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特許7105770熱エネルギーを電気エネルギーに変換する装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】熱エネルギーを電気エネルギーに変換する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20220715BHJP
   F03G 7/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
H02N11/00 A
F03G7/00 H
F03G7/00 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019526471
(86)(22)【出願日】2017-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2017079416
(87)【国際公開番号】W WO2018091573
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】102016122274.7
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017126803.0
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502098145
【氏名又は名称】ライプニッツ-インスティトゥート フュア フェストケルパー- ウント ヴェルクシュトフフォルシュング ドレスデン エー ファオ
【氏名又は名称原語表記】Leibniz-Institut fuer Festkoerper- und Werkstoffforschung Dresden e.V.
【住所又は居所原語表記】Helmholtzstrasse 20, D-01069 Dresden, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カイ ゼルショップ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン フェーラー
(72)【発明者】
【氏名】アーニャ ヴァスケ
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-107764(JP,A)
【文献】特表2013-501910(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03106520(DE,A)
【文献】西独国特許出願公開第03732312(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の熱磁気発電機を備えた、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する装置であって、
1つの熱磁気発電機は、少なくとも1つの第1および第2の熱磁気構成要素、硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素、少なくとも1つのコイル、および、磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素を含み、
-前記熱磁気構成要素と、前記硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素とはそれぞれ、場所的に相互に分離されて配置されており、
-前記熱磁気構成要素と、前記硬磁性材料からなる構成要素とは前記磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素に接続されており、
-前記熱磁気構成要素は、前記少なくとも1つのコイルから場所的に分離されて配置されており、
-前記少なくとも1つのコイルは、コイルコアとして、前記磁束伝導材料からなる接続要素の少なくとも1つの部分領域を有しており、
-前記少なくとも2つの熱磁気構成要素、前記磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素、前記硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素、および、前記少なくとも1つのコイルは、少なくとも2つの磁気回路に形成されており、前記硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素のN磁極は、前記磁束伝導材料からなる2つの接続要素のうちの一方に接続されており、前記硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素のS磁極は、前記磁束伝導材料からなる2つの接続要素のうちの他方の接続要素に接続され、
-前記熱磁気構成要素と、前記硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素と、前記磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素とからなる前記磁気回路における磁束の向きが鏡面対称となるように、前記磁気回路は鏡面対称に向かい合って配置されている、
装置。
【請求項2】
