(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】ロールジャーナル組立体内のスラストベアリングおよびクランプ
(51)【国際特許分類】
F16C 17/10 20060101AFI20220715BHJP
F16C 35/02 20060101ALI20220715BHJP
F16C 13/02 20060101ALI20220715BHJP
C23C 2/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
F16C17/10 Z
F16C35/02 Z
F16C13/02
C23C2/00
(21)【出願番号】P 2021065106
(22)【出願日】2021-04-07
(62)【分割の表示】P 2017533794の分割
【原出願日】2015-12-28
【審査請求日】2021-04-30
(32)【優先日】2014-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516235509
【氏名又は名称】アルセロールミタル・エス・ア
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カール・マクドゥーガル
(72)【発明者】
【氏名】テリー・テイト
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102004031709(DE,A1)
【文献】特開2001-234924(JP,A)
【文献】特開平07-331402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00-17/10
F16C 35/02
F16C 13/02-13/06
C23C 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがロールジャーナルの対応する1つのロール端部を受ける2つのクランプと、それぞれが対応する1つのクランプを支持する2つのアームとを含む、溶融浴環境内で使用するためのロールジャーナル組立体であって、各クランプが、内壁を備え、内壁が長手方向中心軸線を中心として回転可能なロールジャーナルを受けるために貫通する略円筒形の通路を画定しており、前記軸線が回転可能なロールジャーナルの2つのロール端部の中心を通り、ロールジャーナルは、ロールジャーナル表面に被覆されたジャーナルスリーブによって取り囲まれており、それぞれのアームが、アームの貫通開口を貫通して延びるスラストベアリング挿入体をさらに備える、ロールジャーナル組立体が、
クランプの内壁に沿って長手方向に延在し、円筒形通路の全長にわたって延びる複数の半円筒形スロットと、
円筒側面および2つの端部を備える複数の円筒形セラミックバーであって、前記円筒形セラミックバーが前記半円筒形スロットの中に設置され、その結果、円筒形セラミックバーの前記円筒側面の少なくとも一部が、ジャーナルスリーブと接触するように前記通路の中に延在する、円筒形セラミックバーと、
を備え、
ロールジャーナルの各端部がスラストベアリング挿入体と接触し、
スラストベアリング挿入体が、
開いたフランジ付き端部と、円筒形の内部空洞を画定する閉鎖された他方の端部とを備えるスラストスリーブであって、前記フランジ付き端部がロールジャーナルに面しているようにアームの貫通開口内に挿入され、その結果、円筒形の内部空洞がロールジャーナルの回転中心としての長手方向中心軸線上に位置しており、且つ、ロールジャーナルから離れるような前記スラストスリーブの側方の移動が制限されている、前記スラストスリーブと、
スラストスリーブの前記円筒形内部空洞と概ね同じ長さのスラスト円筒形セラミックバーであって、前記スラストスリーブ内に受けられることが可能な第1の端部、およびロールジャーナルと接触するための第2の端部を含む、スラスト円筒形セラミックバーと、
アームとアームの外側のスラストベアリング挿入体との間の空間の中に溶融材料が流れることを制限するために、スラストスリーブの閉鎖された他方の端部に設置された挿入体保護カバーと、
を備える、
ロールジャーナル組立体。
【請求項2】
前記円筒形セラミックバーが前記スロットから長手方向に移動することを制限するために、前記円筒形セラミックバーの前記端部にあてがわれるストップタブをさらに備える、請求項1に記載のロールジャーナル組立体。
【請求項3】
