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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】光学材料用重合性組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/38 20060101AFI20220715BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20220715BHJP
   C08K 5/1545 20060101ALI20220715BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20220715BHJP
   C08L 75/08 20060101ALI20220715BHJP
   C09K 9/02 20060101ALI20220715BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20220715BHJP
   G02B 5/23 20060101ALI20220715BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20220715BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C08G18/38 076
C08G18/38 055
C08G18/48
C08K5/1545
C08K5/521
C08L75/08
C09K9/02
G02B1/04
G02B5/23
G02C7/02
G02C7/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020569693
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2020003203
(87)【国際公開番号】W WO2020158813
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2019013922
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】加曽利 祐基
(72)【発明者】
【氏名】河戸 伸雄
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/009230(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143910(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047744(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047745(WO,A1)
【文献】特開2018-021161(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124063(WO,A1)
【文献】特開2019-215450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C09K 9/02
G02B 1/04
G02B 5/23
G02C 7/00- 7/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物(i)と、下記一般式(ii)で表される重合体(ii)と、フォトクロミック化合物(iii)と、内部離型剤(iv)とを混合する工程Aと、
工程Aで得られた混合液に、ポリチオール化合物(v)を混合する工程Bと、
工程Bで得られた混合液に、さらに重合触媒(vi)を混合して光学材料用重合性組成物を得る工程Cと、
を含み、
工程Aにおいて、内部離型剤(iv)が前記光学材料用重合性組成物中に500~3000ppm含まれるように添加され、
工程Cにおいて、重合触媒(vi)が前記光学材料用重合性組成物中に120~500ppm含まれるように添加される、光学材料用重合性組成物の製造方法。
【化1】
(一般式(iia)中、R およびR は、水素原子あるいは炭素数1~18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。複数存在するR 同士は同一または相異なっていてもよく、複数存在するR 同士は同一または相異なっていてもよい。mは15以上500以下の整数を示す。)
【請求項2】
工程Aにおいて、ポリイソシアネート化合物(i)と、重合体(ii)と、フォトクロミック化合物(iii)と、内部離型剤(iv)とを2時間以下の時間で混合する、請求項1に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項3】
工程Cにおいて、重合触媒(vi)が前記光学材料用重合性組成物中に200~500ppm含まれるように添加される、請求項1または2に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項4】
工程Aは、
ポリイソシアネート化合物(i)と、重合体(ii)とを混合し、次いでフォトクロミック化合物(iii)と、内部離型剤(iv)とを混合する工程を含む、請求項1~3のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項5】
工程Aの混合温度は10~25℃である、請求項1~4のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項6】
フォトクロミック化合物(iii)がナフトピラン系化合物である、請求項1~5のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項7】
ポリイソシアネート化合物(i)は、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびフェニレンジイソシアネートから選択される少なくとも1種である、請求項1~6のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項8】
ポリチオール化合物(v)は、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、および2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタンから選択される少なくとも1種である、請求項1~のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の製造方法に記載の工程と、
得られた前記光学材料用重合性組成物を注型重合することによりレンズ基材を形成する工程を含む、プラスチックレンズの製造方法。
【請求項10】
ポリイソシアネート化合物(i)と、
下記一般式(ii)で表される重合体(ii)と、
フォトクロミック化合物(iii)と、
内部離型剤(iv)と、
ポリチオール化合物(v)と、
重合触媒(vi)と、を含み、
内部離型剤(iv)を500~3000ppm、重合触媒(vi)を120~500ppmの量で含む、光学材料用重合性組成物。
【化2】
(一般式(iia)中、R およびR は、水素原子あるいは炭素数1~18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。複数存在するR 同士は同一または相異なっていてもよく、複数存在するR 同士は同一または相異なっていてもよい。mは15以上500以下の整数を示す。)
【請求項11】
内部離型剤(iv)は、酸性リン酸エステルを含む、請求項10に記載の光学材料用重合性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料用重合性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、軽量で割れ難く、染色が可能なため眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料として急速に普及してきており、これまでに様々なプラスチック材料を用いたレンズ用成形体が開発され使用されている。
【0003】
代表的な例としては、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートやジアリルイソフタレートから得られるアリル樹脂や、(メタ)アクリレートから得られる(メタ)アクリル樹脂、イソシアネートとチオールから得られるポリチオウレタン樹脂が挙げられる。
【0004】
