(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】過給機
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20220715BHJP
F02B 37/24 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
F02B39/00 D
F02B39/00 Z
F02B37/24
(21)【出願番号】P 2020570321
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2019004649
(87)【国際公開番号】W WO2020161896
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】林 慎之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 洋二
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0348524(US,A1)
【文献】特開2013-194546(JP,A)
【文献】特開2010-090713(JP,A)
【文献】特開2007-309139(JP,A)
【文献】特表2015-504135(JP,A)
【文献】特開2002-349276(JP,A)
【文献】特開2006-125588(JP,A)
【文献】特開2009-008013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00 - 41/10
F01D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排ガスにより回転駆動されるタービンロータと、
前記タービンロータを収容すると共に、前記タービンロータの外周側にスクロール流路を形成するタービンハウジングと、
前記スクロール流路を通過後の前記排ガスを前記タービンロータに導く導入路内に設けられた複数のノズルベーンと、
前記導入路を形成するように互いに対向して配置される一対の導入路形成部材であって、ノズルマウント、および前記タービンハウジングの内壁面との間に隙間を設けて設置されるノズルプレート、を含む一対の導入路形成部材と、を備え、
前記隙間には、前記タービンロータの回転方向と逆方向に延在する螺旋状の隙間空間が形成されていることを特徴とする過給機。
【請求項2】
前記タービンロータの回転方向と逆方向に巻回された形状を有する金属線材を、さらに備え、
前記隙間空間は、
前記隙間を形成する前記タービンハウジングおよび前記ノズルプレートと、前記隙間に設置された前記金属線材とにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の過給機。
【請求項3】
前記金属線材の断面形状は、V字状またはU字状であることを特徴とする請求項2に記載の過給機。
【請求項4】
前記隙間空間は、前記ノズルプレートに形成された前記螺旋状の溝により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の過給機。
【請求項5】
エンジンからの排ガスにより回転駆動されるタービンロータと、
前記タービンロータを収容すると共に、前記タービンロータの外周側にスクロール流路を形成するタービンハウジングと、
前記スクロール流路を通過後の前記排ガスを前記タービンロータに導く導入路内に設けられた複数のノズルベーンと、
前記導入路を形成するように互いに対向して配置される一対の導入路形成部材であって、ノズルマウント、および前記タービンハウジングの内壁面との間に隙間を設けて設置されるノズルプレート、を含む一対の導入路形成部材と、
前記隙間に設置される筒状の流路抵抗部材と、
を備え、
前記ノズルプレートは、
前記ノズルマウントに対向して設置される円環状のプレート部と、
前記タービンロータの軸方向に沿って前記プレート部から立設し、外周面に段部が形成された筒状の筒状部と、を有し、
前記タービンハウジングは、
前記筒状部の外周面との間に、前記タービンロータの軸方向に沿って延在する前記隙間の一部を構成する部分隙間を形成する第1内壁面と、
前記筒状部の端面との間に、前記タービンロータの径方向に沿って延在する前記隙間の他の一部を構成する部分隙間を形成する第2内壁面と、を有し、
前記流路抵抗部材は、一端
部が前記筒状部の段部に当接し、他端
部が前記第2内壁面に当接した状態で、前記筒状部の段部と前記第2内壁面との間に前記軸方向に沿って延在するように設置される
とともに、
前記一端部は、
前記第2内壁面から離れて位置するとともに前記筒状部の段部における径方向面と当接する端面と、
前記端面に連なる内周面であって前記筒状部の段部における軸方向面と当接する内周面と、を有する
ことを特徴とする過給機。
【請求項6】
前記筒状部の段部に当接する第1径を有する小径筒部と、
前記第1内壁面および前記第2内壁面に当接する、前記第1径よりも大きい第2径を有する大径筒部と、
前記小径筒部と前記大径筒部とを接続する接続筒部と、を有することを特徴とする請求項5に記載の過給機。
【請求項7】
前記接続筒部の少なくとも一部にはベローズが形成されていることを特徴とする請求項6に記載の過給機。
【請求項8】
前記流路抵抗部材の少なくとも一部にはベローズが形成されていることを特徴とする請求項5に記載の過給機。
【請求項9】
エンジンからの排ガスにより回転駆動されるタービンロータと、
前記タービンロータを収容すると共に、前記タービンロータの外周側にスクロール流路を形成するタービンハウジングと、
前記スクロール流路を通過後の前記排ガスを前記タービンロータに導く導入路内に設けられた複数のノズルベーンと、
前記導入路を形成するように互いに対向して配置される一対の導入路形成部材であって、ノズルマウント、および前記タービンハウジングの内壁面との間に隙間を設けて設置されるノズルプレート、を含む一対の導入路形成部材と、
