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特許7105814エチレングリコールを精製するための方法
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  • 特許-エチレングリコールを精製するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】エチレングリコールを精製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/80 20060101AFI20220715BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C07C29/80
C07C31/20 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019571277
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 GB2018051775
(87)【国際公開番号】W WO2019002839
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】1710508.1
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518329767
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ デイヴィー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン, サイモン
(72)【発明者】
【氏名】スナイス, アダム アーマー
(72)【発明者】
【氏名】タック, マイケル ウィリアム マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン, デーヴィッド ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウッド, マイケル アンソニー
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-104829(JP,A)
【文献】特開昭54-130519(JP,A)
【文献】米国特許第04087470(US,A)
【文献】米国特許第07615671(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)粗エチレングリコール流を、粗流内の軽質化合物がオーバーヘッドで分離され、軽質物が除去された粗エチレングリコール流が第1の蒸留カラムの底部から又はその近くから除去される第1の蒸留カラムに通すこと;
(b)第1の蒸留カラムの底部から又はその近くから除去された軽質物が除去された粗エチレングリコール流を、精製されたエチレングリコールが分離され、軽質物が除去された粗エチレングリコール流に存在する重質化合物から回収される第2の蒸留カラムに通すこと;
(c)ジエチレングリコール及び重質化合物と一緒に残留エチレングリコールを含む第2の蒸留カラムの底部から又はその近くから流れを除去し、前記流れを、重質化合物がエチレングリコール及びジエチレングリコールを含む流れから分離される第3の蒸留カラムに通すこと;
(d)エチレングリコール及びジエチレングリコールを含む流れを第3の蒸留カラムから除去し、前記流れを、エチレングリコールがジエチレングリコールから分離される第4の蒸留カラムに通すこと
を含む、粗エチレングリコール流からエチレングリコールを精製するための方法。
【請求項2】
粗エチレングリコール流が、工程(a)で粗流が第1の蒸留カラムに通される前に、水及びアルカノールが除去されるアルカノール蒸留カラムで最初に処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各蒸留カラムが大気圧未満の圧力で操作される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アルカノール蒸留カラムが、20kPaから40kPa、又は30kPaのカラム頂部の圧力で操作される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第1の蒸留カラムが、10kPaから20kPa、又は15kPaのカラム頂部の圧力で操作される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第2の蒸留カラムが、6kPaから10kPa、又は8kPaのカラム頂部の圧力で操作される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第3の蒸留カラムが、4kPaから8kPa、又は6kPaのカラム頂部の圧力で操作される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第4の蒸留カラムが、2kPaから4kPa、又は3kPaのカラム頂部の圧力で操作される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(a)粗エチレングリコール流を、粗流内の軽質化合物がオーバーヘッドで分離され、軽質物が除去された粗エチレングリコール流が第1の蒸留カラムの底部から又はその近くから除去される第1の蒸留カラムに通すこと;
(b)第1の蒸留カラムの底部から又はその近くから除去された軽質物が除去された粗エチレングリコール流を、精製されたエチレングリコールが分離され、軽質物が除去された粗エチレングリコール流に存在する重質化合物から回収される第2の蒸留カラムに通すこと;
(c)ジエチレングリコール及び重質化合物と一緒に残留エチレングリコールを含む第2の蒸留カラムの底部から又はその近くから流れを除去し、前記流れを、ジエチレングリコールよりも軽い成分がオーバーヘッド流れで分離される第3の蒸留カラムに通すこと;
