IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

特許7105910二次電池用負極活物質、それを含む負極及びその製造方法
<>
  • 特許-二次電池用負極活物質、それを含む負極及びその製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】二次電池用負極活物質、それを含む負極及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20220715BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220715BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20220715BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 D
H01M4/133
H01M4/62
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020556252
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 KR2019017411
(87)【国際公開番号】W WO2020130465
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-10-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0163075
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ウォン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウク・ウ
(72)【発明者】
【氏名】リ・リン・ピャオ
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0342755(US,A1)
【文献】特表2016-532241(JP,A)
【文献】特開2003-323895(JP,A)
【文献】特開2013-197082(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097212(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/135848(WO,A1)
【文献】特開2010-251315(JP,A)
【文献】特開2007-324067(JP,A)
【文献】特開2004-127913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用負極活物質であって、
前記負極活物質は人造黒鉛及び球状化天然黒鉛を混合したものであり、
前記球状化天然黒鉛の平均粒径(D50)が12μm以下であり、D90-D10の値が5~12μmであ
前記人造黒鉛は前記負極活物質全体の重量を基準として65~85重量%含まれ、前記球状化天然黒鉛は前記負極活物質全体の重量を基準として15~35重量%含まれる、二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記天然黒鉛の平均粒径(D50)は、9~11μmである、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記天然黒鉛のD90-D10の値は、7~9μmである、請求項1または2に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記天然黒鉛のタップ密度は、1.10~1.25g/ccである、請求項1からの何れか一項に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記人造黒鉛は、コールタール、コールタールピッチ、石油ピッチまたは重油を熱処理して製造されたピッチコークスである、請求項1からの何れか一項に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項6】
集電体及び前記集電体上にコーティングされた負極合剤層を含み、
前記負極合剤層は、導電材、バインダー及び請求項1~の何れか一項に記載の負極活物質を含む、二次電池用負極。
【請求項7】
負極と、正極、前記負極と前記正極との間に介在された分離膜及び電解質を含み、前記負極は請求項の負極である、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年12月17日付の韓国特許出願第10-2018-0163075号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、二次電池用負極活物質、それを含む負極及びその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、サイクルスウェリング及び高率充電特性が向上された負極活物質、負極及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
化石燃料の枯渇によるエネルギー源の価格が上昇し、環境汚染に対する関心が増して、環境にやさしい代替エネルギー源に対する要求が将来の生活のための必要不可欠な要因となっており、特に、モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれ、エネルギー源としての二次電池に対する需要が急激に増加している。
【0004】
代表的に、電池の形状面では、薄い厚さで携帯電話などのような製品に適用され得る角型二次電池とパウチ型二次電池に対する需要が高く、材料面では、エネルギー密度、放電電圧、出力安定性が高い、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池などのようなリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0005】
一般的に、二次電池は、集電体の表面に電極活物質を含む電極合剤を塗布して正極と負極とを構成し、その間に分離膜を介在して電極組立体を作成した後、円筒形または角形の金属缶やアルミニウムラミネートシートのパウチ型ケースの内部に装着し、上記電極組立体に主として液体電解質を注入または含浸させたり、固体電解質を使用したりして製造する。
【0006】
また、二次電池は、正極/分離膜/負極の構造の電極組立体がどのような構造から成されているかによって分類されることもある。代表的には、長いシート状の正極と負極とを分離膜が介在された状態で巻取りした構造のジェリーロール(巻き取り型)電極組立体、所定大きさの単位で切り取った多数の正極と負極とを分離膜が介在された状態で順次的に積層したスタック型(積層型)電極組立体、所定単位の正極と負極とを分離膜が介在された状態で積層したバイセル(Bi-cell)またはフルセル(Full cell)を分離膜シートで巻取した構造のスタック/折り畳み型電極組立体などが挙げられる。
