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特許7105929耐火性製品、この製品を製造するためのバッチ、この製品を製造する方法、及びこの製品の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】耐火性製品、この製品を製造するためのバッチ、この製品を製造する方法、及びこの製品の使用
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/043 20060101AFI20220715BHJP
   C04B 35/628 20060101ALI20220715BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C04B35/043
C04B35/628 070
F27D1/00 N
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020569893
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2019064060
(87)【国際公開番号】W WO2020038620
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】18189903.0
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503069193
【氏名又は名称】リフラクトリー・インテレクチュアル・プロパティー・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・リンカー
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ・テルセール
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ・ニーフォル
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ガイト
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-042854(JP,A)
【文献】特開平02-180746(JP,A)
【文献】特開2002-308667(JP,A)
【文献】特開平05-279113(JP,A)
【文献】特表2017-525639(JP,A)
【文献】米国特許第5573987(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/043
C04B 35/628
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の酸化物がそれぞれ以下の割合で存在する化学組成:
MgO:少なくとも92質量%
Al:1.5~7質量%
Fe:3質量%未満
CaO+SiO:1~3質量%
有し、さらに、
なくとも2mmの粒径を有し、かつ、
グネシアからなり、その表面が、少なくとも部分的にマグネシアスピネル被覆を有する、
覆粒子を含む、耐火性製品。
【請求項2】
MgOの割合が92~96質量%の範囲にある化学組成を有する、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
Alの割合が2~3.5質量%の範囲にある化学組成を有する、請求項1又は2に記載の製品。
【請求項4】
Feの割合が1質量%未満である化学組成を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の製品。
【請求項5】
40GPa未満の動的弾性係数を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の製品。
【請求項6】
1,700℃超の荷重軟化点の温度T0.5を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の製品。
【請求項7】
マグネシアスピネル被覆が10~500μmの範囲の厚さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の製品。
【請求項8】
被覆粒子が3~5mmの範囲の粒径を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の製品。
【請求項9】
被覆粒子を5~24質量%の範囲の割合で含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の製品。
【請求項10】
5~24質量%の範囲の割合の被覆粒子を含み、更に76~95質量%の範囲の割合のマグネシアを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の製品。
【請求項11】
成形されて焼成された耐火性セラミック製品の形態の、請求項1から10のいずれか一項に記載の製品。
【請求項12】
以下の成分:
マグネシア粒子からなる第1の原料成分;
なくとも2mmの粒径を有し、かつ、
グネシアからなり、その表面が、少なくとも部分的にアルミナ被覆を有する
覆粒子からなる第2の原料成分;
を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の製品を製造するためのバッチ。
【請求項13】
被覆粒子が3~5mmの範囲の粒径を有する、請求項12に記載のバッチ。
【請求項14】
以下の工程:
請求項12又は13に記載のバッチを用意する工程、
バッチを成形して、成形された未焼成の耐火性製品にする工程、
成形された未焼成の耐火性製品を焼成して、成形されて焼成された耐火性セラミック製品にする工程
を含む、請求項11に記載の製品を製造する方法。
【請求項15】
セメントロータリーキルンの内張りのための、請求項1から11のいずれか一項に記載の製品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性製品、この製品を製造するためのバッチ、この製品を製造する方法、及びこの製品の使用に関する。
【0002】
