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特許7105815真菌トリコデルマ・リーセイにおいて有性生殖を回復させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】真菌トリコデルマ・リーセイにおいて有性生殖を回復させるための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/14 20060101AFI20220715BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20220715BHJP
   C12R 1/885 20060101ALN20220715BHJP
【FI】
C12N1/14 A ZNA
C12N15/31
C12R1:885
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019572063
(86)(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 FR2018051721
(87)【国際公開番号】W WO2019008303
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】1756469
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515060517
【氏名又は名称】イエフペ・エネルジェ・ヌーヴェル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ビダール-ミシュロ
(72)【発明者】
【氏名】レティシア・チャン・ホ・トン
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/054330(WO,A1)
【文献】PNAS,2009年,vol.106,no.33 ,p.13909-13914
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-1/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
- a)適切な培地における、MAT交配型の遺伝子座がノックアウトされているトリコデルマ・リーセイの雌性稔性株であるΔMATヘルパー株のインキュベーション、
- b)前記ΔMATヘルパー株に対する、第1の交配型のトリコデルマ・リーセイの第1の雌性不稔株の分生子による第1の潅水、
- c)適切な培地における、工程b)で得られた前記ΔMATヘルパー株のインキュベート、
- d)工程c)で得られた前記ΔMATヘルパー株に対する、第2の交配型のトリコデルマ・リーセイの第2の雌性不稔株の分生子による第2の潅水、及び
- e)適切な培地における、子座が現れるまでの、工程d)で得られた前記ΔMATヘルパー株のインキュベート
を含む、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【請求項2】
第1の交配型の前記第1のトリコデルマ・リーセイ株がMAT1-1又はMAT1-2である、請求項1に記載のトリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【請求項3】
第2の交配型の前記第2のトリコデルマ・リーセイ株がMAT1-1又はMAT1-2である、請求項1に記載のトリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【請求項4】
前記トリコデルマ・リーセイ株がQM6a株又は前記QM6a株に由来する株である、請求項1から3のいずれか一項に記載のトリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【請求項5】
前記ΔMATヘルパー株を適切な培地においてインキュベートする工程a)が、少なくとも2日間継続される、請求項1から4のいずれか一項に記載のトリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【請求項6】
前記ΔMATヘルパー株を適切な培地においてインキュベートする工程a)が、暗所でのインキュベーションである、請求項1から5のいずれか一項に記載のトリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【請求項7】
第1の交配型の前記第1のトリコデルマ・リーセイ株の前記分生子、及び/又は第2の交配型の前記第2のトリコデルマ・リーセイ株の前記分生子が、少なくとも分生子105個/mlの濃度で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載のトリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【請求項8】
工程b)と、工程b)で得られた前記ΔMATヘルパー株を適切な培地においてインキュベートする工程とが、少なくとも2日間継続される、請求項1から7のいずれか一項に記載のトリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【請求項9】
工程b)と、工程b)で得られた前記ΔMATヘルパー株を適切な培地においてインキュベートする工程とが、交互の明期及び暗期で行われる、請求項1から8のいずれか一項に記載のトリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【請求項10】
工程d)と、工d)で得られた前記ΔMATヘルパー株を適切な培地においてインキュベートする工程とが、少なくとも5日間継続される、請求項1から9のいずれか一項に記載のトリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【請求項11】
工程d)と、工d)で得られた前記ΔMATヘルパー株を適切な培地においてインキュベートする工程とが、交互の明期及び暗期で行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載のトリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【請求項12】
更に、子座が現れた後に、前記子座を増幅させる工程を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のトリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【請求項13】
更に、トリコデルマ・リーセイ株を得る工程を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のトリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真菌トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)の2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリコデルマ・リーセイ(T. reesei)は、第2次世界大戦中に南太平洋で発見された、トリコデルマ(Trichoderma)属のセルロース分解性の糸状真菌の種である。この真菌は、大量のセルロース分解系酵素(セルラーゼ及びヘミセルラーゼ)を分泌する能力を有し、現在、第2世代バイオ燃料生産サイクルにおいて主に使用されている。実際、この真菌によって生産される酵素は、植物バイオマス物質をバイオエタノール等の産業上有用なバイオ製品に変換するために特に有用である。
