(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20220715BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220715BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20220715BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20220715BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20220715BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/34
A61K8/86
A61K8/41
A61K8/19
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2019562781
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2018038879
(87)【国際公開番号】W WO2019130748
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2017254166
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】西村 彦人
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084317(JP,A)
【文献】特開2016-014082(JP,A)
【文献】国際公開第2009/075142(WO,A1)
【文献】特開2014-009201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/81
A61K 8/34
A61K 8/86
A61K 8/41
A61K 8/19
A61Q 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシビニルポリマー、及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーの少なくともいずれかと、
(B)エタノールと、
(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が20以上200以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、
(D)塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、及び塩化ベンゼトニウムから選択される少なくともいずれかの第4級アンモニウム化合物と、
(E)水酸化カリウムと、を含有し、
前記(A)成分の含有量が、0.1質量%以上0.25質量%以下であり、
前記(B)成分の含有量が、25質量%以上35質量%以下であり、
前記(C)成分の含有量が、0.02質量%以上0.2質量%以下であり、
前記(A)成分の含有量(質量%)と、前記(C)成分の含有量(質量%)と、の質量比(A/C)が、1.0以上10以下であり、
25℃におけるpHが、7以上11以下であることを特徴とする洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物。
【請求項2】
(F)多価アルコールを、更に含有する請求項1に記載の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物。
【請求項3】
前記(F)成分が、ソルビトールである請求項2に記載の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物。
【請求項4】
前記(F)成分の含有量が、0.1質量%以上1質量%以下である請求項2から3のいずれかに記載の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手指消毒剤などに用いられる液体殺菌清浄剤組成物は、殺菌力を有し、低皮膚刺激性、乾きの早さ、保存安定性などに優れることが望まれている。
この点について、例えば、殺菌力を有し、低皮膚刺激性、低温保存安定性に優れるゲル状手指殺菌洗浄剤組成物が提案されているが、乾きの早さ、及び使用時の簡便性の点で不十分である(例えば、特許文献1参照)。
また、殺菌力を有し、低皮膚刺激性、手からのこぼれにくさ、及び乾きの早さに優れた洗い流さないタイプの殺菌清浄剤組成物が提案されているが、手肌のかさつきのなさの点で不十分である(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
したがって、前記ゲル状手指殺菌洗浄剤組成物、及び前記殺菌清浄剤組成物は、殺菌力を有し、低皮膚刺激性は向上するが、乾きの早さ、使用時の簡便性、及び手肌のかさつきのなさの両立については、不十分である。
【0004】
このような背景から、優れた殺菌力を有し、手からのこぼれにくさ、乾き際のべたつきのなさ、乾きの早さ、手肌のかさつきのなさ、低温保存安定性、及び使用時の簡便性に優れ、経時のにおい安定性が良好である洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-261550号公報