【0007】
一方、電極は、イオンの交換を通じて電流を発生させるが、電極を成す正極及び負極は、金属からなる電極集電体に電極活物質が塗布された構造からなる。
【0008】
そのうち、上記負極の場合、従来には、二次電池の負極として、リチウム金属が使用されたが、デンドライト(dendrite)の形成による電池短絡と、それによる爆発の危険性が知られ、構造的および電気的な性質を維持しつつ、可逆的なリチウムイオンの挿入(intercalation)及び脱離が可能な炭素系化合物に置き換えられている。
【0009】
上記炭素系化合物は、標準水素電極電位に対して約-3Vの非常に低い放電電位を有し、黒鉛板層(graphenelayer)の一軸配向性に起因する非常に可逆的な充放電挙動により、優れた電極寿命特性(cycle life)を示す。また、Liイオン充電時の電極電位が0V Li/Li+として、純粋なリチウム金属とほぼ同様の電位を示すことができるので、酸化物系の正極と電池を構成する際に、より高いエネルギーが得られるという長所がある。
【0010】
上記炭素系化合物には、結晶質炭素と非晶質炭素がある。結晶質炭素は天然黒鉛と人造黒鉛のような黒鉛質(graphite)炭素が代表的であり、非晶質炭素は高分子樹脂を炭化させて得る難黒鉛化性炭素(non-graphitizable carbons、hard carbons)と、ピッチ(pitch)を熱処理して得る易黒鉛化性炭素(graphitizable carbons、soft carbons)などがある。
【0011】
特に、炭素系物質としては、高い容量を有する天然黒鉛や高温特性などに優れた人造黒鉛が使用される。しかし、人造黒鉛の場合、天然黒鉛と比較して低い容量を発現し、2次粒子化及びコーティング処理によって負極スラリーの製造および電極の接着力の低下など、工程性が悪く、電極圧延特性が低下するという問題を有している。また、天然黒鉛の場合、高い配向度によるスウェリング現象や急速充電性能の劣位を示し、人造黒鉛と比較して表面に官能基が比較的に多く、高温特性が良くないという問題がある。
【0012】
韓国公開特許10-2015-0073107には、上記炭素系負極活物質として天然黒鉛と人造黒鉛とを混合し、上記人造黒鉛はモザイクコークス系の人造黒鉛であることが開示されている。しかし、上記のように天然黒鉛を使用する場合、電極の機械的強度が弱くなり、充放電時のサイクルスウェリング及び急速充電性能が良くない。この場合、充放電時の電極が膨らみ、サイクル寿命の減少などの問題が生じ得る。したがって、上記のような問題を解決するための技術開発が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような問題点を解決するために創案されたものであって、天然黒鉛と人造黒鉛とを混合した混合物を使用した負極活物質において、粒径が小さく、粒度分布が均一な球状化された天然黒鉛を使用することにより、天然黒鉛を使用するにもかかわらず、人造黒鉛レベルのサイクル特性、スウェリング特性および急速充電性能が向上された負極活物質、それを含む負極及びその製造方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る二次電池用負極活物質は、
人造黒鉛及び球状化天然黒鉛を混合したものであり、
上記球状化天然黒鉛の平均粒径(D50)が12μm以下であり、D90-D10の値が5~12μmであり得る。
【0015】
また、本発明に係る二次電池用負極活物質において、上記人造黒鉛は上記負極活物質全体の重量を基準にして65~85重量%で含まれ、上記球状化天然黒鉛は負極活物質全体の重量を基準にして15~35重量%で含まれ得る。
【0016】
また、本発明に係る二次電池用負極活物質において、上記天然黒鉛の平均粒径(D50)は9~11μmであり得る。
【0017】
また、本発明に係る二次電池用負極活物質において、上記天然黒鉛のD90-D10の値は7~9μmであり得る。
【0018】
また、本発明に係る二次電池用負極活物質において、上記負極活物質のタップ密度は1.10~1.25g/ccであり得る。
【0019】
また、本発明に係る二次電池用負極活物質において、上記負極活物質は圧延後の集電体に対する接着力が20~35gf/cmであり得る。
【0020】
また、本発明に係る二次電池用負極活物質において、上記人造黒鉛はコールタール(coal tar)、コールタールピッチ(coaltar pitch)、石油ピッチ(petroleum pitch)または重油(heavy oil)を熱処理して製造されたピッチコークスであり得る。
【0021】
また、本発明に係る二次電池用負極活物質において、球状化天然黒鉛は鱗片状の天然黒鉛を酸や塩基で処理した後、球状化装置にて30m/s~100m/sのローター速度(rotor speed)で10分~30分の間に球状化させることによって得られる。
【0022】
また、本発明は、二次電池用負極を提供するものであって、上記二次電池用負極は集電体及び上記集電体上にコーティングされた負極合剤層を含み、
上記負極合剤層は、導電材、バインダー及び上記負極活物質を含む。
また、本発明は、二次電池用負極を製造する方法を提供するものであって、上記二次電池用負極の製造方法は、負極合剤を準備する段階及び上記負極合剤を集電体上に塗布した後に乾燥する段階を含み、上記負極合剤に含まれた負極活物質は、人造黒鉛及び球状化天然黒鉛を混合した混合物を含み、上記負極活物質は前述した通りである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、人造黒鉛及び粒径が小さく、粒度分布が均一な球状化された天然黒鉛を混合した負極活物質を使用して、サイクル特性、スウェリング特性および急速充電などのセル性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る負極活物質を含む二次電池用負極の構造を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語は、通常的または辞書的な意味として限定して解釈されてはならず、発明者が彼自身の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に立脚して発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されるべきである。したがって、本明細書に記載の実施例に図示された構成は、本発明の最も好ましい一つの実施様態に過ぎず、本発明の技術的思想を何れも代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替し得る多様な均等物及び変形例があり得ると理解すべきである。
