(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】異なるブルートゥース回路によるオーディオ再生を同期させ続けることが可能なマルチ構成要員型ブルートゥース装置における、ブルートゥース主回路およびブルートゥース副回路
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
H04L7/00 080
(21)【出願番号】P 2020184671
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2020-11-04
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】314005908
【氏名又は名称】瑞▲いく▼半導體股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張紘銓
(72)【発明者】
【氏名】陳奕錚
(72)【発明者】
【氏名】黄冠中
(72)【発明者】
【氏名】王景文
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-152212(JP,A)
【文献】特開2009-153070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0006798(US,A1)
【文献】国際公開第2019/051089(WO,A2)
【文献】国際公開第2019/083840(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0274024(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ブルートゥースピコネット(310)上のマスター装置(master)として動作するソースブルートゥース装置(102)とデータ伝送を行いブルートゥース主回路(110)およびブルートゥース副回路(120)を含むマルチ構成要員型ブルートゥース装置(100)における、該ブルートゥース主回路(110)であって、
該ブルートゥース主回路(110)は、
第1ブルートゥース通信回路(111)と、
第1クロック調整回路(113)と、
前記第1ブルートゥース通信回路(111)および前記第1クロック調整回路(113)に結合的に接続している第1制御回路(114)であって、前記ブルートゥース主回路(110)が前記第1ブルートゥースピコネット(310)上のスレーブ装置(slave)として動作し且つ第2ブルートゥースピコネット(320)上のマスター装置として動作するよう、前記ブルートゥース主回路(110)を制御する第1制御回路(114)と、
前記第1制御回路(114)に結合的に接続している第1サンプリングクロック調整回路(116)と、
前記第1サンプリングクロック調整回路(116)に結合的に接続している第1非同期サンプリングレート変換回路(117)であって、第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)に基づき第1オーディオデータについてサンプリングするとともに、サンプリングしたデータを再生用に第1再生回路(118)に伝送する第1非同期サンプリングレート変換回路(117)と、を含み、
前記第1制御回路(114)は、さらに、
前記ソースブルートゥース装置(102)によって生成された第1マスタークロック(CLK_P1M)に共に同期した第1スレーブクロック(CLK_P1S1)および第2マスタークロック(CLK_P2M)が前記第1クロック調整回路(113)から生成されるよう、前記第1クロック調整回路(113)を前記第1マスタークロック(CLK_P1M)
のデータに基づいて制御する処理と、
前記第1ブルートゥース通信回路(111)が前記第1ブルートゥースピコネット(310)上でパケットを前記第1スレーブクロック(CLK_P1S1)に基づいて伝送または受信するよう、前記第1ブルートゥース通信回路(111)を制御する処理と、
前記第1ブルートゥース通信回路(111)が前記第2ブルートゥースピコネット(320)上でパケットを前記第2マスタークロック(CLK_P2M)に基づいて伝送または受信することで、前記ブルートゥース副回路(120)においてパケットが、前記第2マスタークロック(CLK_P2M)に同期した第2スレーブクロック(CLK_P2S1)に基づいて前記第2ブルートゥースピコネット(320)上で伝送または受信されるよう、前記第1ブルートゥース通信回路(111)を制御する処理と、
を行
い、
さらに、前記第1制御回路(114)は、前記第1マスタークロック(CLK_P1M)、前記第1スレーブクロック(CLK_P1S1)または前記第2マスタークロック(CLK_P2M)に同期した前記第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)が前記第1サンプリングクロック調整回路(116)から生成されるよう、前記第1サンプリングクロック調整回路(116)を制御し、
さらに、前記第1制御回路(114)は、前記第1オーディオデータに対応した第1オーディオ再生タイムスタンプを、前記第1ブルートゥース通信回路(111)を介して前記ブルートゥース副回路(120)に伝送し、
前記ブルートゥース副回路(120)が前記第1オーディオ再生タイムスタンプに基づいて第2オーディオサンプリングクロック(CLK_A2)の位相を校正して該第2オーディオサンプリングクロック(CLK_A2)を現在の第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)と同期させる、
ブルートゥース主回路(110)。
【請求項2】
第1ブルートゥースピコネット(310)上のマスター装置(master)として動作するソースブルートゥース装置(102)とデータ伝送を行いブルートゥース主回路(110)およびブルートゥース副回路(120)を含むマルチ構成要員型ブルートゥース装置(100)における、該ブルートゥース主回路(110)であって、
該ブルートゥース主回路(110)は、
第1ブルートゥース通信回路(111)と、
第1クロック調整回路(113)と、
前記第1ブルートゥース通信回路(111)および前記第1クロック調整回路(113)に結合的に接続している第1制御回路(114)であって、前記ブルートゥース主回路(110)が前記第1ブルートゥースピコネット(310)上のスレーブ装置(slave)として動作し且つ第2ブルートゥースピコネット(320)上のマスター装置として動作するよう、前記ブルートゥース主回路(110)を制御する第1制御回路(114)と、
前記第1制御回路(114)に結合的に接続している第1サンプリングクロック調整回路(116)と、
前記第1サンプリングクロック調整回路(116)に結合的に接続している第1非同期サンプリングレート変換回路(117)であって、第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)に基づき第1オーディオデータについてサンプリングするとともに、サンプリングしたデータを再生用に第1再生回路(118)に伝送する第1非同期サンプリングレート変換回路(117)と、を含み、
前記第1制御回路(114)は、さらに、
前記ソースブルートゥース装置(102)によって生成された第1マスタークロック(CLK_P1M)に共に同期した第1スレーブクロック(CLK_P1S1)および第2マスタークロック(CLK_P2M)が前記第1クロック調整回路(113)から生成されるよう、前記第1クロック調整回路(113)を前記第1マスタークロック(CLK_P1M)のデータに基づいて制御する処理と、
前記第1ブルートゥース通信回路(111)が前記第1ブルートゥースピコネット(310)上でパケットを前記第1スレーブクロック(CLK_P1S1)に基づいて伝送または受信するよう、前記第1ブルートゥース通信回路(111)を制御する処理と、
前記第1ブルートゥース通信回路(111)が前記第2ブルートゥースピコネット(320)上でパケットを前記第2マスタークロック(CLK_P2M)に基づいて伝送または受信することで、前記ブルートゥース副回路(120)においてパケットが、前記第2マスタークロック(CLK_P2M)に同期した第2スレーブクロック(CLK_P2S1)に基づいて前記第2ブルートゥースピコネット(320)上で伝送または受信されるよう、前記第1ブルートゥース通信回路(111)を制御する処理と、
を行い、
さらに、前記第1制御回路(114)は、前記第1マスタークロック(CLK_P1M)、前記第1スレーブクロック(CLK_P1S1)または前記第2マスタークロック(CLK_P2M)に同期した前記第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)が前記第1サンプリングクロック調整回路(116)から生成されるよう、前記第1サンプリングクロック調整回路(116)を制御し、
さらに、前記ブルートゥース主回路(110)は、
前記第1ブルートゥース通信回路(111)を介して
第2オーディオ再生タイムスタンプを受信するとともに、
前記第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)の位相が前記第1サンプリングクロック調整回路(116)によって前記第2
オーディオ再生タイムスタンプに基づいて校正されて当該校正後の第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)が、現在に前記ブルートゥース副回路(120)によって生成された第2オーディオサンプリングクロック(CLK_A2)に同期した状態となるよう、前記第1サンプリングクロック調整回路(116)を制御す
る、
ブルートゥース主回路(110)。
【請求項3】
前記第1制御回路(114)は、周波数が実質的に前記第1マスタークロック(CLK_P1M)と同様で且つ位相が実質的に前記第1マスタークロック(CLK_P1M)に一致した前記第1スレーブクロック(CLK_P1S1)が前記第1クロック調整回路(113)から生成されるよう、前記第1クロック調整回路(113)を前記第1マスタークロック(CLK_P1M)
のデータに基づいて制御し、
