(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】分離壁を備えた蒸留カラムを含む(メタ)アクリル酸の精製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/44 20060101AFI20220715BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20220715BHJP
C07C 57/07 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C07C51/44
B01D3/14 A
C07C57/07
(21)【出願番号】P 2019554697
(86)(22)【出願日】2018-04-03
(86)【国際出願番号】 FR2018050826
(87)【国際公開番号】W WO2018185423
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-02-04
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォコネ,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】トレチャク,セルジュ
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-503692(JP,A)
【文献】特表2011-514311(JP,A)
【文献】特表2016-529096(JP,A)
【文献】特表2016-530086(JP,A)
【文献】特表2007-525481(JP,A)
【文献】特開2005-154445(JP,A)
【文献】特表2013-522280(JP,A)
【文献】特開2001-058970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/44
C07C 57/07
B01D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸前駆体の気相酸化により得られる(メタ)アクリル酸を含むガス状反応混合物から、有機溶媒の非存在下で、精製(メタ)アクリル酸を回収する方法であって、
a)前記ガス状反応混合物は、脱水カラムと呼ばれる第1の蒸留カラムで共沸溶媒を使用せずに脱水に供され、その頂部からの流れの少なくとも一部は凝縮されて、還流形態で前記脱水カラムに戻される流れ、及びその底部からの流れの少なくとも一部は前記脱水カラムの下部に還流として戻されて再循環ループを形成する流れをもたらす工程;
b)前記脱水カラムの底部からの流れは、少なくとも部分的に仕上げカラムと呼ばれる第2の蒸留カラムに送られ、重質化合物を含む底部からの流れと軽質化合物を含む頂部からの流れとを分離でき、その少なくとも一部は前記脱水カラムに戻される工程
を少なくとも含み、
前記方法は、
i)前記仕上げカラムは、分離壁を備え、この壁は頂部のカラムの上部ドームと接続され、下部の前記カラムの底部とは接続されていないため、前記カラムは、気液接触を確実にする内部蒸留要素を備えた2つのセクションに分離され、その下部スペースが前記カラム底部のスペースと連通し、そのヘッドスペースが2つの密閉領域に分離され、このカラムは前記分離壁の片側から供給される;及び
ii)軽質化合物に富み水を含むガス状流れが、供給セクションの頂部で抽出され、次いで凝縮後、前記脱水カラムの底部の再循環ループの少なくとも一部でリサイクルされる、及び
iii)前記供給セクションの他方の側に位置するセクションの頂部にある前記仕上げカラムからガス状形態で抽出された精製(メタ)アクリル酸の流れは、凝縮後にドローオフされ、凝縮された流れの一部はドローオフセクションの頂部で液体還流として戻される
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸前駆体が、プロピレンの酸化又はプロパンのオキシ脱水素化により得られるアクロレインであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(メタ)アクリル酸前駆体が、イソブチレン及び/若しくはtert-ブタノールの酸化により、又はブタン及び/若しくはイソブタンのオキシ脱水素化により得られるメタクロレインであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸前駆体が、再生可能源からの炭素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
仕上げカラムが、供給セクションの上部トレイの頂部で供給され、任意に、前記供給セクションの頂部で抽出されるガス状流れの一部が、凝縮後に前記仕上げカラムの供給流れに戻されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
仕上げカラムが、供給セクションの上部トレイよりも低い位置にある点で供給され、前記供給セクションの頂部で抽出されたガス状流れの一部が、凝縮後に前記供給セクションの頂部での液体還流として戻されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
仕上げカラムの供給セクションが、包括的に5~20の理論トレイ数を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
仕上げカラムのドローオフセクションが、包括的に2~20の理論トレイ数を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
分離壁の下に位置する仕上げカラムの下部スペースが、1~5の理論トレイに相当する精留要素を備えることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
残留アルデヒド含有量を低減することを目的とする化学処理剤を仕上げカラムに導入することをさらに含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
アルデヒド用の化学処理剤が、
アミン;
アニリンファミリーの化合物;
ヒドラジンファミリーの化合物;
ヒドラジドファミリーの化合物;
単独又は任意の割合のそれらの混合物
から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
化学処理剤が、少なくとも供給流れとともに化学剤の効果的な分散を確実にする能力を含む混合デバイスにより、仕上げカラムの供給流れに導入されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
化学処理剤が、カラムが供給されるトレイよりも低い、前記カラムの頂部と底部との間に位置する点、仕上げカラムの供給セクションの高さ
の3分の1と3分の2との間に位置する点にて、前記仕上げカラムに直接導入されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
精製(メタ)アクリル酸を含むガス状流れのサイドドローが、ドローオフセクションから製造されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項15】
分別晶出により、又は任意で残留アルデヒドと反応する化合物の存在下での蒸留により、精製された(メタ)アクリル酸の追加の処理をさらに含み、ポリマーグレードの(メタ)アクリル酸品質をもたらし、
前記ポリマーグレードの(メタ)アクリル酸が、99.5重量%より大きい(メタ)アクリル酸の含有量を有し、並びに2ppm未満のプロトアネモニン、3ppm未満の総アルデヒド、0.05質量%未満の水、及び0.05質量%未満の酢酸を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
