(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】漏れインジケータを備えた注入セット
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20220715BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20220715BHJP
A61K 38/28 20060101ALN20220715BHJP
A61K 47/10 20060101ALN20220715BHJP
A61P 3/10 20060101ALN20220715BHJP
【FI】
A61M5/168 510
A61M5/168 540
A61M5/14 500
A61K38/28
A61K47/10
A61P3/10
(21)【出願番号】P 2019555884
(86)(22)【出願日】2018-04-19
(86)【国際出願番号】 US2018028337
(87)【国際公開番号】W WO2018195298
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-07
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マシュー トラクテンバーグ
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-526479(JP,A)
【文献】特開2016-150123(JP,A)
【文献】特開2014-087644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0283321(US,A1)
【文献】特開2010-075540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/14
A61K 38/28
A61K 47/10
A61P 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を患者に導入するための流体配送装置であって、
前記患者に流体を配送するために適合された配送装置であって、前記配送装置が、前記患者の皮膚に取り付けるための底面を備えたベースと、注入部位で前記患者の前記皮膚を貫通するために前記底面から延在するカニューレとを有する、配送装置、および
前記カニューレに接続されて前記流体を前記カニューレに供給するための第1ルーメンを有する流体供給導管を備え、前記流体が活性剤および安定化剤を含み、前記導管が前記注入部位で前記注入部位からの前記流体の漏れを捕捉して前記注入部位から前記流体を運ぶための開口端部を備えた第2ルーメンを有し、前記第2ルーメンは、前記安定化剤と反応して前記導管を通して前記患者に視認可能なインジケーションを生成する量の漏れ検出剤を有し、
前記ベースがカップリング部材を有し、
前記カップリング部材が前記流体供給導管
を前記ベースに結合し
ており、前記ベースが前記カップリング
部材および前記導管を通って前記注入部位で前記底面の間に延在する通路を有し、前記通路は流体を前記注入部位で毛細管現象により前記流体供給導管の前記第2ルーメンに運ぶ寸法を有する
、流体配送装置。
【請求項2】
前記第2ルーメンの内面の少なくとも一部が、漏れ検出剤を含む、請求項
1に記載の流体配送装置。
【請求項3】
流体を患者に導入するための流体配送装置であって、
前記患者に流体を配送するために適合された配送装置であって、前記配送装置が、前記患者の皮膚に取り付けるための底面を備えたベースと、注入部位で前記患者の前記皮膚を貫通するために前記底面から延在するカニューレとを有する、配送装置、および
前記カニューレに接続されて前記流体を前記カニューレに供給するための第1ルーメンを有する流体供給導管を備え、前記流体が活性剤および安定化剤を含み、前記導管が前記注入部位で前記注入部位からの前記流体の漏れを捕捉して前記注入部位から前記流体を運ぶための開口端部を備えた第2ルーメンを有し、前記第2ルーメンは、前記安定化剤と反応して前記導管を通して前記患者に視認可能なインジケーションを生成する量の漏れ検出剤を有し、
前記第2ルーメンが、前記流体を毛細管現象により前記漏れ検出剤に運ぶ寸法を有する
、流体配送装置。
【請求項4】
前記供給導管が、前記第2ルーメン内の前記漏れ検出剤によって生成されたインジケータを視認可能にするための透明部分を有する、請求項