前記熱磁気構成要素および前記硬磁性材料からなる構成要素は、前記磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素に磁気的に接続されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記熱磁気構成要素は、好ましくはLa-Fe-Si、FePおよび/または1つ以上のホイスラー合金である少なくとも1つの磁気熱量材料を含む、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記熱磁気構成要素の熱磁気材料は、20ケルビンまでの温度変化のもとで50%を超える磁化の変化Mを有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記熱磁気構成要素は、粉末、チューブ、プレート、ネット、格子、テープ、ワイヤおよび/またはロッドの形態で存在する、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記硬磁性材料からなる構成要素は、永久磁石、特にNd-Fe-Bからなる永久磁石である、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素は、環状に閉じられて形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素は、軟磁性材料、特にFe-Siおよび/またはFe基アモルファス合金からなる、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素は、前記少なくとも1つのコイルの少なくとも領域に、1つ以上の結晶学的テクスチャを有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記熱磁気構成要素は、それぞれ少なくとも1つの熱供給装置と、それぞれ少なくとも1つの熱放散装置と、を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記熱供給装置および/または前記熱放散装置は、閉ループ制御装置および/または開ループ制御装置を有する、請求項10記載の装置。
【請求項12】
複数の前記熱磁気発電機は、カスケードとして直列に接続されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
カスケードの熱磁気発電機の前記第1および第2の熱磁気構成要素は、前記カスケードの別の熱磁気発電機の別の第1および第2の熱磁気構成要素とはそれぞれ異なるキュリー温度を有している、請求項12記載の装置。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の装置を用いて熱エネルギーを電気エネルギーに変換する方法であって、
第1の熱磁気構成要素を加熱すると同時に第2の熱磁気構成要素を冷却し、これによって、前記熱磁気構成要素内で磁化が変化すると同時に第1の磁気回路内で硬磁性構成要素によって配向された磁束が実現され、少なくとも1つのコイル内での磁束変化によって、磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素内に電気エネルギーが誘導され、
次いで前記第1の熱磁気構成要素を冷却すると同時に前記第2の熱磁気構成要素を加熱し、これによって、前記熱磁気構成要素内で磁化が変化すると同時に第2の磁気回路内で硬磁性構成要素によって逆向きに配向された磁束が実現され、同じ少なくとも1つのコイル内での磁束方向の変化によって、前記磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素を介して電気エネルギーが誘導される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー工学の分野に関しており、さらに、例えば自動車産業、化学産業、もしくは大型コンピュータにおいて、廃熱を電気エネルギーに変換するために、または環境からの熱(地熱エネルギー)を電気エネルギーに変換するために使用することができるような、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する装置および方法に関している。
【背景技術】
【0002】
熱磁気発電機の原理は19世紀から既に公知である。熱磁気発電機の理論的に根拠づけられた作動方式は、特にBrillouinとIskenderianの見解によって実証された(Brillouin、L. and Iskenderian HP.:”Thermomagnetic Generator”,Electrical communication 25(3),300-311(1948))。ここでは2つの軟磁性材料AおよびBが逆向きに加熱および冷却され、これによって比透磁率μΓが変化し、したがって磁化も変化する。コイル内の永久磁石は、軟磁性材料の温度に応じてコイルAまたはBのいずれかによって偏向される磁束を発生する。次いで磁束の変化が、結果としてコイル内の誘導電流となる。
【0003】
熱磁気発電機の大きな利点は、熱エネルギーが、熱磁気材料の磁気相転移を利用することで電気エネルギーに直接変換されることにあり、これによって機械エネルギーへの介在的変換を必要としない。この相転移により、熱磁気材料の磁化および透磁率は変化する。コイルがそのような熱磁気材料の周りに位置決めされると、電流が誘導される。
【0004】
熱磁気発電機は、特に120℃まではわずかな温度差で効果的に使用することが可能である。熱磁気発電機に使用される材料は、例えば、BiTe,PbTe,SiGe,BiSbまたはFeSiである。
