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特許7105773Liイオン電池用のハイブリッドナノラミネート電極
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  • 特許-Liイオン電池用のハイブリッドナノラミネート電極 図1A
  • 特許-Liイオン電池用のハイブリッドナノラミネート電極 図1B
  • 特許-Liイオン電池用のハイブリッドナノラミネート電極 図2A
  • 特許-Liイオン電池用のハイブリッドナノラミネート電極 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】Liイオン電池用のハイブリッドナノラミネート電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20220715BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220715BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/139
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019528088
(86)(22)【出願日】2017-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 NL2017050782
(87)【国際公開番号】W WO2018097727
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】16200799.1
(32)【優先日】2016-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511095850
【氏名又は名称】ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト-ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パウルス・ウィリブロドゥス・へオルへ・プート
(72)【発明者】
【氏名】サンディープ・ウニクリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・フェレーケン
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・パウル・ノルベルト・モイツハイム
(72)【発明者】
【氏名】アントニウス・マリア・ベルナルドゥス・ファン・モル
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-241275(JP,A)
【文献】特開2016-014128(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0363744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デカップリング層によって分離されている0.3~300nmの範囲の層厚を有するTiO、MnO又はそれらの組み合わせの群の金属酸化物層で形成された多数のダイアドラミネートスタックを含み、前記デカップリング層は、導電性有機分子を含む有機デカップリング層である、リチウム電池用の電極。
【請求項2】
前記デカップリング層は、0.1~10nmの範囲の導電性ポリマー層である、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記デカップリング層は、単一の単層である、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記デカップリング層は、X-R-Xによって特徴付けられる化合物によって形成され、導電性分子骨格Rは、同一であることができる2つの基X及びXを有する、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
及びXは、前記ラミネートスタックの表面に吸着されている金属前駆体に対して反応性である官能基である、請求項4に記載の電極。
【請求項6】
及びXは、ヒドロキシル(-OH)、アミン(-NH)、カルボン酸(-COOH)又はチオール(-SH)の群から選択される、請求項4に記載の電極。
【請求項7】
導電性分子骨格Rは、ベンゼンジオール、複素環芳香族ジオール、線状共役分子を含むジオールの何れかによって形成される、請求項4又は6に記載の電極。
【請求項8】
基板を提供するステップと、以下のステップ:
-第1の堆積段階で前記基板上に酸化チタンを堆積させて、3~300nmの範囲の酸化チタンのシートを提供するステップ;及び
-第2の段階で導電性ポリマーを堆積させて導電性ポリマーの単層を提供するステップ
を繰り返して実施し、それによってTiOナノシートで形成された多数のダイアドナノラミネートスタックを提供するステップと、を含む、リチウム電池用の電極の製造方法。
