブランクの外側領域(5)は、
ポリマー部分を有する歯科用ハイブリッドセラミックからなる歯科用ブランク(1)において、
前記ハイブリッドセラミックは、セラミック部分を含み、前記セラミック部分は、セラミック骨格であり、前記セラミック骨格は、SiO
2 50~70質量%、Al
2O
3 15~30質量%、Na
2O 5~15質量%、K
2O 2~10質量%、B
2O
3 0.05~5質量%、ZrO
2 0.0001~1質量%、およびCaO 0.0001~1質量%を含み、全組成は100質量%になることを特徴とする、
歯科用ブランク(1)。
【請求項2】
前記歯科用ブランク(1)は、縦長の管腔(6)を有し、前記管腔は、前記外側領域(5)の上側(8.1)から前記結合部(2)の前記インプラント連結形状部(3b)の下側(2.2)にまで達し、かつ前記管腔(6)は、前記内側結合部(2)、前記象牙質支台領域(4)および前記外側領域(5)を通過するように延び、かつ頂窩方向または舌方向の開口部と、歯根方向の開口部とを有することを特徴とする、請求項1記載のブランク。
【請求項3】
前記歯科用ブランク(1)は、縦長の管腔(6)を有し、前記管腔は、前記外側領域(5)の上側(8.1)から前記結合部(2)の前記インプラント連結形状部(3b)の下側(2.2)にまで達し、ここで、(a)前記縦長の管腔は少なくとも1つの長軸を有し、(b)前記縦長の管腔は折れ曲がっていてかつ少なくとも2つの交差する長軸を有し、(c)前記縦長の管腔(6)は弓形に形成されており、かつ/または(d)前記縦長の管腔の、頂窩方向もしくは舌方向の開口部は、前記内側結合部(2)の前記インプラント連結形状部(3b)の下側(2.2)の、歯根方向の開口部よりも少なくとも大きな直径を有することを特徴とする、請求項1または2記載のブランク。
【請求項4】
(i)前記支台領域(3a)と前記インプラント連結形状部(3b)とを含む前記内側結合部(2)は、少なくとも1つの金属または金属合金からなることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のブランク。
【請求項5】
(iii)前記象牙質支台領域(4)は、金属酸化物または金属酸化物混合物から形成されており、前記金属酸化物または金属酸化物混合物は、任意に酸化マグネシウム(MgO)および/または酸化イッテルビウム(Y
2O
3)の含分を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のブランク。
【請求項6】
(iii)前記象牙質支台領域(4)は、金属酸化物または金属酸化物混合物から形成されており、かつ二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウム/酸化アルミニウム混合物から選択され、ここで前記金属酸化物または金属酸化物混合物は、任意に酸化マグネシウム(MgO)および/または酸化イッテルビウム(Y
2O
3)の含分を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のブランク。
【請求項7】
(iv)前記外側領域は、セラミック骨格50~98質量%およびポリマー部分2~50質量%を含むハイブリッドセラミックを有し、前記ハイブリッドセラミックの全組成は100質量%となることを特徴とする、請求項1から
6までのいずれか1項記載のブランク。
【請求項8】
(iv)前記外側領域は、50~99.9質量%の二酸化ジルコニウムの含有率と、0.1~50質量%の含有率での少なくとも1つの他の金属酸化物、半金属酸化物および/または炭化ケイ素またはこれらの混合物の含有率とを含むセラミック骨格を含むハイブリッドセラミックを有し、前記他の金属酸化物、半金属酸化物および/または炭化ケイ素の金属は、イットリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、リチウムおよびケイ素から選択され、前記セラミック骨格の全組成は100質量%となることを特徴とする、請求項1から
7までのいずれか1項記載のブランク。
【請求項9】
(iv)前記歯科用ブランク(1)の前記外側領域(5)は
、ハイブリッドセラミックの全組成を基準として、ポリマー部分2~25質量%と、セラミック部分75~98質量%とを有するハイブリッドセラミックであって、前記ポリマー部分におよび/または前記セラミック部分にそれぞれ顔料を0.0~8.0質量%含むハイブリッドセラミックから形成されていることを特徴とする、請求項1から
8までのいずれか1項記載のブランク。
【請求項10】
(iii)前記ブランクの前記象牙質支台領域(4)は、色空間L*a*bに従って次の色:L 50~80、a 2~5およびb 15~22を有し、かつ/または
(iv)前記ブランクの前記外側領域(5)は、色空間L*a*bに従って次の色:L 60~95、a -5~3およびb 3~2を有することを特徴とする、請求項1から
9までのいずれか1項記載のブランク。
【請求項11】
請求項1から1
0までのいずれか1項記載の歯科用ブランクの製造方法において、前記ブランクは、
(i)前記ブランクの歯冠領域の方向に支台領域(3a)を有し、かつ前記ブランクの歯根方向にインプラント連結形状部(3b)を有する内側結合部(2)を準備し、かつ
(ii)前記内側結合部(2)の前記支台領域(3a)を、前記ブランク(1)の歯冠領域の方向で象牙質支台領域(4)と結合し、かつ
(iii)前記象牙質支台領域(4)を、前記ブランク(1)の歯冠領域の方向で(iv)前記ブランクの外側領域(5)と結合し、かつ
(v)前記歯科用ブランクは、内部に、前記内側結合部(2)の前記インプラント連結形状部(3b)中に、および任意に前記内側結合部(2)の前記支台領域(3)中に、縦長の管腔(6)を有し、前記管腔は、前記内側結合部(2)の前記インプラント連結形状部(3b)の上側(2.1)から下側(2.2)にまで達し、かつ任意に前記内側結合部(2)の前記支台領域(3)の上側(3.1)から下側(3.2)にまで達し、かつ前記管腔は、頂窩方向または舌方向の開口部と、歯根方向の開口部とを有する
ことにより製造される、歯科用ブランクの製造方法。
【請求項12】
(ii)前記支台領域(3)と前記象牙質支台領域(4)とは、前記支台領域(3)と前記象牙質支台領域(4)とを所定の位置で結合可能に仕上げるために、これらの領域が向かい合う内部表面で幾何学的対応部を有し、かつ任意に(iii)前記象牙質支台領域(4)と前記外側領域(5)とは、前記象牙質支台領域(4)と前記外側領域(5)とを所定の位置で結合可能に仕上げるために、これらの領域が向かい合う内部表面で幾何学的対応部を有することを特徴とする,請求項1
1記載の方法。
【請求項13】
(ii)前記支台領域(3)と前記象牙質支台領域(4)とは、形状結合により、力結合により、および/または素材結合により相互に結合可能であり、かつ/または(iii)前記象牙質支台領域(4)と前記外側領域(5)とは、形状結合により、力結合により、および/または素材結合により相互に結合可能であることを特徴とする、請求項1
1または1
2記載の方法。
【請求項14】
請求項1から1
0までのいずれか1項記載の歯科用ブランクを製造するためのシステムにおいて、前記システムは、
a)個別の互いに結合可能な構成要素として
内側結合部(2)、
象牙質支台領域(4)、および
外側領域(5)を含むか、または
b)請求項1から1
0までのいずれか1項記載のブランク、および接着剤、素材結合により結合するための可塑性のまたは液状のハイブリッド素材および/またはインプラントスクリュを含む
ことを特徴とする、歯科用ブランクを製造するためのシステム。
【請求項15】
前記システムは、a)接着剤、素材結合により結合するための可塑性のまたは液状のハイブリッド素材および/またはインプラントスクリュを含むことを特徴とする、請求項1
4記載のシステム。
【請求項16】
素材削り出し法において多色歯科補綴修復物(100)を製造するための、請求項1から1
0までのいずれか1項記載のブランクまたは請求項1
4もしくは1
