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特許7105787摩耗及び擦傷に耐性のある焦げ付き防止コーティングでコーティングされた基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】摩耗及び擦傷に耐性のある焦げ付き防止コーティングでコーティングされた基材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20220715BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220715BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220715BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220715BHJP
   C09D 127/18 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B32B27/20 Z
C09D5/00 D
C09D7/61
C09D127/18
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019541734
(86)(22)【出願日】2018-02-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 US2018016777
(87)【国際公開番号】W WO2018148122
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】62/455,901
(32)【優先日】2017-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ アンドレ フェルナンド トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウィム マリー-テレーズ ジャック ビーツェ
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-238205(JP,A)
【文献】特表2001-521450(JP,A)
【文献】特開2008-064423(JP,A)
【文献】特開2011-116075(JP,A)
【文献】特開2014-040093(JP,A)
【文献】特開2006-213871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-201/10
A47J 37/10-37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩耗及び擦傷に耐性のある焦げ付き防止コーティングでコーティングされた基材であって、前記焦げ付き防止コーティングは、
i.)前記基材に接着された連続プライマー層であって、前記プライマー層は、高分子バインダー、第1のフルオロポリマー、及び第1の無機硬膜剤粒子を含む、プライマー層と、
ii.)凝集粒子を含む不連続な中間コート層であって、前記凝集粒子は、前記プライマー層に接着され、前記プライマー層の表面の露出領域を露呈させるように、前記プライマー層の前記表面にわたって不連続的に分布しており、前記凝集粒子の5パーセント~20パーセントは、前記プライマー層の前記表面から測定したときに、少なくとも0.1mmの直径及び少なくとも0.016mmの高さを有するクラスタ内にあり、前記凝集粒子は、第2のフルオロポリマー及び第2の無機硬膜剤粒子を含む、中間コート層と、
iii.)前記中間コート層及び前記プライマー層の前記表面の前記露出領域に接着された第3のフルオロポリマーを含む、トップコート層と、
を含む、基材。
【請求項2】
前記第1のフルオロポリマーが、PTFEであり、前記第2のフルオロポリマーが、前記第1のフルオロポリマーの前記PTFEと同じであるか又は異なるPTFEであり、前記第3のフルオロポリマーが、PFA又はMFAである、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記コーティングのそれぞれの層の成分としての前記フルオロポリマーが、前記プライマー層の全ての硬化成分の10~45重量%と、前記中間コート層の全ての硬化成分の少なくとも70重量%と、前記トップコート層の全ての硬化成分の少なくとも90重量%と、を構成する、請求項1に記載の基材。
【請求項4】
前記プライマー層中の前記第1の無機硬膜剤粒子の平均粒径が、10~60マイクロメートルの範囲であり、前記中間コート層中の前記第2の無機硬膜剤粒子の平均粒径が5~44マイクロメートルの範囲である、請求項1に記載の基材。
【請求項5】
フルオロポリマー及び無機硬膜剤粒子を含む前記凝集粒子が、0.1~4mmの平均粒径を有する、請求項1に記載の基材。
【請求項6】
フルオロポリマー及び無機硬膜剤粒子を含む前記凝集粒子が、0.1~1mmの平均粒径を有する、請求項1に記載の基材。
【請求項7】
前記クラスタが、少なくとも0.2mmの直径を有する、請求項1に記載の基材。
【請求項8】
前記クラスタが、少なくとも0.2mm~4mmの直径を有する、請求項1に記載の基材。
【請求項9】
前記クラスタが、0.016mm~0.1mm以下の範囲の高さを有する、請求項1に記載の基材。
【請求項10】
前記クラスタが、0.016mm~0.07mm以下の範囲の高さを有する、請求項1に記載の基材。
【請求項11】
凝集粒子の数の15パーセントがクラスタ内に含有されている、請求項1に記載の基材。
【請求項12】
前記中間コート層が、硬化基準で0.05g/m 2 ~0.25g/m 2 の目付量を有する、請求項1に記載の基材。
【請求項13】
前記中間コート層が、硬化基準で0.1g/m 2 ~0.2g/m 2 の目付量を有する、請求項1に記載の基材。
【請求項14】
前記中間コート層が、硬化基準で0.12g/m 2 ~0.18g/m 2 の目付量を有する、請求項1に記載の基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年2月7日に出願された米国特許仮出願第62/455,901号の利益を主張しており、その全内容は参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、優れた耐摩耗性及び耐擦傷性を有する焦げ付き防止フルオロポリマーコーティングでコーティングされた基材に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロポリマー樹脂、特にペルフルオロポリマー樹脂は、それらの低表面エネルギー及び焦げ付き防止特性、並びに熱及び化学抵抗について既知である。金属基材上のより長い耐摩耗性及びより高い耐擦傷性の焦げ付き防止ポリマーコーティングを得ることが長い間望まれてきた。より長い耐用年数を有するコーティングされた基材を得ることに関する特定の懸念事項は、コーティングされた基材の摩耗に耐える能力、並びにその耐擦傷性である。「擦傷」は、ナイフ、スパチュラ、又は他の金属ツールによる切断などのコーティングの塑性変形に関連する。摩耗とは、コーティングがフィブリル化され、表面からの剥離又は寸断される、摩擦又は研磨によって生じ得るような、摩滅するコーティングの量を指す。コーティングされた基材の損傷においては、擦傷に続き、コーティングの塑性変形を引き起こすナイフがまた、続いて摩滅するフィブリルの形成をもたらし得るという点で、摩耗が生じ得る。
【0004】
耐摩耗性及び耐擦傷性コーティングの実現における以前の取り組みは、欧州特許第0580557(B1)号及び米国特許出願公開第2008/0237241(A1)号を含み、耐擦傷性を改善した焦げ付き防止コーティングを得るために、様々な技術が開発されてきた。金属支持体から形成される台所用物品については、これらの技術は、金属支持体上に堆積される焦げ付き防止コーティングを提案し、それには、フルオロポリマー樹脂に基づく少なくとも2つのコートが含まれており、これら2つのコートのうちの1つは、不連続なコート形成パターンである。しかしながら、このような従来技術のコーティングは、コーティングからの無機充填剤の亀裂、ひび割れ、水疱化、及び「噴出」を起こしやすく、経時的にコーティングの品質が低下し、次いで、その焦げ付き防止特性及び有用性が急速に失われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許仮出願第62/455,901号
