(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】高温ガラス溶融容器
(51)【国際特許分類】
C03B 5/425 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
C03B5/425
(21)【出願番号】P 2019545888
(86)(22)【出願日】2017-11-07
(86)【国際出願番号】 US2017060474
(87)【国際公開番号】W WO2018089387
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-09
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】デ アンジェリス,ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】デラミエルーア,メーガン オーロラ
(72)【発明者】
【氏名】ピーターズ,グイド
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-523698(JP,A)
【文献】特開2001-019436(JP,A)
【文献】特表2009-523697(JP,A)
【文献】特表2006-516046(JP,A)
【文献】特開2012-250906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00-21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニアを含む耐火材料を含む、側壁および床と、
前記耐火材料を通って延びる少なくとも1つの電極と
を含む、ガラス溶融送達システム容器であって、
前記少なくとも1つの電極が、ガラス溶融物と接触する前記耐火材料の破壊条件を超えることなく、前記耐火材料と接触するガラス溶融物を少なくとも
1600℃の平均温度で加熱するように構成され、
前記溶融容器が長さおよび幅を有し、前記長さの前記幅に対する比が、
2.4:1~
3.6:1の範囲であり、
前記溶融容器が、該溶融容器の前記幅の少なくとも
50%の深さを有するガラス溶融物を受け入れるように構成されている、ガラス溶融送達システム容器。
【請求項2】
前記容器が、前記耐火材料と接触する前記ガラス溶融物を、少なくとも
5,000時間の間、少なくとも
1600℃の平均温度へと加熱するように構成される、請求項1に記載のガラス溶融送達システム容器。
【請求項3】
前記溶融容器が2つの対向する側壁を含み、各対向する側壁がそこを通って延びる少なくとも2つの電極を備えており、電極間の最短距離と前記側壁の長手方向における該電極の幅との比が、
0.8:1~
2.4:1の範囲である、請求項1に記載のガラス溶融送達システム容器。
【請求項4】
前記容器内の前記ガラス溶融物の体積(V)および前記床と前記少なくとも1つの電極の底部との間の垂直距離(Y)が、関係(V)/(Y)
3<60,000を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラス溶融送達システム容器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの電極が、前記溶融容器の内部チャンバ内へと所定の距離だけ延びる細長い本体を備えている、請求項1に記載のガラス溶融送達システム容器。
【請求項6】
前記溶融容器が、前記側壁から所定の距離にある前記床上の位置から前記溶融容器の内部チャンバ内へと所定の距離だけ延びる細長い本体を備えている少なくとも1つの電極を含む、請求項5に記載のガラス溶融送達システム容器。
【請求項7】
ガラス物品の製造方法であって、該方法が、ガラス溶融送達システム容器内でガラス組成物を処理する工程を含み、前記ガラス溶融送達システム容器が、
ジルコニアを含む耐火材料を含む、側壁および床と、
前記耐火材料を通って延びる少なくとも1つの電極と
を含み、
前記少なくとも1つの電極が、ガラス溶融物と接触する前記耐火材料の破壊条件を超えることなく、前記耐火材料と接触するガラス溶融物を少なくとも
1600℃の平均温度で加熱し、
前記溶融容器が2つの対向する側壁を含み、各対向する側壁が、該側壁を通って延びる少なくとも2つの電極を備えており、電極間の最短距離と前記側壁の長手方向における該電極の幅との比が、
0.8:1~
2.4:1の範囲であり、
前記床と前記少なくとも1つの電極の底部との間の垂直距離が、垂直方向の前記電極の長さの少なくとも
5%である、
方法。
【請求項8】
前記耐火材料と接触する前記ガラス溶融物が、少なくとも
5,000時間の間、少なくとも
1600℃の平均温度へと加熱される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶融容器が長さおよび幅を有し、前記長さの前記幅に対する比が、
2.4:1~
3.6:1の範囲である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記容器内の前記ガラス溶融物の体積(V)および前記床と前記少なくとも1つの電極の底部との間の垂直距離(Y)が、関係(V)/(Y)
3<60,000を満たす、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの電極が、前記溶融容器の内部チャンバ内へと所定の距離だけ延びる細長い本体を備えている、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記溶融容器が、前記側壁から所定の距離にある前記床上の位置から前記溶融容器の内部チャンバ内へと所定の距離だけ延びる細長い本体を備えている少なくとも1つの電極を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2016年11月8日出願の米国仮特許出願第62/419,133号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して、ガラス融送達システム容器に関し、より詳細には高温ガラス製造用の容器に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば高解像度ディスプレイ用途などに使用するためのガラス組成物は、かなり高い溶融温度を有していることがある。このような組成物は、容器壁とガラス溶融物との界面に耐火材料を有する溶融容器または加熱炉などのガラス溶融送達システム容器内で溶融されることが多い。電極の使用および/または可燃性流体の燃焼によって溶融容器にパワーが供給される。
