IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電気化学工業株式会社の特許一覧

特許7106033窒化ホウ素粒子、樹脂組成物、及び樹脂組成物の製造方法
<>
  • 特許-窒化ホウ素粒子、樹脂組成物、及び樹脂組成物の製造方法 図1
  • 特許-窒化ホウ素粒子、樹脂組成物、及び樹脂組成物の製造方法 図2
  • 特許-窒化ホウ素粒子、樹脂組成物、及び樹脂組成物の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】窒化ホウ素粒子、樹脂組成物、及び樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/064 20060101AFI20220715BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20220715BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C01B21/064 Z
C08K3/38
C08L101/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022513382
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2021030448
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2020139485
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】宮田 建治
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 道治
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0276310(US,A1)
【文献】国際公開第2014/003193(WO,A1)
【文献】特開2009-155176(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031883(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/064
C08K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素により形成される外殻部と、前記外殻部に囲われた中空部と、を有する略柱状の窒化ホウ素粒子であって
前記外殻部の内側における前記窒化ホウ素の密度が、前記外殻部の外側における前記窒化ホウ素の密度より大きい、窒化ホウ素粒子。
【請求項2】
前記外殻部の前記外側には、複数の窒化ホウ素片が不規則に配置されている、請求項1に記載の窒化ホウ素粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の窒化ホウ素粒子と、樹脂と、を含有する樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の窒化ホウ素粒子を用意する工程と、
前記窒化ホウ素粒子を樹脂と混合する工程と、を備える、樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記窒化ホウ素粒子を粉砕する工程を更に備える、請求項4に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化ホウ素粒子、樹脂組成物、及び樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ホウ素は、潤滑性、高熱伝導性、及び絶縁性を有しており、固体潤滑材、離型材、化粧料の原料、放熱材、並びに、耐熱性及び絶縁性を有する焼結体等の種々の用途に利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、樹脂に充填して得られる樹脂組成物に高い熱伝導性と高い絶縁耐力を付与することが可能な六方晶窒化ホウ素粉末として、六方晶窒化ホウ素の一次粒子からなる凝集粒子を含み、BET比表面積が0.7~1.3m/gであり、且つ、JIS K 5101-13-1に基づき測定される吸油量が80g/100g以下であることを特徴とする六方晶窒化ホウ素粉末が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-160134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、新規な窒化ホウ素粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、窒化ホウ素により形成される外殻部と、外殻部に囲われた中空部と、を有し、上記外殻部の内側における上記窒化ホウ素の密度が、上記外殻部の外側における上記窒化ホウ素の密度より大きい、窒化ホウ素粒子である。