さらに、前記第1制御回路(114)は、周波数が実質的に前記第1マスタークロック(CLK_P1M)と同様で且つ位相が実質的に前記第1マスタークロック(CLK_P1M)に一致した前記第2マスタークロック(CLK_P2M)が前記第1クロック調整回路(113)から生成されるよう、前記第1クロック調整回路(113)を前記第1マスタークロック(CLK_P1M)または前記第1スレーブクロック(CLK_P1S1)
のデータに基づいて制御する、
請求項
1または2に記載のブルートゥース主回路(110)。
【請求項4】
第1ブルートゥースピコネット(310)上のマスター装置(master)として動作するソースブルートゥース装置(102)とデータ伝送を行いブルートゥース主回路(110)およびブルートゥース副回路(120)を含むマルチ構成要員型ブルートゥース装置(100)における、該ブルートゥース副回路(120)であって、
前記ブルートゥース主回路(110)は、前記第1ブルートゥースピコネット(310)上のスレーブ装置(slave)として動作し且つ第2ブルートゥースピコネット(320)上のマスター装置として動作し、
前記ブルートゥース主回路(110)は、
第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)に基づき第1オーディオデータについてサンプリングするとともに、
前記ソースブルートゥース装置(102)によって生成された第1マスタークロック(CLK_P1M)に共に同期した第1スレーブクロック(CLK_P1S1)および第2マスタークロック(CLK_P2M)を前記第1マスタークロック(CLK_P1M)
のデータに基づいて生成することにより、前記第1ブルートゥースピコネット(310)上でパケットを前記第1スレーブクロック(CLK_P1S1)に基づいて伝送または受信するとともに、前記第2ブルートゥースピコネット(320)上でパケットを前記第2マスタークロック(CLK_P2M)に基づいて伝送または受信し、
該ブルートゥース副回路(120)は、
第2ブルートゥース通信回路(121)と、
第2クロック調整回路(123)と、
前記第2ブルートゥース通信回路(121)および前記第2クロック調整回路(123)に結合的に接続している第2制御回路(124)であって、前記ブルートゥース副回路(120)が前記第2ブルートゥースピコネット(320)上のスレーブ装置として動作するよう、前記ブルートゥース副回路(120)を制御する第2制御回路(124)と、
前記第2制御回路(124)に結合的に接続している第2サンプリングクロック調整回路(126)と、
前記第2サンプリングクロック調整回路(126)に結合的に接続している第2非同期サンプリングレート変換回路(127)であって、第2オーディオサンプリングクロック(CLK_A2)に基づき第2オーディオデータについてサンプリングするとともに、サンプリングしたデータを再生用に第2再生回路(128)に伝送する第2非同期サンプリングレート変換回路(127)と、を含み、
前記第2制御回路(124)は、さらに、
前記第2マスタークロック(CLK_P2M)に同期した第2スレーブクロック(CLK_P2S1)が前記第2クロック調整回路(123)から生成されるよう、前記第2クロック調整回路(123)を前記第2マスタークロック(CLK_P2M)
のデータに基づいて制御する処理と、
前記第2ブルートゥース通信回路(121)が前記第2ブルートゥースピコネット(320)上でパケットを前記第2スレーブクロック(CLK_P2S1)に基づいて伝送または受信するよう、前記第2ブルートゥース通信回路(121)を制御する処理と、
を行
い、
さらに、前記第2制御回路(124)は、前記第2マスタークロック(CLK_P2M)または前記第2スレーブクロック(CLK_P2S1)に同期し且つ前記ブルートゥース主回路(110)によって生成された第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)に間接的に同期した前記第2オーディオサンプリングクロック(CLK_A2)が前記第2サンプリングクロック調整回路(126)から生成されるよう、前記第2サンプリングクロック調整回路(126)を制御し、
さらに、前記第2制御回路(124)は、
前記第1オーディオデータに対応した第1オーディオ再生タイムスタンプを、前記第2ブルートゥース通信回路(121)を介して受信するとともに、
前記第2オーディオサンプリングクロック(CLK_A2)の位相が前記第2サンプリングクロック調整回路(126)によって前記第1オーディオ再生タイムスタンプに基づいて校正されて当該校正後の第2オーディオサンプリングクロック(CLK_A2)が現在の第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)に同期した状態となるよう、前記第2サンプリングクロック調整回路(126)を制御する、
ブルートゥース副回路(120)。
【請求項5】
第1ブルートゥースピコネット(310)上のマスター装置(master)として動作するソースブルートゥース装置(102)とデータ伝送を行いブルートゥース主回路(110)およびブルートゥース副回路(120)を含むマルチ構成要員型ブルートゥース装置(100)における、該ブルートゥース副回路(120)であって、
前記ブルートゥース主回路(110)は、前記第1ブルートゥースピコネット(310)上のスレーブ装置(slave)として動作し且つ第2ブルートゥースピコネット(320)上のマスター装置として動作し、
前記ブルートゥース主回路(110)は、
第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)に基づき第1オーディオデータについてサンプリングするとともに、
前記ソースブルートゥース装置(102)によって生成された第1マスタークロック(CLK_P1M)に共に同期した第1スレーブクロック(CLK_P1S1)および第2マスタークロック(CLK_P2M)を前記第1マスタークロック(CLK_P1M)のデータに基づいて生成することにより、前記第1ブルートゥースピコネット(310)上でパケットを前記第1スレーブクロック(CLK_P1S1)に基づいて伝送または受信するとともに、前記第2ブルートゥースピコネット(320)上でパケットを前記第2マスタークロック(CLK_P2M)に基づいて伝送または受信し、
該ブルートゥース副回路(120)は、
第2ブルートゥース通信回路(121)と、
第2クロック調整回路(123)と、
前記第2ブルートゥース通信回路(121)および前記第2クロック調整回路(123)に結合的に接続している第2制御回路(124)であって、前記ブルートゥース副回路(120)が前記第2ブルートゥースピコネット(320)上のスレーブ装置として動作するよう、前記ブルートゥース副回路(120)を制御する第2制御回路(124)と、
前記第2制御回路(124)に結合的に接続している第2サンプリングクロック調整回路(126)と、
前記第2サンプリングクロック調整回路(126)に結合的に接続している第2非同期サンプリングレート変換回路(127)であって、第2オーディオサンプリングクロック(CLK_A2)に基づき第2オーディオデータについてサンプリングするとともに、サンプリングしたデータを再生用に第2再生回路(128)に伝送する第2非同期サンプリングレート変換回路(127)と、を含み、
前記第2制御回路(124)は、さらに、
前記第2マスタークロック(CLK_P2M)に同期した第2スレーブクロック(CLK_P2S1)が前記第2クロック調整回路(123)から生成されるよう、前記第2クロック調整回路(123)を前記第2マスタークロック(CLK_P2M)のデータに基づいて制御する処理と、
前記第2ブルートゥース通信回路(121)が前記第2ブルートゥースピコネット(320)上でパケットを前記第2スレーブクロック(CLK_P2S1)に基づいて伝送または受信するよう、前記第2ブルートゥース通信回路(121)を制御する処理と、
を行い、
さらに、前記第2制御回路(124)は、前記第2マスタークロック(CLK_P2M)または前記第2スレーブクロック(CLK_P2S1)に同期し且つ前記ブルートゥース主回路(110)によって生成された第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)に間接的に同期した前記第2オーディオサンプリングクロック(CLK_A2)が前記第2サンプリングクロック調整回路(126)から生成されるよう、前記第2サンプリングクロック調整回路(126)を制御し、
さらに、前記第2制御回路(124)は、前記第2オーディオデータに対応した第2
オーディオ再生タイムスタンプを、前記第2ブルートゥース通信回路(121)を介して前記ブルートゥース主回路(110)に伝送し、
前記ブルートゥース主回路(110)が前記第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)の位相を校正して該第1オーディオサンプリングクロック(CLK_A1)を現在の第2オーディオサンプリングクロック(CLK_A2)と同期させ
る、
ブルートゥース副回路(120)。
【請求項6】
前記第2制御回路(124)は、周波数が実質的に前記第2マスタークロック(CLK_P2M)と同様で且つ位相が実質的に前記第2マスタークロック(CLK_P2M)に一致した前記第2スレーブクロック(CLK_P2S1)が前記第2クロック調整回路(123)から生成されるよう、前記第2クロック調整回路(123)を前記第2マスタークロック(CLK_P2M)
のデータに基づいて制御する、
請求項
5に記載のブルートゥース副回路(120)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブルートゥース(登録商標)技術に関し、特に、異なるブルートゥース回路によるオーディオ再生を同期させ続けることが可能なマルチ構成要員型ブルートゥース装置における、ブルートゥース主回路およびブルートゥース副回路に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチ構成要員(multi-member)型ブルートゥース装置とは、互いに協働する複数のブルートゥース回路からなるブルートゥース装置、例えば、ペアとなっているブルートゥースイヤホン、ワンセットとなっているブルートゥーススピーカー等を指す。マルチ構成要員型ブルートゥース装置が他のブルートゥース装置(以下、遠隔ブルートゥース装置と称する)と接続を立ち上げるとき、遠隔ブルートゥース装置は、マルチ構成要員型ブルートゥース装置を1つの単独のブルートゥース装置と見做して扱う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のマルチ構成要員型ブルートゥース装置の多くは、オーディオ再生機能を備えている。その様々な応用として、ステレオ音響効果またはサラウンド音響効果が再現されるように、異なるブルートゥース回路が互いに協働してオーディオデータを再生する場合がある。しかし、マルチ構成要員型ブルートゥース装置中の異なるブルートゥース回路によるオーディオ再生動作が互いに同期できない場合、悪い使用体験をユーザに与えてしまい、ひいては、マルチ構成要員型ブルートゥース装置の応用価値および柔軟的な利用性が低下してしまう。