【0004】
しかしながら、高温のガラス溶融物は、耐火材料に対して腐食性であり、時間の経過とともに耐火物を薄化する傾向があり、それによって容器寿命を制限する可能性がある。加えて、耐火材料の腐食は、該耐火材料がガラス溶融物中に溶解することによって生じる欠陥を含めて、最終ガラス製品に望ましくない欠陥を生じる可能性がある。したがって、耐食性は、ガラス溶融送達システム容器の耐火材料にとって重要な性質である。
【0005】
ガラス溶融送達システム容器の耐火材料の他の重要な特性としては、耐熱衝撃性および電気抵抗率が挙げられる。その点で、耐熱衝撃性および電気抵抗率は、耐火材料が破損し、破損の重大度に応じて、溶融容器の耐用年数が損なわれるか、あるいは耐火材料の影響を受ける領域に固体欠陥を生じるかもしれない可能性に対処する。
【0006】
例えば、耐火材料の電気抵抗率は、電気伝導の大部分が耐火材料ではなくガラス溶融物内で起こるように十分に高くなければならない。一般に、ガラス溶融物の電気抵抗率が耐火物の電気抵抗率よりも実質的に低い場合には、これはそれほど実際的な問題ではない。しかしながら、ガラス溶融物の電気抵抗率が耐火物の電気抵抗率とほぼ等しいかそれより高い場合には、それは重大な問題となりうる。ガラス溶融物と耐火物との抵抗率の相対的な差異は、組成に依存するだけでなく、温度にも依存する。例えば、耐火材料は、温度が高くなるにつれて次第に導電性になり、その結果、高温ガラス溶融操作において支配的な温度では、耐火材料と特定のガラス溶融物との界面における耐火材料の電気抵抗率は、ガラス溶融物のものよりも低くなりうるのに対し、耐火物の電気抵抗率は、より低い温度では同じガラス溶融物のものよりも高くなりうる。
【0007】
ガラス溶融物の電気抵抗率に対する耐火材料の電気抵抗率は、耐火材料内で発生する電力の量に影響を与える。耐火材料内で発生する電力の量はまた、耐火材料の幾何学形状、電極間の経路長、および電極間の電圧を含めた他の要因によっても影響を受ける。破壊条件は、耐火材料において、耐火材料からの熱損失によって消散できる量を上回るパワーが耐火材料内で生じる条件として説明することができる。ガラス溶融物界面での耐火材料からの熱伝達量および高温耐火物から該耐火物の低温面への熱伝達量に応じて、これは、次に、耐火材料の温度がその融点まで上昇する望ましくない暴走状態を引き起こす可能性がある。ひとたび融点を超えると、耐火物を冷却した後であっても、耐火物の抵抗率は、溶融および再冷却することによって、あるいは他の近くの耐火物と化学的に混合することによって、恒久的に低くなりうる。この低い抵抗率は、リカバリー後に破壊条件を超える可能性をより高くする。最終的に、耐火物の破壊条件を超えずに、必要とされるガラス溶融温度を維持することができない場合には、製造プロセスを停止しなければならず、システムを再構築するためのコストおよび製造時間の損失を招く。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に開示される実施形態は、ガラス溶融送達システム容器を含む。ガラス溶融送達システム容器は少なくとも1つの側壁および床を含み、該少なくとも1つの側壁および床は耐火材料を含有している。ガラス溶融送達システム容器はまた、耐火材料を通って延びる少なくとも1つの電極も備えている。少なくとも1つの電極は、ガラス溶融物と接触する耐火材料の破壊条件を超えることなく、耐火材料と接触するガラス溶融物を少なくとも約1600℃の平均温度で加熱するように構成される。
【0009】
本明細書に開示される実施形態はまた、ガラス物品の製造方法も含む。本方法は、ガラス溶融送達システム容器内でガラス組成物を処理する工程を含む。ガラス溶融送達システム容器は少なくとも1つの側壁および床を含み、該少なくとも1つの側壁および床は耐火材料を含有している。ガラス溶融送達システム容器はまた、耐火材料を通って延びる少なくとも1つの電極も備えている。少なくとも1つの電極は、ガラス溶融物と接触する耐火材料の破壊条件を超えることなく、耐火材料と接触するガラス溶融物を少なくとも約1600℃の平均温度で加熱する。
【0010】
本明細書に開示される実施形態はさらに、上記方法によって製造されたガラスシートなどのガラス物品、並びに上記方法によって製造されたガラスシートを含む電子デバイスも含む。
【0011】
本明細書に開示される実施形態のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載されており、一部には、その説明から当業者には容易に明らかになり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、本明細書に記載される開示される実施形態を実施することによって認識される。
【0012】
前述の概要および後述する詳細な説明はいずれも、特許請求の範囲に記載される実施形態の性質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することが意図されていることが理解されるべきである。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は本開示のさまざまな実施形態を例証しており、その説明とともに、それらの原理および動作を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】例示的なフュージョンダウンドローガラス製造プロセスの概略図
【
図2】本明細書に開示される実施形態に従うガラス溶融容器の上面断面図
【
図4】本明細書に開示される実施形態に従うガラス溶融容器の上面断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
これより、その例が添付の図面に例証される本開示の好ましい実施形態について、詳細に説明する。可能な場合はいつでも、同一または類似した部分についての言及には、図面全体を通して同じ参照番号が用いられる。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0015】
