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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】駆動部用の合成伝動機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/72 20060101AFI20220715BHJP
   F16H 37/06 20060101ALI20220715BHJP
   B60W 10/10 20120101ALN20220715BHJP
   B60W 10/02 20060101ALN20220715BHJP
【FI】
F16H3/72 A ZHV
F16H37/06 D
B60W10/10 900
B60W10/02 900
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019547682
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2018054755
(87)【国際公開番号】W WO2018158222
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】102017104467.1
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン リンデンマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ラウター
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ゼーベアガー
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/172742(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0075257(US,A1)
【文献】特開平04-224290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/72
F16H 37/06
B60W 10/10
B60W 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械用の駆動システム(100)であって、
電気式の主駆動部(104)と、
前記主駆動部(104)を主電気回路網(112)に接続するスイッチング装置(114)と、
電気式の補助駆動部(106,108)と、
前記補助駆動部(106,108)のトルクを制御する周波数コンバータと、
前記作業機械(102)に接続される駆動軸(240)と、
プラネタリギヤ(205)であって、リングギヤ(210)と、サンギヤ(215)と、プラネタリピニオン(220)と、プラネタリピニオンキャリア(225)とを有し、前記リングギヤ(210)は前記主駆動部(104)に、前記サンギヤ(215)は前記駆動軸(240)に、前記プラネタリピニオンキャリア(225)は前記補助駆動部(106,108)に連結されている、プラネタリギヤ(205)と、
前記プラネタリピニオンキャリア(225)を入力軸に連結するか、または前記入力軸から遮断すべく、クラッチ(245)を有するクラッチ経路と、
前記クラッチ(245)が閉鎖され、前記スイッチング装置(114)が開放されている第1の領域(I)、または前記クラッチ(245)が開放され、前記スイッチング装置(114)が閉鎖されている第2の領域(II)で前記駆動システム(100)を運転するように構成された制御装置と、
を備える駆動システム(100)において、
前記制御装置は、前記補助駆動部(106,108)のトルクを、前記第1の領域(I)と前記第2の領域(II)との間の移行中、前記補助駆動部(106,108)により持続的に提供可能なトルクを超えて過度に高めるように構成されており
前記周波数コンバータ(116,118,122)は、持続的に前記周波数コンバータ(116,118,122)により提供可能な電流が、割り当てられた前記補助駆動部(106,108)を過負荷で運転するに十分であるように設計されている、
ことを特徴とする、作業機械用の駆動システム(100)。
【請求項2】
1つまたは複数の補助駆動部(106,108)を備え、
前記補助駆動部(106,108)は、前記主駆動部(104)の定格回転数以上の領域では、持続的に前記補助駆動部(106,108)により提供可能なトルクの合計が前記作業機械(102)の所要トルクより小さいように設計されている、
請求項1記載の駆動システム(100)。
【請求項3】
前記補助駆動部(106,108)は、電気式の非同期モータを有する、請求項1または2記載の駆動システム(100)。
【請求項4】
前記補助駆動部(106,108)に設けられた温度センサ(285)をさらに備え、
前記制御装置は、検出される温度が所定の閾値を下回っているときだけ、前記補助駆動部(106,108)のトルクを過度に高めるように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の駆動システム(100)。
【請求項5】
前記周波数コンバータに設けられた温度センサ(285)をさらに備え、
前記制御装置は、検出される温度が所定の閾値を下回っているときだけ、割り当てられた前記補助駆動部(106,108)のトルクを過度に高めるように構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の駆動システム(100)。
【請求項6】
作業機械用の駆動システム(100)であって、
電気式の主駆動部(104)と、
前記主駆動部(104)を主電気回路網(112)に接続するスイッチング装置(114)と、
電気式の補助駆動部(106,108)と、
前記補助駆動部(106,108)のトルクを制御する周波数コンバータと、
前記作業機械(102)に接続される駆動軸(240)と、
プラネタリギヤ(205)であって、リングギヤ(210)と、サンギヤ(215)と、プラネタリピニオン(220)と、プラネタリピニオンキャリア(225)とを有し、前記リングギヤ(210)は前記主駆動部(104)に、前記サンギヤ(215)は前記駆動軸(240)に、前記プラネタリピニオンキャリア(225)は前記補助駆動部(106,108)に連結されている、プラネタリギヤ(205)と、
