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特許7105779時計のための可撓性を有するモノリシック構成部品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】時計のための可撓性を有するモノリシック構成部品
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/253 20060101AFI20220715BHJP
   G04B 5/04 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
G04B19/253 G
G04B5/04
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019532972
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017083646
(87)【国際公開番号】W WO2018115014
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】01737/16
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】510283546
【氏名又は名称】マニュファクチュア・ドーロジュリー・オードゥマール・ピゲ・エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・マビラード
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・ボッティネリ
(72)【発明者】
【氏名】ティアヴィナ・ニアリツィリ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・バリッジ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリオ・パピ
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3032351(EP,A1)
【文献】特表2015-511714(JP,A)
【文献】特開2008-58012(JP,A)
【文献】特表2013-524173(JP,A)
【文献】特開2014-182147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計のためのモノリシック構成部品であって、
前記時計のアクチュエータ(1、1’)の運動を前記時計の被駆動部品(5)に伝達させるように構成され、
当該モノリシック構成部品が、
-硬質フレーム(6)と、
-第1硬質駆動部材(3)と、
-前記フレーム(6)を前記第1駆動部材(3)に接続する第1弾性可撓性構造体(2、2’、2’’’、7)と、
を備え、
前記第1弾性可撓性構造体(2、2’、2’’’、7)が、前記第1駆動部材(3)の変位に少なくとも2つの自由度をもたらすように構成されており、
前記変位が、前記アクチュエータ(1、1’)の作用を受けて引き起こされていることを特徴とするモノリシック構成部品。
【請求項2】
前記変位が、前記第1駆動部材(3)が前記被駆動部品(5)と接触した結果として引き起こされていることを特徴とする請求項1に記載のモノリシック構成部品。
【請求項3】
前記変位が、前記第1駆動部材(3)が補助案内素子と接触した結果として引き起こされていることを特徴とする請求項1または2に記載のモノリシック構成部品。
【請求項4】
前記アクチュエータ(1)が、前記変位を引き起こすために当該モノリシック構成部品と接触するように構成された独立した部品であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のモノリシック構成部品。
【請求項5】
前記アクチュエータ(1’)が、当該モノリシック構成部品と一体化されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のモノリシック構成部品。
【請求項6】
少なくとも2つの自由度を有する前記変位の成分が、平行移動、回転、遠隔弾性中心に従った移動、及びこれらの組み合わせから選択されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のモノリシック構成部品。
【請求項7】
前記第1弾性可撓性構造体が、それぞれが前記フレーム(6)と前記第1駆動部材(3)との間に延在する2つの可撓性ストリップ(2、2’)であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のモノリシック構成部品。
【請求項8】
2つの前記可撓性ストリップ(2、2’)の前記第1駆動部材(3)との接触点が、前記第1駆動部材(3)の異なる領域に配設されていることを特徴とする請求項7に記載のモノリシック構成部品。
【請求項9】
2つの前記可撓性ストリップ(2、2’)のうちの一方が、ほぼ直角に角度付けされた肘部分を備えることを特徴とする請求項7または8に記載のモノリシック構成部品。
【請求項10】
前記第1弾性可撓性構造体の2つの可撓性部分間には、中間硬質部分(7)が配設されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のモノリシック構成部品。
【請求項11】
前記第1弾性可撓性構造体の可撓性ストリップ(2、2’)の2つの部分間には、中間硬質部分(7)が配設されていることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載のモノリシック構成部品。