本明細書では、範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表現することができる。このような範囲が表現される場合、別の実施形態は、その1つの特定の値からおよび/または他方の特定の値までを含む。範囲の各々の端点は、他の端点に関連して、および他の端点とは独立してのいずれにおいても重要であることが理解されよう。
【0016】
本明細書で用いられる方向の用語(例えば、上、下、右、左、前、後、上部、底部)は、描かれた図を参照してのみ作られており、絶対的な方向を意味することは意図していない。
【0017】
特に明記しない限り、本明細書に記載のいずれの方法も、その工程が特定の順序で実行されることを必要とする、若しくは、装置には特定の向きが必要であると解釈されることは、決して意図していない。したがって、方法クレームが、その工程が従うべき順序を実際に記載していない場合、若しくは、装置クレームが個々の構成要素に対する順序または方向を実際に記載していない場合、あるいは、工程が特定の順序に限定されるべきであることが特許請求の範囲または明細書に別段に明確に述べられていない場合、若しくは装置の構成要素に対する特定の順序または向きが記載されていない場合には、いかなる意味においても、順序または方向が推測されることは決して意図していない。これには、次を含む解釈のためのあらゆる非明示的根拠が当てはまる:工程の配置、動作フロー、構成要素の順序、または構成要素の方向に関する論理的事項;文法上の編成または句読点から派生した平明な意味;および、明細書に記載される実施形態の数またはタイプ。
【0018】
本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「ある1つの(a)」構成要素への言及は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、そのような構成要素を2つ以上有する態様を含む。
【0019】
本明細書で用いられる場合、用語「ガラス溶融送達システム容器」は、ガラス溶融送達システムに用いられるあらゆる容器を含み、電気抵抗加熱は、ガラス組成物を加熱するため、および/または、ガラス組成物の温度を所定の温度より高く若しくは所定の温度範囲内に維持するために、用いられる。ガラス溶融送達システム容器の例としては、本明細書に記載される溶融容器、清澄容器、および接続導管が含まれる。
【0020】
本明細書で用いられる場合、用語「耐火材料の破壊条件」とは、耐火材料において、該耐火材料からの熱損失によって消散できる量を上回るパワーが耐火材料内で生じる条件を指し、その結果、例えば、経時によって、耐火材料の少なくとも1つの機械的性質が、耐火材料の破壊条件が満たされる結果として悪影響を被る。
【0021】
図1に例示的なガラス製造装置10が示されている。幾つかの例では、ガラス製造装置10は、溶融容器14を含むことができるガラス溶融炉12を備えることができる。溶融容器14に加えて、ガラス溶融炉12は、任意選択的に、原料を加熱して該原料を溶融ガラスへと変換する加熱要素(例えば、燃焼バーナーまたは電極)などの1つ以上の追加の構成要素を含むことができる。さらなる例では、ガラス溶融炉12は、溶融容器の近傍からの熱損失を低減する熱管理装置(例えば断熱構成要素)を含んでいてもよい。さらに別の例では、ガラス溶融炉12は、原材料のガラス溶融物への溶融を促進する電子デバイスおよび/または電気機械デバイスを含むことができる。さらにまた、ガラス溶融炉12は、支持構造(例えば、支持シャーシ、支持部材等)または他の構成要素を含んでいてもよい。
【0022】
ガラス溶融容器14は、耐火材料、典型的には、例えばアルミナまたはジルコニアを含む耐火セラミック材料などの耐火セラミック材料で構成される。幾つかの例では、ガラス溶融容器14は、耐火セラミックブリックから構築されてもよい。ガラス溶融容器14の特定の実施形態は、以下により詳細に説明される。
【0023】
幾つかの例では、例えば連続長のガラスリボンなどのガラス基板を製造するためのガラス製造装置の構成要素として、ガラス溶融炉を組み込むことができる。幾つかの例では、本開示のガラス溶融炉は、スロットドロー装置、フロートバス装置、フュージョン法などのダウンドロー装置、アップドロー装置、プレス圧延装置、管延伸装置、または本明細書に開示される態様からの利益を享受するであろう他の任意のガラス製造装置を含む、ガラス製造装置の構成要素として組み込まれうる。例として、
図1は、その後に個別のガラスシートへと加工するためにガラスリボンを溶融延伸するための溶融ダウンドローガラス製造装置10の構成要素として、ガラス溶融炉12を概略的に示している。
【0024】
ガラス製造装置10(例えばフュージョンダウンドロー装置10)は、任意選択的に、ガラス溶融容器14に対して上流に位置付けられた上流ガラス製造装置16を含みうる。幾つかの例では、上流ガラス製造装置16の一部または全体をガラス溶融炉12の一部として組み込むことができる。
【0025】
図示される例に示すように、上流ガラス製造装置16は、貯蔵ビン18、原料送達デバイス20、および該原料送達デバイスに接続されたモーター22を含みうる。貯蔵ビン18は、矢印26で示すように、ガラス溶融炉12の溶融容器14に供給することができる量の原料24を貯蔵するように構成することができる。原料24は、典型的には、1つ以上のガラス形成金属酸化物と1つ以上の改質剤とを含む。幾つかの例では、原料送達デバイス20が所定量の原料24を貯蔵ビン18から溶融容器14へと送達するように、モーター22によって原料送達デバイス20に動力を与えることができる。さらなる例では、モーター22は、溶融容器14の下流で感知される溶融ガラスのレベルに基づいた制御された速度で原料24を導入するように原料送達デバイス20に動力を与えることができる。その後、溶融容器14内の原料24を加熱して溶融ガラス28を形成することができる。
【0026】