【文献】特開2014-9201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた殺菌力を有し、手からのこぼれにくさ、乾き際のべたつきのなさ、乾きの早さ、手肌のかさつきのなさ、低温保存安定性、及び使用時の簡便性に優れ、経時のにおい安定性が良好である洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者が、鋭意検討を重ねた結果、(A)カルボキシビニルポリマー、及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーの少なくともいずれかと、(B)エタノールと、(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が20以上200以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、(D)塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、及び塩化ベンゼトニウムから選択される少なくともいずれかの第4級アンモニウム化合物と、(E)水酸化カリウムと、を含有し、前記(A)成分の含有量が、0.1質量%以上0.25質量%以下であり、前記(B)成分の含有量が、25質量%以上35質量%以下であり、前記(C)成分の含有量が、0.02質量%以上0.2質量%以下であり、前記(A)成分の含有量(質量%)と、前記(C)成分の含有量(質量%)と、の質量比(A/C)が、1.0以上10以下であり、25℃におけるpHが、7以上11以下である洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物が、各成分の相乗効果によって、優れた殺菌力を有し、手からのこぼれにくさ、乾き際のべたつきのなさ、乾きの早さ、手肌のかさつきのなさ、低温保存安定性、及び使用時の簡便性に優れ、経時のにおい安定性が良好であることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)カルボキシビニルポリマー、及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーの少なくともいずれかと、
(B)エタノールと、
(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が20以上200以下であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、
(D)塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、及び塩化ベンゼトニウムから選択される少なくともいずれかの第4級アンモニウム化合物と、
(E)水酸化カリウムと、を含有し、
前記(A)成分の含有量が、0.1質量%以上0.25質量%以下であり、
前記(B)成分の含有量が、25質量%以上35質量%以下であり、
前記(C)成分の含有量が、0.02質量%以上0.2質量%以下であり、
前記(A)成分の含有量(質量%)と、前記(C)成分の含有量(質量%)と、の質量比(A/C)が、1.0以上10以下であり、
25℃におけるpHが、7以上11以下であることを特徴とする洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物である。
<2> (F)多価アルコールを、更に含有する前記<1>に記載の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物である。
<3> 前記(F)成分が、ソルビトールである前記<2>に記載の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物である。
<4> 前記(F)成分の含有量が、0.1質量%以上1質量%以下である前記<2>から<3>のいずれかに記載の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物である。
<5>25℃における粘度が、100mPa・s以上6,000mPa・s以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物である。
<6> 前記(D)成分の含有量が、0.03質量%以上0.15質量%以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物である。
<7> 前記(E)成分の含有量が、0.03質量%以上0.14質量%以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物である。
<8> 前記(A)成分を0.2質量%含む水溶液を水酸化ナトリウムで中和し、pHを7.0以上7.5以下にしたときの20℃における粘度が、4,000mPa・s以上32,000mPa・s以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた殺菌力を有し、手からのこぼれにくさ、乾き際のべたつきのなさ、乾きの早さ、手肌のかさつきのなさ、低温保存安定性、及び使用時の簡便性に優れ、経時のにおい安定性が良好である洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物)
本発明の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物(以下、「液体殺菌清浄剤組成物」と略記することがある)は、(A)カルボキシビニルポリマー、及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーの少なくともいずれかと、(B)エタノールと、(C)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、(D)第4級アンモニウム化合物と、(E)水酸化カリウムと、を含有し、(F)多価アルコールを含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0011】
<(A)カルボキシビニルポリマー、及びアルキル変性カルボキシビニルポリマー>
前記(A)成分のカルボキシビニルポリマー、及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーの少なくともいずれかは、粘度を向上させ、手からのこぼれにくさ、及び手肌のかさつきのなさを向上させるために含有される。
【0012】
前記(A)成分の前記カルボキシビニルポリマーとしては、例えば、アクリル酸の重合体などを含む。
前記(A)成分の前記アルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、例えば、アクリル酸、及びメタクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数:10以上30以下)の共重合体などを含む。