また近年、様々な機能が付与された高機能プラスチックレンズが開発されてきており、例えば有害な波長の光を遮断するレンズ、表面の傷つきが抑制されたレンズ、あるいは気温差によって発生するレンズ表面の曇りが抑制されたレンズが知られている。フォトクロミック性能を有するプラスチックレンズもそのような高機能プラスチックレンズの一つであり、開発が進められている。このようなフォトクロミック性能を有するプラスチックレンズを用いることにより、屋内では普通の透明色の眼鏡として機能し、屋外では太陽光(紫外線)に反応してレンズがグレー、ブラウンに色が付き、まぶしさから目を守る機能を発現する眼鏡を得ることができる。この眼鏡はサングラスのように屋内・屋外でメガネをかけ直す必要がなく、一つのメガネで屋内・屋外の両方での使用に対応することが可能な高機能な眼鏡であり、近年、その需要が世界的に拡大してきている。
【0005】
このようなフォトクロミック性能を有するプラスチックレンズには、着色および消色の応答性が速いことおよび良好な着色性能を発揮することが要求されている。
例えば、特定の脂肪族、脂環族イソシアネートを用いることにより、フォトクロミック化合物を含むウレタン樹脂系光学材料またはチオウレタン樹脂系光学材料およびプラスチックレンズを、フォトクロミック化合物の性能低下を起こすことなく得ることができる(特許文献1)。
【0006】
さらに、特定のポリオール化合物を含む光学材料用重合性組成物によれば、フォトクロミック化合物の性能低下を起こすことなく、優れたフォトクロミック性能を発揮するとともに、機械的強度などの物性にも優れた、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン系光学材料またはポリチオウレタン系光学材料を得ることができる(特許文献2)。
【0007】
また、光学材料用重合性組成物または光学材料用樹脂中でのフォトクロミック化合物の凝集を抑制して分散性を改善することにより、樹脂のフォトクロミック性能を向上させる技術が提案されている。そのような技術として、例えば、フォトクロミック化合物をポリマーで包含する重合体微粒子が提案されている(特許文献3~7)。また、フォトクロミック化合物を包含するナノパーティクルを含む屈折率が1.595から1.695の光学材料用樹脂も提案されている(特許文献8)。さらに、特定の重合体と、フォトクロミック化合物と、重合反応性化合物とを含む光学材料用重合性組成物、当該組成物の製造方法が提案されている(特許文献9)。当該文献には、当該組成物から得られる成形体中に重合体微粒子が含まれ、この重合体微粒子中にフォトクロミック化合物が内包されることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2014/002844号
【文献】国際公開第2015/115648号
【文献】国際公開第2014/007154号
【文献】特表2008-506031号公報
【文献】特開昭64-29489号公報
【文献】特開平1-152182号公報
【文献】DE102009052986
【文献】国際公開第2004/011506号
【文献】国際公開第2018/070383号
【非特許文献】
【0009】
【文献】P. Alexandridis, T.A. Hatton/Colloids Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects 96 (1995) 1-46
【文献】Phys. Chem. Chem. Phys., 1999, 1, 3331-3334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3~9に記載の従来の技術においては、重合性組成物から得られる光学材料に、白濁の発生により透明性に影響を与えたり、また微細な凝集物が生成したり、光学歪み(脈理)が発生する場合があるなど、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、重合性組成物の製造条件に着目し、特定の重合体と、フォトクロミック化合物とを所定の条件で混合することにより得られた光学材料用重合性組成物は、白濁が抑制され、さらに微細な凝集物の生成や光学歪みの発生が抑制された光学材料を提供できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0012】
[1] ポリイソシアネート化合物(i)と、下記一般式(ii)で表される重合体(ii)と、フォトクロミック化合物(iii)と、内部離型剤(iv)とを、混合する工程Aと、
工程Aで得られた混合液に、ポリチオール化合物(v)を混合する工程Bと、
工程Bで得られた混合液に、さらに重合触媒(vi)を混合して光学材料用重合性組成物を得る工程Cと、
を含み、
工程Aにおいて、内部離型剤(iv)が前記光学材料用重合性組成物中に500~3000ppm含まれるように添加され、
工程Cにおいて、重合触媒(vi)が前記光学材料用重合性組成物中に120~500ppm含まれるように添加される、光学材料用重合性組成物の製造方法。
【化1】
(一般式(ii)中、A、Aはそれぞれ異なるポリマー鎖を表す。Rはn価の有機基であり、Rは2種類のポリマー鎖を連結する連結基であり、Rは有機基である。nは1~6の整数である。)
[2] 工程Aにおいて、ポリイソシアネート化合物(i)と、重合体(ii)と、フォトクロミック化合物(iii)と、内部離型剤(iv)とを2時間以下の時間で混合する、[1]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[3] 工程Cにおいて、重合触媒(vi)が前記光学材料用重合性組成物中に200~500ppm含まれるように添加される、[1]または[2]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[4] 工程Aは、
ポリイソシアネート化合物(i)と、重合体(ii)とを混合し、次いでフォトクロミック化合物(iii)と、内部離型剤(iv)とを混合する工程を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[5] 工程Aの混合温度は10~25℃である、[1]~[4]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[6] フォトクロミック化合物(iii)がナフトピラン系化合物である、[1]~[5]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[7] ポリイソシアネート化合物(i)は、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびフェニレンジイソシアネートから選択される少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[8] 重合体(ii)は、下記一般式(iia)で表される化合物である、[1]~[7]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【化2】
(一般式(iia)中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1~18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。複数存在するR同士は同一または相異なっていてもよく、複数存在するR同士は同一または相異なっていてもよい。mは15以上500以下の整数を示す。)
[9] ポリチオール化合物(v)は、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、および2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタンから選択される少なくとも1種である、[1]~[8]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の製造方法に記載の工程と、
得られた前記光学材料用重合性組成物を注型重合することによりレンズ基材を形成する工程を含む、プラスチックレンズの製造方法。
[11] ポリイソシアネート化合物(i)と、
下記一般式(ii)で表される重合体(ii)と、
フォトクロミック化合物(iii)と、
内部離型剤(iv)と、
ポリチオール化合物(v)と、
重合触媒(vi)と、を含み、
内部離型剤(iv)を500~3000ppm、重合触媒(vi)を120~500ppmの量で含む、光学材料用重合性組成物。
【化3】
(一般式(ii)中、A、Aはそれぞれ異なるポリマー鎖を表す。Rはn価の有機基であり、Rは2種類のポリマー鎖を連結する連結基であり、Rは有機基である。nは1~6の整数である。)
