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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】グレビティヒンジ
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/06 20060101AFI20220719BHJP
   E05D 11/10 20060101ALI20220719BHJP
   E06B 3/02 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
E05F1/06 B
E05D11/10
E06B3/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018153923
(22)【出願日】2018-08-20
(65)【公開番号】P2020029647
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】592114703
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(72)【発明者】
【氏名】小貝澤 和幸
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3036336(JP,U)
【文献】特開2007-046252(JP,A)
【文献】特開2017-218879(JP,A)
【文献】特開2001-020591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0067688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 7/00-7/14
E05D 11/10
E05F 1/02
E05F 1/06
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口の周縁と当該開口を開閉する扉のいずれか一方に固定される第一部材と、それらの他方に固定される第二部材と、第一部材と第二部材の双方に挿入されて両者を上下動可能かつ水平回転可能に支持する軸部材を備えたグレビティヒンジにおいて、
前記第一部材と第二部材の双方又はいずれか一方のカム部材のうち、他方のカム部材に対向する面に四つの傾斜面が設けられ、当該四つの傾斜面のそれぞれに、傾斜面を構成する他の部分よりも勾配が急な急勾配部が設けられ、
他方のカム部材の一部が当該急勾配部に当接することによって、扉の引込み方向への回転が規制される、
ことを特徴とするグレビティヒンジ。
【請求項2】
開口の周縁と当該開口を開閉する扉のいずれか一方に固定される第一部材と、それらの他方に固定される第二部材と、第一部材と第二部材の双方に挿入されて両者を上下動可能かつ水平回転可能に支持する軸部材を備えたグレビティヒンジにおいて、
前記第一部材は第一基体と当該第一基体に装備された第一カム部材を備え、
前記第二部材は第二基体と当該第二基体に装備された第二カム部材を備え、
前記第一カム部材及び第二カム部材の互いに対向する面にそれぞれ四つの傾斜面が設けられ、
前記第一カム部材の各傾斜面は、第一谷側傾斜部及び第一山側傾斜部と、当該第一谷側傾斜部及び第一山側傾斜部よりも勾配が急な中傾斜部を備え、
前記第二カム部材の各傾斜面は、第二谷側傾斜部及び第二山側傾斜部と、当該第二谷側傾斜部及び第二山側傾斜部よりも勾配が急な中傾斜部を備えている、
ことを特徴とするグレビティヒンジ。
【請求項3】
開口の周縁と当該開口を開閉する扉のいずれか一方に固定される第一部材と、それらの他方に固定される第二部材と、第一部材と第二部材の双方に挿入されて両者を上下動可能かつ水平回転可能に支持する軸部材を備えたグレビティヒンジにおいて、
前記第一部材は第一基体と当該第一基体に装備された第一カム部材を備え、
前記第二部材は第二基体と当該第二基体に装備された第二カム部材を備え、
前記第一カム部材のうち第二カム部材に対向する面には四つの傾斜面が設けられ、
前記第二カム部材のうち第一カム部材に対向する面には二つの係止山及び二つの偏平面が設けられ、
前記第一カム部材の各傾斜面は、谷側傾斜部と突山部と山側傾斜部を備え、
前記第一カム部材の谷側傾斜部の勾配は山側傾斜部よりも急である、
ことを特徴とするグレビティヒンジ。
【請求項4】
開口の周縁と当該開口を開閉する扉のいずれか一方に固定される第一部材と、それらの他方に固定される第二部材と、第一部材と第二部材の双方に挿入されて両者を上下動可能かつ水平回転可能に支持する軸部材を備えたグレビティヒンジにおいて、
前記第一部材は第一基体と当該第一基体に装備された第一カム部材を備え、
前記第二部材は第二基体と当該第二基体に装備された第二カム部材を備え、
前記第一カム部材及び第二カム部材の互いに対向する面には、それぞれ四つの傾斜面が設けられ、
前記第一カム部材の各傾斜面は、第一谷側傾斜部と第一つなぎ部と第一山側傾斜部を備え、
前記第一カム部材の第一谷側傾斜部の勾配は第一山側傾斜部よりも急であり、
前記第二カム部材の各傾斜面は、第二谷側傾斜部と第二つなぎ部と第二山側傾斜部を備え、
前記第二カム部材の第二谷側傾斜部の勾配は第二山側傾斜部よりも急である、
ことを特徴とするグレビティヒンジ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のグレビティヒンジにおいて、
グレビティヒンジはガラス扉用である、