【0005】
最近では、熱磁気発電機用の熱磁気材料として磁気熱量効果(MCE)を示す材料も使用されてきた。磁気熱量効果を示す材料では、ランダムに配向された磁気モーメントの外部磁場による配向が、磁気熱量材料の加熱を引き起こす。この熱は、MCE材料から周辺雰囲気への熱移動によって放散させることができる。その後磁場が遮断されるか除去されると、磁気モーメントは再びランダムな配置構成に移行し、このことは、材料の、周囲温度未満の冷却につながる。この効果は、一方では冷却目的に利用することができ、他方では熱を電気エネルギーに変換するために利用することができる。
【0006】
顕著なMCEを有する磁気熱量材料の大きな利点は、特にそれらの磁化が比較的小さな温度範囲で大きく変化することにある。
【0007】
独国特許出願公開第3732312号明細書(DE3732312A1)からは、永久磁石とダイナモ薄板コアとを有する1つ~2つの磁気回路からなり、ヨーク薄板コアからそのコア断面全体にわたってメタ磁性層で満たされたエアギャップによって分離されている、電気エネルギーを発生させるための磁気熱量インダクタが公知である。
【0008】
欧州特許出願公開第2465119号明細書(EP2465119A1)からは、異なるキュリー温度を有しかつ上昇もしくは下降キュリー温度に従って数珠つなぎになる、好ましくはそれぞれ介在的な熱絶縁体および/または電気絶縁体によって相互に絶縁された少なくとも3つの異なる磁気熱量材料のカスケードからなる熱交換ベッドが公知であり、この場合、隣接する磁気熱量材料のキュリー温度の差は0.5~2.5℃である。
【0009】
欧州特許第2408033号明細書(EP2408033B1)では、複数の熱磁気発電機を備えた発電装置が開示されており、ここでは熱磁気発電機の各々が、熱磁気材料、該熱磁気材料を取り囲むコイル、ならびに第1の流体を第2の流体と混合しかつ当該混合流体を熱磁気材料に送出する流体混合器を有する。この場合、第1の流体の流体温度は、第2の流体の流体温度とは異なっており、ここでは流量制御器が、熱磁気発電機への第2の流体の流量と流量率とを制御し、ここでの第1の流体は一定の流れを有する。
【0010】
独国特許出願公開第102012020486号明細書(DE102012020486A1)からは、切換弁、高温および低温流体用のリザーバおよびこれらの流体用の配管、複数の磁気回路ユニット、コイル、ならびに磁気回路ユニットを切換弁に接続する複数の入口管を含む熱磁気発電機が公知である。磁気回路ユニットの各々は、磁気熱量要素を含む。切換弁は、高温および低温流体を磁気回路ユニットに供給するために、所定の頻度で繰り返し交互に切り替えられ、それによって磁気熱量要素は、低温および高温流体によって磁化および消磁される。コイルは、誘導電圧を得るために、磁気回路ユニットの少なくとも1つに結合されている。
【0011】
国際公開第2009133047号(WO2009133047A2)からは、機械的な仕事への介在的変換なしで熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱磁気発電機であって、-20℃~200℃の範囲の温度のもとで動作し、一般式(I)(Ay-12+δの化合物、または式La(Fe’x’Al1-x13もしくはLa(FeSi1-x13の化合物、またはタイプMnTPのホイスラー合金、または式Gd(SiGe1-xの化合物、FePベースの化合物、またはペロブスカイトタイプのマンガナイト、または式Tb(Si4-xGe)の化合物、または式Mn2-xSbもしくはMnSb1-xの化合物から選択される熱磁気材料を含む熱磁気発電機が公知である。
【0012】
独国特許出願公開第3106520号明細書(DE3106520A1)からは、永久磁石、案内部材としてのヨークとコア部品、および磁束を切り替えるための温度依存性の磁気特性を有する切り替え部品からなる、磁気システムを用いた熱エネルギーから電気エネルギーへの変換のための装置が開示されている。この装置の配置構成は、2つの誘導コイルのための磁場回路を熱磁気構成要素によって交互に切り替えることによって、2つの誘導コイルの間で2つの熱磁気構成要素を通る磁束を切り替えることを可能にする。しかしながら、これらの2つの誘導コイルの間の磁束の切り替えによって、各誘導コイル内の磁束方向は不変のままである。
【0013】
特開平7-107764号公報からは、2つの永久磁石と、磁場回路の構成要素である2つの熱磁気構成要素と、を有する熱磁気装置が公知である。ここでは、2つの磁場回路は、磁束方向が逆になっても、磁場回路の1つのみが常に磁性材料によって閉じられるようにコイルによって相互に結合されている。
【0014】
この解決手段の欠点は、熱磁気発電機内部の磁束が、空気を介して実現されることにある。空気が著しく低い透磁率μ(約1~4・10-7)を有していることは公知である。磁場Bのエネルギー密度は、u=1/2B/μで表されるので、空気を介した磁束制御は、軟磁性材料を介した磁束制御よりも著しく高いエネルギーを必要とする。したがって、誘導電力が変化しない場合、より多くの熱出力を適用しなければならず、このことは熱磁気発電機の効率および性能を低下させる。
【0015】