前記(A)成分としては、1種単独で使用してもよく、粘度が異なる2種以上のものを併用してもよい。
【0013】
前記(A)成分のカルボキシビニルポリマー、及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーの粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、手からのこぼれにくさ、及び乾き際のべたつきのなさの点から、外原規カルボキシビニルポリマーの粘度に記載されている測定方法に準拠し、(A)成分を105℃で3時間乾燥し、乾燥した(A)成分から0.4gをとり、水200mLを加え、なるべく泡の入らないように分散させた後、水酸化ナトリウム9gを精製水に溶かして全量を50mLとした水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを7.0以上7.5以下にし、その後10時間以上静置して泡を除き、20℃で試験を行う際の粘度が、4,000mPa・s以上32,000mPa・s以下が好ましい。前記粘度が、4,000mPa・s未満であると、前記液体殺菌清浄剤組成物の粘度が低下し、手からのこぼれにくさが不十分となることがある。前記粘度が、32,000mPa・sを超えると、乾き際のべたつきのなさ、及び乾きの早さが不十分となることがある。
【0014】
前記(A)成分のカルボキシビニルポリマー、及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーの粘度は、例えば、粘度計(装置名:BM型粘度計、東京計器株式会社製)、粘度計(装置名:BL型粘度計、東京計器株式会社製)などを用いて測定することができる。
試料温度20℃の環境下において、前記(A)成分の粘度が、4,000mPa・s以上10,000mPa・s未満の場合には、No.3のローターを用いて、回転数:12rpmで、1分間経過後の粘度を測定することができる。
また、試料温度20℃の環境下において、前記(A)成分の粘度が、10,000mPa・s以上32,000mPa・s以下の場合には、No.4のローターを用いて、回転数:12rpmで、1分間経過後の粘度を測定することができる。
【0015】
前記(A)成分のカルボキシビニルポリマー、及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、適宜市販品を使用してもよい。
前記市販品のカルボキシビニルポリマーを使用した、前記(A)成分のカルボキシビニルポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール(登録商標)981、日本ルーブリゾール株式会社製)の0.2質量%水溶液(中和条件:水酸化ナトリウム、pH:7.0以上7.5以下、20℃における粘度:4,000mPa・s以上7,500mPa・s以下)、カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール(登録商標)ETD2050、日本ルーブリゾール株式会社製)の0.2質量%水溶液(中和条件:水酸化ナトリウム、pH:7.0以上7.5以下、20℃における粘度:6,000mPa・s以上14,000mPa・s以下)、カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール(登録商標)980、日本ルーブリゾール株式会社製)の0.2質量%水溶液(中和条件:水酸化ナトリウム、pH:7.0以上7.5以下、20℃における粘度:16,000mPa・s以上28,000mPa・s以下)、カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール(登録商標)Ultrez10、日本ルーブリゾール株式会社製)の0.2質量%水溶液(中和条件:水酸化ナトリウム、pH:7.0以上7.5以下、20℃における粘度:12,000mPa・s以上29,000mPa・s以下)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記市販品のアルキル変性カルボキシビニルポリマーを使用した、前記(A)成分のアルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキル変性カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール(登録商標)1382、日本ルーブリゾール株式会社製)の0.2質量%水溶液(中和条件:水酸化ナトリウム、pH:7.0以上7.5以下、20℃における粘度:14,000mPa・s以上32,000mPa・s以下)、アルキル変性カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール(登録商標)ETD2020、日本ルーブリゾール株式会社製)の0.2質量%水溶液(中和条件:水酸化ナトリウム、pH:7.0以上7.5以下、20℃における粘度:14,000mPa・s以上32,000mPa・s以下)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、乾き際のべたつきのなさ、及び低温保存安定性の点から、カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール(登録商標)980、日本ルーブリゾール株式会社製)の0.2質量%水溶液(中和条件:水酸化ナトリウム、pH:7.0以上7.5以下、20℃における粘度:16,000mPa・s以上28,000mPa・s以下)、アルキル変性カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール(登録商標)1382、日本ルーブリゾール株式会社製)の0.2質量%水溶液(中和条件:水酸化ナトリウム、pH:7.0以上7.5以下、20℃における粘度:14,000mPa・s以上32,000mPa・s以下)、アルキル変性カルボキシビニルポリマー(商品名:カーボポール(登録商標)ETD2020、日本ルーブリゾール株式会社製)の0.2質量%水溶液(中和条件:水酸化ナトリウム、pH:7.0以上7.5以下、20℃における粘度:14,000mPa・s以上32,000mPa・s以下)が好ましい。