ことを特徴とするグレビティヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレビティヒンジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴室などで使用されるガラス扉の保持にはグレビティヒンジが用いられている(特許文献1)。従来のグレビティヒンジの説明図を図24及び図25(a)(b)に示す。図24において、Aは扉枠Yに固定されるベース側部材、Bは扉Xに固定される扉側部材、Cはベース側部材Aと扉側部材Bの双方に差し込まれる軸部材、Dは扉Xを保持する扉保持部材である。ベース側部材Aにはベース側カム部材Eが、扉側部材Bには扉側カム部材Fが設けられている。図25(a)(b)に示すように、両カム部材E、Fの夫々の上面には、なだらかな四つの傾斜面E1~E4及びF1~F4(傾斜面F3は図示せず)が設けられている。傾斜面E1~E4及びF1~F4のそれぞれの勾配は、概ね10度~30度の範囲で設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-46252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記グレビティヒンジのベース側カム部材Eの上面及び扉側カム部材Fの底面は、凹凸のない傾斜面E1~E4(F1~F4)で構成されているため、扉の開閉をスムーズに行うことができる。一方で、浴室を換気するために換気扇を使用した場合等、扉に対して浴室の内側に引き込む力(以下「引込み力」という)が働くと、扉が開いて水が浴室外に出てしまうという難点があった。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、扉のスムーズな開閉を確保しつつ、扉に引込み力が生じることによる不都合を解消することのできるグレビティヒンジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のグレビティヒンジは、開口の周縁と当該開口を開閉する扉のいずれか一方に固定される第一部材(例えば、ベース側部材)と、それらの他方に固定される第二部材(例えば、扉側部材)と、第一部材と第二部材の双方に挿入されて両者を上下動可能かつ水平回転可能に支持する軸部材を備えたグレビティヒンジにおいて、第一部材と第二部材の双方又はいずれか一方のカム部材の傾斜面に、当該傾斜面を構成する他の部分よりも勾配が急な急勾配部が設けられ、扉の回転に際して他方のカム部材の一部が当該急勾配部に当接することによって、扉の引込み方向への回転が規制されるようにしたものである。ここで、本願における「規制」とは反力(抵抗)が大きくなるという程度の意味である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のグレビティヒンジは、第一カム部材と第二カム部材のいずれかの傾斜面に、他の部分よりも勾配が急な急勾配部が設けられ、当該急勾配部によって扉の引込み方向への回転が規制されるようにしてあるため、換気扇の使用によって室内側に引込み力が生じても扉が開かず、水が浴室外に出るという不都合が生じにくい。また、傾斜面全面を急勾配にするのではなく、勾配が急でない部分(緩勾配部)を残してあるため、扉のスムーズな開閉を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のグレビティヒンジの使用例を示す正面図。
図2】本発明のグレビティヒンジの第一の実施形態を示す分解斜視図。
図3】(a)は図2に示すグレビティヒンジのベース側カム部材の右上方斜視図、(b)は図2に示すグレビティヒンジのベース側カム部材の左上方斜視図。
図4】(a)は図3(a)(b)に示すベース側カム部材の正面図、(b)は(a)の背面図、(c)は(a)の左側面図、(d)は(a)の右側面図、(e)は(a)の平面図、(f)は(a)の底面図。
図5】(a)は図2に示すグレビティヒンジの扉側カム部材の右下方斜視図、(b)は図2に示すグレビティヒンジの扉側カム部材の左下方斜視図。
図6】(a)は図5(a)(b)に示す扉側カム部材の正面図、(b)は(a)の背面図、(c)は(a)の左側面図、(d)は(a)の右側面図、(e)は(a)の平面図、(f)は(a)の底面図。
図7】(a)はベース側収容部にベース側カム部材が圧入された状態を示す説明図、(b)はベース側収容部に圧入されたベース側カム部材の上に扉側部材の扉側カム部材を配置した状態を示す説明図。
図8】(a)は扉を閉じた状態のベース側カム部材と扉側カム部材の係合部分の説明図、(b)は扉を10度開いた状態のベース側カム部材と扉側カム部材の係合部分の説明図。
図9】(a)は扉を70度開いた状態のベース側カム部材と扉側カム部材の係合部分の説明図、(b)は扉を90度開いた状態のベース側カム部材と扉側カム部材の係合部分の説明図。
図10】(a)はグレビティヒンジの第二の実施形態におけるベース側カム部材の右上方斜視図、(b)はグレビティヒンジの第二の実施形態におけるベース側カム部材の左上方斜視図。
図11】(a)は図10(a)(b)に示すベース側カム部材の正面図、(b)は(a)の背面図、(c)は(a)の左側面図、(d)は(a)の右側面図、(e)は(a)の平面図、(f)は(a)の底面図。
図12】(a)はグレビティヒンジの第二の実施形態における扉側カム部材の右下方斜視図、(b)はグレビティヒンジの第二の実施形態における扉側カム部材の左下方斜視図。
図13】(a)は図12(a)(b)に示す扉側カム部材の正面図、(b)は(a)の背面図、(c)は(a)の左側面図、(d)は(a)の右側面図、(e)は(a)の平面図、(f)は(a)の底面図。
図14】(a)はベース側収容部に図10(a)(b)のベース側カム部材が圧入された状態を示す説明図、(b)はベース側収容部に圧入されたベース側カム部材の上に扉側部材の扉側カム部材を配置した状態を示す説明図。
図15】(a)は扉を閉じた状態のベース側カム部材と扉側カム部材の係合部分の説明図、(b)は扉を20度開いた状態のベース側カム部材と扉側カム部材の係合部分の説明図。
図16】(a)は扉を70度開いた状態のベース側カム部材と扉側カム部材の係合部分の説明図、(b)は扉を90度開いた状態のベース側カム部材と扉側カム部材の係合部分の説明図。