【0026】
本願明細書の全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとするとき、これは「直接的に連結されている場合」だけでなく、その中間に他の素子を置いて「電気的に連結」されている場合も含む。
【0027】
本願明細書の全体において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“上に”あるとする場合、これは他の部分の“真上に”ある場合のみではなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“下に”あるとする場合、これは他の部分の“すぐ下に”ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。また、本出願において“上に”配置されるとのことは、上部のみではなく、下部に配置される場合も含むことであり得る。
【0028】
本願明細書の全体において使用される用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造および物質許容誤差が提示されるとき、その数値またはその数値に近い意味として使用され、本願の理解を助けるために正確であるかまたは絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0029】
本願明細書の全体において、マーカッシュ構造の表現に含まれた「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ構造の表現に記載された構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合または組み合わせを意味するものであって、上記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0031】
本発明に係る二次電池用負極活物質は、黒鉛材を主成分として含む。
具体的には、上記負極活物質は、人造黒鉛及び球状化天然黒鉛を混合したものである。一般的に、人造黒鉛は高温特性に優れているが、低い容量及び低い工程性を示すという問題があるので、初期放電容量に優れた天然黒鉛を混合して活物質の容量を改善させることができる。しかし、天然黒鉛は、充放電サイクルが繰り返されつつ、天然黒鉛のエッジ部分から発生する電解液の分解反応に起因するスウェリング現象が発生し、充放電効率及び容量が低下するという問題が生じ得る。また、天然黒鉛は内部空隙が多く、電極圧延時に内部空隙が塞がるので、多くの機械的ストレスを受けるという問題がある。
【0032】
したがって、後述するように、粒径が小さく、粒度分布が均一な球状化天然黒鉛を人造黒鉛と混合することによって、人造黒鉛と天然黒鉛との長所を保持しながらも、既存の天然黒鉛の短所であった低いサイクル特性、スウェリング特性および急速充電特性を改善することができる。
【0033】
具体的には、上記球状化天然黒鉛は、平均粒径(D50)が12μm以下であり得、二次電池の初期効率を考慮して、好ましくは11μm以下、さらに好ましくは9~11μmであり得る。平均粒径が上記範囲内である球状化天然黒鉛を使用することによって、高エネルギー密度での急速充電能力を向上させるという長所が得られる。球状化天然黒鉛の平均粒径が12μmを超える場合、後述するように、電極(負極)のタップ密度及び活物質の接着力特性が減少して電極のスウェリング現象の改善効果が減少する。二次電池の充放電性能が減少し得る。
【0034】
また、本発明によると、天然黒鉛の使用時に生じ得る性能の低下を改善するためには、粒度分布が均一でなければならないので、上記球状化天然黒鉛の粒度分布において、D90-D10の値は5~12μmであり得、好ましくは7~9μmであり得る。ここで、D90は粒子径の順番で最も小さい粒子からの累積が90%となる粒径であり、D10は粒子径の順番で最も小さい粒子からの累積が10%となる粒径であり、D50は粒子径の順番で最も小さい粒子からの累積が50%となる粒径を意味する。上記D90-D10の値が小さいほど粒度分布曲線がシャープに表示される。上記D90-D10の値が5μm未満である場合は急速充電特性が低下され得るし、上記D90-D10の値が12μmを超える場合は適切な密度を得ることが難しいという問題が生じ得る。即ち、上記D90-D10の値が上記範囲から外れる場合、活物質の充填密度(packing density)が過度に低くなるという問題が発生して電極活物質層の厚さが厚くなり、その分のプレス性が低下するので、高エネルギー密度の具現において短所となる。
【0035】
上記球状化天然黒鉛の粒径は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。上記レーザ回折法は、一般的に、サブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性及び高分解性の結果が得られる。より具体的には、上記球状化天然黒鉛の粒径測定は、球状化天然黒鉛をエタノール/水の溶液に分散させた後、市販されるレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT3000)に導入して、約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、測定装置における粒径分布を基にして算出することができる。
【0036】
また、上記球状化天然黒鉛は、一般的な天然黒鉛に機械的外力を加え、組立球状化処理を実施することによって得られる。例えば、球状化天然黒鉛は鱗片上の天然黒鉛を酸や塩基で処理した後、球状化装置にて30m/s~100m/sのローター速度(rotor speed)で10分~30分の間に球状化させることによって製造され得るが、それに限定されるものではない。
【0037】
上記球状化天然黒鉛のタップ密度は、1.10~1.25g/ccであり得、より好ましくは1.15~1.20g/ccであり得る。活物質のタップ密度(tap density)は、粉末を充填するとき、一定した条件で容器を振動させて得られる粉末の見掛け密度である。本発明において、上記タップ密度の測定は、タップ密度の測定器であるLOGAN社製のTAP-2Sを利用してタッピング2000回を行った後に測定することができる。
【0038】
タップ密度(tap density)が高いほど、電極の充填密度(packing density)が高められる。具体的には、電極の製造のため、活物質をバインダーや導電材と混合した後、薄い膜の状態で集電体の上にコーティングする。その次に、圧力を加えて電極を丈夫に作成する。このとき、充填がうまくいかないと、電極を薄くすることができない。また、体積を多く占めるので、与えられた電池の体積条件において高容量を具現することができなくなる。