【文献】欧州特許第0580557(B1)号
【文献】米国特許出願公開第2008/0237241(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような欠点を克服する、摩耗及び擦傷に対して耐性のある焦げ付き防止コーティング、特に従来技術の焦げ付き防止コーティングより改善された耐擦傷性を有したまま、その焦げ付き防止及び摩耗特性を経時的に維持するコーティングが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、優れた耐摩耗性及び耐擦傷性を有する耐久性のある焦げ付き防止コーティングの必要性に取り組んでいる。具体的には、本発明は、摩耗及び擦傷に対して耐性のある焦げ付き防止コーティングでコーティングされた基材を提供し、焦げ付き防止コーティングは、i.)基材に接着された連続プライマー層であって、連続プライマー層は、高分子バインダーと、第1のフルオロポリマーと、第1の無機硬膜剤粒子と、を含む、連続プライマー層と、ii.)凝集粒子を含む不連続な中間コート層であって、凝集粒子は、プライマー層に接着され、プライマー層の表面の露出領域を露呈させるように、プライマー層の表面にわたって不連続的に分布しており、凝集粒子の約5%~20%は、プライマー層の表面から測定したときに、少なくとも約0.1mmの直径及び少なくとも約0.016mmの高さを有するクラスタ内にあり、凝集粒子は、第2のフルオロポリマー及び第2の無機硬膜剤粒子を含む、中間コート層と、iii.)中間コート層と、中間コート層の粒子が存在しない位置にあるプライマー層の表面の露出領域と、に接着された第3のフルオロポリマーを含む、トップコート層と、を含む。
【0008】
一実施形態では、第1のフルオロポリマーはPTFEであり、第2のフルオロポリマーは同じ又は異なるPTFEであり、第3のフルオロポリマーはPFA又はMFAである。
【0009】
一実施形態では、コーティングのそれぞれの層の成分としてのフルオロポリマーは、プライマー層の全ての硬化成分の約10~45重量%、中間コート層の全硬化成分の少なくとも約70重量%、及びトップコート層の全硬化成分の少なくとも約90重量%を含む。
【0010】
一実施形態では、プライマー層中の第1の無機硬膜剤粒子の平均粒径は約10~60マイクロメートルの範囲であり、中間コート層中の第2の無機硬膜剤粒子の平均粒径は、約5~44マイクロメートルの範囲である。
【0011】
一実施形態では、フルオロポリマー及び無機硬膜剤粒子を含む凝集粒子は、約0.1~4mm、別の実施形態では約0.1~1mmの平均粒径を有する。
【0012】
一実施形態では、クラスタは、少なくとも約0.2mmの直径を有する。別の実施形態では、クラスタは、少なくとも約0.2mm~4mmの直径を有する。
【0013】
一実施形態では、凝集粒子の数の約15パーセントがクラスタに含まれる。
【0014】
一実施形態では、中間コート層は、硬化基準で約0.05~0.25g/m、別の実施形態では約0.1~0.2g/m、別の実施形態では約0.12~0.18g/mの目付量を有する。
【0015】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、図面の簡単な説明及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書に提示される概念の理解を向上させるために、実施形態が添付の図面に例示される。当業者であれば、図面中の物体が、単純にするために例示されており、必ずしも縮尺どおりに描かれていないことを理解するであろう。例えば、図面中の物体の一部の寸法は、これらの実施形態の理解を向上させる助けとなるように、他の物体に比べて誇張されている場合がある。
図1】本開示のコーティングの横断面の概略図である。
図2】本開示の連続プライマー層を有する基材の横断面の回転3次元概略図である。
図3】本開示の連続プライマー層及び不連続な中間コート層を有する基材の横断面の回転3次元概略図である。
図4】本開示のコーティングの横断面の回転3次元概略図である。
図5】本開示のコーティングの55倍率での平面顕微鏡写真である。
図6】本開示のコーティングの80倍率での横断面顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記に記載されている態様及び実施形態は、単に例示であり、限定するものではない。本明細書を読んだ後、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様及び実施形態が可能であることを理解するであろう。実施形態のうちの任意の1つ以上の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0018】
フルオロポリマー
一実施形態では、本発明の焦げ付き防止コーティングのフルオロポリマーは、非溶融加工性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、これは、コーティング用組成物の配合を簡単にするため、また、PTFEがフルオロポリマー間で最も高い熱安定性を有するという事実のためである。一実施形態では、PTFEは、380℃で少なくとも約1×10Pa・sの溶融粘度を有する。別の実施形態では、PTFEはまた、少量のコモノマー変性剤の共重合から生じる反復単位を含有し得、そのようなPTFEを含む本発明のコーティングの焼成(融着)中の膜形成能力を改善する。コモノマーの例は、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)又はペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)などのペルフルオロオレフィンであり、アルキル基は、1~5個の炭素原子、例えば、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)を含有する。そのような変性剤の量は、PTFEへの溶融加工性を付与するには不十分であり、一般にフルオロポリマーの約0.5モルパーセント以下である。一実施形態では、本発明のコーティングの任意の所与の層について、異なる溶融粘度を有するPTFEの混合物をブレンドとして使用し、ブレンドは、フルオロポリマー成分を形成するための単一の(ブレンドされた)溶融粘度を有する。一実施形態では、本発明のコーティングの任意の所与の層について、単一のPTFEが使用され、フルオロポリマーは単一の化学構成及び溶融粘度を有する。
【0019】
一実施形態では、本発明のコーティングの任意の所与の層について、本焦げ付き防止コーティングのフルオロポリマーは、独立して、溶融加工性フルオロポリマー及びペルフルオロポリマーから選択される。別の実施形態では、本発明のコーティングの任意の所与の層について、溶融加工性フルオロポリマーは、PTFEと組み合わされる(ブレンドされる)。別の実施形態では、本発明のコーティングの任意の所与の層について、溶融加工可能なフルオロポリマーは、本発明の焦げ付き防止コーティングの層のいずれか又は全てにおいて、PTFEの代わりに使用される。溶融加工性フルオロポリマーの例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)と、TFEと共重合可能な少なくとも1つのフッ素化モノマー(コモノマー)とのコポリマーが挙げられ、その反復単位は、PTFEホモポリマーの融点を実質的に下回る融点、例えば、315℃未満の溶融温度まで、コポリマーの融点を低下させるのに十分な量で、ポリマー中に存在する。そのような溶融加工性フルオロポリマーの形成に好ましい、TFEを有するモノマーとしては、3~6個の炭素原子を有するペルフルオロオレフィンなどのペルフルオロ化モノマー、及びアルキル基が1~5個の炭素原子、特に1~3個の炭素原子を含有するペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)が挙げられる。好ましいこのようなコモノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、及びペルフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)が挙げられる。例示的な溶融加工性フルオロポリマーとしては、FEP(TFE/HFPコポリマー)、PFA(TFE/PAVEコポリマー)、TFE/HFP/PAVEコポリマー(PAVEは、PEVE及び/又はPPVE)、及びMFA(TFE/PMVE/PAVEコポリマー。PAVEのアルキル基は少なくとも2つの炭素原子を有する)などのTFEコポリマーが挙げられる。溶融加工性TFEコポリマーの分子量は重要ではないが、膜形成に十分であり、使用用途において一体性を有するように成型形状を維持することができるのが望ましい。一実施形態では、溶融加工性TFEコポリマーの溶融粘度は、ASTM D1238の方法に従って372℃で5kgの重量を使用して測定したときに、少なくとも約1×10Pa・s及び最大約60~100×10Pa・sである。