【請求項12】
前記第1弾性可撓性構造体が、当該モノリシック構成部品の2つの硬質素子(6、7)間に配設された1以上の可撓性首体(2’’’)を備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載のモノリシック構成部品。
【請求項13】
第2機能性部材(4)と、
前記フレーム(6)を前記第2機能性部材(4)に接続する第2弾性可撓性構造体(2”)と、
を備え、
前記第2弾性可撓性構造体(2”)が、前記第2機能性部材(4)を前記被駆動部品と接触させるように配置するように構成されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のモノリシック構成部品。
【請求項14】
前記被駆動部品(5)が、日付円板またはリングであり、
前記アクチュエータが、駆動指体(1)が備えられた制御ホイールであり、
硬質な前記第1駆動部材(3)が、可撓性ストリップ(2、2’)を備える第1弾性可撓性構造体を介して前記フレーム(6)に接続されたヨークであり、
第2機能性部材(4)が、第2弾性可撓性構造体(2”)を介して前記硬質フレーム(6)に接続されたジャンパであり、それにより、当該モノリシック構成部品が、前記時計の日付装置における前記日付円板またはリングの駆動部材及び固定部材として機能していることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のモノリシック構成部品。
【請求項15】
前記被駆動部品(5)が、自動巻ホイールであり、
前記アクチュエータが、当該モノリシック構成部品と一体化された振動錘(1’)であり、
前記硬質駆動部材(3)が、2つの駆動指体(3、4)を備え、前記駆動指体が、それぞれ可撓性ストリップ(2、2’、2’’’)及び硬質中間部分(7)を備える第1弾性可撓性構造体を介して前記硬質フレーム(6)に接続され、前記駆動指体双方が、前記自動巻ホイールを駆動させるように構成された駆動手段として交互に機能し、それにより、当該モノリシック構成部品が、前記時計の自動巻装置の巻ホイールのための駆動部材として機能していることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のモノリシック構成部品。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載のモノリシック構成部品を備えることを特徴とする時計。
【請求項17】
当該時計が機械式時計であることを特徴とする請求項16に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計のための、特に機械式時計のためのモノリシック構成部品に関し、この構成部品は、時計のアクチュエータの運動を時計の被駆動部品に伝達させるように設計されている。
【背景技術】
【0002】
これに関連して、特許文献1には、弾性回動軸を有する振動装置と、そのタイプの振動装置を備えるエネルギーを伝達させるための可動素子と、が開示されており、これら可動素子は、調整部材をモノリシック構成部品を用いて実現するように、天輪、すなわち脱進機に替わることを意図している。
【0003】
特許文献2には、制御部材が開示されており、この制御部材のうち少なくとも2つの部分は、単一部品として製造されているが、この制御部材は、同様に、同じ平面にすべては位置していない他の関節接続された部品を備える。
【0004】
特許文献3には、ブリッジに固定された基部と指標点として機能する硬質の先端部とによって構成されたジャンパを示し、2つの弾性腕体は、基部と指標点との間のリンクとして機能しており、ジャンパは、歯付リングの位置を保証することを可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/010408号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第1306733号明細書
【文献】特許第4917909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、摩擦に関連する問題及び従来の時計の装置を構成するこれら構成部品間の遊びに関連する問題を低減し、装置の位置を制御し、ひいては装置の信頼性を保証することを視野に入れて、完全な装置または機能的副組立体を構成する構成部品の数を減らすことである。より具体的には、本発明の目的は、導入部分で規定されたタイプの機能的モノリシック構成部品を提供することであり、このモノリシック構成部品は、様々な方向で軌道に沿う作動を用いてエネルギーを伝達することを可能とする。本発明のさらなる目的は、一定の力を伝達する部材を形成するモノリシック構成部品を提案することであり、この伝達部材は、被駆動部品のより良好な再現性及びより安定した作動をもたらすことを可能とする。また、本発明は、時計の構造において公知の製造技術を用いてこのタイプのモノリシック構成部品を作り出すことである。
【0007】
このために、本発明は、時計のための、特に機械式時計のためのモノリシック構成部品を提案しており、このモノリシック構成部品は、少なくとも1つの硬質部分及び弾性可撓性部分を備え、時計のアクチュエータの運動を時計の被駆動部品に伝達するように設計されており、上記モノリシック構成部品は、
-硬質フレームと、
-第1硬質駆動部材と、
-上記フレームを上記第1駆動部材に接続する第1弾性可撓性構造体と、
を備え、上記第1弾性可撓性構造体が、上記第1駆動部材の変位を少なくとも2つの自由度で形成するように構成されており、上記変位が、アクチュエータの運動を受けて引き起こされている。
【0008】