前記隙間に設置される筒状の流路抵抗部材と、
を備え、
前記ノズルプレートは、
前記ノズルマウントに対向して設置される円環状のプレート部と、
前記タービンロータの軸方向に沿って前記プレート部から立設し、外周面に段部が形成された筒状の筒状部と、を有し、
前記タービンハウジングは、
前記筒状部の外周面との間に、前記タービンロータの軸方向に沿って延在する前記隙間の一部を構成する部分隙間を形成する第1内壁面と、
前記筒状部の端面との間に、前記タービンロータの径方向に沿って延在する前記隙間の他の一部を構成する部分隙間を形成する第2内壁面と、を有し、
前記流路抵抗部材は、一端が前記筒状部の段部に当接し、他端が前記第2内壁面に当接した状態で、前記筒状部の段部と前記第2内壁面との間に前記軸方向に沿って延在するように設置されるとともに、
前記流路抵抗部材は、ウール状の材料で形成されていることを特徴とす
る過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過給機の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
タービン翼入口に存在するベーンの開度を制御し、低速域から高速域の広い範囲でタービン翼性能を向上した可変容量型過給機などの過給機が知られている。より詳細には、この可変容量型過給機では、ベアリングハウジング側のノズルマウントとタービンハウジング側のノズルプレートとの間にベーンが複数存在し、ベーンシャフトの先に取り付けられたドライブリングを回転駆動することで、ベーンの開度の調節が可能となっている。そして、ベーンの開度を制御することで、タービン翼に供給する排ガスの流速や圧力を変化させて過給効果を高める。
【0003】
このような可変容量型過給機などの過給機では、エンジン始動時の温度上昇の差等により、タービンハウジングやノズルプレート等の熱伸びに差が生じることから、タービンハウジングとノズルプレートとの間には隙間が設けられている。この隙間によって、スクロール流路とタービンの出口とが直接接続されるなど、ベーンやタービンロータを通過することなく排ガスが流れられる空間が形成されてしまう。例えば特許文献1では、上記の隙間を形成するタービンハウジングの内壁面とシュラウド(ノズルプレート)の端面との間などにCリング状の部材を波ワッシャと共に設置し、この隙間を密封している。また、特許文献2では、タービンハウジングおよびノズルプレートの異なる位置から突出する2つの支持部材の間に円環状でV字型の断面形状を有するシール材を設置し、シール性能を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4729901号公報
【文献】特開2007-309139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~2のように、タービンハウジングの内壁面とノズルプレートとの間に形成された隙間からの排ガスのガス漏れを低減できると、タービンの排ガス出口付近の乱れが抑制され、タービン翼性能向上を図ることが可能となる。本発明者らは、上記の隙間からの排ガスの漏れを低減できる新たな手法を発明した。また、熱伸び等によるノズルプレートの動きを抑制できると、ノズルプレートとノズルマウントの間にあるノズルサポートに作用する力が低減し、安価な材料の適用や構造見直を通して、ノズルサポートの部品重量の低減等を図ることが可能となる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、タービンハウジングの内壁面とノズルプレートとの間に形成される隙間からの排ガスの漏れを低減可能な過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る過給機は、
エンジンからの排ガスにより回転駆動されるタービンロータと、
前記タービンロータを収容すると共に、前記タービンロータの外周側にスクロール流路を形成するタービンハウジングと、
前記スクロール流路を通過後の前記排ガスを前記タービンロータに導く導入路内に設けられた複数のノズルベーンと、
前記導入路を形成するように互いに対向して配置される一対の導入路形成部材であって、ノズルマウント、および前記タービンハウジングの内壁面との間に隙間を設けて設置されるノズルプレート、を含む一対の導入路形成部材と、を備え、
前記隙間には、前記タービンロータの回転方向と逆方向に延在する螺旋状の隙間空間が形成されている。
【0008】
上記(1)の構成によれば、タービンハウジングの内壁面とノズルプレートとの間の隙間には、タービンロータの回転方向と逆方向に延在する螺旋状の隙間空間が形成されている。このため、上記の隙間を旋回しながら流れようとする排ガスに対して流路抵抗を設けることができる。よって、上記の隙間を通過することにより、スクロール流路を通過後の排ガスをタービンロータに導く導入路を通過することなく、スクロール流路からタービンロータの下流(排ガス出口)に直接漏れる排ガスの量(漏れ量)を低減することができる。したがって、タービンの排ガス出口付近における排ガスの流れの乱れを抑制することができ、過給機の性能の向上を図ることができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記タービンロータの回転方向と逆方向に巻回された形状を有する金属線材を、さらに備え、
前記隙間空間は、
前記隙間を形成する前記タービンハウジングおよび前記ノズルプレートと、前記隙間に設置された前記金属線材とにより形成されている。
【0010】
上記(2)の構成によれば、タービンロータの回転方向と逆方向に巻回した形状を有する金属線材を、タービンハウジングの内壁面とノズルプレートとの間に形成される隙間に設置することにより、上記隙間に、タービンロータの回転方向と逆方向に延在する螺旋状の隙間空間を形成することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記金属線材の断面形状は、V字状またはU字状である。