5記載のシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ブランクの外側領域の削り出し加工により、歯科補綴修復物、ことに多色歯科補綴修復物を製造するための歯科用ブランクにおいて、該歯科用ブランクは、(i)内側結合部を含み、該内側結合部は、該歯科用ブランクの歯冠領域の方向に好ましくは円錐形の支台領域を有し、かつ該歯科用ブランクの歯根方向にインプラント連結形状部を有し、(ii)該結合部の支台領域は、該ブランクの歯冠領域の方向で象牙質支台領域と結合しており、かつ(iii)該象牙質支台領域は、該ブランクの歯冠領域の方向で(iv)該ブランクの外側領域とエナメル質領域内で結合されており、かつ(v)該歯科用ブランクは、内部に、製造された歯科補綴修復物をバインドねじまたはボルトによりインプラントまたはアバットメント上に固定するための縦長の管腔を有する。さらに、本発明の主題は、歯科用ブランクを製造するためのシステム、および該ブランクの製造方法である。
【背景技術】
【0002】
歯科補綴インプラントまたは残存歯根で支持された修復物を製造するために、ミルブランクから削り出し法によってブリッジ、クラウンキャップまたは歯科用支台構造体を製造し、後からこれに歯色のベニアを設けることが知られている。今まで、削り出し法で製造された歯科補綴修復物は、ミリングマシン内に固定可能な、ミリングマシン用の固定部を備えた単一ブロックまたはミル円形素材、つまり円柱状プレートから製造されている。ミル円形素材から、原則として多数の補綴修復物が製造される。このミル円形素材の削り出し加工は、原則として、相応するCAD/CAM機器を利用できるミリングセンタで集約的に行われる。
【0003】
CAD/CAM法は、例えばブリッジおよびクラウンのような審美的補綴歯科修復物のコンピュータ支援製造方法である。この場合、CAD/CAMにおいて、CADは、英語のComputer Aided Design(コンピュータ支援設計)の略であり、CAMは、英語のComputer Aided Manufacturing(コンピュータ支援製造)の略である。
【0004】
例えば、自動化された素材削り出し法(以後、単に削り出し法とも言う)において、CADデータからCAM法で3Dワークピースが製造される。通常の削り出し法は、ミリング、穿孔、切削、はつり、研磨、溶融および/またはこれらの削り出し工程の少なくとも2つを含む。
【0005】
公知のCAD/CAM法の他に、補綴歯科修復物の製造用のブランクを加工するために、レーザービームにより引き起こされた材料の削り出しを行ういわゆるレーザーミリングも将来的に使用することができる。所望の結果を得るために、ブランクの材料特性をレーザーミリング法に特別に適合させなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、好ましくは審美的にも天然歯に極めて良好に適合する歯科補綴修復物の分散的な製造を可能にすることにある。好ましくは、歯科補綴修復物の製造、加工および適合を好ましくは治療期間内で直接行うことができる明らかにより経済的な方法で、ミルブランクの素材削り出し加工が可能となるべきである。ことに、ブランクの加工特性は、破壊強さおよび/または弾性率に関して極めて良好であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、請求項1記載の本発明による歯科用ブランク、ことに歯科用ミルブランク、ことにポリマー充填されたハイブリッドセラミックからなる外側領域を有するブランクにより、および請求項10記載の該ブランクの製造方法により、および請求項13記載のブランクを製造するためのシステムにより解決される。該ブランクの好ましい実施形態は、従属請求項において、および明細書においてより詳細に説明されている。
【0008】
例えば、ハイブリッドセラミックからなる外側領域を有する本発明によるブランクの好ましい別の態様は、CAD/CAM法で補綴成形品のブランクへとミリング加工可能である充填物不含の純セラミック製のミルブランクと比べて、明らかに改善された材料特性を示す。
【0009】
本発明の主題は、歯科用ブランク、ことにミルブランクであって、該ブランクの、ことに該ブランクの外側領域の素材削り出し加工により、インプラントおよび任意にアバットメントにより支持される単歯修復物、例えばクラウンのような歯科補綴修復物、好ましくは多色歯科補綴修復物を製造するための歯科用ブランク、ことにミルブランクにおいて、前記ブランクは、
(i)内側結合部を含み、前記内側結合部は、前記歯科用ブランクの歯冠領域の方向に支台領域、ことに円錐形の、好ましくは原材料一体式の支台領域を有し、かつ前記歯科用ブランクの歯根方向にインプラント連結形状部を有し、前記内側結合部は、ことに金属または金属合金、好ましくはチタン、チタン合金、金、金合金、またはコバルト-クロムからなる結合部であり、
(ii)前記結合部の支台領域は、前記ブランクの歯冠領域の方向で象牙質支台領域と結合されており、かつ
(iii)前記象牙質支台領域は、前記ブランクの歯冠領域の方向で
(iv)前記ブランクの外側領域と結合されており、かつ
(v)前記歯科用ブランクは、内部に、前記内側結合部内のインプラント連結形状部中に、および任意に前記内側結合部の支台領域中に、縦長の管腔を有し、前記管腔は、前記内側結合部のインプラント連結形状部の上側から下側にまで、および任意に前記内側結合部の支台領域の上側から下側にまで達し、かつ前記管腔は、頂窩方向または舌方向の開口部と、歯根方向の開口部とを有する、
ブランクである。
【0010】
別の態様によると、バインドねじを収容するための管腔は、ほぼ円筒状であるか、または弓形に延びかつ任意に歯根方向にねじ山部分を有する縦長の管腔として形成されている。管腔の弓形の延びとは、1つより多い縦中心軸を有する管腔であると解釈される。例えば、この管腔は、領域的に複数の縦中心軸を有してよく、この場合、これらの縦中心軸は互いに0°と等しくないまたは180°と等しくない角度にある。
【0011】
ブランクの外側領域は、天然歯のエナメル質の領域に相当する。内側結合部は、好ましくは歯科補綴修復物の頸部領域内に配置されており、かつ好ましくは円錐形に形成されている。他の好ましい別の態様によると、内側結合部は、原材料一体式に形成されている。
【0012】
支台領域は、象牙質支台領域と分離可能または分離不能に結合されていてよい。よって、支台領域と象牙質領域との間の結合は、形状結合により、力結合によりまたは素材結合により行われるか、またはこれらの組合せを含んでいてよい。同様に、象牙質支台領域は、外側領域と分離可能または分離不能に結合されていてよい。よって、ここでもまた、象牙質支台領域と外側領域との間の結合は、形状結合により、力結合によりまたは素材結合により行われるか、またはこれらの組合せを含んでいてよい。
【0013】
本発明の主題は、同様に、ブランク、ことにミルブランクであり、この歯科用ブランクは、縦長の管腔を有し、この管腔は、外側領域の上側から内側結合部のインプラント連結形状部の下側にまで達し、かつこの管腔は、連結形状部と支台部とを含む内側結合部、象牙質支台領域および外側領域を通過するように延び、かつ頂窩方向または舌方向の開口部と、歯根方向の開口部とを有する。
【0014】
さらに、歯科用ブランクは、縦長の管腔を有してよく、この管腔は、外側領域の上側から結合部のインプラント連結形状部の下側にまで達し、ここで、この管腔は、内側結合部、象牙質支台領域および外側領域を通過するように延び、かつ頂窩方向または舌方向の開口部と、歯根方向の開口部とを有し、かつ外側領域は、象牙質支台領域を頸部でまたは頸部領域内で取り囲む。さらに、象牙質支台領域は、支台領域を頸部でまたは頸部領域内で取り囲む場合が好ましい。
【0015】
したがって、本発明の主題は、縦長の管腔を有するブランクであってもよく、この管腔は、外側領域の上側から下側にまで、象牙質支台領域の上側から下側にまで、および結合部の上側から下側にまで達するので、この管腔は、内側結合部、象牙質支台領域および外側領域を通過するように延び、かつ外側領域の上側に頂窩方向または舌方向の開口部と、インプラント連結形状部の下側に歯根方向の開口部とを有する。
【0016】
好ましい別の態様によると、本発明の主題は、縦長の管腔を有する歯科用ブランクであって、この管腔は、外側領域の上側から結合部のインプラント連結形状部の下側にまで達し、ことにこの管腔は、全体の内側結合部、象牙質支台領域および外側領域を通過するように延び、かつ頂窩方向または舌方向の開口部と、歯根方向の開口部とを有し、ここで、この縦長の管腔は、
