(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】コンクリート巻厚測定装置
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
(21)【出願番号】P 2018115317
(22)【出願日】2018-06-18
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 常秀
(72)【発明者】
【氏名】半田 修
(72)【発明者】
【氏名】相崎 毅
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-262602(JP,A)
【文献】特開昭59-165798(JP,A)
【文献】特開2017-190608(JP,A)
【文献】特開2007-291792(JP,A)
【文献】特開2004-244798(JP,A)
【文献】特開2002-055091(JP,A)
【文献】特開2003-049599(JP,A)
【文献】特開2001-280953(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106014454(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内周との間にコンクリート打設用の空間を形成する型枠を位置させた際の、前記空間に打設されるコンクリートの巻厚を測定するコンクリート巻厚測定装置であって、前記型枠の外周の適宜位置に前記トンネル内周に向けて
ロッドを進退させるシリンダと、前記ロッドの進出距離を検出する距離検出手段とを備え
、前記距離検出手段は、前記ロッドの進出距離が所定値を下回ったときに異常を報知するように設定されているコンクリート巻厚測定装置。
【請求項2】
前記距離検出手段は、前記ロッドがその進出ストロークに達したときに異常を報知するように設定されている請求項1に記載のコンクリート巻厚測定装置。
【請求項3】
前記シリンダはトンネル内周に対向する前記型枠の全周に周方向へ間隔をおいて複数設けられ、測定時には前記距離検出手段は複数の前記シリンダのうち必要なものを選択して作動させるように設定されている請求項1又は2に記載のコンクリート巻厚測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート巻厚測定装置に関し、特に、トンネル内周の覆工コンクリートの巻厚(厚み)を測定するためのコンクリート巻厚測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
型枠外周のトンネル空間に打設される覆工コンクリートの巻厚は、型枠外周とこれに対向するトンネル内周との間の最短の間隔によって規定されるから、当該間隔を管理する必要があり、例えば特許文献1では、型枠外周に近い位置とトンネル内周に近い位置とで所定間隔離れて平行なレーザ光を射出して、これらレーザ光が遮られないことによって巻厚が確保されていることを検査する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、覆工前のトンネル内周はその表面が滑らかな周面とはなっていない上に、トンネル内周には通常これに沿って防水シートが張設されているが、往々にして当該シートがトンネル内周に密着せず浮いている場合が多く、上記装置では巻厚が確保されていないかの如く誤検知するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明はこのような知見に基づいてなされたもので、防水シートがトンネル内周から浮いている場合等にも、型枠外周とトンネル内周の間に打設されるコンクリート巻厚を正確に測定することが可能なコンクリート巻厚測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、トンネル(T)内周との間にコンクリート打設用の空間(S)を形成する型枠(12)を位置させた際の、前記空間(S)に打設されるコンクリートの巻厚を測定するコンクリート巻厚測定装置であって、前記型枠(12)の外周の適宜位置に前記トンネル(T)内周に向けてロッド(22)を進退させるシリンダ(21)と、前記ロッド(22)の進出距離を検出する距離検出手段(3)とを備え、前記距離検出手段(3)は、前記ロッド(22)の進出距離が所定値を下回ったときに異常を報知するように設定されている。
【0007】