【0004】
上記の問題に鑑み、マルチ構成要員型ブルートゥース装置中の異なるブルートゥース回路によるオーディオ再生を如何に同期させ続けるかは、切実に解決すべき課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施例として、本願は、マルチ構成要員型ブルートゥース装置におけるブルートゥース主回路を提供する。前記マルチ構成要員型ブルートゥース装置は、第1ブルートゥースピコネット上のマスター装置として動作するソースブルートゥース装置とデータ伝送を行い、前記ブルートゥース主回路およびブルートゥース副回路を含む。該ブルートゥース主回路は、第1ブルートゥース通信回路と、第1クロック調整回路と、前記第1ブルートゥース通信回路および前記第1クロック調整回路に結合的に接続している第1制御回路であって、前記ブルートゥース主回路が前記第1ブルートゥースピコネット上のスレーブ装置として動作し且つ第2ブルートゥースピコネット上のマスター装置として動作するよう、前記ブルートゥース主回路を制御する第1制御回路と、前記第1制御回路に結合的に接続している第1サンプリングクロック調整回路と、前記第1サンプリングクロック調整回路に結合的に接続している第1非同期サンプリングレート変換回路であって、第1オーディオサンプリングクロックに基づき第1オーディオデータについてサンプリングするとともに、サンプリングしたデータを再生用に第1再生回路に伝送する第1非同期サンプリングレート変換回路と、を含む。さらに、前記第1制御回路は、前記ソースブルートゥース装置によって生成された第1マスタークロックに共に同期した第1スレーブクロックおよび第2マスタークロックが前記第1クロック調整回路から生成されるよう、前記第1クロック調整回路を前記第1マスタークロックの時系列データに基づいて制御する処理と、前記第1ブルートゥース通信回路が前記第1ブルートゥースピコネット上でパケットを前記第1スレーブクロックに基づいて伝送または受信するよう、前記第1ブルートゥース通信回路を制御する処理と、前記第1ブルートゥース通信回路が前記第2ブルートゥースピコネット上でパケットを前記第2マスタークロックに基づいて伝送または受信することで、前記ブルートゥース副回路においてパケットが、前記第2マスタークロックに同期した第2スレーブクロックに基づいて前記第2ブルートゥースピコネット上で伝送または受信されるよう、前記第1ブルートゥース通信回路を制御する処理と、を行う。
【0006】
別の実施例として、本願は、マルチ構成要員型ブルートゥース装置におけるブルートゥース副回路を提供する。前記マルチ構成要員型ブルートゥース装置は、第1ブルートゥースピコネット上のマスター装置として動作するソースブルートゥース装置とデータ伝送を行い、ブルートゥース主回路および前記ブルートゥース副回路を含む。前記ブルートゥース主回路は、前記第1ブルートゥースピコネット上のスレーブ装置として動作し且つ第2ブルートゥースピコネット上のマスター装置として動作する。前記ブルートゥース主回路は、第1オーディオサンプリングクロックに基づき第1オーディオデータについてサンプリングするとともに、前記ソースブルートゥース装置によって生成された第1マスタークロックに共に同期した第1スレーブクロックおよび第2マスタークロックを前記第1マスタークロックの時系列データに基づいて生成することにより、前記第1ブルートゥースピコネット上でパケットを前記第1スレーブクロックに基づいて伝送または受信するとともに、前記第2ブルートゥースピコネット上でパケットを前記第2マスタークロックに基づいて伝送または受信する。該ブルートゥース副回路は、第2ブルートゥース通信回路と、第2クロック調整回路と、前記第2ブルートゥース通信回路および前記第2クロック調整回路に結合的に接続している第2制御回路であって、前記ブルートゥース副回路が前記第2ブルートゥースピコネット上のスレーブ装置として動作するよう、前記ブルートゥース副回路を制御する第2制御回路と、前記第2制御回路に結合的に接続している第2サンプリングクロック調整回路と、前記第2サンプリングクロック調整回路に結合的に接続している第2非同期サンプリングレート変換回路であって、第2オーディオサンプリングクロックに基づき第2オーディオデータについてサンプリングするとともに、サンプリングしたデータを再生用に第2再生回路に伝送する第2非同期サンプリングレート変換回路と、を含む。さらに、前記第2制御回路は、前記第2マスタークロックに同期した第2スレーブクロックが前記第2クロック調整回路から生成されるよう、前記第2クロック調整回路を前記第2マスタークロックの時系列データに基づいて制御する処理と、前記第2ブルートゥース通信回路が前記第2ブルートゥースピコネット上でパケットを前記第2スレーブクロックに基づいて伝送または受信するよう、前記第2ブルートゥース通信回路を制御する処理と、を行う。
【発明の効果】
【0007】
上記の実施例によれば、ブルートゥース主回路はその内部の第1スレーブクロックおよび第2マスタークロックの両方を、ソースブルートゥース装置によって決定された第1マスタークロックと同期させる。そのため、比較的簡単な回路構成を用いて第1クロック調整回路を実現することができる、という一利点を有する。
【0008】
また、上記の実施例によれば、ブルートゥース主回路が用いる第1スレーブクロックおよび第2マスタークロックは両方とも、第1マスタークロックに同期している。そのため、ブルートゥース主回路におけるブルートゥース帯域利用効率を効果的に向上させることができる、という別の利点を有する。
【0009】
上記の別の実施例によれば、ブルートゥース副回路が用いる第2スレーブクロックは第2マスタークロックに同期しており、第1マスタークロックにも間接的に同期している。そのため、ブルートゥース副回路におけるブルートゥース帯域利用効率を効果的に向上させることができる、という一利点を有する。
【0010】
また、上記の別の実施例によれば、ブルートゥース副回路において用いられる第2オーディオサンプリングクロックが、ブルートゥース主回路において用いられる第1オーディオサンプリングクロックに間接的に同期するため、第2再生回路によるオーディオ再生動作も、第1再生回路によるオーディオ再生動作に同期する、という更なる利点を有する。
【0011】
本発明のその他の利点は、以下の説明および図面に参照しつつより詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例に係るマルチ構成要員型ブルートゥース装置の簡略化機能ブロック図である。
【
図2】本発明の一実施例として、異なるブルートゥース回路によるオーディオ再生動作を同期させる方法の簡略化フローチャートである。
【
図3】一実施例として、
図1のマルチ構成要員型ブルートゥース装置によってスキャッタネットが構成される簡略化模式図である。
【
図4】本発明の別の実施例として、異なるブルートゥース回路によるオーディオ再生動作を同期させる方法の簡略化フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、関連する図面を参照しつつ、本発明の実施例を説明する。なお、図中、同様また類似の部材もしくは方法ステップは同一符号で示す。
【0014】
図1は、本発明の一実施例に係るマルチ構成要員型ブルートゥース装置100の簡略化機能ブロック図である。マルチ構成要員型ブルートゥース装置100は、ソースブルートゥース装置102とデータ伝送を行い、複数の構成要員回路(member circuit)を含む。なお、説明の便宜上、
図1の実施例では、2つの構成要員回路、すなわち、ブルートゥース主回路110およびブルートゥース副回路120のみを図示している。
【0015】
本実施例では、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100中の全ての構成要員回路が共に類似のメイン回路構成を有するが、それぞれの構成要員回路中に、異なる追加回路素子を設けてもよく、全ての構成要員回路の回路構成が完全に同様であるということに限定されない。例えば、
図1に示すように、ブルートゥース主回路110は、第1ブルートゥース通信回路111、第1パケット分析回路112、第1クロック調整回路113、第1制御回路114、第1バッファ回路115、第1サンプリングクロック調整回路116、第1非同期サンプリングレート変換回路117、および第1再生回路118を含む。これと同様に、ブルートゥース副回路120は、第2ブルートゥース通信回路121、第2パケット分析回路122、第2クロック調整回路123、第2制御回路124、第2バッファ回路125、第2サンプリングクロック調整回路126、第2非同期サンプリングレート変換回路127、および第2再生回路128を含む。
【0016】
ブルートゥース主回路110において、第1ブルートゥース通信回路111は、他のブルートゥース装置とデータ通信することができる。第1パケット分析回路112は、第1ブルートゥース通信回路111にて受信されたブルートゥースパケットを分析することができる。第1クロック調整回路113は、ブルートゥース主回路110の一部の動作クロック信号を調整することにより、該動作クロック信号を、ブルートゥース主回路110と他のブルートゥース装置との間で用いられるピコネットクロック(piconet clock)と同期させることができる。
【0017】
