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特許7105869糸群を糸掛けしかつ分離するための方法ならびに溶融紡糸装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】糸群を糸掛けしかつ分離するための方法ならびに溶融紡糸装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 7/00 20060101AFI20220715BHJP
【FI】
D01D7/00 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020506140
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2018067041
(87)【国際公開番号】W WO2019029895
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】102017007431.3
(32)【優先日】2017-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーク-アンドレ ヘアンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】アブデラティ ハミド
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102007014511(DE,A1)
【文献】特開平04-011007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0138686(US,A1)
【文献】特開昭50-071941(JP,A)
【文献】特公昭45-007008(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00-13/02
D04H 1/00-18/04
B65H 49/00-49/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸が複数の紡糸ノズルにより形成されて、該紡糸ノズルの下側で複数の集合糸ガイドによってガイドされる溶融紡糸プロセスにおいて糸群を糸掛けしかつ分離するための方法であって、糸を、糸群としてサクションインジェクタにより収容し、移動させ、かつ糸を予め規定された糸ピッチで、複数のガイド手段を備えた分離糸ガイドに糸掛けする方法において、
糸を、前記サクションインジェクタにより、まず糸集束部を形成するための集束エッジに沿って案内し、前記集束エッジは、糸走行方向において、前記分離糸ガイドに後置されて配置されていて、前記分離糸ガイドと前記集束エッジとが、互いに対して予め規定された高さ間隔で配置されていることを特徴とする、糸群を糸掛けしかつ分離するための方法。
【請求項2】
前記糸を前記分離糸ガイドの前記ガイド手段に導くために、前記サクションインジェクタにより、前記集束エッジにおける前記糸集束部の、前記糸走行方向に対して横方向の相対運動を実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記分離糸ガイドを、前記糸群の糸掛けおよび分離前に、前記糸走行方向に対して垂直方向で糸掛け位置に移動させる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記分離糸ガイドが、前記糸掛け位置への移動時に、隣接して配置されたゴデットの端面により形成される平面を通過する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
記ガイド手段がゴデット軸線に対して垂直な平面内に位置している運転位置へと前記分離糸ガイドを移動させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記分離糸ガイドを、運転中断時に、隣接して配置されたゴデットの駆動装置側の端部に位置する集合位置へと移動させる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記サクションインジェクタをロボットにより自動的に移動させる、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