A)少なくとも1つの(メタ)アクリル酸前駆体を気相酸化に供し、(メタ)アクリル酸を含むガス状反応混合物を形成する工程;
B)前記ガス状反応混合物を冷却する工程;
C)前記冷却されたガス状反応混合物を、請求項1~15のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル酸の回収方法に供する工程
を少なくとも含む、精製(メタ)アクリル酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸の製造に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、外部有機溶媒の非存在下での2つの蒸留カラムの使用に基づく(メタ)アクリル酸の回収方法における精製/仕上げカラムとしての分離壁を備えたカラムの使用に関する。本発明による方法は、回収された(メタ)アクリル酸の工業品質を改善しながら、方法のエネルギーバランスを改善する。
【0003】
本発明による方法は、高分子量アクリル酸ポリマーの製造に適合性のポリマーグレード(又は氷)(メタ)アクリル酸をさらに直接製造する。
【背景技術】
【0004】
大きな工業規模でアクリル酸を合成する方法は、酸素の存在下でプロピレンの接触酸化反応を実施する。
【0005】
この反応は一般に気相で行われ、通常2つの工程で行われる:第1の工程はプロピレンのアクロレインに富む混合物へのほぼ定量的な酸化であり、次いで第2の工程でアクロレインはアクリル酸に選択的に酸化される。
【0006】
第2の工程からのガス状混合物は、アクリル酸の他に、使用される試薬からの非変換化合物又は2つの反応工程の少なくとも1つの間に生じた不純物で構成される、すなわち
-通常使用される温度及び圧力条件で凝縮できない軽質化合物、すなわち本質的に:プロピレン、プロパン、窒素、未転化酸素、後の酸化により少量で形成される一酸化炭素及び二酸化炭素;
-凝縮できる軽質化合物、すなわち本質的に:水、軽質アルデヒド、例えば未転化アクロレイン、ホルムアルデヒド、グリオキサール及びアセトアルデヒド、ギ酸、酢酸、プロピオン酸;
-重質化合物:フルフルアルデヒド、ベンズアルデヒド、マレイン酸及び無水物、安息香酸、2-ブテン酸、フェノール、プロトアネモニン。
【0007】
この方法で得られるガス状混合物の複雑性は、このガス状流出物に含まれるアクリル酸を回収し、その最終用途、例えばアクリル酸エステルの合成又はアクリル酸ポリマー及び/又はアクリル酸エステルの製造に適合性のアクリル酸グレードに変換するための一連の操作の適用を必要とする。
【0008】
近年、アクリル酸の回収/精製のための新しい技術が登場し、これは、より少ない数の精製工程を含み、外部有機溶媒を必要としない。
【0009】
この「無溶媒」技術に基づいた特許EP2,066,613は、外部の水も共沸溶媒も使用しないアクリル酸の回収方法を記載している。この方法では、2つの蒸留カラムのみを使用して、冷却されたガス状反応混合物を精製する:a)脱水カラム、b)及び脱水カラムの底部からの流れの一部が供給される仕上げカラム(又は精製カラム)。
【0010】
この方法によれば、冷却されたガス状反応流れは、第1のカラムで脱水に供される。カラムの頂部で蒸留されたガス状流れは、凝縮器で部分的に凝縮され、アクリル酸の吸収/凝縮に関与する脱水カラムに送られる液体還流を生じ、非凝縮ガス状流出物は少なくとも一部は反応に戻され、残りは排除される。
【0011】
脱水カラムの底部からの流れは、仕上げカラムと呼ばれる第2のカラムに部分的に送られる。この液体流れの他の部分は、熱交換器を通って脱水カラムの下部に戻され、それにより再循環ループを形成する。精製/仕上げ工程中に、底部から重質化合物に富む流れが除去され、頂部から水及び軽質副生成物を含む留出物が回収され、これが凝縮され、次いで第1の脱水カラムの足部でリサイクルされる。脱水カラムの足部から来て、仕上げカラムに送られる(メタ)アクリル酸と吸収-凝縮工程からの軽質及び重質不純物とを含む液体流れ、及び仕上げカラムの頂部から来て、脱水カラムの底部でリサイクルされる軽質化合物が豊富な(メタ)アクリル酸の流れを含む液体流れは、2つのカラムの間に「リサイクルループ」を形成する。
【0012】
精製されたアクリル酸の流れは、仕上げカラムからのサイドドローにより、液体又は蒸気の形態で回収される。得られたアクリル酸は、一般に98.5質量%を超える純度を有し、0.5質量%未満の水及び0.4質量%未満の酢酸を含む。依然として存在する他の不純物の中でも、アルデヒド及びプロトアネモニンなどの重質化合物が特に見られる。
【0013】
精製されたアクリル酸は、例えばエステルを製造するために他の精製なしで工業用グレードのアクリル酸として使用でき、又は残留不純物を除去し、ポリマーグレード(氷とも呼ばれる)アクリル酸の品質に導くために分別晶出による追加の処理に供することができる。
【0014】
文献EP2,066,613に記載された方法で使用できる仕上げカラムは、任意の構成、例えば充填カラム、トレイカラム、分離壁を備えたカラムを有することができ;充填物は、バルク又は構造化された任意のタイプであることができ、理論トレイの数は制限されない。
【0015】
仕上げカラムの温度及び圧力の操作条件は、この方法では重要ではなく、最新技術から知られている蒸留方法に従って決定することができる。しかしながら、好ましくは、精製カラムは大気圧よりも低い圧力で操作され、比較的低い温度での操作を可能にし、それにより存在する不飽和生成物の重合を回避し、重質副生成物の形成を最小限に抑える。
【0016】
文献EP2,066,613に記載されている精製方法に由来する利点にもかかわらず、欠点が依然として残っている。
【0017】
(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルのポリマーを製造するには、特定の面倒な不純物を十分に含まない品質の工業用(メタ)アクリル酸を製造する必要がある。例えば、フルフラール、ベンズアルデヒド、プロトアネモニンなどの重質不純物は、重合過程で反応するため面倒である。酢酸など、特定のレベルを超えるその他の軽質不純物は、揮発性有機化合物を生じ得、それが(メタ)アクリル酸ポリマー内に残り、使用に不向きにする。
【0018】
最後に、工業用グレードの(メタ)アクリル酸とアルコールとの反応によるエステルの製造中に、酢酸、クロトン酸又はマレイン酸又は無水物などのカルボン酸官能基を有する不純物が、除去が困難な不純物を形成し、反応中に使用されるアルコールを部分的に消費することによりエステル化反応の収率を低下させ得る。
【0019】
これらの問題を防ぐには、多数の精留レベルを有する仕上げカラムを使用する必要がある。
【0020】
アクリル酸はフリーラジカル重合に非常に敏感な生成物であり、装置を汚し、洗浄のために費用のかかる設備停止を引き起こす不溶性ポリマーの形成をもたらす。
【0021】
重合禁止剤の添加はこの寄生反応を低減するが、この溶液は、特にカラム又はその装置内の温度が高すぎる場合、長期間の連続製造には十分でない。さらに、重合禁止剤を含む液体還流が原因で到達が困難になる構造によって生じるデッドポイントのために、一般にカラムのトレイ又は充填物に禁止剤を分布させることは困難である。
【0022】
したがって、温度を制限するために、アクリル酸に富む流れの精製のための蒸留操作が減圧下で行われ、蒸留カラムには一般に単純な充填物が装備され、禁止剤を含む液体の効果的な分配を可能にし、ポリマー前駆体源(polymer precursor germs)の蓄積を防止する。例えば、穿孔トレイを備えたカラムが使用される。
【0023】