(d)ジエチレングリコールを含む流れを第3の蒸留カラムから除去し、前記流れを、ジエチレングリコール流がサイドドローで分離される第4の蒸留カラムに通すこと
を含む、粗エチレングリコール流からエチレングリコールを精製するための方法。
【請求項10】
第3の蒸留カラムからのオーバーヘッド流が第2の蒸留カラムに再循環される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
パージが第3の蒸留塔カラムから再循環されたオーバーヘッド流から行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
パージが上流の水素化に戻され、エチレングリコールを生成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
底部流が第4の蒸留カラムから上流の水素化に再循環される、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
パージが底部流から、水素化されていない任意の重質物の蓄積を制御するために行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
オーバーヘッド流が、ジエチレングリコール及び第4の蒸留カラムでの反応から形成されるモノエチレングリコール及び水等の任意の軽質物を含有する第4の蒸留カラムから取り出される、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
第4の蒸留カラムからのオーバーヘッド流が第2の蒸留カラムに再循環される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上流の水素化へのパージが第4の蒸留カラムからのオーバーヘッド流から行われる、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレングリコールを精製するための方法に関する。より具体的には、グリコール酸エステルによるグリコール酸から生成されたエチレングリコールを精製するための方法に関する。さらにより具体的には、ホルムアルデヒド及び合成ガスから形成されたグリコール酸からのエチレングリコールの精製に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレングリコールは、不凍液組成物における成分、及びポリエステルの製造における前駆体としての、二つの主な用途を有する。特に、それ自体がプラスチックボトルの製造を含めた様々な用途を有するポリエチレンテレフタレートの製造において使用される。したがって、大量のエチレングリコールが毎年生成されることが理解されるであろう。
【0003】
エチレングリコールの生成には様々なルートが提案されてきた。例えば、エチレングリコールは、酸化エチレンによりエチレンから生成することができる。一つの別の提案では、エチレングリコールは、グリコール酸のエステル化及びその後の水素化により生成することができる。
【0004】
エチレングリコールの生成に使用されるグリコール酸は、様々なルートによって生成され得る。例えば、米国特許公開第2012/0178136号、同第2012/0315682号及び国際公開第2007/141316号に記載されるような発酵過程又は米国特許公開第2014/027303号に記載されるような電気化学過程により形成することができる。しかしながら、市場で生成されるグリコール酸の大部分は、ホルムアルデヒドのヒドロカルボニル化により得られる。
【0005】
強酸触媒を使用したホルムアルデヒドの一酸化炭素でのカルボニル化によりグリコール酸を形成するための反応はよく知られている。基本的な方法は、DuPontにより米国特許第2152852号において最初に開示された。その方法は、50から350℃の温度及び5から1500atmaの圧力で、均一酸触媒の存在の下、ホルムアルデヒド、水及び一酸化炭素を反応させることにより液相中でグリコール酸を調製することを目的とした。硫酸、塩酸、リン酸、フッ化ホウ素、ギ酸及びグリコール酸が適切な触媒として記載されている。
【0006】
DuPontはグリコール酸の生成のためのさらなる特許、例えばグリコール酸をエチレングリコールへ水素化するための継続的な方法を開示している米国特許第2285444、及びホルムアルデヒドのカルボニル化のための継続的な方法を開示している米国特許第2443482を取得した。
【0007】
エチレングリコールを生成するための方法は、エチレングリコールへのこのルートが競争力がなくなる1960年代後半まで、DuPontによって商業化され、操作された。その後、プラントは、200℃の温度及び400から700barの圧力で硫酸が触媒として使用されたグリコール酸の生成のために操作された。
【0008】
これらの初期に記載された方法には、数多くの問題があった。これらの問題には、非常に高い圧力で作業する必要性に起因するものが含まれていた。加えて、選択性は低かった。腐食性の高い反応混合物と反応生成物からの硫酸のような均一酸触媒を除去する困難とに取り組む必要もあった。
【0009】
これらの問題のいくつか又はすべてについて対処するために様々な提案がなされてきた。例えば、米国特許第3859349号では、硫酸触媒を分離することに関連した問題に対処する提案があり、炭酸カルシウムでの中和の代わりとしてイオン交換樹脂を使用することを提案していた。しかしながら、イオン交換樹脂は、水性環境で限定された熱安定性を有しているため、酸性基の損失が生じる。
【0010】
他の提案は、粗グリコール酸の共沸蒸留がカルボニル化反応器への再循環中の含水量を減らし、それによって副生成物形成を最小にし、供給ホルムアルデヒドからの収率を高める手段として提案された米国特許第4431486号であった。
【0011】