【0003】
第2世代バイオ燃料(非食糧資源に由来する)は、現在、第1世代バイオ燃料(食糧資源に由来する)が食糧の生産と競合することを理由に限られた量でしか生産され得ないことを考慮して、特に着目されている。
【0004】
第2世代バイオ燃料を生産するための方法は、以下の4つの主な工程を含む:リグノセルロースバイオマスの前処理、リグノセルロースバイオマスの酵素による加水分解、発酵、及び蒸留。
【0005】
第2世代バイオ燃料の生産の全ての工程が、生産を増大させるために最適化され得る、及び最適化されなくてはならないものの、酵素による加水分解工程は、特別な重要性を有する。この加水分解工程は、糸状真菌トリコデルマ・リーセイによって生産されるセルラーゼ型酵素を伴う。
【0006】
より一般には、トリコデルマ・リーセイは、産業目的の相同タンパク質又は異種タンパク質を生産するためのプラットフォーム株として使用され得る。トリコデルマ・リーセイの性能品質を最適化するためには、目的のタンパク質を生産したトリコデルマ・リーセイの株を改良することが必須である。
【0007】
加水分解のコストを下げるために構想される改良の方法の中では、例えば、トリコデルマ・リーセイの遺伝子工学が解決方法である。これによって、セルラーゼ生産糸状真菌の分泌性能品質と酵素の特性とを改良すること、及び産業的条件下でこの株の安定性を制御することが可能となる。
【0008】
突然変異導入は、遺伝子療法において一般に使用される技術である。これは、意図的に突然変異をDNAに導入して、遺伝子組み換えされた遺伝子を生じさせることを目的としている。これによって、産業上の観点から有利な特徴を有する株を生じさせることが可能となり得る。突然変異をトリコデルマ・リーセイに導入するためには、2つの突然変異導入方法、すなわち、ランダム突然変異導入及び部位特異的突然変異導入が一般に使用される。
【0009】
ランダム突然変異導入は、DNAのいずれかの箇所で、標的化されていない突然変異を誘発することで構成される。これらの突然変異は、標的生物を突然変異誘発性の化学物質又は放射線照射に曝露することによって生じる。突然変異が天然の現象であることを考えると、ランダム突然変異導入は、この天然のプロセスの促進剤であると考えられ、そしてそれによって生じる生物は天然のものであり遺伝子組み換え生物(GMO)ではないと考えられる。これらは、したがって、トレーサビリティの義務を課されない。しかし、この方法は、目的の特徴をもたらす突然変異に加えて、蓄積することによって、突然変異した生物の不安定性、健康不良、又は更には死亡をもたらす、「付帯的な」突然変異と呼ばれる多くの望ましくない突然変異を生じさせる。
【0010】
部位特異的突然変異導入によって、同定された突然変異を正確な遺伝子に導入することが可能となる。部位特異的突然変異導入を行うために、突然変異を含む目的のDNAを合成し、次いで、突然変異される細胞に導入し、この細胞において、DNA修復メカニズムによってゲノム内への前記DNAの組み込みが管理される。選択マーカーの使用によって、突然変異を組み込まれていない細胞に対して、突然変異を組み込まれた細胞を同定することが可能となる。しかし、この突然変異導入を行われた生物はGMOであると考えられ(外来DNAの導入が理由で)、したがって、トレーサビリティの義務を課される。
【0011】
第2世代バイオ燃料を生産するためにトリコデルマ・リーセイを使用するケースでは、トリコデルマ・リーセイへの突然変異(ランダム又は部位特異的)の導入を介する、加水分解工程における改良は満足なものではなく、それは、これがもたらす望ましくない突然変異の蓄積、又は外来DNAの導入が理由である。したがって、加水分解工程を改良する新規な方法が必要とされている。
【0012】
本発明者らは、したがって、トリコデルマ・リーセイの有性生殖を使用する、トリコデルマ・リーセイの性能品質を改良するための新規な方法を開発した。現在のところ、トリコデルマ・リーセイの有性生殖は、改良のためのツールとしては未だかつて使用されておらず、それは、トリコデルマ・リーセイが有性生殖を行うことができないと常に考えられてきたためである。それでも、トリコデルマ・リーセイにおける雌雄性の発見(Seidlら、2009)が、株の遺伝的改良のための新たな可能性の扉を開いた。有性生殖によって、とりわけ、遺伝的多様性を生じさせること、有利な突然変異を保存すること、及びゲノムから「付帯的な」突然変異を取り除くことが可能となる。
【0013】
トリコデルマ・リーセイは、自家不和合性と言われる、すなわち、適合する交配型(MAT1-1及びMAT1-2)の個体間でのみ有性生殖が可能である真菌である。更に、トリコデルマ・リーセイは雌雄同体であり、すなわち、1つの株が雄性器官及び雌性器官の両方を生産する(図1)。
【0014】
トリコデルマ・リーセイの2つの稔性の且つ適合する天然単離体の間での有性生殖は、後代を含有する子座を生じさせる(図2A)。
【0015】
産業株で有性生殖を試験するために、株QM6a MAT1-1を、遺伝子工学によって構築した(Seidlら、2009)。適合するQM6a株間での有性生殖では子座を得ることはできず、それは、これらの株が雌性不稔株であるためである(図2B)(Seidlら、2009)。
【0016】
現在知られている全てのトリコデルマ・リーセイ産業株は、天然株QM6aから生成された。天然株QM6aがMAT1-2交配型のものであることを考えれば、全てのトリコデルマ・リーセイ産業株は現在、MAT1-2交配型のものであり、雌性不稔であるが雄性稔性である。
【0017】
有性生殖は、改良のための迅速且つ効果的なツールであり得るが、これが産業株間で起こり得なければ、その有用性は依然として限られたままである。科学的研究が、なぜトリコデルマ・リーセイ産業株が雌性不稔であるか、及びいかにしてこれを治すかを理解するための試みを行ってきた。これらの調査研究は、雌性不稔を決定するものとしてidc1遺伝子を同定することを可能とし、並びに、欠陥遺伝子を機能遺伝子で置き換えることによってQM6a株の雌性稔性を再び確立すること及び有性生殖を行うことが可能となることを示す(Kubicekら、2014(WO2014/102241); Linkeら、2015)。
【0018】
それでも、この戦略は大きな欠点を有する。実際、この戦略は、機能的遺伝子を生殖対象の産業株の各々に導入して、産業株において雌性稔性を回復させ得るようにすることを要する。第2に、この戦略は、産業株が継代した突然変異導入に由来するという事実、及び雌性稔性に重要な他の遺伝子が組み変わっている可能性があるという事実を考慮していない。したがって、機能的idc1遺伝子の供給は、雌性稔性を回復させるため、ひいては、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるためには十分ではない。したがって、QM6a株において雌性稔性を回復させ得ることは、前記QM6a株から生成された産業株において雌性稔性を回復することが可能であることを意味するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】WO2014/102241