前記プラネタリピニオンキャリア(225)を入力軸に連結するか、または前記入力軸から遮断すべく、クラッチ(245)を有するクラッチ経路と、
前記クラッチ(245)が閉鎖され、前記スイッチング装置(114)が開放されている第1の領域(I)、または前記クラッチ(245)が開放され、前記スイッチング装置(114)が閉鎖されている第2の領域(II)で前記駆動システム(100)を運転するように構成された制御装置と、
を備える駆動システム(100)において、
前記制御装置は、前記補助駆動部(106,108)のトルクを、前記第1の領域(I)と前記第2の領域(II)との間の移行中、前記補助駆動部(106,108)により持続的に提供可能なトルクを超えて過度に高めるように構成されており、
駆動システム(100)は複数の補助駆動部(106,108)を備え、
前記制御装置は、前記補助駆動部(106,108)により提供されるトルクを時間的に段階付けて過度に高めるように構成されている、
ことを特徴とする、作業機械用の駆動システム(100)。
【請求項7】
駆動システム(100)を制御する方法であって、
前記駆動システム(100)は、
電気式の主駆動部(104)と、
前記主駆動部(104)を主電気回路網に接続するスイッチング装置(114)と、
電気式の補助駆動部(106,108)と、
前記補助駆動部(106,108)のトルクを制御する周波数コンバータと、
前記作業機械(102)に接続される駆動軸(240)と、
プラネタリギヤ(205)であって、リングギヤ(210)と、サンギヤ(215)と、プラネタリピニオン(220)と、プラネタリピニオンキャリア(225)とを有し、前記リングギヤ(210)は、前記主駆動部(104)に、前記サンギヤ(215)は、前記駆動軸(240)に、前記プラネタリピニオンキャリア(225)は、前記補助駆動部(106,108)に連結されている、プラネタリギヤ(205)と、
前記プラネタリピニオンキャリア(225)を入力軸に連結するか、または前記入力軸から遮断すべく、クラッチ(245)を有するクラッチ経路と、
を備え、
前記クラッチ(245)が閉鎖され、前記スイッチング装置(114)が開放されている第1の領域(I)または前記クラッチ(245)が開放され、前記スイッチング装置(114)が閉鎖されている第2の領域(II)で前記駆動システム(100)を運転するステップ(605,705)と、
前記補助駆動部(106,108)のトルクを、前記補助駆動部(106,108)により持続的に提供可能なトルクを超えて過度に高めるように、前記周波数コンバータを制御するステップ(620,715)と、
前記運転領域を切り換えるステップ(615,625,720,725)と、
前記トルクの過昇を終了させるステップ(635,735)と、
を有
前記周波数コンバータ(116,118,122)は、持続的に前記周波数コンバータ(116,118,122)により提供可能な電流が、割り当てられた前記補助駆動部(106,108)を過負荷で運転するに十分であるように設計されている、
駆動システム(100)を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成伝動機構と、主駆動部と、補助駆動部とを備える駆動システムに関する。特に本発明は、下側の回転数領域と上側の回転数領域とに対応する2つの異なる運転状態で運転され得る合成伝動機構に関する。
【0002】
従来技術
機械式のシステム、例えば昇降機構を駆動するために、従来技術によれば、複数の電気式の駆動モータが合成伝動機構(プラネタリギヤ)を介して出力を部分的に担っている、すなわち、複数のモータの回転数が加算される一方、トルクがサンギヤまたはリングギヤを介してそれぞれ並列に被動部へと流れるマルチモータアッセンブリが使用される。一般に、1つの主駆動部と、1つまたは複数の補助駆動部とが使用され、安全上の理由から、好ましくは、主駆動部なしの運転も可能である。
【0003】
独国特許出願公開第102014210870号明細書(DE 10 2014 210 870 A1)は、プラネタリギヤをベースとする合成伝動機構であって、プラネタリピニオンキャリアが、クラッチによりサンギヤに連結され得る、合成伝動機構に関する。下側の回転数領域では、クラッチが閉鎖されており、駆動は、プラネタリピニオンキャリアを駆動する補助駆動部によってのみ実施される。その際、補助駆動部の回転数は、制御可能である。主駆動部は、サンギヤに接続されており、閉鎖されたクラッチを介して連れ回される。作業機械は、サンギヤに連結され得る。より高い回転数領域では、主駆動部がオンにされ、クラッチが開放される。この場合、合算効果により、作業機械の回転数は、補助機械の回転数の制御により制御可能である。全体として駆動軸の回転数は、最大回転数の0~100%の領域で制御可能である。
【0004】
特に下側の回転数領域と上側の回転数領域との間の移行時、ピーク負荷が生じることがある。合成伝動機構のすべての要素は、合成伝動機構の一貫した制御可能性を保証するに十分に設計されていなければならない。このことは、駆動システムを大型化し、重量を重くし、しかも高価にしてしまうことがある。
【0005】
本発明の根底にある課題は、合成伝動機構により連結可能な複数の駆動部をベースとする駆動システムを、より小型、より軽量またはより低コストに提供することができる技術を示すことにある。本発明は、上記課題を独立請求項の対象により解決する。従属請求項は、好ましい実施の形態を示している。
【0006】
発明の開示
作業機械用の駆動システムは、電気式の主駆動部と、主駆動部を主電気回路網に接続するスイッチング装置と、電気式の補助駆動部と、補助駆動部のトルクを制御する周波数コンバータと、作業機械に接続される駆動軸と、プラネタリギヤであって、リングギヤと、サンギヤと、プラネタリピニオンと、プラネタリピニオンキャリアとを有し、リングギヤは、主駆動部に、サンギヤは、駆動軸に、プラネタリピニオンキャリアは、補助駆動部に連結されている、プラネタリギヤと、プラネタリピニオンキャリアを入力軸に連結するか、または入力軸から遮断すべく、クラッチを有するクラッチ経路と、制御装置とを備えている。制御装置は、クラッチが閉鎖され、スイッチング装置が開放されている第1の領域またはクラッチが開放され、スイッチング装置が閉鎖されている第2の領域で駆動システムを運転するように構成されている。さらに制御装置は、補助駆動部のトルクを、第1の領域と第2の領域との間の移行中、補助駆動部により持続的に提供可能なトルクを超えて過度に高めるように構成されている。
