(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】個人識別方法、コンピュータ可読記憶媒体、端末デバイスおよび装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20220715BHJP
【FI】
G06T7/00 510F
(21)【出願番号】P 2021507823
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(86)【国際出願番号】 CN2018123787
(87)【国際公開番号】W WO2020062671
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-15
(31)【優先権主張番号】201811121965.0
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519211258
【氏名又は名称】ワン・コネクト・スマート・テクノロジー・カンパニー・リミテッド・(シェンチェン)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】黄 文泱
【審査官】青木 重徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-235718(JP,A)
【文献】特開2011-053952(JP,A)
【文献】特開2015-141368(JP,A)
【文献】特開2003-233816(JP,A)
【文献】国際公開第2009/107237(WO,A1)
【文献】特開2010-148052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人識別方法であって、
顔画像を収集し、前記顔画像に対して顔識別を行うことと、
顔識別に成功した場合、顔画像シーケンスを収集し、前記顔画像シーケンスにはFフレームの顔画像が含まれ、ここで、Fは1より大きい整数であることと、
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算し、前記基準画像シーケンスにはFフレームの顔画像が含まれ、且つ少なくとも2フレームの顔画像の表情が異なっていることと、
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度が予め設定された一致度閾値よりも大きい場合には、個人識別にパスしたと確定することと、を含
み、
前記の前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算することは、
前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算し、1≦f≦Fであることと、
次の式に従って、前記顔画像シーケンスと前記基準画像シーケンスとの一致度を計算し、
【数1】
SimDeg
f
は前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度であり、SrSimDegは前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度であることと、を含むことを特徴とする個人識別方法。
【請求項2】
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算することの前に、
予め設定された擬似乱数生成器を介して乱数を生成することと、
次の式に従って、前記基準画像シーケンスの予め設定された画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーを計算し、
EmoSeqNum=MOD(RandomNum,N)
MODは剰余関数であり、RandomNumは前記乱数であり、Nは前記画像シーケンスセットにおける画像シーケンスの総数であり、EmoSeqNumは前記基準画像シーケンスの前記画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーであることと、
前記シーケンスナンバーに基づいて、前記画像シーケンスセットから前記基準画像シーケンスを選択することと、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の個人識別方法。
【請求項3】
前記の前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算することは、
前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の各特徴距離をそれぞれ計算し、前記特徴距離は、任意の2つの特徴エリアの中心点の間の距離であることと、
次の式に従って、各特徴距離を、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の特徴ベクトルとして構築し、
【数2】
mは特徴距離の番号であり、1≦m≦Mであり、Mは特徴距離の総数であり、FtVal
f,mは前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の第m番目の特徴距離であることと、
次の式に従って、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と、前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算し、
【数3】
StdVec
fは前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の特徴ベクトルであり、且つ
【数4】
であり、StdVal