第1制御回路114は、第1ブルートゥース通信回路111、第1パケット分析回路112および第1クロック調整回路113と結合的に接続しており、これら回路の動作方式を制御するように構成されている。動作する際、第1制御回路114は、第1ブルートゥース通信回路111を介してブルートゥース無線伝送方式にてソースブルートゥース装置102と直接にデータ通信すること、および、第1ブルートゥース通信回路111を介して他の構成要員回路とデータ通信することができる。さらに、第1制御回路114は、第1パケット分析回路112を用い、第1ブルートゥース通信回路111にて受信されたパケットを分析することにより、関連するデータまたは指令を取得する。
【0018】
第1バッファ回路115は、再生対象となるオーディオデータ(以下、第1オーディオデータと称する)を保存することができる。実際の応用として、前記第1オーディオデータは、予めメーカーまたはユーザが第1バッファ回路115中に保存したオーディオデータ、ソースブルートゥース装置102から伝送されてきたオーディオデータ、他のブルートゥース回路(例えばブルートゥース副回路120)から伝送されてきたオーディオデータ、またはその他の回路から伝送されてきたオーディオデータであってもよい。
【0019】
第1制御回路114と結合的に接続している第1サンプリングクロック調整回路116は、第1制御回路114からの制御を受けて第1オーディオサンプリングクロックを生成するように構成されている。
【0020】
第1サンプリングクロック調整回路116および第1再生回路118と結合的に接続している第1非同期サンプリングレート変換回路117は、前記第1オーディオサンプリングクロックに基づいて、第1バッファ回路115中の第1オーディオデータについてサンプリングするとともに、サンプリングしたデータを再生用に第1再生回路118に伝送するように構成されている。
【0021】
ブルートゥース副回路120において、第2ブルートゥース通信回路121は、他のブルートゥース装置とデータ通信することができる。第2パケット分析回路122は、第2ブルートゥース通信回路121にて受信されたブルートゥースパケットを分析することができる。第2クロック調整回路123は、ブルートゥース副回路120の一部の動作クロック信号を調整することにより、該動作クロック信号を、ブルートゥース副回路120と他のブルートゥース装置との間で用いられるピコネットクロックと同期させることができる。
【0022】
第2制御回路124は、第2ブルートゥース通信回路121、第2パケット分析回路122および第2クロック調整回路123と結合的に接続しており、これらの回路の動作方式を制御するように構成されている。動作する際、第2制御回路124は、第2ブルートゥース通信回路121を介してブルートゥース無線伝送方式にて他のブルートゥース装置とデータ通信すること、および、第2ブルートゥース通信回路121を介して他の構成要員回路とデータ通信することができる。さらに、第2制御回路124は、第2パケット分析回路122を用い、第2ブルートゥース通信回路121にて受信されたパケットを分析することにより、関連するデータおよび指令を取得する。
【0023】
第2バッファ回路125は、再生対象となるオーディオデータ(以下、第2オーディオデータと称する)を保存することができる。実際の応用として、前記第2オーディオデータは、予めメーカーまたはユーザが第2バッファ回路115中に保存したオーディオデータ、ソースブルートゥース装置102から伝送されてきたオーディオデータ、他のブルートゥース回路(例えばブルートゥース主回路110)から伝送されてきたオーディオデータ、またはその他の回路から伝送されてきたオーディオデータであってもよい。
【0024】
第2制御回路124と結合的に接続している第2サンプリングクロック調整回路126は、第2制御回路124からの制御を受けて第2オーディオサンプリングクロックを生成するように構成されている。
【0025】
第2サンプリングクロック調整回路126および第2再生回路128と結合的に接続している第2非同期サンプリングレート変換回路127は、前記第2オーディオサンプリングクロックに基づいて、第2バッファ回路125中の第2オーディオデータについてサンプリングするとともに、サンプリングしたデータを再生用に第2再生回路128に伝送するように構成されている。
【0026】
実際の応用において、前記第1ブルートゥース通信回路111および第2ブルートゥース通信回路121のいずれも、様々なバージョンのブルートゥース通信プロトコルを支持する好適な無線通信回路によって実現されてもよい。前記第1パケット分析回路112および第2パケット分析回路122のいずれも、様々なパケット復調-変調回路、デジタル演算回路、マイクロプロセッサ、または特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit,ASIC)によって実現されてもよい。上述した第1クロック調整回路113、第2クロック調整回路123、第1サンプリングクロック調整回路116および第2サンプリングクロック調整回路126のいずれも、クロック周波数および/またはクロック位相を比較、調整できる各種の好適な回路、例えば、様々なフェイズロックドループ回路(phase-locked loop,PLL)若しくはディレイロックドループ回路(delay-locked loop,DLL)等によって実現されてもよい。前記第1制御回路114および第2制御回路124のいずれも、適切な演算能力を有する様々なマイクロプロセッサ若しくはデジタル信号処理回路によって実現されてもよい。前記第1バッファ回路115および第2バッファ回路125のいずれも、様々な揮発性記憶回路または不揮発性記憶回路によって実現されてもよい。前記第1非同期サンプリングレート変換回路117および第2非同期サンプリングレート変換回路127のいずれも、適した様々なデジタル回路、アナログ回路、またはデジタル-アナログ混合回路によって実現されてもよい。前記第1再生回路118および第2再生回路128のいずれも、適した様々なデジタルオーディオ再生回路、アナログオーディオ再生回路、またはデジタル-アナログ混合再生回路によって実現されてもよい。
【0027】
幾つかの実施例において、第1クロック調整回路113または第2クロック調整回路123をそれぞれ、第1制御回路114または第2制御回路124内に統合してもよく、第1サンプリングクロック調整回路116または第2サンプリングクロック調整回路126をそれぞれ、第1制御回路114または第2制御回路124内に統合してもよい。また、前記第1パケット分析回路112および第2パケット分析回路122をそれぞれ、前記第1ブルートゥース通信回路111および第2ブルートゥース通信回路121内に統合してもよい。
【0028】
換言すれば、前記第1ブルートゥース通信回路111および第1パケット分析回路112は、別々の回路を用いて実現してもよく、同一回路を用いて実現してもよい。同様に、前記第2ブルートゥース通信回路121および第2パケット分析回路122は、別々の回路を用いて実現してもよく、同一回路を用いて実現してもよい。
【0029】
応用の際、前記ブルートゥース主回路110中の異なる機能ブロックを1つの単独の回路チップ内に統合してもよい。例えば、ブルートゥース主回路110中の全ての機能ブロック、または第1再生回路118以外の機能ブロックを1つの単独のブルートゥース制御チップ(Bluetooth(登録商標) controller IC)内に統合してもよい。同様に、ブルートゥース副回路120中の全ての機能ブロック、または第2再生回路128以外の機能ブロックをもう1つの単独のブルートゥース制御チップ内に統合してもよい。
【0030】
実際の応用において、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100は、互いに協働する複数のブルートゥース回路からなるブルートゥース装置、例えば、ペアとなっているブルートゥースイヤホン、ワンセットとなっているブルートゥーススピーカー等として実現されてもよい。また、ソースブルートゥース装置102は、様々なコンピュータ、携帯電話、タブレット、スマートオーディオ機器、ゲーム機など、ブルートゥース通信機能を有する電子機器として実現されてもよい。
【0031】
上述したように、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100中の異なる構成要員回路は、各自のブルートゥース通信回路を介して相互にデータ通信することにより、様々な形態のブルートゥースネットワークを形成することができる。マルチ構成要員型ブルートゥース装置100とソースブルートゥース装置102とがデータ通信を行う際、ソースブルートゥース装置102は、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100を1つの単独のブルートゥース装置と見做して扱う。
【0032】
ブルートゥース主回路110は、ソースブルートゥース装置102から送信されてくるパケットを既知の様々な方式にて受信することができる。そして、ブルートゥース副回路120は、ブルートゥース主回路110の動作過程中に、ソースブルートゥース装置102から送信されてくるパケットを適切な方式にて取得してもよい。
【0033】
例えば、ソースブルートゥース装置102から送信されてくるパケットをブルートゥース主回路110が受信する過程中に、ブルートゥース副回路120は、傍受モード(sniffing mode)下で動作し、ソースブルートゥース装置102から送信されてくるパケットを自発的に傍受してもよい。あるいは、ブルートゥース副回路120は、間接受信モード(relay mode)下で動作し、ブルートゥース主回路110のほうから転送されてきた、ソースブルートゥース装置102からのパケットを受動的に受信するのみで、ソースブルートゥース装置102から送信されてくるパケットを自発的に傍受しなくてもよい。
【0034】
なお、明細書および特許請求の範囲において記載される「ブルートゥース主回路」および「ブルートゥース副回路」という二つの用語は、ソースブルートゥース装置102から送信されてくるパケットの受信方式が構成要員回路によって異なるということを示すためだけであり、ブルートゥース副回路120の他の動作の制御権限がブルートゥース主回路110によって或る程度に制限されるか否かを意味するものではない。実際の適用として、ブルートゥース主回路110が担う役割、および、ブルートゥース副回路120が担う役割は、断続的または周期的に互いに置き換え、または何らかの条件が満たされた場合に互いに置き換えてもよい。