【0016】
前記(A)成分のカルボキシビニルポリマー、及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーの含有量としては、液体殺菌清浄剤組成物全量に対して、0.1質量%以上0.25質量%以下であり、手からのこぼれにくさ、乾き際のべたつきのなさ、乾きの早さ、及び手肌のかさつきのなさの点から、0.12質量%以上0.2質量%以下が好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、手からのこぼれにくさ、及び手肌のかさつきのなさが不十分となることがある。前記含有量が、0.25質量%を超えると、乾き際のべたつきのなさ、及び乾きの早さが不十分となることがある。
【0017】
<(B)エタノール>
前記(B)成分のエタノールは、乾き際のべたつきのなさ、及び乾きの早さを向上させるために含有される。
【0018】
前記(B)成分のエタノールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無水エタノール、95体積%エタノール(規格値95.0体積%以上95.5体積%以下、無水エタノールとしての含有量)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記(B)成分のエタノールとしては、市販品を使用してもよい。
【0019】
前記95体積%エタノールを使用した場合の、無水エタノール換算値(無水エタノールに換算した含有量(質量%))としては、下記の式(1)(独立行政法人医薬品医療機器総合機構発信文書038-1309.pdf)及び式(2)を用いて求めることができる。
・エタノールの質量%=体積%×0.79422(15℃における100体積%の比重)/d(15℃における比重) ・・・式(1)
=(95×0.79422)/0.81639
=92.42
・無水エタノールの含有量(質量%)=95体積%エタノール含有量(質量%)×92.42/100 ・・・式(2)
【0020】
前記(B)成分のエタノールの含有量としては、乾き際のべたつきのなさ、乾きの早さ、手肌のかさつきのなさ、及び低温保存安定性の点から、液体殺菌清浄剤組成物全量に対して、無水エタノールとして、25質量%以上35質量%以下であり、30質量%以上35質量%以下が好ましい。前記含有量が、25質量%未満であると、乾き際のべたつきのなさ、及び乾きの早さが不十分となることがある。前記含有量が、35質量%を超えると、手肌のかさつきのなさ、及び低温保存安定性が不十分となることがある。
【0021】
<(C)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油>
前記(C)成分のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、エチレンオキサイドの平均付加モル数が20以上200以下であり、低温保存安定性を向上させるために含有される。
【0022】
前記(C)成分のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイドの平均付加モル数としては、20以上200以下であり、40以上60以下が好ましい。前記エチレンオキサイドの平均付加モル数が、20未満であると、乾き際のべたつきのなさ、及び低温保存安定性が不十分となることがある。前記エチレンオキサイドの平均付加モル数が、200を超えるものは、市販品では入手が困難である。
【0023】
前記(C)成分のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:100)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:150)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:200)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:60)が好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数:40)がより好ましい。
【0024】
前記(C)成分のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、適宜市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:EMALEX HC-20、日本エマルジョン株式会社製、エチレンオキサイドの平均付加モル数:20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:EMALEX HC-30、日本エマルジョン株式会社製、エチレンオキサイドの平均付加モル数:30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:EMALEX HC-40、日本エマルジョン株式会社製、エチレンオキサイドの平均付加モル数:40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:EMALEX HC-50、日本エマルジョン株式会社製、エチレンオキサイドの平均付加モル数:50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:EMALEX HC-60、日本エマルジョン株式会社製、エチレンオキサイドの平均付加モル数:60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:EMALEX HC-80、日本エマルジョン株式会社製、エチレンオキサイドの平均付加モル数:80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:EMALEX HC-100、日本エマルジョン株式会社製、エチレンオキサイドの平均付加モル数:100)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:ブラウノンCW-150、青木油脂工業株式会社製、エチレンオキサイドの平均付加モル数:150)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(商品名:ブラウノンCW-200、青木油脂工業株式会社製、エチレンオキサイドの平均付加モル数:200)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記(C)成分のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量としては、乾き際のべたつきのなさ、乾きの早さ、及び低温保存安定性の点から、液体殺菌清浄剤組成物全量に対して、0.02質量%以上0.2質量%以下であり、0.03質量%以上0.1質量%以下が好ましい。