ガラス製造装置10はまた、任意選択的に、ガラス溶融炉12に対して下流に位置付けられた下流ガラス製造装置30を含むことができる。幾つかの例では、下流ガラス製造装置30の一部をガラス溶融炉12の一部として組み込むことができる。幾つかの事例では、以下で論じる第1の接続導管32、または下流ガラス製造装置30の他の部分をガラス溶融炉12の一部として組み込むことができる。第1の接続導管32を含む下流ガラス製造装置の要素は、貴金属から形成することができる。適切な貴金属としては、白金、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、およびパラジウムからなる金属の群から選択される白金族金属、またはそれらの合金が挙げられる。例えば、ガラス製造装置の下流構成要素は、約70~約90質量%の白金および約10質量%~約30質量%のロジウムを含む白金-ロジウム合金から形成することができる。しかしながら、他の適切な金属として、モリブデン、パラジウム、レニウム、タンタル、チタン、タングステン、およびそれらの合金を挙げることができる。
【0027】
下流ガラス製造装置30は、溶融容器14の下流に位置し、かつ、上記第1の接続導管32によって溶融容器14に結合された、清澄容器34などの第1の調整(すなわち、処理)容器を含みうる。幾つかの例では、溶融ガラス28は、第1の接続導管32によって溶融容器14から清澄容器34へと重力供給されてもよい。例えば、重力によって、溶融ガラス28を、溶融容器14から清澄容器34へと第1の接続導管32の内部経路を通過させることができる。しかしながら、他の調整容器を、例えば溶融容器14と清澄容器34との間など、溶融容器14の下流に位置付けることができることが理解されるべきである。幾つかの実施形態では、一次溶融容器からの溶融ガラスをさらに加熱して溶融プロセスを継続するか、または清澄容器に入る前に溶融容器内の溶融ガラスの温度より低い温度へと冷却する調整容器を溶融容器と清澄容器との間に用いることができる。
【0028】
気泡は、さまざまな技術によって、清澄容器34内の溶融ガラス28から除去することができる。例えば、原料24は、加熱されると化学還元反応を被り、酸素を放出する、酸化スズなどの多価化合物(すなわち清澄剤)を含みうる。他の適切な清澄剤としては、限定はしないが、ヒ素、アンチモン、鉄、およびセリウムが挙げられる。清澄容器34は、溶融容器温度より高い温度へと加熱され、それによって溶融ガラスと清澄剤を加熱する。清澄剤の温度誘発性の化学還元によって生じた酸素気泡は、清澄容器内の溶融ガラスを通って上昇し、ここで、溶融炉内で生成した溶融ガラス内のガスは、清澄剤によって生成された酸素気泡中に拡散または一体化しうる。次に、拡大した気泡は、清澄容器内の溶融ガラスの自由表面へと上昇し、その後、清澄容器から排出することができる。酸素気泡はさらに、清澄容器内での溶融ガラスの機械的混合も誘発することができる。
【0029】
下流ガラス製造装置30は、溶融ガラスを混合するための混合容器36など、別の調整容器をさらに含むことができる。混合容器36は、清澄容器34の下流に配置することができる。混合容器36を使用して均質なガラス溶融組成物をもたらし、それによって、そうでなければ清澄容器から出る清澄された溶融ガラス内に存在するであろう化学的または熱的不均一性のコードを低減することができる。示されるように、清澄容器34は、第2の接続導管38によって混合容器36に連結されうる。幾つかの例では、溶融ガラス28は、第2の接続導管38によって清澄容器34から混合容器36へと重力供給することができる。例えば、重力によって、溶融ガラス28を、清澄容器34から混合容器36へと第2の接続導管38の内部経路を通過させることができる。混合容器36は清澄容器34の下流に示されているが、混合容器36は、清澄容器34の上流に位置付けることもできることに留意すべきである。幾つかの実施形態では、下流ガラス製造装置30は、例えば清澄容器34の上流の混合容器と清澄容器34の下流の混合容器など、複数の混合容器を含んでいてもよい。これらの複数の混合容器は、同じ設計のものであっても、異なる設計のものであってもよい。
【0030】
下流ガラス製造装置30は、混合容器36の下流に配置することができる送達容器40などの別の調整容器をさらに含んでいてもよい。送達容器40は、溶融ガラス28を調整し、下流の成形装置内へと供給することができる。例えば、送達容器40は、出口導管44によって成形本体42への溶融ガラス28の一定の流れを調整および/または提供するためのアキュムレータおよび/または流量制御装置として機能することができる。示されるように、混合容器36は、第3の接続導管46によって送達容器40に連結されうる。幾つかの例では、溶融ガラス28は、第3の接続導管46によって混合容器36から送達容器40へと重力供給されうる。例えば、重力によって、第3の接続導管46の内部経路を通って清澄容器36から送達容器40へと溶融ガラス28を駆動させることができる。
【0031】
下流ガラス製造装置30は、上述の成形本体42と入口導管50とを備えた成形装置48をさらに含むことができる。出口導管44は、溶融ガラス28を送達容器40から成形装置48の入口導管50へと送達するように位置付けることができる。例えば、例において、出口導管44は入口導管50の内面に入れ子にされ、かつ、そこから離間され、それによって出口導管44の外面と入口導管50の内面との間に位置付けられた溶融ガラスの自由表面を提供することができる。フュージョンダウンドローガラス製造装置の成形本体42は、成形本体の上面に位置付けられたトラフ52と、成形本体の底縁部56に沿って延伸方向に収束する収束成形面54とを備えることができる。送達容器40、出口導管44、および入口導管50を介して成形本体のトラフへと送達された溶融ガラスは、トラフの側壁から溢れ出て、溶融ガラスの別々の流れとして収束成形面54に沿って下降する。溶融ガラスの別々の流れは、底縁部56の下で底縁部56に沿って合流して、単一のガラスリボン58を生成し、これは、重力、エッジロール、およびプルロールなど(図示せず)によってガラスリボンに張力を印加することにより、ガラスが冷えてガラスの粘性が増すにつれてガラスリボンの寸法を制御するように底縁部56から延伸方向60に延伸される。したがって、ガラスリボン58は、粘弾性転移を経て、ガラスリボン58に安定した寸法特性を与える機械的性質を獲得する。ガラスリボン58は、幾つかの実施形態では、ガラスリボンの弾性領域においてガラス分離装置100によって個々のガラスシート62へと分離することができる。次いで、ロボット64によって、把持具65を使用して個々のガラスシート62をコンベヤシステムに移すことができ、その後、個々のガラスシートをさらに加工することができる。