【請求項9】
前記第1の堆積段階は、チタン前駆体(例えば、塩化チタン、オルトチタン酸テトライソプロピル)及び酸素前駆体(例えば、水、オゾン、過酸化物、酸素ラジカル、酸素プラズマ)が使用されるALDプロセスである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の堆積段階は、場合によりチタン前駆体と組み合わされた有機前駆体(例えば、アルコール、酸、アミン)が使用されるMLDプロセスである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の堆積段階は、任意の組み合わせで、ALDプロセス、MLDプロセス、CVDプロセス又はスパッタリングプロセスによって実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び第2の堆積段階は、堆積ツールの1回の実行で実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記基板は、高アスペクト比のマイクロピラー、高アスペクト比のマイクロトレンチ、複数のナノワイヤ、メッシュ、(ナノ)多孔質構造、及び/又は三次元足場の何れかを有する3D構造である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はさらに、電気化学装置のような種類の電極を備えた電子回路を含む電子装置に関する。特に、本開示は、例えばLiイオン電池などの、イオン挿入型電池及びイオン挿入型電池の製造方法に関する。より詳細には、本開示は、イオン挿入型電池用の電極及び電極層、並びに、そのような電極及び電極層の形成方法に関する。これらの電極層は、例えば、薄膜電池、粒子ベースの電池、全固体電池、又は液体電解質電池の電極として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
電子装置において、電子回路は、電気化学装置におけるような種類の集電体を備えることができる。例えば、電気化学装置は、非平面設計の集電体を有する充電式Liイオン固体電池などの電池である。放電電池モードでは、アノードは、「正極」であるカソードから正の電流が流れる「負極」である。充電中、これらの機能は逆になる。充電モードに関わらず、電気化学的関係は、負極材料と正極材料との間の電荷交換によって特徴付けることができ、負極材料は、正極材料の仕事関数又は酸化還元電位よりも低い仕事関数又は酸化還元電位を有する。
【0003】
例えば、既知の負極(アノード)材料は、LiTi12(チタン酸塩);LiC(グラファイト);Li4.4Si(シリコン)及びLi4.4Ge(ゲルマニウム)であり、既知の正極(カソード)材料は、LiCoO(LCO)、LiCoPO、(ドープされた)LiMn(LMO)、LiMnPO、LiFePO(LFP)、LiFePOF(LFPF)又はLiCo1/3Ni1/3Mn1/3(LCNMO)である。
【0004】
既知の(固体状態の)電解質としては、ヨウ化リチウム(LiI)、リン酸リチウム(LiPO)及びオキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)を挙げることができる。さらに、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどの有機溶媒中のLiPF、LiBF又はLiClOなどのリチウム塩は、室温で約10mS/cmの典型的な導電率を有することが知られている。電解質は、負極-電解質界面で初期充電時に分解し、固体電解質界面(SEI)と呼ばれる固体層を形成する。
【0005】
固体ポリマーセパレータも含まれてもよく、そのようなポリマーは、技術水準で知られているように、多くの場合リチウム塩がその中に配置されていることにより、輸送能力を有する。リチウム及びハロゲン化物材料、特に幾つかの例では、四フッ化リチウムアルミニウム(LiAlF)のような四ハロゲン化リチウムアルミニウムにおいても、研究が行われてきた。
【0006】
リチウムイオン電池のようなイオン挿入型電池用の電極としてかなり注目されている材料はTiOであるが、なぜなら、それは高い理論容量(335mAh/g、又はアナターゼ型TiOについては約1280mAh/cm)を提供し、また、現在の電極材料に代わる潜在的に安価で環境に優しい安定した代替品を提供するからである。しかしながら、その低い電子伝導性及び劣ったLiイオン伝導性により、それは劣ったレート性能を有し、そのことはそれを実用的用途に不適切なものとする。レート性能を改善するために、ドーピング、ナノ構造化又はナノサイズ化、及び異なるTiO多形体の使用などの方法が研究されている。TiO材料のドーピングは、材料の電子伝導性の向上をもたらすことができ、さらにイオン伝導(イオン拡散)が促進され得る。そのような正の伝導性効果は、カチオン及びアニオンでドープされたアナターゼ及びスピネル型TiOベースの粒子中のLiイオン拡散に対して報告されている。