[12] 内部離型剤(iv)は酸性リン酸エステルを含む、[11]に記載の光学材料用重合性組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法により得られた光学材料用重合性組成物によれば、透明性に優れ、微細な凝集物の生成や光学歪みの発生が抑制された、優れたフォトクロミック性能を備える光学材料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施の形態に基づき説明する。
本実施形態の光学材料用重合性組成物の製造方法は、
ポリイソシアネート化合物(i)と、下記一般式(ii)で表される重合体(ii)と、フォトクロミック化合物(iii)と、内部離型剤(iv)とを、混合する工程Aと、
工程Aで得られた混合液に、ポリチオール化合物(v)を混合する工程Bと、
工程Bで得られた混合液に、さらに重合触媒(vi)を混合して光学材料用重合性組成物を得る工程Cと、を含む。
工程Aにおいては、内部離型剤(iv)が前記光学材料用重合性組成物中に500~3000ppm含まれるように添加され、工程Cにおいては、重合触媒(vi)が前記光学材料用重合性組成物中に120~500ppm含まれるように添加される。
【0015】
【化4】
【0016】
一般式(ii)中、A、Aはそれぞれ異なるポリマー鎖を表す。Rはn価の有機基であり、Rは2種類のポリマー鎖を連結する連結基であり、Rは有機基である。nは1~6の整数である。
【0017】
<工程A>
本工程においては、ポリイソシアネート化合物(i)と、下記一般式(ii)で表される重合体(ii)と、フォトクロミック化合物(iii)と、内部離型剤(iv)とを混合する。
【0018】
内部離型剤(iv)は、光学材料用重合性組成物中に500~3000ppm、好ましくは500~1000ppm含まれるように添加される。
【0019】
上記の条件で混合することにより、透明性に優れ、微細な凝集物の生成や光学歪みの発生が抑制された、優れたフォトクロミック性能を備える光学材料を得ることができる。
【0020】
混合温度は、本発明の効果の観点から、10~25℃、好ましくは15~20℃とすることができる。
混合方法は特に限定されず、従来公知の方法で混合することができ、公知の手段で攪拌する方法等を採用することができる。攪拌回転数は、用いる攪拌手段やスケールにより適宜調整することが好ましいが、100~250rpm程度である。
【0021】
本工程は、ポリイソシアネート化合物(i)と、重合体(ii)と、フォトクロミック化合物(iii)と、内部離型剤(iv)とを混合することができれば、その添加順序は特に限定されず、一括に添加して混合してもよく、任意の順番で添加して混合することもできる。
【0022】
本実施形態においては、本発明の効果の観点から、ポリイソシアネート化合物(i)と、重合体(ii)とを混合し、次いで、得られた混合液に、フォトクロミック化合物(iii)と、内部離型剤(iv)とを混合することが好ましい。ポリイソシアネート化合物(i)と、重合体(ii)とを最初に混合することにより、透明性により優れ、微細な凝集物の生成や光学歪みの発生がさらに抑制される。
【0023】
添加方法は特に限定されず、一括添加、分割添加、連続添加等により添加することができる。本実施形態においては、上記の混合順において、各成分を各々一括添加することが好ましい。
【0024】
混合時間は、特に限定されないが、2時間以下、好ましくは1.5時間以下、より好ましくは1時間以下、特に好ましくは30分以下の時間とすることができる。混合時間の下限値は特に限定されないが、5分以上、好ましくは15分以上である。
なお、混合時間は、全成分が添加された後の時間である。
以下、各成分について説明する。
【0025】
[ポリイソシアネート化合物(i)]
本実施形態において、ポリイソシアネート化合物(i)は、イソシアナト基を2個以上有する化合物であり、本発明の効果を得ることができれば特に限定されず様々な化合物を用いることができる。
【0026】
本実施形態におけるポリイソシアネート化合物(i)としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;
イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、3,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;
トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルスルフィド-4,4-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;
2,5-ジイソシアナトチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5-ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4-ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアナト-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,4-ジチアン、4,5-ジイソシアナト-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物;等を挙げることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本実施形態におけるポリイソシアネート化合物(i)としては、本発明の効果の観点から、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、およびフェニレンジイソシアネートから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0028】
[重合体(ii)]
本実施形態の重合体(ii)は、下記一般式(ii)で表される。
【0029】
【化5】
【0030】
一般式(ii)中、A、Aはそれぞれ異なるポリマー鎖を表す。Rはn価の有機基であり、Rは2種類のポリマー鎖を連結する連結基であり、Rは有機基である。nは1~6の整数である。
【0031】
ポリマー鎖としては、ポリアルキレン鎖、ポリエステル鎖、ポリシロキサン鎖、ポリエチレンイミン鎖、ポリアルキレンオキシド鎖等を挙げることができる。ポリマー鎖としては、ポリアルキレンオキシド鎖が好ましい。
【0032】
ポリマー鎖であるポリアルキレン鎖としては、ポリエチレン鎖、ポリプロピレン鎖、ポリスチレン鎖、ポリ(メタ)アクリル酸エステル鎖、ポリ(メタ)アクリル酸鎖、ポリメチレンインダン鎖等を挙げることができる。
【0033】
ポリマー鎖であるポリエステル鎖としては、ポリα-アセトラクトン鎖、ポリβ-プロピオラクトン鎖、ポリγ-ブチロラクトン鎖、ポリδ-バレロラクトン鎖、ポリε-カプロラクトン鎖、ポリ乳酸鎖、ポリグリコール酸鎖、ポリ乳酸グリコール酸共重合体鎖、ポリエチレンテレフタレート鎖等を挙げることができる。
ポリマー鎖であるポリシロキサン鎖としては、ポリジメチルシロキサン鎖、ポリメチルフェニルシロキサン鎖等を挙げることができる。
【0034】
ポリマー鎖であるポリエチレンイミン鎖としては、ポリエチレンイミン鎖、ポリプロピオニルアジリジン鎖、ポリアセチルアジリジン鎖、ポリホルミルアジリジン鎖等を挙げることができる。
ポリマー鎖であるポリアルキレンオキシド鎖としては、ポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリブチレングリコール鎖、ポリペンテングリコール鎖、ポリヘキセングリコール鎖、ポリヘプテングリコール鎖等を挙げることができる。また、nが2以上の場合、複数のA、Aはそれぞれ異なるポリアルキレンオキシド鎖を有していてもよい。
【0035】
は1~6価の有機基である。
1価の有機基としては、メトキシ基、エトキシ基、1-プロパノキシ基、2-プロパノキシ基、メトキシエトキシ基などのアルコキシ基、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基などのアルキルチオ基、アセチル基などが挙げられる。
【0036】
2価の有機基としては、エチレングリコレート基、プロピレングリコレート基、ブチレングリコレート基などの2官能アルコキシ基、エタンジチオレート基、プロパンジチオレート基などの2官能チオレート基等が挙げられる。
【0037】
3官能の有機基としては、グリセロレート基、トリオキシエチルアミン基、トリオキシエチル(アルキル)アンモニウム塩などの3官能アルコキシ基等が挙げられる。
【0038】
4官能の有機基としては、エチレンジアミノ基やそのアルキルアンモニウム塩などの4価のアミノ基、テトラオキシエチレンジアミン基、ペンタエリスリトールのオキシ体などの4価のアルコキシ基が挙げられる。
6官能の有機基としては、ジペンタエリスリトールのオキシ体等が挙げられる。