本発明の意味合いでの「耐火性製品」という用語は、特に、600℃超の使用温度を有する耐火性製品、好ましくは、DIN51060:2006に準拠した耐火性材料、すなわち、SK17超の耐火度を有する材料を指す。耐火度は、DIN EN993-12:1997-06に準拠して決定することができる。
【0003】
「バッチ」とは、温度処理により、すなわち、特に例えば炉内での焼成により耐火性製品を製造することが可能な、1つ又は複数の成分又は原料からの組成物を指すと知られている。そのような温度処理は、特にセラミック焼成により行うことができ、それにより、焼結された耐火性セラミック製品をバッチから製造することができる。
【0004】
耐火性製品を製造するための成分は、通常、金属酸化物ベースの原料の形態で存在する。耐火性製品を製造するための一般的な原料はマグネシアであり、これは、金属酸化物である酸化マグネシウム(MgO)をベースとする。マグネシアの形態の原料は、例えば、焼結マグネシア又は溶融マグネシアの形態にあり得る。
【0005】
また、マグネシアの形態の原料をベースとして製造されたそのような耐火性製品は、マグネシア製品と称されるか、又はこれらの製品が成形製品である場合、マグネシア石と称される。
【0006】
MgOの高い融点を理由に、耐火性マグネシア製品は、高い高温強度を有する。更に、マグネシア製品は、その塩基性特性から、塩基性の攻撃、すなわち、例えば製鉄所のスラグ又はセメントロータリーキルン内のセメントクリンカーの塩基性の攻撃に対して、優れた耐久性を有する。
【0007】
しかしながら、そのような耐火性マグネシア製品は、MgOの熱膨張率が高いことを理由に、熱応力に対して敏感性が高い。熱応力に対するこの敏感性は、そのような耐火性マグネシア製品の比較的低い構造弾性と、相応して高い弾性係数(E係数)とに現れる。
【0008】
熱応力に対する耐火性マグネシア製品の敏感性を低下させるために、耐火性マグネシア製品の弾性係数を改善することが可能な特定の成分を耐火性マグネシア製品に組み込むことが知られている。特に、耐火性マグネシア製品の弾性係数を改善するために、これらがマグネシアスピネル(MgO・Al)の割合を含むことが公知である。マグネシア製品中のそのような割合のマグネシアスピネルは、熱応力に対するマグネシア製品の敏感性を低下させ、それらの弾性又は構造弾性を改善することができ、これは、特に弾性係数が低下されていることに現れる。
【0009】
MgOに加えてマグネシアスピネルもマグネシア製品中に形成するために、すでに予備合成されたマグネシアスピネルを、マグネシア製品を製造するためのバッチに原料として添加してもよい。或いは、焼成中にAlとMgOとからマグネシアスピネルが形成されるように、Alをベースとする原料をバッチに添加してもよい。このプロセスは、マグネシアスピネルのいわゆる「インサイチュ形成」としても公知である。
【0010】
マグネシアスピネルは、前述のように、マグネシアをベースとする耐火性製品の弾性に有利な効果をもたらすものの、Alは、耐火性製品の高温強度に不利な影響を与える可能性がある。例えば、マグネシア原料の二次成分として製品に添加されるCaOを有するAlは、低融点のアルミン酸カルシウム相を形成する可能性があり、それにより、製品の高温強度が大幅に低下する可能性がある。更に、Al、CaO、及びSiOの割合が互いに特定の比にある場合、低融点のケイ酸アルミン酸カルシウム相が形成される可能性がある。最後に、耐火性マグネシア製品中のAl含有量が増えると、塩基性の攻撃に対するその耐久性が低下する可能性がある。例えば、耐火性マグネシア製品中のAl含有量が高いほど、セメントロータリーキルン内のクリンカー溶融浸透を理由としたクリンカー溶融物による攻撃のリスクが上がる。
【0011】
したがって、一般に、マグネシアをベースとする耐火性製品では、Al含有量が増えると、製品の弾性は改善されるものの、塩基性の攻撃に対するその耐久性及びその高温強度が低下すると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、良好な弾性挙動と同時に高い高温強度との双方を有する、マグネシアをベースとする耐火性製品を提供するという課題に基づく。
【0013】
更に、本発明は、良好な弾性挙動と、同時に高い高温強度及び塩基性の攻撃に対する耐久性との双方を有する、マグネシアをベースとする耐火性製品を提供するという課題に基づく。
【0014】
本発明のさらなる課題は、そのような製品を製造するためのバッチを提供することである。
【0015】
本発明のさらなる課題は、そのような製品を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によると、以下の特徴:
耐火性製品が、以下の酸化物がそれぞれ以下の割合で存在する化学組成:
MgO:少なくとも92質量%、
Al:1.5~7質量%、
Fe:3質量%未満、
CaO+SiO:1~3質量%
を有すること;
耐火性製品が、以下の特徴:
被覆粒子が、少なくとも2mmの粒径を有すること、
被覆粒子が、マグネシアからなり、その表面は、少なくとも部分的にマグネシアスピネル被覆を有すること
を備えた被覆粒子を含むこと;
を備えた、耐火性製品が提供される。
【0017】
驚くべきことに、本発明により、この製品が前述の化学組成を有しかつ同時に前述の被覆粒子を含む限り前述の課題を解決することが可能な、マグネシアをベースとする耐火性製品を提供することができると見出された。
【0018】
本発明による製品の化学組成を特徴付ける、本明細書で与えられる質量%での数値は、個々の場合で別段の記載がない限り、それぞれ本発明による製品の総質量を基準とする。
【0019】
本発明による製品中の酸化物の割合及び本明細書に記載の強熱減量(LOI)、すなわち、本発明による製品の化学組成及び強熱減量は、DIN EN ISO12677:2013-02に準拠したX線蛍光分析(XRF)により決定される。
【0020】
