(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】流動パラフィンの噴霧塗布装置
(51)【国際特許分類】
B65D 1/00 20060101AFI20220715BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20220715BHJP
B29C 33/72 20060101ALI20220715BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20220715BHJP
B29C 49/22 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B65D1/00 120
B65D1/02 111
B29C33/72
B29C49/42
B29C49/22
(21)【出願番号】P 2020134750
(22)【出願日】2020-08-07
(62)【分割の表示】P 2016077621の分割
【原出願日】2016-04-07
【審査請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃広
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-185632(JP,A)
【文献】特開2010-082916(JP,A)
【文献】特開2004-188345(JP,A)
【文献】特開2001-237532(JP,A)
【文献】特開2007-268614(JP,A)
【文献】特開2004-223756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00
B65D 1/02
B29C 33/72
B29C 49/42
B29C 49/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂の射出成形により形成された内容器体用の内プリフォーム及び外郭ボトル用の外プリフォームを用い、外プリフォームの内部に内プリフォームを配置した状態でブロー成形することにより製造されるポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルであって、
円筒状外口部と、該外口部に連接する肩部と、該肩部に連接する胴部と、該胴部に連接し内周側でボトル内に膨出する凹部を有する底部とを備え、外圧に対して原形復帰可能な外郭ボトルと、
該外郭ボトルの該円筒状外口部の内周側に配設される円筒状内口部と、該内口部に連接し該外郭ボトルの内面形状に沿う形状の内容器体本体とを備え、外圧により変形する内容器体と、
該外口部と該内口部との間に形成されて該外郭ボトルと該内容器体との間に外気を導入する通気路とを備えるポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルの外郭ボトルと内容器体との間に、該外郭ボトル胴部と該内容器体との密着抑止剤として流動パラフィンを介在させるために、
該外郭ボトルと同一形状の外口部と、該外口部に連設された有底円筒状体とを備え、該外郭ボトルを形成する外プリフォームに流動パラフィンを塗布する塗布装置であって、
ブロー成形前の該外プリフォームを該外口部を下向きにして倒立させた状態で、有底円筒状体の外プリフォームの底部の内面を遮蔽する遮蔽部材と、該有底
円筒状体の外プリフォームの該底部を除く部分の内面に該流動パラフィンを噴霧する噴霧手段とを備え、該噴霧手段は該外プリフォームの口部の下方に配設され該流動パラフィンの噴霧角度を調整自在の第1の噴霧口を備え、該第1の噴霧口から該有底円筒状体の外プリフォームの底部を除く部分の内面に断面視扇状に該流動パラフィンを上向きに噴霧し、該流動パラフィン薄層を形成することを特徴とする流動パラフィンの噴霧塗布装置。
【請求項2】
請求項1記載の流動パラフィンの噴霧塗布装置において用いられる流動パラフィンは、100°Fにおいて75~300SUSの範囲のセイボルトユニバーサル粘度を有する流動パラフィンであることを特徴とする流動パラフィンの噴霧塗布装置。
【請求項3】