(a)少なくとも1つの長軸を有していてよく、ことに(a.1)縦長の管腔は、その1つの長軸に対して回転対称に形成されていてよく、かつ/または(a.2)縦長の管腔は、領域的に複数の縦中心軸を有しかつこの管腔は、好ましくは、例えば直径が変わらずに、弓形に形成されていてよく、かつ/または
(b)縦長の管腔は、折れ曲がっていてよくかつ少なくとも2つの交差する長軸を有してよく、かつ/または(c)縦長の管腔は、例えば直径が変化するように、弓形に形成されていてよく、かつ/または(d)縦長の管腔の開口部は、頂窩方向または舌方向で、ことに外側領域の上側、象牙質支台領域の上側および/または支台領域の上側で、ことに内側結合部のインプラント連結形状部の下側の歯根方向の開口部よりも、少なくとも大きな直径を有してよい。
【0017】
本発明によると、管腔は、補綴修復物をインプラント上に固定するためのバインドねじまたはボルトを収容するために適した直径を有する。任意に、管腔は、付加的にねじ山部分を有してよい。
【0018】
同様に、本発明の主題は、(i)支台領域とインプラント連結形状部とを含む内側結合部を有するブランクであり、ここで、結合部は、少なくとも1つの金属または金属合金からなり、好ましくは、内側結合部は、チタン、チタン合金、金、金合金またはコバルト-クロム合金からなる。特に好ましくは、結合部は、チタン合金、金合金またはコバルト-クロム合金からなる。結合部は、好ましくは素材一体式に金属または金属合金からなる。
【0019】
さらに、ブランクは、(iii)象牙質支台領域内では、金属酸化物または金属酸化物混合物から形成されており、この金属酸化物または金属酸化物混合物は、任意に酸化マグネシウム(MgO)および/または酸化イッテルビウム(Y2O3)の含分を有する場合が好ましい。好ましくは、ブランクは、(iii)象牙質支台領域内では、金属酸化物または金属酸化物混合物から形成されていてよく、ここで、金属酸化物または金属酸化物混合物は、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウム/酸化アルミニウム混合物から選択されていてよく、この金属酸化物または金属酸化物混合物は、それぞれ無関係に、任意に、酸化マグネシウム(MgO)および/または酸化イッテルビウム(Y2O3)の含分を有する。
【0020】
別の態様によると、ブランクの象牙質支台領域または外側領域は、金属酸化物または金属酸化物混合物または連続気泡型のセラミック骨格から形成されていてよく、ここで、セラミック骨格の連続気泡の気孔率は、10~80質量%、ことに20~70質量%、好ましくは30~60質量%であってよく、ことに連続気泡型のセラミック骨格には、全組成を基準として、少なくとも1つのポリマーが20~90質量%、ことに30~80質量%、好ましくは40~70質量%充填されていてよい。本発明によると、ことに素材削り出し法におけるセラミック骨格の加工特性を改善するために、連続気泡型のセラミック骨格にはポリマーが充填されていてよい。
【0021】
象牙質支台領域または外側領域の連続気泡型のセラミック骨格は、好ましくは、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸塩鉱物、好ましくは長石、二酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウムを含む混合酸化物および/または炭化ケイ素を含んでよいかまたはこれらからなっていてよい。特に、二酸化ジルコニウム、ことに50質量%以上の二酸化ジルコニウム含有率を有する、ことに70質量%以上の二酸化ジルコニウム含有率を有する二酸化ジルコニウムが好ましい。あるいは、95質量%以上、ことに99.7質量%以上、好ましくは99.99質量%以上の含有率を有する酸化アルミニウムが好ましい。さらに、特に好ましいセラミック骨格は、50以上から100質量%までの二酸化ジルコニウム含有率を有し、任意付加的に、マグネシウム、例えば(Mg-PSZ、部分安定化)、MgO、Y2O3を含む二酸化ジルコニウム(Y-TZP、部分安定化)、Y2O3を含む二酸化ジルコニウムHIP状態(Y-TZP、部分安定化)、ZrO2/Al2O3混合酸化物、SiSiCケイ素で溶浸された炭化ケイ素、遊離ケイ素なしで焼結された炭化ケイ素、遊離ケイ素なしでホットプレスされた炭化ケイ素を含む。70質量%以上から100質量%まで、ことに73質量%以上、好ましくは85質量%以上、90質量%以上の二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウムを含む混合酸化物および/または炭化ケイ素の含有率を有するセラミック骨格が好ましく、ここで、この骨格は、好ましくはイットリウム化合物および/または酸化マグネシウムで安定化されている。
【0022】
好ましい別の態様によると、象牙質支台領域は、金属酸化物または金属酸化物混合物を含んでよく、ことに50~100質量%、ことに70~100質量%、好ましくは85~100質量%、特に好ましくは90~100質量%の二酸化ジルコニウム含有率を含み、かつ任意に、0~50質量%、ことに0~30質量%、好ましくは0~15質量%、特に好ましくは0~10質量%の含有率で、少なくとも1つの他の金属酸化物、半金属酸化物および/または炭化ケイ素、ことにイットリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、リチウムおよび任意にケイ素から選択される上述の酸化物の1つまたはこれらの混合物の含有率を含んでよく、ここで、全組成は100質量%となる。他の金属酸化物および半金属酸化物として、酸化イットリウム、ことにY2O3、MgO、Al2O3が好ましく、ことに0~50質量%、ことに0~30質量%、好ましくは0~15質量%、特に好ましくは0~10質量%の含有率を有する。
【0023】
好ましい他の態様によると、外側領域は、セラミック骨格を含んでよく、ことに外側領域は、連続気泡型のセラミック骨格を含み、好ましくはポリマー部分を有する歯科用ハイブリッドセラミックを含み、ことに50~99.9質量%、ことに70~99.9質量%、好ましくは85~99.9質量%、特に好ましくは90~99.9質量%または50~97質量%の二酸化ジルコニウムおよび/または長石の含有率を含み、かつ任意に、0.1~50質量%、または3~50質量%、ことに0.1~30質量%、好ましくは0.1~15質量%、特に好ましくは0.1~10質量%の他の金属酸化物、複数の金属酸化物、半金属酸化物、炭化ケイ素の含有率で、他の金属酸化物、半金属酸化物、炭化ケイ素、ことに上述のものの1つまたはこの混合物の含有率を含み、ここで、他の金属酸化物、半金属酸化物および/または炭化ケイ素の金属は、イットリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、リチウム、および任意にケイ素から選択され、ここで、セラミックの全組成は100質量%となる。特に好ましくは、外側領域は、連続気泡型のセラミック骨格を含むセラミック骨格であり、好ましくはポリマー部分を有する歯科用ハイブリッドセラミックであり、好ましくはセラミック骨格は、50~99.9質量%、ことに70~99.9質量%、好ましくは85~99.9質量%、特に好ましくは90~99.9質量%または50~97質量%の二酸化ジルコニウムの含有率、および0.1~50質量%または3~50質量%、ことに0.1~30質量%、好ましくは0.1~15質量%、特に好ましくは0.1~10質量%の少なくとも1つの他の金属酸化物、複数の金属酸化物、半金属酸化物、炭化ケイ素の含有率を含み、ここで、セラミック骨格の全組成は100質量%となる。好ましくは、外側領域は、50~98質量%、ことに80~90質量%のセラミック骨格および2~50質量%、ことに10~20質量%のポリマー部分を含むハイブリッドセラミックを含み、ここで、ハイブリッドセラミックの全組成は100質量%となる。
【0024】