他のアプローチは、反応器の操作圧力を低下させる手段として代替の触媒系を検討することであった。米国特許第3911003号、米国特許第4016208号、米国特許第4087470号、米国特許第4136112号及び米国特許第4188494号では、フッ化水素が適切な触媒として示された。触媒として硫酸をフッ化水素の代わりに使用する方法は、1から275barの操作圧力を可能にすることが示されている。
【0012】
さらに別の方法が米国特許第4052452号で開示され、そこでは、濃硫酸中のCu(I)又はAg塩が一酸化炭素の溶解度を増加させる手段として示されており、このことは操作圧力が0.1から30atmaに減少することを可能にすることが示されている。これは操作圧力の問題に対処し得るが、そのような系は水による被毒に非常に敏感であり、金属触媒の分離及び再循環は困難である。
【0013】
米国特許第6376723号では、反応は、反応条件を緩和する手段としてスルホンの存在下、-1未満のpKa値を有する酸触媒を用いて実施される必要があることが示されている。不均一系触媒を使用することができるとの示唆もある。
【0014】
米国特許第4140866号は、ホルムアルデヒドのカルボニル化により生成されたグリコール酸から硫酸触媒を除去することに関連する問題を考察している。提案された解決法は、最初に反応混合物をアルカリ金属水酸化物で処理して溶解硫酸塩を形成し、次いでこれをグリコール酸とエチレン二酸化物とのエステル化及び水の除去の際に沈殿させることである。
【0015】
反応混合物から均一系触媒を分離することに関連する問題を克服するために広く採用されている戦略は、容易に機械的に分離することができる不均一系触媒で均一系触媒を置き換えることである。ホルムアルデヒドのカルボニル化反応に使用するのに適した触媒として、いくつかの固体酸材料が提案されている。これらには、スルホン酸イオン交換樹脂、アルミノシリケートゼオライト、ポリオキソメタレート塩及びアルキルスルホン酸ポリシロキサンが含まれる。
【0016】
グラム当たり0.1ミリ当量を超える水素イオン交換容量を有する固体の不溶性粒状酸性触媒の使用は、GB1499245に最初に記載された。スルホン酸系イオン交換樹脂、酸性粘土及びゼオライトが、ホルムアルデヒドのカルボニル化に適した触媒として挙げられている。これらには、スルホン酸イオン交換樹脂、アルミノシリケートゼオライト、ポリオキソメタレート塩及びアルキルスルホン酸ポリシロキサンが含まれる。
【0017】
グリコール酸又はそのエステルの調製のための別の方法がDE3133353C2に開示されている。この方法では、二つの反応工程において、ホルムアルデヒドは不活性希釈剤中で一酸化炭素及び水又はアルコールと反応する。第一の工程では、ホルムアルデヒドは、酸性で固体の不溶性の細かく分布した触媒を使用して、1:1から5:1の触媒の水素イオン交換容量のホルムアルデヒドのモル量に対する比、30℃から200℃の温度、及び10から325barの圧力で一酸化炭素と反応する。第二の工程では、水又は1から20個の炭素原子を有するアルコールが、20℃から200℃の温度及び1から325barの圧力で追加される。続いて、触媒は反応媒体から機械的に分離される。
【0018】
KR19950013078B1は、水溶性の不活性溶媒中でIB族の一価金属と5~40wt%イオン交換されたポリマー強酸触媒である不均一固体触媒を使用して水又は水-メタノール混合物の存在下でホルムアルデヒドと一酸化炭素が反応するグリコール酸を生成するための方法に関する。ジオキサンが水溶性の不活性溶媒として使用される。
【0019】
ホルムアルデヒド及び一酸化炭素が、水溶性の不活性溶媒中でポリマー強酸触媒を使用して、水又は水-メタノール混合物の存在下で反応するKR19950013079B1に、同様の方法が記載されている。
【0020】
ホルムアルデヒド、一酸化炭素及びメタノールからメチルグリコレートを継続して生成するための方法が、KR19950009480B1に記載されており、ここではポリマー強酸触媒で満たされたフロー反応器が使用されている。ホルムアルデヒド、水及び不活性溶媒の一酸化炭素との反応混合物は、反応器の上部で供給され、メタノールは下部で供給される。反応器の上部では、酸触媒作用を介してグリコール酸が生成される。反応器の下部では、メタノール及び形成されたグリコール酸からメチルグリコレートが調製される。一酸化炭素の圧力は500から6,000psigであり、温度は80から200℃である。この一工程手順の提案された選択性は比較的高い。
【0021】
KR0124821B1は、メチルグリコレートを酸性溶液から分離することに関する。この場合、カルボニル化反応及びエステル化反応によって形成された反応溶液は、メチルグリコレート、ジオキサン、水、メタノール及び水素イオンを含有する。この反応溶液は、中和反応器へ送られ、アルカリの添加によって中和され、塩が生じる。塩を含有する反応溶液は蒸留されて、メタノール、水及びジオキサンと、メチルグリコレート、塩及びジオキサンとが分離される。ジオキサンから分離されたメタノールは、カルボニル化反応器へ再循環される。蒸留塔の下部から分離された溶液は、メチルグリコレート、塩及びジオキサンを含有する。これは、固体-液体分離器へ送られ、溶媒からメチルグリコレートが分離される。
【0022】
メチルグリコレートの生成のためのさらなる方法がKR19950011114B1に記載されている。この方法では、ホルムアルデヒドは一酸化炭素と反応し、グリコール酸が生成される。その後、グリコール酸はメタノールと反応して、メチルグリコレートが生成される。その後、残りのホルムアルデヒドはメタノールと反応して、メチラールが生成される。メチルグリコレート及びメチラールはその後、蒸留によって分離される。メチラールは、Fe-Mo触媒と反応して、それをホルムアルデヒドに戻し、その後、それは再循環される前に回収及び濃縮される。
【0023】