請求項1~請求項2のいずれか1項記載の流動パラフィンの噴霧塗布装置において、余剰の前記流動パラフィンを回収する回収手段を備えることを特徴とする流動パラフィンの噴霧塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルに用いる流動パラフィンの噴霧塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外圧に対して原形復帰可能な外郭ボトルの内部に、外圧により変形されて減容する(以下、「減容変形」ということがある)内容器体を配置し、該外郭ボトルと該内容器体との間に外気が導入されるようにしたブロー成形多重ボトルが知られている。前記ブロー成形多重ボトルは、例えば、ポリエステル樹脂の射出成形により内プリフォーム及び外プリフォームを形成し、外プリフォームの内周側に内プリフォームを配置した状態でブロー成形することにより製造される。
【0003】
前記ブロー成形多重ボトルは、外郭ボトルの胴部を押圧することにより、内容器体を減容変形させて内容器体に収容されている内容物を注出する一方、押圧が解除されると別途設けられた逆止弁等の作用により外郭ボトルと内容器体との間に外気が導入される。この結果、外気圧により外郭ボトルが原形復帰する一方、前記内容器体は外郭ボトルから剥離して減容変形された状態が維持される。このようにするときには、内容器体内に外気が侵入することが無いので、内容器体内に収容されている内容物が酸化等により変質することを防止することができる。
【0004】
ところが、前記ブロー成形多重ボトルは、前述のように外プリフォームの内周側に内プリフォームを配置した状態でブロー成形することにより製造されるので、ブロー成形の際の熱と圧力とにより外郭ボトルに内容器体が強固に密着し、外郭ボトルと内容器体とが剥離しにくくなることがあるという問題がある。前記問題は、前記ブロー成形多重ボトルを形成するポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートである場合に特に著しい。
【0005】
前記問題を解決するために、外郭ボトルと内容器体との間にシリコーンオイルからなる剥離剤層を備えるブロー成形多重ボトルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来のブロー成形多重ボトルでは、前記シリコーンオイルからなる剥離剤層を備えても、なお外郭ボトルと内容器体とが剥離しにくくなることがあり、前記問題を十分に解決するものとは言えず、さらに改良が望まれる。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑み、外郭ボトルと内容器体とを確実に剥離させることができるポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルにおいて外郭ボトルと内容器体とを確実に剥離させるために適した流動パラフィンの噴霧塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明の流動パラフィンの噴霧塗布装置は、ポリエステル樹脂の射出成形により形成された内容器体用の内プリフォーム及び外郭ボトル用の外プリフォームを用い、外プリフォームの内部に内プリフォームを配置した状態でブロー成形することにより製造されるポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルであって、円筒状外口部と、該外口部に連接する肩部と、該肩部に連接する胴部と、該胴部に連接し内周側でボトル内に膨出する凹部を有する底部とを備え、外圧に対して原形復帰可能な外郭ボトルと、該外郭ボトルの該円筒状外口部の内周側に配設される円筒状内口部と、該内口部に連接し該外郭ボトルの内面形状に沿う形状の内容器体本体とを備え、外圧により変形する内容器体と、該外口部と該内口部との間に形成されて該外郭ボトルと該内容器体との間に外気を導入する通気路とを備えるポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルの外郭ボトルと内容器体との間に、該外郭ボトル胴部と該内容器体との密着抑止剤として流動パラフィンを介在させるために、該外郭ボトルと同一形状の外口部と、該外口部に連設された有底円筒状体とを備え、該外郭ボトルを形成する外プリフォームに流動パラフィンを塗布する塗布装置であって、ブロー成形前の該外プリフォームを該外口部を下向きにして倒立させた状態で、有底円筒状体の外プリフォームの底部の内面を遮蔽する遮蔽部材と、該有底円筒状体の外プリフォームの該底部を除く部分の内面に該流動パラフィンを噴霧する噴霧手段とを備え、該噴霧手段は該外プリフォームの口部の下方に配設され該流動パラフィンの噴霧角度を調整自在の第1の噴霧口を備え、該第1の噴霧口から該有底円筒状体の外プリフォームの底部を除く部分の内面に断面視扇状に該流動パラフィンを上向きに噴霧し、該流動パラフィン薄層を形成することを特徴とする。
【0010】
