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特許7105871積層造形のためのカスタマイズされたエンジニアリングモデルの配布
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】積層造形のためのカスタマイズされたエンジニアリングモデルの配布
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20220715BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220715BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20220715BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y30/00
B33Y50/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020511446
(86)(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 US2017049677
(87)【国際公開番号】W WO2019045735
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】カーボーン, ジョン ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ベックマン, ベンジャミン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】サルヴォ, ジョセフ
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-101443(JP,A)
【文献】特表2007-528240(JP,A)
【文献】特開2017-094586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業資産品の作成を容易にするシステムにおいて、
モデル・カスタマイズ・プラットフォームであって、
前記産業資産品に関連付けられた1次エンジニアリングモデルを含む電子記録を記憶する積層造形モデルデータベースと、
複数の積層造形プラットフォームと情報を交換するための通信ポートと、
前記積層造形データベースと前記通信ポートとに結合されたモデル・カスタマイズ・プラットフォームのコンピュータプロセッサであって、
前記複数の積層造形プラットフォームから、積層造形データベースにローカルに記憶されたデータに基づいて積層造形プリンタ性能データを受け取り、
前記積層造形モデルデータベースから前記1次エンジニアリングモデルを取得し、
前記1次エンジニアリングモデルと前記複数の積層造形プラットフォームのそれぞれから受け取った前記積層造形プリンタ性能データに示された製造機器の固有の特性に従って、前記1次エンジニアリングモデルのカスタマイズされた複数のバージョンを作成し、
カスタマイズされた複数のエンジニアリングモデルを前記積層造形プラットフォームに送信する、
ように構成されたモデル・カスタマイズ・プラットフォームのコンピュータプロセッサと、
を含むモデル・カスタマイズ・プラットフォームを備えるシステム。
【請求項2】
前記積層造形プリンタ性能は、(i)積層造形プリント技術、(ii)プリンタ製造業者、(iii)プリンタモデル、および(iv)プリンタに関連付けられたソフトウェアバージョン、のうちの少なくとも1つに関連付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記積層造形プリンタ性能は、(i)解像度、(ii)層厚、(iii)X-Y解像度、(iv)マイクロメータ値、および(v)ビルドエンベロープ、のうちの少なくとも1つに関連付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記積層造形プリンタ性能は、(i)電子ビーム出力、および(ii)レーザ出力、のうちの少なくとも1つに関連付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記積層造形プリンタ性能は、(i)原材料、および(ii)粉体特性、のうちの少なくとも1つに関連付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記積層造形プリンタ性能は、(i)構成要素性能、(ii)レーザタイプ、(iii)プリントノズルタイプ、(iv)速度、および(v)公差、のうちの少なくとも1つに関連付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記積層造形プリンタ性能は、(i)環境性能、(ii)温度、および(iii)清浄度値、のうちの少なくとも1つに関連付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記積層造形プリンタ性能は、(i)検査性能、および(ii)地理情報、のうちの少なくとも1つに関連付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記1次エンジニアリングモデルおよびカスタマイズされたエンジニアリングモデルの少なくとも一方が、(i)スキャンパス、(ii)コンピュータ支援設計ファイル、(iii)積層造形ファイルフォーマット、および(iv)標準のテッセレーション言語ファイル、のうちの少なくとも1つに関連付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記積層造形プラットフォームであって
前記積層造形性能データを含む電子記録を記憶する積層造形プラットフォームデータベースと、
前記積層造形プラットフォームから離れたモデル・カスタマイズ・プラットフォームと情報を交換するための積層造形通信ポートと、
前記積層造形通信ポートに結合され、前記積層造形性能データの表示を前記モデル・カスタマイズ・プラットフォームに送信するように構成された積層造形コンピュータプロセッサと、
を含む前記積層造形プラットフォームをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記積層造形プラットフォームは、
(i)3次元印刷、(ii)バット光重合、(iii)材料噴射、(iv)バインダ噴射、(vi)材料押出、(vii)粉末床溶融結合、(viii)シート積層、および(ix)指向性エネルギー堆積、のうちの少なくとも1つに関連付けられている積層造形プリンタ
をさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
顧客に関連付けられ、前記産業資産品に対する産業資産品要求を送信する顧客プラットフォーム
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記産業資産品要求を受信し、前記産業資産品要求を前記積層造形プラットフォームに割り当て、安全な分散トランザクション台帳を介して前記産業資産品要求の前記割り当てを記録するデジタル・トランザクション・プラットフォーム
