(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】低分子ヒアルロン酸又はその塩及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/44 20060101AFI20220715BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20220715BHJP
C08B 37/08 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C12P19/44
C12P1/00 A
C08B37/08 Z
(21)【出願番号】P 2020533114
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 CN2019128316
(87)【国際公開番号】W WO2020177455
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-06-08
(31)【優先権主張番号】201910164881.3
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CGMCC 16836
(73)【特許権者】
【識別番号】520202599
【氏名又は名称】シャンドン エーダブリューエー バイオファーム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG AWA BIOPHARM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.488 Huanghe 12 Road, Bincheng District, Binzhou City, Shandong 256600, China
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100148518
【氏名又は名称】松田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】ハン シゥユン
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-088545(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108220364(CN,A)
【文献】特表2015-515260(JP,A)
【文献】特開2012-001696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
C08B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含むことを特徴とする、低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法。
(1)酵素分解反応液:精製水にヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、ヒアルロン酸又はその塩の固体粉末をゆっくり加え、酵素分解反応で酵素分解液を取得し、前記ヒアルロニダーゼは、植物性乳酸菌突然変異株CnT012-56が発酵生産して得られ、当該菌株がLactobacillus plantarumとして分類命名され、その寄託機関が中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター(China General Microbiological Culture Collection Center)であり、住所が北京市朝陽区北辰西路1号院3号であり、寄託日が2018年11月28日であり、受託番号がCGMCC NO.16836である;
(2)ヒアルロニダーゼの不活性化:ステップ(1)での前記酵素分解液に対して昇温処理を行い、前記酵素分解液におけるヒアルロニダーゼ変性して不活性化される;
(3)吸着:ステップ(2)での前記酵素分解液を吸着し、混合液を取得する;
(4)濾過精製:ステップ(3)での混合液から吸着剤及び変性ヒアルロニダーゼを除去し、濾過して純粋な低分子ヒアルロン酸及びその塩溶液を取得する;
(5)低温噴霧乾燥:ステップ(4)での前記低分子ヒアルロン酸及びその塩溶液に対して低温噴霧乾燥を行い、所望の分子量の低分子ヒアルロン酸及びその塩の固体粉末を取得する。
【請求項2】
ステップ(1)において、まず、精製水にヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、pHが5-8、温度が30-40℃になるまで調節し、質量対体積濃度が50-100g/Lになるように、ヒアルロン酸又はその塩の固体粉末をゆっくり加え、0.5-1.5h分解反応させた後、質量対体積濃度が100-200g/Lになるように、ヒアルロン酸又はその塩の固体粉末をゆっくり添加し続け、5-8h酵素分解し続けることを特徴とする、請求項1に記載の低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法。
【請求項3】
ステップ(1)での前記ヒアルロニダーゼの添加量は、1グラムのヒアルロン酸又はその塩あたり102-105IUの前記ヒアルロニダーゼであることを特徴とする、請求項1に記載の低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法。
【請求項4】