前記ポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造に用いられる外プリフォームは、前記外郭ボトルの外口部と同一形状の外口部と、該外口部に連設された有底円筒状体とを備える。前記外プリフォームは、内周側に内プリフォームを配置した状態でブロー成形に供されることにより、ポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルを形成することができる。前記ポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造に用いられる内プリフォームは、前記内容器体の内口部と同一形状の内口部と、該内口部に連設された有底円筒状体とを備える。
【0011】
本発明の流動パラフィンの噴霧塗布装置によれば、前記外プリフォームを前記外口部を下向きにして倒立させた状態で、前記遮蔽部材により前記有底円筒状体の底部の内面を遮蔽して、前記噴霧手段により該有底円筒状体の該底部を除く部分の内面に前記流動パラフィンを噴霧する。本発明の流動パラフィンの噴霧塗布装置によれば、前述のようにすることにより、前記外プリフォームの前記有底円筒状体の前記底部を除く部分に前記流動パラフィンを塗布することができる。
【0014】
また、本発明の流動パラフィンの噴霧塗布装置は、余剰の前記流動パラフィンを回収する回収手段を備えることが好ましい。本発明の流動パラフィンの噴霧塗布装置は、前記回収手段で余剰の前記流動パラフィンを回収することにより、該流動パラフィンが所望の部分以外に付着することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルの構成を示す斜視図。
【
図3】ポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造に用いる外プリフォームの構成を示す縦断面図。
【
図4】外プリフォームに対する本発明の
流動パラフィンの噴霧塗布装置の第1の形態を示す模式的断面図。
【
図5】外プリフォームに対する本発明の
流動パラフィンの噴霧塗布装置の第2の形態を示す模式的断面図。
【
図6】ポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造に用いる内プリフォームを外プリフォームの内周側に配置した状態を示す縦断面図。
【
図7】Aはポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルの製造方法の初期工程を示す模式的断面図、Bはブロー成形工程を示す模式的断面図、Cはブロー成形工程の終了段階を示す模式的断面図。
【
図8】ポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトルの使用状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、ポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトル1(以下、多重ボトル1と略記する)は、外圧に対して原形復帰可能な外郭ボトル2と、外郭ボトル2の内側に収容され外圧により変形する内容器体3とからなる。
【0018】
外郭ボトル2は、例えば、円筒状外口部4と、外口部4に連接する肩部5と、肩部5に連接する上胴部6と、上胴部6に連接する中胴部7と、中胴部7に連接する下胴部8と、下胴部8に連接する底部9とを備え、上胴部6、中胴部7、下胴部8により胴部が形成されている。外口部4は外周面に雄ねじ部10と、サポートリング11とを備え、底部9は外郭ボトル2の内側に膨出して多重ボトル1に自立性を付与する凹部12を備えている。
【0019】
一方、内容器体3は、外口部4内周側に配設される円筒状内口部13と、内口部13に連接し、外郭ボトル2の肩部5、上胴部6、中胴部7、下胴部8、底部9の内面形状に沿う形状の内容器体本体14とを備えている。内口部13は、上部に外口部4の上端よりも上方に延出された延出部15と、延出部15から径方向外方に張り出す鍔部16とを備えており、鍔部16により外口部4の上端縁に係止されている。
【0020】
また、内口部13は、外周面に溝17を備えている。溝17は鍔部16の下面に形成された溝18に連設されており、溝18は鍔部16の外周縁で外部に開放されている。この結果、溝17及び溝18により、外郭ボトル2と内容器体3との間に外気を導入する通気路19が形成されている。
【0021】