をさらに備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記安全な分散トランザクション台帳はブロックチェーン技術を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記デジタル・トランザクション・プラットフォームは、少なくともいくつかが異なる積層造形性能データを有する複数の積層造形プラットフォームと、異なる産業資産品を要求する複数の顧客プラットフォームと通信する、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記モデル・カスタマイズ・プラットフォームは、(i)単一ネットワーククラウドホスト型トポロジ、(ii)複数ネットワーククラウドホスト型トポロジ、および(iii)参加者ホスト型イントラネット環境のうちの少なくとも1つに関連付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記産業資産品は、(i)エンジン、(ii)航空機、(iii)ダム、(iv)機関車、(v)発電、および(vi)風力タービン、のうちの少なくとも1つに関連付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
産業資産品の作成を容易にするコンピュータ実装方法であって
モデル・カスタマイズ・プラットフォームにおいて複数の積層造形プラットフォームから、積層造形データベースにローカルに記憶されたデータに基づいて積層造形プリンタ性能データを受け取ることと、
積層造形モデルデータデータベースから前記モデル・カスタマイズ・プラットフォームにより、前記産業資産品に関連付けられた1次エンジニアリングモデルを取得することと、
前記1次エンジニアリングモデルと前記複数の積層造形プラットフォームのそれぞれから受け取った前記積層造形プリンタ性能データに示された製造機器の固有の特性に従って、前記1次エンジニアリングモデルのカスタマイズされた複数のバージョンを作成することと、
カスタマイズされた複数のエンジニアリングモデルを前記積層造形プラットフォームに送信することと、
を含む、方法。
【請求項19】
前記積層造形性能データは、(i)3次元印刷、(ii)バット光重合、(iii)材料噴射、(iv)バインダ噴射、(vi)材料押出、(vii)粉末床溶融結合、(viii)シート積層、および(ix)指向性エネルギー堆積、のうちの少なくとも1つに関連付けられている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
プログラムコードを記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記プログラムコードは、モデル・カスタマイズ・プラットフォームのプロセッサにより実行されて前記モデル・カスタマイズ・プラットフォームに請求項18に規定される産業資産品の作成を容易にする方法を実行させる、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示されるいくつかの実施形態は、産業資産に関し、より具体的には、産業資産品の積層造形を容易にするためのカスタマイズされたエンジニアリングモデルの配布に関する。
【背景技術】
【0002】
企業主体は、ジェットエンジンのノズル、風力タービンの交換部品、または別の3次元産業資産品などの3次元産業資産品を得たい場合がある。場合によっては、いくつかの異なる積層造形プラットフォームの1つによって作成された部品を有する場合がある。たとえば、積層造形プラットフォームは、3次元アイテムの印刷に使用できるアイテム定義ファイル(エンジニアリングモデルに関連付けられている)を受け取る場合がある。積層造形プラットフォームごとにアイテム作成性能が異なる可能性があることに留意されたい。たとえば、異なるプラットフォームでは、異なる印刷解像度、異なる粉体などを用いて、異なる3次元プリンタを使用する場合がある。さらに、異なるアイテム作成性能は、異なるアイテム定義ファイルおよび/または異なるエンジニアリングモデルを必要とするか、それらから恩恵を受ける場合がある。ただし、可能性のあるすべての積層造形の状況に合わせてアイテム定義ファイルおよび/またはエンジニアリングモデルを作成することは実用的ではない場合がある。このような問題は、潜在的な顧客、品目、および/または積層造形プラットフォームが比較的多数存在する場合、特に困難になる可能性がある。したがって、産業資産品の作成を効率的かつ正確に促進するシステムおよび方法を提供することが望ましいだろう。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態によれば、システムは、モデル・カスタマイズ・プラットフォームに積層造形性能データ(例:プリンタモデル番号、プリンタ解像度など)を提供する積層造形プラットフォームを含み得る。モデル・カスタマイズ・プラットフォームは、積層造形プリンタ性能データを受信し、積層造形モデルデータデータベースから、産業資産品に関連付けられた1次エンジニアリングモデルを取得し得る。次いで、モデル・カスタマイズ・プラットフォームは、積層造形プリンタ性能データおよび1次エンジニアリングモデルに従って、1次エンジニアリングモデルのカスタマイズされたバージョンを作成し得る。次いで、カスタマイズされたエンジニアリングモデルは、(たとえば、印刷されて産業資産品を作成するために)積層造形プラットフォームに送信され得る。
【0004】
いくつかの実施形態は、モデル・カスタマイズ・プラットフォームにおいて積層造形プラットフォームから積層造形プリンタ性能データを受け取る手段と、積層造形モデルデータデータベースからモデル・カスタマイズ・プラットフォームにより、産業資産品に関連付けられた1次エンジニアリングモデルを取得する手段と、積層造形プリンタ性能データと1次エンジニアリングモデルとに従って、1次エンジニアリングモデルのカスタマイズされたバージョンを作成する手段と、カスタマイズされたエンジニアリングモデルを積層造形プラットフォームに送信する手段と、を備えている。
【0005】
本発明のいくつかの実施形態の技術的効果は、産業資産品の作成を効率的かつ正確に促進するために改善およびコンピュータ化された方法である。以下の詳細な説明および添付の図面を参照することにより、以下に明らかになるこれらおよび他の利点および特徴とともに、本発明の性質のより完全な理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】いくつかの実施形態によるシステムの高レベルなブロック図である。
図2】いくつかの実施形態によるモデル・カスタマイズ・プラットフォームに関連付けられ得る方法を示す図である。
図3】いくつかの実施形態によるモデル作成プラットフォームおよび積層造形プラットフォームを含むシステムの高レベルなブロック図である。
図4】いくつかの実施形態による1次エンジニアリングモデルおよび関連するカスタマイズされたエンジニアリングモデルを示す図である。
図5】いくつかの実施形態による積層デジタルエコシステムのブロック図である。
図6】別の実施形態によるデジタル・トランザクション・システムの高レベルなブロック図である。
図7】いくつかの実施形態によるモデル・カスタマイズ・プラットフォームにより可能となる積層部品生産チェーンを示す図である。
図8】いくつかの実施形態によるブロックチェーン検証を伴うデジタルトランザクションを実装するシステムを示す図である。
図9】いくつかの実施形態による複数のデジタル・トランザクション・エンジンを備えたデジタルトランザクションを実装するシステムを示す図である。
図10】いくつかの実施形態によるプラットフォームを示す図である。