【0012】
上記(3)の構成によれば、タービンロータの回転軸の延在方向(軸方向)に沿って螺旋状に巻回された金属線材の断面形状は、U字状またはV字状である。そして、このような断面を有する金属線材を、径方向(軸方向に直交する方向)に押された時に、径方向に構造的に伸縮するような向きで設置すれば、上記の隙間を形成するタービンハウジングの内壁面やノズルプレートとの接触部における接触力を増加させることができる。よって、金属線材と、タービンハウジングの内壁面やノズルプレート4の間から漏れる排ガスの量をより少なくすることができる。したがって、排ガスが隙間空間を漏れることなく流れるようにできるので、タービンハウジングの内壁面とノズルプレートとの間に形成される隙間を通過する排ガスの量をより低減することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記隙間空間は、前記ノズルプレートに形成された前記螺旋状の溝により形成されている。
上記(4)の構成によれば、ノズルプレートに螺旋状の溝を形成することにより、タービンハウジングの内壁面とノズルプレートとの間に形成される隙間に、タービンロータの回転方向と逆方向に延在する螺旋状の隙間空間を形成することができる。
【0014】
(5)本発明の少なくとも一実施形態に係る過給機は、
エンジンからの排ガスにより回転駆動されるタービンロータと、
前記タービンロータを収容すると共に、前記タービンロータの外周側にスクロール流路を形成するタービンハウジングと、
前記スクロール流路を通過後の前記排ガスを前記タービンロータに導く導入路内に設けられた複数のノズルベーンと、
前記導入路を形成するように互いに対向して配置される一対の導入路形成部材であって、ノズルマウント、および前記タービンハウジングの内壁面との間に隙間を設けて設置されるノズルプレート、を含む一対の導入路形成部材と、
前記隙間に設置される筒状の流路抵抗部材と、
を備え、
前記ノズルプレートは、
前記ノズルマウントに対向して設置される円環状のプレート部と、
前記タービンロータの軸方向に沿って前記プレート部から立設し、外周面に段部が形成された筒状の筒状部と、を有し、
前記タービンハウジングは、
前記筒状部の外周面との間に、前記タービンロータの軸方向に沿って延在する前記隙間の一部を構成する部分隙間を形成する第1内壁面と、
前記筒状部の端面との間に、前記タービンロータの径方向に沿って延在する前記隙間の他の一部を構成する部分隙間を形成する第2内壁面と、を有し、
前記流路抵抗部材は、一端が前記筒状部の段部に当接し、他端が前記第2内壁面に当接した状態で、前記筒状部の段部と前記第2内壁面との間に前記軸方向に沿って延在するように設置される。
【0015】
上記(5)の構成によれば、流路抵抗部材は、タービンハウジングの内壁面(第1内壁面)とノズルプレートとの間に形成される隙間(軸方向隙間)に設置された際に、一端が筒状部の段部に当接し、他端がタービンハウジングの第2内壁面に当接した状態で、上記の段部と上記の第2内壁面との間にタービンロータの軸方向に沿って延在する。これによって、上記の隙間を流れようとする排ガスに対して流路抵抗を設けつつ、高温の排ガスによる熱伸び差による、タービンハウジングに対するノズルプレートの相対的な軸方向への移動量を低減することができる。また、流路抵抗部材が、タービンハウジングの第1内壁面にも当接するように構成すれば、ノズルプレートの径方向への移動量も低減することができる。
【0016】
よって、スクロール流路を通過後の排ガスをタービンロータに導く導入路を通過することなく上記の隙間を通過することにより、スクロール流路からタービンロータの下流に直接漏れる排ガスの量(漏れ量)を低減することができる。したがって、タービンの排ガス出口付近における排ガスの流れの乱れを抑制することができ、過給機の性能の向上を図ることができる。さらに、ノズルプレートの移動を抑制することにより、ノズルプレートとノズルマウントとの間にあるノズルサポートに作用する力が低減されるので、より安価な材料によるノズルサポートの製造や、ノズルサポートの構造見直しによる部品重量の低減を図ることができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記流路抵抗部材は、
前記筒状部の段部に当接する第1径を有する小径筒部と、
前記第1内壁面および前記第2内壁面に当接する、前記第1径よりも大きい第2径を有する大径筒部と、
前記小径筒部と前記大径筒部とを接続する接続筒部と、を有する。
【0018】
上記(6)の構成によれば、流路抵抗部材が小径筒部、大径筒部、および接続筒部を有するように構成することで、タービンハウジングの内壁面とノズルプレートとの間に形成される隙間から漏れる排ガスの漏れ量を低減しつつ、ノズルプレートの移動を抑制することが可能な流路抵抗部材を上記の隙間に適切に設置することができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記接続筒部の少なくとも一部にはベローズが形成されている。
上記(7)の構成によれば、流路抵抗部材の接続筒部は、ベローズによりバネの役割を担うように構成される。このため、タービンハウジングに対するノズルプレートの相対的な移動を抑制しつつ、移動量に応じて筒状部の段部やベアリングハウジングの内壁面との接触部分の荷重が増加させることができるので、流路抵抗部材と接触部分とに不可避的に生じる間隙からの排気ガスの漏れを低減することができる。
【0020】
(8)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記流路抵抗部材の少なくとも一部にはベローズが形成されている。