ステップ(2)での前記ヒアルロニダーゼが変性して不活性化される条件は、酵素分解液を45-80℃に昇温して5-60min維持することを特徴とする、請求項1に記載の低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法。
【請求項5】
ステップ(3)での前記酵素分解液の吸着条件は、0.01%-1%活性炭を用いて、30-90min吸着し、ステップ(4)で、孔径が0.22μmであるセルロースフィルターを用いて前記濾過を行うことを特徴とする、請求項1に記載の低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法。
【請求項6】
前記ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウムであり、pHの調節は、塩酸又は水酸化ナトリウム溶液を用いることを特徴とする、請求項2に記載の低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法。
【請求項7】
ステップ(4)での前記低分子ヒアルロン酸又はその塩溶液の最終濃度は、10%-20%であることを特徴とする、請求項1に記載の低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法。
【請求項8】
ステップ(5)での前記低温噴霧乾燥の条件は、吸気温度が40℃-80℃であり、吹き出し温度が40℃であり、仕込み速度が100mL/h-300mL/hであることを特徴とする、請求項1に記載の低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法。
【請求項9】
ステップ(1)での前記酵素分解に用いられるヒアルロン酸又はその塩の分子量は、500kDa-700kDaであり、ステップ(5)で調製された前記低分子ヒアルロン酸又はその塩の分子量は、1kDa-60kDaであることを特徴とする、請求項1に記載の低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法。
【請求項10】
前記ヒアルロニダーゼの生産方法は、以下のステップを含むことを特徴とする、請求項1-9のいずれか一項に記載の低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法。
(a)Lactobacillus plantarum CnT012-56菌種を殺菌された種培地に接種し、培養温度が30℃-37℃であり、回転速度が0-100rpm、8-24h培養し、種培養液を取得する;
(b)ステップ(1)での前記種培養液を殺菌された発酵培養基に接種し、培養温度が30℃-37℃であり、回転速度が0-150rpmであり、20-48h培養し、ヒアルロニダーゼ発酵液を取得する;
(c)ステップ(2)での前記ヒアルロニダーゼ発酵液に対して遠心を行い、上澄みを取得する;
(d)孔径分画分子量が200kDaである限外濾過膜を用いてステップ(3)での前記ヒアルロニダーゼ上澄みに対して限外濾過を行い、ろ液を取得する;
(e)孔径分画分子量が20kDaである限外濾過膜を用いてステップ(4)での前記ろ液に対して限外濾過を行い、低分子不純物を除去し、精製したヒアルロニダーゼを取得する。
【請求項11】
ステップ(a)での前記種培地の成分は、ペプトン10g/L、酵母浸漬パウダー5g/L、ヒアルロン酸5g/L、グルコース3g/L、塩化ナトリウム0.1g/L、硫酸アンモニウム2g/L、硫酸第一鉄0.05g/L、硫酸マグネシウム0.2g/L、トウェイン-801mLであり、pHが6.5であることを特徴とする、請求項10に記載の低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法。
【請求項12】
ステップ(b)での前記発酵培養基の成分は、ペプトン10g/L、酵母浸漬パウダー5g/L、ヒアルロン酸5g/L、グルコース3g/L、塩化ナトリウム0.1g/L、硫酸アンモニウム2g/L、硫酸第一鉄0.05g/L、硫酸マグネシウム0.2g/L、トウェイン-801mLであり、pHが6.5であることを特徴とする、請求項10-11のいずれか一項に記載の低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本開示は、2019年03月05日に中国国家知識産権局に提出された特許出願番号がCN201910164881.3であり、発明の名称が「低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法」である中国特許出願の優先権を主張するものであり、当該中国特許出願の全内容は参照により本開示に組み入れられる。
【0002】
本開示は、生物工学技術分野に関し、具体的には、低分子ヒアルロン酸又はその塩及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)は、酸性ムコ多糖の一つであって、N-アセチルグルコサミン及びD-グルクロン酸二糖の繰り返し単位からなる非分岐高分子グリコサミノグリカンであり、動物組織細胞間物質及びいくつかの細菌的莢膜に存在し、化粧品、食べ物や医薬品等の産業分野に広く応用される。
【0004】
近年の研究により、低分子ヒアルロン酸は、非常に強い生物学的活性を示し(Hui ZM、a bioactive hyaluronic acid fragment、its manufacture mehtod、its formulation and its applications、Patent number 2014101553593.5.)、皮膚免疫機能の向上、及び皮膚の炎症の消散、創傷治癒の促進、急性および慢性咽頭炎の治療、歯肉炎の治療等の作用を有し、免疫細胞及びサイトカインの活性化剤であることを発見した。低分子ヒアルロン酸は、浸透吸収性が良好であり、真皮及び腸管によって非常に吸収されやすく、体内で失われたヒアルロン酸を速く補給することができる。そのため、低分子ヒアルロン酸は、保健用食品、化粧品及び臨床医学分野で広い使用見通しを有する。