前記含有量が、0.02質量%未満であると、低温保存安定性が不十分となることがある。前記含有量が、0.2質量%を超えると、乾き際のべたつきのなさ、及び乾きの早さが不十分となることがある。
【0026】
[質量比(A/C)]
前記(A)成分の含有量(質量%)と、前記(C)成分の含有量(質量%)と、の質量比(A/C)としては、乾き際のべたつきのなさ、乾きの早さ、及び低温保存安定性の点から、1.0以上10以下であり、2以上6以下が好ましい。前記質量比が、1.0未満であると、乾き際のべたつきのなさ、及び乾きの早さが不十分となることがある。前記質量比が、10を超えると、低温保存安定性が不十分となることがある。
【0027】
<(D)第4級アンモニウム化合物>
前記(D)成分の第4級アンモニウム化合物は、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、及び塩化ベンゼトニウムから選択される少なくともいずれかを含み、殺菌力を向上させるために含有される。
前記第4級アンモニウム化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、殺菌力、及び乾き際のべたつきのなさの点から、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムが好ましい。
【0028】
前記(D)成分の第4級アンモニウム化合物の含有量としては、殺菌力、手からのこぼれにくさ、手肌のかさつきのなさ、及び低温保存安定性の点から、殺菌清浄剤組成物全量に対して、0.03質量%以上0.15質量%以下が好ましく、0.04質量%以上0.1質量%以下がより好ましい。前記含有量が、0.03質量%以上であると、殺菌力が良好である。前記含有量が、0.15質量%以下であると、手からのこぼれにくさ、手肌のかさつきのなさ、及び低温保存安定性が良好である。
【0029】
<(E)水酸化カリウム>
前記(E)成分の水酸化カリウムは、手からのこぼれにくさ、及び低温保存安定性を向上させるために含有される。
【0030】
前記(E)成分の水酸化カリウムとしては、適宜市販品を使用してもよい。
前記市販品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、商品名:苛性カリ(液体、旭硝子株式会社製)、商品名:苛性カリ(固体、旭硝子株式会社製)などが挙げられる。
【0031】
前記(E)成分の水酸化カリウムが前記液体殺菌清浄剤組成物に加えられることにより、前記液体殺菌清浄剤組成物のpHを調整することができる。
【0032】
前記(E)成分の水酸化カリウムの含有量としては、手からのこぼれにくさ、低温保存安定性、及び手肌のかさつきのなさの点から、液体殺菌清浄剤組成物全量に対して、純分換算として、0.03質量%以上0.14質量%以下が好ましく、0.03質量%以上0.12質量%以下がより好ましい。前記含有量が、0.03質量%以上であると、手からのこぼれにくさ、及び低温保存安定性が良好である。前記含有量が、0.14質量%以下であると、手からのこぼれにくさ、低温保存安定性、及び手肌のかさつきのなさが良好である。
【0033】
<(F)多価アルコール>
前記(F)成分の多価アルコールは、手肌のかさつきのなさを向上させるために含有されることが好ましい。
【0034】
前記(F)成分の多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、ジエチレングリコール、イソプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量:200以上2,000以下)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、手肌のかさつきのなさの点から、ソルビトールが好ましい。
なお、前記ポリエチレングリコールの平均分子量は、医薬部外品原料規格2006(発行:株式会社薬事日報社)に記載の平均分子量を示す。
【0035】
前記(F)成分の多価アルコールの含有量としては、液体殺菌清浄剤組成物全量に対して、乾き際のべたつきのなさ、及び手肌のかさつきのなさの点から、0.1質量%以上1質量%以下が好ましい。前記含有量が、0.1質量%以上であると、手肌のかさつきのなさが良好である。前記含有量が、1質量%以下であると、乾き際のべたつきのなさ、及び乾きの早さが良好である。
【0036】
<その他の成分>
本発明の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物には、前記(A)~(F)の各成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、液体殺菌清浄剤組成物などに通常用いられる成分をその他の成分として配合することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、前記(A)成分以外の水溶性高分子、油分、シリコーン類、ラノリン誘導体、蛋白誘導体、ビタミン等の薬剤、前記(D)成分以外の殺菌剤、防腐剤、前記(E)成分以外のpH調整剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、紫外線吸収剤、動植物抽出物又はその誘導体、色素、香料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる含有量とすることができる。