【0039】
上記球状化天然黒鉛のタップ密度は、上記天然黒鉛の粒径に影響を受けつつ、天然黒鉛の粒径が大きいほどタップ密度が減少し、天然黒鉛の粒径が小さいほどタップ密度が増加し得る。粒子間の接触面積が大きくなると、接着面積が大きくなり、接着力も向上される。そのため、一般的に、活物質と電極集電体との間の接着力を向上させるには、タップ密度が大きいことが好ましい。
【0040】
上記球状化天然黒鉛のタップ密度が1.10g/cc未満の場合には、粒子間の接触面積が十分ではないので接着力特性が低下され得、単位体積当たりのエネルギー密度が減少し得る。一方、球状化天然黒鉛のタップ密度が1.25g/ccを超える場合には、電極の湾曲性(tortuosity)の低下及び電解液の含浸性(wet-ability)が低下して充放電時の出力特性が低下し、初期効率の減少と高温特性の劣化を惹起し得るという問題があるので、望ましくない。
【0041】
併せて、本発明に係る負極活物質において、上記球状化天然黒鉛の球状化度は0.94~0.98であり得、具体的には0.95~0.96であり得る。上記球状化度は、第1粒子の長径に対する短径の比を意味し得る。上記球状化度は粒子形状分析器を通じて測定することができる。具体的には、粒子形状分析器を通じて上記球状化天然黒鉛粒子の球状化度の累積分布を導出した後、球状化度が大きい粒子からの分布割合が50%に該当する球状化度を上記第1粒子の球状化度として判断することができる。
【0042】
上記球状化天然黒鉛粒子の球状化度が0.94未満の場合、上記第1粒子の過度に屈曲された表面によって電極接着力が低いという問題が生じ得る。また、上記球状化天然黒鉛粒子の球状化度が0.98を超過する場合、高い球状化度を導出するために、大量の球状化天然黒鉛粒子が要求されるので、製造収率が低くなるという問題が生じ得る。
【0043】
また、本発明に係る負極活物質において、上記球状化天然黒鉛の圧延後の集電体に対する接着力は20~35gf/cmであり得、より好ましくは25~30gf/cmであり得る。一般的には、天然黒鉛は、表面に官能基が存在し、表面の欠陥や官能基の含量が少ない人造黒鉛と比べて、集電体に優れた接着力を示す。そのため、球状化天然黒鉛の圧延後の集電体に対する接着力が上記範囲内である場合、後に人造黒鉛が混合された負極活物質の集電体に対する接着力は向上され得る。
【0044】
上記球状化された天然黒鉛の集電体に対する接着力は、粒径によって影響され得、粒径が大きいほど表面積が小さくなり、集電体に対する接着力も小さくなる。上記球状化された天然黒鉛の集電体に対する接着力が20gf/cm未満の場合、負極活物質が集電体から容易に剥離されつつ、サイクルが進行されながら電池の容量が急激に低下され得る。一方、電極の接着力が35gf/cmを超える場合、電極抵抗の増加で高速充電特性が低下され得る。
【0045】
次に、本発明で使用される人造黒鉛について説明する。
【0046】
本発明に係る二次電池用負極活物質において、上記負極活物質に含まれる人造黒鉛は、ピッチコークスのような前駆体から製造され得る。上記ピッチコークスは、コールタール(coal tar)、コールタールピッチ(coal tar pitch)、石油ピッチ(petroleum pitch)または重油(heavy oil)などの炭素前駆体を使用して製造され得る。上記コークスは機械的に粉砕されて研磨された後、2800℃~3000℃の温度で熱処理(黒鉛化)して製造され得る。
【0047】
上記人造黒鉛は限定されるものではなく、粉末状、フレーク状、ブロック状、板状、または棒状であり得るが、最も優れた出力特性を示すためには、リチウムイオンの移動距離が短いほど良く、電極方向への移動距離が短くなるためには人造黒鉛の結晶粒配向度が等方性を示すのが望ましいので、フレーク状、または板状、更に詳細にはフレーク状が望ましい。
【0048】
また、上記人造黒鉛のタップ密度は0.80~1.00g/ccであり得、より好ましくは0.85~0.95g/ccであり得る。上記人造黒鉛粒子のタップ密度が0.80g/cc未満の場合、粒子間の接触面積が十分ではないので、接着力特性が低下され得、単位体積当たりのエネルギー密度が減少し得る。一方、人造黒鉛のタップ密度が1.00g/ccを超える場合、電極の湾曲性(tortuosity)の低下及び電解液の含浸性(wet-ability)が低下して充放電時の出力特性が低下し、初期効率の減少と高温特性の劣化を惹起し得るという問題があるので、好ましくない。
【0049】
また、上記人造黒鉛の平均粒径(D50)は、9~30μmであり得、好ましくは10~20μmであり得る。上記人造黒鉛の平均粒径が9μm未満の場合、非表面積の増加によって、二次電池の初期効率が減少し、電池性能が低下し得る。また、上記人造黒鉛の平均粒径が30μmを超える場合、電極接着力が減少して電池のサイクル特性が低下し得る。
【0050】
特に、上記人造黒鉛の平均粒径(D50)は、上記球状化天然黒鉛の平均粒径(D50)の1~2倍であり、好ましくは1.2~1.7倍であり得る。人造黒鉛の平均粒径と球状化天然黒鉛の平均粒径との比が上記範囲内であるとき、電極内の活物質の充填密度が改善され、活物質の非表面積を減少させて電解液との副反応を防止することができる。
【0051】
上記人造黒鉛の平均粒径と上記球状化天然黒鉛の平均粒径との倍率が上記範囲を外れる場合、何れか一方の粒子の大きさが肥大になって、人造黒鉛と球状化天然黒鉛が均一に分布され難く、その結果として、電池の出力特性が低下され得る。
【0052】
また、本発明に係る負極活物質において、上記人造黒鉛は、負極活物質全体の重量を基準にして65~85重量%で含まれ、さらに好ましくは70~80%で含まれ得る。
【0053】
併せて、上記球状化天然黒鉛は負極活物質全体の重量を基準にして15~35重量%で含まれ得、好ましくは20~30重量%で含まれ得る。
【0054】
上記負極活物質において、上記人造黒鉛の含量が65%未満であり、球状化天然黒鉛の含量が35%を超える場合は、天然黒鉛の含量が過度に大きいので、高温で電解液との副反応が起こってスウェリング現象が生じ得る。また、内部空隙によって電極の機械的特性が弱化して急速充電の性能が減少し、本発明の目的を達成することができない。逆に、上記人造黒鉛の含量が85重量%を超え、球状化天然黒鉛の含量が15%未満の場合には、人造黒鉛の含量が過度に多くて電池の容量が減少し、工程性が減少、圧延特性の低下という問題が発生して好ましくない。
【0055】