また、熱磁気発電機を備えた公知装置の達成可能な最大性能がまだ低すぎること、ならびにそれらの製造および使用が複雑でコストがかかることも欠点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、従来技術の解決手段に比べて改善された全体性能および高められた最大限達成可能な性能を有し、ならびに製造および使用が簡単で低コストである、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する装置を提供することにある。
【0017】
その他に、本発明の課題は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する際の性能の改善および向上が達成される、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、特許請求の範囲に記載の発明によって解決される。好ましい実施形態は従属請求項の対象であり、この場合本発明は、それらが相互に排他的ではない限り、and結合の趣旨における個々の従属請求項の組合せも含む。
【0019】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する本発明による装置は、1つ以上の熱磁気発電機を備え、この場合、熱磁気発電機は、少なくとも1つの第1および第2の熱磁気構成要素、硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素、少なくとも1つのコイル、および磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素を含み、この場合、熱磁気構成要素と、硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素と、はそれぞれ場所的に相互に分離されて配置されており、この場合、熱磁気構成要素と、硬磁性材料からなる構成要素と、は磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素に接続されており、この場合、熱磁気構成要素は、少なくとも1つのコイルから場所的に分離されて配置されており、この場合、少なくとも1つのコイルは、コイルコアとして、磁束伝導材料からなる接続要素の少なくとも1つの部分領域を有しており、この場合、少なくとも2つの熱磁気構成要素、磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素、硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素、および少なくとも1つのコイルは、少なくとも2つの磁気回路に形成されており、この場合、硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素のN磁極は、磁束伝導材料からなる2つの接続要素のうちの一方に接続されており、硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素のS磁極は、磁束伝導材料からなる2つの接続要素のうちの他方の接続要素に接続されている。
【0020】
好ましくは、熱磁気構成要素および硬磁性材料からなる構成要素は、磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素に磁気的に接続されている。
【0021】
同様に好ましくは、熱磁気構成要素は、好ましくはLa-Fe-Si、FePおよび/または1つ以上のホイスラー合金である少なくとも1つの磁気熱量材料を含む。
【0022】
さらに好ましくは、磁気回路は、少なくとも1つのコイルを除いて、鏡面対称に向かい合って配置されている。
【0023】
好ましい実施形態では、熱磁気材料は、20ケルビンまでの温度変化のもとで50%を超える磁化の変化Mを有する。
【0024】
また好ましくは、熱磁気構成要素は、粉末、チューブ、プレート、ネット、格子、テープ、ワイヤおよび/またはロッドの形態で存在する。
【0025】
また好ましくは、硬磁性材料からなる構成要素は、永久磁石、特にNd-Fe-Bからなる永久磁石である。
【0026】
好ましくは、磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素は、軟磁性材料、特にFe-Siおよび/またはFe基アモルファス合金からなる。
【0027】
特に好ましい実施形態では、磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素は、環状に閉じられて形成されている。
【0028】
同様に好ましくは、磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素は、少なくとも1つのコイルの少なくとも領域に、1つ以上の結晶学的テクスチャを有する。
【0029】
さらなる好ましい実施形態では、少なくとも1つの熱供給装置が各熱磁気構成要素のもとに存在し、さらに少なくとも1つの熱放散装置が各熱磁気構成要素のもとに存在し、この場合、特に好ましくは閉ループ制御装置および/または開ループ制御装置が存在している。
【0030】
装置の特に好ましい実施形態では、複数の熱磁気発電機が、カスケードとして直列に接続されており、この場合特に好ましくは、カスケードの熱磁気発電機の第1および第2の熱磁気構成要素は、カスケードの別の熱磁気発電機の別の第1および第2の熱磁気構成要素とはそれぞれ異なるキュリー温度を有している。
【0031】