上記(8)の構成によれば、流路抵抗部材は、ベローズによりバネの役割を担うように構成される。このため、ノズルプレートの移動を抑制しつつ、移動量に応じて筒状部の段部やベアリングハウジングの内壁面との接触部分の荷重が増加させることができるので、流路抵抗部材と接触部分とに不可避的に生じる間隙からの排気ガスの漏れを低減することができる。よって、タービンハウジングの内壁面とノズルプレートとの間に形成される隙間から漏れる排ガスの漏れ量を低減しつつ、ノズルプレートの移動を抑制することが可能な流路抵抗部材を上記の隙間に適切に設置することができる。
【0021】
(9)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記流路抵抗部材は、ウール状の材料で形成されている。
上記(9)の構成によれば、例えばセラミックウールなどのウール状の材料で流路抵抗部材を形成する。これによって、タービンハウジングの内壁面とノズルプレートとの間に形成される隙間から漏れる排ガスの漏れ量を低減しつつ、ノズルプレートの移動を抑制することが可能な流路抵抗部材を上記の隙間に適切に設置することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、タービンハウジングの内壁面とノズルプレートとの間に形成される隙間からの排ガスの漏れを低減可能な過給機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る過給機におけるタービンの軸方向に沿った断面を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る可変ノズル機構を概略的に示す図である。
【
図3】
図1に示すタービンロータの回転方向と螺旋状の隙間空間の巻回向きとの関係を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るタービンロータ付近の断面を概略的に示す図であり、金属線材により螺旋状の隙間空間が隙間に形成されている。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る隙間に形成された隙間空間を示す断面図であり、金属線材はV字状の断面を有する。
【
図6】本発明の一実施形態に係る隙間に形成された隙間空間を示す断面図であり、金属線材は円形の断面を有する。
【
図7】本発明のその他の実施形態に係る隙間に形成された隙間空間を示す断面図であり、金属線材はV字状の断面を有する。
【
図8】本発明の一実施形態に係る円錐状の流路抵抗部材の断面を概略的に示す図である。
【
図9】本発明の他の一実施形態に係る円錐状の流路抵抗部材の断面を概略的に示す図である。
【
図10】本発明の他の一実施形態に係るベローズ状の流路抵抗部材の断面を概略的に示す図である。
【
図11】本発明の他の一実施形態に係るウール状の流路抵抗部材の断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る可変容量型過給機の軸方向Dsに沿った断面を概略的に示す図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る可変ノズル機構10を概略的に示す図である。また、
図3は、
図1に示すタービンロータ12の回転方向Wと螺旋状の隙間空間Gpの巻回向きWiとの関係を示す図である。
なお、以下の説明では、後述するタービンロータ12の回転軸15の延在方向を軸方向Dsと呼び、軸方向Dsに直交する方向を径方向Drと呼ぶものとする。
【0026】
図1に示すように、過給機(以下、ターボチャージャ1という。)は、例えば可変容量型過給機であり、不図示のエンジンから排出された排ガスにより回転駆動されるように構成されたタービンロータ12を含むタービン13と、回転軸15を介してタービンロータ12に接続されたコンプレッサロータ(不図示)を含むコンプレッサ(不図示)と、を備える。コンプレッサロータ(不図示)は、タービンロータ12の回転により同軸駆動されて、エンジン(不図示)への吸気を圧縮するように構成される。また、回転軸15は軸受22によって回転可能に支持される。なお、図中の一点鎖線で示す軸線10aは、回転軸15の回転中心を通る軸方向Dsに沿った仮想の線である。
【0027】
上記のタービンロータ12、軸受22、コンプレッサロータ(不図示)は、それぞれ、タービンハウジング16、軸受ハウジング18及びコンプレッサハウジング(不図示)に収容される。そして、タービンハウジング16および軸受ハウジング18、及び、軸受ハウジング18およびコンプレッサハウジング(不図示)は、それぞれ、例えばボルトによって締結される。
【0028】
また、タービンハウジング16におけるタービンロータ12の外周側には、不図示の排気マニホールドと連通し、エンジン(不図示)から排出された排ガスが流れるスクロール状のスクロール流路20(排ガス通路)が形成される。そして、スクロール流路20とタービンロータ12との間には、タービンロータ12に作用する排ガスの流れを制御する可変ノズル機構10が配置される。
【0029】
この可変ノズル機構10は、
図1に示す実施形態では、ノズルベーン8と、ノズルベーン8が取り付けられるノズルマウント2と、ノズルマウント2に対向するように設けられたノズルプレート4と、ノズルマウント2とノズルプレート4との間に設けられるノズルサポート6と、を有する。ノズルマウント2は、タービンハウジング16と軸受ハウジング18との間に挟まれた状態で、例えばボルトで締結されることによって固定されている。
【0030】
より詳細には、
図2に示すように、ノズルサポート6の一端は、ノズルマウント2の一面2aに連結され、他端は、ノズルプレート4の一面4aが連結されている。ノズルサポート6は、回転軸15(