3に記載の流体配送装置。
【請求項5】
流体を患者に導入するための流体配送装置であって、
前記患者に流体を配送するために適合された配送装置であって、前記配送装置が、前記患者の皮膚に取り付けるための底面を備えたベースと、注入部位で前記患者の前記皮膚を貫通するために前記底面から延在するカニューレとを有する、配送装置、および
前記カニューレに接続されて前記流体を前記カニューレに供給するための第1ルーメンを有する流体供給導管を備え、前記流体が活性剤および安定化剤を含み、前記導管が前記注入部位で前記注入部位からの前記流体の漏れを捕捉して前記注入部位から前記流体を運ぶための開口端部を備えた第2ルーメンを有し、前記第2ルーメンは、前記安定化剤と反応して前記導管を通して前記患者に視認可能なインジケーションを生成する量の漏れ検出剤を有し、
前記供給導管は、前記導管の流路に配置された取り外し可能なカートリッジを含み、前記カートリッジは、前記流体をカニューレに供給するための第1通路と、前記注入部位から漏れる前記流体を受容するための前記導管の前記第2ルーメンに接続された第2通路とを含み、前記カートリッジの前記第2通路が前記漏れ検出剤を含む
、流体配送装置。
【請求項6】
前記流体がインスリンであり、前記安定化剤がフェノール、クレゾールおよびそれらの混合物からなる群から選択され、前記漏れ検出
剤が4-アミノ-アンチピリンおよび酸化剤である、請求項1
~5のいずれか1項に記載の流体配送装置。
【請求項7】
注入セットであって、
注入部位で患者に物質を導入するためのカニューレを有するベース、
前記物質を前記カニューレに供給するためのポンプ、および
前記注入部位において前記ポンプ装置と前記カニューレとの間で延在する柔軟な二重ルーメンの導管を備え、前記導管は前記注入部位で前記ポンプから前記カニューレに前記物質を運ぶための第1ルーメンを有し、第2ルーメンは、前記注入部位で第1端部を有するとともに前記注入部位から漏れる物質を、前記第2ルーメン内に色変化漏れ検出剤を含む漏れ検出部に、前記注入部位から離れて逃がすように寸法決めされて
おり、
前記第2ルーメンは、前記物質を、毛細管現象により、色変化漏れ検出剤に運ぶ寸法を有する、注入セット。
【請求項8】
前記色変化漏れ検出剤が、前記第2ルーメン内にある、請求項
7に記載の注入セット。
【請求項9】
前記色変化漏れ検出剤が、前記第2ルーメンの第2端部に配置されている、請求項
7に記載の注入セット。
【請求項10】
前記第2ルーメンの内面の少なくとも一部が、色変化漏れ検出剤を含む、請求項
7に記載の注入セット。
【請求項11】
前
記導管が、前記第2ルーメン内の色変化漏れ検出剤によって生成されるインジケータを視認可能にするための透明部分を有する、請求項
7に記載の注入セット。
【請求項12】
注入セットであって、
注入部位で患者に物質を導入するためのカニューレを有するベース、
前記物質を前記カニューレに供給するためのポンプ、および
前記注入部位において前記ポンプ装置と前記カニューレとの間で延在する柔軟な二重ルーメンの導管を備え、前記導管は前記注入部位で前記ポンプから前記カニューレに前記物質を運ぶための第1ルーメンを有し、第2ルーメンは、前記注入部位で第1端部を有するとともに前記注入部位から漏れる物質を、前記第2ルーメン内に色変化漏れ検出剤を含む漏れ検出部に、前記注入部位から離れて逃がすように寸法決めされており、
前
記導管は、前記導管
の流路に配置された取り外し可能なカートリッジを含み、前記カートリッジは、前記
物質をカニューレに供給するための第1通路と、前記導管の前記第2ルーメンに接続されて前記注入部位から漏れる前記
物質を受容するための第2通路とを含み、前記カートリッジの前記第2通路が前記色変化漏れ検出剤を含む
、注入セット。
【請求項13】
前記
物質がインスリンであり、
前記物質が安定化剤を含み、前記安定化剤がフェノール、クレゾールおよびそれらの混合物からなる群から選択され、前記
色変化漏れ
検出剤が4-アミノアンチピリンおよび酸化剤である、請求項
7に記載の
注入セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2017年4月20日に出願された米国仮特許出願第62/488,002号の優先権を主張し、これはその全体で参照によりここに含められる。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