一般に、重合開始現象を減らすカラムのインターナルは、ポリマーの形成及び蓄積を起こし易いより強力なカラムよりも、取り付けられた理論トレイあたりの負荷損失を大きくする。
【0024】
工業用アクリル酸の品質を改善するために精留トレイの数を増やすと、カラムの全体的な負荷損失が増加し、これはカラムの温度損失の増加及び重合に対する感度の悪化になる。
【0025】
さらに、アクリル酸には、アクリル酸二量体とも呼ばれる3-アクリルオキシプロピオン酸などのマイケル付加誘導体を容易に形成できるという特殊性がある。これらの化合物は、アクリル酸モノマーを消費することで回収率を低下させる重質生成物である。
【0026】
フリーラジカル重合と同様に、マイケル誘導体を形成するこの共有結合反応は、温度によって非常に優先される。結果として、アクリル酸の品質要件を満たすために多数の精留トレイを備えたカラムを使用すると、生成物の損失という点で欠点が生じるが、これは、アクリル酸モノマーを再生するためにマイケル誘導体の追加の高温クラッキングによって部分的にのみ補うことができる。
【0027】
したがって、重合のリスクとマイケル付加誘導体生成物の形成との両方を低減するためは、これら副反応の両方が高温で有利であるので、理論精留トレイの数を減らしながら分離を達成する実質的な必要性がある。
【0028】
さらに、文献EP2,066,613に記載されているような無溶媒法での軽質不純物(主に水及び酢酸)の除去には、2つのカラム間のリサイクルループが必要であり、その流量は大きく、仕上げカラムの効率に反比例する。したがって、不十分な効率を補うためにリサイクル流量を増やすと、追加のエネルギー消費につながる。
【0029】
本発明者らは、分離壁を備えたカラムを使用して、EP2,066,613の方法における仕上げカラムのように、それを特定の条件で使用すると、より良い品質の工業用アクリル酸を製造しながら、アクリル酸の精製中に顕著なエネルギー利得を導くことで前述の欠点を克服することを見出した。
【0030】
蒸留カラムが分離壁を備えている場合、壁は頂部部分のカラムの上部ドームに接続され、下部のカラムの底部に接続されていない場合、カラムには2つのセクションが含まれ、その下部スペースは、カラムの底部のスペースと連通し、そのヘッドスペースは2つの密閉された領域に分離される。
【0031】
仕上げカラムがこの構成を有する場合、本発明者らは、仕上げカラムの供給流れに含まれる軽質化合物及び水が供給セクションからより効果的に除去され、より低い流量のリサイクルループにおいて脱水カラムの底部でリサイクルできる一方で、他のセクションの頂部で純度が向上したアクリル酸の抽出を可能にし;カラムの下部スペースで形成される重質生成物の流れは、仕上げカラムの底部で除去されることを見出した。
【0032】
本発明者らはまた、この構成において、残留アルデヒド用の化学処理剤が上流又は分離壁を備えたカラムに添加される場合、このカラムの頂部でポリマーグレードのアクリル酸を回収でき、このポリマーグレードのアクリル酸は、特に残留水、酢酸及びプロトアネモニンの含有量に関して、優れた品質であることを見出した。
【0033】
本発明者らはまた、分離壁を備えたカラムの使用のいくつかの条件において、フルフラール又はベンズアルデヒドなどのアルデヒド及びプロトアネモニンの残留含有量に関する仕様を満たすポリマーグレードのアクリル酸を、カラムの頂部において直接ドローオフできることも見出した。
【0034】
ポリマーグレードのアクリル酸の回収方法において、残留アルデヒド用の化学処理剤の存在を伴う仕上げカラムとして分離壁を備えたカラムを使用することは、出願人の名で特許出願WO2017/060583において既に提案されている。
【0035】
この方法では、仕上げカラムの分離壁はカラムの上部と接続されていない。仕上げカラムは、脱水カラムの底部からの流れによって壁の片側から頂部に供給され、ポリマーグレードのアクリル酸の流れが、分離壁の他の側に位置するセクションのサイドドローで得られる。精製されるアクリル酸の流れによって供給される分離壁の側、すなわち供給セクションでは、軽質化合物(主に酢酸及び水)が除去され、重質化合物(化学剤との反応の生成物を含む)が豊富なアクリル酸を含有するカラムの底部に戻るように流れる残留流れが、分離壁の他方の側にあるドローオフセクションで蒸留される。
【0036】
精製アクリル酸は、この第2のセクションのサイドドローで収集される。このドローオフセクションの頂部で得られたガス状流れは、供給セクションの頂部で除去された軽質化合物を含むガス状流れと混合され、次いで、凝縮後、脱水カラムの底部にて再循環ループで液体形態で戻される。仕上げカラムに供給する脱水カラムの底部からの液体流れ、及び脱水カラムにリサイクルされた仕上げカラムの頂部からの流れは、主にアクリル酸を含むリサイクルループを形成する。
【0037】
この方法に従って得られたアクリル酸は、ポリマーグレードであり、アクリル酸含有量が>99%、好ましくは>99.5%であり、総アルデヒド含有量が<10ppm、さらには<3ppmである。さらに、5ppm未満のプロトアネモニンが含まれる。
【0038】
特許出願WO2017/060583に記載されている精製図では、水及び酢酸を十分に含まないアクリル酸の流れを得るために、仕上げカラムから脱水カラムへの軽質化合物が豊富な頂部からの流れに関して十分な流量を維持する必要がある。この頂部からの流れは、全体的に回収を望むアクリル酸で主に構成される。仕上げカラムの頂部から脱水カラムへの実質的な流れのリサイクルには、脱水カラムの底部から仕上げカラムの供給物へ供給される流量の増加を伴う。その結果、影響を受けるのはリサイクルループ全体の流量であり、リサイクルループの蒸発を確実にするために十分なエネルギーが必要である。これらの条件でのみ、サイドドローからの軽質化合物によるアクリル酸の「汚染」を防ぎ、一定のポリマーグレードのアクリル酸品質を保証することができる。
【0039】
さらに、アルデヒドを除去するために使用される化学剤は、重質ラクトン型化合物であるプロトアネモニン不純物を除去するのに十分な反応性がない。プロトアネモニンを非常に低いレベルまで完全に除去し、高分子質量のポリマーの製造に適合する氷(メタ)アクリル酸品質を得るには、非常に高いカラム効率が必要である。ポリマーグレードのアクリル酸中のプロトアネモニンの存在は、5ppmの低濃度でも、3ppmでさえ、高分子質量のアクリル酸ポリマー又はアクリル酸塩の製造にはまったく受け入れられない場合がある。
【0040】
プロトアネモニンの除去は、この方法では未解決の問題のままである。実際、サイドドローから、すなわち、ドローオフセクションの頂部よりも低い位置にある点にて精製生成物を得ると、このドローオフの下に位置する分離セクションの高さが低くなる。したがって、プロトアネモニンをまったく含まないアクリル酸の流れを得るには、非常に高い効率のカラムを設置する必要がある。生じる欠点は、投資コスト、3-アクリルオキシプロピオン酸(ダイマーAA)の形成の増加、及び重合の増加のリスクであり、これは、蒸留カラムに精留トレイを追加すると、カラムの総負荷損失が増大し、その結果、カラムのベースの温度が上昇するためである。
【0041】
したがって、従来技術に記載されているポリマーグレードのアクリル酸を回収する方法において、プロトアネモニン不純物の除去を改善する必要性が残っている。
【0042】
今般、特定の条件で使用される分離壁を備えた仕上げカラムがこのニーズを満たし、2ppm未満のプロトアネモニン、0.1%未満の質量での水含有量及び3ppm未満の質量でのアルデヒド含有量を含むポリマーグレードのアクリル酸をもたらすことを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【文献】欧州特許第2,066,613号明細書
【文献】国際公開第2017/060583号
【発明の概要】
