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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】作業車両及び作業車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/431 20100101AFI20220715BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
F16H61/431
E02F9/22 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019526711
(86)(22)【出願日】2018-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2018020534
(87)【国際公開番号】W WO2019003760
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2017125375
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大浅 貴央
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/123376(WO,A1)
【文献】特開2002-213402(JP,A)
【文献】国際公開第2012/033193(WO,A1)
【文献】特開昭58-149459(JP,A)
【文献】特開昭62-274103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/431
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される走行用ポンプと、
前記走行用ポンプに接続された第1駆動回路及び第2駆動回路と
前記第1駆動回路と前記第2駆動回路とを介して前記走行用ポンプと接続された走行用モータと、
前記エンジン回転速度を示す信号を出力する回転速度センサと、
前記第1駆動回路と前記第2駆動回路との油圧を示す信号を出力する油圧センサと、
前記回転速度センサ及び前記油圧センサからの信号を受信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記エンジン回転速度に基づいて、前記エンジンが過回転状態にあるかを判定し、
前記第1駆動回路と前記第2駆動回路との油圧の差圧に応じて、前記走行用ポンプの容量の上限値を決定し、
前記エンジンが過回転状態にあるときには、前記走行用ポンプの容量を前記上限値以下に制限し、
前記走行用ポンプから前記エンジンに伝わるエンジン逆駆動トルクが、所定のトルク許容値を越えないように、前記上限値を決定し、
前記エンジン回転速度が所定の第1閾値以上であるときに、前記エンジンが過回転状態にあると判定し、
前記トルク許容値は、前記エンジン回転速度が前記第1閾値以上の第2閾値であるときのエンジンブレーキトルクの値である、
作業車両。
【請求項2】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される走行用ポンプと、
前記走行用ポンプに接続された第1駆動回路及び第2駆動回路と、
前記第1駆動回路と前記第2駆動回路とを介して前記走行用ポンプと接続された走行用モータと、
前記エンジン回転速度を示す信号を出力する回転速度センサと、
前記第1駆動回路と前記第2駆動回路との油圧を示す信号を出力する油圧センサと、
前記回転速度センサ及び前記油圧センサからの信号を受信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記エンジン回転速度に基づいて、前記エンジンが過回転状態にあるかを判定し、
前記第1駆動回路と前記第2駆動回路との油圧の差圧に応じて、前記走行用ポンプの容量の上限値を決定し、
前記エンジンが過回転状態にあるときには、前記走行用ポンプの容量を前記上限値以下に制限し、
前記差圧の増大に応じて、前記上限値を減少させる、
作業車両。
【請求項3】
前記コントローラは、前記エンジン回転速度が所定の第1閾値以上であるときに、前記エンジンが過回転状態にあると判定する、
請求項に記載の作業車両。
【請求項4】
エンジンと、前記エンジンによって駆動される走行用ポンプと、前記走行用ポンプに接続された第1駆動回路及び第2駆動回路と、前記油圧回路を介して前記走行用ポンプと接続された走行用モータとを含む作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法であって、
エンジン回転速度を示す信号を受信することと、
前記第1駆動回路と前記第2駆動回路との油圧を示す信号を受信することと、
前記エンジン回転速度に基づいて、前記エンジンが過回転状態にあるかを判定することと、
前記第1駆動回路と前記第2駆動回路との油圧の差圧に応じて前記走行用ポンプの容量の上限値を決定することと、
前記エンジンが過回転状態にあるときには、前記走行用ポンプの容量を前記上限値以下に制限することと、
前記走行用ポンプから前記エンジンに伝わるエンジン逆駆動トルクが、所定のトルク許容値を越えないように、前記上限値を決定することと、
前記エンジン回転速度が所定の第1閾値以上であるときに、前記エンジンが過回転状態にあると判定すること、
を備え、
前記トルク許容値は、前記エンジン回転速度が前記第1閾値以上の第2閾値であるときのエンジンブレーキトルクの値である、
方法。
【請求項5】
エンジンと、前記エンジンによって駆動される走行用ポンプと、前記走行用ポンプに接続された第1駆動回路及び第2駆動回路と、前記油圧回路を介して前記走行用ポンプと接続された走行用モータとを含む作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法であって、
エンジン回転速度を示す信号を受信することと、
前記第1駆動回路と前記第2駆動回路との油圧を示す信号を受信することと、
前記エンジン回転速度に基づいて、前記エンジンが過回転状態にあるかを判定することと、
前記第1駆動回路と前記第2駆動回路との油圧の差圧に応じて前記走行用ポンプの容量の上限値を決定することと、
前記エンジンが過回転状態にあるときには、前記走行用ポンプの容量を前記上限値以下に制限することと、
前記差圧の増大に応じて、前記上限値を減少させること、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両及び作業車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両には、静油圧式変速機を備えるものがある。静油圧式変速機は、走行用ポンプと、走行用モータと、走行用ポンプと走行用モータとを接続する油圧回路とを含む。走行用ポンプはエンジンによって駆動され、作動油を吐出する。走行用ポンプから吐出された作動油は、油圧回路を介して、走行用モータに供給される。走行用モータは、走行用ポンプからの作動油によって駆動される。走行用モータは、作業車両の走行装置に接続されており、走行用モータが駆動されることで、作業車両が走行する。静油圧式変速機では、走行用ポンプの容量と走行用モータの容量とを制御することにより、変速比を制御することができる。
【0003】
作業車両では、傾斜の急な坂道を下るときに、エンジンブレーキを作用させる。その場合、重力による車両の加速力が強いと、エンジン回転速度が過大となる(以下、「過回転状態」と呼ぶ)虞がある。
【0004】