ロールジャーナルの各端部を画定する頂点を含む略ドーム状のボタンをさらに備え、ボタンの前記頂点が、スラストベアリング挿入体と位置合わせするために、ロール端部の長手方向中心軸線に一致する、
請求項1に記載のロールジャーナル
組立体。
【請求項4】
それぞれがロールジャーナルの対応する1つのロール端部を受ける2つのクランプと、それぞれが対応する1つのクランプを支持する2つのアームとを含む、溶融浴環境内で使用するためのロールジャーナル組立体であって、各クランプが、内壁を備え、内壁が長手方向中心軸線を中心として回転可能なロールジャーナルを受けるために貫通する略円筒形の通路を画定しており、前記軸線が回転可能なロールジャーナルの2つのロール端部の中心を通り、ロールジャーナルは、ロールジャーナル表面に被覆されたジャーナルスリーブによって取り囲まれており、それぞれのアームが、アームの貫通開口を貫通して延びるスラストベアリング挿入体をさらに備える、ロールジャーナル組立体が、
クランプの内壁に沿って長手方向に延在し、円筒形通路の全長にわたって延びる複数の半円筒形スロットと、
円筒側面および2つの端部を備える複数の円筒形セラミックバーであって、前記円筒形セラミックバーが前記半円筒形スロットの中に設置され、その結果、円筒形セラミックバーの前記円筒側面の少なくとも一部が、ジャーナルスリーブと接触するように前記通路の中に延在する、円筒形セラミックバーと、
を備え、
ロールジャーナルの各端部がスラストベアリング挿入体と接触し、
スラストベアリング挿入体が、
開いたフランジ付き端部と、貫通する略円筒形の内部通路を画定する開いた他方の端部とを含むスラストスリーブであって、前記フランジ付き端部がロールジャーナルに面しているようにアームの貫通開口内に挿入され、その結果、円筒形の内部通路がロールジャーナルの回転中心としての長手方向中心軸線に軸方向に位置しており、且つ、ロールジャーナルから離れるような前記スラストスリーブの側方の移動が制限されている、前記スラストスリーブと、
前記スラストスリーブ内に受けられることが可能な第1の端部、およびロールジャーナルと接触するための第2の端部を含む、スラスト円筒形セラミックバーと、
アームとアームの外側のスラストベアリング挿入体との間の空間の中に溶融材料の流れを制限するために、スラストスリーブの開いた他方の端部上方に設置された挿入体保護カバーと、
を備える、
ロールジャーナル
組立体。
【請求項5】
スラストベアリング挿入体が、
ロールジャーナルの回転中心としての長手方向中心軸線に沿って配置された挿入体保護カバー内のカバー開口と、
スラストスリーブの閉鎖された端部と係合するために、前記カバー開口の中に挿入可能な細長い本体を含むキャップスクリュであって前記挿入体保護カバーに係合するとともに、前記スラストスリーブがロールジャーナルに向かって側方に移動することを制限するためのヘッドを含む前記キャップスクリュと、
をさらに備える、請求項1に記載のロールジャーナル
組立体。
【請求項6】
スラストベアリング挿入体が、
ロールジャーナルの回転中心としての長手方向中心軸線上に配置された挿入体保護カバー内のカバー開口と、
スラストスリーブの他方の開いた端部と係合するために前記カバー開口の中に挿入可能な細長い本体を含むキャップスクリュであって前記挿入体保護カバーに係合するとともに、前記スラストスリーブがロールジャーナルに向かって側方に移動することを制限するためのヘッドを含む前記キャップスクリュと、
をさらに備える、請求項4に記載のロールジャーナル
組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、連続的な高温浸漬プロセスにおける液中ロール組立体用のスラストベアリングおよびクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
溶融亜鉛めっきは、亜鉛などの所望のコーティングを用いて鉄および鋼を被覆することによって、鉄および鋼などの材料に防錆を施すために使用されるプロセスである。例えば、鋼板は、約465℃の温度でジャーナルロール組立体を使用して溶融亜鉛の浴に浸漬される。溶融浴に浸漬されたジャーナルロール組立体用ベアリングは、当該技術分野において公知である。それらは、冷間圧延基材を使用して平鋼板を亜鉛めっきするステップ、冷間圧延基材を使用してアニール平鋼板またはストリップ状鋼を亜鉛めっきするステップ、あるいは冷間圧延基材を使用してアルミニウム平板またはストリップ状鋼を亜鉛めっきするステップ、または当技術分野で公知の他の応用などの様々なプロセスで使用される。
