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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】アデノウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/861 20060101AFI20220715BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220715BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220715BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C12N15/861 Z ZNA
C12N5/10
C12N7/01
C12P21/00 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020503812
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 GB2018052083
(87)【国際公開番号】W WO2019020992
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】1711971.0
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1806375.0
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518305392
【氏名又は名称】オックスフォード ジェネティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OXFORD GENETICS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100100181
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 正博
(72)【発明者】
【氏名】ケイウッド ライアン
(72)【発明者】
【氏名】スー ウェイヘン
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】Oncogene,2008年,Vol.27,P.4446-4455
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/861
C12N 5/10
C12N 7/01
C12P 21/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抑制可能な主要後期プロモーター(MLP)及び複数のアデノウイルス後期遺伝子を含むアデノウイルスベクターであって、前記MLPがアデノウイルス後期遺伝子の転写を調節または制御することのできる1つ以上のリプレッサーエレメントを含み、且つ、前記1つ以上のリプレッサーエレメントが前記のMLP TATAボックスと転写+1位の間に挿入される、前記アデノウイルスベクター。
【請求項2】
アデノウイルスベクターであって:
(a)複数のアデノウイルス初期遺伝子、および
(b)主要後期プロモーター(MLP)の制御下にある複数のアデノウイルス後期遺伝子、および
(c)導入遺伝子を含み、
前記MLPが前記のアデノウイルス後期遺伝子の転写を調節または制御することのできる1つ以上のリプレッサーエレメントを含み、且つ、前記1つ以上のリプレッサーエレメントが前記のMLP TATAボックスと転写+1位の間に挿入される、前記アデノウイルスベクター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアデノウイルスベクターであって、前記リプレッサーエレメントがリプレッサータンパク質と結合することのできるものである前記アデノウイルスベクター。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のアデノウイルスベクターであって、前記リプレッサーエレメントと結合することのできるリプレッサータンパク質をコードする遺伝子がアデノウイルスゲノム内でコードされる前記アデノウイルスベクター。
【請求項5】
請求項3または4に記載のアデノウイルスベクターであって、前記リプレッサータンパク質が前記MLPの制御下で転写される前記アデノウイルスベクター。
【請求項6】
請求項3から5までのいずれか1つに記載のアデノウイルスベクターであって、前記リプレッサータンパク質がテトラサイクリンリプレッサー、ラクトースリプレッサーまたはエクジソンリプレッサーである前記アデノウイルスベクター。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載のアデノウイルスベクターであって、
(A)前記リプレッサーエレメントが配列番号2に記載の配列を含むかまたはこれにより構成されるテトラサイクリンリプレッサー結合部位であるか;及び/又は、
(B)前記MLPのヌクレオチド配列が配列番号6または7に記載の配列を含むかまたはこれにより構成されるか;及び/又は、
(C)前記リプレッサーエレメントの存在がアデノウイルスE2Bタンパク質の産生に影響しないか;及び/又は、
(D)前記アデノウイルスベクターがアデノウイルスL4 100Kタンパク質をコードし且つ前記L4 100Kタンパク質が前記MLPの制御下にないか;及び/又は、
(E)前記アデノウイルス初期領域の1つに導入遺伝子が挿入される、前記アデノウイルスベクター。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか1つに記載のアデノウイルスベクターであって、
(A)前記導入遺伝子がその5’-UTRに三分節系リーダー(TPL)を含むか;及び/又は、
(B)前記導入遺伝子が細胞内または細胞外で集合してウイルス様粒子を産生することのできるウイルスタンパク質をコードするか;及び/又は、
(C)前記導入遺伝子がAAV Repポリペプチド、AAV Capポリペプチド、またはAAV Rep-Capポリペプチドをコードするおよび/または前記導入遺伝子がAAVゲノムをコードする、前記アデノウイルスベクター。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載のアデノウイルスベクターであって、配列番号6または配列番号7のヌクレオチド配列、またはこれと少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むアデノウイルスベクター。
【請求項10】
請求項1から9のうちいずれか1つに記載のアデノウイルスベクターを含むアデノウイルス粒子を、生理的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤のうち1つ以上と共に含む組成物。
【請求項11】
請求項1から9のうちいずれか1つに記載のアデノウイルスベクターを含むキットであって、
(i)前記ウイルスベクターが細胞に感染して前記ウイルスのゲノムを複製することを可能とする細胞株であって、前記細胞株が前記ウイルスベクターのMLPを抑制する細胞株および
(ii)前記ウイルスベクターの構築を補助する1つ以上のDNAプラスミドからなる群から選択される1つ以上の追加的構成要素を追加的に含む、前記キット。
【請求項12】
請求項1から9のうちいずれか1つに記載のアデノウイルスベクターを含む哺乳類細胞。
【請求項13】
修飾された哺乳類細胞を生成するためのプロセスであって、
(a)請求項1から9のうちいずれか1つに記載のアデノウイルスベクターを哺乳類細胞に感染させる段階を含み、
これによりその後前記哺乳類細胞が前記アデノウイルスベクターを含む、前記プロセス。
【請求項14】
請求項13に記載のプロセスであって、前記細胞が前記細胞のゲノムに組み込まれたAAVゲノムを含む、前記プロセス。
【請求項15】
請求項14に記載のプロセスであって、前記アデノウイルスベクターがAAV Repポリペプチド、AAV CapポリペプチドまたはAAV Rep-Capポリペプチドをコードする導入遺伝子を含む前記プロセス。
【請求項16】
導入遺伝子産物を産生するためのプロセスであって、
(a)請求項1から9のうちいずれか1つに記載のアデノウイルスベクターであって、導入遺伝子を含む前記アデノウイルスベクターを哺乳類細胞に感染させる段階;
(b)前記の感染した哺乳類細胞を前記導入遺伝子が発現するような条件下にある培地で培養する段階;および
(c)導入遺伝子産物を前記細胞または前記細胞培地より分離または精製する段階、を含む前記プロセス。
【請求項17】
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)の産生における、請求項1から9のうちいずれか1つに記載のアデノウイルスベクターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節可能な主要後期プロモーターおよび外因性導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターに関する。また本発明は、そのようなアデノウイルスベクターを含む細胞、およびそのようなベクターを用いたプロセスも提供する。
【0002】
アデノウイルスベクターは、遺伝学が十分に理解され、組織培養において高い収率となる増殖能を有する、バイオテクノロジーにおける魅力的且つ万能のツールである。アデノウイルスの複製周期は、初期と後期の双方を包含して高度に複雑である。初期から後期への転換は、DNA複製およびウイルスゲノム中の主要後期プロモーター(MLP)の活性化の後に発生すると考えられる。MLPは全てのウイルスの後期転写産物の発現を駆動し、細胞のタンパク質のうち最大30%をウイルス構造タンパク質に変換することができる。MLPの原位置修飾により発現が誘導可能となることはこれまで立証されていないが、その主な原因はウイルスDNAポリメラーゼコード配列が対向のDNA鎖にあることである。
【0003】
アデノウイルスは数多くの用途に有用な実験室的ツールであるが、非常に生産性が高いことが製造ワークフローに用いる場合に大きな問題となり、すなわち相当量のウイルス粒子を産生し、これを下流プロセスで除去しなければならない。たとえば、アデノウイルスを先にタンパク質発現用途、またはその他のウイルス様粒子の産生、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)の大スケール製造を目的として使用している場合、製造プロセス終了時に無傷のアデノウイルス粒子が存在することは非常に望ましくない。
【0004】
哺乳類細胞内でタンパク質を産生する能力の魅力は高まっており、現在ではこの系で価値の高い組換えタンパク質が数多く産生され、最適なタンパク質プロセシング、フォールディングおよびグリコシル化を可能としている。これは、サイトメガロウイルス(CMV)即時初期プロモーターなどの強力なプロモーターの制御の下で、必要な導入遺伝子をコードするプラスミドの一過性トランスフェクションを用いて達成されることが多い。しかし、他の生物におけるウイルス系(昆虫細胞内のバキュロウイルスなど)の一部と比較して、このプロセスは相対的に効率が低く、タンパク質収率はしばしば変動し、総細胞タンパク質質量の3%を上回ることはまれである。
【0005】
アデノウイルスゲノムを詳細に特性解析すると、その遺伝子発現およびライフサイクルに関する豊富な知見に関連し、このウイルスは組換えタンパク質の収率を著しく改善する理想的なプラットフォームの候補となる。大きな利点の1つは、当該ウイルスが哺乳類細胞の機構を活発に奪う能力、および細胞タンパク質の産生を阻害する能力によって示される。
【0006】
しかし、細胞タンパク質の産生を阻害することに加え、細胞リソースの相当部分が、ウイルスによってウイルス構造タンパク質の産生に利用される。たとえば、カプシドタンパク質の産生量は莫大で、最大で総タンパク質の30%と算出されており、これらのタンパク質および産生後に構築されたウイルス粒子を取り除くのは極めて困難である。
【0007】
組換えタンパク質と同様に、アデノ随伴ウイルス粒子に対する需要は、最近網膜障害および血友病の治療が臨床的に成功したことで著しく上昇している。従来、AAVの産生は異なる2つの経路から達成されている。当初、AAVは野生型(WT)アデノウイルス血清型5を用い、RepおよびCap遺伝子とAAVゲノムをコードするプラスミドを細胞にトランスフェクトして産生された。これにより、WTアデノウイルスがウイルス複製を促進する数多くの因子をトランスに提供することを可能とした。しかしこの手法には数多くの限界があり:たとえば、AAVの各バッチは純粋な生成物を提供するためにAd5粒子から分離しなければならないが、全てのAd5を確実に除去することは困難である。さらに、製造中の細胞が、AAVよりむしろアデノウイルス粒子の産生に膨大なリソースを充当していることも望ましくない。
【0008】
さらに最近では、アデノウイルスに基づく系は、AAV産生に必要なアデノウイルスゲノムの切片をコードするプラスミドに置き換えられた。これにより、最終ウイルス製剤に存在するアデノウイルス粒子に関する懸念の一部は解決したが、数多くの問題が残っている。これらは、製造細胞株のトランスフェクションに十分な製造前プラスミドが必要であること、およびトランスフェクションプロセスそれ自体に固有の低い効率を含む。これらの系の収率も、Ad5を用いた手法と比べて低い。発明者らは、現在、後期アデノウイルス遺伝子の転写が、リプレッサーエレメントの主要後期プロモーターへの挿入により調節(阻害など)できることを発見している。後期遺伝子の発現の「スイッチを切る」ことにより、細胞のタンパク質製造能力を所望の組換えタンパク質の産生に転用することができる。重要なことに、本発明に従ってアデノウイルスゲノム内にある主要後期プロモーターを戦略的にサイレンシングすると、ウイルスが細胞内にあってもそのDNAを複製し、幅広い用途を目的として転写できるウイルスゲノムDNAを何千コピーも提供することを可能とする。
【0009】
本発明は幅広い利点を提供する。たとえば、細胞のタンパク質産生能力を特定の組換えタンパク質の産生に振り向け、ウイルスの後期遺伝子が未だに発現している同等の系と比較して高収率とするために用いることができる。さらに、ウイルス構造タンパク質の産生の「スイッチを切る」能力は、タンパク質の産生プロセス中にウイルス粒子が産生されないか、またはほとんど産生されないことを意味する。その結果、精製タンパク質からウイルス粒子を除去する必要性が低減されるので、経済的節約効果が得られる。
【0010】
本発明は、アデノウイルスゲノムの複製を維持することで、アデノウイルス内でAAVのRepおよびCapタンパク質をコードし、AAV粒子を産生するのに必要な高い発現レベルを提供しながら、最終AAV製剤中のアデノウイルス粒子の産生を防止することのできる、単純で費用対効果の高いAAV粒子製造法を提供するという利点も有する。
【0011】
MLPの修飾がこれまでにいくつか報告されている。これらには、MLPのコピーを作製し、他のプラスミドに配置して発現レベルを分析すること(El-Mogy、2012年)、またはその発現を調節する部位を挿入されるアデノウイルスゲノムのE1領域内に配置すること(Molin,1998年)が含まれる。その他の研究には、基礎研究(Concino他、1983年;Concino他、1984年)、および細胞内にトランス相補性因子を有する細胞でのみ選択的にウイルスを増殖させることの双方を目的としたMLP TATAボックスの変異が含まれた。重要なことに、後者の手法は、主要後期プロモーターの活性が細胞内に存在する相補的タンパク質因子に全面的に依存し、このためこの因子が存在しない細胞内ではMLPが活性とならない系を備える。しかしながら、本発明はこれとは逆のものを提供し、リプレッサーが結合しない細胞内でMLPが完全な発現活性レベルを維持し、最小限のウイルスライフサイクルの障害で高レベルウイルス複製を提供する。
【0012】
従って、本願に記載する本発明のウイルスは、リプレッサーの有無に応じて、抑制されていないときには完全に活性がありながらも、抑制されることができる。これまで、アデノウイルスゲノムにおいて、リプレッサー結合部位をMLPに原位置で挿入してその発現を調節することには成功していなかった。本発明者らは、この系をさらに改善して、リプレッサータンパク質コード配列を主要後期プロモーターそれ自体の制御の下に置いている。この手法においては、主要後期プロモーターがウイルスの構造タンパク質を転写しようとすると、それ自体の活性を抑制することのできるリプレッサーも転写するので、MLP活性を阻害するネガティブフィードバックループが可能となり且つMLP発現が厳重に調節されるので、主要後期プロモーター自体で自己抑制する。