【0037】
-製造方法-
前記洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、常温(例えば、25℃)の環境下において、水に前記(A)成分を少量ずつ撹拌しながら加え、均一に分散させて、分散液1を作製する。次に、水に前記(C)成分、前記(D)成分、及び必要に応じて前記(F)成分を加えて溶解させ、溶液1を作製する。その後、前記分散液1、前記(B)成分、前記溶液1、及び必要に応じて前記その他の成分を混合させ、撹拌しながら各成分を溶解させる。その後、撹拌しながら前記(E)成分を加え、所定のpHに調整する方法などが挙げられる。また、各液体殺菌清浄剤組成物の全体が100質量%となるように水を加えることが好ましい。
前記洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物は、装置を用いて調製してもよい。前記装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、剪断力があり、全体を混合することができる撹拌羽根を備えた撹拌装置などが挙げられる。
前記撹拌羽根としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロペラ、タービン、ディスパーなどが挙げられる。
【0038】
-pH-
前記洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物は、手からのこぼれにくさ、手肌のかさつきのなさ、及び低温保存安定性の点から、25℃におけるpHが、7以上11以下であり、7以上9以下であることが好ましい。前記pHが7未満であると、低温保存安定性が低下する。前記pHが11を超えると、手からのこぼれにくさ、手肌のかさつきのなさ、及び低温保存安定性が低下する。
【0039】
前記pHは、例えば、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(装置名:pHメーター HM-30R型、東亜ディーケーケー株式会社製、電極タイプ:GST-5721)により、25℃環境下において測定できる。
【0040】
-容器-
前記洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物は、容器に充填されて用いることができる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポンプディスペンサー容器が好ましい。
前記ポンプディスペンサー容器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポンプディスペンサー容器(ノズル口径(内径):3.5mm、吐出量:0.5mL)などが挙げられる。
前記ポンプディスペンサー容器としては、適宜市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、ポンプディスペンサー容器(株式会社吉野工業所製)などが挙げられる。
【0041】
-粘度-
前記洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物の粘度としては、手からのこぼれにくさ、乾き際のべたつきのなさ、及び乾きの早さの点から、25℃環境下において、100mPa・s以上6,000mPa・s以下が好ましく、300mPa・s以上4,000mPa・s以下がより好ましい。
【0042】
前記洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物の粘度は、例えば、粘度計(装置名:BM型粘度計、東京計器株式会社製)を用いて測定することができる。
前記液体殺菌清浄剤組成物の粘度が、40mPa・s以上3,000mPa・s未満の場合には、試料温度25℃の環境下において、BMアダプター、及びNo.3のローターを用いて、回転数:30rpmで、1分間経過後の粘度を測定することができる。
また、前記液体殺菌清浄剤組成物の粘度が、3,000mPa・s以上6,000mPa・s以下の場合には、試料温度25℃の環境下において、BMアダプター、及びNo.4のローターを用いて、回転数:30rpmで、1分間経過後の粘度を測定することができる。
【0043】
-使用方法-
前記洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物の使用方法としては、手肌に前記液体殺菌清浄剤組成物を使用した後、水等により洗い流すことを必要としない。具体的には、前記液体殺菌清浄剤組成物を、手の平、及び手の甲に擦り込んだ後、水道水等で洗い流す必要がない。
前記液体殺菌清浄剤組成物を洗い流さないことにより、殺菌力、及び使用時の簡便性が向上する。
【0044】
-用途-
前記洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、手肌消毒剤などに好適に用いることができる。また、前記洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物は、手以外の身体部にも利用可能である。その適用現場としては、例えば、病院、介護施設、厨房用途などが挙げられ、家庭においても好適に用いられる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。なお、実施例、及び比較例の記載の各成分の含有量は、すべて純分換算した値である。但し、(B)成分については、95.3体積%エタノールを使用し、95.3%体積エタノールの実配合量(質量%)と、無水エタノール換算値(無水エタノールに換算した含有量(質量%))と、を併記した。
【0046】
(実施例1~32、及び比較例1~23)
下記表1~表7に示す組成及び含有量(質量%)の通り、実施例1~32、及び比較例1~23の液体殺菌清浄剤組成物を、以下の製造方法に基づいて調製した。
【0047】
―液体殺菌清浄剤組成物の調製―