複数の糸(2.1~2.4)を製造するための溶融紡糸装置であって、複数のフィラメント束(6.1~6.4)を押し出すための複数の紡糸ノズル(5.1~5.4)と、該紡糸ノズル(5.1~5.4)の下側に一列に配置された、前記フィラメント束(6.1~6.4)をそれぞれ纏めて前記糸(2.1~2.4)を形成するための複数の集合糸ガイド(8.1~8.4)と、該集合糸ガイド(8.1~8.4)の下側に配置された、該集合糸ガイド(8.1~8.4)毎に複数のガイド手段(13.1~13.4)のうちの1つを含んでいる分離糸ガイド(9)とを備えた、溶融紡糸装置において、
前記分離糸ガイド(9)に、糸走行方向において後置されて集束エッジ(18)が配置されていて、該集束エッジ(18)において、全ての糸(2.1~2.4)が纏められて糸集束部(19)を形成し、前記分離糸ガイド(9)と、前記集束エッジ(18)との間で予め規定された高さ間隔(H)が形成されていることを特徴とする、複数の糸を製造するための溶融紡糸装置。
【請求項9】
前記集合糸ガイド(8.1~8.4)と、前記分離糸ガイド(9)の前記ガイド手段(13.1~13.4)とにより形成された糸走行平面(7)が前記集束エッジ(18)と交差していることで、前記糸(2.1~2.4)が、サクションインジェクタ(24)および前記集束エッジ(18)により、前記分離糸ガイド(9)の前記ガイド手段(13.1~13.4)に導入可能となっている、請求項8記載の溶融紡糸装置。
【請求項10】
前記集束エッジ(18)が、前記糸走行平面(7)に対して60°~90°の角度(α)で配置されている、請求項記載の溶融紡糸装置。
【請求項11】
前記集束エッジ(18)が、集束金属薄板(16)において形成されている、請求項8から10までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項12】
前記集束エッジ(18)が、セラミックピン(17)において形成されている、請求項8から10までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項13】
前記分離糸ガイド(9)と前記集束エッジ(18)との間の前記高さ間隔(H)が、調節可能である、請求項8から12までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項14】
前記分離糸ガイド(9)と前記集束エッジ(18)との間の前記高さ間隔(H)が、150mmよりも大きく形成されている、請求項8から13までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【請求項15】
隣接して配置されたゴデット(20.1)の端面(22)と、前記集束エッジ(18)との間の間隔(I)が、調節可能である、請求項8から14までのいずれか1項記載の溶融紡糸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式の、溶融紡糸プロセスにおいて糸群を糸掛けしかつ分離するための方法ならびに請求項8の上位概念部に記載の形式の溶融紡糸装置に関する。
【0002】
合成糸の溶融紡糸時には、糸が、新たに紡糸された多数のフィラメントを纏めることにより形成されることが通常である。フィラメントは、相並んで配置された複数の紡糸ノズルにより押し出される。これらの紡糸ノズルは、紡糸ビームの下面に配置されている。フィラメントの冷却後に、紡糸ノズル毎に形成されたフィラメント束は、それぞれ1つの集合糸ガイドにより1つの糸へと纏められるようにガイドされる。このためには、集合糸ガイドは、好適には、紡糸ノズルに対して中心に配置されている。相並んで平行に形成された糸を糸群として紡糸ノズルから一緒に引き出すためには、さらに、糸を互いに対して小さな糸間隔で複数のゴデットの周面においてガイドすることが通常である。このためには、糸は寄せ集めなければならない。したがって集合糸ガイドは、紡糸ノズルにより定義された紡糸ピッチで配置されている。しかし、糸を引き出しかつ処理するために所望される糸ピッチは、紡糸ピッチよりも著しく小さい。したがって、糸ピッチを調節するためには、分離糸ガイドを使用することが通常であり、この分離糸ガイドは、ゴデットに直接に前置されている。このような種類の溶融紡糸装置は、たとえば国際公開第2006/000429号から公知である。
