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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】簡易便器
(51)【国際特許分類】
   A47K 11/04 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
A47K11/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017179586
(22)【出願日】2017-09-19
(65)【公開番号】P2019054856
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】511222674
【氏名又は名称】株式会社カワハラ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】川原 愉
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-141946(JP,A)
【文献】特開2000-152895(JP,A)
【文献】登録実用新案第3057753(JP,U)
【文献】登録実用新案第3162236(JP,U)
【文献】特開2000-070178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口を有する座面部と、前記開口の外周に沿って垂下する内側壁部を有する便器本体とを有する簡易便器であって、
前記簡易便器は、
座面部と前記便器本体とが発泡プラスチックにより形成され、形成された前記座面部または前記便器本体の少なくとも一部がコーティング材料で被覆され、
前記便器本体は、底面に開口部を有し、
前記便器本体は、前記便器本体の底面の開口部から排出された汚物を貯蔵可能な空間を有する貯蔵タンク上に、取り外し可能に載置され、
前記貯蔵タンクの上面は開口部を除いて塞がれており、
前記便器本体は、前記貯蔵タンクとの間に補強材を挟んで前記貯蔵タンクに載置されることを特徴とする簡易便器。
【請求項2】
前記貯蔵タンクは上面に前記便器本体の底面の開口部の外周と同じ、または、大きい外周の開口部を有し、
前記便器本体の底面の開口部が、前記貯蔵タンクの上面の開口部に当接するように前記便器本体が前記貯蔵タンクに載置されること、
を特徴とする請求項1に記載の簡易便器。
【請求項3】
前記座面部と前記便器本体は、前記発泡プラスチックを一体成型して形成されることを特徴とする請求項1または2記載の簡易便器。
【請求項4】
前記コーティング材料は、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載の簡易便器。
【請求項5】
前記コーティング材料は、前記座面部および前記内側壁部を被覆することを特徴とする請求項1~のいずれか1つに記載の簡易便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易便器、特に、災害発生時や屋外イベント開催時等の現場に設置することができる仮設用の簡易便器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、災害などの非常事態に備えて、緊急用の生活必需品を常備するための必要性が高まっている。その中でも、仮設用の便器を確保することは、自治体や社内において優先度が高いにもかかわらず、運搬性および保管性の問題から困難となっているのが現状である。
【0003】
運搬性の問題として、便器の多くは陶器製の素材が用いられていることから、重量が重く容易に運搬できない要因となっている。また、保管性の問題として、陶器製は割れやすいため、段ボールに収納した上であっても倉庫におけるスタッキングや、高所での保管が危険であることなどが挙げられる。さらに、仮設した便器が不要となった際の廃棄方法についても、陶器製の便器は不燃であるため焼却処分ができず、廃棄上の問題もある。
【0004】
そこで、運搬性および保管性を向上するため、紙製の簡易便器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、陶器製よりは軽量である合成樹脂製の便器も提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。一般に普及している合成樹脂製の便器の多くは、便器本体を複数に分割してパーツをそれぞれ成型し、パーツを組み合わせるための接合処理を施し、最後に各パーツを固着して組み立てる方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-44356号公報
【文献】特許第3436004号公報
