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特許7105783組換え宿主におけるシトロネラール及びシトロネロールの生産
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】組換え宿主におけるシトロネラール及びシトロネロールの生産
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20220715BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220715BHJP
   C12P 7/04 20060101ALI20220715BHJP
   C12P 7/26 20060101ALI20220715BHJP
   C12P 7/42 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 15/61 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 15/90 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N1/19
C12P7/04
C12P7/26
C12P7/42
C12N15/53
C12N15/55
C12N15/61
C12N15/54
C12N15/90 Z
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019540704
(86)(22)【出願日】2017-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2017075995
(87)【国際公開番号】W WO2018069418
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-05
(31)【優先権主張番号】62/406,906
(32)【優先日】2016-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151068
【弁理士】
【氏名又は名称】塩崎 進
(74)【代理人】
【識別番号】100221361
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】タンゲ,トーマス ウスタゴー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルレ,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】デレグランジュ,ファニー
(72)【発明者】
【氏名】デ ブロック,ジュリアン デニス ヴィヴィアン
(72)【発明者】
【氏名】アラン,ロバート チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】バーニンガー,フィリップ フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】フォリー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ラバジオ,ダヴィデ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ラバニエレ,リュディヴィーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブリアンツァ,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,クルト エーメ フリス
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ヨルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ウェバー,ノラ
(72)【発明者】
【氏名】ケイプウェル,サマンサ ジェシカ
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/108236(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/008883(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0112671(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101186924(CN,A)
【文献】国際公開第2014/027118(WO,A1)
【文献】PARDO E. et al.,Microb Cell Fact,2015年,14:136
【文献】STEYER D. et al.,Food Microbiology,2013年,33,p.228-234
【文献】ZEBEC Z. et al.,Current Opinion in Chemical Biology,2016年06月14日,34,p.37-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12P 1/00-41/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シトロネラール及び/またはシトロネロールを生産可能な組換え宿主細胞であって、
(a)ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子またはネリル二リン酸シンターゼ(NPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(b)ゲラニオールシンターゼ(GES)ポリペプチドをコードする遺伝子またはネリルシンターゼ(NES)ポリペプチドをコードする遺伝子と、を含み、
前記組換え宿主細胞が、イリドイドシンターゼ(ISY)ポリペプチドをコードする遺伝子またはエノエートレダクターゼ(ENR)ポリペプチドをコードする遺伝子をさらに含み、前記イリドイドシンターゼ(ISY)ポリペプチドをコードする遺伝子または前記エノエートレダクターゼ(ENR)ポリペプチドをコードする遺伝子のうちの少なくとも1つが組換え遺伝子であり
記組換え宿主細胞が、細菌細胞または酵母細胞であり、
前記酵母が、
(a)ADH6、RFX1、GRE2、ARI1、GCY1、及びAYR1の欠失、または
(b)ADH6、RFX1、GRE2、及びARI1の欠失を含む、
前記組換え宿主細胞。
【請求項2】
シトロネラール、シトロネロール、またはシトロネル酸を生産可能な組換え宿主細胞であって、
(a)ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子またはネリル二リン酸シンターゼ(NPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(b)ゲラニオールシンターゼ(GES)ポリペプチドをコードする遺伝子またはネリルシンターゼ(NES)ポリペプチドをコードする遺伝子と、を含み、
前記組換え宿主細胞が、イリドイドシンターゼ(ISY)ポリペプチドをコードする遺伝子及びシトロネラール/シトロネロールデヒドロゲナーゼ(CiDH)ポリペプチドをコードする遺伝子をさらに含み、前記イリドイドシンターゼ(ISY)ポリペプチドをコードする遺伝子及び前記シトロネラール/シトロネロールデヒドロゲナーゼ(CiDH)ポリペプチドをコードする遺伝子のうちの少なくとも1つが組換え遺伝子であり、前記組換え宿主細胞が細菌細胞または酵母細胞であり、
前記酵母が、ADH6、RFX1、GRE2、ARI1、GCY1、及びAYR1のうちの1つ以上の欠失をさらに含む、
前記組換え宿主細胞。
【請求項3】
(a)前記GPPSポリペプチドが、配列番号17、59~62、87、または88のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(b)前記NPPSポリペプチドが、配列番号53、74、または75のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(c)前記GESポリペプチドが、配列番号18または63~66のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(d)前記NESポリペプチドが、配列番号56~58のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(e)前記ISYポリペプチドが、配列番号54または55のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(f)前記ENRポリペプチドが、配列番号7~9、21、22、33、34、37、44~48、54、55、または67のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、
請求項1に記載の組換え宿主細胞。
【請求項4】
(a)前記GPPSポリペプチドが、配列番号17、59~62、87、または88のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(b)前記NPPSポリペプチドが、配列番号53、74、または75のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(c)前記GESポリペプチドが、配列番号18または63~66のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(d)前記NESポリペプチドが、配列番号56~58のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(e)前記ISYポリペプチドが、配列番号54または55のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(f)前記CiDHポリペプチドが、配列番号49~52のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項2に記載の組換え宿主細胞。
【請求項5】
前記シトロネラールが、d-シトロネラール、l-シトロネラール、またはそれらの組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞。
【請求項6】
前記シトロネロールが、d-シトロネロール、l-シトロネロール、またはそれらの組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞。
【請求項7】
前記細菌細胞が、Escherichia細胞、Lactobacillus細胞、Lactococcus細胞、Corynebacterium細胞、Acetobacter細胞、Acinetobacter細胞、またはPseudomonas細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞。
【請求項8】
前記酵母が、
(a)ADH6、RFX1、GRE2、ARI1、GCY1、及びAYR1の欠失、または
(b)ADH6、RFX1、GRE2、及びARI1の欠失を含む、請求項2または4に記載の組換え宿主細胞。
【請求項9】
前記組換え宿主細胞が、異種NADHオキシダーゼポリペプチドをコードする遺伝子をさらに含む酵母細胞である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞。
【請求項10】
前記異種NADHオキシダーゼポリペプチドが、配列番号69に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項に記載の組換え宿主細胞。
【請求項11】
前記異種NADHオキシダーゼポリペプチドが、配列番号69に記載されるアミノ酸配列を有する、請求項10に記載の組換え宿主細胞。
【請求項12】
前記組換え宿主細胞が、カルボン酸レダクターゼ(CAR)ポリペプチドをコードする異種遺伝子をさらに含む酵母細胞である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞。
【請求項13】
前記CARポリペプチドが、配列番号70に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項12に記載の組換え宿主細胞。
【請求項14】
前記CARポリペプチドが、配列番号70に記載されるアミノ酸配列を有する、請求項13に記載の組換え宿主細胞。
【請求項15】
前記組換え酵母細胞が、ホスホパネイン(phosphopaneine)トランスフェラーゼ(PPTase)ポリペプチドをコードする異種遺伝子をさらに含む、請求項14のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞。
【請求項16】
前記PPTaseポリペプチドが、配列番号71に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、請求項15に記載の組換え宿主細胞。
【請求項17】
前記PPTaseポリペプチドが、配列番号71に記載されるアミノ酸配列を有する、請求項16に記載の組換え宿主細胞。
【請求項18】
前記酵母細胞がSaccharomyces cerevisiae細胞である、請求項17のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞。
【請求項19】
前記Saccharomyces cerevisiae細胞が、野生型よりも低いファルネシルピロリン酸シンターゼ活性をもたらすように転写的に下方調節または変異されているファルネシルピロリン酸シンターゼ(ERG20)遺伝子を含有する、請求項18に記載の組換え宿主細胞。
【請求項20】
シトロネラール、またはシトロネロールの生産方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の組換え宿主細胞を細胞培養液中、前記遺伝子が発現される条件下で増殖させることを含み、前記シトロネラール、またはシトロネロールが前記組換え宿主細胞によって生産される、前記方法。
【請求項21】
前記組換え宿主細胞が、前記GPPSポリペプチドをコードする遺伝子もしくは前記NPPSポリペプチドをコードする遺伝子、前記GESポリペプチドをコードする遺伝子もしくは前記NESポリペプチドをコードする遺伝子、GeDH(ゲラニオールデヒドロゲナーゼ)ポリペプチドをコードする遺伝子もしくはNeDH(ネロールデヒドロゲナーゼ)ポリペプチドをコードする遺伝子、前記ISYポリペプチドをコードする遺伝子、及び/または前記CiDHポリペプチドをコードする遺伝子コードする遺伝子を含む、1つ以上のプラスミドで形質転換され、前記遺伝子のうちの少なくとも1つが組換え遺伝子である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組換え宿主細胞が、前記GPPSポリペプチドをコードする遺伝子もしくは前記NPPSポリペプチドをコードする遺伝子、前記GESポリペプチドをコードする遺伝子もしくは前記NESポリペプチドをコードする遺伝子、GeDH(ゲラニオールデヒドロゲナーゼ)ポリペプチドをコードする遺伝子もしくはNeDH(ネロールデヒドロゲナーゼ)ポリペプチドをコードする遺伝子、前記ISYポリペプチドをコードする遺伝子、及び/または前記CiDHポリペプチドをコードする遺伝子をコードする遺伝子で形質転換され、前記遺伝子のうちの少なくとも1つが組換え遺伝子である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記組換え遺伝子のうちの少なくとも1つが前記宿主細胞ゲノム内に組み込まれる、請求項2022のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2016年10月11日に出願された米国仮出願第62/406,906号の優先権の利益を主張するものであり、同文献の開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
本開示は、組換え宿主におけるシトロネラール及びシトロネロールの生産に関する。特に、本開示は、組換え宿主におけるシトロネラール、シトロネロール及びシトロネル酸前駆体の合成に関する。
【0003】
関連技術
シトロネラールは、一般にシトロネラ油に関連するレモンの香りを提供するモノテルペノイドである。レモンの香りの香気を提供することに加えて、シトロネラールは、蚊を含むがこれらに限定されない昆虫を追い払うこと、及び抗真菌特性を有することが示されている。シトロネラールはまた、関連するキラル化合物の不斉合成用の出発材料としても有用である。
【0004】
シトロネラールは、主として植物の二次代謝によって形成される。シトロネラールは、Corymbia citriodora、Cymbopogon nardus、及びCymbopogon winterianusなどの植物の油から抽出することができる。シトロネラールは、最も一般には、水蒸気蒸留または溶剤抽出によって、そのR-及びS-鏡像異性体の非ラセミ混合物として単離される。
【0005】
シトロネラールは、シトロネロールへと還元的に生物変換され得る。シトロネロール合成は通常、ゲラニオール(トランス)またはネロール(シス)の水素化によって行われる。シトロネラールと同様に、シトロネロールは香料工業において一般に使用され、昆虫忌避剤として作用し、またいくつかの天然テルペノイドの合成における中間体として使用され得る。
【0006】
例えば香料工業及び製薬工業における、シトロネラール及びシトロネロール両方の堅調な生産から、現在の工業ニーズを満たすために土地、設備、及びバイオマス発電の点でかなりの農業資源が必要とされている。しかしながら、効率が高く、再生可能なこれらの化合物の代替的資源の特定は、困難なままである。その上、より高い純度のシトロネラール及びシトロネロール化合物が必要とされる一方で、これらを追加の処理工程なしに植物源から得ることは困難である。したがって、規模拡大できる量の高純度シトロネラール及びシトロネロールを得るための代替的な手法を開発する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が先行技術を上回るある特定の利点及び発展を提供するのは、上記の背景に照らしたものである。特に、本明細書に記載されるように、シトロネラール及びシトロネロールを作製するための細菌または酵母といった組換え微生物の使用が開示される。
【0008】
本明細書に開示される本発明は具体的な利点または機能性に限定されないが、本発明は、シトロネラールまたはシトロネル酸を生産可能な組換え宿主細胞であって、
(a)ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(b)ゲラニオールシンターゼ(GES)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(c)ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(GeDH)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(d)エノエートレダクターゼ(ENR)ポリペプチドをコードする遺伝子と、を含み、
該遺伝子のうちの少なくとも1つが組換え遺伝子である、該組換え宿主細胞を提供する。
【0009】
本発明はまた、シトロネラール、シトロネロール、またはシトロネル酸を生産可能な組換え宿主細胞であって、
(a)ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(b)ゲラニオールシンターゼ(GES)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(c)ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(GeDH)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(d)エノエートレダクターゼ(ENR)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(e)アルデヒドレダクターゼ(AR)ポリペプチドをコードする遺伝子と、を含み、
該遺伝子のうちの少なくとも1つが組換え遺伝子である、該組換え宿主細胞も提供する。
【0010】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、
(a)該ENRポリペプチドが、ゲラニアール及び/またはネラールからのシトロネラールの形成を触媒し、
(b)該ARポリペプチドが、ネラールからのネロール及び/またはシトロネラールからのシトロネロールの形成を触媒する。
【0011】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該GESポリペプチドは、ゲラニル二リン酸(GPP)からのゲラニオールの形成を触媒し、該GPPは、該GPPSポリペプチドがメバロン酸経路及び/またはメチルエリトリトール4-リン酸(MEP)経路からイソペンチルピロリン酸(IPP)及びジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)を変換することによって生産される。
【0012】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、メバロン酸経路は、内在性経路または組換え経路である。
【0013】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、
(a)該GPPSポリペプチドが、配列番号17、59~62、または87~88のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(b)該GESポリペプチドが、配列番号18または63~66のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(c)該GeDHポリペプチドが、配列番号1~6、19、20、または24~32のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも45%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(d)該ENRポリペプチドが、配列番号7~9、21、22、33、34、37、44~48、54、55、または67のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(e)該ARポリペプチドが、配列番号31~32、68、または83~86のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0014】
本発明はまた、シトロネラール、シトロネロール、またはシトロネル酸を生産可能な組換え宿主細胞であって、
(a)ネリル二リン酸シンターゼ(NPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(b)ネロールシンターゼ(NES)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(c)ネロールデヒドロゲナーゼ(NeDH)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(d)エノエートレダクターゼ(ENR)ポリペプチドをコードする遺伝子と、を含み、
該遺伝子のうちの少なくとも1つが組換え遺伝子である、該組換え宿主細胞も提供する。
【0015】
本発明はまた、シトロネラール、シトロネロール、またはシトロネル酸を生産可能な組換え宿主細胞であって、
(a)ネリル二リン酸シンターゼ(NPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(b)ネロールシンターゼ(NES)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(c)ネロールデヒドロゲナーゼ(NeDH)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(d)エノエートレダクターゼ(ENR)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(e)アルデヒドレダクターゼ(AR)ポリペプチドをコードする遺伝子と、を含み、
該遺伝子のうちの少なくとも1つが組換え遺伝子である、該組換え宿主細胞も提供する。
【0016】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、
(a)該ENRポリペプチドが、ゲラニアール及び/またはネラールからのシトロネラールの形成を触媒し、
(b)該ARポリペプチドが、ゲラニアールからのゲラニオール及び/またはシトロネラールからのシトロネロールの形成を触媒する。
【0017】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、
(a)該NPPSポリペプチドが、配列番号53または74~75のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも45%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(b)該NESポリペプチドが、配列番号56~58または77~79のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも45%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(c)該NeDHポリペプチドが、配列番号1~6、19、20、または24~32のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(d)該ENRポリペプチドが、配列番号7~9、21、22、33、34、37、44~48、54~55、または67のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(e)該ARポリペプチドが、配列番号31、32、または83~86のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(f)該ADHポリペプチドが、配列番号68に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも45%の配列同一性の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0018】
本発明はまた、シトロネラール及び/またはシトロネロールを生産可能な組換え宿主細胞であって、
(a)ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子またはネリル二リン酸シンターゼ(NPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(b)ゲラニオールシンターゼ(GES)ポリペプチドをコードする遺伝子またはネリルシンターゼ(NES)ポリペプチドをコードする遺伝子と、を含み、
該組換え宿主細胞が、イリドイドシンターゼ(ISY)ポリペプチドをコードする遺伝子またはエノエートレダクターゼ(ENR)ポリペプチドをコードする遺伝子をさらに含み、該遺伝子のうちの少なくとも1つが組換え遺伝子である、該組換え宿主細胞も提供する。
【0019】
本発明はまた、シトロネラール、シトロネロール、またはシトロネル酸を生産可能な組換え宿主細胞であって、
(a)ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子またはネリル二リン酸シンターゼ(NPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(b)ゲラニオールシンターゼ(GES)ポリペプチドをコードする遺伝子またはネリルシンターゼ(NES)ポリペプチドをコードする遺伝子と、を含み、
該組換え宿主細胞が、イリドイドシンターゼ(ISY)ポリペプチドをコードする遺伝子及びシトロネラール/シトロネロールデヒドロゲナーゼ(CiDH)ポリペプチドをコードする遺伝子をさらに含み、該遺伝子のうちの少なくとも1つが組換え遺伝子である、該組換え宿主細胞も提供する。
【0020】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、
(a)該GPPSポリペプチドが、配列番号17、59~62、87、または88のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(b)該NPPSポリペプチドが、配列番号53、74、または75のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも45%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(c)該GESポリペプチドが、配列番号18または63~66のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(d)該NESポリペプチドが、配列番号56~58のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも45%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(e)該ISYポリペプチドが、配列番号54または55のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(f)該ENRポリペプチドが、配列番号7~9、21、22、33、34、37、44~48、54、55、または67のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(g)該CiDHポリペプチドが、配列番号49~52のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0021】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該シトロネラールは、d-シトロネラール、l-シトロネラール、またはそれらの組み合わせである。
【0022】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該シトロネロールは、d-シトロネロール、l-シトロネロール、またはそれらの組み合わせである。
【0023】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該組換え宿主細胞は、植物細胞、哺乳類細胞、昆虫細胞、真菌細胞、藻類細胞、または細菌細胞を含む。
【0024】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該組換え宿主細胞は細菌細胞である。
【0025】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該細菌細胞は、Escherichia細胞、Lactobacillus細胞、Lactococcus細胞、Corynebacterium細胞、Acetobacter細胞、Acinetobacter細胞、またはPseudomonas細胞である。