【0032】
図2は、側壁142および床144を有するガラス溶融容器14の上面断面図であり、側壁142および床144の各々は耐火材料を含む。溶融容器は長さ(L)および幅(W)を有する。溶融容器14はまた、側壁142を通って延びる複数の電極146も含む。具体的には、
図2の実施形態では、溶融容器14は、2つの対向する側壁142を含み、各対向する側壁はそこを通って延びる複数の電極146を含む。
【0033】
図3は、側壁142、床144、および複数の電極146を示す、
図2のガラス溶融容器14の側面図である。
図3の線282はガラス溶融線を表し、ガラス溶融深さは(D)で示されている。
図2の実施形態では、各電極は電極材料の複数のブロックの積み重ねを含み、連続したモノリス型の電極本体を形成する。
図3の実施形態では、各電極は、電極を形成する連続材料の単一ロッドを含み、その底部は、電極摩耗を補償するために電極を溶融物内に押し込むことができるように、追加の電極材料を底部に加えるためにねじ加工されていてもよい。
【0034】
電極146は、高温ガラス溶融物に対しても適切な耐食性を示す屈折特性を有する、任意の導電性材料で構成することができる。例示的な電極材料としては、限定はしないが、スズ、モリブデン、白金、並びにそれらの合金および酸化物からなる群より選択される少なくとも1つの材料が挙げられる。
【0035】
側壁144および床142は、各々、高温ガラス溶融物に対して良好な耐食性を有すると同時に比較的高い電気抵抗率を有する、耐火セラミックブリック材料などの耐火材料を含む。例示的な耐火材料としては、アルミナおよびジルコニアが挙げられる。ある特定の例示的な実施形態では、側壁144および床142は、各々、ジルコニアを含み、その開示全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許第7,687,422号、同第7,655,587号、および米国特許出願公開第2008/0076659号の各明細書に開示される少なくとも1つのジルコニア材料など、比較的高い電気抵抗率を有するジルコニア材料などのジルコニアで実質的に構成されていてもよい。
【0036】
電極146は、有利には、ジュール則によればP=I
2Rである(式中、Pは電気加熱力であり、Iは電流であり、Rは溶融条件下でのガラス溶融物の抵抗率である)、所望の電流密度分布を有するガラス溶融物を通る制御された電流を提供する交流電圧で電源(図示せず)に接続されており、所望の熱エネルギーをガラス溶融物に生成する。
図2および3に示される実施形態は、ジュール加熱がガラス溶融物と直接接触している電極146によって供給される電流をガラス溶融物に通すことによって行われる、複数の電極146を含む溶融容器14を示しているが、本明細書に開示される実施形態は、加熱炉をガラス溶融物が得る高い動作温度にするために、天然ガスなどの燃料の燃焼炎を追加的に用いるものも含むことが理解されるべきである。
【0037】
図2および3の実施形態において、電極146の少なくとも1つをガラス溶融容器14の中心に向かって内側へと移動するように押すために、電極押圧機構(
図2または3には示さず)を使用することができる。少なくとも1つの実施形態では、電極材料の各ブロックは、別々の独立した電極押圧機構に接続されていてもよい。少なくとも1つの実施形態では、電極押圧機構は、後部電極部分と直接または間接的に接続された少なくとも1つのロッドを含み、それを通して外部からの押圧力を後部電極部分に加えることができる。少なくとも1つの実施形態では、電極押圧機構は、後部電極部分と直接的または間接的に接続された力印加装置を断続的に駆動するように適合された自動モーターを含んでいてもよい。本明細書に開示される実施形態で採用されうる電極押圧機構のこれらおよび他の態様は、その開示全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第2530057号に記載されている。
【0038】
図2および3から分かるように、本明細書に開示される実施形態は、ガラス溶融容器14が少なくとも1つの側壁142および床144を備えているものを含み、該少なくとも1つの側壁および床は、耐火材料を含み、少なくとも1つの電極146が、少なくとも1つの側壁を通って延びる。少なくとも1つの電極146は、耐火材料と接触するガラス溶融物を、該ガラス溶融物と接触する耐火材料の破壊条件を超えることなく、例えば少なくとも約200時間の期間、さらには例えば少なくとも約500時間の期間、およびまたさらには例えば少なくとも約1000時間の期間など、少なくとも約100時間の期間、約1600℃~約1700℃を含む、例えば少なくとも約1625℃、さらには例えば少なくとも約1650℃、またさらには例えば少なくとも約1675℃など、少なくとも約1600℃の平均温度へと加熱するように構成される。
【0039】
例示的な実施形態では、少なくとも1つの電極146からの印加電圧は、例えば少なくとも約10,000時間の期間、さらには例えば少なくとも約50,000時間の期間、またさらには例えば少なくとも約100,000時間の期間など、少なくとも約5,000時間の期間、例えば約1600℃~約1700℃を含む、例えば少なくとも約1625℃、さらには例えば少なくとも約1650℃、またさらには例えば少なくとも約1675℃など、少なくとも約1600℃の平均温度で、ガラス溶融物の加熱を可能にするのに少なくとも十分であるべきである。例示的な印加電極電圧としては、約400ボルト~約1100ボルトなど、約200ボルト~約1500ボルトを含む、例えば少なくとも約400ボルト、さらには例えば少なくとも約600ボルト、またさらには例えば少なくとも約800ボルト、またさらには例えば少なくとも約1000ボルトなど、少なくとも約200ボルトが挙げられる。
【0040】