【0007】
この構成は、特に、作業機械の回転数またはトルクの制御可能性が、主に中間または上側の回転数領域、特に第2の運転領域で必要であるときに有利であり得る。例えば制御可能性が、100%~約60%の間でのみ必要である場合、補助駆動部は、第1の領域では、駆動システムの立ち上げを単独で行い、第1の領域から第2の領域への移行中は、短時間、過負荷され、続いて第2の領域では、主駆動部によりアシストされるように小さく寸法設定され得る。作業機械の運転は、好ましくは、実質的にまたは専ら第2の領域で実施される。
【0008】
補助駆動部のトルクの過昇は、補助駆動部をより弱く設計することを実現することができる。これにより、補助駆動部は、より小型、より軽量またはより低コストに構成され得る。補助駆動部が複数のモータから形成される場合、モータの複数が、改良されて1つのより大きなモータにまとめられてもよいし、1つが、複数のより小型のモータに置き換えられてもよい。駆動システムの運転中、改良された効率が達成され得る。補助駆動部をより小さく寸法設定することで、特に、実際には使用されない予備の部分を設定することは、回避され得る。
【0009】
一般に1つまたは複数の補助駆動部が設けられていることができる。以下では、単純化して1つの補助駆動部にのみ焦点を合わせても、1つの駆動装置または機械的に並列に接続される複数の駆動装置を意図している。
【0010】
好ましくは、1つまたは複数の補助駆動部は、主駆動部の定格回転数以上の領域では、持続的に補助駆動部により提供可能なトルクの合計が作業機械の所要トルクより小さいように設計されている。作業機械は、一般に、作業機械の回転数に関係していて、所定の推移にしたがう所要トルクを有している。例えばトルクは、回転数の2乗または3乗に関係していることがある。第1の領域と第2の領域との間の移行は、一般に主駆動部の定格回転数時または定格回転数の近傍で実施される。補助駆動部を比較的弱く設計することで、領域間の移行は、もはや、補助駆動部により持続的に提供されるトルクだけでは実施され得ない。それというのも、作業機械の所要トルクは、こうして補助駆動部によってはカバーされ得ないからである。しかし、トルクを短時間過度に高めることで、領域間の移行が必要とするだけの長さで、本来は過小に設計された補助駆動部によっても、移行を可能にするに十分にトルクを提供することができる。これにより、補助駆動部の運転能力が損なわれることはない。
【0011】
好ましい一実施の形態において、補助駆動部は、非同期モータを有している。これらの電気式の駆動機械は、一般にもとより過負荷可能である。一般的な非同期機は、例えば短期的に、非同期機が持続的に提供可能なトルクの2倍まで、または非同期機が持続的に変換できる出力の1.5倍まで、後に残る損傷を生じることなく負荷され得る。
【0012】
補助駆動部の能力の限界は、一般に、最大の温度により規定されている。最大の温度は、概して外部の運転条件ならびに変換される機械的な出力および負荷プロフィールに依存している。それゆえ駆動システムは、温度センサを補助駆動部に有していてもよく、温度センサは、好ましくは制御装置に接続されている。制御装置は、検出される温度が所定の閾値を下回っているときだけ、補助駆動部のトルクを過度に高めるように構成されていてもよい。こうして、例えば周囲温度または以前に行われたトルク過昇に起因する補助駆動部の熱負荷を考慮することができる。
【0013】
別の一実施の形態において、駆動システムは、周波数コンバータに設けられた温度センサを備えており、温度センサは、好ましくは制御装置に接続されている。制御装置は、好ましくは、検出される温度が別の所定の閾値を下回っているときだけ、割り当てられた補助駆動部のトルクを過度に高めるように構成されている。周波数コンバータは、好ましくは、交流を提供する補助電気回路網から直流電圧を提供する供給装置と、一般に3相の、補助駆動部を運転する交流電圧を提供するインバータとを有している。供給装置は、それぞれ異なる補助駆動部に割り当てられていることができる複数のインバータに給電するように構成されていることができる。温度センサは、供給装置またはインバータ内に装入されてもよい。温度センサ毎に固有の閾値が割り当てられてもよい。複数の温度センサが、同じデバイス、例えば個々のパワー半導体に装入されてもよい。
【0014】
周波数コンバータは、持続的に周波数コンバータにより提供可能な電流が、割り当てられた補助駆動部のトルクを過度に高めるには不十分であるように設計されていてもよい。換言すれば、周波数コンバータ、または周波数コンバータのコンポーネントの1つも、過負荷能力を有して構成されていてもよい。この場合、補助駆動部のトルク過昇は、周波数コンバータの過負荷を要求することができる。これにより周波数コンバータは、連続運転では、補助駆動部に合わせて設計され得る。一般的な周波数コンバータは、約50%の過負荷に約10秒間耐えるように構成されている。周波数コンバータの要素をわずかに大きく寸法設定することで、これらの値は、向上し得る。一般に、より小型の補助駆動部のためには、より弱く設計される周波数コンバータも選択できるので、コスト、サイズまたは重量は、減じることが可能である。
【0015】
周波数コンバータは、持続的に周波数コンバータにより提供可能な電流が、割り当てられた補助駆動部を過負荷で運転するに十分であるように設計されていてもよい。このために周波数コンバータは、一実施の形態では、連続運転中の補助駆動部の約1.5~1.7倍の電流を提供することができる。さらに強い設計も同じく可能である。
【0016】
複数の補助駆動部が設けられている場合、制御装置は、補助駆動部により提供されるトルクを時間的に段階付けて過度に高めるように構成されていてもよい。例えば補助駆動部のトルクの過昇は、合計で十分なトルクが提供され得るまで、順に開始されてもよい。第1の領域と第2の領域との間の移行後、過昇は、順に終了されてもよい。別の一実施例では、運転領域間の最初の切り換え時に第1の補助駆動部が過負荷され、続いての切り換え時に他方の補助駆動部が過負荷される。過負荷される補助駆動部の選択は、補助駆動部の温度に基づいて実施されてもよい。
【0017】