そこで、特許文献1では、作業車両において、走行用モータの容量を低減、或いは、走行用ポンプの容量を増大することで、静油圧式変速機の変速比を小さくして、エンジン回転速度の増大を抑えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-57761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のように、走行用モータの容量を低減する、或いは、走行用ポンプの容量を増大することで、変速比が小さくなると、エンジンブレーキによる車両の制動力が弱くなる。そのため、オペレータは、車速の増大を抑えるために、ブレーキペダルの操作を合わせて行う必要がある。
【0007】
本発明は、作業車両において、エンジン回転速度の過回転を防ぐと共に、エンジンブレーキによる制動力の低下を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係る作業車両は、エンジンと、走行用ポンプと、油圧回路と、走行用モータと、回転速度センサと、油圧センサと、コントローラと、を含む。走行用ポンプは、エンジンによって駆動される。油圧回路は、走行用ポンプに接続されている。走行用モータは、油圧回路を介して走行用ポンプと接続されている。回転速度センサは、エンジン回転速度を示す信号を出力する。油圧センサは、油圧回路の油圧を示す信号を出力する。
【0009】
コントローラは、回転速度センサ及び油圧センサからの信号を受信する。コントローラは、エンジン回転速度に基づいて、エンジンが過回転状態にあるかを判定する。コントローラは、油圧回路の油圧に応じて、走行用ポンプの容量の上限値を決定する。コントローラは、エンジンが過回転状態にあると判定したときには、走行用ポンプの容量を上限値以下に制限する。
【0010】
本態様に係る作業車両では、油圧回路の油圧に応じて走行用ポンプの容量の上限値が決定され、エンジンが過回転状態になると、走行用ポンプの容量が上限値以下に制限される。走行用ポンプからエンジンに伝わるエンジン逆駆動トルクは、走行用ポンプの容量が大きいほど大きくなる。従って、走行用ポンプの容量が上限値以下に制限されることで、エンジン逆駆動トルクを小さく抑えることができる。それにより、エンジン回転速度の増大を抑えて、過回転を防ぐことができる。
【0011】
また、走行用ポンプからエンジンに伝わるエンジン逆駆動トルクは、油圧回路の油圧に応じて変化する。従って、油圧回路の油圧に応じて、走行用ポンプの容量の上限値が決定されることで、エンジン逆駆動トルクを適切に抑えることができる。さらに、変速比の低下が抑えられるため、エンジンブレーキによる制動力の低下を抑えることができる。
【0012】
コントローラは、エンジンが過回転状態にあるときには、上限値を減少させてもよい。この場合、上限値が減少することで、走行用ポンプの容量が低減され、それにより、エンジン逆駆動トルクが低減される。それにより、エンジン回転速度が低下して、過回転を防ぐことができる。また、走行用ポンプの容量の減少は、変速比を増大させるため、エンジンブレーキによる制動力の低下が抑えられる。
【0013】
コントローラは、油圧回路の油圧の増大に応じて、上限値を減少させてもよい。この場合、エンジン逆駆動トルクは、走行用ポンプの容量の増大と、油圧回路の油圧の増大とに応じて、増大する。従って、油圧回路の油圧の増大に応じて、走行用ポンプの上限値を減少させることで、エンジン逆駆動トルクの増大を適切に抑えることができる。
【0014】
コントローラは、走行用ポンプからエンジンに伝わるエンジン逆駆動トルクが、所定の許容値を越えないように、走行用ポンプの容量の上限値を決定してもよい。この場合、エンジン逆駆動トルクを所定の許容値以下に抑えることができる。
【0015】
コントローラは、エンジン回転速度が所定の第1閾値以上であるときに、エンジンが過回転状態にあると判定してもよい。許容値は、エンジン回転速度が第1閾値以上の第2閾値であるときのエンジンブレーキトルクの値であってもよい。この場合、エンジン逆駆動トルクが許容値まで上昇する前に、余裕を持ってエンジンが過回転状態にあることを判定することができる。それにより、走行用ポンプの容量の急変を抑制することができる。
【0016】
第2の態様に係る方法は、作業車両を制御するためにコントローラによって実行される方法である。作業車両は、エンジンと、走行用ポンプと、油圧回路と、走行用モータとを含む。走行用ポンプは、エンジンによって駆動される。油圧回路は、走行用ポンプに接続されている。走行用モータは、油圧回路を介して走行用ポンプと接続されている。本態様に係る方法は、以下の処理を備える。
【0017】
第1の処理は、エンジン回転速度を示す信号を受信することである。第2の処理は、油圧回路の油圧を示す信号を受信することである。第3の処理は、エンジン回転速度に基づいて、エンジンが過回転状態にあるかを判定することである。第4の処理は、油圧回路の油圧に応じて、走行用ポンプの容量の上限値を決定することである。第5の処理は、エンジンが過回転状態にあるときに、走行用ポンプの容量を上限値以下に制限することである。
【0018】
本態様に係る方法では、油圧回路の油圧に応じて走行用ポンプの容量の上限値が決定され、エンジンが過回転状態になると、走行用ポンプの容量が上限値以下に制限される。走行用モータからエンジンに伝わるエンジン逆駆動トルクは、走行用ポンプの容量が大きいほど大きくなる。従って、走行用ポンプの容量が上限値以下に制限されることで、エンジン逆駆動トルクを小さく抑えることができる。それにより、エンジン回転速度の増大を抑えて、過回転を防ぐことができる。
【0019】
また、走行用ポンプからエンジンに伝わるエンジン逆駆動トルクは、油圧回路の油圧に応じて変化する。従って、油圧回路の油圧に応じて、走行用ポンプの容量の上限値が決定されることで、エンジン逆駆動トルクを適切に抑えることができる。さらに、変速比の低下が抑えられるため、エンジンブレーキによる制動力の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エンジン回転速度の過回転を防ぐと共に、エンジンブレーキによる制動力の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る作業車両の側面図である。
図2】作業車両の駆動系の構成を示すブロック図である。
図3】作業車両の制御系の構成を示すブロック図である。
図4】作業車両の車速-牽引力特性を示す図である。
図5】アクセル操作部材の操作に応じて変更される車速-牽引力特性の一例を示す図である。
図6】コントローラによって実行される処理を示すフローチャートである。
図7】アクセル操作部材の操作量から目標車速を決定するための処理を示す図である。
図8】作業車両の車速-入力馬力特性を示す図である。
図9】ストール時の目標入力馬力を決定するための処理を示す図である。
図10】低車速域及び中車速域での目標入力馬力を決定するための処理を示す図である。
図11】高車速域での目標入力馬力を決定するための処理を示す図である。
図12】過渡時の目標入力馬力を決定する処理を示す図である。
図13】エンジンの目標回転速度を決定するための処理を示す図である。
図14】走行用ポンプと走行用モータとの目標容量を決定するための処理を示す図である。
図15】エンジンの過回転を抑えるためにコントローラによって実行される処理を示すフローチャートである。