は2種類のポリマー鎖を連結する炭素数1~10の2価の連結基である。
【0039】
2価の連結基としては、エチレングリコール基、プロピレングリコール基などのエーテル型連結基、βメルカプトプロピオン酸と(メタ)アクリル酸基とのマイケル付加体のようなビスカルボキシレート型の連結基、グリコール酸基のようなエーテルカルボキシレート型連結基などが挙げられ、ブロックコポリマーの合成方法に応じて任意の連結基を用いることができる。
【0040】
は末端官能基であり、重合体(ii)の分散性に影響を及ぼす。組成物の重合後にナノドメインの分散状態を維持する観点から、Rはポリイソシアネート化合物(i)およびポリチオール化合物(v)の重合性官能基と反応性を有する重合性有機基が好ましい。
【0041】
このような重合性有機基の例としてはヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ジヒドロキシプロピル基のような水酸基を有する有機基;アミノエチル基、アミノプロピル基のようなアミノ基を有する有機基:メルカプトエチル基、メルカプトプロピオン酸基、メルカプトエチルカルボニル基、メルカプトプロピルカルボニル基、チオグリコール酸基のようなメルカプト基を有する有機基;グリシジルエーテル基のようなエポキシ基を有する有機基;チオグリシジルエーテル基のようなチオエポキシ基を有する有機基;グリコール酸エーテルのようなカルボン酸を有する有機基;ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基のような末端に不飽和二重結合を有する有機基;プロパルギル基のような末端に不飽和三重結合を有する有機基等が挙げられる。
なお、Rは、ブロックコポリマーの種類によっては、前記重合性官能基と反応性が無くてもよい場合もある。
【0042】
反応性が無い有機基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、プロピオキシメチル基、プロピオキシエチル基、プロピオキシプロピル基、プロピオキシブチル基、ブチロキシメチル基、ブチロキシエチル基、ブチロキシプロピル基、ブチロキシブチル基などが挙げられる。
一般式(ii)で表される重合体(ii)の具体的な例としては、下記一般式(iia)で表される化合物、化合物(a)~(b)等を挙げることができる。
【0043】
(一般式(iia)で表される化合物)
本実施形態においては、一般式(ii)で表される重合体(ii)として下記一般式(iia)で表される化合物を用いることができる。
【0044】
【化6】
【0045】
一般式(iia)中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1~18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。複数存在するR同士は同一または相異なっていてもよく、複数存在するR同士は同一または相異なっていてもよい。mは15以上500以下、好ましくは30以上500以下の整数を示す。
一般式(iia)で表される化合物としては、数平均分子量が150以上、好ましくは200以上のものを用いることができる。
【0046】
一般式(iia)で表される化合物としては、具体的に下記一般式(iia-1)で表される化合物を用いることができる。具体的には、一般式(ii)において、Rがアルキレン(C2~C20)グリコレート基であり、Aがポリアルキレン(C2~C20)グリコール鎖、Rがオキシプロピレン基、Aがポリエチレングリコール鎖であり、Rがヒドロキシエチレン基、nがプロピレングリコレート基の価数の2の場合、当該化合物は下記一般式(iia-1)で表される。
【0047】
【化7】
【0048】
一般式(iia-1)中、RおよびRは、水素原子あるいは炭素数1~18のアルキル基を表し、少なくともどちらか一方は水素原子である。a+cは2以上600以下、好ましくは2以上400以下の整数であり、bは1以上300以下、好ましくは1以上100以下の整数を表す。複数存在するRおよびRは、同一でも異なっていてもよい。
【0049】
このような化合物の例としてはBASF社製のプルロニック(Pluronic)シリーズなどが挙げられる。プルロニックに含まれる化合物の構造は非特許文献1に示される。
なお、一般式(iia)で表される化合物の末端水酸基は、ポリイソシアネート化合物(i)等の重合性化合物と反応する場合もある。
【0050】
一般式(iia)で表される化合物は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
(化合物(a)~(b))
本実施形態においては、一般式(ii)で表される重合体(ii)として化合物(a)~(b)を用いることができる。重合体(ii)は、以下の化合物(a)および(b)から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
(a)二官能ブロックポリオール
一般式(ii)において、Rがプロピレングリコレート基であり、Aがポリプロピレングリコール鎖、Rがオキシプロピレン基、Aがポリエチレングリコール鎖であり、Rがヒドロキシエチレン基、nがプロピレングリコレート基の価数の2の場合、当該化合物は下記一般式(a-1)で表される。
【0053】
【化8】
【0054】
一般式(a-1)中、a、b、cはそれぞれユニット数を示し、それぞれ独立に3以上300以下の整数である。
このような化合物の例としてはPluronicシリーズ(BASF社製)などが挙げられる。
【0055】
類似の化合物として、一般式(ii)において、Rがエチレングリコレート基であり、Aがポリエチレングリコール鎖、Rがオキシエチレン基、Aがポリプロピレングリコール鎖であり、Rがヒドロキシプロピレン基、nがプロピレングリコレート基の価数の2の場合、当該化合物は下記一般式(a-2)で表される。
【0056】
【化9】
【0057】
一般式(a-2)中、a、b、cはそれぞれユニット数を示し、それぞれ独立に3以上300以下の整数である。
このような化合物の例としてはPluronic Rシリーズ(BASF社製)などが挙げられる。
【0058】
(b)3官能ブロックポリオール
一般式(ii)において、Rがグリセロレート基であり、Aがポリプロピレングリコール鎖、Rがオキシプロピレン基、Aがポリエチレングリコール鎖であり、Rがヒドロキシエチレン基、nがグリセロール基の価数の3の場合、当該化合物は下記一般式(b-1)で表される。
【0059】
【化10】
【0060】
一般式(b-1)中、b、cはそれぞれユニット数を示し、それぞれ独立に3以上300以下の整数である。*は結合手を示す。
このような化合物の例としては、グリセロールポリプロピレンオキシドブロックポリエチレンオキシド(Aldrich社製)などが挙げられる。
また、式中Qにおいて、プロピレンオキシド鎖とエチレンオキシド鎖が入れ替わった下記一般式(b-2)で表される化合物も例として挙げられる。
【0061】
【化11】
【0062】
本実施形態においては、重合体として一般式(ii)で表される重合体(ii)から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
本実施形態においては、重合反応性化合物(ポリイソシアネート化合物(i)および後述するポリチオール化合物(v))100重量部に対して、一般式(ii)の重合体(ii)を0.01~50重量部、好ましくは0.05~20重量部、好ましくは0.1~10重量部含むことができる。
【0064】
[フォトクロミック化合物(iii)]
フォトクロミック化合物(iii)は特定波長の光照射により、分子構造が可逆的に変化し、それに伴って吸光特性(吸収スペクトル)が変化する。本実施形態で用いるフォトクロミック化合物(iii)としては、特定の波長の光に対して吸光特性(吸収スペクトル)が変化する化合物が挙げられる。
【0065】
本実施形態において、フォトクロミック化合物(iii)としては、特に制限はなく、フォトクロミックレンズに使用しうる従来公知の化合物の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、フルギド系化合物、ナフトピラン系化合物、ビスイミダゾール化合物等から所望の着色に応じて、1種または2種以上を用いることができる。本実施形態においては、フォトクロミック化合物(iii)としてナフトピラン系化合物を用いることが好ましい。
【0066】
本実施形態においては、一般式(1)および一般式(2)から選択される少なくとも1種のフォトクロミック化合物を用いることが好ましい。
PC-L-Chain (1)
PC-L-Chain-L'-PC' (2)
PCとPC'は一般式(3)~(6)の化合物から誘導される1価の基を示す。PCとPC'は同一でも異なっていてもよい。