図1参照)の周方向に沿って複数配置されおり、ノズルプレート4は、ノズルサポート6によって、ノズルマウント2の一面2aから離間して支持されている。これによって、ノズルマウント2およびノズルプレート4を一対の導入路形成部材として、ノズルマウント2とノズルプレート4との間に、タービンロータ12に流入される排ガスが流れる流路(導入路9)が形成されている。すなわち、この導入路9は、上記のスクロール流路20を通過後の排ガスをタービンロータ12に導く排ガスの流路であり、ノズルマウント2の一面2a及びノズルプレート4の一面4aは、上述した導入路9を形成するように互いに対向して配置される一対の流路形成壁面を構成する。なお、後述する隙間Gは、ノズルプレート4の他面4bとタービンハウジング16とによって形成される。
【0031】
また、
図2に示すように、ノズルベーン8は、導入路9内に設けられており、ノズル軸8cを介してレバープレート3の一端側に連結されている。また、レバープレート3の他端側は、ドライブリング5に連結されている。ドライブリング5は、円盤状に形成されており、ノズルマウント2の他面2bに回転可能に配置されている。このドライブリング5は不図示のアクチュエータなどにより駆動されて回転可能になっている。ドライブリング5が回転すると、各レバープレート3が回転し、ノズル軸8cを介してノズルベーン8の開度(翼角)が変化するように構成されている。
【0032】
また、
図1に示すように、エンジン始動時の温度上昇の差等による熱伸びを考慮して、ノズルサポート6により支持された状態においてタービンハウジング16の内壁面17との間に隙間Gを設けて設置される。
図1に示す実施形態では、この隙間Gによって、スクロール流路20と、タービン13の出口(排ガス出口24)とが直接接続されており、ノズルベーン8やタービンロータ12を通過することなく排ガスが流れるような円筒状の空間が形成されている。
【0033】
より詳細には、
図1~
図2に示すように(後述する
図4も同様)、ノズルプレート4は、上述したノズルマウント2に対向して設置される、中心に所定の半径の穴が形成された円環状のプレート部41と、タービンロータ12の軸方向Dsに沿ってプレート部41から立設される筒状の筒状部42と、を有する。このため、上記の隙間Gは、プレート部41(外周面4b)と、このプレート部41の外周面4bに対向するタービンハウジング16の内壁面17との間に形成された、タービンロータ12の軸方向Dsに径方向Drに延在する円環状に形成された第1径方向隙間Gaと、第1径方向隙間Gaの下流側(第1径方向隙間Gaよりも排ガス出口24側)に接続(連通)され、筒状部42の外周面4bと、この外周面4bに対向するタービンハウジング16の内壁面17(第1内壁面17a。後述する
図5~
図7参照)との間に円筒状に形成された軸方向隙間Gbと、軸方向隙間Gbの下流側(軸方向隙間Gbよりも排ガス出口24側)に接続(連通)され、筒状部42の端面42eと、この端面42eに対向するタービンハウジング16の内壁面17(第2内壁面17b。後述する
図5~
図7参照)との間に円環状に形成された第2径方向隙間Gcと、を含む。
【0034】
上述したような構成を備える可変ノズル機構10を備えたターボチャージャ1では、スクロール流路20を流れた排ガスは、
図1の矢印fで示したように、ノズルマウント2とノズルプレート4との間の導入路9に流れ込み、ノズルベーン8によって流れ方向が制御されて、タービンハウジング16の中心部へと流れる。そして、タービンロータ12に作用した後に、排ガス出口24から外部に排出される。
【0035】
また、上記のスクロール流路20などから上記の隙間Gに流入する排ガスも存在する。このような排ガスは、上記の導入路9を通過することなく、上記の隙間Gを通って、タービンロータ12の下流の排ガス出口24に直接流れようとする。このような隙間Gを通過した排ガスは、排ガス出口24付近の乱れとなるため、タービン翼性能向上を図るためには、隙間Gを通過して排ガス出口24に流れる排ガスの量(漏れ量)を低減する必要がある。
【0036】
このため、上述したような、タービンハウジング16の内壁面17とノズルプレート4とによって形成される隙間Gには、
図1に示すような位置に、後述する
図5~
図7に示すような、隙間Gに延在する螺旋状の隙間空間Gpが形成されている。この隙間空間Gpの螺旋の向きは、
図3に示すように、タービンロータ12の回転方向Wと逆方向となっている。上記の隙間Gに流入する排ガスは、スクロール流路20を通ることから、タービンロータ12の回転方向Wと同じ方向に旋回しつつ、上記の隙間Gに形成された隙間空間Gpを通って排ガス出口24に向かう。この際、隙間空間Gpは、排ガスの旋回方向と逆向きの螺旋状の流路となっているため、タービンロータ12の回転方向Wと同じ方向に旋回しながら流れる排ガスの流れを妨げるように機能する。よって、上記の隙間空間Gpにより、隙間Gを流れる排ガスに対して高い流路抵抗を設けることが可能となる。なお、隙間空間Gpの形成手法については、後述する。
【0037】
上記の構成によれば、タービンハウジング16の内壁面17とノズルプレート4との間の隙間Gには、タービンロータ12の回転方向Wと逆方向に延在する螺旋状の隙間空間Gpが形成されている。このため、上記の隙間Gを旋回しながら流れようとする排ガスに対して流路抵抗を設けることができる。よって、上記の隙間Gを通過することにより、スクロール流路20を通過後の排ガスをタービンロータ12に導く導入路9を通過することなく、スクロール流路20からタービンロータ12の下流(タービン13の排ガス出口24)に直接漏れる排ガスの量(漏れ量)を低減することができる。したがって、タービン13の排ガス出口24付近における排ガスの流れの乱れを抑制することができ、ターボチャージャ1の性能の向上を図ることができる。
【0038】
次に、上述したタービンハウジング16の内壁面17との間の隙間Gへの隙間空間Gpの形成手法に関する幾つかの実施形態について、