このため、本発明は、複数の硬質領域及び可撓性領域によって形成されたモノリシック構成部品を提案する。本明細書で使用されている用語「硬質」及び「可撓性」は、時計の分野に関連して理解されるべきである、すなわち、可撓性領域は、アクチュエータが作り出せる機械的な力の結果として所望の運動伝達に十分である曲げを受ける一方、この状況において、硬質領域は、十分には変形しない。
【0009】
本発明に関連して、アクチュエータは、モノリシック構成部品とは独立した部品であり得、上記変位を発生させるために上記第1駆動部材と接触する。アクチュエータは、同様に、モノリシック構成部品と一体化され得る。
【0010】
2つの自由度を有する上記変位の成分は、平行移動、回転及びこの組み合わせから選択されている。
【0011】
第1弾性可撓性構造体は、それぞれが上記フレームと上記第1駆動部材との間に延在する2つの可撓性ストリップを備え得る。
【0012】
2つの可撓性ストリップの第1駆動部材との接触点は、上記第1駆動部材の異なる領域に配置され得る。2つの上記可撓性ストリップのうちの一方は、ほぼ直角に角度付けされた肘部分または曲部分を備え得る。
【0013】
可撓性構造体の2つの可撓性部分間には、中間硬質部分が配設され得る。
【0014】
第1弾性可撓性構造体は、同様に、上記モノリシック構成部品の2つの硬質要素間に配設された1以上の可撓性首体を備え得る。
【0015】
本発明の一形態によれば、モノリシック構成部品は、好ましくは、第2機能性部材と、上記フレームを上記第2機能性部材に接続する第2弾性可撓性構造体と、を備えており、上記第2弾性可撓性構造体は、上記第2機能性部材を被駆動部品と接触させて配置するように構成されている。
【0016】
本発明の一形態によれば、上記第2機能性部材は、上記第1駆動部材によって駆動される部品をその位置に一時的に固定するように構成された保持部材である。
【0017】
本発明の一用途において、上記被駆動部品は、歯付円板であり、アクチュエータは、駆動指体が備えられた制御ホイールであり、上記第1駆動部材は、ヨークであり、上記第2機能性部材は、ジャンパである。
【0018】
本発明の別の用途において、モノリシック構成部品は、自動巻装置を構成し、アクチュエータとして振動錘を一体化しており、被駆動部品は、自動巻ホイールであり、上記第1駆動部材は、双方が交互に駆動指体として機能する2つの指体を備える。
【0019】
上記で規定した構成要素は、好ましくは、例えばDurnico鋼などのマルエージング鋼として公知の硬化可能な鋼鉄から作られている。このタイプの材料は、シート状または薄いプレート状において、単一平面に延在する複数の構成要素を作りだすために、ワイヤ切断によって、ダイスタンプによって、または、フェムトプリントによって、機械加工され得る。
【課題を解決するための手段】
【0020】
例として本発明のいくつかの実施形態を例示する添付の図面を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
【0021】
添付の図面は、例として本発明のいくつかの実施形態を概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明にかかるモノリシック構成部品を用いて実現された、アクチュエータ-モノリシック構成部品-被駆動機構を一例として示す概略頂面図である。
図2a】本発明にかかる可撓性ストリップを有する一実施形態にかかるモノリシック構成部品を示す概略図である。
図2b】本発明にかかる可撓性ストリップを有する他の実施形態にかかるモノリシック構成部品を示す概略図である。
図2c】本発明にかかる可撓性ストリップを有する他の実施形態にかかるモノリシック構成部品を示す概略図である。
図2d】本発明にかかる可撓性ストリップを有する他の実施形態にかかるモノリシック構成部品を示す概略図である。
図2e】本発明にかかる可撓性ストリップを有する他の実施形態にかかるモノリシック構成部品を示す概略図である。
図2f】本発明にかかる可撓性ストリップを有する他の実施形態にかかるモノリシック構成部品を示す概略図である。
図2g】本発明にかかる可撓性ストリップを有する他の実施形態にかかるモノリシック構成部品を示す概略図である。
図2h】本発明にかかる可撓性ストリップを有する他の実施形態にかかるモノリシック構成部品を示す概略図である。
図3】本発明にかかるモノリシック構成部品であって瞬時日付機に組み込まれるように構成されたモノリシック構成部品を示す図である。
図4a】一実施形態にかかる保持部材を示す図であって、保持部材の可撓性構造体が本発明にかかるモノリシック構成部品の一部を形成し得る、保持部材を示す図である。
図4b】他の実施形態にかかる保持部材を示す図であって、保持部材の可撓性構造体が本発明にかかるモノリシック構成部品の一部を形成し得る、保持部材を示す図である。
図4c】他の実施形態にかかる保持部材を示す図であって、保持部材の可撓性構造体が本発明にかかるモノリシック構成部品の一部を形成し得る、保持部材を示す図である。
図4d】他の実施形態にかかる保持部材を示す図であって、保持部材の可撓性構造体が本発明にかかるモノリシック構成部品の一部を形成し得る、保持部材を示す図である。
図4e】他の実施形態にかかる保持部材を示す図であって、保持部材の可撓性構造体が本発明にかかるモノリシック構成部品の一部を形成し得る、保持部材を示す図である。
図4f】他の実施形態にかかる保持部材を示す図であって、保持部材の可撓性構造体が本発明にかかるモノリシック構成部品の一部を形成し得る、保持部材を示す図である。
図5】本発明にかかるモノリシック構成部品を備える自動巻装置を示す図である。