図11】いくつかの実施形態による表形式のモデルデータベースの一部を示す図である。
図12】いくつかの実施形態による分散型台帳参照構造を示す図である。
図13】いくつかの実施形態によるコンピュータディスプレイを示す図である。
図14】いくつかの実施形態によるディスプレイを提供するタブレットコンピュータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明では、実施形態の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記載されている。しかしながら、これらの具体的な詳細なしで実施形態が実施され得ることは、当業者によって理解されるであろう。他の例では、実施形態を不明瞭にしないために、周知の方法、手順、構成要素、および回路は詳細には説明されていない。
【0008】
本発明の1つまたはそれ以上の具体的な実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供する取り組みにおいて、実際の実装形態のすべての特徴が本明細書に記載されているわけではない。当然のことながら、そのような実際の実装の開発においては、エンジニアリングプロジェクトまたは設計プロジェクトの場合と同様に、実装ごとに異なり得るシステム関連およびビジネス関連の制約の遵守など、開発者固有の目標を達成するために実装固有の多数の決定がなされなければならない。さらに、そのような開発努力は複雑で時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず、本開示の恩恵を受ける当業者にとっては設計、製作、および製造の日常的な仕事であることを理解されたい。
【0009】
一般に、産業資産品の作成を効率的かつ正確に促進することが望ましい場合がある。図1は、いくつかの実施形態によるシステム100の高レベルなブロック図である。特に、システム100は、(たとえば、多くの異なる遠隔3次元プリンタおよび/または印刷プラットフォームと)情報を交換するための通信ポートを備えたモデル・カスタマイズ・プラットフォーム120を含む。いくつかの実施形態によれば、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120は、積層造形プリンタ性能データを受け取り、(たとえば、様々な産業資産品に関連するアイテム定義ファイルを記憶する)積層造形モデルデータベース130から1次エンジニアリングモデルを取得する。次いで、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120および/または他の要素は、カスタマイズされたエンジニアリングモデルを作成および出力し得る。モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120は、完全に分散化することができ、および/または企業向けのサービスを実行するベンダなどの第三者に関連付けることができることに留意されたい。
【0010】
モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120は、たとえば、パーソナルコンピュータ(「PC」)、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、エンタープライズサーバ、サーバファーム、デジタル・トランザクション・エンジン、および/もしくはデータベースまたは同様の記憶デバイスに関連付けられ得る。いくつかの実施形態によれば、「自動化された」モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120は、カスタマイズされたエンジニアリングモデルを自動的に作成することができる。本明細書で使用される場合、「自動化された」という用語は、たとえば、人間によるほとんど(または全く)介入なしに実行できる動作を指し得る。
【0011】
本明細書で使用される場合、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120および本明細書で説明される他のデバイスに関連するものを含むデバイスは、ローカル・エリア・ネットワーク(「LAN」)、メトロポリタン・エリア・ネットワーク(「MAN」)、ワイド・エリア・ネットワーク(「WAN」)、専用ネットワーク、公衆交換電話網(「Public Switched Telephone Network:PSTN」)、ワイヤレス・アプリケーション・プロトコル(「WAP」)ネットワーク、Bluetoothネットワーク、ワイヤレスLANネットワーク、および/またはインターネット、イントラネット、エクストラネットなどのインターネットプロトコル(「IP」)ネットワークの1つまたはそれ以上であり得る任意の通信ネットワークを介して情報を交換し得る。本明細書で説明されるデバイスは、1つまたはそれ以上のそのような通信ネットワークを介して通信できることに留意されたい。
【0012】
モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120は、データストア(例:積層造形モデルデータベース130および/または他のデータストア)に情報を記憶および/またはそこから情報を取得することができる。データストアには、たとえば、エンジニアリングモデル、以前のトランザクション、現在処理中のトランザクションなどを表す電子記録を格納できる。データストアは、ローカルに記憶されるか、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120から離れて常駐することができる。単一のモデル・カスタマイズ・プラットフォーム120が図1に示されているが、任意の数のそのようなデバイスが含まれ得る。さらに、本明細書で説明される様々なデバイスは、本発明の実施形態に従って組み合わされ得る。たとえば、いくつかの実施形態では、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120、積層造形データベース、および/または他のデバイスは、同じ場所に配置されてもよく、および/または単一の装置を備えていてもよい。
【0013】
このようにして、システム100は、産業資産品の作成を効率的かつ正確に促進することができる。たとえば、(A)において、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120は、積層造形プラットフォームから積層造形性能データ(例:ビルドエンベロープ、解像度、レーザ出力値などを含む)を受信し得る。(B)において、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120は、積層造形データベース130から産業資産品を定義する1次エンジニアリングモデルを取得し得る。次いで、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120は、その特定の3次元プリンタ用に適切にカスタマイズされたエンジニアリングモデルを作成し、カスタマイズされたモデルを(C)において送信できる。その後、カスタマイズされたエンジニアリングモデルは、産業資産品を印刷するために使用され得る。その結果、システム100は、様々な製造技術を使用して製造するためのエンジニアリングモデルおよびデータパッケージを配布することができ、これらのエンジニアリングモデルは、製造業者の特定の製造機器に合うようにカスタマイズされ得る。