【0003】
公知の溶融紡糸装置では、プロセス開始時またはプロセス中断時に、ゴデットにおいて糸群をガイドするための予め規定された糸間隔を維持するために、糸を分離糸ガイド内に通さなければならない。糸を糸掛けし、分離することは、サクションインジェクタにより実施される。サクションインジェクタは、新たに押し出された糸を吸い込み、糸掛け工程中に連続的に糸屑容器へと供給する。糸群を糸掛けし、分離するための公知の方法では、補助分離糸ガイドが使用される。この補助分離糸ガイドは、分離糸ガイドに固定的に対応配置されている。補助分離糸ガイドは、突出した糸掛けエッジを形成する。この糸掛けエッジには、スリット形の複数の開口が相並んで形成されている。これらの開口は、比較的小さな糸間隔で相並んで形成されていて、スリットは補助分離糸ガイドにおいて、分離糸ガイドの複数のガイド手段に通じている。分離糸ガイドのガイド手段は、互いに対して、ゴデットにおいてガイドするために必要とされる糸間隔を有している。したがって、サクションインジェクタ内でガイドされた糸は、サクションインジェクタのサクションノズルに対して比較的短い間隔で、補助分離糸ガイドの糸掛けエッジを介して糸掛けされ得る。補助分離糸ガイド内のガイドスリットにより、糸は自動的に分離糸ガイドのガイド手段内に滑り込む。
【0004】
サクションインジェクタによる糸ガイド時に、基本的には、糸がサクション流に基づいて安定的な糸走行を示さず、サクションノズルに対する間隔に応じて多かれ少なかれ大きな振れ運動を実施することに留意すべきである。したがって、公知の方法および公知の溶融紡糸装置では、サクションノズルと補助分離糸ガイドとの間の間隔をできるだけ短く維持しなければならない。しかし、糸の本数が多い場合、補助分離糸ガイドの個別の挿入スリットが同時に複数の糸を捕捉してしまうという問題が発生する。サクションインジェクタの正確なガイドは、このリスクを減少させるが、幾つかの糸が誤って位置決めされることを完全に排除することはできない。さらに、このようなサクションインジェクタは、通常は、その日の調子によってサクションインジェクタのサクションノズルの異なる位置精度を達成するオペレータによりガイドされる。
【0005】
本発明の課題は、糸群を糸掛けし分離するための冒頭で述べた種類の方法ならびに冒頭で述べた種類の溶融紡糸装置を改良して、糸群が高い信頼性で出来るだけ迅速に分離糸ガイドに糸掛け可能であるようにすることにある。
【0006】
この課題は、冒頭で述べた方法において、本発明によれば、糸をサクションインジェクタによってまず糸集束部を形成するための集束エッジに沿って案内し、集束エッジは、糸走行方向において、分離糸ガイドに後置されて配置されていて、分離糸ガイドと集束エッジとが互いに対して予め規定された高さ間隔で配置されていることによって、解決される。
【0007】
この形式によって、糸集束部は、サクションインジェクタの先端部において形成されるのではなく、集束エッジにおいて形成される。このことは、集束エッジの上流側で極めて安定的な糸走行をもたらし、このことは、分離糸ガイドにおける糸群の糸掛けを容易にする。集束エッジの位置により、サクションインジェクタが種々異なる位置に位置している場合でも、糸集束部の位置は固定されている。したがって、集束エッジに基づいて、サクションインジェクタはあまり正確にガイドする必要がない。このことは、糸掛けを容易にし、確実かつより迅速な経過を可能にする。さらに、自動化を簡単に実施可能である。手動での糸掛け時には、いまだに、機械作業員が個別の糸を後調整する、つまり分離糸ガイドにおける誤った位置から想定された位置へともたらす可能性が生じる。このステップは上述の利点に基づいてもはや必要ではなく、したがって省略される。このことは当然ながら自動化された糸掛け工程も手動の糸掛け工程も容易にする。