【0003】
ロール組立体が約170メートル/分の速度の溶融浴中で回転するにつれて、ストリップ状鋼またはストリップ状金属が溶融浴を通して引っ張られる。シンクロール組立体を高温溶融液体、例えば溶融亜鉛に、概ね約465℃に曝すと、組立体は著しい損傷を受ける。加えて、ストリップ状平鋼板が溶融浴の中に供給されると、ジャーナルロール内に側方推力が誘起され、ジャーナルロールが直線軸線上を移動する。
【0004】
シンクロール組立体の現在の設計では、
図1の「従来技術」に示すように、略円形の断面(円筒形クランプ)を有するステンレス鋼クランプまたはシェルを使用する。矩形角柱セラミックバーが、円筒形クランプの内壁の中に機械加工された対応するスロット内に埋め込まれ、その結果、各矩形セラミックバーの一部が円筒形クランプの内部に露出される。回転するロールジャーナルが、円筒形クランプの内部に挿入され、矩形セラミックバーは、回転中の摩擦を制限するように機能するが、一方で、溶融亜鉛または他のコーティングが間隙を通ってやはり流れることができる。矩形セラミックバーが円筒形クランプの内部の中に移動することを制限するために、楔が、一般に、対応するスロットと矩形セラミックバーとの間に設置され、定位置に溶接され得る。
【0005】
しかしながら、これらの楔の取り付けは、使用者に依存する可能性があるので、取り付けに不一致が生じ、矩形セラミックバー上で不均一な楔圧力が生じる可能性がある。さらに、楔を設置するための溶接プロセスは、脆いセラミックバーを局部的な加熱に曝し、それによってセラミックバーの特性に影響を及ぼす可能性がある。異なって機械加工された楔は、さらに矩形角柱セラミックバーを様々な圧力点に曝す可能性があり、それがこれらの矩形角柱セラミックバーの割れおよび破損の一因となる可能性がある。これらの矩形角柱セラミックバーが、割れ、破損または他の理由によって楔を用いて定位置に留まることができないと、回転中にロールジャーナルの振動を招いて、破損、故障(時には永久的)およびスリーブ損傷が再び発生し、機器の修理または変更に起因して、それらすべてが、修理費用の増加および製造の遅延につながる。
【0006】
矩形セラミックバーの追加の潜在的な問題は、溶融浴の中を移動するドロスまたは硬い浮遊粒子である。ロールジャーナル回転中、ドロスは、楔と矩形セラミックバーとの間の対応するスロット内部に捕捉される可能性がある。これらの矩形角柱セラミックバーの鋭い縁部は、回転中のドロスの流れをより困難にする可能性がある。したがって、ドロスの捕捉は、ロールジャーナルのスコーリング、および早期摩耗または故障につながる可能性がある。したがって、矩形セラミックバーと硬化スリーブとの間に引き込まれたドロスは、セラミックバーとスリーブの両方に傷を付ける可能性があり、スリーブの早期摩耗をもたらす。これはさらに、次いでセラミックバーの破損または割れにつながる可能性がある。機器が溶融浴の中に浸されているため、機器の故障および損傷が容易に検出されない可能性がある。いくつかの状況では、スリーブが摩耗して、回転するロールジャーナルが溶融浴中で拘束から脱することを許容し、重大な安全問題を引き起こす可能性がある。
【0007】
現在の設計では、ロールジャーナルの側方推力を制限するためにやはりスラストベアリングが使用される。これらのスラストベアリングには、定位置に溶接される316Lステンレス鋼ブロックと位置合わせするための316Lボタンが含まれる。回転中、この設計は同様に早期摩耗を受ける。早期摩耗は、ロールとベアリングとの間の必要な間隙を広げる可能性があり、ロールの回転破壊につながる可能性がある。この回転破壊は、次いで溶融浴を通って回転されるシートの滑りを引き起こす可能性があり、品質欠陥が発生する可能性がある。加えて、この破壊によって、機器の交換または修理のために機器を運転停止する必要が生じ、遅延を招く可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、上述の欠点の少なくとも1つを克服するために、ロールベアリング組立体の1つまたは複数の構成要素を改良することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ロールベアリング組立体に使用するための改良されたクランプおよびスラストベアリングが本明細書に提供される。
【0010】