【0005】
低分子ヒアルロン酸に関する研究と応用の進展に伴い、近年、国内外では、HAの分解及びその分解生成物の調製についての検討が重要視されてきた。現在、分解方法には、主に物理的分解、化学的分解及び生分解の3種類がある。物理的分解方法には、主に加熱、機械的せん断力、紫外線、超音波、60C照射やγ線放射等の要素があり、いずれもHAを分解させることができる。しかしながら、物理的方法で調製された分子量が1万を超え、得られた分子量範囲が広く分散し、製品の安定性が悪い。HAの化学的分解方法には、加水分解法及び酸化分解法があり、加水分解法は、酸加水分解(HCL)と塩基(NaOH)加水分解に分けて、酸化分解での一般的な酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素である。化学的分解方法では、分解された生成物の相対分子量が酸、塩基又は酸化剤の添加量及び反応時間を変更することにより制御することができ、分解コストが低く、量産しやすいものの、化学試薬を取り入れ、反応条件が複雑であり、HAの特性に影響を与え、製品の精製が困難になり、また、大量の産業廃水が生成してしまう。生体酵素分解は、ヒアルロニダーゼの作用下でβ-グリコシド結合を切断して発生する分解である。酵素法によれば、分解が穏やかであり、低分子ヒアルロン酸を調製する最適な技術的手段である。ヒアルロニダーゼは、ヒアルウロニダーゼとも呼ばれ、HAが低分子化作用させるグリコシダーゼであり、他の有機体や組織体中の酸性ムコ多糖を分解することもでき、真核生物と原核生物中に広く存在し、特異的な生理的活性を有する。
【0006】
出願番号がCN201611127881.9である発明特許では、固液二相性酵素分解と限外濾過とを併用する超低分子量ヒアルロン酸オリゴ糖及びその塩を調製する方法を提供し、酵素法でヒアルロン酸への酵素分解を実現する。しかしながら、現在のヒアルロニダーゼは、通常に動物組織から抽出調製され、高価であり、産業化応用に適合ではない。そのため、コストが低く、プロセスが簡単であり、産業化量産に適合な低分子ヒアルロン酸を調製する方法は、重要な応用潜在能力を有する。
【0007】
また、ヒアルロン酸抽出プロセスは、有機試薬沈殿法である場合が多く、この方法は、環境汚染を引き起こし、エネルギー消費量が大きく、かつ、低分子のヒアルロン酸の抽出収率が低い。さらに、噴霧乾燥を利用してヒアルロン酸を抽出することがあるが、一般的な噴霧乾燥機は、吸気温度が180℃以上であり、サーマル素材、物理的特性又は化学的特性が変化しやすく、特に、細菌や活性酵素等の生物活性材料が不活性化されてしまう。
【発明の概要】
【0008】
本開示の目的は、例えば、低分子ヒアルロン酸又はその塩及びその調製方法を提供することにより、上述の欠点を克服することを含む。
【0009】
本開示の実施例によって提供される方法は、主に植物性乳酸菌によって産生されるヒアルロニダーゼと低温噴霧乾燥とを併用して、分解して低分子ヒアルロン酸又はその塩を取得する。
【0010】
本開示の実施例は、例えば以下の形態によって実現することができる。
【0011】
本開示の実施例によって提供される低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法によれば、以下のステップを含む。
【0012】
(1)酵素分解反応液:精製水にヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、ヒアルロン酸又はその塩の固体粉末をゆっくり加え、酵素分解反応で酵素分解液を取得し、前記ヒアルロニダーゼは、植物性乳酸菌突然変異株CnT012-56が発酵生産して得られ;当該菌株がLactobacillus plantarumに分類命名され、その寄託機関が中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター(China General Microbiological Culture Collection Center)であり、住所が北京朝陽区北辰西路1号院3号であり、寄託日が2018年11月28日であり、受託番号がCGMCC NO.16836である;
(2)ヒアルロニダーゼの不活性化:ステップ(1)での前記酵素分解液に対して昇温処理を行い、前記酵素分解液におけるヒアルロニダーゼが変性して不活性化される;
(3)吸着:ステップ(2)での前記酵素分解液を吸着し、混合液を取得する;
(4)濾過精製:ステップ(3)での混合液から吸着剤及び変性ヒアルロニダーゼを除去し、濾過して純粋な低分子ヒアルロン酸及びその塩溶液を取得する;
(5)低温噴霧乾燥:ステップ(4)での前記低分子ヒアルロン酸及びその塩溶液に対して低温噴霧乾燥を行い、所望の分子量の低分子ヒアルロン酸及びその塩の固体粉末を取得する。
【0013】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(1)で、まず、精製水にヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、pHが5-8、温度が30-40℃になるまで調節し、質量対体積濃度が50-100g/Lになるように、ヒアルロン酸又はその塩の固体粉末をゆっくり加え、0.5-1.5h分解反応させた後、質量対体積濃度が100-200g/Lになるように、ヒアルロン酸又はその塩の固体粉末をゆっくり添加し続け、5-8h酵素分解し続ける。