【0013】
それゆえ、組換えタンパク質の収率の上昇を提供し、且つ非アデノウイルス粒子およびウイルス様粒子を提供するために用いることのできるアデノウイルスベクター系を提供することが、本発明の目的である。
【0014】
また、タンパク質でも、あるいは非アデノウイルス粒子またはウイルス様粒子でもありうる精製された生成物からウイルス粒子を除去する必要性を低減する、アデノウイルス感染細胞において導入遺伝子産物を産生するプロセスを提供することも、本発明の目的である。
【0015】
1つの実施形態においては、本発明は抑制可能な主要後期プロモーター(MLP)を含むアデノウイルスベクターであって、MLPがアデノウイルス後期遺伝子の転写を調節または制御することのできる1つ以上のリプレッサーエレメントを含み、且つ1つ以上のリプレッサーエレメントがMLP TATAボックスの下流に挿入されるアデノウイルスベクターを提供する。
【0016】
他の実施形態において、本発明は、抑制可能な主要後期プロモーターおよび外因性導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターを提供する。
【0017】
他の実施形態において、本発明は、アデノウイルスベクターであって:
(a)複数のアデノウイルス初期遺伝子、および
(b)主要後期プロモーター(MLP)の制御下にある複数のアデノウイルス後期遺伝子、および
(c)導入遺伝子を含み、
MLPがアデノウイルス後期遺伝子の転写を調節、または制御することのできる1つ以上のリプレッサーエレメントを含むアデノウイルスベクターを提供する。
【0018】
好ましくは、リプレッサーエレメントと結合することのできるリプレッサータンパク質をコードする遺伝子がアデノウイルスゲノム内でコードされる。
【0019】
好ましくは、導入遺伝子はその5‘-UTRに三分節系リーダー(TPL)を含む。
【0020】
好ましくは、リプレッサーエレメントの存在はアデノウイルスE2Bタンパク質の産生に影響しない。
【0021】
好ましくは、リプレッサータンパク質はMLPから転写される。
【0022】
好ましくは、MLP TATAボックスと転写+1位の間に1つ以上のリプレッサーエレメントが挿入される。
【0023】
アデノウイルスは、現代の科学研究において最も多く研究および利用されているウイルスである。予防接種、遺伝子療法、ウイルス療法の分野において、また生体系を理解するための複合ツールとしても有用性が確認されている(McConnell他、2004年)。
【0024】
ウイルスのアデノウイルス科は二重鎖DNAウイルスであり、1953年に感染小児のアデノイドから初めて分離された(Rowe他、1953年)。アデノウイルス科は、ヒト、鳥類および両生類を含む多様な宿主に感染する数多くの種からなり、その感染する多様な宿主を反映して4つの属に分類される。
【0025】
マストアデノウイルス属は、哺乳類宿主に感染する25種の固有アデノウイルス種からなる。現在、この属にはヒトに感染する異なる7種のアデノウイルスが存在する。それらは、ヒトアデノウイルスA~Gのように文字で表示される。これらの種の中で複数の血清型が同定されて1~57まで付番され、いずれも国際ウイルス分類委員会より独立した株として認識されている。
種A:12、18、31
種B:3、7、11、14、16、21、34、35、50、55
種C:1、2、5、6、57
種D:8、9、10、13、15、17、19、20、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、33、36、37、38、39、42、43、44、45、46、47、48、49、51、53、54、56
種E:4
種F:40、41
種G:52
【0026】
アデノウイルスは小型(直径約90nm)の無エンベロープウイルスであり、正二十面体カプシドおよび正二十面体の頂点から突出する12本の線維を有する。ウイルスは240個のヘキソン三量体、12個のペントン五量体、60個のIIIa単量体、12個の線維三量体、60個のVII六量体、80個のIX三量体、さらには2個の末端反復タンパク質および複数のコアタンパク質からなる。後者の多くは細胞内輸送およびエンドサイトーシスで取り込まれたウイルスカプシドのタンパク質分解開裂に不可欠である。
【0027】
アデノウイルスのDNAゲノムの長さは血清型によって異なるが、典型的には長さ34~36k塩基である。アデノウイルス血清型5のゲノムは、通常35938塩基対で、各末端に103塩基対の末端反復があり、GC含有率は58%である。ゲノムは複製周期の大半においてカプシド構造内で直線型であるが、ゲノム複製時には核内でパンハンドル環状構造を形成することができる。
【0028】
アデノウイルスの細胞接着プロセスは血清型によって異なる。アデノウイルスC種(血清型2および5を含む)は、細胞タイトジャンクションの構成要素である(Honda他、2000年)細胞表面のコクサッキーおよびアデノウイルス受容体(CAR)と結合する(Tomko他、1997年)その線維ドメインを介して、細胞に接着することが示されている。この開始時の相互作用は親和性が高く、その後はウイルスペントンベースと上皮細胞に多く存在する細胞表面インテグリン(αVβ3とαVβ5)の間の低親和性相互作用となる(Wickham他、1993年)。細胞表面への吸収後、ビリオンはエンドサイトーシスで取り込まれ、ウイルスカプシドがエンドソームから細胞基質に漏出するが、この段階は十分に解明されていない。アデノウイルスカプシドは、細胞基質内で微小管ネットワークと結合し、ダイニン依存性機構を経て核に運ばれ、そこでDNAが核の内腔に送達された後、カプシドは核膜孔複合体と相互作用する(Trotman他、2001年;Kelkar他、2004年)。
【0029】
アデノウイルスの遺伝学、転写および翻訳に冠する我々の理解は、主としてアデノウイルスC種血清型5を用いたウイルス学的研究より導かれている。アデノウイルスゲノムからの連続的な遺伝子転写プロセスは、複製プロセスの各ステージにおけるウイルスのタンパク質要求量を反映している。したがって、アデノウイルスゲノムからの転写は、各ウイルスプロモーターから転写を開始する時期に応じて初期事象と後期事象に分類される(図1)。ウイルスゲノムから最初に産生されるタンパク質はE1Aタンパク質である。E1A転写単位はオルタナティブスプライシングを経て複数のmRNA分子を産生し、これが6~36kDaの範囲の複数のタンパク質を産生する。E1Aタンパク質には感染細胞内で2つの主要な役割がある。第1に、細胞周期のS期に入ってウイルスゲノムの効率的な複製を可能とするよう、細胞を誘導する。第2に、トランス活性化によりウイルスゲノム内の他の初期プロモーターの転写を誘導する。これらのプロモーターはE1B、E2、E3、E4およびE5タンパク質の産生を制御する。E1Aの発現の直後に、VA RNAおよびE1BおよびE3タンパク質が産生される。これらのタンパク質およびRNA分子は、抗ウイルス反応の発生の防止に役立つ。ウイルス複製におけるこれらの初期事象は、パッケージング前のウイルスゲノムの複製を可能とするような細胞内環境の形成に役立つ。後期転写事象は、主として後期領域1~5を転写する単一のプロモーター(主要後期プロモーター)に由来する、構造タンパク質および細胞溶解に不可欠なタンパク質の産生を包含する。細胞溶解は、初期遺伝子と表示されているにも関わらず感染時には後期にしか産生されず、主要後期プロモーターから産生するE3-11.6Kタンパク質(アデノウイルス死タンパク質とも呼ばれる)に依存する(Tollefson他、1996年)。
【0030】
アデノウイルス遺伝子は初期転写産物(E1~4)および後期転写産物(L1~5)に分類され、多様なスプライシング事象に由来する多数のタンパク質アイソフォームを伴う。初期領域はE1、E2、E3およびE4に分けられる。E1は、ウイルス複製を促す細胞周期の相に細胞を移行させ、アポトーシスを阻害し、細胞分裂を促進するのに不可欠である。E2領域はDNAゲノムの複製の大半を担い、DNA結合タンパク質(E2A)、末端タンパク質、およびDNAポリメラーゼ(E2B)を含む。E3は宿主応答の免疫調節に関与する遺伝子を含み、E4は非相同末端結合(NHEJ)などの細胞経路の調節およびp53分解を媒介するE1B-55Kとの複合体化に関与する幅広い遺伝子を含む。
【0031】
アデノウイルス後期遺伝子は、全て同じプロモーターである主要後期プロモーターから転写され、集合して三分節系リーダー配列を形成する3つのエクソンを含む同一の5’mRNA末端を全てが共有する。後期遺伝子は、ウイルス粒子の一部(ヘキソンおよび線維など)を形成するか、またはその構築に関与する(100Kタンパク質など)約13種類のタンパク質の発現を可能とする、一連のスプライシング事象によって発現する。
【0032】
アデノウイルスベクターは、アデノウイルス科のウイルスのゲノムに基づくか、またはこれに由来するベクターである。好ましくは、アデノウイルスはA、B、C、D、E、FまたはG群に由来するヒトアデノウイルスである。より好ましくは、アデノウイルスはBまたはCまたはD群に由来するヒトアデノウイルスである。さらにより好ましくは、アデノウイルスベクターはBまたはC群に由来するヒトアデノウイルスである。
【0033】
アデノウイルスベクターは、複数のアデノウイルス初期遺伝子を含む(図1)。
【0034】
E1Aタンパク質は、E1A領域における核内アデノウイルスゲノムからの最初の遺伝子転写事象の翻訳産物である。この最初の転写は、E1Aプロモーター内の強力な構成的活性エンハンサーエレメントによって駆動され、相当量のE1A mRNAを産生することを可能とする。細胞周期の進行を誘導することもできるE1Bタンパク質による形質転換を誘導することのできる、アデノウイルスゲノム内の2組のタンパク質の一方である。E1AおよびE1B遺伝子はウイルスの複製に不可欠である。
【0035】
E2遺伝子はアデノウイルスゲノム内で2つの部分:E2AおよびE2B領域に分けられ、そのいずれもウイルス複製に必要とされる。E2Bは、基本的にウイルスゲノムDNAの増幅に必要とされるDNAポリメラーゼ遺伝子を含む。同様に、この領域はウイルスゲノム複製の開始に必要とされる末端タンパク質も含む。末端タンパク質はウイルスゲノムDNAの端と共有結合する。E2A領域はDNA複製に必要とされるDNA結合タンパク質を含む。全てのE2遺伝子は基本的にウイルス複製に必要とされる。
【0036】
E3遺伝子は、主として細胞を調節することおよびウイルス感染に対する宿主免疫応答に関与するが、バイオテクノロジー用途に使用されるウイルスの大半はインビトロであるので、これらのウイルス遺伝子の全てではなくとも多くはウイルス複製効率を低減することなく除去することができる。E3遺伝子の大半はウイルスの複製に不可欠でない。しかし、アデノウイルス死タンパク質(ADP)などの一部の遺伝子は効率の高い複製およびウイルス産生に必要とされる。
【0037】
アデノウイルスゲノムのE4領域は、ウイルスの制御を促進し、効率的なウイルス複製および産生を確保するよう細胞を調節するタンパク質の産生に主として関与する点で、E1領域に類似している。当該領域は、他の数多くの独立した機能のうち、非相同末端結合およびアポトーシスの防止に資することのできる6つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。E4転写産物のウイルス複製に対する重要性にはそれぞればらつきがあり、あるものは不可欠である一方で、他のものはウイルスの増殖動態および産生にほとんど影響することなく削除または修飾することができる。
【0038】
好ましくは、本発明のアデノウイルスベクターは、アデノウイルスが配置される細胞の核内のウイルスゲノムをアデノウイルスが複製することができるよう、十分なアデノウイルス初期遺伝子を含む。
【0039】
アデノウイルスベクターは、複数のアデノウイルス後期遺伝子を含む(図1)。
【0040】
ウイルス後期遺伝子は、L1~L5と呼ばれる5つの主要な転写産物ファミリーに分けられる。これらの転写産物は、主としてウイルス構築に関与するタンパク質およびウイルスの構造タンパク質をコードする。ウイルス複製時には細胞タンパク質成分のうち30~40%と多くを占めることがある(Garnier、1994年;Ginsberg、1984年)。
【0041】
L1系転写産物は13.6K、52K、およびPIIIaタンパク質をコードする。これらのタンパク質は全てウイルス構築および粒子産生に関与する。L1遺伝子はウイルス構築の成功に必要とされるが、ゲノムDNA複製には必要とされない。
【0042】
L2系転写産物はペントンベース、pVII、V、pXタンパク質をコードする。これらはウイルスカプシドの構造的部分を形成し、粒子が正しく集合するために必要である。ペントンベースは、感染時にウイルスが細胞表面に接着するために重要なRGDモチーフを含む。L2遺伝子はウイルス構築の成功に必要とされるが、ゲノムDNA複製には必要とされない。
【0043】
L3系転写産物はpVI、ヘキソンおよびプロテアーゼタンパク質をコードする。ヘキソンタンパク質はウイルスカプシドの主要成分であり、血清型の間で抗原的に異なる。プロテアーゼタンパク質は細胞内への進入およびウイルスカプシドの成熟に関与する。L3遺伝子はウイルス構築の成功に必要とされるが、ゲノムDNA複製には必要とされない。
【0044】
L4系転写産物は100K、33K、22K、およびpVIIタンパク質をコードする。これらのタンパク質は幅広い機能に関与する。100Kタンパク質はウイルスヘキソン構築の促進と核の移入に関与するが、細胞mRNAの翻訳をcap依存性翻訳に切り替える際にも一定の役割を果たすこともある。1つの実施形態においては、100Kタンパク質はウイルスゲノム内からではなく細胞内でトランスに提供されうる。22Kタンパク質はウイルスのカプシド形成に関与する。L4遺伝子はウイルス構築の成功に必要とされるが、ゲノムDNA複製には必要とされない。しかし100Kタンパク質は、細胞タンパク質の翻訳の三分節系リーダー(TPL)配列を含む転写産物への切り替えに資することがある。
【0045】
このように、本発明の実施形態の1つにおいては、100Kタンパク質の発現はMLPによって制御されないことがある。1つの実施形態における100Kタンパク質は、MLPに制御されないウイルスゲノムの他の位置に導入されることがある。他の実施形態においては、100Kタンパク質は別のウイルスに導入されることがある。他の実施形態においては、100Kタンパク質は細胞の染色体に導入されるか、またはDNAトランスフェクションまたはエレクトロポレーションによってトランスに提供されることもある。
【0046】
L5は線維遺伝子をコードする。線維は、細胞表面への接着および細胞のウイルス感染を媒介することに関与するウイルス構造タンパク質である。線維タンパク質は、ウイルス粒子形成に必要な量を著しく上回って産生される。線維およびヘキソン(L3)はウイルス複製時に産生される最も豊富なタンパク質の一部であるので、本発明の実施形態の1つは少なくともこれらの一方をサイレンシングすることがある。L5遺伝子はウイルス構築の成功に必要とされるが、ゲノムDNA複製には必要とされない。
【0047】
本発明のアデノウイルスベクターは、アデノウイルスが細胞内でパッケージングされて他の哺乳類細胞に感染することの可能なウイルス粒子を産生することができるよう、十分なアデノウイルス後期遺伝子を含む。ウイルスゲノムは、主要後期プロモーターから産生された少なくとも1つの後期転写産物を含むことになる。除去されてトランスに提供されるタンパク質もあれば、宿主細胞の染色体に導入されるタンパク質もある。
【0048】
野生型アデノウイルスゲノムでは、単一の主要後期プロモーター(MLP)がアデノウイルス後期転写産物L1~L5の平行転写の促進を担う(図1)。本発明のアデノウイルスベクターはMLPも含む。MLPはこれらの後期転写産物の5’末端に位置する。
【0049】
複数のmRNAが、後期転写産物から3’-スプライシングおよびポリ(A)部位の使い分けを経て産生される。これらの転写産物はいずれも三分節系リーダー(TPL)配列を含む。
【0050】
図2は主要後期プロモーターの注釈付き配列を示す。プロモーターの重要な機能には数多くの転写因子結合部位が含まれる。これはCAATボックス、UPEボックス、TATAボックス、MAZ/SP1結合部位、転写+1位、およびINRエレメントと、R1領域、DE1およびDE2サブ領域を含むエンハンサー領域を含む。これらの機能は、主要後期プロモーターの活性に対して様々な度合いで重要であることが示されている。修飾または削除された場合にプロモーター活性を一時しく低下させることが知られている重要な機能はTATAボックス、INRエレメント、R領域と、DE1およびDE2領域である。TATAボックスは、唯一の最も重要な機能が考えられ、TATA配列自体の最終塩基より28番目の塩基対から転写が開始される。