【0007】
上記外殻部の上記外側には、複数の窒化ホウ素片が不規則に配置されていてよい。
【0008】
本発明の他の一側面は、上記窒化ホウ素粒子と、樹脂と、を含有する樹脂組成物である。
【0009】
本発明の他の一側面は、上記窒化ホウ素粒子を用意する工程と、上記窒化ホウ素粒子を樹脂と混合する工程と、を備える、樹脂組成物の製造方法である。この樹脂組成物の製造方法は、上記窒化ホウ素粒子を粉砕する工程を更に備えてよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、新規な窒化ホウ素粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の窒化ホウ素粒子のX線回折測定結果のグラフである。
図2】実施例1の窒化ホウ素粒子のSEM画像である。
図3】実施例1の窒化ホウ素粒子の断面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の一実施形態は、窒化ホウ素により形成される外殻部と、外殻部に囲われた中空部と、を有する、窒化ホウ素粒子である。言い換えれば、窒化ホウ素粒子は、中空形状を有している。
【0013】
一実施形態に係る窒化ホウ素粒子は、中空部を有することにより、中実の窒化ホウ素粒子(例えば、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる従来の窒化ホウ素粒子)に比べて、軽量化を図ることができる。また、例えば、窒化ホウ素粒子は樹脂と混合されて放熱材(放熱シート)として用いられるが、このときに、窒化ホウ素粒子が中空部を有することで、窒化ホウ素よりも軽い樹脂が中空部に充填され得ることから、中実の窒化ホウ素粒子(例えば、窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる従来の窒化ホウ素粒子)を用いた場合に比べて、放熱材の軽量化が期待できる。さらに、窒化ホウ素粒子の外殻部が熱伝導の役割を果たすことにより、放熱材における好適な熱伝導性も達成し得る。なお、窒化ホウ素粒子の用途として、放熱材を例示したが、窒化ホウ素粒子は、放熱材に限らず種々の用途に利用できる。
【0014】
中空部は、窒化ホウ素粒子の外観形状に沿って形成されていてよく、窒化ホウ素粒子の外観形状と略相似形の形状であってもよい。窒化ホウ素粒子が上記のような中空形状を有することは、窒化ホウ素粒子をSEMで観察することにより確認できる。
【0015】
窒化ホウ素粒子は、外殻部及び中空部の合計面積に占める中空部の面積割合が5%以上である断面を有してよい。窒化ホウ素粒子の中空部の面積割合は、窒化ホウ素粒子の断面画像(SEM画像)を画像解析ソフトウェア(例えば、株式会社マウンテック製の「Mac-view」)に取り込んで計算することにより求めることができる。窒化ホウ素粒子は、放熱材に用いられたときの当該放熱材の軽量化の観点から、上記面積割合が、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、又は50%以上である断面を有してよい。当該面積割合は、90%以下又は80%以下であってもよい。
【0016】
外殻部の厚さは、50μm以下であってよく、窒化ホウ素粒子の軽量化が更に図られる観点から、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは15μm以下である。外殻部の厚さは、例えば窒化ホウ素粒子を含むシート状の放熱材を成形する際に、窒化ホウ素粒子に成形圧が加わった場合でも、窒化ホウ素粒子の形状を維持しやすい観点から、1μm以上又は3μm以上であってよい。外殻部の厚さは、窒化ホウ素粒子の外殻部及び中空部が含まれる断面画像(SEM画像)において、窒化ホウ素粒子の任意の10箇所の外殻部の厚さの平均値と定義される。
【0017】