本発明の本質的な態様は、本発明による製品が、少なくとも2mmの粒径を有し、かつマグネシアからなり、その表面が少なくとも部分的にマグネシアスピネル被覆を有する、被覆粒子を含むことである。本発明による耐火性製品にそのような被覆粒子を備えることは、本発明によるいくつかの発見に基づく。ある発見によると、マグネシアからなり、その表面が少なくとも部分的にマグネシアスピネル被覆を有する、被覆粒子は、マグネシアに基づく耐火性製品中におけるその弾性特性について、マグネシアスピネル無垢粒子、すなわち、完全にマグネシアスピネルからなる粒子と同様の弾性効果を発揮することが分かった。更に、本発明によると、マグネシアスピネル無垢粒子の効果に実質的に相応する弾性効果がそのような被覆粒子により達成可能であるが、マグネシアスピネルのみで被覆されたマグネシア粒子は、マグネシアスピネル無垢粒子により導入されるよりもかなり少ない割合のAlを製品中に導入する可能性をもたらすことが確認された。しかしながら、製品へのAlの導入が低減されるのであれば、高温強度及び塩基性の攻撃に対する製品の耐久性へのAlの不利な影響も低減される。
【0021】
更に、本発明者等は、驚くべきことに、製品中の被覆粒子の前述の有利な効果は、被覆粒子が少なくとも2mmの粒径を有する場合にのみ、特別な程度で発揮されることを確認した。この効果が何に基づいているのかは、詳細には明らかにされていない。本発明者等は、被覆粒子の弾性効果は、2mm超の粒径になって初めて特別な程度で生じると考えている。更に、本発明者等は、(マグネシアスピネル被覆の厚さが同じままである場合)少なくとも2mm超の被覆粒子の粒径で、被覆粒子のAlに対するMgOの質量比が、MgOの質量分率にとって有利にシフトし、それにより、被覆粒子が、少なくとも2mm超で初めて、被覆粒子の十分な弾性効果と同時に、製品中のAlの本発明による低い割合を実現することを可能にすると考えている。
【0022】
本発明によると、被覆粒子が3~5mmの範囲の粒径を有する場合に、被覆粒子がそれらの最良の弾性効果を発揮し、同時に少量のAlしか製品に導入されないことが分かった。したがって、本発明の一実施形態によると、被覆粒子は、2~5mmの範囲の粒径を有することが意図されており、特に好ましい実施形態によると、被覆粒子は、3~5mmの範囲の粒径を有することが意図されている。
【0023】
被覆粒子は、マグネシアからなり、その表面は、少なくとも部分的にマグネシアスピネル被覆を有する。
【0024】
被覆粒子のマグネシアが部分的にマグネシアスピネル被覆を有することで、被覆粒子のマグネシアは、マグネシアスピネルで完全に又は部分的に被覆された状態にあり得る。被覆粒子のマグネシアの表面が、マグネシアスピネル被覆を完全に有する場合、マグネシアスピネルは、マグネシアを完全に取り囲み、すなわち、マグネシアが「コア」のように内在する外被又はシェルのようになる。マグネシアがマグネシアスピネル被覆を部分的にのみ有する場合、マグネシアスピネル被覆は、例えば、空白若しくは隙間を有し得るか、又は被覆粒子のマグネシアは、例えば、同様に部分的にのみ、すなわち、互いに分離された部分若しくは領域の形にて、マグネシアスピネルで被覆された状態にあり得る。好ましくは、被覆粒子のマグネシアの表面は、マグネシアの表面の面積の少なくとも50%にわたり、マグネシアスピネル被覆を有する。しかしながら、特に好ましくは、被覆粒子のマグネシアの表面は、マグネシアスピネル被覆をかなり大部分に又は完全に有する。本発明によると、マグネシアスピネルで完全に被覆されたマグネシア粒子は、製品において特に強い弾性効果を発揮することが分かった。
【0025】
マグネシアスピネル被覆は、好ましくは10~500μmの範囲の厚さ、特に好ましくは25~400μmの範囲の厚さを有する。本発明によると、そのような厚さのマグネシアスピネル被覆を有する被覆粒子により、一方では本発明による製品において良好な弾性効果が発揮可能であり、かつ同時に、(マグネシアスピネル被覆からの)Alに対する(被覆されるマグネシアと、マグネシアスピネル被覆中のMgOの割合とからの)MgOの質量比が、比較的少ない割合のAlしか本発明による製品に導入され得ないほどに高く、同時に被覆粒子の弾性効果が良好であることが分かった。
【0026】
マグネシアスピネル被覆は、被覆されるマグネシアと直接接触していても、又は隙間によりマグネシアから完全に若しくは部分的に分離されていてもよい。更に、マグネシアスピネル被覆は、単層又は複数層で構成されていてもよい。マグネシアスピネル被覆が複数層で構成されている場合、マグネシアスピネルからのこれらの複数層は、例えば、隙間により互いに完全に又は部分的に分離されていてもよい。
【0027】
従来技術における一般的な定義によると、被覆粒子の粒径には、外側の粒子周囲、すなわち、被覆粒子の外側の粒子境界に沿った周囲が関連する。よって、マグネシアスピネルからの複数層被覆の場合、最も外側の被覆の外周が関連する。被覆粒子の粒径は、DIN EN ISO13383-1:2016-11に従って決定される。
【0028】
被覆粒子のマグネシアからのコアは、主にマグネシア(MgO)からなり、その際、MgOに加えて、マグネシア中には、一般に原料を通じて耐火性製品に導入される一般的な二次酸化物及び不純物、すなわち、例えば、CaO、SiO、Al、又はFeの形態の二次酸化物が存在する可能性がある。ただし、これらは、原則的に、マグネシアの質量を基準として10質量%未満である。被覆粒子のマグネシアスピネル被覆は、マグネシアスピネル、すなわち、本物のスピネル又はマグネシア-アルミナ-スピネル(MgO・Al又はMgAl)からなる。マグネシアスピネル被覆のマグネシアスピネルは、好ましくは化学量論マグネシアスピネルの形態にある。また、被覆は、マグネシアスピネルに加えて、一般に使用される原料を通じて耐火性製品に導入される一般的な不純物及び二次酸化物、すなわち、特に、CaO、SiO、及びFeを有し得る。
【0029】
本発明によると、製品が被覆粒子を5~24質量%の範囲の割合で含む場合に、被覆粒子がそれらの弾性効果を特に有利に発揮することができ、同時に少量のAlが製品に導入されることが分かった。したがって、一実施例によると、製品が、被覆粒子を5~24質量%の範囲の割合で含むことが意図されている。本発明によると、被覆粒子が10質量%の範囲の割合に近似していくほど、被覆粒子のこれらの有利な効果が更に改善され得ることが分かった。したがって、更に好ましい実施形態によると、製品は、被覆粒子を、3~20質量%の範囲の割合で、より好ましくは5~15質量%の範囲の割合で、極めて特に好ましくは7~15質量%の範囲の割合で含むことが意図されている。本発明による製品中の被覆粒子の質量%でのこれらの割合は、それぞれ本発明による製品の総質量を基準とする。