本発明は、注入部位での漏れを検出する漏れインジケータを備えた注入セットに向けられている。漏れインジケータは、漏れが発生しているまたは発生したことを患者に視認可能に示して、患者が漏れを修正できるようにする。
【0003】
発明の背景
糖尿病を有する患者にとって、毎日のインスリン療法には2つの主要な様式がある。最初の様式はシリンジとインスリンペンを含む。これらの装置は使いやすく比較的低コストだが、注射ごとに、通常は1日3~4回、針を刺す必要がある。2番目の様式はインスリン注入療法を含み、これはインスリンポンプを使用する。注入ポンプは、シリンジやペンよりも複雑で高価だが、注入カニューレを通ったインスリンの連続注入、正確な投与、およびプログラム可能な配送スケジュールの利点を提供する。
【0004】
注入ポンプの使用は、使い捨て部品の使用を必要とし、典型的には、注入セット、ラインセット、延長セットまたはポンプセットと呼ばれ、これはインスリンをポンプ内のリザーバからユーザーの皮膚に運ぶ。注入セットは、典型的には、ポンプコネクタ、ある長さのチューブ、および注入カニューレ(すなわち、注入針または柔軟なカテーテル)から延在するハブまたはベースからなる。ハブまたはベースは、使用中に皮膚表面にベースを保持するための接着剤を備えており、これは手でまたは手動または自動の挿入装置を使用して、皮膚に塗布され得る。ほとんどの場合、ユーザーがシャワー、入浴、または水泳を希望する場合、取り外し可能な流体コネクタが用意されていて、ポンプチューブを注入セットのハブまたはベースから切り離すことができるようになっている。
【0005】
閉塞、閉塞の警報、およびインスリン注入ポンプの閉塞を防止するための設計ソリューションに多くの焦点がある。しかし、注入下での主な原因である漏れに対する解決策はない。注入部位での漏れは検出されないと、重大な有害事象を引き起こす可能性がある。状況によっては、患者は湿気を感じたり、インスリンの匂いを感じたりするため、自分で漏れを検出することがある。一部の、特に少量の注入の患者では、漏れの自己検出がより困難または不可能になる場合がある。漏れが検出されないと、健康に重大な悪影響をもたらす可能性がある。
【0006】
注入セット内の閉塞を検出する製品があるが、これらは漏れを検出することはできない。したがって、インスリン漏れの特定を支援するシステムが必要である。
【0007】
注入セットおよびパッチポンプでの問題は、カニューレが患者の皮膚から離れるかまたは注入部位で漏れが生じるように外れた場合に、発生する。注入ポンプは一般に、長時間にわたって少量のインスリンを投与する。漏れが発生すると、患者が長時間気付かないことが多く、不適切な投与量になる。
【0008】
したがって、業界では、患者に適切な漏れ検出を提供する改善された注入セットおよびパッチポンプが引き続き求められている。
【発明の概要】
【0009】
要約
本発明は、漏れ検出システムを有する薬物配送システムに関する。本発明は特に注入部位で発生する漏れを検出するための漏れ検出部を有するインスリン注入装置に関する。
【0010】
したがって、一つの特徴は、カニューレまたはカテーテルから間隔を空けた漏れ検出構成要素を有する、注入部位で患者に漏れのインジケーション(indication:表示ともいう)を提供するための流体配送装置、インスリン配送装置、注入セット、パッチポンプまたは他の配送装置を提供することである。
【0011】
本発明の別の特徴は、注入セット、パッチポンプ、または注入部位で漏れが発生したことを視認可能なインジケータを患者に提供する他の配送装置などのインスリン配送装置を提供することである。視認可能なインジケータは、注入部位から漏れるインスリンに接触する装置、部品、または材料の少なくとも一部を通して見える色の変化を生成する。
【0012】
本発明の実施形態における注入セットまたはパッチポンプは、患者の皮膚を貫通して薬物または他の薬剤を配送するためのカニューレを含む。漏れ検出部は、漏れ検出部上または漏れ検出部に関連付けられた化合物と、薬剤または医薬品中の1つまたは複数の化合物との化学反応によって色の変化を生成するために提供される。漏れ検出部は、薬剤または医薬品と接触すると、従来の装置と比較して急速に色が変化する化合物を含んでいる。他の実施形態では、漏れ検出部は、漏れ検出部内の漏れ流体との色の変化または化学反応を必ずしも生じさせることなく、吸収によって漏れ流体との接触での視認可能なインジケーションを提供する。