【0051】
野生型Ad5 MLPのヌクレオチド配列を以下に示す:
【0052】
cgccctcttcggcatcaaggaaggtgattggtttgtaggtgtaggccacgtgaccgggtgttcctgaaggggggctataaaagggggtgggggcgcgttcgtcctca(配列番号1)
【0053】
TATAボックスは上記の配列において下線を付し、最終塩基(太字)は転写開始位置(すなわち+1位)を表示する。
【0054】
本発明のアデノウイルスベクターにおいては、MLPは1つ以上のリプレッサーエレメントを含む。リプレッサーエレメントは、アデノウイルス後期遺伝子の転写を調節または制御することができる。好ましくは、リプレッサーエレメントは、下流のアデノウイルス後期遺伝子の転写を抑制することができる。
【0055】
MLPには1つ以上のリプレッサーエレメントが存在しうる。好ましくは1、2、3または4個、より好ましくは1または2個のリプレッサーエレメントが存在する。
【0056】
一部の実施形態においては、1個以上の(好ましくは1個の)リプレッサーエレメントがMLPのTATAボックスの下流に位置する。他の実施形態においては、1個以上の(好ましくは1個の)リプレッサーエレメントがMLPのTATAボックスの上流に位置する。他の実施形態においては、1個以上の(好ましくは1個の)リプレッサーエレメントがMLPのTATAボックスの上流に位置し、1個以上の(好ましくは1個の)リプレッサーエレメントがMLPのTATAボックスの下流に位置する。
【0057】
好ましくは、1個以上のリプレッサーエレメントは全て+1転写開始部位の上流に配置される。より好ましくは、MLP TATAボックスと転写+1位の間に1つ以上のリプレッサーエレメントが挿入される。さらにより好ましくは、1つ以上のリプレッサーエレメントの開始はTATAボックスから27ヌクレオチド未満下流、より好ましくは20ヌクレオチド未満下流、さらにより好ましくは10ヌクレオチド未満下流に配置される。
【0058】
リプレッサーはDNA結合タンパク質である。リプレッサーがDNAに結合して転写開始に必要とされる転写因子の動員を直接阻害するか、またはリプレッサーがDNA上の重要なフットプリントを占拠して転写開始に必要とされる転写因子の結合を阻害し、転写の開始を立体的に阻害することになる。リプレッサーは、リプレッサータンパク質の立体構造を変化させて、そのDNAとの結合を可能とするか、または抑止する低分子によって調節され得る。リプレッサーは活性化因子ではない。
【0059】
リプレッサーによって調節されるプロモーターは、典型的には生物因子または非生物因子の有無によって誘導される。
【0060】
本発明の状況においてリプレッサーとして用いることが可能なタンパク質の例は、テトラサイクリンリプレッサー、ラクトースリプレッサー、エクジソンリプレッサー、ラットグルココルチコイド受容体、ヒトエストロゲン受容体、アルコールデヒドロゲナーゼI(alcA)、メタロチオネイン(金属イオンと結合してこれを隔離するタンパク質)、サリチル酸、エチレンおよびベンゾチアゾール(BTH)を含む。
【0061】
好ましくは、リプレッサーはテトラサイクリンリプレッサー、ラクトースリプレッサーまたはエクジソンリプレッサーである。最も好ましくは、リプレッサーはTetリプレッサータンパク質(TetR)である。
【0062】
TetR結合部位は野生型配列を有することがある。好ましくは、TetR結合部位はわずかな配列変更を取り入れることによって1つ以上の改善を受けている。本発明の実施形態において用いることのできる好ましい変種は配列:
tccctatcagtgatagaga(配列番号2)を有する。
【0063】
TetRリプレッサータンパク質が使用するTetR結合配列変種と結合するのであれば、TetRタンパク質またはTetRタンパク質の誘導体と結合するリプレッサーエレメントの代替的な変種も、本発明の実施形態において使用しうる。一部のリプレッサー/結合部位変種は、互いに対する親和性が野生型よりも高くなり;これらは本発明の実施形態の1つにおいて好ましい。
【0064】
本発明の1つの実施形態においては、TetRタンパク質のDNA配列は:
【0065】
Atgtcgcgcctggacaaaagcaaagtgattaactcagcgctggaactgttgaatgaggtgggaattgaaggactcactactcgcaagctggcacagaagctgggcgtcgagcagccaacgctgtactggcatgtgaagaataaacgggcgctcctagacgcgcttgccatcgaaatgctggaccgccatcacacccacttttgccccctggagggcgaatcctggcaagattttctgcggaacaatgcaaagtcgttccggtgcgctctgctgtcccaccgcgatggcgcaaaagtgcacctgggcactcggcccaccgagaaacaatacgaaaccctggaaaaccaactggctttcctttgccaacagggattttcactggagaatgccctgtacgcactatccgcggtcggccactttaccctgggatgcgtcctcgaagatcaggagcaccaagtcgccaaggaggaaagagaaactcctaccactgactcaatgcctccgctcctgagacaagccatcgagctgttcgaccaccagggtgctgaacctgcatttctgttcgggcttgaactgattatctgcggcctggagaaacagttgaagtgcgagtcgggatcctag(配列番号3)、
【0066】
またはこれと少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%または95%の配列同一性を有し、かつTetRタンパク質をコードする配列である。
【0067】
本発明の1つの実施形態においては、TetRタンパク質のアミノ酸配列は:
【0068】
MSRLDKSKVINSALELLNEVGIEGLTTRKLAQKLGVEQPTLYWHVKNKRALLDALAIEMLDRHHTHFCPLEGESWQDFLRNNAKSFRCALLSHRDGAKVHLGTRPTEKQYETLENQLAFLCQQGFSLENALYALSAVGHFTLGCVLEDQEHQVAKEERETPTTDSMPPLLRQAIELFDHQGAEPAFLFGLELIICGLEKQLKCESGS(配列番号4)、
【0069】
またはこれと少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%または95%の配列同一性を有し、かつTetRタンパク質をコードする配列である。
【0070】
TetRがリプレッサーエレメント(リプレッサー結合部位など)と結合するとき、転写の厳格な抑制が得られる。しかし、ドキシサイクリンの存在下では抑制が緩和されるので、関連プロモーターは完全な転写活性を回復する。ドキシサイクリンはテトラサイクリンよりも好ましい。
【0071】
リプレッサーエレメントは、MLP配列の修飾によりMLPに導入しうる。リプレッサーエレメントは、リプレッサーエレメントのMLP配列への挿入;MLP配列の1つ以上のヌクレオチドの置換によるリプレッサーエレメント配列の作製;または新規配列の挿入/削除の組み合わせによって導入しうる。
【0072】
本発明の1つの実施形態においては、TATAボックスとMLPのDNA転写+1位の距離が維持されるが(±5%)、両者の間にリプレッサー結合部位が挿入される。この領域内にはMAX/SP1結合部位が存在する。この部位はMLP発現にとって根本的ではないので、本発明の1つの実施形態においては置換することができる。図3は、TATAボックスと転写+1位の間の領域がテトラサイクリンリプレッサータンパク質(TetR)との結合部位で置換されている、本発明の実施形態の1つを示す。
【0073】
一部のアデノウイルスベクターでは、MLP配列の対向DNA鎖の切片が初期ウイルスタンパク質E2B(ウイルスDNAポリメラーゼをコードする)をコードする。このようなアデノウイルスベクターがそのゲノムを複製する能力を維持するためには、MLP配列に加えられた修飾がE2Bタンパク質の産生、安定性または有効性に対して著しく有害に影響しないことを保証する必要がある。
【0074】
アデノウイルス血清型5においては、MLPはE2Bポリメラーゼエクソン2の中に位置する。このように、本発明の1つの実施形態においては、リプレッサーエレメント(リプレッサー結合部位など)のMLPへの挿入は、対向DNA鎖にあるDNAポリメラーゼコード配列のコーディングフレームを維持するか、またはMLP配列に加えられた修飾がE2Bタンパク質の産生、安定性または有効性に対して著しく有害に影響しないことを保証しなければならない。


【0075】
好ましくは、MLP配列に加えられた変更の一部または全てはサイレントな変更であり、すなわちE2Bコドンを変化させない。他の実施形態においては、MLPに加えられた変更の一部または全ては保存的な変更、すなわち1つ以上のE2Bコドンが、同様の側鎖を有するアミノ酸をコードするよう変更される。
【0076】
同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(リジン、アルギニン、ヒスチジンなど)、酸性側鎖(アスパラギン酸、グルタミン酸など)、非荷電極性側鎖(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファンなど)、非極性側鎖(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンなど)、β分枝側鎖(スレオニン、バリン、イソロイシンなど)および芳香族側鎖(チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンなど)を有するアミノ酸を含む。
【0077】
したがって、E2Bタンパク質内の1つ以上のアミノ酸残基は同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置換することが可能であり、変更されたE2Bタンパク質は機能または活性の著しい損失について試験することができる。
【0078】
本発明の1つの実施形態においては、TetR結合部位はMLP内のTATAボックスと+1位の間に位置する。図2はDNAポリメラーゼのコード配列を示す。MLP TATAボックスと+1位の間の領域においては、DNAポリメラーゼのアミノ酸コード配列はENERAPTP(配列番号18)である。図3は、この領域内へのTetR結合部位の戦略的配置によって配列ESLSLIGT(配列番号5)が作製されることを示す。この配列はDNAポリメラーゼのリーディングフレームを維持するが、野生型アミノ酸の60%超は類似の側鎖によって置換されている。重要なことは、TetR結合部位の配列が正しくない位置にあると対向DNA鎖内に停止コドンを含み、非機能性DNAポリメラーゼが作製される可能性が高いであろう。
【0079】
したがって、本発明の1つの実施形態においては、TetR結合部位の対向鎖上の配列は、ESLSLIGT(配列番号5)をコードする配列であるか、またはこれを含む。好ましくは、DNAポリメラーゼは配列番号5の配列を含む。
【0080】
E2B mRNAまたはタンパク質の産生量の若干の減少は、E2Bタンパク質のアミノ酸配列の若干の変更であり得るように、認容されうる。当業者は、修飾アデノウイルスベクターのウイルス力価を、標準的条件下で元の未修飾ウイルスと比較して単純に評価することにより、E2B遺伝子配列の変更がウイルスの複製能力に与える影響を容易に評価することができる。ウイルス力価を25%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは1%未満減少させる変更は、E2Bタンパク質の産生、安定性または有効性に対して著しく有害に影響しないものであると見なしうる。
【0081】
本発明の他のアデノウイルスベクターにおいては、E2B遺伝子は、MLPの修飾がE2Bタンパク質の産生に影響しないよう、アデノウイルスベクター内の他の位置にある。
【0082】
TATAボックスと転写+1位の間に1個のTetR結合部位を含む修飾MLPの例を以下に示す:
【0083】

【0084】
TATAボックスには下線を付し、TetR結合部位は太字で示す。
【0085】
TATAボックスと転写+1位の間に1個のTetR結合部位、およびTATAボックスより上流のUPEエレメントとTATAボックスの間の第2の部位を含む修飾MLPの例を以下に示す:
【0086】
【0087】
TATAボックスには下線を付し、TetR結合部位は太字で示す。
本発明は、配列番号6または配列番号7のヌクレオチド配列、またはこれと少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%または95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むウイルスベクター(好ましくはアデノウイルスベクター)または核酸分子を提供する。
【0088】
リプレッサーエレメントと結合するリプレッサーは(細胞に)外因的に適用してもよく;細胞ゲノム内かまたはミトコンドリアゲノム内に(または細胞内のプラスミドまたはベクター)にコードされてもよく;あるいはアデノウイルスゲノム内にコードしてもよい。好ましくは、リプレッサーはアデノウイルスゲノム内の遺伝子によってコードされる。
【0089】
より好ましくは、リプレッサー遺伝子は1つ以上のウイルス初期発現領域はまたは後期遺伝子発現領域に位置する。さらにより好ましくは、リプレッサー遺伝子はウイルスの後期領域に位置する。さらにより好ましくは、リプレッサーは、リプレッサーによって調節されるMLPから転写される後期転写産物内に位置する。したがって系は自己抑制的である。
【0090】
1つの実施形態においては、リプレッサータンパク質をコードする遺伝子は独立したプロモーター(すなわち、アデノウイルス主要初期プロモーターでも主要後期プロモーターでもないプロモーター)の制御下にある。好ましくは、リプレッサータンパク質をコードする遺伝子は強力なプロモーター(サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターなど)の制御下にある。さらにより好ましくは、リプレッサータンパク質はその結合するMLPの制御下にある。
【0091】
好ましくは、リプレッサータンパク質をコードするmRNAはその5’-UTRに三分節系リーダー(TPL)配列を含む。TPLは、全ての後期ウイルスmRNAに存在するが初期ウイルスmRNAのいずれにも存在しない5’-非翻訳配列である。TPLはmRNAの輸送および細胞質内への蓄積を促進し、細胞タンパク質より優先される後期ウイルスタンパク質の選択的翻訳を担う。
【0092】
Ad5リーダー配列は、翻訳後修飾時に3つのエクソンのスプライシングによって形成される201塩基対である。
【0093】
本発明のアデノウイルスベクターは少なくとも1つの導入遺伝子を含む。本発明のアデノウイルスベクターの重要な機能は、導入遺伝子産物の産生を促進することである。
【0094】
アデノウイルス感染時には、最高で90%のmRNAがウイルスゲノムに由来し、またこれらは優先的に翻訳されてウイルスアウトプットを最大化することができる。ウイルス特異的mRNAの選択的産生は、ウイルスDNAポリメラーゼの増幅と、後期mRNA転写産物の産生への切り替えの組み合わせに依存する。ウイルスDNAゲノムの複製は、数千コピー以上のDNAテンプレートの転写の発生を可能とする。この活性は、後期転写産物の5’末端にある三分節系リーダーの存在と合わせて、後期mRNAの選択的発現を可能とする。これは、三分節系リーダーの活性が正常な翻訳プロセスにおいて高い一方で、cap-非依存性翻訳が細胞内で開始されると選択的翻訳も受けるからである。このプロセスには多数のウイルスタンパク質が関与する。
【0095】
好ましくは、導入遺伝子はアデノウイルス初期領域の1つに挿入される。より好ましくは、導入遺伝子はアデノウイルスE1領域に挿入される。さらにより好ましくは、アデノウイルスゲノムよりE1AおよびE1B遺伝子が削除され、導入遺伝子がこの領域に挿入される。好ましくは、導入遺伝子はその5’UTRにTPL配列を含む。これにより、導入遺伝子がcap非依存的に発現することが確保される。