【0030】
本発明による製品は、MgOが少なくとも92質量%の質量分率で製品中に存在する化学組成を有する。本発明によると、MgOの割合が93.5~96質量%の範囲の割合に近似していく化学組成を本発明による製品が有する限り、本発明による製品の特性が、その弾性及びその高温強度について改善されていくことが分かった。弾性についてのこれらの改善された特性は、弾性係数が低下していくことにより示され、高温強度についての特性が改善されていくことは、T0.5値が増加していくことにより示される。この点に関して、好ましい実施例によると、本発明による製品は、MgOの割合が92質量%~97.5質量%の範囲にある、より更に好ましくは割合が92質量%~96質量%の範囲にある、より更に好ましくは割合が93質量%超~96質量%の範囲にある、より更に好ましくは割合が93.5質量%~96質量%の範囲にある化学組成を有することが意図されている。
【0031】
本発明による製品は、Alの割合が1.5~7質量%の範囲にある化学組成を有する。本発明によると、Alの割合が2~3.5質量%の範囲の割合に近似していく化学組成を本発明による製品が有する限り、本発明による製品の特性が、その弾性(こちらは弾性係数により示される)及びその高温強度(T値により示される)について改善されていくことが分かった。この点に関して、好ましい実施形態によると、本発明による製品は、Alの割合が1.5~5質量%の範囲にある、より更に好ましくは割合が1.5~3.5質量%の範囲にある、より更に好ましくは割合が2~3.5質量%の範囲にある化学組成を有することが意図されている。
【0032】
本発明による製品は、Feの割合が3質量%未満である化学組成を有する。本発明によると、Feの割合が1質量%未満の割合、特に0.1質量%~1質量%未満の範囲の割合に近似していく化学組成を本発明による製品が有する限り、本発明による製品の特性が、その高温強度(T値により示される)について改善されていくことが分かった。この点に関して、好ましい実施形態によると、本発明による製品が、Feの割合が2質量%未満、より更に好ましくは割合が1質量%未満、より更に好ましくは割合が0.1質量%~1質量%未満である化学組成を有することが意図されている。
【0033】
本発明による製品は、CaO+SiOの割合が1~3質量%の範囲にある化学組成(すなわち、これらの2つの酸化物の総質量の割合を有する化学組成)を有する。本発明によると、CaO+SiOの割合が2~3質量%の範囲の割合に近似していく化学組成を本発明による製品が有する限り、本発明による製品の特性が、その弾性(弾性係数により示される)及びその高温強度(T値により示される)について改善されていくことが分かった。この点に関して、好ましい実施形態によると、本発明による製品は、CaO+SiOの割合が2~3質量%の範囲にある化学組成を有することが意図されている。本発明によると、製品中のCaO及びSiOがそのような割合の場合、製品の高温強度を損なう可能性のある低融点のケイ酸アルミン酸カルシウム相が、全く形成されないか、又はわずかな割合でしか形成されないことが分かった。
【0034】
更に好ましくは、製品の高温強度を改善するために、製品におけるSiOに対するCaOの質量比は、少なくとも2、特に好ましくは2超であることが意図されている。好ましい実施形態によると、製品におけるSiOに対するCaOの質量比は、2超であり、最大2.8である。
【0035】
好ましい実施形態によると、本発明による製品は、以下の酸化物がそれぞれ以下の割合で存在する化学組成:
MgO:92~97.5質量%
Al:1.5~7質量%
Fe:3質量%未満
CaO+SiO:1~3質量%
を有することが意図されている。
【0036】
より好ましい実施形態によると、本発明による製品は、以下の酸化物がそれぞれ以下の割合で存在する化学組成:
MgO:92~96質量%
Al:1.5~5質量%
Fe:2質量%未満
CaO+SiO:1~3質量%
を有することが意図されている。
【0037】
より好ましい実施形態によると、本発明による製品は、以下の酸化物がそれぞれ以下の割合で存在する化学組成:
MgO:93~96質量%
Al:1.5~3.5質量%
Fe:1質量%未満
CaO+SiO:1~3質量%
を有することが意図されている。
【0038】
より更に好ましい実施形態によると、本発明による製品は、以下の酸化物がそれぞれ以下の割合で存在する化学組成:
MgO:93.5~96質量%
Al:2~3.5質量%、
Fe:1質量%未満
CaO+SiO:1~3質量%
を有することが意図されている。
【0039】
本発明によると、酸化物MgO、Al、Fe、及びCaO+SiOに加えて本発明による耐火性製品中に存在するさらなる酸化物があると、製品の弾性及び高温強度に悪影響を与え得ることが分かった。この点に関して、好ましい実施形態によると、本発明による耐火性製品は、酸化物MgO、Al、Fe、及びCaO+SiOが、総質量少なくとも99質量%の割合で、より更に好ましくは総質量少なくとも99.5質量%の割合で本発明による製品中に存在する、化学組成を有することが意図されている。
【0040】
酸化物MgO、Al、Fe、及びCaO+SiOに加えて、本発明による製品は、特に原料を通じて外来酸化物又は不純物として耐火性製品に導入されたさらなる酸化物、例えば、酸化物MnO、NaO又はKOを有し得る。
【0041】
この点に関して、本発明による耐火性製品は、酸化物MgO、Al、Fe、及びCaO+SiOに加えて製品中に存在するさらなる酸化物が、総質量0~1質量%の範囲の割合で、より更に好ましくは総質量0~0.5質量%の範囲の割合で製品中に存在する、化学組成を有し得る。
【0042】
本発明によると、その弾性及びその高温強度の双方についての本発明による製品の特性は、酸化物の互いの質量比に応じ得ることが分かった。
【0043】
Feに対するAlの質量比が、1超、より好ましくは2超、より好ましくは3超である化学組成を本発明による製品が有する場合、本発明による製品の特性を、その弾性及びその高温強度について改善することができると分かった。酸化物Feに対するAlの質量比は、特に好ましくは3~8の範囲にあり、より好ましくは4~8の範囲にある。
【0044】