本発明による特に好ましい象牙質領域は、金属酸化物または金属酸化物混合物を含み、または外側領域は、セラミック骨格を含み、ことに外側領域は、連続気泡型のセラミック骨格を含み、この連続気泡型のセラミック骨格は50~98質量%、ことに70~98質量%の二酸化ジルコニウムおよび/または長石の含有率、ならびに任意に、0.01~20質量%、ことに0.1~15質量%、特に好ましくは1~15質量%の酸化イットリウム、ことに酸化イットリウム(III)の含有率、ならびに任意にまたはあるいは0.01~10質量%、ことに0.1~5質量%の酸化マグネシウムの含有率、および/または任意に、0.01~30質量%、ことに0.1~25質量%の酸化アルミニウム、ことにAl2O3の含有率を含み、ここで、全含有率は100質量%となる。典型的な本発明のセラミック骨格は、95質量%のZrO2および5質量%のY2O3の含有率を有するZrO2/Y2O3または約95質量%のZrO2および約4.75質量%のY2O3および約0.25質量%のAl2O3の含有率を有するZrO2/Y2O3/Al2O3;約76質量%のZrO2および20質量%のAl2O3および4質量%のY2O3の含有率を有するZrO2/Al2O3/Y2O3;約90質量%のZrO2および10質量%のY2O3の含有率を有するZrO2/Y2O3;約96.5質量%のZrO2および3.5質量%のMgOの含有率を有するZrO2/MgOを含む。同様に好ましい連続気泡の骨格は、ことにハイブリッドセラミックの製造のための成分としてまたはハイブリッドセラミック中で、長石から形成されている。重合可能なモノマー、ことにUDMAおよび/またはTEGDMAの含浸および重合により、ことに外側領域の製造のためのハイブリッドセラミックが製造されるか、または相応するハイブリッドセラミックが得られる。
【0025】
特に好ましい別の態様によると、(iv)ブランクの外側領域は、歯科用コンポジット材料、任意に特別な組成のガラスセラミック;連続気泡のセラミックのような歯科用セラミック、またはハイブリッドセラミック、ことにポリマー部分を有する歯科用ハイブリッドセラミック、特に好ましくはポリマー部分を有する連続気泡型のセラミック骨格を有するハイブリッドセラミックから形成されていてよい。連続気泡型のセラミック骨格は、好ましくは上述のまたは後述の組成を有していてよい。ポリマー部分は、好ましくは後述のポリマー成分を含む。
【0026】
さらに、(iv)歯科用ブランクの外側領域は、
A)
(a)無機充填剤、ことに歯科用ガラス;ことにバリウムガラス粉末および/またはストロンチウムガラス粉末、バリウム-アルミニウム-フルオロケイ酸塩歯科用ガラス;および/または炭酸カルシウム(いわゆる「ウィスカー」)を含む無機充填剤40~80質量%
(b)ウレタン(メタ)アクリラート、例えばUDMA(ジウレタンジメタクリラート)、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン-(TCD)-ウレタン誘導体、TCD-ジ-HEA(ビス(アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン)
【化1】
、ことに2-プロペン酸(オクタヒドロ-4,7-メタン-1H-インデン-5-ジイル)ビス(メチレンイミノカルボニルオキシ-2,1-エタンジイル)エステル)、TCD-ジ-HEMA(ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン-HEMA(HEMA:2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、TCD-ジ-HEAのメチルアクリラート誘導体、および/またはTEGDMA(トリエチレングリコール-ジメタクリラート)および任意に少なくとも1つの三価性、四価性または五価性の架橋剤を含む少なくとも1つのモノマーまたはモノマー混合物の重合に基づく少なくとも1つのポリマー成分60~20質量%
を含む歯科用コンポジット材料、または
B)歯科用ガラスセラミックとしての二ケイ酸リチウム、または
C)ハイブリッドセラミック、ことにポリマー部分を有する歯科用ハイブリッドセラミック、好ましくは、セラミック部分が、好ましくは連続気泡型のセラミック骨格である歯科用ハイブリッドセラミック
から形成されている場合が特に好ましい。連続気泡型のセラミック骨格の細孔は、好ましくはポリマーで充填されており、かつポリマー部分を形成する。
【0027】
一実施形態によると、コンポジット材料中の無機充填剤は、歯科用ガラスを含んでよく、この歯科用ガラスは、粗粒の歯科用ガラスと細粒の歯科用ガラス、ならびに任意に平均粒子サイズを有する歯科用ガラスのような多様な粒子サイズ画分を含んでよい。総じて、粒子サイズ分布は5nm~20μmであることができる。粗粒の歯科用ガラスの平均粒子サイズは、好ましくは5~10μm、ことに7μmであり、細粒の歯科用ガラスの平均粒子サイズは、0.5~2μm、ことに1μmである。任意付加的に、2~5μmの平均粒子サイズの歯科用ガラスおよび/または10~50μmの粒子サイズを有する極めて粗粒の歯科用ガラスを使用することができる。
【0028】
コンポジット材料の好ましい曲げ強さは、DIN EN 4049:2009により、145~169MPaである。
【0029】
二ケイ酸リチウムの次の組成は、本発明により好ましい:
SiO2 55~70質量%、LiO2 10~15質量%、ZrO2、HfO2またはこれらの混合物からなる群から選択される安定剤10~20質量%、K2O 0.1~5質量%、Al2O3 0.1~5質量%、添加物0~10質量%、および着色剤または顔料0~10質量%。
【0030】
ポリマー成分は、これとは別にまたは付加的に、次のモノマーの少なくとも1つを含むモノマーの重合に基づくことができる。したがって、ポリマー部分は、次のモノマーの少なくとも1つを含むモノマーの重合に基づくことができる:モノマーとして、歯科分野で通常のモノマーが挙げられる:例えばラジカル重合可能な単官能性モノマー、例えばモノ(メタ)アクリラート、メチル(メタ)アクリラート、エチル(メタ)アクリラート、ブチル(メタ)アクリラート、ベンジル(メタ)アクリラート、フルフリル(メタ)アクリラートまたはフェニル(メタ)アクリラート、多官能性モノマー、例えば多官能性アクリラートもしくはメタクリラート、例えばビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリラート、ビス-GMA(メタクリル酸とビスフェノール-A-ジグリシジルエーテルとの付加生成物)、UDMA(ウレタンジメタクリラート)、例えば2-ヒドロキシエチルメタクリラートと2,2,4-ヘキサメチレンジイソシアナートとの付加生成物、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、デカンジオールジ(メタ)アクリラート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリラート、ヘキシルデカンジオールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパン-トリ(メタ)アクリラート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリラートならびにブタンジオールジ(メタ)アクリラートである。特に、ビス-GMA、TEDMA(トリエチレングリコールジメタクリラート)、TCD-ジ-HEMA(ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン)およびTCD-ジ-HEA(ビス-(アクリロイルオキシメチル)-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンが好ましい。
【0031】
少なくとも1つのウレタン(メタ)アクリラートは、ビス(メタクリルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)-アルキレン、ジウレタンアクリラートオリゴマー、アルキル-官能性ウレタンジメタクリラートオリゴマー、芳香族-官能化ウレタンジメタクリラートオリゴマー、脂肪族不飽和ウレタンアクリラート、ビス(メタクリルオキシ-2-エトキシカルボニルアミノ)置換ポリエーテル、芳香族ウレタンジアクリラートオリゴマー、脂肪族ウレタンジアクリラートオリゴマー、単官能性ウレタンアクリラート、脂肪族ウレタンジアクリラート、六官能性脂肪族ウレタン樹脂、脂肪族ウレタントリアクリラート、UDMA、脂肪族ウレタンアクリラートオリゴマー、不飽和脂肪族ウレタンアクリラートから選択されてよい。
【0032】