【0008】
本発明の好適な実施形態では、糸を分離糸ガイドのガイド手段に導くために、集束エッジにおいて糸集束部の相対運動が実施される。この相対運動は、サクションインジェクタにより実施される。サクションインジェクタは、いずれにせよ可動に保持されているので、この付加的な相対運動を可能にするために、所属のアクチュエータを備えた別の可動の構成部材は必要ではない。
【0009】
本発明の別の実施形態では、分離糸ガイドにおける糸群の糸掛けは、分離糸ガイドが糸掛け位置に位置している場合に行われる。全高を制限するために、分離糸ガイドおよびゴデットのような種々異なるプロセスユニットは、できるだけ互いに接近して配置される。このことは、サクションインジェクタの運動自由度が糸掛け中に制限されていて、サクションインジェクタがその運転位置に位置していることにつながる。通常の寸法では、サクションインジェクタは、糸掛けプロセス時にゴデットに衝突してしまうだろう。分離糸ガイドが糸掛け前にゴデットの軸線に対して相対的にゴデットの手前にガイドされると、サクションインジェクタも糸掛け時にゴデットの前にガイドされることができ、したがってもはやゴデットによりその運動自由度を制限されていない。運転位置から糸掛け位置への運動時に、分離糸ガイドは、ゴデットの端面により形成される平面を通過する。
【0010】
糸掛け後に分離糸ガイドは、糸を引き続き分離糸ガイドによって減じられた糸ピッチで、もしくは所望の処理間隔でゴデットを介してガイドすることができるように、好適には運転位置に戻される。ガイド手段は、運転位置では、ゴデットにより通過され、かつゴデットの軸線に対して垂直に配置されている平面内に位置している。比較的小さな処理間隔に基づいて、相応して短いゴデットを使用することができる。
【0011】
本発明の有利な実施形態では、分離糸ガイドは、運転中断時に、集合位置にもたらされる。集合位置は、糸群が一緒に分離糸ガイドの下流側でもはや後続のプロセスユニットを介してガイドされないことを特徴とする。しかし上流側のユニットは、運転したままであるので、溶融紡糸装置の迅速な再設定もしくは再始動が可能である。したがって、場合によって生じる運転中断の時間が減じられる。
【0012】
本発明の特に有利な実施形態では、サクションインジェクタがロボットにより移動させられる。したがって、分離糸ガイドにおける糸掛けは自動的に実施可能である。このことは、溶融紡糸装置全体の生産性を向上させる。このようなロボットは、相並んで配置された複数の溶融紡糸装置において糸群を糸掛けするために使用することができる。このためには、ロボットは、レールにおいて走行可能に保持されている。このレールは、ロボットの上側に取り付けられていてよく、これによりロボットが上側から懸架されているか、またはレールが床に敷設されていて、これによりロボットがレール上を走行させられる。さらに、ロボットの使用は、溶融紡糸ユニットの操作の計画を改善する。機械操作員では糸掛けするための時間が著しく変動し、かつ種々異なって練習した機械作業員が配備される一方で、ロボットが糸掛けのために必要とする時間はほぼ同一である。
【0013】
本発明の課題は、同様に、冒頭で述べた形式の溶融紡糸装置により、分離糸ガイドに糸走行において後置されて集束エッジが配置されていて、この集束エッジにおいて、全ての糸が纏められて糸集束部を形成し、分離糸ガイドと集束エッジとの間には、予め規定された高さ間隔が形成されていることにより、解決される。
【0014】
予め規定された高さ間隔は、集束エッジおよびそれぞれ1つのガイド手段が、所属する集合糸ガイドと共に直線上に位置しているように、決定されている。この直線に沿って、糸は分離糸ガイドにおける糸掛け中に位置している。集束エッジにおける糸群の規定されたガイドに基づいて、糸は極めて正確に上述の直線上で走行し、直線を中心として振れることはない。したがって、糸が間違ったガイド手段に糸掛けされるリスクが最小限にされる。糸掛けのために使用されるサクションインジェクタの位置は、あまり重要ではないので、サクションインジェクタを、より低い精度でかつより迅速に移動させることができ、この場合にこれにより糸掛け時にエラーが生じることはない。