本発明による耐火性製品の鉱物学的組成について、酸化物Alは、好ましくは、主にマグネシアスピネル(MgO・Al)の形態で存在する。更に、本発明による耐火性製品のMgOは、好ましくは、主にペリクレース(MgO)及びマグネシアスピネル(MgO・Al)の形態で存在する。
【0045】
好ましくは、本発明による製品は、ペリクレースが89~97質量%の範囲の割合で存在し、かつマグネシアスピネルが2~10質量%の範囲の割合で存在する鉱物学的組成を有する。より好ましくは、本発明による製品は、ペリクレースが92~97質量%の範囲の割合で存在し、かつマグネシアスピネルが2~7質量%の範囲の割合で存在し、より好ましくは、ペリクレースが94~97質量%の範囲の割合で存在し、かつマグネシアスピネルが2~5質量%の範囲の割合で存在し、より好ましくは、ペリクレースが94~96質量%の範囲の割合で存在し、かつマグネシアスピネルが3~5質量%の範囲の割合で存在する、鉱物学的組成を有する。更に好ましくは、本発明による製品は、特に鉱物相であるペリクレース及びマグネシアスピネルの上記の割合と組み合わせて、鉱物相であるケイ酸二カルシウムが0.5~2質量%の範囲の割合で存在する鉱物学的組成を有し得る。質量%で示される数値は、それぞれ本発明による製品の総質量を基準とする。鉱物学的組成は、DIN EN13925-2:2003-07に準拠してX線回折法により定性的に決定され、その際、製品の特定の化学組成に基づいて、定量的割合が続いて計算される。
【0046】
好ましくは、本発明による製品は、少なくとも94質量%、より好ましくは少なくとも96質量%のペリクレース及びマグネシアスピネルの総質量を有する。更に好ましくは、本発明による製品は、少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも97質量%のペリクレース、マグネシアスピネル、及びケイ酸二カルシウムの総質量を有する。質量%で示される数値は、それぞれ本発明による製品の総質量を基準とする。
【0047】
本発明による耐火性製品の構造について、好ましくは、製品は、上記のように、この製品が被覆粒子を5~24質量%の範囲の割合で含み、マグネシアが被覆粒子に加えて大部分に又は完全に存在することが意図されている。この点に関して、本発明の好ましい実施形態によると、本発明による耐火性製品は、それぞれ本発明による製品の総質量を基準として、被覆粒子を5~24質量%の範囲の割合で含み、更に(すなわち、被覆粒子に加えて)マグネシアを76~95質量%の範囲の割合で含むことが意図されている。より好ましい実施形態によると、製品は、それぞれ本発明による製品の総質量を基準として、5~20質量%の範囲の割合の被覆粒子と、更に80~95質量%の範囲の割合のマグネシアとを含むこと、より好ましくは、5~15質量%の範囲の割合の被覆粒子と、更に85~95質量%の範囲の割合のマグネシアとを含むこと、より好ましくは、7~15質量%の割合の被覆粒子と、更に85~93質量%の範囲の割合のマグネシアとを含むことが意図されている。
【0048】
被覆粒子に加えて本発明による製品中に存在するマグネシアは、好ましくは、マグネシア焼結粒子の形態にある。被覆粒子に加えて製品中に存在するこれらのマグネシア粒子は、本発明による被覆を有さず、以下では、「被覆されていないマグネシア粒子」とも称される。本発明による製品中の被覆されていないマグネシア粒子の粒径は、DIN EN ISO13383-1:2016-11に従って決定して、好ましくは8mm未満、特に好ましくは5mm未満である。
【0049】
本発明によると、被覆されていないマグネシア粒子が、被覆粒子の粒径の範囲内の粒径を伴って少なくとも部分的に存在する場合、被覆粒子は、製品において特に有利な弾性効果を発揮する(低い弾性係数により示される)ことが分かった。この点に関して、好ましい実施形態によると、少なくとも5質量%の割合の被覆されていないマグネシア粒子が、少なくとも2mmの粒径で存在することが意図されている。より好ましい実施形態によると、被覆されていないマグネシア粒子の少なくとも5質量%は、少なくとも3mmの粒径で存在する。より好ましい実施形態によると、被覆されていないマグネシア粒子の5~20質量%が、3~5mmの範囲の粒径で存在し、被覆されていないマグネシア粒子の80~95質量%が、3mm未満の粒径で存在する。質量%で示される数値は、それぞれ、被覆されていないマグネシア粒子の総質量を基準とする。粒径は、DIN EN ISO13383-1:2016-11に従って決定される。
【0050】
この点に関して、本発明による製品の構造は、好ましくは、本発明による被覆粒子が埋め込まれているマグネシア焼結粒子マトリックスにより特徴付けられる。
【0051】
本発明による製品は、好ましくは、焼成された耐火性セラミック製品の形態にあり、特に好ましくは、成形されて焼成された耐火性セラミック製品の形態にある。
【0052】
「セラミック」製品は、これが互いに焼結された粒子からの構造を有することを特徴とすると知られている。本発明による製品の構造は、好ましくは、マグネシア粒子の形態にある互いに焼結された粒子と、被覆粒子とから形成されている。
【0053】
本発明による製品が「焼成」された製品の形態で存在するとは、そうなることで、本発明による製品が焼成により製造されたことを表すと知られており、その際、バッチの成分又は原料は、これらが互いに焼結され、それにより本発明による耐火性セラミック製品が形成されるように焼成した。
【0054】
「成形されて」焼成された耐火性セラミック製品は、この製品がそのセラミック焼成の前に成形された点、すなわち、例えば石又は他の成形製品の形態の定められた幾何学的形状が成形によりバッチに付与された点で優れると知られている。この点に関して、成形されて焼成された耐火性セラミック製品は、成形されていない焼成された耐火性製品とは異なり、ここで後者は、成形されていない耐火性セラミック材料、すなわち、いわゆる「塊」をベースとして製造された。
【0055】
本発明による製品を提供することにより、優れた物理的特性、特に製品の弾性及び高温強度について優れた物理的特性を有する耐火性製品を提供することが可能である。
【0056】
本発明による製品の弾性特性が優れていることは、弾性係数(E係数)が低いことにより示される。好ましい実施形態によると、本発明による製品は、40GPa未満の動的弾性係数、特に好ましくは30GPa未満の動的弾性係数を有する。動的弾性係数は、DIN EN ISO12680-1:2007-05に従って決定される。