【0044】
本発明は、(メタ)アクリル酸前駆体の気相酸化により得られる(メタ)アクリル酸を含むガス状反応混合物から、有機溶媒の非存在下で、精製(メタ)アクリル酸を回収する方法に関し、
a)ガス状反応混合物は、脱水カラムと呼ばれる第1の蒸留カラムで共沸溶媒を使用せずに脱水に供され、その頂部からの流れの少なくとも一部は凝縮されて、還流形態で脱水カラムに戻される流れ、その底部からの流れの少なくとも一部は脱水カラムの下部に還流として戻されて再循環ループを形成する流れをもたらす工程;
b)脱水カラムの底部からの流れは、少なくとも部分的に仕上げカラムと呼ばれる第2の蒸留カラムに送られ、重質化合物を含む底部からの流れと軽質化合物を含む頂部からの流れとを分離でき、その少なくとも一部は脱水カラムに戻される工程
を少なくとも含み、
この方法は、
i)仕上げカラムは、分離壁を備え、この壁は頂部のカラムの上部ドーム(upper done)と接続され、下部のカラムの底部とは接続されていないため、カラムは、気液接触を確実にする内部蒸留要素を備えた2つのセクションに分離され、その下部スペースがカラム底部のスペースと連通し、そのヘッドスペースは2つの密閉領域に分離され、このカラムは分離壁の片側から供給される;及び
ii)軽質化合物に富み、水及び酢酸を含むガス状流れが、供給セクションの頂部で抽出され、次いで凝縮後、脱水カラムの底部の再循環ループの少なくとも一部でリサイクルされる、及び
iii)供給セクションの他方の側に位置するセクションの頂部にある仕上げカラムからガス状形態で抽出された精製(メタ)アクリル酸の流れは、凝縮後にドローオフされ、凝縮された流れの一部はドローオフセクションの上部での液体の還流として戻される
ことを特徴とする。
【0045】
本発明の残りの説明における簡略化のために、「供給セクション」は、精製されるべき(メタ)アクリル酸の流れによって供給される分離壁を備えたカラムのセクションを意味すると理解され;「ドローオフセクション」とは、精製された(メタ)アクリル酸の流れが頂部から抽出される分離壁を備えたカラムのセクションを意味すると理解される。
【0046】
第1の特定の実施形態によれば、仕上げカラムは、供給セクションの上部トレイの頂部で供給され、任意に、供給セクションの頂部で抽出されるガス状流れの一部は、凝縮後に仕上げカラムの供給流れに戻される。
【0047】
第2の特定の実施形態によれば、仕上げカラムは、供給セクションの上部トレイよりも低い位置にある点で供給され、供給セクションの頂部で抽出されたガス状流れの一部は、凝縮後に供給セクションの頂部での液体還流として戻される。
【0048】
これら2つの実施形態によれば、本発明による方法は、脱水カラムの底部と仕上げカラムの頂部とで構成されるリサイクルループの流量を低下させながら、より良い品質の精製(メタ)アクリル酸の流れを製造でき、したがって、関連するエネルギーを削減する。
【0049】
仕上げカラムの頂部で抽出された精製(メタ)アクリル酸の流れは、他の精製を行わずに、工業用グレードの(メタ)アクリル酸として直接使用できる。
【0050】
具体的には、工業用グレードの(メタ)アクリル酸は、有利には、次の質量含有量の不純物を有する:
水:<0.2%、好ましくは<0.05%、より好ましくは<0.01%
酢酸:<0.2%、好ましくは<0.05%、より好ましくは<0.02%
フルフラール:<0.05%、好ましくは<0.02%、より好ましくは<0.005%
ベンズアルデヒド:<0.05%、好ましくは<0.02%、より好ましくは<0.005%
プロトアネモニン:<0.05%、好ましくは<0.02%、より好ましくは<0.005%。
【0051】
この工業用アクリル酸は、分別晶出により、又は任意で残留アルデヒドと反応する化合物の存在下での蒸留により、ポリマーグレードの(メタ)アクリル酸品質をもたらす別の方法に供することができる。従来技術の方法と比較して改善された工業用品質のために、ポリマーグレードを製造するための追加の精製が簡素化されている。
【0052】
本発明による方法は、残留アルデヒド含有量を低減することを目的とする化学処理剤の仕上げカラムへの導入をさらに含んでいてもよく、この場合仕上げカラムの頂部から抽出された(メタ)アクリル酸の流れはポリマーグレードの(メタ)アクリル酸の流れである。
【0053】
特定の具体的な実施形態によれば、ポリマーグレードの(メタ)アクリル酸をもたらす本発明による方法は、以下に示す有利な特徴の少なくとも1つを有することもできる:
-化学処理剤は、仕上げカラムの供給流れに導入される;
-化学処理剤は、供給流れとともに少なくとも化学剤の効果的な分散を確実にする能力を備えた混合デバイスによって導入される;
-化学処理剤は、カラムの頂部と底部との間で、カラムが供給されるトレイよりも低い位置にある点、好ましくは仕上げカラムの供給セクションの高さ約3分の1から3分の2の位置にある点で仕上げカラムに直接導入される。
-中間品質の(メタ)アクリル酸を含むガス状流れのサイドドローは、ドローオフセクションから製造される。
【0054】
別の方法として、分離壁を備えたカラムのトレイの数、特に供給及びドローオフセクションのそれぞれに対して15~20の範囲の理論トレイの数を適合させることにより、アルデヒド用の化学処理剤に頼らずに、仕上げカラムの頂部にて、ポリマーグレードの(メタ)アクリル酸を直接製造することが可能である。
【0055】
そのすべての変形形態において、仕上げカラムの頂部にてドローオフされるポリマーグレードの(メタ)アクリル酸は、(メタ)アクリル酸の重量含有量が>99.5%であり、2ppm未満のプロトアネモニン、好ましくは1ppm未満のプロトアネモニン及び3ppm未満、好ましくは1ppm未満の総アルデヒド(フルフラール及びベンズアルデヒド)を含む。水の質量含有量は一般に0.05%未満、好ましくは0.01%未満であり、酢酸の質量含有量は一般に0.05%未満、好ましくは0.02%未満である。
【0056】
本発明の別の目的は、
A)少なくとも1つの(メタ)アクリル酸前駆体を気相で酸化させて、(メタ)アクリル酸を含むガス状反応混合物を形成する工程;
B)ガス状反応混合物を冷却する工程;
C)冷却されたガス状反応混合物を、先に定義された(メタ)アクリル酸の回収方法に供する工程
を少なくとも含む、精製(メタ)アクリル酸の製造方法である。
【0057】
本発明による方法は、精製された(メタ)アクリル酸の製造に悪影響を与えない限り、他の予備、中間又は後続の工程をさらに含んでもよい。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、(メタ)アクリル酸前駆体はアクロレインである。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、アクロレインは、プロピレンの酸化により、又はプロパンのオキシ脱水素化により得られる。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、(メタ)アクリル酸前駆体はメタクロレインである。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、メタクロレインは、イソブチレン及び/又はtert-ブタノールの酸化によって得られる。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、メタクロレインは、ブタン及び/又はイソブタンのオキシ脱水素化から得られる。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、(メタ)アクリル酸前駆体の気相酸化により得られた(メタ)アクリル酸を含むガス状反応混合物は、再生可能源からの炭素を含む。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、(メタ)アクリル酸前駆体は、グリセロール、3-ヒドロキシプロピオン酸又は2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)から誘導される。