上述の駆動システムを制御する方法は、クラッチが閉鎖され、スイッチング装置が開放されている第1の領域またはクラッチが開放され、スイッチング装置が閉鎖されている第2の領域で駆動システムを運転するステップと、補助駆動部のトルクを、補助駆動部により持続的に提供可能なトルクを超えて過度に高めるように、周波数コンバータを制御するステップと、運転領域を切り換えるステップと、トルクの過昇を終了させるステップとを有している。
【0018】
本方法は、特に上述の制御装置により実施または制御され得る。制御装置は、このためにプログラミング可能なマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラを有していることができ、本方法は、制御装置上で実行されるか、またはコンピュータ可読記録媒体に記録されていることができるコンピュータプログラム製品の形態で存在していることができる。制御装置の特徴または利点は、方法にも適用でき、その逆もまたしかりである。
【0019】
而るに本発明について、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】駆動システムを示す図である。
図2】合成伝動機構を示す図である。
図3】合成伝動機構における軸の配置を示す図である。
図4】駆動システムの制御チャートである。
図5】別の制御チャートである。
図6】合成伝動機構を制御する方法のフローチャートである。
図7】合成伝動機構を制御する方法の別のフローチャートである。
【0021】
図1は、駆動システム100の概略図を示している。作業機械102を駆動すべく、電気式の主駆動部104と、電気式の補助駆動部(Hilfsantrieb)106および108とが設けられており、これらの駆動部は、合成伝動機構110によりトルクを伝えるように作業機械102に連結されている。別の実施の形態では、1つの補助駆動部106のみを使用しても、2つより多くの補助駆動部106,108を使用してもよい。
【0022】
作業機械102は、例えば遠心ポンプ、遠心圧縮機、送風機、コンプレッサまたは微粉炭機を含み得る。作業機械102の運転は、上位の設備、例えば発電所または暖房設備の運転または安全にとってクリティカルな場合がある。合成伝動機構110により、作業機械102は、主駆動部104、1つもしくは複数の補助駆動部106,108またはこれらの組み合わせにより選択的に駆動可能である。その際、下でさらに詳しく説明するように、合成伝動機構110の様々な運転状態をサポートすることができる。
【0023】
主電気回路網112は、スイッチング装置114により主駆動部104に接続または主駆動部104から遮断可能である。主駆動部は、主電気回路網112に接続されているとき、所定の定格回転数で動作する。補助駆動部106および108は、好ましくは、割り当てられたインバータ116および118により制御可能である。インバータ116および118は、直流電圧を提供する中間回路120より給電される。インバータ116,118は、それぞれ、割り当てられた補助駆動部106,108の回転数または提供されるトルクを制御することができる。このために、それぞれの補助駆動部106,108に提供される周波数または電圧は可変である。補助駆動部106,108の制御は、好ましくは、フィールド指向制御(開ループ制御または閉ループ制御)により行われる。中間回路120の、インバータ116,118のために必要な直流電圧は、一般に供給装置122により補助電気回路網124から提供される。補助電気回路網124は、一般に主電気回路網112から切り離されて構成されており、負荷容量は、比較的低い。供給装置122とインバータ116,118との組み合わせを周波数コンバータともいう。
【0024】
制御装置126は、特に駆動軸240の回転数をプリセットに合わせるように、駆動システム100、特に合成伝動機構110を制御するように構成されている。合成伝動機構110は、様々な運転状態をとることができ、これらの運転状態は、特に作業機械102における提供すべき回転数の要求に応じて設定できる。その際、運転状態間の移行は、制御装置126により明確に制御でき、その結果、駆動システム100は、作業機械102の目標回転数のみを外的な基準量として必要とし得る。駆動システム100の制御のために、制御装置126は、合成伝動機構110の1つまたは複数の機械要素および/またはインバータ116,118の1つを制御することができ、これにより、補助駆動部106,108の回転数またはトルクに作用することができる。場合によっては、制御装置126は、駆動システム100の運転状態を検出する1つまたは複数のセンサにも接続されている。
【0025】
図2は、図1に示す駆動システム100で使用する合成伝動機構110の好ましい一実施の形態を示している。理解し易くするために、主駆動部104の他に、1つの補助駆動部106しか図示していないが、一般には、さらに少なくとも1つの別の補助駆動部108が設けられている(図1参照)。補助駆動部106,108は、一般に機械的に並列に接続されており、電気的に個別にまたは一緒に制御され得る。
【0026】
合成伝動機構110は、プラネタリギヤ205を備え、プラネタリギヤ205は、リングギヤ210と、サンギヤ215と、少なくとも1つのプラネタリピニオン220と、プラネタリピニオンキャリア225とを有している。プラネタリピニオン220は、リングギヤ210およびサンギヤ215と係合し、ピン230に対して回転可能に軸支されており、ピン230は、サンギヤ215に対して同心に回転可能なプラネタリピニオンキャリアに取り付けられている。リングギヤ210は、主駆動部104に接続される駆動軸235に接続され、サンギヤ215は、作業機械102に接続される駆動軸240に接続されている。プラネタリギヤ205は、主駆動部104と補助駆動部106との回転運動を加法的または減法的に合算し、作業機械102へ放出することが可能な合算伝動機構(Summiergetriebe)を形成している。
【0027】
さらに、切り換え可能なクラッチ245が設けられており、クラッチ245は、アクチュエータ250により開放または閉鎖され得る。クラッチ245は、形状結合式に作業するものであっても、摩擦結合式に作業するものであっても、流体力学的な変換により作業するものであってもよく、プラネタリピニオンキャリア225の回転運動を入力軸235あるいはリングギヤ210にフィードバックさせるように構成されている。1つのクラッチ245の代わりに、機械的に並列に接続される複数のクラッチ245が設けられていてもよく、これにより、例えば個々のクラッチ245をよりコンパクトに構成したり、利用可能な構造空間をより良好に利用したりすることが可能である。図示の実施の形態において、クラッチ245の一方の側は、1つの伝動機構段255によりプラネタリピニオンキャリア225に連結され、他方の側は、連続する複数の伝動ギヤ260により入力軸235に連結されている。伝動ギヤ260により別の伝動機構段が形成され得る。プラネタリピニオンキャリア225からリングギヤ210までの回転運動のすべての伝達は、クラッチ経路という。