窒化ホウ素粒子では、外殻部の内側(中空部側)における窒化ホウ素の密度が、外殻部の外側(窒化ホウ素粒子の表面側)における窒化ホウ素の密度より大きい。外殻部の内側における窒化ホウ素の密度が外殻部の外側における窒化ホウ素の密度より大きいことは、窒化ホウ素粒子の断面をSEMで観察することにより確認できる。
【0018】
一実施形態に係る窒化ホウ素粒子では、窒化ホウ素粒子の外殻部の外側における窒化ホウ素の密度が、外殻部の内側における窒化ホウ素の密度より小さいことにより、窒化ホウ素粒子に外力が加わった場合に、外殻部の外側が外殻部の内側に比べて優先的に変形しやすいため、当該外力が外殻部の外側で緩和され、外殻部の内側への外力の影響(外力による外殻部の内側の変形)が抑制される。そのため、例えば、窒化ホウ素粒子を樹脂と混合してシート状の放熱材を成形する際に、窒化ホウ素粒子に成形圧が加わったり、窒化ホウ素粒子同士が押し合ったりしても、窒化ホウ素粒子(特に外殻部の内側)の形状を維持したまま放熱材を成形できる。したがって、この窒化ホウ素粒子を用いると、シート状の放熱材において窒化ホウ素粒子による伝熱経路が形成されやすく、好適な熱伝導性が達成され得ると考えられる。
【0019】
一実施形態において、外殻部は、複数の窒化ホウ素片で構成されていてよい。窒化ホウ素片は、窒化ホウ素により形成されており、例えば鱗片状の形状を有するものであってよい。この場合、窒化ホウ素片の長手方向の長さは、例えば、1μm以上であってよく、10μm以下であってよい。外殻部の内側においては、複数の窒化ホウ素片同士が重なり合うように配置されていてよい。外殻部の外側においては、複数の窒化ホウ素片が不規則に配置されていてよい。外殻部を構成する複数の窒化ホウ素片同士は、物理的に接触していてもよく、化学的に結合していてもよい。
【0020】
外殻部の外側においては、外殻部の内側に比べて、複数の窒化ホウ素片がより不規則に配置(外殻部の内側においては、外殻部の外側に比べて、複数の窒化ホウ素片がより規則的に配置)されていてよい。外殻部の外側においては、外殻部の内側に比べて、窒化ホウ素片同士の間の空隙がより多く(外殻部の内側においては、外殻部の外側に比べて、窒化ホウ素片同士の間の空隙がより少なく)なっていてよい。外殻部の外側においては、外殻部の内側に比べて、複数の窒化ホウ素片同士の接触面積がより小さく(外殻部の内側においては、外殻部の外側に比べて、複数の窒化ホウ素片同士の接触面積がより大きく)なっていてよい。
【0021】
外殻部の内側において、窒化ホウ素の密度が大きいことにより、窒化ホウ素粒子の強度が向上し得る。そのため、窒化ホウ素粒子を例えば、樹脂と混合して放熱材としたときに、窒化ホウ素粒子同士が重なり合っても崩れにくくなるため、放熱材の熱伝導性を向上させることができると考えられる。
【0022】
外殻部の外側において、窒化ホウ素の密度が小さいと(特に窒化ホウ素片が不規則に配置されていると)、窒化ホウ素粒子同士の接触点が多くなる。そのため、例えば、窒化ホウ素粒子を樹脂と混合して放熱材としたときに、窒化ホウ素粒子同士の接触点が多いことから、窒化ホウ素粒子間の伝熱経路をより形成しやすくなるため、放熱材の熱伝導性を向上させることができると考えられる。
【0023】
窒化ホウ素粒子は、細長形状を有してもよい。窒化ホウ素粒子のアスペクト比は、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、2.0以上、3.0以上、5.0以上、又は7.0以上であってよく、10.0以下、9.5以下、9.0以下、又は8.0以下であってよい。
【0024】
アスペクト比は、窒化ホウ素粒子の最大長さ(長手方向の最大長さ)Lと、当該最大長さLを有する方向(長手方向)に垂直な方向(短手方向)における窒化ホウ素粒子の最大長さ(短手方向の最大長さ)Lとの比(L/L)として定義される。窒化ホウ素粒子の最大長さとは、窒化ホウ素粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したときに、1個の窒化ホウ素粒子上の任意の2点間の直線距離のうち最大となる長さを意味する。最大長さの測定は、観察画像(SEM画像)を画像解析ソフトウェア(例えば、株式会社マウンテック製の「Mac-view」)に取り込んで行ってもよい。
【0025】