【0020】
本発明の焦げ付き防止コーティングの3つの層のそれぞれに存在するフルオロポリマーは、本明細書では、i.)プライマー層のフルオロポリマーを指す「第1のフルオロポリマー」と、ii.)中間コート層のフルオロポリマーを指す「第2のフルオロポリマー」と、iii.)トップコート層のフルオロポリマーを指す「第3のフルオロポリマー」として代替的に称される。一実施形態では、プライマー層、中間コート層、及びトップコート層のそれぞれは、同じフルオロポリマーを含む。別の実施形態では、プライマー層、中間コート層、及びトップコート層のそれぞれは、独立して、異なるフルオロポリマーを含む。別の実施形態では、プライマー層、中間コート層、及びトップコート層のうちの2つは、同じフルオロポリマーを含み、第3の層は、異なるフルオロポリマーを含む。別の実施形態では、プライマー層、中間コート層、及びトップコート層のいずれか又はそれぞれは、独立して、異なるフルオロポリマーのブレンドを含む。好ましい実施形態では、第1及び第2のフルオロポリマーは、同じ又は異なるPTFEを含み、第3のフルオロポリマーは、PFA(TFE/PAVEコポリマー)又はMFA(TFE/PMVE/PAVEコポリマー。PAVEのアルキル基は少なくとも2つの炭素原子を有する)を含む。
【0021】
本発明のフルオロポリマーは、水中の分散体として市販されており、これは、本発明のコーティングの形成に使用するために、かつ塗布の容易さ及び環境管理のために好ましい形態である。「分散」とは、フルオロコポリマーの粒子が水性媒体中に安定して分散されて、そのため、粒子の沈降は、この分散液が形成されたときと、それらを使用してコーティングを形成するときとの間の時間には発生しないことを意味する。これは、典型的に約0.18~0.3マイクロメートル程度、概して約0.2マイクロメートルの小径のフルオロポリマー粒子と、分散液を安定させるための水性分散液中の界面活性剤の使用と、によって実現される。こうした分散液は、分散重合として知られるプロセスと、適宜、濃縮、及び/又は、界面活性剤の更なる添加するプロセスにより、直接得ることができる。
【0022】
あるいは、フルオロポリマー成分は、PTFE微細粉末などのフルオロポリマー粉末であってもよい。本発明のプライマー層の場合、典型的には、フルオロポリマーと高分子バインダーとの均質混合物を得るために有機液体が使用される。選択されたバインダーはその液体中に溶解するため、有機液体が選択され得る。バインダーが液体中に溶解しない場合、バインダーは、細かく分割され、液体中にフルオロポリマーと共に分散され得る。結果として生じるコーティング組成物は、有機液体中に分散されたフルオロポリマーと、所望の均質混合物を得るために液体中に分散されるか、又は溶解されるかのいずれかである高分子バインダーと、を含み得る。有機液体の特性は、高分子バインダーの特性、及び、その溶液又は分散液が望ましいものであるかどうかで決まる。このような有機液体の例には、とりわけ、N-メチルピロリドン、ブチロラクトン、高沸点芳香族溶媒、アルコール、それらの混合物がある。有機液体の量は、特性のコーティング処理で望まれる流動特性で決まる。
【0023】
一実施形態では、本発明のコーティングのそれぞれの層の成分としてのフルオロポリマーは、プライマー層の全硬化成分の約10~45重量%、中間コート層の全硬化成分の少なくとも約70重量%、及びトップコート層の全硬化成分の少なくとも約90重量%を含む。
【0024】
高分子バインダー
フルオロポリマーに加えて、プライマー層を形成する組成物は、耐熱性高分子バインダー(本明細書では、バインダーとも称される)も含有する。バインダーは、加熱融合時に膜形成するポリマーを含み、また、その融合温度において熱的に安定である。好適なバインダーは、焦げ付き防止フルオロポリマー仕上げ用、フルオロポリマー含有プライマー層の基材への接着用、並びにプライマー層内及びその一部としての膜形成用のプライマー塗布でよく知られている。フルオロポリマー自体は、ほとんどの平滑な基材に対して接着性がないに等しい。バインダーは、概ね非フッ素含有であり、更にフルオロポリマーに、並びに基材に接着する。好ましいバインダーは、水又は水と有機溶媒との混合物に可溶性であるか又は可溶化されるものであり、溶媒は水と混和可能である。この溶解度特性は、水性分散液形状のときに、バインダーをフルオロポリマー成分とブレンドするのに役立つ。
【0025】
一実施形態では、高分子バインダーは、ポリアミック酸塩を含有するコーティング組成物を焼成してPAI含有プライマー層を形成する際に、ポリアミドイミド(PAI)に変換するポリアミック酸塩である。ポリアミック酸塩を焼成することによって得られる完全にイミド化された形態では、PAIバインダーは、250℃を超える連続サービス温度を有するため、このバインダーは高温安定性コーティングに好ましい。ポリアミック酸塩は、30℃でN,N-ジメチルアセトアミド中の0.5重量%溶液として測定したときに少なくとも約0.1の固有粘度を有するポリアミック酸として、一般に利用可能である。これは、N-メチルピロリドンなどの凝集剤、及びフルフリルアルコールなどの粘度降下剤に溶解し、第三級アミン、好ましくはトリエチルアミンと反応して、例えば米国特許第4,014,834号に記載されているように、水に溶ける塩を形成する。次いで、結果として生じるポリアミック酸塩含有の反応媒体をフルオロポリマー水性分散液とブレンドすることができ、凝集剤及び粘度降下剤は水混和性であるため、ブレンドによって均一なコーティング組成物が得られる。ブレンドは、フルオロポリマー水性分散液の凝固を回避するために、過剰な撹拌を使用することなく、液体を単純に混合することによって達成され得る。
【0026】
別の実施形態では、本発明のプライマー層で使用され得る高分子バインダーとしては、ポリエーテルスルホン(PES)及びポリフェニレンスルフィド(PPS)が挙げられる。
【0027】
プライマー組成物が、液体が水及び/又は有機溶媒である液体媒体として塗布されるかどうかにかかわらず、上記の接着特性は、続けて塗布される中間コート層及びトップコート層の硬化と共に、プライマー層の乾燥及び焼成(硬化)時に顕在化し、基材上に本発明の焦げ付き防止コーティングをもたらす。
【0028】
一実施形態では、単純化のために、本発明のプライマー層のバインダー成分として単一のバインダーが使用される。別の実施形態では、複数のバインダーが本発明のプライマー層のバインダー成分として使用され、特に、可撓性、硬度、又は腐食保護などの特定の最終用途特性が所望される。バインダーのそのような一般的な組み合わせとしては、PAI/PES、PAI/PPS、及びPES/PPSが挙げられる。
【0029】