【0026】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該組換え宿主細胞は、ADH6、RFX1、GRE2、ARI1、GCY1、及びAYR1のうちの1つ以上の欠失をさらに含む酵母細胞である。
【0027】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該酵母は、
(a)ADH6、RFX1、GRE2、ARI1、GCY1、及びAYR1の欠失、または
(b)ADH6、RFX1、GRE2、及びARI1の欠失を含む。
【0028】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該組換え宿主細胞は、異種NADHオキシダーゼポリペプチドをコードする遺伝子をさらに含む酵母細胞である。
【0029】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該異種NADHオキシダーゼポリペプチドは、配列番号69に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0030】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該異種NADHオキシダーゼポリペプチドは、配列番号69に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0031】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該組換え宿主細胞は、カルボン酸レダクターゼ(CAR)ポリペプチドをコードする遺伝子をさらに含む酵母細胞である。
【0032】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該CARポリペプチドは、配列番号70に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0033】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該CARポリペプチドは、配列番号70に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0034】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該組換え酵母細胞は、ホスホパネイン(phosphopaneine)トランスフェラーゼ(PPTase)ポリペプチドをコードする遺伝子をさらに含む。
【0035】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該PPTaseポリペプチドは、配列番号71に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0036】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該PPTaseポリペプチドは、配列番号71に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0037】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該酵母細胞は、Saccharomyces cerevisiae細胞である。
【0038】
本明細書に開示される組換え宿主細胞の一態様では、該Saccharomyces cerevisiae細胞は、野生型よりも低いファルネシルピロリン酸シンターゼ活性をもたらすように転写的に下方調節または変異されているファルネシルピロリン酸シンターゼ(ERG20)遺伝子を含有する。
【0039】
本発明はまた、シトロネラール、シトロネロール、またはシトロネル酸の生産方法であって、本明細書に開示される組換え宿主細胞を細胞培養液中、該遺伝子が発現される条件下で増殖させることを含み、該シトロネラール、シトロネロール、またはシトロネル酸が該組換え宿主細胞によって生産される、該方法も提供する。
【0040】
本明細書に開示される方法の一態様では、該組換え宿主細胞は、該GPPSポリペプチドをコードする遺伝子もしくは該NPPSポリペプチドをコードする遺伝子、該GESポリペプチドをコードする遺伝子もしくは該NESポリペプチドをコードする遺伝子、該GeDHポリペプチドをコードする遺伝子もしくは該NeDHポリペプチドをコードする遺伝子、該ISYポリペプチドをコードする遺伝子、該CiDHポリペプチドをコードする遺伝子、及び/または該ENRポリペプチドをコードする遺伝子を含む、1つ以上のプラスミドで形質転換され、該遺伝子のうちの少なくとも1つが組換え遺伝子である。
【0041】
本明細書に開示される方法の一態様では、該組換え宿主細胞は、該GPPSポリペプチドをコードする遺伝子もしくは該NPPSポリペプチドをコードする遺伝子、該GESポリペプチドをコードする遺伝子もしくは該NESポリペプチドをコードする遺伝子、該GeDHポリペプチドをコードする遺伝子もしくは該NeDHポリペプチドをコードする遺伝子、該ISYポリペプチドをコードする遺伝子、該CiDHポリペプチドをコードする遺伝子、及び/または該ENRポリペプチドをコードする遺伝子で形質転換され、該遺伝子のうちの少なくとも1つが組換え遺伝子である。
【0042】
本明細書に開示される方法の一態様では、該組換え遺伝子のうちの少なくとも1つは、該宿主細胞ゲノム内に組み込まれる。
【0043】
本発明はまた、シトロネラールまたはシトロネロールの生産方法であって、シトロネラールまたはシトロネロール前駆体を細胞培養液中、
(a)ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPPS)ポリペプチド、
(b)ゲラニオールシンターゼ(GES)ポリペプチド、
(c)ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(GeDH)ポリペプチド、
(d)ネリル二リン酸シンターゼ(NPPS)ポリペプチド、
(e)ネロールシンターゼ(NES)ポリペプチド、
(f)ネロールデヒドロゲナーゼ(NeDH)ポリペプチド、
(g)イリドイドシンターゼ(ISY)ポリペプチド、
(h)シトロネラール/シトロネロールデヒドロゲナーゼ(CiDH)ポリペプチド、
(i)エノエートレダクターゼ(ENR)ポリペプチド、
(j)アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)ポリペプチド、及び/または
(k)アルデヒドレダクターゼ(AR)ポリペプチド、のうちの1つ以上であって、
該ポリペプチドのうちの少なくとも1つが組換えポリペプチドである、該1つ以上を使用して全細胞生物変換することと、それによって該シトロネラールまたは該シトロネロールを生産させることと、を含む、該方法も提供する。
【0044】
本明細書に開示される方法の一態様では、
(a)該ENRポリペプチドがゲラニアールをシトロネラールに還元し、
(b)該ADH及びARポリペプチドがシトロネラールをシトロネロールに還元する。
【0045】
本明細書に開示される方法の一態様では、
(a)該GPPSポリペプチドが、配列番号17、59~62、87、または88のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(b)該GESポリペプチドが、配列番号18または63~66のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも40%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(c)該GeDHポリペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、19、20、または24~32のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも45%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(d)該NPPSポリペプチドが、配列番号53、74、または75のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも45%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(e)該NESポリペプチドが、配列番号56~58のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも45%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(f)該NeDHポリペプチドが、配列番号1~6、19、20、または24~32のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(g)該ISYポリペプチドが、配列番号54または55のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(h)該CiDHポリペプチドが、配列番号49~52のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(i)該ENRポリペプチドが、配列番号7~9、21、22、33、34、37、44~48、54、55、または67のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(j)該ADHポリペプチドが、配列番号68に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも45%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
(k)該ARポリペプチドが、配列番号31、32、または83~86のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0046】
本発明はまた、シトロネラールまたはシトロネロールの生産方法であって、
(a)アセチル-CoAをイソペンチルピロリン酸(IPP)及びジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)に変換可能な遺伝子を含む、メバロン酸経路を有する組換え宿主細胞であって、該組換え宿主細胞が細菌、真菌、藻類、または酵母細胞である、該組換え宿主細胞を用意することと、
(b)(i)ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPPS)活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子、
(ii)ゲラニオールシンターゼ(GES)ポリペプチドをコードする遺伝子、
(iii)ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(GeDH)ポリペプチドをコードする遺伝子、
(iv)エノエートレダクターゼ(ENR)ポリペプチドをコードする遺伝子、及び/または
(v)アルデヒドレダクターゼ(AR)ポリペプチドをコードする遺伝子を含む、シトロネラールプラスミドを用意することと、
(c)該組換え宿主細胞を該シトロネラールプラスミドで形質転換することと、
(d)該シトロネラールプラスミドで形質転換された該組換え宿主細胞を培養液中で培養することと、を含み、
該シトロネラールまたは該シトロネロールが該組換え宿主細胞によって生産される、該方法も提供する。
【0047】
本明細書に開示される方法の一態様では、該メバロン酸経路は、宿主細胞に対して内在性または外来性であり、1つ以上のオペロンまたは協調的遺伝子調節(coordinated gene regulation)エレメントに細分される。
【0048】
本明細書に開示される方法の一態様では、該1つ以上のオペロンまたは協調的遺伝子調節エレメントのうちの第1のオペロンは、
(a)プロモーターと、
(b)Escherichia coli MG1655アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(Ec_atoB)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(c)Lactobacillus caseiヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ(Lc_MvaS)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(d)Lactobacillus caseiヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ(Lc_MvaA)ポリペプチドをコードする遺伝子と、を含む。
【0049】
本明細書に開示される方法の一態様では、該1つ以上のオペロンまたは協調的遺伝子調節エレメントのうちの第2のオペロンは、
(a)プロモーターと、
(b)Saccharomyces cerevisiaeメバロン酸キナーゼ(Sc_erg12)ポリペプチドまたはMethanosarcina mazeiメバロン酸キナーゼ(Mm_MK)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(c)Saccharomyces cerevisiaeホスホメバロン酸キナーゼ(Sc_erg8)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(d)Saccharomyces cerevisiaeジホスホメバロン酸(Diphospomevalonate)デカルボキシラーゼ(Sc_erg19)ポリペプチドをコードする遺伝子と、
(e)Escherichia coliイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(Ec_idi)ポリペプチドまたはStreptomyces pneumoniaeイソペンチル二リン酸イソメラーゼ(Sp_idi)ポリペプチドをコードする遺伝子と、を含む。
【0050】
本明細書に開示される方法の一態様では、該シトロネラールプラスミドは、
(a)少なくとも1つのプロモーターと、
(b)ゲラニル二リン酸シンターゼポリペプチドをコードする遺伝子と、
(c)ゲラニオールシンターゼポリペプチドをコードする遺伝子と、を含み、
また、
(d)Kluyveromyces lactis_黄色酵素(Kl_KYE1)ポリペプチド、エンレダクターゼ(Ps_OYE2.6)ポリペプチド、Zymomonas mobilis ENR(Zm_OYE)ポリペプチド、S.cerevisiae ENR(Sc_OYE2)ポリペプチド、もしくはSc_OYE3ポリペプチドをコードする遺伝子である遺伝子によってコードされる、ENRポリペプチド、または
(e)Castellaniella defragransゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH)ポリペプチド、Rhodococcus菌種RD6.2ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Rs_GeDH)ポリペプチド、Sphingopyxis macrogoltabidaゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Sm_GeDH)ポリペプチド、Acinetobacter calcoaceticusゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Ac_GeDH)ポリペプチド、もしくはThauera terpenica 58Euゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Tt_GeDH)ポリペプチドをさらに含む。
【0051】
本明細書に開示される方法の一態様では、ゲラニル二リン酸シンターゼをコードする該遺伝子は、Abies grandisゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_GPPS2)またはPicea glaucaゲラニル二リン酸シンターゼ(Pg_GPPS)であり、ゲラニオールシンターゼをコードする該遺伝子は、Catharanthus roseusエラニオール(eraniol)シンターゼ(Cr_GES)、Ocimum basilicumゲラニオールシンターゼ(Ob_GES)、Phyla dulcisゲラニオールシンターゼ(Pd_GES)、またはValeriana officinalisゲラニオールシンターゼ(VO_GES)遺伝子である。
【0052】
本明細書に開示される方法の一態様では、該培養培地は、ネロール及び/またはゲラニオールをさらに含む。
【0053】
本明細書に開示される方法の一態様では、該宿主細胞は、酸化細菌に接触させられる。
【0054】
本明細書に開示される方法の一態様では、該酸化細菌は、Gluconobacter属由来である。
【0055】
本明細書に開示される方法の一態様では、該酸化細菌は、Gluconobacter cerinus、Gluconobacter frateurii、またはGluconobacter oxydansである。
【0056】
一態様では、本明細書に開示される方法は、該生産されたシトロネラール、該シトロネロール、もしくは該シトロネル酸単独またはそれらの組み合わせを単離することをさらに含む。
【0057】
本明細書に開示される方法の一態様では、単離工程は、
(a)該生産されたシトロネラール、該シトロネロール、もしくは該シトロネル酸単独または該それらの組み合わせを含む該細胞培養液を用意することと、
(b)該細胞培養液の液相を該細胞培養液の固相から分離させて、該生産されたシトロネラール、該シトロネロール、もしくは該シトロネル酸単独または該それらの組み合わせを含む上清を得ることと、
(c)1つ以上の充填済みイオン交換または逆相クロマトグラフィーカラム中に1つ以上の吸着性樹脂を用意することと、
(d)工程(b)の該上清を該1つ以上の充填済みイオン交換または逆相クロマトグラフィーカラム中の該1つ以上の吸着性樹脂に接触させて、該生産されたシトロネラール、該シトロネロール、もしくは該シトロネル酸単独または該それらの組み合わせの少なくとも一部分を得、それによって該生産されたシトロネラール、該シトロネロール、もしくは該シトロネル酸単独または該それらの組み合わせを単離することと、を含む。
【0058】
本明細書に開示される方法の一態様では、単離工程は、
(a)該生産されたシトロネラール、該シトロネロール、もしくは該シトロネル酸単独または該それらの組み合わせを含む該細胞培養液を用意することと、
(b)該細胞培養液の液相を該細胞培養液の固相から分離させて、該生産されたシトロネラール、該シトロネロール、もしくは該シトロネル酸単独または該それらの組み合わせを含む上清を得ることと、
(c)該生産されたシトロネラール、該シトロネロール、もしくは該シトロネル酸単独または該それらの組み合わせのうちの1つ以上を結晶化させるかまたは抽出し、それによって該生産されたシトロネラール、該シトロネロール、もしくは該シトロネル酸単独または該それらの組み合わせを単離することと、を含む。
【0059】
一態様では、本明細書に開示される方法は、該シトロネラール、該シトロネロール、該シトロネル酸、またはその組成物を回収することをさらに含む。
【0060】
本明細書に開示される方法の一態様では、該回収された組成物は、光学的に純粋なシトロネラールまたはシトロネロールの組成物で富化される。
【0061】
本明細書に開示される方法の一態様では、該組換え宿主細胞は、細菌細胞である。
【0062】
本明細書に開示される方法の一態様では、該細菌細胞は、Escherichia細胞、Lactobacillus細胞、Lactococcus細胞、Cornebacterium細胞、Acetobacter細胞、Acinetobacter細胞、またはPseudomonas細胞である。
【0063】
本明細書に開示される方法の一態様では、該組換え宿主細胞は、酵母細胞である。
【0064】
本明細書に開示される方法の一態様では、該酵母細胞は、Saccharomyces cerevisiaeである。
【0065】
本発明はまた、ゲラニアール、シトロネラール、シトロネロール、シトロネル酸、またはそれらの組み合わせの製造におけるGeDHポリペプチドの使用も提供する。
【0066】
本発明はまた、ネラール、シトロネラール、シトロネロール、もしくはシトロネル酸またはそれらの組み合わせの製造におけるNeDHポリペプチドの使用も提供する。
【0067】
本発明はまた、ゲラニアール、ネラール、シトロネラール、シトロネロール、もしくはシトロネル酸またはそれらの組み合わせの製造のためのGeDHポリペプチド及び/またはNeDHポリペプチドの使用も提供する。
【0068】
本発明はまた、シトロネラール、シトロネル酸またはそれらの組み合わせの製造におけるCiDHポリペプチドの使用も提供する。
【0069】
本発明はまた、ゲラニアール、シトロネラール、シトロネロール、もしくはシトロネル酸またはそれらの組み合わせの生体外または全細胞生物変換製造におけるGeDHポリペプチドの使用も提供する。
【0070】
本発明はまた、ネラール、シトロネラール、シトロネロール、もしくはシトロネル酸またはそれらの組み合わせの生体外または全細胞生物変換製造におけるNeDHポリペプチドの使用も提供する。
【0071】
本発明はまた、ゲラニアール、ネラール、シトロネラール、シトロネロール、もしくはシトロネル酸またはそれらの組み合わせの生体外または全細胞生物変換製造におけるGeDHポリペプチド及びNeDHポリペプチドの使用も提供する。
【0072】
本発明はまた、シトロネラール、シトロネル酸、またはそれらの組み合わせの生体外または全細胞生物変換製造におけるCiDHポリペプチドの使用も提供する。
【0073】
本明細書に開示される使用の一態様では、該GeDHポリペプチドは、配列番号1~6、19、20、または24~32のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも45%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0074】
本明細書に開示される使用の一態様では、該NeDHポリペプチドは、配列番号1~6、19、20、または24~32のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0075】
本明細書に開示される使用の一態様では、該CiDHポリペプチドは、配列番号49~52のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0076】
本発明はまた、シトロネロール、シトロネラール、シトロネル酸、またはそれらの組み合わせの製造におけるENRポリペプチドの使用も提供する。
【0077】
本発明はまた、シトロネロール、シトロネラール、シトロネル酸、またはそれらの組み合わせの生体外または全細胞生物変換製造におけるENRポリペプチドの使用も提供する。
【0078】
本明細書に開示される使用の一態様では、ENRポリペプチドは、配列番号7~9、21、22、33、34、37、44~48、54、55、または67のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0079】
本発明はまた、シトロネロール、シトロネラール、シトロネル酸またはそれらの組み合わせの製造におけるISYポリペプチドの使用も提供する。
【0080】
本発明はまた、シトロネロール、シトロネラール、シトロネル酸、またはそれらの組み合わせの生体外または全細胞生物変換製造におけるISYポリペプチドの使用も提供する。
【0081】
本明細書に開示される使用の一態様では、ISYポリペプチドは、配列番号54または55のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0082】
本発明はまた、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、シトロネル酸またはそれらの組み合わせの製造におけるARポリペプチドの使用も提供する。
【0083】
本発明はまた、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、シトロネル酸またはそれらの組み合わせの生体外または全細胞生物変換製造におけるARポリペプチドの使用も提供する。
【0084】
本明細書に開示される使用の一態様では、ARポリペプチドは、配列番号31、32、または83~86のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0085】
本発明のこれら及び他の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲と併せて、以下の詳細な説明からより完全に理解されよう。特許請求の範囲は、その中での列挙によって定義されるものであり、本明細書に記載される特徴及び利点の具体的な考察によって定義されるものではないことに留意されたい。
【0086】
本発明の実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて閲読するとき最もよく理解され得る。これらの図面において、同様の構造は同様の数字により示される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1a】シトロネラール生合成経路の概略図を示す。各反応において該当する場合、酵素が示される。
図1b】示される酵素及び産物を伴う代替的なシトロネラール/シトロネロール経路を示す。
図1c】示される酵素及び産物を伴うなおも別の代替的なシトロネラール/シトロネロール経路を示す。
図2】酵母におけるプラスミドベースのシトロネラール/シトロネロール経路生産を示す。Abies grandis_ゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_GPPS2)、Catharanthus roseus_ゲラニオールシンターゼ(Cr_GES)、Castellaniella defragrans_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH)、及びKluyveromyces lactis_黄色酵素(Kl_KYE1)を共発現させることによる、酵母において生体内でシトロネラール/シトロネロール経路を開始させる異種遺伝子の発現。
図3】シトロネラール/シトロネロール経路のための代替的な出発基質であり得る、酵母におけるプラスミドベースのネロール生産を示す。Abies grandis_ゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_GPPS2)、Glycine max_ネロールシンターゼ(Gm_NES)、またはSolanum lycopersicum_ネリル二リン酸シンターゼ(Sl_NDPS1)及びGlycine max_ネロールシンターゼ(Gm_NES)を共発現させることによる、酵母において生体内でシトロネラール/シトロネロール経路を開始させる異種遺伝子の発現。
図4】ゲラニオールからシトロネロールへの、次いでシトロネロールからシトロネラールへの変換を介した、酵母におけるプラスミドベースのシトロネラール/シトロネロール経路生産を示す。Abies grandis_ゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_GPPS2)、Catharanthus roseus_ゲラニオールシンターゼ(Cr_GES)、またはAg_GPPS2、Cr_GES、及びOlea europaea_イリドイドシンターゼ(Oe_ISY)、またはAg_GPPS2、Cr_GES、Oe_ISY、及びBradyrhizobium菌種DFCl-1_シトロネラール/シトロネロールデヒドロゲナーゼ(Bs_CiDH)を共発現させることによる、酵母において生体内でシトロネラール/シトロネロール経路を開始させる異種遺伝子の発現。
図5a】S.cerevisiaeへのシトロネラール/シトロネロール経路遺伝子の全染色体組込み、すなわち、S.cerevisiae中のAbies grandis_ゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_GPPS2)、Catharanthus roseus_ゲラニオールシンターゼ(Cr_GES)、Castellaniella defragrans_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH)、及びKluyveromyces lactis_黄色酵素(Kl_KYE1)を示す。
図5b】組み込まれた経路を有する酵母において生産されたシトロネラール/シトロネロールのキラルGCを示す。
図6a】酵母における内在性ENRまたは過剰発現S.cerevisiae_ENR(Sc_OYE2)を有するシトロネラール/シトロネロール経路生産を示す。
図6b】内在性ENR活性を有する酵母において生産されたシトロネラール/シトロネロールのキラルGCを示す。
図6c】過剰発現Sc_OYE2活性を有する酵母において生産されたシトロネラール/シトロネロールのキラルGCを示す。
図7】酵母におけるシトロネラール/シトロネロール経路で活性なGeDHを示す。酵母における生体内での、各ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(GeDH)である、Castellaniella defragrans_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH)、Thauera terpenica 58Eu_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Tt_GeDH)、Rhodococcus菌種RD6.2_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Rs_GeDH)、Sphingopyxis macrogoltabida_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Sm_GeDH)、及びAcinetobacter calcoaceticus_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Ac_GeDH)、ならびにPseudomonas putida_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Pp_GeDH)の、Abies grandis_ゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_GPPS2)、Catharanthus roseus_ゲラニオールシンターゼ(Cr_GES)及びKluyveromyces lactis_黄色酵素(Kl_KYE1)との発現。
図8a】対照条件下及びKl_KYE1またはZymomonas mobilis_ENR(Zm_OYE)のいずれかが過剰発現されたときの、酵母におけるプラスミドベースのシトロネラール/シトロネロール生産を示す。