【0014】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(1)での前記ヒアルロニダーゼの添加量は、1グラムのヒアルロン酸又はその塩あたり102-105IUの前記ヒアルロニダーゼである。
【0015】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(2)での前記ヒアルロニダーゼが変性して不活性化される条件は、酵素分解液を45-80℃に昇温して5-60min維持する。
【0016】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(3)での前記酵素分解液の吸着条件は、0.01%-1%の活性炭を用いて30-90min吸着し、ステップ(4)で、孔径が0.22μmであるセルロースフィルター濾過を用いる。
【0017】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウムであり、pH調節は、塩酸又は水酸化ナトリウム溶液を用いる。
【0018】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(4)での前記低分子ヒアルロン酸又はその塩溶液の最終濃度は、10%-20%である。
【0019】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(5)での前記低温噴霧乾燥法の条件は、吸気温度が40℃-80℃であり、吹き出し温度が40℃であり、仕込み速度が100mL/h-300mL/hである。
【0020】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(1)での前記酵素分解に用いられるヒアルロン酸又はその塩の分子量は、500kDa-700kDaであり、ステップ(5)で調製された前記低分子ヒアルロン酸又はその塩の分子量は、1kDa-60kDaである。
【0021】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、前記ヒアルロニダーゼの生産方法は、以下のステップを含む。
【0022】
(a)Lactobacillus plantarum CnT012-56菌種を殺菌された種培地に接種し、培養温度が30℃-37℃であり、回転速度が0-100rpmであり、8-24h培養し、種培養液を取得する;
(b)ステップ(1)での前記種培養液を殺菌された発酵培養基に接種し、培養温度が30℃-37℃であり、回転速度が0-150rpmであり、20-48h培養し、ヒアルロニダーゼ発酵液を取得する;
(c)ステップ(2)での前記ヒアルロニダーゼ発酵液に対して遠心を行い、上澄みを取得する;
(d)孔径分画分子量が200kDaである限外濾過膜を用いて、ステップ(3)での前記ヒアルロニダーゼの上澄みに対して限外濾過を行い、ろ液を取得する;
(e)孔径分画分子量が20kDaである限外濾過膜を用いて、ステップ(4)での前記ろ液に対して限外濾過を行い、低分子不純物を除去し、精製したヒアルロニダーゼを取得する。
【0023】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(a)での前記種培地の成分は、ペプトン10g/L、酵母浸漬パウダー5g/L、ヒアルロン酸5g/L、グルコース3g/L、塩化ナトリウム0.1g/L、硫酸アンモニウム2g/L、硫酸第一鉄0.05g/L、硫酸マグネシウム0.2g/L、トウェイン-801mLであり、pHが6.5である。
【0024】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(b)での前記発酵培養基の成分は、ペプトン10g/L、酵母浸漬パウダー5g/L、ヒアルロン酸5g/L、グルコース3g/L、塩化ナトリウム0.1g/L、硫酸アンモニウム2g/L、硫酸第一鉄0.05g/L、硫酸マグネシウム0.2g/L、トウェイン-801mLであり、pHが6.5である。
【0025】
本開示の実施例によって提供される低分子ヒアルロン酸又はその塩は、上述の方法で調製される。
【0026】
本開示の実施例的有益な効果は、例えば以下のことを含む。
【0027】
(1)本開示の実施例は、ヒアルロン酸の酵素分解反応系の築造を提供する。本開示の実施例に係るヒアルロニダーゼは、植物性乳酸菌に由来し、植物性乳酸菌は、プロバイオティクスとして食べ物に応用でき、それより生産されるヒアルロニダーゼは、安全性が高く、分解して調製される低分子ヒアルロン酸又はその塩は、安全で信頼性があり、食べ物、化粧品及び医薬品産業に非常に適用する。
【0028】
(2)本開示の実施例は、さらに酵素分解液の不活性化精製方法を提供し、ヒアルロニダーゼの不活性化方法は、酵素分解液を昇温し、ヒアルロニダーゼが変性して不活性化され、酵素分解液精製方法は、まず、活性炭で吸着し、その後、セルロースフィルターで酵素分解液を濾過し、当該方法は、便利であり、効率的な不活性化精製を実現する。
【0029】
(3)本開示の実施例は、さらに低分子ヒアルロン酸の固体粉末を調製する方法、即ち、低温噴霧乾燥法を提供する。従来のアルコール沈殿方式に比べると、当該方法は、収率が高く、汚染がなく、エネルギー消費が低く、有機溶剤が残留しない長所があり;かつ、従来の乾燥法に比べると、当該方法での噴霧乾燥は、素材温度が80℃以下で行い、その吸気温度が最低40℃程度であり、当該方法を採用して低分子ヒアルロン酸を調製する場合に、分子構造の完成性と生物活性を最大限保証することができる。