したがって、本発明の一態様によれば、ロールベアリング組立体内で使用するための、貫通する略円筒形の通路を画定する内壁を含むクランプが提供される。クランプは、その内壁に沿って長手方向に延在し、円筒形通路の長さを延長する複数の半円筒形スロットを含む。本体と2つの端部とを備える複数の対応する円筒形セラミックバーが、前記半円筒形スロット内に埋め込まれ、その結果、円筒形セラミックバーの本体の少なくとも一部が通路の中に延在する。
【0011】
本開示の別の態様によれば、長手方向中心軸線を中心として回転可能なロールジャーナルを受けるために、上に規定されるクランプを支持するロールアームを含む、溶融浴環境内で使用するためのロールジャーナル組立体が提供され、長手方向中心軸線が回転可能なロールジャーナルの2つのロール端部の中心を画定し、回転可能なロールジャーナルがジャーナルスリーブによって取り囲まれており、回転中にロールジャーナルの側方推力を減衰させるために、ロールアームが、ロールアーム内の開口内部に取り付けられたスラストベアリング挿入体をさらに備える。
【0012】
本開示の別の態様では、スラストベアリング挿入体が、開いたフランジ付き端部と、円筒形の内部空洞を画定する閉鎖された他方の端部とを含むスラストスリーブを備える。スラストスリーブは、ロールアームの開口の中に挿入され、その結果、円筒形の内部空洞がロールアームの長手方向中心軸線と軸方向に位置合わせし、スラストスリーブがロールジャーナルから離れて側方に移動することを制限するために、フランジ付き端部がロールジャーナルに面する。スラスト円筒形セラミックバーは、スリーブの前記円筒形内部空洞と概ね同じ長さを含み、スリーブ内に受けられることが可能な第1の端部と、ロールジャーナルと位置合わせするための第2の端部とを含む。スラストスリーブ上に溶融材料が流れることを制限するために、挿入体保護カバーが、スラストスリーブの閉鎖された他方の端部上方に設置される。
【0013】
本開示の別の態様では、上述のスラストスリーブが、上述の円筒形セラミックバーを受けるための略円筒形の貫通する内部通路を画定する開いたフランジ付き端部および開いた他方の端部を含む。
【0014】
本開示のこれら、および他の特徴は、添付の図面を参照する以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】埋め込まれた矩形角柱セラミックバーを含むクランプの従来技術の設計の断面図である。
【
図2】本開示の一実施形態による、埋め込まれた円筒形バーを含むクランプの正面斜視図である。
【
図3】ストップタブが付着される前の
図2のクランプの正面斜視図である。
【
図4】溶融亜鉛に曝した後の
図2のクランプの正面斜視図である。
【
図5】本開示の一実施形態によって、同心状に挿入されたジャーナルを含む、
図2のクランプの側面斜視図である。
【
図6A】本開示の一実施形態による、クランプおよびスラスト組立体の斜視図である。
【
図6B】本開示の一実施形態による、クランプおよびスラスト組立体の斜視図である。
【
図7】本開示の一実施形態による、スラストベアリングの斜視図である。
【
図8A】
図7のスラストベアリングに使用されるステンレス鋼挿入体および
図3のクランプ上に設置されたボタンの斜視図である。
【
図8B】
図7のスラストベアリングに使用されるステンレス鋼挿入体および
図3のクランプ上に設置されたボタンの斜視図である。
【
図9】本開示の一実施形態による、連続的な高温浸漬の中で使用されるクランプおよびスラストベアリング組立体の断面図および部分的な切欠き図である。
【
図11A】
図5のスラストベアリング挿入体の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次いで添付の図面を参照されたい。
【0017】
溶融浴環境の中で使用するためのロールアーム200を含むロールジャーナル組立体内に組み込むために適するクランプが提供される。本開示の一態様では、クランプ100は、長手方向中心軸線を中心として回転可能なロールジャーナル106を受けるための略円筒形の貫通する通路102を画定する内壁104を含む。軸線は、回転可能なロールジャーナル106の2つのロール端部の中心を画定し、回転可能なロールジャーナル106は、ジャーナルスリーブ108によって取り囲まれている。
【0018】
図2に示すように、ロールジャーナル組立体は、クランプ100の内壁104に沿って長手方向に延在し、円筒形通路102の長さを延長する複数の半円筒形スロット116を含むクランプ100を備える。本体112および2つの端部114を含む複数の対応する円筒形セラミックバー110が半円筒形スロット116内に設置され、その結果、円筒形セラミックバー110の本体112の少なくとも一部が、ジャーナルスリーブ108と位置合わせするように、通路102の中に延在する。