【0013】
一の実施形態では、漏れ検出部は、インスリン配送のために一般に使用される注入装置のためのものである。一実施形態では、配送装置は、注入セットのカニューレまたはカテーテルに物質を供給するための供給導管を含む。導管は、物質をカニューレまたはカテーテルに運ぶための第1ルーメンを有する。第2ルーメンは、患者への物質の導入中に注入部位から漏れる物質に接触してそれを受容する注入部位またはその近くに開口端部を有する。第2ルーメンは、インスリンを注入部位から運び去る寸法を有する。典型的には、インスリンは毛細管現象により、注入部位のハブおよびカニューレまたはカテーテルから間隔を空けたおよび/または離れた漏れ検出部に運ばれる。漏れ検出部は、注入部位およびカニューレまたはカテーテルから流体が運び去られる視認可能な場所に配置される。
【0014】
漏れ検出部は、カテーテルおよび/またはカニューレの挿入中に漏れる可能性のある少量のインスリンからの偽陽性の兆候を避けるために、注入部位から離れた場所に配置される。注入中、注入部位でカテーテルから漏れるインスリンの量は、カニューレまたはカテーテルの周囲に集まる。供給導管の第2ルーメンの小さな寸法は、収集されたインスリンを注入部位から逃がし(wick)または運び、患者に見える色の変化が発生するところで注入セットのハブから離れた漏れ検出部と接触する。この実施形態における漏れ検出部は、色変化漏れ検出剤を含む。
【0015】
一実施形態では、患者に流体を導入するための流体配送アセンブリは、患者に流体を配送するために適合した配送装置を含む。配送装置は、患者の皮膚に取り付けるための底面を備えたベースと、前記底面から延在していて注入部位で患者の皮膚を貫通するためのカニューレまたはカテーテルとを有する。流体供給導管は、流体をカニューレまたはカテーテルに供給するためのカニューレまたはカテーテルに接続された第1ルーメンを有する。流体は、活性剤と安定化剤を含んでいる。導管は、注入部位に開口端部を備えた第2ルーメンを有し、注入部位からの流体の漏れを捕捉して、注入部位から流体を運び去る。第2ルーメンは、安定化剤と反応して導管の少なくとも一部を通して患者に視認可能な指示を生成する量の漏れ検出剤を有する。
【0016】
別の実施形態では、注入セットは、注入部位で患者に物質を供給するためのカニューレまたはカテーテルを有するベースと、物質をカニューレまたはカテーテルに導入するためのポンプを含む。柔軟な二重ルーメン導管が、注入部位でポンプとカニューレまたはカテーテルとの間に延在している。導管は、注入部位で物質をポンプからカニューレまたはカテーテルに運ぶための第1ルーメンおよび第2ルーメンを有する。第2ルーメンは、注入部位で第1端部を有し、注入部位から漏れる物質を第2ルーメン内の色変化材料に逃がす寸法を有する。
【0017】
別の実施形態では、インスリンを患者に導入して注入部位での漏れを検出する方法が提供される。この方法は、注入部位で患者の皮膚に注入セットのカニューレまたはカテーテルを導入する。注入セットは、患者の皮膚に取り付けるための底面を有する。カニューレまたはカテーテルは、注入部位で患者の皮膚を貫通するために底面から延在している。第1ルーメンを有する流体供給導管は、インスリンをカニューレまたはカテーテルに供給するためにカニューレまたはカテーテルに接続され、インスリンは安定化剤を含む。導管は、注入部位に開口端部を備えた第2ルーメンを有する。インスリンは、第1ルーメンを通ってカニューレまたはカテーテルに供給され、注入部位で患者にインスリンを導入する。注入部位でのインスリンの漏れは捕捉され、注入部位から離れて第2ルーメンを通って第2ルーメンの漏れ検出剤と接触し、安定化剤インスリンと反応して患者に導管を通して視認可能なインジケーションをもたらす。
【0018】
更なる実施形態において、インスリン流体配送アセンブリは、患者にインスリンを導入するために設けられる。アセンブリは、インスリンを患者に配送するように適合された配送装置を含む。配送装置は、患者の皮膚に付着するための底面を備えたベースと、注入部位で患者の皮膚を貫通するために底面から延びるカニューレを有する。ベースは、カニューレにインスリンを供給するための第1通路と、カニューレに近接して注入部位から漏れるインスリンを注入部位から運び去る寸法を有する第2通路を有し、インスリンは安定化剤を含む。ルーメンを有する流体供給導管は、インスリンをカニューレに供給するために、ベースの第1通路と連通している。第2導管は、第2通路を通って運ばれるインスリンを受容するために、第2通路に接続されている。第2導管は、第2通路および第2導管を通って運ばれるインスリンと接触するように配置された漏れ検出剤を含む。漏れ検出剤は、安定化剤と反応して第2導管を通して患者に視認可能なインジケーションを与える量で存在する。