図4~7を用いて説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係るタービンロータ12付近の断面を概略的に示す図であり、金属線材71により螺旋状の隙間空間Gpが隙間Gに形成されている。
図5は、本発明の他の実施形態に係る隙間Gに形成された隙間空間Gpを示す断面図であり、金属線材71はV字状の断面を有する。
図6は、本発明の一実施形態に係る隙間Gに形成された隙間空間Gpを示す断面図であり、金属線材71は円形の断面を有する。また、
図7は、本発明のその他の実施形態に係る隙間Gに形成された隙間空間Gpを示す断面図であり、金属線材71はV字状の断面を有する。
【0039】
幾つかの実施形態では、
図4~
図6に示すように、ターボチャージャ1は、タービンロータ12の回転方向Wと逆方向に巻回された形状を有する金属線材71を、さらに備えていても良い。そして、上記の隙間空間Gpは、隙間Gを形成するノズルプレート4およびタービンハウジング16と、タービンロータ12の回転方向Wと逆方向に巻回されて隙間Gに設置された金属線材71と、により形成されている。
図4~
図6に示すように、金属線材71がノズルプレート4などに軸方向Dsに沿って複数回巻回された状態においては、隙間空間Gpは、軸方向Dsで隣接する金属線材71同士の各間と、ノズルプレート4と、タービンハウジング16とにより囲まれることで画定される。
【0040】
より詳細には、上記の金属線材71は、上記の隙間Gを構成する上述した軸方向隙間Gbに設置される。例えば、金属線材71は、筒状部42の外周面4bの少なくとも一部に軸方向Dsに沿って巻き付けることで、軸方向隙間Gbに設置しても良い。あるいは、金属線材71はコイルバネであり、筒状部42に嵌め込むことで、筒状部42の少なくとも一部に設置しても良い。
【0041】
上記の構成によれば、タービンロータ12の回転方向Wと逆方向に巻回した形状を有する金属線材71を、タービンハウジング16の内壁面17とノズルプレート4との間に形成される隙間Gに設置することにより、上記隙間Gに、タービンロータ12の回転方向Wと逆方向に延在する螺旋状の隙間空間Gpを形成することができる。
【0042】
また、上述した金属線材71の断面形状は、幾つかの実施形態では、
図5に示すように、V字状またはU字状(以下、V字状等)であっても良い。金属線材71がV字状等の断面を有する場合には、筒状部42が熱伸び差により、タービンハウジング16に対して相対的に径方向Drに動く場合には、タービンハウジング16とノズルプレート4との間に挟まれて押されることで、構造的に径方向に縮むことが可能である。よって、熱伸び差により生じる応力を適切に吸収することが可能となる。また、ノズルプレート4の径方向Drの相対的な移動量に応じて、金属線材71とノズルプレート4との接触力、および、金属線材71とタービンハウジング16の内壁面17との接触力が増加するので、タービンハウジング16の内壁面17と金属線材71との間、あるいは、ノズルプレート4と金属線材71との間を排ガスが漏れるのを防ぐことが可能となる。
【0043】
図5に示す実施形態では、筒状部42には段部42sが形成されている。また、タービンハウジング16は、筒状部42の外周面4bとの間に、上述した軸方向隙間Gbの一部を形成する第1内壁面17aと、筒状部42の端面42eとの間に上述した第2径方向隙間Gcを形成する第2内壁面17bと、を有している。そして、金属線材71は、上記の隙間Gに設置された状態において、上述したノズルプレート4の段部42sと、上述したタービンハウジング16の第2内壁面17bとの間に設置されている。この際、金属線材71は、V字状の断面の開口側がノズルプレート4側を向き、V字状の折れ曲がり部分の側がタービンハウジング16側を向くように設置されている。このように、金属線材71を、V字状の断面の開口側がノズルプレート4側になる向きに設置することにより、段部42sにより良く引っ掛かるようになっている。このため、ノズルプレート4が熱伸び差等により移動した場合に、金属線材71が上記の段部42s、および上記の第2内壁面17bに当接することで、ノズルプレート4の移動が抑制されるようになっている。
【0044】
また、
図5に示す実施形態では、筒状部42は、所定の径の外周面4bを形成する筒壁である大径部42aと、大径部42aよりもプレート部41から離れた位置(下流側)に設けられ、上記の所定の径よりも小さい径の外周面4bを形成する筒壁である小径部42bと、を有している。そして、これらの大径部42aと小径部42bとの境界によって、段部42sが形成されている。
【0045】
なお、金属線材71は、エンジンの停止時においても、上記の段部42sおよび上記の第2内壁面17bに当接していても良い。金属線材71は、エンジンの停止時において、V字状等の形状が、タービンハウジング16とノズルプレート4とに押された状態(不勢状態)で上記の隙間Gに設置されていても良い。後述する
図7に示すように、段部42sは形成されていなくても良い。金属線材71のV字状等の向きは、
図5に示す実施形態に限定されず、V字状等の開口側の一方の端部が段部42sと当接するような向きや、V字状等の開口側がタービンハウジング16側を向くような
図5の反対向きであっても良い。
【0046】
上記の構成によれば、タービンロータ12の軸方向Dsに沿って螺旋状に巻回された金属線材71の断面形状は、U字状またはV字状である。そして、このような断面を有する金属線材71を、径方向Drに押された時に、径方向Drに構造的に伸縮するような向きで設置すれば、上記の隙間Gを形成するタービンハウジング16の内壁面17やノズルプレート4との接触部における接触力を増加させることができる。よって、金属線材71と、タービンハウジング16の内壁面17やノズルプレート4との間から漏れる排ガスの量をより少なくすることができる。したがって、排ガスが隙間空間Gpから漏れることなく流れるようにできるので、タービンハウジング16の内壁面17とノズルプレート4との間に形成される隙間Gを通過する排ガスの量をより低減することができる。