プライマー層組成物中のフルオロポリマー及びバインダーの割合は、特に、組成物が平滑基材上のプライマー層として使用される場合、好ましくは、フルオロポリマー対バインダーで約0.5~2.0:1の重量比である。本明細書に開示されるフルオロポリマー対バインダーの重量比は、硬化膜に基づくものであり、基材への塗布後の組成物の乾燥及び焼成(硬化)によって形成される、塗布された層中のこれらの成分の重量に基づく。焼成は、イミド結合が焼成中に形成される際に、ポリアミック酸塩の塩部分を含むコーティング組成物中に存在する揮発性物質を一掃する。便宜上、焼成工程によってポリアミドイミドに変換されるポリアミック酸塩であるときのバインダーの重量は、開始組成物中のポリアミック酸の重量とみなすことができ、それにより、フルオロポリマー対バインダーの重量比は、開始組成物中のフルオロポリマー及びバインダーの量から決定され得る。本発明のプライマー層を形成する組成物が好ましい水性分散液形状である場合、これらの成分は、水性分散液全体の約5~50重量%を構成することになる。
【0030】
無機硬膜剤
本発明の焦げ付き防止コーティングのプライマー層及び中間コート層は、無機硬膜剤を含有する。これらの層中の無機硬膜剤成分は、存在する場合、コーティング組成物の他の成分に対して不活性であり、フルオロポリマー及び高分子バインダーを溶融させるために使用される焼成温度で熱的に安定である1つ以上の非金属充填材である。硬膜剤は、典型的には均一分散性であるが、本発明のプライマー層及び中間コート層を形成するのに有用な本発明の組成物の水性分散液形状に溶解しないように、非水溶性である。
【0031】
一実施形態では、本発明の無機硬膜剤はセラミック粒子を含む。これらの粒子は、好ましくは、少なくとも約1200、より好ましくは少なくとも約1500のヌープ硬度を有する。ヌープ硬度は、材料の凹み又は擦傷に対する抵抗を説明するための尺度である。鉱物及びセラミックの硬度の値は、Shackelford and Alexander,CRC Materials Science and Engineering Handbook,CRC Press,Boca Raton Fla.,1991の参照資料に基づいて、Handbook of Chemistry,77th Editon,12-186、187に列挙されている。プライマー層及び中間コート層の硬膜剤成分は、コーティング表面に適用される研磨力を偏向させることによって、かつフルオロポリマートップコートを貫通し、プライマー層及び基材に向かって移動している鋭利な物体の浸透に抵抗することによって、基材上のコーティングとして適用される焦げ付き防止フルオロポリマー組成物に耐久性を付与する。
【0032】
一実施形態では、プライマー層中の本発明の無機硬膜剤粒子の平均粒径は、約10~60マイクロメートルの範囲である。好ましい実施形態では、プライマー層中の本発明の無機硬膜剤粒子の平均粒径は、約21~44マイクロメートルの範囲である。一実施形態では、中間コート層中の本発明の無機硬膜剤粒子の平均粒径は、約1~60マイクロメートルの範囲である。好ましい実施形態では、中間コート層中の本発明の無機硬膜剤粒子の平均粒径は、約5~44マイクロメートルの範囲である。無機硬膜剤粒子は、多くの商業的供給源から入手可能であり、粒径は、沈降によって測定されたものとして報告される。
【0033】
無機硬膜剤の例としては、少なくとも約1200のヌープ硬度を有する無機酸化物、炭化物、ホウ化物、及び窒化物が挙げられる。好ましくは、ジルコニウム、タンタル、チタン、タングステン、ホウ素、アルミニウム、及びベリリウムからなる無機酸化物、窒化物、ホウ化物、及び炭化物である。特に好ましいのは、炭化ケイ素及び酸化アルミニウムである。好ましい無機組成物の典型的なヌープ硬度値は、ジルコニア(1200)、窒化アルミニウム(1225)、ベリリウム(1300)、窒化ジルコニウム(1510)、ホウ化ジルコニウム(1560)、窒化チタン(1770)、炭化タンタル(1800)、炭化タングステン(1880)、アルミナ(2025)、炭化ジルコニウム(2150)、炭化チタン(2470)、炭化ケイ素(2500)、ホウ化アルミニウム(2500)、ホウ化チタン(2850)である。
【0034】
プライマー層
本発明の焦げ付き防止コーティングは、1つの要素として、基材に接着された連続プライマー層を含む。プライマー層は、高分子バインダー、フルオロポリマー、及び無機硬膜剤粒子を含む。プライマー層は、基材に強く接着し、それが接触する他の実質的にフルオロポリマーの中間コート層及びトップコート層に強く接着して、それらによりコーティングされ、かつ、本発明の焦げ付き防止コーティングに実質的な耐摩耗性を提供する、という複数の機能を果たす。
【0035】
プライマー層の文脈において、連続という用語は、プライマー層が、本発明の焦げ付き防止コーティングによって被覆される基材の表面積の本質的に全ての部分を被覆することを意味する。
【0036】
一実施形態では、プライマー層の硬化乾燥膜厚さは、約16~30マイクロメートルである。好ましい実施形態では、プライマー層の硬化乾燥膜厚さは、約18~22マイクロメートルである。
【0037】
一実施形態では、プライマー層中の高分子バインダー、フルオロポリマー、及び無機硬膜剤粒子の硬化膜基準での相対量は、約16~30重量パーセントの高分子バインダー、約16~50重量パーセントのフルオロポリマー、及び約25~60重量パーセントの硬膜剤である。好ましい実施形態では、プライマー層中の高分子バインダー、フルオロポリマー、及び無機硬膜剤粒子の硬化膜に基づいた相対量は、約18~22重量%の高分子バインダー、約44~52重量パーセントのフルオロポリマー、及び約25~39重量パーセントの硬膜剤である。
【0038】
本発明の焦げ付き防止コーティングの好ましい実施形態では、本発明のプライマー層のフルオロポリマーは、PTFE、例えば、Chemours Co.FC,LLC製Teflon(商標)PTFE DISP 30である。一実施形態では、本発明の焦げ付き防止コーティングのプライマー層高分子バインダーはPAIを含み、プライマー層フルオロポリマーはPTFEを含み、プライマー層無機硬膜剤は炭化ケイ素を含む。
【0039】
一実施形態では、プライマー層は、約20~45マイクロメートルの平均粒径を有する無機硬膜剤粒子を含有する。
【0040】
中間コート層
本発明の焦げ付き防止コーティングは、プライマー層とトップコート層との界面に位置する不連続な中間コート層のコーティング中の存在によって優れた耐摩耗性及び耐擦傷性を実現する。中間コート層は、プライマー及びトップコート層と接触してそこに接着される凝集粒子を含む不連続な層である。凝集粒子は、中間コート層を形成する粒子の不連続な配置を通して見られるプライマー層の表面の露出領域を露呈するように、プライマー層の表面にわたって不連続的に分布している。凝集粒子の約5パーセント~約20パーセントは、クラスタ内にあり、クラスタは、少なくとも約0.1mmの直径及び少なくとも約0.016mmの高さを有する。クラスタの高さは、所与のクラスタの最も高い点の外縁部までプライマー層の表面に垂直に測定された距離に関連する。
【0041】
凝集粒子及び凝集粒子のクラスタは、本発明のコーティングの中間コート層を形成する。これらの粒子は、中間コート層を通って延在し、中間コート層の厚さを画定する。これらの粒子は、トップコート層を通して凝集粒子及び凝集粒子のクラスタのサイズ及び形状のサイズ及び形状を伝えることによって、中間コート層の上に塗布されるトップコート層のトポグラフィーに影響を及ぼし、その結果、摩耗力及び擦傷力は、これらの粒子によってコーティングから離れる方向に偏向される。この偏向は、コーティングを解砕する研磨力の事例を低減させ、同様にコーティングの除去(擦傷)及び焦げ付き防止面を提供するコーティングの失敗を招く、コーティングの塑性変形を低減させる。本発明のコーティングは、摩擦力及び擦傷力を偏向させる働きをする一方、コーティングのフルオロポリマー成分によって供給されるコーティングの十分な焦げ付き防止特性を依然として保持する、プライマー層及びトップコート層に接触してそこに接着される凝集粒子及び凝集粒子クラスタの不連続な中間コート層の存在を含む。本発明者らは、凝集粒子及び凝集粒子のクラスタを含む本発明の不連続な中間コートが、同じ量の同じ無機硬膜剤粒子及びフルオロポリマーを含有する中間コート層を有する類似のコーティングより、改善された耐擦傷性を有する(すなわち、コーティングがフォーク、ナイフ、スパチュラ、泡だて器などの調理器具をより良好に偏向させる)コーティング(例えば、フライパンの調理面上に)をもたらすが、無機硬膜剤粒子は、凝集粒子及び凝集粒子のクラスタとして不連続的に分布するよりはむしろ、個々の無機硬膜剤粒子として中間コート層に均質に分布していることを発見した。