図17】(a)はグレビティヒンジの第三の実施形態におけるベース側カム部材の右上方斜視図、(b)はグレビティヒンジの第三の実施形態におけるベース側カム部材の左上方斜視図。
図18】(a)は図17(a)(b)に示すベース側カム部材の正面図、(b)は(a)の背面図、(c)は(a)の左側面図、(d)は(a)の右側面図、(e)は(a)の平面図、(f)は(a)の底面図。
図19】(a)はグレビティヒンジの第三の実施形態における扉側カム部材の右下方斜視図、(b)はグレビティヒンジの第三の実施形態における扉側カム部材の左下方斜視図。
図20】(a)は図19(a)(b)に示す扉側カム部材の正面図、(b)は(a)の背面図、(c)は(a)の左側面図、(d)は(a)の右側面図、(e)は(a)の平面図、(f)は(a)の底面図。
図21】(a)はベース側収容部に図17(a)(b)のベース側カム部材が圧入された状態を示す説明図、(b)はベース側収容部に圧入されたベース側カム部材の上に扉側部材の扉側カム部材を配置した状態を示す説明図。
図22】(a)は扉を閉じた状態のベース側カム部材と扉側カム部材の係合部分の説明図、(b)は扉を10度開いた状態のベース側カム部材と扉側カム部材の係合部分の説明図。
図23】(a)は扉を70度開いた状態のベース側カム部材と扉側カム部材の係合部分の説明図、(b)は扉を90度開いた状態のベース側カム部材と扉側カム部材の係合部分の説明図。
図24】従来のグレビティヒンジの一例を示す分解斜視図。
図25】(a)はベース側収容部に従来のベース側カム部材が圧入された状態を示すもの、(b)はベース側収容部に圧入されたベース側カム部材の上に扉側部材の扉側カム部材を配置した状態を示すもの。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
本発明のグレビティヒンジ1の第一の実施形態を、図1図9(a)(b)を参照して説明する。この実施形態のグレビティヒンジ1は、各種扉、特に、浴室等の換気が必要な個室に設置されるガラス扉を保持するのに適するものである。図1において、1はグレビティヒンジ、Xは扉、Yは扉枠、Zは扉枠Yに設けられた戸当たりである。
【0010】
図1に示すグレビティヒンジ1の分解図を図2に示す。図2において、3は扉枠Yに固定されるベース側部材、4は扉Xに固定される扉側部材、5はベース側部材3と扉側部材4の双方に差し込まれる軸部材、6は扉Xを保持する扉保持部材である。
【0011】
図2に示すように、前記ベース側部材3は、扉枠Yに固定する基体(以下「ベース側基体」という)31とカム部材(以下「ベース側カム部材」という)32を備えている。ベース側基体31は扉枠Yに固定する縦長平板状の固定部31aと、当該固定部31aの下半分に設けられた筒状部31bを備えている。
【0012】
固定部31aには、複数個(図示する例では三個)のビス穴31cが設けられている。ベース側基体31は当該ビス穴31cに差し込んだビス31dで扉枠Yに固定される。筒状部31bには上面開口部31fを備えたベース側収容部31eが設けられ、当該ベース側収容部31eにベース側カム部材32が圧入されている。
【0013】
図2及び図3(a)(b)に示すように、前記ベース側カム部材32は、ベース側収容部31eに収まる圧入部32aと圧入部32aの上方に設けられた大径部32bと大径部32bの上方に設けられた鍔部32cと鍔部32cより上側に突出するカム部32dを備えている。圧入部32aは軸部材5を挿入するための有底の挿入穴32eを備えた筒状であり、その外周には縦長のリブ32fが四本設けられている。
【0014】
図3(a)(b)及び図4(a)~(f)に示すように、ベース側カム部材32のカム部32dの上面には、連続する四つの傾斜面(以下、それぞれの傾斜面を「第一傾斜面33」「第二傾斜面34」「第三傾斜面35」「第四傾斜面36」という)が設けられ、それら傾斜面33~36によって二つの山部(第一傾斜面33と第二傾斜面34で構成される第一山部及び第三傾斜面35と第四傾斜面36で構成される第二山部)と、二つの谷部(第四傾斜面36と第一傾斜面33で構成される第一谷部及び第二傾斜面34と第三傾斜面35で構成される第二谷部)が形成されている。第一傾斜面33と第二傾斜面34の間には第一山部の第一頂部T1が、第三傾斜面35と第四傾斜面36の間には第二山部の第二頂部T2が、第四傾斜面36と第一傾斜面33の間には第一底部B1が、第二傾斜面34と第三傾斜面35の間には第二底部B2が形成されている。
【0015】
前記傾斜面33~36の夫々は、谷側傾斜部33a、34a、35a、36a、中傾斜部33b、34b、35b、36b、及び山側傾斜部33c、34c、35c、36cを備えている。中傾斜部33b、34b、35b、36bは、谷側傾斜部33a、34a、35a、36a及び山側傾斜部33c、34c、35c、36cよりも急勾配としてある。具体的には、谷側傾斜部33a、34a、35a、36aの勾配を22度程度、中傾斜部33b、34b、35b、36bの勾配を60度程度、山側傾斜部33c、34c、35c、36cの勾配を22度程度としてある。この実施形態では、中傾斜部33b、34b、35b、36bが急勾配部に当たる。この実施形態では、中傾斜部33b、34b、35b、36bを、それぞれの傾斜面33~36の山側傾斜部33c、34c、35c、36c寄りの位置に設けてあるが、中傾斜部33b、34b、35b、36bは、図示した位置と異なる位置に設けることもできる。
【0016】