【0019】
添付の図面では、3つの円筒形バー110が使用されている。これらの円筒形バー110は、回転中の摩擦を制限し、ストリップが組立体を通して引っ張られる場合、ストリップの張力を支持することができる。より多くの数の円筒形セラミックバー110が、さらに使用され得る。円筒形セラミックバー110は、焼嵌めまたは締り嵌めによって取り付けられ得る。例えば、内壁104を含むクランプ100が機械加工されて、半円筒形スロット116を提供することができる。次に、クランプ100が例えば炉内で加熱されて、円筒形バー110が、対応する半円筒状形スロット116の中で摺動することができるようにする膨張間隙を提供することができる。円筒形バー110が半円筒形スロット116の中に挿入されると、円筒形バー110を含むクランプ100が、制御された速度で冷却される状態に置かれて、円筒形バー110に対する衝撃または損傷を制限することができる。
【0020】
円筒形バー110が、通路102の外へ長手方向に移動することを制限するために、クランプ110内部に埋め込まれている円筒形バー110の端部114上方にストップタブ118が付着され得る。これらのストップタブ118は、
図2、
図4、
図5および
図10Bに示すように定位置に溶接される316Lステンレス鋼のストリップの形態を取ることができる。ストップタブは、円筒形バー110の端部114を完全に覆うように示されているが、ストップタブは円筒形バー110の端部114の一部を覆う小さいストリップであってもよく、定位置に溶接されるか、または別の方法で固定されることが可能である。他の実施形態では、複数のストリップが使用されてもよく、互いに平行にまたは交差して付着され得る。別法として、ストップタブ118は、機械加工されて定位置に仮付け溶接される316Lのリングの形態を取ることができる。ストップタブは、当業者に知られているように高温に適する任意の材料を含むことができる。当業者に知られているように、円筒形バー110の長手方向の移動を制限する、さらに他の手段が採用され得る。
【0021】
クランプ内部に円筒形バー110を使用することによって、安定化目的のために楔を使用することを有利にも回避する。楔をなくすことによって、一貫性のない楔止め、さもなければバーに割れや故障を招く、バーに加えられる一貫性のない圧力に関連する問題を緩和する。むしろ、円筒形バー110は、クランプ100の内壁104の中に形成されたスロット116内部に焼嵌めされており、したがって、楔に対する溶接の使用を回避し、さもなければ起こり得る、バーの特性にやはり悪影響を及ぼす可能性がある付随する局部的加熱を回避する。加えて、焼嵌めされた円筒形バー110の使用は、円筒形バー110がクランプ100の円筒形内部の中に移動するか、または対応するスロット116の外へ移動することを制限するのに役立つ。
【0022】
さらに、円筒形バー110の使用は、矩形角柱バーを含む従来技術のクランプで発生するドロス捕捉に関連する問題を緩和する。例えば、円筒形バー110の使用は、さもなければ、従来技術の矩形角柱バーの縁部またはコーナーによって捕捉され得る破片またはドロスの移動を改善する。ロールの回転中、ドロスのこのような流れは、ロールまたはスリーブのスコーリングを減少させることに役立ち、それによって摩耗を低減する。
【0023】
図5および
図6を参照すると、クランプ100は、円筒形通路102内部に、略円筒形の回転可能なロールジャーナル106を受けるように設計されている。ロールジャーナルは、316Lステンレス鋼、ステライト、または当業者に知られている他の適切な材料で作製され得る。略円筒形ジャーナルスリーブ108は、回転可能なロールジャーナル106を取り囲んでいる。このジャーナルスリーブ108は、硬化した表面材料で被覆され得る。例えば、ジャーナルスリーブ108は、約0.050インチから約0.070インチの厚さを含む炭化物被覆または炭化タングステン被覆であってよく、溶融浴の高温および損傷条件から回転可能なロールジャーナル106を保護する働きをする。ジャーナルスリーブ108は、セラミック円筒形バー110がそれに対して回転する硬化表面をさらに提供する。これにより、溶融環境の中でスリーブの予測寿命が改善される。当業者にとって公知のように、ジャーナルスリーブ108は、しばらくしてから変更され得る。