本第1発明において、棒体を型枠の外周からトンネル内周に向けて当該内周に当接するまで進出させ、この時の棒体の進出距離を検出すれば、当該進出距離がコンクリート注入打設時の巻厚になるから、コンクリート巻厚を測定することができる。この際、防水シートがトンネル内周から浮いていても、棒体の先端によってトンネル内周に防水シートが押し付けられるから、棒体の進出距離が変動することはなく、コンクリート巻厚が正確に測定される。さらに型枠に対して直角に設置された棒体が進出するため、測定者の技量に頼る従来の測定方法に対してより正確な測定を行うことができる。加えて、ロッド(22)の進出距離が所定値を下回る、すなわちこの部分に打設されるコンクリート巻厚が不充分になる場合には警報が発せられて注意が喚起される。そして巻き厚が確保できるように対策を行うことができる。
【0008】
本第2発明では、前記距離検出手段(3)は、前記ロッド(22)がその進出ストロークに達したときに異常を報知するように設定されている。
【0010】
本第3発明では、前記シリンダ(21)はトンネル(T)内周に対向する前記型枠(12)の全周に周方向へ間隔をおいて複数設けられ、測定時には前記距離検出手段(3)は複数の前記シリンダ(21)のうち必要なものを選択して作動させるように設定されている。
【0019】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明のコンクリート巻厚測定装置によれば、防水シートがトンネル内周から浮いている場合等にも、型枠外周とトンネル内周の間に打設されるコンクリート巻厚を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態を示す、コンクリート巻厚測定装置を備えたトンネルセントルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0023】
(第1実施形態)
図1にはコンクリート巻厚測定装置を備えたトンネルセントル(以下、単にセントルという)1を示す。
図1において、地山にトンネルTが掘削されてその内周に一次覆工コンクリートCが吹き付けられている。さらに、一次覆工コンクリートの内表面には、
図2に示すように、防水シートHが張設されている。トンネルT内にはその長手方向(図面前後方向)へ平行レールRが敷設されて、当該平行レールR上に、セントル1を構成するガントリー11が移動可能に設置されている。
【0024】
ガントリー11には公知の構造で型枠12が載設されている。すなわち、型枠12は天端フォーム121、その両端に回動可能に連結された側フォーム122,123、さらに各側フォーム122,123に回動可能に連結された下端フォーム124,125から構成されている。これらフォーム121~125は円弧状に成形されて、天端フォーム121がガントリー11上に昇降可能に支持されており、天端フォーム11を上昇させた状態で、側フォーム12,123および下端フォーム124,125をジャッキ126,127によって外方へ展開回動させると、
図1に示すように、型枠12の外周が、トンネルTの内周から間隔をおいて内方へ離間した半円状に成形される。これにより、型枠12の外周とトンネルTの内周の間に二次覆工コンクリート(以下、単に覆工コンクリートという)を注入打設する円弧状の打設空間Sが形成される。
【0025】
ここで、本実施形態では天端フォーム121の、周方向へ間隔をおいた4か所と、左右の側フォーム122,123の、周方向へ間隔をおいた2か所に、それぞれコンクリート巻厚測定装置の検出部2が設けられている。検出部2は周方向のみならず、各フォーム121~125の幅方向(図面前後方向)の必要位置に設けられる。ここで、検出部2の設置数は単数、複数特に限定されない。
【0026】
上記各検出部2の基本構造は同じであり、その詳細を
図2に示す。
図2において、各フォーム121~125の表面、すなわち型枠12の外周を構成するスキンプレート128、の裏面に取付用ステー211を介して検出部2を構成する空圧シリンダ21が固定されている。空圧シリンダ21から延びる棒体としてのロッド22は、スキンプレート128に設けた円形の開口129に挿通されてトンネルT(一次覆工コンクリートC)の内周に向けて延びている。空圧シリンダ21の外周にはアンプ23が付設されて、アンプ23に接続されたケーブル231がコンクリート巻厚測定装置の距離検出手段たる計測部3へ至っている(
図1)。計測部3にはディスプレイ4が接続されている。なお、シリンダは必ずしも空圧に限られるものではない。
【0027】
空圧シリンダ21としては例えばSMC(株)製のCEPシリーズが使用でき、これによると、アンプ23からロッド22の進出および退入に伴って位相差が逆転した二相のパルス信号が出力されるから、パルス信号を加算ないし減算することによって、ロッド22の進出距離を容易に知ることができる。
【0028】
空圧シリンダ21のロッド22の先端部には、ロッド22よりも大径で上記開口129と同径の、金属や樹脂製の円板状の押圧部材24が設けられている。ロッド22が退入端まで後退した時には、押圧部材24によって開口129がスキンプレート128の一般面と面一に閉鎖される。なお、押圧部材24を設けない場合には、開口129とロッド22をほぼ同じ径にして、ロッド22が退入端まで後退した時にロッド22の先端面で開口129が閉鎖されるようにしても良い。また、開口129や押圧部材24の形状は四角形でも良い。