図8b】過剰発現Kl_KYE1活性を有する酵母において生産されたシトロネラール/シトロネロールのキラルGCを示す。
図8c】過剰発現Zm_OYE活性を有する酵母において生産されたシトロネラール/シトロネロールのキラルGCを示す。
図9】シトラールのK_KYE1(上)またはZm_OYE(下)による生体外変換を示す。
図10】ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(GeDH)である、Castellaniella defragrans_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH)、Thauera terpenica 58Eu_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Tt_GeDH)、Rhodococcus菌種RD6.2_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Rs_GeDH)、Sphingopyxis macrogoltabida_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Sm_GeDH)、及びAcinetobacter calcoaceticus_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Ac_GeDH)を含有する酵母細胞溶解物におけるゲラニオール変換を示す。上記で列挙したGeDHの各々を含有する酵母細胞溶解物におけるシトロネラール、ゲラニオール及びシトロネロールシグナルを1分、15分及び90分時点で測定した。
図11】主にRs_GeDHがゲラニオールからゲラニアールへの変換を触媒することを示す。
図12】E.coliにおけるイソペンテニル二リン酸(IPP)及びジメチルアリピロリン酸(dimethylally pyrophosphate)(DMAPP)生産のためのメバロン酸プラスミド(pMevプラスミド)の設計の概略図を示す。
図13】E.coliにおけるシトロネラール/シトロネロール生産のためのシトロネラールプラスミド(pCitroプラスミド)の設計の概略図を示す。
図14a】Cd_GeDHまたはRs_GeDHを使用したE.coliにおけるpMEV及びpCitro(Kl-KYE1)プラスミド上でのシトロネラール/シトロネロール経路生産を示す。
図14b】Cd_GeDH及びKl_KYE1活性を有するE.coliにおいて生産されたシトロネラール/シトロネロールのキラルGCを示す。
図14c】Rs_GeDH及びKl_KYE1活性を有するE.coliにおいて生産されたシトロネラール/シトロネロールのキラルGCを示す。
図15a】Cd_GeDH及びZm_OYEを発現するE.coliにおけるpMEv及びpCitroプラスミド上でのシトロネラール/シトロネロール経路生産を示す。
図15b】E.coliにおいてZm_OYE及びCd_GeDHが過剰発現されている経路によって生産されたシトロネラール/シトロネロールのキラルGCを示す。
図16】シトロネラール/シトロネロール経路発現カセットが組み込まれた酵母における、アルデヒドレダクターゼ(AR)活性に関与する酵母の内在性遺伝子ADH6、RFX1、GRE2、ARI1、GCY1、及びAYR1の欠失が、酵母におけるシトロネラール蓄積の増加につながることを示す。
図17】シトロネラール/シトロネロール経路発現カセットが組み込まれた酵母における異種NADHオキシダーゼ遺伝子の発現が、酵母におけるシトロネラールの化学純度の増加につながることを示す。
図18】シトロネラール/シトロネロール経路発現カセットが組み込まれた酵母における、異種ホスホパンテテイントランスフェラーゼ(PPTase)と共にした異種カルボン酸レダクターゼ(CAR)遺伝子の発現が、酵母におけるシトロネラールの化学純度の増加につながることを示す。
図19】酵母において、ネロールが、Ne/GeDH及びエン-レダクターゼ活性を有する異種遺伝子によってシトロネラール及びシトロネロールに変換されて、d-及びl-シトロネラール、ならびにd-及びl-シトロネロールを生産し得ることを示す。
図20a】酵母において、ゲラニオールが、イリドイドシンターゼ活性を有する異種遺伝子によってシトロネラール及びシトロネロールに変換されて、d-及びl-シトロネラール、ならびにd-及びl-シトロネロールを生産し得ることを示す。
図20b】酵母において、ネロールが、イリドイドシンターゼを有する異種遺伝子によってシトロネラール及びシトロネロールに変換されて、d-及びl-シトロネラール、ならびにd-及びl-シトロネロールを生産し得ることを示す。
図21a】シトロネロールからシトロネラール及びシトロネル酸への生物変換による結果を示す。酸化細菌Gluconobacter oxydansは、144時間後にシトロネロールをシトロネラール及びシトロネル酸へと変換した。
図21b】シトロネロールからシトロネラールへの生物変換による結果を示す。酸化細菌Gluconobacter cerinusは、144時間後にシトロネロールをシトロネラールへと変換した。
図22】シトロネラールからシトロネル酸への生物変換による結果を示す。酸化細菌Gluconobacter cerinusは、144時間後に100%のシトロネラールをシトロネル酸へと変換した。
図23】シトロネロールからシトロネル酸への生物変換による結果を示す。酸化細菌Gluconobacter cerinusまたはGluconobacter frateuriiは、144時間後に100%のシトロネロールをシトロネル酸へと変換した。
【0088】
当業者であれば、図中の要素が簡略化及び明確性を考慮して例示されており、必ずしも一定の縮尺では描かれていないことを理解するであろう。例えば、図中の要素のうちのいくつかの寸法は、本発明の実施形態(複数可)の理解を改善する一助となるように、他の要素に対して誇張され得る。
【発明を実施するための形態】
【0089】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、参照によりあらゆる目的で本明細書に明示的に援用される。
【0090】
本発明を詳細に説明する前に、いくつかの用語を定義する。本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、そうでないとする明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。例えば、1つの「核酸」への言及は、1つ以上の核酸を意味する。
【0091】
本明細書で使用されるとき、「約」という用語は、所与の値の±10%を指す。
【0092】
「好ましくは」、「一般に」、及び「典型的に」のような用語は、本明細書において、特許請求される本発明の範囲を限定するようにも、またはある特定の特徴が特許請求される本発明の構造もしくは機能にとって必要不可欠、必須、もしくはさらに重要であることを黙示するようにも利用されるものではないことに留意されたい。むしろ、これらの用語は、本発明の特定の実施形態で利用できることもできないこともある、代替的なまたは追加の特徴を強調することを単に意図している。
【0093】
本発明を説明し、定義する目的で、「実質的に」という用語は、本明細書において、任意の定量的比較、値、測定値、または他の表現に起因し得る本来的な程度の不確実性を表すように利用されることに留意されたい。「実質的に」という用語はまた、本明細書において、論争中の発明の主題の基本的機能の変化をもたらすことなく、ある定量的表現が述べられた指示対象から異なり得る程度を表すようにも利用される。
【0094】
当業者に周知の方法を使用して、本発明による遺伝子発現構築物及び組換え細胞を構築することができる。これらの方法には、生体外組換えDNA技術、合成技術、生体内組換え技術、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術が含まれる。例えば、Green&Sambrook,2012,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Fourth Edition,Cold Spring Harbor Laboratory,New York、Ausubel et al.,1989,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,New York、及びPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis et al.,1990,Academic Press,San Diego,CA)に記載される技術を参照されたい。
【0095】
本明細書で使用されるとき、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、及び「核酸」という用語は、当業者には理解されるように、文脈に応じて1本鎖または2本鎖いずれかの実施形態における、DNA、RNA、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含む核酸を指すように交換可能に使用され得る。
【0096】
本明細書で使用されるとき、「微生物」、「微生物宿主」、「微生物宿主細胞」、「組換え宿主」、及び「組換え宿主細胞」という用語は、交換可能に使用され得る。本明細書で使用されるとき、「組換え宿主」という用語は、少なくとも1つのDNA配列によってゲノムが増強された宿主を指すことを意図する。かかるDNA配列には、天然には存在しない遺伝子、通常はRNAに転写またはタンパク質に翻訳(「発現」)されないDNA配列、及び宿主に導入することが所望される他の遺伝子もしくはDNA配列が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、本明細書に記載の組換え宿主のゲノムは、1つ以上の組換え遺伝子の安定的導入により増強されることが理解されよう。全般的に、導入されたDNAは、DNAのレシピエントである宿主に元々は常在していないが、例えば、ある遺伝子の産物の生産を増大させるためまたは遺伝子の発現パターンを変化させるために、所与の宿主からのDNAセグメントを単離し、その後そのDNAの1つ以上の追加のコピーを同じ宿主に導入することが本開示の範囲内である。いくつかの事例では、導入されたDNAは、例えば、相同組換えまたは部位特異的突然変異誘発によって、内在性遺伝子またはDNA配列を修飾またはさらには置き換える。好適な組換え宿主には、微生物が含まれる。
【0097】
本明細書で使用されるとき、「組換え遺伝子」または「組換えDNA配列」という用語は、宿主において野生型でない遺伝子またはDNA配列を指す。組換え遺伝子及び組換えDNA配列は、別の種からレシピエント宿主に導入され得るか、または組換え宿主を形成するための突然変異誘発及び/または組換え方法による遺伝子改変を通して宿主にすでに存在するDNA配列が増強、修飾または変異されたものとなるように、野生型遺伝子もしくはDNA配列から誘導され得る。組換え遺伝子または組換えDNA配列の例としては、宿主に導入された外来性遺伝子、遺伝子産物の変化した活性または機能性を呈するバリアントをもたらすように修飾または変異された内在性遺伝子、キメラ遺伝子(例えば、タンパク質のドメインスワッピングによって作り出される)、コドン最適化遺伝子、プロモーター、オペレーター、抑制因子またはターミネーターなどの様々な転写調節因子に関連付けられるまたはその制御下にある内在性または異種遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。宿主に導入される組換え遺伝子は、形質転換されつつある宿主に通常存在するDNA配列と同一であり得、組換え宿主が含む内在性遺伝子が野生型宿主細胞よりも高いコピー数で存在するように、DNAの1つ以上の追加のコピーを提供して、それによってそのDNAの遺伝子産物の過剰発現または修飾された発現を可能にするために導入されることが理解されよう。いくつかの実施形態では、組換え遺伝子は、宿主細胞(例えば、S.cerevisiae(配列番号1~9)またはE.coli(配列番号10~22)における発現のために合成及び/またはコドン最適化される。
【0098】
本明細書で使用されるとき、「改変された生合成経路」という用語は、本明細書に記載される、組換え宿主における少なくとも1つの組換え遺伝子または組換えDNA配列を含む生合成経路を指す。いくつかの態様では、生合成経路の1つ以上の工程は、修飾されていない(野生型)宿主においては天然に生じない。いくつかの実施形態では、遺伝子の異種バージョンが、その遺伝子の内在性バージョンを含む宿主に導入される。
【0099】
本明細書で使用されるとき、「内在性」遺伝子という用語は、特定の生物、組織、または細胞に源を発し、その内部で生産または合成される遺伝子を指す。いくつかの実施形態では、内在性遺伝子は酵母遺伝子である。いくつかの実施形態では、遺伝子は、S.cerevisiae株S288Cを含むがこれらに限定されないS.cerevisiaeに内在性である。
【0100】
いくつかの実施形態では、内在性酵母遺伝子は、組換え宿主において過剰発現される。本明細書で使用されるとき、「過剰発現」という用語は、ある生物における、野生型生物における遺伝子発現レベルよりも高いレベルでの遺伝子の発現を指すように使用される。例えば、Prelich,2012,Genetics 190:841-54を参照されたい。
【0101】
いくつかの実施形態では、内在性酵母遺伝子、例えばADHは、欠失されるか、または転写的に下方調節される。例えば、Giaever&Nislow,2014,Genetics 197(2):451-65を参照されたい。本明細書で使用されるとき、「欠失」、「欠失される」、「ノックアウト」、及び「ノックアウトされる」という用語は、S.cerevisiaeを含むがこれらに限定されないある生物においてもはや発現されないように操作された、内在性遺伝子を指すように交換可能に使用され得る。
【0102】
本明細書で使用されるとき、「異種」遺伝子という用語は、組換え宿主以外の種に由来する遺伝子を説明する。いくつかの実施形態では、組換え宿主はS.cerevisiaeであり、異種遺伝子は、S.cerevisiae以外の生物に由来する。例えば、遺伝子コード配列は、異種配列を発現する組換え宿主とは異なる原核微生物、真核微生物、植物、動物、昆虫、または真菌由来であり得る。いくつかの実施形態では、コード配列は、宿主に天然の配列である。
【0103】
「選択可能マーカー」は、宿主細胞の栄養要求性を補足する、抗生物質耐性を提供する、または色変化をもたらす任意の数の遺伝子のうちの1つであり得る。次いで、遺伝子置換ベクターの線状化DNA断片が、当業者に周知の方法を使用して細胞に導入される(下記参照)。線状断片のゲノムへの組込み及び遺伝子の破壊が、選択マーカーに基づいて決定され得、例えば、PCRまたはサザンブロット解析によって検証され得る。選択におけるその使用に続いて、選択可能マーカーは、例えば、Cre-LoxP系(例えば、Gossen et al.,2002,Ann.Rev.Genetics 36:153-173及びU.S.2006/0014264を参照されたい)によって、宿主細胞のゲノムから除去され得る。代替的に、遺伝子置換ベクターは、破壊対象の遺伝子のある部分を組み込むような方式で構築され得、ここにおいて、この部分は、いずれの内在性遺伝子プロモーター配列も欠けており何もコードしないか、または遺伝子のコード配列の不活性断片である。
【0104】
本明細書で使用されるとき、「バリアント」及び「変異体」という用語は、特定のタンパク質の野生型配列と比較して、1つ以上のアミノ酸が修飾されたタンパク質配列を説明するように使用される。
【0105】
本明細書で使用されるとき、「不活性断片」という用語は、遺伝子の完全長コード配列からもたらされるタンパク質の活性の、例えば、約10%未満(例えば、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または0%)を有するタンパク質をコードする遺伝子の断片である。遺伝子のかかる部分は、既知のプロモーター配列が何ら遺伝子配列に作動可能に連結されないが、停止コドン及び転写終結配列が遺伝子配列のその部分に作動可能に連結されるような方式で、ベクターに挿入される。このベクターはその後、遺伝子配列のその部分において線状化され、細胞の中へ形質転換させ得る。単一の相同組換えを用いて、この線状化ベクターは次いで、遺伝子の内在性対応物に組み込まれてその不活性化をもたらす。
【0106】
本明細書で使用されるとき、「メバロン酸経路」、「イソプレノイド経路」及び「HMG-CoAレダクターゼ経路」という用語は、交換可能に使用され得、イソペンチルピロリン酸(IPP)及び/またはジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)を合成する代謝経路を指す。IPP及び/またはDMAPPは典型的に、イソプレノイドの生産の際に細胞によって利用される。メバロン酸経路のための主要な基質は、アセチル補酵素A(アセチル-CoA)であり、これは、例えば解糖による、炭素源(限定されないがグルコース、アセテート、エタノールなど)の分解、またはβ酸化を通した脂肪酸の分解の際に、細胞によって生み出される。IPP及びDMAPPは、ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPPS)に接触させられると、一緒にゲラニル二リン酸(GPP)を産出する、5炭素中間体である。代替的に、IPP及びDMAPPをネリル二リン酸シンターゼ(NPPS)に接触させて、ネリル二リン酸(NPP)を産出することができる。
【0107】
本明細書で使用されるとき、「ゲラニル二リン酸シンターゼ」(GPPS)という用語は、IPP及びDMAPPからのゲラニル二リン酸(GPP)の生産を触媒可能である酵素、ポリペプチドまたはその断片を指す。錯誤回避のために、ファルネシルピロリン酸シンターゼ(FPPS)活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子もまた、天然にまたは突然変異の結果としてのいずれかで、GPPS活性を持つことができる。非限定的な例として、FPPSの遺伝子ERG20及びispAは、GPPS活性を有する酵素を生産するように変異され得る。錯誤回避のために、本明細書で使用される「ゲラニル二リン酸シンターゼ」(GPPS)という用語は、故に、GPPS活性を持つポリペプチドまたは酵素をコードする、かかる変異したあるいは組換えERG20及びispA遺伝子を包含する。
【0108】
本明細書で使用されるとき、「接触」という用語は、2つの対象物間の任意の物理的相互作用を指すように使用される。例えば、「接触」という用語は、酵素と基質との間の相互作用を指し得る。別の例では、「接触」という用語は、液体(例えば、上清)と吸着性樹脂との間の相互作用を指し得る。
【0109】
本明細書で使用されるとき、「イソペンテニルピロリン酸」、「IPP」、「イソペンテニル二リン酸」及び「IDP」という用語は、交換可能に使用され得る。IPPという用語は、メバロン酸経路の産物を指す。
【0110】
本明細書で使用されるとき、「ジメチルアリルピロリン酸」、「ジメチルアリル二リン酸」、「DMAPP」及び「DMADP」という用語は、交換可能に使用され得る。DMAPPという用語は、IPPの異性体を指す。DMAPPは、酵素イソペンテニルピロリン酸イソメラーゼによってIPPから異性化される。
【0111】
本明細書で使用されるとき、「アルデヒドレダクターゼ」、「AR」及び「アルドースレダクターゼ」という用語は、交換可能に使用され得る。アルデヒドレダクターゼは、アルデヒド及びカルボニルの還元を触媒するNAD(P)H依存性オキシドレダクターゼを指す。
【0112】
本明細書で使用されるとき、「シトロネラール/シトロネロール経路」という用語は、シトロネラール、シトロネロール、及び/またはシトロネル酸の発現のための生合成改変経路を指す。いくつかの態様では、シトロネラール/シトロネロール経路は、GPPまたはNPPからゲラニオールへの反応を触媒するゲラニオールシンターゼ(GES)によって開始させることができる。
【0113】
いくつかの態様では、ゲラニオールシンターゼが、GPPからゲラニオールへの変換を触媒し、いくつかの態様では、ゲラニオールシンターゼが、GPPからゲラニオールへの変換を触媒する。ゲラニオールは次いで、ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(GeDH)によって酸化されて、ゲラニアールを生産する。シトロネラール/シトロネロール経路の第3の工程は、エノエートレダクターゼ(ENR)を介したゲラニアールからシトロネラールへの還元である(図1aを参照されたい)。
【0114】
代替的に、シトロネラール/シトロネロール経路は、NPPまたはGPPからネロールへの変換を触媒するネロールシンターゼ(NES)によって開始させることができる。いくつかの態様では、ネロールシンターゼは、GPPからネロールへの変換を触媒し、いくつかの態様では、ネロールシンターゼは、GPPからネロールへの変換を触媒する。ネロールは次いで、ネラールデヒドロゲナーゼ(NeDH)によって酸化されて、ネラールを生産する。ネラールは次いで、エノエートレダクターゼ(ENR)活性によってl-シトロネラールに変換される(図1bを参照されたい)。
【0115】
本明細書で使用されるとき、「ゲラニオールデヒドロゲナーゼ」(GeDH)及び「ネロールデヒドロゲナーゼ」(NeDH)という用語は、ゲラニオールからゲラニアール、及びネロールからネラールをそれぞれ合成する能力を有する酵素、ポリペプチド及びその断片を指す。いくつかの実施形態では、同じポリペプチドが、一方または両方の活性を呈することができる。例えば、Rs_GeDHの遺伝子産物は、GeDH活性及びNeDH活性の両方を呈するポリペプチドである。
【0116】
本明細書で使用されるとき、「シトロネロール前駆体」、「シトロネロール前駆体」、「シトロネル酸前駆体」及び「シトロネラール/シトロネロール中間体」という用語は、IPP及びDMAPPなどのメバロン酸経路における中間体、ならびにGPP、ゲラニオール、ゲラニアール及び/またはシトロネラールなどのシトロネラール/シトロネロール経路における中間体を指す。
【0117】
一実施形態では、ネラールからゲラニアールへの異性化は、ケト-エノール互変異性化を介して起こり得る。本明細書で使用されるとき、「ケト-エノール互変異性化」という用語は、ケト型からエノール型への変換を指す。
【0118】
このプロセスの第4の工程は、宿主細胞におけるアルコールデヒドロゲナーゼ/アルデヒドレダクターゼ活性によってシトロネラールをシトロネロールに還元する。デヒドロゲナーゼは、Castellaniella defragransゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH)、Thauera terpenica 58Euゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Tt_GeDH)、Spingopyxis macrogoltabidaゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Sm_GeDH)、及びAcinetobacter calcoaceticusゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Ac_GeDH)、または列挙されていない他のゲラニオールデヒドロゲナーゼから選択され得る。アルデヒドレダクターゼ(AR)活性は、内在性または外来性アルデヒドレダクターゼ酵素活性の結果であり得る。加えて、ネラールをネロールに、ゲラニアールをゲラニオールに、またはシトロネラールをシトロネロールに変換するアルデヒドレダクターゼは、同じであることも異なることもあり得る(図1a及び1bを参照されたい)。
【0119】
代替的に、シトロネラール/シトロネロール経路は、それぞれNESまたはGES活性によって、NPPまたはGPPからネロールまたはゲラニオールへの変換を介してシトロネロールを生産し得る。この実施形態では、エノエートレダクターゼ(ENR)またはイリドイドシンターゼ(ISY)活性が、ネロールまたはゲラニオールをそれぞれl-またはd-シトロネロールに変換する。d-またはl-シトロネロールは次いで、シトロネラール/シトロネロールデヒドロゲナーゼ(CiDH)によって酸化されて、それぞれd-またはl-シトロネラールを産出する(図1cを参照されたい)。
【0120】
本明細書で使用されるとき、「シンターゼ」という用語は、典型的に2つ以上の分子の連結を伴う合成プロセスを触媒する酵素を指す(例えば、アセチル-CoAがアセトアセチル-CoAと縮合して3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAを形成する反応は、HMG-CoAシンターゼによって触媒される。
【0121】
本明細書で使用されるとき、「キナーゼ」という用語は、高エネルギーのリン酸供与分子から、メバロン酸キナーゼ(MK)及びホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)などの特定の基質へのリン酸基の移動を触媒する酵素を指す。
【0122】
本明細書で使用されるとき、「鏡像異性体」、「鏡像異性体」、「光学異性体」、「立体異性体」または「光学異性体」という用語は、互いの鏡像であるキラル分子(単数または複数)を指す。これらの分子は互いに重ね合わせることができず、当業者には接頭語の使用により区別される。次のような等価の3つの主要な命名系が存在する:純粋な異性体が平面偏光を時計回りまたは反時計回りに回転させる能力に基づく、+/-光学活性系(+及び-);ラテン語への直接翻訳に基づく(dexterが右、laevusが左を表す)、d/l系、別名、右旋性系及び左旋性系。故に、「l」は「-」と等価であり、「d」は「+」と等価である。これら2つの系は、本明細書で交換可能に使用される。錯誤回避のために、ラテン語に基づく関連するR/S系(rectusが適切(proper)、sinisterが一直線(straight)を表す)は、分子において1つよりも多くの立体中心が存在し得る場合における具体的な立体中心の絶対配置を特徴付けるために使用されるが、それはまた、分子が単一の立体中心を含む場合、分子全体を特徴付けるためにも使用され得る。本明細書で使用されるとき、「d-鏡像異性体」という用語は、極性の高い方の基がフィッシャー投影式の右側に位置付けられる、キラル炭素を有する分子を指す(D-鏡像異性体(enatiomers)は平面偏光を時計回り(+)に回転させる)。本明細書で使用されるとき、「l-鏡像異性体」という用語は、極性の高い方の基がフィッシャー投影式の左側に位置付けられる、キラル炭素を有する分子を指す(L-鏡像異性体(enatiomers)は平面偏光を反時計回り(-)に回転させる)。
【0123】
本明細書で使用されるとき、「光学純度」及び「鏡像異性体過剰率」という用語は、交換可能に使用され得る。光学純度は、キラル物質に使用される純度の尺度を指す。例えば、光学純度が100%である場合、一方の鏡像異性体(d-またはl-のいずれか)のみが生産されたことになる。加えて、経路が90%のd-シトロネラール及び10%のl-シトロネラールを生産する場合、d-シトロネラールの光学純度は、90%-10%=鏡像異性体過剰率(ee)80%である。
【0124】
本明細書で使用されるとき、「イソメラーゼ」という用語は、分子を一方の異性体から別の異性体へと変換する酵素を指す。イソメラーゼは、結合が切断及び形成される分子内転位を促進し得るか、またはそれらは、立体構造変化を触媒し得、これにはイソペンテニル二リン酸イソメラーゼなどがある。
【0125】
本明細書で使用されるとき、「レダクターゼ」という用語は、還元剤として作用する酵素を指す。レダクターゼには、HMG-CoAレダクターゼ及びエノエートレダクターゼ(ENR)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用されるとき、「エノエートレダクターゼ」及び「エン(ene)レダクターゼ」という用語は、交換可能に使用され、酵母の旧黄色酵素(OYE)クラスのフラボタンパク質も含む。錯誤回避のために、イリドイドシンターゼ(限定されないが、Oe_ISY及びCr_ISYなど)は、エノエートレダクターゼ活性を持つことができ、故に、かかる酵素は、本明細書で使用される「エノエートレダクターゼ」という用語に包含される。
【0126】
本明細書で使用されるとき、「誘導体」という用語は、何らかの化学的または物理的プロセスによって同様の化合物から誘導された分子または化合物を指す。
【0127】
本明細書で使用されるとき、「ネロール」という用語は、甘く爽やかなバラの臭気を有するモノテルペンを指す。モノテルペンは、元々はネロリ油から単離されるが、レモングラス及びホップの精油にも存在する。ネロールは、ゲラニオールのシス-トランス異性体である。
【0128】
本明細書で使用されるとき、「シトロネロール」または「ジヒドロゲラニオール」という用語は、ゲラニオール(トランス)の水素化によって生産され得る、天然の非環式モノテルペノイドを指す。
【0129】
本明細書で使用されるとき、「ネラール」及び「ゲラニアール」という用語は、シトラールの構成成分である液体アルデヒドを指す。シトラールは、レモンマートル、Litsea citrata、Litsea cubeba、レモングラス、レモンティーツリーなどの植物からの天然由来の精油である。シトラール、別名3,7-ジメチル-2,6-ジエナールまたはレモナールは、それぞれの異性体テルペノイドのブレンドであり、このうち、E-異性体(シトラールA)が強力な柑橘類レモン臭を提供するゲラニアールであり、Z-異性体(シトラールB)がより甘いがやや弱いレモン臭を提供するネラールである。シトラールは、抗菌剤、香気剤、香料成分、香味剤として、レモンの増強のため、及びビタミンAの合成において商業的に使用される。
【0130】
本明細書で使用されるとき、「ゲラニオール」という用語は、バラ油、ゼラニウム(germanioum)油、パルマローザ油、レモン油及びシトロネラ油に天然に存在する、バラ様の香りを有するモノテルペノイド(monoterpoenoid)アルコールを指す。ゲラニオールは、芳香剤において商業的に使用される香気成分であり、典型的にモモ、ラズベリー、グレープフルーツ、赤リンゴ、プラム、ライム、オレンジ、レモン、スイカ、パイナップル、及びブルーベリーなどの風味を有する。
【0131】
本明細書で使用されるとき、「シトロネラール」、「ロジナール」または「3,7-ジメチルオクタ-6-エン-1-アール」という用語は、モノテルペノイドを指す。モノテルペノイドは、シトロネラ油の主成分であり、その特有のレモンの香りを提供する。シトロネラールは、lまたはd鏡像異性体として存在し得る。
【0132】
本明細書で使用されるとき、「デヒドロゲナーゼ」という用語は、1つ以上の水素分子を基質から除去して電子受容体に与える還元反応によって基質を酸化する酵素を指し、これにはゲラニオールデヒドロゲナーゼまたはアルコールデヒドロゲナーゼなどがある。
【0133】