【0057】
本発明による製品の高温強度が良好であることは、荷重軟化点(Druckerweichen)の温度T0.5が非常に高いことより示される。本発明による耐火性製品の荷重軟化点の温度T0.5は、好ましくは1,700℃を上回る。荷重軟化点の温度T0.5は、DIN EN ISO1893:2008-09に従って決定される。
【0058】
本発明によると、製品の化学組成及び製品中の被覆粒子は、製品の強度に非常に有利な効果を及ぼすことが分かった。したがって、本発明による製品は、冷間圧縮強度が非常に良好である点及び室温での曲げ強度が非常に良好である点で優れ得る。
【0059】
本発明による製品の冷間圧縮強度は、DIN EN993-5:1998-12に従って決定して、特に、少なくとも70MPAであり得る。
【0060】
本発明による製品の室温での曲げ強度は、DIN EN993-6:1995-04に従って決定して、特に、少なくとも4MPAであり得る。
【0061】
本発明による製品は、セメントロータリーキルン、すなわちセメントクリンカーを焼成するためのロータリーキルンの内張り(Zustellung)又はライニング(Ausmauerung)のために特に好ましく使用される。
【0062】
この点に関して、本発明の対象は、セメントロータリーキルンを内張りするための本発明による製品の使用でもある。更に、本発明の対象は、本発明による製品で少なくとも部分的に内張り又はライニングされたセメントロータリーキルンである。
【0063】
更に、本発明の対象は、本発明による製品を製造するためのバッチであって、以下の成分:
マグネシア粒子からなる第1の原料成分と、
以下の特徴:
被覆粒子が、少なくとも2mmの粒径を有すること、
被覆粒子が、マグネシアからなり、その表面が、少なくとも部分的にアルミナ被覆を有すること
を備えた被覆粒子からなる第2の原料成分と
を含む、バッチである。
【0064】
本発明によるバッチが含む第1の原料成分は、マグネシア粒子からなる。第1の原料成分は、好ましくは、以下のマグネシア:焼結マグネシア又は溶融マグネシアのうちの少なくとも1つからの粒子からなる。特に好ましくは、第1の原料成分は、焼結マグネシア粒子からなる。
【0065】
好ましい実施形態によると、第1の原料成分からのマグネシア粒子は、8mm未満の粒径、それによりも好ましくは5mm未満の粒径、より好ましくは0mm超~5mmの範囲の粒径を有する。マグネシア粒子の粒径は、DIN 66165-2:2016-08に従って決定される。
【0066】
本発明によるバッチの第2の原料成分は、少なくとも2mmの粒径を有し、かつマグネシアからなり、その表面が少なくとも部分的にアルミナ被覆を有する、被覆粒子からなる。
【0067】
一般的な命名法によると、アルミナとは、粘土又はAlをベースとする原料である。好ましい実施形態によると、被覆粒子は、焼結マグネシアからなり、その表面は、少なくとも部分的にアルミナ被覆を有する。
【0068】
本発明によるバッチの被覆粒子は、好ましくは、本発明による製品の被覆粒子の粒径に相応する粒径を有する。この点に関して、本発明のバッチの被覆粒子は、上記のように、少なくとも2mmの粒径、更に好ましくは2~5mmの範囲の粒径、より好ましくは3~5mmの範囲の粒径を有する。被覆粒子の粒径は、DIN 66165-2:2016-08に従って決定される。
【0069】
第1の原料成分及び第2の原料成分は、バッチが焼成を通じて本発明による耐火性製品を形成するように選択される。この点に関して、本発明によるバッチ中の第1の原料成分及び第2の原料成分の質量分率及び化学組成は、バッチが焼成後に本発明による製品を形成するように選択される。
【0070】
よって、本発明によるバッチの化学組成について、先に示される形態は、本発明による製品の化学組成に相応して当てはまる。
【0071】
本発明によるバッチの被覆粒子を提供可能にするために、マグネシア粒子、特に焼結マグネシア粒子をアルミナで被覆することができる。好ましくは、マグネシア粒子を、ミキサ又は造粒装置、例えば造粒プレート内にてアルミナで被覆することができる。好ましくは、アルミナは、被覆において粉末として存在し、その際、マグネシア粒子の表面におけるアルミナの接着性をより良好にするために、アルミナに、ある割合のバインダー、例えば、有機バインダー(例えば、ポリビニルアルコール)又は同様に水が付けられていてもよい。好ましくは、マグネシア粒子は、焼成粘土の形態のアルミナで被覆されるので、特に好ましい実施形態によると、被覆粒子は、その表面が少なくとも部分的に焼成粘土被覆を有する焼結マグネシア粒子の形態で、本発明によるバッチ中に存在する。マグネシア粒子は、好ましくは、10~500μmの範囲の厚さのアルミナ被覆を有し得る。マグネシア粒子をそのような厚さのアルミナで被覆するために、マグネシア粒子及びアルミナは、マグネシアがそのような厚さにてアルミナで被覆されるまでの時間にわたり、互いに混合される。
【0072】
バッチ中の第1の原料成分の質量分率は、好ましくは、被覆粒子に加えて本発明による製品中に存在するマグネシアの質量分率に相応し得る。更に、第2の原料成分は、好ましくは、本発明による製品中の被覆粒子の質量分率に相応し得る。好ましい実施形態によると、本発明によるバッチは、それぞれ本発明によるバッチの総質量を基準として、76~95質量%の範囲の質量分率の第1の原料成分と、5~24質量%の範囲の質量分率の第2の原料成分とを含み、より好ましくは、80~95質量%の範囲の質量分率の第1の原料成分と、5~20質量%の範囲の質量分率の第2の原料成分とを含み、より好ましくは、85~95%の範囲の質量分率の第1の原料成分と、5~15質量%の範囲の質量分率の第2の原料成分とを含み、より好ましくは、85~93質量%の質量分率の第1の原料成分と、7~15質量%の範囲の質量分率の第2の原料成分とを含む。
【0073】
本発明による耐火性製品は、本発明によるバッチを焼成することにより製造可能である。この場合、焼成中に、アルミナ被覆は、被覆粒子のマグネシアと、また部分的に第1の原料成分のマグネシアと、インサイチュでマグネシアスピネルを形成する。焼成中にインサイチュで形成されたこのマグネシアスピネルは、本発明による製品の被覆粒子が有するマグネシアスピネル被覆を形成する。更に、本発明によるバッチの第1の原料成分及び第2の原料成分の粒子は、焼成中に互いに焼結するので、焼成後に、本発明による製品は、焼成された耐火性セラミック製品の形態で存在する。