【0028】
図示の実施の形態では、補助駆動部106は、補助軸265と、好ましくは1つの別の伝動機構段270とを介してプラネタリピニオンキャリア225に接続されている。本実施の形態では、クラッチ245の前記一方の側は、伝動機構段270にも接続され、前記他方の側は、伝動ギヤ260を介して駆動軸235に接続されていることができる。伝動機構段255,270の伝達比は、それぞれ必要に応じて選択され得る。
【0029】
一般に次のことが成立する:
n1:駆動軸240の回転数=サンギヤ215の回転数
n2:主駆動部104の回転数=リングギヤ210の回転数
n3:補助駆動部106,108の回転数
n-中間軸:クラッチ経路内の(クラッチ245における)回転数
PG:プラネタリギヤ205の伝達比(=n1/n2)
SG1:伝動機構段(270)の伝達比(=n3/n-プラネタリピニオンキャリア225)
SG2:伝動機構段(255)の伝達比(=n2/n3または=n-中間軸/n-プラネタリピニオンキャリア225)
SG3:伝動機構段(260)の伝達比(=n-中間軸/n2)。
【0030】
下側の回転数領域では、作業機械102は、主駆動部104がオフにされ、クラッチ245が閉鎖されているとき、補助駆動部106,108の能力と、クラッチ245、プラネタリギヤ205、伝動機構段255,270および伝動ギヤ260の負荷容量とによる制限を受ける回転数まで駆動され得る。この回転数は、一般に駆動軸240の最大回転数の約40~60%にある。その際、作業機械102の回転数は、補助駆動部106,108の回転数を介して停止状態から制御され得る。主駆動部104の回転数は、クラッチ245を介して補助駆動部102の回転数に連結されている。
【0031】
上側の回転数領域では、作業機械102は、主駆動部104がオンにされ、クラッチが開放されているとき、最大回転数まで駆動され得る。主駆動部104は、回転数について制御することができず、一般に固定の定格回転数で動作する。この運転状態における駆動軸の最も低い回転数は、主駆動部104の定格回転数によりプリセットされている。補助駆動部106を制御することにより、駆動軸240の回転数は、補助駆動部106の回転数耐久強さおよび合成伝動機構110の負荷容量に依存した最大回転数まで上昇され得る。
【0032】
下側の回転数領域(第1の運転状態または領域I)と、上側の回転数領域(第2の運転状態または領域II)との間の移行時、一般に、補助駆動部106の回転数と、クラッチ245の操作状態とが変更される。低摩耗の移行のために、下側の回転数領域は、好ましくは、主駆動部104がその定格回転数に、補助駆動部106のみによる合成伝動機構110の駆動により到達し得るように選択されている。主駆動部104は、その定格回転数にあるときにオンにされると、主電気回路網112の負荷は、低く維持されていることができる。特に、さもなければ主駆動部104の回転子の加速のために必要であり、定常電流の約8倍にもなり得る高い突入電流は、なくすことができる。
【0033】
回転数調整および過負荷保護のために、回転数センサ280が、主駆動部104、補助駆動部106および/または作業機械102に設けられていてもよい。クラッチ245の開放状態が判っているとき、これらの回転数のうちの1つは、他の2つの回転数から特定できるので、合成伝動機構110には、2つの回転数センサ280が設けられていれば十分であり得る。任意選択的には、熱による過負荷を防止すべく、温度センサ285が補助駆動部106,108の一方に設けられていてもよい。温度センサ285は、図1に示したインバータ116,118または供給装置122に設けられていてもよい。
【0034】
図3は、合成伝動機構110における入力軸235、補助軸265および駆動軸240の配置の例示的な一実施の形態を示している。隠れた要素は、破線で示してある。図2に示す実施の形態に関する視線方向は、Aで示してある。図2に示す実施の形態とは異なり、ここでは、2つの補助軸265が、駆動軸240の互いに反対側に設けられている。クラッチ245は、好ましくは、伝動機構段255の領域に設けられているので、クラッチ245および補助駆動部106,108の回転軸線は、特に二等辺三角形の角を通っている。駆動軸235は、好ましくは、駆動軸240に対して同心に位置している。
【0035】
図4は、合成伝動機構110を有する駆動システム100の例示的な制御チャート400を示している。水平の方向には、作業機械102の回転数Nが、所定の最大回転数に対する割合として記載され、鉛直の方向には、相対トルクMが、所定の最大トルクに対する割合として記載されている。特性線405は、例示的に選択した作業機械102の所要トルクを回転数に関して示している。特性線405のトルクMは、ここでは例示的に回転数Nの二次関数または三次関数にしたがっている。特性線405のトルクMが回転数Nとともに上昇する度合が強ければ強いほど、低回転数時の相対トルクは小さい。特性線405は、例えばより高次の多項式にしたがう場合、より強い増加傾向を示すこともできる。十分強力な補助駆動部106,108が使用される場合は、よりゆっくりと増加する関数、例えば一次関数がサポートされてもよい。
【0036】