図16】エンジン回転速度とエンジンブレーキトルクとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る作業車両1について、図面を用いて説明する。図1は、作業車両1の側面図である。作業車両1は、ホイールローダである。作業車両1は、車体2と、作業機3と、複数の走行輪4と、キャブ5と、を含む。作業機3は、車体2の前部に装着されている。作業機3は、ブーム11とバケット12とリフトシリンダ13とバケットシリンダ14とを含む。
【0023】
ブーム11は、車体2に回転可能に取り付けられている。ブーム11は、リフトシリンダ13によって駆動される。バケット12は、ブーム11に回転可能に取り付けられている。バケット12は、バケットシリンダ14によって上下に移動する。キャブ5は、車体2上に配置されている。複数の走行輪4は、車体2に回転可能に取り付けられている。
【0024】
図2は、作業車両1に搭載された駆動系の構成を示すブロック図である。作業車両1は、エンジン21と、作業機用ポンプ22と、静油圧式変速機(Hydro Static Transmission;以下“HST”と呼ぶ)23とを含む。エンジン21は、例えば、ディーゼル式のエンジンである。
【0025】
エンジン21には、燃料噴射装置24が接続されている。燃料噴射装置24がエンジン21への燃料噴射量を制御することにより、エンジン21の出力トルク(以下、「エンジントルク」と呼ぶ)と回転速度とが制御される。エンジン21の実回転速度は、エンジン回転速度センサ25によって検出される。エンジン回転速度センサ25は、エンジン21の実回転速度を示す信号を出力する。
【0026】
作業機用ポンプ22は、エンジン21に接続されている。作業機用ポンプ22は、エンジン21によって駆動されることで、作業油を吐出する。作業機用ポンプ22から吐出された作動油は、作業機用油圧回路26を介してリフトシリンダ13に供給される。これにより、作業機3が駆動される。作業機用ポンプ22の吐出圧は、作業機ポンプ圧センサ27によって検出される。作業機ポンプ圧センサ27は、作業機用ポンプ22の吐出圧を示す信号を出力する。
【0027】
作業機用ポンプ22は、可変容量型の油圧ポンプである。作業機用ポンプ22には、ポンプ容量制御装置28が接続されている。ポンプ容量制御装置28は、作業機用ポンプ22の容量を制御する。ポンプ容量制御装置28は、サーボピストン28aとポンプ制御弁28bとを含む。サーボピストン28aは、作業機用ポンプ22に接続されている。サーボピストン28aが作業機用ポンプ22の傾転角を変更することで、作業機用ポンプ22の容量が変更される。ポンプ制御弁28bは、サーボピストン28aに供給される油圧を制御することで、サーボピストン28aの動作を制御する。なお、作業機用ポンプ22は、固定容量型の油圧ポンプであってもよい。
【0028】
作業機用油圧回路26には、作業機制御弁30が配置されている。作業機制御弁30は、作業機制御弁30に印加されるパイロット圧に応じて、リフトシリンダ13に供給される作動油の流量を制御する。図示を省略するが、作業機制御弁30は、バケットシリンダ14に供給される作動油の流量を制御してもよい。なお、作動油の流量とは、単位時間当たりに供給される作動油の量を意味する。作業機制御弁30は、油圧パイロットの制御弁に限らず、電気的に制御される電磁制御弁であってもよい。
【0029】
HST23は、走行用ポンプ31と、駆動油圧回路32と、走行用モータ33とを含む。走行用ポンプ31は、エンジン21に接続されている。走行用ポンプ31は、エンジン21によって駆動されることにより作動油を吐出する。走行用ポンプ31は、可変容量型の油圧ポンプである。走行用ポンプ31から吐出された作動油は、駆動油圧回路32を通って走行用モータ33へと送られる。
【0030】
駆動油圧回路32は、走行用ポンプ31と走行用モータ33とを接続している。駆動油圧回路32は、第1駆動回路32aと第2駆動回路32bとを含む。第1駆動回路32aは、走行用ポンプ31の一方のポートと走行用モータ33の一方のポートとを接続している。第2駆動回路32bは、走行用ポンプ31の他方のポートと走行用モータ33の他方のポートとを接続している。走行用ポンプ31と走行用モータ33と第1駆動回路32aと第2駆動回路32bとは、閉回路を構成している。
【0031】
走行用ポンプ31から第1駆動回路32aを介して走行用モータ33に供給されることにより、走行用モータ33が一方向(例えば、前進方向)に駆動される。この場合、作動油は、走行用モータ33から第2駆動回路32bを介して走行用ポンプ31に戻る。また、作動油が、走行用ポンプ31から第2駆動回路32bを介して走行用モータ33に供給されることにより、走行用モータ33が他方向(例えば、後進方向)に駆動される。この場合、作動油は、走行用モータ33から第1駆動回路32aを介して走行用ポンプ31に戻る。
【0032】
駆動油圧回路32には、駆動回路圧センサ34が設けられている。駆動回路圧センサ34は、第1駆動回路32a又は第2駆動回路32bを介して走行用モータ33に供給される作動油の圧力を検出する。具体的には、駆動回路圧センサ34は、第1回路圧センサ34aと第2回路圧センサ34bとを含む。
【0033】
第1回路圧センサ34aは、第1駆動回路32aの油圧を検出する。第2回路圧センサ34bは、第2駆動回路32bの油圧を検出する。第1回路圧センサ34aは、第1駆動回路32aの油圧を示す信号を出力する。第2回路圧センサ34bは、第2駆動回路32bの油圧を示す信号を出力する。
【0034】
走行用モータ33は、可変容量型の油圧モータである。走行用モータ33は、走行用ポンプ31から吐出された作動油によって駆動され、走行のための駆動力を生じさせる。走行用モータ33には、モータ容量制御装置35が接続されている。モータ容量制御装置35は、走行用モータ33の容量を制御する。モータ容量制御装置35は、モータシリンダ35aとモータ制御弁35bとを含む。
【0035】
モータシリンダ35aは、走行用モータ33に接続されている。モータシリンダ35aは、油圧によって駆動され、走行用モータ33の傾転角を変更する。モータ制御弁35bは、モータ制御弁35bに入力される指令信号に基づいて制御される電磁制御弁である。モータ制御弁35bが、モータシリンダ35aを動作させることで、走行用モータ33の容量が変更される。
【0036】
走行用モータ33は、駆動軸37に接続されている。駆動軸37は、図示しないアクスルを介して上述した走行輪4に接続されている。走行用モータ33の回転は、駆動軸37を介して走行輪4に伝達される。それにより、作業車両1が走行する。
【0037】
作業車両1には、車速センサ36が設けられている。車速センサ36は、車速を検出する。車速センサ36は、車速を示す信号を出力する。例えば、車速センサ36は、駆動軸37の回転速度を検出することにより、車速を検出する。
【0038】
HST23は、チャージポンプ38とチャージ回路39とを含む。チャージポンプ38は、固定容量型の油圧ポンプである。チャージポンプ38は、エンジン21に接続されている。チャージポンプ38は、エンジン21によって駆動されることで、駆動油圧回路32に作動油を供給する。
【0039】
チャージ回路39は、チャージポンプ38に接続されている。チャージ回路39は、第1チェック弁41を介して、第1駆動回路32aに接続されている。チャージ回路39は、第2チェック弁42を介して、第2駆動回路32bに接続されている。
【0040】
チャージ回路39は、第1リリーフ弁43を介して、第1駆動回路32aに接続されている。第1リリーフ弁43は、第1駆動回路32aの油圧が所定のリリーフ圧より大きくなったときに開かれる。チャージ回路39は、第2リリーフ弁44を介して第2駆動回路32bに接続されている。第2リリーフ弁44は、第2駆動回路32bの油圧が所定のリリーフ圧より大きくなったときに開かれる。