【0042】
本発明の焦げ付き防止コーティングの不連続な中間コート層は、本発明の図を参照することにより、よりよく理解され得る。図1は、本発明の焦げ付き防止コーティング12を有する基材10の横断面の概略図である。図1に示される要素の相対的なサイズ、形状、及びスケールは、本発明のコーティングのこれらの要素をより明確に例示する目的で実際から歪められている。連続プライマー層14は、基材10の表面全体を本質的に被覆する連続コーティングで基材10に接着される。不連続な中間コート層16は、プライマー層14と接触してそこに接着された凝集粒子16a~16fを含み、凝集粒子16a~16fは、不連続な中間コート層16を通して見られるプライマー層14の表面の露出領域18を露呈させるように、プライマー層14の表面にわたって不連続的に分布している。トップコート層20は、中間コート層16と接触してそこに接着され、またプライマー層14と接触してそこに接着される。トップコート層20は、トップコート層20と、中間コート層16の凝集粒子16a~16fが存在しない、プライマー層14の表面の露出領域18に存在するプライマー層14との界面で、プライマー層14に接触してそこに接着される。
【0043】
図1を参照すると、中間コート層16の凝集粒子16a~16fは、プライマー層14の表面に接触してそこに接着されており、また、一部はプライマー層14の表面上で互いに隣接し、互いに密接に接触して凝集粒子のクラスタを形成している。図1では、凝集粒子のそのような2つのクラスタが、断面図で示されている。凝集粒子16a及び16bを含む、2つの凝集粒子からなるそのような1つのクラスタが示されており、凝集粒子16d、16e、及び16fを含む、3つの凝集粒子からなるそのような別のクラスタが示されている。単独凝集粒子はまた、中間コート層16に存在し、プライマー層14の表面と接触してそこに接着されるが、別の凝集粒子と密接に接触しておらず、いずれの凝集粒子クラスタのメンバーでもない。いずれの凝集粒子クラスタのメンバーでもない、図1に示される代表的な単独凝集粒子は、凝集粒子16cである。
【0044】
図2は、基材100と、連続コーティングで基材100に接着され、本質的に基材100の表面全体を被覆する、連続プライマー層140との横断面の回転3次元概略図である。図2に示される要素の相対的なサイズ、形状、及びスケールは、本発明のコーティングのこれらの要素をより明確に示す目的で実際から歪められている。
【0045】
図3は、連続コーティングで基材100に接着され、本質的に基材100の表面全体を被覆する連続プライマー層140と、プライマー層140に接着され、凝集粒子160が被覆していないプライマー層140の表面の露出領域180を露呈させるように、プライマー層の表面にわたって不連続的に分布している、凝集粒子160(図3では、多数の例示の凝集粒子のうちの3つのみに160が標識されている)を含む、不連続な中間コート層と、を有する基材100の横断面の回転3次元概略図である。図3に示される要素の相対的なサイズ、形状、及びスケールは、本発明のコーティングのこれらの要素をより明確に例示するため、実際から歪められている。
【0046】
図4は、本発明の焦げ付き防止コーティング120(層140、160、及び200を含む)を有する基材100の横断面の回転3次元概略図である。図4の物体の相対的なサイズ、形状、及びスケールは、本発明の特定の要素をより明確に示す目的で実際から歪められている。連続プライマー層140は、連続コーティングで基材100に接着され、本質的に基材100の全表面積を被覆している。不連続な中間コート層160は、プライマー層140に接着された凝集粒子(例えば、160a~160f)(図4では、例示の多数の凝集粒子のうちの6つのみが標識されている)を含み、凝集粒子160によって被覆されていないプライマー層140の表面の露出領域180を露呈させるため、プライマー層の表面にわたって不連続的に分布している。トップコート層200は、中間コート層160に接着されている。トップコート層200はまた、トップコート層200と、中間コート層160の凝集粒子(例えば、160a~160f)を含まない、プライマー層140の表面の露出領域180に存在するプライマー層140との界面でプライマー層140に接着されている。図4では、トップコート層200の図の一部は、不連続な中間コート層160の例示的な凝集粒子(例えば、160a~160f)をより明確に示すために削除されている。
【0047】
図4を参照すると、プライマー層140の表面と接触してそこに接着される中間コート層160の凝集粒子の一部は、プライマー層140の表面上で互いに隣接し、互いに密接に接触して凝集粒子のクラスタを形成している。図4は、凝集粒子の多数のそのようなクラスタを示しており、例えば、2つの凝集粒子からなる1つのクラスタが160a及び160bによって表され、3つの凝集粒子からなる別のクラスタが160d、160e、及び160fによって表されている。孤立凝集粒子はまた、中間コート層160に存在し、プライマー層140の表面と接触してそこに接着されるが、別の凝集粒子と密接に接触しておらず、ゆえに凝集粒子クラスタの一部ではない。図4では、任意の凝集粒子クラスタのメンバーではない孤立凝集粒子の一例は、凝集粒子160cである。図4に示される要素の相対的なサイズ、形状、及びスケールは、本発明のコーティングのこれらの要素をより明確に示す目的で実際から歪められている。
【0048】
図5は、本発明のコーティングの平面図の55倍率での顕微鏡写真である。図6は、本発明のコーティングの横断面図の80倍率での顕微鏡写真である。凝集粒子の3つのクラスタは、図6において可視であり、その中で600、610、及び620として識別される。図5及び図6は、異なる例示的な焦げ付き防止コーティングのものである。
【0049】
本発明のコーティングの中間コート層を形成する凝集粒子及び凝集粒子のクラスタは、フルオロポリマー及び無機硬膜剤粒子から構成される。本発明の中間コート層の一実施形態では、フルオロポリマー及び無機硬膜剤粒子を含む凝集粒子は、約0.1~4mmの平均粒径を有する。本発明の中間コート層の別の実施形態では、フルオロポリマー及び無機硬膜剤粒子を含む凝集粒子は、約0.1~1mmの平均粒径を有する。
【0050】
本発明の焦げ付き防止コーティングの一実施形態では、不連続な中間コート層は、プライマー層に接着され、プライマー層の表面の露出領域を露呈させるようにプライマー層の表面にわたって不連続に分布した凝集粒子を含み、当該凝集粒子の約5~20パーセントが、少なくとも約0.1mmの直径及び少なくとも約0.016mmの高さを有するクラスタ内にある。本発明の焦げ付き防止コーティングの別の実施形態では、クラスタは、少なくとも約0.2mmの直径及び少なくとも約0.016mmの高さを有する。本発明の中間コート層の別の実施形態では、クラスタは、少なくとも約0.1mm~4mmの範囲の直径及び少なくとも約0.016mmの高さを有する。本発明の中間コート層の別の実施形態では、クラスタは、少なくとも約0.2mm~4mmの範囲の直径及び少なくとも約0.016mmの高さを有する。クラスタの高さは、所与のクラスタの最も高い点の外縁部までプライマー層の表面に垂直に測定された距離に関連する。別の実施形態では、クラスタは、本明細書で以前に述べた任意の直径と、約0.016mm~約0.1mm以下の範囲の高さを有する。別の実施形態では、クラスタは、本明細書で以前に述べた任意の直径と、約0.016mm~約0.070mm以下の範囲の高さを有する。本発明者らは、4mmを超える直径を有するクラスタは、そのようなクラスタ内に通風路が組み込まれる原因となり得、そのようなクラスタの崩壊という望ましくない結果をもたらし得るか、又は硬化に続き若しくはコーティング表面が固形物品(例えば、調理器具)と接触したときにコーティングのひび割れを引き起こし得るため、あまり望ましくないことを発見した。本発明者らは、0.2mm未満の直径を有するクラスタ、及び明確に0.1mm未満のものもまた、そのようなクラスタを含有する、結果として生じる焦げ付き防止コーティングが優れた耐擦傷性を呈しないため、あまり望ましくないことを発見した。