領域Iは、主駆動部104がオフにされ、作業機械102の駆動が専ら補助駆動部106,108を介して実施されているときの合成伝動機構110の可能な作業点を示している。このとき、クラッチ245は、閉鎖されている。領域IIは、主駆動部104がオンにされ、クラッチ245が開放されているときの可能な作業点を示している。作業機械102を0%~100%の全回転数領域にわたって制御することができるように、領域IおよびIIは、領域410においてオーバラップしており、この領域410には、作業機械102の特性線405の少なくとも1つの点が含まれていなければならない。この設計のために、利用可能な回転数レンジおよび特性線405に応じて、制御電力の約20~30%が、補助駆動部106,108において導入されなければならない。これにより、領域IIのためには、50~100%の回転数調整領域が実現され、クラッチ経路の伝達比は、領域Iが駆動軸240の最大回転数の少なくとも50%までの回転数領域をカバーするように選択されなければならない。好ましくは、電気式の補助駆動部106,108と入力軸235との間の、クラッチ245を介して結果として生じる伝達比は、主駆動部104の定格回転数が同じくオーバラップ領域410内にあるように選択される。この場合、領域I(主駆動部104が作動停止されている)と領域II(主駆動部104が作動されている)との間の運転状態移行は、クラッチ245をアクチュエータ250により開放し、主駆動部104をその定格回転数時にまたは定格回転数近傍で主電気回路網112に接続することにより実施され得る。上述の設計は、負荷特性線405に沿った作業機械102のいわば連続的な回転数制御を実現する。
【0037】
しかし、多くの使用事例では、作業機械102の回転数の制御可能性は、全回転数領域にわたっている必要はまったくなく、中回転数領域および高回転数領域、例えば60%~100%の回転数領域でのみ必要である。この場合、補助駆動部106,108は、上述の運転状態切り換えを実現するには過剰に設計されており、これにより、駆動システム100は、より大きくかつより重く構成されてしまうことがあり、補助駆動部106,108、割り当てられたインバータ116,118および供給装置122の大きな寸法設定のための付加的なコストが生じてしまうことがある。それゆえ、補助駆動部106,108を弱めに設計することを提案する。
【0038】
図5は、図4に類する別の制御チャート500を示している。ここでは、補助駆動部106,108の出力は、より小さく選択されているので、領域Iは、鉛直の方向で図4と比べて低くなっている。しかし、特性線405は、領域Iと領域IIとがオーバラップしている領域410と共通の点をもはや共有していない。これにより、主駆動部104の作動、ひいては作業機械102の継ぎ目なしの回転数調整を実現する領域IおよびII間のいわば連続的な運転状態移行は、上述のようには実施し得ない。
【0039】
補助駆動部106,108の過負荷能力を利用することをさらに提案する。その結果、領域Iは、短時間、領域I.Iへ拡張され得る。その際、領域Iは、短時間、トルクMの方向に拡張されるが、回転数Nの方向には拡張されない。これにより、オーバラップ領域410は、同じく大きくなるので、特性線405と少なくとも1つの点で交差する。この交差領域で領域IおよびII間の運転状態切り換えが実施され得る。この仕組みは、より小さく寸法設定される補助駆動部106,108を使用し、それにもかかわらず、領域IおよびII間のスムーズで穏やかな移行を実現することを可能にする。この技術は、特に駆動軸の回転数が主に上側の回転数領域、例えば最大回転数の60~100%、75~100%または80~100%の領域で制御される使用事例に好適である。
【0040】
補助駆動部106,108は、特に電気式の非同期機として形成されていることができるので、補助駆動部106,108により提供されるトルクは、短時間、定格トルクの約2倍まで、そして、提供される出力は、短時間、定格出力の約1.5倍までであることができる。その際、定格限界は、その他の制限なしに持続的に維持され得る連続運転に関する。補助駆動部106,108の、提供される高められた出力が、実際にどの程度の大きさであり、どの程度の長さで放出され得るかは、一般に補助駆動部106,108の温度に依存している。
【0041】
一実施の形態において、補助駆動部106,108の温度、例えばその固定子巻線の巻線温度が、例えばPTCサーミスタまたは測定抵抗(例えばPt100)により記録される。温度が、所定の閾値を上回ると、インバータ116,118は、提供される電力を減じるように制御され得る。このような監視は、特に防爆の要求と、補助駆動部106,108によるその考慮とを必要とする用途、例えばオフショア領域または坑内において有意義であり得る。これらの応用例では、補助駆動部106,108は、極めて短い時間だけ領域I.Iで運転され得る。この場合、駆動システム100は、領域I.Iにおける許容滞在時間が運転状態切り換えを確実に許容するように設計されていることが望ましい。
【0042】
駆動システム100の過負荷可能性は、使用されるインバータ116,118または供給装置122により制限されていてもよい。この制限は、特に防爆の要求なしの駆動システム100の用途に当てはまり得る。コンポーネント116,118および122内の典型的なスイッチング要素および整流要素は、約10秒間その定格電流あるいは定格出力を超えて過負荷され得る。過負荷から保護するために、コンポーネント116,118または122の温度過昇を監視してもよい。
【0043】
いずれにしても、コンポーネント116,118および122内の電気的なスイッチング要素および整流要素は、領域IおよびII間のより確実な移行が保証されているように設計されることが望ましい。このためにコンポーネントは、必ずしも従来技術による解決手段におけるより強く設計される必要はない。それというのも、コンポーネントは、より弱く設計される補助駆動部106,108に適合されて、初めてより小さく寸法設定され得るからである。
【0044】
別の一実施の形態において、補助駆動部106,108は、コンポーネント116,118および122またはその構成部分の熱回復を可能にすべく、時間的に段階付けて運転されてもよい。これにより、コンポーネント116,118および122の強めの設計は、不要であり得る。補助駆動部106,108も、時間的にずらした運転形式をとった場合、より迅速にまたはさらに熱回復し得る。
【0045】
以下に、改めて図2を参照しながら、領域Iと領域IIとの間の切り換え時の合成伝動機構110を通る出力伝達経路について考察する。
【0046】
領域Iから領域IIへの移行時、クラッチ245の閉鎖は、プラネタリピニオンキャリア225を駆動軸235あるいはリングギヤ210に連結させる。これにより駆動軸240は、プラネタリギヤ205の残されたただ1つの単独軸である。プラネタリピニオンキャリア225は、フリーの連結軸になり、リングギヤ210は、接続された連結軸になる。クラッチ245が閉鎖されているとき、合成伝動機構110は、2軸運転で1自由度の強制伝動機構として運転される。これにより、プラネタリギヤ205には、一方または両方の補助駆動部106,108を介して加えられる回転数だけが与えられる。入力軸235および駆動軸240の回転数は、合成伝動機構110、特にプラネタリギヤ205と、伝動機構段255および280との設計により定められている。