なお、前記各傾斜部の角度は一例であり、これ以外の角度とすることができる。例えば、緩勾配部(この実施形態では、谷側傾斜部33a、34a、35a、36a及び山側傾斜部33c、34c、35c、36c)の勾配は15度~45度の任意角度とすることができ、急勾配部(この実施形態では、中傾斜部33b、34b、35b、36b)は前記緩勾配部よりも急な勾配であることを前提に45度~75度の任意角度とすることができる。各傾斜部の勾配は、扉のせり上がり幅(扉を開ける際の当該扉の上昇幅)に配慮して設定する必要がある。例えば、せり上がり幅の上限が5mm以下に設定されている場合には、扉が5mmを超えて上下動することがないように各傾斜部の勾配を設定し、せり上がり幅の上限が8mm以下に設定されている場合には、扉が8mmを超えて上下動することがないように各傾斜部の勾配を設定する。いずれの場合も、扉側カム部材42のカム部42cの形状(各傾斜面の勾配)に適合する形状となるように配慮する。
【0017】
前記扉側部材4は、図2に示すように、扉Xに取り付ける扉側基体41と当該扉側基体41の筒状部41bに圧入される扉側カム部材42を備えている。扉側基体41は扉Xに固定する縦長平板状の固定部41aと、当該固定部41aの側方に設けられた筒状部41bを備えている。固定部41aの裏面側には、筒状のビス受け部41cが上下方向に間隔をあけて二つ突設されている。筒状部41bには底面開口部41fを備えた扉側収容部41eが設けられ、当該扉側収容部41eに扉側カム部材42が圧入されている。
【0018】
前記扉側カム部材42は、図2及び図5(a)(b)に示すように、扉側収容部41eに収まる圧入部42aと圧入部42aの下方に設けられた鍔部42bと鍔部42bより下側に突出するカム部42cを備えている。圧入部42aは軸部材5を挿入するための有底の挿入穴42dを備えた筒状であり、その外周には縦長のリブ42eが四本設けられている。
【0019】
扉側カム部材42のカム部42cは、連続する四つの傾斜面(以下、それぞれの傾斜面を「第一傾斜面43」「第二傾斜面44」「第三傾斜面45」「第四傾斜面46」という)が設けられ、それら傾斜面43~46によって二つの山部(第一傾斜面43と第二傾斜面44で構成される第一山部及び第三傾斜面45と第四傾斜面46で構成される第二山部)と、二つの谷部(第四傾斜面46と第一傾斜面43で構成される第一谷部及び第二傾斜面44と第三傾斜面45で構成される第二谷部)が形成されている。第一傾斜面43と第二傾斜面44の間には第一山部の第一頂部T1が、第三傾斜面45と第四傾斜面46の間には第二山部の第二頂部T2が、第四傾斜面46と第一傾斜面43の間には第一底部B1が、第二傾斜面44と第三傾斜面45の間には第二底部B2が形成されている。
【0020】
前記傾斜面43~46の夫々は、谷側傾斜部43a、44a、45a、46a、中傾斜部43b、44b、45b、46b、及び山側傾斜部43c、44c、45c、46cを備えている。中傾斜部43b、44b、45b、46bは、谷側傾斜部43a、44a、45a、46a及び山側傾斜部43c、44c、45c、46cよりも勾配を急にしてある。具体的には、谷側傾斜部43a、44a、45a、46aの勾配を22度程度、中傾斜部43b、44b、45b、46bの勾配を60度程度、山側傾斜部43c、44c、45c、46cの勾配を22度程度としてある。この実施形態では、中傾斜部43b、44b、45b、46bが急勾配部に当たる。この実施形態では、中傾斜部43b、44b、45b、46bを、それぞれの傾斜面43~46の谷側傾斜部43a、44a、45a、46a寄りの位置に設けてあるが、中傾斜部43b、44b、45b、46bは、図示した位置と異なる位置に設けることもできる。
【0021】
なお、前記各傾斜部の角度は一例であり、これ以外の角度とすることができる。例えば、緩勾配部(この実施形態では、谷側傾斜部43a、44a、45a、46a及び山側傾斜部43c、44c、45c、46c)の勾配は15度~45度の任意角度とすることができ、急勾配部(この実施形態では、中傾斜部43b、44b、45b、46b)は前記緩勾配部よりも急な勾配であることを前提に45度~75度の任意角度とすることができる。各傾斜部の勾配は、扉のせり上がり幅に配慮して設定する必要がある。例えば、せり上がり幅の上限が5mm以下に設定されている場合には、扉が5mmを超えて上下動することがないように各傾斜部の勾配を設定し、せり上がり幅の上限が8mm以下に設定されている場合には、扉が8mmを超えて上下動することがないように各傾斜部の勾配を設定する。いずれの場合も、ベース側カム部材32のカム部32dの形状(各傾斜面の勾配)に適合する形状となるように配慮する。
【0022】
前記軸部材5は、ベース側部材3と扉側部材4を連結するものである。一例として図2に示す軸部材5は縦長の棒状部材である。軸部材5の一端側(図2に示す例では上端側)は先細りのテーパー状にしてある。軸部材5はその長手方向の下側半分程度がベース側カム部材32の挿入穴32e内に収容され、残りの部分が扉側カム部材42の挿入穴42d内に収容される。両挿入穴32e、42dに挿入された軸部材5は、両挿入穴32e、42d内で固定されるわけではなく、回転可能な状態で挿入されている。
【0023】
前記扉保持部材6は扉側部材4の固定部41aと協働して扉Xを保持するための部材である。一例として図2に示す扉保持部材6は、扉Xの両面に宛がわれる二枚の板状パッキン61と、ビス受け部41cの外周に被さる二つの筒状パッキン62と、扉側部材4の固定部41aと扉Xを挟んで反対側に配置される挟持片63と、固定部41a、板状パッキン61、扉X、板状パッキン61及び挟持片63を固定する二つの固定ビス64と、固定ビス64の固定時に介材させるワッシャ65と、挟持片63に被せるカバー66を備えている。
【0024】
前記板状パッキン61は固定部41aと同程度の大きさのゴム材であり、扉Xの表面及び裏面に宛がわれる部材である。板状パッキン61の形状は一例であり、これ以外であってもよい。板状パッキン61には、樹脂製のものやビニール製のものなどゴム製以外のものを用いることもできる。二枚の板状パッキン61には、固定ビス64が通過可能な貫通孔61aが上下方向に間隔をあけて設けられている。貫通孔61aの位置や数は、扉Xに合わせて決定すればよい。
【0025】