【0074】
本発明の対象は、以下の工程を含む、本発明による耐火性製品を製造する方法でもある。
本発明によるバッチを用意する工程、
バッチを成形して、成形された未焼成の耐火性製品にする工程、
成形された未焼成の耐火性製品を焼成して、成形されて焼成された耐火性セラミック製品にする工程。
【0075】
好ましくは、本発明による方法を実施するために提供されるバッチは、その成形前に、特にミキサ、例えばアイリッヒミキサ内で混合され得る。
【0076】
好ましくは、本発明による方法を実施するために提供されるバッチには、好ましくはバッチの混合中に、結合材が加えられ得る。好ましくは、結合材としては、耐火性セラミックバッチについて従来技術から公知の一般的な結合材、好ましくは一時的な結合材、例えば有機結合材、特に例えばリグニンスルホネートが使用され得る。結合材は、必要な割合で、特に、バッチが特に混合中に湿った砕けやすい粘稠度を有するような割合で添加され得る。例えば、結合材、特に一時的な結合材は、結合材なしのバッチの総質量を基準として1~3%の範囲の割合で添加され得る。
【0077】
バッチを成形するために、必要に応じて混合されたバッチは、特にプレスされ得る。バッチの成形後に、成形された未焼成の耐火性製品、すなわち、いわゆるグリーン体又は圧粉体が得られる。
【0078】
成形された未焼成の耐火性製品は、焼成前に、必要に応じて、例えば乾燥炉内で更に乾燥されてもよい。成形された未焼成の製品は、例えば100~300℃の範囲の温度で乾燥され得る。
【0079】
続いて、必要に応じて乾燥されて成形された未焼成の耐火性製品は、焼成される。その際、成形された未焼成の耐火性製品は、成形されて焼成された耐火性セラミック製品が焼成後に得られるような温度で焼成される。焼成により、バッチの成分が互いに焼結するので、焼成された製品は、セラミック製品、すなわち、焼結された耐火性製品として存在する。
【0080】
好ましくは、成形された未焼成の耐火性製品を、1,500~1,700℃の範囲の温度、特に好ましくは1,550~1,650℃の範囲の温度で焼成することが意図されている。
【0081】
焼成は、好ましくは、前述の焼成温度で4時間~8時間の範囲の時間にわたり実施され得る。
【0082】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲から明らかとなる。
【0083】
本発明の特徴はすべて、個別であっても、又は組合せで、任意選択的に互いに組み合わされていてもよい。
【0084】
以下で、本発明の実施例をより詳細に説明し、これらの実施例で記載された物理的、化学的、及び鉱物学的な測定値は、上記の規格に従って決定される。
【実施例
【0085】
第1の実施例
第1の実施例により、まず、焼結マグネシア粒子からの第1の原料成分と、焼成粘土で被覆された焼結マグネシア粒子からなる被覆粒子からの第2の原料成分とを含有するバッチを提供した。バッチの総質量を基準として、第1の原料成分は85質量%の割合で存在し、第2の原料成分は15質量%の割合で存在していた。
【0086】
第1の原料成分の焼結マグネシア粒子は、0mm超~5mmの範囲の粒径で存在しており、バッチの総質量を基準として、以下の粒径分布を有していた:
3mm~5mm:9質量%
1mm~3mm未満:27質量%
0.1mm~1mm未満:21質量%、及び
0mm超~0.1mm未満:28質量%。
【0087】
第1の原料成分の焼結マグネシアは、第1の原料成分のマグネシアの総質量を基準として、以下の化学組成:
MgO:98.50質量%
Al:0.06質量%
CaO:0.72質量%
SiO:0.14質量%
Fe:0.52質量%、及び
その他:0.06質量%
を有していた。
【0088】
第2の原料成分の被覆粒子は、3~5mmの範囲の粒径を有していた。第2の原料成分の被覆粒子のマグネシアは、同様に第1の原料成分の焼結マグネシア粒子を構成する焼結マグネシアから形成されていたので、第2の原料成分の被覆粒子の焼結マグネシアは、第1の原料成分の粒子の焼結マグネシアの化学組成を有していた。
【0089】
第2の原料成分の被覆粒子のマグネシアを被覆する焼成粘土は、Alの割合が焼成粘土の総質量を基準として99質量%超である化学組成を有していた。
【0090】
第2の原料成分の被覆粒子を、造粒プレート上で焼結マグネシア粒子と焼成粘土粉末とを混合することにより得た。この場合、焼結マグネシアと焼成粘土との質量比は4:1であったので、第2の原料成分の被覆粒子も、被覆粒子の総質量を基準として、80質量%のマグネシアの質量分率及び20質量%の焼成粘土の質量分率を有していた。焼結マグネシアにおける焼成粘土の接着性を改善するために、ポリビニルアルコールなしの焼結マグネシア及び焼成粘土の総質量を基準として1.5質量%の質量分率で、焼結マグネシアと焼成粘土との混合物に、ポリビニルアルコールの形態の結合材を造粒プレート上で添加した。
【0091】
本発明による方法を実施するために、上記の実施例によるバッチを、リグニンスルホネートなしのバッチの総質量を基準として3質量%のリグニンスルホネートを添加して、アイリッヒミキサ内で混合した。
【0092】
続いて、混合物をプレスにより成形して、成形された未焼成の耐火性製品である、いわゆるグリーン体にした。
【0093】
続いて、成形された未焼成の耐火性製品を、炉内にて1,590℃で6時間にわたり焼成した。冷却後に、焼成された耐火性セラミック製品の形態の本発明による製品の実施形態が得られた。
【0094】
実施例に従って得られる焼成された製品は、以下の酸化物がそれぞれ以下の割合で存在する化学組成:
MgO:94.30質量%
Al:3.44質量%
Fe:0.58質量%
CaO:0.99質量%
SiO:0.42質量%
MnO:0.10質量%、及び
強熱減量(LOI):0.17質量%
を有していた。
【0095】
耐火性製品は、マグネシア粒子の形態の互いに焼結された粒子と被覆粒子とからの構造を有し、被覆粒子は、3~5mmの範囲の粒径を有し、マグネシアからなり、その表面は、マグネシアスピネル被覆を有していた。
【0096】