本発明によれば、本発明による装置を用いて熱エネルギーを電気エネルギーに変換する方法も提示され、ここでは、第1の熱磁気構成要素を加熱すると同時に第2の熱磁気構成要素を冷却し、これによって、熱磁気構成要素内で磁化が変化すると同時に第1の磁気回路内で硬磁性構成要素によって配向された磁束が実現され、少なくとも1つのコイル内での磁束変化によって、磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素内に電気エネルギーが誘導され、次いで第1の熱磁気構成要素を冷却すると同時に第2の熱磁気構成要素を加熱し、これによって、熱磁気構成要素内で磁化が変化すると同時に第2の磁気回路内で硬磁性構成要素によって逆向きに配向された磁束が実現され、同じ少なくとも1つのコイル内での磁束方向の変化によって、磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素を介して電気エネルギーが誘導される。
【0032】
本発明による解決手段により、従来技術の解決手段に比べて改善された全体性能および高められた最大限達成可能な性能を有し、ならびに製造および使用が簡単で低コストである装置が提供される。
【0033】
ここでは、1つ以上の熱磁気発電機を備えた本発明による装置によって、磁束伝導材料からなる接続要素内で、1つ以上のコイルの領域内での磁束方向の変化が実現され、このことは、1つ以上のコイル内で著しく高い誘導を生じさせ、その結果、熱磁気発電機の性能の著しい向上に結び付くことが特に重要である。しかしながら、最大限達成可能な性能も高められる。なぜなら最大限達成可能な性能は、磁束変化の二乗に比例するからである。したがって、磁束変化の増加は性能の著しい向上をもたらす。
【0034】
このことは、少なくとも1つの熱磁気発電機において、少なくとも1つの第1および第2の熱磁気構成要素、硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素、少なくとも1つのコイル、および磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素が存在するということによって達成される。ここでは、本発明による配置構成によってそれぞれ2つの磁気回路が形成され、それらは配向された磁束を交互に実現する。
【0035】
熱磁気構成要素として本発明の枠内では、温度変化のもとで磁化の変化を実現する構成要素と理解されたい。この場合好ましくは、熱磁気構成要素が、20ケルビンの温度勾配のもとで50%を超える磁化の変化が達成される材料からなる。この種の材料は、例えば磁気熱量材料、特にLa-Fe-Si合金、FePおよび/またはホイスラー合金であってもよい。
【0036】
この装置によれば、熱磁気構成要素と、硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素と、はそれぞれ場所的に相互に分離されて配置されている。ここでは熱磁気構成要素と、硬磁性材料からなる構成要素と、が磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素に接続されており、この場合、熱磁気構成要素と、硬磁性材料からなる構成要素と、が磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素と少なくとも磁気的に接続されているならば、熱磁気発電機内での実質的な損失なしの一定の磁束にとって有利となる。これにより、磁束伝導材料からなる接続要素と、硬磁性材料からなる構成要素および熱磁気構成要素と、の間の界面における磁束が、界面に対して垂直に維持され続け、磁束伝導材料からなる接続要素内での磁束が、熱磁気構成要素内および硬磁性材料からなる構成要素内の磁束に等しくなる。これにより、磁束が磁性材料内で案内されること、ならびに空気を介して案内されないことが達成される。このことは本発明の大きな特徴である。
【0037】
同様に、本発明による解決手段にとって特に重要なことは、熱磁気構成要素が少なくとも1つのコイルから場所的に分離されて配置され、各コイルがコイルコアとして、磁束伝導材料からなる接続要素の少なくとも1つの部分領域を有することである。
【0038】
これにより、少なくとも第1の熱磁気構成要素が加熱されると同時に少なくとも第2の熱磁気構成要素が冷却されることによって、磁場が第1の熱磁気構成要素の加熱によって生成されることが達成される。この磁場は、硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素によって活性化され、配向された磁束が、磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素と、少なくとも1つのコイルと、によって実現される。
【0039】
少なくとも1つのコイルの熱磁気構成要素から場所的に分離された配置構成により、少なくとも1つのコイルの幾何形態が熱磁気構成要素の設計に依存することなく構成できることが達成される。それにより、少なくとも1つのコイルと、少なくとも2つの熱磁気構成要素と、が相互に依存することなく少なくとも2つの硬磁性構成要素によって生成される磁束に調整され得る。このことは、コイルおよび熱磁気構成要素の設計のために必要となるパラメータの計算と算出とを容易にさせ、高価な硬磁性材料が節約できることに結び付く。
【0040】
さらに、本発明によれば、少なくとも2つの熱磁気構成要素、磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素、硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素、および少なくとも1つのコイルが、少なくとも2つの磁気回路に形成されていることが必要である。