【0051】
本発明の焦げ付き防止コーティングの一実施形態では、不連続な中間コート層は、プライマー層に接着され、プライマー層の表面の露出領域を露呈させるようにプライマー層の表面全体にわたって不連続的に分布する凝集粒子を含み、凝集粒子の約5~20パーセントは、クラスタ内にある。好ましい実施形態では、凝集粒子の約15パーセントはクラスタ内にある。
【0052】
一実施形態では、硬化基準での中間コート層中のフルオロポリマー及び無機硬膜剤粒子の相対量は、約78~88重量%のフルオロポリマー、及び約7~15重量パーセントの無機硬膜剤粒子であり、中間コート層の残りの重量パーセント(最大100%)は、他の任意成分、例えば着色顔料又は雲母を含む。別の実施形態では、硬化基準での中間コート層中のフルオロポリマー及び無機硬膜剤粒子の相対量は、約81~85重量パーセントのフルオロポリマー及び約9~13重量パーセントの無機硬膜剤粒子であり、中間コート層の残りの重量パーセント(最大100%)は、他の任意成分、例えば着色顔料又は雲母を含む。
【0053】
一実施形態では、フルオロポリマー及び無機硬膜剤粒子を含む本発明のコーティングの中間コート層は、硬化基準で約0.05~0.25g/mの目付量を有する。別の実施形態では、フルオロポリマー及び無機硬膜剤粒子を含む本発明のコーティングの中間コート層は、硬化基準で約0.1~0.2g/mの目付量を有する。別の実施形態では、フルオロポリマー及び無機硬膜剤粒子を含む本発明のコーティングの中間コート層は、硬化基準で約0.12~0.18g/mの目付量を有する。
【0054】
本発明の中間コート層の好ましい実施形態では、フルオロポリマーは、PTFEを含み、無機膜硬化剤は、炭化ケイ素を含む。
【0055】
トップコート層
本発明の焦げ付き防止コーティングは、1つの要素として、中間コート層に接着され、また、トップコート層と、中間コート層の粒子を含有しないプライマー層の表面の露出領域に存在するプライマー層との界面でプライマー層に接着された、フルオロポリマーを含む連続トップコート層を含む。
【0056】
一実施形態では、トップコート層は、フルオロポリマーを含み、無機硬膜剤粒子を実質的に含まない。
【0057】
トップコート層の文脈において、連続という用語は、トップコート層コーティングが、中間コート層の表面積の本質的に全ての部分及び中間コート層の粒子を含まないプライマー層の表面の露出領域を被覆することを意味する。
【0058】
一実施形態では、トップコート層の硬化乾燥膜厚さは、約14~22ミクロンである。好ましい実施形態では、トップコート層の硬化乾燥膜厚さは、約16~20マイクロメートルである。
【0059】
本発明の焦げ付き防止コーティングの好ましい実施形態では、本発明のトップコート層のフルオロポリマーは、PFA又はMFAである。
【0060】
層の塗布
本発明の焦げ付き防止コーティングの層のそれぞれは、従来の手段によって、好ましくは液体媒体の形状で基材に順次塗布することができ、より好ましくは、媒体の液体は水を含み、基材に塗布される組成物は水性分散液である。
【0061】
スプレーコーティングは、本発明の焦げ付き防止コーティングの層を塗布するための適切な塗布方法であり、一実施形態では、層は、順次ウェットオンウェット方式で塗布され、次いで硬化される。一実施形態では、中間コート組成物は、その乾燥前にプライマー層上に塗布される。しかしながら、プライマー組成物及び中間コート組成物が水性分散液である場合、中間コート組成物はまた、指触乾燥後にプライマー層に塗布され得る。好ましい実施形態では、湿った中間コート層をトップコート組成物で直ちにコーティングし、次いでコーティングを硬化する。有機溶媒からプライマー組成物を塗布してプライマー層を作製し、中間コート層を水性媒体から塗布した場合、中間コートの塗布前に水との非相溶性の溶媒が全て除去されるように、プライマー層を乾燥させる必要がある。プライマーの基材への接着特性及びコート間接着性は、中間コート層の乾燥及び焼成(硬化)と共に、プライマー層及びトップコート層の乾燥及び焼成によって基材上に焦げ付き防止コーティングを形成するときに顕在化するであろう。
【0062】
一実施形態では、中間コート層を形成するための組成物は、フルオロポリマー及び無機硬膜剤(中間コート組成物)を含む液体分散体である。一実施形態では、中間コート組成物は、プライマー層と接触してそこに接着されている凝集粒子を含む不連続な中間コート層をもたらすように適切に調整された従来のスプレー装置を使用して、乾燥したプライマー層上に約30~50℃の温度で噴霧され、凝集粒子は、プライマー層の表面の露出領域を露呈させるように、プライマー層の表面にわたって不連続的に分布する。プライマー層の表面に接触してそこに接着される中間コート層の凝集粒子の約5パーセント~20パーセントはまた、プライマー層の表面上で互いに隣接し、凝集粒子のクラスタを形成するように互いに密接に接触する。従来のスプレー装置を使用して、本発明の中間コート層を形成することができ、液体及び製品の粘度、霧化、及びフック圧に応じて、凝集体のサイズ及び密度を決定することができる。凝集粒子はまた、特定の円形ジェットノズルスプレーガンを使用して、中間コート組成物(別途供給される)と、同じく及びスプレーガンの前面にあるエアキャップに別途供給され得る空気(霧化空気)とを混合することによって形成される。液体中間コート組成物をストレート孔に貫通させることによって(固体流の原理)、本発明の凝集粒子を含有する液滴が形成される。画定された開口部を有する特定のエアキャップと組み合わせたこれらの孔のいくつかが、スプレーガンを出る凝集体の量を生成することになる。そのようなスプレー装置の使用の例示的な一実施形態では、圧力上のスプレーは、約1.0~2.0kg/cmであり得、流体送達圧力は、約0.4~1kg/cmであり得、ホルダーの回転速度は、約60~120rpm(80~100が推奨される)であり得、コーティングされる基材までのガンの距離は、約20~25cmである。凝集粒子のクラスタの形状、それらの量、及び比較的小さいクラスタと比較的大きいクラスタとの間の分布は、コーティングされた基材の耐摩耗性及び耐擦傷性に寄与する。凝集粒子のクラスタの形状及び量は、例えば、圧力ポットからガンへの流体圧力の変更、噴霧圧力の変更、又はホルダーの回転速度の変更など、そのようなスプレー装置の動作の既知の制御変数を変更することによって影響され得る。本明細書に特許請求されるような所望の中間コート層の結果を得るためのそのようなスプレー装置変数の適切な修正は、平均的技能の当業者の技能の範囲内であろう。
【0063】
結果として得られる層状コーティングを焼成して、全てのコーティングを同時に溶融させて、基材上に本発明の焦げ付き防止コーティングを形成することができる。フルオロポリマーがPTFEである場合、急速高温の焼成温度、例えば、約800°F(427℃)から開始し、815°F(435℃)まで上昇する温度で約3~5分間が好ましい。プライマー又は中間コート中のフルオロポリマーが、PTFEとFEPとのブレンド、例えば、約50~70重量%のPTFEと約50~30重量%のFEPとのブレンドである場合、焼成温度は約780°F(415℃)まで低下させ、約3分(合計焼成時間)で800°F(427℃)まで上昇させてもよい。
【0064】
一実施形態では、結果として得られるコーティングされた基材は、約16~30マイクロメートルのプライマー層厚さを有する。別の実施形態では、プライマー層の硬化乾燥膜厚さは、約18~22マイクロメートルである。一実施形態では、中間コート層はプライマー層よりも厚く、より好ましくは少なくとも約50%厚い。中間コート層の厚さは、本明細書で先に記載されるようなフルオロポリマー及び無機硬膜剤粒子を含む、凝集粒子及び凝集粒子のクラスタの粒径によって確立される。凝集粒子及び凝集粒子のクラスタを含有する中間コート層の厚さは、硬化後に使用される基材に応じて、渦電流原理(ASTM B244)又は磁気誘導試験法(ASTM 7091)によって測定することができる。渦電流又は磁気誘導値は、粒子の高さ及び粒子間の谷部の深さを含む、基材にわたる値の平均を反映する。この方法は、焦げ付き防止コーティングの形成において、基材上のコーティング層の堆積に適用される。プライマー層の厚さはまた、コーティングされた基材、例えば、フライパンを切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して得られた顕微鏡写真から厚さを測定することによって測定することもできる。SEMを用いることにより、凝集粒子及び凝集粒子のクラスタの高さと、そのような粒子間の谷部の深さとを区別することができる。典型的には、粒子間の谷部のプライマー厚さを報告するSEM値は、報告される渦電流又は磁気誘導値の約50%である。