f,mは前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の第m番目の特徴距離であり、Absは絶対値を求める関数であることと、を含むことを特徴とする請求項
1に記載の個人識別方法。
【請求項4】
前記の前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の各特徴距離をそれぞれ計算することは、
次の式に従って、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の各特徴距離を計算し、
【数5】
LN
f,mは前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の第1特徴エリアの画素点の個数であり、(xl
f,m,ln,yl
f,m,ln)は前記第1特徴エリアの第ln番目の画素点の座標であり、1≦ln≦LN
f,mであり、RN
f,mは前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の第2特徴エリアの画素点の個数であり、(xr
f,m,rn,yr
f,m,rn)は前記第1特徴エリアの第rn番目の画素点の座標であり、1≦rn≦RN
f,mであり、(AveXL
f,m,AveYL
f,m)は前記第1特徴エリアの中心点座標であり、且つ
【数6】
であり、(AveXR
f,m,AveYR
f,m)は前記第2特徴エリアの中心点座標であり、且つ
【数7】
であることと、を含むことを特徴とする請求項
3に記載の個人識別方法。
【請求項5】
コンピュータ可読命令が記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読命令がプロセッサによって実行される時に、
顔画像を収集し、前記顔画像に対して顔識別を行うステップと、
顔識別に成功した場合、顔画像シーケンスを収集し、前記顔画像シーケンスにはFフレームの顔画像が含まれ、Fは1より大きい整数であるステップと、
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算し、前記基準画像シーケンスにはFフレームの顔画像が含まれ、且つ少なくとも2フレームの顔画像の表情が異なっているステップと、
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度が予め設定された一致度閾値よりも大きい場合には、個人識別にパスしたと確定するステップと、を実現
し、
前記の前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算することは、
前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算し、1≦f≦Fであることと、
次の式に従って、前記顔画像シーケンスと前記基準画像シーケンスとの一致度を計算し、
【数8】
SimDeg
f
は前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度であり、SrSimDegは前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度であることと、を含むことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項6】
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算する前に、
予め設定された擬似乱数生成器を介して乱数を生成することと、
次の式に従って、前記基準画像シーケンスの予め設定された画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーを計算し、
EmoSeqNum=MOD(RandomNum,N)
MODは剰余関数であり、RandomNumは前記乱数であり、Nは前記画像シーケンスセットにおける画像シーケンスの総数であり、EmoSeqNumは前記基準画像シーケンスの前記画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーであることと、
前記シーケンスナンバーに基づいて、前記画像シーケンスセットから前記基準画像シーケンスを選択することと、をさらに含むことを特徴とする請求項
5に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項7】
メモリと、プロセッサと、前記メモリに記憶され且つ前記プロセッサ上で実行可能なコンピュータ可読命令と、を備える端末デバイスであって、前記プロセッサは、前記コンピュータ可読命令を実行する時に、
顔画像を収集し、前記顔画像に対して顔識別を行うステップと、
顔識別に成功した場合、顔画像シーケンスを収集し、前記顔画像シーケンスにはFフレームの顔画像が含まれ、Fは1より大きい整数であるステップと、
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算し、前記基準画像シーケンスにはFフレームの顔画像が含まれ、且つ少なくとも2フレームの顔画像の表情が異なっているステップと、
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度が予め設定された一致度閾値よりも大きい場合には、個人識別にパスしたと確定するステップと、を実現
し、
前記の前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算することは、
前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算し、1≦f≦Fであることと、
次の式に従って、前記顔画像シーケンスと前記基準画像シーケンスとの一致度を計算し、
【数9】
SimDeg
f