【0014】
図1のシステム100は一例としてのみ提供され、実施形態は追加の要素または構成要素に関連付けられ得ることに留意されたい。いくつかの実施形態によれば、システム100の要素は、顧客用の産業資産品の作成を自動的に促進する。たとえば、図2は、本発明のいくつかの実施形態による、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム120および/または図1に関して説明したシステム100の他の要素または任意の他のシステムによって実行され得る方法200を示す。本明細書で説明するフローチャートは、ステップの固定順序を意味するものではなく、本発明の実施形態は、実行可能な任意の順序で実行され得る。本明細書で説明される方法のいずれかは、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれらのアプローチの任意の組合せによって実行され得ることに留意されたい。たとえば、コンピュータ可読記憶媒体は、機械によって実行されると、本明細書で説明される実施形態のいずれかによる性能をもたらす命令をその上に記憶し得る。
【0015】
210において、モデル・カスタマイズ・プラットフォームは、(たとえば、積層造形プラットフォームから)積層造形プリンタ性能データを受信し得る。いくつかの実施形態によれば、積層造形プラットフォームは、3次元印刷に関連する積層造形プリンタを利用する。この場合、性能データは、積層造形印刷技術、プリンタメーカ、プリンタモデル、プリンタに関連付けられたソフトウェアバージョンなどに関連付けられる。本明細書で使用される場合、「積層造形」という語句は、たとえば、米国材料試験協会(「American Society for Testing and Materials:ASTM」)グループ「ASTM F42-積層造形」規格に記載されているものを含む、さまざまなタイプの3次元印刷を指す。これらには、(液体フォトポリマー樹脂のバットを使用する)バット光重合、(材料がビルドプラットフォームに噴射される)材料噴射、(たとえば、粉末ベースの材料とバインダを使用する)バインダ噴射、熱溶解積層(「Fuse Deposition Modelling:FDM」)などの材料押し出し。粉末床溶融結合(例:直接金属レーザ焼結(「Direct Metal Laser Sintering:DMLS」)、電子ビーム溶融(「Electron Beam Melting:EBM」)など)、シート積層(超音波積層造形(「Ultrasonic Additive Manufacturing:UAM」)および薄膜積層(「Laminated Object Manufacturing:LOM」を含む))、指向性エネルギー堆積(「Directed Energy Deposition:DED」)、などが含まれ得る(ただし、これらに限定されない)。
【0016】
積層造形プリンタ性能は、多くの異なるタイプのデータに関連付けられ得ることに留意されたい。たとえば、プリンタ「解像度」は、層の厚さとX-Y解像度を1インチあたりのドット数(「dpi」)またはマイクロメートル(「μm」)で表し得る。一般的な層の厚さは約100μm(250dpi)であり得るが、一部のプリンタでは16μm(1,600dpi)以下の層を作成できる。その結果、積層造形プリンタ性能は、解像度、層の厚さ、X-Y解像度、dpi値、μm値、(たとえば、プリンタによって作成できる最大のアイテムの寸法を規定する)ビルドエンベロープなどに関連付けられ得る。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、積層造形プリンタ性能は、電子ビーム出力、レーザ出力、プリンタによって使用される原材料(例:粉体特性)などの、特定のプリンタ部品または構成要素に関するデータ、構成要素性能、レーザタイプ、プリントノズルタイプ、構成要素速度、構成要素許容値、などに関連付けられ得る。他の例として、積層造形プリンタ性能は、環境性能(例:温度または清浄度値)、検査性能、地理情報(例:輸出規制によりエンジニアリングモデルに含まれるデータが制限される場合がある)、などに関連付けられ得る。
【0018】
220において、モデル・カスタマイズ・プラットフォームは、産業資産品に関連付けられた1次エンジニアリング「モデル」を積層造形モデルデータデータベースから取得し得る。たとえば、1次エンジニアリングモデルは、3次元の「産業資産」部品(例:ギア、燃料ノズルなど)を規定するコンピュータ支援設計(「CAD」)プロトコルに関連付けられた産業資産ファイルを含み得る。本明細書で使用される場合、「産業資産」という語句は、たとえば、エンジン、航空機、ダム、機関車、発電、風力タービンなどに関連付けられ得る。本明細書で使用される「モデル」という用語は、例えばスキャンパス、積層造形ファイル(「Additive Manufacturing File:AMF」)フォーマット(例:「AMFフォーマットの標準仕様」、バージョン1.2 国際標準化機構/米国試験材料協会(「ISO/ASTM」)XMLベースの標準52915:2013)、標準テッセレーション言語ファイル(「Standard Tessellation Language file:STL」)などに関連付けられ得る。
【0019】
230において、積層造形プリンタ性能データおよび1次エンジニアリングモデルに従って、1次エンジニアリングモデルのカスタマイズされたバージョンが作成され得る。たとえば、特定のプリンタの制限された能力を考慮すると、カスタマイズされたモデルの情報の解像度は、1次モデルと比較して低下する場合がある。240において、カスタマイズされたエンジニアリングモデルが積層造形プラットフォームに送信され得る。その後、積層造形プラットフォームは、積層造形プリンタと通信して、(たとえば、その後顧客に納入され得る)産業資産を作成できる。いくつかの実施形態によれば、カスタマイズされたエンジニアリングモデルは、代わりにモデル・カスタマイズ・プラットフォームから3次元プリンタに送信され得る。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、モデル・カスタマイズ・プラットフォームは、複数の積層造形プラットフォーム(少なくともいくつかは異なる積層造形性能データを有する)および/または異なる産業資産品を要求する複数の顧客プラットフォームと通信する。モデル・カスタマイズ・プラットフォームは、単一ネットワーククラウドホストトポロジ、複数ネットワーククラウドホスト型トポロジ、および/または参加者ホスト型イントラネット環境に関連付けられ得ることに留意されたい。たとえば、図3は、いくつかの実施形態によるモデル・カスタマイズ・プラットフォーム320および積層造形プラットフォーム360を含むシステム300の高レベルなブロック図である。前述と同様に、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム320は、積層造形プリンタ性能データを受け取り(この場合、積層造形データベース370にローカルに記憶されたデータに基づいて複数の積層造形プラットフォーム360から)、(たとえば、さまざまな産業資産品に関連付けられたアイテム定義ファイルを保存する)積層造形モデルデータベース330から1次エンジニアリングモデルを取得する。次いで、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム320および/または他の要素は、カスタマイズされたエンジニアリングモデルを作成し、積層造形プラットフォーム360に出力し得る。次いで、カスタマイズされたモデルは、3次元プリンタ380を介して産業資産品を作成するために使用され得る。したがって、単一の1次エンジニアリングモデルの作成は、元のエンジニアリング設計意図を表し得る。個別の製造機器の固有の特性に基づいて、(その機器で最適に製造するのに適した)複数のバージョンのエンジニアリングモデルが作成され得る。この技術により、産業資産品を有利な方法で製造するために必要なエンジニアリングモデルの経済的な作成および配布が可能になる。