ガラス溶融物はまた、典型的には、特定の点においてガラス溶融物が到達する最高温度として定義することができる「ホットスポット」温度を有する。少なくとも1つの電極146が、ガラス溶融物と接触する耐火材料の破壊条件を超えることなく、約5,000時間~約200,000時間を含む、例えば少なくとも約10,000時間の期間、さらには例えば少なくとも約50,000時間の期間、またさらには例えば少なくとも約100,000時間の期間など、少なくとも約5,000時間の期間、約1650℃~約1750℃を含む、例えば少なくとも約1675℃、さらには例えば少なくとも約1700℃、またさらには例えば少なくとも約1725℃など、少なくとも約1650℃のホットスポット温度で耐火材料と接触するガラス溶融物を加熱するように構成されているものを本明細書に開示される実施形態が含むように、ホットスポット温度はガラス溶融物の平均温度よりも少なくとも50℃高いと予想することができる。
【0041】
ある特定の例示的な実施形態では、上記条件は、溶融容器が所定の範囲内の寸法を有する場合に満たすことができる。このような条件は、例として、例えば
図2に示すように、溶融容器が長さ(L)および幅(W)を有し、長さの幅に対する比が、約3:1を含む、約2.6:1~約3.4:1、さらには約2.8:~3.2:1など、約2.4:1~約3.6:1の範囲であるものを含みうる。
【0042】
加えて、上記条件は、ガラス溶融物が溶融容器の幅に対して特定の深さを有する場合に満たすことができる。このような条件は、例として、ガラス溶融物が、例えば
図3に示すような深さ(D)および例えば
図2に示すような幅(W)を有し、ガラス溶融物の深さが、溶融容器の幅の約50%~約80%など、溶融容器の幅の例えば少なくとも約55%、さらには例えば少なくとも約60%、およびさらに例えば少なくとも約65%、およびまたさらに例えば少なくとも約70%など、少なくとも約50%であるものを含みうる。
【0043】
加えて、上記条件は、電極が、それらの幅および次に最も近い電極への近接性に関して所定の構成を有する場合に満たすことができる。このような条件は、例として、溶融容器が2つの対向する側壁を含み、各対向する側壁がそこを通って延びる少なくとも2つの電極を備えており、ここで、例えば
図3に(B)として示される電極間の最短距離と例えば
図3に(A)として示される側壁の長手方向の電極の幅との比が、約1.5:1を含む、例えば約1:1~約2.2:1、さらには例えば約1.2:1~約2:1など、約0.8:1~約2.4:1の範囲であるものを含みうる。
【0044】
加えて、上記条件は、電極がそれらの長さおよび床からの距離に関して所定の構成を有する場合に満たすことができる。このような条件は、例として、例えば
図3に(Y)として示される各電極の床と底部との間の垂直距離が、垂直方向の各電極の長さの約5%~約20%を含む、例えば垂直方向の各電極の長さの少なくとも約10%、さらには例えば垂直方向の各電極の長さの少なくとも約15%など、例えば
図3に(X)として示される垂直方向の各電極の長さの少なくとも約5%であるものを含みうる。
【0045】
加えて、上記条件は、容器内のガラス溶融物の体積と、各電極の床と底部との間の垂直距離との間に特別な関係が存在する場合に満たすことができ、ここで、容器内のガラス溶融物の体積(V)は、例えば、
図2および3に示されるように(L)×(W)×(D)で表すことができ、(V)/(Y)
3が、約2,000~約8,000を含む、さらには約3,000~約6,000を含む、例えば約1,000~約10,000など、例えば約40,000未満、さらには例えば約20,000未満、およびさらに例えば約10,000未満など、約60,000未満である場合などに、各電極の床と底部との間の垂直距離は、例えば
図3に(Y)として示すことができる。
【0046】
図2および3の実施形態は、各対向する側壁142がそこを通って延びる7つの電極146を含む、2つの対向する側壁142を備えた溶融容器14を示しているが、本明細書に開示される実施形態は、2つの対向する側壁が各々、各対向する側壁に例えば2~50の電極、さらには例えば5~20の電極など、1~100の電極を含む、各対向する側壁に少なくとも1つの電極、少なくとも2つの電極、少なくとも3つの電極など、任意の数の電極を含むものを含みうることが理解されるべきである。例えば、各対向する側壁は、例えば
図3に示すような(A)の幅を各々有するN個の電極を有することができ、ここで、例えば
図3に(B)で示されるような電極間の最短距離は、上記の関係を満たし、N×Aは、例えば
図2に示される溶融容器の長さ(L)の約30%~約50%を含む、例えば少なくとも約35%、さらに少なくとも約40%、さらには少なくとも約45%など、少なくとも約30%である。
【0047】
図4および5は、複数の電極を含む溶融容器14の代替的な実施形態の上面断面図および端面断面図をそれぞれ示しており、第1の電極148のセットは溶融容器14の側壁142を通って延び、第2の電極147のセットは溶融容器14の床144を通って延びる。
図4および5に示される実施形態では、各電極は、溶融容器14の内部チャンバ内へと所定の距離だけ延びる細長い本体を備えている。加えて、第2の電極のセットは、少なくとも1つの側壁142から所定の距離にある床144上の位置から延びる。
【0048】
図5から分かるように、第1のセットの電極148の各々は、床144に対して平行な平面(P)に対して角度(α)で延びている。角度(α)は、例えば、例えば約10度~約60度、さらには例えば約20度~約45度など、約0度~約75度の範囲でありうる。
【0049】
電極147および/または148の断面の幾何学形状は限定されていないが、ある特定の例示的な実施形態では、電極147および/または148は、実質的に円形または楕円形の断面を有する実質的に円筒形の形状を有することができる。正方形、長方形、および三角形などの他の断面もまた可能である。電極147および/または148の直径は、限定されていないが、例えば、約3インチ(約7.62cm)を含む約2~4インチ(約5.08~10.16cm)など、約1~5インチ(約2.54~12.7cm)の範囲でありうる。
図2および3を参照して説明した実施形態と同様に、電極147および/または148は、高温ガラス溶融物に対して適切な耐食性も示す、屈折特性を有する任意の導電材料から構成することができる。例示的な電極材料としては、限定はしないが、スズ、モリブデン、白金、並びにそれらの合金および酸化物からなる群より選択される少なくとも1つの材料が挙げられる。
【0050】