また、人造黒鉛と球状化天然黒鉛のうち、何れか一つが過度に多く使用される場合、各粒子のモルフォロジーによって負極活物質層内の空隙が過度に存在することになり、人造黒鉛と天然黒鉛との間の充填が円滑に成らなくなる。その結果、負極活物質内の粒子間の接着力及び負極活物質と集電体との間の接着力が劣悪になり得る。上記範囲で人造黒鉛と球状化天然黒鉛の量が調節される場合は、負極活物質層内の空隙が減り、人造黒鉛と球状化天然黒鉛とが互いに円滑に噛み合った状態で存在することになるので、電極の接着力が向上され得る。
【0056】
また、本発明に係る負極活物質は、人造黒鉛と球状化天然黒鉛との結合に助力する粘着剤成分をさらに含むことができる。上記粘着剤は、球状化天然黒鉛と人造黒鉛との結合に助力する成分であって、ハードカーボン(Hard carbon)前駆体、ソフトカーボン(soft carbon)前駆体などが使用され得るし、それに限定されない。上記負極活物質に人造黒鉛及び天然黒鉛の外に上記粘着剤成分がさらに含まれる場合、上記粘着剤は1~40重量%で含まれ得る。上記ハードカーボン前駆体は、スクロース(sucrose)、フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂などが使用され得る。また、上記ソフトカーボン前駆体は、コークス、ニードルコークス、ポリ塩化ビニル、メソフェースピッチ、タール、重質油が使用され得る。
【0057】
本発明は、また、上記負極活物質を含む二次電池用負極を提供する。
【0058】
図1は、本発明に係る負極活物質を含む二次電池用負極の構造を示した模式図である。
【0059】
図1を参照すると、上記負極(10)は、集電体(11)上に負極活物質を含んでいる負極合剤を塗布した後に乾燥し製造され得る。上記負極合剤には、必要に応じてバインダー、導電材、充填材などが選択的に、さらに含まれ得る。このとき、負極活物質としては、前述した人造黒鉛(12)と球状化天然黒鉛(13)の混合物が使用され得る。
【0060】
負極集電体用シートの場合、一般的に3~500μmの厚さに作成される。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など、多様な形態で使用され得る。
【0061】
上記導電材は、通常、正極活物質を含む混合物全体の重量を基準として1~30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維、フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。
【0062】
上記バインダーは、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に助力する成分であって、通常、正極活物質を含む混合物全体の重量を基準として1~30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0063】
上記充填材は、電極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発せずにかつ繊維状の材料であれば、特に制限されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状の物質が使用される。
【0064】
粘度調節剤、接着促進剤などのその他の成分が、選択的に、または二つ以上の組み合わせとして、さらに含まれ得る。粘度調節剤は、電極合剤を混合する工程と、それを集電体上に塗布する工程とが容易になるように、電極合剤の粘度を調節する成分であって、負極合剤全体の重量を基準として30重量%まで添加され得る。このような粘度調節剤の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデンなどがあるが、これらのみに限定されない。場合によっては、前もって説明した溶媒が粘度調節剤としての役割を並行して行うことができる。
【0065】
上記接着促進剤は、集電体に対する活物質の接着力を向上させるために添加される補助成分であって、バインダーと比べて10重量%以下で添加され得る。例えば、シュウ酸(oxalic acid)、アジピン酸(adipic acid)、ギ酸(formic acid)、アクリル酸(acrylic acid)誘導体、イタコン酸(itaconic acid)誘導体などが挙げられる。
【0066】
本発明は、また、本方法によって製造された二次電池を提供する。具体的には、上記二次電池は、本発明によって製造された二次電池用電極を二つ以上含み、上記二次電池用電極の間に分離膜が介在された状態で巻き取られたことを特徴とする電極組立体が電池ケースに内蔵されている構造であり、上記電極組立体にリチウム塩含有の非水系電解液が含浸されている構造である。上記二次電池用電極は、正極および/または負極であり得る。このとき、上記負極は、前述したようなものが使用でき、上記負極は、電極組立体として組み立てられた後、電解液と共に電池ケースに密封され、活性化工程を経て、リチウム二次電池として製造され得る。上記二次電池は、円筒形電池、角形電池、パウチ型電池、コイン型電池であり得るし、電池の形状において特に制限はない。
【0067】
上記電極組立体は、正極と負極及びその間に介在されている分離膜からなる構造であれば、特に制限されない。例えば、折り畳み型構造、またはスタック型構造、またはスタック/折り畳み型(SNF)構造、またはラミネーション/スタック型(LNS)構造であり得る。
【0068】
上記折り畳み型構造の電極組立体は、1つ以上の正極、1つ以上の負極、および正極と負極との間に介在される1つ以上の分離膜を含み、正極、分離膜、及び負極が、それぞれの一端と他端が互いに交差しない構造であり得る。
【0069】
また、上記スタック型構造の電極組立体は、1つ以上の正極、1つ以上の負極、および正極と負極との間に介在される1つ以上の分離膜を含み、正極、分離膜、及び負極が、それぞれの一端と他端が互いに交差する構造であり得る。
【0070】
上記スタック/折り畳み型構造の電極組立体は、1つ以上の正極、1つ以上の負極、および正極と負極との間に介在される1つ以上の分離膜を含み、上記分離膜は第1分離膜と第2分離膜を含み、上記正極、第1分離膜及び負極はそれぞれの一端と他端が互いに交差せず、上記第2分離膜は電極タブが形成されない電極の側面を包んでいる構造であり得る。
【0071】
上記ラミネーション/スタック型構造の電極組立体は、一面または両面に分離膜が接合(laminate)されている改良された電極を1つ以上含み得る。上記改良された電極は、例えば、分離膜が正極または負極の一面に、接合されている構造として具現され得る。また、分離膜が、正極の両面または負極の両面に接合されている構造として具現され得る。また、正極と負極との間に分離膜が介在された状態において、正極、分離膜及び負極が互いに接合されている構造として具現され得る。
【0072】
本発明に係る二次電池において、上記正極は、集電体上に正極活物質を含んでいる電極合剤を塗布した後に乾燥して製造され得、上記正極合剤には、必要に応じてバインダー、導電材、充填材などが選択的にさらに含まれ得る。