【0015】
本発明の有利な実施形態では、集束エッジが集束金属薄板において形成されている。この集束金属薄板は、簡単かつ廉価に製造可能である。集束金属薄板は、容易に組付け可能であるとともに、溶融紡糸装置の運転時に頑丈である。
【0016】
本発明の別の有利な実施形態では、集束エッジがセラミックピンにおいて形成されている。このようなセラミックピンは、糸群に対する接触に基づいた摩耗に対して極めて耐性がある。さらに、糸には、有利な摩擦条件に基づいて少ししか負荷が加えられない。
【0017】
有利には、集束エッジが、糸走行平面に対して60°~90°の角度で配置されている。この糸走行平面は、糸掛け位置にある分離糸ガイドのガイド手段により、かつ集合糸ガイドにより形成されている。したがって、糸が、ガイド手段の開口が極めて大きくなっている前方から、糸ガイドに到達することが確実にされている。このことは同様に、各糸が所属するガイド手段に挿入される確実性を増大させる。
【0018】
本発明の好適な実施形態では、分離糸ガイドと集束エッジとの間の高さ間隔が調節可能に実施されている。したがって、第1には製造中に発生する公差を補償することができる。このことは、プロセス開始前の高さ間隔の一度だけの調節により行われる。さらに、集合糸ガイドの位置が変更される場合、高さ間隔を変更することが必要である。このことは、フィラメント束の冷却に影響を与えるために、特に異なる最終製品を製造することが望ましい場合に、プロセス技術的な理由から実施される。
【0019】
本発明の別の構成では、分離糸ガイドと集束エッジとの間の高さ間隔が、150mmよりも大きく形成されている。これよりも小さな値の場合、糸掛け工程中に糸またはサクションインジェクタがたとえばゴデットに衝突するリスクが大きくなる。それにもかかわらず、溶融紡糸装置の小さな全高および製造中の最適な糸走行は可能である。
【0020】
有利には、同様にゴデットの端面と集束エッジとの間の間隔が調節可能である。これにより、集束エッジと分離糸ガイドとの間の高さ間隔の調節可能性による利点と同様の利点が生じる。
【0021】
本発明に係る装置を以下に本発明に係る装置の幾つかの実施例につき添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】糸掛け中の本発明に係る装置の第1の実施例を示す概略的な正面図である。
図2】糸掛け中の本発明に係る装置の第2の実施例を示す概略的な側面図である。
図3】本発明に係る装置の第2の実施例を上から見た概略的な平面図である。
図4】運転中の本発明に係る装置の第1の実施例を示す概略的な正面図である。
図5】集合箇所における分離糸ガイドを備えた本発明に係る装置の第1の実施例を示す概略的な正面図である。
【0023】
図1には、本発明に係る装置の第1の実施例の正面図が概略的に図示されている。
【0024】
4つの紡糸ノズル5.1~5.4には、溶融紡糸装置の運転時に、溶融液状の合成ポリマが、流入部3を介して供給される。ポリマ流は、通常は、押出し機または重縮合装置により供給される。このことは、ここでは見易くするために図示されていない。紡糸ノズル5.1~5.4は、紡糸ビーム4に保持されていて、この紡糸ビーム4により紡糸ノズル5.1~5.4は付加的に温度調節される。
【0025】
各紡糸ノズル5.1~5.4から、多数の個別のフィラメントから成るフィラメント束6.1~6.4が押し出される。このためには紡糸ノズル5.1~5.4において、それぞれ多数のノズル孔が配置されている。それぞれ1つの集合糸ガイド8.1~8.4により、各フィラメント束6.1~6.4は1本の糸2.1~2.4に纏められる。糸2.1~2.4全体が糸群1を形成する。紡糸ノズル5.1~5.4と、集合糸ガイド8.1~8.4との間でフィラメントは吹付け部(図示せず)により冷却され、その際にフィラメントは、液状から固体状の凝集状態へと徐々に移行する。この冷却に影響を与えることができるように、集合糸ガイド8.1~8.4の、紡糸ノズル5.1~5.4に対する間隔は調節可能である。このことは、隣接して示された両方向矢印により表される。したがって、たとえば材料または繊度に関して種々異なる種類のフィラメントに対して、最適な冷却を達成することができる。