本明細書で使用されるとき、「メバロン酸プラスミド」及び「pMev」という用語は、交換可能に使用され得る。メバロン酸プラスミドという用語は、E.coliの中へ形質転換させるプラスミドを指し、これによりアセチル-CoA及び/またはマロニル-CoAからのIPP及びDMAPPの生産がもたらされ得る。メバロン酸プラスミドに含まれる遺伝子は、内在性または外来性であり得る。最初の3つの遺伝子:Escherichia coli MG1655アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ(Ec_atoB)、Staphylococcus aureus HMG-CoAシンターゼ(Sa_mvaS)、Staphylococcus aureus HMG-CoAレダクターゼ(Sa_mvaA)は、1つのプロモーターの制御下にあり、最後の4つの遺伝子:Saccharomyces cerevisiae メバロン酸キナーゼ(Sc_erg12)、Saccharomyces cerevisiaeホスホメバロン酸キナーゼ(Sc_erg8)、Saccharomyces cerevisiaeジホスホメバロン酸(Diphospomevalonate)デカルボキシラーゼ(Sc_erg19)、及びEscherichia coliイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(Ec_idi)は、もう1つのプロモーターの制御下にある。各オペロンは、転写ターミネーターによって終結する。これら7つの遺伝子は、p15ベースの複製プラスミド骨格及びカナマイシン選択マーカー上に位置付けられる。Ec_IDIを除く全ての遺伝子が異種であり、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって、Escherichia coliコドン最適化バリアントとして合成されたものである。Ec_atoBは、E.coli野生型宿主の内在性遺伝子をE.coliのためにコドン最適化することによって生産された組換え遺伝子であった(野生型遺伝子は、それがE.coliにおける発現に好ましいコドンを広く使用していなかったため修飾された)。
【0134】
本明細書で使用されるとき、「シトロネラールプラスミド」、「pCitroプラスミド」及び「pCitro」という用語は、交換可能に使用され得る。シトロネラールプラスミドという用語は、宿主細胞の中への形質転換に続いて、IPP及びDMAPPからのシトロネラールの生産をもたらし得るプラスミドを指す。シトロネラールプラスミドにおける遺伝子は、内在性または外来性であり得る。本明細書に開示される非限定的な一例では、異種遺伝子Ag_GPPS2、Cr_GES、Kl_KYE1(代替的にはPs_OYE2.6)及びCd_GeDH(代替的にはRs_GeDH)によってコードされる4つの酵素:ゲラニル二リン酸シンターゼ、ゲラニオールシンターゼ、エンレダクターゼ及びゲラニオールデヒドロゲナーゼを2つのオペロン上に細分した。最初の3つの遺伝子は、あるプロモーターの制御下にあり、ある転写ターミネーターによって終結する。最後の遺伝子は、別のプロモーター及びターミネーターの制御下にある。これら4つの遺伝子は、pBR322ベースの複製プラスミド骨格及びアンピシリン選択マーカー上に位置付けられるが、任意の好適なプラスミド(好ましくは高コピー数プラスミド)及び選択マーカーを使用することができる。全ての遺伝子は、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって合成されたものである。この事例における宿主細胞の種はEscherichia coliであるように選定したため、この例における遺伝子は、コドン最適化バリアントであった(Saccharomyces cerevisiaeのためにコドン最適化したRs_GeDHを除く)。
【0135】
本明細書で使用されるとき、「オペロン(単数)」及び「オペロン(複数)」ならびに「協調的遺伝子調節エレメント」という用語は、機能的に等価であり、交換可能に使用され、単一のプロモーターの制御下にある1つよりも多くの遺伝子を含有するDNAの機能単位を含む遺伝子調節系を指す。協調的遺伝子調節の手段として高度に普及しているものの、オペロンは遍在していない。例えば、酵母において(Saccharomyces cerevisiaeなど)協調的遺伝子調節は、共通のプロモーター要素を使用してそれぞれ反対のDNA鎖遺伝子を連結することによって、または1つよりも多くの機能的ドメインを単一のペプチドへと鎖状につないで、キメラタンパク質を提供することによって、頻繁に達成される。単一のプロモーターを使用して1つよりも多くの機能的活性を制御する上記の系の全てが、様々な種の野生型宿主細胞において観察され、組換えDNA技術を使用した協調的発現下での多酵素経路の改変について着想を与えてきた。
【0136】
本明細書で使用されるとき、「プラスミド(単数)」または「プラスミド(複数)」という用語は、細胞の染色体DNAとは明確に異なる、小さな環状の2本鎖DNA分子を指す。プラスミドは広範な長さを有し、いくつかの遺伝的利点を提示する。プラスミドは、「ベクター」の1つの形態であり、外部からの(外来性)DNAを宿主細胞内に導入し、維持するのに特に有用である。特定の用途のためのプラスミドの選定は典型的に、1つの宿主細胞あたり選定したコピー数のプラスミドで1つ以上の宿主細胞種の中に維持される能力によって決定付けられる。
【0137】
本明細書で使用されるとき、「アセチルトランスフェラーゼ」及び「トランスアセチラーゼ」という用語は、交換可能に使用され得る。「アセチルトランスフェラーゼ」(アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼなど)は、アセチル基をアセチル-CoAからレシピエント化合物に移動させる、ある種のトランスフェラーゼを指し、例えば、リジンアミノ酸などがある。
【0138】
かかる酵素の具体的な実施形態についての代表的なUniProt番号には、以下が含まれる:H1ZV38(配列番号1)、AOAOE4B3N6(配列番号2)、A0A0P0DQG4(配列番号3)、Q59096(配列番号4)、C9E0G2(配列番号5)、D5MPF3(配列番号6)、P40952(配列番号7)、A3LT82(配列番号8)、Q9FEW9(配列番号67)、Q03558(配列番号33)、G1FCG0(配列番号34)、Q88NF7(配列番号37)、Q5NLA1(配列番号9)、Q6I7B7(配列番号44)、G6XL43(配列番号45)、A0A0D6MPY3(配列番号46)、F8EUA7(配列番号47)、B7L5K3(配列番号48、Q1WF68(配列番号49)、Q1WF63(配列番号50)、J1IP19(配列番号51)、U1H7S9(配列番号52)、C1K5M2(配列番号53)、A0A0U3J294(配列番号54)、K7WDL7(配列番号55)、R4HEK6(配列番号56)、T2DP90(配列番号57)、J7JYU1(配列番号58)、P76461(配列番号10)、Q9FD87(配列番号11)、Q9FD86(配列番号12)、P07277(配列番号13)、P24521(配列番号14)、P32377(配列番号15)、Q46822(配列番号16)、P40952(配列番号7)、A3LT82(配列番号22)、A0A0M2H8A0(配列番号30)、P27250(配列番号31)、P75691(配列番号32)、B2NI94(配列番号24)、D2WKD9(配列番号25)、Q2KNL5(配列番号26)、A0A0E4B3N6(配列番号27)、C9E0G2(配列番号28)、A0A0X8R1M5(配列番号29)、J9PZR5(配列番号18)、Q6USK1(配列番号63)、E9JGT2(配列番号64)、C0KWV4(配列番号65)、V9ZAD7(配列番号66)、Q04894(配列番号68)。
【0139】
一実施形態では、本発明は、シトロネラール、シトロネロール、シトロネル酸、またはシトロネラール前駆体のうちの1つ以上の生体内及び生体外生産を企図する。さらなる実施形態では、本発明は、シトロネラール、シトロネロール、シトロネル酸、またはシトロネラール前駆体のうちの1つ以上の生産のための、生体内及び生体外工程の組み合わせを企図する。特定の一実施形態では、本発明は、シトロネラール、シトロネロール、シトロネル酸、またはシトロネラール前駆体のうちの1つ以上を生産可能な、改変された生合成経路を含有する組換え宿主を提供し、該改変された生合成経路は、1つ以上の発現された機能的異種酵素を含む。
【0140】
例えば、いくつかの態様では、本発明は、生体内でシトロネロール前駆体を生産可能な組換え微生物(酵母または細菌など)細胞を提供する。特に、本明細書で提供される組換え酵母または細菌細胞は、ゲラニオールをゲラニアールに、及びシトロネラールをシトロネロールに変換可能な1つ以上のデヒドロゲナーゼ及び/または他のタンパク質を発現することができる。デヒドロゲナーゼの源には、これらの酵素を天然に発現するRhizobium、Streptomyces、Pseudomonas、Escherichia及びBacillusのいくつかの種を含む細菌が含まれるが、これらに限定されない。他の特定の実施形態では、本明細書で使用されるデヒドロゲナーゼは、酵母、真菌、植物、及び/または動物に由来し得る。
【0141】
別の実施形態では、本発明は、ゲラニアールをシトロネラールに変換可能な1つ以上のレダクターゼ及び/または他のタンパク質を発現することができる、組換え微生物(酵母または細菌など)細胞を提供する。
【0142】
別の実施形態では、本発明は、ネラールをシトロネラールに変換可能な1つ以上のレダクターゼ及び/または他のタンパク質を発現することができる、組換え微生物(酵母または細菌など)細胞を提供する。
【0143】
別の実施形態では、本発明は、IPP及びDMAPPをGPPに、またはGPPをゲラニオールに変換可能な1つ以上のシンターゼ及び/または他のタンパク質を発現することができる、組換え微生物(酵母または細菌など)細胞を提供する。
【0144】
別の実施形態では、本発明は、IPP及びDMAPPをNPPに、またはNPPをネロールに変換可能な1つ以上のシンターゼ及び/または他のタンパク質を発現することができる、組換え微生物(酵母または細菌など)細胞を提供する。
【0145】
別の実施形態では、シトロネロール前駆体を生産可能な組換え微生物(酵母または細菌など)細胞は、天然ファルネシルピロリン酸シンターゼプロモーターをより弱いプロモーターで置き換えて、天然ファルネシルピロリン酸シンターゼの転写の下方調節をもたらすことを介してIPP及びDMAPPレベルを増加させることによって、シトロネロール前駆体生産を増加させるようにさらに修飾され得る。非限定的な例として、酵母ERG20遺伝子は、GPP及びIPPからのファルネシル二リン酸の形成を触媒するように作用する酵母ファルネシルピロリン酸シンターゼをコードするため、ERG20プロモーターをKEX2プロモーターで置き換えて、ERG20の転写の下方調節をもたらすことによって、酵母におけるIPP及びDMAPPを増加させることが可能である。
【0146】
別の実施形態では、亢進したIPP及びDMAPPレベルを有する組換え微生物(酵母または細菌など)細胞は、シトロネラール及び/またはシトロネロールを産出することが必要な遺伝子に対する経路発現カセットの導入及び/または組込みによく適している。例えば、Ag_GPPS2は、TEF1プロモーターの制御下にあり得、Cr_GESは、PGK1プロモーターの制御下にあり得、Rs_GeDHは、PGK1プロモーターの制御下にあり得、Kl_KYE1は、TPI1プロモーターの制御下にあり得る。いくつかの態様では、発現カセットは、宿主ゲノムの領域に相同の隣接領域を含有し得、このため、相同組換えによる宿主細胞ゲノム(例えば、Saccharomyces cerevisiaeまたはEscherichia coli)への標的化された組み込みが可能となる(例えば、WO2014/027118を参照されたく、同文献は参照によりその全体が援用される)。
【0147】
別の実施形態では、IPP及びDMAPPレベルの亢進は、E.coliに対して最適化された1つ以上のメバロン酸経路遺伝子を有する、メバロン酸経路に必要とされる遺伝子をまとめて含む1つ以上のオペロンを使用して、E.coli宿主細胞において達成することができる。ある特定の実施形態では、メバロン酸経路を含む7つの遺伝子は、1つ以上のプラスミド上に存在し得る及び/または宿主のゲノムDNAに組み込まれ得る。例えば、一実施形態では、メバロン酸経路は、E.coliに導入され、維持され得、次のような単一のプラスミド上の2つのオペロンに細分される:Ec_atoB、Sa_mvaS、及びSa_mvaAが1つのプロモーターによって駆動され得、Sc_erg12、Sc_erg8、Sc_erg19及びEc_idiがもう1つのプロモーターによって駆動され得る。この事例では、Ec_atoBを除く全てのメバロン酸経路遺伝子が、E.coliに対して最適化された異種遺伝子である。特定の宿主種における異種発現のための遺伝子の最適化には典型的に、好ましいコドン使用頻度パターンの理解を利用する。
【0148】
別の実施形態では、E.coliにおけるシトロネラール、シトロネロール及び/またはシトロネル酸の組換えタンパク質発現は、E.coli最適化遺伝子を含むシトロネラールプラスミドを介して生じ得る。例えば、Ag_GPPS2、Cr_GES、Kl-KYE1及びCd_GeDHの転写は、1つ以上のプロモーターによって駆動され得る。いくつかの実施形態では、プロモーターは構成的プロモーターである。構成的プロモーターは、その制御下にあるコード配列または遺伝子の継続的転写を可能にする、転写因子によって調節されないプロモーターを指す。構成的プロモーターの例としては、それらのオペレーターPGapA、PGadEを伴わないPT7、PTrc、PTac及びPLacが挙げられるが、これらに限定されない)。他の実施形態では、プロモーターは、調節下にある遺伝子の化学的または物理的転写調節を可能にする誘導性プロモーターである。正に調節される誘導性プロモーターは、生物要因または非生物要因の存在下でその制御下にあるコード配列または遺伝子の転写亢進を可能にするプロモーターを指す。さらなる実施形態では、より高い転写率への遺伝子の誘導は、転写抑制因子分子を不活性化する因子の付加によって誘導され得る。なおもさらなる実施形態では、活性化因子及び抑制因子が、多調節(multi-regulated)誘導性プロモーターにおいて機能し得る。誘導性プロモーターの例としては、alcAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
別の実施形態では、E.coliにおけるシトロネラール、シトロネロール及び/またはシトロネル酸の組換えタンパク質発現は、1つ以上のE.coli最適化遺伝子を含むシトロネラールプラスミドを介して生じ得る。Ag_tGPPs、Cr_GES、Ps_OYE2.6及びRs_GeDHの転写は、trc-プロモーターなどの1つ以上のプロモーターによって駆動され得る。一例では、Ag_tGPPs、Cr_GES及びPs_OYE2.6遺伝子は、E.coliに対して最適化される。
【0150】
例えば、本発明は、生体内でシトロネラール、シトロネロールまたはシトロネル酸のうちの1つ以上を生産可能な組換え微生物(酵母または細菌など)細胞を提供する。特に、本明細書で提供される組換え酵母または細菌細胞は、ゲラニオールをシトロネラール、シトロネロール及び/またはシトロネル酸に変換可能な、1つ以上のデヒドロゲナーゼ、レダクターゼ及び/または他のタンパク質を発現することができる。
【0151】
別の実施形態では、本明細書に開示される組換え微生物(酵母または細菌など)細胞は、ゲラニオールからゲラニアール、及び/またはシトロネラールからシトロネロールの形成を触媒可能な、1つ以上のゲラニオールデヒドロゲナーゼを発現することができる。
【0152】
さらなる実施形態では、本明細書に開示される組換え微生物(酵母または細菌など)細胞は、ゲラニアールをシトロネラールに還元可能な、1つ以上のエンレダクターゼを発現することができる。
【0153】
本明細書で使用されるとき、「検出可能量」、「検出可能濃度」、「測定可能量」、及び「測定可能濃度」という用語は、測定対象の具体的な産物(例えば、ゲラニオール、ゲラニアール、シトロネラール、シトロネロール、シトロネル酸、あるいはシトロネラール/シトロネロール中間体及び/またはシトロネラール/シトロネロール前駆体)のレベルを指す。産物は、AUC、μM/OD600、mg/L、μM、またはmMで測定され得る。ゲラニオール、ゲラニアール、シトロネラール、シトロネロール、シトロネル酸、シトロネラール/シトロネロール中間体及び/またはシトロネラール/シトロネロール前駆体生産(すなわち、総計、上清、有機相、及び/または細胞内ゲラニオール、ゲラニアール、及び/またはシトロネラールレベル)は、当業者に一般に利用可能な技術、例えば、限定されないが、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、紫外可視分光法/分光測光法(UV-Vis)、質量分析法(MS)、及びNMRによって、検出及び/または分析され得る。
【0154】
本明細書で使用されるとき、「検出不能濃度」という用語は、TLC、HPLC、UV-Vis、MS、またはNMRなどの技術によって測定及び/または分析するには低すぎる化合物のレベルを指す。いくつかの実施形態では、「検出不能濃度」(<1ppm)の化合物は不在である。
【0155】
本明細書で使用されるとき、「または」及び「及び/または」という用語は、組み合わせたまたは互いに排他的な複数の成分を説明するように利用される。例えば、「x、y、及び/またはz」は、「x」単独、「y」単独、「z」単独、「x、y、及びz」、「(x及びy)またはz」、「xまたは(y及びz)」、または「xまたはyまたはz」を指し得る。いくつかの実施形態では、「及び/または」は、組換え細胞が含む外来性核酸を指すように使用され、ここにおいて組換え細胞は、ある群から選択される1つ以上の外来性核酸を含む。ある特定の実施形態では、「及び/または」は、ゲラニオール、ゲラニアール、シトロネラール及び/またはシトロネロールの生産を指すように使用され、ここにおいて1つ以上のゲラニオール、ゲラニアール、シトロネラール及び/またはシトロネロールが生産される。なおも別の実施形態では、「及び/または」は、ゲラニオール、ゲラニアール、シトロネラール、シトロネロール及び/またはシトロネル酸の生産を指すように使用され、ここにおいて1つ以上のゲラニオール、ゲラニアール、シトロネラール、シトロネロール及び/またはシトロネル酸が、次の工程:組換え微生物を培養する工程、組換え微生物において1つ以上のゲラニオール、ゲラニアール、シトロネラール、シトロネロール及び/またはシトロネル酸を生産させる工程、及び/または1つ以上のゲラニオール、ゲラニアール、シトロネラールシトロネロール及び/またはシトロネル酸を単離する工程のうちの1つ以上を通して生産される。
【0156】
機能的ホモログ
本明細書に記載のポリペプチドの機能的ホモログもまた、組換え宿主においてシトロネロール、シトロネラール、シトロネル酸及び/またはその前駆体を産生させる際の使用に好適である。
【0157】
機能的ホモログは、参照ポリペプチドに対して配列類似性を有し、参照ポリペプチドの生化学的または生理的機能(複数可)のうちの1つ以上を実行するポリペプチドを指す。機能的ホモログ及び参照ポリペプチドは、天然に存在するポリペプチドであり得、配列類似性は、収斂進化または分岐進化事象に起因し得る。したがって、機能的ホモログは、文献においてホモログ、またはオルソログ、またはパラログと表記されることがある。天然に存在する機能的ホモログのバリアント、例えば、野生型コード配列の変異体によってコードされるポリペプチドが、それ自体機能的ホモログであり得る。機能的ホモログはまた、ポリペプチドのコード配列の部位特異的突然変異誘発を介して、または天然に存在する様々なポリペプチドのコード配列からのドメインを組み合わせること(「ドメインスワッピング」)によって、作り出すことができる。本明細書に記載の機能的ポリペプチドをコードする遺伝子を修飾するための技術が知られており、これにはとりわけ、指向性進化技術、部位特異的突然変異誘発技術及びランダム突然変異誘発技術が含まれる。これらの技術は、ポリペプチドの比活性を増加させる、基質特異性を変化させる、発現レベルを変化させる、細胞内位置を変化させる、またはポリペプチド-ポリペプチド相互作用を所望の様態で修飾するために有用であり得る。かかる修飾ポリペプチドは、機能的ホモログとみなされる。「機能的ホモログ」という用語は、機能的に相同のポリペプチドをコードする核酸に適用されることがある。
【0158】
機能的ホモログは、ヌクレオチド及びポリペプチド配列アライメントの解析によって同定され得る。例えば、ヌクレオチドまたはポリペプチド配列のデータベースのクエリを行って、シトロネロール及びシトロネロール前駆体生合成ポリペプチドのホモログを同定することができる。配列解析は、ホモログのデータベース検索のために本明細書に開示される任意の配列を参照配列として使用した、非冗長データベースのBLAST、双方向BLAST、またはPSI-BLAST解析を伴い得る。アミノ酸配列は、いくつかの事例では、ヌクレオチド配列から推定され得る。データベースにおいて40%を超える配列同一性を有するポリペプチドが、シトロネロール及びシトロネロール前駆体生合成ポリペプチドとしての好適性を決定するためのさらなる評価の候補となる。アミノ酸配列類似性は、1つの疎水性残基を別の疎水性残基と置換する、または1つの極性残基を別の極性残基と置換するなどの、保存的アミノ酸置換を可能にする。所望であれば、さらなる評価対象の候補の数を絞り込むために、かかる候補の手動検査が実行され得る。手動検査は、シトロネロール及びシトロネロール前駆体生合成ポリペプチドに存在するドメイン、例えば、保存された機能的ドメインを有すると思われる候補を選択することによって行うことができる。いくつかの実施形態では、核酸及びポリペプチドは、BLAST解析を使用するのではなく、トランスクリプトームデータから発現レベルに基づいて同定される。
【0159】
保存された領域は、シトロネロール及びシトロネロール前駆体生合成ポリペプチドの一次アミノ酸配列内で、反復配列である、何らかの二次構造(例えば、ヘリックス及びベータシート)を形成する、正荷電もしくは負荷電ドメインを確立する、またはタンパク質モチーフもしくはドメインを表す領域の位置を特定することによって、同定され得る。例えば、ワールド・ワイド・ウェブ上のsanger.ac.uk/Software/Pfam/及びpfam.janelia.org/にて、多様なタンパク質モチーフ及びドメインについてのコンセンサス配列を記載するPfamウェブサイトを参照されたい。Pfamデータベースで含まれる情報については、Sonnhammer et al.,Nucl.Acids Res.,26:320-322(1998)、Sonnhammer et al.,Proteins,28:405-420(1997)、及びBateman et al.,Nucl.Acids Res.,27:260-262(1999)に記載される。保存された領域はまた、密接に関連する種由来の同じまたは関連するポリペプチドの配列をアライメントすることによっても決定することができる。密接に関連する種は、同じ科由来であることが好ましい。いくつかの実施形態では、かかるホモログを同定するために、2つの異なる種由来の配列のアライメントで十分である。
【0160】
典型的には、少なくとも約40%のアミノ酸配列同一性を呈するポリペプチドが、保存された領域を同定するのに有用である。関連するポリペプチドの保存された領域は、少なくとも45%のアミノ酸配列同一性(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のアミノ酸配列同一性)を呈する。いくつかの実施形態では、保存された領域は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を呈する。
【0161】
例えば、組換え宿主においてシトロネロール及び/またはシトロネロール前駆体を生産させるために好適なポリペプチドには、Ag_GPPS2、Cr_GES、Kl_KYE1、Cd_GeDH、Tt_GeDH、Rs_GeDH、Sm_GeDH、Ac_GeDH、Pp_GeDH、Ps_OYE2.6、Zm_OYE、Ec_atoB、Sa_mvaS、Sa_mvaA、Sc_erg12、Sc_erg8、Sc_erg19、Lc_MVA、Ef_MVA、Sp_IDI、ScIDI及びEc_idiの機能的ホモログが含まれる。
【0162】
基質特異性の修飾方法が当業者に知られており、これには、限定なしに、部位特異的/合理的突然変異誘発手法、ランダム指向性進化手法及び組み合わせが含まれ、このうちランダム突然変異誘発/飽和技術は、酵素の活性部位の近くで行われる。例えば、Labrou NE.,Curr Protein Pept Sci.11(1):91-100を参照されたい。
【0163】
候補配列は典型的に、参照配列の長さの80%~200%、例えば、参照配列の長さの82、85、87、89、90、93、95、97、99、100、105、110、115、120、130、140、150、160、170、180、190、または200%である長さを有する。機能的ホモログポリペプチドは典型的に、参照配列の長さの95%~105%、例えば、参照配列の長さの90、93、95、97、99、100、105、110、115、もしくは120%、またはそれらの間の任意の範囲である長さを有する。任意の候補核酸またはポリペプチドについての参照核酸またはポリペプチドに対する同一性パーセント(%)は、次のように決定することができる。参照配列(例えば、本明細書に記載の核酸配列またはアミノ酸配列)が、コンピュータプログラム(例えば、ClustalW(第1.83版、デフォルトパラメータ)、またはNeedleman-Wunschアルゴリズム)を使用して1つ以上の候補配列にアライメントされる。こうしたコンピュータプログラムは、核酸またはポリペプチド配列の全長にわたってそれらのアライメントが実行されることを可能にする(大域アライメント)。Chenna et al.,2003,Nucleic Acids Res.31(13):3497-500。
【0164】
Clustal Omegaが参照と1つ以上の候補配列との間の最良の一致度を算出し、それらをアライメントすることにより、同一性、類似性及び差異が決定され得る。1つ以上の残基のギャップを参照配列、候補配列、または両方に挿入して、配列アライメントが最大化され得る。核酸配列の迅速な対アライメントのためには、次のデフォルトパラメータが使用される:ワードサイズ:2;ウィンドウサイズ:4;スコアリング方法:百分率;上位対角線の数(number of top diagonals):4;及びギャップペナルティ:5。核酸配列の多重アライメントには、次のパラメータが使用される:ギャップ開始(opening)ペナルティ:10.0;ギャップ伸長ペナルティ:5.0;及びウェイトトランジション(weight transitions):有り。タンパク質配列の迅速な対アライメントのためには、次のパラメータが使用される:ワードサイズ:1;ウィンドウサイズ:5;スコアリング方法:百分率;上位対角線の数:5;ギャップペナルティ:3。タンパク質配列の多重アライメントには、次のパラメータが使用される:ウェイトマトリックス:blosum;ギャップ開始ペナルティ:10.0;ギャップ伸長ペナルティ:0.05;親水性ギャップ:オン;親水性残基:Gly、Pro、Ser、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、及びLys;残基特異的ギャップペナルティ:オン。Clustal Omega出力は、配列間の関係を反映する配列アライメントである。Clustal Omegaは、例えば、ワールド・ワイド・ウェブ上のthe Baylor College of Medicine Search Launcherサイト(searchlauncher.bcm.tmc.edu/multi-align/multi-align.html)で、及びワールド・ワイド・ウェブ上のthe European Bioinformatics Instituteサイト、www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/で、実行することができる。
【0165】
候補核酸またはアミノ酸配列の参照配列に対する同一性パーセントを決定するには、Clustal Omegaを使用して配列をアライメントし、アライメントにおける同一一致の数を参照配列の長さで割り、結果に100を掛ける。同一性%の値は小数第1位に丸められ得ることに留意されたい。例えば、78.11、78.12、78.13、及び78.14は78.1に丸められ、一方で78.15、78.16、78.17、78.18、及び78.19は78.2に丸められる。
【0166】
候補アミノ酸配列の参照配列に対する同一性パーセントを決定するには、ClustalWを使用して配列をアライメントし、アライメントにおける同一一致の数を参照配列の長さで割り、結果に100を掛ける。同一性%の値は小数第1位に丸められ得ることに留意されたい。例えば、78.11、78.12、78.13、及び78.14は78.1に丸められ、一方で78.15、78.16、78.17、78.18、及び78.19は78.2に丸められる。
【0167】
ゲラニオールデヒドロゲナーゼ、ゲラニオールデヒドロゲナーゼ様タンパク質、エノエート(エン)レダクターゼ、エンレダクターゼ様タンパク質、アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ及びアセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ様タンパク質、HMG-CoAシンターゼ及びHMG-CoAシンターゼ様タンパク質、メバロン酸キナーゼ及びメバロン酸キナーゼ様タンパク質、ホスホメバロン酸キナーゼ及びリン光体(phosphor)メバロン酸キナーゼ様タンパク質、イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ及びイソペンテニル二リン酸イソメラーゼ様タンパク質、ゲラニル二リン酸シンターゼ及びゲラニル二リン酸シンターゼ様タンパク質、ゲラニオールシンターゼ及びゲラニオールシンターゼ様タンパク質は、酵素によって実行される酵素活性に関与しない追加のアミノ酸を含み得ることが理解されよう。
【0168】
機能的デヒドロゲナーゼ、レダクターゼ、シンターゼ、アセチルトランスフェラーゼ、キナーゼ、デカルボキシラーゼ及びイソメラーゼタンパク質は、酵素によって実行される酵素活性に関与しない追加のアミノ酸を含み得ることが理解されよう。「キメラ」、「融合ポリペプチド」、「融合タンパク質」、「融合酵素」、「融合構築物」、「キメラタンパク質」、「キメラポリペプチド」、「キメラ構築物」、及び「キメラ酵素」という用語は、異なるタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子を接合することにより改変されたタンパク質を指すように、本明細書で交換可能に使用され得る。
【0169】