【0067】
【化12】
【0068】
式(3)~(6)中、R~R18は、水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、アセチル基、ホルミル基、置換されてもよいC1~C20の脂肪族基、置換されてもよいC3~C20の脂環族基、または置換されてもよいC6~C20の芳香族有機基を示し、それぞれ同一でも異なってもよい。これら脂肪族基、脂環族基または芳香族有機基は、酸素原子、窒素原子を含んでもよい。一般式(3)~(6)で表される化合物に含まれる、いずれか1つの基は、2価の有機基であるLまたはL'と結合する。
【0069】
置換されてもよいC1~C20の脂肪族基としては、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルコキシ基、直鎖あるいは分枝鎖状のC2~C10アルケニル基、C1~C10ヒドロキシアルキル基、C1~C10ヒドロキシアルコキシ基、C1~C10アルコキシ基で置換されたC1~C10アルキル基、C1~C10アルコキシ基で置換されたC1~C10アルコキシ基、C1~C5ハロアルキル基、C1~C5ジハロアルキル基、C1~C5トリハロアルキル基、C1~C10アルキルアミノ基、C1~C10アミノアルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C20アルコキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0070】
置換されてもよいC3~C20の脂環族基として、C3~C20のシクロアルキル基、C6~C20のビシクロアルキル基等を挙げることができる。
置換されてもよいC6~C20の芳香族有機基としては、フェニル基、C7~C16アルコキシフェニル基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールC1~C5アルキルアミノ基、環状アミノ基、アリールカルボニル基、アロイル基等を挙げることができる。
【0071】
とRとして、好ましくは、水素原子;ハロゲン原子;
直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルコキシ基、C1~C10ヒドロキシアルコキシ基、C1~C10アルコキシ基で置換されたC1~C10アルコキシ基、C1~C5ハロアルキル基、C1~C5ジハロアルキル基、C1~C5トリハロアルキル基、C1~C5アルキルアミノ基等の、置換されてもよいC1~C20の脂肪族基;
フェニル基、C7~C16アルコキシフェニル基、C1~C5ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールC1~C5アルキルアミノ基、環状アミノ基等の、置換されてもよいC6~C20の芳香族有機基;等を挙げることができる。RとRは、それぞれ同一でも異なってもよい。
【0072】
として、好ましくは、水素原子;ハロゲン原子;カルボキシル基;アセチル基;
直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC2~C10アルケ二ル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルコキシ基、C1~C10ヒドロキシアルキル基、C1~C10アルコキシ基で置換されたC1~C10アルキル基、C1~C10アミノアルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C20アルコキシカルボニル基等の、置換されてもよいC1~C20の脂肪族基;
C3~C20のシクロアルキル基、C6~C20のビシクロアルキル基等の、置換されてもよいC3~C20の脂環族基;
アリールカルボニル基、ホルミル基、アロイル基等の、置換されてもよいC6~C20の芳香族有機基;等を挙げることができる。
【0073】
として、好ましくは、水素原子;ハロゲン原子;カルボキシル基;アセチル基;ホルミル基;
直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC2~C10アルケ二ル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルコキシ基、C1~C10ヒドロキシアルキル基、C1~C10アルコキシ基で置換されたC1~C10アルキル基、C1~C10アミノアルキル基、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C20アルコキシカルボニル基等の、置換されてもよいC1~C20の脂肪族基;
C3~C20のシクロアルキル基、C6~C20のビシクロアルキル基等の、置換されてもよいC3~C20の脂環族基;
アリールカルボニル基、アロイル基、フェニル基、C7~C16アルコキシフェニル基、C1~C10ジアルコキシフェニル基、C1~C10アルキルフェニル基、C1~C10ジアルキルフェニル基等の、置換されてもよいC6~C20の芳香族有機基;等を挙げることができる。
【0074】
とRは互いに結合してもよい。RとRが互いに結合して環構造を形成する場合、一般式(7)または(8)が挙げられる。点線部分がRが結合している炭素原子とRが結合している炭素原子との間の結合を表す。
【0075】
【化13】
【0076】
、R、R、R、R、R10、R14、R15、R16は、R、Rと同様な官能基を示す。複数存在するR~Rとは同一でも異なっていてもよい。
【0077】
11として、好ましくは、水素原子;ハロゲン原子;
直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C20アルキル基、C1~C5ハロアルキル基、C1~C5ジハロアルキル基、C1~C5トリハロアルキル基等の、置換されてもよいC1~C20の脂肪族基;
C3~C20のシクロアルキル基、C6~C20のビシクロアルキル基、C1~C5アルキル基で置換されたC3~C20シクロアルキル基、C1~C5アルキル基で置換されたC6~C20のビシクロアルキル基等の、置換されてもよいC3~C20の脂環族基;
C1~C5アルキル基で置換されたアリール基等の、置換されてもよいC6~C20の芳香族有機基;等を挙げることができる。
【0078】
12とR13として、好ましくは、水素原子;ハロゲン原子;
C1~C10アルキル基、C1~C5アルキルアルコキシカルボニル基等の、置換されてもよいC1~C20の脂肪族基;C5~C7のシクロアルキル基等の、置換されてもよいC3~C20の脂環族基;等を示す。
【0079】
17とR18として、好ましくは、水素原子;ハロゲン原子;
直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルキル基、C1~C10ヒドロキシアルキル基等の、置換されてもよいC1~C20の脂肪族基;C5~C7のシクロアルキル基等の、置換されてもよいC3~C20の脂環族基;等を示す。
【0080】
一般式(1)または(2)のLとL'は、オキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖、(チオ)エステル基、(チオ)アミド基から選択される少なくとも1種の基を含む2価の有機基を示す。
具体的には、LとL'は、一般式(9)~(15)で表される。LとL'は同一でも異なっていてもよい。
【0081】
【化14】
【0082】
式(9)~(15)中、
Yは、酸素、硫黄を示す。
19は、水素、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルキル基を示す。
20は、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルキル基を示す。
pは、0~15の整数を示し、rは、0~10の整数を示す。
Qは、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルキレン基、C1~C10アルケニレン基、1,2-、1,3-、1,4-位の置換アリール基から誘導される2価の基、置換ヘテロアリール基から誘導される2価の基等を示す。
*1、*2は結合手を表し、*1は「Chain」で表される1価または2価の有機基と結合し、*2はPCまたはPC' で表される1価の有機基と結合する。
【0083】
一般式(1)または(2)の「Chain」は、ポリシロキサン鎖、ポリオキシアルキレン鎖から選択される少なくとも1種の鎖を含む1価または2価の有機基を示す。
ポリシロキサン鎖としては、ポリジメチルシロキサン鎖、ポリメチルフェニルシロキサン鎖、ポリメチルヒドロシロキサン鎖等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシヘキサメチレン鎖等が挙げられる。
【0084】
具体的には、