前記筒状パッキン62はビス受け部41cの外側に被せて、扉Xに設けられた貫通孔(図示しない)に収まる部材である。筒状パッキン62により、扉Xに設けられた貫通孔の周縁とビス受け部41cに係る衝撃が吸収される。筒状パッキン62には樹脂製のものやビニール製のもの、ゴム製のもの等を用いることができる。
【0026】
前記挟持片63は、扉側部材4の固定部41aの反対側から扉Xに宛がって、固定部41aと協同して扉Xを挟持するものである。一例として図2に示す挟持片63は板状パッキン61と同形状の縦長の薄板材である。挟持片63には、前記固定ビス64が通過可能な貫通孔63aが上下方向に間隔をあけて設けられている。貫通孔63aの位置や数は、扉Xに合わせて決定すればよい。
【0027】
前記カバー66は挟持片63に被せる部材である。一例として図2に示すカバーは挟持片63の外側面及び外周面に被さる縦長の皿状である。固定ビス64での固定後、挟持片63にカバー66を被せることで、固定ビス64などを隠すことができる。
【0028】
以上の構成からなる扉保持部材6を用いる場合、図2に示すように、扉Xの両外側に板状パッキン61を配置し、板状パッキン61の外側を固定部41a及び挟持片63で挟みこんだ状態で、挟持片63の外側から差し込まれる固定ビス64を扉側部材4のビス受け部41cにねじ込むことで、扉Xを保持することができる。
【0029】
(実施形態1のグレビティヒンジの動作)
この実施形態のグレビティヒンジ1の動作を、図8(a)(b)及び図9(a)(b)を参照して説明する。図8(a)は扉Xを閉じた状態のグレビティヒンジ1を示すもの、図8(b)は扉Xを10度開いた状態のグレビティヒンジ1を示すもの、図9(a)は扉Xを70度開いた状態のグレビティヒンジ1を示すもの、図9(b)は扉Xを90度開いた状態のグレビティヒンジ1を示すものである。
【0030】
扉Xが閉じた状態では、扉側カム部材42の第二傾斜面44の中傾斜部44bがベース側カム部材32の第一傾斜面33の中傾斜部33bに突き当たっている(図8(a))。この状態から扉Xを10度まで開くと、第二傾斜面44の中傾斜部44bがベース側カム部材32の第一傾斜面33の中傾斜部33bを乗り越え、山側傾斜部33cに乗り上げる(図8(b))。さらに扉Xを70度まで開くと、扉側カム部材42の第一頂部T1がベース側カム部材32の第一頂部T1上に到達する(図9(a))。この状態から扉Xを90度まで開くと、扉側カム部材42の第一頂部T1がベース側カム部材32の第一頂部T1を乗り越えて、ベース側カム部材32の第二傾斜面34の山側傾斜部34cに沿って下がっていく(図9(b))。
【0031】
以上のように動作するグレビティヒンジ1で保持される扉Xは、閉じた状態からベース側カム部材32の第一傾斜面33の中傾斜部33b(急勾配部)を乗り越えるまでの間に大きな反力がかかって扉Xが開きにくくなり、当該中傾斜部33bを越えて山側傾斜部33cに入ると、反力が小さくなって扉Xが開きやすくなる。したがって、急勾配部の角度を、換気扇の使用により生じる引込み力では越えられないような角度としておくことで、換気扇の使用時に不用意に扉Xが開くのを防止することができる。また、この実施形態では、各傾斜面に緩勾配部を設けているため、傾斜面全面を急勾配とする場合に比して扉の開けやすさが阻害されにくい。さらに、傾斜面全面を急勾配とした場合には扉が過剰に上下動するおそれがあるが、この実施形態では各傾斜面に緩勾配部を設けているため、そのような心配もない。
【0032】
なお、扉Xを閉じた状態(図8(a))で扉側カム部材42がベース側カム部材32の第一傾斜面33(谷側傾斜部33a)に沿って下がらないのは、図1のように、扉Xが扉枠Yの戸当たりZに突き当たってそれ以上回転しないからである。また、扉Xを90度開いた状態(図9(b))で扉側カム部材42がベース側カム部材32の第四傾斜面36(山側傾斜部36c)に沿って下がらないのは、扉Xが図示しない戸当たりに突き当たってそれ以上回転しないからである。
【0033】
(実施形態2)
本発明のグレビティヒンジ1の第二の実施形態を、図10(a)(b)~図16(a)(b)を参照して説明する。この実施形態のグレビティヒンジ1の基本的な構成は前記実施形態1と同様である。異なるのは、ベース側カム部材32のカム部32d及び扉側カム部材42のカム部42cの構造である。以下では、実施形態1と異なる部分を中心に説明し、共通する部分については適宜その説明を省略する。
【0034】
図10(a)(b)及び図11(a)~(f)に示すように、この実施形態のベース側カム部材32のカム部32d上面には、連続する四つの傾斜面(第一傾斜面33、第二傾斜面34、第三傾斜面35及び第四傾斜面36)が設けられ、それら傾斜面33~36によって二つの山部(第一傾斜面33と第二傾斜面34で構成される第一山部及び第三傾斜面35と第四傾斜面36で構成される第二山部)と、二つの谷部(第四傾斜面36と第一傾斜面33で構成される第一谷部及び第二傾斜面34と第三傾斜面35で構成される第二谷部)が形成されている。第一傾斜面33と第二傾斜面34の間には第一山部の第一頂部T1が、第三傾斜面35と第四傾斜面36の間には第二山部の第二頂部T2が、第四傾斜面36と第一傾斜面33の間には第一底部B1が、第二傾斜面34と第三傾斜面35の間には第二底部B2が形成されている。
【0035】
前記傾斜面33~36の夫々は、谷側傾斜部33a、34a、35a、36a、突山部33d、34d、35d、36d、及び山側傾斜部33c、34c、35c、36cを備えている。谷側傾斜部33a、34a、35a、36aは、山側傾斜部33c、34c、35c、36cよりも勾配を急にしてある。具体的には、谷側傾斜部33a、34a、35a、36aの勾配を60度程度、山側傾斜部33c、34c、35c、36cの勾配を22度程度としてある。突山部33d、34d、35d、36dは、谷側傾斜部33a、34a、35a、36aと山側傾斜部33c、34c、35c、36cの間に形成された山形状の部分である。突山部33d、34d、35d、36dと山側傾斜部33c、34c、35c、36cの間には、突山部33d、34d、35d、36dよりも一段低い中腹谷部33e、34e、35e、36eが形成されている。この実施形態では、突山部33d、34d、35d、36dを、それぞれの傾斜面33~36の山側傾斜部33c、34c、35c、36c寄りの位置に設けてあるが、突山部33d、34d、35d、36dは、図示した位置と異なる位置に設けることもできる。