【0029】
計測部3は、各検出部2の空圧シリンダ21に進出ないし退入の指令信号を与えるとともに、ロッド22の進出ないし退入に伴ってアンプ23を介して出力されるパルス信号を加算ないし減算してロッド22の進出距離を取得する。
【0030】
上記構成のコンクリート巻厚測定装置の作動は、計測部3に内蔵されているCPUによって
図3の処理フローチャートで示すように制御される。コンクリート巻厚測定装置を作動させるのに先立って、新たな覆工コンクリートの打設位置へセントル1を移動させ、前述のように各フォーム121~125を上昇ないし展開させて型枠12の外周とトンネルT(正確には一次覆工コンクリートC)の内周との間に打設空間Sを形成する。最初に、複数ある検出部のうち巻厚測定が必要とされる位置にあるすべての検出部を選択する(
図3のステップ101)。続いて計測部3の測定開始ボタン(図示略)を押すと、選択された各検出部2の空圧シリンダ21に進出指令信号が出力されて(
図3のステップ102)ロッド22がトンネルT内周に向けて進出させられる。
【0031】
この際、
図2示すように防水シートHがトンネル内周から浮いている場合でも、ロッド22の先端の押圧部材24を介して防水シートHを押しやって、押圧部材24がトンネルT内周に当接するまでロッド22は進出する。この間にアンプ23からパルス信号が出力されるから、計測部3でパルス信号を加算してロッド22の進出距離を検出する(
図3のステップ103)。この時のロッド22の進出距離は、当該検出部2が設けられた部分の型枠12外周とこれに対向するトンネルT内周との間の打設空間Sの間隔に対応しており、これは、この部分に注入打設される覆工コンクリートの巻厚に他ならない。なお、上述のように、ある程度以上の面積を有する押圧部材24で防水シートHを押圧しているから防水シートHへの押圧力が分散されてその破損が効果的に防止される。
【0032】
そこで、ロッド22の進出距離が予め定めた設定値以上であれば(
図3のステップ104)覆工コンクリートの充分な巻厚が保証されるものとしてロッド22の進出距離、すなわちこの時の打設空間の間隔を当該検出部2の特定情報と共に記憶しディスプレイ4(
図1)等に表示する(
図3のステップ105)。
【0033】
ステップ104でロッド22の進出距離が設定値を越えない場合には覆工コンクリートの充分な巻厚が保証されないため、ロッド22の進出距離、すなわちこの時の打設空間の間隔を当該検出部2の特定情報と共に記憶表示(
図3のステップ106)した後、異常を報知し(
図3のステプ107)、この段階で処理が終了する。なお、ロッド22が進出端まで進出して進出距離がロッドのストローク位置に達した場合(
図3のステップ108)にも、検出部2に何らかの不具合が生じたものとして異常を報知し(ステップ107)、この段階で処理が終了する。これら異常による処理終了後は、異常を示した検出部のロッド22を手動で退入させた後、原因特定やその対策が行われる。
【0034】
選択された全ての検出部について巻厚測定が終了すると(
図3のステップ109)、各検出部2の空圧シリンダ21に退入指令信号が出力されて(
図3のステップ110)、ロッド22が退入端まで後退させられ、処理が終了する。
【0035】
以上のように、本実施形態のコンクリート巻厚測定装置によれば、予め定めた型枠部分での覆工コンクリートの巻厚を、多くの労力を要することなく自動的に正確な測定をすることができる。
【0036】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態のようにシリンダのロッドを棒体とするのに代えて、棒体を進出退入させる駆動機構や、棒体の進出距離を検出するエンコーダ等の検出センサを別に設けるようにしても良い。なお、この場合、駆動機構を設けずに手動で棒体を進出させるようにしても良い。
また、単なる棒体に代えて、目盛り付きの棒状スケールを進出させるようにして、その進出距離を検出センサではなく直接カメラで記録したり、目視で確認したりするようにしても良い。
駆動機構は各棒体にそれぞれ設ける必要はなく、複数の棒体で共用するようにしても良い。
押圧部材でスキンプレートの開口を閉鎖するようにしたが、開口を閉鎖する別体の蓋部材を設けることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1…トンネルセントル、12…型枠、129…開口、2…検出部、21…空圧シリンダ(駆動手段)、22…ロッド(棒体)、24…押圧部材、3…計測部(距離検出手段)、S…打設用空間、T…トンネル