【0047】
なお、他の幾つかの実施形態では、
図6に示すように、金属線材71の断面形状は、円形であっても良い。
図6に示す実施形態では、ノズルプレート4(筒状部42)に段部42sが形成されていないが、他の幾つかの実施形態では、上述した段部42sが形成されていても良い。
【0048】
また、幾つかの実施形態では、
図7に示すように、上述した隙間空間Gpは、ノズルプレート4に形成された、タービンロータ12の回転方向Wと逆方向に延在する螺旋状の溝(以下、プレート溝42n)により形成されても良い。このプレート溝42nは、ノズルプレート4の筒状部42の外周面4bの少なくとも一部に形成されており、筒状部42の外周面4bに凹凸を形成している。そして、隙間空間Gpは、このプレート溝42n(凹部)の内側に形成される。
【0049】
図7に示す実施形態では、タービンハウジング16の第1内壁面17aは、第2内壁面17b側において回転軸15に向けて突出している部分を有している。この第1内壁面17aの突出面を形成するタービンハウジング16の内壁には、ノズルプレート4のプレート溝42nの離接する溝42間(凸部)に対向する部分に溝(ハウジング溝16n)が形成されている。そして、第1内壁面17aの突出面は、このタービンハウジング16のハウジング溝16n(凹部)にノズルプレート4のプレート溝42n間(凸部)の先端が入るぐらいまで、回転軸15に向けて突出している。すなわち、隙間空間Gpは、ノズルプレート4のプレート溝42nと、このプレート溝42nの開口を覆うように位置するタービンハウジング16の第1内壁面17aの突出面16sとで形成されている。
【0050】
上記の構成によれば、ノズルプレート4に螺旋状のプレート溝42nを形成することにより、タービンハウジング16の内壁面17とノズルプレート4との間に形成される隙間Gに、タービンロータ12の回転方向Wと逆方向に延在する螺旋状の隙間空間Gpを形成することができる。
【0051】
次に、上述したタービンハウジング16の内壁面17とノズルプレート4とによって形成される上記の隙間Gから排ガス出口24に直接漏れる排ガスの漏れ量を低減するための、他の実施形態について、
図8~
図11を用いて説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る円錐状の流路抵抗部材7の断面を概略的に示す図である。
図9は、本発明の他の一実施形態に係る円錐状の流路抵抗部材7の断面を概略的に示す図である。
図10は、本発明の他の一実施形態に係るベローズ状の流路抵抗部材7の断面を概略的に示す図である。
図11は、本発明の他の一実施形態に係るウール状の流路抵抗部材7の断面を概略的に示す図である。
【0052】
既に
図1~
図2を用いて説明したように、ターボチャージャ1は、タービンロータ12と、タービンハウジング16と、複数のノズルベーン8と、ノズルマウント2およびノズルプレート4を含む一対の導入路形成部材と、を備える。また、
図8~
図11に示すように、ノズルプレート4は、既に説明したように、ノズルマウント2に対向して設置される円環状のプレート部41と、タービンロータ12の軸方向Dsに沿ってプレート部41から立設し、外周面に段部42sが形成された筒状の筒状部42と、を有する。他方、
図8~
図11に示すように、タービンハウジング16は、上記の筒状部42の外周面との間に、タービンロータ12の軸方向Dsに沿って延在する上記の隙間Gの一部を構成する部分隙間(軸方向隙間Gb)を形成する第1内壁面17aと、上記の筒状部42の端面42eとの間に、タービンロータ12の径方向に沿って延在する上記の隙間Gの他の一部を構成する部分隙間(第2径方向隙間Gc)を形成する第2内壁面17bと、を有する。
【0053】
そして、上述した構成を備えるターボチャージャ1は、
図8~
図11に示すように、上述したような、タービンハウジング16の内壁面17とノズルプレート4との間に形成される隙間Gに設置される筒状の流路抵抗部材7を、さらに備える。そして、この流路抵抗部材7は、その一端が上記の筒状部42の段部42sに当接し、その他端が第2内壁面17bに当接した状態で、筒状部42の段部42sと第2内壁面17bとの間に軸方向Dsに沿って延在するように設置される。つまり、流路抵抗部材7は、軸方向隙間Gbと第2径方向隙間Gcが接続された隙間Gを2つの部分に分断するように、上記の隙間Gに設置される。
【0054】
具体的には、幾つかの実施形態では、
図8~
図9に示すように、上述した筒状の形状を有する流路抵抗部材7は、ノズルプレート4の筒状部42の段部42sに当接する第1径R1を有する小径筒部74aと、第1内壁面および第2内壁面に当接する、上記の第1径R1よりも大きい第2径R2(R1<R2)を有する大径筒部74cと、小径筒部74aと大径筒部74cとを接続する接続筒部74bと、を有する。
【0055】
図8~
図9に示す実施形態では、接続筒部74bは、相対的に径が小さい小径筒部74aと、相対的に径が大きい大径筒部74cとを接続筒部74bによって直線状に接続することで、全体として円錐状(
図8~
図9の断面では直線状)の形状を有している。また、大径筒部74cが、小径筒部74aよりも上流側(プレート部41側)に位置するので、接続筒部74bは、軸方向Dsに沿って下流に行くほど径が大きくなるようになっている。そして、大径筒部74cは、タービンハウジング16の第1内壁面17aおよび第2内壁面17bに当接されている。
【0056】
このように流路抵抗部材7を構成することで、隙間Gを、流路抵抗部材7の外周面側と内周面側との2つの部分に分断するようなっている。つまり、上記の隙間Gに流入した排ガスを、タービンハウジング16の第1内壁面17aと、ノズルプレート4の筒状部42(大径部42a)の外周面4bと、流路抵抗部材7の外周面とで画定されている部分に閉じ込めるようになっている。また、流路抵抗部材7が、ノズルプレート4の段部42sとタービンハウジング16の第1内壁面17aおよび第2内壁面17bに当接することによって、ノズルプレート4の軸方向および径方向での移動を抑制するようになっている。