いくつかの実施形態では、ゲラニオールデヒドロゲナーゼ、エンレダクターゼ、ゲラニアール二リン酸シンターゼ、HMG-CoAシンターゼ、HMG-CoAレダクターゼ、アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、メバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼまたはイソペンテニル二リン酸イソメラーゼポリペプチドをコードする核酸配列は、コードされたポリペプチドのその後の操作(例えば、精製または検出を促進するため)、溶解性、分泌、または局在化を促進するために設計された「タグ」をコードするタグ配列を含み得る。タグ配列は、コードされたタグがポリペプチドのカルボキシル末端またはアミノ末端のいずれかに位置付けられるように、ポリペプチドをコードする核酸配列に挿入され得る。コードされたタグの非限定的な例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒトインフルエンザヘマグルチニン(HA)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン-タグ(HISタグ)、ジスルフィドオキシドレダクターゼ(DsbA)、マルトース結合タンパク質(MBP)、N利用物質(N-utilization substance)(NusA)、低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)、及びFlag(商標)タグ(Kodak,New Haven,CT)が挙げられる。タグの他の例としては、葉緑体トランジットペプチド、ミトコンドリアトランジットペプチド、澱粉体ペプチド、シグナルペプチド、または分泌タグが挙げられる。
【0170】
いくつかの実施形態では、融合タンパク質は、ドメインスワッピングによって変化したタンパク質である。本明細書で使用されるとき、「ドメインスワッピング」という用語は、第1のタンパク質のドメインを第2のタンパク質のドメインで置き換えるプロセスを説明するように使用される。いくつかの実施形態では、第1のタンパク質のドメイン及び第2のタンパク質のドメインは、機能的に同一または機能的に同様である。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質のドメインの構造及び/または配列は、第1のタンパク質のドメインの構造及び/または配列とは異なる。
【0171】
シトロネロール及びシトロネロール前駆体生合成核酸
本明細書に記載のポリペプチドをコードする組換え遺伝子は、ポリペプチドを発現するのに好適な1つ以上の調節領域にセンス配向で作動可能に連結された、そのポリペプチドのコード配列を含む。多くの微生物は多シストロン性mRNAから複数の遺伝子産物を発現することができるため、所望であれば、それらの微生物について単一の調節領域の制御下で複数のポリペプチドが発現され得る。コード配列及び調節領域は、調節領域が配列の転写または翻訳を調節するのに有効であるように調節領域及びコード配列が配置されているとき、作動可能に連結されているとみなされる。典型的には、コード配列の翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位は、単シストロン性遺伝子について調節領域から1~約50ヌクレオチド下流に配置される。
【0172】
多くの場合、本明細書に記載のポリペプチドのコード配列は、組換え宿主以外の種において同定され、すなわち、異種核酸である。故に、組換え宿主が微生物である場合、コード配列は、他の原核もしくは真核微生物由来、植物由来または動物由来であり得る。しかしながら、場合によっては、コード配列は、宿主に天然の配列であり、その生物に再導入されることになる。天然配列は、外来性核酸に連結された非天然配列、例えば、組換え核酸構築物において天然配列に隣接する非天然調節配列の存在によって、その天然に存在する配列から区別され得ることが多い。さらに、安定に形質転換された外来性核酸は典型的に、天然配列が見出される位置以外の位置で組み込まれる。「調節領域」は、転写または翻訳開始及び速度、ならびに転写または翻訳産物の安定性及び/または移動度に影響を及ぼすヌクレオチド配列を有する核酸を指す。調節領域は、限定なしに、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答エレメント、タンパク質認識部位、誘導エレメント、タンパク質結合配列、5´及び3´非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、イントロン、及びそれらの組み合わせを含む。調節領域は典型的に、少なくともコア(基本)プロモーターを含む。調節領域はまた、エンハンサー配列、上流エレメントまたは上流活性化領域(UAR)などの、少なくとも1つの制御エレメントも含み得る。調節領域は、調節領域が配列の転写または翻訳を制御するのに有効であるように調節領域及びコード配列を配置することによって、コード配列に作動可能に連結される。例えば、コード配列及びプロモーター配列を作動可能に連結するために、コード配列の翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位は典型的に、プロモーターから1~約50ヌクレオチド下流に配置される。しかしながら、調節領域は、最大で翻訳開始部位から約5,000ヌクレオチド上流、または転写開始部位から約2,000ヌクレオチド上流に配置することができる。
【0173】
組み込み対象の調節領域の選定は、効率、選択能力、誘導能、所望の発現レベル、及びある特定の培養段階中の優先的発現を含むがこれらに限定されない、いくつかの因子に左右される。調節領域を適切に選択し、コード配列に対して適切に配置することによってコード配列の発現を調節することは、当業者には日常的な事柄である。1つよりも多くの調節領域、例えば、イントロン、エンハンサー、上流活性化領域、転写ターミネーター、及び誘導性要素が存在し得ることが理解されよう。
【0174】
1つ以上の遺伝子を、組換え核酸構築物内で、シトロネラール/シトロネロール生産の個別的な態様に有用な「モジュール」として組み合わせることができる。複数の遺伝子をモジュール、特に多シストロン性モジュールとして組み合わせることにより、多様な種におけるモジュールの使用が容易となる。例えば、好適な調節領域の挿入後にモジュールが多様な種に導入され得るように、シトロネラール/シトロネロール生合成遺伝子クラスター、またはメバロン酸経路遺伝子クラスターを多シストロン性モジュールとして組み合わせることができる。別の例として、各シトロネラール/シトロネロールコード配列が別個の調節領域に作動可能に連結されるように、シトロネラール/シトロネロール遺伝子クラスターを組み合わせて、シトロネラール/シトロネロールモジュールを形成することができる。かかるモジュールは、単シストロン性発現が必要であるか、または望ましい種において使用することができる。シトロネラール/シトロネロール生産に有用な遺伝子に加えて、組換え構築物はまた典型的に、複製起点、及び適切な種において構築物を維持するための1つ以上の選択可能マーカーも含有する。
【0175】
遺伝コードの縮重のため、いくつかの核酸が特定のポリペプチドをコードし得ることが理解されよう。すなわち、多くのアミノ酸に関して、そのアミノ酸のコドンとしての役目を果たす1つよりも多くのヌクレオチド三つ組が存在する。故に、所与のポリペプチドのコード配列におけるコドンは、特定の宿主における最適な発現が得られるように、その宿主(例えば、微生物)に適切なコドンバイアス表を使用して修飾され得る。単離核酸として、これらの修飾配列は精製分子として存在することができ、組換え核酸構築物のためのモジュールを構築する際に使用するためにベクターまたはウイルスに組み込むことができる。
【0176】
場合によっては、代謝中間体をシトロネロールまたはシトロネロール前駆体生合成に流用するために、内在性ポリペプチドの1つ以上の機能を阻害することが望ましい。例えば、GPPを生産するのに必要なIPP及びDMAPP生産をさらに増加させるために、ファルネシルピロリン酸シンターゼを下方調節することによって、酵母株におけるファルネシルピロリン酸の合成を下方調節することが望ましくあり得る。そのような場合、ポリペプチドまたは遺伝子産物を過剰発現する核酸を、当該株の中へ形質転換させる組換え構築物に組み込むことができる。代替的に、突然変異誘発を用いて、機能を増加または増大させることが所望される遺伝子において変異体を生み出すことができる。
【0177】
一実施形態では、本発明の組換え宿主細胞、方法及び/または使用のうちのいずれか1つにおいて使用するためのGPPSポリペプチドは、配列番号17、または59~62のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは、それとの少なくとも50%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも75%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0178】
一実施形態では、本発明の組換え宿主細胞、方法及び/または使用のうちのいずれか1つにおいて使用するためのGESポリペプチドは、配列番号18、または63~66のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは、それとの少なくとも40%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも75%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0179】
一実施形態では、本発明の組換え宿主細胞、方法及び/または使用のうちのいずれか1つにおいて使用するためのGeDHポリペプチドは、配列番号1~6、19、20、または24~32のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を有するか、あるいは、それとの少なくとも45%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも75%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0180】
一実施形態では、本発明の組換え宿主細胞、方法及び/または使用のうちのいずれか1つにおいて使用するためのENRポリペプチドは、配列番号7~9、21、22、33、34、37、44~48、または67のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは、それとの少なくとも50%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも75%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0181】
一実施形態では、本発明の組換え宿主細胞、方法及び/または使用のうちのいずれか1つにおいて使用するためのARポリペプチドは、配列番号31、32、または83~86のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは、それとの少なくとも85%の同一性、好ましくはそれとの90%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0182】
一実施形態では、本発明の組換え宿主細胞、方法及び/または使用のうちのいずれか1つにおいて使用するためのNPPSポリペプチドは、配列番号53、74、または75のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは、それとの少なくとも45%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも75%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0183】
一実施形態では、本発明の組換え宿主細胞、方法及び/または使用のうちのいずれか1つにおいて使用するためのNESポリペプチドは、配列番号56~58または77~79のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは、それとの少なくとも45%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも75%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0184】
一実施形態では、本発明の組換え宿主細胞、方法及び/または使用のうちのいずれか1つにおいて使用するためのNeDHポリペプチドは、配列番号1~6、19、20、または24~32のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは、それとの少なくとも50%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも75%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0185】
一実施形態では、本発明の組換え宿主細胞、方法及び/または使用のうちのいずれか1つにおいて使用するためのADHポリペプチドは、配列番号68に示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは、それとの少なくとも45%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも75%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0186】
一実施形態では、本発明の組換え宿主細胞、方法及び/または使用のうちのいずれか1つにおいて使用するためのISYポリペプチドは、配列番号54または55のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは、それとの少なくとも50%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも75%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0187】
一実施形態では、本発明の組換え宿主細胞、方法及び/または使用のうちのいずれか1つにおいて使用するためのCiDHポリペプチドは、配列番号49~52のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、あるいは、それとの少なくとも80%の同一性、好ましくはそれとの少なくとも85%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0188】
宿主微生物
真菌、細菌、酵母、哺乳類、昆虫、及び植物を含む、組換え宿主を使用して、シトロネラール、シトロネロール、シトロネル酸及び/またはそれらの前駆体の生産のためのポリペプチドを発現させることができる。
【0189】
いくつかの原核生物及び真核生物、例えば、グラム陰性菌(E.coliなど)、酵母(S.cerevisiaeなど)、及び真菌が、本明細書に記載の組換え微生物を構築する際の使用に特に好適である。シトロネラール及びシトロネロール前駆体生産株として使用するのに選択した種及び株がまず分析されて、どの生産遺伝子が当該株に内在性であり、どの遺伝子が存在しないかが決定される。当該株に内在性対応物が存在しない遺伝子が、1つ以上の組換え構築物に有利に組み立てられ、これが次いで欠損した機能(複数可)を埋め合わせるために当該株の中へ形質転換される。
【0190】
典型的には、組換え微生物は、発酵槽中、ある温度(複数可)で一定期間増殖され、この温度及び一定期間は、シトロネラール、シトロネロール、シトロネル酸、及び/またはそれらの前駆体の生産を促進するものである。本発明により提供される、構築され、遺伝子改変された微生物は、とりわけ、ケモスタット、バッチ、流加培養、ドロー・アンド・フィル(draw and fill)などの半連続発酵、連続灌流発酵、及び連続灌流発酵細胞培養を含む、従来の発酵プロセスを使用して培養することができる。本方法で使用される特定の微生物に応じて、イソペンテニル生合成遺伝子ならびにテルペンシンターゼ及びシクラーゼ遺伝子などの他の組換え遺伝子もまた存在し、発現させることが可能である。基質及び中間体、例えば、イソペンテニル二リン酸、ジメチルアリル二リン酸、ゲラニル二リン酸、ゲラニアール、ゲラニオール、シトロネラール、シトロネロール、及び/またはシトロネル酸のレベルは、公開される方法に従って試料を培養培地から抽出して分析することによって決定することができる。
【0191】
本方法で有用な炭素源には、組換え宿主細胞によって代謝されてシトロネラール/シトロネロールの増殖及び/または生産を促進し得る、任意の分子が含まれ得る。好適な炭素源の例としては、スクロース(例えば、糖蜜に見出される)、フルクトース、キシロース、エタノール、アセテート、グリセロール、グルコース、セルロース、デンプン、セロビオースまたは他のグルコースを含むポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、酵母を宿主として用いる実施形態では、スクロース、フルクトース、キシロース、エタノール、グリセロール、及びグルコースなどの炭素源が好ましくあり得る。炭素源は、適切な宿主細胞種の培養分野の当業者に一般に使用される任意の供給計画(feeding regimen)に従って、宿主生物に提供され得る。
【0192】
組換え微生物が培養液中で一定期間増殖させられた後(この培養条件及び一定期間によりシトロネラール、シトロネロール、シトロネル酸、及び/または1つ以上のシトロネラール/シトロネロール前駆体の生産が促進される)、生産された産物が次いで、当該技術分野で既知の種々の技術を使用して培養基、発生ガス(off-gas)及び/または組換え微生物から回収され得る。例えば、シトロネラール、シトロネロール、シトロネル酸、及びそれらの前駆体は、宿主細胞から拡散し、及び/または宿主トランスポーターによって宿主細胞から輸送される。いくつかの実施形態では、透過処理剤を添加して、供給材料が宿主の中に入り産物が出ていくのを補助することができる。いくつかの実施形態では、シトロネラール、シトロネロール、シトロネル酸(citronelic acid)、及びそれらの前駆体は、培養基に直接添加される溶媒相(ミリスチン酸イソプロピル(IPM)がこの非限定的例である)によって外側に捕捉され得るか、またはそれらは、発酵槽に接続された発生ガス捕捉系における収集容器中で溶媒相(ここでも再びIPMがこの非限定的例である)に捕捉され得る。
【0193】
発生ガス捕捉系の非限定的な例は、発生ガスを発酵槽中の発酵培地の上部のヘッドスペースから冷却装置(Dimroth冷却器など)へと導き、この冷却装置で発生ガスの温度を水蒸気及びシトロネラール(citonellal)またはシトロネロールガスの凝縮点未満に冷却することを含む。凝縮された水、シトロネロール及び/またはシトロネラールは、溶媒相(IPMなど)を含有する収集容器中へ排出及び/またはポンプ送液され、溶媒相がシトロネラール及び/またはシトロネロールを捕捉する。凝縮された水蒸気は、収集容器中に第2の相(水相)として存在し、収集容器中のシトロネロール及び/またはシトロネロール含量を増加させるように周期的または継続的に排出され得る。いくつかの実施形態では、収集容器のガス状のヘッドスペースは、第2の冷却装置(Dimroth冷却器など)に結合され、この第2の冷却装置が、第1の冷却装置における凝縮を逃れたあらゆるシトロネラール及び/またはシトロネロールガス及び水蒸気を冷却し、溶媒相及び水相を含有する第2の収集容器中に凝縮物を収集する。シトロネラール及び/またはシトロネロールは次いで、溶媒の蒸発、または沈殿(例えば、温度またはpH調整による)によって、溶媒相から富化、精製、または単離され得る。
【0194】
別の実施形態では、培養微生物の粗溶解物を遠心分離して上清を得ることができ、これを次いでクロマトグラフィーカラム(例えば、C-18カラム)にかけ、水で洗浄して親水性化合物を除去し、次いで好適な溶媒(この非限定的な例はメタノールである)で目的の化合物(複数可)の溶出を行うことができる。化合物(複数可)は次いで、分取HPLCによってさらに精製することができる(これについての関連性のある技術は、例えば、WO2009/140394に教示される)。
【0195】
本明細書で考察される種々の遺伝子及びモジュールは、単一の宿主よりむしろ2つ以上の組換え宿主または宿主細胞に存在し得ることが理解されよう。複数の組換え宿主が使用される場合、それらを混合培養液中で増殖させて、シトロネラール、シトロネロール、及び/またはシトロネル酸を蓄積させることができる。
【0196】
代替的に、2つ以上の宿主をそれぞれ別個の培養基中で増殖させることができ、第1の培養基の産物、例えば、IPP及びDMAPPを第2の培養基中に導入して、GPPなどの後続の中間体へと、または、例えば、シトロネラール、シトロネロールもしくはシトロネル酸のうちの1つ以上などの最終産物へと変換させることができる。例えば、組換え微生物(本明細書で教示される組換え酵母またはE.coliなど)によって生産されたシトロネロールを、酸化細菌(例えば、Gluconobacter菌種、例えば、Gluconobacter oxydans、Gluconobacter cerinus、またはGluconobacter frateurii)に接触させて、シトロネロールからシトロネラール及び/またはシトロネル酸への生物変換を可能にすることができる。次いで、第2のまたは最終宿主によって生産された産物が回収される。いくつかの実施形態では、培養基以外の栄養源を使用し、発酵槽以外の系を利用して組換え宿主を増殖させ得ることもまた理解されよう。
【0197】
本明細書で使用されるとき、「生物変換」または「生体内変化」という用語は、ある特定の微生物などの生物学的プロセスまたは薬剤による、使用可能な産物への有機材料の変換を指す。いくつかの実施形態では、シトロネラール、シトロネロール、またはシトロネル酸は、酸化細菌を使用した生物変換によって生産され得る。生物変換が生じるためには、酸化細菌がその前駆体、及び/または中間体を、シトロネラール/シトロネロール経路に関与する1つ以上の酵素を発現する組換え宿主細胞によって生産されるシトロネロール、シトロネラール、またはシトロネル酸に修飾する。生体内での修飾に続いて、シトロネロール、シトロネラール、またはシトロネル酸は、細胞内にとどまり、及び/または培養基中に分泌される。例えば、ゲラニル二リン酸シンターゼ(GPPS)ポリペプチドをコードする遺伝子と、ゲラニオールシンターゼ(GES)ポリペプチドをコードする遺伝子と、ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(GeDH)ポリペプチドをコードする遺伝子と、エノエートレダクターゼ(ENR)ポリペプチドをコードする遺伝子と、アルデヒドレダクターゼ(AR)ポリペプチドをコードする遺伝子とを含み、シトロネロール、シトロネラール、またはシトロネル酸のうちの1つ以上を生産可能な、作動的に改変された生合成経路を含む組換え宿主細胞が、酸化細菌に接触させられて、シトロネロールをシトロネラール及び/またはシトロネル酸に変換する。ある特定の実施形態では、生物変換は、効率的な自己持続性の生物変換系が規模拡大費用を著しく低下させ得ることから、利点とみなされる。
【0198】
代表的な原核及び真核種が下記により詳述される。しかしながら、他の種が好適であってもよいことが理解されよう。例えば、好適な種は、Abies、Acinetobactor、Castellaniella、Catharanthus、Gluconobacter、Escherichia、Kluyveromyces、Pichia、Pseudomonas、Rhodococcus、Saccharomyces、Staphylococcus、Sphingopyxis、Thauera、またはZymomonasなどの属のものであり得る。かかる属由来の代表的な種には、Abies grandis、Acinetobacter calcoaceticus、Castellaniella defragrans、Catharanthus roseus、Gluconobacter oxydans、Gluconobacter cerinus、Gluconobacter frateurii、Escherichia coli、Kluyveromyces lactis、Pichia stipitis、Pseudomonas putida、Rhodococcus菌種RD6.2、Saccharomyces cerevisiae、Staphylococcus aureus、Sphingopyxis macrogoltabida、Thauera terpenica 58Eu、及びZymomonas mobilis亜種mobilisが含まれる。
【0199】
いくつかの実施形態では、微生物は、細菌などの原核生物、例えば、Escherichia coli、Lactobacillus、Lactococcus、Cornebacterium、Acetobacter、Acinetobacter、またはPseudomonasであり得る。
【0200】
他の実施形態では、微生物は、Ascomyceteなどの真菌、例えば、Gibberella fujikuroi、Kluyveromyces lactis、Schizosaccharomyces pombe、Aspergillus niger、Yarrowia lipolytica、Ashbya gossypii、またはSaccharomyces cerevisiaeであり得る。
【0201】
ある特定の実施形態では、微生物は、藻類細胞、例えば、Blakeslea trispora、Dunaliella salina、Haematococcus pluvialis、Chlorella菌種、Undaria pinnatifida、Sargassum、Laminaria japonica、またはScenedesmus almeriensis種であり得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、微生物は、ラン藻細胞、例えば、Blakeslea trispora、Dunaliella salina、Haematococcus pluvialis、Chlorella菌種、Undaria pinnatifida、Sargassum、Laminaria japonica、またはScenedesmus almeriensisであり得る。
【0203】
Saccharomyces菌種
Saccharomycesは、合成生物学においてよく研究され、広く使用されるシャーシ生物であり、組換え微生物プラットフォームとして使用することができる。例えば、S.cerevisiaeに関して入手可能な変異体、プラスミドのライブラリ、詳細な代謝コンピュータモデル及び他の情報が存在し、産物収量を増大させるための種々のモジュールの合理的設計を可能にしている。組換え微生物を作製するための方法が知られている。
【0204】
Abies grandis
Abies grandisは、海面高度から標高1,800mまでで生じる、北米の太平洋北西及び北カリフォルニア原産のモミである。それは、カスケード山脈のアメリカオオモミ/アメリカトガサワラ生態地域における主要な構成要素である。この樹木は典型的に、高さ40~70mまで成長する。カスケード山脈の西部で見られる、より丈の高い沿岸部アメリカオオモミ、及びカスケード地域の東部で見られる、より丈の低い内陸部アメリカオオモミの2つの変種が存在する。
【0205】
Aspergillus菌種
A.oryzae、A.niger及びA.sojaeなどのAspergillus種は、食品生産において広く使用される微生物であり、これらもまた組換え微生物プラットフォームとして使用することができる。A.nidulans、A.fumigatus、A.oryzae、A.clavatus、A.flavus、A.niger、及びA.terreusのゲノムに関してヌクレオチド配列が入手可能であり、流束を増大させ産物収量を増加させるための内在性経路の合理的設計及び修飾を可能にしている。Aspergillusに関して代謝モデル、ならびにトランスクリプトーム研究及びプロテオーム研究が開発されてきた。A.nigerは、クエン酸及びグルコン酸などのいくつかの食品成分の工業生産のために培養され、したがって、A.nigerなどの種は全般的に、シトロネロール及びシトロネロール前駆体の生産に好適である。
【0206】
E.coli
合成生物学において広く使用される別のプラットフォーム生物であるE.coliもまた、組換え微生物プラットフォームとして使用することができる。Saccharomycesと同様、E.coliに関して入手可能な変異体、プラスミドのライブラリ、詳細な代謝コンピュータモデル及び他の情報が存在し、産物収量を増大させるための種々のモジュールの合理的設計を可能にしている。Saccharomycesに関して上述したのと同様の方法を使用して、組換えE.coli微生物を作製することができる。
【0207】
Castellaniella defragrans
Castellaniella defragransは、モノテルペンの酸化を脱窒と結び付けることができるベータプロテオバクテリアである。
【0208】
Acinetobacter calcoaceticus
Acinetobacter calcoaceticusは、非運動性のグラム陰性coccobacillusである。それは好気条件下で増殖し、カタラーゼ陽性及びオキシダーゼ陰性である。
【0209】
Agaricus、Gibberella、及びPhanerochaete菌種
Agaricus、Gibberella、及びPhanerochaete菌種は、それらが培養で大量のイソプレノイドを生産することが知られていることから有用であり得る。故に、大量のシトロネロールの生産のためのテルペン前駆体は、内在性遺伝子によってすでに生産されている。故に、シトロネロール生合成ポリペプチドに対する組換え遺伝子を含むモジュールが、メバロン酸またはMEP経路遺伝子を導入することを必要とせずに、かかる属由来の種に導入され得る。
【0210】
Arxula adeninivorans(Blastobotrys adeninivorans)
Arxula adeninivoransは、珍しい生化学的性質をもつ二形性酵母である(それは42℃の温度まではパン酵母のような出芽酵母として増殖し、この閾値を超えるとそれは糸状の形態で増殖する)。それは広範な基質で増殖することができ、硝酸同化能をもつ。それは、天然プラスチックを生産する株の作出または環境試料中のエストロゲンに対するバイオセンサーの開発に成功裏に適用されてきた。
【0211】
Yarrowia lipolytica
Yarrowia lipolyticaは、二形性酵母(Arxula adeninivoransを参照されたい)であり、Hemiascomycetes科に属する。Yarrowia lipolyticaの全ゲノムが知られている。Yarrowia種は好気性であり、非病原性とみなされる。Yarrowiaは、疎水性基質(例えば、アルカン、脂肪酸、油)の使用が効率的であり、糖で増殖することができる。それは工業用途への可能性が高く、油性の微生物である。Yarrowia lipolypticaは、その細胞の乾燥重量のおよそ40%まで脂質含量を蓄積することができ、脂質蓄積及び再動員に関するモデル生物である。例えば、Nicaud,2012,Yeast 29(10):409-18、Beopoulos et al.,2009,Biochimie 91(6):692-6、Bankar et al.,2009,Appl Microbiol Biotechnol.84(5):847-65を参照されたい.