【0036】
なお、前記各傾斜部の角度は一例であり、これ以外の角度とすることができる。例えば、緩勾配部(この実施形態では、山側傾斜部33c、34c、35c、36c)の勾配は15度~45度の任意角度とすることができ、急勾配部(この実施形態では、谷側傾斜部33a、34a、35a、36a)は前記緩勾配部よりも急な勾配であることを前提に45度~75度の任意角度とすることができる。各傾斜部の勾配は、扉のせり上がり幅に配慮して設定する必要がある。例えば、せり上がり幅の上限が5mm以下に設定されている場合には、扉が5mmを超えて上下動することがないように各傾斜部の勾配を設定し、せり上がり幅の上限が8mm以下に設定されている場合には、扉が8mmを超えて上下動することがないように各傾斜部の勾配を設定する。いずれの場合も、扉側カム部材42のカム部42cの形状(各傾斜面の勾配)に適合する形状となるように配慮する。
【0037】
前記扉側カム部材42は、図12(a)(b)及び図13(a)~(f)に示すように、扉側収容部41eに収まる圧入部42aと圧入部42aの下方に設けられた鍔部42bと鍔部42bより下側に突出するカム部42cを備えている。圧入部42aは軸部材5を挿入するための有底の挿入穴42dを備えた筒状であり、その外周には縦長のリブ42eが四本設けられている。
【0038】
この実施形態の扉側カム部材42のカム部42cは、二つの係止山(第一係止山47a及び第二係止山47b)と、それら二つの係止山47a、47bの間に形成された二つの偏平面(第一偏平面48a及び第二偏平面48b)を備えている。両係止山47a、47bを構成する両斜面は、谷側傾斜部33a、34a、35a、36aと面接触する角度(具体的には60度程度)としてある。両係止山47a、47bの高さは、ベース側カム部材32の第一谷部や第二谷部の深さより低くしてあり、両係止山47a、47bがベース側カム部材32の第一谷部や第二谷部に収まったときに、当該両係止山47a、47bの先端47cが当該ベース側カム部材32の第一底部B1や第二底部B2に触れないようにしてある。両係止山47a、47bは、一方(例えば第一係止山47a)がベース側カム部材32の第一谷部に収まったときに、他方(例えば第二係止山47b)が当該ベース側カム部材32の第二谷部に収まる位置に設けてある。なお、前記両係止山47a、47bを構成する両斜面の角度は一例であり、ベース側カム部材32のカム部32dの形状(各傾斜面の勾配)に応じて適宜の角度とすることができる。
【0039】
(実施形態2のグレビティヒンジの動作)
この実施形態のグレビティヒンジ1の動作を、図15(a)(b)及び図16(a)(b)を参照して説明する。図15(a)は扉Xを閉じた状態を示すもの、図15(b)は扉Xを20度開いた状態を示すもの、図16(a)は扉Xを70度開いた状態を示すもの、図16(b)は扉Xを90度開いた状態を示すものである。
【0040】
扉Xが閉じた状態では扉側カム部材42の第一係止山47aを構成する斜面がベース側カム部材32の突山部33dに当接している(図15(a))。この状態から扉Xを20度まで開くと、扉側カム部材42の第一係止山47aがベース側カム部材32の突山部33dを乗り超える(図15(b))。さらに扉Xを70度まで開くと、扉側カム部材42の第一係止山47aの先端47cがベース側カム部材32の第一頂部T1に到達する(図16(a))。この状態から扉Xを90度まで開くと、扉側カム部材42の第一係止山47aがベース側カム部材32の第一頂部T1を乗り越えて、扉側カム部材42が第二傾斜面34の山側傾斜部34cに沿って下がっていく(図16(b))。
【0041】
なお、扉Xを閉じた状態(図15(a))で扉側カム部材42がベース側カム部材32の第一傾斜面33(谷側傾斜部33a)に沿って下がらないのは、図1のように、扉Xが扉枠Yの戸当たりZに突き当たってそれ以上回転しないからである。また、扉Xを90度開いた状態(図16(b))で扉側カム部材42がベース側カム部材32の第四傾斜面36(山側傾斜部36c)に沿って下がらないのは、扉Xが図示しない戸当たりに突き当たってそれ以上回転しないからである。
【0042】
以上のように動作するグレビティヒンジ1で保持される扉Xは、20度までは軽い力では開かず、20度以上開けるためには、谷側傾斜部33aをのり越えられる程度の力を掛けなければそれ以上開けることは出来ない。したがって、急勾配部(谷側傾斜部33a)の角度を、換気扇の使用により生じる引込み力では越えられないような角度としておくことで、換気扇の使用時に不用意に扉Xが開くのを防止することができる。実施形態1と同様、この実施形態でも、各傾斜面に緩勾配部を設けているため、傾斜面全面を急勾配とする場合に比して扉の開けやすさが阻害されにくい。さらに、傾斜面全面を急勾配とした場合には扉が過剰に上下動するおそれがあるが、この実施形態では各傾斜面に緩勾配部を設けているため、そのような心配もない。
【0043】
(実施形態3)
本発明のグレビティヒンジ1の第三の実施形態を、図17(a)(b)~図23(a)(b)を参照して説明する。この実施形態のグレビティヒンジの基本的な構成は前記実施形態1と同様である。異なるのは、ベース側カム部材32のカム部32dと扉側カム部材42のカム部42cの構造である。以下では、実施形態1と異なる部分を中心に説明し、共通する部分については適宜その説明を省略する。
【0044】