図6図1図2及び図3に示す本発明にかかる実施形態におけるモノリシック構成部品に関する運動ダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
同じ参照符号及び同じグラフィックス(ハッチング、十字模様、グレースケースなど)は、同一のまたは同様の素子を示すために図面を通して使用される。
【0024】
図1は、アクチュエータ-モノリシック構成部品-被駆動部品の機構を示しており、この機構は、一例として本発明の概念を例示している。このチェーンは、作動指体1、本発明にかかるモノリシック構成部品、及び、例えば歯付ホイールからなり得るまたは歯付リング/円板からなり得る被駆動部品5を備える。モノリシック構成部品は、いくつかの部分、すなわち、第1硬質駆動部材3と、第2硬質機能性部材4、すなわち一例として図1に示す実施形態において保持部材4と、硬質フレーム6と、(一例として図1に示す実施形態において可撓性ストリップ2、2’を備える)第1弾性可撓性構造体であって第1硬質駆動部材3をフレーム6に接続する第1可撓性構造体と、(一例として図1に示す実施形態において可撓性ストリップ2”によって構成された)第2弾性可撓性構造体であって図示した例において保持部材4である第2機能性部材4をフレーム6に接続する第2弾性可撓性構造体と、を備える。フレーム5は、本発明にかかるモノリシック構成部品の部分であり、モノリシック構成部品を時計に、通常はこの時計のブリッジに取り付けることを可能としており、モノリシック構成部品を時計に一体化させる。モノリシック構成部品は、必然的に、上記弾性可撓性構造体2、2’を介して硬質フレーム6に取り付けられた第1硬質駆動部材3を備える一方で、第2弾性可撓性構造体2”を介して硬質フレーム6に取り付けられた第2硬質機能性部材4は、単に任意である。
【0025】
図1に例示するように、機構を組み込んだ時計それぞれが動いている間、上記時計に備え付けられた制御ホイールに固定された作動指体1は、上記制御ホイールの前進回転中に第1硬質駆動部材3の適切な部分31上をスライドし、駆動部材3の変位を発生させ、この変位は、第1弾性可撓性構造体によって、すなわち図1に例示する例において2つのストリップ2、2’によって制御され、かつ、上記第1駆動部材3が被駆動ホイール5と接触することによって制限される。当業者は、フック状の硬質駆動部材3の端部が、被駆動ホイール5の歯と係合してそれにより被駆動ホイールを駆動させるように構成されていること、がわかる。駆動手段34は、上記被駆動ホイール5の外周に平行な成分と上記外周に垂直な成分とを有する変位を実行する。このため、第1駆動部材3全体は、二次元で交互に振動する運動を実行する。この運動は、駆動手段34が被駆動ホイール5の歯に係合されたときの第1弾性可撓性構造体のストリップ2、2’の弾性変形によって可能であり、図1に示す矢印の方向で被駆動ホイール5の回転を引き起こす。図1の例において、被駆動部品5の変位は、回転であるが、この変位は、同様に、回動、平行移動、または、本発明にかかるモノリシック構成部品を使用する特定の用途に応じた他の変位であり得る。図1に例示された例におけるように第2機能性部材4が保持部材4を構成している場合において、この保持部材4が被駆動ホイール5と弾性接触することにより、第1硬質駆動部材3による被駆動ホイール5の駆動段階以外において、この被駆動ホイール5が故意ではない回転に抗することが保証される。さらに、第2機能性部材4の機能は、一般的に、時計それぞれの所定部品を維持する以外の機能からなり、この部品は、必ずしも第1硬質駆動部材3によって駆動される部品5ではないが、この時計の別の部分であり得る。
【0026】
結果として、図1に例として示したような機構は、本発明にかかるモノリシック構成部品により、最大3つの物理的に分離した部品、すなわち、アクチュエータ、モノリシック構成部品及び被駆動部品を用いることによって実現され得る。これに関して、留意することは、図1の例を用いて例示されて原理が、特に第1弾性可撓性構造体の配置及び/または第2弾性可撓性構造体の配置を改変することによって、並びに、代替としてまたはさらに、第1硬質駆動部材の機能及び/または配置及び/または第2機能性部材の機能及び/または配置を改変することによって、多数の変形例で具現化され得ること、である。
【0027】
図2aから図2hは、弾性可撓性構造体2、2’を介した、特に複数の可撓性ストリップを介した、硬質フレーム6と硬質機能性部材3との間の連結を用いて、複数自由度で案内する発明の概念を例示する概略図である。図2aから図2hには、可撓性ストリップを有するモノリシック構成部品の8つの実施形態を示しており、単一の機能性部材を有するこれら場合において、一例として、実現され得る多数の可能性のある変形例のうちの一部のみを実演するために、理解されることは、実現され得る変形例のすべてを本明細書で説明することができないこと、である。フレーム6は、十字模様を付して示されている一方で、機能性装置3は、ハッチングで示されており、弾性可撓性構造体のストリップ2、2’は、これらストリップが相当に薄いので、ハッチングされておらず、(図2c及び図2hにおいて概略的に示されている)弾性可撓性構造体の一部を形成し得る硬質中間部分7は、グレー表示されている。硬質中間部分7は、モノリシック構成部品のうち可撓性ストリップ2、2’を構成する領域よりもずっと薄い領域である。図面を簡略化するために、アクチュエータ、すなわち作動指体1は、好ましくは機能性硬質部材3のうち被駆動部品5と係合して駆動指体として機能するフック状の端部とは反対側の端部において、硬質機能性部材3と接触するが、同様に、作動指体は、図示しない弾性可撓性構造体の硬質中間部分7及び被駆動部品5と接触し得る。矢印は、対応する弾性可撓性構造体によって事前に規定されているように、機能性部材3の、特に機能性部材の駆動指体の変位を象徴している。