25℃の環境下において、適量の精製水に、(A)成分又は(A)比較成分を少量ずつ撹拌しながら加え、均一に分散させて、分散液1を作製した。次に、最終的に得られる液体殺菌清浄剤組成物全量における1質量%となる精製水に、(C)成分又は(C)比較成分、(D)成分又は(D)比較成分、及び(F)成分、を加えて溶解させ、溶液1を作製した。その後、前記分散液1、(B)成分、及び前記溶液1をこの順で混合させ、最終的に得られる液体殺菌清浄剤組成物全量における92質量%となるように精製水を加えて撹拌しながら各成分を溶解させた。その後、撹拌しながら(E)成分又は(E)比較成分を加え、所定のpHに調整した。更に、各液体殺菌清浄剤組成物の全体が100質量%となるように精製水を加え、透明の液体殺菌清浄剤組成物を得た。
なお、撹拌羽根としてはプロペラを使用し、スリーワンモーター(商品名:HEIDON BL1200、新東化学株式会社製)を用いて撹拌した。また、前記pHは、pHメーター(装置名:HM-30R型、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
また、粘度について、25℃の環境下において、粘度計(装置名:BM型粘度計、東京計器株式会社製)を用いて、40mPa・s以上3,000mPa・s未満の場合には、BMアダプター、及びNo.3のローターを用いて、回転数:30rpmで、1分間経過後の粘度を測定した。また、3,000mPa・s以上6,000mPa・s以下の場合には、BMアダプター、及びNo.4のローターを用いて、回転数:30rpmで、1分間経過後の粘度を測定した。
【0048】
得られた実施例1~32、及び比較例1~22の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物について、「殺菌力」、「手からのこぼれにくさ」、「乾き際のべたつきのなさ」、「乾きの早さ」、「手肌のかさつきのなさ」、「低温保存安定性」、「使用時の簡便性」、及び「経時のにおい安定性」を下記方法により評価した。
比較例23の洗い流すタイプの液体殺菌清浄剤組成物は、「殺菌力」、「手からのこぼれにくさ」、「低温保存安定性」、及び「経時のにおい安定性」については、前記洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物と同様の方法により評価した。また、「乾き際のべたつきのなさ」、「乾きの早さ」、「手肌のかさつきのなさ」、及び「使用時の簡便性」については、前記洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物とは異なる方法により評価した。詳細については、後述する。
実施例1~32、及び比較例1~23の結果を下記表1~表7に示す。
【0049】
<殺菌力>
対象菌として、大腸菌(Escherichia coli NBRC3972、独立行政法人製品評価基盤機構より入手)を用い、以下に示す定量的懸濁法にて、液体殺菌清浄剤組成物の殺菌力を評価した。
前記大腸菌を、SCD寒天培地(日本製薬株式会社製)を用いて、好気条件下で37℃にて24時間静置培養した。次に、SCD寒天培地上に形成されたコロニーを適量掻きとり、生理食塩水(大塚製薬株式会社製)に懸濁させ、菌濃度:108cfu/mLとなるように調整し、試験菌液とした。なお、cfuとは、コロニー形成単位(colony forming unit)を意味する。
次に、得られた液体殺菌清浄剤組成物0.495mLに前記試験菌液0.005mLを加えて混合させ、30秒間後、直ちに混合液をSCDLP液体培地(日本製薬株式会社製)で10倍に希釈し、不活化した。更に、不活化した溶液を、SCDLP培地で100倍希釈、1,000倍希釈、及び10,000倍希釈として、10倍ごとの段階希釈を行った。その後、SCDLP寒天培地(日本製薬株式会社製、9cmシャーレ)に、各濃度に希釈した前記不活化した溶液を、各々1mL播種(n=3)し、混釈平板培養法により、好気条件下で37℃にて24時間静置培養した。培養後、形成された全コロニー数をカウントし、残存生菌数を測定した。コロニーが観測されないときは、残存生菌数は、検出限界の10cfu/mL未満とした。測定した残存生菌数より、下記判断基準に基づいて、殺菌力を点数化した。前記点数の平均値により、下記評価基準に基づいて、「殺菌力」を評価した。
-判断基準-
5点:残存生菌数が10cfu/mL未満(検出限界未満)である
4点:残存生菌数が10cfu/mL以上100cfu/mL未満である
3点:残存生菌数が100cfu/mL以上1,000cfu/mL未満である
2点:残存生菌数が1,000cfu/mL以上10,000cfu/mL未満である
1点:残存生菌数が10,000cfu/mL以上である
-評価基準-
◎:前記点数の平均値が、4.0点以上5.0点以下である
○:前記点数の平均値が、3.0点以上4.0点未満である
△:前記点数の平均値が、2.0点以上3.0点未満である
×:前記点数の平均値が、2.0点未満である
【0050】
<手からのこぼれにくさ>
25℃の環境下において、専門パネラー10人(男性5人、女性5人)が、乾いた右の手の平の中央に得られた液体殺菌清浄剤組成物0.5gを取った後、両手で手の平及び手の甲に擦り込んだときの液体殺菌清浄剤組成物の手からのこぼれにくさについて、下記判断基準に基づいて、手からのこぼれにくさを点数化し、前記点数の平均値により、下記評価基準に基づいて、「手からのこぼれにくさ」を評価した。
-判断基準-
5点:非常にこぼれにくい
4点:こぼれにくい
3点:ややこぼれにくい
2点:ややこぼれやすい
1点:こぼれやすい
-評価基準-
◎:前記点数の平均値が、4.0点以上5.0点以下である
○:前記点数の平均値が、3.0点以上4.0点未満である
△:前記点数の平均値が、2.0点以上3.0点未満である
×:前記点数の平均値が、2.0点未満である
【0051】
<乾き際のべたつきのなさ、乾きの早さ、手肌のかさつきのなさ、及び使用時の簡便性>
25℃の環境下において、専門パネラー10人(男性5人、女性5人)が、乾いた右の手の平の中央に得られた液体殺菌清浄剤組成物0.5gを取った後、下記の使用方法a、及び使用方法bのいずれかの方法により液体殺菌清浄剤組成物を使用した。乾き際のべたつきのなさ、乾きの早さ、手肌のかさつきのなさ、及び使用時の簡便性について、下記判断基準に基づいて、点数化し、前記点数の平均値により、下記評価基準に基づいて、「乾き際のべたつきのなさ」、「乾きの早さ」、「手肌のかさつきのなさ」、及び「使用時の簡便性」を評価した。