【0041】
チャージ回路39には、チャージリリーフ弁40が設けられている。チャージリリーフ弁40は、チャージ回路39の油圧が所定のリリーフ圧より大きくなったときに開かれる。それにより、チャージ回路39の油圧が、所定のリリーフ圧を超えないように制限される。
【0042】
走行用ポンプ31には、ポンプ容量制御装置45が接続されている。ポンプ容量制御装置45は、走行用ポンプ31の容量を制御する。なお、油圧ポンプの容量とは、一回転あたりの作動油の吐出量(cc/rev)を意味する。また、ポンプ容量制御装置45は、走行用ポンプ31の吐出方向を制御する。ポンプ容量制御装置45は、ポンプ制御シリンダ46とポンプ制御弁47とを含む。
【0043】
ポンプ制御シリンダ46は、走行用ポンプ31に接続されている。ポンプ制御シリンダ46は、油圧によって駆動され、走行用ポンプ31の傾転角を変更する。これにより、ポンプ制御シリンダ46は、走行用ポンプ31の容量を変更する。ポンプ制御シリンダ46は、ポンプパイロット回路48を介してチャージ回路39に接続されている。
【0044】
ポンプ制御弁47は、ポンプ制御弁47に入力される指令信号に基づいて制御される電磁制御弁である。ポンプ制御弁47は、ポンプ制御シリンダ46への作動油の供給方向を切り換える。ポンプ制御弁47は、ポンプ制御シリンダ46への作動油の供給方向を切り換えることにより、走行用ポンプ31の吐出方向を切り換える。それにより、走行用モータ33の駆動方向が変更され、作業車両1の前進と後進とが切り換えられる。
【0045】
また、ポンプ制御弁47は、ポンプパイロット回路48を介してポンプ制御シリンダ46に供給される作動油の圧力を制御する。具体的には、ポンプ制御弁47は、ポンプ制御シリンダ46に供給される作動油の圧力を変更することで、走行用ポンプ31の傾転角を調整する。それにより、走行用ポンプ31の容量が制御される。
【0046】
ポンプパイロット回路48は、カットオフ弁52を介して、作動油タンクに接続されている。カットオフ弁52のパイロットポートは、シャトル弁53を介して第1駆動回路32aと第2駆動回路32bとに接続されている。シャトル弁53は、第1駆動回路32aの油圧と第2駆動回路32bの油圧とのうち大きい方(以下、「駆動回路圧」と呼ぶ)を、カットオフ弁52のパイロットポートに導入する。
【0047】
カットオフ弁52は、駆動回路圧が所定のカットオフ圧以上になると、ポンプパイロット回路48を作動油タンクに連通させる。それにより、ポンプパイロット回路48の油圧が低下することにより、走行用ポンプ31の容量が低減される。その結果、駆動回路圧の上昇が抑えられる。
【0048】
図3は、作業車両1の制御系を示す模式図である。図3に示すように、作業車両1は、アクセル操作部材61と、FR操作部材62と、シフト操作部材63とを含む。アクセル操作部材61と、FR操作部材62と、シフト操作部材63とは、オペレータによって操作可能に配置されている。アクセル操作部材61と、FR操作部材62と、シフト操作部材63とは、キャブ5内に配置されている。
【0049】
アクセル操作部材61は、例えばアクセルペダルである。ただし、アクセル操作部材61は、レバー、或いはスイッチなどの他の部材であってもよい。アクセル操作部材61は、アクセル操作センサ64と接続されている。アクセル操作センサ64は、例えばアクセル操作部材61の位置を検出する位置センサである。アクセル操作センサ64は、アクセル操作部材61の操作量(以下、「アクセル操作量」と呼ぶ)を示す信号を出力する。アクセル操作量は、例えば、アクセル操作部材61を全開に操作した状態を100%としたときの割合で表される。後述するように、オペレータは、アクセル操作量を調整することによって、車速と牽引力とを制御することができる。
【0050】
FR操作部材62は、例えばFRレバーである。ただし、FR操作部材62は、スイッチなどの他の部材であってもよい。FR操作部材62は、前進位置と後進位置と中立位置とに切り換えられる。FR操作部材62は、FR操作センサ65に接続されている。FR操作センサ65は、例えばFR操作部材62の位置を検出する位置センサである。FR操作センサ65は、FR操作部材62の位置を示す信号を出力する。オペレータは、FR操作部材62を操作することによって、作業車両1の前進と後進とを切り換えることができる。
【0051】
シフト操作部材63は、例えばダイヤル式のスイッチである。ただし、シフト操作部材63は、レバーなどの他の部材であってもよい。シフト操作部材63は、シフト操作センサ66と接続されている。シフト操作センサ66は、例えばシフト操作部材63の位置(以下、「シフト位置」と呼ぶ)を検出する位置センサである。シフト操作センサ66は、シフト位置を示す信号を出力する。シフト位置は、例えば第1速~第4速の位置を含む。ただし、シフト位置は、第4速より高速の位置を含んでもよい。或いは、シフト位置は、第1速から、第4速より低速の位置までであってもよい。
【0052】
図4は、作業車両1の車速-牽引力特性を示す図である。図4に示すように、オペレータは、シフト操作部材63を操作することによって、最高車速を規定する変速パターン(L_1st~L_4th)を選択することができる。
【0053】
作業車両1は、作業機操作部材67を含む。作業機操作部材67は、例えば作業機レバーである。ただし、作業機操作部材67は、スイッチ等の他の部材であってもよい。作業機操作部材67の操作に応じたパイロット圧が、作業機制御弁30に印加される。作業機操作部材67は、作業機操作センサ68に接続されている。作業機操作センサ68は、例えば圧力センサである。作業機操作センサ68は、作業機操作部材67の操作量(以下、「作業機操作量」と呼ぶ)と操作方向とを検出し、作業機操作量と操作方向とを示す信号を出力する。なお、作業機制御弁30が、圧力比例制御弁ではなく、電磁比例制御弁である場合には、作業機操作センサ68は、作業機操作部材67の位置を電気的に検出する位置センサであってもよい。オペレータは、作業機操作部材67を操作することによって、作業機3を操作することができる。例えば、オペレータは、作業機操作部材67を操作することによって、バケット12を上昇、或いは下降させることができる。
【0054】
作業車両1は、入力装置69を含む。入力装置69は、例えばタッチパネルである。ただし、入力装置69は、タッチパネルに限らず、スイッチ等の他の装置であってもよい。オペレータは、入力装置69を操作することで、作業車両1の各種の設定を行うことができる。例えば、入力装置69によって、トラクションコントロールの設定を行うことができる。図4に示すように、トラクションコントロールは、最大牽引力を複数のトラクションレベルから選択することができる機能である。
【0055】
複数のトラクションレベルは、第1レベルと第2レベルとを含む。第1レベルでは、最大牽引力が、トラクションコントロールが無効となっている通常時の最大牽引力よりも小さな値に制限される。第2レベルでは、最大牽引力が、第1レベルでの最大牽引力よりも小さな値に制限される。
【0056】
図4において、L_maxは、トラクションコントロールが無効となっている通常時の作業車両1の車速-牽引力特性を示している。L_TC1は、第1レベルのトラクションコントロールでの車速-牽引力特性を示している。L_TC2は、第2レベルのトラクションコントロールでの車速-牽引力特性を示している。
【0057】