【0019】
これら及び本発明の他の特徴は以下の図面および発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下は、図面の簡単な説明である:
【0021】
【
図1】
図1は、患者に挿入されたカテーテルを備えた注入セットを示す。
【
図2】
図2は、使用中および患者に取り付けられた注入セットおよびポンプ機構を示す。
【
図3】
図3は、導管内の漏れ検出剤を示す本発明の一実施形態の部分断面図である。および
【
図4】
図4は、導管とは別個のユニットとして漏れ検出剤を示す本発明の別の実施形態の部分断面図である。
【0022】
図面全体を通して、参照番号は同様の部品、構成要素、および構造を指すものと理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
注入部位での漏れの問題に対する解決策は、ユーザーにとって手頃な価格であり、複雑でなく、ポンプおよび注入セットの現在の使用と整合するように設計されていなければならない。本発明の漏れ検出部は、警報システム、および現在利用可能なインスリンポンプシステムと互換性のない装置、を備えた電気センサーの使用を回避する。
【0024】
図1及び
図2に示されるように、患者が注入セット10を使用してインスリンまたは他の薬剤を受容するとき、インスリンの全てが注入セットから患者へ配送されることが好ましい。しかし、状況によっては、インスリンが装置または患者から漏れることがあり、インスリンの少なくとも一部が患者に効果的に配送されないことがある。このとき、
図1に示すように、インスリンは、注入セットの下で、注入セットと患者の皮膚との間で、プール14を形成し得る。
【0025】
配送装置は、典型的には
図1及び
図2に示すような注入セット10である。
図2に示すように、注入セット10は、当技術分野で知られているように、注入速度および時間を選択するための適切な設定を有するポンプ12を含む。注入セット10は、柔軟なベース18と中央に位置するハブ20とを有する。ベース18は、取り付けられたときに患者の皮膚に適合するように十分に柔軟な材料で作られている。ベース18の底面は、
図3に示すように患者にベースを取り付けるための接着剤を有するパッド30を含む。保護剥離層が典型的には提供されて、保管中に接着剤22を覆い、使用時間で患者から取り外される。パッド30は、カニューレ34のための中央開口部を有することができる。一実施形態では、パッド30の開口部は、カニューレ34の外径よりも大きくすることができ、開口領域がカニューレ34の周りに空洞を形成して漏れ流体を収容するようになっている。
【0026】
中央ハブ20がベースに取り付けられて実質的に流体密なシールをその間に提供する。中央ハブ20は、
図3に示されるように、取り外し可能な流体カップリング28に接続するための流体ポート26を備えた上面を有する。ハブ20は、透明または透過性であり得るプラスチック材料から作られる。ポート26は一般に、実質的にシリンダ状の構成を有し、典型的には導管カップリング28と接続するための当技術分野で知られている外向きに延びる管状のフランジを有する。環状のフランジは、カップリング28にある対応する凹部に接続できる。通路32は流体を患者に供給するためにポート26とハブ20を通って延在している。流体コネクタ28内の丸い(blunt)プラスチックカニューレは、セプタムを貫通して注入セットへの流体の流れを確立することができる。
【0027】
皮膚を貫通するためのカニューレ34または他の配送要素は、ハブ20に結合されていて、
図1に示すように、ハブ20の底面36上の界面領域から延在している。カニューレ34は、当技術分野で知られているようなステンレス鋼または軟質の柔軟なカニューレで作られた剛性のカニューレとすることができる。軟質の柔軟なカニューレは、典型的には、