【0028】
これら図面を検討すると当業者が直ちに理解することは、硬質フレーム6と機能性部材3との間にある(少なくとも2つの可撓性ストリップ2、2’及び任意で少なくとも1つの硬質中間部分7を備える)弾性可撓性構造体の配置によって、機能性部材の少なくとも2つの自由とであらかじめ規定された変位が可能であること、である。当業者が特に留意することは、弾性可撓性構造体の可撓性ストリップ2、2’のうちの少なくも一方に約90°の角度を形成する少なくとも1つの曲部分または肘部分があることにより、機能性部材の変位方向のうちの1つにおいて機能性部材3の移動自在性を可能とする、特に著しく増加させること、である。一例として、図2a、図2b、図2d、図2e、図2f及び図2gにかかるモノリシック構成部品の実施形態において、可撓性ストリップ2’は、約90°の肘部分を形成する。このため、これら図面の平面を基準系とみなすと、対応するモノリシック構成部品の機能性部材3は、この平面においてほぼ水平な方向で変位を行い得ないだけではなく、この肘部分のため、この平面にほぼ垂直な変位を行い得る。図2a、図2b、図2d、図2e、図2f及び図2gにおいてわかるように、約90°の肘部分は、好ましくは、機能性部材3の端部であって被駆動部品5に係合してこれにより駆動指体として機能するフック状の端部に向けて位置する可撓性ストリップ2’に形成されている。図2c及び図2hに示すように、少なくとも1つの硬質中間部分7を介装することによって弾性可撓性構造体に約90°の肘部分を形成することも可能である。これら図面に例示する実施形態において、可撓性ストリップ2’は、互いに関して垂直に方向付けられかつ硬質中間部分7によって分離された複数の可撓性部分を備える。この場合においても、約90°の肘部分を形成するために硬質中間部分7によって分離された複数の部分によって形成された可撓性ストリップ2’は、好ましくは、可撓性部材3のうち被駆動部品5に係合しそれにより駆動指体として機能するフック状の端部に向けて位置している。さらに、図2c及び図2hは、可撓性ストリップ2’または2も硬質フレーム6にまたは中間硬質部分7に直接固定され得ることを示している。
【0029】
図2aから図2hは、同様に、矢印を用いたかつ一例としての概略的な態様で、本発明にかかるモノリシック構成部品によって実現され得るタイプの運動の組み合わせを示しており、このモノリシック構成部品は、弾性可撓性構造体を介した、特に少なくとも2つの可撓性ストリップを介した硬質フレームとこの硬質機能性部材との間の連結を用いて硬質機能性部材を少なくとも2つの自由度で案内することを保証する。特に、図2a、図2b、図2d、図2e、図2f及び図2gは、モノリシック構成部品を示しており、このモノリシック構成部品の第1弾性可撓性構造体は、少なくとも2つの自由度で上記第1駆動部材3の、すなわち機能性部材の変位を提供するような態様で構成されており、機能性部材3の運動のあらかじめ規定した2つの自由度は、「遠隔弾性中心」(RCC)に従った運動を組み合わせた回転からなる。図2c及び図2hは、モノリシック構成部品を示しており、第1弾性可撓性構造体は、少なくとも2つの自由度で機能性部材3の変位を提供するような態様で構成されており、機能性部材3の運動のあらかじめ規定した2つの自由度は、それぞれが遠隔弾性中心に従った運動を生み合わせた平行移動である2つの組み合わせた平行移動からなる。明らかに、他の構成、特に上述した構成の組合せを想定し得る。
【0030】
図3は、本発明にかかるモノリシック構成部品を示しており、このモノリシック構成部品は、対応する時計の瞬時日付機に組み込まれるように構成されている。この構成部品は、図1に示す機構のような機構に介装されることを意図している。参照符号及びグラフィックス並びにデバイス、すなわち機構の構造及び動きは、図1に関連して説明したものと同じである。特に、本発明にかかるモノリシック構成部品のこの用途において、図3に示されていない上記被駆動部品は、好ましくは外周に歯を有する日付円板/リングであり、同様に図3に例示しないアクチュエータは、作動指体が備えられた制御ホイールであり、上記第1駆動部材3は、駆動ヨークによって形成され、この駆動ヨークの一端部は、上記作動指体によって作動されるように構成され、この駆動ヨークの駆動指体が備えられた他端部は、上記日付リングの歯に係合するように構成されており、それにより、日付リングを段階的に駆動し、上記第2機能的部材4は、第1駆動部材3によって上記日付リングが作動するとき以外でこのリングを固定するように構成されたジャンパである。このため、このモノリシック構成部品は、日付円板/リングのための駆動部材及び固定部材として機能する。これに関連して留意しておくことは、機能性部材、特にジャンパ4として機能する上記第2機能性部材が、装置が動いている間の時の流れの中でこの保持素子が駆動素子になり得ることを考慮すると、2つの機能を有し得る、ことである。全体配置、すなわち瞬時日付機の動きは、当業者に公知であり、したがって、説明を本発明にかかるモノリシック構成部品に限定すべきであるため、本明細書では説明しない。このため、図3に示すモノリシック構成部品は、従来技術の日付装置の構造において通常使用されているピニオン及び軸(arbor)を含む10を超える部品をモノリシック構成部品自体に置換することを可能とする。
【0031】
図6は、本発明にかかるモノリシック構成部品のための原理の運動ダイアグラムを示しており、この図6において、可撓性ストリップ2、2’は、回動接続を介してそれらの端部において関節接続された硬質素子に置換されている。この構成部品は、図1から図3の動作平面である動作平面に延在する。図6の運動ダイアグラムは、図2cを除く図1から図3に示した実施形態に対応しており、より一般的な態様で、本発明にかかるモノリシック構成部品の部分の動きを説明するために使用される。