【0024】
ここで
図9を参照すると、ロールアーム200は、回転中にロールジャーナル106の側方推力を減衰させるために、ロールアーム200内の開口202内部に取り付けられたスラストベアリング挿入体165をさらに備える。したがって、ロール組立体内で使用中、ロールジャーナル106の各端部は、スラストベアリング挿入体165と位置合わせされている。
【0025】
ここで
図5、
図6、
図9および
図11Bを参照すると、頂点162を含む略ドーム形ボタン160が、ロールジャーナル106の各端部を画定する。ボタン160の頂点162は、以下に説明するスラストベアリング挿入体と位置合わせし、回転中にロールジャーナル106の側方推力を減衰させるために、ロール端部の長手方向中心軸線と一致する。ボタンの頂点162が、以下に説明する組立体のスラストベアリング挿入体165に接触する場合、摩耗を制限し、最終的にシャフト106上の摩耗を制限するために、ボタン160は、炭化タングステンなどの硬化材料でできているか、または硬化材料で被覆されている。硬化されたコーティングは、ある期間、シャフト106上の摩耗に耐えるために適する厚さを含むことができ、例えば、0.01から0.1インチの厚さ、例えば0.05インチの厚さであることができる。
【0026】
ボタン160は、ロールジャーナル106と一体であることができる。別法として、ボタン160は、ロールジャーナル106またはロールスリーブ108の再調整または機械加工中に取り外すことができるように、定位置に溶接されるか、または他の方法で固定されることができる。
図8に示すように、ボタン160は、シャフト106の端部と概ね同じ直径を含む円形基部形状を有する。しかしながら、ボタン160は、スラストベアリング挿入体との接触を確実にするために頂点162がロールジャーナル106のシャフトの中心と位置合わせされている限り、シャフト106よりも小さい直径を含むことができる。ボタン160は、シャフト106の中心から延在する頂点162を含むという点において概ねドーム形である限り、矩形、台形、または任意の他の基部形状を含むこともできる。ボタン160の頂点162と、以下に説明するセラミック挿入体との点接触は摩擦を制限し、したがってロールジャーナル106の回転を可能にする。
【0027】
ボタン160の頂点162は、以下に説明するスラストベアリング挿入体165と接触し、スラストベアリング挿入体165に対して回転する。次いで、これによって、ロールの回転を可能にすると同時に、ジャーナル106の側方推力を減衰させる。したがって、これによってスラストベアリング挿入体165とロールジャーナル106との間に間隙が設けられ、そうでない場合は回転を制限する可能性がある、ロールジャーナル106とロールアーム200との接触が制限される。有利なことに、スラストベアリング挿入体165内のスラスト円筒形セラミックバー(以下に説明する)とボタンとの間の点接触は、スラスト円筒形セラミックバー(以下に説明する)上の摩耗を減少させ、ロール回転破壊などの問題を緩和する。
【0028】
図9に示すように、スラストベアリング挿入体165は、組立体内のロールアーム200の開口202内部に位置する。スラストベアリング挿入体165は、
図11Aに示すように空洞166と概ね同じ長さのスラスト円筒形セラミックバー170を受けるための円筒形の内部166を画定する、開いたフランジ付き端部168および閉鎖された他方の端部169を含むスラストスリーブ164を備える。スリーブ164は、例えば316Lなどのステンレス鋼、または当業者に知られている任意の他の適切な材料であってよい。ロールアーム200の開口202内部に据わるスラストベアリング挿入体165は、円筒形内部空洞166がロールアーム200の長手方向中心軸線と軸方向に位置合わせするように挿入され、スラストスリーブ164が組立体内のロールジャーナル106から離れて側方に移動することを制限するために、フランジ付き端部168はロールジャーナル106に面する。したがって、フランジ付き端部168は、ロールアーム200に対して寄り掛かり、ジャーナルシャフト106の側方推力によって加えられる力からスラストベアリング挿入体165が側方へ移動することを制限する。
【0029】
例えば溶融亜鉛などの溶融金属がフランジ168とロールアーム200との間の任意の空間に入ることを制限するために、黒鉛ガスケットまたは当業者に知られている他の材料が、フランジ168とロールアーム200との間に設置され得る。
【0030】