また、Hによる還元型ドーピングも提案されており、アナターゼ型TiOの向上した電子伝導性及び改善されたLiイオン貯蔵速度論(storage kinetics)、すなわち、より高い充電速度でより多くの容量を利用可能なより高速度のLiイオン挿入及び抽出をもたらす。そのような水素ドーピングプロセスは、典型的には300℃を超える温度、例えば450℃で行われ、そのことはそれを非晶質TiOと不適合なものとする。TiOのレート性能を改善するための様々な戦略の中で、結晶質(例えばアナターゼ型)TiOの代わりに非晶質TiOを使用することは有望な結果を示す。例えば非晶質TiO/カーボンナノ複合材料(例えば、炭素-チタニア/チタン酸塩ナノ複合材料)のような、非晶質TiOをベースとするナノ複合材料の作製は、改善されたイオン挿入及び抽出特性をもたらし得る。一般に、例えばナノ粒子、ナノチューブ又はナノシートを含むナノシステムは、薄膜ベースのシステムよりも著しく高価になる傾向がある。電極の厚さを増加させると容量は増加するが、拡散/ドリフト長が増加するにつれて充電速度は減少する。電池の効率的な充電を達成するために、電極の厚さを最小にすることができるように、容積式の(volumetric)Liイオン貯蔵容量は最大にすべきである。簡単で信頼性のある方法でこれらの高アスペクト比構造を製造する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い比電荷収集面積及び電力を可能にし、適切な寸法を有するが、簡単かつ迅速な技術を使用して達成され、任意に曲げられてもよい堅牢な設計をもたらす電極を有する電子装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、一態様によれば、有機デカップリング層の間に挟まれた高い体積容量(volumetric capacity)を有する0.3~300nmの範囲の薄いTiO膜を有するハイブリッドナノラミネートフィルムが製造される、電極の製造方法が提供される。デカップリング層は、導電性有機分子の単層の1つ又は幾つかであり得る。好ましい形態は、5nmのTiOと、芳香族又は共役分子に基づくALD堆積チタノセンの1つの単層と、のハイブリッドナノラミネートのスタックである。この構成において、導電性ハイブリッド単層は、TiOナノシートで形成された多数のダイアドナノラミネートスタック内の分離層として機能する。あるいは、これらの層は、スパッタリング又は化学堆積技術によって製造することができる。
【0009】
従って、TiO及びハイブリッド分離層の両方の厚さを正確に制御することによって、伝導率及び容量を、最小の体積/質量の完全なスタックで最大にすることができる。
【0010】
ALD技術によって製造されるハイブリッドナノラミネートの概念はそれ自体新しいものではないが、この特定の構造はイオン輸送及び電気輸送の両方を改善し、そのことは先行技術では提供されていない。
【0011】
本明細書では、文脈に応じて、機能層は他の機能構造と直接接触していなくてもよいが、それらの間に機能性を向上させ得る中間層又は構造を有してもよい。その点で、当業者は、例えば負極層が集電体と「接触している」と記載されている場合、機能性を向上させる可能なリチウム拡散バリア層、集電体層、プロセス保護層などを除外せずに「電気的に接触している」と解釈されることを理解するであろう。このことは、負極層及び正極層と「接触している」電解質層についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】薄膜電池セルの概略断面図である。
図1B】ハイブリッド電極を概略的に示す図である。
図2A】サイクル図である。
図2B】試験された放電容量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最も単純な概念化では、電池装置は2つの電極を備え、1つ目はその電極で起こる酸化プロセスによって電子を供給し、アノードと呼ばれ、2つ目はその電極で起こる還元プロセスによって電子を消費し、カソードと呼ばれる。放電電池モードにおいて、アノードは、「正極」であるカソードから正の電流が流れる「負極」である。充電中、これらの機能は逆になる。充電モードに関係なく、電気化学的関係は、負極材料と正極材料との間の電荷交換によって特徴付けることができ、負極材料は、正極材料の仕事関数又は酸化還元電位よりも低い仕事関数又は酸化還元電位を有する。
【0014】
例えば、既知の負極(電池放電中のアノード)材料は、LiTi12(チタン酸リチウムスピネル又はLTO);LiC(グラファイト);Li4.4Si(シリコン)及びLi4.4Ge(ゲルマニウム)であり、既知の正極(カソード)材料は、LiCoO(コバルト酸リチウム又はLCO)、LiCoPO、(ドープされた)LiMn(マンガン酸リチウムスピネル又はLMO)、LiMnPO、LiFePO(LFP)、LiFePOF(LFPF)又はLiCo1/3Ni1/3Mn1/3(LCNMO)である。
【0015】