【文献】特許第5104388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、紙製の簡易便器は強度が不十分であり、また、座面の座り心地があまり良くないという問題があった。また、合成樹脂製の便器は、陶器製の便器よりは軽量化できるが、ある程度の数量の便器を確保して運搬、保管するには、十分な軽量化が図られていない。また、複数パーツを組み立てる必要が生じることで製造過程における加工や組立が煩雑になってしまう。さらに、合成樹脂製の便器であっても、陶器製の便器と同様に素材上、焼却処分が困難となっている。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するために、簡易便器本体の強度を確保しつつ、座面の座り心地の快適性を向上するとともに、運搬性・保管性および加工性・組立性ならびに廃棄処分性に優れた簡易便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る簡易便器は、座面部と便器本体とが発泡プラスチックにより形成され、形成された座面部または便器本体の少なくとも一部がコーティング材料で被覆され、便器本体は、底面に開口部を有し、便器本体は、便器本体の底面の開口部から排出された汚物を貯蔵可能な空間を有する貯蔵タンク上に、取り外し可能に載置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、便器本体の強度を確保しつつ、座面の座り心地の快適性を向上するとともに、運搬性・保管性および加工性・組立性に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の簡易便器の全体図である。
図2】本実施形態における便器の製造方法を示すフローチャートである。
図3】本実施形態における簡易便器の上面図である。
図4】貯蔵タンクの上にセットされた簡易便器を示す図である。
図5】貯蔵タンクの上に載置された簡易便器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の簡易便器の全体図である。
【0012】
図1に示すように、簡易便器1は、座面部2と、便器本体4とで構成される。簡易便器1の材料には、発泡スチロール(発泡ポリスチレン)が用いられる。ここで、発泡スチロールは、本発明における発泡プラスチックの一例であり、これに限定されない。また、座面部2は、中央に開口部2aを有する。座面部2の形状は、座面部2の開口2aから座面部2の外周縁2bにかけて、座面部2に座った人の臀部が座面部2にフィットするように、臀部の形状に合わせたなだらかなカーブを形成する。また、便器本体4は、内側壁部3と開口部4aとを有する。内側内壁部3は、座面部2の開口部2aの外周に沿って便器本体4の内部の底面まで垂下し、便器本体4の内側の壁面を構成する。開口部4aは、便器本体4の上面の開口である。なお、図1においては、座面部2は、便器本体4に開閉可能に設置されたものとし、座面部2が閉じられて便器本体4の上に載置されている状態を示すが、座面部2と便器本体4が一体形成される場合は、便器本体4の開口部4aは座面部2の開口部2aに相当する。
【0013】
次に、本実施形態における簡易便器1を製造する方法について説明する。図2は、本実施形態における簡易便器1の製造方法を示すフローチャートである。
【0014】
まず、EPS(Expanded Polystyrene)金型を用いて、座面部2と便器本体4を発泡成型する(ステップS1)。具体的には、座面部2のEPS金型と便器本体4のEPS金型を作製し、これらのEPS金型を用いて、座面部2と便器本体4を発泡成型し、成型した座面部2と便器本体4を、接着剤や固定器具などにより開閉可能に固着し、簡易便器1を形成する。また、他の例として、座面部2を便器本体4から分離できない形態で、座面部2と便器本体4とを一体に固着してもよい。これにより、座面部2の開閉に伴う摩耗が生じないため、座面部2の破損を防止することができ、簡易便器1の耐久性を向上することができる。ここのように、簡易便器1に発泡スチロールを採用することで、陶器製や普及している一般的な合成樹脂製の便器よりも軽量であるため、運搬が容易となり、倉庫などで保管する際にも、簡易便器を個々に段ボールに収納することなどによりスタッキングが可能となる。また、簡易便器1を廃棄処分する際に、発泡スチロールは可燃素材であることから、焼却可能であり、使用済み便器を容易に処分することができる。また、陶器製や普及している一般的な合成樹脂製の便器と比較した高い防寒性を、容易かつ安価に、簡易便器1に備えることができる。また、便器本体4の上に座面部2を載置するだけなので複雑な組み立てや加工処理は発生せず、簡易に製造することができる。さらに、座面部2と便器本体4を別個に形成することで、それぞれのEPS金型を小さくすることができるので、使用する成型機の種類によってはコストをより低減することができる。