【0065】
本発明の好ましい実施形態によれば、ガス状反応混合物は、二段階酸化法に従って得られたプロピレンのアクリル酸誘導体を含む。
【0066】
残留アルデヒドを処理するための薬剤を使用する実施形態では、本発明による方法は、例えば超吸収剤として使用できる高分子量ポリマーを製造するためのより高い品質に対応するポリマーグレードの(メタ)アクリル酸の流れを製造する。
【0067】
好ましい実施形態において、本発明による方法は、残留アルデヒドを処理するための薬剤に頼ることなくポリマーグレードの(メタ)アクリル酸の流れを製造する。
【0068】
本発明による方法は、(メタ)アクリル酸を含むガス状反応混合物に含まれる水を除去するために外部有機溶媒の使用を必要としない。エネルギーコストが高い結晶化による追加の処理を必要としない。
【0069】
本発明による方法は、脱水カラム及び仕上げカラムのみを使用し、これは、特定の構成において分離壁を含む仕上げカラムの内部で行われる化学剤を使用したアルデヒドを処理する工程を任意に含んでいてもよい。分離壁を介した供給流れと精製された酸との物理的分離により、固定仕上げカラム高さ及び内部蒸留要素のアセンブリに関する理論レベル数の増加をもたらし、まず軽質化合物を効果的に分離し、リサイクルのためのエネルギー利得を得て、次に、重質化合物を効果的に分離し、より高品質の精製(メタ)アクリル酸を得る。
【0070】
その結果、仕上げカラムでより効率的に分離される残留アルデヒドを除去するために必要な化学剤の量が減り、化学剤を使用する必要なく残留アルデヒドを効果的に除去することさえできる。
【0071】
本発明によれば、最適化された精製コストで一定品質のポリマーグレードアクリル酸を保証することが可能である。
【0072】
本発明の他の特徴及び利点は、以下に示す添付の
図1~4を参照して、以下の詳細な説明を読んだ後に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】特許EP2,066,613に記載されている従来技術の方法の使用に適した設備。
【
図2】化学処理剤の任意の添加を伴う、本発明の第1の実施形態による精製(メタ)アクリル酸を回収する方法の使用に適した設備。
【
図3】化学処理剤の任意の添加を伴う、本発明の第2の実施形態による精製(メタ)アクリル酸を回収する方法の使用に適した設備。
【
図4】仕上げカラムとして分離壁を備えた蒸留カラムを使用してポリマーグレード(メタ)アクリル酸を回収する方法の使用に適した従来技術による設備。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明において、「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。簡略化のために、以降の説明ではアクリル酸の製造に言及するが、同様にメタクリル酸の製造にも適用される。
【0075】
「外部有機溶媒」という用語は、(メタ)アクリル酸が可溶で、その起源が方法の外部にある、吸収、抽出、又は共沸蒸留溶媒として使用される任意の有機化合物を意味する。
【0076】
「共沸溶媒」という用語は、水と共沸混合物を形成する特性を有する任意の有機溶媒を意味する。
【0077】
「凝縮できない」又は「非凝縮性」という用語は、大気圧で沸点が20℃未満の化合物を意味する。
【0078】
副生成物化合物を表す「軽質」という用語は、考慮される作用圧力での沸点が(メタ)アクリル酸の沸点よりも低い化合物を意味し、同様に、「重質」という用語はその沸点が(メタ)アクリル酸の沸点より高い化合物を意味する。
【0079】
「アルデヒド用の化学処理剤」という用語は、アルデヒドと共に反応生成物を形成する化合物を意味し、その生成物がより重質であり、蒸留により(メタ)アクリル酸からより容易に分離され、それにより処理されるべき媒体中に存在するアルデヒド含有量を非常に低いレベルに低下させる。
【0080】
「化学処理」とは、アルデヒド用の化学処理剤を使用して行われる処理を意味すると理解される。
【0081】
このタイプの処理及び使用できる化合物は、使用されている反応又は錯化が完全に特定されていない状態で、最新技術でよく知られている。作用様式は、本質的に、処理されるべきアルデヒドよりも重質反応生成物を形成することを目的とする。
【0082】
この用語としてのアルデヒド用の化学処理剤は、アルデヒドにわずかな影響を与える可能性があるにもかかわらず、一般に重合からの(メタ)アクリル誘導体を含む流れを安定化するという単一の目的で添加される重合禁止剤を除外し、ここでこれらの重合禁止剤は、種々のレベルで及び/又は設備の種々の流れで添加できる。
【0083】
用語「ポリマーグレード」と用語「氷」は同じことを意味し、(メタ)アクリル酸が高分子量(メタ)アクリルポリマーの製造に使用できることを意味する高品質の基準を満たすことを示す。
【0084】
2つのカラム間の「リサイクルループ」とは、脱水カラムの底部から来て仕上げカラムに送られる液体流れ、及び仕上げカラムの頂部から来て脱水カラムの底部にてリサイクルされる液体流れによって形成される閉ループを意味すると理解される。
【0085】
本発明は、最適化された精製コストで高純度アクリル酸を製造することを目的とし、より少ない数の蒸留カラムを含み、外部有機溶媒を必要としない、従来技術の精製方法において仕上げカラムとして分離壁を備えたカラムを特定の条件で使用することに基づいている。
【0086】
図1に示される従来技術のこの方法によれば、アクリル酸前駆体の気相での酸化により得られるアクリル酸を含むガス状反応混合物1は、第1蒸留カラム10に供給される。一般に包括的に0.3~2、好ましくは0.3~1.2の水/アクリル酸の質量比を含むガス状反応混合物は、脱水カラム10で脱水に供される前に予め冷却されてもよい。
【0087】
反応混合物は、水及びアクリル酸、凝縮できない軽質生成物、例えば窒素、酸素、一酸化炭素及び二酸化炭素、及び異なる化学的性質を有する様々な軽質又は重質副生成物をさらに含み、これは軽質アルデヒド、例えばアクロレイン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド又はグリオキサール、重質アルデヒド、例えばフルフルアルデヒド又はベンズアルデヒド、軽質酸、例えばギ酸、酢酸又はプロピオン酸、重質酸、例えばマレイン酸、安息香酸又は2-ブテン酸及び重質ラクトン型化合物プロトアネモニンであることができる。
【0088】
脱水カラムは頂部流れ2をもたらし、その少なくとも一部は凝縮器13で凝縮され、アクリル酸を吸収するために還流7の形態で脱水カラムに戻され、凝縮できない軽質化合物を含む他の部分(流れ14及び15)は、一般に部分的又は全体的に精製デバイスに送られる、又はアクリル酸の製造方法の他の工程、好ましくは反応混合物1を製造する反応器の上流の工程に一部リサイクルされる。
【0089】
脱水カラムの頂部からの流れ全体を頂部13から凝縮器に送ることができる。
【0090】
脱水工程の目的は、反応混合物に存在する水のバルクだけでなく、凝縮できない軽質化合物及び凝縮できる軽質化合物を頂部からの流れで排除することである。それは、水のバルク及び軽質化合物とともに、アクリル酸及び非常に少量で重質化合物を含む頂部からの流れ2、並びに重質副生成物、及び一般に10%未満、好ましくは7%未満の水の質量含有量を有するアクリル酸をほぼ全体的に含む、軽質化合物の乏しい底部からの流れ16を生じる。
【0091】
脱水カラムの底部からの流れ16に典型的な質量組成は、本質的にアクリル酸(84~90%)、酢酸(2~10%)、水(2~10%)及び重質副生成物を含む。