【0047】
連結により、循環する出力伝達経路(無効出力(Blindleistung)ともいう)が生じる。それというのも、合成伝動機構110の運転点は、連結された状態では一定であり、ひいては、合成伝動機構110内のトルク比または回転数比も同じであるからである。クラッチ245が開放されているときに補助駆動部106,108を介して供給される出力は、クラッチ245が閉鎖されると、プラネタリピニオンキャリア225からクラッチ245を通して駆動軸235あるいはリングギヤ210へと至るクラッチ経路を介して循環する。付加的に補助駆動部106,108のモータ出力は、同じくクラッチ経路を介して合成伝動機構110内に供給される。これにより、クラッチ経路内の全出力は、補助駆動部106,108により加えられる出力の合計より量的に大きい。領域Iから領域IIへの簡単な移行は、この場合、プラネタリピニオンキャリア225から駆動軸235あるいはリングギヤ210へのクラッチ経路における極めて高い負荷を結果として生じるので、コンポーネント225,245,260は、かなり過剰に設定されなければならない。
【0048】
領域IおよびII間の移行のために、プラネタリピニオンキャリア225から駆動軸235あるいはリングギヤ210に至るクラッチ経路を介した、結果として生じるトルクを減じると、有利である。その結果、クラッチ出力およびクラッチ摩耗も減じることができる。
【0049】
閉鎖されたクラッチ245の回転数が、開放されたクラッチ245の両側の回転数にできる限り正確に一致している運転点を設定することで、クラッチ245の開放または閉鎖、つまり領域IおよびII間の移行の準備をすることを提案する。このようになれば、クラッチ245は、同期されて操作されることができ、その結果、出力ピークは生じない。
【0050】
クラッチの開放時の回転数均衡は、以下のWillisの式(Willis-Gleichung)が満たされているとき、達成されている:
【数1】
【0051】
さらに同期点において主駆動部104の回転数n2は、クラッチ245の開放時と閉鎖時とで同じでなければならない。つまり、クラッチ245の閉鎖時:
【数2】
が成立しなければならない。
【0052】
式1および2が少なくとも近似的に満たされているとき、クラッチ245は、最小のスリップで開放または閉鎖され得る。式1を式2に代入してやれば、この条件は、n2およびn3に関してだけでなく、代替的に別の回転数にも基づいて表現することができる。伝達比iSG2は、同期点における回転数が駆動装置の調整領域内にあるように選択される。補助駆動部106,108から伝動機構段270を介してプラネタリピニオンキャリア225に、そこから伝動機構段255を介してクラッチ245に、そして別の伝動機構段を介してさらに入力軸235およびリングギヤ210に作用する付加伝動接続を有する構成では、クラッチ245の閉鎖時、式2の代わりに次式:
【数3】
が成立する。
【0053】
トルクTに関してクラッチ245の開放時:
【数4】
が成立する。
【0054】
クラッチ245の閉鎖時、トルクに関して:
【数5】
が成立する。
【0055】
図6は、図2の形態の合成伝動機構110の、領域Iから領域IIへの移行を制御する方法600のフローチャートを示している。
【0056】
ステップ605において、合成伝動機構110を領域Iで運転する。補助駆動部106,108を介してトルクを導入し、クラッチ245は、閉鎖させておき、主駆動部104は、オフにされているが、クラッチ経路を介した連結により、駆動軸240の回転数に連結されている回転数に維持される。
【0057】
ステップ610において、主駆動部104は、その定格回転数に相当する同期回転数に少なくとも近似的に到達する。できる限り正確に到達することが好ましいが、回転数が、同期回転数の上下約±30%、好ましくは約±15%、さらに好ましくは約±5%の範囲内にあれば、既に十分であり得る。ステップ615において、例えば主駆動部104をスイッチング装置114により主電気回路網112に接続することで、主駆動部104をオンにする。上で詳しく説明したように、領域Iから領域IIへの続いての移行を可能にするために、補助駆動部106,108により提供されるトルクを過度に高めることが必要であり得る。この場合、過昇は、ステップ610で開始してもよい。
【0058】
ステップ620において、補助駆動部106,108の少なくとも1つをジェネレータ出力でもって、つまり制御されるブレーキとして運転することで、クラッチ245を介して伝達されるトルクを補償する。式4cおよび4dが負荷トルクT1および主駆動部104の回転数のプリセット下で満たされているようにブレーキ作用を調節する。負荷トルクT1は、例えばパラメータ値として、定数としてまたは主駆動部104の回転数に応じて規定され得る。主駆動部104の回転数は、定格回転数、または例えば割り当てられた回転数センサ280により検出され得る主駆動部104の目下の回転数に相当し得る。
【0059】
別の一実施の形態では、T1を補助駆動部106および/または108のモータ出力から、合成伝動機構110または補助駆動部106および/もしくは108内の損失機構を考慮してまたは考慮せずに規定する。
【0060】
さらに別の一実施の形態では、T1を主駆動部104のモータ出力に基づいて規定する。このとき、補助駆動部106および/または108は、受動的である。合成伝動機構110内の損失機構および/または主駆動部104の損失機構を考慮してもよい。
【0061】
さらに別の一実施の形態では、合成伝動機構110の軸235,240および265の1つにおいて、伝達されるトルクT1を検出し、これに基づいてWillisの式(式1および2参照)により規定する。
【0062】
ステップ625において、例えばアクチュエータ250を操作することでクラッチ245を開放する。後続のステップ630において、領域IIにおいて作業機械102の設定した運転点で必要な支持トルクを提供すべく、補助駆動部106,108により提供されるトルクを維持または調整する。
【0063】