は前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度であり、SrSimDegは前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度であることと、を含むことを特徴とする端末デバイス。
【請求項8】
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算する前に、
予め設定された擬似乱数生成器を介して乱数を生成することと、
次の式に従って、前記基準画像シーケンスの予め設定された画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーを計算し、
EmoSeqNum=MOD(RandomNum,N)
MODは剰余関数であり、RandomNumは前記乱数であり、Nは前記画像シーケンスセットにおける画像シーケンスの総数であり、EmoSeqNumは前記基準画像シーケンスの前記画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーであることと、
前記シーケンスナンバーに基づいて、前記画像シーケンスセットから前記基準画像シーケンスを選択することと、をさらに含むことを特徴とする請求項
7に記載の端末デバイス。
【請求項9】
個人識別装置であって、
顔画像を収集し、前記顔画像に対して顔識別を行うための顔識別モジュールと、
顔識別に成功した場合、顔画像シーケンスを収集するために用いられ、前記顔画像シーケンスにはFフレームの顔画像が含まれ、Fは1より大きい整数である画像シーケンス収集モジュールと、
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算するために用いられ、前記基準画像シーケンスにはFフレームの顔画像が含まれ、且つ少なくとも2フレームの顔画像の表情が異なっているシーケンス一致度計算モジュールと、
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度が予め設定された一致度閾値よりも大きい場合には、個人識別にパスしたと確定するための個人確定モジュールと、を含
み、
前記シーケンス一致度計算モジュールは、
前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算するために用いられ、1≦f≦Fである第1計算ユニットと、
次の式に従って、前記顔画像シーケンスと前記基準画像シーケンスとの一致度を計算するために用いられ、
【数10】
SimDeg
f
は前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度であり、SrSimDegは前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度である第2計算ユニットと、を含むことを特徴とする個人識別装置。
【請求項10】
前記個人識別装置は、
予め設定された擬似乱数生成器を介して乱数を生成するための乱数生成モジュールと、
次の式に従って、前記基準画像シーケンスの予め設定された画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーを計算するために用いられ、
EmoSeqNum=MOD(RandomNum,N)
MODは剰余関数であり、RandomNumは前記乱数であり、Nは前記画像シーケンスセットにおける画像シーケンスの総数であり、EmoSeqNumは前記基準画像シーケンスが前記画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーであるシーケンスナンバー計算モジュールと、
前記シーケンスナンバーに基づいて、前記画像シーケンスセットから前記基準画像シーケンスを、選択するための基準画像シーケンス選択モジュールと、をさらに含むことを特徴とする請求項
9に記載の個人識別装置。
【請求項11】
前記第1計算ユニットは、
前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の各特徴距離をそれぞれ計算するために用いられ、前記特徴距離は、任意の2つの特徴エリアの中心点の間の距離である特徴距離計算サブユニットと、
次の式に従って、各特徴距離を、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の特徴ベクトルとして構築するために用いられ、
【数11】
mは特徴距離の番号であり、1≦m≦Mであり、Mは特徴距離の総数であり、FtVal
f,mは前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の第m番目の特徴距離である特徴ベクトル構築モジュールと、
次の式に従って、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と、前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算するために用いられ、
【数12】
StdVec
fは前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の特徴ベクトルであり、且つ
【数13】
であり、StdVal
f,mは前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の第m番目の特徴距離であり、Absは絶対値を求める関数である一致度計算モジュールと、を含むことを特徴とする請求項
9に記載の個人識別装置。
【請求項12】
前記特徴距離計算サブユニットは、具体的には、次の式に従って、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の各特徴距離を計算するために用いられ、