【非特許文献】
【0020】
【文献】Jamet-Vierny, C.、Debuchy, R.、Prigent, M.、及びSilar, P.(2007). IDC1, a pezizomycotina-specific gene that belongs to the PaMpk1 MAP kinase transduction cascade of the filamentous fungus Podospora anserina. Fungal genetics and biology FG & B 44, 1219-1230
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株、特にQM6a株、又はQM6a株に由来する雌性不稔産業株、又はトリコデルマ・リーセイのあらゆる他の雌性不稔株の間での有性生殖を回復させることを可能にする方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、したがって、機能的バージョンのidc1遺伝子を雌性不稔株に導入することがなく、つまり、機能的バージョンのidc1遺伝子の存在が、有性生殖を回復させるために十分であるか否かを確認する必要がなく、また、欠陥を有し得る他の遺伝子を同定し置き換える必要もない、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための戦略を開発した。本発明者らは、したがって、導入が簡単且つ効率的な、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための戦略を開発した。
【0023】
本発明は、実際、ΔMATヘルパー株(すなわち、交配型遺伝子座であるMAT1-1又はMAT1-2がノックアウトされているトリコデルマ・リーセイの雌性稔性株)を、第1の交配型のトリコデルマ・リーセイの雌性不稔株の分生子、次いで第2の交配型のトリコデルマ・リーセイの雌性不稔株の分生子による連続的な潅水と組み合わせて使用することによって、これら2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させることが可能となるという、本発明者らの結果に基づくものである。
【0024】
ヘルパー株の使用は既に採用されているが、種トリコデルマ・リーセイでは採用されていない(Silar、P.(2014))。更に具体的には、Jamet-Viernyらは、ポドスポラ・アンセリナ(Podospora anserina)株の生殖の文脈において、子座を成長させるために必要なIDC1タンパク質の提供を可能にするヘルパー株の使用を記載している。この方法は、トリカリオンの生産に基づくものであるが、ポドスポラ・アンセリナ株の稔性の回復を可能にする。しかし、この方法はトリコデルマ・リーセイ株には使用され得ないことに留意すべきであり、それは、トリカリオン方法の単独使用では、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させることは不可能であるためである(実施例2aを参照)。
【0025】
本発明者らは、それにもかかわらず、驚くべきことに、トリカリオン方法を、連続潅水技術(すなわち、第1の交配型のトリコデルマ・リーセイの雌性不稔株の分生子、次いで第2の交配型のトリコデルマ・リーセイの雌性不稔株の分生子による潅水)と組み合わせて使用すると、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖の回復を可能とすることを示した。ΔMATヘルパー株と組み合わせて使用されるこの連続的な潅水によって、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させることが可能となり、子座を繰り返し得ることが可能となる(実施例2iを参照)。
【0026】
第1の態様では、本発明は、したがって、以下の工程:
- 適切な培地における、MAT交配型の遺伝子座がノックアウトされているトリコデルマ・リーセイの雌性稔性株であるΔMATヘルパー株のインキュベーション、
- 前記ΔMATヘルパー株に対する、第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子による第1の潅水、
- 前記ΔMATヘルパー株、及び第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子に対する、第2の交配型の第2のトリコデルマ・リーセイ株の分生子による第2の潅水
を含む、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法に関する。
【0027】
本発明に従った「有性生殖の回復」は、ΔMAT株を用いて、第1の交配型のトリコデルマ・リーセイの第1の雌性不稔株の分生子及び第2の交配型のトリコデルマ・リーセイの第2の雌性不稔株の分生子から子座を得ることを意味することを理解されたい。
【0028】
本発明に従った「トリコデルマ・リーセイの雌性不稔株」は、雌性不稔且つ雄性稔性の全てのトリコデルマ・リーセイ株を意味することを理解されたい。これらは、雌性稔性が回復され得、本発明に従った有性生殖を回復させるための方法において使用することができる、トリコデルマ・リーセイ株である。このような株は、例えば、株QM6a、NG14、RUTC30、QM9414、CL847、QM9136、QM9978、QM9979、PC3-7、TU-6等である。換言すると、これは、QM6a株から生産され且つ雌性不稔である全ての株を意味するが、これらの株はまた、他の地理的隔離体に由来し且つ雌性不稔且つ雄性稔性のトリコデルマ・リーセイ株でもあり得る。
【0029】
本発明に従った「適切な培地におけるインキュベーション」は、真菌の成長に適した培養培地におけるインキュベーションを意味することを理解されたい。このような培地は、例えば、PDA(ジャガイモデキストロース寒天)培地、SDA(サブローデキストロース寒天)培地、SPDA(サツマイモデキストロース寒天)培地、MEA(麦芽抽出寒天)培地、オートミール寒天培地、コーンミール寒天培地であり、好ましくは完全培地である。本発明に従った完全培地は、生物の成長に厳密に必要な化学元素を含む培地である最少培地とは対照的に、最少培地の成分に加えて、アミノ酸、ビタミン、塩基等の成長に必要な最終代謝産物を含有する培地である。
【0030】
本発明に従った「ΔMATヘルパー株」は、MAT1-1又はMAT1-2交配型の遺伝子座がノックアウトされているトリコデルマ・リーセイ株を意味することを理解されたい。前記ΔMATヘルパー株は、当業者に周知の、又は例えば実施例1において記載される方法による、遺伝子座ノックアウト技術のいずれかによって得ることができる。ΔMATヘルパー株を得る元となる株は、雌性稔性ではなくてはならない。トリコデルマ・リーセイ種に属するものの、このヘルパー株は、本発明に従った「トリコデルマ・リーセイの雌性不稔株」の定義には含まれず、それは、MAT1-1又はMAT1-2交配型の遺伝子座がノックアウトされていることが理由である。このヘルパー株は核融合プロセスには関与せず、それは、このヘルパー株が、前記プロセスを調節する交配型の遺伝子座をノックアウトされているためである。ヘルパー株のメカニズムは未知であるが、それが機能する方法に関する仮説は、以下の通りである:
- 2つの雌性不稔株間での有性生殖のケースでは、核の融合はあり得るが、idc1遺伝子/IDC1タンパク質が欠損しているため、核融合及び後代の成長が生じる場所である子座の構築及び成長のための菌糸の動員はない。
- 2つの雌性不稔株間での生殖、及びヘルパー株の存在下のケースでは(図3)、親の核の融合があり得る。このケースでは、ヘルパー株によるidc1遺伝子の発現、ひいては、IDC1タンパク質の合成がある。核の融合及びIDC1タンパク質の存在があることを考慮すると、核融合及び後代の成長が起こり得るであろう場所である子座の構築及び成長のために菌糸が動員され得る。雌性組織はΔMAT株によって提供され、その一方、接合子組織は雌性不稔株によって提供される。
【0031】
本発明に従った用語「分生子」は、真菌(トリコデルマ・リーセイ等)の無性的な増殖の結果生じた胞子を意味することを理解されたい。MAT1-1交配型の又はMAT1-2交配型のトリコデルマ・リーセイ株の分生子は、同一の条件に従って得られる。例えば、第1の交配型の又は第2の交配型の本発明に従った分生子は、第1の交配型のトリコデルマ・リーセイ株又は第2の交配型のトリコデルマ・リーセイ株をそれぞれ、分生子が現れるまで、適切な培地(PDA等)において培養及びインキュベーションすることによって得ることができる。好ましくは、株は、明所で、およそ24~30℃の温度で、分生子が現れるまでインキュベートされる。分生子は次いで、培養皿を蒸留水/滅菌水ですすぐことによって採集することができる。本発明に従った用語「第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子」は、本発明に従った有性生殖を回復させるための方法において使用される2つのトリコデルマ・リーセイ株のうち一方の分生子を意味することを理解されたい。本発明に従った用語「第2の交配型の第2のトリコデルマ・リーセイ株の分生子」は、第1の株と適合するトリコデルマ・リーセイ株の分生子を意味することを理解されたい。
【0032】
本発明に従うと、第1のトリコデルマ・リーセイ株の交配型は、MAT1-1又はMAT1-2であり、特にMAT1-1である。
【0033】
本発明に従うと、第2のトリコデルマ・リーセイ株の交配型は、MAT1-1又はMAT1-2であり、特にMAT1-2である。
【0034】
用語「MAT1-1」又は「MAT1-2」は、真菌の交配型の標示を指す。これらは、2つの適合する交配型である。トリコデルマ・リーセイが、自家不和合性と言われる真菌であることを考えると、第1のトリコデルマ・リーセイ株の交配型がMAT1-1であれば、第2のトリコデルマ・リーセイ株の交配型は必然的にMAT1-2である。逆に、第1のトリコデルマ・リーセイ株の交配型がMAT1-2であれば、第2のトリコデルマ・リーセイ株の交配型は必然的にMAT1-1である。本発明に従った好ましい一実施形態では、第1のトリコデルマ・リーセイ株の交配型はMAT1-1であり、第2のトリコデルマ・リーセイ株の交配型はMAT1-2である。
【0035】
本発明に従った有性生殖を回復させるための方法において使用される第1のトリコデルマ・リーセイ株及び第2のトリコデルマ・リーセイ株は、交配型が適合するならば、同一の株であっても異なる株であってもよい。例えば、株が同一である場合、第1の株はQM6a MAT1-1株であり得、第2の株はQM6a MAT1-2株であり得る。逆に、株が異なる場合、第1の株はNG14 MAT1-1株であり得、第2の株はRUTC30 MAT1-2株であり得る。
【0036】
本発明に従うと、トリコデルマ・リーセイ株は、QM6a株等の任意の雌性不稔株、又はQM6a株に由来する株である。したがって、本発明の一実施形態では、第1のトリコデルマ・リーセイ株はQM6a MAT1-1又は由来株であり、第2のトリコデルマ・リーセイ株はQM6a MAT1-2又は由来株である。本発明の別の実施形態では、第1のトリコデルマ・リーセイ株はQM6a MAT1-2又は由来株であり、第2のトリコデルマ・リーセイ株はQM6a MAT1-1又は由来株である。本発明に従った好ましい一実施形態では、トリコデルマ・リーセイ株はQM6a MAT1-1又は由来株であり、第2のトリコデルマ・リーセイ株はQM6a MAT1-2又は由来株である。好ましくは、QM6a MAT1-2株は、参照番号ATCC(登録商標)13613で寄託された株を指す。MAT1-1雌性不稔株(QM6a MAT1-1等)は、(i)MAT1-2遺伝子座をMAT1-1遺伝子座で置き換えることによって(例えば、論文Linke、R.ら、(2015)において記載されている方法に従って)、(ii)交配することによって(例えば、QM6a MAT1-2株を、MAT1-1交配型の天然単離体と交配させる。得られた子孫の中でも、雌性稔性のMAT1-1交配型の個体を、例えばQM6a MAT1-2株と戻し交配することができる。このプロセスは、少なくとも7回繰り返される。子孫をQM6a MAT1-2親と7回連続して系統的に戻し交配することによって、MAT1-1となる交配型を除いて、QM6a MAT1-2株の遺伝的独自性と同一の遺伝的独自性を有する最終的な子孫を得ることが可能となる。これが戻し交配である。最終的な子孫は、MAT1-1交配型のものであり、雌性不稔である。戻し交配の例は、国際出願WO2014/102241で示されている)得ることができる。しかし、これらの戻し交配の各工程で、MAT1-1又はMAT1-2不稔性株を得、本方法で使用することができる。本発明に従った用語「QM6a株に由来する株」は、QM6a天然単離体から得られる全ての株を意味することを理解されたい。これは、特に、現在のところ既知の全てのトリコデルマ・リーセイ産業株、又は全てのトリコデルマ・リーセイ雌性不稔株を含む。
【0037】
本発明に従った用語「潅水」は、第1の交配型の分生子(例えば、107から108個のMAT1-1分生子)を含有する溶液を注ぐこと、又は第2の交配型の分生子(例えば、107から108個のMAT1-2分生子)を含有する溶液を注ぐことを意味するものである。本発明の好ましい一実施形態に従うと、潅水は、第1の及び/又は第2の交配型の分生子でのみ行われる(例えば、細胞抽出物の添加は伴わない)。したがって、本発明の好ましい一実施形態では、潅水は、第1の及び/又は第2の交配型の分生子のみを含有する適切な溶液を使用して行われる。適切な溶液は、例えば、蒸留水又は滅菌水等を意味することを理解されたい。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態に従うと、適切な培地における前記ΔMATヘルパー株のインキュベーションは、暗所でのインキュベーションである。暗所は、分生子の生産を制限し、雄性生殖器による雌性生殖器へのアクセスを促進する。
【0039】
本発明の好ましい一実施形態に従うと、適切な培地における前記ΔMATヘルパー株のインキュベーションは、少なくとも2日間、好ましくは2から6日間継続される。
【0040】