「Chain」は、フォトクロミック化合物が一般式(1)の場合は、一般式(16)または(17)の1価の有機基を示す。
【0085】
【化15】
【0086】
「Chain」は、フォトクロミック化合物が一般式(2)の場合、一般式(18)または(19)の2価の有機基を示す。
【0087】
【化16】
【0088】
式(16)~(19)中、
21は、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルキル基を示す。
22は、直鎖あるいは分枝鎖状のC1~C10アルキル基を示す。
23は、水素、メチル基、エチル基を示す。
nは4~75の整数を示し、mは1~50の整数を示す。
qは1~3の整数を示す。
*3、*4は結合手を表し、*3はLで表される2価の有機基と結合し、*4はL'で表される2価の有機基と結合する。
【0089】
本実施形態のフォトクロミック化合物(iii)、WO2009/146509公報、WO2010/20770公報、WO2012/149599公報、WO2012/162725公報に記載の方法により得られる。
【0090】
本実施形態のフォトクロミック(iii)としては、Vivimed社のReversacol Humber Blue(ポリジメチルシロキサン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式3))、Reversacol Calder Blue(ポリジメチルシロキサン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式3))、Reversacol Trent Blue(ポリジメチルシロキサン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式3))、Reversacol Pennine Green(ポリジメチルシロキサン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式3))、Reversacol Heath Green(ポリオキシアルキレン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式3))、Reversacol Chilli Red(ポリジメチルシロキサン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式3))、Reversacol Wembley Grey(ポリオキシアルキレン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式3))、Reversacol Cayenne Red(ポリオキシアルキレン鎖、ナフトピラン系発色団(一般式3))等が挙げられ、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。本実施形態においては、Reversacol Trent Blue、Reversacol Heath Green、Reversacol Chilli Red、Reversacol Wembley Grey、Reversacol Cayenne Redから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0091】
重合体(ii)とフォトクロミック化合物(iii)との重量比は特に限定されるものではないが、重合体(ii)100重量部に対してフォトクロミック化合物(iii)が好ましくは0.01~100重量部、より好ましくは1~10重量部である。
フォトクロミック化合物(iii)は、当該フォトクロミック化合物(iii)とポリイソシアネート化合物(i)とのプレミックスにより添加することもできる。なお、本実施形態におけるポリイソシアネート化合物(i)の使用全量は、プレミックスに用いられるポリイソシアネート化合物(i)の量を含む。
【0092】
[内部離型剤(iv)]
内部離型剤(iv)としては、本発明の効果を得ることができれば特に限定されず様々な化合物を用いることができる。
【0093】
本実施形態においては、内部離型剤(iv)として、酸性リン酸エステルを用いることができる。酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独または2種類以上混合して使用することできる。
内部離型剤(iv)として用いる酸性リン酸エステルは、一般式(iv)で表すことができる。
【0094】
【化17】
【0095】
一般式(iv)中、xは1または2の整数を示し、yは0~18の整数を示し、R27は炭素数1~20のアルキル基を示し、R28、R29はそれぞれ独立に水素原子または、メチル基、エチル基を示す。[ ]x内の炭素数は4から20であることが好ましい。複数存在するR27同士、複数存在するR28同士、または複数存在するR29同士は、同一でも異なっていてもよい。
【0096】
一般式(iv)中のR27としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカ
ン、へキサデカン等の直鎖の脂肪族化合物から誘導される有機残基、2-メチルプロパン、2-メチルブタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、3-エチルペンタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルヘキサン、2-メチルへプタン、3-メチルへプタン、4-メチルへプタン、3-エチルへプタン、4-エチルへプタン、4-プロピルへプタン、2-メチルオクタン、3-メチルオクタン、4-メチルオクタン、3-エチルオクタン、4-エチルオクタン、4-プロピルオクタン等の分岐鎖の脂肪族化合物から誘導される有機残基、シクロペンタン、シクロへキサン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン等の脂環族化合物から誘導される有機残基等を挙げることができ、これらから選択される少なくとも一種を用いることができる。なお、これら例示化合物のみに限定されるものではない。酸性リン酸エステルは、少なくとも一種または二種以上の混合物を用いることができる。
【0097】
上記一般式(iv)において、yは0または1が好ましい。
yが0の場合、R27は、炭素数4~12の直鎖または分岐鎖アルキル基が好ましく、炭素数4~12の直鎖アルキル基がさらに好ましい。
yが1の場合、R27は、炭素数1~20の直鎖または分岐鎖アルキル基が好ましく、炭素数3~12の直鎖または分岐鎖アルキル基が好ましい。
酸性リン酸エステルは、これらから選択される一種または二種以上の混合物として用いることができる。
【0098】
酸性リン酸エステルとしては、ZelecUN(STEPAN社製)、MR用内部離型剤(三井化学社製)、城北化学工業社製のJPシリーズ、東邦化学工業社製のフォスファノールシリーズ、大八化学工業社製のAP、DPシリーズ等を用いることができ、ZelecUN(STEPAN社製)、MR用内部離型剤(三井化学社製)、城北化学工業社製のJPシリーズがより好ましい。
【0099】
[その他の成分]
本工程においては、本実施形態における光学材料が長期間外部に曝されても変質しないようにするために、さらに紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系光安定剤を添加することができる。
【0100】
上記紫外線吸収剤は特に限定はされず、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、プロパンジオック酸エステル系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤等の種々の紫外線吸収剤を用いることができる。
【0101】
本工程においては、後述するように、フォトクロミック化合物(iii)以外にも、重合体(ii)から構成されるミクロ相分離構造体に内包される物質を添加することができる。そのような物質としては、金属微粒子等を挙げることができる。
ミクロ相分離構造体は、組成物中では凝集し易い物質の分散剤としての効果を発揮することもできる。
【0102】
本工程においては、さらに必要に応じて、赤外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、重合禁止剤、調光ではない色素および染料、バインダー、分散剤、消泡剤、レベリング剤、ナノメートルサイズの有機または無機粒子等のさまざまな添加剤を加えても良い。
【0103】
<工程B>
工程Bにおいては、工程Aで得られた混合液に、さらにポリチオール化合物(v)を混合する。
【0104】