【数14】
LN
f,mは前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の第1特徴エリアの画素点の個数であり、(xl
f,m,ln,yl
f,m,ln)は前記第1特徴エリアの第ln番目の画素点の座標であり、1≦ln≦LN
f,mであり、RN
f,mは前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の第2特徴エリアの画素点の個数であり、(xr
f,m,rn,yr
f,m,rn)は前記第1特徴エリアの第rn番目の画素点の座標であり、1≦rn≦RN
f,mであり、(AveXL
f,m,AveYL
f,m)は前記第1特徴エリアの中心点座標であり、且つ
【数15】
であり、(AveXR
f,m,AveYR
f,m)は前記第2特徴エリアの中心点座標であり、且つ
【数16】
であることを特徴とする請求項
11に記載の個人識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年9月26日に中国特許庁に提出された、出願番号が201811121965.0で、発明名称が「個人識別方法、コンピュータ可読記憶媒体および端末デバイス」である中国特許出願の優先権を主張し、その全内容を引用により本出願に組み込んでいる。
【0002】
本願は、コンピュータ技術の分野に属し、特に、個人識別方法、コンピュータ可読記憶媒体、端末デバイスおよび装置に関する。
【背景技術】
【0003】
顔によるバイオメトリック識別は、応用の面でまだいくつかの課題に直面しており、その中でも特に目立つのは、識別システムのセキュリティ問題であり、個人識別のための装置において、不正者によって正当な利用者になりすまされることが容易であり、現在の顔識別システムのほとんどは、本物の顔と写真を区別できず、正当な利用者の写真を取得さえすれば、そのような識別システムを簡単に騙すことができ、セキュリティ性が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に鑑みて、本願の実施例は、従来の個人識別方法におけるセキュリティ性が低いという問題を解決するための個人識別方法、コンピュータ可読記憶媒体、端末デバイス及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の実施例の第1態様は、個人識別方法であって、
顔画像を収集し、前記顔画像に対して顔識別を行うことと、
顔識別に成功した場合、顔画像シーケンスを収集し、前記顔画像シーケンスにはFフレームの顔画像が含まれ、ここで、Fは1より大きい整数であることと、
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算し、前記基準画像シーケンスにはFフレームの顔画像が含まれ、且つ少なくとも2フレームの顔画像の表情が異なっていることと、
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度が予め設定された一致度閾値よりも大きい場合には、個人識別にパスしたと確定することと、を含むことができる個人識別方法を提供する。
【0006】
本願の実施例の第2態様は、コンピュータ可読命令が記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読命令がプロセッサによって実行される時に、上記の個人識別方法のステップを実現するコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0007】
本願の実施例の第3態様は、メモリと、プロセッサと、前記メモリに記憶され且つ前記プロセッサ上で実行可能なコンピュータ可読命令と、を備える端末デバイスであって、前記プロセッサは、前記コンピュータ可読命令を実行する時に、上記の個人識別方法のステップを実現する端末デバイスを提供する。
【0008】
本願の実施例の第4態様は、上記の個人識別方法のステップを実現するためのモジュールを含むことができる個人識別装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本願の実施例は、通常の顔識別を基に、一連の複数の顔画像、すなわち、顔画像シーケンスを収集し、そして前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算し、2つの画像シーケンスが比較的に類似している場合、すなわち、両者の一致度が予め設定された一致度閾値よりも大きい場合にのみ、個人識別にパスしたと確定する。基準画像シーケンスには異なる表情の顔画像が含まれているため、不正者は正当な利用者の写真を入手しても個人識別にパスすることができず、セキュリティ性が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本願の実施例における個人識別方法の一実施例のフローチャートである。
【
図2】画像シーケンスセットから基準画像シーケンスを選択することを示すフローチャートである。
【
図3】顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算することを示すフローチャートである。
【
図4】前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の各特徴距離を計算することを示すフローチャートである。
【
図5】本願の実施例における個人識別装置の一実施例の構成図である。
【
図6】本願の実施例における端末デバイスの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように、本願の実施例における個人識別方法の一実施例は次のステップを含む。
【0012】