【0212】
Rhodotorula菌種
Rhodotorulaは、単細胞の有色酵母である。油性の赤色酵母であるRhodotorula glutinisは、粗グリセロールから脂質及びカロテノイドを生産することが示されている(Saenge et al.,2011,Process Biochemistry 46(1):210-8)。Rhodotorula toruloides株は、バイオマス及び脂質の改善された生産性のための効率的な流加発酵系であることが示されている(Li et al.,2007,Enzyme and Microbial Technology 41:312-7)。
【0213】
Rhodosporidium toruloides
Rhodosporidium toruloidesは、油性の酵母であり、脂質生産経路の改変に有用である(例えば、Zhu et al.,2013,Nature Commun.3:1112、Ageitos et al.,2011,Applied Microbiology and Biotechnology 90(4):1219-27を参照されたい)。
【0214】
Candida boidinii
Candida boidiniiは、メチロトローフ酵母(それはメタノールで増殖することができる)である。Hansenula polymorpha及びPichia pastorisなどの他のメチロトローフ種と同様、それは異種タンパク質の生産のための優れたプラットフォームを提供する。数グラム範囲の分泌外部タンパク質の収量が報告されている。1つの計算法であるIPROにより、最近、Candida boidiniiキシロースレダクターゼの補因子特異性をNADPHからNADHに実験的に切り替える突然変異が予測された。例えば、Mattanovich et al.,2012,Methods Mol Biol.824:329-58、Khoury et al.,2009,Protein Sci.18(10):2125-38を参照されたい。
【0215】
Hansenula polymorpha(Pichia angusta)
Hansenula polymorphaは、メチロトローフ酵母(Candida boidiniiを参照されたい)である。それはさらに、広範な他の基質でも増殖することができる。それは熱耐性であり、硝酸同化能をもつ(Kluyveromyces lactisもまた参照されたい)。それは、B型肝炎ワクチン、インスリン及びC型肝炎の治療のためのインターフェロンアルファ-2aの生産に、さらには様々な技術的酵素(technical enzymes)に適用されてきた。例えば、Xu et al.,2014,Virol Sin.29(6):403-9を参照されたい。
【0216】
Kluyveromyces lactis
Kluyveromyces lactisは、ケフィアの生産に通常適用される酵母である。それは数種類の糖、最も重要な点としては、乳及び乳清に存在するラクトースで増殖することができる。それは、とりわけ、チーズの生産のためのキモシン(子牛の胃内に通常存在する酵素)の生産に成功裏に適用されてきた。40,000L規模の発酵槽中で生産が行われる。例えば、van Ooyen et al.,2006,FEMS Yeast Res.6(3):381-92を参照されたい。
【0217】
Pichia pastoris
Pichia pastorisは、メチロトローフ酵母(Candida boidinii及びHansenula polymorphaを参照されたい)である。それは、外部タンパク質の生産のための効率的なプラットフォームを提供する。プラットフォーム要素はキットとして入手可能であり、タンパク質の生産のために学界において世界中で使用されている。複合型ヒトN-グリカン(酵母グリカンは同様であるが、ヒトで見出されるものと同一ではない)を生産することができる株が改変されてきた。例えば、Piirainen et al.,2014,N Biotechnol.31(6):532-7を参照されたい。
【0218】
Physcomitrella菌種
Physcomitrella mossesは、懸濁培養で増殖させるとき、酵母または他の真菌培養と同様の特性を有する。この属は、他の種類の細胞では生産が困難であり得る、植物二次代謝産物の生産に使用され得る。
【0219】
Catharanthus roseus
Catharanthus roseusは、バシクルモンApocynaceae科の顕花植物の種である。それはマダガスカル原産及び特有であるが、他の地域でも観葉植物、ならびに、がんを治療するために使用される薬物ビンクリスチン及びビンブラスチンの源である薬用植物として生育される。
【0220】
Rhodococcus菌種
Rhodococcusは、Mycobacterium及びCorynebacteriumに密接に関連する、好気性非芽胞形成性非運動性のグラム陽性細菌の属である。いくつかの種は病原性の特性を有することが示されているが、多くは良性であり、土壌、水、及び真核細胞を含む、広範な環境で生存することが見出されている。
【0221】
Staphylococcus aureus
Staphylococcus aureusは、Firmicutesの一員であるグラム陽性coccal細菌であり、鼻内、呼吸器内、及び皮膚上で頻繁に見出される。それはカタラーゼ及び硝酸還元に対して陽性であることが多い。S.aureusは常に病原性であるわけではないが、膿瘍などの皮膚感染症、副鼻腔炎などの呼吸器感染症、及び食中毒の一般的な原因である。
【0222】
Zymomonas mobilis
Zymomonas mobilisは、グラム陰性通性嫌気性非芽胞形成性で極鞭毛をもつ桿菌である。それは、いくつかの態様では酵母に勝る、顕著なバイオエタノール生産能を有する。それは元々、アフリカのパームワイン、メキシコのプルケなどのアルコール飲料から、ならびにまた、欧州諸国におけるリンゴ酒及びビールの混入物質(リンゴ酒病(cider sickness)及びビール腐敗)として単離された。
【0223】
Pseudomonas putida
Pseudomonas putidaは、桿状のグラム陰性腐生土壌細菌である。それは、トルエンなどの有機溶媒を分解する能力を含む、非常に多様な代謝作用を示す。この能力は、バイオレメディエーション、すなわち微生物を使用した油の生分解に利用されてきた。
【0224】
Gluconobacter菌種
Gluconobacter菌種は、桿状または楕円形のグラム陰性細菌である。それらは小さなゲノムサイズ及び限定された代謝能力を有する傾向にある。これらの能力には、酸化発酵プロセスを通して炭水化物及びアルコールを部分的に酸化することが含まれる。それらは偏性好気性であり、最終電子受容体として酸素を用いる完全に呼吸型の代謝を有する。Gluconobacter株は糖富化環境を好む。例としては、Gluconobacter oxydans、Gluconobacter cerinus、及びGluconobacter frateuriiが含まれるが、これらに限定されない。
【0225】
シトロネラール/シトロネロール組成物
シトロネロール、シトロネラール、及びシトロネル酸に対する現在の工業ニーズを満たすために土地、設備、及びバイオマス発電の点でかなりの農業資源が必要とされている。したがって、規模拡大できる量の高純度シトロネロール、シトロネラール、及びシトロネル酸を得る能力を有することが望ましい。本明細書に記載の組換え宿主は、シトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸が選択的に富化された組成物を生産し得る。本明細書で使用されるとき、「富化」という用語は、Corymbia citriodora、Cymbopogon nardus、及びCymbopogon winterianusなどの植物の油からのシトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸(抽出物)と比較して、特定のシトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸の割合が増加した、シトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸組成物を説明するように使用される。故に、本明細書に記載の組換え宿主は、所与の産物に所望されるプロファイルを満たすように適合されていると共に、各シトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸の割合がバッチ間で一貫している、組成物の生産を促進し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組換え宿主は、望まれないシトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸前駆体及び/または中間体、あるいは植物抽出物中に見出される副産物を生産しないか、その生産量が低減される。故に、本明細書に記載の組換え宿主によって生産されるシトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸を含む組成物は、植物に由来する組成物とは区別可能である。いくつかの実施形態では、シトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸組成物は、生体外、生体内で、または生物変換によって生産され得る。
【0226】
蓄積される個々の所望の産物(例えば、シトロネロール、シトロネラール、またはシトロネル酸)の量は、約1~約7,000mg/L、例えば、約1~約10mg/L、約3~約10mg/L、約5~約20mg/L、約10~約50mg/L、約10~約100mg/L、約25~約500mg/L、約100~約1,500mg/L、または約200~約1,000mg/L、少なくとも約1,000mg/L、少なくとも約1,200mg/L、少なくとも約少なくとも1,400mg/L、少なくとも約1,600mg/L、少なくとも約1,800mg/L、少なくとも約2,800mg/L、または少なくとも約7,000mg/Lであり得る。いくつかの態様では、シトロネロール、シトロネラール、またはシトロネル酸の量は、7,000mg/Lを超え得る。蓄積されるシトロネロール、シトロネラール、及びシトロネル酸の組み合わせの量は、約1mg/L~約7,000mg/L、例えば、約200~約1,500、少なくとも約2,000mg/L、少なくとも約3,000mg/L、少なくとも約4,000mg/L、少なくとも約5,000mg/L、少なくとも約6,000mg/L、または少なくとも約7,000mg/Lであり得る。いくつかの態様では、シトロネロール、シトロネラール、及びシトロネル酸の組み合わせの量は、7,000mg/Lを超え得る。一般に、培養時間が長いほど、もたらされる産物の量は多くなる。故に、組換え宿主微生物は、1日間~7日間、1日間~5日間、3日間~5日間、約3日間、約4日間、または約5日間培養され得る。
【0227】
本明細書で考察される種々の遺伝子及びモジュールは、単一の微生物よりむしろ2つ以上の組換え微生物に存在し得ることが理解されよう。複数の組換え微生物が使用される場合、それらを混合培養液中で増殖させて、シトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸を生産することができる。例えば、第1の微生物は、シトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸前駆体の生産のための1つ以上の生合成遺伝子を含み得、一方で第2の微生物は、シトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸生合成遺伝子を含む。次いで、第2のまたは最終微生物によって生産された産物が回収される。いくつかの実施形態では、培養基以外の栄養源を使用し、発酵槽以外の系を利用して組換え微生物を増殖させることもまた理解されよう。
【0228】
代替的に、2つ以上の微生物をそれぞれ別個の培養基中で増殖させることができ、第1の培養基の産物、例えば、IPP及び/またはDMAPP、またはゲラニオールもしくはネロールを第2の培養基中に導入して、後続の中間体へと、または、シトロネラールなどの最終産物へと変換させることができる。次いで、第2のまたは最終微生物によって生産された産物が回収される。いくつかの実施形態では、培養基以外の栄養源を使用し、発酵槽以外の系を利用して組換え微生物を増殖させることもまた理解されよう。
【0229】
本明細書に開示される方法によって得られたシトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸ならびに組成物を使用して、昆虫忌避剤などの、香料工業において一般に使用される任意の数の製品を作製することができ、またそれらをいくつかの天然テルペノイドの合成における中間体として使用することもできる。例えば、実質的に純粋なシトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸を、蝋燭、ローション、芳香剤、防臭剤、練歯磨、チューインガム及び油などの製品に組み込むことができる。実質的に純粋なシトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸もまた組み込むことができる。代替的に、各々が特定のシトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸を生産する組換え微生物を別個に培養し、シトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸を各微生物から実質的に純粋な形態で回収し、次いで化合物を組み合わせて、各化合物を所望の割合で含む混合物を得ることによって、シトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸の混合物を作製することができる。本明細書に記載の組換え微生物は、現在のシトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸産物と比較して、より精密で一貫した混合物が得られることを可能にする。
【0230】
本明細書に記載の組換え微生物によって生産された組成物は、いくつかの製品に組み込むことができる。例えば、組換え微生物によって生産されたシトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸組成物は、シトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸ならびに製品の種類に応じて、乾燥重量に基づき、シトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸約20mg/産物kgから、シトロネロール、シトロネラール、及び/またはシトロネル酸約1800mg/産物kgの範囲の量で製品に組み込むことができる。例えば、シトロネロール組成物は、シトロネロール90~99重量%及び検出不能量の植物由来混入物質を有し得、乾燥重量に基づき25~1600mg/kg、例えば、100~500mg/kg、25~100mg/kg、250~1000mg/kg、50~500mg/kgまたは500~1000mg/kgで製品に組み込むことができる。
【0231】
シトロネラール組成物は、シトロネラール3重量%超を有するシトロネラール組成物であり得、製品中のシトロネラールの量が乾燥重量に基づき25~1600mg/kg、例えば、100~500mg/kg、25~100mg/kg、250~1000mg/kg、50~500mg/kgまたは500~1000mg/kgであるように、製品に組み込むことができる。典型的には、シトロネラール組成物は、検出不能量の植物由来混入物質を有する。
【0232】
シトロネル酸組成物は、シトロネル酸3重量%超を有するシトロネル酸組成物であり得、製品中のシトロネル酸の量が乾燥重量に基づき25~1600mg/kg、例えば、100~500mg/kg、25~100mg/kg、250~1000mg/kg、50~500mg/kgまたは500~1000mg/kgであるように、製品に組み込むことができる。典型的には、シトロネル酸組成物は、検出不能量の植物由来混入物質を有する。
【0233】
本発明は、以下の実施例にさらに記載される。これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0234】
以下に続く実施例は、本発明の具体的な実施形態、及びその種々の使用を例示説明するものである。それらは説明目的でのみ記載されており、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0235】
実施例1.生体内試料中のモノテルペンの分析
ミリスチン酸イソプロピル(IPM)を4000gで5分間の遠心分離によって二相培養物から回収した。20μlのIPMをヘキサン中で20倍希釈した後、定量した。2μlの希釈した試料を、Waters Acquity UPC PDA eLambda検出器に連結したWaters Acquity UPC系(Milford,USA)に注入した。化合物の分離をWaters Acquity UPC HSS C18 SBカラム(1.8μm、3.0mm×100mm)で達成し、40℃で維持した。移動相A及びBはそれぞれCO2及びアセトニトリルであった。2.0ml/分の流量を用いた。勾配プロファイルは次の通りであった:1%Bで0.2分間一定、1.8分間かけて1%B~10%Bの直線勾配、10%Bで1分間洗浄及び初期条件に戻る。Automatic Back-Pressure Regulator(ABPR)の圧力をWater Acquity CO2コンバージェンスマネージャで2000psiに維持した。
【0236】
シトロネラール、ゲラニアール、シトロネロール及びゲラニオールをはじめとするモノテルペンを、それらのUV210nm吸光度を記録することによって分析した。検出されたモノテルペン化合物を、既知標準物質(authentic standards)(0.625mg/l~320mg/lの範囲、Sigma-Aldrich,Buchs,Switzerland)による直線の検量線を使用して、Waters TargetLynxソフトウェアを使用して定量した。
【0237】
実施例2.生体外試料中のモノテルペンの分析
100μl生体外アッセイ試料を300μlメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)またはヘキサンでの液液抽出によって抽出した。MTBEまたはヘキサンを12000xgでの迅速な遠心分離によって回収し、注入バイアルに入れてから分析した。
【0238】
1μl試料を、Agilent水素炎イオン化検出器を装着したAgilent 7890A GC系(Santa Clara,USA)に注入した。化合物の分離をRestek Rtx(登録商標)-Waxカラム(30m×0.25mm、膜厚0.25μm)で達成した。炉内温度は、最初は50℃で0.6分間保ち、20℃/分で180℃に高め、次いで(them)60℃/分で180℃から250℃にプログラムし、最後に250℃で0.6分間保った。水素をキャリアガスとして2ml/分の一定流量で使用した。インジェクタ及び検出器はそれぞれ250℃及び260℃に保った。
【0239】
シトロネラール、ゲラニアール、シトロネロール及びゲラニオールをはじめとするモノテルペンを、既知標準物質(0.078mg/l~40mg/lの範囲、Sigma-Aldrich,Buchs,Switzerland)による直線の検量線を使用して、Agilent Masshunter定量分析ソフトウェアを使用して定量した。
【0240】
実施例3.株改変
シトロネラール/シトロネロール経路中間体及びシトロネロールを生産可能な組換え酵母株を、前駆体株(例えば、WO2014027118を参照されたく、同文献は参照によりその全体が援用される)を使用して、Abies grandis GPPSポリペプチド(配列番号17)をコードする組換え遺伝子、Catharanthus roseus GESポリペプチド(配列番号18)をコードする組換え遺伝子、Kluyveromyces lactis ENRポリペプチド(配列番号21)、Pichia stipitis ENRポリペプチド(配列番号8)、Zymomonas mobilis ENRポリペプチド(配列番号9)をコードする組換え遺伝子、組換えCastellaniella defragransGeDHポリペプチド(配列番号1、配列番号19)をコードする組換え遺伝子、Thaurera terpenica 58Eu GeDHポリペプチド(配列番号5)をコードする組換え遺伝子、Rhodococcus菌種RD6.2 GeDHポリペプチド(配列番号2)をコードする組換え遺伝子、Sphingopyxis macrogoltabida GeDHポリペプチド(配列番号3)をコードする組換え遺伝子、Acinetobacter calcoaceticus GeDHポリペプチド(配列番号4)をコードする組換え遺伝子、及び/またはPseudomonas putida GeDHポリペプチド(配列番号6)をコードする組換え遺伝子の1つ以上のコピーを組み込むことによって、改変した。
【0241】
実施例4.ゲラニオールを介した酵母及び細菌におけるシトロネラール/シトロネロール経路生産
d-またはl-シトロネラール及びd-またはl-シトロネロールの生産のための、酵母及び細菌における代表的な異種または内在性経路が図1aに示される。メバロン酸経路または2C-メチル-D-エリトリトール-4-リン酸(MEP)経路は、イソペンテニル二リン酸(IPP)及びジメチルアリピロリン酸(dimethylally pyrophosphate)(DMAPP)の生産をもたらすことができる。次いで、IPP及びDMAPPをゲラニル二リン酸シンターゼ(GPPS)によって縮合して、ゲラニル二リン酸(GPP)を生産することができ、これをシトロネラール/シトロネロール経路のための出発基質とすることができる。次いで、ゲラニオールシンターゼ(GES)によってGPPをゲラニオールへと変換することができる。次いで、ゲラニオールをゲラニオールデヒドロゲナーゼ(GeDH)によって酸化させて、ゲラニアールを生産することができる。次いで、エンレダクターゼ(ENR、エノエートレダクターゼとも称される)を使用して、ゲラニアールをd-シトロネラールへと還元することができる。次いで、ゲラニオールの酸化からのGeDHの逆活性に加えて、宿主細胞におけるアルデヒドレダクターゼ(AR)活性によってシトロネラールをシトロネロールに還元することができる。ENR及びその基質の特異性がd-またはl-シトロネラールの生産を決定し得る(図1aを参照されたい)。
【0242】
シトロネラール/シトロネロール経路の追加の態様は、ゲラニアールからネラールへの異性化であり得る。この工程は、ケト-エノール互変異性化に起因して化学的に生じ得る。次いで、ゲラニオールの酸化からのGeDHの逆活性に加えて、宿主細胞におけるAR活性によってネラールをネロールに変換することができる。
【0243】
実施例5.ネロールを介した酵母及び細菌におけるシトロネラール/シトロネロール経路生産
d-またはl-シトロネラール及びd-またはl-シトロネロールの生産のための酵母及び細菌における代表的な異種または内在性経路が図1bに示される。メバロン酸経路またはMEP経路は、IPP及びDMAPPの生産をもたらすことができる。次いで、IPP及びDMAPPをネリル二リン酸シンターゼ(NPPS)によって変換して、ネリル二リン酸(NPP)を生産することができ、これをシトロネラール/シトロネロール経路のための出発基質とすることができる。次いで、ネリルシンターゼ(NES)によってNPPをネロールへと変換することができる。次いで、ネロールをネラールデヒドロゲナーゼ(NeDH)によって酸化させて、ネラールを生産することができる。次いで、ENRがネラールをl-シトロネラールへと還元し得る。次いで、ネロールの酸化からのNeDHの逆活性に加えて、宿主細胞におけるAR活性によってシトロネラールをシトロネロールに還元することができる。ENR及びその基質の特異性がd-またはl-シトロネラールの生産を決定し得る(図1bを参照されたい)。
【0244】
実施例6.ネロールまたはゲラニオールからシトロネロールへの直接変換を介した、酵母及び細菌におけるシトロネラール/シトロネロール経路生産
d-またはl-シトロネラール及びd-またはl-シトロネロールの生産のための酵母及び細菌における代表的な異種または内在性経路が図1cに示される。メバロン酸経路またはMEP経路は、IPP及びDMAPPの生産をもたらすことができる。次いで、IPP及びDMAPPをGPPSまたはNPPSによって縮合して、それぞれGPPまたはNPPを生産することができる。GPPまたはNPPをそれぞれゲラニオールまたはネロールに変換することができる。次いで、エノエートレダクターゼ(ENR)またはイリドイドシンターゼ(ISY)によって、ゲラニオールまたはネロールをそれぞれd-シトロネロールまたはl-シトロネロールに変換することができる。次いで、シトロネロールデヒドロゲナーゼ(CiDH)によって、d-またはl-シトロネロールをそれぞれd-またはl-シトロネラールに酸化させることができる。
【0245】
実施例7.酵母におけるシトロネラール/シトロネロール経路生産
S.cerevisiaeにおけるプラスミドに基づくシトロネラール/シトロネロール経路を確立する異種遺伝子の生体内発現を、ERG20の転写を下方調節して、Ag_GPPS2の過剰発現によりゲラニル二リン酸の生産を増加させることによって引き起こされた、亢進したイソペンテニル二リン酸(IPP)及びジメチルアリピロリン酸(dimethylally pyrophosphate)(DMAPP)レベルを有する酵母株を使用して試験した(例えば、WO2014027118を参照されたく、同文献は参照によりその全体が援用される)。