【0035】
以下、
図2および
図3を参照しながら、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100の動作形態をさらに説明する。
図2は、本発明の一実施例として、異なるブルートゥース回路によるオーディオ再生動作を同期させる方法の簡略化フローチャートである。
図3は一実施例として、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100によってスキャッタネット(scatternet)が構築される簡略化模式図である。
【0036】
図2のフローチャートにおいて、特定の装置が属する枠内のステップは、該特定の装置が実行するステップを表す。例えば、「ソースブルートゥース装置」という枠内に表記された部分は、ソースブルートゥース装置102が実行するステップであり、「ブルートゥース主回路」という枠内に表記された部分は、ブルートゥース主回路110が実行するステップであり、「ブルートゥース副回路」という枠内に表記された部分は、ブルートゥース副回路120が実行するステップである。このロジックは、後続の他のフローチャートにも適用される。
【0037】
図2に示すように、先ず、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100中のブルートゥース主回路110と、ソースブルートゥース装置102とがステップ202を実行し、ブルートゥース通信標準における規範に合致する様々な方式を用いて
図3の示すような第1ブルートゥースピコネット310を構築する。ステップ202では、ソースブルートゥース装置102は、第1ブルートゥースピコネット310上のマスター装置(master)として動作し、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100中のブルートゥース主回路110は、第1ブルートゥースピコネット310上のスレーブ装置(slave)として動作する。
【0038】
ステップ204において、ソースブルートゥース装置102は、第1マスタークロックCLK_P1Mを生成するとともに、該第1マスタークロックCLK_P1Mに基づき、ブルートゥースパケットを第1ブルートゥースピコネット310上で伝送または受信する時系列をスケジューリング(schedule)する。したがって、第1マスタークロックCLK_P1Mは、単にソースブルートゥース装置102におけるネーティブシステムクロック(native system clock)だけではなく、同時に第1ブルートゥースピコネット310上のマスタークロック(master clock)でもある。
【0039】
また、ソースブルートゥース装置102は、第1マスタークロックCLK_P1Mの時系列データを含む第1ピコネット時系列パケットを生成し、これを第1ブルートゥースピコネット310に伝送してもよい。実際の応用において、ソースブルートゥース装置102は、適した様々なデータを第1マスタークロックCLK_P1Mの時系列データとして用いてもよい。例えば、ソースブルートゥース装置102は、第1マスタークロックCLK_P1Mにおける特定のエッジ(例えば上昇エッジ)のカウント値(count value)を第1マスタークロックCLK_P1Mの時系列データとして用い、該第1マスタークロックCLK_P1Mに対応した前記カウント値をホッピング同期パケット(frequency hop synchronization packet,FHSパケット)内に書き込むことにより前記第1ピコネット時系列パケットを作成してもよい。
【0040】
ステップ206において、ブルートゥース主回路110は、第1マスタークロックCLK_P1Mの時系列データに基づき、第1マスタークロックCLK_P1Mに同期した第1スレーブクロックCLK_P1S1を、第1ブルートゥースピコネット310上のスレーブクロック(slave clock)として生成してもよい。実際の応用として、第1ブルートゥース通信回路111は、ソースブルートゥース装置102によって生成された第1ピコネット時系列パケットを、第1ブルートゥースピコネット310を介して受信し、第1制御回路114は、第1パケット分析回路112を制御し、この制御を受けた第1パケット分析回路112は、第1ピコネット時系列パケットの中から、前記第1マスタークロックCLK_P1Mの時系列データ、例えば関連する当該カウント値を取得してもよい。
【0041】
続いて、第1制御回路114は第1マスタークロックCLK_P1Mの時系列データに基づいて第1クロック調整回路113を制御し、この制御を受けた第1クロック調整回路113は、第1マスタークロックCLK_P1Mに同期した第1スレーブクロックCLK_P1S1を生成してもよい。例えば、第1制御回路114は、第1マスタークロックCLK_P1Mの時系列データに基づいて第1クロック調整回路113を制御し、この制御を受けた第1クロック調整回路113は、第1参考クロックCLK_R1の周波数および/または位相のオフセット量を調整することにより、周波数が実質的に第1マスタークロックCLK_P1Mと同様で且つ位相が実質的に第1マスタークロックCLK_P1Mに一致した第1スレーブクロックCLK_P1S1を、生成してもよい。なお、実際の応用として、前記第1参考クロックCLK_R1は、ブルートゥース主回路110の内部または外部に存在する各種の好適なクロック生成回路によって生成されたものであってもよい。
【0042】
また、動作する際、第1制御回路114は第1ブルートゥース通信回路111を制御し、この制御を受けた第1ブルートゥース通信回路111は、第1ブルートゥースピコネット310上でブルートゥースパケットを伝送または受信する時系列を、第1スレーブクロックCLK_P1S1に基づいてスケジューリングしてもよい。
【0043】
ステップ208において、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100中のブルートゥース主回路110およびブルートゥース副回路120は、ブルートゥース通信標準における規範に合致する様々な方式を用いて、
図3の示すような第2ブルートゥースピコネット320を構築してもよい。本実施例では、ブルートゥース主回路110は第2ブルートゥースピコネット320上のマスター装置として動作し、ブルートゥース副回路120は第2ブルートゥースピコネット320上のスレーブ装置として動作する。
【0044】
換言すれば、ブルートゥース主回路110は、上述した第1ブルートゥースピコネット310に属するだけではなく、同時に第2ブルートゥースピコネット320にも属する。
【0045】
ステップ210において、第1制御回路114は、第1クロック調整回路113を第1マスタークロックCLK_P1Mの時系列データ、または第1スレーブクロックCLK_P1S1の時系列データに基づいて制御し、この制御を受けた第1クロック調整回路113は、第1マスタークロックCLK_P1Mに同期した第2マスタークロックCLK_P2Mを生成してもよい。例えば、第1制御回路114は、第1クロック調整回路113を第1マスタークロックCLK_P1Mの時系列データ、または第1スレーブクロックCLK_P1S1の時系列データを基づいて制御し、この制御を受けた第1クロック調整回路113は、前記第1参考クロックCLK_R1の周波数および/または位相のオフセット量を調整することにより、周波数が実質的に第1マスタークロックCLK_P1Mと同様で且つ位相が実質的に第1マスタークロックCLK_P1Mに一致した第2マスタークロックCLK_P2Mを、生成してもよい。
【0046】
動作する際、第1制御回路114は第1ブルートゥース通信回路111を制御し、この制御を受けた第1ブルートゥース通信回路111は、第2ブルートゥースピコネット320上でブルートゥースパケットを伝送または受信する時系列を、第2マスタークロックCLK_P2Mに基づいてスケジューリングしてもよい。したがって、第2マスタークロックCLK_P2Mは、単にブルートゥース主回路110におけるネーティブシステムクロック(native system clock)だけではなく、同時に第2ブルートゥースピコネット320上のマスタークロック(master clock)でもある。
【0047】
上述したように、第1クロック調整回路113にて生成される第1スレーブクロックCLK_P1S1および第2マスタークロックCLK_P2Mは、両方とも、ソースブルートゥース装置102にて生成された第1マスタークロックCLK_P1Mに同期する。すなわち、第1スレーブクロックCLK_P1S1および第2マスタークロックCLK_P2Mは、両方とも、周波数が実質的に第1マスタークロックCLK_P1Mと同様であり、且つ、両方とも、位相が実質的に第1マスタークロックCLK_P1Mに一致する。
【0048】
実際の応用において、第1制御回路114は、前記第1スレーブクロックCLK_P1S1および第2マスタークロックCLK_P2Mのそれぞれに対し、異なるカウント値を与えてもよい。
【0049】
ブルートゥース主回路110の内部の第1スレーブクロックCLK_P1S1および第2マスタークロックCLK_P2Mを互いに同期させる上記の態様によれば、ブルートゥース主回路110におけるブルートゥース帯域利用効率を効果的に向上させることができる。
【0050】
また、前記ステップ210において、第1制御回路114は、第2マスタークロックCLK_P2Mの時系列データを含む第2ピコネット時系列パケットを生成するとともに、第1ブルートゥース通信回路111を介して該第2ピコネット時系列パケットを第2ブルートゥースピコネット320に伝送してもよい。実際の応用において、第1制御回路114は、適した様々なデータを第2マスタークロックCLK_P2Mの時系列データとして用いてもよい。例えば、第1制御回路114は、第2マスタークロックCLK_P2Mにおける特定のエッジ(例えば上昇エッジ)のカウント値を第2マスタークロックCLK_P2Mの時系列データとして用い、該第2マスタークロックCLK_P2Mに対応した前記カウント値をホッピング同期パケット内に書き込むことにより前記第2ピコネット時系列パケットを作成してもよい。
【0051】