多官能性モノマーとして、次のモノマーまたはこれらの混合物から選択される少なくとも1つのモノマーが使用されてよい:2,2-ビス-4-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシ-プロピル)-フェニルプロパン)(ビス-GMA)、つまりグリシジルメタクリラートとビスフェノール-A(OH基含有)との反応生成物、および7,7,9-トリメチル-4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジイルジメタクリラート(UDMA)、つまり2molの2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)と1molの2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートとのウレタンジメタクリラート(ウレタン基含有)。さらに、グリシジルメタクリラートと他のビスフェノール、例えばビスフェノール-B(2,2′-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-ブタン)、ビスフェノール-F(2,2′-メチレンジフェノール)または4,4′-ジヒドロキシジフェニルとの反応生成物、ならびに2molのHEMAまたは2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラートと、ことに1molの公知のジイソシアナート、例えばヘキサメチレンジイソシアナート、m-キシリレンジイソシアナートまたはトルイレンジイソシアナートとの反応生成物は、架橋剤モノマーとして適している。
【0033】
多官能性モノマーとして、同様に次のモノマーが使用されてよい:ジエチレングリコール-ジ(メタ)アクリラート、デカンジオールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリ-(メタ)アクリラート、ペンタエリトリット-テトラ(メタ)アクリラートならびにブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリラート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリラート。
【0034】
ポリマー成分は、これとは別にまたは付加的に、次のモノマーの少なくとも1つを含むモノマーの重合に基づくことができる。したがって、ポリマー部分は、次のモノマーの少なくとも1つを含むモノマーの重合に基づくことができる:酸官能基を有するかまたは有しない1つ以上のエチレン性不飽和化合物。例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性アクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性メタクリル酸エステルおよびこれらの組合せ。ならびにモノ(メタ)アクリラート、ジ(メタ)アクリラート、ポリ(メタ)アクリラート、つまりアクリラートおよびメタクリラート、例えばメチル(メタ)アクリラート、エチルアクリラート、イソプロピルメタクリラート、n-ヘキシルアクリラート、ステアリルアクリラート、アリルアクリラート、グリセリントリアクリラート、エチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、1,3-プロパンジオール(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、1,2,4-ブタントリオールトリメタクリラート、1,4-シクロヘキサンジオールジアクリラート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリラート、ソルビットヘキサアクリラート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラート、ビス[1-(2-アクリルオキシ)]-p-エトキシフェニル-ジメチルメタン、ビス[1-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシル化ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリラートおよびトリスヒドロキシエチルイソシアヌラート-イソシアヌラートトリメタクリラート、(メタ)アクリルアミド(つまり、アクリルアミドおよびメタクリルアミド)、例えば(メタ)アクリルアミド、メチレン-ビス-(メタ)アクリルアミドおよびジアセトン(メタ)アクリルアミド;ウレタン(メタ)アクリラート;ポリエチレングリコールのビス-(メタ)アクリラート(好ましくは200~500の分子量を有する)、アクリル化モノマーの共重合可能な混合物、およびビニル化合物、例えばスチレン、ジアリルフタラート、ジビニルスクシナート、ジビニルアジパートおよびジビニルフタラート。シロキサン官能性(メタ)アクリラートおよびフルオロポリマー官能性(メタ)アクリラートまたは2つ以上のラジカル重合可能な化合物の混合物を含む他の適したラジカル重合可能な化合物が、必要に応じて使用されてよい。
【0035】
ポリマー成分は、これとは別にまたは付加的に、次のモノマーの少なくとも1つを含むモノマーの重合に基づくことができる。したがって、ポリマー部分は、次のモノマーの少なくとも1つを含むモノマーの重合に基づくことができる:ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラート、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリラートおよび2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート;グリセリンモノ-またはジ-(メタ)アクリラート;トリメチロールプロパンモノ-またはジ-(メタ)アクリラート;ペンタエリトリットモノ-、ジ-およびトリ-(メタ)アクリラート;ソルビトールモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-またはペンタ-(メタ)アクリラートおよび2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビス-GMA)またはエチレン系不飽和化合物の混合物。ならびにPEGDMA(約400の分子量を有するポリエチレングリコールジメタクリラート)、GDMA(グリセリンジメタクリラート)および/またはNPGDMA(ネオペンチルグリコール-ジメタクリラート)またはこれらを含む混合物。
【0036】
重合を開始するために、コンポジットは、重合開始剤、例えばラジカル重合用の開始剤を含んでよい。使用された開始剤の種類に応じて、混合物は、常温で放射線により架橋されてよく、つまりUV架橋されてよいか、または熱の供給により重合可能であってよいか、もしくは重合されていてよい。
【0037】
温度により誘導される重合用の開始剤として、公知のペルオキシド、例えばジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルオクトアート、またはtert-ブチルペルベンゾアート、またアルファ,アルファ′-アゾビス(イソブチロエチルエステル)、ベンゾピナコールおよび2,2′-ジメチルベンゾピナコールが使用されてよい。
【0038】
光開始剤として、例えばベンゾインアルキルエーテルまたはベンゾインアルキルエステル、ベンジルモノケタール、アシルホスフィンオキシドまたは脂肪族および芳香族1,2-ジケト化合物、例えば2,2-ジエトキシアセトフェノン、9,10-フェナントレンキノン、ジアセチル、フリル、アニシル、4,4′-ジクロロベンジルおよび4,4′-ジアルコキシベンジルまたはカンファーキノンが挙げられる。光開始剤は、好ましくは還元剤と一緒に使用される。還元剤の例は、アミン、例えば脂肪族または芳香族第三級アミン、例えばN,N-ジメチル-p-トルイジンまたはトリエタノールアミン、シアンエチルメチルアニリン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルジフェニルアミン、N,N-ジメチル-sym-キシリジン、N,N-3,5-テトラメチルアニリンおよび4-ジメチルアミノ-安息香酸エチルエステルまたは有機ホスフィットである。通常の光開始剤系は、例えばカンファーキノン+エチル-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾアート、2-(エチルヘキシル)-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾアートまたはN,N-ジメチルアミノエチルメタクリラートである。UV光により開始される重合用の開始剤として、特に2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが適している。UV光開始剤は、単独で、可視光用の開始剤と、常温硬化用の開始剤および/または温度により開始される硬化用の開始剤と組み合わせて使用されてよい。