ある特定の例示的な実施形態では、第2の電極147のセットは、ガラス溶融物の深さの約60%~約75%を含む、例えば少なくとも約65%、さらには例えば少なくとも約70%など、少なくとも約60%だけ、床上の位置から上方へと延びることができる。このような電極はまた、例えば、溶融容器142の幅の例えば約5%~約20%など、少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%、さらには例えば少なくとも約15%の距離だけ、最も近い側壁から離れて延在しうる。
【0051】
図5に示される実施形態では、ガラス溶融物内へと最も遠くまで延びる電極147および148の部分は、ガラス溶融物中でほぼ同じおおよその高さにあり、かつ、最も近い側壁からほぼ同じおおよその距離にあるが、本明細書に開示される実施形態はそのように限定されず、ガラス溶融物内へと最も遠く延びる電極147の部分が、ガラス溶融物内へと最も遠くまで延びる電極148の部分と比較して、ガラス溶融物内でより高いまたはより低い高さでありうる、および/または、最も近い側壁からより近くまたはより遠くにありうるものも含むことが理解されるべきである。ある特定の実施形態では、個々の電極147は、異なる高さ、直径、および/または最も近い側壁からの距離のものでありうることが理解されるべきである。加えて、ある特定の実施形態では、個々の電極148は、ガラス溶融物内へと異なる距離で延び、床144に平行な平面に対して異なる角度で延び、および/または異なる直径を有することができる。
【0052】
図4および5の実施形態は、各対向する側壁142が、そこを通って延びる12の電極148を含み、床144が、電極148に対して交互の配置で、そこを通って延びる24の電極147を含む、2つの対向する側壁142を含む溶融容器14を示しているが、本明細書に開示される実施形態は、2つの対向する側壁および床の各々が、各対向する側壁および/または床を通って延びる、例えば2~50の電極、さらには例えば5~20の電極など、各対向する側壁および/または床を通って延びる1~100の電極を含む、各対向する側壁および/または床を通って延びる少なくとも1つの電極、少なくとも2つの電極、少なくとも3つの電極など、そこを通って延びる任意の数の電極を有するものを含む、別の構成を含みうることが理解されるべきである。例えば、各対向する側壁および/または床は、そこを通って延びるN個の電極を有することができ、ここで、電極間の最短距離は、溶融容器の長さの約5%を含む、例えば約2%~約15%、さらには例えば約3%~約10%、さらに例えば約4%~約8%など、例えば約1%~約20%の範囲である。
【0053】
本明細書に開示される実施形態は、比較的高いまたは低い電気抵抗率を有するものを含む、さまざまなガラス組成物とともに使用することができる。このような組成物は、例えば、58~65質量%のSiO2、14~20質量%のAl2O3、8~12質量%のB2O3、1~3質量%のMgO、5~10質量%のCaO、および0.5~2質量%のSrOを含有する無アルカリガラス組成物などのガラス組成物を含みうる。このような組成物はまた、58~65質量%のSiO2、16~22質量%のAl2O3、1~5質量%のB2O3、1~4質量%のMgO、2~6質量%のCaO、1~4質量%のSrO、および5~10質量%のBaOを含有する無アルカリガラス組成物などのガラス組成物も含みうる。このような組成物は、さらには、57~61質量%のSiO2、17~21質量%のAl2O3、5~8質量%のB2O3、1~5質量%のMgO、3~9質量%のCaO、0~6質量%のSrO、および0~7質量%のBaOを含有する無アルカリガラス組成物などのガラス組成物も含みうる。このような組成物は、追加的に、55~72質量%のSiO2、12~24質量%のAl2O3、10~18質量%のNa2O、0~10質量%のB2O3、0~5質量%のK2O、0~5質量%のMgO、および0~5質量%のCaOを含み、ある特定の実施形態では、1~5質量%のK2Oおよび1~5質量%のMgOも含みうる、例えばアルカリ含有ガラス組成物などのガラス組成物を含みうる。
【0054】
本明細書に開示される実施形態は、テレビ、タブレット、およびスマートフォンなどの高解像度ディスプレイを有する電子デバイスを含む、電子デバイスに使用されるガラスシートなどのガラス物品の製造に使用することができる。
【0055】
本明細書に開示される実施形態に従って電極および溶融容器の幾何学形状を構成することによって、ガラス溶融物と接触する耐火材料の破壊条件を超えることなく、少なくとも約1600℃の平均温度でガラス溶融物を加熱することができる。この点に関し、出願人が行ったモデル化実験は、ガラスが上記組成のいずれかを含み、耐火物がジルコニアを含む場合などに、少なくとも約1600℃のガラスおよび耐火物温度において、電極の構成および溶融容器の幾何学形状が、ガラス溶融物内で発生したパワーに対する、ガラス溶融物界面において耐火材料内で発生したパワーの量に実質的に影響を及ぼすことを示唆している。一方、ある特定の高温溶融操作では、十分な電極電力によって、ガラス溶融物が少なくとも約1600℃の平均温度に達することができなければならないが、このような電力は、とりわけ5,000時間を超える期間では、ガラス溶融物界面における耐火材料の破壊条件を超えると以前に予想されていた。本明細書に開示される電極構成および溶融容器の幾何学形状を含む本明細書に開示される実施形態は、この問題に対する解決策を提供し、代替的な構成および幾何学形状に対して耐火物内で発生するパワーの量を少なくとも30%削減することができる。本明細書に開示される実施形態はまた、より柔軟な溶融システム操作を可能にすることができ、溶融システム構成を変更する必要なしに、異なる電気抵抗率および異なる温度条件を有する異なるガラス組成物を利用することができる。
【0056】
本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本開示の実施形態に対してさまざまな修正および変形がなされうることは、当業者にとって明白であろう。よって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内に入ることを条件として、そのような修正および変形にも及ぶことが意図されている。
【0057】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0058】
実施形態1
耐火材料を含む、少なくとも1つの側壁および床と、