ステップS101において、顔画像を収集し、前記顔画像に対して顔識別を行う。
【0013】
本実施例では、携帯電話やタブレットなどの端末デバイスのフロントカメラにより現在のユーザの顔画像を収集し、従来の様々な顔識別方法により顔画像に顔識別を行うことができ、顔識別は一般的な従来技術であるため、ここではその具体的な過程については再び説明しない。
【0014】
ステップS102において、顔識別に成功したか否かを判断する。
【0015】
顔識別に成功した場合、ステップS103及びそれに続くステップを実行し、顔識別が失敗した場合、ステップS107を実行する。
【0016】
ステップS103において、顔画像シーケンスを収集する。
【0017】
前記端末デバイスには、画像シーケンスセットが予め設定されており、この画像シーケンスセットには、顔画像を含むN組の画像シーケンスを含み、Nは1より大きい整数である。各組の画像シーケンスには、Fフレームの顔画像が含まれ、且つ少なくとも2フレームの顔画像の表情は異なっており、Fは1より大きい整数である。
【0018】
例えば、Fの値が3であるとすると、画像シーケンス1における各フレームの顔画像の表情は、それぞれ{ほほえみ、口をゆがめ、眉をしかめ}であり、画像シーケンス2における各フレームの顔画像の表情は、それぞれ{頬をふくらませ、目を閉じ、ほほえみ}であり、画像シーケンス3の各フレームの顔画像の表情は、それぞれ画像シーケンス3={眉を上げ、ほほえみ、口をゆがめ}であり、……、以下も同様である。
【0019】
個人識別を行うたびに、端末デバイスは、前記画像シーケンスセットから、個人識別の根拠として1組の画像シーケンス、すなわち前記基準画像シーケンスを自動的に選択する。
【0020】
ここでは、具体的な実施態様では、シーケンス番号に従って順番に選択することができ、例えば、1回目の個人識別の際には、画像シーケンス1を選択することができ、2回目の個人識別の際には、画像シーケンス2を選択することができ、…、以下も同様であり、ただし、このような方式には、毎回選択される画像シーケンスは事前に推測可能であり、不正者に付け入る機会を提供する可能性があるという欠点がある。
【0021】
本実施例では、
図2に示されるステップを用いて、前記画像シーケンスセットから前記基準画像シーケンスを選択することが好ましい。
【0022】
ステップS201において、予め設定された擬似乱数生成器を介して乱数を生成する。
【0023】
真の乱数は、コインの投げ、サイコロ、回転輪、電子部品を使用する際のノイズ、核分裂などの物理現象を使って生成される。このような乱数発生器は物理的乱数発生器と呼ばれ、技術要件が高いという欠点がある。実際の応用では擬似乱数を用いれば十分であることが多い。これらの数列は「一見」ランダムな数であり、実際には固定された反復可能な計算方法によって生成されたものである。実際に計算されたものであるため、それらが真のランダムではないが、乱数に似た統計的な特徴を持っている。
【0024】
ステップS202において、前記基準画像シーケンスが前記画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーを計算する。
【0025】
具体的には、次の式に従って、前記基準画像シーケンスが前記画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーを計算することができ、
EmoSeqNum=MOD(RandomNum,N)
ここで、MODは剰余関数であり、RandomNumは前記乱数であり、Nは前記画像シーケンスセットにおける画像シーケンスの総数であり、EmoSeqNumは前記基準画像シーケンスが前記画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーである。
【0026】
ステップS203において、前記シーケンスナンバーに基づいて、前記画像シーケンスセットから前記基準画像シーケンスを選択する。
【0027】
前記基準画像シーケンスを選択した後、端末デバイスは、前記基準画像シーケンスに従って、ユーザに対応する表情を作るように段階的に提示することができ、具体的な提示方法は、文字提示であってもよいし、または音声提示であってもよい。
【0028】
例えば、選択された前記基準画像シーケンスにおける各フレームの顔画像の表情が、それぞれ{ほほえみ、口をゆがめ、眉をしかめ}であり、端末デバイスはまず、「ほほえみの表情をしてください」と音声で提示し、そして、そのときのユーザの顔画像(顔画像1と記す)を収集し、端末デバイスは、「口をゆがめるような表情をしてください」ともう一度音声で提示し、そして、そのときのユーザの顔画像(顔画像2と記す)を収集し、最後に端末デバイスは、「眉をしかめるような表情をしてください」と音声で提示し、そして、そのときのユーザの顔画像(顔画像3と記す)を収集する。
【0029】
収集された顔画像を、{顔画像1、顔画像2、顔画像3、…}のようなシーケンス形で構成し、該顔画像シーケンスにはFフレームの顔画像も含まれている。
【0030】
ステップS104において、前記顔画像シーケンスと前記基準画像シーケンスとの一致度を計算する。
【0031】
具体的には、まずは
図3に示されるステップによって、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算することができ、ここで、1≦f≦Fである。
【0032】
ステップS301において、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の各特徴距離をそれぞれ計算する。
【0033】
前記特徴距離は、任意の2つの特徴エリア(それぞれ第1特徴エリアおよび第2特徴エリアと記載することができる)の中心点の間の距離であり、前記特徴エリアは、眉が位置するエリア、目が位置するエリア、鼻が位置するエリア、口が位置するエリアなどを含むことができるが、これらに限定されなく、