更にとりわけ、本発明の好ましい一実施形態に従うと、適切な培地における前記ΔMATヘルパー株のインキュベーションは、少なくとも4日間、好ましくは4から5日間継続される。4から5日間のインキュベーションによって、回復方法を最適化することが可能となる(実施例2i)。
【0041】
本発明の一実施形態に従うと、第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子、及び/又は第2の交配型の第2のトリコデルマ・リーセイ株の分生子は、少なくとも分生子105個/mlの濃度で存在する。
【0042】
更にとりわけ、本発明の好ましい一実施形態に従うと、第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子、及び/又は第2の交配型の第2のトリコデルマ・リーセイ株の分生子は、少なくとも分生子106個/ml、特に分生子106から108個/ml、好ましくは分生子107から108個/mlの濃度で存在する。分生子107から108個/mlの濃度によって、回復方法を最適化することが可能となる(実施例2iを参照)。
【0043】
連続的な潅水のための最適な条件は、4又は5日間にわたるΔMATヘルパー株のインキュベーション(又はプレインキュベーション)、及び更に分生子107から108個/mlの分生子濃度である(実施例2iを参照)。
【0044】
本発明の好ましい一実施形態に従うと、適切な培地における前記ΔMATヘルパー株のインキュベーションは、室温で、特に24℃で行われる。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態に従うと、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための前記方法は、更に、第1の潅水と第2の潅水との間に、前記ΔMATヘルパー株及び第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子を適切な培地においてインキュベートする工程を含む。
【0046】
一実施形態に従うと、前記第1の潅水と、場合によって、前記ΔMATヘルパー株及び第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子を適切な培地においてインキュベートする工程とは、少なくとも2日間、好ましくは2から7日間、特に少なくとも3又は4日間継続される。優先的に、この実施形態に従うと、前記第1の潅水と、場合によって、前記ΔMATヘルパー株及び第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子を適切な培地においてインキュベートする工程とは、交互の明期及び暗期で、好ましくは3から12時間の明期(日中)及び12から21時間の暗期(夜間)で行われる。
【0047】
本発明の好ましい一実施形態に従うと、適切な培地における、前記ΔMATヘルパー株、及び第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子の前記インキュベーションは、交互の日中/夜間でのインキュベーションである。優先的に、日中/夜間の交替は、12時間の明期及び12時間の暗期の交替である。これは、有性生殖にとって最も好ましい条件である(Seidl, V.ら、(2009))。
【0048】
本発明の好ましい一実施形態に従うと、適切な培地における、前記ΔMATヘルパー株、及び第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子の前記インキュベーションは、5から7日間、好ましくは7日間継続される。
【0049】
本発明の好ましい一実施形態に従うと、適切な培地における、前記ΔMATヘルパー株、及び第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子の前記インキュベーションは、室温で、特に24℃で行われる。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態に従うと、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための前記方法は、更に、子座を得るための工程を含む。本発明に従うと、用語「子座」は、有性生殖の結果生じる肉眼的構造(3~4mmから2cmの直径を有する)を意味することを理解されたい。これらの構造は、母親由来の組織からなり(それを形成している組織は、雌として作用するヘルパー株に由来する)、表面が着色している(茶色)。
【0051】
本発明の好ましい一実施形態に従うと、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための前記方法は、更に、第2の潅水の後に、ΔMATヘルパー株、第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子、及び第2の交配型の第2のトリコデルマ・リーセイ株の分生子を、特に子座が現れるまで、更にとりわけ、着色した子座が肉眼で見られるようになるまで、適切な培地においてインキュベートする工程を含む。
【0052】
一実施形態に従うと、前記第2の潅水と、場合によって、ΔMATヘルパー株、第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子、及び第2の交配型の第2のトリコデルマ・リーセイ株の分生子を適切な培地においてインキュベートする工程とは、少なくとも5日間、好ましくは5から15日間継続される。優先的に、この実施形態に従うと、前記第2の潅水と、場合によって、ΔMATヘルパー株、第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子、及び第2の交配型の第2のトリコデルマ・リーセイ株の分生子を適切な培地においてインキュベートする工程とは、交互の明期及び暗期で、好ましくは3から12時間の明期(日中)及び12から21時間の暗期(夜間)で行われる。
【0053】
本発明の好ましい一実施形態に従うと、適切な培地における、前記ΔMATヘルパー株の、第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子の、及び第2の交配型の第2のトリコデルマ・リーセイ株の分生子の、前記インキュベーションは、交互の日中/夜間でのインキュベーションである。優先的に、交互の日中/夜間は、12時間の明期及び12時間の暗期の交替である。
【0054】
本発明の好ましい一実施形態に従うと、適切な培地における、前記ΔMATヘルパー株の、第1の交配型の第1のトリコデルマ・リーセイ株の分生子の、及び第2の交配型の第2のトリコデルマ・リーセイ株の分生子の、前記インキュベーションは、室温で、特に24℃で行われる。
【0055】