ホルムアルデヒドのカルボニル化反応のための別の不均一酸触媒が米国特許第6376723号に記載されている。Amberlyst 38W及びNafion SAC13のようなスルホン酸系イオン交換樹脂が、適切な市販の触媒として挙げられる。Deloxan ASP 1/9、アルカリスルホン酸ポリシロキサン、も適切な触媒として記載されている。この材料は、プロピル(3-スルホン酸)シロキサン及びSiOの共重縮合によって形成される。
【0024】
He et al., Catalysis Today, 51 (1999), 127-134は、ホルムアルデヒドとギ酸メチルの縮合のための均一系触媒としてのヘテロポリ酸の使用を開示している。
【0025】
さらなる方法が、特許公報第2503178号に開示されている。この方法では、グリコール酸は、固体のヘテロポリ酸の存在下でホルムアルデヒドと一酸化炭素から生成されたポリグリコリドの加水分解によって形成される。
【0026】
国際公開第2009/140787号、同第2009/140788号及び同第2009/140850号は、不溶性のポリオキソメタレート化合物を使用する方法に関する。これらの化合物は、一酸化炭素及びホルムアルデヒドからグリコール酸を生成するために、特定の酸特性を有するか、又は固体酸触媒として、ゼオライトケージ内に封入されている。しかしながら、金属塩は、金属成分の浸出を起こしやすく、それは活性酸部位の数を減少させることになる。ポリオキソメタレート塩を含浸させたゼオライトの場合、酸浸出はゼオライト基質と塩それ自体の両方に影響を与えることになる。
【0027】
様々な置換オルガノポリシロキサン化合物及びそれらの使用に関する数多くの事例も存在する。これらの事例は、ポリシロキサン化合物の異なるクラスを網羅する5つのファミリーに分類することができる。5つのグループは、以下:EP1360222、EP1786850、国際公開第2006/013080号、同第2007/090676号及び米国特許公開第2010/0290962によって分類することができ、これらは化合物の様々なファミリーを開示している。これらの文献は、化合物がカルボニル化反応に有用であり得るが、これらの化合物が、一般にカルボニル化反応においてどのように使用することができるか、又はこれらがホルムアルデヒドのカルボニル化にどのように使用できるかについて、詳細に教示していない。
【0028】
不均一系触媒の使用が反応系の腐食を減少させることが示されてきた。先行技術において提案された不均一系触媒のいずれも商業的に採用されていない。
【0029】
ホルムアルデヒドのカルボニル化により形成されるグリコール酸からのエチレングリコールの生成に関する数多くの特許及び出版物が存在するが、確立された工業生産ルートと経済的に競合することができる改良された方法に対する必要性が依然として存在する。
【0030】
反応に関連する問題の解決を試みる様々なアプローチは、二つのカテゴリーにまとめることができる。第一のアプローチは、以前に達成可能であったものよりも低い圧力及び低い酸濃度で操作する均一系触媒系の調査に関する。
【0031】
第二のアプローチは、触媒のより容易な分離及び反応器の腐食の減少から利益を得るため、不均一固体酸触媒の調査に関する。しかしながら、今日までに提案された固体触媒はまた、いくつかの欠点を有することが証明されており、そして商業的に採用されていない。これらの触媒は、一般的に、厳しい反応条件に耐えるために必要とされる熱的及び化学的安定性を欠いている。
【0032】
例えば、アルミニウムが構造から浸出してそれを崩壊させるため、アルミノシリケートゼオライトは、強酸性条件下で安定していない。これは、活性の損失をもたらし、やがて触媒の崩壊を完了させる(Pan et al, 1994, Studies in Surface Science and Catalysis)。この問題を回避することを視野に入れると、EP0114657では、形成される酸の量が制限されるが、これは反応器の効率を低減し、分離の問題を悪化させるように反応が操作されるべきであることが提案されている。
【0033】
スルホン酸系イオン交換樹脂は、水性環境で限定された熱安定性を有しているため、酸性基の損失が生じることがよく知られている。さらに、ホルムアルデヒドは、スチレン/ジ ビニルベンゼン系樹脂内の芳香環を攻撃し、膨張及びさらなる酸性基の損失がもたらされることが発見された。
【0034】
置換オルガノポリシロキサン化合物、例えばDeloxan ASP 1/9、Quadrasil-SA及びSilicycle(SCX-2)と、アルキルスルホン酸ポリシロキサンを使用することができるが、これらは効果的なプロセス条件下で触媒性能を迅速に失うことが発見されたことが示されている。これは、加水分解による係留有機酸性基の損失によるものであった。
【0035】
したがって、経済的に実行可能なホルムアルデヒドのグリコール酸へのカルボニル化によるエチレングリコールを生成するための方法が求められている。
【0036】
ホルムアルデヒドのカルボニル化環境における固体酸触媒の安定性の問題の調査において、数多くの材料が試験されてきた。この試験の過程で、官能性触媒シリカ材料の初期活性が経時的に低下することが観察された。「官能性」とは、シリカ材料が、シリカ担体に係留酸性基、例えばアルキルスルホン酸基を有することを意味する。活性の低下は係留官能基の除去の機能であることが発見された。
【0037】
カルボン酸又はその誘導体を形成するためのアルデヒドのカルボニル化のための別の触媒及び方法が、国際公開第2016/162663号に記載されている。そこで開示される触媒は、均一系酸触媒成分及び多孔質固体成分を含む。
【0038】
グリコール酸を生成するための別の改善された方法が、国際公開第2016/162662号に記載されている。この方法は、反応が少量の均一なアルキルシリルスルホン酸の存在下で行われるときに、シリカ材料の活性の減少を回復又は回避することができるという発見に関する。いくつかの状況では、増強された活性が達成され得る。よって、国際公開第2016/162662号は、シリカ触媒の存在下で、ホルムアルデヒドと一酸化炭素及び水を反応させることを含む、ホルムアルデヒドからグリコール酸又はその誘導体を生成するための方法に関し、ここでは、約200から約1000ppmのアルキルシリルスルホン酸が反応に供給される。