図3に示すように、作業車両1は、記憶装置71とコントローラ72とを含む。記憶装置71は、例えばメモリと補助記憶装置とを含む。記憶装置71は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置71は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。記憶装置71は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置71は、処理装置(プロセッサ)によって実行可能であり作業車両1を制御するためのコンピュータ指令を記憶している。
【0058】
コントローラ72は、例えばCPU等の処理装置(プロセッサ)を含む。コントローラ72は、上述したセンサ、入力装置69、及び記憶装置71と通信可能に接続されている。コントローラ72は、上述した各種のセンサ、入力装置69、及び記憶装置71と有線、或いは無線によって通信可能に接続されている。コントローラ72は、センサ、入力装置69、及び記憶装置71から信号を受信することで各種のデータを取得する。コントローラ72は、取得したデータに基づいて作業車両1を制御するようにプログラムされている。なお、コントローラ72は、互いに別体の複数のコントローラによって構成されてもよい。
【0059】
コントローラ72は、上述した制御弁35b,47、及び、燃料噴射装置24と、有線、或いは無線により通信可能に接続されている。コントローラ72は、制御弁35b,47、及び、燃料噴射装置24に指令信号を出力することで、制御弁35b,47、及び、燃料噴射装置24を制御する。
【0060】
詳細には、コントローラ72は、燃料噴射装置24に指令信号を出力することで、エンジントルク及びエンジン回転速度を制御する。コントローラ72は、モータ制御弁35bに指令信号を出力することで、走行用モータ33の容量を制御する。コントローラ72は、ポンプ制御弁47に指令信号を出力することで、走行用ポンプ31の容量を制御する。コントローラ72は、図4及び図5に示すような車速-牽引力特性が実現されるように、走行用ポンプの容量と走行用モータの容量とを制御して、HST23の変速比を制御する。
【0061】
次に、コントローラ72による作業車両1の制御について説明する。本実施形態に係る作業車両1では、コントローラ72は、アクセル操作量と作業機操作量とに基づいて、エンジン21の目標回転速度(以下、「目標エンジン回転速度」と呼ぶ)を決定する。オペレータは、アクセル操作部材61を操作することなく、作業機操作部材67を操作することで、エンジン回転速度を増大させることができる。また、作業機操作部材67とアクセル操作部材61とが同時に操作されても、作業機操作部材67の操作の影響を受けずに、アクセル操作部材61によって車両の走行性能を調整することができる。
【0062】
図5は、オペレータによるアクセル操作部材61の操作に応じて変更される車速-牽引力特性の一例を示す図である。図5において、T100は、アクセル操作量が100%であるときの車速-牽引力特性を示している。T80は、アクセル操作量が80%であるときの車速-牽引力特性を示している。T60は、アクセル操作量が60%であるときの車速-牽引力特性を示している。本実施形態に係る作業車両1では、作業機操作部材67とアクセル操作部材61とが同時に操作されても、アクセル操作量に応じた走行性能(車速-牽引力特性)を得ることができる。
【0063】
以下、コントローラ72によって実行される処理について説明する。図6は、コントローラ72によって実行される処理を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、作業車両1が前進するときの制御について説明する。ただし、作業車両1が後進するときにも同様の制御が行われてもよい。
【0064】
図6に示すように、S101では、コントローラ72は、アクセル操作量を取得する。コントローラ72は、アクセル操作センサ64からの信号により、アクセル操作量を取得する。
【0065】
ステップS102では、コントローラ72は、目標車速を決定する。コントローラ72は、アクセル操作量から目標車速を決定する。図7は、アクセル操作量から目標車速を決定するための処理を示している。
【0066】
図7に示すように、ステップS201では、コントローラ72は、アクセル操作量とシフト位置とから、目標基準車速を決定する。目標基準車速は、作業車両1が平地を走行しているときの目標到達車速として設定される車速である。記憶装置71は、アクセル操作量と目標基準車速との関係を規定する基準車速データD1を記憶している。基準車速データD1では、アクセル操作量の増大に応じて目標基準車速が増大する。基準車速データD1では、シフト位置ごとにアクセル操作量と目標基準車速との関係を規定している。基準車速データD1では、アクセル操作量が同じであっても、シフト位置が高速側であるほど、目標基準車速が増大する。コントローラ72は、基準車速データD1を参照して、アクセル操作量とシフト位置とに対応する目標基準車速を決定する。
【0067】
ステップS202では、コントローラ72は、車速偏差を算出する。車速偏差は、目標基準車速と実際の車速との差である。ステップS203では、コントローラ72は、目標加速度を算出する。コントローラ72は、車速偏差とアクセル操作量とから、目標加速度を算出する。詳細には、コントローラ72は、加速度データD5を参照して、車速偏差に対応する目標加速度を算出する。加速度データD5は、車速偏差と目標加速度との関係を規定する。加速度データD5では、車速偏差の増大に応じて目標加速度が減少する。コントローラ72は、アクセル操作量に応じて加速度データD5を変更する。コントローラ72は、車速偏差が同じであっても、アクセル操作量が増大するほど、目標加速度が増大するように、加速度データD5を変更する。なお、車速偏差が負であることは、作業車両1が加速中であることを意味する。車速偏差が正であることは、作業車両1が減速中であることを意味する。目標加速度が正の値であることは加速を意味し、目標加速度が負の値であることは減速を意味する。
【0068】
ステップS204では、コントローラ72は、目標加速度から目標速度変化量を算出する。コントローラ72は、目標加速度に、コントローラ72による計算周期を乗じることで、目標速度変化量を算出する。
【0069】
ステップS205とステップS206とでは、コントローラ72は、実際の車速に目標速度変化量を加算する。ステップS207では、コントローラ72は、実際の車速に目標速度変化量を加算した値と目標基準車速との小さい方(第1目標車速)を選択する。ステップS208では、コントローラ72は、実際の車速に目標速度変化量を加算した値と目標基準車速との大きい方(第2目標車速)を選択する。
【0070】
ステップS209では、コントローラ72は、作業車両1が加速中であるのか、減速中であるのかに応じて目標車速を決定する。コントローラ72は、目標基準速度よりも実際の車速が小さいときには、作業車両1が加速中であると判断する。また、コントローラ72は、目標基準速度よりも実際の車速が大きいときには、作業車両1が減速中であると判断する。コントローラ72は、加速中には第1目標車速を目標車速として決定し、減速中には、第2目標車速を目標車速として決定する。なお、目標車速が負の値であるときには、コントローラ72は、目標車速を0とする。
【0071】
次に、図6に示すように、ステップS103では、コントローラ72は、HST23への目標入力馬力を決定する。HST23への目標入力馬力は、エンジン21の出力馬力のうち、HST23に分配される馬力を意味する。コントローラ72は、アクセル操作量から目標入力馬を決定する。
【0072】