本発明の一実施形態に従うと、前記方法は、更に、子座が現れた後に、前記子座を増幅させる工程を含む。前記増幅工程は、得られた子座を新たな適切な培地(例えば、PDA)に少なくとも1回移動させることによって行われる。新たな適切な培地は、それまでに使用していたものと同一の培地であっても、異なる適切な培地であってもよい。子座を新たな適切な培地に(例えば、適切な培地を含む新たなペトリ皿に)移動させることによって、得られる子座の最終的な数を非常に大きく且つ予想外に増加させることが可能となる(実施例4)。本発明のこの態様に従うと、何回かの連続的な継代培養を行うことができ、このことは、それまでに得られた子座を複数回移動させたものを、新たな適切な培地に複数回移動することができる(例えば、子座の1、2、3、4、5、又は6回の移動を行うことができる)ことを意味する。一実施形態に従うと、前記増幅工程は、少なくとも3日間、例えば3から21日間、好ましくは5から15日間継続され、好ましくは交互の明期/暗期で、特に3から12時間の明期(日中)及び12から21時間の暗期(夜間)で、更にとりわけ12時間の明期及び12時間の暗期で行われる。増幅工程(すなわち、新たな適切な培地への子座の移動)によって、(1)子座の数を、増幅工程を伴わないプロセスと比較して少なくとも20%、更には少なくとも50%、定量的に増大させること、しかし同時に(2)子座の成熟度を増大させること、が可能となる。
【0056】
本発明の特に好ましい一実施形態に従うと、前記方法は、以下の工程:
- 特に暗所での、適切な培地における、MAT交配型の遺伝子座がノックアウトされているトリコデルマ・リーセイの雌性稔性株であるΔMATヘルパー株のインキュベーション、
- 前記ΔMATヘルパー株に対する、第1のMAT1-1雌性不稔株の分生子による第1の潅水、
- 特に交互の日中/夜間で、前記ΔMATヘルパー株及び第1のMAT1-1雌性不稔株の分生子をインキュベートする工程、
- 前記ΔMATヘルパー株、及び第1のMAT1-1雌性不稔株の分生子に対する、第2のMAT1-2雌性不稔株の分生子による第2の潅水、
- 特に交互の日中/夜間で、前記ΔMATヘルパー株及び第1のMAT1-1雌性不稔株の分生子を、MAT1-2雌性不稔株の分生子と、特に子座が現れるまで、インキュベートする工程、
- 場合によって、子座を増幅させる工程
を含む、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法である。
【0057】
本発明の特に好ましい一実施形態に従うと、前記方法は、以下の工程:
- 特に暗所での、適切な培地における、MAT交配型の遺伝子座がノックアウトされているトリコデルマ・リーセイの雌性稔性株であるΔMATヘルパー株のインキュベーション、
- 前記ΔMATヘルパー株に対する、第1のMAT1-1 QM6a株の分生子又はMAT1-1雌性不稔株の分生子による第1の潅水、
- 特に交互の日中/夜間で、前記ΔMATヘルパー株及びMAT1-1 QM6a株の分生子又はMAT1-1雌性不稔株の分生子をインキュベートする工程、
- 前記ΔMATヘルパー株、及びMAT1-1 QM6a株の分生子又はMAT1-1雌性不稔株の分生子に対する、第2のMAT1-2 QM6a株の分生子、又はMAT1-2 QM6a株に由来する株の分生子、又はMAT1-2雌性不稔株の分生子による第2の潅水、
- 特に交互の日中/夜間で、前記ΔMATヘルパー株、及びMAT1-1 QM6a株の分生子又はMAT1-1雌性不稔株の分生子を、MAT1-2 QM6a株の分生子、又はMAT1-2 QM6a株に由来する株の分生子、又はMAT1-2雌性不稔株の分生子と、特に子座が現れるまで、インキュベートする工程、
- 場合によって子座を増幅させる工程
を含む、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖を回復させるための方法である。
【0058】
本発明の好ましい一実施形態に従うと、前記回復方法はまた、トリコデルマ・リーセイ株を得ることを含む。トリコデルマ・リーセイの雌性不稔株に由来するこの新規なトリコデルマ・リーセイ株を得ることは、トリコデルマ・リーセイの2つの雌性不稔株間での有性生殖の回復が、本発明の方法に従って実際に回復されていることを意味する。
【0059】
第2の態様において、本発明はしたがって、セルラーゼ又はバイオ燃料を生産するための、上記の方法を用いて得られるトリコデルマ・リーセイ株の使用に関する。
【0060】
本発明をこれから、以下の実施例及び図面によって説明する。以下の実施例は、本発明の主題のためになる情報を提供すること、及び有利な実施形態を説明することを目的としているが、本発明の範囲の制限を目的とするものでは一切ない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】糸状真菌トリコデルマ・リーセイにおける有性生殖の原理を表す図である。
図2】トリコデルマ・リーセイにおける有性生殖を表す図である。(A)部分は、2つの天然単離体間での有性生殖を表し(A)、(B)部分は、2つのQM6a株間での有性生殖を表す。
図3】ヘルパー株の方法の原理を表す図である。
図4】本発明に従ったヘルパー株の方法を実行するためのプロトコルを表す図である。
図5】本発明に従ったヘルパー株の方法の実行に従って得られた子座を表す図である。
図6】pUC19プラスミド(本発明に従ったΔMATヘルパー株を得るために使用されたプラスミド)におけるノックアウトカセットの最終的な組み立てを表す図である。線は、一定の縮尺では描かれていないプライマーに対応する。数字はプライマーに対応する:1=5'mat1-2-F、2=5'mat1-2-R、3=mat1-2/Hph-F、4=mat1-2/Hph-R、5=3'mat1-2-F、6=3'mat1-2-R、7=K7 Del Mat1-2-F、及び8=K7-Del-Mat1-2-R。
図7】ノックアウトカセットの様々な断片の増幅のために選択されたプライマーの位置を表す図である。数字「(1)」は「5'フランキング+マーカー」断片を表し、数字「(2)」は「マーカー+3'フランキング」断片を表す。
図8】子座の増幅を表す図である。本発明に従ったヘルパー株の方法の実行に従って得られた子座(図5で得られたもの等)は、ペトリ皿A1及びB1に示されている。子座はPDA培地(これは、ペトリ皿A2及びB2に対応する)に移動され、こうして子座の数が増加し得る。この増幅/増加工程はこうして、得られた子座を新たなPDA培地(これは、ペトリ皿A3及びB3に対応する)に移動させることによって、複数回繰り返すことができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0062】
(実施例1)
材料及び方法
本発明は、3つの異なる株を使用する。実施例で使用した3つの株は以下の通りである:
- 交配する対象である2つの不稔性の株:QM6a MAT1-1株及びQM6a MAT1-2株。QM6a MAT1-1株を得るために、QM6a MAT1-2株において、MAT1-2遺伝子座をMAT1-1遺伝子座で置き換えた。QM6a MAT1-2株は、ATCC社から得た(参照番号ATCC(登録商標)13631)。これは、全ての産業株が生じた元である天然単離体である。
- MAT交配型の遺伝子座がノックアウトされている株であるΔMATヘルパー株。この株は、以下で示すプロトコルに従って構築することができる。
【0063】
ΔMATヘルパー株の構築
この株は、交配する対象である2つの不稔性の株と遺伝子操作の前に交配することができる雌性稔性株から構築されなければならない。
【0064】