【0039】
またさらなる方法がGB1615762.0に記載されている。この方法は、硫黄触媒の存在下でホルムアルデヒドを一酸化炭素及び水と反応させることにより生成されたグリコール酸が、エステル化反応を触媒するカルボニル化反応の触媒を使用してエステル化され、その後、硫黄触媒が蒸留によりアルキルグリコレートエステル化から除去され、アルキルグリコレートがその後グリコール酸に変換される、精製されたグリコール酸の生成を目的とする。
【0040】
グリコール酸の生成にいずれの方法が使用されても、グリコール酸は、その後、エチレングリコールに変換され得る。これは、任意の適切な手段によって達成することができる。しかしながら、一般的には、グリコール酸のアルカノール、例えばメタノールとのエステル化とその後のエチレングリコールへの水素化により達成される。
【0041】
グリコール酸のエステル化を行うための様々な提案がなされてきた。上流のプロセスが触媒として硫黄を含める場合、第一の工程は、一般的には、硫黄触媒の除去である。エステルを生成するための方法の一例は、米国特許第4140866に記載されている。この場合、ホルムアルデヒドの硫酸触媒化カルボニル化により調製されたグリコール酸は、メタノール等のアルカノールとのエステル化の前に、アルカリ金属水酸化物又は炭酸塩と接触することにより、硫酸から分離される。
【0042】
グリコール酸を生成するための方法が、エステル化工程がカルボニル化触媒の存在下で行われるようなGB1615762.0に記載されるものである場合、エステル化生成物は、グリコール酸に変換されるのではなく、水素化されてエチレングリコールが形成されてもよく、あるいは、GB1615762.0の方法により生成されるグリコール酸は、続いて水素化されてエチレングリコールが形成され得る。いずれにしても、下流の精製が始まる前に、エステル化のために持ち越された触媒は除去され得る。
【0043】
一般的に、エステルは、形成されると、水素化されてエチレングリコールが形成される。繰り返しになるが、反応のこの段階に関していくつかの提案があった。提案の大部分は、水素化のための触媒の選択に関連していた。一構成では、不均一触媒が使用され得る。提案されている不均一触媒は、銅と、マグネシウム、マンガン、ニッケル、鉄、コバルト、クロム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、カリウム、セシウム、亜鉛、カドミウム及び銀並びに米国特許第4283581号、同第4366333号、同第7709689号、国際公開第2012/024253号、米国特許第7538060号及び国際公開第2008/100389号に記載されるものの一又は複数との混合酸化物を含める。
【0044】
水素化は、均一触媒の存在下でも行われ得る。均一水素化システムの一例は米国特許第7709689号に記載されており、それは参照により本明細書に援用される。この方法では、触媒は、ルテニウム、ロジウム、鉄、オスミウム、又はパラジウム、及び有機ホスフィンを含む。この方法では、少なくとも1重量%の水が水素化中に存在し得る。
【0045】
均一触媒がグリコール酸及びグリコール酸誘導体の水素化に使用されるさらなる方法は、米国特許第7615671号に記載され、ここでは、ルテニウム触媒、三価リン化合物及びプロモーターが使用される。
【0046】
あるいは、エチレングリコールは、水素化によりグリコール酸から直接生成することができる。水素化は、気相水素化、固定床若しくはスラリーであり得る液相水素化、又は均一水素化であり得る。
【0047】
様々な方法によりエチレングリコールの生成が可能となるが、いくつかの最終用途に許容されるように形成された製品は、ポリエチレンテレフタレートの生成における使用等の他の用途に必要な高純度の仕様に達しない。
【0048】
中国国家規格GB/T 4649/2008 スーパーグレード仕様及びASTM E2470-09仕様を表1に詳述する。
【0049】
表1に詳述される紫外線透過率の要件は特に問題があり、先行技術の方法では、この要件を満たす製品は提供されない。いかなる理論にも縛られることを望むものではないが、紫外線透過率の測定は、グリコール酸エステルによるエチレングリコール製品の微量汚染に敏感である。
【0050】
エチレングリコール中の他の主要な不純物は、1,2-プロピレングリコール及び1,2-ブチレングリコールである。これらの不純物は、水素化プロセス中に低レベルの量で発生する。あいにく、それらは、エチレングリコールから蒸留により容易に分離することができない。上に詳述される規格で使用される分析技術は、存在するこれらの成分の量を定量化することができないため、それらは、別々に同定され、したがって存在しているとして同定されたエチレングリコールの量に含められる。しかしながら、それらの存在は、下流のプロセスで達成される生成物の量を減少させることになる。
【0051】
エチレングリコールの生成にいずれの方法が使用されても、生成物の精製に関連する問題に直面する。例えば、非水素化エステルがエチレングリコール流に繰り越される場合、これは、分離カラムに過剰な滞留時間又は濃度を生じさせることがあり、紫外線抑制剤として機能する化合物が形成されることによって、透明なプラスチックボトル等の形成における使用などのいくつかの最終用途に必要なUV仕様を満たすことができなくなることがある。加えて、紫外線抑制剤である化合物は水素化反応から回収された流れに存在してもよく、所望のエチレングリコールからこれらを分離することは困難であることがある。
【0052】