【0032】
このため、一般的に、本発明にかかるモノリシック構成部品の第1弾性可撓性構造体は、フレーム6と駆動部材3との間に延在し、駆動部材3のレベルにおいて第1固定点32を画成する第1可撓性ストリップ2を備える。この第1固定点32は、動作平面に位置する1つの自由度で線形軌道に従ってフレーム6に対して移動可能である。この軌道は、図2d、図2e、図2f、図2g、図2hまたは図6におけるように円弧であり得る。可撓性ストリップ2の形状は、ほぼ反対方向に延在する2つの部分を示し得、そのため、図1図2a、図2b及び図3に示す例示的な実施形態の場合のように、固定点32の変位は、ほぼ直線的である。さらに、ストリップ2の可撓性は、硬質駆動部材3が動作平面に垂直な軸回りにフレーム6に対して回転移動可能であること、を意味する。
【0033】
また、本発明にかかるモノリシック構成部品の第1弾性可撓性構造体は、駆動部材3のレベルにおいて第2固定点33を画成する第2可撓性ストリップ2’を備える。例えば図1図2a及び図2bに示された実施形態において、第2可撓性ストリップ2’は、(中でも)ほぼ垂直な方向に延在しかつ回動接続によって図6において象徴的に示されている肘部分35を介して互いに接続されている2つの部分を備える。あるいは、第2可撓性ストリップ2’の2つの部分は、図2hに示す構成のように、硬質中間部分7によって物理的に分離されている。第2固定点33は、作動平面に位置する2つの自由度で平面軌道においてフレーム6に対して移動可能である。明らかに、本発明は、第2可撓性ストリップが肘部分または硬質中間部分によって分離されている2つの別個の部分を備えるモノリシック構成部品に限定されない。第2可撓性ストリップ2’は、適切な種類の幾何形状を有し得、そのため、第2ストリップ2’は、曲がって、動作平面における第2固定点33の変位を引き起こす。
【0034】
第1駆動部材3における第1及び第2可撓性ストリップ2、2’の第1及び第2固定点32、33は、第1駆動部材3の異なる領域に配設されている。好ましくは、固定点32及び33の距離は、可撓性ストリップ2の長さの少なくとも1/4を示す。より具体的には、固定点32、33を分離させることは、動作平面の軸に沿う第1可撓性構造体の二次元モーメントを十分に増加させ得ること、すなわち、動作平面で第1駆動部材3を案内することを改善し得ること、を意味する。あるいは、動作平面での第1駆動部材3の同じ剛性に関して、固定点32、33を分離させることは、二次元モーメントを低減させ得ることを意味し、可撓性ストリップそれぞれのセクションを低減し得ることを意味する。
【0035】
好ましくは、駆動手段34は、同様に、固定点32から分離されており、そのため、駆動手段の変位は、動作平面における2つの自由度に従って生じる。有利であることは、第1駆動部材3及び/または可撓性腕体2、2’と協働する当接体を設けてそれにより弾性可撓性構造体の変形を弾性可撓性構造体の弾性限界内に規制すること、である。当接体は、例えば、硬質フレーム6に一体化され得る。当接体を用いてまたは用いずに、可撓性ストリップ2、2’の変形は、規制され、駆動手段34が移動可能である動作領域36を画成し、この動作領域は、図6においてハッチングして図示されている。可撓性ストリップ2、2’は、駆動手段34を動作領域36のほぼ中心である待機位置に戻す傾向がある弾性復元力をかける。
【0036】
第1駆動部材3の構成された部分31に作用するアクチュエータ1は、駆動手段34の変位を引き起こし、この変位は、図1において例として示した動作軌道37を表す。好ましくは、動作軌道37は、ループを形成することによって非ゼロ面を区画する、すなわち、待機位置に向かう復路は、往路に重ならない。このループは、アクチュエータ1単独の変位に応じて得られ得る。アクチュエータ1は、例えば、偏心器であり得、構成された部分31の円形変位を案内し、この円形変位は、ループの形態にある動作軌道37を発生させる。
【0037】
他の実施形態において、駆動部材3の変位は、同様に、被駆動部品5によって引き起こされる。これは、図1の例の場合であり、被駆動部品5は、駆動手段34の往路を反らせ、駆動手段34は、駆動手段が歯を追い越すまで被駆動部品5の歯上をスライドし、それにより、駆動手段34は、袋において歯を駆動させ得る。
【0038】
図示しないさらなる実施形態において、駆動部材3の変位は、同様に、補助案内素子によって引き起こされ得、この補助案内素子は、アクチュエータの作用を受けて変位される第1駆動部材3と接触することを意図している。補助案内素子は、フレーム6から得られ得る、または、ブリッジに、主プレートに、もしくは時計の別の素子に取り付けられ得る。
【0039】
一般的に、振動の影響を受けやすい作動力による装置の作動は、多くの欠点に悩まされる。これは、例えば、ユーザが制御部材を利用して装置を直接作動させる場合である。装置は、例えばボタンへの衝撃の結果として生じ得る最も強い作動に耐えるために、寸法付けられていなければならない。さらに、最終的に、さらなる固定デバイスは、移動部品の位置を固定するために設けられなければならない。
【0040】
作動部材は、同様に、装置のアクチュエータが時計のエネルギー源によって駆動されると変化し、駆動トルクは、巻きの関数として変化する。この2番目の場合において、装置の動きは、ジャンパを用いて位置決めする場合において装置の設計を複雑にさせ得る作動力の延長範囲にわたって保証されなければならない。
【0041】