それぞれ製品の総質量を基準として、マグネシア粒子の質量分率は85質量%であり、被覆粒子の割合は15質量%であった。
【0097】
マグネシアスピネル被覆は、約230μmの厚さを有していた。
【0098】
耐火性製品の鉱物学的組成を測定したところ、それぞれ製品の総質量を基準として、94~95質量%の範囲のペリクレースの割合、4~5質量%の範囲のマグネシアスピネルの割合、及び0.5~1.5質量%の範囲のケイ酸二カルシウムの割合が見られた。マグネシアスピネルは、化学量論マグネシアスピネルとして存在していた。
【0099】
製品の物理値は、以下の通りであった:
動的弾性係数:26.6GPa
荷重軟化点の温度T0.5:1,700℃超
冷間圧縮強度:84MPa、及び
室温での曲げ強度:6.4MPa。
【0100】
第2の実施例
第2の実施例は、第1の実施例に相応していたが、以下の変更点があった。
【0101】
第1の原料成分は、バッチの総質量を基準として90質量%の割合で存在し、第2の原料成分は、バッチの総質量を基準として10質量%の割合で存在していた。
【0102】
第1の原料成分の焼結マグネシア粒子は、0mm超~5mmの範囲の粒径で存在しており、バッチの総質量を基準として、以下の粒径分布を有していた:
3mm~5mm:10質量%
1mm~3mm未満:29質量%
0.1mm~1mm未満:22質量%、及び
0mm超~0.1mm未満:29質量%。
【0103】
バッチの被覆粒子の焼結マグネシアと焼成粘土との質量比は7:3であったので、第2の原料成分の被覆粒子は、被覆粒子の総質量を基準として、70質量%のマグネシアの質量分率及び30質量%の焼成粘土の質量分率を有していた。
【0104】
第2の実施例に従って得られる焼成された製品は、以下の酸化物がそれぞれ以下の割合で存在する化学組成:
MgO:94.00質量%
Al:2.90質量%
Fe:0.39質量%
CaO:1.86質量%
SiO:0.69質量%
MnO:0.03質量%、及び
強熱減量(LOI):0.13質量%
を有していた。
【0105】
それぞれ製品の総質量を基準として、製品中のマグネシア粒子の質量分率は90質量%であり、被覆粒子の割合は、10質量%であった。
【0106】
マグネシアスピネル被覆は、約380μmの厚さを有していた。
【0107】
耐火性製品の鉱物学的組成を測定したところ、それぞれ製品の総質量を基準として、94~95質量%の範囲のペリクレースの割合、3.5~4.5質量%の範囲のマグネシアスピネルの割合、及び1~2質量%の範囲のケイ酸二カルシウムの割合が見られた。マグネシアスピネルは、化学量論マグネシアスピネルとして存在していた。
【0108】
製品の物理値は、以下の通りであった:
動的弾性係数:27.9GPa
荷重軟化点の温度T0.5:1,700℃超
冷間圧縮強度:72MPa、及び
室温での曲げ強度:4.6MPa。
【0109】
第1の比較例
比較の目的で、本発明の実施例ではない製品を製造した。
【0110】
第1の比較例に従って製造された製品は、バッチの第2の原料成分の被覆粒子が0.5~1mmの範囲の粒径を有するという唯一の違いを伴って、第2の実施例に従って製造した。
【0111】
第1の比較例に従って得られる焼成された製品は、以下の酸化物がそれぞれ以下の割合で存在する化学組成:
MgO:93.90質量%
Al:3.03質量%
Fe:0.33質量%
CaO:1.82質量%
SiO:0.69質量%
MnO:0.03質量%、及び
強熱減量(LOI):0.20質量%
を有していた。
【0112】
製品は、マグネシア粒子の形態の互いに焼結された粒子と被覆粒子とからの構造を有し、被覆粒子は、0.5~1mmの範囲の粒径を有し、マグネシアからなり、その表面は、マグネシアスピネル被覆を有していた。
【0113】
マグネシアスピネル被覆は、約80μmの厚さを有していた。
【0114】
製品の物理値は、以下の通りであった:
動的弾性係数:69.3GPa
荷重軟化点の温度T0.5:1,700℃超
冷間圧縮強度:96MPa、及び
室温での曲げ強度:12.8MPa。
【0115】
第2の比較例
比較の目的で、本発明の実施例ではないさらなる製品を製造した。
【0116】
この第2の比較例に従って製造された製品は、それぞれバッチの総質量を基準として、第1の原料成分が95質量%の割合で存在し、第2の原料成分がわずか5質量%の割合で存在していたという唯一の違いを伴って、第2の実施例に従って製造した。
【0117】
第2の比較例に従って得られる焼成された製品は、以下の酸化物がそれぞれ以下の割合で存在する化学組成:
MgO:95.30質量%
Al:1.43質量%
Fe:0.39質量%
CaO:1.93質量%
SiO:0.71質量%
MnO:0.03質量%、及び
強熱減量(LOI):0.21質量%
を有していた。
【0118】
マグネシアスピネル被覆は、約130μmの厚さを有していた。
【0119】
製品の物理値は、以下の通りであった:
動的弾性係数:48.8GPa
荷重軟化点の温度T0.5:1,700℃超
冷間圧縮強度:73MPa、及び
室温での曲げ強度:6.2MPa。
【0120】
実験結果の考察
第1及び第2の実施例に従って製造された製品はそれぞれ、非常に高い構造柔軟性を有し、これは、弾性係数が、それぞれ30GPa未満、すなわち、26.6GPa又は27.9GPaと非常に低いことにより示される。同時に、これらの製品は、荷重軟化点、冷間圧縮強度、及び室温での曲げ強度について良好な値を示した。
【0121】
第1の比較例に従って製造された製品は、本発明による製品の化学組成に相応する化学組成を有していた。しかしながら、被覆粒子の粒径は、本発明による製品の被覆粒子の粒径よりも0.5~1mm小さかった。第1の比較例による製品は、69.3GPaの高い弾性係数により示されるように、第1及び第2の実施例による製品よりも著しく劣った構造柔軟性を有していた。
【0122】
第2の比較例に従って製造された製品は、たしかに本発明による製品の粒径に相応する被覆粒子の粒径を有していた。しかしながら、(製品中の被覆粒子の割合が低いため)この製品の化学組成に従ったAlの割合は、本発明による製品の割合よりも低かった。第2の比較例による製品は、48.8GPaの高い弾性係数により示されるように、第1及び第2の実施例による製品よりも著しく劣った構造柔軟性を有していた。