前記耐火材料を通って延びる少なくとも1つの電極と
を含む、ガラス溶融送達システム容器であって、
前記少なくとも1つの電極が、ガラス溶融物と接触する前記耐火材料の破壊条件を超えることなく、前記耐火材料と接触するガラス溶融物を少なくとも約1600℃の平均温度で加熱するように構成される、
ガラス溶融送達システム容器。
【0059】
実施形態2
前記耐火材料がジルコニアを含む、実施形態1に記載のガラス溶融送達システム容器。
【0060】
実施形態3
前記容器が、前記耐火材料と接触する前記ガラス溶融物を、少なくとも約5,000時間の間、少なくとも約1600℃の平均温度へと加熱するように構成される、実施形態1に記載のガラス溶融送達システム容器。
【0061】
実施形態4
前記溶融容器が長さおよび幅を有し、前記長さの前記幅に対する比が、約2.4:1~約3.6:1の範囲である、実施形態1に記載のガラス溶融送達システム容器。
【0062】
実施形態5
前記溶融容器が、該溶融容器の前記幅の少なくとも約50%の深さを有するガラス溶融物を受け入れるように構成されている、実施形態4に記載のガラス溶融送達システム容器。
【0063】
実施形態6
前記溶融容器が2つの対向する側壁を含み、各対向する側壁がそこを通って延びる少なくとも2つの電極を備えており、電極間の最短距離と前記側壁の長手方向における該電極の幅との比が、約0.8:1~約2.4:1の範囲である、実施形態4に記載のガラス溶融送達システム容器。
【0064】
実施形態7
前記容器内の前記ガラス溶融物の体積(V)および前記床と前記少なくとも1つの電極の底部との間の垂直距離(Y)が、関係(V)/(Y)3<60,000を満たす、実施形態1に記載のガラス溶融送達システム容器。
【0065】
実施形態8
前記少なくとも1つの電極が、前記溶融容器の内部チャンバ内へと所定の距離だけ延びる細長い本体を備えている、実施形態1に記載のガラス溶融送達システム容器。
【0066】
実施形態9
前記少なくとも1つの電極が、前記床に平行な平面に対して約0度~約75度の範囲の角度で延びる、実施形態8に記載のガラス溶融送達システム容器。
【0067】
実施形態10
前記溶融容器が、前記少なくとも1つの側壁から所定の距離にある前記床上の位置から前記溶融容器の内部チャンバ内へと所定の距離だけ延びる細長い本体を備えている少なくとも1つの電極を含む、実施形態8に記載のガラス溶融送達システム容器。
【0068】
実施形態11
前記少なくとも1つの電極が、スズ、モリブデン、白金、並びにそれらの合金および酸化物からなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、実施形態1に記載のガラス溶融送達システム容器。
【0069】
実施形態12
ガラス物品の製造方法であって、該方法が、ガラス溶融送達システム容器内でガラス組成物を処理する工程を含み、前記ガラス溶融送達システム容器が、
耐火材料を含む、少なくとも1つの側壁および床と、
前記耐火材料を通って延びる少なくとも1つの電極と
を含み、
前記少なくとも1つの電極が、ガラス溶融物と接触する前記耐火材料の破壊条件を超えることなく、前記耐火材料と接触するガラス溶融物を少なくとも約1600℃の平均温度で加熱する、
方法。
【0070】
実施形態13
前記耐火材料がジルコニアを含む、実施形態12に記載の方法。
【0071】
実施形態14
前記耐火材料と接触する前記ガラス溶融物が、少なくとも約5,000時間の間、少なくとも約1600℃の平均温度へと加熱される、実施形態12に記載の方法。
【0072】
実施形態15
前記溶融容器が長さおよび幅を有し、前記長さの前記幅に対する比が、約2.4:1~約3.6:1の範囲である、実施形態12に記載の方法。
【0073】
実施形態16
前記ガラス溶融物が、前記溶融容器の前記幅の少なくとも約50%の深さを有する、実施形態15に記載の方法。
【0074】
実施形態17
前記溶融容器が2つの対向する側壁を含み、各対向する側壁がそこを通って延びる少なくとも2つの電極を備えており、電極間の最短距離と前記側壁の長手方向における該電極の幅との比が、約0.8:1~約2.4:1の範囲である、実施形態15に記載の方法。
【0075】
実施形態18
前記容器内の前記ガラス溶融物の体積(V)および前記床と前記少なくとも1つの電極の底部との間の垂直距離(Y)が、関係(V)/(Y)3<60,000を満たす、実施形態12に記載の方法。
【0076】
実施形態19
前記少なくとも1つの電極が、前記溶融容器の内部チャンバ内へと所定の距離だけ延びる細長い本体を備えている、実施形態12に記載の方法。
【0077】
実施形態20
前記少なくとも1つの電極が、前記床に平行な平面に対して約0度~約75度の範囲の角度で延びる、実施形態19に記載の方法。
【0078】
実施形態21
前記溶融容器が、前記少なくとも1つの側壁から所定の距離にある前記床上の位置から前記溶融容器の内部チャンバ内へと所定の距離だけ延びる細長い本体を備えている少なくとも1つの電極を含む、実施形態19に記載の方法。
【0079】
実施形態22
前記少なくとも1つの電極が、スズ、モリブデン、白金、並びにそれらの合金および酸化物からなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、実施形態12に記載の方法。
【0080】
実施形態23
実施形態12に記載の方法によって製造されたガラス物品。
【0081】
実施形態24
前記ガラス物品がガラスシートである、実施形態23に記載のガラス物品。
【0082】
実施形態25
実施形態24に記載のガラスシートを含む、電子デバイス。
【符号の説明】
【0083】
10 ガラス製造装置
12 ガラス溶融炉
14 溶融容器
16 上流ガラス製造装置
18 貯蔵ビン
20 原料送達デバイス
22 モーター
24 原料
28 溶融ガラス
30 下流ガラス製造装置
32 第1の接続導管
34 清澄容器
36 混合容器
38 第2の接続導管
40 送達容器
42 成形本体
44 出口導管
46 第3の接続導管
48 成形装置
50 入口導管
52 トラフ
54 収束成形面
56 底縁部
58 ガラスリボン
60 延伸方向
62 ガラスシート
64 ロボット
65 把持具
100 ガラス分離装置
142 側壁
144 床
146,147,148 電極
282 ガラス溶融線