ステップ635において、合成伝動機構110は、領域IIでクラッチ245を開放して同期回転数で作業する。領域Iから領域IIへの移行のために補助駆動部106,108を、補助駆動部106,108が持続的に提供可能なトルクより大きなトルクを提供するように制御した後、過昇は、領域移行の実施後、遅くともステップ635において終了させることができる。続いてステップ640において、領域IIでの運転を続行させることができ、駆動軸240の回転数は、補助駆動部106,108の回転数の制御により主駆動部104の定格回転数を超えて上昇させることができる。
【0064】
方法600は、別の変化態様で実施されてもよい。例えば、列挙したステップのうち、それぞれ隣接するステップをまとめ、並行にまたは同時進行的に実施してもよい。代替的には、隣接するステップを互いに置き換えてもよい。その結果、隣接するステップを逆の順序で実施してもよい。特に好ましい一実施の形態では、主駆動部104の電源投入時に発生し得るトルクショックをできる限り補償すべく、ステップ615および620を同時にまたは同時進行的に実施する。
【0065】
方法600のさらに別の一実施の形態において、ステップ615,620,625の順序を620,625,615に変更する。既にステップ610において、同期回転数として、主駆動部104の定格回転数より高い回転数を使用する。ステップ615において主駆動部104をオンにする前に実施されるステップ620および625中、主駆動部104の回転数を再び軽く下げることができ、その結果、主駆動部104は、主駆動部104の定格回転数の近傍で供給電気回路網112に接続される。
【0066】
図7は、図2の形態の合成伝動機構110の、領域IIから領域Iへの移行を制御する方法の別のフローチャートを示している。記載したステップの幾つかは、実質的にまたはステップを逆にした形で、図6に関して既に上述したステップに相当する。
【0067】
ステップ705において、合成伝動機構110を領域IIで運転する。クラッチ245は、開放されており、主駆動部104は、オンにされており、補助駆動部106,108は、付加的なトルクを提供している。ステップ710において、合成伝動機構110は、主駆動部104の定格回転数に相当する同期回転数に少なくとも近似的に到達する。できる限り正確に到達することが好ましいが、回転数が、同期回転数の上下約±30%、好ましくは約±15%、さらに好ましくは約±5%の範囲内にあれば、既に十分であり得る。上で詳しく説明したように、領域IIから領域Iへの続いての移行を可能にするために、補助駆動部106,108により提供されるトルクを過度に高めることが必要であり得る。この場合、過昇は、ステップ710で開始し得る。
【0068】
ステップ715において、補助駆動部106,108の少なくとも1つをジェネレータ出力でもって、つまり制御されるブレーキとして運転することで、クラッチ245を介して伝達されるトルクを補償する。式4cおよび4dが負荷トルクT1および主駆動部104の回転数のプリセット下で満たされているようにブレーキ作用を調節する。負荷トルクT1を規定する実施の形態および変化態様については、方法600のステップ620に関する上の記載を参照されたい。
【0069】
ステップ720において、クラッチ245を特にアクチュエータ250により閉鎖する。好ましくは、スイッチング装置114が主駆動部104を主電気回路網112から遮断することで、主駆動部104をオフにする。ステップ730において、補助駆動部106,108によりもたらされるトルクを、駆動軸240の目下の回転数n1を一定に維持するように調節する。ステップ735において、合成伝動機構110は、同期回転数で領域IIにおいて作業する。領域IIから領域Iへの移行のために補助駆動部106,108を、補助駆動部106,108が持続的に提供可能なトルクより大きなトルクを提供するように制御した後、過昇は、領域移行の実施後、遅くともステップ735において終了させることができる。ステップ740において、駆動軸240、ひいては作業機械102の回転数は、補助駆動部106,108を相応に制御することで、同期回転数より下では無段に制御することができる。
【0070】
本方法でも、記載したステップを記載した順序で順に実施してもよい。相次ぐステップをそれぞれ同時進行的にまたは互いに並行して実施してもよい。並行して実施可能なステップは、記載した順序とは逆の順序で実施してもよい。特にステップ725および730は、駆動軸240における回転数n1の落ち込みを補助駆動部106,108のモータトルクによりできる限り最小化または完全に補償すべく、並行して実施してもよい。
【0071】
さらに別の一実施の形態では、方法700において、ステップ715,720,725の順序を725,715,720に変更する。ステップ725において、主駆動部104をオフにする。ステップ715において、ジェネレータ出力による補助駆動部106,108の制御によるクラッチトルクの補償を行い、ステップ720において、クラッチ245の閉鎖を行う。本変化態様でも、相次ぐステップを同時進行的にまたは並行して実施してもよい。並行化できる部分は、その処理順序を逆にしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
100 駆動システム
102 作業機械
104 主駆動部
106 第1の補助駆動部
108 第2の補助駆動部
110 合成伝動機構
112 主電気回路網
114 スイッチング装置
116 第1のインバータ
118 第2のインバータ
120 中間回路
122 供給装置
124 補助電気回路網
126 制御装置
205 プラネタリギヤ
210 リングギヤ
215 サンギヤ
220 プラネタリピニオン
225 プラネタリピニオンキャリア
230 ピン
235 駆動軸
240 駆動軸
245 クラッチ
250 アクチュエータ
255 伝動機構段
260 伝動ギヤ
265 補助軸
270 伝動機構段
280 回転数センサ
285 温度センサ
400 制御チャート
405 特性線
410 領域
500 制御チャート
600 方法
605 領域Iでの運転
610 同期回転数
615 主駆動部オン
620 補助駆動部によるクラッチトルクの補償
625 クラッチ開放
630 支持トルク提供
635 同期回転数
640 領域IIでの運転
700 方法
705 領域IIでの運転
710 同期回転数
715 補助駆動部によるクラッチトルクの補償
720 クラッチ閉鎖
725 主駆動部オフ
730 トルク調節
735 同期回転数
740 領域Iでの運転
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7