【0092】
脱水カラムは、一般に5~50の理論トレイ、好ましくは20~30の理論トレイを含む。
【0093】
有利には、脱水カラムは、大気圧又はわずかに上で、絶対圧1.5×105Paまでで操作する。
【0094】
有利には、脱水カラムの上部の温度は少なくとも40℃、好ましくは包括的に40℃~80℃である。脱水カラムの底部からの流れの温度は、120℃を超えないことが好ましい。
【0095】
脱水カラムの底部からの流れ16は、少なくとも部分的に(流れ3)、精製カラム又は仕上げカラムと呼ばれる第2の蒸留カラム17の頂部に送られ、そこでは頂部からの流れ8と底部からの流れ9とを分離する。
【0096】
脱水カラムの底部からの液体流れ16の一部20は、加熱器又は冷却器であることができる熱交換器12に送られ、脱水カラムに再注入されて、底部で再循環ループを形成する。好ましくは、底部ループの部分11は、ガス状反応混合物の供給物と脱水カラムの頂部との間に再注入される。
【0097】
液体流れ16の残り(流れ3)は、仕上げカラム17に供給するために送られる。
【0098】
仕上げカラム17は、一般に、5~30の理論トレイ、好ましくは8~20の理論トレイを含む典型的な蒸留カラムである。この蒸留カラムの底部には少なくとも1つのリボイラ18が、頂部には凝縮器19が連結されている。
【0099】
カラム17内の温度及び圧力は重要ではなく、最新技術から知られている蒸留方法に従って決定することができる。しかしながら、好ましくは、仕上げカラム17は大気圧よりも低い圧力で操作され、比較的低い温度での操作を可能にし、それにより存在する不飽和生成物の重合を回避し、重質副生成物の形成を最小限に抑える。
【0100】
有利には、仕上げカラムは、5kPa~約60kPaの範囲の絶対圧力下で操作し、頂部からの流れの温度は、有利には包括的に40℃~約90℃であり、底部からの流れの温度は、包括的に60℃~120℃である。
【0101】
仕上げカラムの頂部からのガス状流れ8は凝縮器19に送られ、出ていく液体流れ4は脱水カラムに戻され、脱水カラムの底部ループの流れと混合される。頂部流れ8は、本質的に水と、凝縮できる軽質副生成物化合物とを含む。
【0102】
仕上げカラムの底部で分離された流れ9は、重質副生成物のバルク、特にマイケル付加生成物、例えば3-アクリルオキシプロピオン酸、無水マレイン酸/マレイン酸、安息香酸及び重合禁止剤を含む。この流れ9は、仕上げカラムの底部で部分的にリサイクルでき、又はアクリルエステルを調製するための原料として使用できる(流れ6)。
【0103】
液体又は蒸気の形態、好ましくはガス状の精製アクリル酸を含む流れ5は、サイドドローによって仕上げカラムから抽出される。この流れ5は、工業用グレードのアクリル酸に対応している。
【0104】
図2は、本発明の第1の実施形態による精製(メタ)アクリル酸を回収する方法の使用に適した設備を示す。
【0105】
この設備は、仕上げカラム17として、分離壁を備えたカラムを備えている点で、従来技術の設備と区別され、この壁は、頂部セクションでカラムの上部ドームに接続され、下部にてカラムの底部とは接続されていない。したがって、壁は、カラムを精留要素を備えた2つのセクション35と36とに分離する。分離壁の下に位置するカラムの下部スペースは空にすることができ、又は好ましくはカラムの底部のスペースと連通するいくつかの精留要素(図示せず)を装備することができる。ヘッドスペースは、この壁によって2つの空の未接続領域に分離される。
【0106】
供給セクション35における軽質化合物の分離に必要な理論トレイの数は、一般に包括的に5~20、好ましくは15~20であり、2セクションに共通の下部スペースは1~5の理論トレイを含み得る。ドローオフセクション36では、理論トレイの数は一般に包括的に2~20、好ましくは15~20の理論トレイである。
【0107】
好ましい実施形態によれば、各供給セクション及びドローオフセクションの理論トレイの数は、包括的に15~20であり、分離壁の下に位置する共通の下部スペースは、1~5の理論トレイを表す精留要素を備えている。この実施形態によれば、アルデヒド用の化学処理剤を添加して、カラムの頂部でポリマーグレードのアクリル酸を回収する必要はない。
【0108】
カラムのセクションには、すべてのタイプのインターナルを装備できる:バルク又は規則充填物、ダウンカマーなし又はありの穿孔されたトレイ、例えばバブルキャップトレイ、固定又は可動バルブトレイなど。
【0109】
仕上げカラムは、分離壁の片側から供給セクション35で供給される。
【0110】
脱水カラム10の底部で得られた粗アクリル酸3の流れは、仕上げカラムの頂部のセクション35に送られる。
【0111】
この第1の実施形態によれば、仕上げカラムは、供給セクションの上部トレイの頂部で供給される。
【0112】
軽質化合物が豊富で水を含むガス状流れ4がセクション35の頂部で抽出され、交換器40で凝縮され、流れ20で脱水カラムの底部にある再循環ループに少なくとも部分的にリサイクルされる。
【0113】
供給セクションの頂部で抽出される流れ4の一部は、凝縮後に仕上げカラムの供給流れに有利に戻されることができる。
【0114】
軽質化合物と水が除去された、アクリル酸を含むセクション35の底部で得られた流れは、底部から重質化合物が豊富な流れ9を除去するためにセクション36で精製される。この流れ9は、リボイラ18を通して仕上げカラムの底部で部分的にリサイクルされ、余分6はドローオフされる。このドローオフされた流れ(流れ6)には、残留アクリル酸及び重質化合物、例えばマイケル付加誘導体(3-アクリルオキシプロピオン)が含まれる。有利な方法では、例えばエバポレータでの蒸留、又は高温反応器での熱分解により、マイケル誘導体からモノマーを再生する、又はこれら2つのタイプの装置を組み合わせることにより、アクリル酸を回収する回収セクションに送ることができる。代替の方法では、流れ9はまた、特にこれらの重質物を分解し、モノマーを連続的に再生する条件で、エステル合成用のマイケル反応に由来するアクリル酸及び重質生成物が豊富な原料としても使用できる。
【0115】
一般に、分離壁を備えた仕上げカラムは、5kPa~60kPa(50mbar~600mbar)、好ましくは5~20kPaの範囲の圧力ドメインで真空下で操作し、カラムの頂部の温度は包括的に50℃~80℃及びカラムの底部の温度は包括的に85℃~120℃である。カラムの頂部でのドローオフ(5)と底部での流量(6)との間の質量流量の比は、少なくとも75/25、好ましくは少なくとも95/5である。さらに、頂部でドローオフされる流れ(5)及びカラムの底部でドローオフされる流れ(6)の合計に対する脱水カラムの仕上げカラムでの頂部からの流れ(流れ4)の戻り流量の質量比は、一般に包括的に1~4である。
【0116】
セクション36の頂部で、精製アクリル酸のガス状流れ8が仕上げカラムから抽出される。凝縮後のこの流れの一部には重合禁止剤が添加され、次いで、ドローオフセクションの頂部で液体還流として戻される。使用される重合禁止剤は、この方法で回収された工業用アクリル酸の使用に適した性質及び濃度である。
【0117】
図3は、本発明の第2の実施形態による精製(メタ)アクリル酸を回収する方法の使用に適した設備を示す。
【0118】
この第2の実施形態によれば、仕上げカラムは、供給セクションの上部トレイよりも低い位置にある点、好ましくは供給セクションの高さの4分の1と4分の3との間に位置する点で供給され、供給セクションの頂部で抽出されるガス状流れ4の一部は、凝縮後に供給セクションの頂部で液体還流として戻される。
【0119】