既知の(固体状態の)電解質としては、ヨウ化リチウム(LiI)、リン酸リチウム(LiPO)及びオキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)を挙げることができる。さらに、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどの有機溶媒中のLiPF、LiBF又はLiClOなどのリチウム塩は、室温で約10mS/cmの典型的な導電率を有することが知られている。電解質は、負極-電解質界面で初期充電時に分解し、固体電解質界面(SEI)と呼ばれる固体層を形成する。
【0016】
薄膜固体リチウムイオン型のものを含む薄膜イオン電池は、電池を形成するために互いに接合される負極、正極、及び電解質材料を製造するために、様々な堆積技術から調製することができる。そのような技術は、典型的には、「薄膜」電池を製造するために、真空蒸着又は同様の薄膜をもたらす他の技術を使用してそのような材料の薄膜を堆積することを含み得る。薄膜電池は、空間及び重量を節約することが好ましく、極めて長いサイクル寿命が望まれる場合がある用途にしばしば採用される。
【0017】
以下の実施例ではより詳細に、電気化学装置、より具体的には例えばリチウムイオン型の電池装置、より具体的には、電池の多層、特にその負極層と電気的に接触している集電体の電荷収集比面積を増大させるための集電構造を有する電池装置の形態で、本発明の態様が説明される。
【0018】
本開示はここで、本開示の幾つかの実施形態の詳細な説明によって説明される。本開示の真の精神又は技術的教示から逸脱することなく、本開示の他の実施形態が当業者の知識に従って構成され得ることは明らかであり、本開示は添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定される。さらなる説明において、本開示は主に薄膜固体Liイオン電池について説明されるが、本開示はそれに限定されない。例えば、本開示の実施形態による電極層及び方法はまた、粒子ベースの電池に関して、及び/又は液体電解質電池に関しても使用することができる。さらに、本開示の実施形態による電極層及び方法はまた、例えばMgイオン電池、Kイオン電池、Naイオン電池又はAlイオン電池などの他のイオン挿入型電池にも使用することができる。
【0019】
図1は、薄膜電池セル100の概略断面図を示す。それは、第1の集電体層11、第1の電極層12、電解質層13、第2の電極層14及び第2の集電体層15のスタックを含む。このスタックは、基板10上に設けることができる。第1の電極層12は負極層又はアノード層であり得、第2の電極層14は正極層又はカソード層であり得、あるいは逆であることもでき、第1の電極層12は正極層又はカソード層であり得、第2の電極層14は負極層又はアノード層であり得る。
【0020】
さらなる説明では、第1の電極層12は正極層であり、第1の集電体層11は正の集電体層であると想定され、第2の電極層14は負極層であり、第2の集電体層15は負の集電体層であると想定される。
【0021】
本開示の実施形態による電極層は、図1に示す構造において第2の(負の)電極層14として有利に使用することができ、すなわち、それは有利には、基板10上に第1の(正の)集電体層11、第1の(正の)電極層12及び電解質層13を堆積した後に堆積することができる。さらに説明されるように、本開示の実施形態による電極層は有利には、非晶質層であり得る。
【0022】
基板10は、例えば、シリコンなどのIV族半導体材料のような半導体材料、金属(例えば金属箔)、カーボンナノシート、プラスチック箔又はケイ酸塩のようなセラミック材料を含むことができる。図1に示す例では、基板10は平面基板である。しかしながら、基板10はまた、例えば複数のマイクロピラー、複数のナノワイヤなどの複数の3Dフィーチャ又は3D微細構造を含むような非平面基板、又は、3D(ナノ)メッシュ、ナノチューブ及び/又は例えば多孔質陽極酸化アルミナなどの他の多孔質構造を含む基板であってもよい。3Dフィーチャは、例えば規則的なアレイパターンのような規則的なパターンで基板上に存在してもよく、あるいはそれらは基板上にランダムに分布されてもよい。例えば、基板10は、例えばシリコンピラーなどの高アスペクト比ピラーのアレイを含むことができ、その上に第1の集電体層11を被覆することができる。ピラーは例えば、0.5マイクロメートル~10マイクロメートルの範囲の直径、1マイクロメートル~20マイクロメートルの間隔、及び10マイクロメートル~200マイクロメートルの範囲の高さを有することができるが、本開示はそれに限定されない。複数の3D微細構造を含む基板を使用することの利点は、電池容量が増加することである。
【0023】
第1の集電体層11は、例えば、正の集電体層とすることができる。正の集電体層12は、金属層(例えばPt、Al、Cu、Ti、W又はAuを含む)、導電性ポリマー層(例えばポリアニリン)、導電性セラミック層(例えばTiN)、又は導電性酸化物(例えばRuO)又はカーボン層などの導電層であるが、本開示はそれに限定されない。基板10が導電性基板である本開示の実施形態では、基板は第1の集電体層として機能することもでき、専用の第1の集電体層11を設ける必要がない場合がある。
【0024】