【0073】
本発明において、正極集電体の場合は一般的に3~500μmの厚さで作成される。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではない。例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。集電体は、それの表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など、多様な形態が可能である。
【0074】
本発明において正極活物質は、電気化学的反応を起こすことができる物質、即ち、リチウム遷移金属酸化物であって、2以上の遷移金属を含み、例えば、1またはそれ以上の遷移金属に置換されたリチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)等の層状化合物、1またはそれ以上の遷移金属に置換されたリチウムマンガン酸化物、化学式LiNi(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr、ZnまたはGaであり、上記元素のうち、一つ以上の元素を含む、0.01≦y≦0.7である)として表されるリチウムニッケル系酸化物、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.4Mn0.4Co0.2などのようにLiNiMnCo(b+c+d)(2-e)(ここで、-0.5≦z≦0.5、0.1≦b≦0.8、0.1≦c≦0.8、0≦d≦0.2、0≦e≦0.2、b+c+d<1である、M=Al、Mg、Cr、Ti、SiまたはYであり、A=F、PまたはClである)として表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、化学式LiM’PO(ここで、M=遷移金属、好ましくはFe、Mn、CoまたはNiであり、M’=Al、MgまたはTiであり、X=F、SまたはNであり、-0.5≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0≦z≦0.1である)として表されるオリビン系リチウム金属リン酸塩などが挙げられるが、これらのみに限定されない。
【0075】
上記正極において、バインダー、導電材、充填材などの添加物質は、前述した通りである。
【0076】
上記分離膜は、正極と負極との間に介在され、高いイオン透過度と機械的強度とを有する絶縁性の極薄箔が使用される。分離膜の気孔直径は、一般的に0.01~10μmであり、厚さは一般的に5~300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性および疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス繊維またはポリエチレンなどで作成されたシートや不織布などが使用される。電解質として、ポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0077】
上記リチウム塩含有の非水系電解液は、電解液とリチウム塩からなっており、上記電解液としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0078】
上記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、炭酸プロピレン誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、ピロリン酸塩メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用され得る。
【0079】
上記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合剤などが使用され得る。
【0080】
上記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用され得る。
【0081】
上記リチウム塩は、上記非水系電解質に溶解され易い物質として、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどが使用され得る。
【0082】
また、電解液には、充放電特性、難燃性などの改善を目的として、例えば、ピリジン、亜リン酸トリエチル、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されることもある。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含ませることもでき、高温保存特性を向上させるために、二酸化炭素ガスをさらに含ませることもでき、FEC(Fluoro-EthyleneCarbonate)、PRS(Propene sultone)などをさらに含ませることができる。
【0083】
一つの好ましい例として、LiPF、LiClO、LiBF、LiN(SOCFなどのリチウム塩を、高誘電性溶媒であるECまたはPCの環状カーボネートと低粘度溶媒であるDEC、DMCまたはEMCの線状カーボネートの混合溶媒に添加して、リチウム塩含有の非水系電解質を製造することができる。
【0084】
本発明の負極の製造方法は、負極合剤を準備する段階及び上記負極合剤を集電体上に塗布した後に乾燥する段階を含む。
【0085】
また、上記負極合剤に含まれた負極活物質は、人造黒鉛及び球状化天然黒鉛を混合した混合物を含み、
具体的には、上記負極活物質は前述したようなものを使用することができる。
【0086】
さらに具体的には、上記負極の製造方法において、上記負極合剤を準備する段階は、天然黒鉛を球状化する段階と、人造黒鉛を製造する段階と、及び上記球状化天然黒鉛、人造黒鉛を混合する段階とを含む。
【0087】
上記天然黒鉛を球状化する段階とは、一般的な鱗片状の天然黒鉛に機械的外力を加えて球状化処理をする段階であって、上述したように、鱗片状の天然黒鉛を酸や塩基で処理した後、球状化装置にて30m/s~100m/sのローター速度(rotor speed)で10分~30分の間に球状化させることによって得られる。
【0088】
上記人造黒鉛を製造する段階とは、上記コールタール(coal tar)、コールタールピッチ(coal tar pitch)、石油ピッチ(petroleum pitch)または重油(heavy oil)などの炭素前駆体をコーキング処理してピッチコークスを製造する段階と、及び上記コークスを機械的に粉砕して研磨した後、2800℃~3000℃の温度で熱処理(黒鉛化)する段階と、を含むことができる。
【0089】
また、上記天然黒鉛を球状化する段階と、及び人造黒鉛を製造する段階とは、製造された球状化天然黒鉛及び人造黒鉛の粒子の粒度分布が均一するように分級する段階と、をさらに含むことができる。