ステップ212において、ブルートゥース副回路120は、第2マスタークロックCLK_P2Mの時系列データに基づき、第2マスタークロックCLK_P2Mに同期した第2スレーブクロックCLK_P2S1を、第2ブルートゥースピコネット320上のスレーブクロックとして生成してもよい。実際の応用において、第2ブルートゥース通信回路121は、ブルートゥース主回路110によって生成された第2ピコネット時系列パケットを、第2ブルートゥースピコネット320を介して受信し、第2制御回路124は第2パケット分析回路122を制御し、この制御を受けた第2パケット分析回路122は第2ピコネット時系列パケットの中から、前記第2マスタークロックCLK_P2Mの時系列データ、例えば関連する当該カウント値を取得してもよい。
【0052】
続いて、第2制御回路124は第2マスタークロックCLK_P2Mの時系列データに基づいて第2クロック調整回路123を制御し、この制御を受けた第2クロック調整回路123は、第2マスタークロックCLK_P2Mに同期した第2スレーブクロックCLK_P2S1を生成してもよい。例えば、第2制御回路124は、第2マスタークロックCLK_P2Mの時系列データに基づいて第2クロック調整回路123を制御し、この制御を受けた第2クロック調整回路123は、第2参考クロックCLK_R2の周波数および/または位相のオフセット量を調整することにより、周波数が実質的に第2マスタークロックCLK_P2Mと同様で且つ位相が実質的に第2マスタークロックCLK_P2Mに一致した第2スレーブクロックCLK_P2S1を、生成してもよい。なお、実際の応用として、前記第2参考クロックCLK_R2は、ブルートゥース副回路120の内部または外部に存在する各種の好適なクロック生成回路によって生成されたものであってもよい。
【0053】
また、ステップ212では、第2制御回路124は第2マスタークロックCLK_P2Mの時系列データに基づいて第2クロック調整回路123を制御し、この制御を受けた第2クロック調整回路123は、第2マスタークロックCLK_P2Mに同期した第3スレーブクロックCLK_P1S2を生成してもよい。例えば、第2制御回路124は第2マスタークロックCLK_P2Mの時系列データに基づいて第2クロック調整回路123を制御し、この制御を受けた第2クロック調整回路123は、前記第2参考クロックCLK_R2の周波数および/または位相のオフセット量を調整することにより、周波数が実質的に第2マスタークロックCLK_P2Mと同様で且つ位相が実質的に第2マスタークロックCLK_P2Mに一致した第3スレーブクロックCLK_P1S2を、生成してもよい。
【0054】
ブルートゥース主回路110にて生成される第2マスタークロックCLK_P2Mが、ソースブルートゥース装置102にて生成された第1マスタークロックCLK_P1Mに同期するため、第2クロック調整回路123にて生成される前記第3スレーブクロックCLK_P1S2も、ソースブルートゥース装置102にて生成された第1マスタークロックCLK_P1Mに間接的に同期することになる。したがって、ブルートゥース副回路120は、第3スレーブクロックCLK_P1S2を、第1ブルートゥースピコネット310上のスレーブクロックとして利用することができる。このようにして、ブルートゥース副回路120は、第1ブルートゥースピコネット310上のブルートゥースパケットを、ソースブルートゥース装置102に把握されずに、傍受(sniffing)の形式で受信することができる。
【0055】
上述したように、第2クロック調整回路123にて生成される第2スレーブクロックCLK_P2S1および第3スレーブクロックCLK_P1S2は、両方とも、ブルートゥース主回路110にて生成された第2マスタークロックCLK_P2Mに同期する。すなわち、第2スレーブクロックCLK_P2S1および第3スレーブクロックCLK_P1S2は、両方とも、周波数が実質的に第2マスタークロックCLK_P2Mと同様であり、且つ、両方とも、位相が実質的に第2マスタークロックCLK_P2Mに一致する。
【0056】
実際の応用において、第2制御回路124は、前記第2スレーブクロックCLK_P2S1および第3スレーブクロックCLK_P1S2のそれぞれに対し、異なるカウント値を与えてもよい。
【0057】
ブルートゥース副回路120内部の第2スレーブクロックCLK_P2S1および第3スレーブクロックCLK_P1S2を互いに同期させる上記の態様によれば、ブルートゥース副回路120におけるブルートゥース帯域利用効率を効果的に向上させることができる。
【0058】
このようにして、第2制御回路124は第2ブルートゥース通信回路121を制御し、この制御を受けた2ブルートゥース通信回路121は、第2ブルートゥースピコネット320上でブルートゥースパケットを伝送または受信する時系列を、第2スレーブクロックCLK_P2S1に基づいてスケジューリングすることができる。また、第2制御回路124は、第1ブルートゥースピコネット310上のブルートゥースパケットを傍受できるように、第1ブルートゥースピコネット310上でブルートゥースパケットを受信する時系列を第3スレーブクロックCLK_P1S2に基づいてスケジューリングしてもよい。
【0059】
図2に示すように、本実施例におけるマルチ構成要員型ブルートゥース装置100は、ブルートゥース主回路110およびブルートゥース副回路120の両者によるオーディオ再生が互いに同期し続けられるよう、さらにステップ214~ステップ226の動作を実行する。
【0060】
ステップ214において、第1制御回路114は第1サンプリングクロック調整回路116を制御し、この制御を受けた第1サンプリングクロック調整回路116は、第1マスタークロックCLK_P1M、第1スレーブクロックCLK_P1S1または第2マスタークロックCLK_P2Mに同期した第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1を、生成してもよい。本実施例では、第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1は、第1バッファ回路115中に保存されている第1オーディオデータについてサンプリングするための、クロック信号である。そのため、第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1の周波数は、通常、第1マスタークロックCLK_P1M、第1スレーブクロックCLK_P1S1および第2マスタークロックCLK_P2Mよりも低い。但し、第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1の周波数は、前記第1マスタークロックCLK_P1M、第1スレーブクロックCLK_P1S1、または第2マスタークロックCLK_P2Mの周波数とは常に固定の倍率関係にある。
【0061】
例えば、第1制御回路114は第1マスタークロックCLK_P1Mの時系列データに基づいて第1サンプリングクロック調整回路116を制御し、この制御を受けた第1サンプリングクロック調整回路116は、第1サンプリングクロックCLK_S1の周波数および/または位相のオフセット量を調整することにより、周波数が実質的に第1マスタークロックCLK_P1Mと所定の倍率関係にあり且つ位相が実質的に第1マスタークロックCLK_P1Mに一致した第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1を、生成してもよい。
【0062】
また、例えば、第1制御回路114は第1スレーブクロックCLK_P1S1の時系列データに基づいて第1サンプリングクロック調整回路116を制御し、この制御を受けた第1サンプリングクロック調整回路116は、第1サンプリングクロックCLK_S1の周波数および/または位相のオフセット量を調整することにより、周波数が実質的に第1スレーブクロックCLK_P1S1と所定の倍率関係にあり且つ位相が実質的に第1スレーブクロックCLK_P1S1に一致した第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1を、生成してもよい。
【0063】
さらに、例えば、第1制御回路114は第2マスタークロックCLK_P2Mの時系列データに基づいて第1サンプリングクロック調整回路116を制御し、この制御を受けた第1サンプリングクロック調整回路116は、第1サンプリングクロックCLK_S1の周波数および/または位相のオフセット量を調整することにより、周波数が実質的に第2マスタークロックCLK_P2Mと所定の倍率関係にあり且つ位相が実質的に第2マスタークロックCLK_P2Mに一致した第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1を、生成してもよい。
【0064】
なお、実際の応用として、前記第1サンプリングクロックCLK_S1は、ブルートゥース主回路110の内部または外部に存在する各種の好適なクロック生成回路によって生成されたものであってもよい。
【0065】
ステップ216において、第1非同期サンプリングレート変換回路117は、第1制御回路114からの制御に従い、第1バッファ回路115中に保存されている第1オーディオデータについて、第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1に基づいてサンプリングするとともに、サンプリングしたオーディオデータを再生用に第1再生回路118に伝送してもよい。
【0066】
他方、ブルートゥース副回路120は、
図2中のステップ218およびステップ220を実行する。
【0067】
ステップ218において、第2制御回路124は第2サンプリングクロック調整回路126を制御し、この制御を受けた第2サンプリングクロック調整回路126は、第2マスタークロックCLK_P2M、第2スレーブクロックCLK_P2S1または第3スレーブクロックCLK_P1S2に同期しており且つ周波数が実質的に第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1と同様である第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2を、生成してもよい。本実施例では、第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2は、第2バッファ回路125中に保存されている第2オーディオデータについてサンプリングするための、クロック信号である。そのため、第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2の周波数は、通常、第2マスタークロックCLK_P2M、第2スレーブクロックCLK_P2S1および第3スレーブクロックCLK_P1S2よりも低い。但し、第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2の周波数は、前記第2マスタークロックCLK_P2M、第2スレーブクロックCLK_P2S1、または第3スレーブクロックCLK_P1S2の周波数とは常に固定の倍率関係にある。