第1の電極層12は、例えば、正極層又はカソード層とすることができる。より具体的には、層12又は15は有利には、有機デカップリング層によって分離されている3~300nmの範囲のTiOナノシートで形成された多数のダイアドナノラミネートスタックである。あるいは、MnOナノシートを同様の形状で使用することができる。
【0025】
デカップリング層は、Liイオンが下のTiO層に浸透するのに十分な導電性及びイオン伝導性を示す。この目的のために、電子トンネリングが電子伝導性を提供するのに十分であるという条件で、界面層として有機分子の単一の単層を使用することができる。
【0026】
個々のTiO膜の厚さを最大体積容量のために最適化することができ、一方、スタック全体の厚さを全容量のために最適化(最小化)することができる。
【0027】
他のイオン挿入型電池の場合、第1の電極層12は、例えば、Liイオン電池について上に列挙したものと同様の材料を含むことができるが、Liが他のイオンによって置換されている。例えば、Naイオン電池の場合、第1の電極層12は例えば、NaMnを含むことができ、Mgイオン電池の場合、第1の電極層は例えば、MgMnを含むことができ、Alイオン電池の場合、第1の電極層は例えば、Alを含むことができるが、本開示はそれに限定されない。
【0028】
電解質層13は、例えば、液体電解質、ゲル-ポリマー電解質又は固体電解質に浸されたセパレータ(例えば微孔性セパレータ)を含むことができる。液体電解質を有する実施形態では、セパレータは、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン材料を含むことができる。液体電解質は、例えば有機溶媒(例えばプロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート)又は水などの溶媒を含んでもよい。Liイオン電池の場合、可動イオン(Liイオン)は、例えば、溶媒中に例えばヘキサフルオロリン酸リチウム又は過塩素酸リチウムを溶解させることによって、液体電解質中に供給することができる。他のイオン挿入電池の場合、使用される特定の溶媒に対して可溶性の塩を使用することによって、可動イオンを提供することができる。
【0029】
例えば、Mgイオン電池の場合、Mg(ClOを炭酸プロピレンに溶解させて液体電解質を形成することができる。ポリマー-ゲル電解質は、可塑剤及び塩と共に、例えばポリ(エチレンオキシド)又はポリ(プロピレンオキシド)などのポリマーホストを含むことができる。固体電解質は固体イオン伝導体であり、Liイオン電池の場合には、例えばポリ(エチレンオキシド)/LiCFSOなどの有機材料、又は、リチウム超イオン伝導体材料(LISICON材料、例えばLi14ZnGe16など)、チオ-LISICON材料(例えばLi10GeP12など)、ナトリウム超イオン伝導体材料(NASICON材料、例えばLi1.3Al0.3Ti1.7(POなど)、ペロブスカイト材料(例えばLa0.5Li0.5TiOなど)、ガーネット材料(例えばLiLaZr12など)又は非晶質材料(例えばLiPON、Li2.88PO3.730.14など)のような無機材料を含み得るが、本開示はそれに限定されない。
【0030】
分離層は、分子層堆積法(MLD)によって製造することができ、0.1~10nm以上、例えば100nmまでの範囲の1個又は数個、例えば100個までのMLD単層からなることができる。分離層は電子及びリチウムイオンの両方に対して伝導性であるべきであるため、薄いほど良い。電子伝導度の典型的な値は10-6~10-9ジーメンス/cmであり、これは、例えばベンゼンジオール、複素環芳香族ジオール、又は線状共役分子を含むジオールのようなジオール基を有する有機分子によって達成することができる。
【0031】
MLD工程のための有機前駆体は、以下の要件を有する:
それは、X-R-Xと一般的に記載される化合物であり、分子骨格Rは、2つの反応性化学基X及びXを有する。
【0032】
及びXは同じであっても異なっていてもよい。X及び/又はXは、ヒドロキシル基(-OH)、アミン基(-NH)、カルボン酸基(-COOH)又はチオール基(-SH)のような官能基とすることができる。これらの基は、表面に既に吸着されている金属前駆体に対して(例えばX)並びに次のALD/MLDサイクル中に入ってくる金属前駆体に対して(例えばX)反応性でなければならない。
【0033】
分子骨格Rは導電性であるべきである。そのため、骨格は、非局在電子と交互に単結合及び多重結合されている連結されたp軌道の系を有する共役分子であるべきである。骨格は、環状、線状又は混合であり得る。
【0034】
分子の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:
・ベンゼンジオール;X=X=-OH、R=ベンゼン
oまた、1個又は2個のヒドロキシル基がアミン、酸又はチオール基で置換された同じ分子
・フランジオール及びピリジンジオールのような複素環芳香族ジオール;
oまた、1個又は2個のヒドロキシル基がアミン、酸又はチオール基で置換された同じ分子
・線状共役分子のジオール;R=ジエン