図8は、本実施形態に係る作業車両1の車速-HST入力馬力特性を示す図である。図8において、H100は、アクセル操作量が100%であるときの車速-HST入力馬力特性を示している。H80は、アクセル操作量が80%であるときの車速-HST入力馬力特性を示している。H60は、アクセル操作量が60%であるときの車速-HST入力馬力特性を示している。
【0073】
図8に示すように、コントローラ72は、アクセル操作量に応じた走行性能(車速-HST入力馬力特性)が得られるように、アクセル操作量からHST23への目標入力馬力を決定する。コントローラ72は、目標車速に応じて、ストール時(R_stall)、低車速域(R_low)、中車速域(R_mid)、高車速域(R_high)でのHST23への目標入力馬力を決定する。
【0074】
図9は、ストール時のHST23への目標入力馬力を決定するための処理を示す図である。図9に示すように、ステップS301では、コントローラ72は、アクセル操作量からストール時の目標牽引力を決定する。記憶装置71は、アクセル操作量とストール時の目標牽引力との関係を規定する目標牽引力データD2を記憶している。
【0075】
目標牽引力データD2は、上述したトラクションコントロールなどの機能が実行されていない通常時におけるアクセル操作量とストール時の目標牽引力との関係を規定している。目標牽引力データD2は、0から100%の範囲のアクセル操作量に対するストール時の目標牽引力を規定している。目標牽引力データD2では、アクセル操作量の増大に応じて目標牽引力が増大する。コントローラ72は、目標牽引力データD2を参照して、アクセル操作量に対応するストール時の目標牽引力を決定する。
【0076】
ステップS302では、コントローラ72は、ステップS301で決定されたストール時の目標牽引力に、トラクションレベルに応じた比率を乗じることで、各トラクションレベルでのストール時の目標牽引力を決定する。トラクションコントロールが実施されない通常時には、当該比率は1となる。
【0077】
ステップS303では、コントローラ72は、ステップS302で決定されたストール時の目標牽引力を目標モータトルクに換算する。コントローラ72は、目標牽引力に、所定の換算係数を乗じて、トランスミッション機械効率で除することで、目標モータトルクを算出する。所定の換算係数は、作業車両1の牽引力をHST23の出力軸でのトルクに換算するための係数である。トランスミッション機械効率は、HST23の出力軸から走行輪4までの伝達効率である。
【0078】
ステップS304では、コントローラ72は、目標モータトルクから目標HST差圧を決定する。HST差圧は、第1駆動回路32aの油圧と第2駆動回路32bの油圧との差である。コントローラ72は、目標モータトルクを、走行用モータ33の最大容量で除して、走行用モータ33のトルク効率で除することにより、目標HST差圧を算出する。
【0079】
ステップS305では、コントローラ72は、目標HST差圧から走行用ポンプ31の目標流量を決定する。記憶装置71は、ストール時における目標HST差圧と走行用ポンプ31の目標流量との関係を規定する目標流量データD3を記憶している。目標流量データD3では、目標HST差圧の増大に応じて、走行用ポンプ31の目標流量が増大する。コントローラ72は、目標流量データD3を参照して、目標HST差圧に対応する走行用ポンプ31の目標流量を決定する。
【0080】
ステップS306では、コントローラ72は、目標HST差圧と走行用ポンプ31の目標流量とから、ストール時のHST23への目標入力馬力を決定する。コントローラ72は、目標HST差圧に走行用ポンプ31の目標流量を乗じて、ポンプトルク効率で除することで、ストール時のHST23への目標入力馬力を決定する。
【0081】
図10は、低車速域及び中車速域でのHST23への目標入力馬力を決定するための処理を示す図である。図10に示すように、ステップS401では、コントローラ72は、ストール時の目標牽引力と目標車速とから、目標走行馬力を決定する。コントローラ72は、ストール時の目標牽引力に目標車速を乗じてトランスミッション効率で除することにより、目標走行馬力を決定する。トランスミッション効率は、HST23の入力軸から走行輪4までの伝達効率である。
【0082】
ステップS402では、コントローラ72は、目標走行馬力とストール時の目標入力馬力とから低車速域でのHST23への目標入力馬力を決定する。コントローラ72は、ストール時の目標入力馬力に目標走行馬力を加えることで、低車速域でのHST23への目標入力馬力を決定する。
【0083】
ステップS403では、コントローラ72は、アクセル操作量から、中車速域のHST23への目標入力馬力を決定する。記憶装置71は、アクセル操作量とHST23への目標入力馬力との関係を規定する目標入力馬力データD4を記憶している。目標入力馬力データD4では、アクセル操作量の増大に応じて目標入力馬力が増大する。コントローラ72は、目標入力馬力データD4を参照して、アクセル操作量に対応する中車速域の目標入力馬力を決定する。
【0084】
ステップS404では、コントローラ72は、ステップS402で決定した低車速域の目標入力馬力と、ステップS403で決定した中車速域の目標入力馬力との小さい方を、低・中車速域のHST23への目標入力馬力として決定する。
【0085】
図11は、高車速域でのHST23への目標入力馬力を決定するための処理を示す図である。図11に示すように、ステップS501では、コントローラ72は、アクセル操作量とシフト位置とから、高車速域の閾車速を決定する。高車速域の閾車速は、低・中車速域と高車速域との境界を示す車速である。記憶装置71は、アクセル操作量と閾車速との関係を規定する閾車速データD6を記憶している。閾車速データD6では、アクセル操作量の増大に応じて閾車速が増大する。閾車速データD6は、シフト位置ごとにアクセル操作量と閾車速との関係を規定している。アクセル操作量が同じであっても、シフト位置が高速側であるほど、閾車速は大きくなる。コントローラ72は、閾車速データD6を参照して、アクセル操作量とシフト位置とに対応する閾車速を決定する。
【0086】
ステップS502では、コントローラ72は、アクセル操作量とシフト位置とから、目標基準車速を決定する。コントローラ72は、上述した基準車速データD1を参照して、アクセル操作量とシフト位置とに対応する目標基準車速を決定する。
【0087】
ステップS503では、コントローラ72は、アクセル操作量とシフト位置とから、ゼロ牽引力車速を決定する。ゼロ牽引力車速は、牽引力がゼロであるとき、すなわち走行負荷がゼロであるときの、目標車速を意味する。記憶装置71は、アクセル操作量とゼロ牽引力車速との関係を規定するゼロ牽引力車速データD7を記憶している。ゼロ牽引力車速データD7では、アクセル操作量の増大に応じてゼロ牽引力車速が増大する。ゼロ牽引力車速データD7は、シフト位置ごとにアクセル操作量とゼロ牽引力車速との関係を規定している。アクセル操作量が同じであっても、シフト位置が高速側であるほど、ゼロ牽引力車速は大きくなる。コントローラ72は、ゼロ牽引力車速データD7を参照して、アクセル操作量とシフト位置とに対応するゼロ牽引力車速を決定する。
【0088】
なお、アクセル操作量及びシフト位置が同じ場合には、閾車速<目標基準車速<ゼロ件引力車速の関係が成り立つように、閾車速データD6、基準車速データD1、及びゼロ牽引力車速データD7が設定されている。
【0089】
ステップS504では、コントローラ72は、目標車速から、HST23への静的な目標入力馬力を決定する。コントローラ72は、目標車速が閾車速以下であるときには、上述した低・中車速域の目標入力馬力を、静的な目標入力馬力として決定する。