本発明は、アクチュエータデバイスに一定の力を形成するモノリシック構成部品を提案することによって、これら欠点を克服し得る。本発明にかかるモノリシック構成部品は、アクチュエータからのエネルギーを弾性エネルギーとして蓄積し、アクチュエータの作動力とは独立して一定の力で被駆動部品に戻す。実際には、被駆動部品5の駆動は、可撓性ストリップ2、2’の作用を受けて駆動手段34が待機位置に戻ることのみによって引き起こされる。このため、本発明にかかるモノリシック構成部品を用いて作動力を間接的に伝達させることにより、作動装置を確実にかつ安定させ、そして、作動装置の設計を簡素化することが可能となる。
【0042】
図4aから図4fは、図1に関連して上記したものと同じ参照符号及びグラフィックスを用いて、6つの実施形態にかかる第2機能性部材4、特に図3に示す用途で使用されるような保持部材を示している。この保持部材4は、1つまたは2つのストリップ2”によって構成された第2弾性可撓性構造体を介して硬質フレーム6の一部に接続されている。これら図面を見た当業者が迅速に理解することは、可撓性ストリップ2”の構成によって、これら図面に示されかつ対応する運動方向、これらの場合において平行移動に対応する運動方向を象徴する矢印に沿って保持指体を形成する保持部材4、すなわちジャンパ4を変位させることを可能とする。特に、図4aから図4fの実施形態において第2弾性可撓性構造体の可撓性ストリップ2”は、直線状ストリップとして構成され得る、部分的なもしくは完全なU字状に構成され得る、部分的なもしくは完全なV字状に構成され得る、または、二重の直線状ストリップ、すなわちU字状もしくはV字状にある二重の直線状ストリップのように構成され得る、または、これら構成の組み合わせであり得る。
【0043】
図5は、被駆動部品と共に時計に一体化されるように構成された自動巻装置を構成するモノリシック構成部品を示す。参照符号及びグラフィックスは、特に図1に関連して上記したものと同じである。上述した実施形態とは異なり、このモノリシック構成部品は、この場合におけるアクチュエータ-モノリシック構成部品-被駆動部品の機構が2つの物理的に分離した部品、すなわち本発明にかかるモノリシック構成部品及び被駆動部品のみを用いることによって作り出され得る態様で、振動錘1’によって形成されたアクチュエータに恒久的に固定されている。振動錘1’は、2つの可撓性首体2’’’、すなわち狭窄中央部分を有する2つの短部品であって狭窄中央部分が2つの短部品が曲がることを可能としこれにより可撓性ストリップとして機能する2つの短部品を介してモノリシック構成部品のフレーム6に接続されている。これら2つの可撓性首体2’’’それぞれには、硬質中間部分7のうちほぼ直線状である一端部が一体化されており、2つの中間部分それぞれは、順に、中間部分の他端部において、可撓性首体2’’’を介してフレーム6に接続されている。その結果、振動錘1’は、2つの弾性可撓性構造体を用いてフレーム6に接続されており、これら弾性可撓性構造体それぞれは、ほぼ直線状の硬質中間部分7と、硬質中間部分7の端部に一体化された2つの可撓性首体2’’’と、を備える。可撓性首体2’’’は、上述した可撓性ストリップ2、2’と機能的に等しく、用語「首体」は、この構造体が短いことを強調するために本明細書では基本的には使用されており、そのため、より長い可撓性「ストリップ」によって規定される運動と比較して大きさを低減した対応する運動を規定するために使用され得る。フレーム6は、2つの中間部分7をフレーム6に連結する上記2つの可撓性首体2’’’のための固定点として機能する大面積領域を有するブリッジと、上記振動錘1’及び硬質中間部分7を囲むほぼ円状の外周部分と、を備え得る。
【0044】
好ましくは2つの中間部分7それぞれのうち振動錘1’と一体化されている端部に近接して取り付けられている2つの他の可撓性首体2’’’は、ほぼ直線状の上記2つの硬質中間部分7を丸角部を有するほぼ正方形状の第3中間部分7に接続する。この第3中間部分7は、互いに平行に配設ざれたほぼ直線状の上記2つの硬質中間部分7間の中央に位置する。第3硬質中間部分7は、自動巻ホイール5を囲み、この自動巻ホイールは、モノリシック構成部品のこの用途において、被駆動部品を形成し、上記巻ホイールに関して接線方向に配設された2つの可撓性ストリップ2、2’を支持する。2つの可撓性ストリップ2、2’は、各別に、第1硬質駆動部材3によって、または、第2駆動部材4によって、特にフック状の駆動指体3、4によって終端する。その結果、第1及び第2硬質駆動部材3、4それぞれは、ほぼ直線状の2つの硬質中間部分7を備える第1弾性可撓性構造体、第3硬質中間部分7、直線状の硬質中間部分7と及び部分的に第3硬質中間部分7と一体化した4つの可撓性首体’’’、及び、可撓性ストリップ2、2’を用いてフレーム6に接続されている。これに関して留意すべきことは、可撓性ストリップ2または2’によってのみ識別されているこれら第1弾性可撓性構造体が、図2c及び図2hに関して上で説明した図示したものに類似した態様で約90°の肘部分を形成すること、である。これは、特に、可撓性ストリップ2、2’と可撓性首体2’’’によって形成された可撓性ストリップとを用いて可能であり、機能性部材の一変位方向において機能性部材3、4の運動自由性を可能とするように、すなわち著しく増加させるように、第1弾性可撓性構造体それぞれのこれら部分は、硬質中間部分7によって分離され、互いに対して垂直に方向付けられている。
【0045】