【0030】
(4)また、本開示の実施例の方法によって調製される低分子ヒアルロン酸の品質が良好であり、かつ、ヒアルロン酸の固体粉末の白色度が93%以上であり、水分含有量が6.3%よりも小さくてもよく、分子量が1kDa-60kDaであり;低分子ヒアルロン酸の純度が高く、含有量は、97%以上と高い可能性があり;収率が90%と高い可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0031】
当業者が本開示の技術案をよりよく理解するために、以下、本開示の実施例を参照しながら、技術案をより明確且つ完全に説明する。なお、説明される実施例は、単に本開示の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。当業者が本開示の実施例に基づいて、創造的な労働をしていない前提で獲得する他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0032】
本開示の実施例に用いられるヒアルロニダーゼは、植物性乳酸菌に由来し、任意に、当該植物性乳酸菌は、以下のように取得される植物性乳酸菌CnT012-56である。細菌汚染後のヒアルロン酸発酵液から、ヒアルロニダーゼを生産する植物性乳酸菌を分離取得し、その後、多機能プラズマ突然変異誘発システム(multifunction plasma mutagenesis system)で、突然変異育種を行い、ヒアルロニダーゼを効率的に生産する植物性乳酸菌CnT012-56を取得する。
【0033】
当該菌種は、中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センター(CGMCC)に預けられ、寄託日が2018年11月28日であり、受託番号がCGMCC NO.16836であり;植物性乳酸菌として確定され、Lactobacillus plantarumCnT012-56として命名される。当該菌株は、発酵培養基で38時間培養し、その発酵液で、ヒアルロニダーゼの活性が最高に到達し、6000IU/mLに到達することができる。発酵液を遠心して菌体を除去し、微細孔フィルターで不純物を除去し、限外濾過で精製し、濃縮した後、その活性が70000IU/mLに到達することができる。
【0034】
任意に、本開示の実施例の植物性乳酸菌の突然変異株を用いてヒアルロニダーゼを生産する方法は、以下のステップを含む。
【0035】
(1)Lactobacillus plantarum CnT012-56菌種を殺菌された種培地に接種し、培養温度が30℃-37℃であり、回転速度が0-100rpmであり、8-24h培養し、種培養液を取得する;
(2)種培養液を殺菌された発酵培養基に接種し、培養温度が30℃-37℃であり、回転速度が0-150rpmであり、20-48h培養し、ヒアルロニダーゼ発酵液を取得する;
(3)上述のヒアルロニダーゼ発酵液に対して遠心を行い、上澄みを取得する;
(4)孔径分画分子量が200kDaである限外濾過膜を用いて上述ヒアルロニダーゼの上澄みに対して限外濾過を行い、ろ液を取得する;
(5)孔径分画分子量が20kDaである限外濾過膜を用いて上述ろ液に対して限外濾過を行い、低分子不純物を除去し、精製したヒアルロニダーゼを取得する;
【0036】
任意に、種培地の成分は、ペプトン10g/L、酵母浸漬パウダー5g/L、ヒアルロン酸5g/L、グルコース3g/L、塩化ナトリウム0.1g/L、硫酸アンモニウム2g/L、硫酸第一鉄0.05g/L、硫酸マグネシウム0.2g/L、トウェイン-801mLであり、pHが6.5である;
【0037】
任意に、発酵培養基成分は、ペプトン10g/L、酵母浸漬パウダー5g/L、ヒアルロン酸5g/L、グルコース3g/L、塩化ナトリウム0.1g/L、硫酸アンモニウム2g/L、硫酸第一鉄0.05g/L、硫酸マグネシウム0.2g/L、トウェイン-801mLであり、pHが6.5である。
【0038】
任意に、本開示の実施例において、低分子ヒアルロン酸又はその塩の分子量の検出方法は、固有粘度測定方法(王彦厚、王鳳山、郭学平ら.ヒアルロン酸ナトリウムによる固有粘度測定方法の研究[J].中国薬学雑誌、2004,39(6):469-471)である。
【0039】
任意に、本開示の実施例において、白色度、水分含有量、純度含有量の測定は、《QB/T 4416-2012化粧品用原料 ヒアルロン酸ナトリウム》に準拠する。
【0040】
任意に、本開示の実施例によって提供される上述の低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法は、以下のステップを含む。(1)酵素分解反応液:精製水にヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、ヒアルロン酸又はその塩の固体粉末をゆっくり加え、酵素分解反応で酵素分解液を取得する;(2)ヒアルロニダーゼの不活性化:ステップ(1)での前記酵素分解液に対して昇温処理を行い、前記酵素分解液におけるヒアルロニダーゼが変性して不活性化される;(3)吸着:ステップ(2)での前記酵素分解液を吸着し、混合液を取得する;(4)濾過精製:ステップ(3)での混合液から吸着剤及び変性ヒアルロニダーゼを除去し、濾過して純粋な低分子ヒアルロン酸及びその塩溶液を取得する;(5)低温噴霧乾燥:ステップ(4)での前記低分子ヒアルロン酸及びその塩溶液に対して低温噴霧乾燥を行い、所望の分子量の低分子ヒアルロン酸及びその塩の固体粉末を取得する。