MAT1-2遺伝子座ノックアウトカセットを構築するために、ハイグロマイシンB耐性遺伝子並びにMAT1-2遺伝子座の5'及び3'配列を、製造者の推奨に従ってGibson Assemblyキット(New England Biolabs社)を用いて、プラスミドpUC19において組み立てた(図6)。ハイグロマイシンB耐性遺伝子を、本発明における選択マーカーとして使用したが、別の選択マーカーも無条件に使用することができる。
【0065】
pUC19レシピエントプラスミドをXbaI酵素及びEcoRI酵素で事前に消化した。MAT1-2遺伝子座の上流及び下流のおよそ1000bpの配列を、上流領域については5'mat1-2-Fプライマー及び5'mat1-2-Rプライマーを使用して、下流領域については3'mat1-2-Fプライマー及び3'mat1-2-Rプライマーを使用して増幅した(Table 1(表1))。これらのプライマーは、一方の側ではpUC19との、また他方の側ではハイグロマイシン耐性遺伝子との組換えを可能にする相同領域を含む。ハイグロマイシンB耐性遺伝子を、mat1-2/Hph-Fプライマー及びmat1-2/Hph-Rプライマーを用いて、pUT1140プラスミドから増幅した。これらのプライマーは、一方の側ではMAT1-2遺伝子座との、また他方の側ではpUC19との組換えを可能にする相同領域を含む。
【0066】
次に、ノックアウトカセットを、K7-Del-Mat1-2-Fプライマー及びK7-Del-Mat1-2-Rプライマーを用いて、細菌DNAから増幅した。得られたPCR産物を、PCR精製キット(Qiagen社)を使用して精製し、CaCl2及びポリエチレングリコール(PEG)を使用してB31稔性野生型株のプロトプラストを形質転換するために使用した。B31株以外の株は、それが雌性稔性であれば使用が可能であった。B31株を形質転換するために使用したプラスミドの配列を、配列番号17で示す。
【0067】
B31株(MAT1-2交配型)は、トリコデルマ・リーセイ株CBS999.97(ATCC(登録商標)204423)(南米の土壌由来のヒポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina)(トリコデルマ・リーセイ)の、生殖能力のあるショ糖及び硝酸同化株)の子孫である。これは、Seidlら(2009)による論文のMAT1-2株CBS999. 97の同等物である。
【0068】
形質転換体を安定化させ、0.8Mのショ糖及び100μg/mlのハイグロマイシンBを含有するPDA培地で繁殖させた。コロニーを次いで継代培養し、PDA-ハイグロマイシン選択培地上で分生子を単離することによって精製した。これを次いで表現型スクリーニングにかけたが、このスクリーニングは、B31形質転換体を、MAT1-1交配型のものでありB31株と適合する、A2天然単離体と交配させることで構成される。MAT遺伝子座が実際にノックアウトされていれば、有性生殖は、ひいては子座は、存在しないことになる。
【0069】
PCR増幅によって、ネイティブ遺伝子がノックアウトカセットで実際に置き換えられていることを検証することが可能となる。この検証は、2つの工程で行われる。第1の工程は、遺伝子のノックアウトを、遺伝子を増幅するためのプライマー(Mat1-2-Fインターナル及びMat1-2-Rインターナル)でPCRを行うことによって検証することで構成される(図7)。前記遺伝子が実際にノックアウトされていれば、増幅は得られない。しかし、この結果が本当に、遺伝子が存在しないことによるものであること、及びPCRの未熟な操作によるものではないことを検証するために、全てのトリコデルマ・リーセイ株のゲノムに存在するtef1遺伝子(α1翻訳伸長因子をコードする)の880bpの内部断片を増幅することを可能にする、対照プライマー対(EF1及びEF2)もまた使用する。第2の工程において、「5'フランキング+マーカー」断片及び「マーカー+3'フランキング」断片の増幅を行って、遺伝子座にノックアウトカセットが存在することを検証した。選択されたプライマーの位置を図7に示す。その部位での遺伝子カセットの挿入を確認するために、プライマーは、5'フランキング断片の下流及び3'フランキング断片の上流で選択されなくてはならない(verifHygro5'と会合したプライマーDmat1-2verif5F、及びverifHygro3'と会合したDmat1-2verif3R)。
【0070】
本発明において使用されるプライマーの配列を、以下のTable 1(表1)に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
これらの表現型の及び分子の確認に従って、B31::ΔMAT-hphヘルパー株を得た。これは、本発明に従ったΔMATヘルパー株(MAT交配型の遺伝子座がノックアウトされているトリコデルマ・リーセイの株)である。
【0074】
(実施例2)
2つのQM6aトリコデルマ・リーセイ産業株間での有性生殖を回復させることを目的とした様々な方法を用いる比較例
全ての試験は、PDA培地を含有するペトリ皿で行った。これは、トリコデルマ・リーセイの有性生殖に最も適した培地である。
【0075】
a/方法1:トリカリオンの生産
これは、P.アンセリナ(P. anserina)において記載されているものと同一の方法である(Jamet-Vierny, C.、Debuchy, R.、Prigent, M.、及びSilar, P.(2007). IDC1, a pezizomycotina-specific gene that belongs to the PaMpk1 MAP kinase transduction cascade of the filamentous fungus Podospora anserina. Fungal genetics and biology FG & B 44, 1219-1230)。
【0076】
トリカリオンを得るために、株を最高30℃で2日間個別にインキュベートして、分生子の形成を防ぎ、菌糸体のみを得た。2日間成長させた後、関与する株の各々(トリカリオンのために3つ)の0.5cm×0.5cmの寒天移植片を切り出し、500μlの滅菌水を含有する2mlのエッペンドルフチューブ内に置いた。菌糸体をFastPrep(登録商標)-24(MP Biomedicals社)を用いて20秒間、4m/sの速さで混合し、10μlの粉砕材料をペトリ皿に載せた。ペトリ皿をインキュベーター内で、24℃で、交互の12時間の明期及び12時間の暗期でインキュベートした。
【0077】
実験は、初め、3回行った。子座は得られなかった。ペトリ皿を、培地が乾燥するまで、すなわちおよそ1ヶ月間、インキュベーター内で維持した。
【0078】
トリカリオンが得られることは稀なことであるため、実験を反復し、10枚の異なるペトリ皿に接種した。子座は得られなかった。
【0079】
b/方法2:トリカリオンの生産
この方法は方法1と同一であるが、そのインキュベーションが異なる。このケースでは、ペトリ皿は、24℃又は12時間の明期及び12時間の暗期となっているインキュベーター内に置かれず、温度が一定ではない(毎日変化する)、及び明るさの調節がされていない(天然の明るさ)、実験室内のワークベンチに放置される。3つの株の混合物を、10枚の異なるペトリ皿に接種した。子座は得られなかった。
【0080】
c/方法3: 3つの株の対比