窒化ホウ素粒子のアスペクト比が大きいほど、窒化ホウ素粒子はより細長い形状を有する。そのため、例えば、窒化ホウ素粒子を樹脂と混合して放熱材としたときに、窒化ホウ素粒子の長手方向の熱伝導率を向上させることができる。また、当該放熱材において、窒化ホウ素粒子同士が重なりやすくなる。さらに、窒化ホウ素粒子が他の窒化ホウ素粒子と重なるときに、細長形状を有する窒化ホウ素粒子が斜めになるように重なると考えられる。したがって、放熱材の厚さ方向に並ぶ窒化ホウ素粒子の数が少なくなり、窒化ホウ素粒子間での伝熱ロスが少なくなるため、放熱材の熱伝導性がより優れると考えられる。
【0026】
窒化ホウ素粒子の最大長さ(L)は、15μm以上、20μm以上、25μm以上、50μm以上、80μm以上、100μm以上、125μm以上、150μm以上、又は200μm以上であってよく、500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0027】
窒化ホウ素粒子の最大長さが大きいことで、例えば、窒化ホウ素粒子を樹脂と混合して放熱材としたときに、放熱材の厚み方向に並ぶ窒化ホウ素粒子の数が少なくなり、窒化ホウ素粒子間での伝熱ロスが少なくなるため、放熱材の熱伝導性がより優れると考えられる。
【0028】
窒化ホウ素粒子が開口部を有する場合、当該開口部は中空部と連通していてよい。窒化ホウ素粒子がこのような開口部を有することで、例えば、窒化ホウ素粒子を樹脂と混合して放熱材として用いたときに、窒化ホウ素粒子よりも軽い樹脂が中空部に充填されることで、熱伝導率を有しつつ放熱材の軽量化が期待できる。
【0029】
細長形状を有する窒化ホウ素粒子の外殻部の外側においては、外殻部の内側に比べて、複数の窒化ホウ素片が窒化ホウ素粒子の長手方向に対して立つように(例えば、窒化ホウ素片の長手方向が窒化ホウ素粒子の長手方向に対して略垂直となるように)配置されていてよい。細長形状を有する窒化ホウ素粒子の外殻部の内側においては、外殻部の外側に比べて、複数の窒化ホウ素片が窒化ホウ素粒子の長手方向に沿って寝るように(例えば、窒化ホウ素片の長手方向が窒化ホウ素粒子の長手方向と略平行となるように)配置されていてよい。
【0030】
窒化ホウ素粒子は、定形であっても不定形であってもよい。窒化ホウ素粒子の外観形状は、略回転楕円体状、略柱状(略円柱状、略角柱状など)等が挙げられる。窒化ホウ素粒子は、例えば、二以上の方向に分岐する分岐構造を有していてもよい。
【0031】
窒化ホウ素粒子は、実質的に窒化ホウ素のみからなってよい。窒化ホウ素粒子が実質的に窒化ホウ素のみからなることは、X線回折測定において、窒化ホウ素に由来するピークのみが検出されることにより確認できる。
【0032】
窒化ホウ素粒子は、一実施形態において、略柱状の外観を有する窒化ホウ素粒子(以下、柱状窒化ホウ素粒子ともいう。)であってよい。本明細書において、柱状窒化ホウ素粒子の一端から他端に向かう方向を軸方向、当該軸方向に対して垂直な方向を径方向とし、窒化ホウ素粒子の軸方向の大きさを高さ、径方向の大きさ(軸方向に対する窒化ホウ素粒子の幅の大きさ)を径とする。柱状窒化ホウ素粒子においては、中空部が窒化ホウ素粒子の外観形状と略相似形の形状(略柱状の形状)であってよく、軸方向の両端がいずれも開口端であって、当該開口端が中空部と連通していてよい。
【0033】
柱状窒化ホウ素粒子は、軸方向に対して垂直方向の断面において、窒化ホウ素により形成される外殻部と、外殻部に囲われた中空部とを有し、外殻部の内側における窒化ホウ素の密度が、外殻部の外側における窒化ホウ素の密度より大きい。柱状窒化ホウ素粒子がこのような構成を有することは、当該断面をSEMで観察することにより確認できる。
【0034】
柱状窒化ホウ素粒子の軸方向に対して垂直方向の断面において、外殻部及び中空部の合計面積に占める中空部の面積割合、及び外殻部の厚さは上述した測定方法により測定が可能であり、外殻部及び中空部の合計面積に占める中空部の面積割合、及び外殻部の厚さの大きさは上述した範囲内であってよい。
【0035】
柱状窒化ホウ素粒子の高さの最大値は、15μm以上、20μm以上、25μm以上、50μm以上、80μm以上、100μm以上、125μm以上、150μm以上、又は200μm以上であってよく、500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0036】