【0090】
コントローラ72は、目標車速が目標基準車速であるときには、目標基準牽引力に目標基準車速を乗じて算出した目標基準走行馬力を、静的な目標入力馬力として決定する。例えば、コントローラは、作業車両1の車重と所定の係数とから、目標基準牽引力を決定する。車重と所定の係数とは、記憶装置71に記憶されている。
【0091】
コントローラ72は、目標車速がゼロ牽引力車速以上であるときには、静的な目標入力馬力をゼロとする。目標車速が、閾車速と目標基準車速との間の値、或いは、目標基準車速とゼロ牽引力車速との間の値であるときには、コントローラ72は、線形補間により、HST23への静的な目標入力馬力を決定する。
【0092】
上述した静的な目標入力馬力は、定常時におけるHST23への目標入力馬力である。アクセル操作量の変更による過渡時には、コントローラ72は、静的な目標入力馬力を越えない範囲で、アクセル操作量に応じた速さでHST23への目標入力馬力を増加させる。図12は、過渡時のHST23への目標入力馬力(動的な目標入力馬力)を決定する処理を示す図である。
【0093】
図12に示すように、ステップS601では、コントローラ72は、上述した目標加速度と、実際の車速と、トランスミッション効率とから、馬力増加量を決定する。馬力増加量は、実際の車速から、目標加速度で車速を増加させるために必要な単位時間当たりのHST23への入力馬力の増加量を意味する。
【0094】
ステップS602では、コントローラ72は、前回の目標入力馬力に馬力増加量を加算することで、今回の目標入力馬力を決定する。ステップS603では、コントローラ72は、ステップS602で決定した今回の目標入力馬力と上述したストール時の目標入力馬力とのうち大きい方を動的な目標入力馬力として選択する。また、ステップS604において、コントローラ72は、ステップS603で決定した動的な目標入力馬力と、上述した静的な目標入力馬力との小さい方を、目標入力馬力として選択する。
【0095】
以上のように、コントローラ72は、前回の動的な目標入力馬力を、アクセル操作量に応じた馬力増加量で増加することで、今回の動的な目標入力馬力を決定する。そして、コントローラ72は、ストール時の目標入力馬力と静的な目標入力馬力との間で、単位時間ごとに動的な目標入力馬力を増大させる。
【0096】
次に、図6に示すように、ステップS104では、コントローラ72は、作業機操作量を取得する。コントローラ72は、作業機操作センサ68からの信号により、作業機操作量を取得する。
【0097】
ステップS105では、コントローラ72は、目標エンジン回転速度を決定する。コントローラ72は、HST23への目標入力馬力と作業機操作量とから、目標エンジン回転速度を決定する。図13は、目標エンジン回転速度を決定するための処理を示す図である。
【0098】
図13に示すように、ステップS701では、コントローラ72は、ステップS604で決定された目標入力馬力から、HST23のための目標エンジン回転速度を決定する。記憶装置71は、エンジントルクとHST23のための目標エンジン回転速度との関係を規定するエンジントルク-回転速度データD8を記憶している。コントローラ72は、エンジントルク-回転速度データD8を参照して、HST23への目標入力馬力に対応する目標エンジン回転速度を決定する。コントローラ72は、エンジントルクと走行用ポンプ31の吸収トルクとが、目標入力馬力に対応する等馬力線上の所定のマッチング点MPで一致するように、HST23のための目標エンジン回転速度を決定する。
【0099】
ステップS702では、コントローラ72は、作業機操作量から、作業機3のための目標エンジン回転速度を決定する。記憶装置71は、作業機操作量と、作業機3のための目標エンジン回転速度との関係を規定する目標回転速度データD9を記憶している。目標回転速度データD9では、作業機操作量の増大に応じて、目標エンジン回転速度が増大する。コントローラ72は、目標回転速度データD9を参照して、作業機操作量に対応する作業機3のための目標エンジン回転速度を決定する。
【0100】
ステップS703では、コントローラ72は、目標車速から、車速用の目標エンジン回転速度を決定する。コントローラ72は、目標車速に所定の換算係数と最小トランスミッション変速比とを乗じて算出した値を車速用の目標エンジン回転速度として決定する。所定の換算係数は、目標車速をHSTの出力軸の回転速度に換算するための係数である。最小トランスミッション変速比は、HST23の最小変速比である。
【0101】
ステップS704では、コントローラ72は、HST23のための目標エンジン回転速度と、作業機3のための目標エンジン回転速度と、車速用の目標エンジン回転速度とのなかで最大のものを、目標エンジン回転速度として決定する。
【0102】
次に、図6に示すように、ステップS106において、コントローラ72は、走行用ポンプ31の目標容量を決定する。コントローラ72は、目標車速と、ステップS704で決定した目標エンジン回転速度とから、走行用ポンプ31の目標容量を決定する。また、ステップS107において、コントローラ72は、走行用モータ33の目標容量を決定する。コントローラ72は、目標車速と、ステップS704で決定した目標エンジン回転速度とから、走行用モータ33の目標容量を決定する。
【0103】
図14Aは、走行用ポンプ31の目標容量を決定するための処理を示す図である。図14Aに示すように、ステップS801において、コントローラ72は、目標車速から走行用モータ33の流量を決定する。コントローラ72は、目標車速に所定の換算係数と走行用モータ33の最大容量とを乗じて、走行用モータ33の容積効率で除した値を、走行用モータ33の流量として決定する。所定の換算係数は、目標車速をHST23の出力軸の回転速度に換算するための係数である。
【0104】
ステップS802において、コントローラ72は、目標エンジン回転速度と走行用モータ33の流量とから、走行用ポンプ31の目標容量を決定する。コントローラ72は、走行用モータ33の流量を、目標エンジン回転速度と走行用ポンプ31の容積効率で除した値を、走行用ポンプ31の目標容量として算出する。
【0105】
図14Bは、走行用モータ33の目標容量を決定するための処理を示す図である。図14Bに示すように、ステップS803において、コントローラ72は、目標車速から走行用モータ33の回転速度を決定する。コントローラ72は、目標車速に所定の換算係数を乗じることで、走行用モータ33の回転速度を算出する。所定の換算係数は、目標車速をHST23の出力軸の回転速度に換算するための係数である。
【0106】
ステップS804では、コントローラ72は、目標エンジン回転速度と走行用ポンプ31の最大容量とから、走行用ポンプ31の流量を決定する。コントローラ72は、エンジン回転速度に走行用ポンプ31の最大容量を乗じた値を走行用ポンプ31の容積効率で除することで、走行用ポンプ31の流量を算出する。
【0107】
ステップS805では、コントローラ72は、走行用モータ33の回転速度と走行用ポンプ31の流量とから、走行用モータ33の目標容量を決定する。コントローラ72は、走行用ポンプ31の流量を走行用モータ33の回転速度と走行用モータ33の容積効率とで除することにより、走行用モータ33の目標容量を算出する。
【0108】
そして、図6に示すように、ステップS108において、コントローラ72は、指令信号を出力する。コントローラ72は、エンジン21が目標エンジン回転速度で駆動されるように、燃料噴射装置24に指令信号を出力する。コントローラ72は、走行用ポンプ31が目標容量で駆動されるように、ポンプ容量制御装置45に指令信号を出力する。コントローラ72は、走行用モータ33が目標容量で駆動されるように、モータ容量制御装置35に指令信号を出力する。