本発明の第1の実施形態と同様に、軽質化合物及び水が除去された、アクリル酸を含むセクション35の底部で得られた流れは、底部から重質化合物が豊富な流れ9を除去するためにセクション36で精製される。この流れ9は、リボイラ18を介して、仕上げカラムの底部で部分的にリサイクルされ、余分はドローオフされ(流れ6)、遊離形態又は結合した(3-アクリルオキシプロピオン酸)に存在する残留モノマーのための回収セクション、又は本発明の第1の実施形態に記載されるようなアクリル酸エステルを製造するためのユニットに、有利には送られる。
【0120】
セクション36の頂部で、精製アクリル酸のガス状流れ8が仕上げカラムから抽出される。凝縮後のこの流れの一部には重合禁止剤が添加され、次いで、ドローオフセクションの頂部で液体還流として戻される。使用される重合禁止剤は、この方法で回収された工業用アクリル酸の使用に適した性質及び濃度である。
【0121】
図2及び
図3に示される本発明のこれら2つの実施形態によれば、固形物を回収するためのデバイス(図示せず)、例えばフィルタを、仕上げカラムの潜在的な汚染を防止するために、一列に又はバイパスとして仕上げカラムの底部の再循環ループに配置することができる。
【0122】
図1に示す典型的な仕上げカラムを使用する構成と比較して、2つの実施形態による本発明は、設置された同じ数のトレイに対して、より低い圧力及び温度で操作するより短いカラム高さの使用を可能にし;したがって、アクリル酸は、装置への高分子固体の堆積によって引き起こされる中断なしに、確実及び連続的に製造できるようになる。さらに、カラム内でのアクリル酸ポリマーの形成を防ぐために、重合禁止剤をより少量添加することができる。さらに、単一のカラムの高さに対して、本発明は、より優れた品質の工業用アクリル酸を製造し、仕上げカラムの頂部のリサイクルループの流量を減少させる。
【0123】
残留アルデヒドを減らすことを目的とする化学処理剤が、
図2及び3の流れ22に示す分離壁を備えた仕上げカラムにさらに添加される場合、ドローオフセクション36の頂部で抽出された精製アクリル酸は、ポリマーグレードのアクリル酸品質に直接対応する。
【0124】
本発明で使用できるアルデヒドの化学処理剤は、工業用アクリル酸に含まれるアルデヒドの蒸留による精製と化学処理とを組み合わせた方法の従来技術に記載されているものであってもよい。それは、単独で使用される、又は任意の割合で混合された化学剤であり得る。
【0125】
特に、例は以下である:
●アミン、例えば限定されないが、モノエタノールアミン、エチレンジアミン、グリシン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、オルト-、パラ-及びメタ-フェニレンジアミン;
●アニリンファミリーの化合物、例えば限定されないが、アニリン、オルト-、パラ-及びメタ-メチルアニリン;
●ヒドラジンファミリーの化合物、例えば限定されないが、ヒドラジン及びその塩、ヒドラジン水和物、硫酸ヒドラジン、カルボン酸ヒドラジン、ヒドラジン塩酸塩、フェニルヒドラジン、4-ニトロフェニルヒドラジン及び2,4-ジニトロフェニルヒドラジン、又はアミノグアニジン及びその塩、同様にアミノグアニジン炭酸水素塩;
●ヒドラジドファミリーの化合物、例えば限定されないが、カルボン酸ヒドラジド及びそれらの塩、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、マレイン酸のヒドラジド及びアジピン酸及びコハク酸のジヒドラジド、尿素又は尿素及びヒドロラジン誘導体、例えばセミカルバジド又はカルボヒドラジド及びそれらの塩;
単独又は任意の割合のそれらの混合物。
【0126】
好ましくは、ヒドラジン又はヒドラジン誘導体、又はアミノグアニジン塩、例えばアミノグアニジン炭酸水素塩が、残留アルデヒド含有量を減らすために本発明で使用される。
【0127】
化学剤は、処理される流れに、又は溶媒中の溶液、例えばアクリル酸の溶液に添加される。
【0128】
化学剤は、クライアントのニーズを満たすためにアルデヒド不純物(特にアクロレイン、フルフルアルデヒド、ベンズアルデヒド)が十分に除去された品質の氷アクリル酸を得るために最小限の量で添加される。一般に、化学剤は、処理される媒体に存在するアルデヒドの全体に対して0.5~10、好ましくは1~5のモル比で添加される。
【0129】
化学剤は、混合デバイス38により、供給セクション35に供給する流れに添加できる。
【0130】
本発明のこの実施形態(
図2及び
図3に示す)によれば、流れ3を有するアルデヒド用の化学処理剤は、混合デバイス38において仕上げカラムの上流で混合され、流れ中の化学処理剤の最も効果的な分散を可能にする。このデバイスは、特に、最適な温度及び通過時間で処理を達成するために、1つ以上の能力及び混合又は熱交換のための1つ以上の装置を連続して含んでもよい。非網羅的な方法で、混合装置には、撹拌又は再循環容器又は静的ミキサなどの液体を混合するために当業者によって一般に使用されるツールが含まれ得るが、同様に軸流ジェットミキサ、ロータリージェットミキサ、液体ジェットエジェクタ、ハイドロエジェクタ、ポンプ、フィルタなどの処理されるべき流れでの処理のための化学剤の急速な分散を可能にする任意のタイプの装置も含まれる。
【0131】
代替として、化学処理剤は、カラムが供給されるトレイよりも低い、カラムの頂部と底部との間に位置する点、好ましくは仕上げカラムの供給セクションの高さの約3分の1と3分の2との間に位置する点にて仕上げカラムに直接添加されてもよい。
【0132】
実際、操作施設では、カラムの底部に非常に近い領域で固体が形成されるリスクを制限し、必要に応じて、形成された固体の収集及び除去を可能にするシステムを配置する必要がある。
【0133】
さらに、軽質アルデヒドが、減圧下で操作する仕上げカラムに浸透しながら蒸留により頂部で少なくとも部分的に除去されるため、総アルデヒド濃度は、仕上げカラムの供給セクションの約3分の1と3分の2との間に位置する部分で低くなり、したがって添加されるべき化学剤の量は少ないか又はまったくない。
【0134】
この場合、仕上げカラムの底部で分離された流れ9は、供給流れ3に最初に含まれている又は化学剤で不純物を除去する反応中に形成される重質化合物が豊富な流れである。
【0135】
本発明によれば、供給流れとポリマーグレードのアクリル酸の回収を可能にするものとの分離レベルの数の増加は、化学剤を使用する処理を必要とせずに、プロトアネモニン不純物の完全な除去及びアルデヒド不純物の完全な除去も可能にする非常に高い効力を有するカラムをもたらす。
【0136】
比較のために、
図4は、従来技術のポリマーグレード(メタ)アクリル酸の回収方法における仕上げカラムとして分離壁を備えた蒸留カラムを示す。
【0137】
この方法では、仕上げカラムの分離壁はカラムの上部と接続されていない。ポリマーグレードのアクリル酸は、供給セクションの反対側からのサイドドローによって回収される。
【0138】
この構成では、化学剤は、サイドドローよりも上に位置するレベルで、カラムの供給流れ又はカラムの供給セクションに注入される。カラムに蓄積する固体の形成を引き起こすリスクは高く、固体を回収するシステムを配置することはできない。
【0139】
このタイプのカラムの操作によって生じる分離レベルの数では、プロトアネモニン不純物を完全に除去することはできない。
【0140】
実際、プロトアネモニンを含むアクリル酸の分離は、利用可能な分離レベルの数に大きく依存する。
図4に示す構成の場合、セクション36は2つの操作を達成しなければならない:i)軽質化合物をサイドドローからの生成物と分離し、これは、包括的に上部とセクション36のサイドドローの位置との間にトレイによって図式的に達成できること、ii)次いで重質化合物、及び下部セクションとセクション36のサイドドローとの間のアクリル酸を分離すること。
【0141】