また、多重ボトル1は、外郭ボトル2の肩部5、上胴部6、中胴部7、下胴部8及び、凹部12を除く底部9と、内容器体本体14の肩部5、上胴部6、中胴部7、下胴部8及び、凹部12を除く底部9に沿う部分との間に、流動パラフィン層(図示せず)を備えている。前記流動パラフィン層は、前記部分に備えられていればよいが、さらに外郭ボトル2の外口部4の内面又は、内容器体3の内口部13の外面に備えられていてもよい。
【0022】
前記流動パラフィン層を形成する流動パラフィンは、100°Fにおいて75~300SUSの範囲、好ましくは159~175SUSの範囲のセイボルトユニバーサル粘度を有する流動パラフィンを含んでいる。前記流動パラフィンは、前記流動パラフィンのみからなるものであってもよく、該流動パラフィンの溶剤を含んでいてもよく、流動パラフィンに溶解する他の離形効果を有する添加剤を含んでいてもよい。
【0023】
前記流動パラフィンは後述のブロー成形時の加熱によっても揮発する虞がなく、又、食品添加物としての利用が認められているので、内容物に混入しても健康被害等の原因となる虞がない。前記流動パラフィンとして、例えば、カネダ株式会社製ハイコールK-290(商品名)を用いることができる。
【0024】
多重ボトル1は、例えば、
図3に示す外プリフォーム21の内周側に、
図4に示す内プリフォーム22を配置してブロー成形することにより製造することができる。
【0025】
外プリフォーム21は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂を材料として射出成形により形成され、
図3に示すように、外口部4と、外口部4の下方に連設された有底円筒状体23とにより形成される。外口部4は、外郭ボトル2の外口部4と同一形状であり、同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、有底円筒状体23は、中空円筒状の外胴部24と、外胴部24に連設された中空半球状の外底部25とからなる。
【0026】
内プリフォーム22は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂を材料として射出成形により形成され、
図4に示すように、内口部13と、内口部13の下方に連設された内口部13よりも外径が小さい有底円筒状体26とにより形成される。内口部13は、内容器体3の内口部13と同一形状であり、同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、有底円筒状体26は、中空円筒状の内胴部27と、内胴部27に連設された中空半球状の内底部28とからなる。
【0027】
内プリフォーム22では、有底円筒状体26の外径が内口部13よりも小さいことにより、溝17の下端は内口部13と有底円筒状体26との境界で有底円筒状体26の外面に臨んで開放される。
【0028】
図4に示すように、内プリフォーム22の内口部13は外プリフォーム21の外口部4に挿着され、内プリフォーム22の有底円筒状体26は外プリフォーム21の有底円筒状体23の内部に配置される。このとき、延出部15が外プリフォーム21の外口部4の上方に延出し、鍔部16が外プリフォーム21の外口部4の上端面に当接して係止される。これにより、内プリフォーム22の内口部13は、外プリフォーム21の外口部4の内側に確実に位置決めされる。
【0029】
図4に示すように、内プリフォーム22の有底円筒状体26が外プリフォーム21の有底円筒状体23の内部に配置されたとき、有底円筒状体26の内胴部27の外面と、有底円筒状体23の外胴部24の内面とのいずれか一方には、前記
流動パラフィン層が備えられている。
【0030】
次に、
図5及び
図6を参照して、外プリフォーム21の有底円筒状体23の外胴部24の内面に前記
流動パラフィン層を形成する
流動パラフィンの噴霧塗布装置につい説明する。
【0031】
まず、
図5に示すように、
流動パラフィンの噴霧塗布装置の第1の形態によれば、外口部4を下にして倒立状態とされた外プリフォーム21の下方に
流動パラフィンの噴霧塗布装置31が配置される。
流動パラフィンの噴霧塗布装置31は、
流動パラフィンを供給する
流動パラフィン供給管32と、
流動パラフィン供給管32の周囲にスプレーエアを供給するスプレーエア供給管33と、
流動パラフィンを巻き込んだスプレーエアを噴霧する噴霧口34とを備えており、噴霧口34は該
流動パラフィンの噴霧角度が調整自在になっている。
【0032】
また、流動パラフィンの噴霧塗布装置31は、外プリフォーム21の有底円筒状体23に挿入される支柱35を備えており、支柱35の先端には有底円筒状体23の外底部25の内面を遮蔽する遮蔽部材36が取り付けられている。また、塗布装置31は、噴霧口34から有底円筒状体23の内部に噴霧された前記流動パラフィンのうち、余剰の該流動パラフィンを回収する回収導管37を備えており、回収導管37は真空ポンプ等の吸引ポンプ38を介して回収容器39に接続されている。