本工程は、ポリチオール化合物(v)を混合することができれば、その添加方法は特に限定されず、一括添加、分割添加、連続添加等により添加することができる。また、混合方法は特に限定されず、従来公知の方法で混合することができ、公知の手段で攪拌する方法等を採用することができる。
【0105】
本工程において、混合する際の温度は工程Aと同一でも異なっていてもよく、10~25℃の範囲から適宜選択される。攪拌時間は、ポリチオール化合物(v)が混合されれば特に限定されず、通常、1時間以内である。
【0106】
[ポリチオール化合物(v)]
本実施形態において、ポリチオール化合物(v)は、メルカプト基を2個以上有する化合物であり、本発明の効果を得ることができれば特に限定されず様々な化合物を用いることができる。
【0107】
本実施形態におけるポリチオール化合物(v)としては、例えば、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;
2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物;等を挙げることができ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
本実施形態におけるポリチオール化合物(v)としては、本発明の効果の観点から、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、および2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタンから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0109】
ポリチオール化合物(v)とポリイソシアネート化合物(i)の使用割合は、特に限定されないが、通常、モル比がSH基/NCO基=0.5以上3.0以下の範囲内、好ましくは0.6以上2.0以下、さらに好ましくは0.8以上1.3以下の範囲内である。使用割合が上記範囲内であると、プラスチックレンズ等の光学材料および透明材料として求められる屈折率、耐熱性等の種々の性能をバランスよく満たすことができる。
【0110】
[その他の成分]
本工程においては、ポリチオール化合物(v)以外に、ブルーイング剤等を添加することができる。
【0111】
<工程C>
工程Cにおいては、工程Bで得られた混合液に、さらに重合触媒(vi)を混合する。
重合触媒(vi)は、光学材料用重合性組成物中に120~500ppm、好ましくは150~500ppm、さらに好ましくは200~500ppm、より好ましくは200~400ppm、特に好ましくは200~300ppm含まれるように添加される。
【0112】
上記の条件で混合することにより、透明性に優れ、微細な凝集物の生成や光学歪みの発生が抑制された、優れたフォトクロミック性能を備える光学材料を得ることができる。
【0113】
重合触媒(vi)を混合する方法は特に限定されず、従来公知の方法で行うことができ、公知の手段で攪拌する方法等を採用することができる。重合触媒(vi)は、当該重合触媒(vi)とポリイソシアネート化合物(i)とのプレミックスにより添加することが好ましい。なお、本実施形態におけるポリイソシアネート化合物(i)の使用全量は、プレミックスに用いられるポリイソシアネート化合物(i)の量を含む。
【0114】
本工程において、混合する際の温度は工程Aと同一でも異なっていてもよく、10~25℃の範囲から適宜選択される。攪拌時間は、重合触媒(vi)が混合されれば特に限定されず、通常、1時間以内である。
【0115】
[重合触媒(vi)]
重合触媒(vi)は、本発明の効果を得ることができれば特に限定されず様々な化合物を用いることができる。
【0116】
本実施形態において、重合触媒(vi)としては、ルイス酸、アミン、3級アミン化合物およびその無機酸塩または有機酸塩、金属化合物、4級アンモニウム塩、または有機スルホン酸等を挙げることができる。
【0117】
重合触媒(vi)として用いられる金属化合物としては、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート等を挙げることができる。
重合触媒(vi)は、当該重合触媒(vi)とポリイソシアネート化合物(i)とのプレミックスにより添加することが好ましい。なお、本実施形態におけるポリイソシアネート化合物(i)の使用全量は、プレミックスに用いられるポリイソシアネート化合物(i)の量を含む。
【0118】
上述の工程により得られた本実施形態の光学材料用重合性組成物は、必要に応じて減圧脱泡を行うこともできる。
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、
ポリイソシアネート化合物(i)と、
下記一般式(ii)で表される重合体(ii)と、
フォトクロミック化合物(iii)と、
内部離型剤(iv)と、
ポリチオール化合物(v)と、
重合触媒(vi)と、を含む。
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、内部離型剤(iv)を500~3000ppm、好ましくは500~1000ppmの量で含み、かつ重合触媒(vi)を120~500ppm、好ましくは150~500ppm、さらに好ましくは200~500ppm、より好ましくは200~400ppm、特に好ましくは200~300ppmの量で含む。
本実施形態の光学材料用重合性組成物によれば、透明性に優れ、微細な凝集物の生成や光学歪みの発生が抑制された、優れたフォトクロミック性能を備える光学材料を提供することができる。
【0119】
<成形体およびその用途>
本実施形態においては、上述の光学材料用重合性組成物を重合させる際のモールド形状を変えることにより種々の形状の成形体およびかかる成形体からなる光学材料を得ることができる。本実施形態の成形体は、所望の形状とし、必要に応じて形成されるコート層や他の部材等を備えることにより、様々な光学材料として用いることができる。
【0120】
本実施形態の硬化体は、重合体(ii)からなるミクロ相分離構造体と、フォトクロミック化合物(iii)と、ポリイソシアネート化合物(i)およびポリチオール化合物(v)が重合したチオウレタン樹脂と、を主要な成分として含む。ミクロ相分離構造体としては、重合体(ii)から構成されるミクロ相分離構造を備える重合体粒子(ミセル状粒子)等が挙げられる。ミクロ相分離構造体を含む成形体は、フォトクロミック特性、耐熱性および機械物性に優れた光学材料を提供することができる。
なお、フォトクロミック化合物(iii)の少なくとも一部が重合体(ii)から構成されるミクロ相分離構造体に内包されていてもよく、この場合、フォトクロミック特性や機械物性に特に優れる。
【0121】
ミクロ相分離構造体である重合体粒子は、その体積50%平均粒子径が1nm以上1000nm以下である。当該構造は透過型電子顕微鏡により確認することができる。
【0122】
(ミクロ相分離構造)
ミクロ相分離構造とは以下のように説明される。ブロックコポリマーは共有結合を介してつながった複数の異なるコポリマー部位からなるポリマーである。このコポリマー部位は互いに異なる物性や親和性を有している。たとえば両親媒性のブロックコポリマーに関しては、強力な反発力のためにコポリマー部位はそれぞれ分離する傾向にあり、水と油のように混ざらず、そのため相分離を引き起こす。しかし、それぞれのコポリマー部位が化学的に結合しているために単純に二種類のホモポリマーを混合した場合のように完全に巨視的な相分離は引き起こされない。一方、AとBの異なるコポリマー部位からなるブロックコポリマーのミクロ相分離においてはコポリマーAに富んだ部位とコポリマーBに富んだ部位のミクロ集合体を形成する。この結果、ブロックコポリマーの構造に依存して、ナノサイズの球状ポリマーミセルのようないくつかのモルフォロジーが観察されうる。このようなブロックコポリマーのミクロ相分離の詳細に関しては、例えば参考文献(Chem. Soc. Rev., 2012, 41, 5969-5985)中に述べられている。ミクロ相分離構造を備える重合体粒子のようなミクロ相分離構造体を含むことで、濁りの少ない透明な硬化体を得ることができる。
【0123】
光学材料としては、プラスチックレンズ、発光ダイオード(LED)、プリズム、光ファイバー、情報記録基板、フィルター等を挙げることができる。特に、プラスチックレンズとして好適である。
以下、本実施形態の成形体からなるプラスチックレンズについて説明する。プラスチックレンズは以下のように製造することができる。
【0124】
<プラスチックレンズの製造方法>
本実施形態のプラスチックレンズの製造方法は、上述の光学材料用重合性組成物を調製する工程と、
得られた前記光学材料用重合性組成物を注型重合することによりレンズ基材を形成する工程を含む。
【0125】