【0246】
酵母株を、Abies grandisゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_GPPS2)、Catharanthus roseusゲラニアールシンターゼ(Cr_GES)、及び/またはKluyveromyces lactis黄色酵素(Kl_KYE1)及びCastellaniella defragransゲラニアールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH)の共発現を含む、自律複製配列(ARS)及び酵母セントロメア(CEN)を含有するプラスミド(ARS-CENプラスミド)で形質転換させた。ARS-CENプラスミドは、構成的プロモーターの制御下にあった。2%グルコースを含む合成完全(SC)培地を培養に使用した。培養の間、培養物に10%v/vミリスチン酸イソプロピル二次相を補充して、当該経路の活性化によって生産される目的分子の抽出及び捕捉の一助とした。培養物を120時間増殖させた。
【0247】
上記に列挙した全ての遺伝子は、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって、S.cerevisiaeコドン最適化バリアントとして合成されたものであった。IPM試料をUPCs-UVによって分析した。
【0248】
Ag_GPPS2+Cr_GESの共発現では、この経路の第1の中間体である約400mg/Lのゲラニオールの生産がもたらされた。Ag_GPPS2+Cr_GES+Kl_KYE1の共発現では、約300mg/Lのゲラニオール生産ならびに微量のゲラニアール(約10mg/L)及びシトロネロール(約25mg/L)の蓄積がもたらされた。Ag_GPPS2+Cr_GES+Cd_GeDHの発現では、様々な量のゲラニオール(約30mg/L)、ゲラニアール(約150mg/L)、シトロネロール(約100mg/L)、ネラール(約75mg/L)、ならびに5mg/L未満のシトロネラール及びネロール蓄積がもたらされた。これらの結果により、ゲラニオールが、Cd_GeDHによってゲラニアールに変換され、次いで、内在性エンレダクターゼ活性(Sc_OYE2)によってシトロネラールに過渡的にさらに変換されることが実証される。ゲラニアールの一部は、ケト-エノール互変異性化によってネラールに相互変換され、ネラールの一部は、AR活性によってネロールに還元される。シトロネラールの生産に続いて、アルコールデヒドロゲナーゼ/アルデヒドレダクターゼ活性によりシトロネロールを産出する。Ag_GPPS2、Cr_GES、Cd_GeDH及びKl_KYE1の発現では、(シトロネラールを介した)シトロネロールの生産と共に全シトロネラール/シトロネロール経路の確立がもたらされた。プラスミドに基づくKl_KYE1及びCd_GeDH遺伝子の発現により、シトロネラール/シトロネロール経路の中間体及び/または最終産物の生産におけるそれらの役割が示唆される。経路工程の段階的追加によって、この経路の優勢的な方向が明らかとなった。GPP->ゲラニオール/ネロール->ゲラニアール/ネラール->シトロネラール->シトロネロール(図1及び2を参照されたい)。
【0249】
実施例8.シトロネラール/シトロネロール経路のための基質としてのネロールの生産
S.cerevisiaeにおけるプラスミドに基づくシトロネラール/シトロネロール経路の活性化を介したネロールの生産を確立する異種遺伝子の生体内発現を、ERG20の転写の下方調節によって引き起こされた、亢進したイソペンテニル二リン酸(IPP)及びジメチルアリピロリン酸(dimethylally pyrophosphate)(DMAPP)レベルを有する酵母株を使用して試験した。
【0250】
酵母株を、Abies grandis_ゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_GPPS2)及びGlycine max_ネロールシンターゼ(Gm_NES、配列番号56)またはSolanum lycopersicum_ネリル二リン酸シンターゼ(Sl_NDPS1、配列番号53)及びGm_NESの共発現を含む、自律複製配列(ARS)及び酵母セントロメア(CEN)を含有するプラスミド(ARS-CENプラスミド)で形質転換させた。ARS-CENプラスミドは、構成的プロモーターの制御下にあった。2%グルコースを含む合成完全(SC)培地を培養に使用した。培養の間、培養物に10%v/vミリスチン酸イソプロピル二次相を補充して、当該経路の活性化によって生産される目的分子の抽出及び捕捉の一助とした。培養物を120時間増殖させた。
【0251】
上記に列挙した全ての遺伝子は、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって、S.cerevisiaeコドン最適化バリアントとして合成されたものであった。IPM試料をUPCs-UVによって分析した。Ag_GPPS2及びGm_NESの発現では、ゲラニオールのみ(約30mg/L)の生産がもたらされた一方で、SI_NDPS1及びGm_NESの発現では、約5mg/Lのネロール及びゲラニオールが産出された(図3を参照されたい)。この実施例におけるネロールの生産は、SI_NDPS1によるNPPの生産、及びGm_NESの発現によってNPPがネロールに変換されることを指示する。
【0252】
実施例9.ゲラニオールからシトロネロールへの変換を介したシトロネラールの生産
S.cerevisiaeにおけるプラスミドに基づくシトロネラール/シトロネロール経路を確立する異種遺伝子の生体内発現を、ERG20の転写の下方調節によって引き起こされた、亢進したイソペンテニル二リン酸(IPP)及びジメチルアリピロリン酸(dimethylally pyrophosphate)(DMAPP)レベルを有する酵母株を使用して試験した。
【0253】
酵母株を、Abies grandisゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_GPPS2)及びCatharanthus roseusゲラニアールシンターゼ(Cr_GES)の共発現、Ag_GPPS2、Cr_GES、及びOlea europaea イリドイドシンターゼ(Oe_ISY)の共発現、またはAg_GPPS2、Cr_GES、Oe_ISY、及びBradyrhizobium菌種DFCl-1_シトロネロール/シトロネラールデヒドロゲナーゼ(Bs_CiDH)の共発現を含む、自律複製配列(ARS)及び酵母セントロメア(CEN)を含有するプラスミド(ARS-CENプラスミド)で形質転換させた。ARS-CENプラスミドは、構成的プロモーターの制御下にあった。2%グルコースを含む合成完全(SC)培地を培養に使用した。培養の間、培養物に10%v/vミリスチン酸イソプロピル二次相を補充して、当該経路の活性化によって生産される目的分子の抽出及び捕捉の一助とした。培養物を120時間増殖させた。
【0254】
上記に列挙した全ての遺伝子は、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって、S.cerevisiaeコドン最適化バリアントとして合成されたものであった。IPM試料をUPCs-UVによって分析した。
【0255】
Ag_GPPS2及びCr_GESの発現では、約230mg/Lのゲラニオールの生産がもたらされた。Ag_GPPS2、Cr_GES及びOe_ISYの発現では、約200mg/Lのゲラニオール、約50mg/Lのシトロネロール及び10mg/L未満のシトロネラールの生産がもたらされた。Ag_GPPS2、Cr_GES、Oe_ISY、及びBs_CiDHの発現では、375mg/Lのゲラニオール、100mg/Lのシトロネロール、50mg/L未満のシトロネラール、及び未満20mg/Lのゲラニアールが産出された。結果は、Oe_ISYがゲラニオールをシトロネロールに直接変換すること、及びゲラニオールを有する酵母株におけるBs_CiDHの共発現が少量のシトロネラールの蓄積をもたらすことを指示する(図4を参照されたい)。
【0256】
実施例10.S.cerevisiaeに組み込まれたシトロネラール/シトロネロール経路
シトロネラール/シトロネロール経路遺伝子Abies grandisゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_tGPPS)Catharanthus roseusゲラニアールシンターゼ(Cr_GES)Kluyveromyces lactis黄色酵素(Kl_KYE1)、及びCastellaniella defragransゲラニアールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH)の全染色体組込みを有するS.cerevisiae酵母株を開発し、試験して、どのシトロネラール/シトロネロール経路中間体及び/または最終産物が生産されるかを特定した。
【0257】
ERG20の転写の下方調節によって引き起こされた、亢進したイソペンテニル二リン酸(IPP)及びジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)レベルを有する酵母株を、経路発現カセットの組込みに使用した(例えば、WO2014027118を参照されたく、同文献は参照によりその全体が援用される)。Ag_GPPS2の前にTEF1プロモーター、Cr_GES及びCd_GeDHの前にPGK1プロモーター、ならびにKl_KYE1の前にTPI1プロモーター。隣接領域を含有する発現カセットを相同組換えによって酵母ゲノムに組み込んだ。組込み構築物は、発現カセット及び選択マーカー(プロモーター-ORF-ターミネーター-選択マーカー)からなり、S.cerevisiaeゲノムにおける具体的な遺伝子間配列に相同である隣接配列が、上流及び下流(約3~400ヌクレオチド)にある。相同配列は、組込み構築物の標的を当該ゲノムにおけるこれらの配列に定め、構築物は相同組換えによって組み込まれる。組み込まれた発現カセット及び選択マーカーを有する酵母クローンは、選択マーカーを用いて選択することができる。
【0258】
2%グルコースを含む酵母抽出物ペプトンデキストロース(YPD)培地を培養に使用した。培養の間、培養物に10%v/vミリスチン酸イソプロピル(IPM)二次相を補充して、当該経路の活性化によって生産される分子の抽出及び捕捉の一助とした。培養物を120時間増殖させた。全ての遺伝子は、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって、S.cerevisiaeコドン最適化バリアントとして合成されたものであった。IPM試料をUPC2-UVによって分析した。IPM試料をキラルGCによって分析して、シトロネラール及びシトロネロールの光学純度(鏡像異性体過剰率、ee%)を測定した。
【0259】
組み込まれた経路の発現で、唯一の主要産物としてシトロネロール(約175mg/L)の生産がもたらされた。具体的には、組み込まれた経路で、約100ee%のd-シトロネロールが産出された(図5を参照されたい)。
【0260】
実施例11.異なるGeDH遺伝子を有する酵母におけるシトロネラール/シトロネロール経路生産
酵母におけるシトロネラール/シトロネロール経路の活性ゲラニオールデヒドロゲナーゼには、Castellaniella defragransゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH)、Thauera terpenica 58Euゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Tt_GeDH)、Rhodococcus菌種RD6.2_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Rs_GeDH)、Spingopyxis macrogoltabidaゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Sm_GeDH)、Acinetobacter calcoaceticusゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Ac_GeDH)、及びPseudomonas putidaゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Pp_GeDH)が含まれる。
【0261】
シトロネラール/シトロネロール経路を開始させるために、ERG20の転写の下方調節によって引き起こされた、亢進したIPP及びDMAPPレベルを有する酵母株を使用して、亢進したGPPレベルを産出した。酵母株を、Abies grandisゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_GPPS2)、Catharanthus roseusゲラニアールシンターゼ(Cr_GES)、及びKluyveromyces lactis黄色酵素(Kl_KYE1)、ならびに次のもの:Castellaniella defragransゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH、配列番号1)、Thauera terpenica 58Euゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Tt_GeDH、配列番号5)、Rhodococcus菌種RD6.2_ゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Rs_GeDH、配列番号2)、Spingopyxis macrogoltabidaゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Sm_GeDH、配列番号3)、及びAcinetobacter calcoaceticusゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Ac_GeDH、配列番号4)、Psuedomonas putidaゲラニオールデヒドロゲナーゼ(Pp_GeDH、配列番号6)から選択されるゲラニオールデヒドロゲナーゼ遺伝子を含む、ARS-CENプラスミドで形質転換させた。異種遺伝子は、次のような構成的プロモーターの制御下にある:Ag_GPPS2の前にTEF1プロモーター、Cr_GESの前にPGK1プロモーター、Kl_KYE1の前にTPI1プロモーター及び異なるGeDHの各々の前にPGK1プロモーター。2%グルコースを含む合成完全(SC)培地を培養に使用した。培養の間、培養物に10%v/vミリスチン酸イソプロピル二次相を補充して、当該経路から生じる目的分子の抽出及び捕捉の一助とした。培養物を120時間増殖させた。全ての遺伝子は、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって、S.cerevisiaeコドン最適化バリアントとして合成されたものであった。IPM試料をUPCs-UVによって分析した。
【0262】
この実験で試験したCd_GeDH、Tt_GeDH、Rs_GeDH、Sm_GeDH、Pp_GeDH、及びAc_GeDH酵素の種々の組み合わせは、種々の量のシトロネロールを産出した(図6を参照されたい)。シトロネラールを含む経路中間体は、試験したCd_GeDH、Tt_GeDH、Rs_GeDH、Sm_GeDH、Pp_GeDH、及びAc_GeDH酵素の全ての組み合わせによってシトロネロールに変換され、ゲラニオールまたはゲラニアールの生産はごく少量のみであった。Ag_GPPS2、Cr_GES、Kl_KYE1、及びRs_GeDH及びAg_GPPS2、Cr_GES、Kl_KYE1、及びAc_GeDHの共発現では、最も高い量のシトロネロール(約200mg/L)が産出された。Ac_GeDH発現をPp_GeDHと置き換えた場合、約10mg/Lのシトロネラールが生産され、約150mg/Lのシトロネロールが生産された(図7を参照されたい)。
【0263】
実施例12.酵母における内在性ENR及び過剰発現Sc_OYE2によって生産された光学純度
内在性ENRまたはSc_OYE2(プラスミドベース)を過剰発現した酵母において、シトロネラール/シトロネロール経路生産を実行した。酵母株を、Abies grandisゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_GPPS2)、Catharanthus roseusゲラニアールシンターゼ(Cr_GES)、及びCastellaniella defragransゲラニアールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH)(対照)またはAg_GPPS2、Cr_GES、Cd_GeDH、及びS.cerevisiae ENR(Sc_OYE2、配列番号33)の共発現を含む、自律複製配列(ARS)及び酵母セントロメア(CEN)を含有するプラスミド(ARS-CENプラスミド)で形質転換させた。ARS-CENプラスミドは、構成的プロモーターの制御下にあった。2%グルコースを含む合成完全(SC)培地を培養に使用した。培養の間、培養物に10%v/vミリスチン酸イソプロピル二次相を補充して、当該経路の活性化によって生産される目的分子の抽出及び捕捉の一助とした。培養物を120時間増殖させた。
【0264】
上記に列挙した全ての遺伝子は、Thermo Fisher Scientific GENEART GmbH(Regensburg,Germany)によって、S.cerevisiaeコドン最適化バリアントとして合成されたものであった。IPM試料をUPCs-UVによって分析した。IPM試料をキラルGCによって分析して、シトロネラール及びシトロネロールの光学純度を測定した。
【0265】
Ag_tGGPS、Cr_GES及びCd_GeDHの発現では、約10mg/Lのゲラニオール、5mg/L未満のネロール、約30mg/Lのゲラニアール、約10mg/Lのネラール、約45mg/Lのシトロネロール、及び5mg/L未満のシトロネラールが産出された。内在性ENR活性では、96.4%eeのd-シトロネロールの生産がもたらされた。Sc_OYE2の過剰発現では、約10mg/Lのゲラニオール、5mg/L未満のネロール、約25mg/Lのゲラニアール、約10mg/Lのネラール、約50mg/Lのシトロネロール、及び5mg/L未満のシトロネラールが生産された。97.0%のeeでd-シトロネロールが生産された(図6を参照されたい)。
【0266】
実施例13.GeDH酵素を含有する酵母細胞溶解物におけるゲラニオール変換
多様なGeDH遺伝子を酵母培養物中で発現させ、これを酵母細胞溶解物の調製に使用した。これらの溶解物をゲラニオールによる供給実験に使用して、生産されたシトロネラール/シトロネロール経路産物の量を観察した。
【0267】
Cd_GeDH、Tt_GeDH、Rs_GeDH、Sm_GeDH、Pp_GeDH、またはAc_GeDHを発現する酵母培養物からの酵母細胞溶解物(YCL)を採取し、同様のタンパク質濃度に希釈した。採取に続いて、ゲラニオール及びNADを基質として溶解物に供給することによって生体外反応を開始させて、シトロネラール/シトロネロール経路を確立した。GeDHの発現の結果ではない背景活性を測定するために、空ベクターを含有するだけの細胞からYCLを採取した(「空」を参照されたい)。30℃でのインキュベーションから1分、15分、及び90分後、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)での抽出によって生体外反応を停止し、ゲラニアール、シトロネラール及びシトロネロールのレベルをガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化検出器(GC-FID)によって分析した。全ての遺伝子は、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって、S.cerevisiaeコドン最適化バリアントとして合成されたものであった。
【0268】
GeDHを発現する細胞から採取した全てのYCLは、空ベクターを発現する細胞から採取したYCLよりも高いゲラニアール、シトロネラール、及びシトロネロールのシグナルを示した(「X_GeDH」対「空」を比較されたい)(図5を参照されたい)。全てのGeDH酵素がゲラニオールをゲラニアールに変換することに成功し、次いでゲラニアールが内在性活性によってシトロネラール及びシトロネロールにさらに変換された。90分時点で、Rs_GeDHを発現する細胞から採取したYCLにおいて、他の試料と比較したとき最も高いシトロネラール(約2.5mg/L)及び最も低いシトロネロール(約3mg/L)シグナルが検出された(図10を参照されたい)。
【0269】
実施例14.酵母におけるKl_KYE1及びZm_OYEによって生産された光学純度
ENRであるKl_KYE1(配列番号7)及びZymomonas mobilis_ENR(Zm_OYE、配列番号9)の過剰発現を、高純度のシトロネロールにおいて生産した酵母において実行した。酵母株を、Abies grandisゲラニル二リン酸シンターゼ(Ag_GPPS2)、Catharanthus roseusゲラニアールシンターゼ(Cr_GES)、及びCastellaniella defragransゲラニアールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH)(対照)またはAg_GPPS2、Cr_GES、Cd_GeDH、及び、Cd_GeDH、及びZm_OYEの共発現を含む、自律複製配列(ARS)及び酵母セントロメア(CEN)を含有するプラスミド(ARS-CENプラスミド)で形質転換させた。ARS-CENプラスミドは、構成的プロモーターの制御下にあった。2%グルコースを含む合成完全(SC)培地を培養に使用した。培養の間、培養物に10%v/vミリスチン酸イソプロピル二次相を補充して、当該経路の活性化によって生産される目的分子の抽出及び捕捉の一助とした。培養物を120時間増殖させた。
【0270】
上記に列挙した全ての遺伝子は、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって、S.cerevisiaeコドン最適化バリアントとして合成されたものであった。IPM試料をUPCs-UVによって分析した。IPM試料をキラルGCによって分析して、シトロネラール及びシトロネロールの光学純度を測定した。
【0271】
酵母におけるプラスミドベースのシトロネラール/シトロネラール生産経路での対照遺伝子の発現では、5mg/L未満のネロール、約20mg/Lのゲラニアール、約10mg/Lのネラール、及び約100mg/Lのシトロネロールが産出された。Kl_KYE1の過剰発現では、約5mg/Lのネラール及び約200mg/Lのd-シトロネロール(97.6%ee)がもたらされた。Zm_OYEの過剰発現でもまた、約5mg/Lのネラール及び約200mg/Lのl-シトロネロール(97%ee)が生産された(図8を参照されたい)。
【0272】
実施例15.Rs_GeDHは酵母溶解物においてゲラニオールからゲラニアールへの変換を触媒する
図10に記載されるGeDHを試験して、酵母細胞溶解物においてそれらがシトロネラールからシトロネロールへの変換を触媒する傾向を調査した。Cd_GeDHまたはRs_GeDHを発現する酵母培養物からの酵母細胞溶解物(YCL)を採取し、同様のタンパク質濃度に希釈した。次いで、シトロネラール及びNADを基質として溶解物に供給することによって生体外反応を開始させた。背景活性を測定するために、異種GeDHを発現しないが空ベクターを含有するだけの細胞からYCLを採取した(図6の「空」を参照されたい)。GeDHとのインキュベーションから10分、60分、180分、及び480分後、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)での抽出によって生体外反応を停止した。MTBE試料をガスクロマトグラフィー-水素炎イオン化検出器(GC-FID)によって分析した。
【0273】
シトロネラールからシトロネロールへの変換が全ての生体外反応で検出された(図6を参照されたい)。シトロネラールからシトロネロールへの最も高い変換レベルが、Cd_GeDHを発現する細胞から採取したYCLで検出され、このことはシトロネラール/シトロネラール経路の最終産物の産出におけるその役割の可能性を指示する。空ベクターまたはRs_GeDHを発現する細胞から採取したYCLでは、同じシトロネラールからシトロネロールへの変換が示され(図6における「空」対「Rs_GeDH」のシトロネロールを比較されたい)、このことはRs_GeDHがシトロネラールをシトロネロールに変換しないことを指示する(図11を参照されたい)。
【0274】
実施例16.ENR活性によるd-シトロネラール及びl-シトロネラールの基質媒介性変換
2つの異なるENRであるKl_KYE1(配列番号21)及びZm_OYE(配列番号9)の基質特異性の生体外試験により、シトロネラール/シトロネロール経路産物が産出された(図9を参照されたい)。Kl_KYE1及びZm_OYEをE.coliから過剰発現させ、GST融合物として精製した。次いで、タンパク質をシトラール(ネラール:ゲラニアール約50:50)と共に30℃、生体外で、NADPH再生系(20mMトリス/HCL[pH7.5]、0.2mg/mL GST-融合物、1mM NADP+、20mM G6P及び10μg/mL GDH及び5mMシトラール(Sigma Aldrich)を含めて、指示される時間枠(0、2、または20時間)にわたってインキュベートした。反応物をヘキサンで抽出し、UPC2-UVで分析して反応産物を検出した。
【0275】