【0096】
導入遺伝子は任意の所望のDNA配列としてよい。導入遺伝子は2つ以上あってもよい(2、3、4または5つ以上の導入遺伝子など)。導入遺伝子のDNA配列はコード配列であっても、非コード配列であってもよい。ゲノムDNAであってもcDNAであってもよい。好ましくは、DNA配列はポリペプチド、より好ましくは治療ポリペプチドをコードする。一部の例においては、導入遺伝子は複数のタンパク質をコードすることとなる。好ましくは、導入遺伝子は1つ以上の転写および/または翻訳制御エレメント(エンハンサー、プロモーター、転写終結配列など)と機能的に関連する。
【0097】
導入遺伝子でコードされたポリペプチドはヒト遺伝子であるか、またはその修飾型であるか、またはヒト細胞に感染するウイルスに由来するタンパク質をコードすることが可能である。
【0098】
好ましい治療ポリペプチドの例は抗体、CAR-T分子、scFV、BiTE、DARPinsおよびT細胞受容体と、ヒトウイルス病原体に由来する抗原を含む。
【0099】
一部の実施形態においては、治療ポリペプチドはDRD1などのGタンパク質共役受容体(GPCR)である。一部の実施形態においては、治療ポリペプチドはCD19、CD40またはCD38などの免疫療法ターゲットである。一部の実施形態においては、治療ポリペプチドは、RPE65またはREPなどのヒトの視覚または網膜機能に関与する遺伝子の機能的コピーである。一部の実施形態においては、治療ポリペプチドはヒトの血液生成に関与する遺伝子の機能的コピーであるか、または第IX因子などの血液成分、またはβまたはαサラセミアまたは鎌形赤血球貧血に関与するものである。一部の実施形態においては、治療ポリペプチドは重症複合免疫不全(SCID)またはアデノシンデアミナーゼ欠損症(ADA-SCID)におけるものなどの免疫機能に関与する遺伝子の機能的コピーである。一部の実施形態においては、治療ポリペプチドは成長因子受容体などの細胞の増殖を増加/減少させるタンパク質である。一部の実施形態においては、治療ポリペプチドはイオンチャネルポリペプチドである。一部の好ましい実施形態においては、治療ポリペプチドは免疫チェックポイント分子である。好ましくは、免疫チェックポイント分子は腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーメンバー(CD27、CD40、OX40、GITRまたはCD137など)またはB7-CD28スーパーファミリーメンバー(CD28、CTLA4またはICOSなど)である。一部の実施形態においては、コードされるポリペプチドはPD1、PDL1、CTLA4、Lag1またはGITRである免疫チェックポイント分子である。
【0100】
一部の実施形態においては、導入遺伝子は抗原的に重要なCMV五量体などの1つまたは多数のウイルスポリペプチドをコードする。
【0101】
他の実施形態においては、1つまたは複数の導入遺伝子は、アデノウイルス以外のウイルスの複製または構造に関与するタンパク質をコードすることになる。
【0102】
ワクチンの大半はウイルスタンパク質の集合体:ウイルス様粒子(VLP)、不活化ウイルス粒子、または生弱毒化ウイルスのいずれかから構成される。VLPは典型的に全てタンパク質で構成されているという利点を有するため、元となるウイルスの潜在的病原性のいずれも有していない。また、その構造が元となるウイルスと同じであり、不活化プロセスで変化していないという、不活化ウイルス粒子を上回る利点を有する。数多くのVLPが、HPV、B型肝炎およびマラリアワクチンRTSSを含むワクチンとして成功していることが示されている。しかし、哺乳類系における産生は、VLPを商業的に実現可能な製品とするのに必要なものより低いことが多い。この例は、B型肝炎ワクチンVLPが酵母で製造されるという知見である。したがって、正しいフォールディングとグリコシル化を確保するために、哺乳類細胞において大量のVLPを産生する系が望ましい。
【0103】
一部の実施形態においては、本発明の導入遺伝子は細胞内でまたは細胞外で集合してVLPを産生するタンパク質をコードすることになる。これらのVLPは有用なワクチン製品となりうる。
【0104】
好ましい実施形態においては、導入遺伝子はパルボウイルス科(アデノ随伴ウイルスなど)、レトロウイルス科(HIVなど)、フラビウイルス科(C型肝炎ウイルスなど)およびオルトミクソウイルス科(インフルエンザウイルスなど)、および/またはカリシウイルス科(ノロウイルスなど)に由来するタンパク質をコードすることになる。好ましい実施形態においては、導入遺伝子はノロウイルスVP1またはB型肝炎HBsAGをコードすることになる。
【0105】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、組換えタンパク質産生または遺伝子治療用途を目的として、導入遺伝子を細胞に送達するため多くの点で理想的なベクターである。幅広い宿主に感染し、堅牢且つ持続的な導入遺伝子発現プロフィールを誘発するが、宿主細胞に対して発揮する毒性は最小限である。AAVは,その自然ライフサイクルを完了するためにヘルパー機能を必要とする、ヘルパー依存性DNAパルボウイルスである。これらのヘルパー機能は、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルスまたはアデノウイルスの共感染を含む多くの媒介物によって提供されうる。ヘルパー媒介物および機能が不在であると、AAV感染はAAVウイルスゲノムが宿主細胞染色体に組み込まれる潜伏期に入る。続いて、ヘルパーウイルスの存在下で、組み込まれたAAVプロウイルスはレスキューされ、ウイルスを複製し、事前に形成されたタンパク質カプシドにパッケージングし、感染性ビリオンを産生することが可能となる。
【0106】
AAVをDNA送達のためのバイオテクノロジーツールとしての使用することに対する現在の手法では、AAVを遺伝子操作してウイルスrepおよびcapコード配列領域を目的の導入遺伝子で置換し、標的細胞に送達する。ウイルスカプシドの複製、組み込みおよび発現に必要とされるrepおよびcap遺伝子配列は、これらの遺伝子を宿主細胞から安定して発現するよう遺伝子操作したDNA発現プラスミド、ウイルスベクターまたは細胞株によってトランスに提供される。
【0107】
従来のrAAV産生方法は2種類のDNAベクター:1)rAAV配列を含むプラスミド;および2)AAV repおよびcap配列を含むプラスミドの共トランスフェクションを包含する。続いて、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスの感染によってヘルパー機能をトランスに提供することができる。効率のよいrAAV産生に必要とされるrepタンパク質の量は不明である。Rep78/68の翻訳開始コドンの減弱によって高レベルのrAAV産生がもたらされると報告されているが(Li他、1997年、J.Virol.71:5236-5243)、他の報告では、AAV repの転写を担うp5プロモーターを、ヒト免疫不全ウイルスの長い末端反復(HIV LTR)といった強力なウイルスプロモーターと交換すると、rAAVが高レベルで産生されている(米国特許第5,658,776号を参照)。議論されている方法は、rAAVを産生するために2種類のプラスミドの共トランスフェクションおよびアデノウイルスなどのヘルパーウイルスの共感染を必要とするため、再現性とバッチ変動が重大な問題となる。さらにrAAVは、下流および産業用途のためにヘルパー媒介物(アデノウイルスなど)から精製する必要がある。ヘルパーウイルスタンパク質、特にヘルパーウイルス由来の抗原であるものは、AAV製剤などに対するヒトの反応に影響する可能性もあるので、最終製剤はこれを含むこともできない。
【0108】
rAAVの産生に必要とされる第2の方法は、3つのDNAプラスミドベクターの産生細胞株への共トランスフェクションを包含する。シスプラスミドは:1)rAAV ITRおよび導入遺伝子;2)AAVrepおよびcapをコードするトランスDNAプラスミド;および3)ヘルパーウイルス(アデノウイルスなど)由来の配列をコードするトランスDNAプラスミドを含む。この方法はヘルパーウイルス粒子の汚染がないという利点があるが、サイズが相当大きな3種類のDNAプラスミドの共トランスフェクションにより、再現性が低下すると共にrAAVウイルス力価収率が相当低下する。
【0109】
第3の方法は、repおよびcap遺伝子配列が宿主細胞ゲノムに組み込まれるrAAVパッケージング細胞株の構築を包含する。典型的には、この方法により、AAV ITRおよび導入遺伝子をコードするDNAシスプラスミドのトランスフェクションと、その後のヘルパー媒介物の導入(ヘルパーアデノウイルス感染など)によってrAAVが産生される。その代わりに、シスDNA AAV ITRSおよび導入遺伝子(ハイブリッドAd/AAV)を担持するヘルパーウイルスを、rAAVの産生を目的とした産生細胞株に導入することができる(米国特許第5,856,152号を参照)。
【0110】
この方法の欠点は、AAV repおよびcapが安定して組み込まれ、且つ十分な量発現する産生細胞株の複雑な遺伝子操作を必要とすることである。さらに、シスDNA配列(AAV ITRSおよび導入遺伝子など)の送達を目的としてヘルパーウイルスを使用すると、ヘルパーウイルスで汚染され、下流での精製が必要となる。さらに、細胞株におけるAAV repタンパク質の毒性が報告されており、また構成的発現によって抗増殖および細胞死がもたらされる(Yang他、1994年J.Virol.68(8),4847-4856)。さらに、Repタンパク質はそれ自体の転写の抑制に対するネガティブフィードバックループを誘導することが報告された(Beaton他、1989年J.Virol.63,450-4454)。パッケージング細胞株の修飾によってAAV repの発現されたRepに対する毒性を回避するその他の試みは、誘導可能な転写系を用いている(米国特許第5,837,484号およびOgasawara他、1999年J.Virol.80,2477-2480を参照)。典型的には、これらの安定した系は、商業スケール化可能な系とするために必要とされるAAVのレベルを得ることに失敗している。
【0111】
rAAVを産生する第4の方法は、AAV repおよびcap遺伝子の送達を目的としたヘルパー媒介物(ヘルパーアデノウイルスなど)の使用を包含する。この方法においては、組換えアデノウイルスはrepおよびcap遺伝子を含み、これらをヘルパーウイルスのゲノム(典型的には組換えアデノウイルスのE1領域)に挿入する。続いて、これらを用いてシスAAV DNA配列(AAV ITRおよび導入遺伝子)を含みうるパッケージング細胞株に感染させるか、またはトランスフェクション法によってシスDNAプラスミドを導入することができる(Zhang他、2001年Gene.Ther.8(9),704-712)。この方法の著しい欠点は従来のrAAV産生方法と同様であり、最終製品からヘルパーウイルスおよび何らかのタンパク質(特に構造的タンパク質)の汚染を除去するために、困難且つ費用のかかる精製段階を必要とする。
【0112】
本発明の1つの実施形態においては、本発明のアデノウイルスベクターにおける1つ以上の導入遺伝子はAAV Rep-Capポリペプチドをコードする。本発明の他の実施形態においては、1つ以上の導入遺伝子はAAVゲノムをコードする。好ましくは、AAVゲノムは、AAVに由来する5’および3’ITR配列を介在配列と共に含むか、またはこれらから構成される。本発明の他の実施形態においては、1つ以上の導入遺伝子は、AAVに由来するRep-Capポリペプチド、およびITRが目的の配列に隣接するAAVゲノムをコードする。RepまたはCapまたはそのサブ転写産物または領域は、本発明の実施形態において個別にコードされうる。
【0113】
アデノウイルスベクターは、レポーター遺伝子、制限酵素部位、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、非翻訳領域、エンハンサーおよびインシュレーターからなる群から選択される1つ以上の他のエレメントをさらに含みうるが、これに限定されない。
【0114】
一部の実施形態においては、アデノウイルスベクターは1つ以上の多重制限酵素部位をさらに含みうる。これらの部位は、最も好ましくはII型であり、長さが6または8塩基対のいずれかとなる。
【0115】
また本発明は、本発明のアデノウイルスベクターを含むアデノウイルス粒子を、生理的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤のうち1つ以上と共に含む組成物も提供する。ウイルス粒子と共に用いるのに適した生理的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤の例は技術上周知である。組成物は、好ましくは本発明のアデノウイルスベクターを含むアデノウイルス粒子を、水性バッファー溶液内に含む。好ましくは、水性バッファー溶液はMgClおよび/またはグリセロールを含む。
【0116】
また本発明は、本発明のアデノウイルスベクターを含むキットであって、当該キットが(i)ウイルスベクターが細胞に感染してそのゲノムを複製することを可能とする細胞株であって、当該細胞株がウイルスベクターのMLPを抑制する細胞株および(ii)ウイルスベクターの構築を補助する1つ以上のDNAプラスミドからなる群から選択される1つ以上の追加的構成要素をさらに含むキットも提供する。
【0117】
好ましくは、キットは導入遺伝子の挿入のための部位を含むウイルスベクターを含むプラスミドを含む。より好ましくは2つのプラスミド:ウイルスベクタープラスミドおよびウイルスベクターの容易な操作を可能とするシャトルプラスミドが存在する。シャトルプラスミドは、最終ウイルスベクターを作製するための相同組み換えを可能とするウイルスベクター相同領域か、DNAをシャトルプラスミドからウイルスベクタープラスミドにシャトリングすることを可能とするウイルスベクターと適合する制限部位のいずれかを含む。
【0118】
またキットは、1本以上の遠心管、ベンゾナーゼ、透析バッファー、透析カセットなどの、ウイルス粒子の密度バンディングおよび精製に関与するものなどの、ウイルス粒子の精製のための材料も含む。
【0119】
他の実施形態において本発明は、ウイルスベクター(好ましくはアデノウイルスベクター)または核酸分子であってヌクレオチド配列:
【0120】
【0121】
またはこれと少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%または95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むウイルスベクターまたは核酸分子を提供する。
【0122】
一部の実施形態においては、上記のヌクレオチド配列またはこれと同一性を有する配列は配列tccctatcagtgatagaga(配列番号2)を含む(すなわちリプレッサーエレメントは変化していない)。
【0123】
他の実施形態においては、上記のヌクレオチド配列またはこれと同一性を有する配列は上に太字で示したリプレッサーエレメントと異なるリプレッサーエレメントを含む。
【0124】
また本発明は、本発明のアデノウイルスベクターを含む哺乳類細胞も提供する。細胞は、たとえば生存動物内に存在しない、分離細胞でありうる。哺乳類細胞の例は、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、サル、ウサギ、ロバ、ウマ、ヒツジ、ウシおよび類人猿に由来する任意の臓器または組織に由来するものを含む。好ましくは、細胞はヒト細胞である。細胞は初代細胞であっても不死化細胞であってもよい。好ましいヒト細胞はHEK293、HEK293T、HEK293A、PerC6、911、HeLaおよびCOS細胞を含む。
【0125】
HEK-293細胞はE1AおよびE1Bタンパク質を含有するよう修飾されており、またこれにより、この細胞株で増殖させるE1AおよびE1B領域の欠失したウイルスの、トランス補完による作製を可能とする。同様に、PerC6および911細胞はより小さな修飾を含み、これもまた使用することができる。最も好ましくは、ヒト細胞はHEK293、HEK293T、HEK293A、PerC6または911である。他の好ましい細胞はCHOおよびVERO細胞を含む。
【0126】