さらなる問題は、水素化反応から除去された生成物流中のジエチレングリコールの存在に関する。これもエチレングリコールから分離することは困難であることがある。さらにより問題なのは、エチレングリコールとジエチレングリコールとの間で変動性を有する化合物の分離である。そのような化合物の一つは、メトキシ酢酸等のアルコキシ酢酸のエチレングリコールエステルである。水素化又はそれ自体の分離中のいずれかに行われ得る潜在的な反応の数を考慮すると、分離が困難な他の成分が形成される可能性が高い。それらは少量でしか存在しないが、それらの存在は生成物の量を減少させるため、それらは分離されることが望ましい。
【0053】
問題のあるアルコキシ酢酸のエステルの除去に加えて、メトキシ酢酸等のアルコキシ酢酸の存在は、それらが密閉ボイラーであり、共沸混合物を形成し得るためにエチレングリコールからの分離が困難であるため、問題である。さらに、上に詳述する通り、エチレングリコールでエステル化し得る。
【0054】
上流のエステル化が存在している場合に存在してもよく、エチレングリコールで共沸混合物を形成し得、その分離が問題となる別の成分は、ジメチルジグリコレートである。同様の問題は、他のジアルキルジグリコレートについても言及され得る。これに関連して、ジアルキルジグリコレートはジグリコール酸のジアルキルエステルであることが理解されよう。同様に、ジメチルジグリコレートはジグリコール酸のジメチルエステルである。
【0055】
したがって、先行技術の方法に関連する問題の一又は複数を減少させる又は好ましくは解決する、いかなる方法で形成されたエチレングリコールを精製するための方法を提供することが望ましい。必要とされる生成物の基準を満たし、好ましくはそれを超えるエチレングリコール生成物を得ることを可能にする方法を提供することが特に望ましい。
【発明の概要】
【0056】
したがって、本発明の第1の態様によれば、
(a)粗エチレングリコール流を、粗流内の軽質化合物がオーバーヘッドで分離され、且つ軽質物が除去された粗エチレングリコール流が第1の蒸留カラムの底部から又はその近くから除去される第1の蒸留カラムに通すこと;
(b)第1の蒸留カラムの底部から又はその近くから除去された軽質物が除去された粗エチレングリコール流を、精製されたエチレングリコールが分離され、軽質物が除去された粗エチレングリコール流に存在する重質化合物から回収される第2の蒸留カラムに通すこと;
(c)ジエチレングリコール及び重質化合物と一緒に残留エチレングリコールを含む第2の蒸留カラムの底部から又はその近くから流れを除去し、前記流れを、重質化合物がエチレングリコール及びジエチレングリコールを含む流れから分離される第3の蒸留カラムに通すこと;
(d)エチレングリコール及びジエチレングリコールを含む流れを第3の蒸留カラムから除去し、前記流れを、エチレングリコールがジエチレングリコールから分離される第4の蒸留カラムに通すこと
を含む、粗エチレングリコール流からエチレングリコールを精製するための方法が提供される。
【0057】
エチレングリコールがグリコール酸のエステル化及びその後の水素化により形成されている場合、粗エチレングリコール流は、一般的に、工程(a)で粗流が第1の蒸留カラムに通される前に、水及びアルカノールが除去されるアルカノール蒸留カラムで最初に処理される。
【0058】
本発明の方法により、先行技術の方法に関連する問題の少なくともいくつかが対処され、好ましくは克服される。
【0059】
アルカノール蒸留カラムは、任意の適切な構成であり得る。通常、該カラムは充填カラムである。それは、水及びアルカノールがエチレングリコール流から分離されることを可能にすることを条件として、任意の適切な条件で操作され得る。通常、大気圧未満の圧力で操作される。一構成では、該カラムは、約20kPaから約40kPa、又は約30kPaのカラム頂部の圧力で操作され得る。アルカノール蒸留カラムは、任意の適切な圧力で操作されてもよく、適切な圧力とは、約155℃から約175℃又は約165℃のものを含める。
【0060】
エチレングリコールから分離された水及びアルカノールは、上流の反応で再循環され得る。上流の反応がエステル化を含める場合、再循環はエステル化反応器になされ得る。水は、アルカノールがエステル化反応器へ戻る前に、アルカノールから分離され得る。エステル化がメタノールを用いて行われる場合、エステル化反応器に再循環されるものは、メタノール、又はメタノール及び水である。
【0061】
アルカノール蒸留カラムに通された流れに存在する任意の2-アルコキシエタノールは、メタノール等のアルカノール及び/又は水流と共にエチレングリコール流から除去され、それにより、粗エチレングリコール流に存在する任意のアルキルグリコレートから分離される。これは、本発明の特別な利点である。アルキルグリコレートは、エチレングリコール流で、第1の蒸留カラムに通される。エステル化がメタノールで行われている場合、水/2-メトキシエタノールは、粗エチレングリコール流に存在する任意のメチルグリコレートから分離され、水/2-メトキシエタノールは、その流れで、第1の蒸留カラムに通される。
【0062】
第1の蒸留カラムは、任意の適切な構成であり得る。通常、該カラムは充填カラムである。それは、流れに存在する軽質化合物がエチレングリコール流を含む流れから分離されることを可能にすることを条件として、任意の適切な条件で操作され得る。これに関連して、「軽質」成分は、エチレングリコールよりも低い沸点を有し、そのためエチレングリコール流から分離され、カラムの頂部から又はその近くから除去されるものである。
【0063】
通常、第1の蒸留カラムは、大気圧未満の圧力で操作され得る。一構成では、該カラムは、約10kPaから約20kPa、又は約15kPaのカラム頂部の圧力で操作され得る。カラム底部の温度は、約140℃から約160℃、又は約145℃から約150℃又は約147℃である。
【0064】