Kl_KYE1単独とのシトラール(50%ゲラニアール:50%ネラール)の生体外インキュベーションでは、約50%のゲラニアール及び約50%のネラールが産出された一方で、Kl_KYE1過剰発現との20時間のシトラールインキュベーションでは、約30%のゲラニアール、約50%のネラール、及び約20%のシトロネラールが産出された。主として、ゲラニアール成分は、Kl_KYEが発現される場合にシトロネラールに変換される。対照条件下では(Kl_KYE1を含まない)、シトラールインキュベーションなしで、約50%のゲラニアール、及び約50%のネラールが生産され、シトラールインキュベーションの20時間後、約45%のゲラニアールが生産され、約55%のネラールが生産された。Kl_KYEを含まない対照反応では大部分が変化なしであった。
【0276】
Zm_OYE単独とのシトラール(50%ゲラニアール:50%ネラール)の生体外インキュベーションでは、約50%のゲラニアール、約40%のネラール、及び約10%のシトロネラールが産出された一方で、2時間のインキュベーションでは、約45%のゲラニアール、約10%のネラール、及び約45%のシトロネラールが産出された。主として、ネラール成分は、シトロネラールに変換される。対照条件下では(Zm_OYEを含まない)、シトラールインキュベーションなし、及び2時間のシトラールインキュベーション後で、約50%のゲラニアール、約45%のネラール、及び約5%のシトロネラールが産出された。Zm_OYEを含まない対照反応では大部分が変化なしであった。
【0277】
実施例17.E.coliにおけるIPP+DMAPP生産のためのpMevプラスミドの設計
E.coliにおけるIPP及びDMAPPの発現のためのメバロン酸プラスミドを構築した。7つの遺伝子(Ec_atoB(配列番号10)、Sa_mvaS(配列番号11)、Sa_mvaA(配列番号12)、Sc_Erg12(配列番号13)、Sc_erg8(配列番号14)、Sc_erg19(配列番号15)、及びEc_idi(配列番号16))を2つのオペロン上に細分した。最初の3つの遺伝子を1つのプロモーター下に置き、最後の4つの遺伝子をもう1つのプロモーター下に置いた。各オペロンは転写ターミネーターを含有するように改変した。これら7つの遺伝子は、LacIタンパク質及びカナマイシン選択マーカーをコードするp15ベースの複製プラスミド骨格に位置付けられる。Ec_idiを除く全ての遺伝子が異種であり、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって、Escherichia coliコドン最適化バリアントとして合成されたものであった(図12を参照されたい)。Ec_atoBは、E.coli野生型宿主の内在性遺伝子をE.coliのためにコドン最適化することによって生産された組換え遺伝子であり(野生型遺伝子は、それがE.coliにおける発現に好ましいコドンを広く使用していなかったため修飾された)、E.coliのためのコドン最適化バリアントを提供するようにThermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって合成されたものであった。
【0278】
実施例18.E.coliにおけるシトロネラール/シトロネロール生産のためのpCitroプラスミドの設計
E.coliにおけるIPP及びDMAPPからのシトロネラール生産のための遺伝子を含むプラスミドを構築した。Ag_GPPS2、Cr_GES、Kl_KYE1、及びCd_GeDH(代替的には本明細書全体を通して開示される別のGPPS、GES、GeDH、またはENR遺伝子)によってコードされる4つのタンパク質(ゲラニル二リン酸シンターゼ、ゲラニオールシンターゼ、エンレダクターゼ及びゲラニオールデヒドロゲナーゼ)を2つのオペロン上に細分した。最初の3つの遺伝子は1つのプロモーターの制御下にあり、最後の遺伝子は、もう1つのプロモーターの制御下にあった。これら4つの遺伝子は、アンピシリン選択マーカーをコードするpBR322ベースの複製プラスミド骨格上に位置付けた。Saccharomyces cerevisiaeのためにコドン最適化されたRs_GeDHを除いて、全ての遺伝子は、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって、E.coliコドン最適化バリアントとして合成されたものであった(図13を参照されたい)。
【0279】
実施例19.E.coliにおけるプラスミドに基づくシトロネラール/シトロネロール経路の確立
図12及び13からのプラスミド構築物を使用して、E.coliにおいてシトロネラール/シトロネロール経路を確立した。Rs_GeDHと比較してのCd_GeDHの活性によるシトロネラール/シトロネラール経路の開始を試験するために比較研究を行った。
【0280】
プラスミドpMevは、アセチル-CoAからIPP及びDMAPPへの変換に関与する7つのタンパク質(Ec_atoB、Sa_mvaS、Sa_mvaA、Sc_Mk、Sc_erg8、Sc_erg19、及びEc_idi)をコードし、プラスミドpCitroは、IPP及びDMAPPをシトロネラール/シトロネロール経路産物に変換する4つのタンパク質(Ag_GPPS2、Cr_GES、Kl_KYE1及びRs_GeDHまたはCd_GeDH)をコードするものであった。培養物を、1%グルコースを含有するLB培地中で40時間増殖させた。培養物に10%IPM二次相を補充して、当該経路の中間体の抽出及び捕捉の一助とした。IPM試料をUltraPerformance Convergence Chromatography(UPC2-UV)(3連)によって3連で分析した。IPM試料をキラルGCによって分析して、シトロネラール及びシトロネロールの光学純度(鏡像異性体過剰率、ee%)を測定した。
【0281】
E.coliにおけるpMev及びpCitro(Cd_GeDH)またはpCitro(Rs_GeDH)のいずれかの共発現では、シトロネラール/シトロネロール中間体及びシトロネロールの生産がもたらされた。約25mg/Lのゲラニアール、約5mg/Lのネロール、約350mg/Lのd-シトロネロール(94%ee)、及び約40mg/Lのd-シトロネラール(93.4%ee)がpMEV及びpCitro(Cd_GeDH+Kl_KYE1)の共発現で生産された。Cd_GeDHをRs_GeDHと置き換えた場合、約75mg/Lのゲラニオール、約25mg/Lのゲラニアール、約5mg/Lのネロール、約40mg/Lのd-シトロネロール(95%ee)、及び約300mg/Lのd-シトロネラール(94.2%ee)(図14を参照されたい)。
【0282】
実施例20.E.coliにおけるプラスミドに基づくZm_OYEによるシトロネラール/シトロネロール経路
E.coliにおけるプラスミドに基づくZm_OYEの過剰発現によるシトロネラール/シトロネロール経路生産の決定。
【0283】
プラスミドpMevは、アセチル-CoAをIPP及びDMAPPに変換する7つの遺伝子(Ec_atoB、Sa_mvaS、Sa_mvaA、Sc_MK、Sc_erg8、Sc_erg19、及びEc_idi)をコードし、プラスミドpCitroは、IPP及びDMAPPをシトロネラール/シトロネロールに変換する4つの遺伝子、Ag_GPPS2、Cr_GES、Zm_OYE)及びCd_GeDHをコードする。培養物を、1%グルコースを含有するLB培地中で40時間増殖させ、10%IPM二次相を補充して、当該経路の中間体及び最終産物の抽出及び捕捉の一助とした。全ての経路産物をUPC2-UVによって3連で分析した。IPM試料をキラルGCによって分析して、シトロネラール及びシトロネロールの光学純度(鏡像異性体過剰率(ee%))を測定した。プラスミドpMev及びpCitro(Cd_GeDH+Zm_OYE)の共発現により、約175mg/Lのl-シトロネロール(99.6%ee)及び約150mg/Lのl-シトロネラール(99.4%ee)の生産がもたらされた(図15を参照されたい)。
【0284】
実施例21.シトロネラール/シトロネロール経路が組み込まれた酵母におけるシトロネラール蓄積を改善するための内在性酵母遺伝子の欠失
シトロネラールをシトロネロールに変換する酵母株において、この酵母における当該経路によって生産されるシトロネラール及びシトロネロールの量を制御するために、アルデヒドレダクターゼ(AR)活性に直接的または間接的に関与する内在性酵母遺伝子を欠失させた。この手法により、酵母において生産されるシトロネラールの化学純度の増加をもたらすことができる。
【0285】
亢進したIPP及びDMAPPレベルを有するS.cerevisiae酵母株(ERG20の転写の下方調節によって引き起こされた)を、構成的プロモーターの制御下でのシトロネラール/シトロネロール経路発現カセットAg_GPPS、Cr_GES、Cd_GeDH、Kl_KYE1の組込みに使用した(全ての遺伝子はGENEART(商標)を使用してS.cerevisiaeにおける発現のためにコドン最適化されたものであり、発現カセットを相同組換えによって酵母ゲノムに組み込んだ)。次の酵母遺伝子:ADH6、RFX1、GRE2、ARI1、GCY1及びAYR1の組み合わせの欠失により、シトロネラール蓄積の増加をもたらした。酵母株を、2%グルコースを含む合成完全(SC)培地中で96時間増殖させ、培養の間、10%v/vミリスチン酸イソプロピル(IPM)二次相を補充して、目的のシトロネラール/シトロネロール経路分子の抽出及び捕捉を促進した。IPM試料をUPC2-UV及びキラルGCによって分析した(図16aを参照されたい)。
【0286】
図16aに示されるように、ADH6、RFX1、GRE2、及びARI1の欠失では、ADH6及びRFX1のみの欠失によるわずか10mg/Lと比較して、約90mg/Lのシトロネラールの蓄積がもたらされた(シトロネラール蓄積の約9倍の改善を反映する)。ADH6、RFX1、GRE2、ARI1、GCY1及びAYR1の欠失では、ADH6及びRFX1のみの欠失によるわずか10mg/Lと比較して、約100mg/Lのシトロネラールの蓄積がもたらされた(シトロネラール蓄積の約10倍の改善を反映する)。
【0287】
実施例22.NADHオキシダーゼ遺伝子の発現による酵母におけるシトロネラールの化学純度の改善
シトロネラール/シトロネロール経路を含む酵母株における異種NADHオキシダーゼ遺伝子の発現は、シトロネロール形成を低減する。NADHオキシダーゼは、NADHをNAD+に変換し、こうして酵母株におけるNADHレベルを低下させる。NADHレベルがより低いと、アルデヒドレダクターゼ(AR)の酵素活性の低減につながり、ひいては酵母におけるシトロネラールからシトロネロールへの変換がより少なくなる。この手法により、シトロネロール蓄積を低減することによって酵母において生産されるシトロネラールの化学純度を増加させることができる。
【0288】
亢進したIPP及びDMAPPレベルを有するS.cerevisiae酵母株(ERG20の転写の下方調節によって引き起こされた)を、構成的プロモーターの制御下でのシトロネラール/シトロネロール経路発現カセットAg_GPPS、Cr_GES、Rs_GeDH、Kl_KYE1の組込みに使用した(全ての遺伝子はGENEART(商標)を使用してS.cerevisiaeにおける発現のためにコドン最適化されたものであり、発現カセットを相同組換えによって酵母ゲノムに組み込んだ)。Sp_NADHoxi(配列番号69)の発現により、シトロネロールの蓄積の低減及びシトロネラールの化学純度の増加がもたらされた。酵母株を、2%グルコースを含む合成完全(SC)培地中で96時間増殖させ、培養の間、10%v/vミリスチン酸イソプロピル(IPM)二次相を補充して、目的のシトロネラール/シトロネロール経路分子の抽出及び捕捉を促進した。IPM試料をUPC2-UV及びキラルGCによって分析した(図17を参照されたい)。この実施例では、酵母におけるシトロネラールからシトロネロールへの変換を低減する異種NADHオキシダーゼ遺伝子を同定し、シトロネラール/シトロネロール経路を含む酵母株における異種NADHオキシダーゼ遺伝子の発現がシトロネロール蓄積を低減し、シトロネラール/シトロネロール経路によって生産されるシトロネラールの化学純度を増加させ得ることを実証する。
【0289】
図17に示されるように、ADH6、RFX1、GRE2、及びARI1の欠失を含む酵母における異種NADHオキシダーゼの構成的発現では、ADH6、RFX1、GRE2、及びARI1の欠失のみを含み、約100mg/Lのシトロネラール、及び約150mg/Lのシトロネロールとそれに加えて約50mg/Lのシトロネル酸(シトロネラール対シトロネロール+シトロネル酸の約0.5:1の比)を蓄積した酵母と比較して、約70mg/Lのシトロネラール及び30mg/Lのシトロネロール(シトロネラール対シトロネロールの約2.3:1の比)の蓄積がもたらされた。故に、ADH6、RFX1、GRE2、及びARI1の欠失を有する酵母における異種NADHオキシダーゼの構成的発現により、シトロネラールの化学純度の約4.5倍の改善がもたらされた。
【0290】
実施例23.ホスホパンテテイントランスフェラーゼ(PPTase)遺伝子と共にしたカルボン酸レダクターゼ(CAR)遺伝子の発現による酵母におけるシトロネラールの化学純度の改善
シトロネラール/シトロネロール経路を含む酵母株における、異種ホスホパンテテイントランスフェラーゼ(PPTase)遺伝子と共にした異種カルボン酸レダクターゼ(CAR)遺伝子の発現は、シトロネル酸蓄積を低減する。シトロネラール/シトロネロール経路を有する酵母における、ホスホパンテテイントランスフェラーゼ遺伝子と共にしたカルボン酸遺伝子の発現は、カルボン酸形成を阻止し得る。CAR遺伝子及びPPTase遺伝子の発現は、酵母においてアルデヒドレダクターゼ(AR)活性を支持する遺伝子を欠失させた際にシトロネラールが蓄積するときに、シトロネラールがシトロネル酸に変換されるのを阻止する。故に、この手法を酵母におけるシトロネラールの化学純度を増加させる手段として使用することができる。
【0291】
亢進したIPP及びDMAPPレベルを有するS.cerevisiae酵母株(ERG20の転写の下方調節によって引き起こされた)を、構成的プロモーターの制御下でのシトロネラール/シトロネロール経路発現カセットAg_GPPS、Cr_GES、Rs_GeDH、Kl_KYE1の組込みに使用した(全ての遺伝子はGENEART(商標)を使用してS.cerevisiaeにおける発現のためにコドン最適化されたものであり、発現カセットを相同組換えによって酵母ゲノムに組み込んだ)。Mm_CAR(配列番号70)及びBs_SFP(配列番号71)の発現により、シトロネロールの蓄積の低減及びシトロネラールの化学純度の増加がもたらされた。酵母株を、2%グルコースを含む合成完全(SC)培地中で96時間増殖させ、培養の間、10%v/vミリスチン酸イソプロピル(IPM)二次相を補充して、目的のシトロネラール/シトロネロール経路分子の抽出及び捕捉を促進した。IPM試料をUPC2-UV及びキラルGCによって分析した(図18を参照されたい)。この実施例では、酵母におけるシトロネル酸形成を阻止する異種CAR遺伝子を同定し、シトロネラール/シトロネロール経路を含む酵母株におけるPPTase遺伝子と共にした異種CAR遺伝子の発現がシトロネル酸を阻止し、酵母におけるシトロネラール/シトロネロール経路によって生産されるシトロネラールの化学純度を増加させ得ることを実証する。
【0292】
図18に示されるように、ADH6、RFX1、GRE2、ARI1、GCY1及びAYR1の欠失を含む酵母株における、異種ホスホパンテテイントランスフェラーゼ(PPTase)遺伝子と共にした異種カルボン酸レダクターゼ(CAR)遺伝子の発現は、生産されるシトロネラールの化学純度を約1.8倍増加させ得る(対照におけるシトロネラール対シトロネロール約1.8:1の比と比較してシトロネラール対シトロネロールの約1:1の比)。
【0293】
実施例24.酵母における代替的な経路を介したシトロネラール/シトロネロール経路生産
プラスミドに基づくシトロネラール/シトロネロール経路を確立する異種遺伝子の生体内発現を、ERG20の転写の下方調節によって引き起こされた、亢進したイソペンテニル二リン酸(IPP)及びジメチルアリピロリン酸(dimethylally pyrophosphate)(DMAPP)レベルを有するS.cerevisiae株を使用して酵母において試験した。酵母株を、構成的プロモーターを使用して、Rhodococcus菌種ゲラニアールデヒドロゲナーゼ(Rs_GeDH、配列番号2)またはCastellaniella defragrans_ゲラニアールデヒドロゲナーゼ(Cd_GeDH、配列番号1)及び/またはKluyveromyces lactis_黄色酵素(Kl_KYE1、配列番号7)を発現するプラスミドでさらに形質転換させて、シトロネラール/シトロネロール経路を確立した。上記に列挙した全ての遺伝子は、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって、S.cerevisiaeコドン最適化バリアントとして合成されたものであった。2%グルコースを含み、IPM中250mg/Lのネロールを補充した合成完全(SC)培地を培養に使用した。培養の間、培養物に10%v/vミリスチン酸イソプロピル二次相もまた補充して、該経路の活性化によって生産される目的分子の抽出及び捕捉の一助とした。培養物を96時間増殖させ、IPM試料をUPCs-UVによって分析した。
【0294】
Ne/GeDH活性及びエンレダクターゼ活性を有する異種遺伝子を発現する酵母にネロールを供給することにより、ネラール、d-及びl-シトロネラールならびにd-及びl-シトロネロールの生産がもたらされる。ゲラニオールデヒドロゲナーゼCd_GeDH(またはRs_GeDHまたはその他)を含有する株において、ネロールは、ネラールに、次いでシトロネラールを介してシトロネロールに変換される(ADH背景活性によってシトロネロールに変換されることになる)。ゲラニオールデヒドロゲナーゼ及びエンレダクターゼKl_KYEの両方を含有する株においては、全てのネロールが、シトロネラールを介してシトロネロールに変換される(ADH背景活性によってシトロネロールに変換されることになる)。この手法は、ネロールが、Ne/GeDH及びエン-レダクターゼ活性を有する異種遺伝子によってシトロネラール及びシトロネロールに変換され得ることを示し、この手法を上記の実施例7に記載される主要経路の代替手段として使用して、d-及びl-シトロネラール、d-及びl-シトロネロールを生産することができる(図19を参照されたい)。図19に示されるように、約115mg/Lのシトロネロール及び約220mg/Lのシトロネロールが、ネロールを供給した、Ne/GeDH活性及びエンレダクターゼを有する異種遺伝子を発現する酵母において生産された。
【0295】
実施例25.酵母における代替的な経路を介したシトロネラール/シトロネロール経路生産
プラスミドに基づくシトロネラール/シトロネロール経路を確立する異種遺伝子の生体内発現を、ERG20の転写の下方調節によって引き起こされた、亢進したイソペンテニル二リン酸(IPP)及びジメチルアリピロリン酸(dimethylally pyrophosphate)(DMAPP)レベルを有するS.cerevisiae株を使用して酵母において試験した。酵母株を、構成的プロモーターの制御下で、イリドイドシンターゼ(Oe_ISY)(配列番号54)及び/またはエンレダクターゼ(Kl_KYE1、配列番号7)を発現するプラスミドで形質転換させた。上記に列挙した全ての遺伝子は、Thermo Fisher Scientific GENEART(商標)GmbH(Regensburg,Germany)によって、S.cerevisiaeコドン最適化バリアントとして合成されたものであった。2%グルコースを含み、IPM中200mg/Lのゲラニオールまたは250mg/Lのネロールを補充した合成完全(SC-His)培地を培養に使用した。培養の間、培養物に10%v/vミリスチン酸イソプロピル二次相もまた補充して、該経路の活性化によって生産される目的分子の抽出及び捕捉の一助とした。培養物を96時間増殖させ、IPM試料をUPCs-UVによって分析した。
【0296】
エンレダクターゼ活性(ENRまたはイリドイドシンターゼISY)を有する異種遺伝子を発現する酵母にゲラニオールまたはネロールを供給することにより、それぞれd-及びl-シトロネロールへの直接変換がもたらされる。Oe_ISYを含有する株において、ゲラニオール及びネロールはシトロネロールに変換される。この手法は、ゲラニオール及びネロールが異種イリドイドシンターゼ遺伝子によってシトロネロールに変換され得ることを示す。この手法を上記の実施例7に記載される主要経路の代替手段として使用して、d-及びl-シトロネラール、ならびにd-及びl-シトロネロールを生産することができる(図20a及び図20bを参照されたい)。図20aに示されるように、約90mg/Lのシトロネロールが、ゲラニオールを供給した、イリドイドシンターゼ活性を有する異種遺伝子を発現する酵母において生産された(対照における約10mg/Lと比較して、約9倍の改善を表す)。図20bに示されるように、約60mg/Lのシトロネロールが、ネロールを供給した、イリドイドシンターゼ活性を有する異種遺伝子を発現する酵母において生産された(対照における検出不能量のシトロネロールと比較して、少なくとも約60倍の改善を表す)。
【0297】
実施例26.酸化細菌によるシトロネロールからシトロネラールへの生物変換
組換え微生物(「NCCB由来の株」)によって生産されるシトロネロールを酸化細菌Gluconobacter oxydansまたはGluconobacter cerinusに接触させて、シトロネロールからシトロネラールへの生物変換を行った。酸化細菌を、2.5%グリセロール、0.5%酵母抽出、及び0.3%ペプトンを含むグリセロール培地中で培養した。培養物を採取し、50mMアセテートまたはリン酸緩衝液(pH5または6.5)に再懸濁させ、0.5g/Lシトロネロールを含有する10%v/vミリスチン酸イソプロピル二次相を補充して、基質及び産物シトロネラールまたはシトロネル酸の毒性を減少させた(場合によっては、2.5%グリセロールを生物変換試料に添加した)。生物変換を24~144時間行った。IPM試料をUPCs-UVによって分析して、産物を検出した。
【0298】
この実施例は、酸化細菌Gluconobacter oxydans及びGluconobacter cerinusの酸化活性が、組換え微生物によって生産されるシトロネロールをシトロネラールまたはシトロネル酸へと変換することを特定し、シトロネロールからシトロネラールへの生物変換の手法を実証する。酸化細菌Gluconobacter oxydansは、144時間後に約100mg/Lのシトロネラール、及び約200mg/Lのシトロネル酸を生産した(図21aを参照されたい)。酸化細菌Gluconobacter cerinusは、144時間後に約50mg/Lのシトロネラール、及び約300mg/Lのシトロネル酸を生産した(図21bを参照されたい)。
【0299】
実施例27.酸化細菌によるシトロネラールからシトロネル酸への生物変換
組換え微生物(「NCCB由来の株」)によって生産されるシトロネラールを酸化細菌Gluconobacter cerinusに接触させて、シトロネラールからシトロネル酸への生物変換を行った。酸化細菌を、2.5%グリセロール、0.5%酵母抽出、及び0.3%ペプトンを含むグリセロール培地中で培養した。培養物を採取し、50mMアセテート(pH5)に再懸濁させ、0.5g/Lシトロネラールを含有する10%v/vミリスチン酸イソプロピル二次相を補充して、基質及び産物の毒性を減少させた。生物変換を144時間行った。IPM試料をUPCs-UVによって分析して、産物を検出した。
【0300】
この実施例は、酸化細菌Gluconobacter cerinusの酸化活性が、組換え微生物によって生産されるシトロネラールをシトロネル酸へと変換することを特定し、シトロネラールからシトロネル酸への生物変換の手法を実証する。酸化細菌Gluconobacter cerinusは、144時間後に100%のシトロネラールをシトロネル酸へと変換した(図22を参照されたい)。
【0301】
実施例28.酸化細菌によるシトロネロールからシトロネル酸への生物変換
組換え微生物(「NCCB由来の株」)によって生産されるシトロネロールを酸化細菌Gluconobacter cerinusまたはGluconobacter frateuriiに接触させて、シトロネロールからシトロネル酸への生物変換を行った。酸化細菌を、2.5%グリセロール、0.5%酵母抽出、及び0.3%ペプトンを含むグリセロール培地中で培養した。培養物を採取し、50mMアセテート(pH5)に再懸濁させ、0.5g/Lシトロネロールを含有する10%v/vミリスチン酸イソプロピル二次相を補充して、基質及び産物の毒性を減少させた。生物変換を144時間行った。IPM試料をUPCs-UVによって分析して、産物を検出した。
【0302】
この実施例は、酸化細菌Gluconobacter cerinusまたはGluconobacter frateuriiの酸化活性が、組換え微生物によって生産されるシトロネロールをシトロネル酸へと変換することを特定し、シトロネロールからシトロネル酸への生物変換の手法を実証する。酸化細菌Gluconobacter cerinusまたはGluconobacter frateuriiは、144時間後に100%のシトロネロールをシトロネル酸へと変換した(図23を参照されたい)。
表1.配列表の手引き
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
表2.本明細書に開示される配列
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7
図8a
図8b
図8c
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図14c
図15a
図15b
図16
図17
図18
図19
図20a
図20b
図21a
図21b
図22
図23
【配列表】
0007105783000001.app