柱状窒化ホウ素粒子の径の最大値は、1μm以上、2μm以上、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、40μm以上、又は50μm以上であってよく、300μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、80μm以下、70μm以下、又は60μm以下であってよい。
【0037】
柱状窒化ホウ素粒子の高さの最大値と径の最大値との比(高さの最大値/径の最大値)は、0.3以上、0.5以上、0.7以上、1.0以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、2.0以上、3.0以上、5.0以上、又は7.0以上であってよく、10.0以下、9.5以下、9.0以下、8.0以下、7.0以下、5.0以下、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.5以下、1.2以下、1.0以下、0.7以下、又は0.5以下であってよい。
【0038】
柱状窒化ホウ素粒子のアスペクト比が小さいことで、例えば、樹脂と混合して放熱材としたときに、窒化ホウ素粒子の充填性を向上させることができる。また、窒化ホウ素粒子は、外殻部の内側において、窒化ホウ素の密度が大きいことに起因して、窒化ホウ素粒子の強度が優れることから、窒化ホウ素粒子同士が重なり合っても崩れにくいと考えられる。そのため、放熱材において窒化ホウ素粒子の充填性が向上することで窒化ホウ素粒子間の伝熱経路をより形成しやすくなるため、放熱材の熱伝導性を向上させることができると考えられる。
【0039】
続いて、上述した窒化ホウ素粒子の製造方法について以下に説明する。窒化ホウ素粒子は、例えば、炭素材料で形成された容器内に、炭化ホウ素及びホウ酸を含有する混合物と、炭素材料で形成された基材とを配置する工程(配置工程)と、容器内を窒素雰囲気にした状態で加熱及び加圧することにより、基材上に窒化ホウ素粒子を生成させる工程(生成工程)と、を備える窒化ホウ素粒子の製造方法により製造することができる。本発明の他の一実施形態は、このような製造方法である。
【0040】
炭素材料で形成された容器は、上記混合物及び基材を収容できるような容器である。当該容器は、例えばカーボンルツボであってよい。容器は、好ましくは、開口部に蓋をすることにより、気密性を高められるような容器である。配置工程では、例えば、混合物を容器内の底部に配置し、基材を容器内の側壁面や蓋の内側に固定するように配置してよい。炭素材料で形成された基材は、例えば、シート状、板状、又は棒状であってよい。炭素材料で形成された基材は、例えば、カーボンシート(グラファイトシート)、カーボン板、又はカーボン棒であってよい。
【0041】
混合物中の炭化ホウ素は、例えば粉末状(炭化ホウ素粉末)であってよい。混合物中のホウ酸は、例えば粉末状(ホウ酸粉末)であってよい。混合物は、例えば、炭化ホウ素粉末とホウ酸粉末とを公知の方法で混合することにより得られる。
【0042】
炭化ホウ素粉末は、公知の製造方法により製造することができる。炭化ホウ素粉末の製造方法としては、例えば、ホウ酸とアセチレンブラックとを混合した後、不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気中で、1800~2400℃にて、1~10時間加熱し、塊状の炭化ホウ素粒子を得る方法が挙げられる。この方法により得られた塊状の炭化ホウ素粒子を、粉砕、篩分け、洗浄、不純物除去、乾燥等を適宜行うことで炭化ホウ素粉末を得ることができる。
【0043】
塊状の炭素ホウ素粒子の粉砕時間を調整することによって、炭化ホウ素粉末の平均粒子径を調整することができる。炭化ホウ素粉末の平均粒子径は、5μm以上、7μm以上、又は10μm以上であってよく、100μm以下、90μm以下、80μm以下、又は70μm以下であってよい。炭化ホウ素粉末の平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定することができる。
【0044】
炭化ホウ素とホウ酸との混合比率は、適宜選択できる。混合物中のホウ酸の含有量は、窒化ホウ素粒子が大きくなりやすい観点から、炭化ホウ素100質量部に対して、好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上であり、更に好ましくは8質量部以上であり、100質量部以下、90質量部以下、又は80質量部以下であってよい。
【0045】