【0068】
例えば、第2制御回路124は第2マスタークロックCLK_P2Mの時系列データに基づいて第2サンプリングクロック調整回路126を制御し、この制御を受けた第2サンプリングクロック調整回路126は、第2サンプリングクロックCLK_S2の周波数および/または位相のオフセット量を調整することにより、周波数が実質的に第2マスタークロックCLK_P2Mと所定の倍率関係にあり且つ位相が実質的に第2マスタークロックCLK_P2Mに一致した第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2を、生成してもよい。
【0069】
また、例えば、第2制御回路124は第2スレーブクロックCLK_P2S1の時系列データに基づいて第2サンプリングクロック調整回路126を制御し、この制御を受けた第2サンプリングクロック調整回路126は、第2サンプリングクロックCLK_S2の周波数および/または位相のオフセット量を調整することにより、周波数が実質的に第2スレーブクロックCLK_P2S1と所定の倍率関係にあり且つ位相が実質的に第2スレーブクロックCLK_P2S1に一致した第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2を、生成してもよい。
【0070】
さらに、例えば、第2制御回路124は第3スレーブクロックCLK_P1S2の時系列データに基づいて第2サンプリングクロック調整回路126を制御し、この制御を受けた第2サンプリングクロック調整回路126は、第2サンプリングクロックCLK_S2の周波数および/または位相のオフセット量を調整することにより、周波数が実質的に第3スレーブクロックCLK_P1S2と所定の倍率関係にあり且つ位相が実質的に第3スレーブクロックCLK_P1S2に一致した第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2を、生成してもよい。
【0071】
なお、実際の応用として、前記第2サンプリングクロックCLK_S2は、ブルートゥース副回路120の内部または外部に存在する各種の好適なクロック生成回路によって生成されたものであってもよい。
【0072】
ステップ220において、第2非同期サンプリングレート変換回路127は、第2制御回路124からの制御に従い、第2バッファ回路125中に保存されている第2オーディオデータについて、第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2に基づいてサンプリングするとともに、サンプリングしたオーディオデータを再生用に第2再生回路128に伝送してもよい。
【0073】
上述したように、ブルートゥース主回路110にて生成される第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1は、第1マスタークロックCLK_P1M、第1スレーブクロックCLK_P1S1または第2マスタークロックCLK_P2Mに同期し、ブルートゥース副回路120にて生成される第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2は、第2マスタークロックCLK_P2M、第2スレーブクロックCLK_P2S1または第3スレーブクロックCLK_P1S2に同期する。実際、本実施例における第1マスタークロックCLK_P1M、第1スレーブクロックCLK_P1S1、第2マスタークロックCLK_P2M、第2スレーブクロックCLK_P2S1、および第3スレーブクロックCLK_P1S2は、いずれも、互いに同期し且つ位相が一致したクロック信号である。したがって、第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1も、第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2に間接的に同期し且つ位相が実質的に第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2と一致することになる。
【0074】
このようにして、ブルートゥース主回路110およびブルートゥース副回路120の両者によるオーディオ再生動作は、時間遅延問題の発生無く、互いに同期することができる。したがって、第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1および第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2が生成される上記の態様によれば、異なるブルートゥース回路によるオーディオ再生動作を互いに同期させ続けることができ、理想的なステレオ音響効果またはサラウンド音響効果を再現することができる。これにより、良好な使用体験をユーザに与え、ないしは、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100の応用価値および柔軟的な利用性を向上させることができる。
【0075】
なお、上述したように、ブルートゥース主回路110内の第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1は、直接または間接的に第1参考クロックCLK_R1および第1サンプリングクロックCLK_S1に基づいて生成されるものである。また、ブルートゥース副回路120内の第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2は、直接または間接的に第2参考クロックCLK_R2および第2サンプリングクロックCLK_S2に基づいて生成されるものである。
【0076】
一般的に、ブルートゥース主回路110において用いられる前記第1参考クロックCLK_R1、および、ブルートゥース副回路120において用いられる前記第2参考クロックCLK_R2は、互いに独立して生成されるクロック信号である。また、ブルートゥース主回路110において用いられる前記第1サンプリングクロックCLK_S1、および、ブルートゥース副回路120において用いられる前記第2サンプリングクロックCLK_S2も、互いに独立して生成されるクロック信号である。
【0077】
そのため、ブルートゥース主回路110とブルートゥース副回路120とが同期してオーディオ再生動作を一定時間行った後、ブルートゥース主回路110内の第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1と、ブルートゥース副回路120内の第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2との間に、周波数および/または位相のズレが生じる可能性がある。
【0078】
ブルートゥース主回路110内の第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1と、ブルートゥース副回路120内の第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2とが同期し続けられなくなると、ブルートゥース主回路110およびブルートゥース副回路120の両者によるオーディオ再生動作が互いに同期できなくなり、悪い使用体験を招来してしまう。
【0079】
そこで、本実施例では、ブルートゥース主回路110はオーディオデータの再生過程中にステップ222を断続的に実行し、ブルートゥース副回路120はオーディオデータの再生過程中にステップ224およびステップ226を断続的に実行する。
【0080】
ステップ222において、第1制御回路114は、第1ブルートゥース通信回路111を介し、第1オーディオデータに対応した第1オーディオ再生時系列データ(time stamp)をブルートゥース副回路120に伝送してもよい。実際の応用において、第1制御回路114は、第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1の関連カウント値(例えば、パルスのカウント値、上昇エッジのカウント値、下降エッジのカウント値など)を当該第1オーディオ再生時系列データとして用いるとともに、該第1オーディオ再生時系列データを、第1ブルートゥース通信回路111を介してブルートゥース副回路120に伝送してもよい。
【0081】
ステップ224において、第2制御回路124は、ブルートゥース主回路110から伝送されてきた第1オーディオ再生時系列データを、第2ブルートゥース通信回路121を介して受信してもよい。
【0082】
ステップ226において、第2制御回路124は第2サンプリングクロック調整回路126を制御し、この制御を受けた第2サンプリングクロック調整回路126は、第1オーディオ再生時系列データ(例えば、上述した関連カウント値)に基づいて第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2の位相を校正することにより、該第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2を現在の第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1と同期させてもよい。
【0083】
したがって、前記ステップ222~ステップ226の動作によれば、ブルートゥース主回路110およびブルートゥース副回路120の両者によるオーディオ再生動作を時間遅延問題の発生無く同期させ続けることは、より効果的に確保される。このようにして、ブルートゥース主回路110とブルートゥース副回路120とが協働して行うオーディオ再生動作により、理想的なステレオ音響効果またはサラウンド音響効果を再現し、良好な使用体験を維持することができる。さらに、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100の応用価値および柔軟的な利用性を向上させることができる。