本発明による方法では、これらの2つの操作は、全体としてセクション35及び36によってそれぞれ達成することができる。
【0142】
さらに、軽質化合物をリサイクルするために、及びサイドドローによって抽出される一定の氷アクリル酸品質を保証するために、この仕上げカラムの頂部にて脱水カラムにリサイクルするための流量に関連するエネルギーは、従来技術のこの方法において欠点のままである。
【0143】
本発明による方法は、従来技術のこれらすべての欠点を有利に克服する。
【0144】
ここで本発明は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定するものではない以下の実施例により説明される。
【実施例】
【0145】
実験パート
実施例では、特に明記しない限り、パーセンテージは主要化合物の重量で示されており、以下の略語が使用された。
【0146】
H2O:水
AA:アクリル酸
BZH:ベンズアルデヒド
ACOH:酢酸
FURF:フルフルアルデヒド
PTA:プロトアネモニン
【0147】
ASPEN(R)ソフトウェアプログラムを使用したシミュレーションを使用して、特許EP2,066,613B1に記載された従来技術による方法と比較して本発明による方法を説明した。
【0148】
[実施例1(比較)]
サイドドローを備えた典型的な仕上げカラムを使用した精製
特許EP2,066,613B1に記載され、
図1に示されている2段階のプロピレンの酸化によって製造されたアクリル酸の回収及び精製の方法は、仕上げカラム(17)のサイドドローで、精製アクリル酸の流れ(5)を提供する。
【0149】
脱水カラム(10)の底部からの流れ(3)は、仕上げカラム(17)の上部トレイでの供給物である。このカラムには、底部にリボイラ(18)、頂部に凝縮器(19)、気相サイドドロー(5)が含まれ、それは次いで、交換器(図示せず)で凝縮される。仕上げカラム(17)には17の理論レベルが含まれており、サイドドローはカラムの頂部から数えた理論トレイ13のレベルで達成される。リボイラ(18)を介して再循環されるカラムの底部の流れの一部が取り出され(流れ6)、交換器(19)での凝縮後、カラムの頂部からのガス状流れ(4)が液体形態で脱水カラムの底部にて再循環ループ(20)に戻される。
【0150】
表1は、仕上げカラムの主要な操作条件(流量、温度及び圧力)と、様々な流れの組成を示す。
【0151】
【0152】
サイドドローで得られるAA品質は99.8%を超えており、例えばアクリルエステルの合成のための、「工業用」グレードのアクリル酸の予想品質に適合する。品質に関して少し要求の厳しいポリマーの合成(例えば、中間分子量のポリマーの合成)の場合、特に高すぎるプロトアネモニン及びアルデヒドの含有量の存在のために(フルフルアルデヒド142ppm及びベンズアルデヒド82ppm)、この品質は十分ではない。
【0153】
この回収方法では、仕上げカラムのボイラに供給するために6.6Gcal/hのエネルギー消費量が必要である。
【0154】
[実施例2(本発明による)]
本発明の実施形態による分離壁を備えた仕上げカラムを使用する精製
図2を参照すると、仕上げカラムは、上部ドームに接続された内壁を備えており、ベースとは接続されておらず、供給セクション(35)及び頂部で精製された品質のアクリル酸を製造するドローオフセクション(36)を規定する。供給セクションは、交換器(40)での凝縮後、脱水カラムの底部でリサイクルされた軽質化合物を除去する。
【0155】
この構成では、供給セクション(35)及びドローオフ(36)セクションにはそれぞれ14の理論トレイが含まれ、底部での下部のドローオフスペースには3の理論レベルが含まれる。
【0156】
各セクションを通過する液体/気体混合物の蒸留は、カラムの底部にある共通の交換器(リボイラ18)によって確実にされる。仕上げカラムには、脱水カラム(10)の底部から供給セクション(35)の上部トレイのレベルへの流れが供給される。精製アクリル酸の流れ(5)は、交換器(19)でのガス状混合物の凝縮後、ドローオフセクション(36)の頂部でドローオフされ、一部は還流(8)の形態でセクション(36)の頂部に戻される。
【0157】
分離壁を備えたカラムには、実施例1の場合と比較して流量及び組成が変わらない供給流れ(3)が供給される。同様に、脱水カラムへリサイクルされた軽質物(4)、カラムの底部で除去された重質物(6)及び精製生成物(5)の流量は、実施例1の流量と比較して変わらない。
【0158】
表2に、仕上げカラムの操作条件(流量、温度、圧力)及び様々な流れの組成を示す。
【0159】
【0160】
本発明によれば、分離壁を備えたカラムのドローオフセクションの頂部からドローオフされた工業用アクリル酸は、特にベンズアルデヒド、フルフラール及びプロトアネモニンの含有量に関して、実施例1で得られた品質よりも改善された品質を有する。
【0161】
不純物、特にアルデヒドの存在に特に敏感な反応(例えば高分子量ポリマーの合成)を使用したポリマーの合成には十分ではないが、それでも工業用アクリル酸のこの改善された品質は、それほど敏感でない一部の用途に使用できる。
【0162】
[実施例3(本発明による)]
本発明の実施形態による分離壁を備えた仕上げカラムを使用する精製
同じ供給条件であるが、それぞれが17の理論トレイを含む供給セクション(35)及びドローオフセクション(36)、並びに3の理論レベルを含む底部からのドローオフのための下方スペースのセクションを含む分離壁を備えたカラムを用いて、実施例2が再現された。
【0163】
表3に、操作パラメータ及び流れの組成を示す。
【0164】
【0165】
仕上げカラムの各セクションに多数のトレイが含まれるこの構成では、ドローオフセクションの頂部でドローオフされるアクリル酸は、実施例2で得られたものよりも純度が高く、氷(又はポリマーグレード)アクリル酸の要件を満たす。この品質のアクリル酸は、残留アルデヒド含有量を減らすことを目的とする化学処理剤に頼ることなく、例えば結晶化又は蒸留によって追加の処理を必要とせずに、最も工業的なポリマーの合成に直接使用できる。
【0166】
この実施例では、仕上げカラムのボイラに提供するエネルギー消費量は7.7GCal/hである。
【0167】
[実施例4(比較)]
氷アクリル酸(ポリマーグレード)の回収
ASPEN(R)ソフトウェアプログラムを使用したシミュレーションでは、実施例1の従来技術の方法に従ってサイドドローによって得られた工業用アクリル酸を、本発明の方法による実施例3で得られた同じ品質の氷アクリル酸を得るためには19の理論レベルを含む追加のカラムで精製しなければならない。
【0168】
表4は、追加のカラムの頂部及び底部から分離された流れの組成を示す。
【0169】
【0170】
この追加の精製では、使用されるべきエネルギーは5.5Gcal/hである。
【0171】
工業用アクリル酸のサイドドローを伴う典型的な仕上げカラム及び追加の蒸留カラムを組み合わせる従来技術の方法(17+19、つまり36の理論レベルの実装の結果)では、6.6+5.5Gcal/h、つまり12.1Gcal/hの総エネルギー供給が必要であり、したがって、同等の品質の氷アクリル酸に対して、実施例3で使用した7.7Gcal/hのエネルギーよりも明らかに大きい。
【0172】
本発明による方法は、エネルギー消費量を35%削減して、同一品質の氷アクリル酸を製造する。
【0173】
分離壁を備えたカラムは、同じ品質の氷アクリル酸を得るために必要な理論レベル(壁の両側に20トレイ)が少ない。その結果、仕上げカラムの高さが限定されるため、投資コストが削減される。
【0174】
この利点は、(温度が高い場合に重合のリスクが非常に高くなる)アクリル酸などの特に熱に弱い生成物の蒸留に一般に使用されるダウンカマーのない穿孔トレイ(デュアルフロータイプ)を使用する場合にさらに大きくなる。