【0041】
硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素を磁気回路内でコイルの前後に配置することにより、配向された磁束が、磁気回路内で、ひいては少なくとも1つのコイル内で保証される。
【0042】
本発明では、コイルが、磁束伝導材料からなる接続要素の少なくとも1つの部分領域周りに配置されていることにより、熱磁気材料からなる公知のコイルコアよりも高い磁化が達成され、接続要素の磁束伝導材料の最大磁束密度は著しく良好に利用される。このことは、少なくとも1つのコイルにおけるより高い誘導につながり、ひいては熱磁気発電機の著しく良好な性能につながる。さらに、ヒステリシス損失は、保磁力の結果として現れるだけであり、それは磁束伝導材料からなる接続要素のもとでは熱磁気構成要素に比べて著しくわずかである。
【0043】
特に好ましくは、少なくとも2つの熱磁気構成要素は、粉末、チューブ、プレート、ネット、格子、テープ、ワイヤおよび/またはロッドの形態で存在する。これにより、熱磁気構成要素と残りの磁気回路との間にわずかな間隙のみが生じることが達成される。このことは、磁気回路内の磁場の低下を減少させ、ひいては使用される構成要素および接続要素の所要の磁気質量を低減させることに結び付く。
【0044】
熱磁気構成要素を粉末、チューブ、プレート、ネット、格子、テープ、ワイヤおよび/またはロッドの形態で形成する別の利点は、熱交換媒体が熱磁気材料に直接接触し、熱磁気構成要素を通って流れることができる場合に存在する。これにより、磁気熱量効果を特に有利に利用することができ、熱磁気発電機の性能を向上させることができる。
【0045】
本発明による解決手段を用いることにより、第1および第2の熱磁気構成要素の交互の加熱および冷却によって、磁気回路内で少なくとも1つのコイル内での磁束方向が可逆的になることが達成される。本発明による、硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素のN磁極と、磁束伝導材料からなる2つの接続要素のうちの一方と、の接続、ならびに硬磁性材料からなる少なくとも2つの構成要素のS磁極と、磁束伝導材料からなる2つの接続要素のうちの他方の接続要素と、の接続により、少なくとも1つのコイル内での磁束方向の反転に結び付く、配向された磁束の実現が達成される。
【0046】
少なくとも、少なくとも1つのコイル内での磁束の反転は、磁気的な主体-敵対-原理に従って実現される。第1の熱磁気構成要素の加熱および第2の熱磁気構成要素の冷却の後で、磁束の反転は、少なくとも1つの第2の熱磁気構成要素を加熱し、少なくとも1つの第1の熱磁気構成要素を冷却することによって実現される。これにより、熱磁気構成要素内での透磁率変化が生じ、これによって、磁束伝導材料からなる接続要素内での磁束の反転が実現され、ひいては少なくとも1つのコイル内での磁束の反転が実現される。コイル内での直接的な磁束の反転により、ここでは、磁束変化を著しく増大させると同時に残留磁気の不所望な影響を著しく低減させることが可能となる。
【0047】
特に好ましくは、磁束伝導材料からなる接続要素は、少なくともコイルの領域に、1つ以上の結晶学的テクスチャを有する。本発明の枠内では、結晶学的テクスチャとは、多結晶固体の微結晶の1つ以上の優先的配向を意味するものと理解されたい。ここでのそのような固体とは、本発明の枠内では磁束伝導材料からなる接続要素と見なされる。結晶学的テクスチャにより、磁気ヒステリシスに基づく損失が著しく低減されることが達成され、このことは、熱エネルギーから電気エネルギーへの変換に関する装置性能の向上に結び付く。
【0048】
特に好ましい磁束のために、とりわけ軟磁性材料、特にFe-Si合金および/またはFe基アモルファス合金が、磁束伝導材料からなる接続要素のもとで使用され得る。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、熱磁気構成要素はそれぞれ、少なくとも1つの熱供給装置と、少なくとも1つの熱放散装置と、を有し、この場合は付加的に閉ループ制御装置および/または開ループ制御装置が存在してもよい。熱供給装置と熱放散装置とを用いることにより、熱磁気構成要素に対する所期の直接的な熱供給と、熱磁気構成要素からの所期の直接的な熱放散と、が達成される。さらに、熱磁気材料の加熱と冷却の迅速な交換が可能となり、このことは、熱磁気発電機内での磁束の迅速な反転につながる。
【0050】
装置の特に好ましい実施形態では、磁束伝導材料からなる少なくとも2つの接続要素は、それぞれ環状に閉じられて形成されている。技術的な置換において、この環状に閉じられた形成される接続要素は、n個の辺を有する多角形として実施されてもよい。
【0051】
この場合、磁束伝導材料からなる接続要素の内輪と、磁束伝導材料からなる接続要素としての外輪と、が形成されており、この場合内輪は、外輪よりも小さい周面を有する。外輪周りに2n個の誘導コイルが巻回されており、外輪と内輪の間には、n個の熱磁気構成要素ならびにn個の永久磁石が存在している。この環状に閉じられた配置構成は、偶数2n個の磁場回路を有する。
【0052】
熱磁気発電機のこの種の好ましい環状に閉じられた配置構成により、熱磁気発電機を回転させることができ、それによって、熱磁気構成要素は、例えば装置上に配置された熱供給装置によって交互に加熱され冷却される。コイル内で誘導された電流は、例えば摺動コンタクトを介して外部に誘導することができる。