【0026】
この実施例かつ別の実施例において、例示的に4本の糸2.1~2.4が図示されている。しかし当然のことながら、明らかにより多くの糸を溶融紡糸プロセスにおいて製造することもできる。
【0027】
図1では、糸掛けプロセス中の溶融紡糸設備が図示されている。流入部3から集合糸ガイド8.1~8.4に至るまでの範囲は、この設備の運転が行われる状態に既に達している。装置の運転のために別のユニットへの糸掛けがさらに行われなければならない。特に、図1では糸掛け位置10に位置している分離糸ガイド9への糸掛けがさらに行われなければならない。
【0028】
分離糸ガイド9は、各糸2.1~2.4のための4つのガイド手段13.1~13.4を有している。これらの糸ガイド13.1~13.4により、糸2.1~2.4は、互いに対していわゆる処理間隔にもたらされる。この処理間隔で、糸2.1~2.4は引き続き一緒にかつ並列に処理される、つまり、たとえば図4に図示されているように、2つのゴデット20.1,20.2を介してガイドされる。このようなゴデット20.1,20.2は、溶融紡糸設備においては、通常糸を延伸しまたは温度調節するためのものである。ゴデット20.1,20.2は、2つのゴデットモータ21.1,21.2により駆動可能である。ゴデット20.1,20.2の長さを制限するために、通常は約4mmである小さな処理間隔が選択される。このことは、隣り合う2つのガイド手段13.1~13.4の間隔に一致する。糸掛け位置10において、分離糸ガイド9は少なくとも部分的にゴデット20.2,20.2の端面を超えて突出する。したがって、糸群1は、分離糸ガイド9への糸掛け時にゴデット20.1,20.2の傍らを通して案内することができる。通常の溶融紡糸設備の寸法は、糸群1が糸掛け時にさもなければゴデット20.1,20.2に衝突するように、実施されている。
【0029】
所属するガイド手段13.1~13.4内に糸2.1~2.4を糸掛けするためには、ロボット23によりガイドされるサクションインジェクタ24と、集束エッジ18とが働く。集束エッジ18は、この実施例では集束金属薄板16に形成されている。糸2.1~2.4は、サクションインジェクタ24により糸屑容器(ここでは図示せず)へと導入される。サクションインジェクタ24の先端部は、まず、糸2.1~2.4が集束エッジ18において寄り集まって、これにより糸集束部19を形成するように、位置決めされる。したがって、全ての糸2.1~2.4は、1つの同一の点にある糸集束部19に位置している。集束エッジ18における糸群1のガイドは、集合糸ガイド8.1~8.4と集束エッジ18との間で極めて安定的な糸走行をもたらす。集束エッジ18がなければ、集合糸ガイド8.1~8.4とサクションインジェクタ24との間でどちらかというと不安定な糸走行が生じるだろう。安定的な糸走行に基づいて、糸2.1~2.4は極めて容易にかつ小さなエラー確率でガイド手段13.1~13.4内へと導入される。
【0030】
この工程を、図2を用いて説明する。図2は、本発明の第2の実施例を側面図で示している。図1と同一の構成部材のためには、図1と同一の参照符号が使用される。図1の構成との唯一の差異は、集束エッジ18が形成されている構成部材である。図2には、セラミックピン17が図示されていて、図1は、金属製の原料から製造された集束金属薄板16を示している。これら両方の構成部材の機能を以下に説明するが、この機能は、両構成部材において同一である。分離糸ガイド9に糸群1を糸掛けするためには、サクションインジェクタ24が集束エッジ18の方向に沿って分離糸ガイド9に向かって運動させられる。集束エッジ18における糸集束部19は維持されたままである。各糸2.1~2.4は、対応配置されたガイド手段13.1~ガイド手段13.4に接近する。集束エッジ18は、ガイド手段13.1~13.4および集合糸ガイド8.1~8.4に基づく糸走行平面7を集束エッジ18が交差するように、配置されている。