【0021】
図4は、いくつかの実施形態による、1次エンジニアリングモデル410および関連するカスタマイズされたエンジニアリングモデル420を示す400を示す。(たとえば、産業資産モデルの理想化されたバージョンを表す)単一の1次エンジニアリングモデル410は、結局は(たとえば、それぞれが異なる性能を持つ異なる3次元プリンタで使用される)複数のカスタマイズされたエンジニアリングモデル420に関連付けられ得ることに留意されたい。さらに、カスタマイズされたエンジニアリングモデル420は、1次エンジニアリングモデル410から、またはいくつかの実施形態によれば、別のカスタマイズされたエンジニアリングモデル420から生成され得る。
【0022】
したがって、機器で製造するためにエンジニアリングモデルを調達することを希望する可能性のある個人または会社は、製造機器の特定の特性を提供して、エンジニアリングモデル420のカスタマイズを容易にし得る。特定の特性は、例えば電子的に提供され得る。指定の製造プロセスを介して構成要素を製造するために必要なエンジニアリングモデル420は、調達者の特定の機器特性の知識で修正され、調達者に提供される調整されたエンジニアリングモデル420(例:スキャンパス)を作成できる。
【0023】
コンピュータ制御の製造機器は急速に改善されていることに留意されたい。特定の製造プロセスを使用して構成要素を最適に製造するために、必要なデータファイル(例:エンジニアリングモデル、スキャンパスなど)は指定の製造機器の特定の特性に合わせて調整され得る。いくつかの実施形態によれば、個人または会社は、他の個人および会社と比較して異なる構成であり得る製造機器で製造するためのエンジニアリングモデルを調達したい場合がある。本明細書で説明されるいくつかの実施形態は、機器の特定のタイプまたは構成に適した調整されたエンジニアリングモデル420の作成を可能にし得る。
【0024】
図5は、いくつかの実施形態による積層デジタルエコシステム500のブロック図である。特に、積層デジタルエコシステム500は、多くの顧客プラットフォーム510と情報を交換するための通信ポートを備えたデジタル・トランザクション・エンジン550を含む。いくつかの実施形態によれば、デジタル・トランザクション・エンジン550は、顧客プラットフォーム510のうちの1つから産業資産品要求を受信し、要求をいくつかの積層造形プラットフォーム560のうちの1つに割り当てる。各積層造形プラットフォーム560は、積層造形データベース570(たとえば、データベース570は、プリンタのバージョン番号、プリンタの最大解像度、粉体仕様、新たに受信されたジョブなどを格納し得る)および3次元プリンタ580を含んでもよいし、および/またはそれらに関連付けられてもよい。いくつかの実施形態によれば、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム520は、積層造形モデルデータベース530から1次エンジニアリングモデルを取得し、モデルをカスタマイズし、カスタマイズされたモデルをデジタル・トランザクション・エンジン550に(または図5に破線で示したように積層造形プラットフォーム560に直接)提供し得る。次いで、デジタル・トランザクション・エンジン550および/またはシステムの他の要素は、安全な分散トランザクション台帳590を使用して(例:ブロックチェーン検証プロセスを介して)トランザクションに関する情報を記録し得る。たとえば、デジタル・トランザクション・エンジン550は、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って、安全な分散トランザクション台帳590を介して、注文日時、カスタマイズされたエンジニアリングモデル識別子、価格、入札などを記録し得る。いくつかの実施形態によれば、分散型台帳は、HYPERLEDGER(登録商標)ブロックチェーン検証システムに関連付けられ得る。デジタル・トランザクション・エンジン550は完全に分散化することができ、および/または企業向けのサービスを実行するベンダなどの第三者に関連付けできることに留意されたい。
【0025】
デジタル・トランザクション・エンジン550、顧客プラットフォーム510、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム520、および/または積層造形プラットフォーム560は、たとえば、パーソナルコンピュータ(「PC」)、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、エンタープライズサーバ、サーバファーム、および/もしくはデータベースまたは同様の記憶デバイスであり得る。本明細書で使用される場合、デジタル・トランザクション・エンジン550および本明細書で説明される他のデバイスに関連するものを含むデバイスは、LAN、MAN、WAN、専用ネットワーク、PSTN、WAPネットワーク、Bluetoothネットワーク、ワイヤレスLANネットワーク、および/またはIPネットワークのうちの1つまたはそれ以上であり得る任意の通信ネットワークと情報を交換し得る。
【0026】
デジタル・トランザクション・エンジン550は、データストアに情報を格納し、および/またはデータストアから情報を取得し得る。データストアは、たとえば、以前のトランザクション、現在処理中のトランザクションなどを表す電子記録を記憶し得る。データストアは、ローカルに記憶されるか、デジタル・トランザクション・エンジン550から離れた場所に常駐し得る。単一のデジタル・トランザクション・エンジン550が図5に示されているが、任意の数のそのようなデバイスがエコシステム500に含まれ得る。さらに、本明細書で説明される様々なデバイスは、本発明の実施形態に従って組み合わされ得る。たとえば、いくつかの実施形態では、デジタル・トランザクション・エンジン550、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム520、データストア、および/または他のデバイスは、同じ場所に配置されてもよく、および/または単一の装置を備えていてもよい。
【0027】
このようにして、積層デジタルエコシステム500は、産業資産品の作成を効率的かつ正確に促進し得る。たとえば、(A)において、積層造形プラットフォーム560は、積層造形データベース570から積層造形性能データを得て、その情報をデジタル・トランザクション・エンジン550に提供し得る。(B)において、モデル・カスタマイズ・プラットフォーム520は、積層造形モデルデータベース530から1次エンジニアリングモデルを取得し、性能データに基づいてそれをカスタマイズし、カスタマイズされたモデルを(C)においてデジタル・トランザクション・エンジン550に提供し得る。(D)において、顧客プラットフォーム510は、産業資産品要求をデジタル・トランザクション・エンジン550に送信し得る。次いで、デジタル・トランザクション・エンジン550は、(E)において、(たとえば、最低コストでアイテムを生産することができたプラットフォーム560にカスタマイズされたエンジニアリングモデルを送信することにより)積層造形プラットフォーム560の1つに要求を割り当て得る。次いで、積層造形プラットフォーム560は、(F)において3次元プリンタ580と通信して、印刷プロセスを開始し得る。トランザクションの各ステップは、(G)において安全な分散トランザクション台帳590に記録され得ることに留意されたい。作成されると、完成したアイテムは、(図5の破線の矢印で示すように)(H)において顧客に提供され得る。