【0109】
本実施形態では、コントローラ72は、エンジン21が過回転状態にあるときには、走行用ポンプ31の目標容量を所定の上限値以下に制限することで、エンジン21の過回転を抑える制御を行う。以下、エンジン21の過回転を抑えるための制御について説明する。
【0110】
図15は、エンジン21の過回転を抑えるためにコントローラ72によって実行される処理を示すフローチャートである。ステップS901では、コントローラ72は、エンジン回転速度を取得する。コントローラ72は、エンジン回転速度センサ25からの信号により、エンジン回転速度を取得する。
【0111】
ステップS902では、コントローラ72は、HST差圧を取得する。コントローラ72は、第1回路圧センサ34aと第2回路圧センサ34bとからの信号により、HST差圧を取得する。
【0112】
ステップS903では、コントローラ72は、エンジン21が過回転状態であるかを判定する。コントローラ72は、エンジン回転速度が、所定の第1閾値Nth1以上であるときに、エンジン21が過回転状態にあると判定する。エンジン21が過回転状態にあるときには、処理はステップS904に進む。
【0113】
ステップS904では、コントローラ72は、走行用ポンプ31の容量の上限値を決定する。コントローラ72は、以下の式(1)により、走行用ポンプ31の容量の上限値を決定する。
D_Limitは、走行用ポンプ31の容量の上限値である。T_Limitは、エンジンブレーキトルクの許容値(以下、「トルク許容値」と呼ぶ)である。dPは、HST差圧の絶対値である。etは、走行用ポンプ31のトルク効率である。トルク許容値T_Limitとトルク効率etとは定数であり、記憶装置71に記憶されている。なお、トルク効率etは、変数であってもよい。式(1)で示されるように、コントローラ72は、走行用ポンプ31からエンジン21に伝わるエンジン逆駆動トルクが、トルク許容値T_Limitを越えないように、上限値D_Limitを決定する。
【0114】
図16は、エンジン回転速度とエンジンブレーキトルクとの関係を示す図である。図16に示すように、エンジンブレーキトルクは、エンジン回転速度の増大に応じて、増大する。トルク許容値T_Limitは、エンジン回転速度が第2閾値Nth2であるときのエンジンブレーキトルクの値である。第2閾値Nth2は、上述した第1閾値Nth1よりも大きい。なお、第2閾値Nth2は、第1閾値Nth1と同じ値であってもよい。
【0115】
ステップS905では、コントローラ72は、S802において決定した走行用ポンプ31の目標容量が、上限値D_Limitより大きいかを判定する。目標容量が、上限値D_Limitより大きいときには、処理はステップS906に進む。
【0116】
ステップS906では、コントローラ72は、上限値D_Limitを走行用ポンプ31の目標容量として決定する。目標容量が、上限値D_Limit以下であるときには、コントローラ72は、ステップS802において決定した走行用ポンプ31の目標容量を維持する。そして、上述したステップS108において、コントローラ72は、走行用ポンプ31が目標容量で駆動されるように、ポンプ容量制御装置45に指令信号を出力する。
【0117】
以上のように、エンジン21が過回転状態にあるときには、コントローラ72は、走行用ポンプ31の容量を上限値D_Limit以下に制限する。上限値D_Limitは、走行用ポンプ31の最大容量以下である。従って、コントローラ72は、エンジン21が過回転状態にあるときには、走行用ポンプ31の容量の上限値を最大容量よりも小さな値に減少させる。
【0118】
また、上記の(1)式で示されるように、上限値D_Limitは、HST差圧に応じて変更される。詳細には、コントローラ72は、HST差圧の増大に応じて、上限値D_Limitを減少させる。
【0119】
以上説明した本態様に係る作業車両では、HST差圧に応じて走行用ポンプ31の容量の上限値D_Limitが決定され、エンジン21が過回転状態になると、走行用ポンプ31の容量が上限値D_Limitを越えないように制限される。走行用ポンプ31からエンジン21に伝わるエンジン逆駆動トルクは、走行用ポンプ31の容量が大きいほど大きくなる。従って、走行用ポンプ31の容量が上限値D_Limit以下に制限されることで、エンジン逆駆動トルクを小さく抑えることができる。それにより、エンジン回転速度の増大を抑えて、過回転を防ぐことができる。
【0120】
また、走行用ポンプ31からエンジン21に伝わるエンジン逆駆動トルクは、HST差圧に応じて変化する。従って、HST差圧に応じて、走行用ポンプ31の容量の上限値が決定されることで、エンジン逆駆動トルクを適切に抑えることができる。さらに、HST23の変速比の低下が抑えられるため、エンジンブレーキによる制動力の低下を抑えることができる。
【0121】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0122】
作業車両1は、ホイールローダに限らず、モータグレーダ等の他の種類の車両であってもよい。作業車両1の駆動系及び制御系の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、走行用ポンプ31の容量は、ポンプ制御弁47に限らず、他の制御弁によって制御されてもよい。すなわち、ポンプパイロット回路48を介してポンプ制御シリンダ46に供給される作動油の圧力を制御するための制御弁が、ポンプ制御弁47とは別に設けられてもよい。
【0123】
上述した各種の演算に用いられるパラメータは、上述したものに限らず、変更されてもよい。或いは、上述したパラメータ以外のパラメータが演算に用いられてもよい。上述した各種のデータは、例えば式で表されてもよく、或いは、テーブル、マップなどの形式であってもよい。走行用ポンプ31の容量の上限値は、式に限らず、テーブル、或いはマップから決定されてもよい。
【0124】
上述した処理の順序が変更されてもよい。或いは、一部の処理が並列に行われてもよい。例えば、ステップS101とステップS104とは並列して行われてもよい。
【0125】
コントローラ72は、上記の実施形態とは異なる方法によって、目標車速を決定してもよい。コントローラ72は、上記の実施形態とは異なる方法によって、HST23への目標入力馬力を決定してもよい。コントローラ72は、上記の実施形態とは異なる方法によって、目標エンジン回転速度を決定してもよい。コントローラ72は、上記の実施形態とは異なる方法によって、走行用ポンプ31の目標容量を決定してもよい。コントローラ72は、上記の実施形態とは異なる方法によって、走行用モータ33の目標容量を決定してもよい。そのような場合も、エンジン21が過回転状態であるときには、上記のように走行用ポンプ31の容量が上限値以下に制限されることで、過回転を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明によれば、エンジン回転速度の過回転を防ぐと共に、エンジンブレーキによる制動力の低下を抑えることができる。
【符号の説明】
【0127】
21 エンジン
31 走行用ポンプ
32 駆動油圧回路
33 走行用モータ
23 HST(静油圧式変速機)
72 コントローラ
36 車速センサ
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