さらに、ガイド手段13.1~13.4と集束エッジ18との間の高さ間隔Hと、集束エッジ18とゴデット20.1の端面22との間の間隔Iは、各糸が、サクションインジェクタ24により集束エッジ18に接触して糸走行平面7に到達した場合に、ちょうどその各糸に対応配置された糸ガイド13.1~13.4内に導入されるように、調節されている。サクションインジェクタ24が、その先端部で糸走行平面7を通過するか、または少しだけ糸走行平面7を通過するその位置にガイドされた後に、分離糸ガイド9における糸掛け工程は終了することになる。集束金属薄板16もしくはセラミックピン17の隣で両方向矢印により表されているように、これらの構成部材は、鉛直方向かつ水平方向に調節可能であるので、高さ間隔Hおよび間隔Iは変更可能である。したがって、集合糸ガイド8.1~8.4の種々異なる位置に対しても、集束エッジ18の糸2.1~2.4と、ガイド手段13.1~13.4との間で上述の幾何学的な関係が確実に生じるようにすることができる。
【0031】
サクションインジェクタ24を運動させるためには、ロボット23が働く。しかし、サクションインジェクタ24を機械作業員によって手動で移動させることも可能である。ロボット23は、レール25において懸架式にガイドされる。したがって、ロボット23は、複数の紡糸位置における糸掛けを実施するために、複数のいわゆる紡糸位置の間の位置で往復移動され得る。図1には、唯1つの紡糸位置しか図示されていない。通常は生産性の理由から、複数の紡糸箇所が相並んで配置されるので、複数の紡糸ビーム4が隣り合って一列に配置されている。ロボット23の別の詳細の説明は、ここでは省略することができる。重要であるのは、ロボット23によりサクションインジェクタ24が糸群1を糸掛けするために必要となる全ての位置、特に、糸群を分離糸ガイド9に糸掛けするために必要とされる位置へと走行され得ることだけである。当然ながら、ロボット23により、たとえばゴデット20.1,20.2のような、溶融紡糸装置の別のユニットへの糸掛けという別の操作工程を実施することもできる。
【0032】
図2では、側面図であることに基づいて、1つの紡糸ノズル5.1と、唯1つのフィラメント束6.1と、1つの集合糸ガイド8.1しか見ることができない。全ての別の構成要素は、これらの背後に配置されている。しかし、4つ全ての糸2.1~2.4は、サクションインジェクタ24により案内される。この側面図では、糸走行平面7に対する集束エッジ18の角度αが良好に確認可能である。この角度は60°~90°の間の値である。この角度の選択時に、かつ基本的には集束エッジ18の配置時に重要となるのは、分離糸ガイド9における糸群1の糸掛けが、できるだけ簡単、確実かつ迅速に実施可能であることである。理論的には、上述の基準に有利に作用する場合、非直線形に形成された集束エッジ18も可能である。
【0033】
図3には、本発明の第2の実施例の分離糸ガイド9およびセラミックピン17を上から見た平面図が図示されている。全ての別の構成要素は、見易くするために省略された。参照符号は、図2における参照符号と同一である。この視点では、集束エッジ18と、糸走行平面7の間の角度αが示されている。角度αの第2の方向でのこの図は、角度αが、1つの方向だけではなく、無限に多数の方向において存在していることを明らかにしている。重要であるのは、常に集束エッジ18と糸走行平面7との間の最小の角度が意図されていることである。図2においても、図3においても、糸走行平面7に対する集束エッジ18の貫通を良好に確認することができる。さらに、60°~90°の角度αでは、糸2.1~2.4が、糸掛け時に、前方からガイド手段13.1~13.4内に導入されることが確認可能である。したがって、糸2.1~2.4の運動に関連してガイド手段13.1~13.4の比較的大きな開口横断面が生じるので、ガイド手段13.1~13.4に対して、糸掛け時に糸が外れることはない。
【0034】