炭化ホウ素及びホウ酸を含有する混合物は、他の成分を更に含有してもよい。他の成分としては、炭化ケイ素、炭素、酸化鉄等が挙げられる。炭化ホウ素及びホウ酸を含有する混合物が炭化ケイ素を更に含むことで、開口端を有さない窒化ホウ素粒子を得やすくなる。
【0046】
容器内は、例えば95体積%以上の窒素ガスを含む窒素雰囲気となっている。窒素雰囲気中の窒素ガスの含有量は、好ましくは95体積%以上であり、より好ましくは99.9体積%以上であり、実質的に100体積%であってよい。窒素雰囲気中に、窒素ガスに加えて、アンモニアガス等が含まれてもよい。
【0047】
加熱温度は、窒化ホウ素粒子が大きくなりやすい観点から、好ましくは1450℃以上であり、より好ましくは1600℃以上であり、更に好ましくは1800℃以上である。加熱温度は、2400℃以下、2300℃以下、又は2200℃以下であってよい。
【0048】
加圧する際の圧力は、窒化ホウ素粒子が大きくなりやすい観点から、好ましくは0.3MPa以上であり、より好ましくは0.6MPa以上である。加圧する際の圧力は、1.0MPa以下、又は0.9MPa以下であってよい。
【0049】
加熱及び加圧を行う時間は、窒化ホウ素粒子が大きくなりやすい観点から、好ましくは3時間以上であり、より好ましくは5時間以上である。加熱及び加圧を行う時間は、40時間以下、又は30時間以下であってよい。
【0050】
この製造方法によれば、上述した窒化ホウ素粒子が炭素材料で形成された基材上に生成する。したがって、基材上の窒化ホウ素粒子を回収することにより、窒化ホウ素粒子が得られる。基材上に窒化ホウ素粒子が生成したことは、基材上に生成した粒子を回収し、回収した粒子についてX線回折測定を行い、窒化ホウ素に由来するピークが検出されることにより確認できる。
【0051】
以上のようにして得られる窒化ホウ素粒子に対して、特定の範囲の最大長さを有する窒化ホウ素粒子のみが得られるように分級する工程(分級工程)を実施してもよい。
【0052】
以上のようにして得られる窒化ホウ素粒子は、樹脂と混合して樹脂組成物として用いることができる。すなわち、本発明の一実施形態は、上記の窒化ホウ素粒子と、樹脂と、を含有する樹脂組成物である。
【0053】
樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂等が挙げられる。
【0054】
窒化ホウ素粒子の含有量は、樹脂組成物を放熱材として用いる場合、放熱材の熱伝導率を向上させ、優れた放熱性能が得られやすい観点から、樹脂組成物の全体積を基準として、30体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、又は60体積%以上であってよい。窒化ホウ素粒子の含有量は、樹脂組成物をシート状の放熱材に成形する際に空隙が発生することを抑制し、シート状の放熱材の絶縁性及び機械強度の低下を抑制できる観点から、樹脂組成物の全体積を基準として、85体積%以下、80体積%以下、70体積%以下、60体積%以下、50体積%以下、又は40体積%以下であってよい。
【0055】
樹脂の含有量は、樹脂組成物の用途、要求特性などに応じて適宜調整してよい。樹脂の含有量は、樹脂組成物の全体積を基準として、例えば、15体積%以上、20体積%以上、30体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、又は60体積%以上であってよく、70体積%以下、60体積%以下、50体積%以下、又は40体積%以下であってよい。
【0056】
樹脂組成物は、樹脂を硬化させる硬化剤を更に含有していてよい。硬化剤は、樹脂の種類に応じて適宜選択される。例えばエポキシ樹脂と共に用いられる硬化剤としては、フェノールノボラック化合物、酸無水物、アミノ化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。硬化剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上又は1.0質量部以上であってよく、15質量部以下又は10質量部以下であってよい。
【0057】
樹脂組成物は、その他の成分を更に含有してもよい。その他の成分は、硬化促進剤(硬化触媒)、カップリング剤、湿潤分散剤、表面調整剤等であってよい。
【0058】
硬化促進剤(硬化触媒)としては、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルフォスフェイト等のリン系硬化促進剤、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール系硬化促進剤、三フッ化ホウ素モノエチルアミン等のアミン系硬化促進剤などが挙げられる。