3つの株を、互いに等距離で、且つペトリ皿の中心から最大の距離で、ペトリ皿に接種した。ペトリ皿を24℃で、交互の日中/夜間(12時間の明期及び12時間の暗期)でインキュベートした。子座は得られなかった。
【0081】
d/方法4:ペトリ皿の中心にある3つの株の混合物
3つの株を、ペトリ皿に置かれたセロファンシートに単独で接種した。2~3日間暗所で成長させた後、菌糸体を除去し、FastPrep(登録商標)において球体を使用して粉砕し、1:1:1の比で混合し、次いで、ペトリ皿の中心に様々な濃度で載せた(1、1/10、1/100、1/1000)。子座は得られなかった。
【0082】
e/方法5: 3つの株の単独での接種
3つの株を、ペトリ皿に置かれたセロファンシートに単独で接種した。2~3日間暗所で成長させた後、菌糸体を除去し、FastPrepにおいて球体を使用して粉砕し、次いで、1:1:1の比で混合した。この混合物を、1%のKH2PO3を添加したPD(ジャガイモデキストロース培養液)液体培地に接種し、1から2日間インキュベートし(振とうしながら又はせずに)、次いで、5mMのアスコルビン酸を添加して又はせずに、ペトリ皿の中心に様々な濃度で載せた(1、1/10)。子座は得られなかった。
【0083】
f/方法6: 3つの株の接種
3つの株を、分生子から、1%のKH2PO3を添加したPD(ジャガイモデキストロース培養液)液体培地に一緒に接種し、1から2日間インキュベートし(振とうしながら又はせずに)、次いで、5mMのアスコルビン酸を添加して又はせずに、PDAのペトリ皿の中心に様々な濃度で載せた(1、1/10)。子座は得られなかった。
【0084】
g/方法7: 3つの株の単独での接種
3つの株を、ペトリ皿に置かれたセロファンシートに単独で接種した。2~3日間暗所で成長させた後、菌糸体を除去し、FastPrepにおいて球体を使用して粉砕し、次いで、1:1:1(QM6a 1-1:QM6a 1-2:ΔMAT)又は1:1:2又は1:1:5の比で混合した。混合物を、5mMのアスコルビン酸を添加して又はせずに、(i)ペトリ皿全体にわたり平板培養した、又は(ii)PDA培地を充填したペトリ皿の中心に様々な希釈で接種した(1、1/10、及び1/100)。ペトリ皿を次いで24℃で、(i)交互の日中/夜間で、(ii)又は一晩暗所で次いで交互の日中/夜間で、(iii)又は暗所で3日間、その後、交互の日中/夜間で、(iv)又は15日間暗所で、その後、交互の日中/夜間で、インキュベートした。子座は得られなかった。
【0085】
h/方法8:細胞抽出物の添加を伴う連続的な潅水
トリコデルマ・リーセイ株の稔性の野生型単離体を、比較として、PDA上に載せられたセロファンシートに置いた。これらの交配体の生物学的材料を、接種後T=0時間からT=96時間まで採集し、タンパク質抽出を行った。タンパク質抽出物を濾過によって滅菌した。最後に、潅水方法を適用し、得られた様々な細胞抽出物を分生子に添加した。MAT1-1分生子による第1の潅水を、次いで、MAT1-2分生子による第2の潅水を(又は逆の場合も同様)行った。子座は得られなかった。
【0086】
i/方法9:本発明に従った連続的な潅水
分生子の獲得:
潅水の4から6日間前に、ペトリ皿に、ヘルパー株に対する潅水に供する分生子ドナー株(MAT1-1、次いでMAT1-2)の各々を接種し、30℃で、明所でインキュベートして、分生子を生産させる。
【0087】
潅水を行う日に、4mlの滅菌水をドナー株(MAT1-1又はMAT1-2)に載せ、分生子を採取する。分生子を計数し、その濃度を分生子106から108個/mlに調整する。
【0088】
潅水:
潅水技術において、ΔMATヘルパー株は、子座の生産に必要な母親の組織を提供するという雌株の機能を有する。ヘルパー株に対して、MAT1-1分生子によって、次いでMAT1-2分生子によって連続的に潅水する。
【0089】
ΔMATヘルパー株に対して、1mlの第1の交配型の分生子によって均一に潅水し、次いで、7日間インキュベートし、1mlの第2の交配型の分生子によって潅水し、子座が得られるまでインキュベートする。
【0090】
ΔMATヘルパー株をPDA培地で培養し、24℃で4日間、暗所でインキュベートする。インキュベーションを開始して4日後に、ヘルパー株に対して1mlのMAT1-1交配型の分生子によって潅水し、24℃で7日間、交互の12時間の明期及び12時間の暗期でインキュベートする。
【0091】
最後に、ヘルパー株に1mlのMAT1-2分生子によって潅水し、子座が現れるまで、24℃で、交互の12時間の明期及び12時間の暗期でインキュベートする。この方法によって、子座を得ることが可能となった。
【0092】
6つの異なる実験(実験1から実験6)を行った。実験は、プレインキュベーション時間(4、5、又は6日間)及び潅水した分生子の数が異なる。結果を以下のTable 3(表3)で表す。
【0093】
【表3】
【0094】
連続的な潅水技術によって、子座を繰り返し得ることが可能となる。子座を得るための最適な条件は以下の通りである:
- ヘルパー株のプレインキュベーション:4又は5日間、
- 分生子の濃度:分生子107から108個/ml。
【0095】
(実施例3)
本発明に従った連続的な潅水のための様々な条件
この実施例では、またTable 4(表4)に示すように、ヘルパー株に対して、以下のものによって潅水した:
- MAT1-1交配型の株、次いで、MAT1-2交配型の同一株、又は
- MAT1-2交配型の株、次いで、MAT1-1交配型の同一株、又は
- 各潅水において水(陰性対照)。
【0096】
【表4】
【0097】
潅水1と潅水2との間で、7日間、24℃で、交互の12時間の明期及び12時間の暗期でのインキュベーションを行う。結果を以下のTable 5(表5)に表す。
【0098】
【表5】
【0099】
MAT1-1交配型の株を含む第1の潅水は、したがって、MAT1-2交配型の株による第1の潅水と比較して、多くの子座を得るために好ましい。
【0100】
(実施例4)
子座の増幅
増幅を、交互の12時間の明期及び12時間の暗期の下で、7から21日間にわたり行った:第1の写真群(A1又はB1)と第2の写真群(A2又はB2)との間での経過時間は、15日間である。本発明に従って得られたA1/B1ペトリ皿の子座(例えば、実施例2で得られたもの等)を、新たな適切な培地(このケースではPDA)に移動させた。この移動の最後で得られた子座は、A2/B2ペトリ皿に示されている。新たな適切な培地への第2の移動を次いで行った:A2/B2ペトリ皿の子座を、新たな適切な培地に移動させた。この移動の最後で得られた子座は、A3/B3ペトリ皿で示されている。
【0101】
これらの移動の結果を図8に表す。
【0102】
得られた子座の数の分析によって、以下のことを結論付けることが可能となった:
1)増幅工程(すなわち、新たな適切な培地への子座の移動)によって、増幅工程を伴わない方法と比較して、子座の数を少なくとも20%、更には少なくとも50%、定量的に増大させることが可能となる、
2)増幅工程によって、子座の成熟度を増大させることもまた可能となる。
【0103】
(参考文献)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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