【0033】
流動パラフィンの噴霧塗布装置31によれば、流動パラフィン供給管32から供給される流動パラフィンを、スプレーエア供給管33から供給されるスプレーエアに巻き込んで、噴霧口34から外プリフォーム21の有底円筒状体23の内面に噴霧することにより該流動パラフィンを塗布する。このとき、有底円筒状体23の外底部25の内面は遮蔽部材36により遮蔽されているので、噴霧口34から噴霧される前記流動パラフィンの噴霧角度を例えば15~60°の間で変化させることにより、有底円筒状体23の外底部25を除き、外胴部24の内面に断面視扇状に該流動パラフィンを塗布することができる。
【0034】
またこのとき、遮蔽部材36を支持する支柱35の陰になる部分には前記流動パラフィンが噴霧されないことが懸念されるが、前記流動パラフィンは、後述のブロー成形の際に、それ自体の流動性により支柱35の陰になる部分にも周囲から回り込むことができるので、結果的に外胴部24の内面全体に前記流動パラフィンを塗布した場合と同様の効果を得ることができる。また流動パラフィン噴霧時に記載されていない適宜な手段で外プリフォームを軸回転させる等により外胴部24の内面全周に前記流動パラフィンを塗布することができる。また、前記流動パラフィンの噴霧と同時に吸引ポンプ38を作動させ、有底円筒状体23の外胴部24の内面に塗布されたもの以外の余剰の前記流動パラフィンを回収導管37から回収容器39に回収する。
【0035】
次に、
図6に示すように、
流動パラフィンの塗布方法及び
流動パラフィンの噴霧塗布装置の第2の形態によれば、外口部4を下にして倒立状態とされた外プリフォーム21の下方から、有底円筒状体23の内部に
流動パラフィンの噴霧塗布装置41のノズル42が挿入される。
流動パラフィンの噴霧塗布装置41は、
流動パラフィンを供給する
流動パラフィン供給管(図示せず)と、スプレーエアを供給するスプレーエア供給管(図示せず)とをノズル42に内蔵しており、ノズル42の長さ方向及び周方向に沿って、
流動パラフィンを巻き込んだスプレーエアを噴霧する複数の噴霧口43を備え、ノズル42の先端には有底円筒状体23の外底部25の内面を遮蔽する遮蔽部材44が取り付けられている。
【0036】
流動パラフィンの噴霧塗布装置41によれば、前記流動パラフィンをスプレーエアにより噴霧口43から外プリフォーム21の有底円筒状体23の内面に噴霧することにより該流動パラフィンを塗布する。このとき、有底円筒状体23の外底部25の内面は遮蔽部材44により遮蔽されているので、ノズル42の長さ方向及び周方向に沿って複数設けられている噴霧口43から前記離型剤を噴霧することにより、有底円筒状体23の外底部25を除き、外胴部24の内面全体に断面視扇状に前記流動パラフィンを塗布することができる。
【0037】
流動パラフィンの噴霧塗布装置41では、有底円筒状体23の外胴部24の内面に塗布されたもの以外の余剰の前記流動パラフィンは、外胴部24の内面に沿って流下するので、外プリフォーム21の下方に図示しない回収容器を配設することにより、余剰の該流動パラフィンを回収することができる。
【0038】
また、内プリフォーム22の有底円筒状体26の内胴部27の外面に前記流動パラフィンを塗布する場合は、例えば、有底円筒状体26の内口部13及び内底部28の外面をマスキングして、スプレー装置、刷毛等を用いて内胴部27の外面に前記流動パラフィンを塗布することができる。
【0039】
次に、
図7A~
図7Cを参照して、多重ボトル1のブロー成形について説明する。
【0040】
本実施形態において使用するブロー成形装置は周知のものであり、
図7A~
図7Cにおいて要部を示すように、金型51と、ブローノズル52と、ストレッチロッド53とを備えている。
【0041】
金型51は、外郭ボトル2の肩部5、上胴部6、中胴部7、下胴部8、底部9に沿う形状の成形部54と、凹部12に沿う形状の凹部成形部55と、外プリフォーム21の外口部4のサポートリング11の下方を露出させ、外口部4を下にして外プリフォーム21を倒立状態で支持する支持開口部56とを備えている。金型51は図示しない割型構造とされており、成形部54の左右側と凹部成形部55側とで分割することによって成形後の多重ボトル1が脱型できるようになっている。
【0042】
ブローノズル52は、図示しない昇降手段により昇降され、Oリング57を介して内プリフォーム22の鍔部16の上端面に気密に当接する。ブローノズル52にはストレッチロッド53が挿通され、ストレッチロッド53の外周面とブローノズル52の内周面との間には、図示しない高圧気体供給手段に接続された気体通路58が形成されている。