【0028】
いくつかの実施形態は、デジタル・トランザクション・エンジン550のためのトランザクションおよび/またはデジタル支払いを提供し得る。これにより、産業資産品を作成するためのデジタルエコシステムの基本的な構造が提供され得る。いくつかの実施形態は、スマートコントラクトおよび/または仲介手数料の支払いをさらに提供し、場合によっては、匿名性および/または他の保護をさらに提供し得る。たとえば、暗号通貨を使用して、(透明な市場ではなく)身元が保護される不透明な市場を作成し得る。最後に、いくつかの実施形態は、高度な3次元印刷技術、機器、知的財産、サプライチェーンおよび系譜などを正確に制御するための強力な暗号化を提供し得る。その結果、偽造部品が削減され得、暗号化されたキーを使用して、機器、ビルドファイル、生産量、サービス契約などへのアクセスを制御できる。さらに、積層デジタルエコシステム500は、暗号化された系譜およびトランザクションデータを分散型台帳590に発行して、設計、モデリング、シミュレーション、製造から契約サービスまでの知識の流れを制御できる。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、デジタル・トランザクション・エンジン550は、デジタルサービス市場およびコミュニティを介してオフライン最適化アプリケーションおよびリアルタイムアプリケーションと通信し得る。デジタル・トランザクション・エンジン550は、たとえば、コンテンツ配信およびアクセス管理ツールチェーン、システムレベルの最適化、および/または学際的な最適化に関連付けられ得る。オフライン最適化アプリケーションは、設計アプリケーション、製造計画アプリケーション、スキャンパス生成アプリケーションなどを含み得る。リアルタイムアプリケーションは、たとえば、機械制御、インライン検査、工場の視覚化などを含み得る。オフライン最適化アプリケーションおよび/またはリアルタイムアプリケーションは、設計、製造計画、スキャンパス生成、ビルド、インライン検査、部品作成、後工程検査などのさまざまなアイテム作成プロセスをサポートし得ることに留意されたい。このようにして、積層デジタルエコシステム500は、改善された結果(例:設計変更に必要な時間を1日以下に短縮、自己最適化されたビルドプロセス、改善された寿命および/または個別部品の性能など)を提供し得る。
【0030】
図6は、他の実施形態によるデジタル・トランザクション・システム600の高レベルなブロック図である。前述のように、デジタル・トランザクション・エンジン650は、顧客プラットフォーム610から産業資産品要求を受信し得る。デジタル・トランザクション・エンジン650は、要求を、積層造形データベース670(例:性能情報を記憶するデータベース670)、プラットフォーム660に対してローカルであり得る前述のデータベース670、および3次元プリンタ680を有する適切な積層造形プラットフォーム660に割り当て得る。次いで、プリンタ680は、それを要求した顧客に提供できるようにアイテムを作成し得る。これらのステップの一部またはすべては、安全な分散トランザクション台帳690(例:ブロックチェーン技術)に記録され得る。この実施形態では、設計プラットフォーム640は、顧客および/またはローカルに記憶された積層造形モデルデータベース630を有するモデル・カスタマイズ・プラットフォーム620と連携して、アイテムに適切な1次エンジニアリングモデル(たとえば、アイテムの適切な形状、アイテムを作成するために使用する必要があるツール、原材料など)を作成し得る。いくつかの実施形態によれば、定義ファイルは暗号化されおよび/または暗号で署名され、および/または系譜データを含み得る。設計プラットフォーム640および/またはモデル・カスタマイズ・プラットフォーム620は、単一のアイテムに対して複数の設計および/または定義を作成し得る(たとえば、異なる積層造形プロセス、異なるプリンタモデルなどに異なる設計が関連付けられ得る)ことに留意されたい。
【0031】
図7は、いくつかの実施形態によるモデル・カスタマイズ・プラットフォームによって可能にされる積層部品生産チェーン700である。やはり、デジタル・トランザクション・エンジン750は、顧客プラットフォーム710から産業資産品要求を受信し得る。デジタル・トランザクション・エンジン750は、要求を適切な積層造形プラットフォーム760に割り当てて、それを要求した顧客に提供できるようにアイテムを作成し得る。これらのステップの一部またはすべては、安全な分散トランザクション台帳790(例:ブロックチェーン技術)に記録され得る。顧客は、顧客プラットフォーム710によって、(仮想生産入札が受け入れられ、使用されてビルドプロセスが開始されたこと、必要な設計を得たこと、必要な原材料を得たことなどを判定できる)デジタル・トランザクション・エンジン750に「ブローカ購入」を送信し得ることに留意されたい。他の実施形態では、顧客は代わりに「直接購入」を積層造形プラットフォーム760に送り得る。さらに、いくつかの実施形態では、設計プラットフォーム740は、(たとえば、モデル・カスタマイズ・プラットフォームおよびローカルに記憶された積層造形モデルデータベース730に関連して)カスタマイズされた認定ビルド、認定デザイン、認定粉体などを手配し得る。
【0032】
したがって、実施形態は、ブロックチェーン技術によって促進される知的財産(例:積層造形技術を使用して製造するためのエンジニアリングモデルおよびデータパッケージ)の配布を促進し得る。さらに、分散型台帳トランザクションを使用して、エンドユーザ(例:顧客、製造業者など)と知的財産の売り手/貸し手(例:エンジニアリングモデル、技術データパッケージ、処理条件、検査データなど)との間のトランザクションを、直接、またはデジタルマーケットプレイスなどの電子的仲介者を介して、実行および検証できる。さらに、実施形態は、ブロックチェーン分散型台帳技術の使用を介して、カスタマイズされたエンジニアリングモデルを単一のトランザクション(または一連のトランザクション)を通じて配布するプロセスを提供し得る。いくつかの実施形態によれば、2つ以上の当事者は、分散型台帳技術を使用して、積層造形構成要素の製造に必要な情報の経済的交換を記録し得る。技術情報(たとえば、見積、入札、または賞の選択、製造能力の共有、エンジニアリングモデルの生成、エンジニアリングモデルの配布、追加の原材料の調達、供給および準備、構成要素の製造、構成要素の検査、構成要素の供給、および支払いを含む)の交換の各中間ステップに対して、対応するトランザクションが作成され得る。これらのトランザクションの一部(または全体)は、製造された構成要素のオンライン系譜を利害関係者に提供する手段として、暗号化または暗号化されていない形で分散型台帳に公開され得る。
【0033】