【0041】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(1)でのヒアルロン酸又はその塩の固体粉末をバッチで加えることにより、ヒアルロン酸又はその塩の固体粉末溶解と、ヒアルロニダーゼとの作用を確保し、酵素分解効果を保証する。
【0042】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(1)でのヒアルロニダーゼ添加量がヒアルロン酸又はその塩グラムあたり102-105IU ヒアルロニダーゼであり、当該比率を採用する主な理由は、ヒアルロニダーゼ添加量が高すぎると、ヒアルロン酸又はその塩酵素の分解が速すぎ、生成物分子量の不均一を招来し、また、ヒアルロニダーゼ添加量が低すぎると、酵素分解効果を保証できないことである。
【0043】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(4)で、孔径が0.22μmであるセルロースフィルターを採用して濾過し、活性炭とヒアルロニダーゼを最大限濾過し、後続の製品の純度を保証することができる。
【0044】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、塩酸又は水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを調節し、最終生成物の安全性を保証するとともに、生産コストを低減することができる。
【0045】
任意に、上述した低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法において、ステップ(4)での低分子ヒアルロン酸又はその塩溶液最終濃度が10%-20%であり、当該濃度は、低温噴霧乾燥法に合わせ、後続の乾燥ステップの正常運転を保証することができる。
以下、具体的な実施例を参照しながら、本開示の技術案をさらに説明する。
【0046】
実施例1
5Lの精製水に5mLのヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、pHが5.0、温度が30℃になるまで調節し、250gの分子量が500kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し、素材を均一に溶解させるために、添加速度を遅くしなければならない。任意に、30min分解反応させた後、250gの分子量が500kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し続けた。5h酵素分解反応させた後、分子量が60kDaになり、任意に、酵素分解液を50℃に昇温して1h維持して、ヒアルロニダーゼが変性して不活性化された。任意に、上述酵素分解液に5gの活性炭を加え、60min吸着し、粗ろ過板(Coarse filtration board)で濾過し、孔径が0.22μmであるセルロースフィルターで濾過して純粋なヒアルロン酸溶液を取得した。任意に、上述ヒアルロン酸溶液に対して低温噴霧乾燥を行うことにより、低分子ヒアルロン酸の固体粉末を調製した。任意に、低温噴霧の吸気温度が40℃であり、吹き出し温度が40℃であり、流速が100mL/hであった。得られた完成品である低分子ヒアルロン酸の固体粉末の白色度が95%であり、水分含有量が6.3%であり、分子量が60kDaであり、ヒアルロン酸の含有量が97%であり、収率が89%であった。
【0047】
実施例2
5Lの精製水に6mLのヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、pHが5.5、温度が32℃になるまで調節し、300gの分子量が650kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し、素材を均一に溶解させるために、添加速度を遅くしなければならない。任意に、40min分解反応させた後、400gの分子量650kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し続けた。6h酵素分解反応させた後、分子量が50kDaになり、任意に、酵素分解液を50℃に昇温して50min維持して、ヒアルロニダーゼが変性して不活性化された。
【0048】
任意に、上述酵素分解液に5gの活性炭を加え、60min吸着し、粗ろ過板で濾過し、孔径が0.22μmであるセルロースフィルターで濾過して純粋なヒアルロン酸溶液を取得した。任意に、上述ヒアルロン酸溶液に対して低温噴霧乾燥を行うことにより、低分子ヒアルロン酸の固体粉末を調製した。任意に、低温噴霧の吸気温度が50℃であり、吹き出し温度が40℃であり、流速が100mL/hであった。得られた完成品である低分子ヒアルロン酸の固体粉末の白色度が96%であり、水分含有量が7.3%であり、分子量が50kDaであり、ヒアルロン酸の含有量が96%であり、収率が90%であった。
【0049】
実施例3
5Lの精製水に7mLのヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、pHが6.0、温度が34℃になるまで調節し、400gの分子量が700kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し、素材を均一に溶解させるために、添加速度を遅くしなければならない。任意に、50min分解反応させた後、300gの分子量が700kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し続けた。6.5h酵素分解反応させた後、分子量が40kDaになり、任意に、酵素分解液を50℃に昇温して1h維持して、ヒアルロニダーゼが変性して不活性化された。任意に、上述酵素分解液に5gの活性炭を加え、60min吸着し、粗ろ過板で濾過し、孔径が0.22μmであるセルロースフィルターで濾過して純粋なヒアルロン酸溶液を取得した。任意に、上述ヒアルロン酸溶液に対して低温噴霧乾燥を行うことにより、低分子ヒアルロン酸の固体粉末を調製した。任意に、低温噴霧の吸気温度が60℃であり、吹き出し温度が40℃であり、流速が150mL/hであった。得られた完成品である低分子ヒアルロン酸の固体粉末の白色度が95%であり、水分含有量が8.2%であり、分子量が40kDaであり、ヒアルロン酸の含有量が97%であり、収率が90%であった。