このため、駆動指体3、4の形態にある硬質機能性部材は、巻ホイール5の歯と係合するように構成されており、硬質機能性部材双方は、交互に、錘1’が左から右に振動しそしてその逆で振動して2つの可撓性ストリップ2、2’が対応する運動を行うときに、駆動指体として機能する。このため、駆動指体3、4を用いて、振動それぞれが振動錘1’の十分な振幅を有し、2つの可撓性ストリップ2、2’のうちの一方の十分な運動がある状態で、モノリシック構成部品は、自動巻ホイール5を回転駆動し、それにより、自動巻ホイールは、振動錘1’の振動振幅に応じて、矢印の方向で1以上のステップだけ回転する。これに関連して留意すべきことは、自動巻きの効率を向上させるために第2硬質駆動部材4があることは選択的であり、モノリシック構成部品が、同様に、第1硬質駆動部材3のみが設けられた状態で使用されること、である。自動巻装置の全体的な動きは、当業者に公知であり、したがって、本明細書では詳細に説明しない。同様に、この用途において、モノリシック構成部品は、例えば従来技術のペラトンタイプの自動巻装置を構成する一連の少なくとも12の部品を置換することを可能とする。
【0046】
一般的に、本発明にかかるモノリシック構成部品は、自動巻装置であって、フレーム6、可撓性構造体と、この装置の被駆動部材5、この場合において出力可動素子と協働するように構成された駆動手段34を備える駆動部材3と、を備える装置を実現することを可能とする。駆動手段34は、出力可動素子の一方向駆動デバイスを構成する。可撓性構造体は、フレーム6と駆動部材との間に位置しており、それにより、図5の例における図面中の動作平面である動作平面において2つの自由度に沿って、駆動手段34をフレームに対して移動可能とする。可撓性構造体は、図2c及び図2hの例のように、硬質中間部分7を備え得る。
【0047】
少なくとも1つの錘1’は、可撓性構造体に一体化されている。錘は、図5に示す例におけるように、モノリシック構成部品に付加され得る、または、モノリシック構成部品の一部を形成し得る。錘1’は、動作平面の少なくとも一自由度に沿ってフレームに対して移動可能である。可撓性構造体の弾性素子は、錘を待機位置に向けて帰還させ、それにより、これら弾性素子が形成する組立体は、振動子を構成する。時計に供給される加速は、その運動が駆動手段34、ひいては駆動部材5を作動させる錘の変位を引き起こす。
【0048】
これら共通の特性を有する様々な構成が可能である。特に、錘は、回転移動可能であり得る、または、動作平面における複数自由度に沿って移動可能であり得る。
【0049】
モノリシック構成部品を使用した用途とは関係なく、モノリシック構成部品は、硬化可能な鋼鉄から、好ましくはDurnico鋼から作り出され得る。モノリシック構成部品は、ワイヤ切断によって、ダイスタンプによって、または、物理的性質を改変するステップとフェムト秒レーザを用いて透光性材料を機械加工するステップとからなり、その後エッチングステップが続くフェムトプリントによって、機械加工され得るが、全ての場合において、モノリシック構成部品は、単一平面に延在する。例えばLIGA(X線を用いたフォトリソグラフィ)、3D印刷及びシリコンに関連する製造処理など、このタイプのモノリシック構成部品を製造するための他の技術を想定し得る。さらに、このタイプのモノリシック構成部品の高さは、好ましくは、0.1mmから5mmの範囲にあり、モノリシック構成部品の第1弾性可撓性構造体の可撓性ストリップの幅は、好ましくは、5μmから1mmの範囲にあるが、これら値は、これら範囲から若干外れることもある。
【0050】
本発明にかかるモノリシック構成部品の原理を図示した上記説明、モノリシック構成部品の部品に関する選択肢、及び、例として上述したこのタイプのモノリシック構成部品の2つの用途を考慮して、明らかなことは、一方で、このモノリシック構成部品が具体的な時計用途の要件に応じて異なって構成された複数の実施形態によって実現され得ること、したがって、モノリシック構成部品が、多数の時計用途で使用され得ること、である。他方で、モノリシック構成部品が上述した原理に従って配設されている限り、特に、第1硬質駆動部材を硬質フレームに連結する上記第1弾性可撓性構造体が上記第1駆動部材の変位に少なくとも2つの自由度を提供するように構成されている態様である限り、このモノリシック構成部品は、複数の重要な利点を得ることを可能とする。実際には、モノリシック構成部品は、対応する時計における完全な装置または機能的副組立体を構成する複数の構成部材を置換することを可能とし、軸またはピニオンのように従来の時計装置を構成するこれら構成部材間の摩擦に及び遊びに関連する問題を同時に低減する。同時に、単一平面に配設される単一の物理的部品を設けるので、より容易な位置決めの制御を可能とし、装置の信頼性を保証すると共に、時計構成部品の厚さを最適化する。この結果として、運動平面において少なくとも2つの自由度を有する所定の軌道に沿う作動を用いて、エネルギーを伝達し、これら軌道は、モノリシック構成部品、特にその可撓性ストリップの配置に応じた様々な方向で、単純またはより複雑であり得る。また、このタイプのモノリシック構成部品は、時計の構造で公知の材料及び製造技術を用いて、したがって適語なコストで、作られ得る一方、同様に、高級な時計製造で使用されるように構成されるために魅力的な外観を有する。
【符号の説明】
【0051】
1,1’ アクチュエータ,駆動指体、2,2’可撓性ストリップ(第1弾性可撓性構造体)、2” 第2弾性可撓性構造体、2’’’ 可撓性首体,可撓性ストリップ(第1弾性可撓性構造体)、3 第1硬質駆動部材,駆動指体、4 第2機能性部材,駆動指体、5 被駆動部品、6 硬質フレーム、7 中間硬質部分(第1弾性可撓性構造体)
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図2h
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5
図6