アデノウイルスベクターはいくつかの方法によって産生可能であり、そのうち最も一般的なものは哺乳類細胞、または細菌および酵母を含む微生物のいずれかにおけるアデノウイルスプラスミドの相同組換えを包含する。シャトルプラスミドおよびアデノウイルス(骨格とも呼ばれる)プラスミドと呼ばれる2つのプラスミドを組換えて、双方のプラスミドに由来する配列を組み入れたDNA分子とする。その後、このDNA分子を哺乳類パッケージング細胞株にトランスフェクトして、アデノウイルス粒子を産生する。
【0127】
MLPがTetRタンパク質によって調節される本発明の実施形態においては、ウイルスは、リプレッサータンパク質を阻害することによりMLPプロモーター内のリプレッサーエレメント/部位との結合を防止するドキシサイクリンの存在下で回収される。これにより、アデノウイルスを高力価で産生することが可能となるはずである。
【0128】
タンパク質の産生またはウイルスタンパク質の発現を目的として、ドキシサイクリンの非存在下で、アデノウイルスが感染することが可能な任意の細胞株(HEK-293細胞など)にウイルスを感染させることにより、発現したTetRリプレッサータンパク質がMLPリプレッサーエレメントに結合し、これによりウイルス後期遺伝子発現の生成を遮断し、ウイルス粒子の産生を防止することができる。
【0129】
TetRタンパク質は、感染細胞株の内部で一過性または安定的に提供するか、またはウイルス自体の内部にコードすることが可能である。MLPの制御下にある場合、各ゲノムの複製に伴ってMLPの活性化がフィードバックルループを提供し、あらゆる潜在的新規ウイルス後期遺伝子発現をさらに遮断する。
【0130】
さらなる実施形態においては、本発明は修飾された哺乳類細胞を生成するためのプロセスであって、当該プロセスが:
(a)哺乳類細胞に本発明のアデノウイルスベクターを感染させ、
これにより哺乳類細胞がその後アデノウイルスベクターを含む段階を含むプロセスを提供する。
【0131】
さらなる実施形態においては、本発明は導入遺伝子産物を産生するためのプロセスであって、当該プロセスが:
(a)哺乳類細胞に本発明のアデノウイルスベクターを感染させる段階;
(b)感染した哺乳類細胞を導入遺伝子が発現するような条件下にある培地で培養する段階;および
(c)導入遺伝子産物を細胞または細胞培地より分離または精製する段階を含むプロセスを提供する。
【0132】
感染した哺乳類細胞を培養するのに適した方法は技術上周知である。
【0133】
導入遺伝子産物の発現レベルは、100kDaのL4/eIF48タンパク質の共発現によって改善しうる。さらに、リプレッサータンパク質はリプレッサーとして活性である必要がある(たとえばリプレッサータンパク質がTetRの場合ドキシサイクリンは存在しない)。
【0134】
本発明のプロセスは、好ましくはインビトロまたはエクスビボで遂行される。
【0135】
本願に記載された各参照文献の開示は、参照文献として本願にその全文を個別に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0136】
図1】アデノウイルスゲノムの模式図を示し、且つ主要初期および後期発現領域を示す。MLPも示される。スプライシングパターンは点線で表示される。
図2】野生型アデノウイルス血清型5の主要後期プロモーター領域の注釈付き配列(配列番号12~14)を示す。
図3】アデノウイルス血清型5の修飾された主要後期プロモーター領域の注釈付き配列(配列番号15~17)を示す。
図4】Ad5リプレッサー変異主要後期プロモーターからのGFPレポーターの発現を目的として構築されたプラスミドベクターの模式図を示す。
図5】MLPプロモーターからGFPレポーター遺伝子を発現するプラスミドベクターを示す。
図6】TETRタンパク質によるリプレッサー変異MLPの転写抑制を示す。
図7】TETRタンパク質を安定的に発現する細胞株HEK293 T-Rex Flp細胞において抑制されているMLPリプレッサーAd5の例を示す。
図8】構成的CMV(サイトメガロウイルス)プロモーターの制御下で、TETR発現プラスミド(pTETR)をトランスフェクトした293Ad細胞において抑制されているMLPリプレッサーAd5の例を示す。
図9】TETRタンパク質を安定的に発現する細胞株293 T-Rex Flp細胞において抑制されたMLP変異Ad5のウイルスゲノム複製を示す。
図10A】TET1b修飾MLP変種を有するAd5によるHEK293細胞の低MOI感染を示す。A)CMVプロモーターの制御下およびドキシサイクリン0.2μg/mLまたはDMSOの存在下で、E1/E3 Ad5またはEGFPを発現するAd5 TET1b MLPをMOI 0.1でHEK293に形質導入した。感染6日後の蛍光顕微鏡像。
図10B】フローサイトメトリー分析用のHEK293細胞も回収して、ゲーティングされた集団内のEGFP陽性細胞の割合を測定した(B)。データは3回の生物学的測定の平均±SDである。
図11-1】TET01b修飾MLPを有するAd5からのEGFP発現を示す。A)CMVプロモーターからのAd5 TPLをコードするEGFPのプラスミド発現。プロモーターレスプラスミドから、またはAd5 TPLを含むCMVプロモーターおよび含まないCMVプロモーターの制御下で、EGFPを発現するプラスミドDNAをトランスフェクトしたHEK293細胞。トランスフェクションより48時間後にフローサイトメトリーで測定したEGFP発現。B)DMSOまたはドキシサイクリン0.2ug/mLで処理したT-Rex Flp細胞において、CMVプロモーターの制御下でEGFPを発現するMLP TET01b修飾Ad5(Ad5 TPLを含むものおよび含まないもの)。感染の24時間、48時間および72時間後のフローサイトメトリーによる細胞の分析。
図11-2】C)HEK293におけるCMVプロモーター制御下でのプラスミドDNAまたはMLP修飾Ad5からのEGFP発現。HEK293細胞は、CMVプロモーターの制御の下、ドキシサイクリンまたはDMSOの存在下で、EGFPを発現するCMVプロモータープラスミドまたはEGFPを発現するMLP修飾Ad5(Ad5 TPLを含むものおよび含まないもの)による形質導入に先立ち、TETRを発現するプラスミドによりトランスフェクトした。形質導入の48時間後に細胞をフローサイトメトリー用に回収した。D)DMSOまたはドキシサイクリン0.2μg/mLの存在下で、Ad5 TPLをコードするEGFPを発現するMLP修飾Ad5を形質導入したpTETRトランスフェクトHEK293細胞の蛍光顕微鏡画像。感染の48時間後の画像。MFI(蛍光強度中央値)データは平均±SD。
図12-1】HEK293細胞におけるTERA-CMV-EGFPまたはE1/E3 Ad5-CMV-EGFP感染に由来するアデノウイルス構造タンパク質のウエスタンブロット検出を示す。A)TERAまたはE1/E3 Ad5を用いてHEK293にMOI 100または1000で形質導入した。細胞ライセート(左側ブロット)または増殖培地(右ブロット)からウイルスを回収した。
図12-2】B)ドキシサイクリンの用量を漸増しながら培養し、TERAまたはE1/E3欠失Ad5をMOI 10またはMOI 100で形質導入したHEK293細胞に由来する増殖培地のウエスタンブロット分析(C)。全てのウイルスサンプルは感染の72時間後に回収し、抗Ad5抗体を用いて自動ウェスタン機器(Wes Simple Western)で検出した。
図13】HEK293細胞におけるTERAのDNAおよびウイルス複製を示す。A)HEK293細胞にCMV EGFP発現カセットをコードするTERAまたはE1/E3 Ad5をMOI 1、10または100で感染させ、表示した感染後時点で総DNAを回収してQPCR分析した。B)CMV EGFP発現カセットをコードするTERAまたはE1/E3 Ad5を用いて、ドキシサイクリン0.5μg/mLまたはDMSOの存在下でHEK293にMOI 10または100で感染させた。表示の感染後時点で総DNAを回収してQPCR分析した。
図14】HEK293細胞におけるTERAからのリポーターEGFP発現を示す。A)HEK293細胞に、CMVプロモーター(Ad5 TPLのあるもの、およびこれのないもの)からEGFPを発現するTERA(MOI 10)、およびこれもCMVプロモーターの制御下でEGFPを発現するE1/E3 Ad5(MOI 10)またはプラスミドDNA(Branch PEIを用いて細胞約7.0×10個につき0.75ug)を形質導入した。形質導入の24時間後および48時間後にHEK293細胞をフローサイトメトリー分析用に回収した。B)DMSOまたはドキシサイクリン0.5ug/mLの存在下で、CMVプロモーターの元でEGFPを発現するTERAをMOI 100で感染させたHEK293細胞。形質導入の72時間後に細胞ライセートから回収し、抗Ad5および抗EGFP抗体を用いて自動ウエスタンブロット機器(Wes Simple Protein)で検出したウイルス。
図15-1】HEK293細胞におけるBiTEのTERA発現を示す。A)CMV(Ad5 TPLのあるCMVおよびAd5 TPLのないCMV)の制御下で、EGFPを発現するE1/E3 Ad5またはTERAをHEK293にMOI 10で形質導入した。形質導入の48時間後に回収し、さらに(5μL)自動ウェスタン(Wes Simple Protein)を用いて抗6x His抗体によりBITE発現を探索した培地。B)各サンプルからの化学発光シグナルをさらに定量し、プロットして検出されたピークおよび曲線下面積に基づく相対発現強度を得た。C)0時間、24時間、48時間および72時間の時点でウイルス感染HEK293細胞より総DNAを回収し、ゲノムをQPCRで定量した。
図15-2】D)BiTEを発現するよう遺伝子操作したE1/E3 Ad5またはTERAを形質導入したHEK293細胞に由来するアデノウイルスタンパク質の検出。形質導入の48時間後に回収し、さらに(5μL)自動ウェスタン(Wes Simple Protein)を用いて抗Ad5抗体によりAd5主要構造タンパク質を探索した培地。E)CMVプロモーターの制御下で、Ad5 TPLをコードするBiTEを発現するプラスミドDNA(Branch PEIを用いて細胞約7.0×10個につき0.75μg)またはTERAをMOI 10でHEK293細胞に形質導入した。形質導入した細胞に由来する増殖培地は規定の時点である形質導入の24、48および72時間後に回収し、さらに(5μL)抗6x His抗体を用いてBITE発現を探索した。
図16-1】HEK293細胞におけるTERAによるrAAVベクターの産生を示す。A)rAAVゲノム、AAV ITRに隣接するCMV-EGFP発現カセットをコードするE1/E3 Ad5またはTERAのMOI 100または500での形質導入、または三重プラスミドトランスフェクションを経たヘルパーフリー産生に先立ち、DMSOまたはドキシサイクリン0.5μg/mLの存在下でAAV RepおよびCap遺伝子を発現したプラスミドをHEK293細胞にトランスフェクトした。形質導入の72時間後に細胞ライセートおよび増殖培地から総組換えウイルスを抽出し、アデノウイルスゲノムの線維配列またはrAAVとアデノウイルスが共有するCMVプロモーター配列に対して向けられたQPCRプライマーおよびプローブセットによってDNアーゼI耐性ゲノムを定量した。1ウェル当たりのゲノム封入アデノウイルスの総数を、各サンプルからゲノム封入アデノウルスを減算して算出した1ウェル当たりの総ゲノム封入rAAVと共にプロットした。B)各規定のrAAV産生法に由来する培地(5μL)において、自動ウエスタンブロット機器(Wes Simple Protein)を用いて抗Ad5抗体でアデノウイルスカプシドタンパク質を探索した。
図16-2】C)ヘルパーフリートランスフェクション法、またはDMSO存在下、MOI 500でのTERA-AAV形質導入により産生されたrAAVカプシドまたはウイルス粒子(VP)をELISAで測定した。
図16-3】データは、形質導入時点での細胞1個あたりの産生ウイルス粒子として提示し、QPCR分析によって測定した総封入rAAVゲノムと共にプロットした。
図16-4】E)rAAVカプシドから判定したゲノム封入rAAVの割合を示す。F)DMSOまたはドキシサイクリン0.5μg/mLの存在下で、MOI 500でのHEK293細胞のTERA-AAV形質導入を用いたrAAV産生より回収した感染培地を用い、ドキシサイクリン0.5μg/mL存在下で1:100希釈して新鮮なHEK293に感染させた。感染の24時間後および96時間後に蛍光顕微鏡で撮像した細胞単層。
図16-5】G)ヘルパーフリートランスフェクション法、またはDMSOの存在下、MOI 100および500でのE1/E3 Ad5またはTERA形質導入によって産生したrAAサンプルに由来する汚染性感染性アデノウイルスを、50%培養細胞感染量(TCID50)測定法により測定した。AAV産生におけるTERAのMOI 100または500での使用に由来する汚染アデノウイルスは、E1/E3 Ad5対照に対して算出した感染アデノウイルスの割合として提示する。
【実施例
【0137】
本発明は以下の実施例によってさらに例示され、別段の言及がない限りその部および割合は重量によるものであり、温度は摂氏である。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、例示を目的としてのみ提示されることを理解すべきである。上記の考察およびこれらの実施例により、当業者は本発明の本質的特性を確認し、その主旨および範囲を逸脱することなく、本発明に多様な変更および変法を行って多様な用途および条件に適合させることができる。したがって、本願に提示および記載するものに加えて、本発明の多様な変法が、先行する記述により当業者に明らかになるであろう。そのような変法もまたは付属の請求項の範囲内となることを意図している。
【0138】
(材料と方法)
アデノウイルスベクターのクローン化および産生に用いた方法は以下の通りである。
【0139】
(原核系におけるプラスミド増幅)
Escherichia coli(E.coli)の形質転換によりプラスミドの増幅およびその後の所望の最終DNAクローンのスクリーニングを可能とした。DNA形質転換は、E.coli細胞を氷上で解凍した後、形質転換1回につき5~100ngのDNAを添加することによって実施した。細胞を氷中で20分間インキュベートした後、37℃で3分間熱ショックを行った。LB培地(各サンプル0.9mL)を各試験管に添加し、さらに37℃で15分間インキュベートした。サンプルを選択抗生物質含有する栄養寒天板に注ぐか、または各サンプル100μLを線条接種して個々のコロニーの分離を可能とした。
【0140】
形質転換に成功したクローンを増幅し、増殖培地内で適切な抗生物質を用いて抗生物質耐性により選択した。カナマイシン(50μg/mL、硫酸カナマイシン、インビトロジェン、英国)またはアンピシリン(50μg/mL、アンピシリンナトリウム塩、シグマアルドリッチ)のいずれかを含有する細菌培養ブロスおよびプレートを、Lennox LB Broth Base(20g/L)およびLennox LB Agar寒天(32g/L)(インビトロジェン、英国)をそれぞれ用いて調整した。形質転換後に培養プレート上で得られた単一の細菌コロニーを選択し、三洋オービタルインキュベーター(三洋電機バイオメディカ株式会社、米国)を用いて37℃で攪拌(200rpm)しながらブロス(少量調製5mLまたは大量調製250mL)内で増殖させた。
【0141】
プラスミドは、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン、英国)を用いた少量調製またはキアゲンHigh Speed Maxi-prep kit(キアゲン、英国)を用いた大量調製により精製した。プラスミドクローンを選択し、診断的制限消化およびDNA配列決定により確認した。
【0142】
(細菌細胞)
大半の低分子(<10Kb)DNA構築物では、DH5α E.coli細菌(インビトロジェン)を用いてプラスミドを増幅した。より高分子量の(>10Kb)構築物では、XL10 Gold Ultracompetent E.coli細菌(ストラタジーン)を用いてDNAを増幅した。これらの細胞は、熱ショック処理による高分子DNAプラスミドの効率的送達を可能とし、低分子プラスミドライブラリー選択へのバイアスを低減するよう遺伝子操作されている。重要な制限部位におけるDAMおよびDMCメチル化のないDNA伸長には、JM110 E.coli(ストラタジーン)を用いた。これらの細胞はメチルトランスフェラーゼ酵素が欠損しているので、高純度のメチル欠損DNAを増殖することが可能である。DNA分子の組換えにはBJ5183 E.coli細胞を用いた。これらの細胞は、エンドヌクレアーゼIの変異と、相同領域における二重鎖の切断の効率的な修復を可能とするRecET相同体の発現の双方により、2つのDNA分子間の組換えを可能とする。全ての株はLennox LB培地またはLB寒天板において37℃で培養した。