【0050】
実施例4
5Lの精製水に8mLのヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、pHが6.5、温度が36℃になるまで調節し、400gの分子量が500kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し、素材を均一に溶解させるために、添加速度を遅くしなければならない。任意に、60min分解反応させた後、400gの分子量が500kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し続けた。7h酵素分解反応させた後、分子量が30kDaになり、任意に、酵素分解液を50℃に昇温して1h維持して、ヒアルロニダーゼが変性して不活性化された。任意に、上述酵素分解液に5gの活性炭を加え、60min吸着し、粗ろ過板で濾過し、孔径が0.22μmであるセルロースフィルターで濾過して純粋なヒアルロン酸溶液を取得した。任意に、上述ヒアルロン酸溶液に対して低温噴霧乾燥を行うことにより、低分子ヒアルロン酸の固体粉末を調製した。任意に、低温噴霧の吸気温度が65℃であり、吹き出し温度が40℃であり、流速が100mL/hであった。得られた完成品である低分子ヒアルロン酸の固体粉末の白色度が93%であり、水分含有量が7.2%であり、分子量が30kDaであり、ヒアルロン酸の含有量が98%であり、収率が91%であった。
【0051】
実施例5
5Lの精製水に8mLのヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、pHが7.0、温度が38℃になるまで調節し、400gの分子量が650kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し、素材を均一に溶解させるために、添加速度を遅くしなければならない。任意に、70min分解反応させた後、400gの分子量650kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し続けた。8h酵素分解反応させた後、分子量が20kDaになり、任意に、酵素分解液を50℃に昇温して1h維持して、ヒアルロニダーゼが変性して不活性化された。任意に、上述酵素分解液に5gの活性炭を加え、60min吸着し、粗ろ過板で濾過し、孔径が0.22μmであるセルロースフィルターで濾過して純粋なヒアルロン酸溶液を取得した。任意に、上述ヒアルロン酸溶液に対して低温噴霧乾燥を行うことにより、低分子ヒアルロン酸の固体粉末を調製した。任意に、低温噴霧の吸気温度が70℃であり、吹き出し温度が40℃であり、流速が200mL/hであった。得られた完成品である低分子ヒアルロン酸の固体粉末の白色度が93%であり、水分含有量が8.3%であり、分子量が20kDaであり、ヒアルロン酸の含有量が98%であり、収率が88%であった。
【0052】
実施例6
5Lの精製水に9mLのヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、pHが8.0、温度が40℃になるまで調節し、500gの分子量が650kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し、素材を均一に溶解させるために、添加速度を遅くしなければならない。任意に、80min分解反応させた後、500gの分子量が650kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し続けた。7.5h酵素分解反応させた後、分子量が10kDaになり、任意に、酵素分解液を50℃に昇温して1h維持して、ヒアルロニダーゼが変性して不活性化された。任意に、上述酵素分解液に5gの活性炭を加え、60min吸着し、粗ろ過板で濾過し、孔径が0.22μmであるセルロースフィルターで濾過して純粋なヒアルロン酸溶液を取得した。任意に、上述ヒアルロン酸溶液に対して低温噴霧乾燥を行うことにより、低分子ヒアルロン酸の固体粉末を調製した。任意に、低温噴霧の吸気温度が75℃であり、吹き出し温度が40℃であり、流速が250mL/hであった。得られた完成品である低分子ヒアルロン酸の固体粉末の白色度が93%であり、水分含有量が7.8%であり、分子量が10kDaであり、ヒアルロン酸の含有量が99%であり、収率が89%であった。
【0053】
実施例7