【0053】
装置のこの配置構成の利点は、熱供給装置および熱放散装置のバルブを動作させるための電気エネルギーが不要になるのではなく、媒体の流動エネルギーが利用され、したがって効率が高められることにある。さらに別の利点は、媒体を上方から供給することができるため、それによって、付加的なポンプを相応の圧力形成を伴う熱供給もしくは熱放散のために必要とすることなく、それらの潜在的なエネルギーを利用することができる点にある。
【0054】
好ましくは、装置は、カスケードとして直列に接続された2つ以上の熱磁気発電機からなることができ、この場合、カスケードの熱磁気発電機の第1および第2の熱磁気構成要素は、カスケードの別の熱磁気発電機の別の第1および第2の熱磁気構成要素とは異なるキュリー温度を有している。
【0055】
カスケードとして直列に2つ以上の熱磁気発電機を配置することにより、利用可能な熱エネルギーの電気エネルギーへのより高い収率が可能になり、このことは、供給すべき熱エネルギーと電気エネルギーへの変換とに関する効率の改善に結び付く。
【0056】
本発明による熱磁気発電機によって、例えば少なくとも1つのコイル内での磁束の2倍の高い変化が実現されることが分かった。このことは、磁束変化と性能との間の二次的関係に基づき、本発明による熱磁気発電機の性能が従来技術に比べて4倍改善されることに結び付く。
【0057】
熱磁気構成要素と、硬磁性材料からなる構成要素および磁束伝導材料からなる接続要素と、の間の間隙の回避によって、特に好ましい高透磁率を有する熱磁気発電機が提供され、そこでは特に空気中の漂遊磁界が最小化され、使用される磁性材料の特性が最適に利用され、使用される。
【0058】
以下では本発明を2つの実施例に基づきより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】磁束伝導材料からなる接続要素の平行な配置構成を有する装置の概略的な変形実施形態を示した図
図2】磁束伝導材料からなる接続要素の三角形の配置構成を有する装置の概略的な変形実施形態を示した図
【発明を実施するための形態】
【0060】
実施例1(図1
熱磁気発電機を備えた本発明による装置は、磁束伝導材料からなる接続要素としての軟磁性材料からなる水平に配置された上下の接続要素4の間に、熱磁気構成要素として、左側に区切られた第1の磁気熱量構成要素1aと、右側に区切られた第2の磁気熱量構成要素1bと、を有する。各磁気熱量構成要素1a,1bは、La(FeCoSi)13から製造された25個のプレートからなる。各磁気熱量構成要素1a,1bのプレートは、相互平行にかつ0.5mmの距離で軟磁性材料からなる接続要素4の配向に対して横断方向に配置されている。
【0061】
磁気熱量構成要素1a,1bの他に、それぞれ1.47Tの磁束密度を有する永久磁石2が硬磁性構成要素として配置されている。矢印先端で示されている永久磁石2のN磁極は、軟磁性材料からなる上方の接続要素4に接続され、矢印末端で示されている永久磁石2のS磁極は、磁性材料からなる下方の接続要素4に接続されている。2つの永久磁石2の間には、軟磁性材料からなる接続要素4の周りにそれぞれ50mmの長さを有する2つのコイル3が配置されており、それらのコイルコアは、軟磁性材料からなる接続要素4の領域を形成する。
【0062】
熱磁気発電機の静止状態では、磁気熱量構成要素1a,1bは、それぞれ周辺温度を有し、したがって同じ磁気抵抗を有する。2つのコイル3内の磁束は存在しない。なぜなら、永久磁石によって発生した磁束は、磁気熱量構成要素上に均一に分配されているからである。
【0063】
ここで、軟磁性材料からなる接続要素内の磁束方向に対して垂直な磁気熱量構成要素1a,1bに異なって温度調整された流体が通流すると、第1の磁気熱量構成要素1aは加熱され、第2の磁気熱量構成要素1bは冷却される。磁気熱量構成要素を通流する温かい流体と冷たい流体との間の温度差は、ΔT=30Kである。これにより、磁気熱量構成要素内の磁化と、軟磁性材料からなる接続要素内の磁気抵抗と、が変化する。永久磁石2により、配向された磁束が発生し、この場合、この磁束がコイル軸に沿って2つのコイル3を通流する際のその変化によって電流が誘導される。続いて、第1の磁気熱量構成要素1aが冷却されると同時に第2の磁気熱量構成要素1bは、当該2つの磁気熱量構成要素が周辺温度に達するまで再び加熱され、この場合もその際の磁束の変化によってコイル3内に電流が誘導される。
【0064】
ここで、軟磁性材料からなる接続要素内の磁束方向に対して垂直な磁気熱量構成要素1a,1bに異なって温度調整された流体が通流すると、この場合今回は第2の磁気熱量構成要素1bが加熱され、第1の磁気熱量構成要素1aは冷却される。磁気熱量構成要素1a,1bを通流する温かい流体と冷たい流体との間の温度差は、ΔT=30Kである。これにより、磁気熱量構成要素1a,1b内の磁化と、それらの透磁率と、が変化する。永久磁石2により、配向された磁束が発生し、この場合、この磁束がコイル軸に沿って2つのコイル3を通流する際のその変化によって電流が誘導される。続いて、第2の磁気熱量構成要素1bが冷却されると同時に第1の磁気熱量構成要素1aは、当該2つの磁気熱量構成要素1a,1bが再び周辺温度に達するまで再加熱され、この場合もその際の磁束の変化によってコイル3内に電流が誘導される。
【0065】