図4に示すように、図中の×は顔画像の1つの特徴エリアの中心点を表し、図中のd
1、d
2、d
3、d
4などのように、任意の2つの特徴エリアの中心点の間の距離は、1つの特徴距離である。
【0034】
具体的には、次の式に従って、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の各特徴距離を計算することができ、
【数1】
ここで、LN
f,mは前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の第1特徴エリアの画素点の個数であり、(xl
f,m,ln,yl
f,m,ln)は前記第1特徴エリアの第ln番目の画素点の座標であり、1≦ln≦LN
f,mであり、RN
f,mは前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の第2特徴エリアの画素点の個数であり、(xr
f,m,rn,yr
f,m,rn)は前記第1特徴エリアの第rn番目の画素点の座標であり、1≦rn≦RN
f,mであり、(AveXL
f,m,AveYL
f,m)は前記第1特徴エリアの中心点座標であり、且つ
【数2】
であり、(AveXR
f,m,AveYR
f,m)は前記第2特徴エリアの中心点座標であり、且つ
【数3】
である。
【0035】
ステップS302において、各特徴距離を、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の特徴ベクトルとして構築する。
【0036】
具体的には、次の式に従って、各特徴距離を、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の特徴ベクトルとして構築することができ、
【数4】
ここで、mは特徴距離の番号であり、1≦m≦Mであり、Mは特徴距離の総数であり、FtVal
f,mは前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の第m番目の特徴距離である。
【0037】
ステップS303において、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と、前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算する。
【0038】
具体的には、次の式に従って、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と、前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算することができ、
【数5】
ここで、StdVec
fは前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の特徴ベクトルであり、且つ
【数6】
であり、StdVal
f,mは前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の第m番目の特徴距離であり、Absは絶対値を求める関数であり、SimDeg
fは前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と、前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度である。
【0039】
図3に示されるステップによって、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を算出した後、次の式に従って、前記顔画像シーケンスと前記基準画像シーケンスとの一致度を計算することができ、
【数7】
ここで、SrSimDegは前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度である。該式から分かるように、あるフレームの顔画像間の一致度が小さいほど、画像シーケンス間の一致度を計算するときの重みが大きくなり、逆に、あるフレームの顔画像間の一致度が大きいほど、画像シーケンス間の一致度を計算する際の重みが小さくなるので、画像シーケンスの中に一致度が非常に小さい顔画像が1つでもあれば、画像シーケンス全体の一致度も小さい値となる。
【0040】
ステップS105において、前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度が予め設定された一致度閾値よりも大きいことを判断する。
【0041】
前記一致度閾値は、実際の状況に応じて設定することができ、例えば、80%、90%、95%、または他の値に設定することができる。前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度が予め設定された一致度閾値よりも大きい場合には、ステップS106を実行し、前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度が前記一致度閾値以下である場合には、ステップS107を実行する。
【0042】
ステップS106において、個人識別にパスしたと確定する。
【0043】
ステップS107において、個人識別にパスしなかったと確定する。
【0044】
以上に述べたように、本願の実施例は、通常の顔識別に基づき、さらに一連の複数の顔画像すなわち、顔画像シーケンスを収集し、前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算し、2つの画像シーケンスが比較的に類似している場合、すなわち、両者の一致度が予め設定された一致度閾値よりも大きい場合にのみ、個人識別にパスしたと確定する。基準画像シーケンスには、異なる表情の顔画像が含まれているため、不正者は正当な利用者の写真を入手しても個人識別にパスすることができず、セキュリティ性が格段に向上する。