【0090】
上記分級する段階を通じて、球状化天然黒鉛及び人造黒鉛の平均粒径(D50)を、前述した数値通りに調節することができ、特に上記分級する段階を通じてD90-D10の値を5~12μm、好ましくは7~9μmになるように調節することができる。
【0091】
上記分級工程はどのような方法で実施しても構わないが、気流分級工程で実施することが好適である。気流分級工程を実施する場合、気流分級工程の条件は、活物質の種類などに応じて適切に調節することができる。
【0092】
球状化天然黒鉛及び人造黒鉛が準備されると、上記球状化天然黒鉛と人造黒鉛を混合する。混合方法は特に限定されず、例えば、ヘンシェルミキサーやスパルタンルーサーのような高速チョッパーを有するものやノータミキサー、リボンミキサー等を使用して高速でかつ均一に混合することができる。
【0093】
上記球状化天然黒鉛と人造黒鉛とを混合して、バインダー及び導電材を添加し、ここに水のような溶媒を添加して負極合剤スラリーを製造し、必要に応じてカルボキシメチルセルロース(CMC)のような増粘剤をさらに含むことができる。
【実施例
【0094】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を挙げ、詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は、種々の他の形態で変形され得、本発明の範囲が下記の実施例により限定されるものとして解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0095】
(実施例 1)
<負極の製造>
人造黒鉛80重量%及び球状化天然黒鉛20重量%を含む負極活物質を使用して負極を製造した。具体的には、上記負極活物質には、粒径が小さくて粒度分布が均一な天然黒鉛を使用する。上記天然黒鉛は、粒度分布において平均粒径(D50)が11μmであり、D90が15μm、D10が6μm、D90-D10は9μmであった。また、上記球状化天然黒鉛のタップ密度は1.15g/ccであり(タップ密度測定器であるLOGAN社製のTAP-2Sを用いて、タッピング2000回を実施して測定する)、これによる電極接着力は圧延後25gf/cmであった。上記人造黒鉛は、平均粒径(D50)が15.5μmであるフレーク状の人造黒鉛(タップ密度:0.90g/cc)を使用した。
上記天然黒鉛を負極活物質として使用し、導電材はSuperC65、バインダーはスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ96.6:1:1.3:1.1の重量比で混合し、水を添加してスラリーを製造した。
上記のように製造されたスラリーを銅箔に塗布し、約130℃で10時間を真空乾燥した後、1.4875cmの面積を有する負極を製造した。このとき、負極のローディング量は3.61mAh/cmとなるように製造した。
【0096】
<電池セルの製造>
上記負極活物質を銅箔に塗布して1.7671cmの面積にローディング量が3.61mAh/cmとなるように作業電極(負極)を製造し、アルミニウムホイルに正極活物質としてLiCoO(LCO)を含む正極合剤を塗布して1.4875cmのカウンター電極(正極)を製造した。上記作業電極とカウンター電極との間にポリエチレン分離膜を介在して電極組立体を製造した。そして、エチレンカーボネート(EC)とジエチレンカーボネート(EMC)とが1:4の体積比で混合された非水電解液添加剤VCの0.5重量%が添加された溶媒に1MのLiPFを添加して非水電解液を製造した後、上記電極組立体に注入した。上記電極組立体をケースに投入して、コインタイプのフルセル(Full-cell)二次電池を製造した。
併せて、上記負極活物質を銅箔に塗布して1.4875cmの面積にローディング量が3.61mAh/cmとなるように作業電極(負極)を製造し、カウンター電極(正極)として1.7671cmの面積を有するリチウム金属を使用した。上記作業電極とカウンター電極との間にポリエチレン分離膜を介在して電極組立体を製造した。そして、エチレンカーボネート(EC)とジエチレンカーボネート(EMC)が1:4の体積比で混合された非水電解液添加剤VCの0.5重量%が添加された溶媒に1MのLiPFを添加して非水電解液を製造した後、上記電極組立体に注入した。上記電極組立体をケースに投入し、コインタイプのハーフセル(Half-cell)二次電池を製造した。
【0097】
(実施例 2)
<負極の製造>
人造黒鉛80重量%及び球状化天然黒鉛20重量%を含む負極活物質を使用して負極を製造した。具体的には、上記負極活物質には、粒径が小さくて粒度分布が均一な天然黒鉛を使用した。上記天然黒鉛は、粒度分布において、平均粒径(D50)が9μmであり、D90が13μm、D10が6μm、D90-D10は7μmであった。また、上記球状化天然黒鉛のタップ密度は1.20g/ccであり、それによる電極接着力が圧延後30gf/cmであった。上記人造黒鉛は、平均粒径(D50)が14.5μmであるフレーク状の人造黒鉛(タップ密度:0.93g/cc)を使用した。
上記天然黒鉛を負極活物質として使用し、導電材はSuperC65、バインダーはスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ96.6:1:1.3:1.1の重量比で混合し、水を添加してスラリーを製造した。
上記のように製造されたスラリーを銅箔に塗布し、約130℃で10時間を真空乾燥した後、1.4875cmの面積を有する負極を製造した。このとき、負極のローディング量は3.61mAh/cmとなるように製造した。
【0098】
<電池セルの製造>
上記実施例2の負極活物質を使用して実施例1と同様の方法で電池(コインタイプのフルセル及びハーフセル電池)を製造した。
【0099】
(実施例 3)
負極活物質において、上記実施例1の人造黒鉛を85重量%含み、実施例1の球状化天然黒鉛を15重量%含むものを使用したことを除いて、実施例1と同様の方法で負極及び電池(コインタイプのフルセル及びハーフセル電池)を製造した。
【0100】
(実施例 4)
負極活物質において、上記実施例1の人造黒鉛を70重量%含み、実施例1の球状化天然黒鉛を30重量%含むものを使用したことを除いて、実施例1と同様の方法で負極及び電池(コインタイプのフルセル及びハーフセル電池)を製造した。
【0101】
(実施例 5)
負極活物質において、上記実施例1の人造黒鉛を65重量%含み、実施例1の球状化天然黒鉛を35重量%含むものを使用したことを除いて、実施例1と同様の方法で負極及び電池(コインタイプのフルセル及びハーフセル電池)を製造した。
【0102】
(比較例 1)