中に挿入される内部空洞166と概ね同じ長さのスラスト円筒形セラミックバー170が、スリーブ内に受けられることが可能な第1の端部172と、ロールジャーナル106と位置合わせするための第2の端部173とを含む。セラミックバー170の第2の端部173とボタン160との間の接触を可能にするために、セラミックバー170の第2の端部173は、内部空洞166内部からフランジ168の縁部を越えて延在することができる。スラストセラミックバー170が、内部空洞166の外へ移動することを制限するために、締り焼嵌めによって内部空洞166内の定位置に保持される。締り焼嵌めを達成するために、スラスト円筒形セラミックバー170を挿入するために必要な間隙を得るために、スリーブ164が加熱され得る。次いで、セラミックバーを含む挿入体が、制御された様式で冷却された状態に置かれて、割れを制限する。
【0031】
例えば、ロールジャーナル106の側方推力に起因して、スラストベアリング挿入体165の外へスラストセラミックバー170が移動することをさらに制限するために、
図9に示すように挿入体保護カバー174が使用され得る。したがって、挿入体保護カバー174は、溶融材料がスラストスリーブ164の中に流れることを制限するために、スラストスリーブ164の閉鎖された他方の端部169の上方に設置され得る。この挿入体保護カバー174は、316Lステンレス鋼のような、熱に耐えることができる任意の適切な材料で作製され得る。挿入体保護カバー174は、任意の形状であってもよく、例えば、挿入体保護カバー174をアームロール200に溶接することによって、挿入体165の閉鎖された端部の上方に設置され得る。この保護カバー174は、ロールアーム200とロールアーム200の外側の挿入体165との間の任意の潜在的な空間の中に溶融金属が流れることを制限する。
【0032】
挿入体164の内部空洞166と軸方向に位置合わせする挿入体保護カバー174の中には、カバー開口176が形成されている。したがって、挿入体保護カバー174のカバー開口176は、ロールアーム200の長手方向中心軸線と軸方向に位置合わせしている。細長い本体を含むキャップスクリュ178は、スラストスリーブ164の閉鎖された端部169と係合するように、カバー開口175中に挿入可能である。キャップスクリュ178は、挿入体保護カバー174と係合するとともに、スラストスリーブ164がロールジャーナル106に向かって側方へ移動することを制限するためのヘッド180を備えることができる。
【0033】
この実施形態では、キャップスクリュはセラミックバー170に接触しない可能性がある。例えば、セラミックバー170が空洞166内に設置されている場合、そのときキャップスクリュ178は、セラミックバー170ではなく挿入体165に簡単に接触することができる。添付図面では、キャップスクリュ178は、挿入体保護カバー174に係合するヘッド180を含むように示されている。溶融金属がヘッド180と保護カバー174との間の任意の空間に入ることを制限するために、黒鉛ガスケットまたは当業者に知られている他の材料がヘッド180と保護カバー174との間に設置され得る。
【0034】
別の実施形態では、スラストスリーブ164は、開いたフランジ付き端部168と、スラスト円筒形セラミックバー170を受けるための略円筒形の貫通する内部通路167を画定する開いた他方の端部171とを含む。したがって、スラストスリーブ164は、ロールアーム200の開口202の中に挿入され、その結果、円筒形の内部通路167がロールアーム200の長手方向中心軸線と位置合わせし、スラストスリーブ164がロールジャーナル106から離れて移動することを制限するために、フランジ付き端部168がロールジャーナルに面する。
【0035】
したがって、挿入体保護カバー174の中のカバー開口176は、挿入体164の内部通路167と軸方向に位置合わせすることができる。したがって、キャップスクリュ178は、カバー開口176の中に、挿入体165の内部通路167を通って挿入可能である。このキャップスクリュ178は、内部通路167内部に配置されたセラミックバー170の第1の端部172に接触して、セラミックバー170の側方への移動を制限する。したがって、内部通路167内部に挿入されたスラストセラミックバー170の第2の端部173は、ボタン160に接触することができ、一方、第1の端部172は空洞内部に包含されず、キャップスクリュ178と接触するために通路167内で終結する。上述のように、キャップスクリュ178は、必要に応じて、挿入体165と螺合するか、さもなければ挿入体165と係合する。