レンズ基材を形成する工程においては、得られた本実施形態の組成物をガラスモールドとガスケットまたはテープからなるキャビティーに注入し、加熱することにより、重合硬化せしめて、樹脂からなるプラスチックレンズ基材が製造される。当該工程により、重合反応性化合物(ポリイソシアネート化合物(i)およびポリチオール化合物(v))が重合して樹脂を形成するとともに重合体(ii)がミクロ相分離構造体を形成し、前記樹脂と前記ミクロ相分離構造体とフォトクロミック化合物(iii)とからなるレンズ基材を得ることができる。
加熱によりレンズ基材を製造する場合、対流による重合不均一(脈理)を防止する目的で、加熱は、通常、低温から徐々に昇温して重合される。
【0126】
重合条件については、光学材料用重合性組成物、触媒の種類と使用量、モールドの形状等によって大きく条件が異なるため限定されるものではないが、およそ、-50~150℃の温度で1~50時間かけて行われる。場合によっては、10~150℃の温度範囲で保持または徐々に昇温して、1~25時間で硬化させることが好ましい。
【0127】
モールドから離型して得られたプラスチックレンズ基材は、重合完結化または残留応力による歪を取り除く目的等で、必要に応じて再加熱処理(アニーリング)を行ってもよい。
【0128】
こうして得られた樹脂からなるプラスチックレンズ基材は、その表面に、ハードコート、反射防止コート、調光コート、滑り性付与コートまたは滑り性付与処理、および帯電防止コート等の機能性コート層等設けたり、ファッション性付与のための染色処理を行ったり、表面およびエッジの研磨等の処理を行ったり、さらには偏光性を付与する目的で偏光フィルムを内部に入れたり表面に貼り付けたり様々な機能性を付与する加工等を行ってもよい。
【0129】
さらにそれら機能性コート層と基材との密着性を向上させる等の目的で、得られた本実施形態の硬化樹脂およびその樹脂からなるプラスチックレンズの表面を、コロナ処理、オゾン処理、酸素ガスもしくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等による酸化処理、火炎処理等の物理的または化学的処理を施すこともできる。
【0130】
またこれら処理に替えてあるいはこれら処理に加えて、本実施形態の硬化樹脂およびその樹脂からなるプラスチックレンズの表面と上記の物理的または化学的処理等によって形成された最外層(大気接触面)との間に、プライマー処理、アンダーコート処理、アンカーコート処理等により形成されたプライマー層を設けてもよい。
【0131】
本実施形態の硬化樹脂はプラスチックレンズ以外に応用しても差支えなく、プラスチックレンズ以外の用途を挙げるならば、たとえば、平面モールドを使用してプラスチックレンズと同様に製造されるシートおよびフィルム等が挙げられる。本実施形態の硬化樹脂からなるシートおよびフィルム等は、それらの表面をプラスチックレンズと同様に物理的または化学的に処理されていてもよく、また、前述したプライマー層および物理的または化学的処理等によって形成された機能性の最外層(大気接触面)が積層されていてもよい。
【0132】
本実施形態の硬化樹脂からなるプラスチックレンズは、上述の物理的または化学的処理等によって形成された機能性の最外層(大気接触面)と硬化樹脂表面との間に上記プライマー層を含む積層体であってもよい。
【0133】
こうして得られる本実施形態のプラスチックレンズは、メガネレンズ、カメラレンズ、ピックアップレンズ、フルネルレンズ、プリズムレンズ、およびレンチキュラレンズ等様々なレンズ用途に使用できる。それらの中でも特に好ましい用途として、表面が平滑なメガネレンズ、カメラレンズ、およびピックアップレンズが挙げられる。
【0134】
同様に得られる本実施形態のシートおよびフィルムは、フラットパネル、スマートフォンパネル等の表示部材、飛散防止フィルム、特定波長カットフィルム、加飾用フィルム等のフィルム部材、建材窓ガラス、車両窓ガラス、鏡等のガラス代替部材等、高い透明性を要求される様々な平面部材用途として使用できる。
【実施例
【0135】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、硬化樹脂からなる成形体の評価は以下の方法により実施した。
【0136】
・透明性:成形体の透明度を評価する分析項目として失透度を採用した。失透度は、以下の手順により得た。厚さ9mm、φ75mmの円形平板の成形体に光源(HAYASHI社製Luminar Ace LA-150A)を照射し、濃淡画像装置で測定を行う。捉えた画像を濃淡画像処理により数値化し、失透度を得た。以下の基準で透明性を評価した。
○:失透度が100以下であり透明性に優れる。
×:失透度が100を超え透明性に劣る。
・微細な凝集物(レンズ内部に粒状に存在し光源により確認される不良):目視にて微細な凝集物の有無を評価した。
・脈理:レンズを超高圧水銀灯(光源型式OPM-252HEG:ウシオ電機社製)で投影し、透過した像を目視にて脈理の有無を評価した。
【0137】
[実施例1]
事前に2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンを含む組成物9.8重量部に、フォトクロミック化合物としてVivimed社製Reversacol Wembley Greyを0.035重量部、Vivimed社製Reversacol Heath Greenを0.058重量部、Vivimed社製 Peacock Blue 0.029重量部, およびVivimed社製 Jalapeno Red 0.023重量部、紫外線吸収剤としてHOSTAVIN PR-25を0.073重量部を溶解し、マスター液を準備した。2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンを含む組成物30.25重量部に、得られたマスター液10重量部を加えて攪拌し、そこにアデカ社製アデカプルロニックL-64を2.52重量部、酸性リン酸エステルとして城北化学工業社製JP-506Hを0.1重量部、をそれぞれ加えて、15℃~20℃の間で30min攪拌した(混合工程A)。
混合工程Aで得られた混合液に、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を19.98重量部、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを27.25重量部、それぞれ加えて15℃~20℃の間で15min攪拌した(混合工程B)。
事前に2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタンを含む組成物10重量部に、ジメチルチンジクロリドを0.02重量部加え、均一に溶解させて溶液を作成した。この溶液を、混合工程Bで得られた混合液に加えて15℃~20℃の間で15min攪拌し、重合性組成物を得た(混合工程C)。
その後、重合性組成物を、400Pa以下の減圧環境下・15℃~20℃の間で1H 攪拌・脱気を行った後、1.0μmのPTFEフィルターを使用してろ過を行い、この重合性組成物をガラスモールドへ注型した。重合性組成物を10℃~130℃の範囲で48時間かけて重合させた後、炉から成形型を取り出し、成形型をはずして、重合して得られた成形体を取り出した。
成形体は無色透明であり、太陽光線下に置くと直ちに発色し、光線を遮断すると消色するという良好な調光性能を有するものであった。さらに、成形体には、微細な凝集物および脈理が確認されなかった。得られた成形体の評価結果を表-1に示す。
【0138】
[実施例2~6]
工程Aにおいて、攪拌時間、離型剤の種類、離型剤の添加量、工程Cにおいて重合触媒の添加量を表-1のように適宜変更した以外は、実施例1と同様に重合性組成物および成形体を作成した。
成形体は無色透明であり、太陽光線下に置くと直ちに発色し、光線を遮断すると消色するという良好な調光性能を有するものであった。さらに、成形体には、微細な凝集物および脈理が確認されなかった。得られた成形体の評価結果を表-1に示す。
【0139】
[比較例1~6]
工程Aにおいて攪拌時間、離型剤の添加量、工程Cにおいて重合触媒の添加量、さらに重合体(ii)(アデカ社製アデカプルロニックL-64)を添加する工程を表-1のように適宜変更した以外は、実施例1と同様に重合性組成物および成形体を作成した。
成形体は、太陽光線下に置くと直ちに発色し、光線を遮断すると消色するという良好な調光性能を有するものであった。しかしながら、成形体は透明性に劣り、微細な凝集物および脈理が確認された。得られた成形体の評価結果を表-1に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
この出願は、2019年1月30日に出願された日本出願特願2019-013922号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。