負極活物質において、上記実施例1の人造黒鉛を90重量%含み、実施例1の球状化天然黒鉛を10重量%含むものを使用したことを除いて、実施例1と同様の方法で負極及び電池(コインタイプのフルセル及びハーフセル電池)を製造した。
【0103】
(比較例 2)
負極活物質において、上記実施例1の人造黒鉛を60重量%含み、実施例1の球状化天然黒鉛を40重量%含むものを使用したことを除いて、実施例1と同様の方法で負極及び電池(コインタイプのフルセル及びハーフセル電池)を製造した。
【0104】
(比較例 3)
実施例1の人造黒鉛80重量%及び球状化天然黒鉛20重量%を含む負極活物質を使用して負極を製造した。具体的には、上記負極活物質として、粒径が小さくて粒度分布が均一した天然黒鉛を使用すし、上記天然黒鉛は、粒度分布において平均粒径(D50)が15μmであり、D90が21μm、D10が7μm、D90-D10は14μmであった。また、上記球状化天然黒鉛のタップ密度は1.15g/ccであり、これによる電極接着力が圧延後15gf/cmであった。
上記負極活物質を使用して負極及びそれを含むコインタイプのフルセル及びハーフセルを製造したことを除いて、実施例1と同様の方法で電池を製造した。
【0105】
(比較例 4)
実施例1の人造黒鉛80重量%及び球状化天然黒鉛20重量%を含む負極活物質を使用して負極を製造した。具体的には、上記負極活物質として、粒径が小さくて粒度均一化された天然黒鉛を使用し、上記天然黒鉛は、粒度分布において平均粒径(D50)が17μmであり、D90が28μm、D10が10μm、D90-D10は18μmであった。また、上記球状化天然黒鉛のタップ密度は1.10g/ccであり、これによる電極の接着力が圧延後14gf/cmであった。
上記負極活物質を使用して負極及びそれを含むコインタイプのフルセル及びハーフセルを製造したことを除いて、実施例1と同様の方法で電池を製造した。
【0106】
(比較例 5)
実施例1の人造黒鉛80重量%及び球状化天然黒鉛20重量%を含む負極活物質を使用して負極を製造した。具体的には、上記負極活物質として、粒径が小さくて粒度均一化された天然黒鉛を使用し、上記天然黒鉛は、粒度分布において平均粒径(D50)が11μmであり、D90が21μm、D10が6μm、D90-D10は15μmであった。また、上記球状化天然黒鉛のタップ密度は1.05g/ccであり、これによる電極の接着力が圧延後11gf/cmであった。
上記負極活物質を使用して負極及びそれを含むコインタイプのフルセル及びハーフセルを製造したことを除いて、実施例1と同様の方法で電池を製造した。
【0107】
(比較例 6)
実施例1の人造黒鉛80重量%及び球状化天然黒鉛20重量%を含む負極活物質を使用して負極を製造した。このとき、球状化天然黒鉛は鱗片状の黒鉛を組立化及び球状化する段階において、バインダーを添加し、フレークとの間に接着剤として作用するようにした。具体的には、上記負極活物質として、粒径が小さくて粒度均一化された天然黒鉛を使用し、上記天然黒鉛は、粒度分布において平均粒径(D50)が14μmであり、D90が27μm、D10が8μm、D90-D10は19μmであった。また、上記球状化天然黒鉛のタップ密度は1.00g/ccであり、これによる電極接着力が圧延後8gf/cmであった。
上記負極活物質を使用して負極及びそれを含むコインタイプのフルセル及びハーフセルを製造したことを除いて、実施例1と同様の方法で電池を製造した。
【0108】
上記実施例及び比較例に使用された人造黒鉛と球状化天然黒鉛の含量を表1に示し、各実施例及び比較例に使用された天然黒鉛の物性を表2に示した。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
(実験例1)
インサイチュSACスウェリングテスト(In-situ SAC Swelling Test)
上記製造されたコインタイプのフルセルを使用し、SOCを0~95%までとなるように充電範囲を定め、1回目のサイクルを0.1C、2回目のサイクルを0.2C、3回目のサイクルから30回目のサイクルまでを0.5Cで充電しつつ、充放電時の負極電極の厚さの変化をスウェリング割合(Swelling Ratio、%)と示した。その結果は下記表3に示した。
【0112】
(実験例2)
リチウムプレーティングテスト(Li-Plating Test)
上記製造されたコインタイプのハーフセルを使用し、上記ハーフセルを1Cで3サイクルの間を充放電した後、3Cで15分間を充電して、そのプロファイルを1次微分した。このとき、dQ/dVで表示される変曲点を確認して負極表面にリチウム析出が起こる時点のSOCであるリチウムプレーティングSOC(Li-Plating SOC、%)を定量化した。その結果は下記表3に示した。
【0113】
(実験例3)
負極電極の接着力評価(Peel Strength Test)
負極電極を空隙率28%で圧延してPeel Strength Testを行った。このとき、スライドグラスを利用して、電極が90度という直角方向へと向くようにし、集電体を剥がし取って電極接着力(剥きの強度)を測定し、その結果を下記表3に示した。
【0114】
【表3】
【0115】
上記表3から見られるように、本発明に係る負極活物質を用いた実施例1及び実施例2は、粒径が小さくて、粒度分布が均一な球状化天然黒鉛を使用した。その結果、粒径が大きくて、粒度分布が均一ではない比較例3~比較例6と比べて活物質と集電体との間の電極接着力が向上されており、それによってスウェリング割合が減少し、サイクル特性が向上されたことが確認できる。
【0116】
そして、負極活物質に含まれる球状化天然黒鉛の割合を変えた実施例1、実施例3~5及び比較例1、比較例2を比較すると、上記実施例で使用された負極及び電池のスウェリング割合およびサイクル特性が比較例と比べて向上されたことが分かる。
【0117】
また、本願発明の球状化天然黒鉛のタップ密度及び電極接着力の範囲を外れた場合、負極活物質の集電体に対する電極接着力が向上され、これにより、スウェリング割合が減少し、サイクル特性が向上されたことが確認できる。
【0118】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎないことであって、本発明が属する技術分野において、通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲で、多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明に開示された実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものである。また、本発明の保護範囲は次の特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0119】
10: 負極
11: 集電体
12: 人造黒鉛
13: 球状化天然黒鉛
図1