【0015】
また、座面部2の金型形状を、上記図1の説明のとおり、座面部2に座った際に座った人の臀部が座面部2にフィットする形状とする。これにより、座面の座り心地の快適性が向上される。
【0016】
なお、ステップS1においては、座面部2と便器本体4は、別個の金型を用いてそれぞれ別個に形成することとしたが、座面部2と便器本体4とを一つの金型により一体型に発泡形成することとしてもよい。この場合、作製するEPS金型は一つだけなので、座面部2と便器本体4を固着する工程が不要となり、より製造容易となる。
【0017】
次に、PET(Polyethylene terephthalate)(ポリエチレンテレフタレート)シート金型を用い、簡易便器1の表面を覆う表面シートを成型する(ステップS2)。ここで、表面シートは、ステップ1で形成された簡易便器1の全部または一部をコーティングするシートであり、本発明におけるコーティング材料に相当する。コーティング材料は、熱可塑性樹脂であり、本実施形態ではポリエチレンテレフタレートが用いられる。また、コーティング材料は、ステップ1で形成された簡易便器1の摩耗や汚れの付着を防止するものであり、発泡スチロールの摩耗や汚れを防止可能な熱可塑性樹脂であればよく、ポリエチレンテレフタレートに限定されない。
【0018】
また、本実施例では、表面シートは簡易便器1の全体を覆う形状に成型されるが、簡易便器1を覆う部分は、座面部2だけ、または、座面部2と内側壁部3だけのように簡易便器1の少なくとも一部としてもよい。特に、コーティング材料により覆う部分を、摩耗や汚れの付着が多い部分に限定することにより、表面シートの成型に必要なPETシートを必要最小限とすることができるので、材料費や加工工程を低減することができる。
【0019】
続いて、ステップS1において発泡成型された簡易便器1と、ステップS2において成型された表面シートを接着し一体化する(ステップS3)。具体的には、ステップS1において発泡成型された簡易便器1の表面に接着剤を塗布し、塗布した部分にステップ2において成型された表面シートを上から載せて貼り付ける。これにより、簡易便器1に用いられている発泡スチロールに、表面シートであるPETシートが一体固着されるので、簡易便器1を防水、防汚することができる。なお、本実施例では、簡易便器1を接着する方法として、接着剤を用いて簡易便器1に表面シートを接着したが、簡易便器1の表面の発泡ポリプロピレンを保護できる方法であれば、これに限定されず、散布や塗布などによる方法であってもよい。
【0020】
次に、簡易便器1に排泄された汚物を貯蔵する方法を説明する。まず、汚物を貯蔵する貯蔵タンクを別途用意し、貯蔵タンクの上に簡易便器1を載置して使用する方法を例示する。図3は、簡易便器1の上面図である。図3に示すように、便器本体4の底面には、便器本体4の底面開口部4bが設けられている。図4は、貯蔵タンクの一例を示す図である。貯蔵タンク5は、上面に便器本体4の開口部4aの外周と同じ、または、大きい外周の開口部5aを有し、貯蔵タンク5の上面は開口部5aを除いて塞がれており、内部に汚物を貯蔵可能な空間を有する。図5は、貯蔵タンク5の上に載置された簡易便器1を示す図である。図示するように、貯蔵タンク5の上に簡易便器1がセットされる。ここで、貯蔵タンク5は、便器本体1および人が便器本体1に座った際に受ける荷重を十分に支持可能とするため、補強プレートなどを便器本体1との間に挟む構造としてもよい。また、貯蔵タンク5に、段ボール素材に撥水処理を施した素材などを用いてもよい。これにより、貯蔵タンク5を使い捨て可能とし、かつ、使用済みの貯蔵タンク5を容易に焼却処分することができる。
【0021】
さらに、他の例として、既存の仮設トイレの貯蔵タンクに底面開口部4bが繋がるように、簡易便器1を仮設トイレ内に設置してもよい。これにより、汎用性の高い形態で簡易便器1を使用することができる。
【0022】
このように、本実施形態の簡易便器1によれば、座面部2と便器本体4とが発泡プラスチックで一体成型され、表面にPETシートが接着されるため、簡易便器本体の強度を確保しつつ、座面の座り心地の快適性を向上するとともに、運搬性・保管性および加工性・組立性ならびに廃棄処分性を優れたものとすることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 簡易便器
2 座面部2
2a 座面部2の開口部
2b 座面部2の外周縁
3 内側壁部
4 便器本体
4a 便器本体4の開口部
4b 便器本体4の底面開口部
5 貯蔵タンク
5a 貯蔵タンクの開口部
図1
図2
図3
図4
図5