【0065】
基材
本発明の基材は、金属又はセラミックであり得、その例としては、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、冷間圧延鋼、ステンレス鋼、エナメル、ガラス、及びパイロセラムが挙げられる。これらの材料は、基材全体を形成してもよく、又は複合材料の場合は基材の表面のみを形成してもよい。一実施形態では、基材は、平滑かつ清潔であり得、すなわち、Alpa Co.(Milan,Italy)製又は任意のモデルRT80表面テスタ、又は別個のピーク数及びピーク分布、並びに粗さ平均(Ra)、粗さ特性の合計高さ(Rt)、及び平均粗さ深さ(Rz)を測定することができる任意の同等の表面粗さテスタによって測定されるように、約50マイクロインチ(1.25μm)未満の表面特性を有する。バイロセラム及びいくつかのガラスの場合、改善された結果は、肉眼では見えないわずかな化学エッチングなどによる基材表面の活性化によって得られ、すなわち、表面は依然として平滑である。基材はまた、米国特許第5,079,073号に開示されているようなポリアミック酸塩のミストコートなどの接着剤で化学的に処理され得る。
【0066】
焦げ付き防止コーティングでコーティングされた本発明の基材は、調理器具(例えば、フライパン)、耐熱皿、炊飯器及びその挿入物、ウォーターポット、アイロン台板、コンベヤ、シュート、ロール表面、切断刃などの製品に商業用途を見出すことができる。
【0067】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書において言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照文献は、特定の一節を引用するものでない限り、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が生じた場合は、定義を含め、本明細書が優先される。更に、材料、方法、及び実施例は、単なる例証であり、限定することを意図するものではない。
【0068】
試験法
Computer Aided Mechanical Utensil Tester(CAMUT)
CAMUT装置は、表面上の焦げ付き防止コーティングの摩耗試験を行うものであり、焦げ付き防止調理表面の日常使用において遭遇する切断、擦傷、かき取り、及び撹拌などの典型的な調理状況をシミュレートするように設計されている。その用途は、調理中にヒトが毎日行う運動パターンに基づく。この試験は、極端な状況における調理器具の弾力性を測定する。
【0069】
CAMUT装置は、R.Walter、G.Bechtold、K.Friedrich、P.ThomasによってMechanische Verschleissprufung von Antihaftbeschichtungen mit automatisierter Bewertung der Oberflachen(すなわち、Mechanical Wear Test of Non-stick Coatings with Automated Surface Evaluation)に、Material Prufung (すなわち、Material Testing) 43 (2001) 467-472に、また、R.Walter、G.Bechtold、K.FriedrichによってEine Prufmaschine fur Bratpfannen(すなわち、A Testing Machine for Frying Pans),Uni-Spektrum 3(2000)50-55に記載されている。
【0070】
CAMUTは、4つの別個の台所ツール(フォーク、ナイフ、スパチュラ、泡立て器)を有する試験ヘッドを利用して、焦げ付き防止調理表面の摩耗をシミュレートし、それぞれがそれ自体の較正された荷重を有し、それぞれがコーティングされた基材(調理表面)上で個々に異なる運動を操作してコーティングを損傷させ、焦げ付き防止調理表面上での調理中にヒトが引き起こす損傷をシミュレートする。それぞれのツールは、別のタイプに交換するか、又は必要に応じて装着するときに交換するように取り外すことができる。それぞれのツールは、独立した荷重(自重)を有する。コーティングされた基材の表面にわたるツールの運動は、マイクロプロセッサ及び2つのX-Y軸によって制御され、多くのタイプの運動(幾何学的から無作為まで)を可能にする。それぞれの試験ツールは、標準的なパターンに従い、パターンに続くいくつかのサイクルを実行する。コーティングされた基材当たりの完全な試験ルーチン(例えば、フライパン)は、2時間を要し、線形カット(90秒間で10サイクル)、続いて線形擦傷及び円形攪拌(それぞれ190秒間で20サイクル及び360秒間で60サイクル)、続いて線形前後運動(48秒間で10サイクル)、続いて通常の円形攪拌運動(80秒で10サイクル)を含む、計40サイクルを実行する。コーティングされた基材はまた、試験の持続時間にわたって200℃に加熱される。
【0071】
CAMUT試験方法の目的は、基材(例えば、カセロール又はフライパン)に塗布されたコーティングの耐擦傷性を決定することである。40サイクルの完了後、試験された物品を室温まで冷却した後、試験した項目を標準的な写真と比較して、擦傷評価を決定する。擦傷評価は、1(重度の損傷、基材から除去された有意な量のコーティング、及び/又は基材への擦傷、明らかな基材露出)~9(ほぼ損傷なし、本質的に基材からコーティングが除去されていない、及び/又は基材への擦傷がない)の範囲であり、目視観察と標準的な写真との対比によって割り当てられる。
【実施例
【0072】
フルオロポリマー
PTFE分散液:Chemours Company(Wilmington,Delaware)から入手可能なChemours TFEフルオロポリマー樹脂分散液グレード40。商標名PTFE Fluoroplastic Dispersion DISP 40。ASTM D4441によって測定された分散液密度1.51g/cm(60%固形分)及び平均直径分散液粒径0.23マイクロメートルを有する。
【0073】
FEP分散液:Chemours Company(Wilmington,Delaware)から入手可能なChemours FEPフルオロポリマー樹脂分散液。商標名FEP Fluoroplastic Dispersion FEPD 121。ASTM D4441によって測定された固形分含有量55%及び平均直径分散液粒径0.18マイクロメートルを有するTFE/HFPフルオロポリマー樹脂分散液。樹脂は、ASTM D2116の方法によって372℃で測定された、10.6~12.8重量%のHFP含有量及び8g/10分のメルトフローレートを有する。
【0074】
PFA分散液:Chemours Company(Wilmington,Delaware)から入手可能であるChemours PFAフルオロポリマー樹脂分散液。商標名PFA Fluoroplastic Dispersion PFAD 335D。ASTM D4441によって測定された分散液密度1.50g/cm(60%固形分)及び平均直径分散液粒径0.20マイクロメートル、並びにASTM D2116の方法によって372℃で測定された、2g/10分のメルトフローレートを有する。
【0075】
高分子バインダー
ポリアミック酸ポリマー-ポリアミック酸塩は、30℃でN,N-ジメチルアセトアミド中0.5重量%溶液として測定したときに、少なくとも0.1の固有粘度を有するポリアミック酸として一般に入手可能である。米国特許第4,014,834号(Concannon)に詳述されているように、これは、N-メチルピロリドンなどの合体剤及びフルフリルアルコールなどの減粘剤に溶解し、第三級アミン、好ましくはトリエチルアミンと反応させて、水に溶ける塩を形成する。