熱磁気発電機によって達成される磁束の変化は、Φmax=4.836×10-5Wbであり、Φmin=-4.836×10-5Wbである。その結果、ΔΦ=Φmax-Φmin=9.672×10-5Wbの磁束変化が生じる。このことは、0.77Tの磁束密度変化に相応する。コイル3毎に発生した電力は0.306Wであり、これにより、0.61Wの総電力が達成される。
【0066】
実施例2(図2
熱磁気発電機は、軟磁性材料からなる外輪と内輪4との間に、3つの熱磁気構成要素1a~cと、3つの永久磁石2a~cと、を有し、それらはそれぞれ三角形に配置されている。その他に、軟磁性材料からなる外輪4には、それぞれ、熱磁気構成要素1a~cと、永久磁石2a~cと、の間に、6つのコイル3が配置されており、そのためこれらのコイル3内では磁束の変化により電圧が誘起される。これらの熱磁気構成要素1a~cおよび永久磁石2a~cの仕様は、実施例1に類似して選択されており、磁気熱量構成要素1a~cは、3つの永久磁石からの磁束を受け入れるために38個のプレートからなる。永久磁石2a~cのN極は、矢印先端によって示されており、それぞれ外輪に接続されている。永久磁石2a~cのS極は、矢印末端によって示されており、相応に軟磁性材料からなる内輪4に磁気的に接続されている。永久磁石2a~cの2つの磁極と、軟磁性材料からなる内輪および外輪4と、の磁気的接続は、強磁性接着剤を用いた接着によるものである。図示の構造は、像面に対して垂直に配向された全部で3つの鏡面を有する。これらの鏡面対称性は、コイルの配線を含まない。
【0067】
静止状態では、熱磁気構成要素1a~cは、それぞれ周辺温度、同じ磁化、ひいては同じ磁気抵抗を有している。これにより、それぞれ永久磁石から2つの隣接するコイルおよび隣接する熱磁気構成要素を通って内輪を介して永久磁石に還流される磁束が生じる。したがって、この構造では全部で6つの磁場回路が存在している。
【0068】
ここで、異なって温度調整された流体もしくは気体が通流することによって、3つの熱磁気構成要素のうちの2つ1bおよび1cが加熱され、残り1aは冷却される。これにより、加熱された磁気熱量構成要素1bおよび1c内の磁化は減少し、冷却された熱磁気構成要素1a内の磁化は増加する。冷却された熱磁気構成要素1aに対向するように配置された永久磁石2aの磁束は、もはや隣接する熱磁気構成要素1bおよび1cを介してではなく、冷却された熱磁気構成要素1aを介して永久磁石2aまで還流される。他の2つの永久磁石2bおよび2cからの磁束も、冷却された熱磁気構成要素1aを介して流れる。これにより、冷却された熱磁気構成要素1aに隣接する永久磁石2bおよび2cと、加熱された熱磁気構成要素1bおよび1cと、の間でコイル3内の流れ方向が反転し、電圧が誘起される。その他に、冷却された熱磁気構成要素1aに隣接するコイル3内で磁束が増加し、これによっても電圧が誘起される。
【0069】
ここにおいて、時計回りで次の熱磁気構成要素1bが冷却され、その前に冷却されていた熱磁気構成要素1aは加熱される。これにより、ここで加熱された熱磁気構成要素1a内の磁化は減少し、冷却された熱磁気構成要素1b内の磁化は増加する。ここで、すべての永久磁石2a~cの磁束は、冷却された熱磁気構成要素1bを介して流れる。このことは、磁束の変化を生じさせ、電圧がすべてのコイル3において誘起される。この場合も、熱磁気構成要素1cに隣接するコイル3内において、およびここで加熱されている熱磁気構成要素1aと、時計回りで隣接する永久磁石2cと、の間のコイル3内において、磁束方向の極性が変化する。
【0070】
続いて、時計回りで次の熱磁気構成要素が冷却され、その前に冷却されていた熱磁気構成要素が加熱されることによって、加熱および冷却過程が周期的に継続される。それにより、6つの全コイル内の磁束の大きさが変化し、これによって、電圧が誘起される。その他に、それぞれ6つのコイルのうちの3つにおいて磁束方向の極性が変化し、このことは上述した理由から特に有利である。
【0071】
個々のコイルの電力を共通に使用するために、これらの交流電圧がダイオードを用いて整流され、相互接続される。
【0072】
媒体としての水による周期的な加熱および冷却は、以下のように実現される。冷たい媒体と温かい媒体の供給は、結像面に対して垂直に行われ、回転軸線周りに回転対称に配置された6つの固定チャネルによって実現される。各2番目のチャネルからは温かい水が流れ、他のチャネルからは冷たい水が流れる。構造部の中央には、その周りを当該構造部が回転可能なシャフトが存在している。熱磁気発電機を回転させると、熱磁気構成要素が本発明により交互に低温と高温になる。構造部を回転させるために、熱磁気プレートの下方には付加的なプレートが配置され、それらのプレートは、風車やタービンのように流れる水によって構造部を回転させる。傾斜状態は、回転数が熱磁気発電機の最大有効出力を可能にするように選択される。したがって、この実施例に対しては、弁の動作のための電気エネルギーが必要とされるのではなく、媒体の流動エネルギーが利用され、したがって効率が向上する。
【0073】
説明された構造部は、周期的な配置構成の中で任意の数の熱磁気構成要素および永久磁石に拡張することができる。すべての動作状態において、磁束は、磁性材料内を、すなわち磁束伝導材料からなる接続要素内、硬磁性材料からなる構成要素内、および熱磁気構成要素内を伝導される。
【符号の説明】
【0074】
1a,1b,1c 熱磁気構成要素
2,2a,2b,2c 永久磁石
3 コイル
4 磁束伝導材料からなる接続要素
図1
図2