【0039】
常温重合用の開始剤として、ラジカル形成する系、例えばベンゾイルペルオキシドもしくはラウロイルペルオキシドを、N,N-ジメチル-sym-キシリジンまたはN,N-ジメチル-p-トルイジンなどのアミンと一緒に使用する。デュアル硬化系、例えば光開始剤をアミンおよびペルオキシドと一緒に使用してもよい。開始剤は、混合物の全質量を基準として、好ましくは0.01~1質量%の量で使用される。
【0040】
常温重合用の開始剤として、ペルオキシド、およびアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、バルビツル酸またはバルビツル酸誘導体、スルフィン酸、スルフィン酸誘導体から選択される還元剤を含むレドックス系も適しており、特に(i)バルビツル酸またはチオバルビツル酸またはバルビツル酸誘導体またはチオバルビツル酸誘導体、および(ii)少なくとも1つの銅塩または銅錯体、および(iii)イオン性ハロゲン原子を有する少なくとも1つの化合物を含むレドックス系が好ましく、特に1-ベンジル-5-フェニルバルビツル酸、銅アセチルアセトナートおよびベンジルジブチルアンモニウムクロリドを含むレドックス系が好ましい。特に好ましくは、2成分歯科材料中での重合は、バルビツル酸誘導体を介して開始される。
【0041】
常温重合の場合、混合により硬化させることが予定されている二成分に分けられたコンポジット材料である場合が合理的であってよい。VIS光および/またはUV光によっても、二成分の混合によっても硬化することができるように材料を準備することも可能である。
【0042】
無機充填剤は、好ましくはバリウム-アルミニウム-フルオロケイ酸塩歯科用ガラスを含む。
【0043】
a)40~80質量%の無機充填剤は、好ましくは、1~50nmの粒子サイズを有する非凝集化ナノフィラー0.5~10質量%;平均粒子サイズ(d50値)を基準として細粒対粗粒の1:4~1:30のサイズ比を有する粗粒の歯科用ガラス50~90質量%と細粒の歯科用ガラス10~50質量%からなる充填剤の混合物少なくとも60質量%を含むことができ、ここで、質量%での表記は無機充填剤の全組成を基準とし、任意に充填剤成分中に、粗粒および細粒の歯科用ガラスとは異なる粒子サイズを有する少なくとも1つの他の歯科用ガラスが含まれていてよい。
【0044】
1:4~1:30、好ましくは1:4~1:20、特に約1:5~1:10のサイズ比を有する粗粒および細粒の歯科用ガラスからなる充填剤の混合により、充填粒子の改善された充填を達成することができ、それにより比較的高い充填剤割合を達成することができる。比較的高い充填剤割合は、比較的わずかな割合の収縮性のモノマーマトリックスを生じる(上記参照)。細粒の歯科用ガラスの割合は、充填剤の全組成中で最大40質量%であるのが好ましい。
【0045】
歯科用ガラスとして、特にバリウムガラス粉末、有利にバリウム-アルミニウム-フルオロケイ酸塩歯科用ガラスおよび/またはストロンチウムガラス粉末が適している。粗粒の歯科用ガラスの平均粒子サイズは、好ましくは5~10μm、ことに7μmであり、細粒の歯科用ガラスの平均粒子サイズは、0.5~2μm、ことに1μmである。任意に存在する他の歯科用ガラスは、例えば2~5または10~50μmの平均粒子サイズを有する。無機充填剤は、したがって全体として3つ以上の粒群を有する歯科用ガラスを有していてよい。この無機充填剤は、また他の、慣用の、歯科分野で通常の充填剤、例えば石英、ガラスセラミックまたはそれらの混合物を含んでいてもよい。さらに、このコンポジットは、X線不透過性を高める目的の充填剤を含んでいてよい。X線不透過性充填剤の平均粒子サイズは、好ましくは100~300nm、ことに180~300nmの範囲内にある。X線不透過性充填剤として、例えば独国特許出願公開第3502594号明細書(DE 35 02 594 A1)に記載された希土類金属のフッ化物、つまり原子番号57~71の元素の三フッ化物が適している。特に好ましく使用される充填剤は、フッ化イッテルビウム、ことに約300nmの平均粒子サイズを有する三フッ化イッテルビウムである。X線不透過性充填剤の量は、全充填剤含有率を基準として、好ましくは10~50質量%、特に好ましくは20~30質量%である。
【0046】
さらに、沈降混合酸化物、例えばZrO2/SiO2が充填剤として使用されてよい。200~300nm、ことに約200nmの粒子サイズを有する混合酸化物が好ましい。混合酸化物粒子は、好ましくは球形であり、かつ均一のサイズを有する。混合酸化物は、好ましくは1.52~1.55の屈折率を有する。沈降混合酸化物は、好ましくは25~75質量%、特に40~75質量%の量で使用される。
【0047】
非凝集化ナノフィラーとして、例えば、<50nmの粒子サイズを有するSiO2、ZrO2、TiO2および/またはAl2O3を、無機充填剤として使用することができる。
【0048】
(b)コンポジット材料中の60~20質量%の少なくとも1つのポリマー成分は、好ましくは、全体のモノマー混合物を基準として、i.60~80質量%のTCD-ジ-HEMAまたはTCD-ジ-HEAおよび任意にビス-GMA、ii.10~18質量%のUDMA、iii.残りTEDMAおよび/または少なくとも1つの三価の架橋剤、四価および/または五価の架橋剤、および0~1質量%の開始剤のモノマー混合物の重合に基づく。歯科用コンポジットの全組成物中のTCDモノマーの含有率は、好ましくは1~15質量%である。
【0049】
二ケイ酸リチウムは、二酸化ケイ素50~85質量%、Li2O 10~20質量%、K2O 0.0~15.00質量%、ZrO2 0.0~8.0質量%、Al2O3 0.0~5.0質量%、MgO 0.0~5.0質量%、および任意に無機顔料、ことに酸化物系顔料0.0~10.0質量%を含んでよく、ここで、二ケイ酸リチウムの全組成は100質量%となる。
【0050】
二ケイ酸リチウムは、好ましくはX線不透過材として、独国特許出願公開第3502594号明細書(DE3502594A1)に記載された、希土類金属のフッ化物、つまり原子番号57~71の元素の三フッ化物の含有率を含んでいてよい。特に好ましく使用される充填剤は、フッ化イッテルビウム、ことに約300nmの平均粒子サイズを有する三フッ化イッテルビウムである。X線不透過性充填剤の量は、二ケイ酸リチウムの全含有率を基準として好ましくは0.001~50質量%、二ケイ酸リチウムの全含有率を基準として好ましくは1~30質量%、特に好ましくは10~30質量%である。
【0051】
ハイブリッドセラミックは、好ましくは、セラミック部分を含み、ここで、セラミック部分は、好ましくはセラミック骨格である。セラミック骨格は、好ましくはSiO2 50~70質量%、Al2O3 15~30質量%、Na2O 5~15質量%、K2O 2~10質量%、B2O3 0.05~5質量%、ZrO2 0.0001~1質量%、およびCaO 0.0001~1質量%を含み、ここで、全組成物は100質量%になる。特に好ましくは、セラミック骨格は、SiO2 55~65質量%、Al2O3 20~25質量%、Na2O 8~12質量%、K2O 3~7質量%、B2O3 0.05~3質量%、ZrO2 0.0001~1質量%、およびCaO 0.0001~1質量%を含み、ここで、セラミック骨格の全組成は100質量%になる。あるいは、長石、ことに長石セラミックからなるセラミック部分を有するハイブリッドセラミックが好ましい。
【0052】
長石、ことに長石セラミックの割合は、好ましくは80~95質量%であってよく、ポリマー、好ましくはウレタン(メタ)アクリラートおよび/または(メタ)アクリラート誘導体、例えばUDMAおよび/またはTEGDMAを基礎とするポリマーの割合は、好ましくは5~20質量%であってよく、ここで、ハイブリッドセラミックの全組成は100質量%となる。
【0053】