【0076】
無機硬膜剤
Electroschmelzwerk Kempten GmbH(ESK)(Munich Germany)によって供給される炭化ケイ素。
F 1000=5.0~7.0マイクロメートル中央粒径dS50
P 1200=41.8~44.8マイクロメートル中央粒径dS50
P 600=20.6~22.6マイクロメートル中央粒径dS50
P 320=5.0~7.0マイクロメートル中央粒径dS50
【0077】
平均粒径は、供給元によって提供される情報に従い、ISO 6344対応のFEPA-Standard-43-GB 1984R 1993を使用して沈殿によって測定される。
【0078】
比較例1(CE1)-2コートシステム
表1の組成物により、PTFE樹脂、FEP樹脂、ポリアミック酸高分子バインダー、及び水性溶媒を含有するプライマー液コーティング組成物を調製する。表2の組成物により、PTFE樹脂、PFA樹脂、アクリルポリマー樹脂、及び水性溶媒を含有するトップコート液体コーティング組成物を調製する。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
滑らかなアルミニウム基材は、洗浄してグリースを除去することにより処理されるが、機械的に粗面化されない。プライマー中にSiC粒子を含まないプライマー/トップコートの2コート焦げ付き防止コーティングシステムを基材上にスプレーコーティングする。プライマーの組成物は、表1に示されている。プライマーを、基材上に連続層で、乾燥及び硬化乾燥膜厚さ10~15μmにスプレーコーティングする。プライマー層をエアオーブン中で120~150℃の温度で乾燥させ、次いでトップコートを塗布する前に35~45℃の温度まで冷却する。トップコートの組成物は、表2に示されている。トップコートを、乾燥したプライマー上に15~20μmの乾燥膜厚さでスプレーコーティングする。複合プライマー/トップコート層を、エアオーブン中で120~150℃の温度で乾燥させる。次いで、複合プライマー/トップコート層を、428~435℃の温度で3~5分間硬化させる。得られた2つのコートシステムの総乾燥膜厚さは、25μmである。
【0082】
比較例2(CE2)-3コートシステム-連続中間コート
米国特許第6,291,054号の表7の組成物に従って、PTFE樹脂、FEP樹脂、PAI結合剤、及び水性溶媒を含有するプライマー液体コーティング組成物を調製する。米国特許第6,291,054号の表8の組成物に従って、PTFE樹脂、PFA樹脂、アクリル樹脂、アルミナ、及び水性溶媒を含有する中間コート液体コーティング組成物を調製する。米国特許第6,291,054号の表9の組成物に従って、PTFE樹脂、PFA樹脂、アクリル樹脂、及び溶媒を含有するトップコート液体コーティング組成物を調製する。
【0083】
滑らかなアルミニウム基材は、洗浄してグリースを除去することにより処理されるが、機械的に粗面化されない。プライマー中にSiC粒子を含むプライマー/中間コート/トップコートの3コート焦げ付き防止コーティングシステムを基材上に連続層でスプレーコーティングする。プライマーの組成は、米国特許第6,291,054号の表7に示されている。プライマー層をエアオーブン中で120~150℃の温度で乾燥させ、次いで428~435℃の温度で3~5分間硬化させる。硬化後に測定されるプライマーの乾燥膜厚さは、18~22μmである。硬化プライマー層を含有する基材を、中間コート及びトップコートの塗布の前に35~45℃の温度まで冷却する。連続中間コートを従来のやり方でスプレーコーティングする。ここで、中間コート液組成物をスプレーガン内の空気圧によって霧化させ、硬化プライマーに向かって方向付け、その上に堆積させる中間コート液組成物液滴のクラウドを作成し、硬化プライマー層上に中間コート液組成物の連続層を形成する。中間コート及びトップコートをそれぞれ、硬化プライマー上に15~20μmの乾燥膜厚さで塗布する。トップコートをウェットオンウェット方式で中間コート上に塗布する。中間コート及びトップコートの(プライマーによる)乾燥後、プライマー/中間コート/トップコートコーティングシステム全体を、428~435℃の温度で3~5分間硬化させる。得られた3コートプライマー/中間コート/トップコートコーティングシステムの硬化後の合計乾燥膜厚さは、42μmである。
【0084】
実施例1(E1)-3コートシステム-不連続な中間コート
米国特許第6,291,054号の表7の組成物に従って、PTFE樹脂、FEP樹脂、PAI結合剤、及び水性溶媒を含有するプライマー液体コーティング組成物を調製する。米国特許第6,291,054号の表9の組成物に従って、PTFE樹脂、PFA樹脂、アクリル樹脂、及び溶媒を含有するトップコート液体コーティング組成物を調製する。表3の組成物により、PTFE樹脂、炭化ケイ素、及び溶媒を含有する中間コート液体コーティング組成物を調製する。
【0085】
【表3】
【0086】
滑らかなアルミニウム基材は、洗浄してグリースを除去することにより処理されるが、機械的に粗面化されない。プライマー/中間コート/トップコートの3コート焦げ付き防止コーティングシステムを基材上にスプレーコーティングする。プライマーの組成物は、米国特許第6,291,054号の表7に示されているとおりである。プライマーを、基材上に連続層でスプレーコーティングする。プライマー層をエアオーブン中で120~150℃の温度で乾燥させ、次いで428~435℃の温度で3~5分間硬化させる。硬化後に測定されるプライマーの乾燥膜厚さは、20~24μmである。硬化プライマー層を含有する基材を、中間コート及びトップコートの塗布の前に35~45℃の温度まで冷却する。中間コートは、硬化プライマー上に不連続な層で塗布される、異なるサイズのSiCを有する補強システムである。不連続な塗布のために、中間コート液体コーティング組成物は、標準自動スプレーガン、例えば、少なくとも1.0mmのノズルサイズ(適切なエアキャップと組み合わされたもの)及び最大1.5mmのノズルサイズ(適切なエアキャップと組み合わせたもの)が装備され、非常に低い空気圧(0.3~0.6バールの空気圧)で操作されて、プライマー上に飛散されて本発明の不連続な中間コート層をもたらす液滴を生成する、スプレーガン内で霧化される。不連続な中間コート層は、プライマー層に接着され、プライマー層の表面の露出領域を露呈させるように、プライマー層の表面にわたって不連続的に分布した凝集粒子を含有する。例えば、凝集粒子の約5パーセント~約20パーセントは、クラスタ内にあり、硬化後、プライマー層の表面から測定したときに少なくとも0.1mmの直径及び少なくとも0.016mmの高さを有することが見出されており、中間コート層は、約0.05~0.25g/mの目付量(硬化基準で)を有する。トップコートを、ぬれた状態の中間コート上に15~20μmの乾燥膜厚さで連続コーティングとしてウェットオンウェット方式でスプレーコーティングする。中間コート及びトップコートの(プライマーによる)乾燥後、プライマー/中間コート/トップコートコーティングシステム全体を、428~435℃の温度で3~5分間硬化させる。得られた3コートプライマー/中間コート/トップコートコーティングシステムの硬化後の合計乾燥膜厚さは、42μmである。
【0087】
比較例3(CE3)-3コートシステム-連続中間コート
実施例1の材料及び手順を繰り返し、硬化コーティング基準の目付量で送達される中間コート層の量は、この比較例の中間コートを、連続層として硬化プライマー上にスプレーコーティングすることを除いて、実施例1と同じである。
【0088】
【表4】
【0089】
CAMUT試験結果
【0090】
【表5】
【0091】
CAMUT試験結果は、本発明の不連続な中間コートを利用する本発明のコーティング(E1)の耐摩耗性及び耐擦傷性が、連続中間コートを利用する比較コーティングの耐摩耗性及び耐擦傷性よりも大幅に改善されることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6