図17(a)(b)及び図18(a)~(f)に示すように、この実施形態のカム部32dの上面には、四つの傾斜面(第一傾斜面33、第二傾斜面34、第三傾斜面35及び第四傾斜面36)及び二つの平坦部(以下、それぞれの平坦部を「第一平坦部37a」「第二平坦部37b」という)が設けられている。この実施形態では、第一傾斜面33と第二傾斜面34で第一山部が、第三傾斜面35と第四傾斜面36で第二山部が形成されている。第一傾斜面33と第二傾斜面34の間には第一山部の第一頂部T1が、第三傾斜面35と第四傾斜面36の間には第二山部の第二頂部T2が形成され、第四傾斜面36と第一傾斜面33の間には第一平坦部37a(第一底部B1)が、第二傾斜面34と第三傾斜面35の間には第二平坦部37b(第二底部B2)が形成されている。
【0045】
前記傾斜面33~36の夫々は、谷側傾斜部33a、34a、35a、36a、つなぎ部33f、34f、35f、36f、及び山側傾斜部33c、34c、35c、36cを備えている。この実施形態では、谷側傾斜部33a、34a、35a、36aの勾配を、山側傾斜部33c、34c、35c、36cよりも急にしてある。具体的には、谷側傾斜部33a、34a、35a、36aの勾配を60度程度、山側傾斜部33c、34c、35c、36cの勾配を22度程度としてある。この実施形態では、谷側傾斜部33a、34a、35a、36aが急勾配部に当たる。この実施形態では、つなぎ部33f、34f、35f、36fを、それぞれの傾斜面33~36の山側傾斜部33c、34c、35c、36c寄りの位置に設けてあるが、つなぎ部33f、34f、35f、36fは、図示した位置と異なる位置に設けることもできる。
【0046】
なお、前記各傾斜部の角度は一例であり、これ以外の角度とすることができる。例えば、緩勾配部(この実施形態では、山側傾斜部33c、34c、35c、36c)の勾配は15度~45度の任意角度とすることができ、急勾配部(この実施形態では、谷側傾斜部33a、34a、35a、36a)は前記緩勾配部よりも急な勾配であることを前提に45度~75度の任意角度とすることができる。各傾斜部の勾配は、扉のせり上がり幅に配慮して設定する必要がある。例えば、せり上がり幅の上限が5mm以下に設定されている場合には、扉が5mmを超えて上下動することがないように各傾斜部の勾配を設定し、せり上がり幅の上限が8mm以下に設定されている場合には、扉が8mmを超えて上下動することがないように各傾斜部の勾配を設定する。いずれの場合も、扉側カム部材42のカム部42cの形状(各傾斜面の勾配)に適合する形状となるように配慮する。
【0047】
前記第一平坦部37aは実施形態1における第一底部B1に相当する部分であり、第一傾斜面33の谷側傾斜部33aと第四傾斜面36の谷側傾斜部36aの間に形成された面状部分である。前記第二平坦部37bは実施形態1における第二底部B2に相当する部分であり、第二傾斜面34の谷側傾斜部34aと第三傾斜面35の谷側傾斜部35aの間に形成された面状部分である。
【0048】
図19(a)(b)及び図20(a)~(f)に示すように、この実施形態の扉側カム部材42のカム部42cは、四つの傾斜面(第一傾斜面43、第二傾斜面44、第三傾斜面45及び第四傾斜面46)及び二つの平坦部(以下、それぞれの平坦部を「第一平坦部49a」「第二平坦部49b」という)が設けられている。この実施形態では、第一傾斜面43と第二傾斜面44で第一山部が、第三傾斜面45と第四傾斜面46で第二山部が形成されている。第一傾斜面43と第二傾斜面44の間には第一山部の第一頂部T1が、第三傾斜面45と第四傾斜面46の間には第二山部の第二頂部T2が、第四傾斜面46と第一傾斜面43の間には第一平坦部49a(第一底部B1)が、第二傾斜面44と第三傾斜面45の間には第二平坦部49b(第二底部B2)が形成されている。
【0049】
前記傾斜面43~46の夫々は、谷側傾斜部43a、44a、45a、46a、つなぎ部43d、44d、45d、46d、及び山側傾斜部43c、44c、45c、46cを備えている。谷側傾斜部43a、44a、45a、46aは、山側傾斜部43c、44c、45c、46cよりも勾配を急にしてあり、山側傾斜部43c、44c、45c、46cは、つなぎ部43d、44d、45d、46dよりも勾配を急にしてある。具体的には、谷側傾斜部43a、44a、45a、46aの勾配を60度程度、山側傾斜部43c、44c、45c、46cの勾配を22度程度としてある。この実施形態では、谷側傾斜部43a、44a、45a、46aが急勾配部に当たる。この実施形態では、つなぎ部43d、44d、45d、46dを、それぞれの傾斜面43~46の谷側傾斜部43a、44a、45a、46a寄りの位置に設けてあるが、つなぎ部43d、44d、45d、46dは、図示した位置と異なる位置に設けることもできる。
【0050】
なお、前記各傾斜部の角度は一例であり、これ以外の角度とすることができる。例えば、緩勾配部(この実施形態では、山側傾斜部43c、44c、45c、46c)の勾配は15度~45度の任意角度とすることができ、急勾配部(この実施形態では、谷側傾斜部43a、44a、45a、46a)は前記緩勾配部よりも急な勾配であることを前提に45度~75度の任意角度とすることができる。各傾斜部の勾配は、扉のせり上がり幅に配慮して設定する必要がある。例えば、せり上がり幅の上限が5mm以下に設定されている場合には、扉が5mmを超えて上下動することがないように各傾斜部の勾配を設定し、せり上がり幅の上限が8mm以下に設定されている場合には、扉が8mmを超えて上下動することがないように各傾斜部の勾配を設定する。いずれの場合も、ベース側カム部材32のカム部32dの形状(各傾斜面の勾配)に適合する形状となるように配慮する。
【0051】
前記第一平坦部49aは実施形態1における第一底部B1に相当する部分であり、第一傾斜面43の谷側傾斜部43aと第四傾斜面46の谷側傾斜部46aの間に形成された面状部分である。前記第二平坦部49bは実施形態1における第二底部B2に相当する部分であり、第二傾斜面44の谷側傾斜部44aと第三傾斜面45の谷側傾斜部45aの間に形成された面状部分である。