【0057】
また、
図9に示すように、上述した接続筒部74bの少なくとも一部には、ベローズが形成されていても良い。このベローズにより、接続筒部74bはバネの役割を担うように構成される。このため、タービンハウジング16に対するノズルプレート4の相対的な移動を抑制しつつ、移動量に応じて筒状部42の段部42sやタービンハウジング16の内壁面17との接触部分の荷重が増加させることができるので、流路抵抗部材7と接触部分(小径筒部74aとノズルプレート4との接触部分、大径筒部74cとタービンハウジング16との接触部分)とに不可避的に生じる間隙からの排気ガスの漏れを低減することが可能となる。
【0058】
他の幾つかの実施形態では、
図10に示すように、上述した筒状の形状を有する流路抵抗部材7の少なくとも一部にはベローズが形成されていても良い。
図10に示す実施形態では、流路抵抗部材7はベローズ構造を有しており、軸方向Dsに沿った断面視において、波状の形状を有している。そして、ベローズの波状の径方向Dr外側の端部(凸部)がタービンハウジング16の第1内壁面17aに当接し、径方向Dr内側の端部がノズルプレート4(筒状部42)の外周面に当接するようになっている。このため、排ガスが上記の隙間Gを流れるためには、ベローズにより形成される複数の障壁を越えていかなくてはならず、流路抵抗を設けることが可能となる。また、ノズルプレート4が軸方向Dsに移動する場合には、ベローズが径方向Drに伸びることで、ベローズと、タービンハウジング16およびノズルプレート4との各々の接触部における接触力が増加するので、排ガスが接触部から漏れにくくなる。
【0059】
このように、流路抵抗部材7は、ベローズによりバネの役割を担うように構成される。このため、ノズルプレート4の移動を抑制しつつ、移動量に応じて筒状部42の段部42sやタービンハウジング16の内壁面17との接触部分(同上)の荷重が増加させることができるので、流路抵抗部材7と接触部分とに不可避的に生じる間隙からの排気ガスの漏れを低減することが可能となる。
【0060】
その他の幾つかの実施形態では、
図11に示すように、上述した筒状の形状を有する流路抵抗部材7は、ウール状の材料で形成されていても良い。より具体的には、流路抵抗部材7はセラミックウールで形成されていても良い。これによって、タービンハウジング16の内壁面17とノズルプレート4との間に形成される隙間Gから漏れる排ガスの漏れ量を低減しつつ、ノズルプレート4の移動を抑制することが可能な流路抵抗部材7を上記の隙間Gに適切に設置することが可能となる。
【0061】
上記の構成によれば、流路抵抗部材7は、タービンハウジング16の内壁面17(第1内壁面17a)とノズルプレート4との間に形成される隙間G(軸方向隙間Gb)に設置された際に、一端が筒状部42の段部42sに当接し、他端がタービンハウジング16の第2内壁面17bに当接した状態で、上記の段部42sと上記の第2内壁面17bとの間にタービンロータ12の軸方向Dsに沿って延在する。これによって、上記の隙間Gを流れようとする排ガスに対して流路抵抗を設けつつ、高温の排ガスによる熱伸び差によるタービンハウジング16に対するノズルプレート4の相対的な軸方向Dsへの移動量を低減することができる。また、流路抵抗部材7が、タービンハウジング16の第1内壁面17aにも当接するように構成すれば、ノズルプレート4の径方向への移動量も低減することができる。
【0062】
よって、スクロール流路20を通過後の排ガスをタービンロータ12に導く導入路9を通過することなく上記の隙間Gを通過することにより、スクロール流路20からタービンロータ12の下流に直接漏れる排ガスの量(漏れ量)を低減することができる。したがって、タービン13の排ガス出口24付近における排ガスの流れの乱れを抑制することができ、ターボチャージャ1の性能の向上を図ることができる。さらに、ノズルプレート4の移動を抑制することにより、ノズルプレート4とノズルマウント2との間にあるノズルサポート6に作用する力が低減されるので、より安価な材料によるノズルサポート6の製造や、ノズルサポート6の構造見直しによる部品重量の低減を図ることができる。
【0063】
以上、可変容量型過給機を例に本発明のターボチャージャ1を説明した。ただし、上述した可変容量型過給機に本発明は限定さない。本発明は、例えばノズルベーン8が固定されたような過給機など、可変容量型ではない過給機にも適用可能である。
また、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0064】
1 ターボチャージャ(過給機)
10 可変ノズル機構
10a 軸線
12 タービンロータ
13 タービン
15 回転軸
16 タービンハウジング
17 タービンハウジングの内壁面
17a 第1内壁面
17b 第2内壁面
16n ハウジング溝
16s タービンハウジングの内壁面の突出面
18 軸受ハウジング
2 ノズルマウント
2a ノズルマウントの一面
2b ノズルマウントの他面
20 スクロール流路
22 軸受
24 排ガス出口
3 レバープレート
4 ノズルプレート
4a ノズルプレートの一面
4b ノズルプレートの他面(外周面)
41 プレート部
42 筒状部
42a 大径部
42b 小径部
42e 端面
42s 段部
42n プレート溝
5 ドライブリング
6 ノズルサポート
7 流路抵抗部材
71 金属線材
74a 小径筒部
74b 接続筒部
74c 大径筒部
8 ノズルベーン
8c ノズル軸
9 導入路
W タービンロータの回転方向
Wi 隙間空間の巻回向き
G 隙間
Ga 第1径方向隙間
Gb 軸方向隙間
Gc 第2径方向隙間
Gp 隙間空間
R1 第1径
R2 第2径
f 排ガスの流れ