図1に示される挿入針24を含み、挿入針24は、皮膚を貫通して柔軟なカニューレを皮膚内に配置し、その後挿入針が取り外される。典型的には、注入セットは、当技術分野で知られているように、柔軟なカニューレと挿入針を備えている。ここで使用される場合、カニューレは、当技術分野で知られている剛性針、剛性カニューレ、または可撓性カテーテルを指すことを意図している。
【0028】
本発明の実施形態では、マイクロ流体力学およびインスリンで濡れると外観または色が変化する材料またはインスリン内のインジケータの使用は、注入時に注入箇所で漏れがあるかまたは生じていることをユーザーに示す。漏れが発生する可能性のある領域では、注入流体供給経路の外側で、注入セットの導管またはチューブに沿って走る小さなチャネルまたはルーメンに、開口部が提供される。サイズが小さいため、毛細管現象により、漏れた流体が、注入セットから離れて導管のルーメンまたはチャネルから引き上げられる。一実施形態では、ルーメンは、ベース18の底面の間から、患者または患者に見える装置の他の部分に向かって外向きに面する導管の表面上の位置へ、長さを延ばしている。
【0029】
図3を参照すると、カニューレまたはカテーテル34は、インスリンなどの物質を患者に配送するために患者に挿入される。供給導管12は、ハブ20を接続するためのカップリングを含んでいて、カニューレ34との流体供給およびポンプ12との間の流体接続を提供する。ポンプ16は、物質の連続的かつ制御された供給を、患者への配送のためのカニューレへ提供する。
【0030】
漏れ検出部は、注入部位での漏れの通知またはインジケーションを患者に提供する視認可能なインジケータである。漏れ検出部は、典型的には、供給導管16上または内部に設けられた色変化漏れ検出剤の形態である。
図3に示されるようなハブ20は、カニューレまたはカテーテルにまたはその近くに配向された第2通路40を備える。通路40は、ハブ20の底面36からハブ20を通って、供給導管16を備えたコネクタまたはカップリング28に延在している。示された実施形態において、パッド30上の接着剤とハブ20は、色が変化する漏れ検出部を含まない。
【0031】
図3の実施形態に示されるように、供給導管16は、ポンプ12から患者への配送のためのカニューレまたはカテーテル34に物質を導くための第1ルーメンまたは通路42を有している。導管16内の第2ルーメン44は、導管16の長手方向の寸法に沿って延在している。
図3の実施形態に示すように、ハブ20の通路40は、注入部位から導管16に物質を運ぶためのルーメン44と接続する。好ましくは、ルーメン44は、患者に視認可能な位置に配向される。通路40は、ハブ20の底面36からカップリング28を通って延在している。通路40は、ルーメン44と接続して連続的な通路またはルーメンを形成し、注入部位からルーメンを通って物質を運ぶように構成される。
【0032】
導管16の第2ルーメン44は、ハブ20の底面に、典型的にはカニューレまたはカテーテル34および注入部位にまたはその近くの、通路40の開口端部によって形成された第1開口端部48を有する。注入部位から漏れる物質は、カニューレまたはルーメン44の周りに集まり、ルーメン44の開口端部48に接触する。ルーメン44は、注入部位から漏れる流体物質が、注入部位からハブ内の通路40を通っておよび導管16のルーメン44を通って逃がされ排出されるような寸法を有する。一実施形態では、物質は、ポンプまたは圧力源を使用せずに毛細管作用によりルーメン44を通って運ばれる。さらなる実施形態において、ルーメン42およびルーメン44は、別個の導管として形成され得る。
【0033】
漏れ検出部46は、毛細管現象によってルーメン44を通って運ばれた物質と接触するように設けられている。
図3に示す一実施形態では、漏れ検出部46は、カニューレまたはカテーテル32およびハブ20から離間している。示されている実施形態では、漏れ検出部はハブ20とは別個である。供給導管16が透明または透過性のプラスチック材料から形成されていて、ルーメン44の中の物質が導管16の壁を通して患者に視認可能になっている。