ハイブリッドセラミック中のポリマー部分は、ことにポリマー成分として、好ましくはUDMA(ウレタンメタクリラート)およびTEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリラート)の重合に基づき、ここで、好ましくは、ポリマー部分の割合は、ことにポリマー成分として、ハイブリッドセラミックの全組成中で、2~50質量%、好ましくは10~20質量%である。
【0054】
ハイブリッド材料の曲げ強さは、好ましくは少なくとも140[MPa]、好ましくは150~160[MPa]である。曲げ強さは、ISO 10477またはISO 6872により決定することができる。ハイブリッド材料の硬度は、好ましくは約2.5[GPa]である。ハイブリッドセラミック、好ましくは長石を含むハイブリッドセラミックの弾性率は、好ましくは25~35GPa、好ましくは30GPa±2.5GPaの範囲内にある。エナメル質の弾性率は、72.7~105.5GPaであり、象牙質の弾性率は、17.7~29.8GPaである。ハイブリッドセラミックの利点は、弾性率が、天然エナメル質の弾性率と天然象牙質の弾性率との間にあることである。
【0055】
特に好ましくは、ハイブリッドセラミックは、ハイブリッドセラミックの全組成(100質量%)を基準として、2~50質量%、ことに2~25質量%、好ましくは10~20質量%のポリマー部分を、ことにポリマー成分として有し、ならびに50~98質量%、ことに75~98質量%のセラミック部分、ことに連続気泡型のセラミック骨格のセラミック部分を有し、ここで、ハイブリッドセラミックは、ポリマー成分の部分中におよび/またはセラミック部分中に、それぞれ顔料0.0~8.0質量%を含んでよい。好ましいセラミック部分は、二酸化ジルコニウムおよび/または長石を含む。ハイブリッドセラミック中の好ましいポリマーは、UDMA、HEMA、TEGDMAおよび/またはこれらのモノマーの少なくとも1つを含む混合物の反応に基づく。
【0056】
ブランクの外側領域のハイブリッドセラミックは、少なくとも1つのポリマー部分を、ことにポリマー成分として、ブランクの加工特性の改善のために含み、ここで、ブランクは、連続気泡型のセラミック骨格を有し、この連続気泡型のセラミック骨格は、歯科用セラミックブランクの全組成を基準として、2~50質量%の少なくとも1つのポリマーのポリマー部分を有する。ポリマー、ポリマー部分およびポリマー成分の概念は、同義に使用される。
【0057】
他の実施形態によると、ブランクは、(iii)ことにDIN EN ISO 11664-4による、色空間L*a*bに従って次の色:L 50~80、a 2~5およびb 15~22を有する象牙質支台領域、および/または(iv)ことにDIN EN ISO 11664-4による、色空間L*a*bに従って次の色:L 60~95、a -5~3およびb 3~2を有する外側領域を有してよい。象牙質支台領域は、好ましくは上述の色を有する不透明な材料からなり、かつ/または外側領域は、上述の色を有する透明な材料からなる。
【0058】
一実施形態によると、好ましくは象牙質支台領域は、上述の金属酸化物または金属酸化物混合物、好ましくは二酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム-酸化アルミニウム混合物から選択することができ、かつ外側領域は、ハイブリッドセラミック、好ましくは二酸化ジルコニウムおよび/または長石、ことに長石セラミックを含むハイブリッドセラミックから選択することができる。好ましくは、象牙質支台領域と外側領域とは、接着剤により互いに接着されてよい。
【0059】
単なるセラミックと比べた外側領域としてのハイブリッドセラミックの強調されるべき利点は、比較的低い硬度、比較的短いミリング時間および/または原則としてエナメル質の弾性率と象牙質の弾性率との間にある弾性率である。二酸化ジルコニウムセラミック(ZrO2 88~96質量%;HfO2 1~5質量%、Y2O3 4~6質量%およびAl2O3 0.50質量%未満ならびに他の金属酸化物、例えばFe2O3および/またはNa2O3 0.25質量%未満、ここで全組成は100質量%となる)のビッカース硬さ(HV5)は、原則として、ことに連続気泡なしで、1200[MPa]超であり、ならびに原則として200000[MPa]より大きい弾性率を有する。上述の理由から、例えばセラミックの場合の標準ミリング時間は、約148分(モード:標準)または132分(モード:高速)から、例示的に挙げられたクラウンについて10分未満(モード:標準)および6分未満(モード:高速)に低減することができる。したがって、ハイブリッドセラミックは、達成可能な弾性率に基づいて、弾性セラミックとも言われる。ハイブリッドセラミックは、ポリマー部分に基づいて、ほとんど破損しない。さらに、対抗物のエナメル質に関する摩滅作用はより低く、したがって向かい合う天然歯についての長期間使用においてもより良好である。色の調節は、ポリマー部分の製造のための液状モノマーの使用に基づき、ほぼ天然と同一に行うことができる。同様に、ブランクの層状構造に基づいて、材料層および/または色層の選択によって、ほぼ天然に近い概観および暖色の色調を達成することができる。外側領域としてのハイブリッドセラミックは、歯科医でより迅速に高光沢に研磨可能である。
【0060】
同様に、本発明の主題は、歯科用ブランクの製造方法、およびこの方法により得られたブランクであり、ここで、好ましくはブランクから(素材)削り出し加工により歯科補綴修復物が得られ、ここで、ブランクは
(i)ブランクの歯冠領域の方向に支台領域、ことに円錐形の支台領域を有し、かつブランクの歯根方向にインプラント連結形状部を有する内側結合部を準備し、かつ
(ii)内側結合部の支台領域を、ブランクの歯冠領域の方向で象牙質支台領域と結合し、ことに支台領域を象牙質支台領域と分離不能に結合し、好ましくは支台領域を象牙質領域と、形状結合により、力結合により、素材結合により、または形状結合および/または力結合および/または素材結合の組合せにより結合し、かつ
(iii)象牙質支台領域を、ブランクの歯冠領域の方向で、
(iv)ブランクの外側領域と結合し、ことに象牙質支台領域を外側領域と分離不能に結合し、好ましくは象牙質支台領域を外側領域と、形状結合により、力結合により、素材結合により、または形状結合および/または力結合および/または素材結合の組合せにより結合し、かつ
(v)歯科用ブランクは、内部に、内側結合部のインプラント連結形状部中に、および任意に内側結合部の支台領域中に、縦長の管腔を有し、この管腔は、内側結合部のインプラント連結形状部の上側から下側にまで達し、かつ任意に内側結合部の支台領域の上側から下側にまで達し、かつこの管腔は、頂窩方向または舌方向の開口部と、歯根方向の開口部とを有する
ことにより製造される。特に好ましくは、管腔は、外側領域の上側からインプラント連結形状部の下側にまで達する。
【0061】
好ましい変形実施態様によると、(iii)象牙質支台領域は、金属酸化物または金属酸化物混合物の1つ以上の層を含んでよく、ここで、これらの複数の層は、好ましくは、色空間L*a*bに従って異なる色を有する。一実施形態によると、内側結合部、象牙質支台領域および外側領域を含む歯科用ブランクの全体の印象は、Vita classic色調見本A1~D4に調節される。この場合、これらの色調は、A1~A4(赤みがかった色~褐色がかった色)、B1~B4(赤みがかった色~黄色がかった色)、C1~C4(灰色の色調)、D2~D4(赤みがかった灰色)に対応する。
【0062】
この場合、本発明によると、全ての有色層の全体の印象は、象牙質支台領域で、色空間L*a*bのL 50~80、a 2~5およびb 15~22を有し、かつ/または外側領域でL 60~95、a -5~3およびb 3~2を有する場合が特に好ましい。
【0063】
好ましい実施形態によると、象牙質支台領域は、金属酸化物または金属酸化物混合物の1~5つの層および任意に顔料を有してよい。層厚は、その都度、互いに無関係に、200μm~5mm、特に200μm~1mm、好ましくは0.5mm~1mmであってよい。特に好ましくは、1~5つの層が、例えばチタン合金から形成されている外側の支台領域を完全に取り囲む。
【0064】