【0059】
カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、及びアルミネート系カップリング剤等が挙げられる。これらのカップリング剤に含まれる化学結合基としては、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等が挙げられる。
【0060】
湿潤分散剤としては、リン酸エステル塩、カルボン酸エステル、ポリエステル、アクリル共重合物、ブロック共重合物等が挙げられる。
【0061】
表面調整剤としては、アクリル系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤等が挙げられる。
【0062】
樹脂組成物は、例えば、一実施形態に係る窒化ホウ素粒子を用意する工程(用意工程)と、窒化ホウ素粒子を樹脂と混合する工程(混合工程)と、を備える、樹脂組成物の製造方法により製造することができる。本発明の他の一実施形態は、このような樹脂組成物の製造方法である。混合工程では、窒化ホウ素粒子及び樹脂に加えて、上述した硬化剤やその他の成分を更に混合してもよい。
【0063】
一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、窒化ホウ素粒子を粉砕する工程(粉砕工程)を更に備えてよい。粉砕工程は、用意工程と混合工程との間に行われてよく、混合工程と同時に行われてもよい(窒化ホウ素粒子を樹脂と混合すると同時に、窒化ホウ素粒子を粉砕してもよい)。
【0064】
上記の樹脂組成物は、例えば放熱材として用いることができる。放熱材は、例えば、樹脂組成物を硬化させることにより製造することができる。樹脂組成物を硬化させる方法は、樹脂組成物が含有する樹脂(及び必要に応じて用いられる硬化剤)の種類に応じて適宜選択される。例えば、樹脂がエポキシ樹脂であり、上述した硬化剤が共に用いられる場合、加熱により樹脂を硬化させることができる。
【実施例
【0065】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
塊状の炭化ホウ素粒子を粉砕機により粉砕し、平均粒子径が10μmである炭化ホウ素粉末を得た。得られた炭化ホウ素粉末100質量部と、ホウ酸9質量部とを混合し、カーボンルツボに充填し、カーボンルツボの開口部をカーボンシート(NeoGraf社製)で覆い、カーボンルツボの蓋とカーボンルツボとでカーボンシートを挟むことで、カーボンシートを固定した。蓋をしたカーボンルツボを抵抗加熱炉内で、窒素ガス雰囲気下で、2000℃、0.85MPaの条件で20時間加熱することで、カーボンシート上に粒子が生成した。
【0067】
カーボンシート上に生成した粒子を回収し、回収した粒子をX線回折装置(株式会社リガク製、「ULTIMA-IV」)を用いて測定したところ、窒化ホウ素に由来するピークのみが検出され、窒化ホウ素粒子が得られたことを確認できた。得られた窒化ホウ素粒子のX線回折測定結果、及び比較対象としてデンカ株式会社製の窒化ホウ素粉末(GPグレード)のX線回折測定結果をそれぞれ図1に示す。
【0068】
得られた窒化ホウ素粒子のSEM画像を図2に示す。得られた中空形状の窒化ホウ素粒子の一つ(図2において矢印で示した窒化ホウ素粒子)の最大長さは218μm、アスペクト比は3.1であった。また、得られた窒化ホウ素粒子の長手方向に垂直な断面をSEMで観察したSEM画像を図3に示す。図3から分かるように、この窒化ホウ素粒子が、窒化ホウ素により形成される外殻部と、外殻部に囲われた中空部と、を有すること、及び、外殻部の内側における窒化ホウ素の密度が、外殻部の外側における窒化ホウ素の密度より大きいことが確認できた。断面をSEMで観察した窒化ホウ素粒子では、外殻部及び中空部の合計面積に占める中空部の面積割合は53%であり、外殻部の厚さは3.2μmであった。
【要約】
窒化ホウ素により形成される外殻部と、外殻部に囲われた中空部と、を有し、外殻部の内側における窒化ホウ素の密度が、外殻部の外側における窒化ホウ素の密度より大きい、窒化ホウ素粒子。当該窒化ホウ素粒子と、樹脂と、を含有する樹脂組成物。当該窒化ホウ素粒子を用意する工程と、当該窒化ホウ素粒子を樹脂と混合する工程と、を備える、樹脂組成物の製造方法。
図1
図2
図3