【0084】
図4を参照する。
図4は、本発明の別の実施例として、異なるブルートゥース回路によるオーディオ再生動作を同期させる方法の簡略化フローチャートである。
【0085】
図4中のステップ202~ステップ220は、
図2で示す実施例における対応するステップ202~ステップ220と同様である。但し、
図4で示す実施例では、ブルートゥース主回路110およびブルートゥース副回路120の両者によるオーディオ再生動作を同期させ続ける態様が、
図2で示す上記実施例とは異なる。
【0086】
図4に示すように、本実施例では、ブルートゥース副回路120はオーディオデータの再生過程中にステップ422を断続的に実行し、ブルートゥース主回路110はオーディオデータの再生過程中にステップ424およびステップ426を断続的に実行する。
【0087】
ステップ422において、第2制御回路124は、第2ブルートゥース通信回路121を介し、第2オーディオデータに対応した第2オーディオ再生時系列データをブルートゥース主回路110に伝送してもよい。実際の応用において、第2制御回路124は、第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2の関連カウント値(例えば、パルスのカウント値、上昇エッジのカウント値、下降エッジのカウント値など)を前記第2オーディオ再生時系列データとして用いるとともに、該第2オーディオ再生時系列データを、第2ブルートゥース通信回路121を介してブルートゥース主回路110に伝送してもよい。
【0088】
ステップ424において、第1制御回路114は、ブルートゥース副回路120から伝送されてきた第2オーディオ再生時系列データを、第1ブルートゥース通信回路111を介して受信してもよい。
【0089】
ステップ426において、第1制御回路114は第1サンプリングクロック調整回路116を制御し、この制御を受けた第1サンプリングクロック調整回路116は、第2オーディオ再生時系列データ(例えば、上述した関連カウント値)に基づいて第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1の位相を校正することにより、該第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1を現在の第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2と同期させてもよい。
【0090】
したがって、前記ステップ422~ステップ426の動作によれば、ブルートゥース主回路110およびブルートゥース副回路120の両者によるオーディオ再生動作を時間遅延問題の発生無く同期させ続けることは、同様に、より効果的に確保される。このようにして、ブルートゥース主回路110とブルートゥース副回路120とが協働して行うオーディオ再生動作により、理想的なステレオ音響効果またはサラウンド音響効果を再現し、良好な使用体験を維持することができる。さらに、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100の応用価値および柔軟的な利用性を向上させることができる。
【0091】
上述したマルチ構成要員型ブルートゥース装置100において、ブルートゥース主回路110は、その内部の第1スレーブクロックCLK_P1S1および第2マスタークロックCLK_P2Mの両方を、ソースブルートゥース装置102によって決定された第1マスタークロックCLK_P1Mと同期させる。そのため、第1クロック調整回路113を比較的簡単な回路構成にて実現することができる。
【0092】
また、ブルートゥース主回路110が用いる第1スレーブクロックCLK_P1S1および第2マスタークロックCLK_P2Mは両方とも、第1マスタークロックCLK_P1Mに同期する。そのため、ブルートゥース主回路110におけるブルートゥース帯域利用効率を効果的に向上させるとともに、第1スレーブクロックCLK_P1S1および第2マスタークロックCLK_P2Mがブルートゥース主回路110によって更新される手間を低減させることができる。
【0093】
同様に、ブルートゥース副回路120は、その内部の第2スレーブクロックCLK_P2S1および第3スレーブクロックCLK_P1S2の両方を、ブルートゥース主回路110によって決定された第2マスタークロックCLK_P2Mと同期させる。そのため、同様に、第2クロック調整回路123を比較的簡単な回路構成にて実現することができる。
【0094】
さらに、ブルートゥース副回路120が用いる第2スレーブクロックCLK_P2S1および第3スレーブクロックCLK_P1S2は両方とも、第2マスタークロックCLK_P2Mに同期し、且つ両方とも、第1マスタークロックCLK_P1Mに等価的に同期する。そのため、ブルートゥース副回路120におけるブルートゥース帯域利用効率を効果的に向上させるとともに、第2スレーブクロックCLK_P2S1および第3スレーブクロックCLK_P1S2がブルートゥース副回路120によって更新される手間を低減させることができる。
【0095】
さらに重要な点としては、ブルートゥース副回路120において用いられる第2オーディオサンプリングクロックCLK_A2が、ブルートゥース主回路110において用いられる第1オーディオサンプリングクロックCLK_A1に間接的に同期できるため、第2再生回路128によるオーディオ再生動作も、第1再生回路118によるオーディオ再生動作に同期することになる。
【0096】
なお、前記マルチ構成要員型ブルートゥース装置100中の構成要員回路の数は、上述したような2つに限らず、必要に応じてさらに多い数としてもよい。
【0097】
実際の応用において、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100は、前記
図2および
図4に示す2種類のオーディオ再生同期方法のいずれか1つを選択し、ブルートゥース主回路110およびブルートゥース副回路120の両者によるオーディオ再生動作の継続的な同期を確保してもよい。あるいは、マルチ構成要員型ブルートゥース装置100は、この2種類の方法を交互に採用し、ブルートゥース主回路110およびブルートゥース副回路120の両者によるオーディオ再生動作の継続的な同期を確保してもよい。
【0098】
また、幾つかの応用において、ブルートゥース副回路120によって第3スレーブクロックCLK_P1S2が生成される動作を省略してもよい。
【0099】
明細書および添付される特許請求の範囲には特定の素子を指す特定の用語が用いられているが、当業者によっては、異なる用語で当該同一素子を呼称する場合がある。本明細書および添付される特許請求の範囲は、名称の相違を以って素子を区別するのではなく、機能上の相違を素子の区別基準とする。また、明細書および添付の特許請求の範囲に記載の「含む」とは、開放的表現であり、「含むが、これに限定されない」と解釈すべきである。また、「結合的に接続する」という表現は、直接的および間接的な、いかなる接続手段も含む。したがって、例えば「第1素子が第2素子と結合的に接続する」とのような表現は、第1素子が電気的接続または無線伝送、光学的伝送などの信号接続方式にて直接に第2素子と接続してもよく、他の素子または接続手段を介して間接的に第2素子と電気的または信号的に接続してもよいことを意味する。
【0100】
明細書中に記載の「および/または」という表現は、挙げられた事項のうちの1つ、またはその複数による任意の組み合わせを含む。また、明細書中において特別に明示しない限り、単数形の用語はその複数形時の含意を同時に含む。
【0101】
以上の内容は単に本発明の好ましい実施例に過ぎない。本発明に係る特許請求の範囲に基づいて成される全ての均等的な変更および改変も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
100 マルチ構成要員型ブルートゥース装置(multi-member Bluetooth device)
102 ソースブルートゥース装置(source Bluetooth device)
110 ブルートゥース主回路(main Bluetooth circuit)
111 第1ブルートゥース通信回路(first Bluetooth communication circuit)
112 第1パケット分析回路(first packet parsing circuit)
113 第1クロック調整回路(first clock adjusting circuit)
114 第1制御回路(first control circuit)
115 第1バッファ回路(first buffer circuit)
116 第1サンプリングクロック調整回路(first sampling-clock adjusting circuit)
117 第1非同期サンプリングレート変換回路(first asynchronous sample rate conversion circuit)
118 第1再生回路(first playback circuit)
120 ブルートゥース副回路(auxiliary Bluetooth circuit)
121 第2ブルートゥース通信回路(second Bluetooth communication circuit)
122 第2パケット分析回路(second packet parsing circuit)
123 第2クロック調整回路(second clock adjusting circuit)
124 第2制御回路(second control circuit)
125 第2バッファ回路(second buffer circuit)
126 第2サンプリングクロック調整回路(second sampling-clock adjusting circuit)
127 第2非同期サンプリングレート変換回路(second asynchronous sample rate conversion circuit)
128 第2再生回路(second playback circuit)
202~226、422~426 動作ステップ(operation)
310 第1ブルートゥースピコネット(first piconet)
320 第2ブルートゥースピコネット(second piconet)