oまた、1個又は2個のヒドロキシル基がアミン、酸又はチオール基で置換された同じ分子
・1つ又は複数の環状及び/又は線状分子骨格の組み合わせ。
【0035】
このカテゴリー内に入る分子前駆体を有するMLDフィルムの幾つかの例が公表されている。
【0036】
・ヒドロキノン(ベンゼン-1,4-ジオール、X=X=OH、R=ベンゼン)をジエチル亜鉛と組み合わせて、導電性を示すZn-ヒドロキノンフィルムを製造した(参考文献2)。
・同じ有機分子をチタン前駆体と組み合わせて使用して、Ti-ヒドロキノンを製造した(参考文献3)。
・4-アミノフェノール(X=NH、X=OH、R=ベンゼン)をジエチル亜鉛と組み合わせて、Zn-アミノフェノールフィルムを製造した(参考文献4)。
・同じ有機分子をチタン前駆体と組み合わせて使用して、Ti-アミノフェノールを製造した(参考文献5)。
【0037】
x個のTiOのALD層及びy個のTi-OP(OPは有機前駆体である)のMLD層を含むスタックを得るための堆積スキームは、nx[(TiCl+HO)x+(TiCl+OP)y]であり、ここで、nは、十分に高い総厚を得るために必要なスーパーサイクルの数に対応する。例えば、5nmのTiO膜と1つの単層Ti-OPとを有する300nmのフィルムは、n=6、x=50、及びy=1を必要とするであろう。
【0038】
図1Bは、5nmのTiOナノシート111及び1つの4-アミノフェノールの単層112を有する総厚200nmのハイブリッド電極を調製し、充放電挙動を試験するためにコインセル構成で試験したことを概略的に示す。完全には最適化されていないが、このスタックは純粋なTiO基準と比較して、3倍以上高い放電容量を示す。層状スタックの容量は、実際には、LiTiO相に基づく理論容量の100%に達する。
【0039】
[さらなる実施形態]
さらなる例では、有機分子(4-アミノフェノール)と金属前駆体(TiCl)との組み合わせを使用して、原子層堆積されたTiO層間挿入層の間に分子層堆積プロセスによって分離層を製造した。この方法を用いて、5nmのTiO及び1つの4-アミノフェノールの単層を有する総厚200nmのハイブリッド電極を調製し、充放電挙動を試験するためにコインセル構成で試験した。図2Aは、このスタックが充電及び放電されたサイクル図を示す。
【0040】
図2Bは、スタックの試験された放電容量を示す。このスタック(層状サンプル1及び2)は、純粋なTiO基準電極層(基準サンプル1及び2)と比較して、3倍以上高い放電容量を示した。ナノサイズ効果によって引き起こされた容量の増加は、分離層が実際に個々のTiOナノ層間の分離層として作用することを明らかに実証している。第2に、それはまた、分子(単)層が電子及びイオンに対して伝導性であることを実証しており、そうでなければ電極は機能しなかったであろう。
【0041】
本開示の実施形態による方法の利点は、それらが良好な共形性(conformality)を有する薄膜電極層、すなわち、均一な厚さを有しかつ下にある基板のトポグラフィに正確に従う層の形成を可能にすることである。従って、本開示の方法は、有利には、(例えば、3D電池アーキテクチャを製造するためのプロセスにおいて)3D構造上に、例えば、複数の高アスペクト比のマイクロピラー、高アスペクト比のマイクロトレンチ、複数のナノワイヤ、メッシュ、(ナノ)多孔質構造及び/又は三次元足場(scaffold)を含む構造上などにこのような層を形成するために使用されてもよい。本開示の実施形態によるALDベースの方法を使用した層の共形(conformal)堆積により、層の厚さは、3D構造上及びそのような構造間の凹部内並びにそのような構造の側面上で実質的に同じである。
【0042】
本開示の実施形態による方法の利点は、それらを容易に拡大することができることである。本開示の有利な実施形態では、空間的(spacial)ALDを、電極層を形成するために使用することができる。時間的(temporal)ALDと比較して空間的ALDの利点は、それが電極層のより速い堆積、例えば10倍速い堆積を可能にすることである。これにより、より高い製造処理能力及び潜在的により低いコストがもたらされる。本発明の特定の実施形態を上に説明したが、本発明は説明した以外の方法で実施できることを理解されよう。さらに、異なる図を参照して論じられた孤立した特徴を組み合わせてもよい。さらなる説明では、本開示は主に薄膜固体Liイオン電池について説明されているが、本開示はそれに限定されない。例えば、本開示の実施形態による電極層及び方法は、粒子ベースの電池に関して、及び/又は液体電解質電池に関しても使用することができる。さらに、本開示の実施形態による電極層及び方法は、例えばMgイオン電池、Kイオン電池、Naイオン電池又はAlイオン電池などの他のイオン挿入型電池にも使用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 基板
11 第1の集電体層
12 第1の電極層
13 電解質層
14 第2の電極層
15 第2の集電体層
100 薄膜電池セル
111 5nmのTiOナノシート
112 4-アミノフェノールの単層
図1A
図1B
図2A
図2B