【0052】
(実施形態3のグレビティヒンジの動作)
この実施形態のグレビティヒンジの動作を、図22(a)(b)及び図22(a)(b)を参照して説明する。図22(a)は扉Xを閉じた状態を示すもの、図23(b)は扉Xを10度開いた状態を示すもの、図23(a)は扉Xを70度開いた状態を示すもの、図23(b)は扉Xを90度開いた状態を示すものである。
【0053】
扉Xが閉じた状態では扉側カム部材42の第二傾斜面44の谷側傾斜部44aがベース側カム部材32の第一傾斜面33の谷側傾斜部33aに突き当たっている(図22(a))。この状態から扉Xを10度まで開くと、第二傾斜面44の谷側傾斜部44aが第一傾斜面33の谷側傾斜部33aを乗り越える(図22(b))。さらに扉Xを70度まで開くと、扉側カム部材42の第一頂部T1がベース側カム部材32の第一頂部T1に到達する(図23(a))。この状態から扉Xを90度まで開くと、扉側カム部材42の第一頂部T1がベース側カム部材32の第一頂部T1を乗り越えて、ベース側カム部材32の第二傾斜面34(山側傾斜部34c)に沿って下がっていく(図23(b))。
【0054】
なお、扉Xを閉じた状態(図22(a))で扉側カム部材42がベース側カム部材32の第一傾斜面33(谷側傾斜部33a)に沿って下がらないのは、図1のように、扉Xが扉枠Yの戸当たりZに突き当たってそれ以上回転しないからである。また、扉Xを90度開いた状態(図23(b))で扉側カム部材42がベース側カム部材32の第四傾斜面36(山側傾斜部36c)に沿って下がらないのは、扉Xが図示しない戸当たりZに突き当たってそれ以上回転しないからである。
【0055】
以上のように動作するグレビティヒンジ1で保持される扉Xは、閉じた状態から急勾配部(谷側傾斜部33a)を乗り越えるまでの間に大きな反力がかかって扉Xが開きにくくなり、急勾配部を越えて山側傾斜部33cに入ると、反力が小さくなって扉Xが開きやすくなる。したがって、急勾配部の角度を、換気扇の使用により生じる引込み力では越えられないような角度としておくことで、換気扇の使用時に不用意に扉Xが開くのを防止することができる。実施形態1及び2と同様、この実施形態でも、各傾斜面に緩勾配部を設けているため、傾斜面全面を急勾配とする場合に比して扉の開けやすさが阻害されにくい。さらに、傾斜面全面を急勾配とした場合には扉が過剰に上下動するおそれがあるが、この実施形態では各傾斜面に緩勾配部を設けているため、そのような心配もない。
【0056】
(その他の実施形態)
前記実施形態1~3において、ベース側カム部材32と扉側カム部材42の構成は、逆にすることもできる。具体的には、ベース側カム部材32の構成を扉側カム部材42の構成として採用し、扉側カム部材42の構成をベース側カム部材32の構成として採用することができる。
【0057】
本発明のグレビティヒンジ1は、前記実施形態1~3に記載の構成に限定されるものではなく、ベース側カム部材32と扉側カム部材42のいずれか一方に、急勾配部を備えており、その急勾配部によって扉Xの引込み方向への回転が規制される構成である限り、実施形態1~3に記載以外の構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のグレビティヒンジ1は、浴室のほか、換気手段による換気が必要な個室に設置される扉用のヒンジ部材として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 グレビティヒンジ
3 ベース側部材
31 ベース側基体
31a 固定部
31b 筒状部
31c ビス穴
31d ビス
31e ベース側収容部
31f 上面開口部
32 ベース側カム部材
32a 圧入部
32b 大径部
32c 鍔部
32d カム部
32e 挿入穴
32f リブ
33 第一傾斜面
33a 谷側傾斜部
33b 中傾斜部
33c 山側傾斜部
33d 突山部
33e 中腹谷部
33f つなぎ部
34 第二傾斜面
34a 谷側傾斜部
34b 中傾斜部
34c 山側傾斜部
34d 突山部
34e 中腹谷部
34f つなぎ部
35 第三傾斜面
35a 谷側傾斜部
35b 中傾斜部
35c 山側傾斜部
35d 突山部
35e 中腹谷部
35f つなぎ部
36 第四傾斜面
36a 谷側傾斜部
36b 中傾斜部
36c 山側傾斜部
36d 突山部
36e 中腹谷部
36f つなぎ部
37a 第一平坦部
37b 第二平坦部
4 扉側部材
41 扉側基体
41a 固定部
41b 筒状部
41c ビス受け部
41e 扉側収容部
41f 底面開口部
42 扉側カム部材
42a 圧入部
42b 鍔部
42c カム部
42d 挿入穴
42e リブ
43 第一傾斜面
43a 谷側傾斜部
43b 中傾斜部
43c 山側傾斜部
43d つなぎ部
44 第二傾斜面
44a 谷側傾斜部
44b 中傾斜部
44c 山側傾斜部
44d つなぎ部
45 第三傾斜面
45a 谷側傾斜部
45b 中傾斜部
45c 山側傾斜部
45d つなぎ部
46 第四傾斜面
46a 谷側傾斜部
46b 中傾斜部
46c 山側傾斜部
46d つなぎ部
47a 第一係止山
47b 第二係止山
47c 先端
48a 第一偏平面
48b 第二偏平面
49a 第一平坦部
49b 第二平坦部
5 軸部材
6 扉保持部材
61 板状パッキン
61a 貫通孔
62 筒状パッキン
63 挟持片
63a 貫通孔
64 固定ビス
65 ワッシャ
66 カバー
A ベース側部材
B 扉側部材
C 軸部材
D 扉保持部材
E ベース側カム部材
E1~E4 (ベース側カム部材の)傾斜面
F 扉側カム部材
F1~F4 (扉側カム部材の)傾斜面
B1 第一底部
B2 第二底部
T1 第一頂部
T2 第二頂部
X 扉
Y 扉枠
Z 戸当たり
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25