図3の実施形態では、漏れ検出部46は、ルーメン44の内面の少なくとも一部に形成されている。一実施形態では、漏れ検出部46は、ルーメン44を通って運ばれた物質と接触することができる内面上のコーティングまたは層として形成されている。コーティングは、漏れ検出剤を含むヒドロゲルポリマーのような、適切なポリマーのフィルムとすることができ、これは好ましくは色変化漏れ検出剤である。ルーメン44の内面全体を漏れ検出部46で被覆することができる。他の実施形態では、導管の全長より短い部分が被覆されるかまたは漏れ検出部46を含むことができる。一実施形態では、ルーメン44内の漏れ検出部は、患者に視認可能な位置のカップリング28またはその近くにある。漏れ検出部46は、導管16の少なくとも選択された部分または区域の内面全体を取り囲むコーティングとすることができる。図示の実施形態では、漏れ検出部46および導管16は、ハブ20とは別体である。
【0034】
チャネルまたはルーメン44内の色変化漏れ検出部材料46は、物質と接触すると濡れて色が変化し、例えばユーザーの注意を要する注入セット漏れを示す透明色から明るい赤色に変わる。患者がポンプを引き出して状態メッセージや警告を確認したり、衣服を交換したりするたびに、注入セットの供給導管16の明るい赤色の線が患者に簡単に視認可能になる。
【0035】
示された実施形態の供給導管16は、注入セットの柔軟なチューブ内に2つのルーメン42、44を含む二重ルーメン設計である。一方のルーメンは、インスリンをポンプから患者に運び、残りのルーメンは、注入部位から漏れたインスリンを毛細管現象によりが漏れ部位から離して逃がすように適切に寸法決めされている。色変化材料46は、逃がすルーメン内に、または注入部位から離れた逃がすルーメンの端部に位置してもよい。他の実施形態では、色変化漏れ検出部は、注入セットの接着パッチ内にある。
【0036】
任意の色は、利用可能な色変化材料または好ましくは透明が赤色に変化するようにどのような色がユーザーの注意を引く可能性が最も高いかに基づいて、開始又は終了の色として使用されることが可能である。色は、透明から赤、または赤から透明など、濡れると出現または消失してよい。色の変化の原因は、湿り、温度変化、pH変化、または湿りに起因する他の適切なメカニズムに起因してよい。
【0037】
図4に示す別の実施形態では、供給導管16は、カートリッジ50を含むことができ、これは、適切なカップリング58により、供給導管16に接続されまたはそこから取り除かれることが可能である。
図4に示すように、カートリッジ50は、導管16のルーメン42に接続する第1通路52と、第2ルーメン44に接続するための第2通路54とを有する。示される実施形態では、第2通路54は、注入部位での漏れから運ばれる漏れ物質の存在を示す漏れ検出部またはインジケータ56を含む。カートリッジ50は、透明または透過性のプラスチック材料で作られているかまたは漏れ検出部56の視認可能化を提供する窓を含み、カートリッジ内の物質の存在が患者に容易に見えるようになっている。漏れ検出部56は、物質の少なくとも一部を吸収してインジケータを濡らし、この場合、漏れ検出部56がカートリッジ50の壁またはカートリッジの窓を通して視認可能である。漏れ検出部は、ヒドロゲルまたは多孔性繊維パッドなどの吸収性材料とすることができ、物質と接触すると視認可能なインジケータを提供できる。
【0038】
もう一つの実施形態において、漏れ検出部46は、ポートまたはカップリングを通ってルーメン44と連通する別個のユニットとすることができる。あるいは、別個の導管をハブの通路40に接続して、供給導管の一部ではない漏れ検出部を含む別個の装置またはカートリッジにインスリンを運ぶことができる。
【0039】
一実施形態では、漏れ検出部56は、ルーメン44を通って運ばれる物質と反応する色変化反応性化合物を含む吸収性材料である。一実施形態では、反応性化合物は物質中の1つ以上の化合物と反応する。
【0040】
注入セットの実施形態の漏れ検出部46及び56は、色変化漏れ検出剤を含む。漏れ検出剤は、注入部位で漏れが発生した場合、漏れている流体が漏れ検出部に接触したときに視認可能な色の指示を提供できる化合物である。漏れ検出部の色変化化合物は、流体と接触する装置の適切な表面または吸収性材料などの適切な支持体にコーティングとして塗布され得る。漏れ検出器と色の変化は、ユーザーにより装置の透明部分を通して視認可能である。
図3に示すように、カニューレ貫通部位の注入部位は、典型的には、漏れが発生する場所である。漏れは、不適切に挿入されたカニューレ、または注入セット10の移動によって部分的または完全に取り外されたカニューレ、の結果であり得る。本発明の好ましい実施形態では、漏れ検出部は、漏れが発生した患者に対して目立つ場所に迅速で視認可能なインジケータを提供するように配置され、それにより漏れを修正し、意図された用量を提供する機会を提供する。漏れ検出部は、配送装置の一部または構成要素を通る漏れの視認可能な色インジケータを提供する。