図4では、運転中の本発明に係る溶融紡糸装置の第1の実施例の正面図が概略的に示されている。上述の図面と同一の参照符号が使用される。分離糸ガイド9に至るまでの溶融紡糸プロセスの経過は既に図1に関して説明したので、以下では分離糸ガイド9の下流側の構成部材およびこれらの構成部材による糸群1への影響に限定するために、上述の説明が参照される。分離糸ガイド9の下流側において、糸群1はまずゴデット20.1を介して、次いでゴデット20.2を介してガイドされる。このことは、分離糸ガイド9が図4ではその運転位置11に位置していることにより可能である。ゴデット20.1およびゴデット20.2を介したガイド時に、糸2.1~2.4は、紡糸ノズル5.1~5.4から引き出され、延伸される。さらに非加熱であるゴデットの少ない個数に基づいて、図4に図示された溶融紡糸装置により部分延伸糸(POY)が製造される。本発明は、繊維産業および技術用途(IDY)のための完全延伸糸(FDY)を製造するための設備においても、かつカーペット産業(BCF)のための巻縮加工された糸を製造するための設備においても使用可能である。このためには、ゴデットの個数および構成のみが適合されればよい。同様に別のプロセスユニットも必要である。
【0035】
ゴデット20.1,20.2の下流側では、糸2.1~2.4が、巻取り機(図示せず)により巻き取られて、それぞれ1つのパッケージを形成する。この巻取りは、巻取り機により回転させられる巻管上で生じる。
【0036】
図5には、集合位置12にある分離糸ガイド9を備えた本発明に係る装置の第1の実施例の正面図が概略的に図示されている。先行する図面と同一の構成部材は、先行する図面と同一の参照符号を付与されている。図5では、糸群1が定置の吸引部14によりどのように導出されるかが図示されている。このことは、たとえば、巻取り機における問題の発生時に有意であるので、プロセスは部分的にだけ中断されればよい。紡糸ノズル5.1~5.3によるプラスチック溶融物の押出しは、引き続き行うことができる。図5に図示された形態では、糸群1が、分離糸ガイド9により吸引部14内に導入される。このためには、分離糸ガイド9が、運転位置11から集合位置12へと移動される。集合位置12は、吸引部14に隣接して配置されている。この運動中に、糸2.1~2.4は、カッタ15により切断され、吸引部14により引き取られる。このカッタ15は、吸引部14の隣に、かつ吸引部14と集合位置12にある分離糸ガイド9との間に配置されている。この場合、カッタ15は、吸引部14のサクション開口を少しだけ超えて突出している。分離糸ガイド9による吸引部14内への糸群1の導入の上述の工程は、巻取り機に配置された糸破断センサが糸破断を報知した場合に、たとえば自動的に実施することができる。分離糸ガイド9の運動のためには、アクチュエータ26が働く。このアクチュエータ26により、分離糸ガイド9は、糸掛け位置10と、運転位置11と、集合位置12との間で往復移動可能である。アクチュエータ26は、たとえばニューマチック式、ハイドロリック式、または電気的に駆動制御可能である。この駆動制御は、手動または自動的に実施可能である。
【0037】
しかし糸群1は、プロセス開始時にも一時的に吸引部14内に導入され得る。プラスチック溶融物が紡糸ノズル5.1~5.4を出始める、いわゆる紡出開始後に、糸2.1~2.4は自動的にまたは機械作業員により吸引部14内にもたらされる。
【0038】
図5に図示されているように、糸群1を、吸引部14からロボット23により引き取ることができる。このためには、サクションインジェクタ24が糸群1へと接近するようにガイドされる。ロボット23に取り付けられた切断器(図示せず)により、糸群1は切断され、次いでサクションインジェクタ24により引き取られる。いまや、既に説明した分離糸ガイド9における糸掛けを行うことができる。
【0039】
ロボット23は、ゴデット20.1,20.2における糸群1の糸掛けが同様に自動的に実施可能であるように、構成されている。ゴデット20.1,20.2における糸群1の糸掛け後に、糸2.1~2.4は巻取り機のユニットに、かつ最終的に巻管に糸掛けされる。このために必要となる補助ユニットは、ここでは示されていないが、しかし有意である場合には、図示のロボット23が補助することができる。
【0040】
ここで、吸引部14、カッタ15、分離糸ガイド9およびゴデット20.1,20.2が、巻取り機(図示せず)の部分であってよいことに言及しておく。
図1
図2
図3
図4
図5