この第1の蒸留カラムでは、軽質物はエチレングリコールから分離される。エチレングリコールがエステル化とその後の水素化により形成されている場合、軽質物は、アルキルグリコレートと2-ヒドロキシアルキル-1,3-ジオキソランの一方又は両方を含み得る。メタノールがエステル化プロセスに使用されている場合、軽質物は、メチルグリコレートと2-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソランの一方又は両方を含み得る。軽質物は、例えば、1,2-プロピレングリコール及び/又は1,2-ブチレングリコールも含め得る。これらの軽質中間体は、カラムの頂部から又はその近くから除去される。該方法の特別な利点は、ジオキソラン等の軽質物を引く圧力で除去する能力である。アルキルグリコレートを形成するのに使用されるアルキル種が十分に大きい場合、アルキルグリコレートは、除去される軽質物流の一部ではない。
【0065】
軽質成分の完全な分離を確実にするために、エチレングリコールの一部はオーバーヘッドを通すことを可能にされ得る。除去された軽質成分流は、上流のプロセスに再循環されてもよい。一構成では、水素化反応に再利用され得る。除去された軽質物流は再循環されるため、その流れで除去された任意のエチレングリコールは全体のプロセスから失われず、よってシステムの経済は妥協されない。
【0066】
第1の蒸留カラムの底部から又はその近くから回収された第1の蒸留カラムに供給された流れよりも高いエチレングリコールの濃度を有する粗エチレングリコール流は、第2の蒸留カラムに通される。
【0067】
第2の蒸留カラムは、任意の適切な構成であり得る。通常、該カラムは充填カラムである。それは、エチレングリコールがジエチレングリコール及びエチレングリコールグリコレートを含める重質成分から分離されることを可能にすることを条件として、任意の適切な条件で操作され得る。「重質」成分は、エチレングリコールよりも高い沸点を有するものであることが理解される。
【0068】
通常、第2の蒸留カラムは、大気圧未満の圧力で操作され得る。一構成では、該カラムは、約6kPaから約10kPa、又は約8kPaのカラム頂部の圧力で操作され得る。カラム底部の温度は、約140℃から約160℃、又は約145℃から約150℃であり得る、カラム底部の圧力は、約8kPaから約11kPa、又は約9kPaから約10kPaであり得る。
【0069】
エチレングリコールは、一般的に、サイドドローとして回収される。サイドドローは、任意の適切な点から得られるが、通常、第1の蒸留カラムからの流れが第2の蒸留カラムに供給された点より上の点で除去される。
【0070】
第2の蒸留カラムの操作性について妥協することなく重質成分からエチレングリコールをきれいに分離することを容易にするため、少量のエチレングリコールは、ジエチレングリコール及びエステル化合物を含む第2の蒸留カラムの底部から又はその近くから回収された流れに入り込むことを可能にされる。
【0071】
任意の適切な量のエチレングリコールは、ジエチレングリコール及びエステル化合物を含む第2の蒸留カラムの底部から又はその近くから回収された流れに入り込むことを可能にされ得るが、それは少量である。
【0072】
いくらかのエチレングリコールを含む第2の蒸留カラムからの底部流、ジエチレングリコール及びエステル化合物は、第3の蒸留カラムに通される。一構成では、約2%から約5%、又は約3%から約4%のモノエチレングリコールは、カラム底部に入り込むことを可能にされ得る。
【0073】
第3の蒸留カラムは、任意の適切な構成であり得る。通常、該カラムは充填カラムである。それは、エチレングリコール重質エステル化合物がジエチレングリコール及び残存するエチレングリコールから分離されることを可能にすることを条件として、任意の適切な条件で操作され得る。
【0074】
通常、第3の蒸留カラムは、大気圧未満の圧力で操作され得る。一構成では、該カラムは、カラム頂部で約2kPaから約8kPa、又は約3kPaから約6kPa、又は約4kPaで操作され得る。
【0075】
重質エステル化合物は、第3の蒸留カラムの底部から又はその近くから除去される。この流れで除去されたエステル化合物は、エチレングリコールグリコレート、アルキルグリコレートのエステル化生成物、通常のモノエチレングリコレート、及びグリコール酸の一又は複数であり得る。好ましい構成では、第3の蒸留カラムは、エチレングリコール及びジエチレングリコールを含むことになるカラムの頂部から又はその近くから除去された流れが本質的にエステル化合物を含まないように操作される。
【0076】
エステル化合物又は任意の他の重質副生成物を含むことになる第3の蒸留カラムの底部から又はその近くから回収された流れは、さらなるエチレングリコールが形成され、よって、重質生成物の除去がシステムの生成物の損失を表すことにならない上流の水素化反応器に再循環することができる。しかしながら、パージは、通常、再循環流から行われ、システムにおける重質物の蓄積を防止する。
【0077】
エチレングリコール及びジエチレングリコールを含む流れは、第4の蒸留カラムに通される。第4の蒸留カラムは、任意の適切な構成であり得る。それは、通常、充填カラムである。それは、エチレングリコールがジエチレングリコールから分離されることを可能にすることを条件として、任意の適切な条件で操作され得る。
【0078】
通常、第4の蒸留カラムは、大気圧未満の圧力で操作され得る。一構成では、該カラムは、カラム頂部で約2kPaから約4kPa、又は約3kPaで操作され得る。約150℃から約175℃の底部温度が適切であり得る。
【0079】
それ自体が有用な生成物であるジエチレングリコールは、第4の蒸留カラムの底部から又はその近くから除去される。第2の蒸留カラムから入り込むことが可能にされたエチレングリコールは、第4の蒸留カラムから又はその近くから回収された流れからの第4の蒸留カラムから除去される。それは、回収されてもよく、又は第2の分離カラムに戻されてもよい。
【0080】
本発明の一連の蒸留カラムを、特に真空で操作されるときに使用することにより、所望の分離が行われ、高純度のエチレングリコールが生成されることが可能になる。また、有用な副生成物であるジエチレングリコールが分離されることも可能になる。このプロセスは、先行技術のプロセスでは問題であった分離中に発生するエステル交換反応のリスクを克服することが可能になる。