【0143】
(DNA制限消化(調製および定量))
制限エンドヌクレアーゼを用いて、診断的消化バターンを作製するか、または付着(非平滑)末端または平滑末端を有するDNA分子を産生し、続いてDNAフラグメントと、平滑末端または適合するオーバーハングを有する他のDNA分子を連結することを可能とした。全ての消化は、製造者の規定する条件に従って実施した(酵素はニューイングランドバイオラボ、英国またはプロメガ、英国から購入した)。分子操作を目的として消化を実施する場合、ゲル電気泳動により正しいサイズのDNAフラグメントを可視化し、高分子フラグメントには(>8 Kb)はQIAEX II Gel Extraction Kit(キアゲン、英国)および低分子フラグメントにはMinElute Gel Extraction Kit(キアゲン、英国)を用いて切り取ったバンドから精製するか、あるいは、サイズの異なるフラグメントを分離する必要が無ければ、制限反応物から直接精製した(QIAquick PCR Purification Kit)。1~10Kb範囲のフラグメントの分子量マーカーとしてHyperLadder(登録商標)I(Bioline Ltd、英国)を用いた。高分子DNAフラグメントには、Lambda Hind3消化ラダーを用いた(ニューイングランドバイオラボ、英国)。1Kb未満のフラグメントには100塩基対ラダーを用いた(ニューイングランドバイオラボ、英国)。
【0144】
(DNA連結)
ドナー(インサート)およびレシピエント(ベクター)DNAを単制限酵素または二重制限酵素(方向性クローニング用)で消化し、相補的塩基対形成に適合したオーバーハングを作製した。消化したインサートをゲル精製またはクリーンアップしながら、ベクターを仔ウシ腸アルカリホスファターゼ(インビトロジェン、英国)2μLで処理して(37℃、1時間)脱リン酸化し、ベクターの再連結により発生するバックグラウンド汚染を低減した。その後、MinElute Gel Extraction Kit(キアゲン、英国)またはQIAquick PCR Purification Kit(キアゲン、英国)を用い、製造者のプロトコルを用いてベクターを精製した。全ての精製DNAはヌクレアーゼフリー水に溶出させた。連結反応物は、T4 DNA Ligase(ニューイングランドバイオラボ、英国)を用い、製造者のプロトコルにしたがって調製した。
【0145】
(熱ショックコンピテント細胞)
熱ショックDNAコンピテントE.coli細胞は、2xYTブロス培地5mL(16g/Lバクトトリプトン、10g/L酵母エキス、5g/L NaCl、pH7.0に5M NaOHを添加)にE.coliの単一コロニーを播種し、37℃で4時間震盪して生成した。これをあらかじめ加温した2xYT培地200mLに移した。培養がOD480に達したならば、細胞を3000rpm、4℃で10分間スイングアウト遠心分離してペレット化した。細胞を冷TFBI1(30mM KC(酢酸カリウム)、100mM RbCl、10mM CaCl・2HO、50mM MnCl・4HO、15%v/vグリセロール、0.2M CHCOOHを用いてpH5.8に調節、ろ過滅菌)計80mLに再懸濁した。細胞を上述の方法で遠心分離し、TFBI2(10mM MOPS、10mM RbCl、75mM CaCl・2HO、15%v/vグリセロール、5M KOHを用いてpH6.6に調節、ろ過滅菌)8mLに再懸濁した。細胞100μLを、あらかじめ冷却した1.5mL微量遠心管に分取し、ドライアイス上で凍結した。その後、遠心管を-80℃の長期保存に移した。
【0146】
(ポリメラーゼ連鎖反応(クローニング))
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、分子操作、配列決定またはスクリーニング手順の要件にしたがってデザインされたオリゴヌクレオチドプライマー(シグマジェノシス、英国より購入)を用いて実施した。ベクターの操作と分子の特性解析を目的として採用したプライマー配列を以下に示す。
【0147】
DNAテンプレートからのPCR増幅によって作製したDNAフラグメントのサブクローニングには、忠実度の高いAccuPrime(登録商標)Pfx proofreading DNA polymerase(インビトロジェン、英国)を用いた。PCRによる特定のDNA配列の有無についての常用的スクリーニングには、PCR SuperMix(インビトロジェン、英国)を用いた。脱イオンヌクレアーゼフリー水にプライマーを10μMで溶解し;1回のPCR反応に対して順方向および逆方向プライマーを0.8~1μLずつ用いた。反応は酵素および試薬の供給者が提供する推奨プロトコルにしたがって実施した。必要な場合はプライマー濃度を変化させ、アニーリング温度のグラジエントを実施して至適反応条件を決定した。PCRは、PTC-225 Peltier Thermal Cycler DNA Engine Tetrad(MJリサーチ、米国)を用いて実施した。
【0148】
(アガロースゲル電気泳動)
臭化エチジウム(シグマアルドリッチ、英国)(0.5μg/mL)の0.5×TAEバッファー(1L中トリス塩基4.84g、氷酢酸1.09g、EDTA 0.29g)溶液を含有する1%(w/v)アガロース(インビトロジェン、英国)上でのDNAサイズ分画化により、DNAの視覚化と、上記の市販の分子量マーカーとの相対的比較によるサイズ推定が可能となる。PCR反応または制限消化に由来する精製プラスミドまたはフラグメントに由来するDNA分子を、水平DNAゲル電気泳動ゲルタンク(バイオラドラボラトリーズ社、英国)内でゲル電気泳動(10V/cmゲル長、30~120分間)に付した。ゲルおよび蛍光撮影システム(AlphaImager、Alpha Innotech Corporation、米国)を紫外線下で用いて、DNAを視覚化した。
【0149】
(二重鎖デオキシリボ核酸の定量)
DNAは、Nanodrop(サーモサイエンティフィック、英国)分光光度計を用いて定量した。分析前に、蒸留水を用いて機器をブランク測定し、その後DNA溶媒溶液(TE、EBまたはHO)を用いてバックグラウンド測定を実施した。サンプルは3回測定し、ND-1000v3.1.0ソフトウェアを用いて製造者の指示に従いデータを解釈した。最終DNA量はナノグラム/マイクロリットルで表示した。
【0150】
(アデノウイルスの回収を目的としたリン酸カルシウムトランスフェクション)
組換えアデノウイルスゲノムDNAまたは野生型アデノウイルスゲノムのいずれかを含むSwaI-直線化アデノウイルスプラスミドを、リポフェクタミン2000トランスフェクションを用いてHEK-293細胞にトランスフェクトした。HEK-293細胞がトランスフェクション時に70~80%コンフルエントとなるよう、トランスフェクションの24時間前に6ウェルプレートのウェルに播種した。各ウェルについて、Opti-MEM Reduced Serum Media(サーモフィッシャーサイエンティフィック)100uLに懸濁したリポフェクタミン2000を、DNA溶液(2.5μg/100μL Opti-MEM Reduced Serum Media)に、リポフェクタミン2000に対する総DNA質量の比率1:2で混合し、室温でインキュベートした後、Gibco(登録商標)(サーモフィッシャーサイエンティフィック、英国)の10%ウシ胎児血清(FBS)添加DMEMで増殖中の接着HEK-293に一滴ずつ添加した。
【0151】
リポフェクタミン2000トランスフェクション複合体を含む培地を、トランスフェクションの4時間後に除去した。FCSを2%含有する新鮮なDMEM培地を各ウェルに加えた。トラスフェクションの12日から15日後に、トランスフェクションに成功した細胞を含むウェルで細胞変性効果(CPE)が観察された。ウイルス保存液を96ウェルプレートで連続10倍希釈した。単一クローンを選別し、10cmディッシュで増幅し、これより感染上清を採取してさらなる増幅およびウイルス産生のためのシードストックとして保存した。
【0152】
(塩化セシウム勾配上のバンディングによるウイルス産生および精製)
精製1回につき、約15~25コンフルエントの175cm単層を用いて、5%FCSを含有するDMEM培地で培養したHEK-293細胞で単一ウイルスクローンを増幅した。ウイルスの詰まった細胞を含むHEK-293単層を穏やかに攪拌して回収し(感染72時間後、CPEが観察可能であるが感染細胞が溶解していない時点)、ペレット化した細胞を感染上清(16mL、3本のバンディングカラムに収容できる容積)に再懸濁し、凍結-解凍サイクルを3回実施して溶解させ、ウイルス粒子を放出させた。溶解細胞と遊離ウイルス粒子を含む混合液を245gで遠心分離した(10分間、4℃)。混合物を氷上で60分間インキュベートした後、800gで遠心分離した(10分間、4℃)。ペレットを廃棄し、上清(ウイルス粒子を含む)は、塩化セシウム(CsCl)勾配を含む遠心管(Ultra-clearTM Beckman Centrifuge tubes、ベックマンコールターUK社)に装填した。勾配を遠心分離した(Beckman L8-70M Ultracentrifuge with rotor type SW40 TIを用いて減速せずに25,000rpm、10℃、120分間)(ベックマンコールター社、米国)。遠心分離後に2本の分離したバンド:「空の」ウイルス粒子を含むカラム上部の薄いバンド、および無傷の感染性ウイルス粒子を含むより濃く白濁した下部のバンドが得られた。18ゲージの針を遠心管のウイルスバンド面の下まで刺入し、所望のバンドをシリンジに抜き取ることによりウイルスを回収した。
【0153】
続いて、50mM HEPES、1×PBS、0.1g/L CaCl、0.2g/L(初回透析)または0.1g/L(最終透析)MgClおよび10%グリセロールを含有するpH7.8のバッファー(500mL、4℃)で、初回透析に3~15mL透析カセット(Pierce Slide-A-Lyzer(登録商標)Dialysis Cassette、ピアスバイオテクノロジー社、米国)を使用した連続透析によりCsClを除去した後、ウイルスを回収してBenzonase DNAヌクレアーゼ(6μL/mL、ノバジェン、英国)により室温で30分間処理した。続いて、CsCグラジエント遠心分離でウイルスを再度バンディングし、0.5~3mLカセット(Pierce Slide-A-Lyzer(登録商標)Dialysis Cassette、ピアスバイオテクノロジー社、米国)を用いて最終透析バッファーで一晩透析した。各透析につき、1時間および2時間後にバッファーを交換して新鮮なバッファーと置換した後、一晩透析した。最終透析後に得られたウイルスを小分けし、速やかに-80℃で保存した。
【0154】
(アデノウイルスの定量を目的とした二重鎖DNA測定)
アデノウイルスDNA濃度は、PicoGreenアッセイ(Quant-iT(登録商標)PicoGreen(登録商標)dsDNA Reagent、Molecular Probes, インビトロジェン)を用いて測定した。アッセイには、アデノウイルスゲノム含有量の定量を可能とする二重鎖DNA(dsDNA)に対する蛍光核酸プローブが含まれた。ウイルス保存液を適切に希釈し(10~100倍)、1×TEバッファー(255μL)および0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)1×TE溶液(30μL)に移した(15μL)。サンプルを56℃でインキュベートし(30分間)、ウイルス粒子を破壊した。Quant-iT(登録商標)PicoGreen(登録商標)Kitで提供される既知濃度のバクテリオファージλDNAの4倍希釈(最高濃度1μg/mL)を6回連続実施し、そこから未知のサンプルのDNA含有量を算出する標準曲線の構築を可能とした(最終標準ブランク)。PicoGreen試薬を1×TEバッファーで200倍希釈した。各標準または未知サンプルについて、希釈した試薬100μLを黒色96ウェルプレート(コーニング、英国)のウェルに入れた。適切に希釈した標準液およびサンプル50μLをそれぞれ2ウェルに添加した。Wallac 1420 Victor2マルチラベルカウンターで、「フルオレセイン485/535nm、1秒」分析プログラムを用いてプレートを読み取った。各サンプル中に存在するウイルス粒子の個数を、DNA 1μgが約2.7×1010個のアデノウイルス粒子に等しいことに基づき算出した。
【0155】
(50%培養細胞感染量法を用いたアデノウイルス製剤のプラーク形成単位の算出)
50%培養細胞感染量(TCID50)法(Karber、1931年)は感染性ウイルス粒子の個数またはプラーク形成単位(pfu)を概算するために用いられており、またウイルス製剤の10倍連続希釈サンプルに感染後のHEK-293細胞における細胞変性効果(CPE)の発生に基づいている。この方法は、QBiogene(フランス)が販売するAdEasy非複製ウイルスプラットフォームのマニュアルに完全に記載されている。
【0156】
(アデノウイルス製剤)
全てのアデノウイルスはHEK-293細胞で培養し、上記の方法によりCsClグラジエントで二重バンディングして精製した。ウイルス粒子(vp)数は、PicoGreenアッセイ(インビトロジェン、ペイズリー、英国)の変法(Mittereder他、1996年)を用いてDNA含有量を測定することにより判定した。感染力はTCID50系を用いてKARBER統計法(Karber、1931年)により算出し、これを用いてアデノウイルス力価(TCID50単位/mL)を概算し、補正してプラーク形成単位(pfu/mL)を判定した。
【0157】
(細胞株の維持)
HEK293ヒト胚腎細胞は、欧州細胞培養保存機関(the European Collection of Cell Cultures、ポートンタウン、英国)から入手し、加湿インキュベーター内でペニシリン(25U/mL)およびストレプトマイシン(10mg/mL)を含む10%FCS(PAAラボラトリーズ、ヨービル、英国)含有DMEM培地において37℃、5%COで維持した。
【0158】
(Ad5のリアルタイム(定量)PCR(Q-PCR))
アデノウイルス粒子測定のためのQ-PCRの方法論は以前に報告されている(Green他、2004)。簡潔に述べると、哺乳類ゲノムGenelute DNA抽出キット(シグマ)を用いて、感染細胞または組織サンプルに由来するウイルスDNAを抽出した。反応は、Applied Biosystemsマスターミックスを用い、製造者のプロトコルにしたがって実施した。サイクルは以下の通りであった:94℃で10分間、その後94℃30秒間と60℃で1分間を40回。標的化Ad5線維に対するプライマーの配列は:順方向プライマー-5’TGG CTG TTA AAG GCA GTT TGG 3’(配列番号9)(Ad5 32350-32370ヌクレオチド)および逆方向プライマー5’GCA CTC CAT TTT CGT CAA ATC TT 3’(配列番号10)(Ad5 32433-32411 nt)およびTaqManプローブ5’TCC AAT ATC TGG AAC AGT TCA AAG TGC TCA TCT 3’(配列番号11)(Ad5 32372-32404nt)、5’末端を6-カルボキシフルオレセインで、3’末端を6-カルボキシテトラメチルローダミンで二重標識。結果はSequence Detection Systemソフトウェア(アプライドバイオシステムズ)で分析した。組織および細胞の標準曲線は、細胞ライセートまたは組織ホモジネートサンプルに既知濃度のウイルス粒子の連続希釈を添加した後、各サンプルを上記の方法で個別に抽出し、Q-PCRで分析した。
【0159】
(ウイルスゲノムDNA抽出)
アデノウイルスゲノム数の測定が必要である場合、培養上清か、または溶解溶液C(シグマ、英国)またはルシフェラーゼ測定システム(プロメガ、UK)の溶解溶液のいずれかで調製した細胞ライセートからウイルスDNAを抽出した。サンプルをプロテインキナーゼK(1mg/mL)で処理し、56℃で20分間インキュベートしてウイルスカプシドタンパク質を分解した後、70℃で20分間インキュベートした。その後、Genelute哺乳類DNA抽出キット(シグマアルドリッチ、英国)を用い、製造者の指示に従って総細胞DNAの抽出を実施した。
【0160】
(ルミノメトリーによるMLP活性の測定)