さまざまな理由(産業関連の積層造形印刷ハードウェアの普及、構成要素を製造する積層造形プロセスの仕様の増加など)のために、社内または自社の構成要素サプライヤではないエンドユーザへの、構成要素の製造に利用可能なデジタルファイル(知的財産を含む)を作成すると経済的に有利になり得る。したがって、これらのデジタル・エンジニアリング・ファイルおよび製造プロセス技術が安全なままであるように、安全な方法でそのようなトランザクションを実行することが望ましい場合がある。ブロックチェーン技術の使用に基づいて、高度な3次元印刷技術、機器、知的財産、製造、サプライチェーン、および系譜を正確に制御するための強力な暗号化を備えたデジタルエコシステムの作成は、本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って提供され得る。
【0034】
(検証された手法を使用して高品質の構成要素の生産を保証しつつ)データの整合性を確保し、盗難を制限するべく、構成要素の製造に必要な知的財産を保護するために、必要なビルドファイル(例:カスタマイズされたエンジニアリングモデル、スキャンパスなど)および関連する詳細(材料仕様、ロットデータ、機械仕様、プロセス条件など)を管理する必要がある。最後に、検証メカニズムは、製造された構成要素の真正性を検証するのに役立ち、データの権利も保護し得る。
【0035】
図8は、いくつかの実施形態によるブロックチェーン検証を組み込んだデジタルトランザクションを実装するシステム800である。クラウドベースの完全性モニタ810は、ウェブブラウザを介してトランザクション完全性データを提供し、代表的状態転送(「Representational State Transfer:REST」)ウェブサービスまたは他の同様のウェブサービスを介してブロックチェーン820(または他の安全な分散トランザクション台帳)およびデジタル・トランザクション・エンジン850と情報を交換し得る。RESTウェブサービスは、(たとえば、要求システムが、統一された、予め定義されたステートレス操作のセットを使用してウェブリソースのテキスト表現にアクセスして操作できるようにすることによって)、たとえば、インターネット上のコンピュータシステム間の相互運用性を提供し得る。いくつかの実施形態によれば、デジタル・トランザクション・エンジン850の部分は、MySQLデータベースなどのデータベースに関連付けられ得る。このようにして、デジタル・トランザクション・エンジン850およびブロックチェーン820を使用して、クライアント840に(たとえば、1つまたはそれ以上のカスタマイズされたエンジニアリングモデルに関する情報を含む)トランザクションレベル検証を提供することができる。図8は、単一のブロックチェーン820およびデジタル・トランザクション・エンジン850を備えたシステム800を示しているが、実施形態は他のトポロジーを使用し得ることに留意されたい。たとえば、図9は、いくつかの実施形態による複数のデジタル・トランザクション・エンジンを組み込むデジタルトランザクションを実装するシステム900である。特に、追加のブロックチェーン922およびデジタル・トランザクション・エンジン952は、追加のクライアント942の保護を提供し得る。図9に示すように、各デジタル・トランザクション・エンジン950、952は、(たとえば、攻撃を非現実的にする地理的に分散した複数のノードに情報を記憶することにより)システム900に追加の保護を提供する複数のブロックチェーン920、922に関連付けられ得る。つまり、各検証者(例:デジタル・トランザクション・エンジン950、952)は、簡単な要約を独立したデータストア(たとえば、カスタマイズされたエンジニアリングファイルに関する情報を含む)にコミットしてもよく、一旦記録されると、検出なしに情報を変更することはできない改ざん防止記録システム(「System of Records:SoR」)を提供する。
【0036】
本明細書で説明される実施形態は、産業資産品の作成を容易にするツールを備えていてもよく、任意の数の異なるハードウェア構成を使用して実装され得る。たとえば、図10は、たとえば、それぞれ図1および図5のシステム100、500(および本明細書で説明する他のシステム)に関連付けられ得るプラットフォーム1000を示している。プラットフォーム1000は、通信ネットワーク(図10には示していない)を介して通信するように構成された通信デバイス1020に結合された、ワンチップマイクロプロセッサの形態であり得る1つ以上の市販の中央処理装置(「CPU」)などのプロセッサ1010を備えている。通信装置1020は、たとえば、1つまたはそれ以上の遠隔積層造形プラットフォームまたはデジタル・トランザクション・エンジンと通信するために使用され得る。通信デバイス1020を介して交換される通信は、公衆インターネットユーザと保険会社の内部ネットワークとの間のセキュリティ性能などのセキュリティ性能を利用し得ることに留意されたい。セキュリティ性能は、たとえば、ウェブサーバ、ファイアウォール、および/またはPCIインフラストラクチャに関連付けられ得る。プラットフォーム1000は、入力デバイス1040(例:カスタマイズされたエンジニアリングモデル、分散型台帳などに関する情報を入力するマウスおよび/またはキーボード)および(たとえば、モデル識別子を含む系譜を出力したり、生産状態のメッセージなどを生成したりするための)出力デバイス1050をさらに含む。
【0037】
プロセッサ1010は、記憶デバイス1030とも通信する。記憶デバイス1030は、磁気記憶デバイス(例:ハードディスクドライブ)、光学記憶デバイス、携帯電話、および/または半導体メモリデバイスの組合せを含む、任意の適切な情報記憶デバイスを備えていてもよい。記憶デバイス1030は、プロセッサ1010を制御するためのプログラム1012および/またはネットワークセキュリティサービスツールまたはアプリケーションを記憶する。プロセッサ1010は、プログラム1012の命令を実行し、それにより、本明細書で説明される実施形態のいずれかに従って動作する。たとえば、プロセッサ1010は、積層造形プラットフォームから積層造形性能データ(例:プリンタのモデル番号、プリンタの解像度など)を受け取り得る。プロセッサ1010は、積層造形プリンタ性能データを受信し、産業資産品に関連付けられた1次エンジニアリングモデルを積層造形モデルデータデータベースから取得し得る。次いで、プロセッサ1010は、積層造形プリンタ性能データおよび1次エンジニアリングモデルに従って1次エンジニアリングモデルのカスタマイズされたバージョンを作成し得る。次いで、カスタマイズされたエンジニアリングモデルは、(たとえば、印刷されて産業資産品を作成するために)積層造形プラットフォームに送信され得る。
【0038】
プログラム1012は、圧縮された、コンパイルされていない、および/または暗号化された形式で記憶され得る。プログラム1012は、オペレーティングシステム、データベース管理システム、および/または周辺デバイスとインターフェースするためにプロセッサ1010によって使用されるデバイスドライバなどの他のプログラム要素をさらに含み得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、情報は、たとえば、(i)別のデバイスからプラットフォーム1000に、または(ii)別のソフトウェアアプリケーション、モジュール、もしくは他のソースからプラットフォーム1000内のソフトウェアアプリケーションもしくはモジュールに「受信」または「送信」され得る。
【0040】