象牙質支台領域、特に象牙質支台領域のその都度の層は、好ましくはその都度、互いに無関係に、顔料を有する。顔料は、原則として、20μm以下から15μm未満、また10μm以下のd90の粒子サイズを有する。通常では、顔料粒子のd50は、0.001~10μmである。無機顔料として通常の無機顔料を使用することができる。象牙質支台領域の製造のために適しているのは、850℃を超えるまで、好ましくは1200℃までほぼ色安定性である無機顔料である。したがって、無機顔料は、好ましくは850℃を超える、ことに850~1050℃、好ましくは900~930℃の色安定性を有する。その都度選択された顔料は、象牙質支台領域中の金属酸化物または金属酸化物混合物の1つまたは複数の層に応じて、好ましくは遷移金属の酸化物、水和酸化物、硫化物、硫酸塩、炭酸塩およびケイ酸塩から選択され、例えば好ましくはジルコニウムおよび/または鉄を含む顔料である。公知の顔料は、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸鉄、酸化鉄、酸化マンガン、酸化クロム、γ-Fe2O3、Fe3O4/Fe2O3、Cr2O3、TiO2を含む。さらに、無機顔料は、有色顔料、光沢顔料、メタリック効果顔料、ことに小板状のもしくはフレーク状の金属粒子を有する光沢顔料、例えば酸化鉄レッド、ストロンチウムイエロー、アルミニウムブロンズもしくはシルバーブロンズ、パール光沢顔料またはゴールドブロンズ、アルミニウムブロンズを含んでよい。
【0065】
特に好ましい無機有色顔料は、酸化鉄、ケイ酸ジルコニウム-プラセオジム(Zr,Pr)SiO4(CAS番号:68187-15-5)、ケイ酸ジルコニウム-鉄(Zr,Fe(SiO4))(CAS番号:68412-79-3)、亜鉛-鉄-クロム-ブラウン-スピネル(Zn,Fe)(Fe,Cr)2O4(CAS番号:68186-88-9)、亜鉛-鉄-クロム-ブラウン-スピネル(Zn,Fe)(Fe,Cr)2O4(CAS番号:68186-88-9)、クロム-スズ-ロゼ-スフェンCaO:SnO2:SiO2:Cr2O3(CAS番号:68187-12-2)を含む。
【0066】
他の変形実施形態によると、方法において、ブランクにおいておよびブランクを製造するシステムにおいて、(ii)支台領域と象牙質支台領域とは、好ましくは支台領域と象牙質支台領域とを所定の位置で結合可能に仕上げるために、これらの領域が向かい合う内部表面で幾何学的対応部を有してよく、かつ任意に、(iii)象牙質支台領域と外側領域とは、好ましくは象牙質支台領域と外側領域とを所定の位置で結合可能に仕上げるために、これらの領域が向かい合う内部表面で幾何学的対応部を有してよい。対応部とは、好ましくは、向かい合う内部表面の相補的構造に相当し、例えば少なくとも1つの突出部と少なくとも1つの相補的凹陥部とのような表面の相補的構造化に相当する。
【0067】
さらに、方法において、(ii)支台領域と象牙質支台領域とは、形状結合により、力結合により、素材結合により、または形状結合および/または力結合および/または素材結合の組合せにより相互に結合され、かつ/または(iii)象牙質支台領域と外側領域とは、形状結合により、力結合により、素材結合により、または形状結合および/または力結合および/または素材結合の組合せにより相互に結合される場合が好ましい。
【0068】
本発明によると、連続気泡型のセラミック骨格、ことに焼結された骨格は、少なくとも1つのモノマーで、任意に重合開始剤と共に含浸される。含浸およびポリマーへの重合後に、セラミック骨格は改善された材料特性を有する。こうして製造された素材は、歯科用ハイブリッドセラミックである。連続気泡型のセラミック骨格の含浸は、少なくとも1つのモノマーを任意に重合開始剤と共に含む浴中で行うことができる。引き続き、液状の含浸されたモノマーまたはモノマー混合物の重合を行うことができる。
【0069】
同様に、本発明の主題は、歯科用ブランクを製造するためのシステムであり、ここで、このシステムは、a)個別の相互に結合可能な構成要素として、内側結合部、象牙質支台領域、および外側領域を含むか、またはb)本発明におるブランク、および好ましくは接着剤、素材結合により結合するための可塑性のまたは液状のハイブリッド素材および/またはインプラントスクリュを含む。
【0070】
その都度の管腔は、バインドねじを収容するために、結合部、象牙質支台領域、外側領域中に、またはブランク中に設けられていて、補綴修復物をインプラントと、またはインプラント上のアバットメントと固定することができる。
【0071】
他の別の態様によると、このシステムは、接着剤、素材結合により結合するための可塑性のまたは液状のハイブリッド素材および/またはインプラントスクリュを含むことができる。
【0072】
他の別の態様によると、本発明の主題は、素材削り出し法において、多色歯科補綴修復物、ことにクラウンのような、インプラントにより支持された単歯修復物を製造するための、ブランクまたはシステムの使用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1a】内側結合部2と、象牙質支台領域4と、外側領域5とを備えた本発明によるブランク1を表す。
【
図1b】管腔6が、外側領域5中に達していないブランクを表す。
【
図1c】内側結合部2と、象牙質支台領域4と、外側領域5とを備えた加工された本発明によるブランクを表す。
【
図2】相互に個別に結合可能な構成要素である内側結合部2、象牙質支台領域4および外側領域5を含む、歯科用ブランク1を製造するための本発明によるシステムを表す。
【
図3】支台領域3aとインプラント連結形状部3bとを有する内側結合部2を表す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明を、次に、概略図に基づいて詳細に説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0075】
図1aは、支台領域3aとインプラント連結形状部3bとを有する内側結合部2(
図3も参照)と、象牙質支台領域4と、外側領域5とを備えた本発明によるブランク1を表す。外側領域5は素材削り出し法で加工されるので、この領域は、クラウンのような単歯修復物の少なくとも1つの歯表面の輪郭を有する。縦長の直線状の管腔6は、長軸(x)を有する。管腔は、外側領域内にまで達する。ブランクは、インプラント連結形状部3b中に、および支台領域3a中に縦長の管腔6を有し、この管腔は、インプラント連結形状部3bの上側2.1から下側2.2にまで、および支台領域3aの上側3.1から下側3.2にまで達し、かつ頂窩方向の開口部と歯根方向の開口部とを有する。さらに、この縦長の管腔6は、外側領域5の上側8.1からインプラント連結形状部3bの下側2.2にまで達する。
【0076】
図1bでは、管腔6が、外側領域5中に達していないブランクを表す。管腔6は、象牙質支台領域4中でおよび任意に支台領域3a中で頂窩方向に広がっていてよく、後のミリングプロセスにおいて外側領域内にミリング加工されてよい。少なくともインプラント連結形状部3bの領域内では、管腔は好ましくは円筒状に形成されている。
図1bでは、象牙質支台領域4は2つの層4aおよび4bを有する。
【0077】
図1cは、支台領域3aとインプラント連結形状部3bとを有する内側結合部2と、象牙質支台領域4と、外側領域5とを備えた加工された本発明によるブランクを表し、この外側領域は、素材削り出し法で加工されかつ補綴単歯修復物10の少なくとも歯表面の輪郭を有する。ブランク中の縦長の管腔6は、外側領域5では、舌側に湾曲している。
図1cのブランクは、加工前に支台領域中に管腔を有していた。象牙質支台領域中および外側領域5中の管腔は、素材削り出し法で製造され、ことにミリング加工された。あるいは、ブランクは、相応する舌側に湾曲する縦長の管腔を有していてよい。この場合、ブランクは、穿孔の前に製造されるべき補綴物の舌側を確定するために、その外側に表示を有する。
【0078】
図2は、相互に個別に結合可能な構成要素:内側結合部2、象牙質支台領域4および外側領域5を含む、歯科用ブランク1を製造するための本発明によるシステムを表す。
【0079】
本発明によるブランクは、好ましくは、自動化されたミリング法において、明らかに低減された材料廃棄で使用することができる、というのも、この破壊強さおよび弾性率により、ブランクは、明らかにより良好に、ミリング工程の間にブランクの一部のチッピングなしでミリング加工を克服するためである。