【0043】
ストレッチロッド53は、図示しない進退駆動手段によってブロー成形時に前進される。尚、ストレッチロッド53は未使用時には、
図7Aに示すように、ブローノズル52の内方(図中下方)に収納されている。
【0044】
上述の構成のブロー成形装置によって、多重ボトル1を製造するときには、
図7Aに示すように、外プリフォーム21に内プリフォーム22を挿着し、外プリフォーム21を金型51にセットした後、内プリフォーム22の内口部13にブローノズル52を接続する。尚、外プリフォーム21及び内プリフォーム22は、金型51にセットされるに先立ってブロー成形可能な温度に加熱されている。
【0045】
次いで、
図7Bに示すようにブローノズル52の気体通路58から内プリフォーム22内に加圧空気を導入し、同時にストレッチロッド53を上方に伸長させる。これにより、内プリフォーム22が膨張して未膨張状態の外プリフォーム21の内面に密着する。続いて、更に内プリフォーム22内に加圧空気を導入しつつ、ストレッチロッド53を上方に伸長させると、内プリフォーム22の内底部28及び外プリフォーム21の外底部25が凹部成形部55に当接される。
【0046】
次いで、更に内プリフォーム22内に加圧空気を導入すると、膨張した内プリフォーム22の内胴部27により外プリフォーム21の外胴部24が広げられ、
図7Cに示すように、金型51の成形部54により外郭ボトル2の肩部5、上胴部6、中胴部7、下胴部8、底部9の形状に成形され、凹部成形部55により凹部12の形状に成形される。また、内プリフォーム22の内胴部27は、外郭ボトル2の肩部5、上胴部6、中胴部7、下胴部8、底部9、凹部12の内面形状に沿う内容器体本体14の形状に成形される。この結果、
図1及び
図2に示す多重ボトル1が得られる。
【0047】
上述の構成のブロー成形装置によって、多重ボトル1を製造するとき、プリフォームの向きを、流動パラフィンの塗布時と同じ向きに配置してブロー成形を行うことにより、流動パラフィンの底部凹部への付着がより好適に防止される。
【0048】
多重ボトル1では、前記ブロー成形により内プリフォーム22が外プリフォーム21に熱圧着されることにより、内容器体本体14が外郭ボトル2に密着される。このとき、外プリフォーム21の外胴部24の内面又は内プリフォーム22の内胴部27の外面に前記流動パラフィンが塗布されていることにより、多重ボトル1は、外郭ボトル2の肩部5、上胴部6、中胴部7、下胴部8及び、凹部12を除く底部9と、内容器体本体14の肩部5、上胴部6、中胴部7、下胴部8及び、凹部12を除く底部9に沿う部分との間に流動パラフィン層(図示せず)を備えている。
【0049】
次に、
図8を参照して、多重ボトル1の使用状態及び作用効果について、説明する。
【0050】
多重ボトル1は、内容器体3に図示しない内容物が収容されており、該内容物を注出するときには、
図8に示すように、外口部4及び内口部13を下方に向けて傾ける。そして、外郭ボトル2の中胴部7を押圧すると、内容器体本体14が減容変形することにより、前記内容物が注出される。
【0051】
次に、外郭ボトル2の中胴部7の押圧を解除すると、外郭ボトル2と内容器体本体14との間に通気路19から外気が導入され、外気圧により外郭ボトル2は原形に復帰する。このとき、多重ボトル1は、外郭ボトル2の肩部5、上胴部6、中胴部7、下胴部8及び、凹部12を除く底部9と、内容器体本体14の肩部5、上胴部6、中胴部7、下胴部8及び、凹部12を除く底部9に沿う部分との間に前記流動パラフィン層を備えている。従って、内容器体本体14は外郭ボトル2から剥離し、減容変形したままの状態を維持することができる。一方、凹部12には前記流動パラフィン層が形成されていないので、内容器体本体14の凹部12に沿う部分は外郭ボトル2の凹部12に密着した状態を維持することができる。
【0052】
この結果、多重ボトル1によれば、内容物が消費されて減少するに伴って、内容器体本体14を所定の形状に減容変形させることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…ポリエステル樹脂製ブロー成形多重ボトル、 2…外郭ボトル、 3…内容器体、 4…外口部、 5…肩部、 6…上胴部、 7…中胴部、 8…下胴部、 9…底部、 12…凹部、 13…内口部、14…内容器体本体、 21…外プリフォーム、 23…有底円筒状体、 25…底部、 31、41…塗布装置、 34、43…噴霧手段、 36、44…遮蔽部材。