【0045】
上記の実施例に記載の個人識別方法に対応して、
図5には本願の実施例で提供される個人識別装置の一実施例の構成図が示される。
【0046】
本実施例において、個人識別装置は、
顔画像を収集し、前記顔画像に対して顔識別を行うための顔識別モジュール501と、
顔識別に成功した場合、顔画像シーケンスを収集するために用いられ、前記顔画像シーケンスにはFフレームの顔画像が含まれ、Fは1より大きい整数である画像シーケンス収集モジュール502と、
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度を計算するために用いられ、前記基準画像シーケンスにはFフレームの顔画像が含まれ、且つ少なくとも2フレームの顔画像の表情が異なっているシーケンス一致度計算モジュール503と、
前記顔画像シーケンスと予め設定された基準画像シーケンスとの一致度が予め設定された一致度閾値よりも大きい場合には、個人識別にパスしたと確定するための個人確定モジュール504と、を含むことができる。
【0047】
さらに、前記個人識別装置は、
予め設定された擬似乱数生成器を介して乱数を生成するための乱数生成モジュールと、
次の式に従って、前記基準画像シーケンスの予め設定された画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーを計算するために用いられ、
EmoSeqNum=MOD(RandomNum,N)
ここで、MODは剰余関数であり、RandomNumは前記乱数であり、Nは前記画像シーケンスセットにおける画像シーケンスの総数であり、EmoSeqNumは前記基準画像シーケンスが前記画像シーケンスセットにおけるシーケンスナンバーであるシーケンスナンバー計算モジュールと、
前記シーケンスナンバーに基づいて、前記画像シーケンスセットから前記基準画像シーケンスを選択するための基準画像シーケンス選択モジュールと、をさらに含むことができる。
【0048】
さらに、前記シーケンス一致度計算モジュールは、
前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算するために用いられ、1≦f≦Fである第1計算ユニットと、
前記顔画像シーケンスと前記基準画像シーケンスとの一致度を計算するための第2計算ユニットと、を含むことができる。
【0049】
さらに、前記第1計算ユニットは、
前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の各特徴距離をそれぞれ計算するために用いられ、前記特徴距離は、任意の2つの特徴エリアの中心点の間の距離である特徴距離計算サブユニットと、
各特徴距離を、前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像の特徴ベクトルとして構築するための特徴ベクトル構築モジュールと、
前記顔画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像と、前記基準画像シーケンスにおける第fフレームの顔画像との一致度を計算する、一致度計算モジュールと、を含むことができる。
【0050】
当業者であれば明確に理解できるのは、記載の便宜と簡潔性のために、上記に説明した装置、モジュール及びユニットの具体的な動作過程は、前記方法の実施例における対応する過程を参照すればよく、ここでは再び説明しない。
【0051】
前記の実施例において、各実施例についての説明はそれぞれ重点があり、ある実施例で詳細に説明されていない、又は記載されていない部分は、他の実施例の関連記述を参照することができる。
【0052】
図6には、本願の実施例によって提供される端末デバイスの概略ブロック図であり、説明の便宜上、本願の実施例に関連する部分のみが示されている。
【0053】
本実施例では、前記端末デバイス6は、デスクトップコンピュータ、ノートパソコン、パームトップコンピュータ、クラウドサーバなどのコンピューティングデバイスであってもよい。該端末デバイス6は、プロセッサ60と、メモリ61と、上記の個人識別方法を実行するコンピュータ可読命令などの、前記メモリ61に記憶され且つ前記プロセッサ60上で実行可能なコンピュータ可読命令62とを含むことができる。前記プロセッサ60は、前記コンピュータ可読命令62を実行する時に、上記の各個人識別方法の実施例におけるステップを実現する。
【0054】
本願の各実施例における各機能ユニットがソフトウェア機能ユニットの形で実現され独立した商品として販売又は使用される場合、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよい。このような理解に基づいて、本願の技術手段の本質的或いは従来技術に寄与する部分、或いはこの技術手段の全部又は一部は、ソフトウェア製品の形で実現されてもよく、該コンピュータソフトウェア製品は1つの記憶媒体に記憶され、コンピュータ機器(パソコン、サーバ、又はネットワーク機器などであってもよい。)を、本願に係る各実施形態に記載された方法の全部又は一部のステップを実行させるための幾つかのコンピュータ可読命令を含む。上記の記憶媒体は、コンピュータ可読命令を記憶できるUSBスティック、モバイルハードディスク、リードオンリーメモリ(Read-Only Memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)、磁気ディスク、又は光ディスクなどの種々の媒体を含む。
【符号の説明】
【0055】
501 顔識別モジュール
502 画像シーケンス収集モジュール
503 シーケンス一致度計算モジュール
504 個人確定モジュール