【0041】
装置の実施形態では、漏れ検出部は、注入液と接触したときに色の変化を経験することができる少なくとも1つの化合物が中に分散した透明な高拡散ヒドロゲルであり得る。ヒドロゲルは、好ましくは、導管16の内面などの注入セットの1つ以上の表面にヒドロゲルを付着させるためのフィルムまたは成形部材である。ヒドロゲルの例には、ポリアクリルアミド、シリコーンヒドロゲル、架橋ポリエチレンオキシドおよび架橋ポリビニルピロリドンが含まれる。注入セットの透明または透過性の要素により、注入セットの1つまたは複数の部分の色の変化によって反応を視認可能にできる。
【0042】
本発明の一の実施形態では、注入液がインスリン製剤である。漏れ検出部は、インスリン製剤の漏れの誤った指示を与えることを避けるために、体液に存在しないインスリン製剤の成分または化合物と反応する少なくとも1つの成分を含む。インスリン製剤には通常、インスリン、ヘキサマー亜鉛安定化剤防腐剤、pH緩衝剤、グリセロールなどの界面活性剤およびNaClなどの等張化剤が含まれる。一般的なインスリン保存剤または安定化剤には、m-クレゾール、フェノール、およびそれらの混合物が含まれる。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態では、漏れ検出部46および56は、安定化剤、すなわち、m-クレゾールおよび/またはフェノールと反応して、注入液が漏れ検出器に接触したときに視認可能な色変化を生じる1つ以上の化合物を含む。漏れ検出部内の色変化化合物は、最初は透明または不透明とすることができ、インスリンまたは他の注入液の安定化剤と反応すると色変化を生じさせることができる。
【0044】
本発明の実施形態の色変化化合物は、注入液が漏れ検出部46及び56と接触した時に、安定化剤と反応して色の変化を生成する、有効な量の4-アミノアンチピリンと酸化剤の混合物を含む。適切な酸化剤は、過硫酸カリウム、K2S2O8、またはフェリシアン化カリウムである。4-アミノアンチピリンと過硫酸カリウムの混合物は、インスリン製剤中のm-クレゾールおよび/またはフェノールと反応して、漏れ検出器を透明なヒドロゲルから濃い青色に変換し、これは透明な導管16またはカートリッジ50を通して視認可能である。過硫酸カリウムは酸化剤であり、他の酸化剤と比較して、フェノール、m-クレゾール、4-アミノアンチピリンの存在下で急速な色変化をもたらすことがわかっている。例えば、過硫酸カリウムはフェリシアン化カリウムと比較して、より速い色変化をもたらすことがわかっている。m-クレゾールおよび/またはフェノールは、過硫酸カリウムおよび4-アミノアンチピリンと反応して、装置を通して見える濃い青色のキノンイミンを生成する。
【0045】
更なる実施形態において、ヒドロゲル膜または吸収性材料は、触媒または酵素を含んで反応の速度を向上させ色の変化を増幅することができる。一実施形態において、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)は、4-アミノアンチピリンおよび過硫酸カリウムとの組み合わせで、ヒドロゲルマトリックスまたは吸収性材料に含まれる。深青色の複合体がm-クレゾールおよびフェノールとの反応中に形成される。ホースラディッシュペルオキシダーゼは、触媒として機能して、反応の酵素的増幅および反応により形成される青色の複合体を生成する。ホースラディッシュペルオキシダーゼの存在により、少量のインスリンの迅速な検出が可能になり、患者は、漏れが始まった後、確実かつ迅速に漏れを観察できるようになる。
【0046】
上記の実施形態の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明を限定するものとしてみなされるべきではない。本開示は、当業者が本発明の範囲から逸脱することなく、記載された本発明の変形を実施できるようにすることを意図している。ここで、明細書および特許請求の範囲での数値の制限は、「約」という修飾語によって制限されると理解されるが、同等の結果をもたらすわずかな逸脱は本発明の範囲内である。一実施形態または独立請求項に関連して開示された特徴または従属請求項の制限は、本発明の範囲から逸脱することなく、別の実施形態または異なる独立請求項と組み合わせることができる。