12ウェルプレートに細胞を3ウェルずつ播種した。24時間後、HBSバッファー50μLにプラスミドDNA(0.5μg)を添加し、これも無菌HBS 50μLに加えたDOTAP試薬(ロシェ)2.5μLと混合した。複合体を室温で30分間インキュベートした。トランスフェクション混合液100μLを各ウェルに加え、37℃で4時間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、2%ウシ胎児血清(FCS)(PAAラボラトリーズ、ヨービル、英国)を含有するDMEMでインキュベートした。トランスフェクション培地を除去してから24時間後、さらにレポーター細胞溶解バッファー(プロメガ)150μLを細胞に添加した。その後細胞を-80℃で1時間凍結した後、解凍した。ルシフェリン(25μL)(プロメガ、サウサンプトン、UK)を分取した細胞ライセート25μLに添加し、ルミノメトリー(Lumat LB9507、ベルトールドテクノロジーズ、レッドボーン、英国)で相対発光を測定した。
【0161】
(ウイルス感染)
細胞を上記の条件、または本発明のウイルス内の導入遺伝子が発現される任意のそのような細胞株にとって好ましい条件を用いて培養する。ウイルスを、MOI 1~1000、より好ましくはMOI 1~100、さらにより好ましくはMOI 10~100で細胞培養上清に添加する。
【0162】
(タンパク質発現の測定)
細胞における導入遺伝子の発現レベルまたは後期タンパク質の発現レベルは、ウエスタンブロットまたは酵素結合免疫吸着法(ELISA)により測定する。選択する方法は、測定する生成物が細胞内であるか、あるいは細胞外に分泌されているかによって異なる。前者では、タンパク質レベルは、細胞を溶解して細胞ライセートを作製した後、ウエスタンブロットまたはELISAにより測定する。分泌された物質では、上清を速やかにウエスタンブロットまたはELISAで測定する。
【0163】
ウエスタンブロットプロトコルを用いる場合は以下の手法を選択する。タンパク質30μgをQuantiPro BCAアッセイ(シグマアルドリッチ、cat:QPBCA-1KT)を用いて定量した後、10%ポリアクリルアミドゲル上に装填する。160Vでゲルの電気泳動を1時間実施した後、タンパク質をニトロセルロース膜に4℃、30Vで一晩ブロッティングした。ニトロセルロース膜をポンソー溶液(以下に記載)で染色して装填量およびサンプルの移動が等しいことを確認した後、5%粉乳(Fluka、シグマアルドリッチ)で2時間(E1A)または一晩(Aldolase A)ブロッキングした。その後、膜をPBS、0.1%Tween20で2回洗浄した後、PBSで1回洗浄した。アデノウイルス後期タンパク質抑制レベルの検出には、抗Hexonウエスタンブロットを用いた。Hexonを認識する一次抗体(AbCam、ケンブリッジ、英国、カタログ番号Ab8249)を、2.5%粉乳PBS溶液に1:500希釈で1時間添加した。膜を上述の方法で洗浄した。抗ウサギHRP標識二次抗体を2.5%粉乳による1:1000希釈で1時間添加した。膜は上記の方法で洗浄した後、0.125mL/cmのECLウエスタンブロッティング検出試薬(アマーシャム、GEヘルスケア)に1分間浸漬した。Alpha Innotechゲルドキュメンテーションシステムで、化学発光検出を用いてブロットを1、5および10分間可視化した。デュアルカラー分子量ラダー(Bio-Rad)に対して分子量を算出した。
【0164】
(ポンソー染色)
ポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース膜へのタンパク質転写が成功したことを確認し、且つ装填および転写が等しいことを確かめるために、ポンソーS溶液(0.1%w/vポンソーSの脱イオン蒸留HO調製5%v/v酢酸溶液)で膜を2分間染色した後にブロッキングした。その後染色液を捨て、膜をPBSで短時間2回洗浄した後、撮影した。その後、膜をPBS0.1%Tween20で2回洗浄した後、PBSで1回洗浄して残留染料を除去した後、ブロッキングした。
【0165】
タンパク質レベルの評価にウエスタンブロットではなくELISAを用いることがある。これを実施するためには、まず試験するサンプルをコーティングバッファー(カタログ番号28382、サーモフィッシャー)で希釈する。典型的には、1:10;1:100;1:500などの異なる濃度でサンプルをプレート上にコーティングし、至適検出範囲を決定する。検出しようとするタンパク質の事前に準備した一定量を用い、希釈によって最大標準点4μg/mLでウェルをコーティングした後、隣のセルに2倍連続希釈して標準曲線を作成する。たとえば、標準タンパク質0.2mg/mLは、4μLおよび非トランスフェクト培地196μLとコーティングバッファー1.8mLを必要とする。これを用いて、再溶解標準液1mLおよびコーティングバッファー1mLを1.5mL試験管に添加する2倍連続希釈を実施し、8点標準曲線を作成する。その後、各標準液100μLをELISAプレート2ウェルずつに添加する。各サンプル100μLをイムノマイクロプレート1ウェルずつに添加する。コーティングバッファー100μLを無抗原対照として1ウェルに添加する。ポジティブコントロールサンプルがある場合は、このサンプル100μLも含める。プレートを4℃で一晩インキュベートする。プレートをPBS-T(0.1%Tween)で3回洗浄する。ブロッキングバッファー(元のコーティングバッファーに2%BSAを添加)を各ウェルに200μL添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートする。プレートをPBS-T(0.1%Tween)で3回洗浄する)。一次抗体(1#)を必要な希釈度で希釈溶液に添加し、各ウェルに50μL添加する。プレートを室温で1~2時間インキュベートする。プレートをPBS-T(0.1%Tween)で3回洗浄する。HRP標識二次抗体を必要な希釈度で希釈溶液に添加する。各ウェルに50μL添加する。プレートを室温で1時間インキュベートする。プレートをPBS-T(0.1%Tween)で3回洗浄する。プレートをPBSで1回洗浄する。3,3’5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)50μLを各ウェルに添加する。その後呈色するまで待ち、所要時間を記録する必要がある。停止溶液(1M HCl)50μLを添加する。プレートリーダーでプレートの吸光度を450nmで読み取り、データ取得を達成する。
【0166】
(VLP産生の測定)
細胞からのVLP産生レベル、導入遺伝子の発現レベルまたは後期タンパク質の発現レベルは、上記の方法でVLP表面上のエピトープを認識する抗体を用いてウエスタンブロットまたはELISAにより測定する。
【実施例1】
【0167】
(Ad5リプレッサー変異主要後期プロモーターからのGFPレポーターの発現を目的としたプラスミドベクターの構築)
GFPレポーター遺伝子が、野生型Ad5 MLP(pMLPwt-GFP)、リプレッサー変異MLP(pMLP-TET01a-GFP;pMLP-TET01b-GFP;pMLP-TET02-GFP)、または低レベルベースライン転写測定用の内部プロモーターのない対照構築物(pMCS-GFP)によって転写される5種類の発現構築物を作製した。ベクターは図4に示す。
【実施例2】
【0168】
(MLPプロモーターからのGFPレポーター遺伝子の発現)
GFPレポーター遺伝子が野生型Ad5 MLP(pMLPwt-GFP)、リプレッサー変異MLP(pMLP-TET01a-GFP;pMLP-TET01b-GFP;pMLP-TET02-GFP)、または低レベルベースライン転写測定用の内部プロモーターのない対象構築物(pMCS-GFP)によって転写される5種類の発現構築物を作製した。HEK293細胞を、トランスフェクションの24時間前に、組織培養処理した48ウェルプレートに密度3e4細胞/ウェルで播種した。分枝PEI(25kDA)をPEIに対するDNA質量の比率1:3で用いて、プラスミドpMLPwt-GFP;pMLP-TET01a-GFP;pMLP-TET01b-GFP;pMLP-TET02-GFP;pMCS-GFPをHEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションは3回実施し、トランスフェクションの24時間、48時間、および72時間後に細胞を回収し、フローサイトメトリーで分析した。データは図5にGFP陽性細胞のMFI(平均蛍光強度)として示す。誤差棒は3回の生物学的測定の標準偏差を示す。Studentのt検定によりデータは有意性無し(p>0.05)。
【実施例3】
【0169】
(TETRタンパク質によるリプレッサー変異MLPの転写抑制)
GFPレポーター遺伝子が野生型Ad5 MLP(pMLPwt-GFP)、リプレッサー変異MLP(pMLP-TET01a-GFP;pMLP-TET01b-GFP;pMLP-TET02-GFP)、または低レベルベースライン転写測定用の内部プロモーターのない対照構築物(pMCS-GFP)によって転写される5種類の発現構築物を作製した。GFPレポーターを発現する野生型Ad5 MLP(pMLPwt-GFP)、リプレッサー変異MLP(pMLP-TET01a-GFP;pMLP-TET01b-GFP;pMLP-TET02-GFP)または対照構築物を、構成的CMV(サイトメガロウイルス)プロモーターの制御下で、ドキシサイクリン0.2μg/mLまたはDMSOで処理したHEK293細胞に、TETR発現プラスミド(pTETR)と総DNA質量比1:1で共トランスフェクトした。HEK293細胞を、トランスフェクションの24時間前に、組織培養処理した48ウェルプレートに密度3e4細胞/ウェルで播種した。トランスフェクションは、分枝PEI(25kDA)をPEIに対する総DNA質量比1:3で用いて3回実施し、トランスフェクションの24時間、48時間、および72時間後に細胞をフローサイトメトリーで分析した。データは、Ad5 MLP野生型(pMLPwt-GFP)と比較し、且つプロモーターレス対照構築物と比較してバックグラウンド発現シグナルを正規化した、GFP陽性細胞におけるMFI(平均蛍光強度)の抑制百分率として図6に示す。データは平均±SD、有意差なしp>0.05;*p≦0.05;**p≦0.01;***p≦0.001;****P≦0.0001;対応のない両側Student検定。
【実施例4】
【0170】
(HEK293 T-Rex Flp細胞において抑制されているAd5 MLPリプレッサー)
分子的クローニング法で操作してリプレッサー配列を組み入れたアデノウイルスをHEK293で回収した。MLPリプレッサー配列MLP-TET01a、MLP-TET01b、TET02または野生型MLPを有するAd5ゲノムを、SwaI制限酵素による制限消化で細菌プラスミドDNAから切り取り、Ad5 ITR配列に隣接する5’および3’を遊離させた。HEK293細胞を10cm組織培養プレートに密度1e5細胞/プレートで24時間播種し、リポフェクタミン2000をリポフェクタミン2000に対する総DNA質量の比率1:2で用いて、MLPリプレッサーAd5またはAd5 MLPwtゲノムを含むDNA10μgをトランスフェクトした。ウイルスの感染および細胞質効果(cytoplasmic effect, cytopathic effect 細胞変性効果)を観察した後、典型的にはトランスフェクションの10~15日後にウイルスを回収した。293 T-Rex Flp細胞を、48ウェル組織培養処理プレートに密度4e4細胞/ウェルで24時間播種し、ドキシサイクリン0.2μg/mLまたはDMSOの存在下で、アデノウイルスAd5-MLP-TET01a、Ad5-MLP-TET01b、Ad5-MLP-TET02または標準E1-E3欠失Ad5(Ad5-MLPwt)により形質導入し、感染の10日後に光学顕微鏡(light miscopy)で撮影した。図7に示すデータは、3回の生物学的測定の代表的なものである。棒の長さ=250μm。
【実施例5】
【0171】
(構成的CMV(サイトメガロウイルス)プロモーターの制御下で、TETR発現プラスミド(pTETR)によりトランスフェクトした293Ad細胞における抑制されたAd5 MLPリプレッサー)
分子的クローニング法で操作してリプレッサー配列MLP-TET01bを組み入れたアデノウイルスをHEK293で回収した。MLPリプレッサー配列MLP-TET01bを有するAd5ゲノムを、SwaI制限酵素による制限消化で細菌プラスミドDNAから切り取り、Ad5 ITR配列に隣接する5’および3’を遊離させた。HEK293細胞を10cm組織培養プレートに密度1e5細胞/プレートで24時間播種し、リポフェクタミン2000をリポフェクタミン2000に対する総DNA質量の比率1:2で用いて、MLPリプレッサーAd5を含むDNA10ugをトランスフェクトした。ウイルスの感染および細胞質効果を観察した後、典型的にはトランスフェクションの10~15日後にウイルスを回収した。HEK293細胞を10cm組織培養プレートに播種し、リポフェクタミン2000をリポフェクタミン2000に対する総DNA質量の比率1:2で用い、pTETR(5μg)またはスタッファーDNAをトランスフェクトした後、アデノウイルスAd5-MLP-TET01bを感染させた。結果を図8に示す。感染の24,48、72および96時間後に光学顕微鏡で撮影したデータ。
【実施例6】
【0172】
(293 T-Rex Flp細胞における抑制されたMLP変異Ad5のウイルスゲノム複製)
分子的クローニング法で操作してリプレッサー配列を組み入れたアデノウイルスをHEK293で回収した。MLPリプレッサー配列MLP-TET01a、MLP-TET01b、TET02または野生型MLPを有するAd5ゲノムを、SwaI制限酵素による制限消化で細菌プラスミドDNAから切り取り、Ad5 ITR配列に隣接する5’および3’を遊離させる。293 T-Rex Flp細胞を10cm組織培養プレートに密度1e5細胞/プレートで24時間播種し、リポフェクタミン2000をリポフェクタミン2000に対する総DNA質量の比率1:2で用い、MLPリプレッサーAd5またはAd5 MLPwtゲノムを含むDNA10μgをトランスフェクトした。ウイルスの感染および細胞質効果を観察した後、典型的にはトランスフェクションの10~15日後にウイルスを回収した。293 T-Rex Flp細胞を、48ウェル組織培養処理プレートに密度4e4細胞/ウェルで24時間播種し、ドキシサイクリン0.2μg/mLまたはDMSOの存在下で、アデノウイルスAd5-MLP-TET01a、Ad5-MLP-TET01b、Ad5-MLP-TET02または標準E1-E3欠失Ad5(Ad5-MLPwt)を形質導入した。ドキシサイクリンまたはDMSOの存在下でMLP変異またはMLP-wt Ad5を293 T-Rex Flp細胞に感染させた。感染の10日後に総ウイルスおよび細胞DNAを回収した。ウイルスゲノムコピーは、TaqMan(登録商標)プローブを用いてQPCRで定量した。既知の力価のAd5を用いて標準曲線を生成し、データは感染に用いた初期ウイルス装填量を上回るゲノムコピーの増加として示した(図9)。データは3回実施した生物学的試験の代表的値であり、平均±SEMとして示す。**P≦0.01;対応のない両側Student検定。
【実施例7】
【0173】
(MLP抑制によりHEK293細胞単層におけるアデノウイルスの拡散が阻害される)
アデノウイルス産生およびウイルス拡散を阻害する際のMLP抑制の効果を判定するため、EGFP開始コドンと融合したAd5 TPLのあるEGFP受容体およびこれのないEGFP受容体を発現するよう、野生型MLPまたはTET01b修飾を有するアデノウイルスを操作した。CMVプロモーターの制御の元でウイルスE1欠失領域よりEGFPレポーターを発現させた。EGFPを発現するアデノウイルスを用いて、ドキシサイクリンまたはDMSOで処理したFlp-In T-REx 293細胞の単層にMOI 1で感染させ、第6日にEGFP発現を蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーでモニタリングした。ウイルス拡散、すなわち細胞単層全体のEGFP発現は野生型MLPを有する対照アデノウイルスにおいて阻害されないが、ドキシサイクリンを用いないFlp-In T-REx 293細胞においてはMLP TET01bを有するアデノウイルスのウイルス拡散は阻害され、ビリオン複製の抑制を示した(図10A)。
【0174】
感染の6日後、細胞をフローサイトメトリー用に回収し、ゲート化された集団内のEGFP発現細胞の相対割合を測定した。蛍光顕微鏡検査の結果と一致して、EGFPを発現する細胞の割合は、対照アデノウイルスに感染した後ドキシサイクリンまたはDMSOで処理したFlp-In T-REx 293細胞において同等であった(図10B)。しかし、EGFP陽性細胞の集団は、対照ウイルスと比較して、ドキシサイクリン処理細胞におけるMLP TET01b修飾アデノウイルスによる感染から低下し、おそらくこれは感染性および複製の変動によるものであり、その一方でDMSO処理した細胞はEGFP発現の一般性が有意に低く、EGFPは初回感染に由来するウイルスで形質導入された細胞からのみ発現することを示している。