図10に示すような)いくつかの実施形態では、記憶デバイス1030は、製造能力情報1060、産業資産定義ファイル1070、およびモデルデータベース1100をさらに記憶する。ここで、プラットフォーム1000に関連して使用され得るデータベースの一例を、図11に関して詳細に説明する。本明細書で説明されるデータベースは一例にすぎず、追加のおよび/または異なる情報がそこに記憶され得ることに留意されたい。さらに、本明細書で説明する実施形態のいずれかに従って、さまざまなデータベースが分割または結合され得る。たとえば、モデルデータベース1100および産業資産定義ファイル1070は、プログラム1012内で互いに結合および/またはリンクされてもよい。
【0041】
図11を参照すると、いくつかの実施形態に従ってプラットフォーム1000に記憶され得るモデルデータベース1100を表す表が示されている。表は、たとえば、顧客向けのアイテムの作成に関連付けられたモデルを識別するエントリを含み得る。表はまた、各エントリに対してフィールド1102、1104、1106、1108、1110、1112、1114を定義し得る。フィールド1102、1104、1106、1108、1110、1112、1114は、いくつかの実施形態によれば、モデル識別子1102、産業資産品の説明1104、モデルタイプ1106、親モデル1108、ブロックチェーン結果1110、プリンタ識別子1112、およびモデル定義ファイル1114を指定し得る。トランザクションデータベース1100は、たとえば、遠隔の積層造形プラットフォーム、分散型台帳デバイスなどから電気的に受信された情報に基づいて作成および更新され得る。
【0042】
モデル識別子1102は、たとえば、産業資産品の説明1104によって定義された産業資産品を作成するために3次元プリンタによって使用できるモデルを識別する一意の英数字コードであり得る。モデルタイプ1106は、モデルが「1次」モデルか「カスタマイズされた」モデルかを示し、カスタマイズされたモデルの場合、親モデル1108はカスタマイズされたバージョンの作成にどのモデルが使用されたかを示し得る。ブロックチェーン結果1110は、情報が分散型台帳を介して検証されたかどうかを示し得る。プリンタ識別子1112は、どのデバイスが産業資産品を作成する(または作成した)かを示してもよく、モデル定義ファイル1114は、スキャンパス、CADファイル、またはアイテムを定義する情報が記憶される場所へのリンクを含み得る。
【0043】
実施形態は、スマートコントラクト、デジタル資産、レコードリポジトリ、および/または暗号化セキュリティをサポートする分散型コンセンサスベースのネットワークを有する任意のタイプの分散型台帳に関連付けられ得る。たとえば、図12は、いくつかの実施形態による分散型台帳参照アーキテクチャ1200である。アーキテクチャ1200は、(たとえば、モデル・カスタマイズ・プラットフォームからの)ネットワーク・セキュリティ・サービス情報を含み得る台帳サービスおよびイベントストリーム1210を含む。メンバーシップサービス1220(たとえば、登録、識別子管理、および/または監査可能性プロセスを含む)は、ネットワーク・セキュリティ・サービスのメンバーシップ1250の識別子、プライバシ、および機密性を管理し得る。ブロックチェーンサービス(例:コンセンサスマネージャ、ピアツーピア(「P2P」)プロトコル、分散型台帳、および/または台帳記憶装置を含む)は、たとえばP2Pプロトコルを通じて分散型台帳を管理して、ブロックチェーン1260およびトランザクション1270をサポートするために多くのノードで複製された単一の状態を維持し得る。チェーンコードサービス1240(例:セキュアコンテナおよび/またはスマートコントラクトに関連付けられたセキュアレジストリ)は、検証ノードでのスマートコントラクト(またはチェーンコード1280)の実行を区分するのに役立ち得る。環境は、セキュリティで保護されたOSとプログラミング言語とを含む署名されたベースイメージのセットを備えた「ロックダウン」され、保護されたコンテナであり得ることに留意されたい。最後に、API、ソフトウェア開発キット(「Software Development Kits:SDK」)、および/またはコマンドラインインターフェース(「Command Line Interface:CLI」)を利用して、参照アーキテクチャ1200を介してネットワーク・セキュリティ・サービスをサポートし得る。
【0044】
したがって、本明細書で説明するいくつかの実施形態は、最も一般的なまたは一般的に使用されるコンピュータ制御製造ハードウェアに合わせて調整された相当数のエンジニアリングモデルを予め作成する必要性を回避するのに役立ち得る。そのようなアプローチは、多数のエンジニアリングモデルバージョンのキュレーションおよび記憶装置を必要とするため、法外な費用がかかり得る。さらに、新しい機械および/またはソフトウェアが作成されると、調整されたエンジニアリングモデルの一部が時代遅れになり得る。
【0045】
以下は、本発明の様々な追加の実施形態を示している。これらはすべての可能な実施形態の定義を構成するものではなく、当業者は、本発明が他の多くの実施形態に適用可能であることを理解するであろう。さらに、明確にするために以下の実施形態を簡単に説明するが、当業者は、必要に応じて、これらおよび他の実施形態ならびに用途に対応するために上記の装置および方法に変更を加える方法を理解するであろう。
【0046】
本明細書では特定のハードウェアおよびデータ構成について説明してきたが、本発明の実施形態に従って任意の数の他の構成が提供され得ることに留意されたい(たとえば、本明細書で説明した情報の一部は外部システムに結合または記憶され得る)。さらに、産業用制御システムに関して実施形態を説明してきたが、実施形態は、一般に非産業用制御システムおよびプロセッサを含む他のタイプのコンピューティングシステムに関連付けられ得ることに留意されたい。同様に、本明細書に示され説明されるディスプレイは、例としてのみ提供され、他のタイプのディスプレイおよびディスプレイデバイスが、実施形態のいずれかをサポートし得る。たとえば、図13は、双方向性のグラフィカル・ユーザ・インターフェースを利用し得るモデル・カスタマイズ・プラットフォーム・ディスプレイ1300を示している。ディスプレイ1300は、アイテム作成プロセスに関連するデバイスのグラフィカルな概観を備えてもよく、ディスプレイ1300上の要素の選択は、その要素に関するさらなる情報をもたらしてもよい。別の例として、図14は、いくつかの実施形態による系譜情報ディスプレイ1410を提供するタブレットコンピュータ1400を示す。特に、系譜情報ディスプレイ1410は、(たとえば、タッチスクリーンを介した)双方向性のユーザインターフェースであってもよく、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って、カスタマイズされたエンジニアリング・モデル・バージョン番号およびブロックチェーン検証状態1420を含む。
【0047】
本発明は、単に例示の目的のために、いくつかの実施形態に関して説明されてきた。当業者は、この説明から、本発明が説明された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の精神および範囲によってのみ限定される修正および変更により実施され得ることを認識するであろう。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14