【0036】
キャップスクリュ178を締め付けることにより、黒鉛ガスケット上の封止を維持することに役立ち、ロール組立体のジャーナルスリーブ108が変更される場合、挿入体165の再配置を可能にすることに役立つ。例えば、ジャーナルスリーブ108を取り外す場合、ロールジャーナル106は、ボタン160を除去するために機械加工されることが可能であり、それによってロールジャーナル106の長さ全体を短縮することにつながる。したがって、挿入体164は、ロールジャーナルの短縮を補償するためにシムを入れるか、またはボタン160とセラミック挿入体164との間に所望の間隙を維持するために、適切な長さの新しい挿入体164を設置することができる。
【0037】
本発明のクランプ100は、ロール組立体の中に挿入するために別個に提供されることができ、例えば複数の円筒形の埋め込みバー110による完全な形態で、または例えば、クランプ100が、その中に形成された半円筒形スロット116と、スロット116の中に埋め込まれる円筒形バー110とを含むキットの形態で提供され得る。クランプ100は、任意でロールジャーナルボタン160を含むと説明されたロール組立体を変更するための1つまたは複数の他の要素、ならびにスラストセラミックバー170を含むスラストスリーブ164、スラストベアリング挿入体保護カバー174、カバー開口176、およびキャップスクリュ178を備える、例えばスラストベアリング挿入体165など、ロールアーム200を変更するための要素を備え付けることができる。
【0038】
別法として、本発明のスラストベアリング挿入体165は、ロール組立体の中に挿入するために別個に提供されることが可能であり、例えば、スラストセラミックバー170がスラストスリーブ164の中に挿入され、スラストベアリング挿入体保護カバー174のカバー開口176を通って挿入されたキャップスクリュ178を含むスラストベアリング挿入体保護カバー174を設置したスラストセラミックバー170を備える完全な形態でもやはり提供されることが可能である。スラストベアリング挿入体164は、ロールジャーナルボタン160および上述の変更されたクランプを含むと説明されるロール組立体を変更するための1つまたは複数の他の要素を任意で備え付けることができる。
【0039】
別法として、本明細書に説明される要素の1つまたは複数を組み込む変更されたロール組立体が提供され得る。
【0040】
上述の実施形態を向上させるために、フラッシュラインまたは配管(図示せず)が、ドロスの蓄積を洗い流すために、クランプ100およびスラストベアリング挿入体165の中に任意で設置され得る。フラッシュラインは、それが挿入される溶融状態に耐えることができる316Lステンレス鋼、または当技術分野で公知の他の適切な材料であることができる。フラッシュラインまたは配管は、例えば、設置されたセラミック円筒形バー110またはセラミックバー170の位置で、ドロスの蓄積の領域内に窒素ガスを注入するために使用され得る。これらの実施形態では、フラッシュラインはロールアーム200に取り付けられることができ、洗浄または洗い流しに必要なガスの量を制御する制御装置を用いて調整されることが可能である。いくつかの実施形態では、フラッシュラインは、洗浄のために常に窒素ガスを搬送していることが可能である。他の実施形態では、フラッシュラインを定期的に使用して、所定の期間または必要に応じてドロスを洗浄または洗い流すことができる。
【0041】
1つまたは複数の現在の好ましい実施形態が、実施例として説明された。特許請求の範囲に規定された本発明の範囲から逸脱することなく、複数の変形形態および変更形態が実施され得ることは、当業者にとって明らかであろう。
【符号の説明】
【0042】
100 クランプ
102 通路
104 内壁
106 ロールジャーナル
108 ジャーナルスリーブ
110 円筒形バー
112 本体
114 端部
116 半円筒形スロット
118 ストップタブ
160 ボタン
162 頂点
164 ステンレス鋼スリーブ
165 スラストベアリング挿入体
166 空洞
167 内部通路
168 フランジ付き端部
169 閉鎖された他方の端部
171 開いた他方の端部
170 スラストセラミックバー
172 第1の端部
173 第2の端部
174 挿入体保護カバー
176 カバー開口
178 キャップスクリュ
180 ヘッド
200 ロールアーム
202 開口