【0081】
代替的な構成では、第3の蒸留カラムは、オーバーヘッドのジエチレングリコールよりも軽いモノアルキレングリコレートと他の成分を分離するよう構成され得る。この構成では、回収された流れは、モノエチレングリコールを回収できるように第2の蒸留カラムに再循環され得る。
【0082】
モノエチレングリコールとジエチレングリコールとの間で変動性を有する成分は、第2のカラムと第3のカラムとの間のループに蓄積してもよく、よって、パージが行われてもよい。これらの成分は、メトキシ酢酸及びエチレングリコール-メトキシアセテートであり得る。パージは、水素化に戻され得る。
【0083】
この構成では、第4のカラムは、カラム底部における重質エステルの供給より上のサイドドローにおいてジエチレングリコールを分離する。この構成では、底部流は、水素化に再循環されてもよく、パージは、水素化されていない任意の重質物の蓄積を制御するために行われている。第4のカラムからのオーバーヘッド流は、ジエチレングリコールを含有し、モノエチレングリコール及び水等の任意の軽質物は、このカラムでの反応から形成される。オーバーヘッド流は、第2のカラムに再循環されて、モノエチレングリコールが回収され、この再循環ループにおける成分の潜在的な蓄積を制御するための水素化へのパージを伴う。
【0084】
本発明の方法を用いて、高純度のモノエチレングリコールを得ることができる。99.9%以上の純度が達成され得る。
【0085】
本方法を、実施例によって、添付図を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】本発明の一構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
図面は線図であることと、還流ドラム、ポンプ、真空ポンプ、圧縮器、ガス再循環圧縮器、温度センサ、圧力センサ、圧力安全バルブ、コントロールバルブ、流量制御器、レベル制御器等の設備のさらなる品目が商業プラントで必要とされ得ることとが、当業者により理解される。そのような設備の補助物品の提供は、本発明の一部を形成せず、従来の化学工学の慣例に従っている。
【0088】
該方法は、エチレングリコールがグリコール酸のメタノールとのエステル化とその後の水素化により形成されている方法に関連して検討される。しかしながら、該方法は別の方法により形成されたエチレングリコールの精製に同等に適切であることが理解されよう。
【0089】
エステル化及び水素化が存在する場合、粗エチレングリコール流は、ライン1でアルカノール蒸留カラム2に通され、ここで、メタノール等のアルカノール及び水は、ライン3でアルカノール蒸留カラムの頂部から又はその近くから除去される。よって、上流プロセスに再循環され得る。
【0090】
残存する粗エチレングリコール流は、アルカノール蒸留カラムの底部から又はその近くから除去され、ライン4で第1の蒸留カラム5に通される。アルカノール蒸留カラムに要件が存在しない場合、例えば、エチレングリコールがエステル化とその後の水素化を必要とする方法以外の方法により提供されている場合、エチレングリコールは、第1の蒸留カラム5に直接通される。
【0091】
エチレングリコールから分離される軽質物は、ライン6で、第1の蒸留カラム5の頂部から又はその近くから除去される。いくらかのエチレングリコールは、この流れに入り込み、完全な分離を確実することが可能にされ得る。
【0092】
軽質物が減少したエチレングリコール流は、蒸留カラム5の底部から又はその近くから除去され、ライン7で第2の蒸留カラム8に通され、ここでエチレングリコールは重質成分から分離される。精製されたエチレングリコールは、第2の蒸留カラム8から回収される。これは、通常、サイドドローとしてライン9で回収される。オーバーヘッド流は除去され得る。これは、モノエチレングリコール及び少量の水と他の軽質物を含有してもよく、これはカラムでの反応から形成される。このオーバーヘッド流は、存在する場合、アルカノール分離カラムに通されて水と分離されてもよく、モノエチレングリコールが回収され得る。
【0093】
流れ10は、ジエチレングリコールと一緒に残留エチレングリコールを含む第2の蒸留カラム8の底部から又はその近くから回収され、重質化合物は第3の蒸留カラム11に通される。第3の蒸留カラム11では、エステル等の重質化合物は分離され、ライン12で、カラムの底部から又はその近くから除去される。エチレングリコール及びジエチレングリコールは、ライン13で、第3の蒸留カラム11の頂部から又はその近くから除去され、第4の蒸留カラム14に通され、ここでエチレングリコールとジエチレングリコールは分離される。エチレングリコールは、ライン15で、第4の蒸留カラム14の頂部から又はその近くから回収される。それは、直接回収されてもよく、又は第2の蒸留カラムに再循環されてもよい。ジエチレングリコールは、ライン16で、第4の蒸留カラム14の底部から又はその近くから回収される。
【0094】
本発明を、以下の実施例を参照して、さらに説明する。
【実施例
【0095】
実施例1
一列につながった三つの一連の直径1インチのパイロットカラムを使用して、本発明の方法を調べた。ホルムアルデヒドのヒドロカルボニル化、生成物グリコール酸のメタノールでのエステル化、及びグリコール酸エステルの均質水素化を含む一連の反応により、粗モノエチレングリコール流を形成する。
【0096】
この粗流を低ボイラーカラムに供給し、頂部流及び底部流を回収する。その後、底部流を粗モノエチレングリコール流に通し、頂部流及び底部流を回収する。その後、モノエチレングリコールがサイドドローとして回収されるモノエチレン生成物カラムに底部流を通す。
【0097】
操作条件及び結果は、表1に記載する。
【0098】
三つのカラムの流れに見られる典型的な濃度を表2に記載する。
図1