【実施例8】
【0175】
(MLP抑制によりAd5 TPLエクソン1-2-3を含むEGFPの発現が促進された)
Ad5 TPLエクソンのEGFP開始コドンへの融合が遺伝子発現に影響したか否か判定するため、CMVプロモーターの制御下で、ラダー配列を含むEGFP発現およびラダー配列を含まないEGFP発現に操作されたプラスミドをHEK293細胞にトランスフェクトし、またトランスフェクションの48時間後にフローサイトメトリーでEGFP発現を判定した。結果を図11Aに示す。プロモーターレス対照プラスミドがEGFPのバックグラウンドレベルを示す一方で、TPL配列を含むプラスミドからのEGFP発現のレベルには有意差がなかった。
【0176】
MLPの抑制後にタンパク質発現が増加するか否か評価するため、Ad5 TPLを含む、およびAd5 TPLを含まない、CMVプロモーターからEGFPを発現するMLP TET01b修飾アデノウイルスを、ドキシサイクリンまたはDMSO処理したFlp-In T-REx 293にMOI 10で感染させ、また感染の24,48および72時間後にEGFP発現をフローサイトメトリーで測定した。結果を図11Bに示す。TPLを含むEGFPを発現するMLP TET01bアデノウイルスは、TPL配列のないEGFPと比較して蛍光強度中央値(MFI)の上昇を示すが、DMSO処理細胞の感染に由来するアデノウイルスMLPの抑制により、EGFP発現は、ビリオン産生が可能なドキシサイクリン処理細胞のウイルス感染と比較してさらに約2倍上昇した。
【0177】
同様に、アデノウイルスMLPがリプレッサーTETRの一過性発現により抑制される場合、HEK293細胞においてEGFP発現の約3倍の増加が観察された(図11C~11Dを参照)。CMVプロモーターからTETRを発現するプラスミドを、ドキシサイクリンまたはDMSOで処理したHEK293細胞にトランスフェクトした。続いて、MLP TET01b修飾を含み、CMVプロモーターからEGFP(TPLエクソンを含むものと含まないもの)を発現するアデノウイルスを細胞に感染させるか、またはリポフェクタミンを用いてEGFPを転写したCMV発現プラスミドをトランスフェクトした。ウイルスとプラスミドによる形質導入の48時間後に、フローサイトメトリーでEGFP発現を測定した。結果より、アデノウイルスまたはプラスミドDNAで形質導入したHEK293細胞からの、MFIで測定したEGFP発現が同等のレベルにあることが示された。しかし、EGFP発現の約3倍の増加は、TETRによるAd MLP TET01bの抑制が可能となった、DMSO処理細胞のTPLエクソンを有するMLP TET01b修飾アデノウイルス発現EGFPによる感染からのみ観察され、この効果がTPLエクソンのないEGFPコード配列で観察されないことから、cap-非依存性翻訳によるタンパク質産生の促進であることが示される。
【実施例9】
【0178】
(テトラサイクリン有効化抑制アデノウイルス(TERA)によるMLP自己抑制によりアデノウイルス構造タンパク質の産生が抑制される)
MLP TET01b修飾を有するアデノウイルスをさらに操作し、ウイルス内部MLPの直接制御の下で、ウイルスのE3欠失領域に位置するスプライシングアクセプター配列に由来するリプレッサーTETRを発現させ、TERAを構築した。結果を図12に示す。
【0179】
TERAに由来するウイルス構造タンパク質の抑制を評価するため、対照E1/E3欠失アデノウイルスまたはTERAを用いて、ドキシサイクリンまたはDMSOの存在下で、MOI 100または1000でHEK293細胞に感染させた。感染の72時間後に、細胞ライセートおよび増殖培地に由来するアデノウイルスカプシドタンパク質を、抗Ad5抗体を用いてウエスタンブロットで探索した。増殖培地にドキシサイクリンが存在する場合、細胞ライセートおよび培地の双方から、TERAおよび対照ウイルスから同等レベルのアデノウイルス構造タンパク質が検出された。しかしDMSO処理群では、TERAに由来する構造タンパク質はブロットから検出されなかった。おそらく、ドキシサイクリンが存在しない場合、HEK293細胞がTERAに感染すると、ウイルスMLP転写TETRの産生によりMLP自体の自己抑制およびカプシドタンパク質の遮断が可能となる。
【0180】
HEK293細胞におけるTERA産生を評価するドキシサイクリン用量漸増試験では、野生型MLPを有する対照アデノウイルスまたはTERAを用いて、DMSOまたはドキシサイクリン用量0.1、0.2、0.5および1.0μg/mLで処理したHEK293細胞にMOI 10および100で感染させた。結果を図12B~12Cに示す。DMSOまたはドキシサイクリンで処理した細胞における対照アデノウイルス感染では、同等レベルのAd5主要構造タンパク質が検出されたが、TERAから発現されるカプシドタンパク質は、ドキシサイクリン用量が最大0.5μg/mLまで増加すると、評価したMOIのいずれでも一貫して増加した。
【実施例10】
【0181】
(TERAウイルス複製はE1/E3欠失アデノウイルスと同等であり、またMLP抑制はDNA複製を促進した)
TERAのウイルス複製を評価するため、対照E1/E3欠失アデノウイルスまたはTERAを用いて、ドキシサイクリンの存在下で、HEK293細胞の単層にMOI 1、10および100で感染させ、ウイルス感染の0、24、48および72時間後の時点で、増殖培地および細胞ライセートから総ゲノムDNAを抽出した。アデノウイルスゲノムDNAの存在量をQPCRで測定した。結果を図13に示す。
【0182】
評価した3つのMOI全てにおいて、TERAのウイルス複製は対照アデノウイルスと同等であり、この場合24時間後にウイルスゲノムの相対存在量が急激に上昇し、感染の72時間後には総ウイルスゲノムが>4-log上昇した。
【0183】
MLP抑制時のTERAのゲノム複製をQPCRでさらに評価した。ウイルスTERAまたは対照E1/E3欠失アデノウイルスを用いて、ドキシサイクリンまたはDMSOの存在下でMOI 10および100でHEK293細胞に感染させ、ウイルス感染の0、24、48、72および96時間後のQPCRによるウイルスゲノム定量の時点で総ゲノムDNAを回収した。同様に、TERAのウイルス複製は対照ウイルスと同等であったが、DMSO処理したHEK293細胞対照群における感染24時間後のTERAからのDNA複製は、ドキシサイクリンを添加して培養した細胞への感染と比較して有意に増加した。おそらく、ウイルスMLPの抑制によりTERAの複製ライフサイクルの完遂が阻害されるので、ウイルスゲノムの指数関数的増幅が可能となる。
【実施例11】
【0184】
(TERAはEGFPレポーターの発現を促進した)
CMVプロモーターに制御されたTERAからのEGFPレポーター発現を評価するために、Ad5 TPLエクソンを含む、およびこれを含まない、EGFPを発現するよう操作されたTERAを用いてHEK293細胞に感染させ、EGFP発現をE1/E3対照アデノウイルスからの発現、およびCMV発現プラスミドによる一過性トランスフェクションと比較した。結果を図14に示す。
【0185】
E1/E3アデノウイルスおよびTERAは、CMVプラスミドベクターからの発現と比較してEGFP発現の増加を示すが、Ad5 TPLエクソンを含むEGFPを発現するTERAは、E1/E3対照ベクターおよびTPLエクソンを含まないTERAの双方で観察されたレベルを上回るレベルに産生を促進した。おそらくは、ウイルスコードTETRによるTERA MLPの自己抑制がAd5後期mRNA転写産物の抑制を引き起こし、さらに支配的TPL EGFP mRNAの非cap依存性翻訳を可能とした。
【0186】
さらに、ドキシサイクリンの存在下で対照E1/E3アデノウイルスおよびTERAを用いたEGFP発現が、汚染アデノウイルスタンパク質を伴うことが、ウエスタンブロットにより確認された。対照的に、ドキシサイクリンが存在しないことで、TERAにおいてEGFP発現を維持しながらAd5構造タンパク質を抑制することを可能とした。
【実施例12】
【0187】
(TERAはBi-特異的T細胞エンゲージャー(BiTE)の産生を促進した)
TERAを用いたモデル分泌タンパク質の産生をプラスミドDNAからの一過性発現法と比較するため、TERAおよびプラスミドベクター(pCMV-BiTE)を操作し、CMVプロモーターの制御下で、腫瘍特異抗原EpCAMに対する二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を発現させた。結果を図15に示す。
【0188】
Ad5 TPLエクソンまたはプラスミドpCMV-BiTEを含むBiTEを発現するウイルスTERAを用いて、それぞれMOI 10または0.75μgDNA/ウェルでHEK293細胞に形質導入し、形質導入の24、48および72時間後の時点でタンパク質を増殖培地から回収し、抗6x His抗体を用いて探索した。ウエスタンブロットより、3つの回収時点全てにおいて、TERAから発現したBiTEに、CMV発現プラスミドの使用からの産生と比較して有意な上昇が示された。
【0189】
図15DはE1/E3欠失アデノウイルスと比較した、TERAから発現したBiTEタンパク質のウエスタンブロット検出を示す。ドキシサイクリンの非存在下で培養したHEK293細胞に、CMVプロモーター(Ad5 TPLエクソンのあるもの、およびこれのないもの)の制御下で、E1/E3欠失アデノウイルスまたはBiTEを発現するTERAをMOI 10で感染させ、感染の48時間後に増殖培地からのBiTEタンパク質発現を測定した。TERAは、対照アデノウイルスと比較してBiTE産生の増加を示した;しかし、Ad5 TPLエクソンを含むBiTEを発現するTERAの感染からは、BiTE産生の約2倍の増加が観察された。さらに、E1/E3欠失ウイルス対照の感染からはウイルス構造タンパク質が検出されたが、TERAの感染後にウイルスカプシドタンパク質は検出されなかった。ウイルスゲノムDNAの増幅は維持され、対照ウイルスと同等であることがQPCR分析により確認された。
【実施例13】
【0190】
(TERAはAd5粒子汚染物質のないrAAVの産生を促進する)
rAAVウイルスベクター産生を目的としたヘルパー機能およびrAAV DNAの送達を目的としたTERAの使用を評価するため、E1/E3欠失対照アデノウイルスおよびTERAを、ウイルスE1欠失領域において操作し、CMVプロモーターの制御の下でrAAVゲノムであるEGFP発現カセットに隣接するAAV2 ITRをコードさせた。結果を図16に示す。
【0191】
確立されたヘルパーフリー三重トランスフェクション法、または対照E1/E3欠失アデノウイルスまたはTERAの感染により、EGFP導入遺伝子をコードするrAAVを産生した。ドキシサイクリンまたはDMSOの存在下で、HEK293細胞に、1)EGFPをコードするrAAVゲノム、2)AAV2 RepおよびCap、および3)Ad5ヘルパーをコードするプラスミドを三重トランスフェクトするか、またはAAV2 RepおよびCapをコードするプラスミドおよび対照E1/E3欠失アデノウイルスまたはTERAを形質導入した。形質導入の72時間後に細胞ライセートおよび増殖培地から組換えウイルスを回収し、さらに、カプセル化アデノウイルスおよびrAAVに由来するウイルスゲノムを、線維をコードするアデノウイルスDNAに向けられたプライマーおよびプローブセット、またはrAAVおよびアデノウイルスの双方にコードされたCMVプロモーターを用いて、QPCRにより定量した。
【0192】
図16Cは、細胞ライセートおよび増殖培地に由来するカプセル化アデノウイルスゲノムの定量を示す。DMSOおよびドキシサイクリンで処理したHEK293細胞に、対照アデノウイルスおよびTERAをそれぞれ感染させると、その後に著しいレベルのアデノウイルスが検出されたが、ドキシサイクリンを用いずにTERAまたはヘルパーフリー生成法で形質導入したところ、アデノウイルスの存在は、HEK293細胞からの測定の最低標準および検出範囲の最低値未満であった。対照的に、アデノウイルスとrAAVの双方にあるコードされたCMVプロモーターに向けられたプライマーおよびプローブセットを用いると、全てのサンプルより著しいレベルの組換えウイルスがQPCR測定法で検出された(図16D)。
【0193】
ウイルス定量ではQPCRプライマーを用い、コード化されたCMVプロモーターに向けられたプローブがrAAVおよびアデノウイルス送達ベクターの双方を検出したので、各産生方法および条件による総rAAVは、検出された全体的アデノウイルス粒子汚染を減算して算出した(図16A)。E1/E3欠失アデノウイルスは、三重トランスフェクションによるヘルパーフリー産生系と同等かまたはこれを上回るrAAVを産生したが、著しいレベルのアデノウイルス汚染も伴った。対照的に、ドキシサイクリンを用いずにTERA-AAVに感染したHEK293細胞は、ヘルパーフリープラスミドトランスフェクションと比較してrAAVの約5倍の増加をもたらし、アデノウイルス汚染はQPCR検出限界を外れた。(図16B)増殖培地のアデノウイルス粒子汚染は、Ad5カプシドタンパク質に対する抗体を用いたウエスタンブロットによってさらに確認された。QPCR分析結果と一致して、ヘルパーフリー産生法またはドキシサイクリンを用いないTERAによるHEK293細胞の感染(MOI 100および500)では、アデノウイルス構造タンパク質は検出されなかったが、MLPを活性化するドキシサイクリン存在下でのTERA感染およびE1/E3対照ウイルスからは、アデノウイルスタンパク質が容易に検出された。
【0194】
カプセル化rAAVゲノムを有するrAAV粒子を測定するために、ヘルパーフリープラスミドトランスフェクション法で、またはプラスミドRepおよびCapをトランスフェクトしたHEK293細胞にTERAを感染させて産生したrAAVカプシドを定量した。図16Eは、形成されたAAV2ウイルスカプシドに向けられたELISA、およびQPCRによるrAAVゲノムの定量によってそれぞれ測定された、総rAAV2カプシドおよびDNアーゼI型耐性ゲノム封入粒子を示す。図16Fは、細胞1個について、MOI 500でのTERA感染により産生されるrAAV2カプシドおよびDNアーゼI型耐性ゲノム封入rAAVの量が、ヘルパーフリー産生法と比較して有意に高いことを示す。全体的に、ヘルパーフリーrAAV2産生およびTERAは、それぞれ総rAAV2カプシド粒子の約30%および約50%を占めるゲノム封入粒子を産生した。
【0195】
ドキシサイクリンを加えずに培養したHEK293細胞においてrAAVを産生する際の、TERAの使用に由来する汚染アデノウイルス粒子は、ウエスタンブロットおよびQPCRで検出不可能であった。図16Hは、ヘルパーフリー法、および対照E1/E3アデノウイルスまたはTERAの感染によるrAAVの産生後に、50%培養細胞感染量測定(ICID50)によってHEK293細胞の汚染感染性アデノウイルスを測定したことを示す。図16Gに示すように、ドキシサイクリン存在下でTERA感染法により産生した粗rAAVを、HEK293細胞に形質導入すると、初期EGFP発現とアデノウイルスCPE細胞の形態が得られる。ドキシサイクリンが存在しないと、これとは明らかに異なり、EGFPレポーターの遅延発現および無傷の細胞単層から、おそらくはrAAVから発現され、rAAVゲノムの第2のDNA鎖の合成に要する時間としてみられる、MLPおよびアデノウイルスの自己抑制が可能となる。さらに、アデノウイルスを用いないrAAV2ヘルパーフリー産生法で感染性アデノウイルスが検出されない一方で、MOI 100および500でのTERA感染によるrAAV産生は、対照E1/E3アデノウイルスを用いたrAAV2産生と比較するとき、それぞれ0.0003%(>2e6分の1倍抑制)および0.007%レベルの汚染感染性アデノウイルスを示す。全般的に、ドキシサイクリンがなくMLP自己抑制が可能である場合、MOI 100および500でのHEK293細胞のTERA感染により、汚染アデノウイルスはE1/E3欠失対照アデノウイルスと比較してそれぞれ約3×10および約1.5×10分の1に減少する。
【0196】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
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