・使用方法a(実施例1~32、及び比較例1~22)
乾いた右の手の平の中央に得られた液体殺菌清浄剤組成物を両手で手の平及び手の甲に、専門パネラーが乾いたと判断した時点まで擦り込んだ。
・使用方法b(比較例23)
乾いた右の手の平の中央に得られた液体殺菌清浄剤組成物を両手で手の平及び手の甲に、擦り込み、両手から液体殺菌清浄剤組成物が乾く前に、水道水(25℃、2L/分間)で両手を洗い流し、各専門パネラーが洗い終わったと判断した後、手を2回振り、手の水分を軽く取った後、専門パネラーが乾いたと判断した時点まで擦り込んだ。
-乾き際のべたつきのなさの判断基準-
5点:べたつきを感じない
4点:べたつきをほとんど感じない
3点:僅かにべたつきを感じるが、問題のないレベルである
2点:べたつきを感じる
1点:べたつきを強く感じる
-乾き際のべたつきのなさの評価基準-
◎:前記点数の平均値が、4.0点以上5.0点以下である
○:前記点数の平均値が、3.0点以上4.0点未満である
△:前記点数の平均値が、2.0点以上3.0点未満である
×:前記点数の平均値が、2.0点未満である
-乾きの早さの判断基準-
5点:乾きが早いと感じる
4点:乾きがやや早いと感じる
3点:乾くまでにやや時間を感じるが、問題のないレベルである
2点:乾きがやや遅いと感じる
1点:乾きが遅いと感じる
-乾きの早さの評価基準-
◎:前記点数の平均値が、4.0点以上5.0点以下である
○:前記点数の平均値が、3.0点以上4.0点未満である
△:前記点数の平均値が、2.0点以上3.0点未満である
×:前記点数の平均値が、2.0点未満である
-手肌のかさつきのなさの判断基準-
5点:手肌のかさつきを感じない
4点:手肌のかさつきをほとんど感じない
3点:僅かに手肌のかさつきを感じるが、問題のないレベルである
2点:手肌のかさつきを感じる
1点:手肌のかさつきを強く感じる
-手肌のかさつきのなさの評価基準-
◎:前記点数の平均値が、4.5点以上5.0点以下である
◎~〇:前記点数の平均値が、4.0点以上4.5点未満である
○:前記点数の平均値が、3.0点以上4.0点未満である
△:前記点数の平均値が、2.0点以上3.0点未満である
×:前記点数の平均値が、2.0点未満である
-使用時の簡便性の判断基準-
4点:簡便性を感じる
3点:やや簡便性を感じる
2点:どちらでもない
1点:簡便性を感じない
-使用時の簡便性の評価基準-
○:前記点数の平均値が、3.0点以上4.0点以下である
△:前記点数の平均値が、2.0点以上3.0点未満である
×:前記点数の平均値が、2.0点未満である
【0052】
<低温保存安定性>
得られた液体殺菌清浄剤組成物50mLを、容量50mLのガラス製のスクリューバイアル瓶(商品名:SV-50A、日電理化硝子株式会社製)3本ずつに充填し、-5℃の恒温槽に1ヶ月間保管後、専門パネラー1名が液体殺菌清浄剤組成物の外観を目視にて観察し、下記判断基準に基づいて、低温保存安定性を点数化し、前記点数の平均値により、下記評価基準に基づいて、「低温保存安定性」を評価した。
-判断基準-
5点:無色透明である
4点:ほぼ無色透明である
3点:わずかに微濁であるが、問題のないレベルである
2点:全体に白濁がみられる
1点:白い沈殿がみられる
-評価基準-
◎:前記点数の平均値が、4.0点以上5.0点以下である
○:前記点数の平均値が、3.0点以上4.0点未満である
△:前記点数の平均値が、2.0点以上3.0点未満である
×:前記点数の平均値が、2.0点未満である
【0053】
<経時のにおい安定性>
得られた液体殺菌清浄剤組成物45mLを、容量50mLのガラス製のスクリューバイアル瓶(商品名:SV-50A、日電理化硝子株式会社製)2本に充填し、1本を50℃の恒温槽に1ヶ月間保管した。また、比較対象として、残り1本(標準品)を5℃の環境下で、1ヶ月間保管した。その後、前記恒温槽から取り出し、専門パネラー3名が25℃の環境下で前記液体殺菌清浄剤組成物のにおいを嗅ぎ、5℃で1ヵ月間保管した標準品のにおいと比較し、下記判断基準に基づいて、経時のにおい安定性を点数化し、前記点数の平均値により、下記評価基準に基づいて、「経時のにおい安定性」を評価した。
-判断基準-
5点:標準品と比較して、においが変化していない
4点:標準品と比較して、においがほとんど変化していない
3点:標準品と比較して、においがわずかに変化しているが、不快臭がしていない
2点:標準品と比較して、においが変化している
1点:標準品と比較して、においが非常に変化している
-評価基準-
◎:前記点数の平均値が、4.0点以上5.0点以下である
○:前記点数の平均値が、3.0点以上4.0点未満である
△:前記点数の平均値が、2.0点以上3.0点未満である
×:前記点数の平均値が、2.0点未満である
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
なお、実施例1~32、及び比較例1~23で使用した液体殺菌清浄剤組成物の原料は、下記表8に示す通りである。
【0062】
【表8】
上記表8の(A)成分の粘度は、pH7.0以上7.5以下の0.2質量%水溶液である各商品を、試料温度20℃の環境下において、粘度計(装置名:BM型粘度計、東京計器株式会社製)を用いて、BMアダプター、及びNo.4のローターを用いて、回転数:12rpmで、1分間経過後の粘度を測定した値である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物は、殺菌力を有し、手からのこぼれにくさ、乾き際のべたつきのなさ、乾きの早さ、手肌のかさつきのなさ、低温保存安定性、及び使用時の簡便性に優れ、経時のにおい安定性が良好であり、例えば、手肌消毒剤などに好適に用いることができる。また、前記洗い流さないタイプの液体殺菌清浄剤組成物は、ボディー用等の身体用としても利用可能である。その適用現場としては、例えば、病院、介護施設、厨房用途などが挙げられ、家庭においても好適に用いられる。