5Lの精製水に10mLのヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、pHが6.5、温度が38℃になるまで調節し、400gの分子量が700kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し、素材を均一に溶解させるために、添加速度を遅くしなければならない。任意に、90min分解反応させた後、500gの分子量が700kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し続けた。6h酵素分解反応させた後、分子量が7kDa-9kDaになり、任意に、酵素分解液を50℃に昇温して1h維持して、ヒアルロニダーゼが変性して不活性化された。任意に、上述酵素分解液に5gの活性炭を加え、60min吸着し、粗ろ過板で濾過し、孔径が0.22μmであるセルロースフィルターで濾過して純粋なヒアルロン酸溶液を取得した。任意に、上述ヒアルロン酸溶液に対して低温噴霧乾燥を行うことにより、低分子ヒアルロン酸の固体粉末を調製した。任意に、低温噴霧の吸気温度が80℃であり、吹き出し温度が40℃であり、流速が300mL/hであった。得られた完成品である低分子ヒアルロン酸の固体粉末の白色度が94%であり、水分含有量が6.9%であり、分子量が1kDaであり、ヒアルロン酸の含有量が99%であり、収率が90%であった。
【0054】
さらに、本開示の実施例の低温噴霧乾燥法の代わりに従来のアルコール沈殿方式を採用して低分子ヒアルロン酸の固体粉末を調製した。
【0055】
比較例1
5Lの精製水に10mLのヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、pHが6.5、温度が38℃になるまで調節し、400gの分子量が700kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し、素材を均一に溶解させるために、添加速度を遅くしなければならない。90min分解反応させた後、500gの分子量が700kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し続けた。6h酵素分解反応させた後、分子量が7kDa-9kDaになり、酵素分解液を50℃に昇温して1h維持して、ヒアルロニダーゼが変性して不活性化された。上述酵素分解液に5gの活性炭を加え、60min吸着し、粗ろ過板で濾過し、孔径が0.22μmであるセルロースフィルターで濾過して純粋なヒアルロン酸溶液を取得した。得られた純粋なヒアルロン酸溶液を4倍のアルコールに逆沈殿しながら攪拌した。沈殿が終了し、1時間静置し、上澄みを除去し、一倍体積のアルコールを加えて3回脱水し、遠心し、上澄みを除去し、固形物に対して真空乾燥を行い、低分子ヒアルロン酸の固体粉末を調製した。低分子ヒアルロン酸粉末の白色度が89%であり、水分含有量が8.9%であり、分子量が9kDaであり、ヒアルロン酸の含有量が95%であり、収率が78%であった。
【0056】
比較例2
5Lの精製水に8mLのヒアルロニダーゼを加え、攪拌し、pHが6.5、温度が36℃になるまで調節し、400gの分子量が500kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し、素材を均一に溶解させるために、添加速度を遅くしなければならない。60min分解反応させた後、400gの分子量が500kDaであるヒアルロン酸ナトリウムをゆっくり添加し続けた。7h酵素分解反応させた後、分子量が30kDaになり、酵素分解液を50℃に昇温して1h維持して、ヒアルロニダーゼが変性して不活性化された。上述酵素分解液に5gの活性炭を加え、60min吸着し、粗ろ過板で濾過し、孔径が0.22μmであるセルロースフィルターで濾過して純粋なヒアルロン酸溶液を取得した。得られた純粋なヒアルロン酸溶液を4倍のアルコールに加えて逆沈殿しながら攪拌した。沈殿が終了し、1時間静置し、上澄みを除去し、1倍体積のアルコールを加えて3回脱水し、遠心し、上澄みを除去し、固形物に対して真空乾燥を行い、低分子ヒアルロン酸の固体粉末を調製した。低分子ヒアルロン酸粉末の白色度が87%であり、水分含有量が9.2%であり、分子量が30kDaであり、ヒアルロン酸の含有量が94%であり、収率が79%であった。
【0057】
比較例1と比較例2から、従来のアルコール沈殿方式を採用して得られたヒアルロン酸の製品品質及び製品収率は、いずれも低温噴霧乾燥法よりも低かったことが分かった。
【0058】
好ましい実施例を示して本発明を詳しく説明したが、本開示はこれらに限らない。当業者は、本開示の精神及び実質から逸脱することなく、本開示の実施例に対して各種の同等修正、又は切り替えを行うことができる。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその等価物により限定される。さらに、当業者が本開示によって開示される技術範囲内で容易に想到できる変更又は切り替えは、本開示の保護範囲にある。そのため、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲に準じる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示の実施例によって提供される低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製する方法は、植物性乳酸菌によって産生されるヒアルロニダーゼを用いて、酵素分解、酵素不活性化、吸着、濾過精製及び低温噴霧乾燥等のステップを経て、低分子ヒアルロン酸又はその塩を調製し、当該方法のプロセスフローが簡単であり、用いられるヒアルロニダーゼの不活性化方法が便利であり、効率的な不活性化精製の実現に寄与し;得られる低温噴霧乾燥は、収率が高く、汚染がなく、エネルギー消費が低く、有機溶剤が残留しない長所があり、また、分子構造の完成性と生物活性を最大限保証し;得られる低分子ヒアルロン酸は、白色度が高く、水分含有量が低く、含有量が高く、収率が高く、かつ、異なる分子量への要求を満足でき;植物性乳酸菌は、得られる製品により高い安全性とより低い生産コストを与え、低分子ヒアルロン酸又はその塩の産業化生産及び応用潜在能力を効果的に向上させる。